説明

皮膚透過ガス採取装置

【課題】被測定者の形状の異なる複数の採取部位から皮膚透過ガスを採取することのできる皮膚透過ガス採取装置を提供すること。
【解決手段】皮膚透過ガス採取装置は、被測定者の形状の異なる皮膚透過ガスの採取部位、例えば上腕や脚に固定可能な固定部10を有する。固定部10は、上腕等に巻回することにより固定される帯状のカフ11と、カフ11に接着された密着部材12とを備えている。密着部材12は、採取部位の表面に密着する密着面12Aを有し、皮膚透過ガスの採取室14が同密着面12Aの中央部を凹設して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚透過ガスの採取室を有する皮膚透過ガス採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測定者の健康状態を把握するために、様々な生体サンプルを用いた分析が行われている。これら生体サンプルを用いた分析として、例えば被測定者の汗や呼気に含まれる微量成分を分析することにより、痛みを伴うことなく被測定者の健康状態を把握することができる。
【0003】
近年、こうした生体サンプルとして被測定者の皮膚の表面から発生する微量のガス(皮膚透過ガス)が注目されている。皮膚透過ガスの成分は被測定者の血液の成分と相関を有することがわかっており、この皮膚透過ガスを生体サンプルとして採取してその成分を分析することにより被測定者の健康状態を把握することが可能となる。
【0004】
例えば、こうした皮膚透過ガス採取装置として、特許文献1には、固定部を用いて指サックを採取部位である被測定者の手の指に固定し、指サックの内部、すなわち採取室に被測定者の指から発生する皮膚透過ガスを採取するようにしたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−234843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の皮膚透過ガス採取装置の採取室は、指サックを利用して形成されたものであるため、この採取室は被測定者の指から発生した皮膚透過ガスを採取することしかできず、形状の異なる他の採取部位から発生する皮膚透過ガスを採取するという点については、なお改善の余地があった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、被測定者の形状の異なる複数の採取部位から皮膚透過ガスを採取することのできる皮膚透過ガス採取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
・本発明の皮膚透過ガス採取装置は、皮膚透過ガスの採取部位の形状に応じて固定可能な固定部を備え、該固定部は前記採取部位の表面に密着する密着面を有し、皮膚透過ガスの採取室が同密着面を凹設して形成されてなることを特徴としている。
【0009】
・この皮膚透過ガス採取装置においては、前記固定部は可撓性材料からなることが好ましい。
・この皮膚透過ガス採取装置においては、前記固定部は帯状であるとともに前記採取部位に巻回することにより前記密着面を前記採取部位の表面に密着させるものであり、前記固定部の巻回径を複数の異なる状態にて保持することが可能な保持機構をさらに備えることが好ましい。
【0010】
・この皮膚透過ガス採取装置においては、前記固定部はその内部に流体が流入することにより膨張する膨張室を有することが好ましい。
・この皮膚透過ガス採取装置においては、前記固定部は環状の弾性部材からなることが好ましい。
【0011】
・この皮膚透過ガス採取装置においては、前記固定部は前記採取室とは別の空間が前記密着面を凹設することにより形成されてなり、前記空間と連通するとともに前記空間の内部の気体を吸引することにより前記空間を負圧とする負圧機構をさらに有することが好ましい。
【0012】
・この皮膚透過ガス採取装置においては、前記固定部は採取部位を挟持するための対向配置された一対の挟持部と、これら挟持部を近接する方向に付勢する弾性機構とを有し、前記各挟持部の少なくとも一方は、前記採取室が凹設される密着面を有してなることが好ましい。
【0013】
・この皮膚透過ガス採取装置においては、前記固定部は粘着性材料からなる粘着層を有し、該粘着層の表面が前記密着面とされてなることが好ましい。
・この皮膚透過ガス採取装置においては、前記採取室にはキャリアガスが導入されるガス導入孔と、導入されたキャリアガスとともに採取された皮膚透過ガスを前記採取室からガス成分分析装置に導出させるガス導出孔とが設けられていることが好ましい。
【0014】
・この皮膚透過ガス採取装置においては、前記採取室は、前記ガス導入孔を始点とし、前記ガス導出孔を終点とするキャリアガスおよび皮膚透過ガスの流路として形成されてなり、該流路の流路断面積が始点から終点まで等しく設定されてなることが好ましい。
【0015】
・この皮膚透過ガス採取装置においては、前記流路が直線状であることが好ましい。
・この皮膚透過ガス採取装置においては、前記流路は、蛇行する形状の部位を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被測定者の形状の異なる複数の採取部位から皮膚透過ガスを採取することのできる皮膚透過ガス採取装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の皮膚透過ガス採取装置について、全体構成を模式的に示す斜視図。
【図2】皮膚透過ガス採取装置が採取部位に装着された状態を示す断面図。
【図3】密着面が採取部位と密着した状態を示す断面図。
【図4】成分分析装置の制御系の構成を示すブロック図。
【図5】本発明の第2実施形態の皮膚透過ガス採取装置について、全体構成を模式的に示す斜視図。
【図6】図5のDA−DA線に沿う断面構造を示す断面図。
【図7】本発明の第3実施形態の皮膚透過ガス採取装置について、全体構成を模式的に示す側面図。
【図8】図7の矢視Aからみた平面構造を示す平面図。
【図9】本発明の第4実施形態の皮膚透過ガス採取装置について、全体構成を模式的に示す部分断面図。
【図10】同皮膚透過ガス採取装置の密着面の構造を示す底面図
【図11】本発明の第5実施形態の皮膚透過ガス採取装置について、密着面の構造を示す背面図。
【図12】本発明のその他の実施形態にかかる皮膚透過ガス採取装置について、密着面の構造を示す背面図。
【図13】本発明のその他の実施形態にかかる皮膚透過ガス採取装置について、密着面の構造を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1を参照して、本発明の第1実施形態の皮膚透過ガス採取装置の全体構成について説明する。
【0019】
図1に示されるように、皮膚透過ガス採取装置は、被測定者の形状の異なる皮膚透過ガスの採取部位、例えば上腕や脚に固定可能な固定部10を有する。固定部10は、上腕等に巻回することにより固定される帯状のカフ11と、カフ11に接着された密着部材12とを備えている。密着部材12は可撓性材料、具体的にはフッ素樹脂材料により形成されている。カフ11は、内部に圧縮空気が流入することにより膨張する膨張室11Aを有するとともに、その両端部にはカフ11の巻回径を複数の異なる状態にて保持することが可能な面ファスナー13がそれぞれ設けられている。
【0020】
密着部材12は、採取部位の表面に密着する密着面12Aを有するとともに、同密着面12Aの中央部を凹設することにより皮膚透過ガスの採取室14が形成されている。この採取室14には、成分分析装置20からキャリアガスが導入されるガス導入孔14Aと、導入されたキャリアガスとともに採取された皮膚透過ガスを採取室14から成分分析装置20に導出させるガス導出孔14Bとが形成されている。また、採取室14は、ガス導入孔14Aを始点としガス導出孔14Bを終点とするキャリアガスおよび皮膚透過ガスの流路として機能する。この流路、すなわち採取室14の形状は直線状をなしその流路断面積が始点から終点にわたって等しく設定されている。
【0021】
成分分析装置20には、ガス導入孔14Aと連通するガス導入管21と、ガス導出孔14Bと連通するガス導出管22と、膨張室11Aと連通する空気流通管24とがそれぞれ接続されている。
【0022】
ガス導入管21には、成分分析装置20から採取室14へのキャリアガスの流通を許容する一方、採取室14から成分分析装置20へのキャリアガスおよび皮膚透過ガスの流通を規制する逆止弁25が設けられている。また、ガス導出管22には、採取室14から成分分析装置20へのキャリアガスおよび皮膚透過ガスの流通を許容する一方、成分分析装置20から採取室14へのキャリアガスおよび皮膚透過ガスの流通を規制する逆止弁26が設けられている。
【0023】
次に、図2および図3を参照して、皮膚透過ガスが採取される態様について説明する。
図2に示されるように、膨張室11Aが膨張していない状態において、被測定者は、面ファスナー13を接着することによりカフ11を採取部位である上腕200に巻回する。このようにカフ11を上腕200に巻回して面ファスナー13を接着することにより密着面12Aの全体と上腕200の表面とが密着する。
【0024】
そして、図3の矢印に示されるように、成分分析装置20から空気流通管24を通じて膨張室11Aに圧縮空気が流入すると、膨張室11Aが膨張することにより密着面12Aの全体と上腕200の表面とがさらに密着することとなる。
【0025】
次に、図4を参照して、成分分析装置20の構成について詳細に説明する。
成分分析装置20は、各種制御を実行する制御部30と、膨張室11Aに対する圧縮空気の給排を制御して採取部位を圧迫する状態と圧迫しない状態とに切り換える圧迫部40とを有している。さらに、分析装置20は、採取室14にキャリアガスの導入を行うキャリアガス導入部50と、皮膚透過ガスの成分の分析を行うガス分析部60と、その分析結果を表示する表示部71とを有している。なお、ガス分析部60により得られた皮膚透過ガスの分析結果は、情報処理部70によって表示部71に表示するためのデータに変換される。
【0026】
圧迫部40は、膨張室11Aに圧縮空気を流入する加圧ポンプ41と、膨張室11Aから圧縮空気を排出させる排気弁42とを有している。圧迫部40は、排気弁42を閉弁するとともに加圧ポンプ41を駆動することにより空気流通管24を通じて膨張室11Aに圧縮空気を流入するように制御部30により制御(加圧制御)される。その一方、圧迫部40は、加圧ポンプ41の駆動を停止するとともに排気弁42を開弁することにより膨張室11Aから圧縮空気を排出するように制御部30により制御(減圧制御)される。
【0027】
キャリアガス導入部50は、キャリアガスが貯留されるキャリアガス貯留室51と、キャリアガス貯留室51からガス導入管21を通じて採取室14にキャリアガスを導入する加圧ポンプ52とを有している。キャリアガス貯留室51には、成分分析装置20の外部からキャリアガスボンベ53を通じて常に所定量以上のキャリアガスが充填されている。なお、キャリアガスとしては、皮膚透過ガスのガス成分と反応しない不活性ガス、具体的には窒素ガスが用いられている。
【0028】
ガス分析部60は、採取室14からガス導出管22を通じて導出された皮膚透過ガスおよびキャリアガスを貯留するガス貯留室61と、皮膚透過ガスの成分を検知するガス検知部62と、検知された皮膚透過ガスの各種成分についてそれらの濃度を算出するガス濃度算出部63とを有する。
【0029】
ガス濃度算出部63により算出された皮膚透過ガスの分析結果は情報処理部70に入力され表示部71に表示される。なお、分析が終了した皮膚透過ガスは、キャリアガスとともに成分分析装置20の外部に排気される。
【0030】
次に、本実施形態の皮膚透過ガス採取装置の作用について説明する。
カフ11が上腕200に巻回され成分分析装置20によって分析が開始されると、制御部30は上述した加圧制御を行う。すなわち、成分分析装置20から空気流通管24を通じて圧縮空気が膨張室11Aに導入される。これにより、採取室14に上腕200から発生する皮膚透過ガスが採取可能な状態となる。次に、成分分析装置20からガス導入管21およびガス導入孔14Aを通じて採取室14にキャリアガスが導入される。この採取室14に導入されたキャリアガスおよび採取室14の皮膚透過ガスはガス導出孔14Bおよびガス導出管22を通じてガス分析部60に導入され分析結果が表示部71に表示される。成分分析装置20による分析が終了すると、制御部30は減圧制御を行う。すなわち、膨張室11Aから空気流通管24を通じて圧縮空気が圧迫部40に戻される。
【0031】
本実施形態の皮膚透過ガス採取装置は以下の効果を奏する。
(1)密着部材12は、採取部位、例えば上腕200や脚の表面に密着する密着面12Aを有し、皮膚透過ガスの採取室14が同密着面12Aの中央部を凹設して形成されている。そのため、形状の異なる採取部位に密着部材12を固定することにより、採取室14を通じて皮膚透過ガスが採取可能な状態になる。すなわち、特定の採取部位に限らず形状の異なる複数の採取部位から皮膚透過ガスを採取することができるようになる。
【0032】
(2)密着部材12は、可撓性材料であるフッ素樹脂材料により形成されている。そのため、密着部材12が採取部位の表面の形状に応じて変形することにより密着面12Aが採取部位の表面に密着する。すなわち、密着面12Aと採取部位の表面との密着性を高めることができる。
【0033】
(3)カフ11は、帯状であるとともに採取部位に巻回することにより密着部材12の密着面12Aを採取部位の表面に密着させるものであり、カフ11の巻回径を複数の異なる状態にて保持することが可能な面ファスナー13を備えている。そのため、面ファスナー13を用いてカフ11の巻回径を複数の異なる状態に変更することにより、被測定者の腕や脚といった複数の異なる採取部位から発生する皮膚透過ガスを採取することができる。
【0034】
(4)カフ11は、その内部に圧縮空気が流入することにより膨張する膨張室11Aを有する。そのため、カフ11が採取部位に固定されている状態において、膨張室11Aに圧縮空気を流入することにより、カフ11を膨張させることができる。これにより、密着面12Aを採取部位の表面に対して圧迫させることができるため、密着面12Aと採取部位の表面との密着性をより高めることができる。
【0035】
(5)採取室14には、キャリアガスが導入されるガス導入孔14Aと、導入されたキャリアガスとともに採取された皮膚透過ガスを採取室14から皮膚透過ガスの成分分析装置20に導出させるガス導出孔14Bとが設けられている。この構成によれば、ガス導入孔14Aを通じてキャリアガスを採取室14に導入することができるとともに、採取された皮膚透過ガスはガス導出孔14Bを通じてキャリアガスとともに成分分析装置20に導出される。すなわち、採取された皮膚透過ガスは速やかに採取室14から回収されるため、より多くの皮膚透過ガスを採取することができる。
【0036】
(6)採取室14は、ガス導入孔14Aを始点とし、ガス導出孔14Bを終点とするキャリアガスおよび皮膚透過ガスの流路として機能し、この流路の流路断面積が始点から終点まで等しく設定されている。そのため、採取室14、換言すれば、キャリアガスおよび皮膚透過ガスの流路におけるガスの流速を一定に保つことができる。すなわち、特定の箇所で流路断面積が異なる流路と比較してキャリアガスおよび皮膚透過ガスを効率よく流通させることができる。
【0037】
(7)採取室14、換言すれば、キャリアガスおよび皮膚透過ガスの流路は直線状であるため、ガス導入孔14Aとガス導出孔14Bとを最短距離で結ぶことができる。すなわち、直線状以外の形状である流路と比較して、より速やかにキャリアガスおよび皮膚透過ガスを流通させることができる。
【0038】
(第2実施形態)
次に、図5および図6を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の実施形態において、成分分析装置20は、第1実施形態の成分分析装置20から圧迫部40を省略した点以外は同一の構成であるため、その制御系の構成についての説明は省略し、共通する構成については同一の符号を付してその説明を適宜省略する。
【0039】
図5に示されるように、皮膚透過ガス採取装置は、形状の異なる皮膚透過ガスの採取部位、例えば上腕や脚に固定可能な環状の固定部80を有する。固定部80は弾性部材、具体的にはゴムにより形成されている。固定部80は、上腕等の採取部位の表面に密着する密着面81を有し、皮膚透過ガスの採取室82が同密着面81の中央部を凹設することにより形成されている。
【0040】
図6に示されるように、採取室82には、成分分析装置20からキャリアガスが導入されるガス導入孔82Aと、導入されたキャリアガスとともに採取された皮膚透過ガスを採取室82から成分分析装置20に導出させるガス導出孔82Bとが形成されている。また、採取室82は、ガス導入孔82Aを始点としガス導出孔82Bを終点とするキャリアガスおよび皮膚透過ガスの流路として機能する。この流路、すなわち採取室14は一部を除き密着面81のほぼ全周にわたり形成されている。また、その形状は曲線状をなしその流路断面積が始点から終点にわたって等しく設定されている。
【0041】
次に、本実施形態の皮膚透過ガス採取装置の作用について説明する。
被測定者は、固定部80の内径が自身の上腕等の採取部位の外径よりも大きくなるように固定部80を弾性変形させた上で固定部80を採取部位に挿通させる。そして、固定部80が弾性変形前の状態に復帰することにより、密着面81が採取部位の表面と密着することとなる。その後は上記第1実施形態と同様にキャリアガスが成分分析装置20から採取室82に導入されることにより皮膚透過ガスの成分が分析される。
【0042】
本実施形態の皮膚透過ガス採取装置によれば、上記(1)、(5)および(6)の効果に加えて以下の効果を奏することができる。
(8)固定部80を上腕等の採取部位に挿通後、固定部80が、弾性変形前の状態に復帰することにより、密着面81が採取部位の表面と密着することとなる。そのため、密着面81と採取部位の表面との密着性を向上させることができる。
【0043】
(9)固定部80が上記第1実施形態のカフ11に相当する機能と密着部材12に相当する機能とを併せ有している。そのため、より簡単な構成で固定部80を実現することができる。
【0044】
次に、図7および図8を参照して、本発明の第3実施形態について説明する。
図7に示されるように、皮膚透過ガス採取装置は、形状の異なる皮膚透過ガスの採取部位、例えば手の甲や足の甲に固定可能な固定部100を有する。
【0045】
固定部100は、採取部位を挟持するための対向配置された一対の板状の第1挟持部110および第2挟持部120と、これら各挟持部110,120を近接する方向に付勢する捩りばね130とを備えている。各挟持部110,120の捩りばね130が設けられる側の端部には、捩りばね130の付勢力と反対方向の力を各挟持部110,120に作用させるための一対の把持部101が形成されている。
【0046】
第1挟持部110には、採取部位の表面に密着する密着面111Aを有する粘着性ゲル111が設けられるとともに密着面111Aには、採取部位を通電する電極パッド112が組み付けられている。なお、第1挟持部110の粘着性ゲル111が設けられる面と反対側の面には、成分分析装置20が設けられている。すなわち、本実施形態における皮膚透過ガス採取装置では、皮膚透過ガスを採取する部分とそのガス成分を分析する分析装置とが一体化されており、装置全体のコンパクト化が図られている。
【0047】
図8に示されるように、第2挟持部120には、採取部位の表面に密着する密着面121Aを有する粘着性ゲル121が設けられるとともに皮膚透過ガスの採取室122が同密着面121Aの中央部を凹設することにより形成されている。採取室122には、成分分析装置20からキャリアガスが導入されるガス導入孔122Aと、導入されたキャリアガスとともに採取された皮膚透過ガスを採取室122から成分分析装置20に導出させるガス導出孔122Bとが形成されている。また、採取室122は、ガス導入孔122Aを始点としガス導出孔122Bを終点とするキャリアガスおよび皮膚透過ガスの流路として機能する。この流路、すなわち採取室122の形状は直線状をなしその流路断面積が始点から終点にわたって等しく設定されている。
【0048】
次に、本実施形態の皮膚透過ガス採取装置の作用について説明する。
被測定者は、捩りばね130の付勢力と反対方向の力、すなわち図7の矢印で示す方向の力を把持部101に作用させることにより各挟持部110,120を離間させる。
【0049】
そして、手の甲等の採取部位を各挟持部110,120の間に挿入した後に、捩りばね130の付勢力と反対方向の力を解除することにより採取部位が各挟持部110,120により挟持される。その後は上記第1実施形態等と同様にキャリアガスが成分分析装置20から採取室122に導入されることにより皮膚透過ガスの成分が分析される。
【0050】
本実施形態の皮膚透過ガス採取装置によれば、上記(1)および(5)〜(7)の効果に加えて以下の効果を奏することができる。
(10)密着面121A、すなわち粘着性ゲル121からなる粘着層が採取部位の表面と密着するため、採取部位の表面と密着面121Aとの密着性が粘着性ゲル121の粘着力により保持される。すなわち、密着面121Aと採取部位の表面との密着性を向上させることができる。
【0051】
次に、図9および図10を参照して、本発明の第4実施形態について説明する。
図9に示されるように、皮膚透過ガス採取装置は、形状の異なる皮膚透過ガスの採取部位、例えば胸や背中に固定可能な固定部140を有している。
【0052】
固定部140は、胸等の採取部位の表面に密着する密着面141を有するとともに皮膚透過ガスの採取室142が同密着面141を凹設することにより形成されている。
さらに、固定部140には、採取室142とは別の空間143が密着面141の中央部を凹設することにより形成されるとともに同空間143を負圧とする負圧機構144が設けられている。負圧機構144は、弾性部材、具体的にはゴムにより形成される押圧部145と、同押圧部145の内部と空間143とを連通する連通路146とを有している。
【0053】
図10に示されるように、採取室142には、成分分析装置20からキャリアガスが導入されるガス導入孔142Aと、導入されたキャリアガスとともに採取された皮膚透過ガスを採取室142から成分分析装置20に導出させるガス導出孔142Bとが形成されている。また、また、採取室142は、ガス導入孔142Aを始点としガス導出孔142Bを終点とするキャリアガスおよび皮膚透過ガスの流路として機能する。この流路、すなわち採取室142の形状は曲線状をなしその流路断面積が始点から終点にわたって等しく設定されている。
【0054】
次に、本実施形態の皮膚透過ガス採取装置の作用について説明する。
図9の二点鎖線で示すように、被測定者は、押圧部145を押圧することにより押圧部145を弾性変形させた状態で密着面141を採取部位に密着させる。
【0055】
次に、被測定者は、押圧部145の押圧状態を解除すると押圧部145が弾性変形前の状態に復帰することにより、空間143の空気が押圧部145により吸引される。これにより、密着面141と採取部位の表面とが密着する。その後は上記第1実施形態等と同様にキャリアガスが成分分析装置20から採取室142に導入されることにより皮膚透過ガスの成分が分析される。
【0056】
本実施形態の皮膚透過ガス採取装置によれば、上記(1)、(5)および(6)の効果に加えて以下の効果を奏することができる。
(11)固定部140を採取部位に密着させた状態において、採取室142とは別に形成された空間143を負圧機構144を用いて負圧とするため、密着面141と採取部位の表面とを密着させることができる。すなわち、特定の採取部位に限らず形状の異なる複数の採取部位から皮膚透過ガスを採取することができる。
【0057】
次に、図11を参照して、本発明の第5実施形態について説明する。
図11に示されるように、皮膚透過ガス採取装置は、形状の異なる皮膚透過ガスの採取部位、例えば手首や足首に固定可能な固定部150を有する。固定部150は可撓性材料、具体的にはフッ素樹脂材料により形成されている。
【0058】
固定部150は、帯状であるとともに手首等の採取部位に巻回することにより手首の表面に密着する密着面151を有している。また、同密着面151の中央部を凹設することにより採取室152が形成されている。さらに、固定部150の一方の端部には、固定部150の巻回径を複数の異なる状態にて保持するための止め具153が設けられるとともに、他方の端部には止め具153が挿通される固定孔154が形成されている。
【0059】
採取室152には、成分分析装置20からキャリアガスが導入されるガス導入孔152Aと、導入されたキャリアガスとともに採取された皮膚透過ガスを採取室152から成分分析装置20に導出させるガス導出孔152Bとが形成されている。また、採取室152は、ガス導入孔152Aを始点としガス導出孔152Bを終点とするキャリアガスおよび皮膚透過ガスの流路として機能する。この流路は流路断面積が始点から終点にわたって等しく設定されており、迂回する部分155を有する。
【0060】
次に、本実施形態の皮膚透過ガス採取装置の作用について説明する。
被測定者は、止め具153を自身の手首等の採取部位の巻回径に応じた固定孔154に挿通することにより、固定部150を採取部位に固定する。これにより、密着面151が採取部位の表面と密着する。その後は上記第1実施形態等と同様にキャリアガスが成分分析装置20から採取室152に導入されることにより皮膚透過ガスの成分が分析される。
【0061】
本実施形態の皮膚透過ガス採取装置によれば、上記(1)〜(3)および(5)、(6)の効果に加えて以下の効果を奏することができる。
(12)採取室152、すなわちキャリアガスおよび皮膚透過ガスの流路は迂回する部分155を有するため、流路全体が直線状である構成と比較して、密着面151に占める流路全体の面積を増加させることができる。すなわち、時間当たりにおける皮膚透過ガスの採取量を増大させることができる。
【0062】
本発明の実施態様は、上記実施形態の内容に限られるものではなく、例えば以下のように変更することもできる。また、以下の変形例は上記実施形態についてのみ適用されるものではなく、異なる変形例同士を互いに組み合わせて実施することもできる。
【0063】
・第1実施形態の皮膚透過ガス採取装置の採取部位は上腕や脚に限定されない。被測定者の腹等、密着面12Aを密着させることができる部位を採取部とすることができる。
・第2実施形態の皮膚透過ガス採取装置の採取部位は上腕や脚に限定されない。被測定者の手首等、固定部80を挿通させることができ、かつ密着面81を密着させることができる部位を採取部位とすることができる。
【0064】
・第3実施形態の皮膚透過ガスの採取部位は手の甲や足の甲に限定されない。被測定者の上腕等、第1挟持部110および第2挟持部120によって挟持することができ、かつ密着面121Aを密着させることができる部位を採取部位とすることができる。
【0065】
・第4実施形態の皮膚透過ガスの採取部位は胸や背中に限定されない。被測定者の腹等、密着面141を密着させることができる部位を採取部位とすることができる。
・第5実施形態の皮膚透過ガスの採取部位は手首や足首に限定されない。被測定者の上腕等、固定部150を巻回でき、かつ密着面151を密着することができる部位を採取部位とすることができる。
【0066】
・上記第1実施形態〜第5実施形態の皮膚透過ガス採取装置では、採取室にキャリアガスを導入することにより採取室の皮膚透過ガスを回収したが、キャリアガスを採取室に導入せずに吸引ポンプにより直接的に採取室から皮膚透過ガスを吸引して回収することもできる。
【0067】
・上記第1実施形態〜第5実施形態の皮膚透過ガス採取装置では、分析が終了した皮膚透過ガスおよびキャリアガスの混合ガスは外部へ排気した。しかし、成分分析装置20に同混合ガスから皮膚透過ガスの成分を除去するフィルターを介在させることとし、同フィルターを通過したキャリアガスをキャリアガス貯留室51へ循環させる構成としてもよい。
【0068】
・上記第1実施形態〜第5実施形態の皮膚透過ガス採取装置では、採取室の形状、すなわち、ガス導入孔を始点としガス導出孔を終点とする皮膚透過ガスおよびキャリアガスの流路の形状を適宜変更することができる。例えば、図12に示されるように、ガス導入孔162Aを始点としガス導出孔162Bを終点とし、蛇行する形状の部位163を有するように流路を設定することもできる。
【0069】
この構成によれば、以下の効果を奏することができる。
(13)流路の形状として蛇行する形状の部位163を有することにより、流路全体を直線状とした構成と比較して密着面に占める流路全体の面積を増加させることができる。すなわち、すなわち、時間当たりにおける皮膚透過ガスの採取量を増大させることができる。
【0070】
また、蛇行する形状の部位163を有する流路の形状としては、この他、図13に示される形状とすることもできる。このような場合には、ガス導入孔173Aの近傍にガス導出孔173Bが配置されるように流路の形状を設定することにより、ガス導入管およびガス導出管がばらつくことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0071】
10…固定部、11A…膨張室、12A…密着面、13…面ファスナー(保持機構)14…採取室、14A…ガス導入孔、14B…ガス導出孔、20…成分分析装置、80…固定部、81…密着面、82…採取室、82A…ガス導入孔、82B…ガス導出孔、100…固定部、110…第1挟持部(挟持部)、120…第2挟持部(挟持部)、121…粘着性ゲル(粘着層)、121A…密着面、122…採取室、122A…ガス導入孔、122B…ガス導出孔、130…捩りばね(弾性機構)、140…固定部、141…密着面、142…採取室、142A…ガス導入孔、142B…ガス導出孔、143…空間、144…負圧機構、150…固定部、151…密着面、152…採取室、152A…ガス導入孔、152B…ガス導出孔、153…止め具(保持機構)154…固定孔(保持機構)、162A…ガス導入孔、162B…ガス導出孔、163…蛇行する形状の部位、173A…ガス導入孔、173B…ガス導出孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚透過ガスの採取部位の形状に応じて固定可能な固定部を備え、該固定部は前記採取部位の表面に密着する密着面を有し、皮膚透過ガスの採取室が同密着面を凹設して形成されてなる皮膚透過ガス採取装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記固定部は可撓性材料からなる。
【請求項3】
請求項2おいて、
前記固定部は帯状であるとともに前記採取部位に巻回することにより前記密着面を前記採取部位の表面に密着させるものであり、
前記固定部の巻回径を複数の異なる状態にて保持することが可能な保持機構をさらに備える。
【請求項4】
請求項3において、
前記固定部はその内部に流体が流入することにより膨張する膨張室を有する。
【請求項5】
請求項1において、
前記固定部は環状の弾性部材からなる。
【請求項6】
請求項1において、
前記固定部は前記採取室とは別の空間が前記密着面を凹設することにより形成されてなり、
前記空間と連通するとともに前記空間の内部の気体を吸引することにより前記空間を負圧とする負圧機構をさらに有する。
【請求項7】
請求項1において、
前記固定部は、採取部位を挟持するための対向配置された一対の挟持部と、これら挟持部を近接する方向に付勢する弾性機構とを有し、前記各挟持部の少なくとも一方は前記採取室が凹設される密着面を有してなる。
【請求項8】
請求項1において、
前記固定部は粘着性材料からなる粘着層を有し、該粘着層の表面が前記密着面とされてなる。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、
前記採取室には、キャリアガスが導入されるガス導入孔と、導入されたキャリアガスとともに採取された皮膚透過ガスを前記採取室からガス成分分析装置に導出させるガス導出孔とが設けられている。
【請求項10】
請求項9において、
前記採取室は、前記ガス導入孔を始点とし、前記ガス導出孔を終点とするキャリアガスおよび皮膚透過ガスの流路として形成されてなり、該流路の流路断面積が始点から終点まで等しく設定されてなる。
【請求項11】
請求項10において、
前記流路が直線状である。
【請求項12】
請求項10において、
前記流路は蛇行する形状の部位を含む。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−113792(P2013−113792A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262407(P2011−262407)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】