説明

皮膚老化の兆候の出現を予防または遅延させる活性薬剤としてのブラソカトレア・マーセラ・コス(BrassocattleyamarcellaKoss)ラン抽出物の使用

【課題】皮膚の内因性または外因性の老化の兆候の出現を予防または遅延させ、またはこれらの影響を遅延させるための水和剤および/または老化防止剤の提供。
【解決手段】ブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)ランの抽出物の使用。ランの抽出された部分は、ランの茎、葉、および茎と葉の混合物、また極性溶媒は、水、エタノールのようなC1−C4アルコール、エチレングリコール、グリセロール、ブチレングリコールおよびプロピレングリコールのようなグリコール、およびそれらの混合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、品種ブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)のラン抽出物の、化粧組成物におけるまたは化粧組成物の調製のための水和剤および/または老化防止剤としての使用を記載する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、人体の主要なバリヤーである。皮膚は、臓器を温度や湿度の変化およびUV放射線や汚染物質のような外部環境による損傷から保護する。皮膚は、ホメオスタシス、例えば身体温度の調節においても重要な役割を果たしている。しかしながら、過剰な化学的および物理的刺激(太陽、日光、UV、ストレスおよび栄養不良)は皮膚の正常な機能にとって有害であり、老化を引き起こす。この外因性の老化は、深い皺や張り、柔軟性および弾力性を失ってしまった皮膚の形成などの臨床上の変化を生じる。これらの変質は、本質的に上皮の弾性組織の過剰な変異やコラーゲン繊維の定量的および定性的変質のような組織病理学的変化によるものである。
【0003】
また、内因性老化、「正常な」または時間生物学的老化は、内因的要因が役割を演じる計画された老化の結果である。この内因性老化は、特に皮膚細胞であるケラチン生成細胞(keratinocytes)の再生を遅らせ、これは本質的に皮下脂肪細胞の減少のような臨床的変化の出現および細かいスジまたは皺の出現および弾性繊維の数および厚みの増加、弾性組織膜の垂直繊維の喪失および弾性組織細胞における大型の不規則な繊維芽細胞の存在のような組織病理学的変化によって翻訳される。
【0004】
本発明は、内因性または生理的老化、および外因性老化に適用される。
【0005】
化粧品に用いることができる新規な分子または活性成分の探索は、皮膚に若々しい外観を与え、皺を少なくし、皮膚を滑らかにし、皮膚の色合いを明るくするのに効率的な生成物を開発するのに必要である。結果として、研究室同士はますます精巧な活性成分を探索する競争を行っている。表皮の知識が一層豊富になりかつ新規な活性成分の出現により、老化防止剤はますます効率的になってきている。
【0006】
数種類の老化防止成分が、現在発売されている。
酸化防止剤(ビタミンA、C、E、微量元素、植物および藻類)はフリーラジカルと戦い、皮膚の表面を改善し、汚染によって引き起こされる損傷を修復する。更に詳細には、ビタミンAの活性形態であるレチノールは細かい皺を滑らかにし、細胞再生を刺激することによって皮膚の厚みを増加させる。
【0007】
柑橘類、ブドウおよびサトウキビに含まれるα-ヒドロキシ酸(AHA)は、死細胞を表皮から除去し、スジを水和して滑らかにし、皮膚の色合いの透明さを回復する剥離能を有する。
新規な処方は、レーザー治療および容貌の萎縮を和らげるためのボツリヌス毒素によって生じるボトックス様治療と同じ方法でコラーゲンおよびエラスチンの産生をも刺激し、組織再生を促進する。
【0008】
皮膚の老化は多くの組織病理学的変化を生じ、視覚的美しさや質を変化させ、これは水和の減少、表皮におけるケラチン生成細胞の分化の変化およびケラチン生成細胞の増殖の鈍化を引き起こすことがある。従って、表皮の構造を改善する新規な活性薬剤を見出すための興味深い方法は、ヒトケラチン生成細胞培養物に対するイン・ビトロでの効果を試験することである。
【0009】
特開2004−067549号公報には、皮膚老化を防止するための様々な組成物に配合されているラン抽出物の有益な効果が記載されている。様々な年齢の女性で観察されたこの効果は、カトレア種のランについて記載されている。
【0010】
850の属に分類される25,000種を含んでなるラン科(Orchidaceae)は、それらの抽出物の化粧特性について最も詳細に研究されている植物である。
【0011】
2つの天然属であるブラサボラ(Brassavola)属とカトレア(Cattleya)属を交配すると、「ブラソカトレア(Brassocattleya)」亜属の植物を生じる。それらの中で、ピンク・マーベル(Pink marvel(商標))」とも呼ばれるブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)は、そのはなの美しさと色について今日まで知られており、その装飾品質のために栽培されている。この属の特性の化粧目的での精確な評価は、全く研究されていない。
【発明の概要】
【0012】
本発明者らは、研究中に品種ブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)は、皮膚老化を生じる生物学的現象に対して効果的に作用する基本的に重要な活性を有することを示した。正常なヒトケラチン生成細胞培養物での評価によって、本発明者らは内因性および/または外因性の皮膚老化の兆候の影響または出現と対抗することができる活性薬剤としてのブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)抽出物の特性を明らかにした。
【0013】
驚くべきことに、ブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)ランの全植物または部分を含む抽出物は、ケラチン生成細胞の増殖および表皮のケラチン生成細胞の分化を調節する。ブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)の全体または一部を含む化粧組成物により、一層きめ細かで一層整然とした皮膚が得られ、欠陥やでこぼこの斑点は少なくなり、光散乱および反射特性が良好になり、皮膚の水和並びにしまりが改善される。
【発明の具体的説明】
【0014】
本発明によって主張される第一の主題は、極性溶媒または極性溶媒の混合物によるブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)の少なくとも一部の抽出によって得た上記品種のラン抽出物の使用であって、活性水和剤、および/または皮膚の内因的および/または外因的老化の兆候の出現を予防または遅延させるためのまたはこれらの影響を遅らせるための、特に表皮を修復し、皮膚を引きしめ、皺の減少または再吸収を促進するようにデザインされた、薬剤としての、化粧組成物におけるまたは化粧組成物の調製のための使用である。本発明による植物抽出物が得られる植物材料は、全植物または植物の一部を含んでなることがあり、特に植物の葉、花、茎、根、果実、またはこれらの様々な部分から形成される混合物からなっていることがある。
【0015】
優先的には、ランの部分はランの茎、葉、および茎と葉の混合物から選択される。更に優先的には、本発明のランの部分はブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)の茎と葉の混合物である。
【0016】
植物または選択された植物の部分葉、乾燥させおよび/または粉砕してもよい。
【0017】
本発明の好ましい態様によれば、植物材料は乾燥して粉砕した状態である。
【0018】
植物抽出物は、当業者に知られている様々な抽出方法によって調製することができる。
【0019】
好都合には、抽出は選択した植物材料を極性溶媒または極性溶媒の混合物と接触させることによって好ましく行われる。本発明によれば、「極性溶媒」という表現は、この溶媒が4以上の極性指数値を有することを意味する。極性指数(polarity index)は、分子の極性の程度を示す熱力学的値(溶解度および状態の変化)に基づいて計算される量である。溶媒の極性指数については、L.R. SNYDERの論文「通常液体の溶媒特性の分類」Journal of Chromatography, 92 (1974), 223-230を参照することができ、上記文献は本願の参照文献として包含される。
【0020】
極性溶媒は、好都合には水、エタノールのようなC−Cアルコール、エチレングリコール、グリセロール、ブチレングリコールおよびプロピレングリコールのようなグリコール、およびそれらの混合物から選択される。
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、抽出は、水−アルコール混合物、特に水とエタノールの混合物、好ましくは50−50 v/v(またはw/w)の比の水とエタノールの混合物を用いることによって行われる。
【0022】
本発明のもう一つの変化態様によれば、抽出は、半結晶状の極性溶媒で行う方法によって行うこともでき、上記溶媒は好都合には半結晶状の水である。
【0023】
抽出は、場合によっては抽出物を処理して、部分的にまたは完全に脱色しまたは精製することからなる追加工程をさらに含むことがある。
【0024】
抽出は、抽出溶媒を部分的にまたは完全に除去する工程が追加されることがある。
【0025】
抽出溶媒を部分的に除去する場合には、抽出物は、通常は有意な量の有機溶媒を含まない水性濃度が得られるまで濃縮される。これらの溶媒を完全に除去する場合には、乾燥残渣が得られる。
【0026】
あるいは、抽出物工程からの生成物を凍結乾燥または噴霧して、粉末形態を有するようにすることができる。
【0027】
粉末は、本発明によれば化粧組成物のような組成物にそのまま用いることができ、または溶媒または溶媒混合物に分散させることができる。
【0028】
概して、抽出物工程からの生成物は、溶媒または溶媒の混合物に溶解または分散させ、本発明の組成物における活性薬剤として用いることができる。
【0029】
抽出物を溶解または分散させる溶媒または溶媒の混合物は、抽出に用いたものと同一であってもまたは異なるものであってもよい。
【0030】
本発明の抽出物は、ナイロン粉末、多孔性または非多孔性粉末、および雲母または任意の層状無機物質から好都合に選択される支持体上に吸収させることもできる。
【0031】
この場合には、用いられる抽出物は優先的にはブチレングリコール/水の抽出物または水性抽出物である。
【0032】
ブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)ラン抽出物の老化防止活性は、ケラチン生成細胞に対して観察された。ブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)ラン抽出物を含んでなる組成物を局所に塗布すると、ケラチン生成細胞の増殖および分化現象を両方とも調節することによって表皮構造が改善され、これにより、一層きめ細かで一層整然とした皮膚が得られ、欠陥は少なくなり、従って光散乱および反射特性が良好になり、乾燥が少なく一層良好に水和したしまりの良い皮膚が得られる。
【0033】
本発明の範囲内で用いられる組成物は化粧組成物であり、活性薬剤として上記で定義したような品種ブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)の抽出物、および化粧上許容可能な賦形剤のような少なくとも1種類の賦形剤を含んでなる。この賦形剤は、ポリマー、界面活性剤、レオロジー剤、芳香剤、電解質、pH調節剤、酸化防止剤、防腐剤、染料、真珠母貝、色素、およびそれらの混合物から好都合に選択される。
【0034】
上記組成物は、求める効果を得るのに有効な量の本発明によるラン抽出物を含んでなる。
【0035】
本発明によるラン抽出物は、組成物の0.001〜5重量%、優先的には全組成物の0.1〜1重量%の含量に準じて組成物に活性薬剤として好都合に含まれる。
【0036】
本発明による組成物は、好都合には局所塗布用にデザインされている。
【0037】
本発明による組成物は、例えば血清、ローション、スプレー、ムース、溶液、粉末、ポマード、ローション、エマルション、ティンテド・クリームまたはヒドロゲル、好ましくはパックであってもよく、またはスティックまたはパッチの形態であっても良い。
【0038】
本発明によるラン抽出物を含んでなる組成物は、少なくとも1種類の他の化粧上許容可能な活性薬剤を好都合に含んでなる。
【0039】
本発明によるラン抽出物を含んでなる組成物は、皮膚浄化作用を有する物質、スリミング効果を有する物質、水和作用を有する物質、鎮静、緩和またはリラックス効果を有する物質、皮膚の微小循環を刺激して、特に顔の皮膚の色合いを明るくする物質、脂ぎった皮膚を治療する目的で皮脂を調節する物質、皮膚を浄化または清潔にする物質、ラジカル防止作用を有する物質、皮膚の構造的保持を促進しおよび/または真皮および表皮の表面層の細胞外マトリックスの分解を制限しおよび/または皮膚の保護、矯正的または再構築効果を得る目的で求めている活性によって皮膚老化の影響を和らげまたは遅延させる目的でデザインした物質、抗炎症作用を有する物質から選択することができる。
【0040】
特に好ましくは、本発明のラン抽出物は、下記から選択される活性薬剤と組み合わされる:
・ビタミンA、レチノールまたはレチノールエステルのような細胞再生を促進する精製分子または抽出物、フルーツ酸、リンゴ酸、グリコール酸、クエン酸、サリチル酸またはそのエステル、ゲンチジン酸またはそのエステル、特にゲンチジン酸トコフェロールのようなα−またはβ−ヒドロキシ酸、
・皮膚のしまりを刺激する分子または抽出物、ペプチドコラーゲン刺激物質、デ・センテラ・アジアチカ(de Centella asiatica)単独または組合せでの抽出物、マデカソシド(madecassoside)、オート麦抽出物、大豆ペプチド、ポテンティラ・エレクタ(Potentilla erecta)抽出物、メナモミ(Siegesbeckia orientalis)抽出物、ギンセノシドまたはノトギンセノシド、特にRb1、
・エクジステロイド、エクジステロン、ターケステロンまたはカルシウム誘導体、ビタミンD前駆体などの表皮の分化を調節する分子または抽出物、
・ルスクス・アスキュレアトゥス(Ruscus asculeatus)抽出物または大豆ペプチドのようなメタロプロテアーゼ阻害剤、特にMMP1、2および9阻害剤、またはクエルセチン、ケンプフェロール、アピゲニン、ウォゴニン、またはそれらを含む植物抽出物のようなフラボノイド、
・アスペルギルス・フミガトゥス(Aspergillus fumigatus)、モモルジカ・チャランチア(Momordica charantia)、ククルビタ・マキシマ(Cucurbita maxima)の植物抽出物のようなエラスターゼ阻害剤、
・コハク抽出物のようなデルマトポンチン合成を刺激することができる物質、
・ウイッチヘーゼル抽出物のような毛穴を締める収斂性植物からの分子または抽出物、
・ベンゾフェノン−4、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルメトキシシンナメート、オクトクリレン、エチルヘキシルフェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ホモサレート単独または酸化チタンとの組合せのようなUVAおよびUVB放射線から保護する日焼け止め剤、
・コウジ酸、クシェノールB、カンゾウ根抽出物、アルブチン、パンテテインスルホン酸カルシウム、ボルジン、ジアセチルボルジン、ビタミンC誘導体、ユリ抽出物、特に球根からのリリウム・カンディドゥム(Lilium candidum)、または大豆抽出物のような色素沈着に効果を有すると認められている植物分子または抽出物、
・抗ラジカルまたは抗炎症性分子、カワラヨモギの抽出物、ワレモコウの抽出物、レスベラトロールおよびその誘導体、ウコンまたはクルクミンまたはテトラヒドロクルクミン、ブドウ種子ポリフェノール、ビタミンEおよびその誘導体、特にそのリン酸誘導体、エルゴチオネインまたはその誘導体、イデベノン、
・表皮および皮膚レベルでのヒアルロン酸合成を促進する分子または抽出物、または十分に水和してしまった皮膚を生じるグリコサミノグリカン、エリオボトリア(Eriobotrya)、特にビワ(Eriobotrya japonica)の抽出物、またはヒアルロン酸の小断片、
・天然グリコールまたはポリオール、天然または合成セラミド、湧水またはミネラルウォーターのような表面水和分子。
【0041】
好都合には、本発明によれば、化粧組成物は、本発明によるラン抽出物の他にボルジンまたはその化粧上許容可能な誘導体の1つ、特にジアセチルボルジン、D−キシロース、エリオボトリア(Eriobotrya)抽出物、特にビワ抽出物、またはヒアルロン酸断片、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種類の他の活性薬剤を含んでなる。
【0042】
本発明の特に好ましい態様によれば、組成物はまた、本発明によるラン抽出物の他にボルジンまたはその化粧上許容可能な誘導体の1つ、特にジアセチルボルジンを含んでなる。
【0043】
本発明のもう一つの好ましい態様によれば、組成物は、本発明によるラン抽出物の他に、D−キシロースを含んでなる。
【0044】
本発明のもう一つの好ましい態様によれば、組成物は、本発明によるラン抽出物の他に、エリオボトリア(Eriobotrya)抽出物、特にビワ抽出物、ヒアルロン酸またはヒアルロン酸断片を含んでなる。
【0045】
本発明のもう一つの好ましい態様によれば、組成物は、本発明によるラン抽出物の他に、皮膚のしまりを刺激する分子または抽出物、特にコラーゲン刺激剤ペプチド、ツボクサ抽出物、単独または組合せ、マデカス酸、アシアト酸、マデカソシド、オート麦抽出物、大豆ペプチド、ポテンティラ・エレクタ抽出物、ノトジンセノシドおよび特にRb1、またはそれらの混合物を含んでなる。
【0046】
本発明のもう一つの好ましい態様によれば、組成物は、本発明によるラン抽出物の他に、エクジステロイド、エクジステロン、ターケステロン、カルシウム誘導体、またはそれらの混合物のような表皮の分化を調節する分子を含んでなる。
【0047】
本発明のもう一つの好ましい態様によれば、組成物は、本発明によるラン抽出物の他に、メタロプロテアーゼ阻害剤、特にMMP1、2および9阻害剤、例えばルスクス・アスキュレアトゥス(Ruscus asculeatus)抽出物または大豆ペプチド、またはアピゲニン、ウォゴニン、またはそれらを含む植物抽出物のようなフラボノイド、またはそれらの混合物を含んでなる。
【0048】
本発明は、皮膚を水和し、および/または皮膚の内因性および/または外因性の老化の影響の出現を予防または遅延させ、またはこれらの影響を遅らせるための化粧上のケアの方法であって、典型的には上記で定義したようなブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)の少なくとも一部を極性溶媒または極性溶媒の混合物によって抽出することによって得た上記植物品種のラン抽出物を活性化薬剤として含む化粧組成物を身体または顔の皮膚の少なくとも一部に塗布することを含んでなる、方法にも関する。
【実施例】
【0049】
下記の実施例は、本発明を例示するものであり、その範囲を制限するものではない。
【0050】
実施例1: ブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss) ランから作成した抽出物の例
【0051】
抽出物1:
50%ブチレングリコール/水で茎および葉からの抽出物を24時間の離解によって作成した後、濾過し、18時間冷却して濾過し、濾液を集めて試験する。例として、50gの新鮮な茎および葉を離解装置に入れ、ブチレングリコール/水の50/50混合物中で周囲温度にて48時間緩やかに攪拌した後、混合物を濾過し、濾液を回収して4℃に24時間保持する。濾液を濾過した後、回収して、その老化防止活性を試験する。
【0052】
抽出物2:
植物の空中部分(茎および葉)の抽出物を、優先的には70℃のエタノール/水(70/30 v/v)からなる水−アルコール混合物によって周囲温度にて抽出する。濾過後に得た溶液を、ロータリーエバポレーター中、減圧下で初期容積の20%まで濃縮した後、再度濾過する。得られる溶液は、実施例3に準じる化粧組成物のような本発明による組成物における化粧品に使用することができる抽出物である。
【0053】
抽出物3:
葉および茎の抽出物を水/エタノール混合物(95/5 v/v)によって20分間熱時抽出した後、放冷する。次に、溶液を濾過して、凍結乾燥する。得られる凍結乾燥生成物をブチレングリコールに吸収させ、1%乾燥重量で滴定する。この抽出物は、実施例3に準じる化粧組成物のような本発明による組成物における化粧品に使用することができる。
【0054】
実施例2: 正常なヒトケラチン生成細胞上でのブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)を含む抽出物の効果の評価
【0055】
成形外科手術から得られる正常なヒトの皮膚の試料からのケラチン生成細胞を摘出する。これらの細胞を、下垂体抽出物およびEGFを補足したK−SFM培地で培養する。
【0056】
細胞を、異なる条件下で24時間処理する。
実施例1の抽出物1、1%ブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)(v/v)、
1%(ブチレングリコール)溶媒=コントロール。
【0057】
上記の非細胞傷害性条件下で24時間インキュベーションした後、培地を除去し、次いで、全RNAを抽出する。これを行うため、細胞を予備洗浄なしに氷のベッド上に置く。ドラフト(chemical hood)にて、これらの細胞を機械的に分離し、RNAplus試薬(gbiogene)1ml中で溶解した後、全部をエッペンドルフ試験管に回収する。次に、抽出した全RNAをバイオアナライザー(Agilent 2100)およびRNA 6000ナノラブチップ(nanolabchip)キット(Agilent)によって分析している。最後に、Applied Biosystem High Capacity cDNAアーカイブキットによって、全RNAについて逆転写工程を行い、相補的DNAを得る。
【0058】
目的とする様々な遺伝子の変化に対する様々な処理の影響を、下記のプロトコルに従ってTaqman Low Density Arrayテクノロジー(Applied Science製TLDA)によって評価した:
それぞれのcDNA 50μlをUniversal Master Mix緩衝液50μlと混合し、得られる100μlを「マイクロ・フルイディック(micro-fluidic)DNAチップ」上に沈澱させる。チップを1200gにて2回遠心分離した後、cDNA沈着の線を切出し、TLDA HT 7900装置(Applied Biosystem)に導入した。次に、チップに装填されて存在する試料に、一連のPCR反応を行う。
【0059】
この手法によって得られる結果により、検討を行った細胞型の特異的遺伝子の発現プロフィールにおける変化を定量的に示すことができる(更に詳細については、L.V. Abruzzo et al., Biotechnique, 2005, 38, 785-792を参照されたい)。
【0060】
観察された刺激または阻害の割合を、下表にまとめる。
【0061】
【表1】

【0062】
ブラソカトレア(Brassocattleya)抽出物は、
− 皮膚水和に関与するタンパク質であるAQP3、すなわちアクアポリン-3をコードする遺伝子を刺激し(「ヒトの皮膚におけるアクアポリンの発現および機能: アクアポリン-3はグリセロール輸送体であるか?」, Boury-Jamot M et al., BBA 2006, 1758(8):1034-42参照)、
− 細胞同士の細胞凝集に関与するE−カドヘリンをコードする遺伝子を刺激し(「天然の表皮デスモソームにおけるカドヘリンの分子構造」, Al-Amoudi A et al., Nature 2007, 450(7171): 832-37参照)、
− 正常な細胞増殖のマーカーであるKi67をコードする遺伝子を刺激し(「増殖性の前腫瘍性および腫瘍性皮膚におけるKi67とインボルクリン発現との関係」,Caldwell CJ et al., Clin Exp Dermatol. 1997 Jan; 22(1):11-6)、
− 表皮過剰増殖の遺伝子であるK16遺伝子を抑制し(「単純な乾癬皮膚におけるK16の発現: 前臨床乾癬の可能なマーカー」, Bhawan J et al, J Cutan Pathol 2004 Aug; 31(7):471-6参照)、
− 表皮分化に関与しかつ乾癬のような疾患において過剰発現するカルシウム結合タンパク質であるカルグラニュリンAをコードする遺伝子を刺激する(「カルシウム結合S100タンパク質A8およびA9の血清濃度の上昇は、乾癬における疾患活性とケラチン生成細胞の異常分化を反映している」, Benoit S et al, Br J Dermatol. 2006 Jul; 155(1):62-6参照)。
【0063】
ブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)抽出物によって調節された総ての標的は、皮膚老化および年齢による容姿の顕著な変化を生じる生物学的現象と効果的に対抗する上で最も重要である。ケラチン生成細胞で観察されたブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)を含む組成物の活性は、ケラチン生成細胞の増殖および分化現象の両方を調節することによって表皮構造を改善し、これにより欠陥が少なく、一層きめ細かで一層整っており、従って光線を一層良好に散乱し反射する皮膚が得られる。
【0064】
実施例3: ブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)ラン抽出物を含む老化防止処方物
【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性溶媒または極性溶媒の混合物の抽出によって得られた品種ブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)のラン抽出物の使用であって、化粧組成物における、または化粧組成物の調製のための、水和剤、および/または皮膚の内因性および/または外因性の老化の兆候の出現を予防または遅延させるためのまたはこれらの影響を遅らせるための、特に表皮を再構成し、皮膚を引き締めおよび/または皺の希薄化または再吸収を促進するようにデザインされた薬剤としての、使用。
【請求項2】
ランの抽出された部分が、ランの茎、葉、および茎と葉の混合物から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
極性溶媒が、水、エタノールのようなC−Cアルコール、エチレングリコール、グリセロール、ブチレングリコールおよびプロピレングリコールのようなグリコール、およびそれらの混合物から選択される、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
極性溶媒が、水−アルコール混合物、好ましくは水−エタノール混合物、好ましくは50−50(v/v)の比の水−エタノール混合物である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
抽出物が、化粧組成物の0.0001〜5重量%、優先的には組成物の0.1〜1重量%の含量にて組成物に含まれている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
化粧組成物が、ボルジン(boldine)またはその化粧上許容可能な誘導体の1つ、特にジアセチルボルジン、またはD−キシロース、エリオボトリア(Eriobotrya)抽出物、ヒアルロン酸断片、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1種類の他の活性薬剤をも含んでなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
皮膚を水和し、および/または、皮膚の内因性および/または外因性の老化の影響の出現を予防または遅延させ、またはこれらの影響を遅らせるための、化粧上のケアの方法であって、
請求項1〜6のいずれか一項に記載のような品種ブラソカトレア・マーセラ・コス(Brassocattleya marcella Koss)のラン抽出物を活性化薬剤として含む化粧組成物を、身体または顔の皮膚の少なくとも一部に塗布することを含んでなる、方法。

【公開番号】特開2009−221201(P2009−221201A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−58436(P2009−58436)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(508066212)
【氏名又は名称原語表記】L V M H RECHERCHE
【Fターム(参考)】