説明

皮膚透過ガス検出装置

【課題】被検者から放出された皮膚透過ガス中の成分を検出する際に行う操作作業数を少なくすることができる皮膚透過ガス検出装置を提供する。
【解決手段】アルコール濃度検出装置11は、筐体13と、筐体13内に収容されるガスセンサ14とを備えている。そして、筐体13には、皮膚透過ガスを筐体13内に取り入れる取り入れ口15と、取り入れ口15を開閉する蓋体16とが設けられている。蓋体16には押圧操作が可能な操作部材としての突部17が設けられている。そして、蓋体16は、操作部材としての突部17が押圧操作されると開くように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体から放出された皮膚透過ガス中の成分を検出する皮膚透過ガス検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の汗腺から分泌される汗中の成分は血液中の成分に依存しているという事実は周知である。そして、従来、このような事実に基づいて、人体から放出され、汗と同じ成分を含んでいる皮膚透過ガスの成分を検出して被検者の健康状態を診断する皮膚透過ガス検出装置が考えられている。
【0003】
このような皮膚透過ガス検出装置の一例としては、皮膚に密着可能であるとともに底部が開口された容器を備え、開口部を介して皮膚から放出された皮膚透過ガスを容器内に導入した後、導入した皮膚透過ガスを容器内から追い出して測定に供する皮膚透過ガス検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の皮膚透過ガス検出装置では、容器内を下部槽と上部槽とに仕切る仕切板が設けられ、仕切板にはその中央部に下部槽と上部層とを連通する開口が設けられている。そして、この皮膚透過ガス検出装置では、仕切板に設けられた開口を弁部材によって閉じた状態で、皮膚透過ガス検出装置の容器の開口部を被検者の皮膚に押し当てて固定して下部槽に皮膚透過ガスを収集する。その後、操作部材を操作して弁部材によって閉じられた開口を開き、下部槽から上部槽内に皮膚透過ガスを流入させる。そして、次に、上部槽と連通する導出口及び送風口を開き、送風口から導出口に流れる通気とともに皮膚透過ガスを追い出してその皮膚透過ガスを測定に供する。
【0004】
また、その他に、皮膚透過ガス中の成分を測定する検出装置としては、被検者の皮膚から放出された汗をガスとしてガスセンサにまで導入し、ガスセンサによって汗に含まれるアルコール濃度を測定して、被検者の血液中のアルコール濃度を得るアルコール濃度検出装置が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に記載のアルコール濃度検出装置では、被検者が指の腹を防滴透湿膜に押し付けた状態で、プランジャを引いて汗中の揮散成分をプローブ内で清浄空気に拡散し、シリンダ内に貯留する。そして、バルブを切り替えた後、貯留したガスをプランジャによってセンサ室に送り込み、センサ室を略一定のガス圧に維持しつつセンサ室に設けられたガスセンサによって、被検者の汗に含まれるアルコール濃度を測定する。
【特許文献1】特開2002−195919号公報
【特許文献2】特開2001−21567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の皮膚透過ガス検出装置では、容器の開口部を被検者の皮膚に押し当てる作業とは別に、操作部材を操作する作業、導出口及び送風口を開く作業を行わなければ収集された皮膚透過ガスを側定に供することはできない。したがって、この皮膚透過ガス検出装置は、皮膚透過ガスの測定を行うまでに多くの操作を行わなければならない分だけ、操作が煩雑であるという問題があった。
【0006】
また、特許文献2に記載の血液中のアルコール濃度検出装置では、被検者が指の腹をプローブの防滴透湿膜に押し付ける作業とは別に、駆動部によりプランジャを動かす操作と、バルブを切り換える操作を行わなければ、センサを備えるセンサ室にガスを送り込むことはできない。したがって、この血液中のアルコール濃度検出装置でも、特許文献1と同様に、被検者から発生したガスから血液中のアルコール濃度を測定するまでに多くの操作を行わなければならない分だけ、操作が煩雑であった。
【0007】
本発明は、こうした事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、被検者から放出された皮膚透過ガス中の成分を検出する際に行う操作作業数を少なくすることができる皮膚透過ガス検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、ガスセンサによって被検者の皮膚から放出された皮膚透過ガス中の成分を検出する皮膚透過ガス検出装置において、筐体と、前記筐体内に収容されるガスセンサと、前記筐体に設けられ、皮膚透過ガスを前記筐体内に取り入れる皮膚透過ガス取り入れ口と、前記皮膚透過ガス取り入れ口を開閉する蓋体と、前記蓋体と連係するように設けられ、押圧操作が可能な操作部材とを備え、前記蓋体は、前記操作部材が押圧操作されると開くように構成されていることを要旨とする。
【0009】
なお、「皮膚透過ガス」とは、汗腺から分泌されるガスや、体内から分泌された後に皮膚を透過して放出されるガスや、皮膚から分泌されるガスのことを意味する。
この発明では、被検者が操作部材を押圧操作すると、蓋体が開かれ皮膚透過ガスはガスセンサにまで到達し、ガスセンサは皮膚透過ガス中の成分を検出する。このとき、被検者による操作部材の押圧操作によって、皮膚透過ガス取り入れ口は開かれ、なおかつ、被検者の皮膚は皮膚透過ガス取り入れ口付近に位置することになる。したがって、被検者の皮膚を皮膚取り入れ口付近に近づかせる作業と、操作部材を操作する作業とを別々に行う場合に比べて、操作作業数を少なくすることができ操作性を向上させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記筐体には、前記筐体内と前記筐体外とを連通する排気口が前記皮膚透過ガス取り入れ口とは別に設けられ、前記筐体内には、前記排気口を閉鎖可能な閉鎖部材が設けられ、前記閉鎖部材は、前記操作部材が押圧操作された際に前記排気口を開くように構成されていることを要旨とする。
【0011】
なお、「操作部材が押圧操作された際に排気口を開く」とは、押圧操作すると同時に排気口を開く場合も、押圧操作して所定時間経過した後に排気口を開く場合も含む。
この発明では、操作部材が操作されると排気口が開かれて、筐体内のガスが排気口を介して筐体外に排気されるようになる。そのため、皮膚透過ガス取り入れ口から取り入れられた皮膚透過ガスは、排気口に向かって流れるようになり、排気口が存在しない場合に比べて皮膚透過ガスの流れは早くなる。したがって、ガスセンサに単位時間当たりに到達する皮膚透過ガスの量は、排気口が存在しない場合に比べて多くなるため、ガスセンサの検出精度を向上させることができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記操作部材は、前記蓋体に前記筐体から突出するように設けられた突部であることを要旨とする。
この発明では、被検者が蓋体を開こうとする際、筐体から突出している分だけ突部を押せば蓋体を開くことができる。したがって、平坦に構成された操作部材を押圧操作する場合のように被検者がどの程度押圧すべきかを意識しなくともよいため、容易に蓋体を開くことができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記蓋体は、複数のゴム部材によって構成されるとともに前記操作部材を兼ねており、前記複数のゴム部材は、非操作時に互いに当接し合って前記皮膚透過ガス取り入れ口を閉じるように設けられていることを要旨とする。
【0014】
この発明では、蓋体が操作部材を兼ねており、蓋体としての複数のゴム部材が押圧操作されると、複数のゴム部材は弾性変形して複数のゴム部材同士の当接は解除されゴム部材同士の間に間隔が形成されて皮膚透過ガス取り入れ口は開かれる。そして、皮膚透過ガスは筐体内に取り入れられて、ガスセンサは皮膚透過ガス中の成分を検出することができる。
【0015】
また、蓋体はゴム部材から構成されているため、蓋体が皮膚透過ガス取り入れ口を閉鎖する際の皮膚透過ガス取り入れ口のシール性を容易に向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被検者から放出された皮膚透過ガス中の成分を検出する際に行う操作作業数を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下、本発明を自動車に搭載されるアルコール濃度検出装置に具体化した第1実施形態を図1及び図2にしたがって説明する。
【0018】
図1(a)に示すように、アルコール濃度検出装置11は、略四角箱状の筐体13と、筐体13内に収容されているガスセンサ14と、筐体13に設けられた皮膚透過ガス取り入れ口15(以下、取り入れ口15と記載する。)を開閉する蓋体16と、操作部材としての突部17とから構成されている。
【0019】
図1(b)に示すように、筐体13には、その底部18の上方に図示しない取り付け手段を介して基板19が取り付けられるとともに、基板19にはガスセンサ14の端子14aが接合されている。ガスセンサ14は、ガス中のアルコール濃度を検出するとともに、検出したアルコール濃度に応じた検出電圧を外部の図示しない外部装置に対して出力するように構成されている。また、基板19上に接合されたガスセンサ14等の電子部品は、図示しない複数の配線によって図示しない外部装置と電気的に接続されている。なお、複数の配線は筐体13に設けられた図示しない導出孔を介して筐体13外に導出されている。そして、筐体13外のガスが導出孔を介して流入しないように、導出孔に存在する隙間は図示しないシール材によって埋められている。
【0020】
また、ガスセンサ14の上方に存在する筐体13の上壁部20には、平面視略矩形状の取り入れ口15が設けられている。取り入れ口15は筐体13外と筐体13内とを連通するとともに、上壁部20の内壁面20aに取り付けられている蓋体16によって開閉されるように構成されている。蓋体16は、取り入れ口15の開口を覆うことができるような形状の板ばねから構成されている。蓋体16はその第1端部21が上壁部20の内壁面20aに接着剤等の接合材により接合されるとともに、第2端部22が自由端となっている。蓋体16は、外力が加えられていない状態では取り入れ口15を閉鎖するように上壁部20に当接している。そして、蓋体16の第2端部22には、その取り入れ口15と対向する側の面23に操作部材としての突部17が一体に設けられている。突部17は取り入れ口15を通過して筐体13外に突出するように形成されている。
【0021】
次に前記のように構成されたアルコール濃度検出装置11の作用を説明する。
アルコール濃度検出装置11は、運転者が自動車を運転する前に自身の血液中のアルコール濃度を測定するために用いられる。アルコール濃度検出装置11を使用する際に、運転者は、図2に示すように、まず、自身の指Pで突部17を押圧し、蓋体16の第2端部22が取り入れ口15から離間するように蓋体16を湾曲させ取り入れ口15を開く。そして、取り入れ口15を開いたとき運転者の指Pは取り入れ口15の真上に存在するため、図2の矢印で示すように、運転者の指Pから放出された皮膚透過ガスは、取り入れ口15を通過して筐体13内に流入する。その後、皮膚透過ガスはガスセンサ14の検出素子にまで到達し、ガスセンサ14は皮膚透過ガス中のアルコール濃度に応じた検出電圧を筐体13の外部に設けられた図示しない外部装置に入力する。そして、外部装置は、ガスセンサ14から入力された検出電圧に基づいて、運転者の血液中のアルコール濃度を測定する。
【0022】
また、運転者の血液中のアルコール濃度の測定が終了した後、運転者が突部17から指Pを離すと、蓋体16は元の形状に戻り、蓋体16の第2端部22は上壁部20に当接して取り入れ口15を閉じる。そのため、皮膚透過ガスの検出を行わないときには蓋体16によって取り入れ口15が閉じられているため、取り入れ口15からのガスの流通は遮断され、筐体13外に存在する雑ガスが筐体13内に流入してガスセンサ14に影響を与えることは抑制される。なお、「雑ガス」とは、ガスセンサ14によってガス中の成分を検出する際、ガスセンサ14の検出結果に影響を与えるガスのことを意味する。
【0023】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(1)アルコール濃度検出装置11は、ガスセンサ14と、皮膚透過ガスを筐体13に取り入れる取り入れ口15と、蓋体16と、蓋体16と連係するように設けられ、押圧操作が可能な突部17とを備えている。したがって、取り入れ口15付近に運転者の皮膚を近づける作業と、突部17を操作する作業とをまとめて行うことができるため、操作作業数を低減することができ、アルコール濃度検出装置11の操作性を向上させることができる。
【0024】
(2)ガスセンサ14は筐体13内に収容されており、ガスセンサ14が皮膚透過ガス中の成分を検出する際に、筐体13外に存在する雑ガスが皮膚透過ガスに混入することを抑制する。したがって、雑ガスによってガスセンサ14の検出結果に影響が与えられることを抑制でき、ガスセンサ14による皮膚透過ガス中の成分の検出精度を向上させることができる。
【0025】
(3)操作部材としての突部17は、筐体13外に突出している。そして、運転者は、蓋体16を開こうとする際、筐体13から突出している分だけ突部17を押せば蓋体16を開くことができる。したがって、平坦に構成された操作部材を押圧操作する場合のように運転者がどの程度押圧すべきかを意識しなくともよいため、容易に蓋体16を開くことができる。
【0026】
(第2実施形態)
次に、本発明を具体化した第2実施形態について図3を参照しながら説明する。なお、第2実施形態は、排気口及び閉鎖部材が設けられた点が主に異なりその他の構成は第1実施形態と基本的に同様であるため、同様の部分についてはその詳細な説明を省略する。
【0027】
図3(a)に示すように、筐体13には、その側壁部25の下部に筐体13内と筐体13外とを連通する排気口26が設けられている。そして、筐体13内には、筐体13の上壁部20に対して平行な平板状の蓋体27と、蓋体27の第1端部28から筐体13の底部18に向かって延びる閉鎖部材29と、蓋体27の第2端部30と筐体13の底部18との間に介装された巻きばね31とが設けられている。なお、蓋体27は、その一方の側壁部25から対向する他方の側壁部32にまで亘るように形成されている。
【0028】
閉鎖部材29は側壁部25の内壁面25aと摺接するとともに、蓋体27が筐体13の上壁部20に当接している状態では、その先端が筐体13の底部18から離間し、なおかつ、排気口26よりも下方に位置している。図3(b)に示すように、閉鎖部材29は蓋体27が筐体13の上壁部20に当接している状態において排気口26を閉鎖できるようにその幅寸法が排気口26の幅寸法よりも大きく設定されている。そして、閉鎖部材29には、その下端部に排気口26よりも大きな形状の孔33が設けられている。
【0029】
孔33は、蓋体27が筐体13の上壁部20に当接している状態においては排気口26と連通せず、蓋体27が上壁部20から離間し取り入れ口15が開かれている状態では排気口26と連通する位置に設けられている。孔33は、突部17が操作されて蓋体27が所定距離下降した後に排気口26を全開する位置に設けられている。なお、図3(b)では、図示の都合上、ガスセンサ14及び基板19を省略して図示している。
【0030】
図3(a)に示すように、巻きばね31はその第1端部が筐体13の底部18に取り付けられるとともに、第2端部が蓋体27の第2端部30に取り付けられている。巻きばね31は蓋体27を筐体13の上壁部20側に付勢するように設けられている。
【0031】
次に、前記のように構成されたアルコール濃度検出装置34の作用を説明する。
アルコール濃度検出装置34は、運転者が自動車を運転する前に自身の血液中のアルコール濃度を測定するために用いられる。アルコール濃度検出装置34を使用する際に、運転者は、図3(c)に示すように、まず自身の指Pで突部17を押圧し、巻きばね31の付勢力に抗して蓋体27及び閉鎖部材29を筐体13の底部18側に移動させる。すると、取り入れ口15が開かれた後、孔33の下端が排気口26の上端を通り過ぎた時点から、筐体13内は孔33及び排気口26を介して筐体13外と連通する。そして、図3(c)の矢印で示すように、運転者の指Pから放出された皮膚透過ガスは、取り入れ口15を通過して筐体13内に流入し、ガスセンサ14を経由して排気口26から放出される。したがって、排気口26が開かれた後は、皮膚透過ガスは取り入れ口15から排気口26に向かうように流れるため、皮膚透過ガスの流れは早くなり、皮膚透過ガスはより早くガスセンサに到達する。
【0032】
この実施形態によれば、第1実施形態の(1)〜(3)と同様の効果の他に、以下に示す効果を得ることができる。
(4)アルコール濃度検出装置34は、筐体13に設けられた排気口26と、排気口26を開閉する閉鎖部材29とを備えている。閉鎖部材29には、蓋体27が開かれたときに排気口26と連通する孔33が設けられている。したがって、取り入れられた皮膚透過ガスの流れは早くなり、ガスセンサ14に単位時間当たりに到達する皮膚透過ガスの量は多くなり、ガスセンサ14の検出精度を向上させることができる。
【0033】
(第3実施形態)
次に、本発明を具体化した第3実施形態について、図4及び図5を参照しながら説明する。
【0034】
図4(a)に示すように、アルコール濃度検出装置35にはその底部に略四角形状のベース部36が設けられている。
ベース部36にはその中央部に円筒状の台座部37が立設されるとともに、その上面にベース部36の外縁よりも一回り小さく、かつ、ベース部36の外縁に沿うように延びる平面視四角形状の突条38が形成されている。そして、ベース部36上であって、突条38の外側には、四角筒状の第1ケース39が設けられている。第1ケース39の内側には第2ケース42が収容されている。
【0035】
第2ケース42は、ベース部36と第2ケース42との間に介装された巻きばね41の付勢力によって一定の位置に保持されている。なお、巻きばね41は圧縮ばねであるとともに、その内側に台座部37が存在するように配置されている。筐体は、ベース部36、第1ケース39、及び第2ケース42によって構成されている。そして、図4(b)に示すように、第2ケース42は、外形が直方体形状に形成されるとともにその内部にガスセンサ43を収容可能な収容室44が設けられた収容体45と、収容体45の上縁部に設けられた略四角筒形状のガス取り入れ部46とから構成されている。
【0036】
収容体45はその内壁面が台座部37の外周に摺接するように形成されるとともに、その内壁面の上部にガスセンサ43の外周部と摺接可能な突条47が形成されている。なお、ガスセンサ43は台座部37上に載置された状態で収容室44に収容されている。そして、ガスセンサ43の図示しない端子は図示しない配線と接続されている。配線は台座部37内を通されて図示しない外部装置に接続されている。
【0037】
図4(a)に示すように、ガス取り入れ部46はその上部が第1ケース39の上端39aよりも上側に存在するとともに、取り入れ口48を区画するように構成されている。そして、ガス取り入れ部46にはその相対する両側壁49に対して回転可能に取り付けられた回転軸50を介して一対の蓋体51が装着されている。
【0038】
蓋体51を構成する平板状の蓋板52には、一方の側縁52a(図4(b)参照)側の両隅部にそれぞれ凹所55が形成されるとともに、凹所55から両側に延びるように回転軸50が設けられている。なお、回転軸50は、ガス取り入れ部46の内側の4隅に対応する位置に設けられた側面視逆L字状のカバー部56によって覆われている。そして、蓋板52の両端からは、収容体45を間に挟むように板状の一対のレバー53が延びている。
【0039】
図4(b)に示すように、レバー53は蓋板52の一方の側縁52a側に向かって湾曲するように延びている。そして、レバー53の先端部側面には突部54が設けられている。突部54は、第1ケース39の内壁面に設けられた係合段部40(図4(a)参照)に係合して蓋体51が取り入れ口48を閉じた姿勢で一定に保持している。すなわち、突部54は、蓋板52を水平な姿勢で保持するとともに、蓋板52が水平な姿勢より下方に傾くことを規制するために設けられている。
【0040】
ここで、一対の蓋体51は取り入れ口48と収容室44との間を開閉可能に構成されるとともに、一対の蓋体51が取り入れ口48を閉じた状態ではガス取り入れ部46の開口端部46aからガスセンサ43に向かうガスの流通は遮断されている。また、蓋体51が取り入れ口48を閉じた状態では、蓋板52とガスセンサ43の先端との間に所定間隔が存在している。なお、この所定間隔は、第2ケース42が押圧されて下降する距離より小さくなるように設定されている。
【0041】
次に、前記のように構成されたアルコール濃度検出装置35の作用を説明する。
アルコール濃度検出装置35は、運転者が自動車を運転する前に自身の血液中のアルコール濃度を測定するために用いられる。アルコール濃度検出装置35を使用する際に、運転者は、図5に示すように、まず、自身の指Pで第2ケース42の開口端部46aを押圧し、第2ケース42を巻きばね41の付勢力に抗して押し下げる。そして、第2ケース42の下降に連係して一対の蓋体51が下降すると、ガスセンサ43の上面が蓋体51の蓋板52に押し付けられることで一対の蓋体51は回動して押し開けられる。すると、ガスセンサ43は蓋体51を開いたうえでその上部が取り入れ口48に配置されるとともに、指Pとガスセンサ43の検出素子との間の距離は縮まる。そして、指Pから放出された皮膚透過ガスは、速やかにガスセンサ43の検出素子にまで到達し、ガスセンサ43は皮膚透過ガス中のアルコール濃度に応じた検出電圧をアルコール濃度検出装置35の外部に設けられた図示しない外部装置に入力する。そして、外部装置は、ガスセンサ43から入力された検出電圧に基づいて、運転者の血液中のアルコール濃度を測定する。
【0042】
ここで、アルコール濃度検出装置35を用いたアルコール濃度の測定が終了した後、運転者が第2ケース42から指Pを離すと、第2ケース42は巻きばね41によって付勢されて上昇し元の位置に復帰する。なお、第2ケース42が元の位置に復帰する途中でガスセンサ43の上面と蓋板52とは離間するとともに、蓋体51は回転軸50を支点として開口44aを閉じる方向に回転する。そして、突部54が係合段部40に係止されると、蓋板52は水平な姿勢に保持されて取り入れ口48を閉じる。
【0043】
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
(5)第2ケース42を押圧操作して一対の蓋体51を開く際には、指Pも第2ケース42とともに下降してガスセンサ43に近づく。したがって、ガスセンサ43によって皮膚透過ガス中の成分を検出する際には、指Pとガスセンサ43との間の距離を近づかせることができるため、皮膚透過ガス中の成分を速やかにガスセンサ43にまで到達させることができる。
【0044】
実施の形態は、前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 第1実施形態において、蓋体は弾性変形可能な部材であればよいため、蓋体を構成する部材を変更してもよい。例えば、蓋体として平板状のゴム部材を用いてもよい。また、第1実施形態における蓋体に代えて、一対のゴム部材を用いてもよい。例えば、図6(a)に示すように、蓋体としての板状の一対のゴム部材60を筐体13の取り入れ口15と対応する部分であって筐体13の外側に設けてもよい。この場合、一対のゴム部材60の先端が互いに押し付けられるように一対のゴム部材60を配置するとともに、ゴム部材60の上面に操作部材としての突部61を設ける。そして、突部61が非操作時の場合には、一対のゴム部材60の先端は互いに押し付け合っており、ゴム部材60は取り入れ口15を閉じて皮膚透過ガスがガスセンサ14にまで到達することを遮断する。また、図6(b)に示すように、被検者がゴム部材60の突部61を押圧操作すると、ゴム部材60は弾性変形し、ゴム部材60の先端同士が離間して、取り入れ口15は開かれる。そして、皮膚透過ガスは筐体内に取り入れられて、ガスセンサにまで到達し、ガスセンサは皮膚透過ガス中の成分を検出することができる。蓋体はゴム部材によって構成されているため、ゴム部材60によって取り入れ口15を閉じれば取り入れ口15のシール性を容易に向上させることができる。また、ゴム部材60に設けられた操作部としての突部を省略し、ゴム部材自体が操作部を兼ねるように構成してもよい。この場合において、皮膚透過ガス中の成分を検出するには、一対のゴム部材同士が押し付け合っている箇所を押圧して取り入れ口を開けばよい。
【0045】
○ 第2実施形態において、蓋体27を保持する保持手段として用いる部材を変更してもよい。例えば、巻きばねの代わりに、板ばねを用いてもよい。また、ゴム部材を用いてもよいし、蛇腹部材を用いてもよい。
【0046】
○ 第2実施形態において、閉鎖部材と蓋体とを別々に設けてもよい。例えば、筐体13の内壁部に回転可能に取り付けられるとともに排気口を塞ぐことが可能な閉鎖部材を設ける。そして、閉鎖部材の一方の端部に付勢手段を取り付けるとともに、蓋体と一体的に設けられた棒状のレバーが他方の端部と当接するように構成する。そして、蓋体によって取り入れ口を閉じている状態では、レバーは閉鎖部材を押圧することなく、付勢手段によって閉鎖部材は排気口を閉じた状態で保持される。そして、蓋体が下降したときには、レバーによって閉鎖部材を押して回転させることで排気口を開くとともに、突部が押圧操作されなくなりレバーが閉鎖部材から離間すると巻きばねの付勢力によって閉鎖部材は元の姿勢に戻り排気口を閉じる。
【0047】
○ 第2実施形態においては、突部が押圧操作された際に排気口と筐体内とを連通できる大きさであれば孔33の大きさを変更してもよい。例えば、孔33を排気口よりも小さい形状となるように変更してもよいし、排気口と同じ形状となるように変更してもよい。ただし、孔33の大きさは、排気口の大きさ以上である方が排気口を全開できるため好ましい。
【0048】
○ 第2実施形態において、突部が押圧操作されると同時に排気口が開かれるように構成してもよい。例えば、蓋体27で取り入れ口15を閉じている状態において孔33の下端が排気口26の上端と一致するように構成すれば、突部17を押圧操作すると同時に排気口26が開かれる。
【0049】
○ 第1及び第2実施形態において、筐体の形状については、とくに限定されない。例えば、筐体を両端側が閉鎖された略円筒形状に形成してもよいし、多角筒形状に形成してもよい。
【0050】
○ 蓋体を弾性変形させることで皮膚透過ガス取り入れ口を開く構成に代えて、操作部材を側方から押圧して皮膚透過ガス取り入れ口を開く構成に変更してもよい。例えば、筐体の上壁部に取り付けられた蓋体をスライド移動できるように構成し、取り入れ口を開いたときに被検者の皮膚が取り入れ口付近に存在するように、突部及び取り入れ口の位置を設定する。
【0051】
○ 皮膚透過ガス検出装置を自動車に搭載する場合、運転者が操作可能な箇所であれば、設置する箇所についてはとくに制限されない。例えば、操作部がインスツルメントパネルの外部に突出する状態で皮膚透過ガス検出装置を設置してもよいし、ドアのハンドル部分に皮膚透過ガス検出装置を設置してもよい。ドアのハンドル部分に皮膚透過ガス検出装置を設置する場合には、運転者が把持する箇所に皮膚透過ガス検出装置の操作部が位置するように構成すれば、運転者が乗車する前に自然に操作部を操作させて、運転者から放出される皮膚透過ガス中の成分を検出することができる。また、皮膚透過ガス検出装置から導出される配線を容易に目立たないようにすることができる。また、皮膚透過ガス検出装置を設置する場所は、自動車に限らず、用途に応じて設置箇所を変更してもよい。
【0052】
○ アルコール濃度センサの代わりに、皮膚透過ガスとしてアセトンの放出量を検出するアセトンセンサを用いてもよい。また、皮膚透過ガスとしてアンモニアの放出量を検出するアンモニアセンサを用いてもよい。
【0053】
○ 目的とする皮膚透過ガスの成分を検出することができるガスセンサであれば、ガスセンサの種類についてはとくに限定されない。例えば、ガスセンサとして半導体式センサを用いてもよいし、電気化学センサを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)はアルコール濃度検出装置の模式一部破断斜視図、(b)はアルコール濃度検出装置の模式断面図。
【図2】アルコール濃度検出装置で皮膚透過ガスを検出している状態を示す模式断面図。
【図3】(a)はアルコール濃度検出装置の模式断面図、(b)は(a)の断面と直交する断面におけるアルコール濃度検出装置の模式断面図、(c)はアルコール濃度検出装置による皮膚透過ガスの検出を完了した後の状態を示す模式断面図。
【図4】(a)はアルコール濃度検出装置の模式断面斜視図、(b)はアルコール濃度検出装置の一部破断断面図。
【図5】アルコール濃度検出装置の模式断面図。
【図6】(a)は別の実施形態における蓋体の模式部分断面図、(b)は別の実施形態において蓋体が開いた状態を示す模式部分断面図。
【符号の説明】
【0055】
11,34,35…皮膚透過ガス検出装置としてのアルコール濃度検出装置、13…筐体、14,43…ガスセンサ、15,48…皮膚透過ガス取り入れ口としての取り入れ口、16,27,51…蓋体、17,61…操作部材としての突部、26…排気口、29…閉鎖部材、42…第2ケース、60…蓋体としてのゴム部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスセンサによって被検者の皮膚から放出された皮膚透過ガス中の成分を検出する皮膚透過ガス検出装置において、
筐体と、
前記筐体内に収容されたガスセンサと、
前記筐体に設けられ、皮膚透過ガスを前記筐体内に取り入れる皮膚透過ガス取り入れ口と、
前記皮膚透過ガス取り入れ口を開閉する蓋体と、
前記蓋体と連係するように設けられ、押圧操作が可能な操作部材とを備え、
前記蓋体は、前記操作部材が押圧操作されると開くように構成されていることを特徴とする皮膚透過ガス検出装置。
【請求項2】
前記筐体には、前記筐体内と前記筐体外とを連通する排気口が前記皮膚透過ガス取り入れ口とは別に設けられ、
前記筐体には、前記排気口を閉鎖可能な閉鎖部材が設けられ、
前記閉鎖部材は、前記操作部材が押圧操作されると前記排気口を開くように構成されている請求項1に記載の皮膚透過ガス検出装置。
【請求項3】
前記操作部材は、前記蓋体に前記筐体から突出するように設けられた突部である請求項1又は請求項2に記載の皮膚透過ガス検出装置。
【請求項4】
前記蓋体は、複数のゴム部材によって構成されるとともに前記操作部材を兼ねており、
前記複数のゴム部材は、非操作時に互いに当接し合って前記皮膚透過ガス取り入れ口を閉じるように設けられている請求項1に記載の皮膚透過ガス検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−97960(P2009−97960A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269085(P2007−269085)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】