説明

皮膜形成方法

【課題】 ステンレス鋼素地上に、塗膜硬度、耐衝撃性、密着性、仕上り性に優れる塗装物品を提供すること。
【解決手段】
珪酸のアルカリ金属塩とメタほう酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩の水溶液又は水分散液(A)の浴に浸漬し通電処理を行って皮膜を形成した後、次いで、該皮膜上に下記のアニオン電着塗料(B)を電着塗装して塗膜を形成することを特徴とするステンレス鋼素地上の皮膜形成方法。
アニオン電着塗料(B):カルボキシル基含有樹脂(b1)、アミノ樹脂(b2)、及びメチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物(b3)の固形分合計100質量部に対して、カルボキシル基含有樹脂(b1)50〜75質量部とアミノ樹脂(b2)5〜25質量部、メチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物(b3)0.1〜25質量部含むアニオン電着塗料

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼素地上に、塗膜硬度、耐衝撃性、密着性、仕上り性に優れる塗膜を形成できる皮膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ステンレス鋼は、組成中におけるクロム (Cr) が空気中の酸素と結合して表面に不動態皮膜を形成することを利用し、高耐食性素材として屋外や湿気のある場所、化学薬品を扱う機械器具 、厨房設備等で用いられてきた。
最近では、携帯電話機等の電子機器部品においても、軽量化や高意匠化の要請からステンレス鋼に電着塗膜を施した外装部品が用いられるようになってきた。しかし、当該部品は、衣服と擦れたり、落としたり踏んだりされた際に、電着塗膜に傷がついたり剥がれることがあり、その対策が求められている。
【0003】
従来は、ステンレス鋼上にアニオン電着塗装を行っていたが、塗膜硬度を上げると耐擦り傷性は向上するが、耐衝撃性や密着性が低下する。一方、塗膜硬度を下げると、耐衝撃性や密着性は向上するが、耐擦り傷性が低下することとなり、両立が可能な塗膜を見出せなかった。
【0004】
また、アルミニウムまたはアルミニウム合金に対しては、アンモニアもしくはアミン類を含有するかもしくは含有しない熱水または水蒸気に接触させたアルミニウムまたは水蒸気に接触させたアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる被塗物(所謂、ベーマイト処理を施した被塗物)を、ほう酸塩、燐酸塩、クロム酸塩、モリブデン酸塩、バナジン酸塩等から選ばれた1種もしくは2種以上の酸素酸塩の水溶液中で通電処理した後、該被塗物に塗料を塗装することを特徴とする被覆方法が開示されている(特許文献1〜3)。しかしこれらの特許文献の記載内容を適用しただけでは、密着性向上が課題となっているステンレス鋼素地、特に表面が鏡面のようになっているステンレス鋼素地に対して、塗膜硬度、耐衝撃性及び密着性に優れた塗膜を得ることは容易ではなかった。
【0005】
他に、アニオン電着塗料の架橋剤として、アミノ樹脂とブロック化ポリイソシアネートを併用することに関する発明が開示されている(特許文献4、特許文献5)。しかし、特許文献4や特許文献5には、塗膜硬度、耐衝撃性、密着性及び仕上り性に優れた塗膜を得る方法は示されていないし、かつ示唆もされていない。
【0006】
【特許文献1】特開昭50−36326号公報
【特許文献2】特開昭50−80223号公報
【特許文献3】特開昭50−110944号公報
【特許文献4】特開平5−186720号公報
【特許文献5】特開平5−186720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、ステンレス鋼素地上において、塗膜硬度、耐衝撃性、密着性、仕上り性に優れる塗膜を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ステンレス鋼を、珪酸のアルカリ金属塩とメタほう酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種の水溶液又は水分散液(A)の浴に浸漬して通電処理を行った後、次いで、特定のアニオン電着塗料(B)を電着塗装して塗膜を形成することによって、課題を解決できることを見出し、発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、「1.珪酸のアルカリ金属塩とメタほう酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩の水溶液又は水分散液(A)の浴に浸漬し通電処理を行って皮膜を形成した後、次いで、該皮膜上に下記のアニオン電着塗料(B)を電着塗装して塗膜を形成することを特徴とするステンレス鋼素地上の皮膜形成方法、
アニオン電着塗料(B):カルボキシル基含有樹脂(b1)、アミノ樹脂(b2)及びメチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物(b3)の固形分合計100質量部に対して、カルボキシル基含有樹脂(b1)50〜75質量部とアミノ樹脂(b2)5〜25質量部、メチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物(b3)0.1〜25質量部含むアニオン電着塗料
2.アニオン電着塗料(B)が、カルボキシル基含有樹脂(b1)とアミノ樹脂(b2)及びメチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物(b3)の固形分合計100質量部に対して、着色顔料及び/又は光輝性顔料を0.1〜30質量部含有する1項に記載のステンレス鋼素地上の皮膜形成方法、
3.1又は2に記載のステンレス鋼素地上の皮膜形成方法により得られる皮膜で覆われていることを特徴とするステンレス鋼を成形してなる電子機器部品」、に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の皮膜形成方法によって得られたステンレス鋼素地上の塗膜は、塗膜硬度、耐衝撃性、密着性、仕上り性に優れる塗膜を得ることができる。本発明の皮膜形成方法によって得られたステンレス鋼は、衣服と擦れたり、落としたり踏んだりすることが想定される電子機器(例えば、デジタルカメラ、携帯電話用)の外装部品として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の皮膜形成方法について説明する。
【0012】
ステンレス鋼:
本発明の皮膜形成方法に使用できるステンレス鋼は、フェライト(α)系、マルテンサイト(M)、オーステナイト(γ)系、オーステナイト・フェライト二相(γ+α)系等の従来から公知のステンレス鋼が使用できる。
【0013】
具体的には、例えばSUS304、SUS305、SUS310、SUS316やSUSMX7などのオーステナイト系ステンレス;SUS430などのフィライト系ステンレス、SUS403、SUS410、SUS416やSUS420などのマルテンサイト系ステンレス;SUS631などの析出硬化系ステンレス;等のステンレス鋼を用いることができる。
【0014】
珪酸のアルカリ金属塩とメタほう酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩の水溶液又は水分散液(A):
本発明の皮膜形成方法は、前記のステンレス鋼を陽極として、珪酸のアルカリ金属塩とメタほう酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩の水溶液又は水分散液(A)(以下、珪酸のアルカリ金属塩とメタほう酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩を「水溶液又は水分散液(A)」と略することがある)の浴に浸漬して、少なくとも1回の通電処理を行う。さらに、必要に応じて、通電処理を繰り返すこともできる。
【0015】
また、水溶性又は水分散性(A)は、単独で使用してもよく、2種以上混合使用してもよい。この場合、数種類の水溶液又は水分散液(A)を別々の浴として、ステンレス鋼を各々の水溶液又は水分散液(A)中に浸漬して通電処理する。
前記の珪酸のアルカリ金属塩は、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウムなどの珪酸塩が挙げられる。
【0016】
前記のメタほう酸のアルカリ金属塩は、例えば、メタほう酸リチウム(LiBO2・2H2O)、メタほう酸ナトリウム(NaBO2)、メタほう酸カリウム(KBO2)が挙げられる。これらの中でも、珪酸ナトリウム、メタほう酸ナトリウムが、耐衝撃性、密着性の面から好ましい。
【0017】
本発明の皮膜形成方法、即ち、ステンレス鋼を水溶液又は水分散液(A)の浴中に浸漬し、通電処理を施すことによって、例えば、ステンレス鋼を「珪酸ナトリウム」の水溶液に浸漬し、通電処理を施すと、ステンレス鋼の素地上には、下記式(1)に従って「珪酸ゲル(「水ガラス」とも言われる)」の皮膜を形成する。
【0018】
NaSiO+2H→2Na+HSiO ・・・式(1)
このような「珪酸ゲル」が、ステンレス鋼との密着性向上に寄与すると考えられる。また、水溶液又は水分散液(A)にメタほう酸のアルカリ金属塩を用いた場合は、ステンレス鋼素地上に「ほう酸ゲル」の皮膜を形成し、該「ほう酸ゲル」が電着塗膜とステンレス鋼との密着性及び耐衝撃性の向上に寄与する。
なお水溶液又は水分散液(A)の濃度としては、該金属塩が0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、さらに好ましくは2〜8質量%であることが、浴安定性、形成された耐衝撃性、密着性の面から好ましい。
【0019】
また、通電処理は、ステンレス鋼を水溶性又は水分散性(A)の浴中に浸漬し、液温度を10〜40℃に調整し、ステンレス鋼を陽極として通常の電着塗装法に準じて行う。この時の電流密度は、0.1A/dm 〜5A/cm、好ましくは0.2A/dm 〜3A/cmで、10秒間〜300秒間、好ましくは30秒間〜200秒間通電することにより、ステンレス鋼素地上に皮膜を形成できる。
【0020】
ステンレス鋼を、複数の水溶性又は水分散性(A)浴に浸漬して通電処理を施す場合、同種の水溶性又は水分散性(A)の浴ならば水洗せずそのまま浸漬して再び通電処理を行う。また、異種の水溶性又は水分散性(A)ならば、ただちに水洗して、表面に付着している未析出の金属塩を除去した後、異種の水溶性又は水分散性(A)浴中に浸漬して通電処理して水洗を施して、皮膜を形成することができる。
【0021】
上記における水洗後は、必要に応じて、常温乾燥や40〜80℃で1分間〜60分間加熱乾燥を施すこともできる。皮膜の厚さは、0.01〜3μm、好ましくは乾燥膜厚0.1〜1.0μmが、耐衝撃性、密着性及び仕上り性の面から好ましい。
【0022】
[アニオン電着塗料(B)]
本発明の皮膜形成方法に用いるアニオン電着塗料(B)は、カルボキシル基含有樹脂(b1)とアミノ樹脂(b2)及びメチルアミルケトオキシムブロック化ポリイソホロンジイソシアネート(b3)を含有することを特徴とする。上記組成のアニオン電着塗料(B)を用いることによって、塗膜硬度、耐衝撃性、密着性及び仕上り性に優れた塗膜及び該塗膜を有する塗装物品を得ることができる。
【0023】
カルボキシル基含有樹脂(b1):
カルボキシル基含有樹脂(b1)は、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有するものであり、さらに好ましくは少なくとも1個の水酸基を有する樹脂である。具体的には、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂が挙げられ、この中でも塗膜硬度や仕上り性の面からアクリル樹脂が好適である。
【0024】
上記のアクリル樹脂は、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体、必要に応じて水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体、及びその他のラジカル重合性不飽和単量体を共重合反応によって製造することができる。
【0025】
上記カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、
メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等の単量体が挙げられる。水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、及びこれ以外にプラクセルFM1(ダイセル化学社製、商品名、カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル類)、プラクセルFM2(同左)、プラクセルFM3(同左)、プラクセルFA1(同左)、プラクセルFA2(同左)、プラクセルFA3(同左)等が挙げられる。
【0026】
上記その他のラジカル重合性不飽和単量体としては、例えば、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のアルコキシシリル基含有不飽和単量体;例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸のC〜C18のアルキル又はシクロアルキルエステル類、スチレンなどの芳香族ビニルモノマー類、(メタ)アクリル酸アミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド及びその誘導体類、(メタ)アクリロニトリル化合物類等が挙げられる。
【0027】
アクリル樹脂としては通常、上記のカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和単量体、
必要に応じて水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体、及びその他のラジカル重合性不飽和単量体を溶媒中にて重合開始剤によりラジカル重合反応して得られる。この重合反応に際し、カルボキシル基含有重合性不飽和単量体が1〜20質量%、好ましくは4〜10質量%、水酸基含有ラジカル重合性不飽和単量体が0〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、その他のラジカル重合性不飽和単量体が40〜99質量%、好ましくは60〜91質量%の範囲が好適である。
【0028】
重合反応に使用する溶媒としては、例えば、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、メチルカルビトール、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−イソプロパノキシエタノール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングルコールモノブチルエーテル、トリエチレングルコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類などが好適に使用できる。
【0029】
これ以外にも必要に応じて、例えば、キシレン、トルエンなどの芳香族類;アセトン、
メチルエチルケトン、2−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類も併用することができる。
【0030】
ラジカル共重合に用いるラジカル重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンザンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウリルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物、α,α'−アゾビスイソブチルニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリルなどのアゾ化合物が挙げられる。上記アクリル樹脂の重量平均分子量は、5,000〜150,000、好ましくは20,000〜100,000の範囲が好適である。
【0031】
なお重量平均分子量は、JIS K 0124−83に準じて行い、分離カラムに、TSK gel2000HXL、TSK gel2500HXL、TSK gel3000HXL、TSK gel4000HXLの4本(以上、東ソー社製)を用いて40℃で流速1.0ml/分、溶離液にGPC用テトラヒドロフランを用いて、RI屈折計で得られたクロマトグラフとポリスチレンの検量線から求めた。
【0032】
アミノ樹脂(b2):
アミノ樹脂(b2)は、従来から公知の化合物を使用することができ、例えば、メラミン樹脂、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂、該メチロール化アミノ樹脂のアルキルエーテル化物があげられる。
【0033】
上記メチロール化アミノ樹脂としては、メチロール化メラミン樹脂が好適であり、メチロール化メラミン樹脂のメチロール基の一部もしくは全部がメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール等の1種もしくは2種以上の1価アルコールで変性されたメラミン樹脂を使用することができる。
【0034】
上記のメラミン樹脂の市販品としては、例えば、ユーバン20SE−60、ユーバン225(以上、いずれも三井化学社製、商品名)、スーパーベッカミンG840、スーパーベッカミンG821(以上、いずれも大日本インキ化学工業社製、商品名)などのブチルエーテル化メラミン樹脂;スミマールM−100、スミマールM−40S、スミマールM−55(以上、いずれも住友化学社製、商品名)、サイメル232、サイメル303、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370(以上、いずれも日本サイテックインダストリーズ社製、商品名)、ニカラックMS17、ニカラックMX15、ニカラックMX430、ニカラックMX600、(以上、いずれも三和ケミカル社製、商品名)、レジミン741(モンサント社製、商品名)等のメチルエーテル化メラミン樹脂;サイメル235、サイメル202、サイメル238、サイメル254、サイメル272、サイメル1130(以上、いずれも三井サイテック社製、商品名)、スマミールM66B(住友化学社製、商品名)等のメチル化とイソブチル化との混合エーテル化メラミン樹脂;サイメルXV805(三井サイテック社製、商品名)、ニカラックMS95(三和ケミカル社製、商品名)等のメチル化とn−ブチル化との混合エーテル化メラミン樹脂などを挙げることができる。
【0035】
メチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物(b3):
本発明に用いるアニオン電着塗料(B)には、架橋剤として、メチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物(b3)を一定量含有する。
メチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物(b3)(以下、「化合物(b3)」と略することがある)は、イソホロンジイソシアネートのイソシアネート基をメチルアミルケトオキシム(2−ヘプタノンオキシム)でブロックした化合物である。
【0036】
従来からポリイソシアネート化合物としては、例えば、(o−,m−,p−)トリレンジイソシアネート、(o−,m−,p−)キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体又はビゥレット体;又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0037】
一方、ポリイソシアネート化合物をブロックするブロック剤には、メチルエチルケトオキシム、メチルアミルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール系化合物;ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物;等が挙げられる。
【0038】
本発明の皮膜形成方法は、ステンレス素地上に前記「珪酸ゲル」又は前記「ほう酸ゲル」の皮膜を形成する。次いで、「珪酸ゲル」又は「ほう酸ゲル」の皮膜と付着性に優れるイソシアネート基を含有しかつ「珪酸ゲル」又は「ほう酸ゲル」の皮膜を不安定にすることのない、メチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物を一定量含有したアニオン電着塗料(B)の塗膜を塗り重ねることによって、目的とする塗膜硬度、耐衝撃性、密着性、仕上り性の全てを満足する塗膜が得られることを見出した。
【0039】
ここで、メチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物(b3)を用いたアニオン電着塗料を電着塗装して得られた塗膜は、低温硬化性に優れることから塗膜硬度が得られる。さらに、ブロック剤として用いるメチルアミルケトオキシム(分子量129)は、低温硬化性向上に有用であるメチルエチルケトオキシム(分子量87)に比べて分子量が大きく、加熱乾燥時に脱離したブロック剤が、塗膜硬化初期に可塑剤として働いて塗膜のフロー性を上げて、それにより平滑性に優れ仕上り性が良好な塗装物品を得ることができる。
【0040】
また、化合物(b3)には、従来から公知の「その他のブロック化ポリイソシアネート化合物」を併用することができる。その他のブロック化ポリイソシアネート化合物に用いるポリイソシアネート化合物としては、前記ポリイソシアネート化合物を挙げることができる。一方、ブロック剤としては、前記ブロック剤を挙げることができる。
【0041】
なお、その他のブロックポリイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、バーノックD−750、バーノックD−800、バーノックDN−950、バーノックDN−970もしくはバーノックDN−15−455、(以上、大日本インキ化学工業社製、商品名)、デスモジュールL、デスモジュールN、デスモジュールHL、デスモジュールILもしくはデスモジュールN3390(以上、バイエル社製品社製)、タケネートD−102、タケネートD−202、タケネートD−110NもしくはタケネートD−123N(武田薬品工業社製、商品名)、コロネートL、コロネートHL、コロネートEHもしくはコロネート203(日本ポリウレタン工業社製、商品名)またはデュラネート24A−90CX(旭化成工業社製、商品名)等が挙げられる。
【0042】
アニオン電着塗料(B)における、カルボキシル基含有樹脂(b1)、アミノ樹脂(b2)及び化合物(b3)の配合割合は、該樹脂(b1)、アミノ樹脂(b2)及び化合物(b3)の固形分合計100質量部を基準にして、カルボキシル基含有樹脂(b1)50〜75質量部、好ましくは50〜65質量部、アミノ樹脂(b2)5〜25質量部、好ましくは10〜20質量部、化合物(b3)0.1〜25質量部、好ましくは1〜15質量部含むことが、塗膜硬度、耐衝撃性、密着性及び仕上り性の面から好ましい。
【0043】
また、アニオン電着塗料(B)において、その他のブロック化ポリイソシアネート化合物を併用する場合は、カルボキシル基含有樹脂(b1)、アミノ樹脂(b2)、メチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物(b3)及びその他のブロック化ポリイソシアネート化合物の固形分合計100質量部に対して、カルボキシル基含有樹脂(b1)50〜75質量部、好ましくは60〜75質量部、アミノ樹脂(b2)5〜25質量部、好ましくは10〜20質量部、メチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物(b3)1〜15質量部、好ましくは5〜15質量部、その他のブロック化ポリイソシアネート化合物0.1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部が、塗膜硬度と仕上り性の面から好ましい。
【0044】
なおカルボキシル基含有樹脂(b1)の水分散化は、カルボキシル基含有樹脂(b1)に、アミノ樹脂(b2)及び化合物(b3)、必要に応じて、その他のブロック化ポリイソシアネート化合物を加えて、塩基性化合物、脱イオン水を加えてディスパーなどで攪拌しながら、水分散体を得ることができる。
【0045】
塩基性化合物は、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ベンジルアミン、モノエタノールアミン、ネオペンタノールアミン、2−アミノプロパノール、3−アミノプロパノールなどの第1級モノアミン;ジエチルアミジエタノールアミン、ジ−n−またはジ−iso−プロパノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミンなどの第2級モノアミン;ジメチルエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどの第3級モノアミン;ジエチレントリアミン、ヒドロキシエチルアミノエチルアミン、エチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミンなどのポリアミンがある。上記塩基性化合物の配合割合は、中和当量として0.1〜1.2当量の範囲が好ましい。
【0046】
本発明に用いるアニオン電着塗料(B)には、必要に応じて、着色顔料及び/又は光輝性顔料を加えることができる。上記、着色顔料としては、例えば二酸化チタン、カーボンブラック、亜鉛華、モリブデンレッド、プルシアンブルー、コバルトブルー、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、イソインドリン顔料、スレン系顔料、ペリレン顔料などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0047】
光輝性顔料は、例えば、アルミニウム顔料、リーフィング性を付与した蒸着アルミニウム顔料、金属酸化物被覆アルミナフレーク、金属酸化物被覆シリカフレーク、グラファイト顔料、天然雲母(マイカ)や合成マイカに酸化鉄や酸化チタン等の金属酸化物を被覆した金属酸化物被覆マイカ、チタンフレーク、ステンレスフレーク、塩化オキシビスマス、板状酸化鉄顔料、金属めっきガラスフレーク、金属酸化物被覆ガラスフレーク、ホログラム顔料などが挙げられ、これらは単独で又は2種以上併用して用いることができる。
【0048】
上記の着色顔料及び/又は光輝性顔料の配合量は、カルボキシル基含有樹脂(b1)、アミノ樹脂(b2)、化合物(b3)及び必要に応じて配合される、その他のブロック化ポリイソシアネート化合物の固形分合計100質量部に対して、0.1〜30質量部、好ましくは1〜20質量部の範囲内が、耐衝撃性と仕上り性の面から適当である。
【0049】
皮膜形成方法について
本発明の皮膜形成方法は、ステンレス鋼を、水溶液又は水分散液(A)中に浸漬して、析出皮膜の膜厚が0.01〜3.0μm、好ましくは0.1〜1.0μmとなるように通電処理を行った後、アニオン電着塗料(B)によるアニオン電着塗装を、乾燥膜厚が30μm以下、好ましくは5〜20μm、さらに好ましくは8〜17μmとなるように行う。
次いで、水洗を行わず(ノンリンス)又は水洗(リンス)を行った後、加熱乾燥することにより得られる。次いで室温でセッティングした後、加熱乾燥することにより行うことができる。加熱乾燥条件は、通常、130〜200℃、好ましくは150〜190℃で、20〜50分間好ましくは25〜40分間である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。尚、「部」及び「%」は「質量部」及び「質量%」を示す。
【0051】
製造例1 硬化剤No.1の製造(メチルアミルケトオキシムブロック化IPDI)
反応容器中にイソホロンジイソシアネート222部及びメチルアミルケトオキシム256部を加え70℃に昇温した。経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネート基の吸収がなくなったことを確認してエチレングリコールモノブチルエーテルにて樹脂固形分を調整し、樹脂固形分80%の硬化剤No.1を得た。
【0052】
製造例2 硬化剤No.2の製造(メチルエチルケトオキシムブロック化IPDI)
反応容器中にイソホロンジイソシアネート222部及びメチルエチルケトオキシム174部を加え70℃に昇温した。経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネート基の吸収がなくなったことを確認してエチレングリコールモノブチルエーテルにて樹脂固形分を調整し、樹脂固形分80%の硬化剤No.2を得た。
【0053】
製造例3 硬化剤No.3の製造(シクロヘキサノンオキシムブロック化IPDI)
反応容器中にイソホロンジイソシアネート222部及びシクロヘキサノンオキシム226部を加え70℃に昇温した。経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアネート基の吸収がなくなったことを確認してエチレングリコールモノブチルエーテルにて樹脂固形分を調整し、樹脂固形分80%の硬化剤No.3を得た。
【0054】
製造例4 アクリル樹脂溶液No.1の製造例
反応容器中に混合溶剤(注1)21部を仕込み85℃に保持した中へ以下の「混合物(A)」を3時間掛けて滴下し、次いでアゾビスジメチルバレロニトリル3部を添加し、85℃で4時間保持して反応を行った後、混合溶剤(注1参照)にて固形分を調整し、固形分70質量%のアクリル樹脂溶液No.1を製造した。
「混合物(A)」
スチレン 5部
メチルメタクリレート 36.0部
エチルアクリレート 37.5部
2−エチルヘキシルメタクリレート 4.0部
アクリル酸 5.5部
2−ヒドロキシエチルメタクリレート 12.0部
アゾビスジメチルバレロニトリル 2.1部
(注1)混合溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル/イソプロピルアルコール/n−ブチルアルコール/エチレングリコールモノブチルエーテル=42部/42部/42部/84部。
【0055】
製造例5 エマルションNo.1の製造
上記の製造例1で得た70%のアクリル樹脂溶液No.1を85.7部(固形分60部)、サイメル232(注2)30部(固形分30部)、80%の硬化剤No.1を12.5部(固形分10部)、トリエチルアミン1.9部(0.4中和当量分)、水119.9部を加えて分散し、固形分を調整して40%のエマルションNo.1を得た。
【0056】
(注2)サイメル232:三井サイテック社製、商品名、メチル・ブチル混合エーテル化メラミン樹脂)。
【0057】
製造例6〜10 エマルションNo.2〜No.6の製造
表1の内容とする以外は、製造例5と同様に操作してエマルションNo.2〜No.6を得た。
【0058】
【表1】

【0059】
製造例11 顔料分散ペーストNo.1の製造例
60%アミン中和アクリル樹脂系顔料分散樹脂(重量平均分子量36,000、水酸基価70mgKOH/g、酸価56mgKOH/g)9.6部(固形分5.8部)、CR−97(注3)10.0部、トリエチルアミン0.5部、脱イオン水11.5部を仕込み、ボールミルで20時間分散して固形分50%の顔料分散ぺーストNo.1を得た。
【0060】
製造例12〜16 顔料分散ペーストNo.2〜No.6の製造例
表2の配合内容とする以外は、製造例11と同様にして、固形分50%の顔料分散ぺーストNo.2〜No.6を得た。
【0061】
【表2】

【0062】
(注3)CR−97:石原産業社製、商品名、チタン白
(注4)カーボンブラックMA−100:三菱化学社製、商品名、カーボンブラック
(注5)メタシーンKM1000:東洋アルミニウム社製、商品名、リーフィング性を付与した蒸着アルミニウム顔料、平均粒子径11.1μm、粒子厚み0.025μm
(注6)SF640:東洋インキ製造社製、商品名、キナクリドン系の着色顔料、固形分36%、顔料分30%
(注7)EMF BLUE 2R:東洋インキ製造社製、商品名、フタロシアニンブルー系の着色顔料、固形分40%、顔料分28%
(注8)EMF YELLOW H2RN−2:東洋インキ製造社製、商品名、ジアゾイエロー系の着色顔料、固形分40%、顔料分32%。
【0063】
製造例17 アニオン電着塗料No.1の製造
上記、固形分40%のエマルションNo.1を250部(固形分100部)、顔料分散ペーストNo.1を31.6部(固形分15.8部)、脱イオン水956.4部で希釈して固形分8%のアニオン電着塗料No.1を得た。
【0064】
製造例18〜24 アニオン電着塗料No.2〜No.8の製造
表3の配合内容とする以外は、製造例13と同様にして、アニオン電着塗料No.2〜No.8を得た。
【0065】
【表3】

【0066】
比較製造例1 アニオン電着塗料No.9〜No.13の製造
表4の配合内容とする以外は、製造例17と同様にして、アニオン電着塗料No.9〜No.13を得た。
【0067】
【表4】

【0068】
試験板(1)の作成
SUS304(150mm×70mm×0.5mm、オーステナイト系ステンレス鋼)を25℃、100g/lの硫酸水溶液に5分間浸漬することにより脱脂した後、10質量%のケイ酸ナトリウム水溶液中でSUS304を陽極として浸漬して0.01A/cmの定電流密度で60秒間通電した後、水洗し、試験板(1)を作成した。試験板(1)における皮膜の膜厚は0.3μmであった。
【0069】
試験板(2)の作成
SUS430(150mm×70mm×0.5mm、フェライト系ステンレス鋼)を、25℃で100g/lの硫酸水溶液に5分間浸漬することにより脱脂した後、10質量%のメタほう酸ナトリウム水溶液中でSUS430を陽極として浸漬して0.01A/cmの定電流密度で40秒間通電した後、水洗し、試験板(2)を作成した。試験板(2)における皮膜の膜厚は0.5μmであった。
【0070】
実施例1 複層被膜No.1
アニオン電着塗料No.1の浴に、試験板(1)が陽極となるように150Vで2分間電着塗装を行った。次いで、180℃で20分間加熱乾燥して、乾燥膜厚15μmの複層被膜No.1を得た。
【0071】
実施例2〜16 複層被膜No.2〜No.16
表5及び表6に示す工程とする以外は、実施例1と同様にして、複層被膜No.2〜No.16を得た。併せて、塗膜性能を示す。
【0072】
【表5】

【0073】
【表6】

【0074】
比較例1 複層被膜No.17
アニオン電着塗料No.1の浴に、試験板(1)が陽極となるように150Vで2分間電着塗装を行った。次いで、180℃で20分間焼付け乾燥して、乾燥膜厚15μmの複層被膜No.17を得た。
【0075】
比較例2〜10 複層被膜No.18〜No.32
表7及び表8に示す工程とする以外は、実施例1と同様にして、複層被膜No.18〜No.32を得た。併せて、塗膜性能を示す。
【0076】
【表7】

【0077】
【表8】

【0078】
(注6)鉛筆硬度:試験板の塗膜について、JIS K 5600−5−4(1999)に規定する鉛筆引っかき試験を行い、塗膜の傷痕による評価を行った。
【0079】
(注7)耐衝撃性:各塗板を、温度20℃±1、湿度75±2%の恒温恒湿室に24時間置いた後、JIS K 5600−5−3(1999)に規定されるデュポン衝撃試験器に規定の大きさの受台と撃心を取り付け、試験板の塗面を上向きにして、その間に挟み、次に500gの重さのおもりを撃心(1/2インチ)の上に落とし、衝撃による塗膜(おもて面)にワレ、ハガレが発生する落下高さ(cm)を測定した。
【0080】
(注8)密着性:JIS K 5600−5−6(1999)碁盤目−テープ法に準じて、塗装板の塗膜面に素地に達するようにナイフを使用して約1mmの間隔で縦、横それぞれ平行に11本の切目を入れてゴバン目を形成し、その表面にビニール粘着テープを貼着し、テープを急激に剥離した後のゴバン目塗面を下記基準にて評価した。
◎:塗膜の剥離が全く認められない
○:ナイフ傷における塗膜の一部にわずかに剥離が認められる
△:100個のゴバン目のうち剥離したものが1〜20個である
×:100個のゴバン目のうち剥離したものが21個以上である。
【0081】
(注9)仕上り性:塗膜表面を目視観察し、下記の基準で評価を行った。
◎は、塗膜に全く異常が認められない。
〇は、ラウンド感、ツヤボケの少なくとも一方が、わずかに認められる。
△は、ラウンド感、ツヤボケの少なくとも一方が認められる。
×は、ラウンド感、ツヤボケの少なくとも一方の低下が著しい。
【0082】
(注10)意匠性:塗膜の外観を目視評価した。評価基準は、次の通りである。
Aは、塗面に、メタリック調又はパール調の奥行き感や立体感がある。
Bは、塗面に、メタリック調又はパール調の奥行き感や立体感がない。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の塗膜形成方法は、ステンレス鋼素地上に、塗膜硬度、耐衝撃性、密着性、仕上り性に優れる塗装物品を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸のアルカリ金属塩とメタほう酸のアルカリ金属塩から選ばれる少なくとも1種の金属塩の水溶液又は水分散液(A)の浴に浸漬し通電処理を行って皮膜を形成した後、次いで、該皮膜上に下記のアニオン電着塗料(B)を電着塗装して塗膜を形成することを特徴とするステンレス鋼素地上の皮膜形成方法。
アニオン電着塗料(B):カルボキシル基含有樹脂(b1)、アミノ樹脂(b2)、及びメチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物(b3)の固形分合計100質量部に対して、カルボキシル基含有樹脂(b1)50〜75質量部とアミノ樹脂(b2)5〜25質量部、メチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物(b3)0.1〜25質量部含むアニオン電着塗料
【請求項2】
アニオン電着塗料(B)が、カルボキシル基含有樹脂(b1)とアミノ樹脂(b2)及びメチルアミルケトオキシムブロック化イソホロンジイソシアネート化合物(b3)の固形分合計100質量部に対して、着色顔料及び/又は光輝性顔料を0.1〜30質量部含有する請求項1に記載のステンレス鋼素地上の皮膜形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のステンレス鋼素地上の皮膜形成方法により得られる皮膜で覆われていることを特徴とするステンレス鋼を成形してなる電子機器部品。

【公開番号】特開2010−31320(P2010−31320A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194352(P2008−194352)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】