説明

皮膜付イオン液体内包粒体及びその製造方法

【課題】イオン液体を用い、優れたイオン伝導性を示すとともに、所望の形状・寸法の電解質等を形成することが容易であり、しかも、イオン液体を化学的ないし物理的に安定化し得るイオン伝導体を得る。
【解決手段】イオン液体12を、該イオン液体12の融点以上の温度で分散媒中に分散してエマルジョンを調製する。次に、エマルジョンを凝固させることにより、イオン液体12の固化物を粒子として得る。次に、該粒子の表面に、第1の高分子からなる被包材14を形成する。さらに、被包材14を構成する第1の高分子と、第2の高分子とを反応させることで、被包材14の表面に、反応生成物として高分子皮膜16を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子からなる被包材にイオン液体を内包した皮膜付イオン液体内包粒体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン液体は、例えば、プロトン(H+)やリチウムイオン(Li+)等の各種のイオンを伝導する特性を示す液体として知られている。さらに、その蒸気圧が測定下限値を下回るとともに、凝固温度が低い性質を併せ持つ。換言すれば、殆ど揮発せず、且つ寒冷地であっても固相に変化し難い。従って、広範囲の温度域にわたって優れたイオン伝導体となり得る。このため、イオン液体は、燃料電池、二次電池、キャパシタ、色素増感型太陽電池等の各種デバイスの好適な電解質となり得る。
【0003】
しかしながら、電解質が液体である場合、上記したデバイスが何らかの理由で破損したり、デバイスに振動が加わることでシール機能が劣化したりしたときに電解質が漏洩してしまうことが懸念される。
【0004】
この懸念を払拭するには、非特許文献1に記載されているように、イオン液体をゲル化してイオンゲルとすることが有効であるとも考えられる。この場合、イオン液体は、高分子が形成するネットワークの中に取り込まれることで該高分子と相溶化し、これにより弾力性を示す固相(すなわち、イオンゲル)となる。このような固相のイオンゲルを電解質として採用した場合、仮にデバイスが破損したとしても、電解質が固相であるために漏洩することが回避される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】シロウ・セキ(Shiro Seki)ら著、「ジャーナル・オブ・フィジックスケミカルビー(J. Phys. Chem. B)」 2005年発行 第109巻第9号 第3886頁〜第3892頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1の記載によれば、イオンゲルは、以下のようにして得られる。すなわち、先ず、高分子の原材料となるモノマー、架橋剤及び重合開始剤をイオン液体に溶解して重合用溶液を調製する。
【0007】
次に、この重合用溶液を型に注入し、その後、前記型内で前記モノマーを重合させる。この重合に伴って高分子が生成するとともに、該高分子のネットワークにイオン液体が取り込まれる。換言すれば、高分子とイオン液体が相溶化してイオンゲルとなる。
【0008】
このことから諒解されるように、非特許文献1に開示された製造方法によれば、イオンゲルを、型(キャビティ)の形状に対応するバルク体として得ることができるのみである。すなわち、この製造方法には、イオンゲルを所望の形状として得ることができないという不具合が顕在化している。
【0009】
また、ゲルは周知の通り弾力性が著しく大きく、このために可塑性に乏しい。従って、非特許文献1の記載に従って得られたイオンゲルに対してプレス成形を行うことで所望の形状に成形することもできない。さらに、イオンゲルを用いて射出成形を行うことも不可能である。
【0010】
さらに、イオンゲルに含まれる高分子のネットワークは、イオン伝導性を示さない。従って、イオンゲル中の高分子が多くなるほど該イオンゲルのイオン伝導性が低下する。しかしながら、高分子を少なくすると、固相を保つことが困難となる。
【0011】
しかも、イオンゲルを得るためには、高分子として、イオン液体に溶解するものを選定しなければならないが、そのためにイオン液体の運動性が阻害され、その結果、イオン液体に比してイオン伝導性等の諸機能が低下するという不具合が顕在化している。
【0012】
以上のように、非特許文献1に開示された製造方法では、イオンゲルを、デバイスの形状・寸法に対応する適切な形状・寸法で得ることや、良好なイオン伝導性を示すものとして得ることが困難であるという不具合がある。
【0013】
さらに、プロトン伝導性を示すイオンゲルを燃料電池の電解質とした場合、イオン液体が燃料電池の外部に排出される懸念がある。すなわち、燃料電池では、発電反応によって電解質と電極との界面に水が生成する。一方、プロトン伝導性を示すイオン液体は概して親水性が大きく、このため、電解質に含まれるイオン液体が反応生成物である水に移動する可能性がある。水は燃料電池の外部に排出されるので、イオン液体が水に移動している場合、該イオン液体も同時に排出されることになる。
【0014】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、優れたイオン伝導性を示すとともに、所望の形状・寸法の電解質等を形成することが容易であり、しかも、イオン液体を化学的ないし物理的に安定化し得る皮膜付イオン液体内包粒体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記の目的を達成するために、本発明は、イオン液体のイオン伝導性に基づいてイオン伝導性を示す皮膜付イオン液体内包粒体であって、
イオン液体又はその固化物を内包するとともに、第1の高分子からなる被包材と、
前記被包材を被覆するとともに、前記第1の高分子と第2の高分子との反応生成物からなる高分子皮膜と、
を有することを特徴とする。
【0016】
なお、被包材に内包されたものがイオン液体であるか、又はその固化物であるかは、イオン液体の融点や、皮膜付イオン液体内包粒体の使用温度に応じて変化する。例えば、室温ではイオン液体の固化物が内包されていたとしても、皮膜付イオン液体内包粒体が前記イオン液体の融点以上の環境下で使用されるとき、使用状況下で被包材に内包されているのはイオン液体である。また、融点が10℃付近であるイオン液体を内包している場合、室温であっても、液相のイオン液体が内包されることになる。
【0017】
このような構成においては、イオン液体又はその固化物が被包材及び高分子皮膜によって遮蔽される。従って、イオン液体が漏洩することが防止される。仮に、液相のイオン液体が内包されている使用状況下で1個の皮膜付イオン液体内包粒体の被包材や高分子皮膜が破損したとしても、イオン液体が漏洩するのはこの破損した1個からのみであり、他の皮膜付イオン液体内包粒体からはイオン液体は漏洩しない。すなわち、この皮膜付イオン液体内包粒体から電解質を構成した場合、電解質全体としては、イオン液体の漏洩量は少量である。このため、電解質のイオン伝導性が著しく低下することを回避することができる。
【0018】
しかも、この皮膜付イオン液体内包粒体は、粒体であるので可塑性に富む。このため、該皮膜付イオン液体内包粒体を、充填箇所の形状に対応した形状で充填することや、所望の形状の凝集体(ないし圧粉成形体)とすることが可能である。従って、例えば、燃料電池の電解質等、デバイスの形状に応じて皮膜付イオン液体内包粒体の凝集体(ないし圧粉成形体)の形状を設定することができる。
【0019】
さらに、高分子からなる被包材及び皮膜はイオン伝導性を示さないものの、その厚みが僅かであるので、内部のイオン液体のイオン伝導性を妨げることが回避される。すなわち、皮膜付イオン液体内包粒体を、イオン伝導性に優れたものとして得ることができる。また、被包材及び高分子皮膜は固相の高分子であるので、被包材及び高分子皮膜自体が流動(漏洩)する懸念がない。
【0020】
皮膜付イオン液体内包粒体の被包材の厚みは、0.1nm〜100μmであることが好ましい。被包材の厚みが0.1nm未満であると、被包材としての強度、すなわち、粒子形状を維持するための強度を確保することが容易ではない。また、100μmを超えると、イオン伝導に対する抵抗が大きくなる。
【0021】
また、皮膜付イオン液体内包粒体の高分子皮膜の厚みは、0.1nm〜100nmであることが好ましい。高分子皮膜の厚みが0.1nm未満であると、高分子皮膜としての強度を確保することが容易ではなく、100nmを超えると、イオン伝導に対する抵抗が大きくなる。
【0022】
一方、粒径は1nm〜1mmの範囲内であることが好ましい。なお、粒径は、走査型電子顕微鏡で二次元平面として視認される粒体(概ね楕円形状か真円形状)の長径と短径の平均値として定義される。
【0023】
粒径が1nmよりも小さいと、被包材に内包されたイオン液体の分子数が十分でなくなるのでイオン伝導度が低下する傾向がある。また、1mmを超えると、皮膜に破損が生じた際に該皮膜からイオン液体が漏洩することを防止することが容易でなくなる。
【0024】
また、本発明は、イオン液体を、該イオン液体の融点以上の温度で分散媒中に分散してエマルジョンを調製する工程と、
前記エマルジョンを、前記イオン液体の融点よりも低温であり且つ前記分散媒の融点以上の温度として、前記イオン液体の固化物を粒子として得る工程と、
前記固化物を前記分散媒から分離した後、別の分散媒に添加し、前記イオン液体の融点よりも低温であり且つ前記別の分散媒の融点以上の温度で、第1の高分子からなる被包材を前記粒子の表面に形成する工程と、
前記第1の高分子と相互反応を起こす第2の高分子を含む溶液を、前記被包材が形成された前記粒子を含む溶液と混合して混合溶液を調製する工程と、
前記被包材に含まれる前記第1の高分子と、前記混合溶液中の前記第2の高分子とを反応させ、前記被包材の表面に、反応生成物としての高分子皮膜を形成して皮膜付イオン液体内包粒体を得る工程と、
を有することを特徴とする。
【0025】
このような過程を経ることにより、上記した皮膜付イオン液体内包粒体を容易に得ることができる。
【0026】
なお、被包材は、モノマーを重合することによって形成することができる。重合によって得られた高分子を、さらに架橋するようにしてもよい。被包材は、高分子を架橋することによって形成することも可能である。
【0027】
分散媒には、界面活性剤を添加するようにしてもよい。この界面活性剤の作用により、エマルジョンの形成が促進されるとともに、形成されたエマルジョンが破壊されることが阻害される。従って、微細なエマルジョン、ひいては微細なイオン液体の固化物を得ることが容易となる。結局、皮膜付イオン液体内包粒体を微細なものとして得ることができる。被包材を形成した後に残留した過剰の界面活性剤は、水等の溶媒で洗浄することによって除去するようにすればよい。
【0028】
皮膜付イオン液体内包粒体は、粒径が1nm〜1mmの範囲内であり、且つ被包材の厚みが0.1nm〜100μm、高分子皮膜の厚みが0.1nm〜100nmであるものとして得ることが好ましい。粒径や被包材の厚みは、例えば、反応時間を適宜設定することで調節することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、イオン液体を被包材及び高分子皮膜で保護するようにしているので、該イオン液体を十分に保持し得る。このため、皮膜付イオン液体内包粒体を採用したデバイスが仮に破損したとしても、イオン液体が漏洩(流失)することが防止される。たとえ1個の皮膜付イオン液体内包粒体の被包材が破損したとしても、イオン液体が漏洩するのはこの破損した1個からのみであり、他の皮膜付イオン液体内包粒体からイオン液体が漏洩することはない。すなわち、デバイスからのイオン液体の漏洩量が少量であるので、電解質のイオン伝導性が著しく低下することを回避することができる。
【0030】
しかも、この皮膜付イオン液体内包粒体は微細な粒体であるので可塑性に富み、このため、所望の形状をなす充填物や凝集体(ないし圧粉成形体)とすることが可能である。従って、この皮膜付イオン液体内包粒体を用いて充填物、凝集体(ないし圧粉成形体)を作製することにより、例えば、燃料電池の電解質を所望の形状のものとして得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る皮膜付イオン液体内包粒体の模式的な断面図である。
【図2】実施例1のイオン液体の凝固物の光学顕微鏡写真である。
【図3】実施例1のイオン液体内包粒体(高分子皮膜の形成前)の光学顕微鏡写真である。
【図4】図3のイオン液体内包粒体を乾燥して得た乾燥物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】実施例2のイオン液体内包粒体(高分子皮膜の形成前)の光学顕微鏡写真である。
【図6】図5のイオン液体内包粒体を乾燥して得た乾燥物のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る皮膜付イオン液体内包粒体及びその製造方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0033】
図1は、本実施の形態に係る皮膜付イオン液体内包粒体10の模式的な断面図である。この皮膜付イオン液体内包粒体10は、液相又は固相のイオン液体12を内包した被包材14と、該被包材14を被覆する高分子皮膜16とを有する微細な粒体、換言すれば、微粒子である。なお、この場合、皮膜付イオン液体内包粒体10は概ね球体に近似される。
【0034】
図1においては、皮膜付イオン液体内包粒体10の直径に沿う断面を示している。上記したように、皮膜付イオン液体内包粒体10の粒径は、図1におけるD1とD2の平均値として示されるが、この場合、D1とD2は略同等である。
【0035】
皮膜付イオン液体内包粒体10を電解質として採用する場合、イオン液体12としては、目的とするイオンを伝導することが可能な物質を選定すればよい。例えば、燃料電池の電解質とする場合、プロトンを伝導可能な物質を選定する。
【0036】
このようなイオン液体12の具体例としては、ジメチルエチルアミントリフルオロメタンスルホネート、ジエチルメチルアミンメタンスルホネート、ジエチルメチルアミンビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド、ジメチルエチルアミンビス(トリフルオロメタン)スルホンイミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムメタンスルホネート等を挙げることができる。
【0037】
なお、上記したイオン液体12の多くは、室温においては固相であるが、燃料電池の運転温度では溶融して液相となる。このことから諒解されるように、皮膜付イオン液体内包粒体10の内包物は、温度に応じて、イオン液体12の固化物、又は液相のイオン液体12となる。
【0038】
一方、被包材14は、第1の高分子からなる。この第1の高分子としては、反応性官能基を有する重合性モノマーの重合体を例示することができる。重合性モノマーの好適な具体例としては、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル等の重合性ビニルモノマーが挙げられる。すなわち、下記に示すような高分子である。
【0039】
【化1】

【0040】
【化2】

【0041】
【化3】

【0042】
被包材14は、上記したような高分子が、被包材14を形成する際に使用した分散媒を吸収することによって形成された高分子ゲルからなる。なお、分散媒については後に詳述する。
【0043】
なお、高分子ゲルは、架橋重合体のゲルであることが一層好ましい。この場合、被包材14に適度な強度が発現して破損し難くなるとともに、イオン液体12が膨潤したときであっても変形することが防止されるからである。
【0044】
被包材14の厚みT1は、0.1nm〜100μmであることが好ましい。厚みT1が0.1nm未満であると、被包材14としての強度を確保することが容易ではない。また、100μmを超えると、イオン伝導に対する抵抗が大きくなる。
【0045】
高分子皮膜16をなす高分子は、被包材14に含まれる前記第1の高分子と、該高分子とは別種である第2の高分子の反応生成物からなる。従って、第2の高分子としては、第1の高分子と相互反応を起こすものが選定される。すなわち、第1の高分子の反応性官能基と反応する反応性官能基を具備するものである。
【0046】
具体的には、第1の高分子の反応性官能基が酸性基である場合、第2の高分子としては、塩基性基を有する物質が選定される。その反対に、第1の高分子の反応性官能基が塩基性基である場合、第2の高分子としては、酸性基を有する物質が選定される。
【0047】
また、第1の高分子の反応性官能基が−NHであるときには、第2の高分子としては、−NHとともに共有結合をなす−C(=O)−R、−C=C−R、又は−C(=O)NHを具備する物質が選定され、逆に、第1の高分子の反応性官能基が−C(=O)−R、−C=C−R、又は−C(=O)NHのいずれかであるときには、これらのいずれかとともに共有結合をなす−NHを具備する物質が選定される。
【0048】
高分子皮膜16の厚みT2は、0.1nm〜100nmの範囲内が好ましい。厚みT2が0.1nm未満であると、高分子皮膜16としての強度を確保することが容易ではない。また、100nmを超えると、イオン伝導に対する抵抗が大きくなる。
【0049】
以上のようなイオン液体12、被包材14及び高分子皮膜16を有する皮膜付イオン液体内包粒体10の好適な粒径(D1とD2の平均値)は、1nm〜1mmの範囲内である。1nmよりも小さいと、イオン液体12の分子数が十分でなくなり、イオン伝導度が低下する傾向がある。また、1mmを超えると、被包材14に内包されるイオン液体12の量が多くなるので、被包材14及び高分子皮膜16に破損が生じた際にイオン液体12の漏洩量が多くなる懸念がある。皮膜付イオン液体内包粒体10の一層好適な粒径は、10nm〜100μmである。
【0050】
このように構成された皮膜付イオン液体内包粒体10では、イオン液体12が被包材14によって保護されるとともに、被包材14が高分子皮膜16によって保護される。従って、仮に、イオン液体12に対して親和性が高い物質と皮膜付イオン液体内包粒体10が接触したとしても、イオン液体12が前記物質に移動することが阻止される。被包材14及び高分子皮膜16がブロック作用を営むからである。
【0051】
すなわち、被包材14を設け、さらに、該被包材14を高分子皮膜16で被覆することにより、イオン液体12を著しく化学的ないし物理的に安定な状態に維持することが容易となる。このため、該皮膜付イオン液体内包粒体10を燃料電池の電解質とした場合、イオン液体12が生成水に移動すること、ひいては生成水に同伴されて燃料電池の外部に排出されることを防止することができるので、燃料電池の発電性能を維持することができる。
【0052】
また、皮膜付イオン液体内包粒体10は、上記したように極めて微細な微粒子である。このため、充填箇所の形状に対応した形状で充填したり、所望の形状の凝集体(ないし圧粉成形体)とすることが可能である。従って、この皮膜付イオン液体内包粒体10から燃料電池の電解質を得ようとする場合には、例えば、予め所定形状として形成されたシール部材内に皮膜付イオン液体内包粒体10の微粒子を充填すればよい。
【0053】
このように、本実施の形態によれば、デバイスに応じた所望の形状の電解質を得ることができる。しかも、この場合、電解質が被包材14及び高分子皮膜16を有するので破損が生じ難い。仮に破損が生じた場合であっても、イオン液体12が漏洩する可能性があるのは、破損が生じた皮膜付イオン液体内包粒体10からのみである。すなわち、電解質全体としては、イオン液体12の漏洩量は少量である。このため、電解質のイオン伝導性が著しく低下することが回避される。
【0054】
次に、上記した皮膜付イオン液体内包粒体10の製造方法につき説明する。
【0055】
皮膜付イオン液体内包粒体10は、イオン液体12からエマルジョンを形成する第1工程S1と、前記エマルジョンから前記イオン液体12の固化物を粒子として得る第2工程S2と、前記粒子の表面に被包材14を形成する第3工程S3と、前記被包材14を被覆する高分子皮膜16を形成する第4工程S4を経ることで得られる。
【0056】
先ず、第1工程S1において、イオン液体12を分散媒に添加する。ここで、分散媒とは、イオン液体12の添加後に静置した際、該イオン液体12と互いに相分離を起こすものを指称する。イオン液体12が上記したような物質である場合、n−ヘキサン、n−ドデカン、トルエン等の各種有機溶媒を選定すればよい。又は、水を用いてもよい。この場合、安価であり、且つハンドリングが容易である等の利点がある。
【0057】
なお、後述する理由から、分散媒に対して界面活性剤を予め添加しておくことが好ましい。溶媒が水である場合、界面活性剤の好適な例としては、非イオン活性剤であって且つHLBの値が12以上のものが挙げられる。
【0058】
以上の分散媒に対し、エマルジョンを形成するべく、添加したイオン液体12を粒状に分散させる。このためには、マグネチックスターラ、撹拌翼、ホモジナイザ又は超音波分散装置等を用い、強制的な機械的撹拌を行えばよい。
【0059】
このような強制撹拌により、イオン液体12が分散媒中に粒状に分散する。その結果、エマルジョンが形成される。なお、前記分散媒に界面活性剤が添加されている場合、エマルジョンの形成が促進されるとともに、形成されたエマルジョンが破壊されることが阻害される。すなわち、エマルジョンを微細形状に維持することが容易となる。
【0060】
次に、第2工程S2において、エマルジョンを含んだ分散媒を冷却し、該分散媒の温度を、イオン液体12の融点よりも低温であり且つ分散媒の融点以上の温度とする。冷却に際しては、前記分散媒を収容した容器をオイルバスに浸漬する等すればよい。この冷却により、前記エマルジョン(イオン液体12)が固化する。すなわち、粒状となったイオン液体12が、この状態で固化物、換言すれば、粒子となる。この粒子(固化物)を、例えば、精密濾過を行うこと等によって分散媒と分離する。
【0061】
次に、第3工程S3において、前記粒子の表面に被包材14を形成する。ここで、被包材14は、以下に説明する第1の手法、又は第2の手法によって形成することができる。
【0062】
第1の手法は、上記したようなモノマーを粒子の表面で重合させて高分子を得るものである。なお、得られた高分子をさらに架橋するようにしてもよい。
【0063】
この場合、モノマーを溶媒に溶解する。溶媒としては、モノマーを溶解することが可能であり、且つ粒状化したイオン液体12に比して融点が低いものを選定すればよい。具体的には、水や各種有機溶媒が挙げられる。又は、粒状化したイオン液体12とは別のイオン液体であって、モノマーを溶解することが可能であり、且つ粒状化したイオン液体12に比して融点が低いイオン液体であってもよい。
【0064】
この溶液には、さらに、モノマーの重合を促進するための重合開始剤又は架橋剤の少なくともいずれか一方を添加することもできる。
【0065】
イオン液体12が上記した物質である場合、重合開始剤の好適な例としては、ラウロイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、2、2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)ジヒドロクロライド、過酸化ベンゾイル等、分解に伴ってラジカルを発生し得る物質が挙げられる。また、架橋剤の好適な例としては、N,N−メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレンイミン、グルタルアルデヒド等、反応性官能基を複数個有するものが挙げられる。
【0066】
以上のような物質が添加されることで調製された溶液に対し、イオン液体12の固化物を添加する。この溶液を、上記したような機械的撹拌によって強制的に撹拌する。これにより、固化物が溶液中に分散する。
【0067】
次に、固化物が分散した溶液を、別途用意した分散媒に混合して、強制撹拌を行う。なお、この分散媒にも上記したような界面活性剤を添加しておくと、固化物が凝集することを防止することができるので好ましい。
【0068】
この状態で放置すれば、粒子の表面でモノマーの重合が自発的に開始して進行する。又は、前記溶液と分散媒との混合溶液の温度が上昇しない程度に紫外線を照射することで重合を開始させるようにしてもよい。なお、混合溶液の温度が過度に高いと、エマルジョンが破壊され易くなる傾向がある。従って、混合溶液を収容した容器をオイルバスに浸漬する等して冷却を行い、混合溶液の温度を40℃以下に保つことが好ましい。
【0069】
モノマーの重合が進行すると、高分子のネットワークが形成されるとともに、該ネットワーク中に分散媒が取り込まれる。その結果、高分子に分散媒が吸収された高分子ゲル、すなわち、被包材14が生成する。これにより、イオン液体12の固化物が被包材14に内包された粒状物が得られる。
【0070】
次に、第2の手法につき説明する。
【0071】
第2の手法は、高分子を粒子の表面で架橋させて架橋重合体を得るものである。このような高分子の好適な例としては、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニルが重合したもの等が挙げられる。
【0072】
この場合、高分子及び架橋剤を溶媒に溶解する。溶媒及び架橋剤の好適な例は、上記した通りである。
【0073】
このようにして調製された溶液に対し、イオン液体の固化物を添加する。この溶液を、上記したような機械的撹拌によって強制的に撹拌する。これにより、固化物が溶液中に分散する。
【0074】
次に、固化物が分散した溶液を、別途用意した分散媒に混合して混合溶液とするとともに、強制撹拌を行う。なお、この分散媒にも上記したような界面活性剤を添加しておくと、固化物が凝集することを防止することができるので好ましい。
【0075】
この状態で放置すれば、粒子の表面で高分子の架橋が自発的に開始して進行する。なお、混合溶液の温度が過度に高いと、エマルジョンが破壊され易くなる傾向がある。従って、混合溶液を収容した容器をオイルバスに浸漬する等して冷却を行い、混合溶液の温度を40℃以下に保つことが好ましい。
【0076】
高分子の架橋が進行すると、高分子のネットワークが形成されるとともに、該ネットワーク中に分散媒が取り込まれる。その結果、架橋重合体に分散媒が吸収された高分子ゲル、すなわち、被包材14が生成する。
【0077】
次に、第4工程S4において、前記被包材14の表面に高分子皮膜16を形成する。
【0078】
すなわち、高分子皮膜16を形成する第2の高分子を含む溶液を調製する。このためには、例えば、前記イオン液体12と同一のイオン液体や水、メタノール、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の有機溶媒に、第2の高分子を溶解すればよい。勿論、第2の高分子としては、第1の高分子の反応性官能基と相互反応する反応性官能基を具備するものが選定される。
【0079】
次に、この溶液と、被包材14が形成された粒子を含む前記分散媒とを混合する。これにより混合溶液が調製される。
【0080】
この状態で放置すれば、被包材14の表層近傍で、該被包材14に含まれる第1の高分子の反応性官能基と、第2の高分子の反応性官能基とが相互に反応し始める。その結果、被包材14の表面に、第1の高分子と第2の高分子との反応生成物からなる高分子皮膜16が形成され、これにより、イオン液体12の固化物が被包材14に内包されるとともに、該被包材14が高分子皮膜16で被覆された粒状物、すなわち、皮膜付イオン液体内包粒体10が得られる。
【0081】
このようにして得られた粒状物を室温で放置した場合、被包材14に内包された固化物の融点が室温以下であれば、該固化物が溶融して液相となる。これにより、液相のイオン液体12が被包材14に内包された皮膜付イオン液体内包粒体10となる。
【0082】
以上において、得られた粒状物は、前記エマルジョンを固化したものに被包材14及び高分子皮膜16を形成することで得られたものであるので、微細である。すなわち、粒径が1nm〜1mmの微粒子となる。なお、粒径は、例えば、反応時間を適宜設定することで調節することができる。
【実施例1】
【0083】
開閉栓付容器に貯留した10mlの脱イオン水に対し、非イオン性界面活性剤であるイゲパールDM−970(シグマ−アルドリッチ社製ポリオキシエチレンノニルフェノールの商品名、HLB=19)を0.5g溶解した。この溶液を分散媒とし、イオン液体であるジメチルエチルアミンビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドを1.0g添加した。
【0084】
次に、内容物を液体窒素によって凍結した後、開閉栓付容器内を真空ポンプにて減圧した。これを室温に戻すことにより、内容物を溶解した。この操作を3回繰り返すことにより、内容物及び開閉栓付容器内から酸素を除去した。さらに、開閉栓付容器内にArを充填した。
【0085】
次に、前記内容物を、前記開閉栓付容器に貯留したまま80℃まで加熱した。なお、ジメチルエチルアミンビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドの融点は78℃であるので、この際の加熱温度は、イオン液体の融点を上回っている。
【0086】
次に、前記内容物をマグネチックスターラで激しく撹拌することでジメチルエチルアミンビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドを分散させてエマルジョンとした。さらに、撹拌を続行しながら室温まで冷却し、これにより、ジメチルエチルアミンビス(トリフルオロメタン)スルホンイミドを凝固させて凝固物とした。
【0087】
次に、精密濾過を行って凝固物と分散媒とを分離した。さらに、凝固物を脱イオン水で洗浄した。乾燥後の固化物の光学顕微鏡写真を図2に示す。この図2から、凝固物が粒状体であることが分かる。
【0088】
その一方で、別の開閉栓付容器に貯留した0.5mlの脱イオン水に対し、0.125g(1.7mmol)のアクリル酸、0.006g(0.04mmol)のN,N−メチレンビスアクリルアミド、0.006g(0.037mmol)の2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)を溶解した。これを「アクリル酸水溶液」と表記する。
【0089】
このアクリル酸水溶液を液体窒素によって凍結した後、開閉栓付容器内を真空ポンプにて減圧した。これを室温に戻すことにより、アクリル酸水溶液を溶解した。この操作を3回繰り返すことにより、アクリル酸水溶液及び開閉栓付容器内から酸素を除去した。さらに、開閉栓付容器内にArを充填した。
【0090】
さらに、また別の開閉栓付容器に貯留した10mlのn−ドデカンに対し、ニッコールデカグリム5−ISV(日光ケミカルズ社製の非イオン界面活性剤の商品名、HLB=3.5)を0.5g溶解したものを分散媒として調製した。これを「n−ドデカン分散媒」と表記する。
【0091】
このn−ドデカン分散媒を液体窒素によって凍結した後、開閉栓付容器内を真空ポンプにて減圧した。これを室温に戻すことにより、n−ドデカン分散媒を溶解した。この操作を3回繰り返すことにより、n−ドデカン分散媒及び開閉栓付容器内から酸素を除去した。さらに、開閉栓付容器内にArを充填した。
【0092】
以上により、アクリル酸が重合することを阻害する酸素を低減した。
【0093】
次に、室温にて、粒状体である前記凝固物、すなわち、イオン液体の微粒子を前記アクリル酸水溶液に添加し、撹拌して該アクリル酸水溶液中に分散させた。
【0094】
次に、Ar雰囲気としたグローブボックス内において、前記n−ドデカン分散媒と、イオン液体の微粒子が分散した前記アクリル酸水溶液とを混合し、マグネチックスターラで激しく撹拌することで、分散媒に微粒子を分散させた。
【0095】
次に、分散媒を5℃に保ちながら、該分散媒に対し、紫外線ランプから波長365nmの紫外線を照射してアクリル酸を重合させた。これにより、凝固物の表面にアクリル酸の部分架橋重合体からなる被包材が形成された生成物を得た。
【0096】
この生成物の断面の光学顕微鏡写真を図3に示す。図3から、微粒子が被包材で覆われていることが分かる。
【0097】
次に、この生成物の一部を25℃のエタノールに12時間浸漬した後、エタノールから分離して乾燥させた。乾燥物の電子顕微鏡(SEM)写真を図4に示す。
【0098】
図4に示すように、乾燥物は、直径方向略中心近傍の外表面が陥没するとともに中空の球体が圧潰されることでリング形状を呈していた。これは、被包材に内包されていた微粒子が溶解してイオン液体に戻り、さらに、このイオン液体の良溶媒であるエタノールに溶出したことと、アクリル酸の部分架橋重合体の高分子ネットワークが乾燥によって圧潰されたことが理由であると推察される。
【0099】
以上の作業を行う一方で、1gのジエチルメチルアミントリフルオロメタンスルホネートに対し、分子量が約1200であるポリエチレンイミンを0.15g(3.5mmol)溶解した。これを「ポリエチレンイミン溶液」と表記する。
【0100】
このポリエチレンイミン溶液を、前記生成物が残留した前記分散媒に混合して混合溶液を調製した。さらに、該混合溶液を室温にて24時間撹拌した。これにより、生成物の被包材に含まれるアクリル酸の架橋重合体と、混合溶液中のポリエチレンイミンとが相互反応を起こし、被包材の表面に皮膜が形成された。すなわち、皮膜付イオン液体内包粒体を得た。
【0101】
次に、遠心分離によって沈殿させた皮膜付イオン液体内包粒体をn−ドデカンで洗浄し、さらに、60℃で真空乾燥して乾式粉末とした。この乾式粉末を用い、水素雰囲気下において、120℃で直流四端子法でプロトン伝導度を測定したところ、2.1×10-2S/cmであった。
【0102】
また、乾式粉末を蒸留水に浸漬して室温で12時間放置し、その後、遠心分離で蒸留水と分離して再度乾燥したところ、蒸留水に溶出することに伴う重量減少は0.8重量%であった。
【実施例2】
【0103】
アクリル酸、N,N−メチレンビスアクリルアミド、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)の各溶解量を0.25g(3.5mmol)、0.012g(0.078mmol)、0.012g(0.073mmol)に設定するとともに、ポリエチレンイミン溶液におけるポリエチレンイミンの溶解量を0.3g(7mmol)としたことを除いては実施例1と同様にして、イオン液体を内包する被包材の表面に、アクリル酸の架橋重合体とポリエチレンイミンとの反応生成物からなる皮膜が形成された皮膜付イオン液体内包粒体を得た。
【0104】
皮膜が形成される前のイオン液体内包粒体の光学顕微鏡写真を図5に示す。この図5においても、微粒子が被包材で覆われていることが認められる。
【0105】
次に、この生成物を25℃のエタノールに12時間浸漬した後、エタノールから分離して乾燥させた。乾燥物のSEM写真を図6に示す。この乾燥物も、実施例1の乾燥物と同様にリング形状を呈している。すなわち、この場合も、被包材に内包されていた微粒子が溶解してイオン液体に戻り、さらに、このイオン液体の良溶媒であるエタノールに溶出するとともに、アクリル酸の部分架橋重合体の高分子ネットワークが乾燥によって圧潰されていると推察される。
【0106】
その一方で、実施例1と同様にして得た乾式粉末を用い、水素雰囲気下において、120℃で直流四端子法でプロトン伝導度を測定したところ、1.5×10-2S/cmであった。また、乾式粉末を蒸留水に浸漬して室温で12時間放置し、その後、遠心分離で蒸留水と分離して再度乾燥したところ、蒸留水に溶出することに伴う重量減少は0.6重量%であった。
【実施例3】
【0107】
分子量が約10000のポリエチレンイミンの溶解量を0.15g(3.5mmol)としてポリエチレンイミン水溶液を調製したことを除いては実施例1、2と同様にして、イオン液体を内包する被包材の表面に、アクリル酸の架橋重合体とポリエチレンイミンとの反応生成物からなる皮膜が形成された皮膜付イオン液体内包粒体の乾式粉末を得た。
【0108】
この乾式粉末につき、水素雰囲気下、120℃におけるプロトン伝導度を直流四端子法で測定したところ、1.8×10-2S/cmであった。また、蒸留水に溶出することに伴う重量減少は0.8重量%であった。
【実施例4】
【0109】
分子量が約10000のポリエチレンイミンの溶解量を2倍の0.3g(7mmol)としてポリエチレンイミン水溶液を調製したことを除いては実施例3に準拠して、イオン液体を内包する被包材の表面に、アクリル酸の架橋重合体とポリエチレンイミンとの反応生成物からなる皮膜が形成された皮膜付イオン液体内包粒体の乾式粉末を得た。
【0110】
この乾式粉末につき、水素雰囲気下、120℃におけるプロトン伝導度を直流四端子法で測定したところ、1.6×10-2S/cmであった。また、蒸留水に溶出することに伴う重量減少は0.3重量%であった。
【比較例】
【0111】
比較のため、実施例1を行う最中に得られたイオン液体内包粒体を遠心分離によって前記第2混合溶液から分離した後、n−ドデカンで洗浄し、さらに、60℃で真空乾燥して乾式粉末とした。この乾式粉末を蒸留水に浸漬して室温で12時間放置し、その後、遠心分離で蒸留水と分離して再度乾燥したところ、蒸留水に溶出することに伴う重量減少は37.2重量%であり、実施例1〜4に比して大きかった。
【0112】
以上の結果から、被包材14及び高分子皮膜16を形成した皮膜付イオン液体内包粒体10とすることにより、イオン液体12と親和性が高い物質と接触した場合においても、イオン液体12を十分に保持し得ること、換言すれば、イオン液体12が流出し難くなることが明らかである。
【符号の説明】
【0113】
10…皮膜付イオン液体内包粒体 12…イオン液体
14…被包材 16…高分子皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン液体のイオン伝導性に基づいてイオン伝導性を示す皮膜付イオン液体内包粒体であって、
イオン液体又はその固化物を内包するとともに、第1の高分子からなる被包材と、
前記被包材を被覆するとともに、前記第1の高分子と第2の高分子との反応生成物からなる高分子皮膜と、
を有することを特徴とする皮膜付イオン液体内包粒体。
【請求項2】
請求項1記載の粒体において、前記被包材の厚みが0.1nm〜100μm、前記高分子皮膜の厚みが0.1nm〜100nmであり、且つ粒径が1nm〜1mmであることを特徴とする皮膜付イオン液体内包粒体。
【請求項3】
イオン液体を、該イオン液体の融点以上の温度で分散媒中に分散してエマルジョンを調製する工程と、
前記エマルジョンを、前記イオン液体の融点よりも低温であり且つ前記分散媒の融点以上の温度として、前記イオン液体の固化物を粒子として得る工程と、
前記固化物を前記分散媒から分離した後、別の分散媒に添加し、前記イオン液体の融点よりも低温であり且つ前記別の分散媒の融点以上の温度で、第1の高分子からなる被包材を前記粒子の表面に形成する工程と、
前記第1の高分子と相互反応を起こす第2の高分子を含む溶液を、前記被包材が形成された前記粒子を含む溶液と混合して混合溶液を調製する工程と、
前記被包材に含まれる前記第1の高分子と、前記混合溶液中の前記第2の高分子とを反応させ、前記被包材の表面に、反応生成物としての高分子皮膜を形成して皮膜付イオン液体内包粒体を得る工程と、
を有することを特徴とする皮膜付イオン液体内包粒体の製造方法。
【請求項4】
請求項3記載の製造方法において、前記被包材を、モノマーを重合することによって形成することを特徴とする皮膜付イオン液体内包粒体の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の製造方法において、前記モノマーを重合して得た高分子をさらに架橋することを特徴とする皮膜付イオン液体内包粒体の製造方法。
【請求項6】
請求項3記載の製造方法において、前記被包材を、高分子を架橋することによって形成することを特徴とする皮膜付イオン液体内包粒体の製造方法。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか1項に記載の製造方法において、前記分散媒に界面活性剤を添加してエマルジョンを形成することを特徴とする皮膜付イオン液体内包粒体の製造方法。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか1項に記載の製造方法において、前記被包材の厚みが0.1nm〜100μm、前記高分子皮膜の厚みが0.1nm〜100nmであり、且つ粒径が1nm〜1mmであるものを得ることを特徴とする皮膜付イオン液体内包粒体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−200633(P2012−200633A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65414(P2011−65414)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】