説明

皮膜用組成物

【課題】植物由来の皮膜基材を用いて、カプセルの皮膜性能を高めることの容易な皮膜用組成物を提供する。
【解決手段】カプセルの皮膜を形成する皮膜用組成物は、皮膜基材、ゲル化剤、水、及び可塑剤を含有する。ゲル化剤の配合量は、皮膜基材の100重量部に対して10〜20重量部である。その皮膜基材は、ヒドロキシプロピル化デキストリン、及び酸化澱粉から構成される。この酸化澱粉の配合量は、ヒドロキシプロピル化デキストリンの100重量部に対して、10〜40重量部である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品、化粧品、医薬品等の分野におけるカプセルの皮膜を形成する皮膜用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カプセルの皮膜基材としては、ゼラチンが広く用いられている。ゼラチンは、牛、豚、魚等を由来とするコラーゲンの加水分解物であり、造膜性及びゲル化性を有した類い希な物質である。すなわちゼラチンは、例えば40重量%程度の高濃度の水溶液であっても流動性に優れるため、造膜性に優れている。従って、ゼラチンを被膜基材とするカプセルは、その内容物を好適に保護することができる。またゼラチンは、温度に応じて可逆的にゾルゲル転移するゲル化性を有しているため、そのゾルゲル転移を利用してカプセルを容易に成形することができる。一方、例えば植物性食品を中心にした食生活や宗教上の理由から、動物由来のゼラチンを使用しないカプセルが求められている。このような実情に鑑みて、植物由来の皮膜原料について、様々な研究がなされている。しかしながら、ゼラチンのような造膜性及びゲル化性を兼ね備えた植物由来の単一物質は未だ見出されていない。そのため、造膜性及びゲル化性を異なる物質により役割分担させることで、ゼラチン様の皮膜を形成する技術が報告されている(特許文献1〜3参照)。特許文献1では、乾燥フィルム組成物において、改質澱粉とイオタカラギーナンとを含有した構成が開示されている。この組成物では、リン酸塩等の緩衝剤を含有させることにより、ゲル強度等を改良している。特許文献2では、カプセル剤皮組成物において、デキストリン類、カッパカラギーナン、及びイオタカラギーナンを含む構成が開示されている。特許文献3では、非ゼラチンカプセル外皮組成物において、イオタカラギーナン、カッパカラギーナン、充填剤、可塑剤等を含む構成が開示されている。
【特許文献1】特表2003−504326号公報
【特許文献2】特開2005−176744号公報
【特許文献3】特表2005−529066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の組成物では、ゲル強度を高めるために緩衝剤が含有されている。ところで、緩衝剤はそのキレート作用により、体内のカルシウム等を排出してしまうという性質があるため、健康食品に使用することは、昨今の消費者ニーズからすると、緩衝剤の使用は必ずしも好ましいとは言えない。なお、特許文献1は、デキストリンについて、フィルム形成能を高める観点において有用ではない旨開示する。特許文献2及び3では、ゲルマトリックスの形成能を補助するために、イオタカラギーナン及びカッパカラギーナンを必須成分としているため、ゲル化剤の選択範囲が狭くなるとともに原料の入手が困難となる。すなわち、カラギーナンは、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、及びラムダカラギーナンの3成分を含有する混合物であり、そのカラギーナンから2種以上のカラギーナンを特定の配合比率で使用するには、より精製度の高いカラギーナンを複数使用せざるを得なくなるという問題があった。このように植物由来の皮膜基材を用いた皮膜用組成物は、未だ改善の余地を残している。なお、特許文献3は、ヒドロキシプロピル化デキストリンについて開示しない。また、特許文献3には、ヒドロキシプロピル化デキストリンと酸化澱粉との組み合わせについて開示乃至示唆すらない。
【0004】
本発明は、植物由来の皮膜基材を用いた皮膜用組成物において、特定の組成の皮膜基材により、カプセルの皮膜性能を相乗的に高めることを見出すことでなされたものである。本発明の目的は、植物由来の皮膜基材を用いて、カプセルの皮膜性能を高めることの容易な皮膜用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために請求項1に記載の発明の皮膜用組成物では、カプセルの皮膜を形成する皮膜用組成物において、皮膜基材、ゲル化剤、水、及び可塑剤を含有し、前記ゲル化剤の配合量は、前記皮膜基材の100重量部に対して10〜20重量部であり、前記皮膜基材は、ヒドロキシプロピル化デキストリン、及び酸化澱粉からなり、当該酸化澱粉の配合量を、前記ヒドロキシプロピル化デキストリンの100重量部に対して、10〜40重量部としたことを要旨とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の皮膜用組成物において、前記ゲル化剤が、加工ユーケマ藻類及びファーセルランの少なくとも一方を含むことを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、植物由来の皮膜基材を用いて、カプセルの皮膜性能を高めることが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態の皮膜用組成物は、皮膜基材、ゲル化剤、水、及び可塑剤を含有する。ゲル化剤の配合量は、皮膜基材の100重量部に対して10〜20重量部である。この皮膜基材は、ヒドロキシプロピル化デキストリン、及び酸化澱粉からなり、この酸化澱粉の配合量は、ヒドロキシプロピル化デキストリンの100重量部に対して、10〜40重量部である。この皮膜用組成物は、カプセルの皮膜を形成するものである。
【0009】
皮膜基材を構成するヒドロキシプロピル化デキストリンとしては、デキストリンを酵素により変性して得られるもの、又は、化学的に分解して得られるものを使用することができる。デキストリンを酵素により変性して得られるヒドロキシプロピル化デキストリンは、酵素変性デキストリンとも呼ばれている。酵素変性デキストリンは、精製澱粉を、エーテル化した後、酵素により加水分解することで得られる。こうした酵素による加水分解としては、アミラーゼを用いた高温液化法が挙げられる。この高温液化法により加水分解されたデキストリンは、噴霧乾燥されることにより、酵素変性デキストリンが得られる。酵素によるデキストリンの変性は、化学的な変性に比べて温和な条件で行われるため、より均質なヒドロキシプロピル化が行われる。このため、酵素変性デキストリンは、冷水に対しても溶解性が優れることから取り扱いが容易であり、得られた水溶液は低粘度であることから皮膜の成形性に優れる皮膜用組成物が提供される。さらに酵素変性デキストリンは消化性に優れているため、カプセル皮膜の原料として好適である。このような観点から、ヒドロキシプロピル化デキストリンとして、酵素変性デキストリンを用いることが好適である。
【0010】
また、ヒドロキシプロピル化デキストリンとしては、デキストリンとしての数平均分子量が10000〜90000であることが好ましい。こうしたヒドロキシプロピル化デキストリンは、溶液安定性に優れるため、ゲル化剤によるゲルマトリックスの形成を阻害し難い。こうしたゲルマトリックスの形成を阻害し難い性質は、通常のデキストリンやシクロデキストリンでは十分に得られない。これに対して、ヒドロキシプロピル化デキストリンの配合は、ゲル化剤によるゲルマトリックスの均質化が図られると推測され、より安定したゲルが形成される。さらに、ヒドロキシプロピル化デキストリンのデキストリンとしての数平均分子量が上記範囲であると、ゲルの安定化が顕著となる結果、皮膜性能が顕著に高まる。
【0011】
皮膜基材を構成する酸化澱粉は、澱粉を酸化剤で酸化処理することにより得られる。この酸化処理は、澱粉の非結晶部分において、カルボキシル基及びカルボニル基を生成するとともに澱粉の分子鎖を解重合させると推測される。なお、酸化剤としては例えば次亜塩素酸ナトリウムが使用される。このような酸化澱粉の水への溶解時には、分子の会合が阻害されることにより、溶液の低粘度化が促進される結果、皮膜の成形性に優れる皮膜用組成物を得ることができる。また、酸化澱粉の溶液は老化し難いため、取り扱い性に優れる。また、酸化澱粉を用いたカプセルでは、皮膜の吸湿が抑制されるため、カプセル皮膜のべたつき、カプセル同士の密着等が抑制される。特に、ソフトカプセルは、カプセル皮膜のべたつきにより、カプセル同士が密着したり、カプセル剤の包装容器にカプセルが付着したりする不具合が発生し易い。本実施形態の皮膜用組成物は、ソフトカプセルの密着又は付着を抑制するという観点から、ソフトカプセル皮膜用として好適である。
【0012】
酸化澱粉の配合量は、ヒドロキシプロピル化デキストリンの100重量部に対して、10〜40重量部、好ましくは20〜40重量部、さらに好ましくは30〜40重量部である。この酸化澱粉の配合量が上記100重量部に対して、10重量部未満の場合、カプセル皮膜の吸湿を抑制することができない。一方、酸化澱粉の配合量が上記100重量部に対して、40重量部を超えると、皮膜強度が得られずにカプセル化することができない。
【0013】
ゲル化剤は、皮膜用組成物にゲル化能を付与するために配合される。ゲル化剤としては、特に限定されないが、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、加工ユーケマ藻類、ファーセルラン等が挙げられる。ゲル化剤の中でも、カプセルの服用時における崩壊性が確保され易いという観点から、イオタカラギーナン、加工ユーケマ藻類、及びファーセルランから選ばれる少なくとも一種が好適である。さらに、精製工程を簡略化することができるため、入手が容易であるという観点から、加工ユーケマ藻類及びファーセルランの少なくとも一方が好適である。
【0014】
加工ユーケマ藻類は、「食品添加物公定書解説書」、第7版、株式会社廣川書店発行、平成11年6月発行、D−241〜245に記載されているものであり、ミリン科キリンサイ属の全藻を、熱時水酸化カリウムで処理した後中和し、乾燥後粉砕して得られたものである。
【0015】
ファーセルラン(Furcellaran)は、紅藻類のススカケベニ科フルセラリアの葉を水で抽出して得られた増粘多糖類で、寒天とカラギーナンの中間的な性質のゲルを形成する。
【0016】
ゲル化剤の配合量は、上記皮膜基材の100重量部に対して、10〜20重量部、好ましくは15〜20重量部である。ゲル化剤の配合量が上記皮膜基材の100重量部に対して10重量部未満の場合、内容物の充填に際して、内容物の漏れが頻繁に発生する。一方、ゲル化剤の配合量が上記皮膜基材の100重量部に対して20重量部を超える場合、皮膜強度が得られずにカプセル化することができない。
【0017】
皮膜用組成物には、水及び可塑剤が含有される。水の配合量は、特に限定されないが、例えば上記皮膜基材の100重量部に対して100〜200重量部程度である。可塑剤の配合量は、特に限定されないが、例えば、上記皮膜基材の100重量部に対して30〜50重量部程度である。なお可塑剤としては、グリセリン、ソルビトール、マルチトール等が挙げられ、グリセリンが好適である。皮膜用組成物には、必要に応じて澱粉、デキストリン、着色剤等を配合することもできる。
【0018】
このように構成された皮膜用組成物より、内容物が充填されたハードカプセル剤又はソフトカプセル剤が製造される。例えばソフトカプセル剤は、皮膜用組成物から形成した皮膜を、ロータリーダイ法等により、内容物を充填するとともにソフトカプセルを成形することにより製造される。カプセルに充填される成分としては、栄養補助成分、健康食品成分、薬効成分等の種々の有効成分が挙げられる。そしてカプセルは、瓶詰め包装、PTP包装、パウチ等の包装形態で包装されて保存される。
【0019】
以上詳述した本実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1) ヒドロキシプロピル化デキストリンに対して所定量の酸化澱粉を配合している。このため、カプセル皮膜の吸湿が抑制されることで、カプセル同士の密着、包装容器に対するカプセルの付着等を抑制することができる。従って、瓶等の包装容器に収容して保存されていたカプセル剤を取り出す際に、カプセルの密着又は付着が抑制されることで、カプセル剤を個々に取り出すことが容易である。
【0020】
また、ヒドロキシプロピル化デキストリン及び酸化澱粉に対して、所定量のゲル化剤を配合しているため、カプセル皮膜の強度が十分に得られる。このため、内容物の充填工程において、内容物の漏れが発生する発生率を顕著に低減することができる結果、カプセル剤の収率を顕著に高めることができる。従って、得られたカプセル剤の品質について安定化が図られるため、カプセル剤の生産性を高めることができる。
【0021】
このように本実施形態の皮膜用組成物によれば、植物由来の皮膜基材を用いて、カプセルの皮膜性能を高めることが容易である。
また従来では、植物由来の皮膜基材を用いて皮膜強度を高めるために、緩衝剤又は特定のゲル化剤の配合が不可欠とされていた。本実施形態の皮膜用組成物によれば、例えば緩衝剤等を使用しなくても、皮膜性能を高めることができる。また、上述した皮膜基材により、ゲル化剤として例えばイオタカラギーナンを単独で配合した場合であっても、カプセルの皮膜性能を高めることが容易である。
【0022】
こうした皮膜用組成物から得られたカプセルは、透明性に優れるとともに、そのカプセルを摂取した際に体内で速やかに崩壊する性質を発揮させることもできる。
(2) 従来、加工ユーケマ藻類及びファーセルランといった半精製品は、カッパカラギーナン等の精製品に比べてゲル化能が低いため、カプセル皮膜の強度が十分に得られなかった。本発明者らは、特定の組成の皮膜基材によって、カプセル皮膜の強度等を高めることを見出している。このため、本実施形態の皮膜用組成物では、ゲル化剤として、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン等の精製度が高く、ゲル化能に優れた成分だけではなく、従来では精製度の低いためゲル化能が乏しく使用することができなかった加工ユーケマ藻類及びファーセルランであっても、皮膜性能を高めることが容易である。このように入手の容易なゲル化剤を用いることで、カプセルを安定して供給することができる。さらに、加工ユーケマ藻類及びファーセルランのように、天然物により近い原料を使用することができるため、カプセル剤の消費者は安心して服用することができる。
【0023】
次に、上記実施形態から把握できる技術的思想について以下に記載する。
・ 前記ヒドロキシプロピル化デキストリンとして、デキストリンとしての数平均分子量が10000〜90000であるヒドロキシプロピル化デキストリンを含む前記皮膜用組成物。この場合、ゲルの安定化が顕著となる結果、皮膜性能が顕著に高まる。
【0024】
・ 前記カプセルはソフトカプセルであることを特徴とする前記皮膜用組成物。ソフトカプセルは、包装容器に付着したり、カプセル同士が密着したりするという不具合が発生し易い。皮膜基材には、酸化澱粉が配合されているため、そうした付着又は密着を抑制することができる。
【0025】
・ 緩衝剤を含まないことを特徴とする前記皮膜用組成物。緩衝剤のキレート作用により、体内のカルシウム等が排出されるという現象を抑制することができる。
【実施例】
【0026】
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1〜5、比較例1〜4)
表1に示す各成分を混合することにより、各例の皮膜用組成物を調製した。なお、以下の表中において、「HP化DEX」はヒドロキシプロピル化デキストリンを示すとともに、各成分の配合量を示す数値は「重量部」を単位として示している。また、ヒドロキシプロピル化デキストリンは、デキストリンとしての数平均分子量が25000、デキストリンの数平均分子量は2000、環状デキストリンは、江崎グリコ社製の高度分岐環状デキストリンである「クラスターデキストリン(商品名)」であって、その数平均分子量は400000である。
【0027】
【表1】

各例の皮膜用組成物を用いてロータリーダイ法により、ソフトカプセルを作製した。この結果を表1の「カプセル化」欄にカプセル化が可能な場合を「○」、及び不可能な場合を「×」で示している。実施例1〜5及び比較例1では、カプセル化が可能であるのに対して、比較例2では皮膜が脆くなり、カプセル化が不可能であった。この結果から、酸化澱粉の配合量を、ヒドロキシプロピル化デキストリンの100重量部に対して40重量部以下とした場合、皮膜強度が十分に得られることで、カプセル化が可能であることがわかる。
【0028】
また、実施例1〜5、比較例1及び2について、付着防止性の試験を行った。この付着防止性の試験は、まず9号ガラス瓶中にカプセル50球を入れ、50℃の恒温槽に密栓状態で7日間保管する。その後、恒温槽からガラス瓶を取り出し、常温(約20℃)まで冷却した後、5cmの高さから机上にガラス瓶を落下させる。このときの落下球数をカウントし、その落下級数を全球数(50球)で除した値を算出してその値を試験結果として、表1の「付着防止性」欄に併記した。すなわち、付着防止性の試験結果が100に近いほど、カプセルの付着を防止することができる。表1に示されるように、実施例1〜5では「60」以上の値を示しているのに対して、比較例1では「0」である。この結果に示されるように、酸化澱粉の配合量がヒドロキシプロピル化デキストリンの100重量部に対して10重量部以上であれば、カプセルの付着を十分に低減することができる。
【0029】
さらに、実施例2〜5では、付着防止性の試験結果が「90」以上の値を示していることから、酸化澱粉の配合量がヒドロキシプロピル化デキストリンの100重量部に対して20〜40重量部の場合には、カプセルの付着防止性についてより優れた結果が得られる。
【0030】
なお、比較例3及び4はヒドロキシプロピル化デキストリンを配合せずに、デキストリン又は環状デキストリンを配合している。比較例3では、カプセルが吸湿し易く、カプセルの付着が防止できないことに加えて、カプセル皮膜に亀裂が生じるといった不具合も発生した。比較例4では、ゲルマトリックスの形成が不十分であり、カプセル化が不可能であった。
【0031】
(実施例6〜12、比較例5及び6)
表2に示す各成分を混合することにより、各例の皮膜用組成物を調製した。
【0032】
【表2】

各例の皮膜用組成物を用いてロータリーダイ法により、ソフトカプセルを作製した。実施例6〜12及び比較例5では、カプセル化が可能であるのに対して、比較例6では皮膜用組成物の粘度が高まりすぎるため、カプセルの成形性が不十分であり、カプセル化が不可能であった。この結果に示されるように、ゲル化剤の配合量を皮膜基材の100重量部に対して20重量部以下とした場合、カプセル化が可能である。
【0033】
また、実施例6〜12及び比較例5の皮膜用組成物を用いて、内容物として油300mgを内包したカプセル剤を同じ条件で1時間連続して製造した。このとき、内容物の漏れが確認されないカプセルの割合を表2の「カプセル収率」欄に示している。この結果から明らかなように、実施例6〜12では収率60%以上であるのに対して、比較例5では皮膜の封止性が得られずに、内容物の漏れが連続して発生した。この結果に示されるように、ゲル化剤の配合量が皮膜基材の100重量部に対して10重量部以上とした場合、カプセル剤の収率を高めることができる。特に、酸化澱粉の配合量をヒドロキシプロピル化デキストリンの100重量部に対して30重量部以上とした場合、カプセル剤の収率を顕著に高めることができる。
【0034】
(実施例13及び14)
表3に示す各成分を混合することにより、各例の皮膜用組成物を調製した。
【0035】
【表3】

実施例13及び14の皮膜用組成物について、上記実施例6〜8と同様にしてカプセル収率を測定した。表3の結果から明らかなように、ゲル化剤として加工ユーケマ藻類又はファーセルランを配合した場合においても、高収率でカプセル剤を製造することができる。
【0036】
(実施例15)
HP化DEX30重量部、酸化澱粉10重量部、イオタカラギーナン7.5重量部、水50重量部、及びグリセリン15重量部からなる皮膜用組成物を用いて、ロータリーダイ法によりソフトカプセルを作製した。
【0037】
(比較例7)
ゼラチン100重量部、グリセリン50重量部、及び水100重量部からなる皮膜用組成物を用いて、実施例10と同様にしてソフトカプセルを作製した。
【0038】
(比較例8)
比較例8は、市販品のソフトカプセル(カーディナルヘルス社製)である。
(比較例9)
比較例9は、市販品のソフトカプセル(三生医薬社製)である。
【0039】
<カプセルの性能評価>
実施例15及び比較例7〜9のソフトカプセルについて、硬度測定、崩壊開始時間の測定及び付着防止性の試験を行った結果を表4に示している。
【0040】
硬度測定は、木屋式硬度計(最大荷重294N)を用いて行った。まず、カプセルの長さ方向とプランジャーの移動する方向とが平行になるように、試料台にカプセルをセットした。次いで、一定速度でプランジャーを下げることで、カプセルが破壊されたときの硬度を測定した。
【0041】
崩壊開始時間は、「第十四改正日本薬局方」、58.破壊試験法、(4)カプセル剤に準拠してカプセル皮膜の崩壊が開始されるまでの時間を測定した。
付着防止性は、上記実施例1〜5と同様にして評価した。
【0042】
【表4】

表4の結果から明らかなように、実施例15のソフトカプセルでは、比較例7〜9のソフトカプセルの性能と同等又はそれ以上の性能を発揮することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプセルの皮膜を形成する皮膜用組成物において、
皮膜基材、ゲル化剤、水、及び可塑剤を含有し、
前記ゲル化剤の配合量は、前記皮膜基材の100重量部に対して10〜20重量部であり、
前記皮膜基材は、ヒドロキシプロピル化デキストリン、及び酸化澱粉からなり、
当該酸化澱粉の配合量を、前記ヒドロキシプロピル化デキストリンの100重量部に対して、10〜40重量部としたことを特徴とする皮膜用組成物。
【請求項2】
前記ゲル化剤が、加工ユーケマ藻類及びファーセルランの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の皮膜用組成物。

【公開番号】特開2008−88111(P2008−88111A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270872(P2006−270872)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(503315676)中日本カプセル 株式会社 (9)
【Fターム(参考)】