説明

皮膚貼付用組成物および皮膚貼付用材

【課題】Gly−X−Yで示されるコラーゲントリペプチドを含むコラーゲンペプチドを含有し、保湿性に優れる皮膚貼付用組成物を提供する。
【解決手段】粘着性基材組成物とGly−X−Yで示されるコラーゲントリペプチドを含むコラーゲンペプチドとからなり、前記粘着性基材組成物100質量部に対して前記コラーゲンペプチドを5.0質量部以下含有することを特徴とする、皮膚貼付用組成物である。保湿性に優れるため、シート状のシート状美顔パックなどとして好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パップ剤、プラスター剤、シート状美顔パックなどに使用される皮膚貼付用組成物に関し、より詳細には、Gly−X−Yで示されるコラーゲントリペプチドを含むコラーゲンペプチドを含有し、その皮膚浸透性によって保湿効果に優れる皮膚貼付用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、患部の疼痛緩和の目的で、基材樹脂に鎮痛剤を配合して患部に貼着させる経皮吸収用のパップ剤やプラスター剤、不織布などの基材シートに保湿成分や美白料を含有させたゲル状組成物層を積層し、顔や手足などに貼着するシート状美顔パック、おでこに貼る冷却用シート、有効成分の徐放を目的とした徐放性貼付剤などがある。これらは表面の剥離シートを除去するだけで皮膚に貼着することができるため操作が簡便であり、使用目的や配合する薬剤などに応じて各種の樹脂組成物が使用されている。
【0003】
例えば、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)からなる高分子基材に3−L−メントキシプロパン−1,2−ジオールを可塑剤として含有した貼付剤がある(特許文献1)。スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)との相溶性に優れ、かつ安全性、安定性の高い可塑剤を使用することで、皮膚への付着性、フィット感、剥離時の痛み等の総合的使用感に優れた貼付剤を提供しうる、という。また、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)と粘着付与剤を含むゴム系感圧性粘着基剤に、ケトプロフェンとテレフタリリデン−3,3’−ジカンファー−10,10’−ジスルフォン酸を配合したケトプロフェン外用製剤もある(特許文献2)。ケトプロフェンは紫外線で不安定であり光線過敏症が発生する場合があるため、所定の紫外線吸収剤を配合して光線過敏症のないケトプロフェン外用製剤としている。
【0004】
一方、水溶性高分子と、多価アルコールと、保湿成分と、架橋剤と、美肌成分と、水と、防腐剤とを必須成分として含有し、前記架橋剤が水難溶性アルミニウム化合物と多官能性エポキシ化合物とからなるシート状美顔パックもある(特許文献3)。所定の架橋剤を配合することで、肌に対する適度な粘着性や保湿性を持ち、製剤物性の安定性や肌に対する安全性に優れ、使用時の使用感および肌に対するパック効果に優れた高含水のシート状美顔パックとなる、という。
【0005】
一方、ゼラチン成分またはコラーゲン成分をコラゲナーゼ酵素を用いて特異的に分解して得られるアミノ酸配列がGly−X−Yのトリペプチドを含む皮膚浸透性外用剤もある(特許文献4)。コラーゲンやゼラチンの分解物でも、水溶性物質ならびに分子量が大きい成分は皮膚の角質層のバリア機能によって経皮吸収されにくいが、コラーゲン成分あるいはゼラチン成分をコラゲナーゼ酵素を用いて特異的に分解して得られたGly−X−Yのトリペプチドは高い皮膚浸透性を有し、高い保湿効果が得られる、という。
【特許文献1】特開平10−109945号公報
【特許文献2】特開2006−137735号公報
【特許文献3】特開平8−188527号公報
【特許文献4】特開2001−302690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Gly−X−Yで示されるコラーゲントリペプチドは、特許文献4に示すようにその皮膚浸透性によって保湿効果を得ることができる。しかしながら、前記コラーゲントリペプチドを含有する親水性粘着性基材組成物を皮膚に貼付しても、親水性粘着性基材組成物から皮膚への前記コラーゲントリペプチドの移行が十分でない場合があり、その結果、前記コラーゲントリペプチドによる高い保湿効果を得ることはできない場合がある。
【0007】
また、前記特許文献4では、前記コラーゲントリペプチドを含有する化粧水、乳液、クリーム、点眼剤、栄養飲料などを製造しているが、パック剤、プラスター剤、シート状美顔パックなどの皮膚貼着剤への応用に関する記載はない。特許文献1〜3は、いずれも粘着性基材の組成に関するものであるが、前記コラーゲントリペプチドを配合した場合の皮膚浸透性や保湿性について開示するものではない。
【0008】
一方、皮膚貼付用組成物は、パップ剤、プラスター剤として使用することができ、皮膚からの剥がれを回避しうる適度な接着性が要求される一方、患部に一旦貼付されると数時間に亘って連続的に皮膚と接着される製剤である。前記特許文献3のシート状美顔パックには、多官能性エポキシ化合物などが配合されているが、アレルギー性物質や刺激性物質の使用が回避されることが望まれる。更に、長期貼付による皮膚接触面の刺激を緩和できればより好ましい。
【0009】
そこで本発明は、安全性が高くかつ保湿効果に優れる、前記コラーゲントリペプチドを含有した皮膚貼付用組成物を提供することを目的とする。
更に本発明は、前記皮膚貼付用組成物を積層した皮膚貼付用材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、皮膚貼付用組成物について詳細に検討した結果、Gly−X−Yで示されるコラーゲントリペプチドを含むコラーゲンペプチドを粘着性基材組成物100質量部に対して5.0質量部以下含有すると、前記コラーゲントリペプチドが皮膚の表層から真皮に向かって移行し、コラーゲントリペプチドによる皮膚の保湿効果が得られること、前記粘着性基材組成物として水と、水溶性高分子および/または吸水性高分子と、多価金属化合物とからなる親水性粘着性基材組成物を使用すると、コラーゲントリペプチドの皮膚への移行性に優れ、かつ親水性粘着性基材組成物の安定性に優れると共に皮膚接着性にも優れること、粘着性基材組成物がジエン系ゴム粘着基材と軟化剤とからなる場合にも前記コラーゲンペプチドを配合して保湿効果を得ることができることなどを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、粘着性基材組成物とGly−X−Yで示されるコラーゲントリペプチドを含むコラーゲンペプチドとからなり、前記粘着性基材組成物100質量部に対して前記コラーゲンペプチドを5.0質量部以下含有することを特徴とする、皮膚貼付用組成物を提供するものである。
【0012】
また本発明は、支持体に、前記皮膚貼付用組成物が積層され、前記皮膚貼付用組成物層に剥離層が積層されたことを特徴とする、皮膚貼付用材を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、Gly−X−Yで示されるコラーゲントリペプチドを含むコラーゲンペプチドを所定量配合することで、皮膚保湿性に優れる皮膚貼付用組成物が提供される。
本発明の皮膚貼付用組成物は、所定組成の親水性粘着性基材組成物のほか、スチレンブロック共重合体などのジエン系ゴム粘着基材と軟化剤とからなる疎水性基材を使用した場合でも前記コラーゲンペプチドを配合することができるため、配合する薬剤の化学的特性に合わせて皮膚貼付用組成物を親水性、疎水性などに容易に調整することができ、好適な基材の選択を簡便に行うことができる。
【0014】
本発明の皮膚貼付用組成物は、エポキシ化合物などを使用しないため、安全性に優れる。このため、パップ剤、プラスター剤、シート状美顔パック、おでこに貼る冷却用シート、有効成分の徐放を目的とした徐放性貼付剤など、皮膚に貼付する各種用途に好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第一は、粘着性基材組成物とGly−X−Yで示されるコラーゲントリペプチドを含むコラーゲンペプチドとからなり、前記粘着性基材組成物100質量部に対して前記コラーゲンペプチドを5.0質量部以下含有することを特徴とする、皮膚貼付用組成物である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
(1)Gly−X−Yで示されるコラーゲントリペプチドを含むコラーゲンペプチド
本発明で使用するコラーゲンペプチドに含まれるコラーゲントリペプチドは、アミノ酸配列がGly−X−Yで示されるグリシン含有のトリペプチドであれば、いかなる原料に由来するものであってもよい。本発明では、コラーゲン成分を多く含む動物結合組織、またはこれからある程度精製したコラーゲンや変性コラーゲン(ゼラチン)などを原材料として、コラゲナーゼ酵素で特異的に加水分解して得られるGly−X−Yで示されるトリペプチドを好適に使用することができる。抗原性が低く、皮膚に貼付しても安全性に優れるからである。
【0017】
具体的には、牛骨や豚の胸骨をはじめとした動物由来の乾燥骨あるいは生骨を砕いた後、酸処理などによって灰分を除去したオセイン、牛皮や豚皮などの動物性皮原料あるいはこれらから脱毛処理や油脂層除去処理を行ったもの、あるいは牛や豚をはじめとした動物性の腱や軟骨などを酵素処理に適する大きさに細断あるいは適当な方法で破砕したものなどを原料として使用することができる。
【0018】
上記原料を分解するコラゲナーゼ酵素としては、Clostridium histo−ticum, Streptomyces parvulusなどの細菌、放線菌あるいは真菌など由来で、コラーゲン特有のアミノ酸配列:(Gly−X−Y)nのグリシンのアミノ基側を特異的に切断する酵素を用いることができる。また、これらの酵素遺伝子を遺伝子工学的に特定のベクターに組み込んで、乳酸菌や酵母などの他の菌体あるいは動物に産生させて得られた遺伝子組み替えによる酵素で、類似の基質特異性を有するコラゲナーゼ酵素も使用することができる。
【0019】
なお、前記原料は、予め酸処理後に脱毛処理や油脂層除去処理を行うと共に、細断あるいは破砕した後に消石灰等でアルカリ処理したり、ペプシン、トリプシン、パパインなどのコラゲナーゼ以外のプロテアーゼで前処理したものであってもよい。この方法により次工程のコラゲナーゼ酵素による分解を容易にさせることが可能となるからである。
【0020】
コラゲナーゼ酵素による酵素分解の方法にはバッチ法、カラム法あるいはバッチ法とカラム法とを組み合わせた方法などがある。バッチ法の場合、コラゲナーゼ酵素を単独で用いるほか、回収を容易にするためコラゲナーゼ酵素を種々の担体や磁性化した粒子あるいは金属性粒子担体などに結合させて用いてもよい。また、原材料・コラゲナーゼ酵素と分解産物との分離については、酵素分解が終了した後ないしは分解過程全体を通じて、両者の分子量差を利用して分離する方式を用いることができる。特に、限外濾過膜などの分離膜を備えた装置をバッチ法の製造システムに組み込むことによって、酵素分解で生じた分解産物をその都度あるいは常時酵素反応系外へ排除する方式は、分解産物による酵素反応のフィードバックを掛かりにくくすることができるため、有効である。なお、バッチ法で使用する磁性化粒子としては、磁性粒子を合成樹脂などで被膜したもの、金属コロイドと合成ポリマーの重合体および金属粒子あるいは細胞内にマグネタイトを有した磁性細菌などが活用できる。
【0021】
また、カラム法の場合、コラゲナーゼ酵素を物理吸着法あるいは化学結合法によって各種の担体に結合させ、クロマト用のカラムに充填した通常のシステムを用いることができる。コラゲナーゼ酵素による分解の過程で生じてくるジペプチドあるいは若干のアミノ酸などのため、反応液のpHが酵素の至適pHより大きく外れる場合や、バッチ法の場合と同様に、酵素反応の過程で生じる分解産物が酵素反応をフィードバック阻害する場合には、製造装置を多連式のカラムにして、各カラムの間にpHのモニターと至適pHの維持が行える装置ないしはフローシステムによる分解産物の除去装置などを組み込んでもよい。なお、カラム法で使用するコラゲナーゼ酵素を固定化する担体としては、一般的な市販のカラムクロマト用各種充填剤、予め活性化されてあるカラムクロマト用充填剤あるいは種々の化学合成樹脂剤で作成した各種担体などを使用することができる。通常、各種担体への酵素の固定化方法に関しては、固定化させた酵素の脱着や保存安定性の面を考慮した化学結合による固定化の方が有利である。
【0022】
更に、バッチとカラムとを組み合わせた方法として、まずバッチ法で中間段階まで酵素分解させた中間製品を次のカラム法の工程で最終製品まで仕上げる等の方法を行うこともできる。これら酵素分解の方式の選択については、生産量、工程(品質)管理、最終製品の用途あるいは前述の出発原材料との関係で適宜選択することができる。酵素分解時の、出発原材料とコラゲナーゼ酵素の割合は原材料の形態やコラゲナーゼ酵素の活性との関係で変化する。たとえば、出発原材料が石灰処理されたオセインをバッチ法とカラム法を組み合わせて処理する場合は、原材料に対してバッチ法では概ね質量比で1〜10%のコラゲナーゼ酵素が必要となる。
【0023】
なお、本発明の皮膚貼付用組成物には、後記するように、Gly−X−Yで示されるコラーゲントリペプチド以外に、コラーゲンを原料とするゼラチンやコラーゲンペプチド、アミノ酸などが含有されていてもよい。このようなGly−X−Yで示されるコラーゲントリペプチドを含有する市販品としては、コラーゲントリペプチドを25質量%以上含有するゼライス株式会社製、商品名「コラーゲントリペプチド F」、商品名「コラーゲントリペプチド M−30」などがある。
【0024】
本発明において、前記コラーゲンペプチドの皮膚貼付用組成物への配合量は、前記粘着性基材組成物100質量部に対して5.0質量部以下、より好ましくは0.001〜5.0質量部、より好ましくは0.01〜5.0質量部である。前記コラーゲンペプチドは、固体のまま粘着性基材組成物に配合してもよく、予め溶媒に溶解した後に粘着性基材組成物に混合してもよい。
【0025】
(2)粘着性基材組成物
本発明で使用する粘着性基材組成物としては、疎水性、親水性のいずれであってもよく、更に親水性基材や疎水性基材に乳化剤を配合した乳化性組成物であってもよい。一般に、粘着性基材組成物を支持体に積層してなる皮膚貼付剤では、粘着性基材組成物が含水の場合をパップ剤、水を含まない場合をプラスター剤と大別するが、本願では粘着性基材組成物を疎水性粘着性基材組成物、乳化状粘着性基材組成物、親水性粘着性基材組成物に分けて記載する。
【0026】
(i)疎水性粘着性基材組成物
例えば、疎水性粘着性基材組成物としては、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)およびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)から選ばれた少なくとも1種のジエン系ゴム粘着基材と軟化剤とを含むものを使用することができる。本発明では、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)が好ましい。
【0027】
また、軟化剤としては、石油系オイル(例えばパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル又は芳香族系プロセスオイル等)、スクワラン、スクワレン、ラノリン、植物系オイル(例えば、アーモンド油、オリーブ油、ツバキ油、ヤシ油、ゴマ油、ひまし油、トール油又はラッカセイ油等)、オレフィン酸、シリコーンオイル、二塩基酸エステル(例えばジブチルフタレート又はジオクチルフタレート等)、液状ゴム(例えばポリブテン又は液状イソプレンゴム等)、液状脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、セバシン酸ジエチル又はセバシン酸イソプロピル;オレイン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸や;オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール等の高級アルコール等)等が挙げられる。これらの中でも特に、流動パラフィン及び/又はミリスチン酸イソプロピルは皮膚への適度な付着性を付与できることから好適である。これらの軟化剤は、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
疎水性粘着性基材組成物の配合量としては、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)およびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)から選ばれた少なくとも1種のジエン系ゴム粘着基材を5〜60質量部と、軟化剤を20〜95質量部含有する疎水性粘着性基材組成物を好適に使用することができる。より好ましくは、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、ポリイソブチレン及び/又はポリイソプレンを合計して5〜60質量部と、軟化剤として流動パラフィンを20〜95質量部含有する疎水性粘着性基材組成物である。この組成物に前記コラーゲンペプチドを粉末のまま添加及び混練して本発明の皮膚貼付用組成物を調製することができる。
【0029】
更に、上記疎水性粘着性基材組成物には、従来から用いられている粘着付与剤、例えば脂環族飽和炭化水素樹脂、ロジン又はロジン誘導体(例えば、ロジンのグリセリンエステル、水添ロジン、水添ロジンのグリセリンエステル又はロジンのペンタエリスリトールエステル等)、テルペン樹脂、石油樹脂又はマレイン酸レジン等を、本発明の趣旨を損なわない範囲で含有させてもよい。このような粘着付与剤は市販品であってもよい。
【0030】
コラーゲントリペプチドは、疎水性粘着性基材組成物に分散して配合されるため、これを皮膚に貼付するとコラーゲントリペプチドが水分のある皮膚側に移行し、保湿効果を発揮することができると推測される。
【0031】
(ii)乳化状粘着性基材組成物
本発明では、上記疎水性粘着性基材組成物100質量部に、更にショ糖脂肪酸エステルなどを0.05〜2.00質量部の範囲で含ませ、乳化状粘着性基材組成物として使用することもできる。
【0032】
ショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖ベヘニン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ミリスチン酸エステル、ショ糖ラウリン酸エステル、ショ糖エルカ酸エステル、ショ糖オレイン酸エステル等が挙げられる。これらショ糖脂肪酸エステル類は、それぞれ単独で用いても良いし、また、2種以上適宜組み合わせて用いても良い。具体的な商品名としては、三菱化学フーズ株式会社のリョートシュガーエステル、サーフホープJ、サーフホープSE PHARMAや第一工業製薬株式会社のDKエステル等が挙げられ、脂肪酸の種類や、HLBに応じて適宜選択され使用される。予め前記コラーゲンペプチドを少量の水やアルコールなどの親水性溶媒に溶解し、これにショ糖脂肪酸エステルを添加して乳化し、更に前記疎水性粘着性基材組成物に添加して、本発明の皮膚貼付用組成物を調製することができる。
【0033】
ショ糖脂肪酸エステルが併用されると、コラーゲントリペプチドが均一かつ微細に疎水性粘着性基材組成物に乳化されるため、これを皮膚に貼付するとコラーゲントリペプチドが速やかに皮膚に移行し、保湿効果を発揮することができると推測される。
【0034】
(iii)親水性粘着性基材組成物
一方、親水性粘着性基材組成物としては、水と、水溶性高分子および/または吸水性高分子と、多価金属化合物とからなる親水性粘着性基材組成物を好適に使用することができる。
【0035】
水溶性高分子としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ニトロセルロース、カチオン化セルロース、カルボキシビニルポリマー、アガロース、アルギン酸塩、アラビアガム、カラギーナン、グァガム、ローカストビーンガム、ペクチン、トラガント、デンプン、プルラン、キサンタンガム、デキストリン、コラーゲンペプチド、ゼラチン、カゼイン、キサンタンガム、カラヤガム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン/ビニルアルコール共重合体、アルギン酸プロピレングリコールエステル、プルランおよびそれらの誘導体がある。
【0036】
また、吸水性高分子としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム等のポリアクリル酸の一価金属塩などのポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸モノエタノールアミン、ポリアクリル酸ジエタノールアミン、ポリアクリル酸トリエタノールアミン等のポリアクリル酸のアミン塩、ポリアクリル酸のアンモニウム塩等の1種又は2種以上を好適に用いることができる。ポリアクリル酸及び/又はその塩は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、GPC(ゲル透過クロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量1〜1,000万のものを用いることが好ましい。特に、質量平均分子量(I)1〜50万未満、(II)50〜200万未満及び(III)200〜500万を有するポリアクリル酸及び/又はその塩から、2種以上、特に3種以上を組み合わせて用いることが好ましい。異なる分子量のものを組み合わせることにより、良好な3次元網目構造を有する保型性に優れた水性粘着剤組成物が得られる。なお、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー法にて測定した値である。本発明では、水溶性高分子と吸水性高分子との双方を使用することが好ましい。水溶性高分子が粘着付与剤としても作用するからである。
【0037】
多価金属化合物としては、マグネシウム化合物、カルシウム化合物、亜鉛化合物、カドミウム化合物、アルミニウム化合物、チタン化合物、錫化合物、鉄化合物、クロム化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、ニッケル化合物等が挙げられる。皮膚に対する安全性を考慮するならば、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等を用いることが好ましい。アルミニウム化合物、マグネシウム化合物及びカルシウム化合物としては、具体的にはカリミョウバン、アンモニウムミョウバン、鉄ミョウバン等のミョウバン類、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミニウムグリシネート、酢酸アルミニウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、酸化カルシウム、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ヒドロタルサイト等、これら金属を含む複塩等の水可溶性化合物、水難溶性化合物が挙げられる。これらの1種又は2種以上を使用することができる。多価金属化合物としてはジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートが好ましい。多価金属化合物を配合すると、ポリアクリル酸のカルボキシルと多価金属化合物とが反応してポリアクリル酸に架橋構造が形成されるため保水性および粘着性基材組成物の弾性が向上する。
【0038】
本発明では、更に多価金属化合物と共にヒドロキシ酸を併用することが好ましい。ヒドロキシ酸としては、脂肪族ヒドロキシ酸が好ましく、例えば、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、シキミ酸などを好適に使用することができる。これらは生体内物質であり安全性に優れる。乳酸などのヒドロキシ酸を配合すると、多価金属化合物による水溶性高分子や吸水性高分子の架橋反応を促進し、弾性に富む粘着性基材組成物を調製することができる。その理由は明確ではないが、多価金属化合物としてジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートを使用する場合には、ヒドロキシ酸の併用によって競合が発生し、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートによる架橋が促進するものと考えられる。本発明では、ヒドロキシ酸として、特に乳酸を使用することが好ましい。安全性に優れ、かつ架橋促進性が高いからである。ヒドロキシ酸を配合する場合の配合量は、粘着性基材組成物100質量部に対して0.01〜0.50質量部、より好ましくは0.02〜0.10質量部である。
【0039】
水としては、精製水や滅菌水、天然水を好適に使用することができる。水は水溶性高分子、吸水性高分子、および多価金属化合物の溶解剤として作用するほか、多価金属化合物で架橋された吸水性樹脂の保型性を維持し、皮膚貼付用組成物の弾性を確保して使用時の使用感を向上させることができる。水を含有させることにより製剤自体の相対湿度を高めることができ、使用時により多くの水を効率よく外部に排出することが可能となり、結果として肌に潤いを与え、また外部に水が揮散することにより気化熱を奪い、発熱を押さえたり火照りや炎症を抑えることができる。
【0040】
親水性粘着性基材組成物としては、水50〜90質量部、より好ましくは60〜80質量部、水溶性高分子と吸水性高分子との合計が2〜20質量部、より好ましくは5〜15質量部、多価金属化合物0.01〜3質量部、より好ましくは0.05〜1質量部、ヒドロキシ酸0.02〜0.10質量部である。
【0041】
(3)他の配合物
本発明の皮膚貼付用組成物には、その特性や用途に合わせて更に他の成分を含有させることができる。
【0042】
(i)シート状美顔パック用配合物
例えば、上記親水性粘着性基材組成物には、美肌成分や他の保湿成分、更に必要に応じて、酸化防止剤、防腐剤、溶解剤、色素、香料、紫外線吸収剤、無機充填剤及びpH調整剤、界面活性剤等を上記粘着性基材組成物に配合することができる。これらを配合したものを用いて、シート状美顔パックとすることができる。
【0043】
美肌成分としては、水溶性プラセンタエキスやアラントインの1種以上の配合物を好適に用いることができる。その他、アロエエキス、エイジツエキス、オレンジエキス、キイチゴエキス、キウイエキス、クワエキス、キューカンバーエキス、クチナシエキス、カミツレエキス、サンザシエキス、セイヨウネズエキス、タイソウエキス、デュークエキス、トマトエキス、ヘチマエキス、サクシネルケフィラン、マレイルケフィラン、麦芽根エキス、バラエキスなどの各種生薬からの抽出成分、セラミド、スクワラン、ヒアルロン酸、レシチン、Gly−X−Yで示されるコラーゲントリペプチド以外のアミノ酸類、コウジ酸、タンパク質、糖類、ホルモン類、胎盤抽出物、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE及びその他のビタミン類、更に、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、塩酸トリプロリジン、メキタジン、マレイン酸クロルフェニラミン、d−マレイン酸クロルフェニラミン、フマル酸クレマスチン、塩酸プロメタジン、トラニラスト、クロモグリク酸ナトリウム、ケトチフェン、アリルスルファターゼB、ブフェキサマック、ベンダザック、フルフェナム酸ブチル、イブプロフェン、インドメタシン、アスピリン、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ピロキシカム及び2−ピリジンメチルメフェナム酸、5,6−デヒドロアラキドン酸、5,6−メタノ−LTA4 、エスクレチン、ユーバチリン、4−デメチルユーバチリン、カフェイン酸、ベノキサプロフェン等も単独でまたは他と併用して配合してもよい。
【0044】
上記した水溶性プラセンタエキスは健常な牛または健常な豚の胎盤から除血した後抽出したエキスで、美白効果、細胞賦活効果、血行促進、新陳代謝亢進、メラニン生成抑制作用、細胞増殖作用等を有する。またアラントインは壊死組織や鱗屑を除去(剥離)する作用と同時に、新しい皮膚組織の生成を助長し、細胞増殖、抗アレルギー、抗炎症、抗刺激等の作用を有する。美肌成分の配合量は皮膚貼付用組成物100質量部に対して0.01〜20質量部、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。配合量が0.1質量部を下回ると配合の意義が少なく、一方、20質量部を超えると、粘着性や保水性が低下する場合がある。
【0045】
また、他の保湿剤としては、多価アルコール、アシル化ケフィラン水溶液、麦芽エキス、尿素、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、グリセリン脂肪酸エステル、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80などのグリコール類を例示することができる。
【0046】
上記多価アルコールとしては、グリコール類が好ましく、保湿性成分として作用する他、水溶性高分子、吸水性高分子の分散・溶解剤として作用し、水の放出性や揮散性を促進させることができる。多価アルコールとしては、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリエーテルの構造を有するものが好適である。水酸基が少なく親水性が低いため、水を除いた基剤成分の臨界相対湿度を低下して、使用時に多くの水を外部に放出して気化熱を奪い、額や顔の火照り、炎症を抑えることができる。多価アルコールの配合量は、親水性粘着性基材組成物100質量部に対して5〜25質量部、好ましくは5〜20質量部である。配合量が5質量部未満では、配合の効果が少なく、また配合量が20質量部を超えると、粘着性や保水性が低下する場合がある。
【0047】
また、酸化防止剤としては、例えば、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアヤレチン酸、トコフェロール、酢酸トコフェロール、天然ビタミンE、亜硝酸ナトリウム、及び亜硝酸水素ナトリウム等が挙げられる。
【0048】
防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸、安息香酸塩、サリチル酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸塩、デヒドロ酢酸塩、4−イソプロピル−3−メチルフェノール、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、フェノール、ヒノキチオール、クレゾール、2,4,4′−トリクロロ−2′−ヒドロキシジフェニルエーテル、3,4,4′−トリクロロカルバニド、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等があげられ、これらの1種もしくは2種以上を配合して用いることができる。配合量としては皮膚貼付用組成物100質量部に0.005〜10質量部である。配合量が0.005質量部を下回ると保存中にカビや菌の発生による製剤の腐敗が生じる場合があり、また配合量が1質量部を超えると、製剤の粘着性や使用前の保水性などが低下する場合がある。
【0049】
溶解剤としては、例えば、セバシン酸ジエチル、N−メチル−2−ピロリドン、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール、トリアセチン、オレイルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチン酸イソプロピル、アジピン酸ジイソプロピル、クロタミトン、ハッカ油、ツバキ油、ヒマシ油、及びオリーブ油等が挙げられる。
【0050】
色素としては、例えば、赤色2号(アマランス)、赤色3号(エリスロシン)、赤色102号(ニューコクシン)、赤色104号の(1)(フロキシンB)、赤色105号の(1)(ローズベンガル)、赤色106号(アシッドレッド)、黄色4号(タートラジン)、黄色5号(サンセットエローFCF)、緑色3号(ファストグリーンFCF)、青色1号(ブリリアントブルーFCF)、青色2号(インジゴカルミン)等が挙げられる。特に色素については限定されないが、製剤イメージに大きく影響を与え、使用感や肌の活性化感の向上につながるものである。
【0051】
香料としては、例えば、ハッカ油、ケイヒ油、チョウジ油、ウイキョウ油、ヒマシ油、テレピン油、ユーカリ油、オレンジ油、ラベンダー油、レモン油、ローズ油、レモングラス油等やローズマリー、セージ等の植物抽出物等が挙げられる。
【0052】
紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸、パラアミノ安息香酸エステル、パラジメチルアミノ安息香酸アミル、サリチル酸エステル、アントラニル酸メンチル、ウンベリフェロン、エスクリン、ケイ皮酸ベンジル、シノキサート、グアイアズレン、ウロカニン酸、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、ジオキシベンゾン、オクタベンゾン、ジヒドロキシジメトキシベンゾフェノン、スリソベンゾン、ベンゾレソルシノール、オクチルジメチルパラアミノベンゾエート、エチルヘキシルパラメトキシサイナメート、及びブチルメトキシジベンゾイルメタン等が挙げられる。
【0053】
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等)、ケイ酸、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜鉛酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。
【0054】
pH調整剤としては、例えば、酢酸、蟻酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、安息香酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、塩酸、硝酸、硫酸、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノ−ルアミン、クエン酸バッファー、リン酸バッファー、グリシンバッファー、酢酸バッファーその他の緩衝液等が挙げられる。
【0055】
界面活性剤としては、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルサルフェート塩、2−エチルヘキシルアルキル硫酸エステルナトリウム塩、ノルマルドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ポリオキシエチレンドデシルモノメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンモノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノパルミネート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、グリセロールモノステアレート、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンオクタデシルアミン等の非イオン界面活性剤等を配合してもよい。
【0056】
(ii)他のパップ剤またはプラスター剤用配合物
本発明では皮膚貼付用組成物に、美白剤、皮膚軟化剤などを含有させることができ、更に目的に応じて他の美容成分を併用することができる。そのような薬剤その他の成分としては、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル、プラセンターエキス、アルブチン、コウジ酸などの美白成分;尿素、ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、上記コラーゲントリペプチド以外のコラーゲンペプチド、ゼラチン、トレハロース、グリコール酸等の保湿剤;l−メントール、乳酸メンチル、メントキシプロパンジオール等の冷感刺激成分;塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、イソプロピルメチルフェノール、グルコン酸クロルヘキシジン等の殺菌成分などを例示することができる。
【0057】
これらの薬効成分の配合量は、皮膚貼付用組成物を皮膚に貼付した際に所定の効果を発揮し得る量を配合すればよい。
(4)皮膚貼付用材
本発明の皮膚貼付用組成物は、支持体に前記皮膚貼付用組成物を積層し、前記皮膚貼付用組成物層に剥離層を積層したものである。剥離層を除去した後に皮膚貼付用組成物を皮膚に貼付すれば、皮膚貼付用組成物に含まれる成分に応じた効果を得ることができる。
【0058】
(i)支持体
支持体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等)、ナイロン、ポリウレタン等のフィルム又はシート、あるいはこれらの多孔体、発泡体、並びに紙、ナイロン、アクリル、綿、レーヨン、アセテート等の合成繊維又は天然繊維、あるいはこれらの繊維を複合して織布又は不織布とした繊維シート等の伸縮性又は非伸縮性の支持体より選ばれる。
【0059】
これらの中でも、安全性、汎用性及び伸縮性の点から、ポリエステル、ポリエチレン及び/又はポリエチレンテレフタレートからなる織布又は不織布の繊維シートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートからなる織布又は不織布の繊維シートがより好ましい。このような繊維シートは厚みのあるものであっても、柔軟性を有し、皮膚に追従しやすく、皮膚刺激性の低いものである。さらに、このような繊維シートを用いることにより適度な自己支持性を有する皮膚貼付用材を得ることができる。
【0060】
支持体の目付質量は20〜130g/m2、より好ましくは20〜100g/m2程度が好ましい。20g/m2より小さいと、皮膚貼付用組成物の浸み出しが起こる場合があり、他方、130g/m2より大きいと剛性が高く皮膚に貼付した際の使用感が劣る場合がある。
【0061】
(ii)剥離層
剥離層としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のフィルム、上質紙とポリオレフィンとのラミネートフィルム等が挙げられる。
【0062】
本発明で使用する粘着性基材組成物は、上記した疎水性粘着性基材組成物や乳化状粘着性基材組成物の場合、さらに、上記した親水性粘着性基材組成物の場合でも、前記したポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムをそのまま使用して優れた剥離性を確保できる点に特徴がある。一般には、これらの剥離シートには、皮膚貼付用組成物層と接触する側の面にシリコーン処理を施し、剥離性を確保することが一般的であるが、このようなシリコーン処理が施されない場合でも、優れた剥離性を有する。
【0063】
(iii)製造方法
本発明の皮膚貼付用材は、例えば、予め上記した皮膚貼付用組成物を調製し、これを支持体上に展延した後、皮膚貼付用組成物層上に剥離層を積層させて製造することができる。なお、皮膚貼付用組成物層の重量は、配合する成分や用途などに応じて適宜選択することができ、一般には50〜150g/1000cm2である。
【0064】
(5)用途
本発明の皮膚貼付用材は、配合する成分に応じて、シート状美顔パック、保湿用パップ剤、プラスター剤、冷却用シート、その他として使用することができる。
【0065】
例えば、シート状美顔パックとする場合には、上記した皮膚貼付用材を用いて、適宜目、鼻、口および顎を適当な形状に切り成形することができる。尚、シート状美顔パックは、保存中における汚染、揮発性物質の蒸散などによる効果の減少などを防止する意味から、使用時までは密封性の容器中に保存しておくことが望ましい。
【0066】
また、Gly−X−Yで示されるコラーゲントリペプチドを含むコラーゲンペプチドのみを配合した親水性粘着性基材組成物を支持体に積層し、更に剥離層を形成した場合には、冷却シートとして使用することもできる。保湿成分として、前記コラーゲントリペプチドが配合されているため、局部の冷却と同時に患部の乾燥を防止することができる。
【実施例】
【0067】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。

(実施例1)
下記表1に示す組成の親水性粘着性基材組成物を調製した。
【0068】
精製水75.5質量部にジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート0.15質量部および乳酸0.05質量部を分散させ、これにゼライス株式会社製、商品名「コラーゲントリペプチド M−30」(コラーゲントリペプチドを25質量部以上含有)2.9質量部、ゼラチン1.0質量部、カルボキシメチルセルロースナトリウム2.7質量部、ポリエチレングリコール400を9.1質量部、エタノールに溶解したパラオキシ安息香酸メチル0.2質量部を加えて溶解し、更にポリアクリル酸ナトリウム6.3質量部、カルボキシビニルポリマー1.1質量部を加え均一になるまで攪拌して親水性粘着性基材組成物を調製した。
【0069】
得られた親水性粘着性基材組成物を、100g/m2のポリエスエル不織布に重量100g/1000cm2になるように展延し、次いで厚さ100μmのポリエステルフィルムを積層して皮膚貼付用材とした。
【0070】
この皮膚貼付用材を2×2cmにカットしてコラーゲントリペプチドの皮膚浸透性試験を行った。皮膚浸透性試験は、3名のモニターの上腕部に試験片を4時間貼付した。
試験片貼付4h後に、純水2mlを含ませた脱脂綿で貼付部位の皮膚表面を十分に拭き取り、角質剥離テープ(D−Squame Standard Sampling Discs D−100/CuDerm Corporation)を用いて角質を剥離した。この角質を剥離した角質剥離テープ1枚につき、1mlの純水または30%エタノールを加え、よく攪拌した後40℃の恒温水槽内で1時間抽出した。その後、再び十分に攪拌し、精密ろ過(φ0.2μm)を行い、このろ液をCTP抽出液とした。試験片を貼付した同一個所について別個の角質剥離テープを用いて5回の角質剥離を行い、表層から真皮側に向かって、それぞれの角質剥離テープに回収した角質についてコラーゲントリペプチドの有無を上記方法で確認した。結果を表2に示す。
【0071】
なお、角質剥離テープの抽出方法およびHPLC測定条件は、以下の通りである。
HPLC条件
・カラム:Superdex Peptide 10/300 GL(GEヘルスケアバイオサイエンス)
・溶離液:10mM Tri−HCl(pH7.4)、150mM NaCl、5mM CaCl2
流速:1ml/min
分析時間:30min
検出器:UV(214nm)
【0072】
【表1】

【0073】
【表2】

(実施例2)
下記表3に示す組成の疎水性粘着性基材組成物を調製した。
【0074】
流動パラフィン57.1質量部にこれにゼライス株式会社製、商品名「コラーゲントリペプチド M−30」(コラーゲントリペプチドを25質量部以上含有)2.9質量部を分散させ、これにポリイソブチレン5.0質量部およびスチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体(SIS)35.0質量部を加え均一になるまで攪拌して疎水性粘着性基材組成物を調製した。
【0075】
得られた疎水性粘着性基材組成物を、100g/m2のポリエスエル不織布に重量100g/1000cm2になるように展延し、次いで厚さ100μmのポリエステルフィルムを積層して皮膚貼付用材とした。
【0076】
この皮膚貼付用材を用いて、実施例1と同様にしてコラーゲントリペプチドの皮膚浸透性試験を行った。結果を表4に示す。
【0077】
【表3】

【0078】
【表4】

(実施例3)
実施例1で調製した皮膚貼付用材をフェイス形状にカットし、5名の被験者の顔面に30分間貼付し、密着性、保湿性を評価した。結果を表5に示す。なお、密着性、保湿性の評価は、下記に従った。
【0079】
(i)密着性
1.使用中に大きく剥がれる
2.使用中にやや剥がれる
3.使用中にまったく剥がれない

(ii)保湿性
1.効果をほとんど感じない
2.効果を感じる
3.効果を非常に感じる
【0080】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性基材組成物とGly−X−Yで示されるコラーゲントリペプチドを含むコラーゲンペプチドとからなり、前記粘着性基材組成物100質量部に対して前記コラーゲンペプチドを5.0質量部以下含有することを特徴とする、皮膚貼付用組成物。
【請求項2】
前記粘着性基材組成物は、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)およびスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)から選ばれた少なくとも1種のジエン系ゴム粘着基材と軟化剤とを含むことを特徴とする、請求項1記載の皮膚貼付用組成物。
【請求項3】
前記粘着性基材組成物は、水と、水溶性高分子および/または吸水性高分子と、多価金属化合物とからなる親水性粘着性基材組成物であることを特徴とする、請求項1記載の皮膚貼付用組成物。
【請求項4】
前記多価金属化合物がジヒドロキシアルミニウムアミノアセテートであり、前記親水性粘着性基材組成物100質量部に対して0.01〜3質量部含有されることを特徴とする、請求項3記載の皮膚貼付用組成物。
【請求項5】
更に、ヒドロキシ酸を含有することを特徴とする、請求項4記載の皮膚貼付用組成物。
【請求項6】
支持体に、請求項1〜5のいずれかに記載の皮膚貼付用組成物が積層され、前記皮膚貼付用組成物層に剥離層が積層されたことを特徴とする、皮膚貼付用材。

【公開番号】特開2011−30981(P2011−30981A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183100(P2009−183100)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(391024353)ゼライス株式会社 (9)
【Fターム(参考)】