説明

皮膚老化の検査方法

【課題】
ヒトにおける皮膚老化、特に光老化(紫外線暴露)に対応する皮膚老化マーカーとなる遺伝子を利用した皮膚の老化を検査する方法。
【解決手段】
皮膚老化に伴って発現が増加するGeneBank Accession Numberから特定される複数の遺伝子及び皮膚老化に伴って発現が減少する、同様に同定される特定の複数遺伝子の中の25のヒトの皮膚老化マーカー遺伝子の内1あるいは2種以上を用いた皮膚老化の検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子発現の増減に基づく皮膚老化の検査方法に関する。特に、紫外線照射などに起因する皮膚の光老化や皮膚の変調を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、紫外線、太陽光、煙暴露、代謝異常、乾燥、加齢、体内時計周期異常、ハウスダストや環境ホルモンなどの各種ストレス負荷により生体恒常性(ホメオスタシス)が変動し、しわやしみ、ニキビ、肌荒れ、乾癬やアトピー性といった皮膚状態、すなわち表現型が悪化する。表現型とは、遺伝子型と環境との相互作用によって生じる、生物の、目に見える特性を意味する。
通常の哺乳類の細胞は、そのゲノムに含まれる40,000余りの遺伝子のうち約20,000〜30,000を発現している。多くの遺伝子は普遍的に発現する。また、細胞を分化させたり、細胞機能を変化させる非普遍的に発現する遺伝子が存在する。
しわやしみ、ニキビ、肌荒れ、乾癬やアトピー性といった皮膚状態、すなわち表現型が異常な状態では、組織及び細胞内の遺伝子発現のパターンは、正常な皮膚状態で見られる発現パターンと比較して変化している可能性がある。
【0003】
従来より、これらの表現型の変化は、外観の評価に始まり、皮膚の水分量、脂質量及びその組成、皮膚pHの測定といった非侵襲的手法により評価されている。また、皮膚をバイオプシーした生検を用いて特定の遺伝子についての発現をRT - PCR、real time RT-PCRもしくはNorthern blottngで評価したり、複数の遺伝子発現をSAGE(Serial Analysis of Gene Expression)を用いて評価している。タンパク質発現レベルでは抗体が存在する種類に限定されるが、コラーゲンやMMPsの他、細胞の分化や炎症に関わると考えられているラミニンやインテグリン、インターロイキンなどの発現がELISA(Enzyme linked immuno solvent assay)やWestern blotting、もしくは免疫組織染色の手法で解析され、皮膚の状態を評価するバイオマーカーが見出されている。
皮膚(光)老化に伴う、遺伝子の変化に関しては、日光性弾力線維症においてフィブリリンの定常状態のmRNAレベルの変化が実証されている(Bernstein他、1994)。また、真皮と基底膜を仲介して接している表皮組織中に存在するケラチノサイトは、UVAおよび/またはUVB波照射に応答して、線維芽細胞合成活性を刺激することができる多くのメディエータを分泌し、それらのうちのいくつか、例えばTGF−β、IL−1β、およびIL−10は、エラスチン遺伝子のプロモーターを活性化し、エラスチンの蓄積を増すことが示されている(Kahari他、1992;Mauviel他、1993;Reitamo他、1994)。
近年、同一のサンプルについて、網羅的に遺伝子発現を捉えることが可能なマイクロアレイを用いた研究がなされている。マイクロアレイは、数千個から数万個までの個々の遺伝子に対応した、オリゴヌクレオチド配列を含む固相系である。マイクロアレイを利用して、組織または細胞培養物の抽出物を試験し、治療、傷害、年齢、性別、民族、薬物、食物、および化粧品に応答して、どの遺伝子がオンまたはオフであるか、そして発現の変動度合いを決定することができる。遺伝子発現の変動は、遺伝子産物であるタンパク質の発現及びタンパク質の翻訳後修飾に先立って生じており、生体の初期応答を解析する上で極めて重要である。
【0004】
紫外線B波を表皮ケラチノサイトへ照射することにより、heat shock protein(HSP)-27の遺伝子発現が上昇し、一方、ケラチン6やケラチン17の遺伝子発現が低下することが見出されている(非特許文献1)。しかしながら、非特許文献1の試験方法であるcDNAアレイは数の多いプローブクローンをスポッティング用に準備しなければならず、その発現解析対象となるクローンの選択によっては変動している遺伝子群を測定できていない可能性が多分に起こり得る。
また、4MEDの紫外線をヒト臀部皮膚ケラトームに照射し、遺伝子発現を解析した結果、発現が増加する18種類の遺伝子マーカー及び発現が減少する17種類の遺伝子マーカーが見出された(特許文献1:特表2005−520483号公報)。並びに、(特許文献2:特表2004−526410号公報)においても細胞に紫外線を暴露したときに変化する遺伝子マーカーが見出されている。人老化マーカータンパク質(ヒトSMP)を認識するモノクロナール抗体が特許文献3(特開平8−319298号公報)、新規な人の老化又は人のストレスのマーカーを検出するための方法及び検出試薬として、Asp151がβD体であるαAクリスタリンに対する抗体を用いることが特許文献4(特開2002−107363号公報)に開示されている。
しかしながら、これらは光老化を受けた状態での遺伝子発現の変化を解析しており、表現型が変化していない段階で、表現型の変化を予測できるかどうかは不明である。
【0005】
【特許文献1】特表2005−520483号公報
【特許文献2】特表2004−526410号公報
【特許文献3】特開平8−319298号公報
【特許文献4】特開2002−107363号公報
【非特許文献1】Bernd Becker,Thomas Vogt,Michael Landthaler,and Wilhelm Stolz 著 「Detection of Differentially Regulated Genes in Keratinocytes by cDNA Array Hybridization:Hsp27 and Other Novel Players in Response to Artficial Ultraviolet Radiation」 THE JOURNAL OF INVESTGATIVE DERMATOLOGY VOL.116 NO.6 JUNE 2001,p.983-988
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、皮膚老化マーカーとなる遺伝子を利用した皮膚の老化を検査する方法を提供することである。特に、皮膚の光老化に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1) 以下に示す25のヒト遺伝子の内1あるいは2種以上を指標とする皮膚老化の検査方法。
(A1)GenBank Accession No. NM_004376、(A2)GenBank Accession No. NM_024529、
(A3)GenBank Accession No. NM_012325、(A4)GenBank Accession No. NM_006901、
(A5)GenBank Accession No. NM_004010、(A6)GenBank Accession No. BC004957、
(A7)GenBank Accession No. NM_012175、(A8)GenBank Accession No. NM_001239、
(A9)GenBank Accession No. NM_024624、(A10)GenBank Accession No. NM_004566、

(B1)GenBank Accession No. NM_001904、(B2)GenBank Accession No.NM_001013392、
(B3)GenBank Accession No. NM_005147、(B4)GenBank Accession No. NM_016181、
(B5)GenBank Accession No. NM_014911、(B6)GenBank Accession No. NM_002092、
(B7)GenBank Accession No. NM_000165、(B8)GenBank Accession No. NM_006301、
(B9)GenBank Accession No. NM_000175、(B10)GenBank Accession No. NM_005587、
(B11)GenBank Accession No. NM_153000、(B12)GenBank Accession No. AA862400、
(B13)GenBank Accession No. AB030655、(B14)GenBank Accession No. BC022967、
(B15)GenBank Accession No. NM_006006。
(2) 皮膚老化が光老化であることを特徴とする(1)に記載された皮膚老化の検査方法。
(3)皮膚老化過程において遺伝子発現が上昇し続ける以下に示す遺伝子(A1)〜(A10)又は皮膚老化過程において遺伝子発現が下降し続ける以下に示す遺伝子(B1)〜(B15)の25の遺伝子の内1あるいは2種以上について、紫外線に暴露された皮膚と、(i)紫外線に暴露されていない対照または(ii)紫外線への暴露が遮蔽もしくは減弱されている対照とにおける遺伝子発現を比較して、紫外線に暴露された皮膚の変調を判定する方法。
(A1)GenBank Accession No. NM_004376、(A2)GenBank Accession No. NM_024529、
(A3)GenBank Accession No. NM_012325、(A4)GenBank Accession No. NM_006901、
(A5)GenBank Accession No. NM_004010、(A6)GenBank Accession No. BC004957、
(A7)GenBank Accession No. NM_012175、(A8)GenBank Accession No. NM_001239、
(A9)GenBank Accession No. NM_024624、(A10)GenBank Accession No. NM_004566、

(B1)GenBank Accession No. NM_001904、(B2)GenBank Accession No.NM_001013392、
(B3)GenBank Accession No. NM_005147、(B4)GenBank Accession No. NM_016181、
(B5)GenBank Accession No. NM_014911、(B6)GenBank Accession No. NM_002092、
(B7)GenBank Accession No. NM_000165、(B8)GenBank Accession No. NM_006301、
(B9)GenBank Accession No. NM_000175、(B10)GenBank Accession No. NM_005587、
(B11)GenBank Accession No. NM_153000、(B12)GenBank Accession No. AA862400、
(B13)GenBank Accession No. AB030655、(B14)GenBank Accession No. BC022967、
(B15)GenBank Accession No. NM_006006。
(4) 皮膚老化過程が光老化過程である(3)に記載された皮膚の変調を判定する方法。
(5)皮膚が紫外線に曝される環境において、遺伝子発現が上昇し続ける以下に示す遺伝子(A1)〜(A10)又は遺伝子発現が下降し続ける以下に示す遺伝子(B1)〜(B15)の25の遺伝子の内1あるいは2種以上について、紫外線に暴露された皮膚と、(i)紫外線に暴露されていない対照または(ii)紫外線への暴露が遮蔽もしくは減弱されている対照とにおける、遺伝子発現を比較して、紫外線に暴露された皮膚の変調を判定する方法。
(A1)GenBank Accession No. NM_004376、(A2)GenBank Accession No. NM_024529、
(A3)GenBank Accession No. NM_012325、(A4)GenBank Accession No. NM_006901、
(A5)GenBank Accession No. NM_004010、(A6)GenBank Accession No. BC004957、
(A7)GenBank Accession No. NM_012175、(A8)GenBank Accession No. NM_001239、
(A9)GenBank Accession No. NM_024624、(A10)GenBank Accession No. NM_004566、

(B1)GenBank Accession No. NM_001904、(B2)GenBank Accession No.NM_001013392、
(B3)GenBank Accession No. NM_005147、(B4)GenBank Accession No. NM_016181、
(B5)GenBank Accession No. NM_014911、(B6)GenBank Accession No. NM_002092、
(B7)GenBank Accession No. NM_000165、(B8)GenBank Accession No. NM_006301、
(B9)GenBank Accession No. NM_000175、(B10)GenBank Accession No. NM_005587、
(B11)GenBank Accession No. NM_153000、(B12)GenBank Accession No. AA862400、
(B13)GenBank Accession No. AB030655、(B14)GenBank Accession No. BC022967、
(B15)GenBank Accession No. NM_006006。
(6)以下に示す(A1)〜(A10)及び(B1)〜(B15)の25のマーカー遺伝子の少なくとも1あるいは2以上の発現を同時に評価する皮膚老化マーカー遺伝子発現測定キット、又は、紫外線被爆による皮膚変調測定用キット。
(A1)GenBank Accession No. NM_004376、(A2)GenBank Accession No. NM_024529、
(A3)GenBank Accession No. NM_012325、(A4)GenBank Accession No. NM_006901、
(A5)GenBank Accession No. NM_004010、(A6)GenBank Accession No. BC004957、
(A7)GenBank Accession No. NM_012175、(A8)GenBank Accession No. NM_001239、
(A9)GenBank Accession No. NM_024624、(A10)GenBank Accession No. NM_004566、

(B1)GenBank Accession No. NM_001904、(B2)GenBank Accession No.NM_001013392、
(B3)GenBank Accession No. NM_005147、(B4)GenBank Accession No. NM_016181、
(B5)GenBank Accession No. NM_014911、(B6)GenBank Accession No. NM_002092、
(B7)GenBank Accession No. NM_000165、(B8)GenBank Accession No. NM_006301、
(B9)GenBank Accession No. NM_000175、(B10)GenBank Accession No. NM_005587、
(B11)GenBank Accession No. NM_153000、(B12)GenBank Accession No. AA862400、
(B13)GenBank Accession No. AB030655、(B14)GenBank Accession No. BC022967、
(B15)GenBank Accession No. NM_006006。
(7)アッセイがスポット型cDNAマイクロアレイであることを特徴とする(6)に記載された皮膚老化マーカー遺伝子発現測定キット。
(8) 皮膚又は皮膚代用品に対して試験化合物を塗布あるいは投与した後に、紫外線に暴露するものであって、
皮膚又は皮膚代用品における紫外線暴露の前と後の以下に示す(A1)〜(A10)及び(B1)〜(B15)の25個のヒト遺伝子のうち1又は2以上を比較して、細胞の紫外線暴露に対する応答を調節する化合物を検出するスクリーニング方法。
(A1)GenBank Accession No. NM_004376、(A2)GenBank Accession No. NM_024529、
(A3)GenBank Accession No. NM_012325、(A4)GenBank Accession No. NM_006901、
(A5)GenBank Accession No. NM_004010、(A6)GenBank Accession No. BC004957、
(A7)GenBank Accession No. NM_012175、(A8)GenBank Accession No. NM_001239、
(A9)GenBank Accession No. NM_024624、(A10)GenBank Accession No. NM_004566、

(B1)GenBank Accession No. NM_001904、(B2)GenBank Accession No.NM_001013392、
(B3)GenBank Accession No. NM_005147、(B4)GenBank Accession No. NM_016181、
(B5)GenBank Accession No. NM_014911、(B6)GenBank Accession No. NM_002092、
(B7)GenBank Accession No. NM_000165、(B8)GenBank Accession No. NM_006301、
(B9)GenBank Accession No. NM_000175、(B10)GenBank Accession No. NM_005587、
(B11)GenBank Accession No. NM_153000、(B12)GenBank Accession No. AA862400、
(B13)GenBank Accession No. AB030655、(B14)GenBank Accession No. BC022967、
(B15)GenBank Accession No. NM_006006。
(9) 皮膚又は皮膚代用品に対して試験化合物を塗布あるいは投与した後に、紫外線に暴露するものであって、
皮膚又は皮膚代用品における紫外線暴露の前と後の以下に示す(A1)〜(A11)及び(B1)〜(B18)の29個のマウスの遺伝子のうち1又は2以上を比較して、細胞の紫外線暴露に対する応答を調節する化合物を検出するスクリーニング方法。
(A1)GenBank Accession No.BC021498、(A2)GenBank Accession No. BB622571、
(A3)GenBank Accession No. BB464192、(A4)GenBank Accession No.BB524436、
(A5)GenBank Accession No.NM_007868、(A6)GenBank Accession No.BC019834、
(A7)GenBank Accession No. AV024918、(A8)GenBank Accession No. NM_023243、
(A9)GenBank Accession No.AU022584、(A10)GenBank Accession No.NM_133232、
(A11)GenBank Accession No.BG070464、
(B1)GenBank Accession No. NM_007614、(B2)GenBank Accession No.BE197381、
(B3)GenBank Accession No. AK007852、(B4)GenBank Accession No.BB794642、
(B5)GenBank Accession No. BG067888、(B6)GenBank Accession No.BB223437、
(B7)GenBank Accession No.AV330726、(B8)GenBank Accession No.BB370469、
(B9)GenBank Accession No.BB271021、(B10)GenBank Accession No.AV255689、
(B11)GenBank Accession No.BB271021、(B12)GenBank Accession No.AV024918、
(B13)GenBank Accession No.AJ414734、(B14)GenBank Accession No.BC027227、
(B15)GenBank Accession No. AA419994、(B16)GenBank Accession No.BQ031255、
(B17)GenBank Accession No.BE981338、(B18)GenBank Accession No.AV167877。
(10) 皮膚又は皮膚代用品がヘアレスマウス背部皮膚であり、紫外線暴露期間が2週間以上4週間以内であることを特徴とする(8)または(9)に記載された化合物を検出するスクリーニング方法。
(11) 試験化合物の投与が経口投与であることを特徴とする(8)〜(10)のいずれかに記載された化合物を検出するスクリーニング方法。
(12)β−catenin及び/又はmelanoma antigen family A1を指標とする皮膚老化の検査方法。
(13)遺伝子(B1)GenBank Accession No. NM_007614の産物であるβ−catenin及び/又は遺伝子(B4)GenBank Accession No.BB794642の産物であるmelanoma antigen family A1を指標とする皮膚老化の検査方法。
【発明の効果】
【0008】
皮膚老化、特に、紫外線被爆などを主な原因とする光老化のマーカー遺伝子である(A1)〜(A10)及び(B1)〜(B15)に示す25個のヒト遺伝子を利用した皮膚老化の検査方法を提供することができた。このマーカー遺伝子を利用することにより、皮膚老化、特に、紫外線照射などに起因する光老化による皮膚の変調を判定することができる。
また、このマーカー遺伝子を利用することにより、紫外線照射による皮膚の変調、老化などを抑制する化合物の探索に活用することができる。
この25個のヒト遺伝子に対応するマウスの遺伝子とさらに(A11)及び(B16)〜(B18)4個の遺伝子を加えたマウスの遺伝子29を利用して紫外線照射による皮膚の変調、老化などを抑制する化合物の探索に活用することができる。
本発明は、各遺伝子を指標として明記しているが、各遺伝子に対応して産出されるタンパク質を着目した遺伝子と同様に指標とすることができる。例えば、遺伝子(B1)GenBank Accession No. NM_007614の産物であるβ−catenin及び/又は遺伝子(B4)GenBank Accession No.BB794642の産物であるmelanoma antigen family A1を有効な指標とすることができることを例示する。

【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の研究過程において、皮膚老化の表現型である「しわ」、「皮膚水分量」、「8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノジン生成量」、「酸化カルボニルタンパク」を指標とし、これらが外面的には変化しない時点において遺伝子発現が変化する遺伝子に着目して皮膚老化遺伝子マーカーを探求した。
皮膚老化の進行度を判定するための遺伝子マーカーは、皮膚老化の進行に伴って発現が上昇し続ける、あるいは低下し続けることが必要である。
本発明により、皮膚老化の過程で遺伝子発現が上昇し続ける遺伝子群(List1)(A1)〜(A11)、及び発現が下降し続ける遺伝子群(List2)(B1)〜(B18)が見出された。なお、「Accession No.」は、各遺伝子のGenBank(NCBIの核酸配列データベース)における識別番号であり、Probe Set IDはAffymetrix社製Gene Chip Expression Array固有の識別番号である。これらの遺伝子は、ヒト遺伝子とマウス遺伝子の対応関係が表1、表2に示されている。以下に示す遺伝子の記号は、特にことわらない限りマウスの遺伝子で示す。
また、本発明は、指標として明記した各遺伝子、及び、各遺伝子に対応して産出されるタンパク質を着目した遺伝子と同様に指標とすることができる。例えば、遺伝子(B1)GenBank Accession No. NM_007614の産物であるβ−catenin及び/又は遺伝子(B4)GenBank Accession No.BB794642の産物であるmelanoma antigen family A1を有効な指標とすることができることを例示する。
【0010】
皮膚老化の過程で遺伝子発現が上昇し続ける遺伝子群(List1)は、次の(A1)〜(A11)11個の遺伝子である。
(A10)6-phosphofructo-2-kinase、別名fructose-2,6-biphosphatase 3は、Accession No.がNM_133232の遺伝子であり、酵素としてfructose-2,6-bisphosphate 2-phosphatase 活性、ATP binding活性がある。
(A5)dystrophin, muscular dystrophyは、Accession No.がNM_007868の遺伝子で筋発
達に関わる不溶性のタンパクをコードしている遺伝子である。
(A8)cyclinHは、Accession No. NM_023243の遺伝子で、というヌクレオチド除去修復(nucleotide excise repair:NER)過程に関与するTFIIHという転写因子複合体の構成因子の一つであり、DNA傷害と密接に関与している。
(A9)SMC6 structural maintenance of chromosomes 6-like 1は、Accession No.のAU022584の遺伝子であり、細胞核に局在するATP結合活性を有する遺伝子である。
(A6)RIKEN cDNA 1600014C10 geneは、Accession No.がBC019834である遺伝子であり、細胞膜と相互作用すること以外の機能は知られていない。
(A1)COX15 homolog, cytochrome c oxidase assembly proteinは、Accession No.がBC021498の遺伝子である。
(A11)RIKEN cDNA 2310007F12 geneは、Accession No. がBG070464の遺伝子である。
(A2)hyperparathyroidism 2 homologは、Accession No. がBB622571の遺伝子である。
(A3)microtubule-associated protein, RP/EB family, member 1は、Accession No. がBB464192の遺伝子で、遺伝子産物であるタンパク質は微小管結合活性を有し、細胞運動や細胞周期、細胞分裂などの生物現象と密接な関わりがある。
(A4)myosin IXaは、Accession No.がBB524436の遺伝子で、その遺伝子産物はGTPase 活性化作用やジアシルグリセロール結合活性を有し、細胞骨格を形成するタンパク質である。
(A7)F-Box protein3は、Accession No. AV024918の遺伝子で、その遺伝子産物は酸化・老化タンパクがユビキチン化されてリソソームにて処分される過程で酸化タンパクを
認識するアクセプターとして作用する。 MyosinIXa(A4)やDystrophin(A5)は筋組織に偏在しているタンパクであり、しわが皮膚組織よりも深部の筋肉の変化と関係していることは最近判明してきている。
【0011】
発現が下降し続ける遺伝子(List2)は、次の(B1)〜(B18)の18個である。
(B15)zinc finger and BTB domain containing 16は、Accession No. AA419994の遺伝子であり、遺伝子産物のタンパク質は細胞生長のネガティブフィードバック制御、アポトーシスの制御等に関与する細胞核に局在する転写制御複合体の構成因子の一つである。
(B1)βcateninは、Accession No. NM_007614の遺伝子であり、DNAや他のタンパク質との結合、特に接着分子であるカドヘリンとの結合活性を有し細胞−細胞間の接着を、他に転写因子活性化、TGFβシグナル経路やWnt/βcateninシグナル経路の主要分子として、皮膚組織に限定されず、各組織の老化やガン化に関与している。
(B13)transformation related protein 53 binding protein 1は、Accession No.がAJ414734の遺伝子で、遺伝子産物であるタンパク質はDNA修復やDNA依存性転写制御などの活性を有する。
(B14)WD repeat domain 22は、Accession No.がBC027227の遺伝子で、その遺伝子産物であるタンパク質の機能は明らかにされていない。
(B2)RIKEN cDNA 1110037N09 geneは、Accession No.がBE197381の遺伝子で、その遺伝子産物であるタンパク質の機能は明らかにされていない。
(B3)DnaJ (Hsp40) homolog, subfamily A, member 3は、Accession No. AK007852の遺伝子であり、その遺伝子産物であるタンパク質はタンパク質のフォールディング(折りたたみ)に関与する熱ショックタンパク質である。
(B4)melanoma antigen は、Accession No.がBB794642の遺伝子で、その遺伝子産物であるタンパク質はメラノーマの変化・運動性と対応しており、皮膚組織の色素沈着やガン化と関係が深い。
(B16)RIKEN cDNA 5730439E10 geneは、Accession No.がBQ031255の遺伝子で、その遺伝子産物であるタンパク質の機能は明らかにされていない。
(B5)AP2 associated kinase 1は、Accession No. BG067888の遺伝子で、その遺伝子産物であるタンパク質の機能は明らかにされていない。
(B18)RIKEN cDNA 2700060E02 geneは、Accession No.がAV167877の遺伝子で、その遺伝子産物であるタンパク質は細胞核で発現していること以外の機能は明らかにされていない。
(B6)G-rich RNA sequence binding factor 1は、Accession No.がBB223437の遺伝子で、その遺伝子産物であるタンパク質はRNAなどの核酸に結合する活性があり、転写因子(TFIIB)のシグナルペプチドとして作用する。
(B7)gap junction membrane channel protein alpha 1はAccession No.がAV330726の遺伝子であり、その遺伝子産物であるタンパク質はConnexin 43(Gap junction 43 kDa heart protein)と呼ばれ、Gapジャンクション形成など、細胞―細胞間のシグナル伝達に関与する。
(B8)mitogen activated protein kinase kinase kinase 12は、Accession No.がBB370469の遺伝子で、その遺伝子産物であるタンパク質はタンパク質のセリン、スレオニン、チロシンなどのアミノ酸残基のリン酸化を触媒する酵素であり、マグネシウムイオン結合活性やATP結合活性も有する。
(B17)GPI-anchored membrane protein 1は、Accession No.がBE981338の遺伝子で、その遺伝子産物であるタンパク質の機能は未解明である。
(B9)glucose phosphate isomerase 1はAccession No.がBB271021の遺伝子で、その遺
伝子産物であるタンパク質はグルコース−6−リン酸をフルクトース−6−リン酸への異性化反応を触媒する酵素であり、サイトカイン活性や成長因子活性も示す。
(B10)myocyte enhancer factor 2Aは、Accession No.がAV255689の遺伝子であり、その遺伝子産物であるタンパク質はDNA結合活性を有し、DNA依存的に転写制御活性を有する。
(B11)cDNA sequence AB023957は、Accession No.がBB271021の遺伝子で、その遺伝子産物であるタンパク質の機能は未解明である。
(B12)mitochondrial ribosomal protein L52は、Accession No.がAV024918の遺伝子で、その遺伝子産物であるタンパク質はリボソーム構成因子の一つである。
【0012】
特に、これらの29個の遺伝子は、紫外線被爆などが主な原因である皮膚の光老化に伴う皮膚老化遺伝子マーカーである。
これらの29個の遺伝子の発現量状態を、お腹などの日光に直接曝さない部分の皮膚、あるいは滅多に曝さない部分の皮膚と日常的に日光に曝される手や顔の皮膚とを比較することにより、紫外線に暴露された皮膚の変調を判定することが可能である。
【0013】
これらの29個の遺伝子から選択される、マーカー遺伝子セットのうちの少なくとも一つの遺伝子発現が、紫外線に暴露された皮膚において、(i)紫外線に暴露されていない対照または(ii)紫外線への暴露が遮蔽もしくは減弱されている対照と比較して変調されているかどうかを判定することが可能となる。個人に適用した場合には、少なくとも一つの遺伝子発現における変調の判定によって、その個人が、皮膚の光損傷または光老化、及び老化に対して感受性である、または非常に敏感であると識別することが可能となる。
ヒト個人(人種、性別、生活習慣)によって、光や紫外線をはじめとする外部環境の変化に対する感受性は異なる。本願発明が開示する遺伝子群は、紫外線の刺激で発現が上昇し続ける/低下し続ける遺伝子を挙げており、個人個人のこれらの遺伝子発現の状態を測定すれば、「皮膚老化の状態がどの程度進行しているか」もしくは「今後の生活を積み重ねることによって、どの程度皮膚老化が進行するのか」が予測でき得る、“皮膚老化マーカー遺伝子発現測定キット”のような装置を提供することが可能となる。
遺伝子発現解析手法は、cDNAマイクロアレイ、SAGE(Serial Analysis of Gene Expression)、RT-PCR、Northern Blottingなどがある。その中で、cDNAマイクロアレイが測定キットとして、簡便且つ有効である。
皮膚老化マーカー遺伝子発現測定キットとして、29の個々の遺伝子を一つ一つPCRなどの技術で測定することも可能である。また、Gene Chip(Affymetrix)の形態にすることも可能である。
しかし、29の個々の遺伝子を一つ一つPCRなどの技術で測定する皮膚老化マーカー遺伝子発現測定キットは同じ操作を反復することとなり能率的でない、また、本明細書に記載したGene Chip(Affymetrix)の技術の応用は、22,000を超える遺伝子のデータから逐一29個の遺伝子を検索することは手間がかかり、一回の測定についてのコストが非常に高価になってしまう。
【0014】
他の皮膚老化マーカー遺伝子発現測定キットとしては、29個の遺伝子全て、もしくは一部の遺伝子発現解析を測定可能とするスポット型cDNAマイクロアレイを作製することにより、皮膚老化や光傷害の進行程度を簡便に正しく迅速に評価することが可能である。
皮膚老化マーカー遺伝子発現測定キットは皮膚のみならず、皮膚代用品の測定が可能である。皮膚代用品としては、重層したコラーゲンゲルにダメージを受けた皮膚構成細胞との共培養や市販の皮膚三次元皮膚モデルを改良して擬似的な人工皮膚としてスクリーニング系に用いたり、生体成分である還元糖とタンパク質とを溶液系でインキュベートしてできるアドバンスド・エンド・グリケーションの生成抑制作用を鑑別する方法が知られている。特に、皮膚外用剤の有効成分のインビトロのスクリーニングにおいて、皮膚三次元モデルを用いて皮膚外用剤構成成分の安全性や有効性の評価方法を用いることができる。例えば、ヒト皮膚の完全疑似皮膚モデルであるLSE(LivingSkin Equivalent)は、分化して多層化したヒト上皮細胞からなる上層、およびコラーゲンゲル内にヒト皮膚線維芽細胞が埋め込まれた下層より構成されている。また、ヒト以外の生物種におけるラット、マウス、モルモット、ブタ(特にユカタンミニブタ)などの哺乳類の皮膚も代替品として利用でき、特に飼育中に様々な環境因子(紫外線、太陽光、煙暴露、代謝異常、乾燥、加齢、体内時計周期異常、ハウスダストや環境ホルモンなどのストレス)に対する皮膚の影響を評価するときに有効である。
本発明において、遺伝子発現を、遺伝子産物であるタンパク質を測定することにより評価することが可能である。例えば、ウェスタンブロット法、免疫組織化学分析法、ELISA法、抗体アレイなどを利用して測定することができる。
タンパク質の生成量を測定するためには、測定の対象となるタンパク質を特異的に認識する抗体を用いるとよい。抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体のいずれであってもよい。これらの抗体は公知の方法で製造することができるし、また、市販されているものもある。ウェスタンブロット法で測定する場合には、抗体は、125I標識プロテインA、ペルオキシダーゼ結合IgGなどを用いて二次的に検出される。免疫組織化学分析法で測定する場合には、抗体は、蛍光色素、フェリチン、酵素などで標識するとよい。
【0015】
これらの遺伝子を用いて、抗老化作用を示す候補物質の探索、スクリーニングに用いることが可能である。これらの29個の遺伝子について、抗酸化作用を示し抗老化作用物質として既知の、トコフェロール(ビタミンE)とCoQ10を摂取させて、非摂取と比較することにより、抗老化化合物のスクリーニング手段としての有効性を確認することができた。
【0016】
(実施例1)
日常生活レベルの紫外線をへアレスマウスに照射すると約10週間を経てシワが形成される。シワ形成過程における経時的な遺伝子発現を測定した。表現型が悪化する前に変化する遺伝子に着目して、マーカーとする遺伝子を抽出した。
【0017】
I.実験動物
I−1.種・系統・性別
種:マウス、系統:Hos:HR1(ヘアレスマウス)、性別:雌
I−2.飼育開始週齢
5週齢(1週間飼育後6週齢から紫外線照射試験を開始した)
I−3.微生物グレード
SPF
I−4.ブリーダー
清水実験材料株式会社
【0018】
II.飼育環境
設定温湿度:24±1℃、相対湿度55±5%
空調設備:オールフレッシュ方式
照明時間:12時間自動点灯・消灯方式
飼育設備:プラスチック製ケージ 5匹/ケージ
飼 料:粉末滅菌飼料 MF−1(オリエンタル酵母工業(株))を自由摂取、MF−1にトコフェロールもしくはCoQ10を0.05重量%混合した飼料も別途調製した。
試験対象物の投与:粉末混餌として自由摂取させた。解剖18時間前から絶食させた。
給水:滅菌済の水道水を自由摂取
【0019】
III.紫外線照射に使用した器具
UV-B波及びUV-A波用可搬照射装置(セントラルメディカル製)
UV-A波照射ランプ(FL20S・E−30/DMRクリニカルサプライ製)
UV-B波照射ランプ(FL20S・BL/DMRクリニカルサプライ製)
【0020】
IV.試験条件
IV−1 紫外線照射
各ケージ毎に専用の容器に動物を移し、非拘束状態で紫外線照射を実施した。
一回あたりの紫外線照射は、
UV-B波については積算量20mJ/cm2(紫外線強度平均3.33W/m2の条件で1分間照射)、
UV-A波については積算量100J/cm2(紫外線強度平均45〜50 W/m2の条件で約40分間照射)、をそれぞれUV-A波用、UV-B波用紫外線ランプを交換して実施した。
紫外線の積算量は、UV MONITOR MS-211-I(英弘精機製)を用いて測定した。紫外線照射は隔日で実施し、解剖直前の紫外線照射は解剖24時間前には終了させた。10週間紫外線照射群の場合、UV-B波700 mJ/cm2、UV-A波3.5kJ/cm2 通算で暴露される。
【0021】
IV−2 中間観察・測定
紫外線照射開始時(0wk、6週齢)、紫外線照射2週間毎に背部のシワ形成の目視評価、皮膚水分量の測定、8-ヒドロキシ-2’-デオキシグアノシンの測定、酸化カルボニルタンパクの測定を実施した。紫外線未照射群の結果に対して、紫外線照射群の結果を2群比較し、有意差検定はいずれもstudent’s t-test(p<0.05)で実施した。
【0022】
IV−3 解剖
解剖18時間前から絶食させた個体の体重測定、皮膚水分量を測定後、ネンブタール麻酔(40mg/kg)腹腔内投与により麻酔を導入した。その後、写真撮影と皮膚のレプリカを採取した。
腹部を切開し、心臓よりヘパリン採血を行った。次に臓器について肉眼的観察を行った後に肝臓、後頭部から臀部における背部全体の皮膚を摘出した。背部皮膚に関しては、皮膚組織背側の尾付け根より首に向かい2cm、腰椎から右側に0.5cm部位の皮膚1cmを切り取り、ブアン固定、及びパラフィン包埋して皮膚組織を保存した。その他の背部皮膚は素早くアルミホイルに入れ液体窒素にて急速に凍結し−80℃で長期保存した。
【0023】
V 検体
紫外線未照射 0週間(6週齢) 各5匹
紫外線未照射 2週間(8週齢) 各5匹
紫外線未照射 4週間(10週齢) 各5匹
紫外線未照射 10週間(16週齢) 各5匹
紫外線未照射 10週間(16週齢)DL-α-トコフェロール混餌 各5匹
紫外線未照射 10週間(16週齢)CoQ10混餌 各5匹
紫外線照射 2週間(8週齢) 各5匹
紫外線照射 4週間(10週齢) 各5匹
紫外線照射 10週間(16週齢) 各5匹
紫外線照射 10週間(16週齢)DL-α-トコフェロール混餌 各5匹
紫外線照射 10週間(16週齢)CoQ10混餌 各5匹
【0024】
VI 外観変化
紫外線未照射0週及び10週間、そして紫外線照射10週間、紫外線照射10週間と同時に0.05重量%DL−α−トコフェロール混餌群、紫外線照射10週間と同時に0.05重量%CoQ10混餌群、紫外線照射2週間、4週間、6週間及び8週間のマウス写真を撮影し、しわのスコア化で皮膚老化の進行を評価した。
スコア0 しわが全く出来ていない
スコア1 軽微なしわが出来ている
スコア2 しわが出来ている
スコア3 深いしわが出来ている
【0025】
判断が不明瞭な検体については中間値の0.5をスコア化した。各群のスコアについて平均値±S.D.を求めた。2群間の有意差検定はstudent’s t-test(有意水準p<0.05)で実施した。結果を図1、2に示す。
図1に示したように、紫外線10週間照射群は紫外線未照射群に比べて有意にしわ形成が進行している。そして、DL−α−トコフェロールやCoQ10をそれぞれ混餌させた群では、しわ形成がUV(+)群に比べて、有意に抑制されていた。
図2に示したように、紫外線照射期間の変遷に伴ってしわ形成が進行しているが、有意にしわ形成が認められたのは紫外線照射4週間後からで、紫外線照射2週間では外観上、皮膚老化の現象は認められなかった。
紫外線照射により、マウス皮膚には酸化、乾燥が生じて筋肉の運動も関与してしわを形成していくと考えられるが、そのメカニズムは不明な点が多い。しかしながら、紫外線照射期間の違いによりしわの状態が変遷することを見出した。
【0026】
0週⇒紫外線未照射(しわ未形成)
2週⇒紫外線照射(しわ未形成)
4週⇒紫外線照射(しわ若干形成)
10週⇒紫外線照射(しわ形成)
【0027】
VII 皮膚水分量の測定
水分量の測定は、モイスチャーチェッカー(スカラ製)を用い、背部の尾付け根より首に向かい2cm、腰椎から右側に0.5cmの部位を3回測定して平均を求めた。測定日は、試験開始日、中間観察日として紫外線照射2週間、4週間、6週間、8週間後および解剖日(紫外線照射10週間)とした。
各群の皮膚水分量(%)について平均値±S.D.を求めた。2群間の有意差検定はstudent’s t-test(有意水準p<0.05)で実施した。
図3より、紫外線照射4週間後から有意に皮膚水分量の低下が認められ、皮膚の乾燥がしわ形成とともに進行していた。
【0028】
VIII 皮膚組織中8−ヒドロキシ2’−デオキシグアノシンの測定
8−ヒドロキシ2’−デオキシグアノシンは、免疫組織化学的手法を用いて測定した。動物の解剖時に皮膚組織背部の尾付け根より首に向かい2cm、腰椎から右側に0.5cm部位の皮膚1cmを切り取り、ブアン固定、及びパラフィン包埋して皮膚組織を保存した。3μm厚の切片を適宜作製し、脱パラフィン、親水化は公知の方法に基づいて実施した。抗原賦活化は0.01Mクエン酸緩衝液(pH6.0)中でマイクロウェーブ処理5分を実施した。室温まで冷却後、常温下0.3%過酸化水素含有メタノールで20分反応させて内因性ペルオキシダーゼを阻害した。水洗、10mM PBS(−)洗浄後、ヤギ血清75倍10mMPBS(―)希釈溶液で5分間マイクロウェーブ処理を実施してブロッキング、血清を落として1次抗体(N45.1:日研ザイル(株)製)を5μg/mlで20分間マイクロウェーブ処理により抗体を反応させた。10mMPBS(−)で2回洗浄し、ビオチン化二次抗体(ビオチン化ヤギ免疫グロブリンM;DAKO製)を300倍希釈したものを5分間マイクロウェーブ処理で抗体を反応させた。10mMPBS(−)で2回洗浄し、ABC試薬(ABC−HRP;Vectastain製)を5分間マイクロウェーブ処理により反応させた。発色試薬としてDAB(3,3-ジアミノベンジジンテトラヒドロクロライド:DAKO製)を用いて3分30秒常温下で反応させた。水洗後、公知の方法に基づいて脱水、封入処理を行った。顕微鏡下で皮膚組織の染色状況を観察した。得られた画像を図4に示す。紫外線照射4週間以降、表皮細胞の主に細胞核が発色している。Adobe Photoshopを用いて画像を取り込み、画像中の一定面積中の染色箇所をNIH Imagingにて数値化した。
【0029】
各群の数値について平均値±S.D.を求めた。2群間の有意差検定はUV(−)群を基準値を1として各群の平均値を補正後、student’s t-test(有意水準p<0.05)で実施した。
図5に示したように、紫外線照射2週間では8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシンは増加しないが、紫外線照射4週間では有意に増加し、その後は紫外線照射期間が長いほど8−ヒドロキシ2’−デオキシグアノシンが増加した。
【0030】
IX 皮膚組織中酸化蛋白質の測定
酸化タンパク質即ちカルボニル化タンパク質は、酸化障害により生じたタンパク質のカルボニル基に特異的に結合する2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)を用いてカルボニル化タンパク質を標識後、DNPHに特異的に結合する抗DNPH抗体を用いて検出した。具体的な方法は以下の通りである。UV照射部位の皮膚1cmを切り取り、4℃にてPMSFを含む0.1Mトリスバッファー(pH7.5)1mlを加えてホモジナイズし、12000g×20分間遠心し、その上清をフィルターろ過したものを用いて、解析を行った。蛋白質のジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)化は公知の方法(Nakamura他、Jounal of Biochemistry、119巻、768〜774頁、1996年)で行った。DNPH化した蛋白質をSDS−PAGEにより分離し、蛋白質転写装置を用いてPolyvinylidene difluoride(PVDF)膜に転写した。転写後の膜は常温下で30分5%スキム4℃でミルクを含むPBS(−)溶液中でブロッキングし、スキムミルクをPBS(−)で洗浄後、抗DNPH抗体と4℃で一晩反応させ、洗浄後、ビオチン化抗ラビットイムノグルブリンGと1時間反応させた。洗浄後、蛍光検出キット(ECL PLUS)を用いてPVDF膜を感光し、医療用自動現像装置にて画像を転写した。画像解析はトランスイルミネーターを用いて行なった。
各群の数値について平均値±S.D.を求めた。2群間の有意差検定、student’s t-test(有意水準p<0.05)で実施した。
【0031】
図6に示すように、紫外線照射2週間では酸化カルボニルタンパク質は増加しないが、紫外線照射4週間では有意に増加し、その後は紫外線照射期間が長いほど酸化カルボニルタンパク質が増加した。
【0032】
X 遺伝子発現解析に関する試験
各群5匹中2匹の背部皮膚を選択して、遺伝子発現解析用Total RNAサンプルを抽出した。その選択にあたっては、皮膚水分量の数値で、各群の5匹中最も隔たりの少ない個体を2匹ずつ選んだ。すなわち、各個体の皮膚水分量のメジアン(中間値)となった動物個体及びそのメジアンに最も近い動物個体の2匹を選択して遺伝子発現解析試料とした。2匹の測定値の平均を解析に用いた。
選んだ個体の背部皮膚からtotal RNAを抽出した。背部皮膚を液体窒素存在下で細切粉砕し、湿重量数十mg毎にエッペンドルフチューブに分注した。Total RNA抽出はRNase easy mini kit (QIAGEN製)を用いて、通常のプロトコールに従った。
【0033】
Affymetrix社推奨のプロトコールに則った処理を行った後、DNAマイクロアレイ法により皮膚組織における発現パターンを調べた。具体的には、抽出したtotal RNAから、「SUPERSCRIPT choice system for cDNA synthesis」(商品名、Invitrogen社製)を用いてcDNAを合成し、このcDNAを鋳型にして「Bio Array High Yield RNA Transcript Labeling Kit」(商品名、Enzo Diagnostics社製)を用いてビオチン標識したcRNAを試験管内で合成した。そして、このcRNAを断片化した後、DNAマイクロアレイ(商品名「GeneChipMouse Expression Array 430A」(Affymetrix社製))と「ハイブリダイゼーションオーブン」(商品名、Affymetrix社製)にてハイブリダイゼーションを行い、R−フィコエリスリン−ストレプトアビジンとの反応及び洗浄操作を「Fluidics station」(商品名、Affymetrix社製)で行った後、蛍光強度を「Gene Array Scanner」(商品名、Affymetrix社製)で測定し、関連遺伝子の発現量の解析を行った。なお、上記DNAマイクロアレイには、塩基配列が判明しているマウスの遺伝子(機能がまだ判明していないものも含まれる)のうち、34,323遺伝子及び39,015の転写産物が搭載されており、既に機能が判明しているマウスの遺伝子は全てこのチップに載っている。また、検出感度は1:100,000であり、これはマウスtotal RNAサンプル中にマウスcDNAクローン由来の標識済み転写産物を添加し検出することにより測定している。尚、本試験で用いたマウス皮膚由来total RNAについて22,690遺伝子が検出され、遺伝子発現の増減の解析に用いた。
【0034】
検出された遺伝子について対照群に対する試験群の発現量比を計算した。
試験群と対照群の組み合わせは以下のとおりである。
発現量比1.試験群:紫外線照射2週間(8週齢)
対照群:紫外線未照射0週間(6週齢)
発現量比2.試験群:紫外線照射4週間(10週齢)
対照群:紫外線照射2週間(8週齢)
発現量比3.試験群:紫外線照射10週間(16週齢)
対照群:紫外線照射4週間(10週齢)
発現量比4.試験群:紫外線照射10週間(16週齢)DL-α-トコフェロール混餌
対照群:紫外線照射10週間(16週齢)
発現量比5.試験群:紫外線照射10週間(16週齢)CoQ10混餌
対照群:紫外線照射10週間(16週齢)
【0035】
遺伝子の発現量は、スキャナーで取り込んだ蛍光強度に比例する。
蛍光強度の数値が153.3を超えるものをP(Present)、153.3以下のものをA(Absent)と分類した。発現量比1〜3を計算する際に、試験群のマウス2検体、対照群のマウス2検体のいずれもがA(Absent)の場合は、対照群に対する試験群の比を計算しても、遺伝子の発現が上昇しているのか、低下しているのか有意に判定できないため、そのような遺伝子群は解析から削除した。試験群のマウス2検体、対照群のマウス2検体のいずれかがP(Present)の場合は、遺伝子発現の変動の評価が可能と判断し、解析に用いた。この基準により上記22,690個の遺伝子のうち、16880個の遺伝子を解析から削除し、5810個の遺伝子を解析に用いた。
【0036】
対照群に対する試験群の遺伝子発現の比率(発現量比)が1.5倍以上のものを発現量上昇、0.67倍以下のものを発現量低下、0.67倍を超えて1.5倍未満を発現量変動無しと定義した。表1、2中での遺伝子発現量比は底を2とする対数表記しているので、Log1.5≒+0.585以上で発現上昇、Log0.67≒−0.578以下で発現低下となる。
【0037】
皮膚老化の進行度を判定するための遺伝子マーカーは、皮膚老化の進行に伴って発現が上昇し続ける、あるいは低下し続けることが必要である。そこで、紫外線未照射0週間(6週齢)→紫外線照射2週間(8週齢)→紫外線照射4週間(10週齢)→紫外線照射10週間(16週齢)において、連続的に遺伝子の発現が上昇している、すなわち、上記発現量比1〜3の全てにおいて遺伝子の発現量が上昇した11個の遺伝子(表1)を抽出し、皮膚老化マーカーとした。さらに、紫外線未照射0週間(6週齢)→紫外線照射2週間(8週齢)→紫外線照射4週間(10週齢)→紫外線照射10週間(16週齢)において、連続的に遺伝子の発現が低下している、すなわち、上記発現量比1〜3の全てにおいて遺伝子の発現量が低下した18個の遺伝子(表2)を抽出し、皮膚老化マーカーとした。
【0038】
ちなみに発現量比1[試験群:紫外線照射2週間(8週齢)、対照群:紫外線未照射0週間(6週齢)]が上昇した1698個の遺伝子の中で、紫外線照射10週間まで連続的に遺伝子発現が上昇したものが11個、発現量比1が低下した1821個の遺伝子の中で、紫外線照射10週間まで連続的に遺伝子発現が低下したものが18個抽出されたことになる。また、発現量比1の結果に基づき遺伝子発現量が変動なしと評価された遺伝子は2291個であった。発現量比の経路のイメージを図7に示す。
【0039】
なお、表1、2中の「Accession No.」は、各遺伝子のGenBank(NCBIの核酸配列データベース)における識別番号であり、Probe Set IDはAffymetrix社製GeneChip Expression Array固有の識別番号である。(A1)〜(A10)及び(B1)〜(B15)は、マウスの遺伝子とヒト遺伝子の対応関係が判明しているので、同じ符号を用いている。(A11)と(B16)〜(B18)は、ヒトの対応する遺伝子が判明していないので、マウスの遺伝子である。この対応関係は、例えばNCBI(National Center for Biotechnology Information、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)から知ることができる。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】

【0042】
皮膚老化マーカーによって老化(シワ)抑制効果を検知できるか確認するために、シワの予防・改善に効果が認められるDL-α-トコフェロールとCoQ10を高濃度摂食したマウスの遺伝子発現量を調べた。図1に示したとおり、紫外線を10週間照射すると皮膚が「中程度のシワの発生を認める」〜「深いシワの発生を認める」状態となる。一方、0.05重量%のDL-α-トコフェロール混合飼料を摂食させながら紫外線を10週間照射したマウスの皮膚は「軽微なシワの発生を明確に認められる」状態であり、0.05重量%のCoQ10混合飼料を摂食させながら紫外線を10週間照射したマウスの皮膚は「軽微なシワの発生を明確に認められる」〜「中程度のシワの発生を認める」状態であり、皮膚老化(シワ)が抑制されている。そこで、発現量比4[試験群:紫外線照射10週間(16週齢)DL-α-トコフェロール混餌、対照群:紫外線照射10週間(16週齢)]、発現量比5[試験群:紫外線照射10週間(16週齢)CoQ10混餌、対照群:紫外線照射10週間(16週齢)]を測定した。
【0043】
その結果、表1の皮膚老化に伴って発現量が上昇する11個の遺伝子のうち4個の遺伝子、(A1)Accession No. BC021498 遺伝子名COX15 homolog, cytochrome c oxidase assembly protein (yeast)、(A2)Accession No. BB622571 遺伝子名hyperparathyroidism 2 homolog (human)、(A3) Accession No. BB464192 遺伝子名microtubule-associated protein, RP/EB family, member 1、(A4)Accession No. BB524436 遺伝子名myosin IXaの発現量比4と5は、ともに−0.578以下であり、DL-α-トコフェロール摂取、CoQ10摂取による老化(シワ)抑制に応じて、遺伝子の発現量が低下し、皮膚老化マーカーの発現が抑制された。
【0044】
前記11個の遺伝子のうち3遺伝子(A5)Accession No. NM_007868 遺伝子名dystrophin, muscular dystrophy、(A6)Accession BC019834 遺伝子名RIKEN cDNA 1600014C10 gene、(A7) Accession No. AV024918 遺伝子名F-box only protein 3の発現量比4は、−0.578以下であり、DL-α-トコフェロール摂取による老化(シワ)抑制に応じて、遺伝子の発現量が低下し、皮膚老化マーカーの発現が抑制された。しかしながら、発現量比5は、−0.578を超えて+0.585未満であり、遺伝子の発現量は変動しなかった。
【0045】
前記11個の遺伝子のうち、残りの4遺伝子(A8)Accession No. NM_023243 遺伝子名cyclin H、(A9)Accession No. AU022584 遺伝子名SMC6 structural maintenance of chromosomes 6-like 1 (yeast)、(A11)Accession No. BG070464 遺伝子名RIKEN cDNA 2310007F12 gene、(A10)Accession No. NM_133232 遺伝子名6-phosphofructo-2-kinase/fructose-2,6-biphosphatase 3の発現量比4,5はいずれも−0.578を超えて+0.585未満であり、遺伝子の発現量は変動しなかった。表1の遺伝子について、老化(シワ)抑制に伴って、皮膚老化マーカーの発現(遺伝子発現量の上昇)が促進されるものはなかった。
【0046】
また、表2の皮膚老化に伴って発現量が低下する18個の遺伝子のうち14個の遺伝子(B1)Accession No. NM_007614 遺伝子名catenin beta、(B2)Accession No. BE197381 遺伝子名RIKEN cDNA 1110037N09 gene、(B3) Accession No. AK007852 遺伝子名DnaJ (Hsp40) homolog, subfamily A, member 3、(B4)Accession No. BB794642 遺伝子名melanoma antigen、(B16)Accession No. BQ031255 遺伝子名RIKEN cDNA 5730439E10 gene、 (B5)Accession No. BG067888 遺伝子名AP2 associated kinase 1、(B6)Accession No. BB223437 遺伝子名G-rich RNA sequence binding factor 1、(B7)Accession No. AV330726 遺伝子名gap junction membrane channel protein alpha 1、(B8) Accession No. BB370469 遺伝子名mitogen activated protein kinase kinase kinase 12、(B17)Accession No. BE981338 遺伝子名GPI-anchored membrane protein 1、(B9)Accession No. BB271021 遺伝子名glucose phosphate isomerase 1、 (B10)Accession No. AV255689 遺伝子名myocyte enhancer factor 2A、(B11)Accession No. BB271021 遺伝子名cDNA sequence AB023957、(B12)Accession No. AV024918 遺伝子名mitochondrial ribosomal protein L52の発現量比4及び5は、ともに+0.585以上であり、DL-α-トコフェロール摂取、CoQ10摂取による老化(シワ)抑制に応じて、遺伝子の発現量が上昇し、皮膚老化マーカーの発現が抑制された。
【0047】
前記18個の遺伝子のうち3遺伝子(B13)Accession No. AJ414734 遺伝子名transformation related protein 53 binding protein 1、(B14)Accession BC027227 遺伝子名WD repeat domain 22、(B15) Accession No. AA419994 遺伝子名zinc finger and BTB domain containing 16の発現量比4は、+0.585以上であり、DL-α-トコフェロール摂取による老化(シワ)抑制に応じて、遺伝子の発現量が上昇し、皮膚老化マーカーの発現が抑制された。しかしながら、発現量比5は−0.578を超えて+0.585未満であり、遺伝子の発現量は変動しなかった。
【0048】
前記11個の遺伝子のうち、残りの1遺伝子(B18)Accession No. AV167877 遺伝子名RIKEN cDNA 2700060E02 geneの発現量比4及び5は、いずれも−0.578を超えて+0.585未満であり、遺伝子の発現量は変動しなかった。
【0049】
表2の遺伝子について、老化(シワ)抑制に伴って、皮膚老化マーカーの発現(遺伝子発現量の低下)が促進されるものはなかった。
従って、紫外線照射に伴って発現量が上昇し続ける11種類の遺伝子及び紫外線照射に伴って発現量が低下し続ける18種類の遺伝子を皮膚老化マーカーとすることにより、老化(シワ)抑制効果を検知できる可能性を確認できた。
この結果は、DL-α-トコフェロールとCoQ10を高濃度摂食したマウスについて、(A1)〜(A11)の11種類の遺伝子では非摂取の比較例と較べて発現量の増加を抑制しており、また、(B1)〜(B18)の18種類の遺伝子は、発現量の減少を抑制していることが確認できたので、シワの予防・改善作用のある物質のスクリーニング手段として有効であることが認められる。このスクリーニング手段を用いることにより、抗老化作用として有効な化合物や物質、抽出物の候補の探索に利用することができる。
【0050】
図2の皮膚外観(シワ スコア)の変遷では、紫外線照射2週間ではしわが全く形成されず、紫外線照射4週間程度でしわが若干形成され、紫外線照射10週間でしわが完全に形成されることを示している。
【0051】
それに対し、図3皮膚水分量の変遷、図5皮膚組織8−ヒドロキシ−2‘−デオキシグアノシン(8―OH dG)の変遷、図6皮膚由来酸化カルボニルタンパク質の変遷では、紫外線4週間のしわ若干形成時に水分量の低下、8―OH dGの増加、酸化カルボニルタンパク質の増加が認められたが紫外線照射2週間では有意な変化が認められなかった。
【0052】
酸化カルボニルタンパク質は非特異的な酸化タンパク、8−OH dGも非特異的にDNAの酸化を評価しているに過ぎず、「酸化」はシワを発生させる一要因に過ぎない。
【0053】
一方、網羅的遺伝子発現解析で抽出した遺伝子群はシワ形成過程とより密接に関与している可能性が高く、有効な皮膚老化マーカーである。
【0054】
(実施例2)
ヒト培養細胞での皮膚老化マーカーの検査方法

1.正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)の培養
NHEK(Cambrex Corporation)を無血清基礎培地(KBM,Cambrex Corporation)に添加因子(0.1ng/ml EGF、0.03mg/ml bovine pituitary medium、5μg/ml insulin、0.5μg/ml hydrocortisone、GA−1000)を添加した培地KGM(+)を使用して、37℃、5%COインキュベータ内で培養した。細胞を1×10個/60mmディッシュに播き、2日毎に培地交換し、80%飽和になった段階で5代目まで継代した。5代目の細胞には2日毎に紫外線B波(UVB)を0、3および6mJ/cmで照射し、80%飽和になるまで培養後、回収した。
【0055】
2.NHEKの各継代数におけるSA−β‐Gal活性の測定
NHEKの各継代数におけるSA−β‐Gal活性をSenescent Cells Staining Kit(Sigma Corporation)を用いて測定した。継代用とは別に細胞を1×10個/60mmディッシュで3ディッシュに播き、80%飽和になった段階で細胞を2%ホルムアルデヒド/0.2%グルタルアルデヒド水溶液中で、室温で7分間固定した。さらに1×PBS(−)で3回洗浄後、Staining Solutionを加えて37℃、over nightで染色した。3ディッシュ各々について、細胞100個当たりのSA−β‐Gal活性による染色細胞数を計測し、平均値と標準誤差を算出した。
【0056】
3.細胞抽出液(CL)の調製
NHEKが飽和したディッシュをPBS(−)で3回洗浄後、1% SDS/20mM Tris−HCl(pH7.5)を加え、4℃で30分間攪拌しながらタンパク質を抽出した。その後、15,000×g、30分間遠心し、不溶物を取り除き、上清をサンプルとした。DC protein assay kit(Bio−Rad Loboratories Inc.)を用いてBradford法によりタンパク質を定量し、ウェスタンブロッティング用のサンプルとして使用した。
【0057】
4.ウェスタンブロット法
ウェスタンブロット用のサンプルを用いてLaemmliのTris−Glycin系によりSDS−PAGEを行った。SDS−PAGE後、ゲル中のタンパク質を1cmあたり0.8mAの定電流でPVDF膜(Millipore Corporation)に転写後、5% スキムミルク/PBS(−)に浸して、4℃、overnightでブロッキングした。PVDF膜を0.1% Tween20/PBS(−)で3回洗浄した後、1次抗体を加えた5% スキムミルク/PBS(−)に浸して室温で2時間振盪した。
使用した1次抗体の種類と希釈率は次の通りである:mouse anti−β−catenin monoclonal antibody(clone 9G2,nanoTools Antikorpertechnik GmbH & Co.)(1,000倍希釈)、rabbit anti−melanoma antigen family A1 polyclonal antibody(Orbigen,Inc.)(1,000倍希釈)。2次抗体としてHorseradish peroxidase labeled anti−mouse IgG (Amersham Bioscience)(10,000倍希釈)、Horseradish peroxidase labeled anti−rabbit IgG (Amersham Bioscience)(10,000倍希釈)を使用した。次にEnhanced chemiluminescence(ECL)キット(Amersham Bioscience)を用いて検出した。
ウェスタンブロット法により検出したタンパク質の発現量をNIH imageにより数値化し、2代目のタンパク質の発現量を1とした発現比を算出した。
【0058】
実験結果
1.表皮角化細胞の老化に伴う形態変化
ヒト正常細胞は一定回数分裂すると増殖が停止する。この現象は細胞老化と呼ばれるが、この分裂回数は細胞種によって異なる。今回実験で用いたヒト表皮角化細胞は繰り返し継代することによりおおよそ5〜6代目で増殖が停止する。また、細胞の形態も2代目に比べて5代目では細胞の大きさが2倍程大きくなり、細胞老化で観察される扁平肥大化の形態を示した{図8(b)}。
また、繰り返し継代した表皮角化細胞の増殖が低下する原因として、細胞老化あるいは最終分化の可能性がある。そこで、実際に表皮角化細胞が老化しているかを判別するために、最終分化では発現せず、細胞老化でのみ発現することが知られており、表皮角化細胞の老化と皮膚組織での老化のマーカーとして同定されたSA−β−Galの活性を調べた(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92,9363−9367,1995)。2代目ではSA−β−Galを示すような青く染色された細胞は見られなかったが、5代目では青く染色された細胞が約半数まで増えた(図9)。
以上の結果から2代目の細胞を若い細胞、3代目や4代目の細胞を老化の過渡期の細胞、5代目の細胞を老化細胞として用いて、細胞老化マーカーの探索を行った。
【0059】
2.表皮角化細胞の老化および紫外線照射に伴うβ−cateninおよびmelanoma antigen family A1の発現変化のウェスタンブロッティングによる解析
β−cateninはDNAや他のタンパク質との結合、特に接着分子であるカドヘリンとの結合活性を有し細胞−細胞間の接着を、他に転写因子活性化、TGFβシグナル経路やWnt/βcateninシグナル経路の主要分子として、皮膚組織に限定されず、各組織のガン化に関与している。例えば、β−cateninが活性化し細胞核に入ることでがん細胞増殖のスイッチが入り、CRD−BP(coding region determinant-binding protein)を介してC−Mycなどが増えることが分かっている(Nature 2006 ;441(7095):898-901)。
【0060】
Melanoma antigen Family Aファミリーは、細胞障害T細胞(CTL) で発現が認められ、12の近接した分子種が存在する。メラノーマ(黒色腫)のがん患者においてMAGE-A1の遺伝子発現や分泌タンパク質の発現が認められている(Br J Dermatol. 2003 ;149(2):282-8.)。
β−cateninおよびmelanoma antigen family A1に関して、老化および紫外線照射に伴う発現変化をさらに確認するために、それぞれの抗体を用いてウェスタンブロッティングを行った。その結果、β−cateninおよびmelanoma antigen family A1は表皮角化細胞の老化および紫外線照射に伴って発現量が減少した(図10,図11)。これは、実施例1で示したマウス皮膚のB1、B4遺伝子発現変動と傾向が一致した。β−cateninおよびmelanoma antigen family A1はそれぞれヒト皮膚のB1、B4遺伝子産物によるタンパク質である。
【0061】
〔実施例3〕
ヒトから採取したタンパク試料での皮膚老化マーカー検証試験
実験方法
1.目尻の弾力性およびしわ体積率の測定
20〜60歳代の女性12名を対象に、目尻の弾力性およびしわ体積率を測定した。目尻の弾力性は吸引弾力性をCutemeter(Courage + Khazaka electronic GmbH)により測定した。吸引弾力性は、肌の弾力性の指標となる測定方法であり、加齢に伴って弾力性が低下することが明らかになっている。目尻のしわ体積率は、二剤混合型レプリカ剤であるスキンキャスト(Yamada Cosmetic Laboratories)を用いて目尻のレプリカを採取し、レプリカ画像解析によりしわの体積率を計測した。レプリカ画像解析は反射用レプリカ解析システムASA−03RXDを使用して行った。ASA−03RXDを用いて、採取したレプリカに角度30度の平行光を照射する事により得られるシワの形状に応じた陰影画像をCCDカメラで撮像し、コンピュータに取り込み画像処理することでレプリカ表面のしわ体積率(μm/mm/100)を計測した。しわ体積率は、加齢に伴って増加することが明らかになっている。
【0062】
2.目尻の角層からのタンパク質の抽出
20〜60歳代の女性12名を対象に、目尻から角層チェッカー(Asahibiomed Co. Ltd.)を用いて角層を剥離し、そこからタンパク質抽出溶液を用いてタンパク質を抽出した。具体的には、被験者の目尻に角層チェッカーを貼り、指先で軽く擦り付けた。これを5回繰り返した。その後、5枚の角層チェッカーに貼り付いた角層にそれぞれ50μlのタンパク質抽出溶液{50mM Tris−HCl(pH7.5)、120mM NaCl、0.4% Igepal CA−630(Sigma−Aidrich Co.)}を加え、セルスクレーパーを用いて角層をタンパク質抽出溶液に馴染ませた後、溶液を1.5mlのプラスチックチューブ(Eppendorf AG)に回収した。
10,000×g、15分間遠心し、不溶物を沈殿させ、上清を新しい1.5mlのプラスチックチューブに回収した。回収したサンプルのタンパク質量をDC assay kit(Bio-Rad Laboratories, Inc.)を用いて測定した。
【0063】
3.皮膚老化マーカーの測定
目尻角層から抽出したタンパク質を用いて、実施例2に記載したβ−cateninの抗体を用いてELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)法により検出した。テープストリッピングにより採取したタンパク試料の3マイクログラムをそれぞれマルチプレートの各ウェルに4℃で一晩コーティングした。その後、1%BSA/PBSで1時間37℃ブロッティングし、0.1%Tween20含有PBSで3回洗浄、1000倍希釈したβ−cateninの1次抗体を37℃1時間の条件で反応した。再び、0.1%Tween20含有PBSで3回洗浄し、10000倍希釈した二次抗体Horseradish peroxidase labeled anti−mouse IgG (Amersham Bioscience)を37℃1時間反応させた。その後、0.1%Tween20含有PBSで3回洗浄し、次にEnhanced chemiluminescence(ECL)キット(Amersham Bioscience)を用いて発色反応を行った後、化学発光強度をマルチプレートリーダーLmaxTMII384(Molecular Devices Corporation.)により測定し、同装置に備え付けのSoftMax(R) Proで数値化した。
【0064】
実験結果
表皮角化細胞の老化に伴って発現が変化するタンパク質の中で、β−cateninについてヒトの皮膚老化度との相関があるかどうかを調べた。
ヒトの皮膚老化度の指標として、加齢との相関が明らかになっている目尻の弾力性としわ体積率を用いた。本試験で皮膚老化度を測定した20〜60歳代の女性12名において、加齢に伴って目尻の弾力性は有意に減少し、しわ体積率は有意に増加した(図12および13)。
目尻付近からテープストリッピングにより回収したタンパク試料におけるβ−cateninの発現量と年齢との相関を図14に示した。β−cateninの発現量は加齢と共に発現が減少した。
目尻付近からテープストリッピングにより回収したタンパク試料におけるβ−cateninの発現量としわ体積率との相関を図15に示した。βカテニンの発現量は目尻しわ体積率の増加に伴って有意に減少した。
【0065】
以上の結果から、マウス皮膚の遺伝子発現解析および表皮角化細胞の細胞老化を指標に見出したマーカーであるβ−cateninがヒトの皮膚老化度と相関することが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】抗酸化剤摂食時のしわ改善効果を示すグラフ。
【図2】皮膚外観(しわスコア)の変遷を示すグラフ。
【図3】皮膚水分量の紫外線照射に伴う変化を示すグラフ。
【図4】皮膚組織8−ヒドロキシ−2‘−デオキシグアノシンの免疫組織染色を示す画像。
【図5】皮膚組織8−ヒドロキシ−2‘−デオキシグアノシンの紫外線照射に伴う変化示すグラフ。
【図6】皮膚由来酸化カルボニルタンパク質の紫外線照射に伴う変化を示すグラフ。
【図7】遺伝子の発現経路表イメージ図。
【図8】各継代数および5代目に紫外線B波を照射した表皮角化細胞をSA−β−Galにより染色した細胞の染色像を示す。継代数2代目(a)および5代目(b−d)に紫外線B波を照射した表皮角化細胞をSA−β−Galにより染色し、染色された細胞の画像を示す。
【図9】継代数2代目から5代目における表皮角化細胞の細胞老化の進行度や紫外線B波を照射した時の表皮角化細胞の細胞老化の進行度をSA−β−Galにより染色し、それぞれ染色された細胞の割合を示す。
【図10】表皮角化細胞の老化よび紫外線照射に伴うβ−cateninの発現変化をウェスタンブロッティングにより解析した結果を示す。
【図11】表皮角化細胞の老化よび紫外線照射に伴うmelanoma antigen family A1の発現変化をウェスタンブロッティングにより解析した結果を示す。
【図12】女性12名における年齢と皮膚弾力性の相関図を示す。
【図13】女性12名における年齢としわ体積率の相関図を示す。
【図14】女性12名における年齢とβ−cateninの発現量の相関図を示す。
【図15】女性12名におけるしわ体積率とβ-cateninの発現量の相関図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下に示す25のヒト遺伝子の内1あるいは2種以上を指標とする皮膚老化の検査方法。
(A1)GenBank Accession No. NM_004376、
(A2)GenBank Accession No. NM_024529、
(A3)GenBank Accession No. NM_012325、
(A4)GenBank Accession No. NM_006901、
(A5)GenBank Accession No. NM_004010、
(A6)GenBank Accession No. BC004957、
(A7)GenBank Accession No. NM_012175、
(A8)GenBank Accession No. NM_001239、
(A9)GenBank Accession No. NM_024624、
(A10)GenBank Accession No. NM_004566、

(B1)GenBank Accession No. NM_001904、
(B2)GenBank Accession No. NM_001013392、
(B3)GenBank Accession No. NM_005147、
(B4)GenBank Accession No. NM_016181、
(B5)GenBank Accession No. NM_014911、
(B6)GenBank Accession No. NM_002092、
(B7)GenBank Accession No. NM_000165、
(B8)GenBank Accession No. NM_006301、
(B9)GenBank Accession No. NM_000175、
(B10)GenBank Accession No. NM_005587、
(B11)GenBank Accession No. NM_153000、
(B12)GenBank Accession No. AA862400、
(B13)GenBank Accession No. AB030655、
(B14)GenBank Accession No. BC022967、
(B15)GenBank Accession No. NM_006006。
【請求項2】
皮膚老化が光老化であることを特徴とする請求項1に記載された皮膚老化の検査方法。
【請求項3】
皮膚老化過程において遺伝子発現が上昇し続ける以下に示す遺伝子(A1)〜(A10)又は皮膚老化過程において遺伝子発現が下降し続ける以下に示す遺伝子(B1)〜(B15)の25のヒト遺伝子の内1あるいは2種以上について、紫外線に暴露された皮膚と、(i)紫外線に暴露されていない対照または(ii)紫外線への暴露が遮蔽もしくは減弱されている対照とにおける遺伝子発現を比較して、紫外線に暴露された皮膚の変調を判定する方法。
(A1)GenBank Accession No. NM_004376、
(A2)GenBank Accession No. NM_024529、
(A3)GenBank Accession No. NM_012325、
(A4)GenBank Accession No. NM_006901、
(A5)GenBank Accession No. NM_004010、
(A6)GenBank Accession No. BC004957、
(A7)GenBank Accession No. NM_012175、
(A8)GenBank Accession No. NM_001239、
(A9)GenBank Accession No. NM_024624、
(A10)GenBank Accession No. NM_004566、

(B1)GenBank Accession No. NM_001904、
(B2)GenBank Accession No. NM_001013392、
(B3)GenBank Accession No. NM_005147、
(B4)GenBank Accession No. NM_016181、
(B5)GenBank Accession No. NM_014911、
(B6)GenBank Accession No. NM_002092、
(B7)GenBank Accession No. NM_000165、
(B8)GenBank Accession No. NM_006301、
(B9)GenBank Accession No. NM_000175、
(B10)GenBank Accession No. NM_005587、
(B11)GenBank Accession No. NM_153000、
(B12)GenBank Accession No. AA862400、
(B13)GenBank Accession No. AB030655、
(B14)GenBank Accession No. BC022967、
(B15)GenBank Accession No. NM_006006。
【請求項4】
皮膚老化過程が光老化過程である請求項3に記載された皮膚の変調を判定する方法。
【請求項5】
皮膚が紫外線に曝される環境において、遺伝子発現が上昇し続ける以下に示すヒト遺伝子(A1)〜(A10)又は遺伝子発現が下降し続ける以下に示すヒト遺伝子(B1)〜(B15)の25の遺伝子の内1あるいは2種以上について、紫外線に暴露された皮膚と、(i)紫外線に暴露されていない対照または(ii)紫外線への暴露が遮蔽もしくは減弱されている対照とにおける、遺伝子発現を比較して、紫外線に暴露された皮膚の変調を判定する方法。
(A1)GenBank Accession No. NM_004376、
(A2)GenBank Accession No. NM_024529、
(A3)GenBank Accession No. NM_012325、
(A4)GenBank Accession No. NM_006901、
(A5)GenBank Accession No. NM_004010、
(A6)GenBank Accession No. BC004957、
(A7)GenBank Accession No. NM_012175、
(A8)GenBank Accession No. NM_001239、
(A9)GenBank Accession No. NM_024624、
(A10)GenBank Accession No. NM_004566、

(B1)GenBank Accession No. NM_001904、
(B2)GenBank Accession No. NM_001013392、
(B3)GenBank Accession No. NM_005147、
(B4)GenBank Accession No. NM_016181、
(B5)GenBank Accession No. NM_014911、
(B6)GenBank Accession No. NM_002092、
(B7)GenBank Accession No. NM_000165、
(B8)GenBank Accession No. NM_006301、
(B9)GenBank Accession No. NM_000175、
(B10)GenBank Accession No. NM_005587、
(B11)GenBank Accession No. NM_153000、
(B12)GenBank Accession No. AA862400、
(B13)GenBank Accession No. AB030655、
(B14)GenBank Accession No. BC022967、
(B15)GenBank Accession No. NM_006006。
【請求項6】
以下に示す(A1)〜(A10)及び(B1)〜(B15)の25のヒト遺伝子の少なくとも1あるいは2以上の発現を同時に評価する皮膚老化マーカー遺伝子発現測定キット、又は、紫外線被爆による皮膚変調測定用キット。
(A1)GenBank Accession No. NM_004376、
(A2)GenBank Accession No. NM_024529、
(A3)GenBank Accession No. NM_012325、
(A4)GenBank Accession No. NM_006901、
(A5)GenBank Accession No. NM_004010、
(A6)GenBank Accession No. BC004957、
(A7)GenBank Accession No. NM_012175、
(A8)GenBank Accession No. NM_001239、
(A9)GenBank Accession No. NM_024624、
(A10)GenBank Accession No. NM_004566、

(B1)GenBank Accession No. NM_001904、
(B2)GenBank Accession No. NM_001013392、
(B3)GenBank Accession No. NM_005147、
(B4)GenBank Accession No. NM_016181、
(B5)GenBank Accession No. NM_014911、
(B6)GenBank Accession No. NM_002092、
(B7)GenBank Accession No. NM_000165、
(B8)GenBank Accession No. NM_006301、
(B9)GenBank Accession No. NM_000175、
(B10)GenBank Accession No. NM_005587、
(B11)GenBank Accession No. NM_153000、
(B12)GenBank Accession No. AA862400、
(B13)GenBank Accession No. AB030655、
(B14)GenBank Accession No. BC022967、
(B15)GenBank Accession No. NM_006006。
【請求項7】
アッセイがスポット型cDNAマイクロアレイであることを特徴とする請求項6に記載された皮膚老化マーカー遺伝子発現測定キット。
【請求項8】
皮膚又は皮膚代用品に対して試験化合物を塗布あるいは投与した後に、紫外線に暴露するものであって、
皮膚又は皮膚代用品における紫外線暴露の前と後の以下に示す(A1)〜(A10)及び(B1)〜(B15)の25個のヒト遺伝子のうち1又は2以上を比較して、細胞の紫外線暴露に対する応答を調節する化合物を検出するスクリーニング方法。
(A1)GenBank Accession No. NM_004376、
(A2)GenBank Accession No. NM_024529、
(A3)GenBank Accession No. NM_012325、
(A4)GenBank Accession No. NM_006901、
(A5)GenBank Accession No. NM_004010、
(A6)GenBank Accession No. BC004957、
(A7)GenBank Accession No. NM_012175、
(A8)GenBank Accession No. NM_001239、
(A9)GenBank Accession No. NM_024624、
(A10)GenBank Accession No. NM_004566、

(B1)GenBank Accession No. NM_001904、
(B2)GenBank Accession No. NM_001013392、
(B3)GenBank Accession No. NM_005147、
(B4)GenBank Accession No. NM_016181、
(B5)GenBank Accession No. NM_014911、
(B6)GenBank Accession No. NM_002092、
(B7)GenBank Accession No. NM_000165、
(B8)GenBank Accession No. NM_006301、
(B9)GenBank Accession No. NM_000175、
(B10)GenBank Accession No. NM_005587、
(B11)GenBank Accession No. NM_153000、
(B12)GenBank Accession No. AA862400、
(B13)GenBank Accession No. AB030655、
(B14)GenBank Accession No. BC022967、
(B15)GenBank Accession No. NM_006006。
【請求項9】
皮膚又は皮膚代用品に対して試験化合物を塗布あるいは投与した後に、紫外線に暴露するものであって、
皮膚又は皮膚代用品における紫外線暴露の前と後の以下に示す(A1)〜(A11)及び(B1)〜(B18)の29個のマウスの遺伝子のうち1又は2以上を比較して、細胞の紫外線暴露に対する応答を調節する化合物を検出するスクリーニング方法。
(A1)GenBank Accession No.BC021498、
(A2)GenBank Accession No. BB622571、
(A3)GenBank Accession No. BB464192、
(A4)GenBank Accession No.BB524436、
(A5)GenBank Accession No.NM_007868、
(A6)GenBank Accession No.BC019834、
(A7)GenBank Accession No. AV024918、
(A8)GenBank Accession No. NM_023243、
(A9)GenBank Accession No.AU022584、
(A10)GenBank Accession No.NM_133232、
(A11)GenBank Accession No.BG070464、
(B1)GenBank Accession No. NM_007614、
(B2)GenBank Accession No.BE197381、
(B3)GenBank Accession No. AK007852、
(B4)GenBank Accession No.BB794642、
(B5)GenBank Accession No. BG067888、
(B6)GenBank Accession No.BB223437、
(B7)GenBank Accession No.AV330726、
(B8)GenBank Accession No.BB370469、
(B9)GenBank Accession No.BB271021、
(B10)GenBank Accession No.AV255689、
(B11)GenBank Accession No.BB271021、
(B12)GenBank Accession No.AV024918、
(B13)GenBank Accession No.AJ414734、
(B14)GenBank Accession No.BC027227、
(B15)GenBank Accession No. AA419994、
(B16)GenBank Accession No.BQ031255、
(B17)GenBank Accession No.BE981338、
(B18)GenBank Accession No.AV167877。
【請求項10】
皮膚又は皮膚代用品がヘアレスマウス背部皮膚であり、紫外線暴露期間が2週間以上4週間以内であることを特徴とする請求項8または9記載に記載された化合物を検出するスクリーニング方法。
【請求項11】
試験化合物の投与が経口投与であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載された化合物を検出するスクリーニング方法。

【請求項12】
β−catenin及び/又はmelanoma antigen family A1を指標とする皮膚老化の検査方法。

【請求項13】
遺伝子(B1)GenBank Accession No. NM_007614の産物であるβ−catenin及び/又は遺伝子(B4)GenBank Accession No.BB794642の産物であるmelanoma antigen family A1を指標とする皮膚老化の検査方法。

































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−259851(P2007−259851A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51318(P2007−51318)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】