説明

皮膜形成剤としてのイソノニルベンゾエートの使用

本発明は、組成物、例えばラテックス塗料、モルタル、漆喰、接着剤およびワニス中への皮膜形成剤としての安息香酸のイソノニルエステルの使用、並びに皮膜形成性ポリマーと安息香酸のイソノニルエステルとを有する組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、例えばラテックス塗料(Dispersionsfarben)、モルタル、漆喰、接着剤およびワニス(Lacken)中への皮膜形成剤としての安息香酸のイソノニルエステルの使用、並びに皮膜形成性ポリマーと安息香酸のイソノニルエステルとを有する組成物に関する。
【0002】
皮膜形成性ホモ−、コ−またはターポリマーの水性分散液は、例えば内部領域および外部領域のための塗料のための結合剤として使用することができる。塗料の加工のために重要な基準は最低造膜温度(MFT)であり、これは周囲温度を下回り、外部用塗料においては通常約5℃でなくてはならず、こうして良好な塗布性が達せられる。最低造膜温度の調節は、原則的に2つの異なる方法で行われる。
【0003】
MFTの調節の第1の可能性は、その構造によるガラス転移温度Tgの低下、こうしてMFTの低下に寄与することのできるモノマーとの共重合または三元共重合にある(内部可塑化)。好適なモノマーは例えばアクリレートである。
【0004】
しかしながら、一般に、MFTの低下のために皮膜形成剤の添加は安価な方法である。PVCの外部可塑化においてと同様に、ここでもMFTは皮膜形成剤の効果および量に依存して明らかに低下する。
【0005】
ヨーロッパにおいては、皮膜形成剤としては、主に2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール−モノイソブチレート(例えば、TEXANOL、Eastman社)およびジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル(DPnB)またはトリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル(TPnB)のタイプのグリコールエーテル、またはジメチルフタレート(DMP)を使用している。TEXANOLは長い間、皮膜形成剤のスタンダードであった。しかしながら、この製品の比較的高い蒸気圧は、揮発性の有機内容物(VOC)に関してますます厳格になる規制ともはや相容れない。
【0006】
特に、ドイツにおいては屋内塗料のための品質保証票“Blauer Engel”(RAL-UZ 102)が消費者市場のためにますます重要な役割を担っている。塗料産業社団法人の団体から出版されている“Richtlinie Zur Deklaration von Inhaltstoffen in Bautenlacken, Bautenfarben und verwandten Produkten(建築ワニス、建築塗料および類似の製品における内容物の表示のための指導要綱)”(VdL−RL01、第2の修正、2000年4月)と組み合わせて、前記の製品のほとんどの使用が、この環境指標の認定にとって妨害的である。こうして、DPnBおよびTEXANOLはその低い沸点(<250℃)のためにすでに排除されている。グリコールエーテルおよびフタレートは、VdL−RL01(第2の修正、2000年4月)により“可塑剤”として分類されている。完成品1リットル中にこの“可塑剤”が1gより多量に存在する製品はBlauer Engelの認定から排除されている。
【0007】
従って、MFTの強力な低下を低い濃度で可能にし、同時に前記の規定を保持することのできる低い蒸気圧を有する、その他の特に経済的な製品を開発するための必要性がある。
【0008】
PVCのための可塑剤としてのC原子8から13個を有する鎖長のアルコールからの安息香酸エステルの使用はDE1962500中に記載されている。
【0009】
US5236987には、他のC〜C12の鎖長の安息香酸エステルの使用も記載されている。公知技術からは、そのようなモノアルキルベンゾエート、例えば2−エチルヘキシルベンゾエート(WO01/29140)またはイソデシルベンゾエート(US5236987)の皮膜形成剤としての使用は公知である。これらはスタンダードなTEXANOLに対して低い揮発性および明らかに低い臭気により優れている。
【0010】
まだ未公開の出願DE10217186においては、3,5,5−トリメチルヘキシルベンゾエートを10%未満の割合で有する異性体ノニルベンゾエートのワニス、塗料、接着剤または接着剤成分のための可撓性付与剤としての、およびPVCのための可塑剤としての使用が記載されている。
【0011】
本発明の課題は、低い揮発性を有し、簡単でその結果安価に製造することのできる皮膜形成剤およびこの皮膜形成剤を有する組成物の提供である。特に、この皮膜形成剤はVdL−RL 01第2の修正、2000年4月の要求を満たす塗料に使用するために好適でなければならない。
【0012】
準同族体である2−エチルヘキシル−およびイソデシルベンゾエートに対して異性体C−アルコール(イソノナノール)と安息香酸とのエステルは水性結合剤分散液中に皮膜形成剤として使用する際に改善された特性を示すということが、意外にも見いだされた。2−エチルヘキシルベンゾエートに対して、イソノニルベンゾエートはその高い沸点および熱重量測定法で検出可能な僅かな揮発性にもかかわらず、少なくとも同じ効果で塗膜から少なくとも比較可能な良好な蒸発を示す(最低造膜温度の低下)。イソデシルベンゾエートに比較して、イソノニルベンゾエートは改善されたMFTの低下、および特に明らかに改善された蒸発挙動(迅速な乾燥が可能)を示す。アルコールの鎖長が長くなると共に沸点が上昇する、すなわち揮発性が低下するだけでなく、高い沸点のために塗膜からの蒸発挙動も悪くなると思われていたので、この関係は特に意外であった。しかしながら、この大きさに関して、同族列のC−、C−、C10−ベンゾエート中でイソノニルベンゾエートにおいて最適にあると思われることが見いだされたことは意外であった。
【0013】
従って、本発明の対象は、分散液、特にホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーから選択された少なくとも1種の皮膜形成性ポリマーおよび少なくとも1種の皮膜形成剤の水性分散液を有する組成物であって、これは少なくとも1種の皮膜形成剤として安息香酸イソノニルエステルを含有し、この安息香酸イソノニルエステルはポリマーの乾燥質量に対して0.1〜30質量%の濃度で存在することを特徴とする。
【0014】
同様に本発明の対象は、本発明による1または複数の組成物の塗料、接着剤としての、または塗料または接着剤の製造のための使用に関する。
【0015】
良好な皮膜形成剤は実質的に4つの重要な基準を満たさなければならない。先ず、しばしば結合剤とも呼ばれるベースポリマーに対する高い相容性を有さなければならない、すなわち分離してはならない。更に、最低造膜温度の低下に関して効果を示さなければならず、かつ揮発性は低いのがよい。この際、揮発性が低すぎると皮膜形成剤が表面に過度に長く付着して残り、その結果ゴミが結合するということに導くことを考慮しなければならない。こうして、揮発性に関しては良好な妥協が見いだされるべきである。専門家の間ではすでに“Blauen Engels”の認定のために将来的な基準として皮膜形成剤の最少沸点を280または300℃に上げることが考慮されており、300℃を僅かに越える沸点を有する製品が特に好適であると思われる。最後に水溶性は著しく低いのがよく、こうして皮膜形成剤は、粒子の表面上での乾燥工程の間に効果を最も効果的に発現する。
【0016】
異性体ノニルベンゾエートはこの基準を満たし、従来公知のもしくは市販されているシステムと少なくとも同等であるか、またはより良好である。エステルアルコール(TEXANOL)またはグリコールモノブチルエーテル(例えば、DOWANOL、Dow Chemical社)に対して、これは比較可能な効果において低い水溶性という利点を有する。この沸点範囲は310℃を上回り、例えば、例から明らかなように316〜326℃である。これに対して、例えば2−エチルヘキシルベンゾエートは約297℃の沸点を有する(製造者の記載、Velsicol)。従って、本発明の対象は、例えば本発明による組成物に使用するために好適であり、かつ安息香酸イソノニルエステルである皮膜形成剤でもある。
皮膜形成剤が、異性体安息香酸イソノニルエステルの鹸化により得られるノニルアルコールが3,5,5−トリメチルヘキサノールを10モル%未満含有する安息香酸イソノニルエステルであるのが有利である。
【0017】
本発明による皮膜形成剤は清浄剤としてもまたは清浄剤の内容物としても、特に塗装道路を清浄にするための清浄剤のためにも好適である。
【0018】
本発明による皮膜形成剤を有する本発明による組成物は、特に2−エチルヘキシルベンゾエートを有する組成物に対して明らかに高い沸点を有するにもかかわらず、同様に塗膜および/またはフィルムからの良好な蒸発挙動を示すという利点を有し、このことは塗料の迅速な硬化のために有利である。イソデシルベンゾエートを有する組成物に対して、本発明による安息香酸イソノニルエステル(異性体ノニルエステル、イソノニルベンゾエート、INB)を有する組成物は、同じ濃度でより良好なMFTの低下を示す。INBのアルコール成分、イソノナノールは年間当たりナフサをベースとする大規模工業において数百トン製造され、かつ明らかに高価な、純粋なノナノールの異性体、例えばn−ノナノールに基づく安息香酸エステルを使用する必要はないので、本発明による組成物は非常に容易にかつ安価に製造することができる。
【0019】
組成物中の皮膜形成剤としての安息香酸イソノニルエステルの本発明による使用並びにその組成物およびその使用を以下に例示的に記載するが、本発明はこの記載に制限されるべきものではない。
【0020】
水性分散液がホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーから選択された少なくとも1種の皮膜形成性ポリマーおよび少なくとも1種の皮膜形成剤の水性分散液を含有する本発明による組成物は、これが少なくとも1種の皮膜形成剤として安息香酸イソノニルエステルを含有し、この安息香酸イソノニルエステルはポリマーの乾燥質量に対して0.1〜30質量%、有利に0.3〜20質量%、特に有利に0.5〜10質量%の濃度で存在することを特徴とする。皮膜形成剤の量は、最終生成物に要求される最少塗膜形成温度および未変性のポリマーの最少塗膜形成温度に依存する。ラテックス塗料においては、一般に5℃を下回る最少塗膜形成温度が要求される。
【0021】
組成物のそれぞれの使用目的により、組成物をそれぞれポリマー(結合剤)の乾燥質量に対してラテックス塗料においては0.5〜15質量%、有利に0.5〜3質量%、およびワニスにおいては5〜30質量%、有利に15〜30質量%含有するのが有利である。
【0022】
組成物は、異性体安息香酸イソノニルエステルの鹸化により得られるノニルアルコールが3,5,5−トリメチルヘキサノールを10モル%未満含有する安息香酸イソノニルエステルを有するのが有利である。安息香酸エステルもしくはその他の以下に記載するエステルの鹸化はアルカリ媒体中で反応させることにより通常の方法により実施することができる(Ullmann's Enzyklopaedie der Technischen Chemie, 5Ed. A10, p254-260参照)。
【0023】
本発明による組成物中に本発明による皮膜形成剤として存在する安息香酸イソノニルエステル(異性体ノニルベンゾエート、INB)の製造は以下に記載する。安息香酸イソノニルエステルの製造のために使用する出発物質は、異性体ノニルアルコールの混合物並びに安息香酸である。安息香酸イソノニルエステルの製造のために使用した異性体ノニルアルコールの混合物はしばしばイソノナノールと呼称される。有利に使用される混合物(イソノナノール)は高い直線性を有し、これは3,5,5−トリメチルヘキサノール10モル%未満(0−10)、有利に5モル%未満(0−5)、特に有利に2モル%未満(0−2)の割合において優れている。ノニルアルコール−混合物の異性体分布は、ノニルアルコール(イソノナノール)の製造法により決まる。ノニル基の異性体分布は通常の、当業者に汎用されている測定法、例えばNMR−分光法、GC−またはGC/MS−分光法により測定することができる。実施される記載は全て以下に記載するノニルアルコール混合物に関する。そのようなノニルアルコール(ノニルアルコール混合物)はCAS番号27458−94−2、68515−81−1、68527−05−9または68526−84−1で市販されている。
【0024】
イソノナノールは、オクテンのヒドロホルミル化により製造され、このオクテンも同様に種々異なる方法で製造される。このための原料としては一般に工業用C−流が使用され、このC−流は飽和ブタンの他に全ての異性体C−流および場合によりC−およびC−オレフィンおよびアセチレン系化合物のような不純物を含有する。このオレフィン混合物のオリゴマー化により、C12−およびC16−オレフィン混合物のような高級オリゴマーの他に主に異性体オクテン混合物が得られる。このオクテン混合物は相応するアルデヒドにヒドロホルミル化され、引き続きアルコールに水素化される。
【0025】
工業用ノナノール混合物の組成、すなわち異性体分布は出発物質に、およびオリゴマー化法およびヒドロホルミル化法により決まる。本発明によるエステルの製造のためには、全てのこれらの混合物を使用することができる。有利なノナノール混合物は、主に直線状のブテンをニッケル担持触媒の存在でオリゴマー化することにより得られたC−オレフィン混合物(例えば、OCTOL−法、OXENO Olefinchemie GmbH)を、公知ヒドロホルミル化触媒、例えばRh(未変性またはリガンドを有する)もしくは未変性のコバルト化合物の存在においてヒドロホルミル化し、引き続き触媒を除去したヒドロホルミル化混合物を水素化することにより得られた。その際、出発物質中のイソブテンの割合は、全ブテン含量に対して5質量%未満、有利に3質量%未満、特に有利には1質量%未満である。これにより、あまり有利でないことが示されている強く分枝したノナノール異性体、特に3,5,5−トリメチルヘキサノールの割合は明らかに減少し、有利な範囲に存在する。
【0026】
本発明による組成物は、安息香酸と例えばCAS−番号68551−09−7、91994−92−2、68526−83−0、66455−17−2、68551−08−6、85631−14−7または97552−90−4を有していてよい市販のアルコール混合物とのエステル化により得られる安息香酸イソノニルエステルを含有していてもよい。ここでは前記イソノニルアルコールの他に炭素原子7〜15個を有するアルコールを含有するアルコール混合物である(CAS−定義による)。同様に、安息香酸イソノニルエステルと共にその他のアルキルエステルを有する安息香酸アルキルエステル混合物をも含有する。
【0027】
安息香酸イソノニルエステルの製造、すなわち安息香酸の異性体純粋なノナノールまたはイソノナノール混合物での相応するエステルへのエステル化は自触媒作用によりまたは触媒、例えばブレンステッド酸またはルイス酸を用いて実施することができる。どのような種類の触媒を選択するかにかかわらず、常に出発物質(酸およびアルコール)と生成物(エステルおよび水)との間には温度に依存する平衡が生じる。エステルの優先的になる平衡に移動させるために、反応水を配合物から除去するための共沸添加剤を使用することができる。エステル化のために使用するアルコール混合物が安息香酸およびそのエステルより低い温度で沸騰し、水と混和性ギャップを有するので、しばしばこれを共沸添加剤として使用し、水を分離した後再び工程中に返流することができる。
【0028】
エステルの形成のために使用するアルコールもしくは異性体アルコールの混合物は同時に共沸添加物としても使用され、従って、過剰で、有利にはエステルの形成のために必要な量の5〜50%、特に10〜30%の過剰で使用する。
【0029】
エステル化触媒としては酸、例えば硫酸、メタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸または金属またはその化合物を使用することができる。好適であるのは、例えばスズ、チタン、ジルコニウムであり、これを微細な金属または有利にはその塩、酸化物または可溶性の有機化合物の形で使用する。金属触媒は、プロトン酸とは異なり、その完全な活性が180℃を越える温度で初めて達せられる高温度触媒である。しかしながら、これはプロトン触媒に比べて、例えば使用したアルコールからのオレフィンのような副生成物を僅かに形成するために優先的に使用される。金属触媒の代表的な例は、スズ粉末、酸化スズ(II)、シュウ酸スズ(II)、チタン酸エステル、例えばテトライソプロピルオルトチタネートまたはテトラブチルオルトチタネート並びにテトラブチルジルコネートのようなジルコニウムエステルである。
【0030】
触媒濃度は触媒の種類に依存する。有利に使用されるチタン化合物においては、触媒濃度は反応混合物に対して0.005〜1.0質量%であり、特に0.01〜0.5質量%、殊に有利には0.01〜0.1質量%である。
【0031】
エステル化の反応温度はチタン触媒の使用の際に、有利に160〜270℃、より有利には180〜250℃である。最適な温度は使用物質、反応の進行および触媒濃度に依存する。反応温度は個々の場合において実験により容易に知ることができる。高い温度は反応速度を高め、かつ例えばアルコールからの脱水または有色の生成物の形成のような副反応を助長する。アルコールを反応混合物から留去することができることは、反応水を除去するために有利である。所望の温度または所望の温度範囲は反応容器中での圧力により調節することができる。従って、低沸点アルコールにおいては反応を過圧でおよびより高沸点のアルコールにおいては減圧で実施する。安息香酸と異性体ノナノールの混合物との反応の際には、例えば温度範囲170〜250℃で、かつ圧力範囲1バール〜10ミリバールで作業する。
【0032】
反応中に返流する液体量は部分的にまたは完全に共沸蒸留物の後処理により得られるアルコールからなっていてよい。後の時点に後処理を実施することおよび除去した液体量を全てまたは部分的に新鮮なアルコールにより、すなわち貯蔵容器中に準備していたアルコールで代えることも可能である。
【0033】
エステルの他にアルコール、触媒またはその崩壊生成物および場合により副生成物を含有する粗製エステル混合物を公知の方法で後処理する。その際、この後処理は次の工程を包含する:過剰のアルコールおよび場合による低沸点化合物の分離、存在する酸の中和、場合による水蒸気蒸留、触媒の容易に濾過可能な残分への変換、固体の分離および場合による乾燥。その際、使用した後処理法により、この工程の順序は変わっていてもよい。
【0034】
場合によっては、ノニルエステルまたはノニルエステルの混合物を反応混合物から、場合により配合物の中和の後、蒸留により分離することもできる。
【0035】
場合によっては、本発明によるノニルベンゾエートを安息香酸エステルのノナノールまたはイソノナノール混合物でのエステル交換により獲得することもできる。出発物質としては、エステル基のO−原子に結合するアルキル基が炭素原子1〜8個を有する安息香酸エステルを使用する。この基は直鎖または分枝鎖の脂肪族、脂環式または芳香族化合物であってよい。このアルキル基の1個または複数個のメチレン基は酸素により置換されていてよい。出発エステルの基になっているアルコールは使用したノナノールまたはイソノナノール混合物より低い沸点を有しているのが適切である。エステル交換のための有利な使用物質は、安息香酸メチルエステル、安息香酸エチルエステル、安息香酸プロピルエステル、安息香酸イソブチルエステル、安息香酸アミルエステルおよび/または安息香酸ブチルエステルである。
【0036】
エステル交換は触媒により、例えばブレンステッド酸またはルイス酸または塩基を用いて実施する。どのような種類の触媒を選択するかにかかわらず、常に出発物質(アルキルベンゾエートおよびノナノールまたはイソノナノール混合物)と生成物(ノニルエステルまたはノニルエステル混合物および遊離アルコール)との間には温度に依存する平衡が生じる。ノニルエステルまたはイソノニルエステル混合物の優先的になる平衡に移動させるために、出発エステルから生じたアルコールを反応混合物から留去する。
【0037】
ノナノールもしくはイソノナノール混合物を過剰で使用するのが、ここでも適切である。
【0038】
エステル交換触媒としては酸、例えば硫酸、メタンスルホン酸またはp−トルエンスルホン酸、または金属またはその化合物を使用することができる。好適であるのは、例えばスズ、チタン、ジルコニウムであり、これを微細な金属または有利にはその塩、酸化物または可溶性の有機化合物の形で使用する。金属触媒は、プロトン酸とは異なり、その完全な活性が180℃を越える温度で初めて達せられる高温度触媒である。しかしながら、これはプロトン触媒に比べて、例えば使用したアルコールからのオレフィンのような副生成物が僅かに形成されるために優先的に使用される。金属触媒の代表的な例は、スズ粉末、酸化スズ(II)、シュウ酸スズ(II)、チタン酸エステル、例えばテトライソプロピルオルトチタネートまたはテトラブチルオルトチタネート並びにテトラブチルジルコネートのようなジルコニウムエステルである。
【0039】
更に、塩基触媒、例えばアルカリ金属またはアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、炭酸水素塩、炭酸塩またはアルコラートを使用することができる。これらの群から有利にはアルコラート、例えばナトリウムメチラートを使用する。アルコラートは、その場で、アルカリ金属およびノナノールもしくはイソノナノール混合物から製造することもできる。
【0040】
触媒濃度は触媒の種類に依存する。有利に濃度は反応混合物に対して0.005〜1.0質量%である。
【0041】
エステル交換のための反応温度は通常100〜220℃である。この温度は、少なくとも出発エステルから生じたアルコールを所定の圧力で、多くの場合標準圧で、反応混合物から留出させることができる程度に高い必要ある。
【0042】
エステル交換混合物は同様にエステル化混合物に関して記載されていると同様に後処理することができる。
【0043】
本発明による組成物中には安息香酸イソノニルエステルの他にその他の皮膜形成剤として好適である化合物が存在していてよい。こうして本発明による組成物は、皮膜形成剤として、安息香酸イソノニルエステルと、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールモノベンゾエート、ジプロピレングリコールモノベンゾエート、トリエチレングリコールモノベンゾエート、トリプロピレングリコールモノベンゾエート、安息香酸−n−ブチルエステル、安息香酸イソブチルエステル、安息香酸−n−ヘプチルエステル、安息香酸イソヘプチルエステル、安息香酸−n−オクチルエステル、安息香酸−2−エチルヘキシルエステル、安息香酸−イソオクチルエステル、安息香酸−n−ノニルエステル、安息香酸−n−デシルエステル、安息香酸イソデシルエステル、安息香酸−2−プロピルヘプチルエステル、安息香酸−n−ウンデシルエステル、安息香酸−イソウンデシルエステル、安息香酸−n−ドデシルエステル、安息香酸−イソドデシルエステル、安息香酸−イソトリドデシルエステル、安息香酸−n−トリドデシルエステル、(C13の多い)安息香酸C11〜C14−アルキルエステル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−プロピルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジ−n−ペンチルフタレート、ジイソペンチルフタレート、ジイソヘプチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−イソノニルフタレート、ジ−イソデシルフタレート、ジ−2−プロピルヘプチルフタレート、ジ−n−ウンデシルフタレート、ジ−イソウンデシルフタレート、ジイソトリデシルフタレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−イソ−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−モノ−ペンチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−イソ−ブチルエーテル、トリエチレングリコール−モノ−ペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−イソ−ブチルエーテル、ジプロピレングリコール−モノ−ペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−イソ−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−ペンチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール−モノイソブチレート、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−ジイソブチレート、ジカルボン酸のジイソブチルエステルの混合物、例えばLUSOLVANFBH(BASF AG)またはDBE−IB(DuPont)、2−エチルヘキシル−2−エチルヘキサノエートを包含する群からの1つまたはそれ以上の物質とからなる混合物を有していてよい。
【0044】
皮膜形成剤および結合剤としてのポリマーの他に、本発明による組成物中には付加的に充填材、その他の添加物および/または顔料を、ポリマーの乾燥質量に対して0.1〜50質量%、有利に1〜25質量%および特に有利に10〜20質量%の量で含有することができる。
【0045】
充填材に関しては、例えば水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、クリストバライト、ドロマイト、雲母、方解石、カオリン、石英ガラス、ケイソウ土、ケイ酸、チョーク、ナトリウム−アルミニウム−ケイ酸塩、石英粉、二酸化ケイ素、重晶石またはタルクが本発明による組成物中に存在していてよい。
【0046】
顔料として、特に着色顔料、例えば無機顔料、例えばオーカー、アンバー、グラファイト、合成白色顔料、例えばチタン白(TiO)、合成黒色顔料、例えばカーボンブラック、合成着色顔料、例えば亜鉛イエロー、亜鉛グリーン、カドミウムレッド、コバルトブルー、ウルトラマリーン、マンガンバイオレット、酸化鉄レッド、酸化クロムグリーンまたはストロンチウムイエロー、磁気顔料または有機顔料、例えばアゾ染料が本発明による組成物中に存在していてよい。
【0047】
その他の添加物としては、本発明による組成物中に、特に、例えば増粘剤、分散助剤、消泡剤または殺生剤が存在していてよい。増粘剤は組成物の粘度を調節するために使用される。このためには、例えばセルロースエーテル、酸基を有するコポリマー、ポリウレタン増粘剤または無機システム、例えば、高分散性ケイ酸を使用することができる。加工性、保湿性、水硬化性および貯蔵安定性に関する最適な特性を得るために、しばしば複数の異なる増粘剤からなる混合物を使用する。
【0048】
分散助剤は、充填材および顔料の改善された湿潤のために使用される。これは、特に充填材または顔料を有する本発明による組成物の貯蔵安定性を改善するために必要である。使用可能な分散助剤はポリホスフェート、ポリアクリル酸およびアセトホスホン酸をベースとする化合物である。
【0049】
ラテックス塗料の高い水分含量により、これはカビおよびバクテリアのための理想的な培地である。これに対抗するためにしばしば保存剤を使用する。このことは貯蔵容器中に(いわゆる貯蔵容器保存)および/または支持体上の被覆膜の保護のために添加することができる。ここではイソチアゾリノンおよびいわゆるホルムアルデヒド分離剤が典型的なものである。
【0050】
汎用される公知技術によるラテックス塗料は、主に水をベースとする。付加的に組成物中に存在する有機溶剤は、一般に皮膜形成助剤としてのみ働く。従って、本発明による組成物中には水の他に、例えばグリコール、更には脂肪族の化合物、アルコール、芳香族の化合物、エステル、グリコールエーテル、ケトン、ナフサおよびテルペン炭化水素が皮膜形成助剤として存在していてよい。
【0051】
本発明による組成物を使用すべき最終使用目的、例えばワニス、接着剤またはラテックス塗料に依存して、本発明による組成物はこれらの目的に汎用される多くの異なるポリマー(結合剤)を有していてよい。本発明による組成物は、皮膜形成性ポリマーとして有利にエステルのホモ−、コ−またはターポリマーを有し、これはモノマーとして少なくとも1個の二重結合を有し、その際この二重結合はモノマーエステルのカルボン酸部分にまたはアルコール部分に存在していてよい。本発明による組成物が、ビニルエステル、アクリレートまたはメタクリレートから選択された、少なくとも1種のモノマーを単独重合、共重合または三元共重合することにより得られたポリマーを有するのが特に有利である。好適なコモノマーは例えばエチレンまたはスチレンである。
【0052】
二重結合がカルボン酸部分に存在するモノマーからのポリマーの例は、エチレン系不飽和酸、例えばアクリル酸またはメタクリル酸の、一般に炭素原子1〜9個、特に炭素原子1〜4個を有するアルコールでのエステル化により得られるものである。これから誘導されたポリマー、特にポリアクリレートは場合によりエチレン系不飽和化合物、例えばエチレンまたはスチレンからの繰り返し単位を含有していてよく、例えばスチレン−アクリレート−コポリマーであってよい。アルコール基中に二重結合を有する重合可能なエステルは、例えばビニルエステル、例えば酢酸ビニルまたはビニルブチレートである。更に本発明による組成物中の結合剤として、塩化ビニルとエチレンおよびビニルエステルとの三元共重合により得られるポリマーが存在していてよい。酢酸ビニルのホモポリマーまたは酢酸ビニルとエチレンからなるコポリマーをしばしば例えば水性接着剤系中に結合剤として使用する。ラテックス塗料のためには、しばしば結合剤として酢酸ビニル、エチレンおよびアクリレートからなるターポリマーまたはスチレンおよびアクリル酸エステルからなるコポリマーを使用する。多くの場合、純粋なアクリレート(Reinacrylate)を使用する。
【0053】
塗料(ラテックス塗料)を製造するためには、皮膜形成性ポリマーおよび/またはコポリマーおよび/またはターポリマーの水性分散液を種々の添加物と混合する。これには、特に増粘剤、分散助剤、皮膜形成剤、充填材、顔料、消泡剤、グリコール、殺生剤などが属する。
【0054】
本発明による組成物の製造は、皮膜形成性ポリマー(結合剤)と異性体のノニルベンゾエートとの混合物、すなわち同様に本発明による対象である組成物を製造するための方法により有利に行われる。この際、本発明による組成物は、最初に1または複数の皮膜形成剤を場合により存在する増粘剤、分散助剤、充填材、顔料、消泡剤、グリコール、殺生剤等と分散液にすることにより有利に製造する。このことは、例えば高速ミルにより実施することができる。そのように製造した懸濁液を次いで有利にゆっくりと運転するミキサーを用いて水性結合剤分散液(ラテックス)中に混ぜ込む。
【0055】
本発明による1または複数の組成物は塗料(ラテックス塗料またはワニス)または接着剤として、または塗料(ラテックス塗料またはワニス)または接着剤の製造のために使用することができる。例えば外部領域または内部領域のためのラテックス塗料、ワニスまたは接着剤のような最終生成物の製造は当業者には公知の方法である。
【0056】
次に実施例につき本発明を詳細に説明するが、詳細な説明および請求項から明らかな適用範囲を制限するものではない。
【0057】
実施例:
例1:イソノニルベンゾエート(INB)の合成
載置した水分離器および還流冷却器並びに試料採取用管および温度計を備える4 lの蒸留フラスコ中に安息香酸976g(8モル)、OXENO Olefinchemie GmbHのイソノナノール1728g(12モル)およびブチルチタネート0.59g(酸量に対して0.06%)を秤量し、窒素雰囲気下に加熱沸騰させた。エステル化で生じた反応水を規則的に取り出した。酸価が低下し、0.1mgKOH/gを下回った際に、(約3時間後)配合物を先ず60℃を下回る温度に冷却し、20cmのマルチ充填カラムを載置した。その後、圧力を2ミリバールに下げ、最初に過剰のアルコールを留去した(約120℃)。140℃までの中間留出物の分離後、塔頂部で測定して(2ミリバールで)142〜147℃の範囲でイソノニルベンゾエートを留出させることができた。ガスクロマトグラフィーは純度>99.7%であることを示すことができた。
【0058】
沸点もしくは沸点範囲を測定するために、物質をサーモシステム(Thermosystem)FP800(Mettler社)中で、中央処理装置FP80と連結されたセンサーFP85において測定した、開始温度100℃において、400℃まで10℃/分の温度上昇を実施した。このようにして得られたDSC−曲線から、イソノニルベンゾエートの沸点範囲が316〜326℃であることを測定することができた。
【0059】
例2:2−エチルヘキシルベンゾエートの合成
例1で実施した方法と同様に実施したが、2−エチルヘキサノール12モルを安息香酸8モルおよびテトラブチルチタネートと反応させた。蒸留(3ミリバール、塔頂部温度134℃)の後、ガスクロマトグラフィーにより測定した純度>99.7%の2−エチルヘキシルベンゾエートが得られる。
【0060】
例3:イソデシルベンゾエートの合成
載置した水分離器および還流冷却器並びに試料採取用管および温度計を備える4 lの蒸留フラスコ中に安息香酸976g(8モル)、イソデカノール(EXXAL 10、ExxonMobil社)1872g(12モル)およびブチルチタネート0.59g(酸量に対して0.06%)を秤量し、窒素雰囲気下に加熱沸騰させた。エステル化で生じた反応水を規則的に取り出した。酸価が約3時間後に低下し、0.1mgKOH/gを下回った際に、過剰のアルコールを真空下に、ラシッヒリングを有する10cmのカラムを介して留出した。その後、配合物を80℃に冷却し、浸漬管、載置した滴下ロートおよびカラムを備える4 l反応フラスコ中に移し、クライゼンブリッジ(Claisenbruecke)で固定した。その後、5質量%の苛性ソーダ水溶液で中和した(苛性ソーダ10倍過剰)。引き続き、真空下(10ミリバール)に190℃に加熱した。次いで、滴下ロートを介してVE水(完全脱塩水)を使用した粗製エステルの量に対して8質量%、一定温度で滴加した。水の添加後、ヒーターを外し、真空下に冷却した。エステルを室温で濾紙および濾過助剤を有するブフナーロートを介して濾過した。ガスクロマトグラフィーは99.7%のエステルの純度を示すことができた。
【0061】
例4:熱重量分析(TGA)による揮発性の測定
生成物の揮発性に関しての証言を得るために、例1〜3により製造した安息香酸エステルを動的TGA−法を用いて、高温における質量損失に関して比較した。
【0062】
この目的のために、空気雰囲気下に熱天秤(Netzsch社のThermowaage TG209)中で、試料20mgをPt−るつぼ(孔を有する蓋)中で23から300℃までの温度範囲で10K/分の動的温度上昇において加熱し、それぞれ質量損失を%で測定した。
【0063】
下記の第1表中には非蒸発分(=100%−質量損失(%))を記載している:
【0064】
【表1】

【0065】
試料の50%が蒸発する温度は、イソノニルベンゾエートにおいては267℃であり、2−エチルヘキシルベンゾエートにおいては255℃であり、かつイソデシルベンゾエートでは275℃である。相対的順序および明らかな差異は、分子量が上昇すると共に揮発性が低下するという予想に一致する。
【0066】
例5:種々の皮膜形成剤の最低造膜温度(MFT)に対する影響
固体含量約50%のスチレン−アクリル酸エステル−コポリマーの微細に分散した水性分散液であるLipaton AE 4620(Polymer Latex, Marl)を表に記載した量(ポリマーの乾燥質量に対する質量%)の皮膜形成剤と混合する。1日間の熟成時間の後、DIN ISO 2115に従って、最低造膜温度(MFT)の測定を行う。最後の欄は、皮膜形成剤を添加していない水性分散液の最低造膜温度を記載している。
【0067】
【表2】

【0068】
イソノニルベンゾエートで達せられたMFTは、両方の濃度においてイソデシルベンゾエートで達せられたMFTより僅かに低い。測定精度(±1℃)の範囲では2−エチルヘキシルベンゾエートおよびイソノニルベンゾエートは同様に効果的な皮膜形成剤であるが、低い濃度でイソノニルベンゾエートによりMFTのより良好な低下が達せられたので、僅かにINBの側が有利である。
【0069】
例6:蒸発挙動を測定するためのケーニッヒによる振り子型減衰(Pendeldaempfung)
皮膜形成剤3質量%を添加したLipaton AE 4620の分散液(第2表の最後の行参照)を24時間標準気候で熟成させ、次いでこれを湿潤時層厚約200μm(乾燥フィルムにおける層厚約85μm)でガラスプレート上に担持し、測定すべき塗膜を形成した。引き続き、このように製造した試験体を用いて、異なる貯蔵時間後に振り子型減衰試験(DIN EN ISO 1522)を実施した。この試験の際には、塗膜の表面上に載せた振り子を揺らし、振幅が一定の大きさに低下するまでの時間を測定する。減衰時間が短いほど、硬度が低く、かつなお皮膜形成剤の含量がより高いことを意味する。こうして、フィルムからの皮膜形成剤の蒸発挙動がどのようなものであるかの情報が得られる。未変性のフィルムの硬度が達せられた時点が、皮膜形成剤が蒸発したと見なされる。試験の結果、すなわち傾斜が基準に適合した6゜から3゜に低減する時間を、第3表に示している。
【0070】
【表3】

【0071】
意外にも、相応するフィルムからのイソノニルベンゾエートおよび2−エチルヘキシルベンゾエートの蒸発挙動はほぼ同一であり、イソデシルベンゾエートの蒸発挙動に比較して明らかに改善されている。従って、イソノニルベンゾエートおよび2−エチルヘキシルベンゾエートを皮膜形成剤として有する塗料および組成物は、イソデシルベンゾエートを有するものより、塗料の迅速な硬化を示す。例4において熱重量分析により調べた、これらのベンゾエートの揮発性は2−エチルヘキシルベンゾエートおよびイソノニルベンゾエートとの間に明らかな相違を予想させたために、この結果は意外であった。予想された相関関係とは異なることから、本発明による組成物は2−エチルヘキシルベンゾエートに比較して高い沸点を有するにもかかわらず、迅速に硬化する。例5により示すことができたように、イソノニルベンゾエートの組成物の最低造膜温度に対する作用効果は2−エチルヘキシルベンゾエートの作用効果と比較可能である。
【0072】
例7:イソノニルベンゾエート(INB)の選択的な合成法
載置した水分離器および還流冷却器並びに試料採取用管および温度計を備える4 lの蒸留フラスコ中に安息香酸976g(8モル)、OXENO Olefinchemie GmbH社のイソノナノール1728g(12モル)およびブチルチタネート0.59g(酸量に対して0.06質量%)を秤量し、窒素雰囲気下に加熱沸騰させた。エステル化で生じた反応水を規則的に取り出した。酸価が低下し、0.1mgKOH/gを下回った際に、(約3時間後)配合物を最初に60℃を下回る温度に冷却し、20cmの充填カラムを載置した。 その後、圧力を2ミリバールに下げ、先ず過剰のアルコールを留去した(カラム塔頂部温度約120℃)。その後、配合物を80℃に冷却し、浸漬管、載置した滴下ロートおよびカラムを備える4 l反応フラスコ中に移し、クライゼンブリッジで固定した。その後、5質量%の苛性ソーダ水溶液で中和し(苛性ソーダ5倍過剰)、更に30分間撹拌した。引き続き、真空下(約10ミリバール)に190℃に加熱した。次いで、滴下ロートを介して完全脱塩水を使用した粗製エステルの量に対して8質量%、一定温度で滴加した。その際、塔頂部温度は120℃を越えて上昇しないように注意した。水の添加後、ヒーターを外し、真空下に冷却した。エステルを室温で濾紙および濾過助剤を有するブフナーロートを介して濾過した。ガスクロマトグラフィーは99.7%のエステルの純度を示すことができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーから選択された少なくとも1種の皮膜形成性ポリマーおよび少なくとも1種の皮膜形成剤の水性分散液を含有する組成物において、少なくとも1種の皮膜形成剤として安息香酸イソノニルエステルを含有し、この安息香酸イソノニルエステルはポリマーの乾燥質量に対して0.1〜30質量%の濃度で存在することを特徴とする組成物。
【請求項2】
異性体安息香酸イソノニルエステルの鹸化により得られるノニルアルコールが3,5,5−トリメチルヘキサノールを10モル%未満含有する、安息香酸イソノニルエステルを含有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
皮膜形成剤として安息香酸イソノニルエステルと、ジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、トリプロピレングリコールジベンゾエート、ジエチレングリコールモノベンゾエート、ジプロピレングリコールモノベンゾエート、トリエチレングリコールモノベンゾエート、トリプロピレングリコールモノベンゾエート、安息香酸−n−ブチルエステル、安息香酸イソブチルエステル、安息香酸−n−ヘプチルエステル、安息香酸イソヘプチルエステル、安息香酸−n−オクチルエステル、安息香酸−2−エチルヘキシルエステル、安息香酸−イソオクチルエステル、安息香酸−n−ノニルエステル、安息香酸−n−デシルエステル、安息香酸イソデシルエステル、安息香酸−2−プロピルヘプチルエステル、安息香酸−n−ウンデシルエステル、安息香酸−イソウンデシルエステル、安息香酸−n−ドデシルエステル、安息香酸−イソドデシルエステル、安息香酸−イソトリドデシルエステル、安息香酸−n−トリドデシルエステル、C13の多い安息香酸C11〜C14−アルキルエステル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジ−n−プロピルフタレート、ジ−n−ブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジ−n−ペンチルフタレート、ジイソペンチルフタレート、ジイソヘプチルフタレート、ジイソオクチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジ−イソノニルフタレート、ジ−イソデシルフタレート、ジ−2−プロピルヘプチルフタレート、ジ−n−ウンデシルフタレート、ジ−イソウンデシルフタレート、ジイソトリデシルフタレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−イソ−ブチルエーテル、ジエチレングリコール−モノ−ペンチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−イソ−ブチルエーテル、トリエチレングリコール−モノ−ペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−イソ−ブチルエーテル、ジプロピレングリコール−モノ−ペンチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−イソ−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノ−ペンチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール−モノイソブチレート、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−ジイソブチレート、C〜C−ジカルボン酸のジイソブチルエステルの混合物および2−エチルヘキシル−2−エチルヘキサノエートとの混合物を包含する群からの1つまたはそれ以上の物質とからなる混合物を有する、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
付加的に充填材、添加物および/または顔料をポリマーの乾燥質量に対して0.1〜50質量%の量で含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項5】
皮膜形成助剤を有する、請求項1から4までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項6】
ポリマーとして不飽和エステルのホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーを有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の組成物。
【請求項7】
ビニルエステル、アクリレートまたはメタクリレートから選択された、少なくとも1種のモノマーを単独重合、共重合または三元共重合することにより得られたポリマーを有する、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項記載の1つまたはそれ以上の組成物の、塗料、接着剤としての、または塗料または接着剤の製造のための使用。
【請求項9】
皮膜形成剤が安息香酸イソノニルエステルであることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の組成物中に使用するための皮膜形成剤。
【請求項10】
異性体安息香酸イソノニルエステルの鹸化により得られるノニルアルコールが3,5,5−トリメチルヘキサノールを10モル%未満含有する安息香酸イソノニルエステルである、請求項9記載の皮膜形成剤。

【公表番号】特表2007−533777(P2007−533777A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−525799(P2006−525799)
【出願日】平成16年7月16日(2004.7.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051523
【国際公開番号】WO2005/026249
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(398054432)オクセノ オレフィンヒェミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】OXENO Olefinchemie GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】