説明

皮膚障害の治療又は予防における化合物の使用

本発明は、炎症性の皮膚病態を予防及び/又は治療することを意図した医薬の調製における、下記式(I):


の化合物、又はその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物若しくは水和物のうち1つの使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚障害、好ましくはざ瘡、酒さ及び好中球性皮膚症の予防及び/又は治療を意図した医薬の調製における、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物若しくは水和物のうち1つの新規使用に関する。
【背景技術】
【0002】
尋常性ざ瘡は、世界中の何百万人の人々が罹患する最も一般的な皮膚状態であり、面皰、紅斑丘疹及び膿疱の形成、まれに結節又は偽嚢胞を特徴とする毛嚢脂腺単位の慢性の炎症性疾患である(Strauss JS、Pochi PE、Downing DT、Acne: perspectives.、J Invest Dermatol、1974、62、321〜325頁)。尋常性ざ瘡は、多因子の発生機序を有する多形性の障害であり、未だ完全には解明されていない(Oberemok SS、Shalita AR、Acne vulgaris, I: pathogenesis and diagnosis.、Cutis、2002、70、101〜105頁)。
【0003】
患者が最も懸念するのは通常、尋常性ざ瘡の炎症段階である。いくつかの形態学的に異なる炎症病変が形成されることがあり、そのような病変は、痛みを伴い、外見が見苦しい場合がある。30%の患者において、そのような病変は瘢痕化に至る。炎症性のざ瘡及びざ瘡瘢痕化は、うつ、不安、及び特に青年期の情緒的に重要な時期における悪い自己イメージなど、患者に著しい心理的影響を及ぼすことがある(Aktan S、Ozmen E、Sanli B、Anxiety, Depression, and Nature of Acne Vulgaris in Adolescents.、Int J Dermatol、2000、39、354〜357頁)。最新の知見は、ざ瘡病変発生の全段階で細胞の炎症事象が中心的役割を有することを裏付けている。炎症性のざ瘡病変は、以下の一連の事象によって要約できる:正常な皮脂腺小胞が、ケラチン生成細胞の過剰増殖及び脱落の減少により、微小面皰(microcomedone)及び面皰に発達する。このプロセスは、IL-1aなどの初期炎症性サイトカインの放出と関連があると考えられ、本出願人らは、P.Acnesの集団密度が増加する(第1段階)と仮説を立てた。炎症の開始は、特異的なCD4+T細胞が介在する経路又は非特異的な経路(ケラチン生成細胞による炎症促進性のケモカイン及びサイトカインの産生の増加を伴う)のいずれかを経て起こると考えられる(第2段階)。炎症は、好中球の活性化により増加する(第3段階)。好中球は、リソソーム酵素、リパーゼ、ヒアルロニダーゼ、含酸素物質(oxygenated agent)及び大きな一団の炎症促進刺激物質(pro-inflammatory stimuli)を放出し、これらにより、小胞の上皮の破裂及びさらなる炎症がもたらされる。この最後のステップは、瘢痕形成の機序に能動的に関与する(第4段階)(総説については、ACNE:INFLAMMATION、Farra及びIngham、Clinics and Dermatology、2005年を参照のこと)。
【0004】
IL-8(CXCL-8)は、CXCケモカインファミリーのメンバーであり、炎症部位への好中球の輸送において根源的な役割を果たす(総説については、Busch-Petersen J.、Curr Top Med Chem.、2006、6(13)、1345〜52頁を参照のこと)。
【0005】
炎症性のざ瘡病変においては、IL-8及び関連のケモカイン(CXCL2)のレベルの上昇が報告されている。CXCR1及びCXCR2のmRNAはいずれも、非病変皮膚及び病変皮膚において検出された(Trivedi NRら、J Invest Dermatol.、2006年5月、126(5)、1071〜9頁)。
【0006】
2つのケモカインのGタンパク質共役型7回膜貫通受容体(CXCR1及びCXCR2)は、IL-8により特異的に活性化されることが知られている。CXCR2は、IL-8及び他のケモカイン(CXCL6、CXCL5、CXCL2及びCXCL1など)と高親和性に結合するが、CXCR1は、CXCR2ほど多くと結合せず、IL-8とのみ結合する。好中球の走化性及び活性化に加え、これらの受容体は、単球、マクロファージ、及びT細胞サブセットの走化性及び活性化に関与する。さらに、IL-8は、ケラチン生成細胞の過剰増殖及び新血管新生に直接関与することもある。
【0007】
したがって、CXCR1及びCXCR2の強力な二重拮抗剤(dual antagonist)は、IL-8及び関連のケモカインが介在する炎症性応答及び血管新生の有害効果の制限において有望であり、それにより、瘢痕化を防止すると考えられる。
【0008】
先行技術においては、とりわけ、WinddowsonらによりJ. Med. Chem.、2004、47、1319〜1321頁に記載されているようなN,N'ジアリール尿素化合物が、CXCR2の拮抗剤として評価された。そうした小分子は、ヒト好中球に対してin vitroで、また、耳の浮腫及び好中球減少症のウサギモデルにおいてin vivoで、活性があることが判明した。
【0009】
特許出願WO00/35442では、IL-8拮抗剤としてヒドロキシル尿素スルホンアミドが開示され、当該ケモカインが介在する疾患(アトピー性皮膚炎、変形性関節炎、肺疾患又は肺障害、ざ瘡など)の治療に使用された。
【0010】
特許出願WO02/079122には、ジアリール尿素誘導体のファミリーが記載されており、代謝の安定性及び半減期を増加させるための化学的なプロセスと共に、式(I)の化合物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】WO00/35442
【特許文献2】WO02/079122
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Strauss JS、Pochi PE、Downing DT、Acne: perspectives.、J Invest Dermatol、1974年、62、321〜325頁
【非特許文献2】Oberemok SS、Shalita AR、Acne vulgaris, I: pathogenesis and diagnosis.、Cutis、2002年、70、101〜105頁
【非特許文献3】Aktan S、Ozmen E、Sanli B、Anxiety, Depression, and Nature of Acne Vulgaris in Adolescents.、Int J Dermatol、2000年、39、354〜357頁
【非特許文献4】ACNE: INFLAMMATION、Farra及びIngham、Clinics and Dermatology、2005年
【非特許文献5】Busch-Petersen J.、Curr Top Med Chem.、2006年、6(13)、1345〜52頁
【非特許文献6】Trivedi NRら、J Invest Dermatol.、2006年5月、126(5)、1071〜9頁
【非特許文献7】Winddowsonら、J. Med. Chem.、2004年、47、1319〜1321頁
【非特許文献8】Journal of the American Academy of Dermatology、2004年6月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
今回、予想外にも、本特許出願の化合物のうちいくつかが、CXCR1及びCXCR2の拮抗剤であり、皮膚障害、好ましくはざ瘡及び酒さの予防及び/又は治療において活性であり得ることが見出された。
【課題を解決するための手段】
【0014】
したがって、本発明は、皮膚障害を予防及び/又は治療することを意図した医薬の調製における、下記式(I):
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、R1は、水素、臭化物、好ましくはメチル及びエチルから選ばれる、1から4個の炭素原子を有するアルキル、シアン化物、塩化物から選択され、R2は、シアン化物又はニトロから選択される)
の化合物、その薬学的に許容される塩、その薬学的に許容される溶媒和物又はそれらの水和物の使用に関する。これらの病態は、角質障害(keratinic disorder)、とりわけ、あらゆる形態のざ瘡及び好中球性皮膚症である。
【0017】
好ましい一実施形態では、本発明は、式(I)(式中、R1は、臭化物又は水素から選択され、R2は、シアン化物又はニトロから選択される)の化合物の使用に関する。
【0018】
本発明は、より具体的には、角質障害、好ましくはざ瘡及び好中球性皮膚症を予防及び/又は治療することを意図した医薬の調製における、N-(3-ブロモ-4-シアノ-2-ヒドロキシフェニル)-N'-(2-ブロモフェニル)尿素(SB656933としても公知である)若しくは1-(2-ブロモ-フェニル)-3-(2-ヒドロキシ-4-ニトロ-フェニル)-尿素(SB225002としても公知である)、又はそれらの薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物若しくは水和物のうち1つの使用に関する。
【0019】
発明の代替的な実施形態では、本発明は、式(I):
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、R1は、水素、臭化物、好ましくはメチル及びエチルから選ばれる、1から4個の炭素原子を有するアルキル、シアン化物、塩化物から選択され、R2は、シアン化物若しくはニトロから選択される)
の化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物又はその薬学的に許容される塩、それらの薬学的に許容される溶媒和物及びそれらの水和物を、必要とする個体に投与する、皮膚障害、好ましくはざ瘡、酒さ及び好中球性皮膚症の予防及び/又は治療方法を提供する。
【0022】
好ましい一実施形態では、本発明は、式(I)の化合物(式中、R1は、臭化物又は水素から選択され、R2は、シアン化物又はニトロから選択される)を提供する。特定の一実施形態では、本発明の方法は、N-(3-ブロモ-4-シアノ-2-ヒドロキシフェニル)-N'-(2-ブロモフェニル)尿素(SB656933としても公知である)若しくは1-(2-ブロモ-フェニル)-3-(2-ヒドロキシ-4-ニトロ-フェニル)-尿素(SB225002としても公知である)、又はそれらの薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物若しくは水和物のうち1つから選ばれる化合物を提供する。
【0023】
本発明による式(I)の化合物の塩は、有機塩基又は無機塩基を有する塩、例えばアルカリ金属塩(リチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩など)を含む。
【発明を実施するための形態】
【0024】
用語「式(I)の化合物の水和物」は、本化合物と1種若しくはそれ以上の水分子との組合せを意味すると理解される。
【0025】
用語「式(I)の化合物の溶媒和物」は、溶媒が、この溶媒の存在下で形成される式(I)の化合物の結晶に結合することによって生じる組合せを意味すると理解される。
【0026】
医薬として使用する場合、式(I)の化合物、それらの薬学的に許容される塩、それらの薬学的に許容される溶媒和物又はそれらの水和物は、医薬組成物、好ましくは皮膚病用組成物として製剤化しなければならない。
【0027】
したがって、本発明の別の主題は、式(I)の化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、医薬組成物、とりわけ皮膚病用組成物である。
【0028】
このような組成物は、経口、局所、経腸、非経口、点眼、舌下、吸入、皮下、筋肉内、静脈内、経皮又は直腸内投与を意図することができ、したがってそれに適したものであることができる。式(I)の化合物は、任意選択で薬学的に許容される塩、溶媒和物及び/又は水和物の形態であり、単独で又は別の活性成分との組合せで、従来の医薬担体又は賦形剤との混合物として投与形態の単位で、動物及びヒトに投与できる。好ましくは、本医薬組成物は、経口投与又は局所投与に適した形態で包装される。
【0029】
本発明による組成物は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩、薬学的に許容される溶媒和物若しくは水和物のうち1つを、所望の予防効果又は治療効果を得るのに十分な量で含む。有用な投与量は、患者の年齢、性別及び体重により変化する。
【0030】
式(I)の化合物又はその塩、溶媒和物若しくは水和物のうち1つは、好ましくは0.01〜100mg/kg/日、有利には0.01〜50mg/kg/日の割合で投与する。そのような用量を1日2〜4回の投与で投与することも可能である。これらの投与量は平均的な状況の例であるが、それより高い又は低い投与量が適切な特定の場合もあると考えられ、そのような投与量も本発明の範囲内である。
【0031】
本発明による組成物は、所望の医薬品形態、とりわけ、皮膚病用の形態及び選ばれる投与方法に従って選ばれる、生理学的に許容される担体又は少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む。
【0032】
用語「生理学的に許容される担体」及び用語「薬学的に許容される賦形剤」は、それぞれ、皮膚、粘膜及び体表面成長物(superficial body growth)と適合する担体及び賦形剤を意味すると理解される。
【0033】
経口投与の場合、本医薬組成物又は皮膚病用組成物は、錠剤、例えば、糖衣錠、硬ゼラチンカプセル剤、丸剤、シロップ剤、懸濁剤、液剤、散剤、顆粒剤、乳剤、カプセル剤、又は制御放出を可能にするマイクロスフェア剤若しくはナノスフェア剤又は脂質小胞若しくはポリマー小胞の形態で提供できる。
【0034】
非経口用には、本組成物は、注入用又は注射用の液剤又は懸濁剤の形態で提供できる。
【0035】
経口投与用の固形組成物を得るために、活性成分は、少なくとも1種の不活性希釈剤(ショ糖、乳糖又はデンプンなど)と混合できる。一般に、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム)などの他の添加剤を加えることができる。とりわけ、カプセル剤、錠剤又は丸剤の場合は、緩衝剤を加えることができる。液体経口組成物の場合は、不活性希釈剤(水など)を使用できる。
【0036】
局所用には、本発明による医薬組成物は、より具体的には、皮膚及び粘膜の治療を意図し、軟膏剤、クリーム剤、乳剤(milk)、膏剤(salve)、粉剤(powder)、含浸パッド剤(impregnated pad)、シンデット剤(syndet)、液剤、ゲル剤、スプレー剤、フォーム剤、懸濁剤、ローション剤、スティック剤、シャンプー剤又は洗浄ベース剤(washing base)の形態で提供できる。本医薬組成物は、制御放出を可能にする、マイクロスフェア若しくはナノスフェア又は脂質小胞若しくはポリマー小胞の懸濁剤、或いはポリマーパッチ剤及びヒドロゲル剤の形態でも提供できる。この局所用組成物は、無水形態、水性形態又はエマルジョンの形態で提供できる。
【0037】
式(I)の化合物又はその塩、溶媒和物若しくは水和物のうち1つは、経口投与する場合には、0.01〜100mg/kg/日、有利には0.01〜50mg/kg/日の割合で投与する。
【0038】
式(I)の化合物又はその塩、溶媒和物若しくは水和物のうち1つは、局所投与する際は、該組成物の総重量に対して、一般に0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%の濃度で使用する。
【0039】
したがって、前述のとおりの医薬組成物及び皮膚病用組成物は、不活性添加剤若しくはさらには薬力学的に活性のある添加剤又はこれらの添加剤の組合せ、とりわけ、以下を含むことができる:
- 湿潤剤、
- 風味向上剤(flavour enhancer)、
- 保存剤、例えば、パラヒドロキシ安息香酸エステルなど、
- 安定化剤、
- 水分調節剤、
- pH調節剤、
- 浸透圧調整剤、
- 乳化剤、
- UV-A及びUV-B遮断剤、
- 酸化防止剤、例えば、α-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール又はブチル化ヒドロキシトルエン、スーパーオキシドジスムターゼ、ユビキノール又はある種の金属キレート化剤、
- 皮膚軟化剤、
- 保湿剤、例えば、グリセロール、PEG400、チアモルホリノン(thiamorpholinone)及びその誘導体又は尿素。
【0040】
当然ながら、当業者は、乾癬又は湿疹に対する所望の効果が、想定される添加によって有害な影響を受けない又は実質的に受けないように、これらの組成物に加える任意選択の化合物を慎重に選ぶであろう。
【0041】
式(I)の化合物は、とりわけ、出願WO02/079122に記載されているようにして合成する。
【0042】
式(I)の化合物の特性の研究により、式(I)の化合物及びその薬学的に許容される塩、溶媒和物又は水和物は、毒性はなく、以下の治療において抗炎症活性を有することが示された:ざ瘡、最も広い意味での好中球性皮膚症、スイート症候群、エクリン汗腺炎、SAPHO症候群、スネドン-ウィルキンソン症候群(角膜下膿疱症)、膿皮症壊疽、持久性隆起性紅斑、乾癬、尋常性乾癬、膿疱性乾癬、掌蹠膿疱症、発疹性膿疱症(PEAG)、膿疱性血管炎、小児肢端膿疱症、ベーチェット病及びある種の自己免疫性の水疱性疾患(ヘルペス誘導型の皮膚炎など)、IgA好中球性皮膚症、IgA表皮内膿疱症、類天疱瘡、IgA天疱瘡、血管炎、Fiellinger Leroy Reiter症候群、頭皮膿疱症、アロポー稽留性肢端皮膚炎、及び血管免疫芽細胞性リンパ節症を伴う皮膚症、シクロホスファミドに誘導される骨髄造血異常を伴う皮膚症、p-ANCA抗体を伴う皮膚症、ピロトロープ紫斑性真菌による真菌症(pilotrope purpuric fungal mycosis)。
【0043】
酒さは、一般的ではあるが病因が不確かな見過ごされることの多い皮膚状態であり、著しい顔面変形、眼の合併症及び重い精神的苦痛につながることがある。改正された酒さの標準分類系が、Journal of the American Academy of Dermatologyの2004年6月号に発表された。National Rosacea Society Expert Committee on the Classification and Staging of Rosaceaにより開発され、世界中の酒さの専門家により見直されたこの分類系は、酒さの一次的及び二次的な特徴(以下に記載)について記載しており、サブタイプと呼ばれる、徴候及び症状の4つのパターンを識別している:
サブタイプ1:紅斑毛細血管拡張型の(erythematotelangiectatic)酒さ。
サブタイプ1は、潮紅、及び、顔面の中心部の持続性の紅斑を特徴とする。毛細血管拡張症は、よく見られるが、診断に必須ではない。
サブタイプ2:丘疹膿疱性の酒さ。
サブタイプ2には、一過性の丘疹、膿疱又は両方が顔面の中心部に分布している顔面の中心部の持続性の紅斑が含まれる。灼熱痛及び刺痛が報告されることもある。
サブタイプ3:腫瘤性の(phymatous)酒さ。
このサブタイプには、皮膚の肥厚、不規則な表面の結節化(nodularity)、及び肥大が含まれることがある。腫瘤性の酒さは、最も一般的には鼻瘤として生じるが、他の場所(顎、額、頬及び耳など)に現れることがある。広がった表出性の小嚢が腫瘤領域に現れることがあり、毛細血管拡張症が存在することがある。
サブタイプ4:眼性酒さ。
眼性酒さには、以下が含まれることがある:涙ぐんだ又は充血した外観(眼瞼内の結膜充血)、異物感覚、灼熱痛又は刺痛、乾燥、かゆみ、光への敏感性、かすみ眼、結膜及び眼瞼辺縁の毛細血管拡張症、又は眼瞼及び眼周囲の紅斑。眼瞼炎、結膜炎、及び眼瞼辺縁の不規則さが生じることもある。霰粒腫として現れるマイボーム腺機能不全、又は麦粒腫(ものもらい)を呈する慢性感染症はよく見られる。患者によっては、角膜の合併症(点状角膜炎、角膜浸潤、潰瘍、又は辺縁角膜炎)の結果として視力低下を経験する場合がある。治療に対し眼科学的な助言を得たアプローチが必要と考えられる。
【0044】
顔面の中心部の紅斑及び毛細血管拡張症は、酒さの早期において顕著である。これが、顔面の中心部の丘疹及び膿疱を伴う慢性の炎症性浸潤に進行する。間欠的又は慢性的な顔面浮腫が生じることもある。患者によっては、鼻の上の小さな瘤状の隆起として明らかな鼻瘤、すなわち、鼻の結合組織及び皮脂腺の粗い肥大化を発症する。
【0045】
酒さの顕著な主愁訴は、間欠的な、顔面の中心部の潮紅及び紅斑である。かゆみは典型的にはないが、多くの患者が、潮紅のエピソードを伴う刺痛(重度である場合がある)を訴える。こうした潮紅のエピソードは、社会生活を営む上で困惑することが多く、予測不可能に生じることがあり、又は環境的な、化学的な、食物による若しくは情緒的なトリガーと関連することがある。一般的なトリガーとしては、日光への曝露、寒冷な気候、突然の感情(笑い又は困惑)、熱い飲料、及びアルコール摂取が挙げられる。
【0046】
式(I)の化合物は、CXCR1及び/又はCXCR2受容体に関して拮抗性を有することが示されている。
【0047】
ざ瘡の治療及び好中球性皮膚症には、CXCR1又はCXCR2に関する特異的な拮抗剤並びに二重拮抗剤が好ましい。
【0048】
酒さの治療には、CXCR1に関する特異的な拮抗剤及び二重拮抗剤が好ましい。
【0049】
本発明の他の特徴、態様、目的及び利点は、以下の記載及びそれを例証することを意図した多様な具体例(但し限定的なものでは決してない)を読めば、さらに明白にわかるであろう。
【実施例1】
【0050】
組成物
A-経口用
0.2g錠
- 式(I)の化合物 0.001g
- デンプン 0.114g
- リン酸二カルシウム 0.020g
- シリカ 0.020g
- 乳糖 0.030g
- タルク 0.010g
- ステアリン酸マグネシウム 0.005g
B-局所用
(a)軟膏剤
- 式(I)の化合物 0.30g
- 白色ワセリン、医薬グレード 100gまで適量
(b)ローション剤
- 式(I)の化合物 0.10g
- ポリエチレングリコール(PEG400) 69.90g
- 95%エタノール 30.00g

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚障害を予防及び/又は治療することを意図した医薬の調製における、式(I):
【化1】

(式中、R1は、水素、臭化物、好ましくはメチル及びエチルから選ばれる、1から4個の炭素原子を有するアルキル、シアン化物、塩化物から選択され、R2は、シアン化物又はニトロから選択される)
の化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物又はその薬学的に許容される塩、それらの薬学的に許容される溶媒和物及びそれらの水和物の使用。
【請求項2】
皮膚障害が、以下の病態:ざ瘡、酒さ及び好中球性皮膚症から選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項3】
R1が臭化物又は水素から選択され、R2がシアン化物又はニトロから選択される、請求項1又は2に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項4】
式(I)の化合物が、N-(3-ブロモ-4-シアノ-2-ヒドロキシフェニル)-N'-(2-ブロモフェニル)尿素、その薬学的に許容される塩、それらの薬学的に許容される溶媒和物及びそれらの水和物であることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
式(I)の化合物が、1-(2-ブロモ-フェニル)-3-(2-ヒドロキシ-4-ニトロ-フェニル)-尿素、その薬学的に許容される塩、それらの薬学的に許容される溶媒和物及びそれらの水和物であることを特徴とする、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
前記医薬が局所投与に適していることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
式(I):
【化2】

(式中、R1は、水素、臭化物、好ましくはメチル及びエチルから選ばれる、1から4個の炭素原子を有するアルキル、シアン化物、塩化物から選択され、R2は、シアン化物若しくはニトロから選択される)
の化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物又はその薬学的に許容される塩、それらの薬学的に許容される溶媒和物及びそれらの水和物を、必要とする個体に投与する、皮膚障害の予防及び/又は治療方法。
【請求項8】
皮膚障害が、以下の病態:ざ瘡、酒さ及び好中球性皮膚症から選択される、請求項7に記載の方法。

【公表番号】特表2013−514313(P2013−514313A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543716(P2012−543716)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069739
【国際公開番号】WO2011/073248
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】