説明

皮膚組織穿刺器具のための回転体を備えたキャップ

【課題】皮膚組織穿刺器具のためのキャップおよびこれに関連した方法を提供すること。
【解決手段】皮膚組織穿刺器具のためのキャップは、固定具およびリング状のキャップ本体を含む。固定具は、皮膚組織穿刺器具と噛み合うように構成された近位端、キャップ本体係合機構を有する遠位端、および開口部を備える。リング状のキャップ本体は遠位圧縮面を有し、開口部を縁どり、キャップ本体の係合機構としっかりと、かつ回転可能に噛み合わされる。キャップの使用時に遠位圧縮面に力が加えられると、リング状のキャップ本体は、固定具としっかり噛み合わされたまま回転する(例えば開口部に対して内側方向に)。

【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の背景〕
本発明は一般に医療器具に関し、特に皮膚組織穿刺器具のためのキャップおよびこれに関連した方法に関する。
【0002】
〔関連技術の説明〕
一般的に従来の皮膚組織穿刺器具は、剛性のハウジング、および穿刺器具の一端から一時的に突き出すように構成され発射されるランセットを有する。例えば、従来の穿刺器具は、ランセットが剛性ハウジングの長軸に沿って剛性ハウジングに対して移動可能なように、剛性のハウジング内に設けられたランセットを備えることができる。一般的に、ランセットはバネにより荷重をかけられ、バネの解放により発射(穿刺)されて、標的部位(例えば使用者の指の皮膚組織における標的部位)を突き刺す。この時、生物学上の体液サンプル(例えば全血液サンプル)は採取および分析のため、穿刺された標的部位から圧出させることができる。従来の穿刺器具は、モリタ(Morita)に付与された米国特許第5,730,753号、テーラー(Taylor)他に付与された同第6,045,567号、ダグラス(Douglas)他に付与された同第6,071,250号であり、ここに示してそれぞれその全てを本明細書の一部とする。
【0003】
皮膚組織穿刺器具は、多くの場合標的部位と係合するキャップを含む。このようなキャップは、孔(すなわち開口部)を有し、ランセットがその孔を介して突き出し、使用中に標的部位と接触してキャップの遠位端が位置決めされる。
【0004】
キャップが標的部位に接触すると、通常、ランセットの発射の前に圧力が標的部位に加えられる。この圧力は標的部位に対してキャップを押し付け、キャップの内部に標的部位の隆起を形成させる。ランセットはこの時、標的部位の隆起を穿刺するために発射される。通常、血液などの液体サンプルはその後テストのために穿刺された標的部位から圧出される。例えば、穿刺された皮膚組織の標的部位から圧出された血液サンプルは、グルコース分析の点においてテストがなされてもよい。
【0005】
本発明の原理を活用した実施例の記載、同様の構成要素を同一の記号で示した添付図面、目的および趣旨により、以下の詳細な説明を参照することで、本発明の特徴および効果のよりよい理解が得られるであろう。
【0006】
〔好適な実施形態の詳細な説明〕
図1は、本発明の模範的な実施例による、皮膚組織穿刺器具(図示せず)のためのキャップ100の簡易斜視図である。図2および図3は、それぞれキャップ100の簡易分解斜視図および簡易分解部分切欠図である。図4は、皮膚組織の標的部位TSに対して押し付けられて標的部位の隆起Bが形成させられた、キャップ100の簡易分解部分切欠図である。
【0007】
図1〜図4を参照すると、キャップ100は、固定具102、通常リング状にセグメント化されたキャップ本体104およびバネ106を備える。固定具102は、内部固定部108、外部固定部110、およびキャップ100の長軸A−A(図2参照)に沿った開口部112を備える。固定具102は、皮膚組織穿刺器具(図示せず)と噛み合うように構成された近位端114および遠位端116を有する。さらに、内部固定部108は、キャップ本体係合機構118および縁119を有する外部固定部110を備える。
【0008】
近位端114は皮膚組織穿刺器具と噛み合うように構成される。例えば、近位端114は、近位端114を皮膚組織穿刺器具の端部にスライド式装着(slideably mounting)、スナップ式取付(snap-fitting)、もしくはネジ式取付(screw-fitting)することによって、適切に変更された従来の穿刺器具の端部に脱着可能に取り付けることができる。当業者は、本発明の実施例におけるキャップの近位端と噛み合う従来の適切な皮膚組織穿刺器具を容易に変更することができる。従来の適切な皮膚組織穿刺器具は例えば、米国特許第5,730,753号、同第6,045,567号、同第6,071,250号であり、ここに参照することによってそれぞれを本明細書に組み込む。
【0009】
しかしながら、本発明を開示するとすぐに、当業者は本発明のキャップが前述の特許に記載された皮膚組織穿刺器具の使用に限定されないことを認めるであろう。それどころか、本発明のキャップは例えば、皮膚組織の標的部位から体液サンプルを採取するための、ランセット、中空針、中実針、顕微針、超音波装置およびサーマル技術、および他のいかなる適切な技術を用いるいかなる皮膚組織穿刺器具にも利用されることができる。これに加えて、皮膚穿刺器具は、必要に応じて、採取した体液サンプルにおける分析物(例えばグルコース)のための測定総合分析システムを備えることも可能である。
【0010】
リング状のセグメント化されたキャップ本体104(すなわち、下記のキャップ本体セグメント122)の各セグメントは、遠位圧縮面120を備え、開口部112を縁どり、キャップ本体係合機構118に回転可能に噛み合わされ(revolvingly engaged)、縁119にしっかりと噛み合される(securely engaged)。リング状のセグメント化されたキャップ本体104は、複数のキャップ本体セグメント122(すなわち、8つのキャップ本体セグメント122)、外側凹部124および内側凹部126を含む。さらに、リング状のセグメント化されたキャップ本体104は、遠位圧縮面120上に、複数の皮膚組織係合機構127(「隆起部(ridges)」127としても記述する)を備える。説明する目的のためだけに、図1〜図4でリング状のセグメント化されたキャップ本体に8つのキャップ本体セグメントが描かれているが、適切な数のキャップ本体セグメントであればいくつであってもよい。
【0011】
隆起部127は、キャップ本体の遠位圧縮面120と皮膚組織標的部位との間のてこ機構を強める働きをする。このような強化されたてこ機構は、例えば、適度に粘着性のある材料もしくは適度に摩擦係数の高い材料でリング状のセグメントキャップ本体104を形成することによっても得ることができる。このような材料の例として、シリカを配合したシリコンエラストマーがある。さらに、強化したてこ機構は、粗い遠位圧縮面もしくは凹部のある遠位圧縮面によって得ることができる。
【0012】
リング状のセグメント化されたキャップ本体104は、剛性材料、エラストマー材料、高分子材料、ポリウレタン材料、ラテックス材料、シリコン材料およびこれらの化合物など、これらに限らず、いかなる適切な材料から形成されてもよい。注意すべきは、リング状のセグメント化されたキャップ本体104のセグメント化された特徴は、キャップ本体のセグメントが剛体かもしくは変形可能な材料で形成されているか否かにかかわらず、他のキャップ本体セグメントとは無関係に、各キャップ本体セグメント122がキャップ本体の係合機構118の回りを回転するように働く。
【0013】
図3および図4は、リング状のセグメント化されたキャップ本体104の外側凹部124が外部固定部110の縁119と確実な係合を行い、リング状のセグメント化されたキャップ本体104の内側凹部126が内部固定部108のキャップ本体係合機構118と確実に、しかも回転できる係合を行う方法を示す。
【0014】
ここでさらに詳細な説明をすれば、皮膚組織標的部位に対してキャップ100を押し付けることによって遠位圧縮面120上に力が加えられると、リング状のセグメント化されたキャップ本体104の少なくとも一部が回転するが、セグメント化されたキャップ本体104は縁119により確実に外部固定部110内に係合されたままである。この回転は、図3および図4のリング状のセグメント化されたキャップ本体104の相対的な位置を比べれば明らかである。この回転は実質的に、リング状のセグメント化されたキャップ本体104の円形の軸において、すなわちキャップ本体の係合機構118において生じる。
【0015】
キャップ本体セグメント122は実質的にキャップ本体の係合機構118上にあり、その上で回転可能である。リング状のセグメント化されたキャップ本体104は、通常C型の断面形状(図3および図4参照)を有する。ひとたび本発明を開示すれば、当業者はリング状のセグメント化されたキャップ本体104が一般的に、複数のキャップ本体セグメント122(それぞれ内側凹部126、外側凹部124および隆起部127を有する)の全体的な形状を参照し、「リング状」として記述可能なことを認めるであろう。このようなリング形状はまた、一般的に「円錐曲線回転体」の形状もしくは「ドーナツ」の形状と考えることもできる。
【0016】
開口部112は適切であれば、A−Aの長軸に垂直方向の円形、四角形、六角形、八角形および三角形の断面形状など、これに限らずいかなる断面形状であってもよい。さらに、この断面形状については、例えばテストストリップによる開口部112へのアクセスを可能としてもよい。このようなテストストリップのアクセスは、米国特許出願第10/143,399号(2003年7月31日の米国特許第2003/0143113A2として公開され、ここに参照することによって本明細書に組み込む)、国際出願第PCT/US01/07169(2001年9月7日のWO01/64105A1として公開)、国際出願第PCT/GB02/03772(2003年2月27日のWO03/015627A2として公開)に開示されたテストストリップへの、血液サンプルの原位置移転に役立てることができる。
【0017】
図3および図4を参照すれば、キャップ100は皮膚組織標的部位に対して力F1をかけることで押し付けられると、隆起部127が皮膚組織標的部位と噛み合う。力F1を増加させると、ネジ106が内部および外部固定部108および110(図3および図4を比較)の垂直方向の相対的な動きによって押し下げられる。皮膚組織標的部位TSに対するキャップ100の押し付けは、キャップ本体の係合機構118においてリング状のセグメント化されたキャップ本体104(すなわちキャップ本体セグメント122)の回転(revolution)(すなわち旋回(rotation))を起こすリング状のセグメント化されたキャップ本体104に加えられるねじれの力を生じさせる。この回転は開口部112に関して内側方向である。
【0018】
この内側への回転/旋回中に、隆起部127および遠位圧縮面120はさらに皮膚組織標的部位と係合し、開口部112(図4参照)の内側に標的部位の隆起Bを形成する。皮膚組織標的部位に力F1を加え続けると、標的部位の隆起Bの内側の圧力が増し、これに続く標的部位の隆起Bの穿刺において、穿刺部位への手動の操作を何等必要とせずに、体液(例えば血液)の穿刺部位外への圧出を容易にする。
【0019】
体液の圧出を増やすために、穿刺後(例えば約2秒から約12秒の範囲の、穿刺後の圧力をかける時間)に加える力は、所定の時間(すなわち穿刺後の圧力の時間)維持されてもよい。圧出する体液の量もまた、例えば1秒から8秒の範囲、主として約3秒から5秒の範囲の所定の時間、穿刺前の力(穿刺前の圧力)を与え維持することで増加させることもできる。
【0020】
図5は本発明の他の模範的な実施例による皮膚組織穿刺器具のキャップ(図示せず)のためのキャップ200の簡易斜視図である。図6および図7はそれぞれキャップ200の簡易分解斜視図および簡易部分切欠斜視図である。図8は、標的部位の隆起Bを形成するように皮膚組織の標的部位TSに対して押し付けたキャップ200の簡易部分切欠斜視図である。
【0021】
図5〜図8を参照すると、キャップ200は固定具202および通常のリング状の変形可能なキャップ本体204を有する。固定具202は、キャップ200の長軸に沿った開口部212を具備する。固定具202は、皮膚組織穿刺器具(図示せず)と係合するように構成された近位端214、および遠位端216を有する。さらに、固定具202は縁219を含む。
【0022】
リング状の変形可能なキャップ本体204は、遠位圧縮面220を備えており、開口部212を縁どりし、固定具202に回転可能に噛み合わされる。リング状の変形可能なキャップ本体204はさらに複数のスリット222、外側凹部224および内側凹部226を備える。さらに、リング状の変形可能なキャップ本体204は複数の皮膚組織係合機構227(「隆起部」227としても参照)を遠位圧縮面220上に備える。
【0023】
図7および図8は、操作中(図7および図8のリング状の変形可能なキャップ本体204の位置の比較により明らかなように)において、リング状の変形可能なキャップ本体204が回転(revolve)(すなわち内側へ旋回(rotate))しながら、リング状の変形可能なキャップ本体204の外側凹部224が固定具の縁219と確実な係合を行う方法を示す。
【0024】
ここでさらに詳細な説明をすれば、皮膚組織標的部位に対してキャップ200を押し付けることによって遠位圧縮面220上に力が加えられると、リング状の変形可能なキャップ本体204の少なくとも一部が回転するが、リング状の変形可能なキャップ本体204は確実に固定具202との係合を維持する。このような回転は実質的に、リング状の変形可能なキャップ本体204の円形の軸(circular axis)において生じる。このような回転はリング状の変形可能なキャップ本体の回転屈曲(rotational flexing)にたとえることができる。
【0025】
図7および図8を参照すると、キャップ200は皮膚組織標的部位に対して力F2を加えることで押し付けられ、隆起部227が皮膚組織標的部位と噛み合う。キャップ200の皮膚組織標的部位TSに対する押し付け(および固定具202の半径方向の外側への固定効果)は、開口部212に対して内側への、リング状の変形可能なキャップ本体204の回転(すなわち旋回)を引き起こす、リング状の変形可能なキャップ本体204に加えられるねじれの力を生じる。スリット222および内側凹部226は、固定具202がリング状の変形可能なキャップ本体204の半径方向の外側への動きを制限するような回転を容易にする。
【0026】
この内側への回転/旋回の最中に、隆起部227および遠位圧縮面220はさらに皮膚組織標的部位と係合し、開口部212(図8参照)内の標的部位の隆起Bを形成させる。皮膚組織標的部位に対して継続的に力F2を加えることは、標的部位の隆起B内の圧力を増加させ、これに続く標的部位の隆起Bの穿刺において、穿刺部位への手動の操作を何等必要とせずに、体液(例えば血液)の穿刺部位外への圧出を容易にする。
【0027】
操作中、皮膚組織穿刺器具のキャップは血液もしくは他の体液と接触する可能性がある。おそらく、このような接触は、好ましくない活性を持つ微生物もしくはウイルスの付着によるキャップの汚染につながることもある。しかしながら、本発明の実施例によるキャップは、少なくとも部分的に、このような微生物もしくはウイルスの好ましくない活性を軽減するように働く、適切な抗菌性材料、抗真菌性材料、および/もしくは抗ウイルス性材料で任意に形成することができる。このような適切な材料は例えば、抗菌プラスチック、抗菌樹脂および/もしくは抗菌シリコンであってもよい。適切な抗菌材料は例えば、2,4,4-トリクロロ-2-ヒドロキシジフェノールエーテル(2,4,4-Trichloro-2-hydroxy-diphenol ether)のような、トリクロロフェノールのグループを含む抗菌性の化合物を含んでもよい。抗菌化合物は例えば、キャップのコーティングもしくは直接キャップに一体化させてもよい。
【0028】
前述したキャップ100および200を基礎として、当業者は本発明の実施例によるキャップが一般的に固定具とリング状のキャップ本体(例えば、リング状の変形可能なキャップ本体もしくはリング状のセグメント化されたキャップ本体)を備えることを認めるであろう。また、固定具は皮膚組織穿刺器具と係合するように構成された近位端、キャップ本体の係合機構(例えば縁)を具備する遠位端、および開口部を有する。さらに、リング状のキャップ本体は、遠位圧縮面を備え、開口部を縁どりし、キャップ本体の係合機構としっかりと、かつ回転可能に噛み合う。また、キャップの操作時に力が遠位圧縮面上に加えられると、リング状のキャップ本体は、固定具としっかりと噛み合ったまま(例えば開口部に対して内側に)回転する。
【0029】
図9は、回転するキャップ本体を有するキャップを利用して皮膚組織標的部位TSを穿刺するための工程300における一連の手順をフローチャートに示す。図10A〜図10Cは、図9の工程の各ステップを描いた簡易断面図である。実施例を説明する目的のために、図1のキャップ100は、工程300において利用するものとして図10A〜図10Cに示される。しかしながら、当業者は、皮膚組織穿刺器具のための本発明によるキャップが皮膚組織標的部位を穿刺する本発明の方法において、いかなるキャップであっても利用可能であることを認識するであろう。この点において、本願で説明した皮膚組織穿刺器具のための本発明によるキャップのいかなる機能的な動作もしくは利用も、皮膚組織標的部位を穿刺する本発明の方法に含むことが可能であることを注意すべきである。さらに当業者は、図10A〜図10CがランセットLを有する部分Xを備えた皮膚組織穿刺器具の一部分Xのみを示すことを認めるであろう。
【0030】
工程300は、皮膚組織標的部位TS(図9の手順310、使用前の皮膚組織穿刺器具のキャップ100を示す図10A参照)に、皮膚組織穿刺器具のキャップ100におけるリング状のセグメント化されたキャップ本体104の遠位圧縮面120を接触させるステップを含む。説明の目的に限って、工程300は、リング状のセグメント化されたキャップ本体に関連して説明されるが、本発明の実施例による工程は、一般的に、例えばリング状の変形可能なキャップ本体204を含むいかなる適切なリング状のキャップ本体を利用してもよい。
【0031】
皮膚組織穿刺器具のキャップ100はその後、力が遠位圧縮面120上に加えられ、その結果、皮膚組織穿刺器具のキャップ100の固定具(それぞれ内部固定部および外部固定部108および110)の内部で、リング状のセグメント化されたキャップ本体104がしっかりと噛み合わされたまま回転するように、皮膚組織標的部位TSの方向に押される。図9のステップ320および図10B参照。
【0032】
続いて、皮膚組織標的部位TSの標的部位の隆起Bは、図9のステップ330および図10Cに示すように、皮膚組織穿刺器具のランセットLを用いて穿刺される。
【0033】
実例:キャップの成功率の比較と主観的な不快感
本発明の実施例による皮膚組織穿刺器具のキャップ(すなわち図5〜図8のキャップ200)と従来の剛性キャップとの比較研究が、ニュージャージーのフランクリンレイクス(Franklin Lakes, NJ)にあるベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)から入手可能な28ゲージのランセットを使用して実施された。
【0034】
テストの方法は、キャップ本体を被検者の指の皮膚組織標的部位に対して3秒間押し当てるステップと、28ゲージの針を用いて皮膚組織標的部位を穿刺するステップと、皮膚組織標的部位に対して10秒間キャップをそのまま保持するステップと、皮膚組織標的部位からキャップをはずすステップと、目盛り付きのガラス毛管ピペットを用いて穿刺された皮膚組織標的部位から血液を採取するステップと、で構成した。
【0035】
穿刺ステップの間、0から10の範囲で主観的な尺度を用いて、被検者が受けた不快感の強さを評価した。この主観的な尺度において、0の評価は穿刺中被検者が何等痛みを感じなかったことを示し、10の評価は穿刺が被検者にとってかなり苦痛であったことを示す。キャップ200の平均の主観的評点は、剛性キャップの4.3に対して2.5であった。この評点は、キャップ200の使用について不快感のレベルが比較的低いことを示す。
【0036】
成功は少なくとも0.7マイクロリットル(μL)の血液(すなわち一般的には、携帯用器具を用いて、血液中のグルコースなどの分析物の正確な算定のために必要な最少体積)を得ることとして規定された。パーセント成功率は、以下の表1(nはテストをした被検者の数である)に、テストしたキャップのデザインのすべてについて示した。
【0037】
【表1】

【0038】
表1のデータは、剛性キャップと比較したキャップ200の有効なパーセント成功率を示す。皮膚組織標的部位は、血液の圧出を増加させるために物理的な操作はされなかった(前述のようにキャップそれ自体によるもの以外)ので、成功率は、本発明の実施例によるキャップが血液の圧出のための物理的な操作を必要としないことを示す。
【0039】
本発明の実施において、ここで述べた本発明の実施例に対する様々な変更を行うことができることを理解すべきである。特許請求の範囲は本発明の範囲を規定し、これらの特許請求の範囲内の方法および構成、さらにそれらの同等物はこれによって保護される。
【0040】
〔実施の態様〕
(1)皮膚組織穿刺器具のためのキャップにおいて、
固定具であって、
前記皮膚組織穿刺器具と噛み合うように構成された近位端、
少なくとも1つのキャップ本体係合機構を有する遠位端、および、
前記キャップの長軸に沿って前記固定具を貫通する開口部、
を具備する固定具と、
遠位圧縮面を有するリング状のキャップ本体と、
を備え、
前記リング状のキャップ本体は、前記開口部を縁どり、前記キャップ本体係合機構としっかり(securely)と、かつ回転可能(revolvingly)に噛み合わされ、
前記キャップの使用時に前記遠位圧縮面に加えられた力によって、前記リング状のキャップ本体の少なくとも一部が、前記固定具としっかり噛み合わされたまま回転する、
キャップ。
(2)実施態様1に記載のキャップにおいて、
前記リング状のキャップ本体は、リング状のセグメント化されたキャップ本体である、キャップ。
(3)実施態様2に記載のキャップにおいて、
前記リング状のセグメント化されたキャップ本体は、複数のキャップ本体セグメントを含み、
前記キャップ本体セグメントのそれぞれが、キャップ本体係合機構と回転可能に噛み合う、
キャップ。
(4)実施態様3に記載のキャップにおいて、
前記複数のキャップ本体セグメントは、剛性材料で形成される、キャップ。
(5)実施態様1に記載のキャップにおいて、
前記リング状のキャップ本体は、リング状の変形可能なキャップ本体である、キャップ。
(6)実施態様1に記載のキャップにおいて、
前記固定具は、内部固定部および外部固定部を含み、
前記少なくとも1つのキャップ本体係合機構は、前記外部固定部の縁を含む、
キャップ。
(7)実施態様1に記載のキャップにおいて、
前記リング状のキャップ本体は、前記開口部に向かって内側に回転する、キャップ。
(8)実施態様1に記載のキャップにおいて、
前記リング状のキャップ本体は、複数のキャップ本体セグメントを含み、
前記キャップ本体セグメントは、前記開口部に向かって内側に回転する、
キャップ。
(9)実施態様1に記載のキャップにおいて、
前記リング状のキャップ本体は、C形状の断面を有し、
前記回転は、前記リング状のキャップ本体の円形の軸(circular axis)の回りに生じる、
キャップ。
(10)実施態様1に記載のキャップにおいて、
前記キャップ本体は、少なくとも部分的に抗菌材料で形成される、キャップ。
(11)実施態様10に記載のキャップにおいて、
前記抗菌材料は、トリクロロフェノール化合物を含む、キャップ。
(12)実施態様11に記載のキャップにおいて、
前記トリクロロフェノール化合物は、2,4,4-トリクロロ-2-ヒドロキシジフェノール(2,4,4-Trichloro-2-hydroxy-diphenol)である、キャップ。
(13)実施態様1に記載のキャップにおいて、
前記キャップ本体の遠位圧縮面は、その遠位圧縮面に設けられた複数の隆起部(ridges)を有する、キャップ。
(14)実施態様1に記載のキャップにおいて、
前記力は、ねじれの力である、キャップ。
(15)実施態様1に記載のキャップにおいて、
前記固定具は、前記キャップの使用時に、前記リング状の変形可能なキャップ本体の半径方向(radially)の外側への動きを制限するように構成されている、キャップ。
(16)実施態様1に記載のキャップにおいて、
前記リング状のキャップ本体は、複数のスリットを有するリング状の変形可能なキャップ本体である、キャップ。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の模範的な実施例による皮膚組織穿刺器具とともに用いるキャップの簡易斜視図である。
【図2】図1のキャップの簡易分解斜視図である。
【図3】図1のキャップの簡易分解部分切欠図である。
【図4】皮膚組織の標的部位に対して押し付けた、図1のキャップの簡易分解部分切欠図である。
【図5】本発明の他の模範的な実施例による皮膚組織穿刺器具のキャップの簡易斜視図である。
【図6】図5のキャップの簡易上面図である。
【図7】キャップにおけるキャップ本体の円形の軸を点線で描いた図5のキャップの簡易分解部分切欠図である。
【図8】皮膚組織の標的部位に対して押し付けた、図5のキャップの簡易分解部分切欠図である。
【図9】本発明の模範的な実施例による工程における手順を示したフローチャートである。
【図10A】図9の工程の各ステップを示した部分切欠斜視図である。
【図10B】図9の工程の各ステップを示した部分切欠斜視図である。
【図10C】図9の工程の各ステップを示した部分切欠斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚組織穿刺器具のためのキャップにおいて、
固定具であって、
前記皮膚組織穿刺器具と噛み合うように構成された近位端、
少なくとも1つのキャップ本体係合機構を有する遠位端、および、
前記キャップの長軸に沿って前記固定具を貫通する開口部、
を具備する固定具と、
遠位圧縮面を有するリング状のキャップ本体と、
を備え、
前記リング状のキャップ本体は、前記開口部を縁どり、前記キャップ本体係合機構としっかりと、かつ回転可能に噛み合わされ、
前記キャップの使用時に前記遠位圧縮面に加えられた力によって、前記リング状のキャップ本体の少なくとも一部が、前記固定具としっかり噛み合わされたまま回転する、
キャップ。
【請求項2】
請求項1に記載のキャップにおいて、
前記リング状のキャップ本体は、リング状のセグメント化されたキャップ本体である、キャップ。
【請求項3】
請求項2に記載のキャップにおいて、
前記リング状のセグメント化されたキャップ本体は、複数のキャップ本体セグメントを含み、
前記キャップ本体セグメントのそれぞれが、キャップ本体係合機構と回転可能に噛み合う、
キャップ。
【請求項4】
請求項3に記載のキャップにおいて、
前記複数のキャップ本体セグメントは、剛性材料で形成される、キャップ。
【請求項5】
請求項1に記載のキャップにおいて、
前記リング状のキャップ本体は、リング状の変形可能なキャップ本体である、キャップ。
【請求項6】
請求項1に記載のキャップにおいて、
前記固定具は、内部固定部および外部固定部を含み、
前記少なくとも1つのキャップ本体係合機構は、前記外部固定部の縁を含む、
キャップ。
【請求項7】
請求項1に記載のキャップにおいて、
前記リング状のキャップ本体は、前記開口部に向かって内側に回転する、キャップ。
【請求項8】
請求項1に記載のキャップにおいて、
前記リング状のキャップ本体は、複数のキャップ本体セグメントを含み、
前記キャップ本体セグメントは、前記開口部に向かって内側に回転する、
キャップ。
【請求項9】
請求項1に記載のキャップにおいて、
前記リング状のキャップ本体は、C形状の断面を有し、
前記回転は、前記リング状のキャップ本体の円形の軸の回りに生じる、キャップ。
【請求項10】
請求項1に記載のキャップにおいて、
前記キャップ本体は、少なくとも部分的に抗菌材料で形成される、キャップ。
【請求項11】
請求項10に記載のキャップにおいて、
前記抗菌材料は、トリクロロフェノール化合物を含む、キャップ。
【請求項12】
請求項11に記載のキャップにおいて、
前記トリクロロフェノール化合物は、2,4,4-トリクロロ-2-ヒドロキシジフェノール(2,4,4-Trichloro-2-hydroxy-diphenol)である、キャップ。
【請求項13】
請求項1に記載のキャップにおいて、
前記キャップ本体の遠位圧縮面は、その遠位圧縮面に設けられた複数の隆起部を有する、キャップ。
【請求項14】
請求項1に記載のキャップにおいて、
前記力は、ねじれの力である、キャップ。
【請求項15】
請求項1に記載のキャップにおいて、
前記固定具は、前記キャップの使用時に、前記リング状の変形可能なキャップ本体の半径方向の外側への動きを制限するように構成されている、キャップ。
【請求項16】
請求項1に記載のキャップにおいて、
前記リング状のキャップ本体は、複数のスリットを有するリング状の変形可能なキャップ本体である、キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【公開番号】特開2007−136198(P2007−136198A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−310577(P2006−310577)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(596159500)ライフスキャン・インコーポレイテッド (100)
【氏名又は名称原語表記】Lifescan,Inc.
【住所又は居所原語表記】1000 Gibraltar Drive,Milpitas,California 95035,United States of America
【Fターム(参考)】