説明

皮膚貼付用粘着剤組成物

【課題】
常温で迅速な吸液が可能で保液率に優れ、かつ皮膚への密着性にも優れた皮膚貼付用粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】
吸水性ポリアルキレンオキシド変性物100質量部に対して熱可塑性樹脂30〜200質量部を含む皮膚貼付用粘着剤組成物ならびに該組成物をシート化して得られる皮膚貼付剤。例えば、吸水性ポリアルキレンオキシド変性物は、ポリアルキレンオキシド化合物とジオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させて得られる吸水性ポリアルキレンオキシド変性物である。例えば、熱可塑性樹脂は、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体およびエチレン/エチルアクリレート共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿潤時の皮膚密着性に優れた皮膚貼付用粘着剤組成物に関する。さらに詳しくは、吸水性ポリアルキレンオキシド変性物と熱可塑性樹脂を含む皮膚貼付用粘着剤組成物、及び該組成物をシート状に加工し膨潤させて得られる皮膚貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、化粧料パックシートや外用冷却シート、創傷被覆シート用途に、顔や腕等の皮膚に直接貼付して密着させるシート状の皮膚貼付剤が多く用いられている。
【0003】
従来より化粧料パックシートとして、保湿や清浄等を目的にしたセルロース繊維系の不織布を基材としたものが多く知られている。しかし、これらの場合不織布自体が高い吸液能を有しているにも関わらず、保液性が悪く液垂れが生じやすく、皮膚との密着性が悪い等の課題があった。この課題を解決するために、カルボキシルメチル化されたセルロース繊維不織布が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、下熱を目的とする外用冷却シートや湿布用保冷剤用の皮膚貼付型シートとして、ハイドロゲルを用いた組成物が知られている。ハイドロゲルとしては、親水性が高く吸水能を付与した例えばポリビニルアルコールと水とシクロデキストリンからなる組成物(特許文献2)やアクリル酸塩系水溶性ポリマーにグリセリンやプロピレングリコール、乾燥水酸化アルミニウムゲル、酒石酸、蒸留水を配合して静置してゲル化させた基材(特許文献3)が知られている。しかし、ポリビニルアルコールでは含水後に凍結させて室温下で10時間静置する必要があり、また、アクリル酸塩系ポリマーの場合も25℃、相対湿度60%の条件下で200時間熟成する等、ゲル化するのに長時間を要する。ゲル化時間を短縮するためにポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール等の水溶性高分子に保形剤としてスメクタイト、カオリン、酸化チタン等の無機粉体と水、多価アルコールに高吸水性樹脂を加えた組成物(特許文献4)や、皮膚表面の皮脂による粘着力低下を防ぐために架橋された親水性ポリマーと疎水性ポリマーと水からなるハイドロゲルも提案されている(特許文献5)。
【0005】
また、粘着剤としてアクリル系樹脂を粘着剤として使用した場合、汗等により皮膚貼付時の粘着性が低下する等の課題があり、これを解決するためにアクリル酸エステルと球状のシリカを含有する組成物も提案されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−170104号公報
【特許文献2】特開昭62−53662号公報
【特許文献3】国際公開WO2010/010756号パンフレット
【特許文献4】特開2002−136587号公報
【特許文献5】特開2010−285493号公報
【特許文献6】特開2008−167787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法により得られた不織布においては、保液率は改良されているものの、保液の絶対量が少なく、皮膚との密着性も十分ではなかった。
また、粘着性を有する特許文献4、特許文献5のハイドロゲルにおいても、ニーダーやミキサーにて水溶性高分子と各種成分を混合する等時間を要した。そのため、温度の変化やニーダーやミキサーの剪断によって薬剤成分の分解が生じる可能性も懸念された。また、水溶性高分子を含む組成物に各種添加成分を機械的に長時間混合する必要があり、ゲル化時に気泡をかみやすく粘着力が低下する等の課題があった。
【0008】
特許文献6記載の粘着力を向上させた場合でも、球状シリカの均一分散やゲル分率の調整が難しく、粘着性の更なる向上が望まれていた。
【0009】
本発明の課題は常温で迅速な吸液が可能で保液率に優れ、かつ皮膚への密着性にも優れた皮膚貼付用粘着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、吸水性ポリアルキレンオキシド変性物および熱可塑性樹脂を含む皮膚貼付用粘着剤組成物が、常温で短時間に吸液可能で柔軟性、皮膚への密着性に優れた皮膚貼付用粘着剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、
項1.吸水性ポリアルキレンオキシド変性物100質量部に対して熱可塑性樹脂30〜200質量部を含む皮膚貼付用粘着剤組成物、
項2.吸水性ポリアルキレンオキシド変性物が、ポリアルキレンオキシド化合物とジオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させて得られる吸水性ポリアルキレンオキシド変性物であって、吸水能力が10〜40g/g、水溶出分が10〜30%の吸水性ポリアルキレンオキシド変性物である項1記載の皮膚貼付用粘着剤組成物、
項3.熱可塑性樹脂が、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体およびエチレン/エチルアクリレート共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種である項1または2記載の皮膚貼付用粘着剤組成物、
項4.項1〜3のいずれか1項記載の皮膚貼付粘着剤組成物を用いた皮膚貼付剤、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は熱可塑性を有するため、一般的な熱溶融押出成型が可能で、得られた成型品は常温で迅速に吸液が可能で、薬剤の分解や気泡の発生が無く柔軟性に優れ、ノニオン性であるため汗等の塩分の吸収が可能で皮膚への密着性も低下しない。そのため、化粧料パックシートや外用冷却シート、創傷被覆シート等に広く用いることができる。また、皮膚貼付用粘着剤組成物はヒートシール性を有するためそれらを不織布で覆うことにより、化粧用パフとしても使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物は、吸水性ポリアルキレンオキシド変性物と熱可塑性樹脂を含む。
【0014】
熱可塑性樹脂の使用割合は、吸水性ポリアルキレンオキシド変性物100質量部に対して、30〜200質量部であり、好ましくは40〜150質量部である。熱可塑性樹脂の使用割合が30質量部未満の場合、得られる皮膚貼付用粘着剤組成物の吸液時に強度が低くなり皮膚への密着性が悪くなるおそれがある。また、熱可塑性樹脂の使用割合が200質量部を超える場合、得られる皮膚貼付用粘着剤組成物の保液能が低くなるおそれがある。
【0015】
吸水性ポリアルキレンオキシド変性物としては、ポリアルキレンオキシド化合物とジオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させて得られる吸水性ポリアルキレン変成物が好ましく用いられる。吸水性ポリアルキレン変成物は熱可塑性を有するため、熱可塑性樹脂に対する相溶性も良好で、保水性と柔軟性と密着性に優れた皮膚貼付用粘着剤組成物を得ることができる。
【0016】
吸水性ポリアルキレンオキシド変性物の吸水能は、好ましくは10〜40g/gであり、より好ましくは15〜35g/gである。吸水性ポリアルキレンオキシド変性物の吸水能が10g/g未満の場合、得られる皮膚貼付用粘着剤組成物の保水能が低くなるおそれがある。吸水性ポリアルキレンオキシド変性物の吸水能が40g/gを超える場合、得られる皮膚貼付用粘着剤組成物の吸液時のゲル強度が低くなるおそれがある。なお、本発明において吸水能とは、後述の方法により測定した値である。
【0017】
吸水性ポリアルキレンオキシド変性物の水溶出分は、好ましくは10〜30%であり、より好ましくは12〜25%である。吸水性ポリアルキレンオキシド変性物の水溶出分が10%未満の場合、得られる皮膚貼付用粘着剤組成物の密着性が悪くなるおそれがある。吸水性ポリアルキレンオキシド変性物の水溶出分が30%を超える場合、肌残りするおそれがある。なお、本発明において水溶出分とは、後述の方法により測定した値である。
【0018】
吸水性ポリアルキレンオキシド変性物の溶融粘度は、フローテスターを用いて測定した際(条件:170℃、5.0MPa、直径1mm×長さ1mmのダイを使用)、100〜800[Pa・s]であることが好ましく、200〜600[Pa・s]であることがより好ましい。溶融粘度が100[Pa・s]未満の場合、得られる皮膚貼付用粘着剤組成物の吸液時の強度が低くなるおそれがある。溶融粘度が800[Pa・s]を超える場合、熱可塑性樹脂との相溶性が低くなるおそれがある
【0019】
前記ポリアルキレンオキシド化合物としては、エチレンオキシド基を90質量%以上有するポリアルキレンオキシド化合物が好ましく、エチレンオキシド基を95質量%以上有するポリアルキレンオキシド化合物がより好ましい。エチレンオキシド基が90質量%未満の場合、得られる皮膚貼付用粘着剤組成物の吸水速度が遅くなるおそれがある。
【0020】
また、前記ポリアルキレンオキシド化合物としては、数平均分子量5,000〜50,000のポリアルキレンオキシド化合物が好ましく、数平均分子量10,000〜30,000のポリアルキレンオキシド化合物がより好ましい。数平均分子量が5,000未満の場合、得られる皮膚貼付用粘着剤組成物の吸液能が低くなるおそれがある。数平均分子量が50,000を超える場合、得られる吸水性ポリアルキレンオキシド変成物の溶融粘度が高くなり、熱可塑性樹脂との相溶性が悪く、熱成型しにくくなるおそれがある。
【0021】
前記ジオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールおよび1,9−ノナンジオール等が挙げられる。これらのジオール化合物の中でも、得られる吸水性ポリアルキレンオキシド変性物が吸水能に優れる観点、安定性に優れる観点から、エチレングリコールおよび1,4−ブタンジオールが好適に用いられる。これらのジオール化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
前記ジオール化合物の使用割合は、前記ポリアルキレンオキシド化合物1モルに対して、好ましくは0.8〜2.5モル、より好ましくは1.0〜2.0モルである。ジオール化合物の使用割合が0.8モル未満の場合、得られる皮膚貼付用粘着剤組成物の吸水時の強度が低くなるおそれがある。また、ジオール化合物の使用割合が2.5モルを超える場合、得られる皮膚貼付用粘着剤組成物の吸液能が低くなるおそれがある。なお、ポリアルキレンオキシド化合物のモル数は、その質量を数平均分子量で除することにより求めることができる。
【0023】
前記ジイソシアネート化合物としては、同一分子内にイソシアネート基(−NCO)を2個有する化合物であれば特に限定されず、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネ−ト(HMDI)、3−イソシアナ−トメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネ−ト(IPDI)、1,8−ジメチルベンゾール−2,4−ジイソシアネート、および、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)等が挙げられる。これらのジイソシアネート化合物の中でも、熱可塑性樹脂との相溶性の観点、安定性に優れる観点から、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネ−ト(HMDI)および1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が好適に用いられる。これらのジイソシアネート化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
前記ポリアルキレンオキシド化合物とジオール化合物とジイソシアネート化合物のそれぞれの使用割合は、ポリアルキレンオキシド化合物の末端水酸基およびジオール化合物の水酸基の合計モル数に対する、ジイソシアネート化合物のイソシアネート基のモル数の比[R値=(−NCO基/−OH基)]が、好ましくは0.7〜1.2、より好ましくは0.8〜1.05の範囲にあるように決定される。R値が0.7未満の場合、得られる吸水性ポリアルキレンオキシド変性物が水溶性になるおそれがある。また、R値が1.2を超える場合、得られる吸水性ポリアルキレンオキシド変性物の溶融粘度が高くなり、熱可塑性樹脂との相溶性が悪くなるおそれがある。
【0025】
ポリアルキレンオキシド化合物とジオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させる方法としては、例えば、トルエン、キシレン、ジメチルホルムアミド等の反応溶媒に溶解や分散させて反応させる方法;粉末状または固体状で両者を均一に混合した後、所定の温度に加熱して反応させる方法等が挙げられる。工業的実施の見地からは、各原料を溶融状態で連続的に供給し多軸押出機中で混合、反応させる方法が好ましい。前記反応の温度としては、70〜210℃であることが好ましい。
【0026】
また、吸水性ポリアルキレンオキシド変性物を製造する際、反応を促進させる観点から、反応系内に、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、2−エチルヘキサン酸スズ、トリエチレンジアミン等を少量添加することもできる。
【0027】
かくして、ポリアルキレンオキシド化合物とジオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させることにより、吸水性ポリアルキレンオキシド変性物を得ることができる。
【0028】
熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、エチレン/エチルアクリレート共重合体、エチレン/メタアクリル酸共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/エチルアクリレート共重合体等が好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、前記吸水性ポリアルキレンオキシド変性物と良好な相溶性を有する観点から、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体及びエチレン/エチルアクリレート共重合体が好適に用いられる。これらの熱可塑性樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明では、後述の方法で測定したデュロメータD硬さ(HDD)が10〜60、好ましくは20〜50の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。HDDが10未満の場合、得られる皮膚貼付用粘着剤組成物が柔らかくなりすぎて、いわゆるコシのない状態になるおそれがある。また、前記HDDが60を超える場合、得られる皮膚貼付用粘着剤組成物が硬くなって密着性が悪くなるおそれがある。
【0029】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物を製造する方法としては、1)前記吸水性ポリアルキレンオキシド変性物、および、前記熱可塑性樹脂の所定量をそれぞれ個別に、もしくはヘンシェルミキサーやブレンダー等の混合機を用いて混合した後、定量フィダー等でニーダー、ロール、押出機等に供給して、溶融混合する方法、2)あらかじめ溶融させておいた熱可塑性樹脂中で、前記ポリアルキレンオキシドとジオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させる方法等が挙げられる。
【0030】
前記溶融、溶融混合、反応を行う機器としては、前記各成分の混合性に優れる観点から、2軸押出機が好適に用いられる。
【0031】
本発明で得られる皮膚貼付用粘着剤組成物は、一般的な溶融押出成型が可能で、射出成型機、押出成型機、インフレーション成型機等によりシート状、棒状、フィルム状に成型できる。なかでも、薄手のフィルム成型が容易なインフレーション成型が好適に用いられる。フィルムの厚みは、50〜300μmが好ましく、100〜200μmがより好ましい。厚みが50μm未満の場合、強度が低くなり皮膚への密着性が悪くなるおそれがある。厚みが300μmを超えると膨潤時の寸法が大きく変わるおそれがある。
【0032】
本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物を製造する際、前記各成分や得られる皮膚貼付用粘着剤組成物の分解を防ぐ観点から安定剤を、耐候性を向上させる観点から紫外線吸収剤を、着色する観点から顔料、着色料等をそれぞれ添加しても良い。
【0033】
得られた皮膚貼付用粘着剤組成物の溶融押出成型品は、常温で吸液することができる。吸液量は、熱可塑性樹脂の含量、成型品の厚み、吸液時間等により制御できる。通常2〜5分間以内に最大の吸液量とすることが好ましい。
【0034】
また、本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物はイオン性を有さないため、従来のアクリル酸系水溶性樹脂と異なり、塩類の吸液も可能となる。また、常温での吸液が可能なため分解しやすいアスコルビン酸やアスコルビン酸ナトリウム、エチルアスコルビン酸等の分解しやすい薬剤を溶解した水溶液を短時間に効率的に吸液することができる。トコフェノール等の脂溶性薬剤についても、乳化剤により水に可溶化させることで、吸液させることができる。また、これらの薬剤を吸液した皮膚貼付用粘着剤組成物は、効果的に薬剤を放出することができる。
【0035】
さらに、本発明の皮膚貼付用粘着剤組成物はヒートシール性を有しており、皮膚貼付用粘着剤組成物にヒートシール性を有さないレーヨン製の不織布と組合せることによって、吸液性と同時に肌触りの良い化粧用シート等にすることもできる。
【0036】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
【0037】
[評価方法]
製造例に記載の吸水性ポリアルキレンオキシド変性物およびポリアクリル酸塩架橋物について、(1)吸水能、(2)水溶出分、(3)溶融粘度を以下の方法に従って測定した。実施例に用いた熱可塑性樹脂及び実施例で得られた皮膚貼付用粘着剤組成物について(4)デュロメータD硬さ(HDD)を以下の方法に従って測定した。実施例および比較例で得られた皮膚貼付用粘着剤組成物について、(5)膨潤率、(6)フィルム強度、(7)拡散性、浸込性、保水性を以下の方法に従って測定および評価した。実施例および比較例の皮膚貼付用粘着剤組成物を用いて得られた皮膚貼付剤について、(8)密着性、肌残り、保液性について以下の方法に従って測定および評価した。
【0038】
(1)吸水能
ポリアルキレンオキシド変性物の吸水能については、以下の方法により測定した。
約1gのポリアルキレンオキシド変性物を秤量(A[g])した後、200mL容のビーカーに計りとった100mLのイオン交換水に、室温下(22℃)で、24時間浸漬してゲル化させた。その後、200mesh(孔径:75μm)の金網にてゲルをろ過し、その質量(B[g])を測り、次式により、吸水能を算出した。
吸水能(g/g)=B/A
【0039】
(2)水溶出分
上記吸水能測定後のゲルを、50℃の熱風乾燥機にて8時間乾燥させた後の重量を秤量し(C[g])、次式により水溶出分を求めた。
水溶出分(%)=(A−C)/A×100
【0040】
(3)溶融粘度
試料1.5gを、フローテスター(株式会社島津製作所製、型番:CFT−500C)を用いて、以下に示す条件で測定した。
荷重 :5.0MPa
測定温度:170℃
ダイ直径:1mm
ダイ長さ:1mm
【0041】
(4)デュロメータD硬さ(HDD)
日本工業規格:JIS K 7215(1986年)に記載されている「プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法」に従い、「デュロメータのタイプD」において測定される「硬さ」を意味し、デュロメータ保持台上で、「試料面の平面度並びに平行度及び試料面間の密着度も良好なことを確認後、試料の厚み(T)が6mm以上の厚みになるように重ねて測定した。
【0042】
(5)膨潤率
実施例および比較例により得られた皮膚貼付用粘着剤組成物のフィルムを2cm(幅:W)×5cm(長さ:L)に切断し、測定サンプル(質量A[g])とした。
測定サンプルを吸収用溶液100mlを入れた金属性バット(20cm×30cm×3cm)に室温下(22℃)で1分間浸漬して膨潤させた。その後、測定サンプルを取り出し、ペーパータオルを用いて表面の水を拭い、その質量(B[g])を測定した。
膨潤率(%)=(B−A)/A×100
【0043】
(6)フィルム強度・柔軟性
吸水試験で得られたフィルムを手で広げ、ポリエチレン製試験管(直径2.5cm×長さ12.5cm)に巻きつけた時のフィルムの破れを調べた。
○:破れも無く、柔軟性もあり問題なく密着して巻きつけることができる
△:柔軟性があり巻きつけることはできるが、破れる。
×:手で持つと破れて巻きつけることができない。
【0044】
(7)拡散性、浸込性、保水性
予め質量(C[g])を測定したろ紙(ADVANTEC社製 90mm No.1)の上に、サンプルとして6cm×6cmの大きさに切断したフィルムを置き、食用青色1号にて着色した水2mlをサンプルに上にシリンジにて10秒かけて垂らし以下の項目を評価した。
【0045】
拡散性
サンプル表面での水の広がりをみた。
○:サンプル全体に広がっている。
×:シリンジ部分のみが濡れて拡散していない。
【0046】
浸込性
ろ紙の質量(D[g])を測定して浸込率を以下の式により算出した。
浸込率[%]=(D−C)/2×100
【0047】
保水性
着色水吸液前のフィルム質量(E[g])、着色水吸液後のフィルム質量(F0[g])、及び吸液後のフィルムを40℃の恒温器に15分、30分、60分間保管した後の質量(F15、F30、F60[g])を測定して以下の式により、ゲル状フィルムの保液率を求めた。
15分後の保水率(%)=(F0−F15)/(F0−E)×100
30分後の保水率(%)=(F0−F15)/(F0−E)×100
60分後の保水率(%)=(F0−F60)/(F0−E)×100
60分後の保水率が40%以上あると良好な皮膚貼付剤と判断できる。
【0048】
(8)密着性、肌残り、保液性
以下の配合組成になる皮膚貼付剤を作製した。
1.皮膚貼付用粘着剤組成物シート
・皮膚貼付用粘着剤組成物 5 質量部
・グリセリン 4 質量部
・プロピレングリコール 4 質量部
・蒸留水 87 質量部
6cm径に切断した皮膚貼付用粘着剤組成物のフィルムを上記質量部のグリセリン、プロピレングリコール、蒸留水を混合した溶液中に5分間浸漬し、全量吸水させ皮膚貼付剤とした。
【0049】
2.アクリル酸塩系水溶性ポリマーシート
・アクリル酸塩系水溶性ポリマー 5 質量部
・グリセリン 4 質量部
・プロピレングリコール 4 質量部
・乾燥水酸化アルミニウムゲル 0.2 質量部
・酒石酸 0.25質量部
・蒸留水 86.55質量部
グリセリン4質量部およびプロピレングリコール4質量部からなる混合溶媒に、アクリル酸塩系水溶性ポリマー5質量部、乾燥水酸化アルミニウムゲル(協和化学工業株式会社製、型番:S−100、酸反応性:0.1N−HCI=180秒)0.2質量部を添加し、分散させ、これをA液とした。次に、蒸留水86.55質量部に、酒石酸0.25質量部を添加し、溶解させ、これをB液とした。500ml容のビーカーに、A液を全量添加し、翼径75mmのピッチドパドルを用いて500rpmで撹拌しながら、B液を全量投入し、30秒間撹拌することにより、ゲルを作成した。
【0050】
[ゲルの熟成]
調製したゲル115〜120gをポリエチレン製容器(アズワン株式会社製、商品名:タイトボーイTB−2)に移し、コンディショニングミキサー(株式会社シンキー製、商品名:あわとり錬太郎MX−201型)を用いて1.5分間脱泡した後、250℃、相対湿度60%に調整した恒温恒湿器(エスペック株式会社製、商品名:LHU−113型)に入れ、200時間熟成させて得られたゲルを切断して、直径6cm、厚み1cmの皮膚貼付剤シートとした。
【0051】
密着性、肌のこり試験
人工皮革(出光テクノファイン製 サプラーレ)を両面テープにて10cm×10cm×厚み0.30cmの鉄板に貼り付け、その上に上記皮膚貼付剤を置いて、6cm径の141g荷重を30秒かけて貼り付けた(5g/cm2の圧力)。その後、鉄板を垂直に立てて40℃の恒温器に4時間保管し、密着性をみた。
○:剥がれていない
△:一部剥がれている
×:剥がれている
【0052】
密着性を確認後、皮膚貼付剤を剥がして、人工皮革の表面に残存するポリマーを肉眼で観察した。
○:ポリマー残りがなく、剥がした跡形なし
△:ポリマーは残っていないが、剥がした跡形あり
×:ポリマーが残っている。
【0053】
保液性試験
吸液前のフィルムもしくはシート質量(G[g])、吸液後のフィルムもしくはシート質量(H0[g])、及び吸液後のフィルムを40℃の恒温器に15分、30分、60分間保管した後の質量(H15、H30、H60[g])を測定して以下の式により、ゲル状シートの保液率を求めた。なお、60分後の保液率が50%以上あると良好な皮膚貼付剤と判断できる。
15分後の保液率(%)=(H0−H15)/(H0−G)×100
30分後の保液率(%)=(H0−H30)/(H0−G)×100
60分後の保液率(%)=(H0−H60)/(H0−G)×100
【0054】
[製造例1]吸水性ポリアルキレンオキシド変性物の製造
80℃に保温された攪拌機を備えた貯蔵タンクAに、十分に脱水した数平均分子量20,000のポリエチレンオキシド100質量部、1,4−ブタンジオール0.90質量部およびジオクチルスズジラウレート0.1質量部の割合で投入し、窒素ガス雰囲気下で攪拌して均一な混合物とした。これとは別に、30℃に保温された貯蔵タンクBにジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートを投入し、窒素ガス雰囲気下で貯蔵した。
定量ポンプを用いて、貯蔵タンクAの混合物を500g/分の速度にて、貯蔵タンクBのジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートを19.4g/分の速度にて、110〜140℃に設定した2軸押出機に連続的に供給し(R値=1.00)、押出機中で混合して反応を行い、押出機出口からストランドを出し、ペレタイザーによりペレット化して、吸水性ポリアルキレンオキシド変性物を得た。
得られた吸水性ポリアルキレンオキシド変性物の吸水能は25g/g、水溶出分は19%、溶融粘度は320Pa・sであった。
【0055】
[製造例2]吸水性ポリアルキレンオキシド変性物の製造
数平均分子量15,000のエチレンオキシド/プロピレンオキシド(質量比:90/10)共重合体を250g/分の速度にて、40℃に加熱したエチレングリコールを2.1g/分の速度にて、それぞれ40mmφ単軸押出機(L/D=40、設定温度:90℃)に供給して両者を溶融混合した。
吐出口から得られる混合物(均一な溶融状態で吐出しており、LCにて分析して仕込み比で混合していることを確認した)を、30mmφの2軸押出機(L/D=41.5)のホッパー口(設定温度:80℃)へ連続的に供給した。同時に2軸押出機のホッパー口にはジオクチルスズジラウレートを0.5g/分の速度にて供給した。
これとは別に、前記2軸押出機のホッパー口の下流側に位置するスクリューバレル部に、30℃に調整したジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネートを12.4g/分の速度にて供給し(R値=0.95)、窒素雰囲気下で連続的に反応させた(設定温度:180℃)。2軸押出機出口から得られるストランドを冷却後、ペレタイザーによりペレット化して吸水性ポリアルキレンオキシド変性物を得た。
得られた吸水性ポリアルキレンオキシド変性物の吸水能は20g/g、水溶出分は15%、溶融粘度は150Pa・sであった。
【0056】
[製造例3]アクリル酸塩系水溶性ポリマーの製造
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管ならびに撹拌機および撹拌羽根を備えた1000ml容の5つロ円筒型丸底フラスコを準備した。このフラスコに、n−ヘプタン340gを入れ、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社製、リョートーシュガーエステルS−370)0.92gおよび無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、撹拌しながら80℃まで昇温して界面活性剤を溶解した後、55℃まで冷却した。
一方、500ml容の三角フラスコに、80質量%のアクリル酸水溶液92g(1.02モル)を入れ、外部より冷却しながら、30質量%の水酸化ナトリウム水溶液54.5g(0.41モル)を滴下して40モル%の中和を行った後、ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)2塩酸塩の2.0質量%水溶液1.15g、次亜リン酸ナトリウム1水和物の1.0質量%水溶液0.92g、およびイオン交換水60gを加えて溶解し、単量体水溶液を調製した。
この単量体水溶液の全量を、前記円筒型丸底フラスコに添加した。フラスコを60℃の水浴に浸漬して58℃まで昇温し、系内を窒素置換して重合反応を行った。30分後にピーク温度79℃に達し、そこから0.5時間、60℃の水浴に浸漬させた状態を保持し、反応を継続させた。0.5時間後の内液温度は59℃であった。得られた重合スラリー液を30℃まで冷却してサンプリングし、重合率を測定した。重合率は、96モル%であった。
重合終了後、125℃の油浴で重合スラリー液を昇温し、n−ヘプタンと水との共沸蒸留により、n−ヘプタンを還流しながら106gの水を系外へ除去した。さらに、系内のn−ヘプタンを蒸留により除去して、乾燥させることにより、アクリル酸塩系水溶性ポリマー86.1gを得た。なお、得られたポリアクリル酸塩系性ポリマーは水溶性で吸水性を示さず、熱にも不融なため溶融粘度は測定できなかった。
【0057】
[実施例1]
製造例1と同様にして得られた吸水性ポリアルキレンオキシド変性物及びエチレン/酢酸ビニル共重合体[略号:EVA、住友化学株式会社製:エバテートD3010、酢酸ビニル含量=10%、メルトインデックス(MI)=6、HDD35]をそれぞれ8kg/hr、3.5kg/hrの供給量で、130℃に設定した28mmφの2軸押出機(L/D=40)に供給し、溶融混合して皮膚貼付用粘着剤組成物を得た。皮膚貼付用粘着剤組成物の組成割合を表1に示す。
得られた皮膚貼付用粘着剤組成物を150℃に設定したホットプレス(ゴンノ水圧機製作所製、40tプレス、圧力:50kg/cm)を用いて10cm(W)×10cm(L)×0.10cm(T)のシートに成型しデュロメータD硬さ(HDD)を求めた。
また、得られた皮膚貼付用粘着剤組成物を130〜150℃に設定した押出機(シンコーマシナリー株式会社製 SYH25−25、L/D=25)とインフレーション成型機(シンコーマシナリー株式会社製 SF−300)を用いて成型し、幅160mm、厚み120μmのインフレーションフィルムを得た。
得られた皮膚貼付用粘着剤組成物のインフレーションフィルムを所定の大きさに切断し評価に供した。結果を表2に示す。
【0058】
[実施例2]
製造例1と同様にして得られた吸水性ポリアルキレンオキシド変性物及びエチレン/アクリル酸共重合体[略号:EAA、ダウケミカル社製:プリマコール5980、アクリル酸含量=20%、MI=300、HDD40]をそれぞれ8kg/hr、14kg/hrの供給量で、140℃に設定した28mmφの2軸押出機(L/D=40)に供給し、溶融混合して皮膚貼付用粘着剤組成物を得た。皮膚貼付用粘着剤組成物の組成割合を表1に示す。
得られた皮膚貼付用粘着剤組成物を、130℃に設定したホットプレス(ゴンノ水圧機製作所製、40tプレス、圧力:50kg/cm)を用いて、10cm(W)×10cm(L)×0.1cm(T)のシートに成型した。
また、得られた皮膚貼付用粘着剤組成物を130〜150℃に設定した押出機(シンコーマシナリー株式会社製 SYH25−25、L/D=25)とインフレーション成型機(シンコーマシナリー株式会社製 SF−300)を用いて成型し、幅160mm、厚み150μmのインフレーションフィルムを得た。
得られた皮膚貼付用粘着剤組成物のインフレーションフィルムを所定の大きさに切断し評価に供した。結果を表2に示す。
【0059】
[実施例3]
製造例2と同様にして得られた吸水性ポリアルキレンオキシド変性物、エチレン/アクリル酸共重合体[略号:EAA、ダウケミカル社製:プリマコール3460、アクリル酸含量=9.7%、MI=20、HDD42]及びエチレン/酢酸ビニル共重合体[略号:EVA、住友化学株式会社製:エバテートD3010、酢酸ビニル含量=10%、メルトインデックス(MI)=6、HDD35]をそれぞれ5kg/hr、3.75kg/hr、3.75kg/hrの供給量で、130℃に設定した28mmφの2軸押出機(L/D=40)に供給し、溶融混合して皮膚貼付用粘着剤組成物を得た。皮膚貼付用粘着剤組成物の組成割合を表1に示す。
得られた皮膚貼付用粘着剤組成物を、130℃に設定したホットプレス(ゴンノ水圧機製作所製、40tプレス、圧力:50kg/cm)を用いて、10cm(W)×10cm(L)×0.1cm(T)のシートに成型した。
また、得られた皮膚貼付用粘着剤組成物を130〜150℃に設定した押出機(シンコーマシナリー株式会社製 SYH25−25、L/D=25)とインフレーション成型機(シンコーマシナリー株式会社製 SF−300)を用いて成型し、幅160mm、厚み180μmのインフレーションフィルムを得た。
得られた皮膚貼付用粘着剤組成物のインフレーションフィルムシートを所定の大きさに切断し評価に供した。結果を表2に示す。
【0060】
[比較例1]
製造例1と同様にして得られた吸水性ポリアルキレンオキシド変性物及びエチレン/酢酸ビニル共重合体[略号:EVA、住友化学株式会社製:エバテートD3010、酢酸ビニル含量=10%、MI=6、HDD35]をそれぞれ10kg/hr、2.5kg/hrの供給量で、130℃に設定した28mmφの2軸押出機(L/D=40)に供給し、溶融混合して皮膚貼付用粘着剤組成物を得た。皮膚貼付用粘着剤組成物の組成割合を表1に示す。
得られた皮膚貼付用粘着剤組成物を150℃に設定したホットプレス(ゴンノ水圧機製作所製、40tプレス、圧力:50kg/cm)を用いて10cm(W)×10cm(L)×0.10cm(T)のシートに成型しデュロメータD硬さ(HDD)を求めた。
また、得られた皮膚貼付用粘着剤組成物を130〜150℃に設定した押出機(シンコーマシナリー株式会社製 SYH25−25、L/D=25)とインフレーション成型機(シンコーマシナリー株式会社製 SF−300)を用いて成型し、幅160mm、厚み120μmのインフレーションフィルムを得た。
得られた皮膚貼付用粘着剤組成物のインフレーションフィルムを所定の大きさに切断し評価に供した。結果を表2に示す。
【0061】
[比較例2]
製造例1と同様にして得られた吸水性ポリアルキレンオキシド変性物及びエチレン/アクリル酸共重合体[略号:EAA、ダウケミカル社製:プリマコール5980、アクリル酸含量=20%、MI=300、HDD40]をそれぞれ10kg/hr、4kg/hrの供給量で、130℃に設定した28mmφの2軸押出機(L/D=40)に供給し、溶融混合して皮膚貼付用粘着剤組成物を得た。皮膚貼付用粘着剤組成物の組成割合を表1に示す。
得られた皮膚貼付用粘着剤組成物を150℃に設定したホットプレス(ゴンノ水圧機製作所製、40tプレス、圧力:50kg/cm)を用いて10cm(W)×10cm(L)×0.10cm(T)のシートに成型しデュロメータD硬さ(HDD)を求めた。
また、得られた皮膚貼付用粘着剤組成物を130〜150℃に設定した押出機(シンコーマシナリー株式会社製 SYH25−25、L/D=25)とインフレーション成型機(シンコーマシナリー株式会社製 SF−300)を用いて成型し、幅160mm、厚み150μmのインフレーションフィルムを得た。
得られた皮膚貼付用粘着剤組成物のインフレーションフィルムを所定の大きさに切断し評価に供した。結果を表2に示す。
【0062】
[比較例3]
製造例2と同様にして得られた吸水性ポリアルキレンオキシド変性物、エチレン/酢酸ビニル共重合体[略号:EVA、三井・デュポンポリケミカル製:エバフレックス EV45LX、酢酸ビニル含量=46%、MI=2.5、HDD8]及びエチレン/アクリル酸共重合体[略号:EAA、ダウケミカル社製:プリマコール3460、アクリル酸含量=9.7%、MI=20、HDD42]をそれぞれ12kg/hr、0.5kg/hr、0.5kg/hrの供給量で、130℃に設定した28mmφの2軸押出機(L/D=40)に供給し、溶融混合して皮膚貼付用粘着剤組成物を得た。皮膚貼付用粘着剤組成物の組成割合を表1に示す。
得られた皮膚貼付用粘着剤組成物を150℃に設定したホットプレス(ゴンノ水圧機製作所製、40tプレス、圧力:50kg/cm)を用いて10cm(W)×10cm(L)×0.10cm(T)のシートに成型しデュロメータD硬さ(HDD)を求めた。
また、得られた皮膚貼付用粘着剤組成物を130〜150℃に設定した押出機(シンコーマシナリー株式会社製 SYH25−25、L/D=25)とインフレーション成型機(シンコーマシナリー株式会社製 SF−300)を用いて成型し、幅160mm、厚み150μmのインフレーションフィルムを得た。
得られた皮膚貼付用粘着剤組成物のインフレーションフィルムを所定の大きさに切断し評価に供した。結果を表2に示す。
【0063】
[比較例4]
製造例3と同様にして得られたアクリル酸塩系水溶性ポリマー及びエチレン/酢酸ビニル共重合体[略号:EVA、住友化学株式会社製:エバテートD3010、酢酸ビニル含量=10%、メルトインデックス(MI)=6、HDD35]をそれぞれ8kg/hr、3.5kg/hrの供給量で、130℃に設定した28mmφの2軸押出機(L/D=40)に供給したが、皮膚貼付用粘着剤組成物は得られなかった。
そこで、前記評価方法(8)において調製したアクリル酸塩系水溶性ポリマーシートの評価結果を、代わりに表2に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
表2に示された結果から明らかなように、吸水性ポリアルキレンオキシド変性物100質量部に対して熱可塑性樹脂30〜200質量部を含む皮膚貼付用粘着剤組成物を用いて得られた皮膚貼付剤は、従来のアクリル酸塩系ポリマーに比べて短時間に吸液してゲル化され、密着性に優れ肌残りも少ない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明にかかる皮膚貼付用粘着剤組成物を用いた皮膚貼付剤は、短時間で吸液すると共に保水性、柔軟性、密着性にも優れ、化粧用パック剤、創傷被覆材、冷却シートに広く用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性ポリアルキレンオキシド変性物100質量部に対して熱可塑性樹脂30〜200質量部を含む皮膚貼付用粘着剤組成物。
【請求項2】
吸水性ポリアルキレンオキシド変性物が、ポリアルキレンオキシド化合物とジオール化合物とジイソシアネート化合物とを反応させて得られる吸水性ポリアルキレンオキシド変性物であって、吸水能力が10〜40g/g、水溶出分が10〜30%の吸水性ポリアルキレンオキシド変性物である請求項1記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。
【請求項3】
熱可塑性樹脂が、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体およびエチレン/エチルアクリレート共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1または2記載の皮膚貼付用粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の皮膚貼付粘着剤組成物を用いた皮膚貼付剤。

【公開番号】特開2012−240937(P2012−240937A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110279(P2011−110279)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】