説明

皮膚線量表示装置及び皮膚線量表示方法

【課題】治療計画にて算出された皮膚線量情報と患者体表面の位置関係を、治療室にて視認可能な表示装置に表示した患者モデルに高精度に表示することを目的とする。
【解決手段】放射線治療の治療計画にて算出された患者34の皮膚線量情報23を、治療室にて視認可能に設置された表示装置5に表示する皮膚線量表示装置1であって、治療計画に用いるCT画像の座標系に関連付けされた患者3Dモデル22を生成する患者3Dモデル生成部4と、患者3Dモデル22に皮膚線量情報23を表示装置5において重畳表示する皮膚線量表示処理部2とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、癌治療を目的とした放射線治療装置や粒子線治療装置に関し、特に放射線被曝線量を表示する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
X線治療装置などの放射線治療装置により患者の治療患部に放射線を照射する放射線治療の場合、治療患部の周りの正常組織にも広範囲にわたって影響を及ぼし、最表面の皮膚への副作用がかなりある。皮膚への副作用を最小限に抑える対策が望まれている。これに対して、粒子線治療は、治療患部に対して集中的に放射線量を照射できるため、X線治療装置等に比べて、皮膚への副作用が少ない治療方法とされている。しかし、治療患部が皮膚に近い場所にある場合には、皮膚にも高線量が照射される事になり、皮膚に副作用の症状が発生する可能性がある。粒子線治療は皮膚への副作用が少ない治療方法として患者に期待されている事から、このような場合でも、皮膚への副作用を最小限に抑える対策が望まれている。
【0003】
従来、線量データは治療計画室に設置された治療計画装置によって管理されており、線量値計算に基づく治療装置の制御情報については治療室へ展開されるが、線量値そのものは治療室へ展開されることは無かった。この為、治療室にて患者が受ける皮膚線量を確認する事はできず、どうしても必要な場合は治療計画装置が設置された治療計画室へ移動し、治療計画装置で参照する必要があった。
【0004】
治療計画室で確認する場合であっても、治療計画装置の線量データ表示は、治療計画を目的に作成されている為に、主にCTスライス画像に対する二次元表示であり、皮膚線量値が高線量になっている箇所と患者体表面との位置関係を正確に確認するのは困難であった。そのため、皮膚への副作用が想定される場合であっても、治療室に於いて治療直後に副作用を最小限に抑える適切な処置や治療前の事前の処置を実施する事は困難であった。
【0005】
治療室に於いて治療直後の処置や治療前の事前の処置である対応処置を適切に実施するためには、まず皮膚線量値の算出及び高線量になっている箇所の可視化が必要である。特許文献1には、X線診断装置を対象として、許容値を超える被曝量を患者や医療スタッフが受ける事のないように、その予測線量値を算出し、その結果を表示する方法について述べられている。また、被曝量の表示対象として患者モデルへの表示を行う事が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−65815号公報(図1、図9)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この従来技術は、X線診断装置を対象としており、被曝量が許容値を超えるか否か、あるいはその被曝量の数値を推測する事が最大の関心点である。その為、表示対象として患者モデルを用いているが、標準的な患者モデルと寝台のおよその位置関係を用いる事で課題を解決している。
【0008】
しかしながら、治療室に於いて治療直後の処置や治療前の事前の処置である対応処置を適切に実施するためには、あらかじめ治療計画装置に計画された線量データと患者体表面
の位置関係について、医療スタッフが適切な処置を施す事ができる程度に正確な位置関係表示を行う必要があるが、従来技術ではこのような正確な位置関係表示を実現できない問題があった。
【0009】
この発明は、治療計画にて算出された皮膚線量情報と患者体表面の位置関係を、治療室にて視認可能な表示装置に表示した患者モデルに高精度に表示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
放射線治療の治療計画にて算出された患者の皮膚線量情報を、治療室にて視認可能に設置された表示装置に表示する皮膚線量表示装置であって、治療計画に用いるCT画像の座標系に関連付けされた患者3Dモデルを生成する患者3Dモデル生成部と、患者3Dモデルに皮膚線量情報を表示装置において重畳表示する皮膚線量表示処理部と、を備えた。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る皮膚線量表示装置は、治療計画に用いるCT画像の座標系と関連付けされた座標系を有する患者3Dモデルに治療計画で算出された皮膚線量情報を重畳表示するので、治療計画で算出された皮膚線量情報と患者体表面の位置関係を、治療室にて視認可能な表示装置に表示した患者モデルに高精度に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明の皮膚線量表示装置のブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1による表示装置の画面イメージ図である。
【図3】図1の患者3Dモデル撮影部を説明する図である。
【図4】図1の患者3Dモデル撮影部の撮影方法を説明する正面図である。
【図5】図1の患者3Dモデル撮影部の撮影方法を説明する上面図である。
【図6】この発明の皮膚線量表示装置の動作及びこの装置を用いた処理を説明する図である。
【図7】この発明の皮膚線量表示装置の他の動作及びこの装置を用いた処理を説明する図である。
【図8】この発明の実施の形態2による表示装置の画面イメージ図である。
【図9】この発明の実施の形態3による表示装置の画面イメージ図である。
【図10】この発明の実施の形態4による表示装置の画面イメージ図である。
【図11】この発明の実施の形態5による皮膚線量値の表示例を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態6による患者3Dモデル及び表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1.
図1は、この発明の皮膚線量表示装置のブロック図である。皮膚線量表示装置1は、皮膚線量表示処理部2と、患者3Dモデルデータベース3と、患者3Dモデル撮影部(患者3Dモデル生成部)4と、表示装置5とを有する。皮膚線量表示処理部2は、コンピュータ及びソフトウェアで構成され、皮膚線量値の等線量曲線表示処理を行う。患者3Dモデルデータベース3には、患者を三次元表示にてモデル化した患者3Dモデル(3Dモデル)が格納されている。患者3Dモデル撮影部4は、患者3Dモデルを撮影する機能を有し、患者の撮影及び患者の3Dモデルの作成後に、患者の3Dモデルを患者3Dモデルデータベース3へ格納する。表示装置5は、例えば治療室に設置され、皮膚線量表示処理部2により処理された情報が表示される。治療計画装置11は、照射対象である患部の三次元データに基づいて、照射条件などいくつかの治療計画を立案し、粒子線治療をシミュレートする。線量データベース12は、治療計画装置11で計画された治療計画毎の線量値が格納される。
【0014】
図2は、この発明の実施の形態1による表示装置の画面イメージ図である。表示装置5の画面21には、線量表示部26と、患者情報表示部25と、関係説明表示部24を含んでいる。線量表示部26には、患者毎に治療体位を考慮して、この治療体位を反映して作成された患者3Dモデル22と患者3Dモデル22上に皮膚線量情報である皮膚線量値の等線量曲線23とが重畳表示される。患者情報表示部25には、表示中の患者3Dモデル22について、患者ID、氏名等の患者情報が表示される。関係説明表示部24には、等線量曲線23と線量値を関係付ける説明が表示される。
【0015】
図3は、皮膚線量表示装置の患者3Dモデル撮影部を説明する図である。患者3Dモデル撮影部4は、CT室のCT寝台35に固定された患者34を光学ステレオカメラ(光学カメラ)33により光学画像を撮影する。CT原点32は、CTガントリー31の中心である。CT画像原点36は、患者34がCTガントリー31の内部に入り、CT撮影時にCT画像原点となった点である。モデル基準座標点37は、光学ステレオカメラ33が撮影する撮影領域38の基準座標点であり、撮影した患者3Dモデル22の基準点となる。
【0016】
光学ステレオカメラ33はCT装置(CTガントリー31)座標系に合わせるキャリブレーションを行う。可変距離L1は、CT原点32とCT画像原点36との差分を表す。固定距離L0は、CT原点32とモデル基準座標点37との差分を表す。可変距離L2は、CT画像原点36とモデル基準座標点37との差分を表す。ここで、CT原点32、CT画像原点36、モデル基準座標点37のそれぞれの座標は、X座標、Z座標については同一で、Y座標のみ異なる。
【0017】
図4は患者3Dモデル撮影部の撮影方法を説明する正面図であり、図5は患者3Dモデル撮影部の撮影方法を説明する上面図である。光学ステレオカメラ33は、2台のレンズが1筐体に組み込まれており、2台のレンズが所定の一定距離の関係である為に、三角測量の原理で撮影対象物の三次元計測が可能となるものである。1台のカメラでは死角が多くなるため、2台の光学ステレオカメラ33a、33b(レンズは4個)を使って、CT寝台35に固定された患者34の左右上方から撮影する構成が適している。これにより、死角を少なくでき、十分な画像を撮影することができる。光学ステレオカメラ33の撮影視野を確保する為に、光学ステレオカメラ33と患者34との距離は約2mにする。これにより約1000mmの範囲(患者の身長方向、Y方向)を撮影することができる。CT寝台法線60と光学ステレオカメラ33aのカメラ法線61aとの角度θと、CT寝台法線60と光学ステレオカメラ33bのカメラ法線61bとの角度θは約35度である。撮影時に撮影精度を上げる為に、ランダムドットパターンを撮影対象に投光する。光源は可視光や赤外線を用いるのが適当である。可視光でまぶしいと感じる患者の場合には、赤外線で撮影することは有効な選択肢である。
【0018】
図6は、皮膚線量表示装置の動作及びこの装置を用いた処理を説明する図である。ステップS001は患者3Dモデル撮影部4による患者3Dモデル作成作業であり、ステップS002〜S006の処理から構成する。ステップS011は治療計画装置11による治療計画の作成、及び線量値算出作業であり、ステップS012〜S014の処理から構成する。ステップS021は照射時に皮膚線量表示装置1を参照して、適切な照射後処置(対応処置)を施す作業であり、ステップS022〜S026の処理から構成する。以下に動作について説明する。
【0019】
放射線治療装置や粒子線治療の治療計画作業ステップS011を行う前に、治療計画に用いるCT画像を撮影する。このCT画像の撮影時に、患者3Dモデル撮影部4により患者を撮影し、治療体位を考慮した患者毎の患者3Dモデル22を作成する。手順は次の通りとなる。治療計画用CT撮影後に患者34をCT寝台35に乗せた状態で、光学ステレ
オカメラ33の撮影範囲へ移動し固定する(ステップS002)。治療時に治療用放射線源装置を近づける事になる治療アイソセンタはCT画像原点36付近にあると想定されるので、CT画像原点36となった位置を光学ステレオカメラ撮影範囲の中心付近に移動する。CT画像原点36となる位置は患者毎に異なるため、この時の移動距離は可変距離L1となる。
【0020】
次に、光学ステレオカメラ33を用いてCT寝台35上の患者34を撮影する(ステップS003)。図4、図5に示した撮影方法により撮影する。撮影時の情報であるCT寝台35のCT寝台移動量と患者34の患者方向を撮影画像の属性情報として入力する(ステップS004)。
【0021】
光学ステレオカメラ33が撮影する撮影領域38の基準座標点37を初期原点とした患者3Dモデルを生成する(ステップS005)。ここで、固定距離L0は光学ステレオカメラ33とCTガントリー31との設置関係による固定距離であり、可変距離L1はCT寝台35の移動時にCT装置により計測可能であるので、可変距離L2がL0−L1として算出できる。患者モデルの初期原点37から可変距離L2だけ原点位置を移動させる処理を行うことにより、CT画像原点36を原点とする患者3Dモデル22を得ることができる。なお、患者方向についても患者3Dモデル保存時に撮影属性として保存する。皮膚線量表示処理部2が有する皮膚線量表示機能は、治療計画装置11で算出した皮膚線量値を患者3Dモデル22へ正確に重畳する必要がある。治療計画装置11での座標算出はCT画像の座標系に基づく。上記に記載した方式によって、患者3Dモデル22にCT画像原点情報を持たせることができるため、CT装置とは直接座標関係を持たない光学ステレオカメラ33で患者の撮影及び撮影した光学画像により作成した患者3Dモデル22をCT画像座標系で作成することができる。したがって、患者3Dモデル22をCT画像座標系で作成する事によって正確な重畳が可能となる。
【0022】
ステップS005で作成した患者3Dモデル22は患者3Dモデルデータベース3へ格納される(ステップS006)。
【0023】
次に、ステップS011に示す治療計画を行う。ステップS012で、治療計画を作成する。ステップS013で、線量値の算出を行う。ステップS014で、算出した線量値を線量データベース12に格納する。
【0024】
次に、ステップS021に示す処理を行う。粒子線治療装置による粒子線を照射する(ステップS022)。皮膚線量表示装置1の皮膚線量表示機能を起動し、治療室に設置された表示装置5の画面21へ皮膚線量値を患者3Dモデル22に重畳表示する(ステップS023)。ステップS023において、患者IDを指定することによって、該当する患者3Dモデル22を患者3Dモデルデータベース3より読み出して、治療室に設置された表示装置5の画面21へ表示する。次に、照射を特定するID(照射ID)を指定することで、当該照射IDに対応した線量値を治療計画装置の線量データベース12から読み出して、患者3Dモデル22へ重畳表示する。皮膚線量値が患者3Dモデル22に重畳表示された画面イメージは図2のようになる。この時の重畳処理は上記で述べた通り、患者3Dモデル22と線量データの双方がCT画像座標系に関連付けされているので、皮膚線量値は患者3Dモデル22に正確に重畳表示できる。また、皮膚線量表示装置1の表示装置5の画面21は、図2に示すように3Dビューであるので、皮膚線量表示処理部2により患者3Dモデル22を三次元的に任意の方向に回転して表示させ、三次元的に任意の方向から、患者3Dモデル22上の皮膚線量値を詳細に確認することができる。
【0025】
医療スタッフは、皮膚線量表示装置1の表示装置5の画面21における皮膚線量値を確認する(ステップS024)。医療スタッフは、照射後処置が必要かどうかを判定する(
ステップS025)。皮膚線量表示装置1で皮膚線量値を確認し、照射後処置が必要でないと判定した場合は、終了する。皮膚線量表示装置1で確認した皮膚線量値が高い箇所について、照射後処置が必要と判定した場合は、ステップS026にて照射直後に当該箇所を冷却する、または薬剤を塗布する等の適切な処置を行う。このように皮膚線量表示装置1で確認した皮膚線量値が高い箇所について、適切な処置を行うことで、皮膚に対する副作用を抑制する事ができる。
【0026】
今まで対応処置として照射後処置を行う場合で説明したが、照射前の処置を行う場合にも皮膚線量表示装置1を使用することができる。図7を用いて説明する。図7は、皮膚線量表示装置の他の動作及びこの装置を用いた処理を説明する図である。図6とは、ステップS021に代えて、照射時に皮膚線量表示装置1を参照して、適切な照射前処置を施す作業をする(ステップS031)点で異なる。図6と異なるステップS031について説明する。
【0027】
ステップS031は、ステップS023〜S029の処理から構成される。図6と同じステップS022、S024の処理を実行する。次に、ステップS027にて、医療スタッフは、照射前処置が必要かどうかを判定する。皮膚線量表示装置1で皮膚線量値を確認し、照射前処置が必要でないと判定した場合は、ステップS029に進む。皮膚線量表示装置1で確認した皮膚線量値が高い箇所について、照射前処置が必要と判定した場合に、ステップS028にて薬剤を塗布する等の適切な処置を行う。このように皮膚線量表示装置1で確認した皮膚線量値が高い箇所について、適切な予防処置を行うことで、皮膚に対する副作用の発生を抑制する事ができる。ステップS029にて、粒子線治療装置による粒子線を照射する。
【0028】
実施の形態1の皮膚線量表示装置1は、治療計画で算出された皮膚線量値と患者体表面の位置関係を、治療室の表示装置5に表示した患者3Dモデル(患者モデル)22に高精度に表示することができる。治療計画で算出された皮膚線量値を治療室の表示装置5に表示した患者3Dモデル(患者モデル)22に高精度に表示することができるので、治療室に於いて治療直後の処置や治療前の事前の処置である対応処置を適切に実施することができる。すなわち、治療前に薬剤を塗布する等の適切な処置や、照射直後に、その部位を冷却する、または薬剤を塗布する等の適切な処置を行い、副作用を抑制する適切な処置を行うことが可能である。したがって、治療患部が皮膚に近い場所になる場合であっても、皮膚に対する副作用を抑制する事ができる。
【0029】
以上のように実施の形態1の皮膚線量表示装置1によれば、放射線治療の治療計画にて算出された患者34の皮膚線量情報23を、治療室にて視認可能に設置された表示装置5に表示する皮膚線量表示装置1であって、治療計画に用いるCT画像の座標系に関連付けされた患者3Dモデル22を生成する患者3Dモデル生成部4と、患者3Dモデル22に皮膚線量情報23を表示装置5において重畳表示する皮膚線量表示処理部2とを備えたので、治療計画に用いるCT画像の座標系と関連付けされた座標系を有する患者3Dモデル(患者モデル)22に治療計画で算出された皮膚線量情報を重畳表示でき、治療計画で算出された皮膚線量情報と患者体表面の位置関係を、治療室にて視認可能な表示装置5に表示した患者3Dモデル(患者モデル)22に高精度に表示することができる。
【0030】
実施の形態2.
図8は、この発明の実施の形態2による表示装置の画面イメージ図である。実施の形態1とは、1回の照射で複数のビームを用いる場合に、ビーム毎の皮膚線量値、及び複数ビーム照射後の皮膚線量値を画面21(21b)に表示する点で異なる。図8に示した皮膚線量表示装置1の表示装置5の画面21bは、1回の照射で複数のビームを用いる場合に、ビーム選択部30と、ビーム選択部30で選択したビームに関して、ビーム毎の皮膚線量値を表示する線量表示部28、線量表示部29と選択した複数ビームの皮膚線量値を表示する線量表示部27を有する例である。以下に説明する。
【0031】
図8では、3つのビームを用いる場合である。ビーム選択部30にて、照射に用いるビーム1、ビーム2、ビーム3が選択可能であり、図8ではビーム1及びビーム2が選択されている。ビーム1及びビーム2が選択されたことにより、皮膚線量値を表示する表示部は3つ現れる。線量表示部28には、患者3Dモデル22にビーム1の皮膚線量値の等線量曲線23(23c)を表示した状態が表示されている。線量表示部29には、患者3Dモデル22にビーム2の皮膚線量値の等線量曲線23(23d)を表示した状態が表示されている。線量表示部27には、患者3Dモデル22にビーム1及びビーム2照射後の皮膚線量値の等線量曲線23(23c)を表示した状態が表示されている。
【0032】
実施の形態2の皮膚線量表示装置1は、選択した複数ビームの線量表示部27と、ビーム毎の線量表示部28、29にそれぞれ該当する皮膚線量値の等線量曲線を表示することで、ビーム毎の皮膚線量値、及び複数ビーム照射後の皮膚線量値について確認する事ができる。また、照射進捗に応じてビーム毎に照射前処置や照射後処置を行うといった柔軟な処置を可能とすることができる。
【0033】
なお、図8では、3つのビームを用いる場合に、ビーム1及びビーム2が選択されている例を示したが、ビーム3も選択した場合には、ビーム3の皮膚線量値の等線量曲線23を表示した状態が表示される線量表示部が追加される。線量表示部27には、患者3Dモデル22にビーム1、ビーム2及びビーム3照射後の皮膚線量値の等線量曲線23を表示した状態が表示される。また、1回の照射で複数のビームを用いる場合は、ビーム毎に対応処置を行ってもよい。ビーム毎に対応処置を行うことで、柔軟でより適切な処置を行うことができる。
【0034】
実施の形態3.
図9は、この発明の実施の形態3による表示装置の画面イメージ図である。実施の形態1とは、分割照射が行われる場合に、照射回毎の皮膚線量値を画面21(21c)に表示する点で異なる。図9に示した皮膚線量表示装置1の表示装置5の画面21cは、照射回選択部40を有し、線量表示部26(26b)には、患者3Dモデル22に照射回選択部40で選択された照射回の皮膚線量値の等線量曲線23(23e)が表示される。
【0035】
実施の形態3の皮膚線量表示装置1は、選択した照射回の皮膚線量値の等線量曲線23(23e)を患者3Dモデル22に重畳することにより、照射前処置や照射後処置の際に、薬剤量等の処置内容に関して、過去の皮膚線量値、及び今後の照射予定の皮膚線量値を参考にした判断を行うことができる。したがって、照射回毎に適切な処置を行うことができる。
【0036】
実施の形態4.
図10は、この発明の実施の形態4による表示装置の画面イメージ図である。実施の形態3とは、選択した照射回毎に照射前処置や照射後の対応処置における処置実績を表示及び保存する機能が追加され、皮膚線量表示装置1の表示装置5の画面21(21d)に、照射回毎に対応処置の処置実績を表示する処置実績表示部41と、照射後処置実績を入力し、処置実績表示部41に表示した内容を保存する保存ボタン42を有する点で異なる。
【0037】
医療スタッフは、照射回毎に照射前処置や照射後処置の対応処置における処置実績を図示しない入力装置から入力する。入力された内容は、処置実績表示部41に表示される。保存ボタン42を押すことにより、該当回の処置実績は、該当回の線量値データと関連付けされて、線量データベース12に保存される。
【0038】
実施の形態4の皮膚線量表示装置1は、選択した照射回毎の処置実績を表示及び保存することができる。選択した照射回毎の処置実績を表示することができるので、今回の照射における処置を行う際に、過去照射回の皮膚線量値と処置実績を確認できるため、薬剤量等の処置内容に関して過去の処置実績を参考にした判断を行うことができる。したがって、照射回毎に過去の処置実績を参考にした適切な処置を行うことができる。
【0039】
なお、入力装置により入力された情報の保存を指示する保存ボタンが表示装置5に表示される例で説明したが、保存ボタンは表示装置5に表示される場合に限らず、独立して設けても構わない。また、処置実績は、線量データベース12に保存する場合に限らず、他の記憶装置に保存しても構わない。
【0040】
実施の形態5.
図11は、この発明の実施の形態4による皮膚線量値の表示例を示す図である。実施の形態1乃至4とは、CT寝台35上の患者34に対して治療計画で算出した皮膚線量値を等線量曲線23(23f)として投射する点で異なる。実施の形態5の皮膚線量表示装置1は、プロジェクタ81を有する。
【0041】
医療スタッフは、CT寝台35上の患者34に対して治療計画で算出した皮膚線量値をプロジェクタ81により等線量曲線23(23f)として投射し、患者34に固有の固定具に対して、照射前処置や照射後処置の対応処置を行う範囲のマーキングやコメントを書き込む。
【0042】
実施の形態5の皮膚線量表示装置1は、ステップS003の患者34を撮影する際や、照射姿勢確認等の際に、患者34に固有の固定具に対して、対応処置を行う範囲のマーキングやコメントを書き込むことにより、実際の照射の際に表示装置5の表示内容の確認とともに、固定具のマーキングやコメントを確認することができる。実際の照射の際に表示装置5の表示内容の確認とともに、固定具のマーキングやコメントを確認することができるので、実施の形態1乃至4に比べて効率良く、且つ正確に照射前処置や照射後処置の対応処置を行うことができる。
【0043】
実施の形態6.
図12は、この発明の実施の形態6による患者3Dモデル及び表示例を示す図である。実施の形態1乃至4とは、患者3Dモデル22(22b)が、ステップS003の患者34を撮影する際に固定具に記載れた内容をテキスチャデータとして生成し、このテキスチャデータが貼られた患者3Dモデルである点で異なる。患者3Dモデル22(22b)にテキスチャデータ93が貼られている。皮膚線量表示装置1の表示装置5の画面26では、患者3Dモデル22(22b)に皮膚線量値の等線量曲線23(23g)が表示される。
【0044】
実施の形態6の皮膚線量表示装置1は、表示装置5の画面26に表示される患者3Dモデル22(22b)において、固定具に記載れた内容をテキスチャデータとして一体として表示できる。実施の形態6における患者3Dモデル22(22b)は、固定具に記載れた内容のテキスチャデータを伴っている。照射前処置や照射後処置の対応処置を行う際に、固定具に記載れた内容と患者3Dモデル22(22b)上に重畳表示された皮膚線量の等線量曲線23(23g)との位置関係を表示装置5の画面26にて確認できる。したがって、実施の形態1乃至4よりも、固定具に記載れた内容と患者3Dモデル22(22b)上に重畳表示された皮膚線量の等線量曲線23(23g)との位置関係を正確に確認する事ができる。固定具に記載れた内容と皮膚線量の等線量曲線23(23g)との位置関係を正確に確認できるので、より適切な照射前処置や照射後処置の対応処置を行うことができる。
【0045】
なお、実施の形態1乃至6の内容は、矛盾しない範囲で相互に適用することができる。また、表示装置5は治療室に設置された例で説明したが、治療室に設置する場合に限らず、治療室にて視認可能に設置された場合であっても構わない。
【符号の説明】
【0046】
1…皮膚線量表示装置、2…皮膚線量表示処理部、4…患者3Dモデル撮影部(3Dモデル生成部)、5…表示装置、22、22a、22b…患者3Dモデル、23、23a、23b、23c、23d、23e、23f、23g…等線量曲線(皮膚線量情報)、30…ビーム選択部、34…患者、40…照射回選択部、41…処置実績表示部、42…保存ボタン、81…プロジェクタ、93…テキスチャデータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療の治療計画にて算出された患者の皮膚線量情報を、治療室にて視認可能に設置された表示装置に表示する皮膚線量表示装置であって、
前記治療計画に用いるCT画像の座標系に関連付けされた患者3Dモデルを生成する患者3Dモデル生成部と、前記患者3Dモデルに前記皮膚線量情報を前記表示装置において重畳表示する皮膚線量表示処理部と、を備えた皮膚線量表示装置。
【請求項2】
前記患者3Dモデル生成部は、前記患者を光学カメラにより撮影した光学画像と前記治療計画に用いるCT画像の座標系とが関連付けされた前記患者3Dモデルを生成することを特徴とする請求項1記載の皮膚線量表示装置。
【請求項3】
前記患者3Dモデルは、前記患者の治療体位が反映されたモデルあることを特徴とする請求項1または2に記載の皮膚線量表示装置。
【請求項4】
前記患者3Dモデルは、当該患者3Dモデルの原点が前記CT画像のCT画像原点であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の皮膚線量表示装置。
【請求項5】
前記患者3Dモデルにおける光学画像は、前記光学カメラにより前記患者を複数の方向から撮影されたことを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の皮膚線量表示装置。
【請求項6】
前記皮膚線量表示処理部は、前記患者3Dモデルを三次元的に任意の方向に回転して表示することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の皮膚線量表示装置。
【請求項7】
前記皮膚線量表示処理部は、前記治療計画に複数ビームが存在する場合に、前記表示装置にビーム選択部を表示し、前記ビーム選択部により選択されたビームにおける前記皮膚線量情報を前記患者3Dモデルに重畳表示することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の皮膚線量表示装置。
【請求項8】
前記皮膚線量表示処理部は、前記ビーム選択部により複数のビームが選択された場合に、選択された複数のビームによる前記皮膚線量情報を前記患者3Dモデルに重畳表示することを特徴とする請求項7項記載の皮膚線量表示装置。
【請求項9】
前記皮膚線量表示処理部は、前記治療計画にて分割照射が計画された場合に、前記分割照射の照射回を選択する照射回選択部を前記表示装置に表示し、前記照射回選択部により選択された照射回における前記皮膚線量情報を前記患者3Dモデルに重畳表示することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の皮膚線量表示装置。
【請求項10】
入力装置により入力された情報の保存を指示する保存ボタンを有し、
前記皮膚線量表示処理部は、前記表示装置に前記放射線治療の処置実績表示部を表示し、前記入力装置により入力された対応処置の内容を前記処置実績表示部に表示し、前記保存ボタンが押された場合に、前記対応処置の内容を保存することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の皮膚線量表示装置。
【請求項11】
前記皮膚線量表示処理部は、前記治療計画にて分割照射が計画された場合に、前記照射回選択部により選択された照射回における前記対応処置の内容を前記処置実績表示部に表示することを特徴とする請求項10記載の皮膚線量表示装置。
【請求項12】
前記治療計画にて算出された前記患者の前記皮膚線量情報を前記患者に投射するプロジ
ェクタを備えた請求項1乃至11のいずれか1項に記載の皮膚線量表示装置。
【請求項13】
前記患者3Dモデル生成部は、前記光学画像を撮影する際に、前記患者を固定する固定具に記載された情報をテキスチャデータとして生成し、前記テキスチャデータを伴った前記患者3Dモデルを生成することを特徴とする請求項2乃至12のいずれか1項に記載の皮膚線量表示装置。
【請求項14】
前記皮膚線量情報は、前記治療計画にて算出された皮膚線量値の等線量曲線を含むことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の皮膚線量表示装置。
【請求項15】
放射線治療の治療計画にて算出された患者の皮膚線量情報を、治療室にて視認可能に設置された表示装置に表示する皮膚線量表示方法であって、
前記治療計画に用いるCT画像の座標系に関連付けされた患者3Dモデルを生成する手順と、前記患者3Dモデルに前記皮膚線量情報を前記表示装置において重畳表示する手順と、を含む皮膚線量表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−55510(P2012−55510A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201856(P2010−201856)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】