説明

皮革印刷物

【課題】積層物全体の柔軟性が不足せず、耐折り曲げ性および耐揉み性が良好で、しかも耐摩耗性を向上させた皮革印刷物を提供する。
【解決手段】皮革と;前記皮革表面上に形成された、伸び率400〜800%のバインダー樹脂(1)を含むベースコート層と;前記ベースコート層上に形成された、伸び率300〜900%のバインダー樹脂(2)を含むトップコート層と;を含み、前記ベースコート層に、伸び率80%以上のウレタンアクリレートを含む紫外線硬化型インクによる画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮革表面に印刷画像が形成された皮革印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表面に意匠を付与した皮革の需要が高まっており、印刷による画像が形成された皮革着色物の開発も進められている。たとえば、アニオン性のベースコート層上に、印刷画像を定着させるためのカチオン性のインク受容層を設け、その上にトップコート層を設けた皮革着色物が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−31467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公知の皮革着色物は、耐摩耗性の向上を一つの目的とした構成であるが、発明者らの検討によると、積層物全体の柔軟性が不足し、耐折り曲げ性および耐揉み性において充分な性能が得られないことが判明した。
そこで本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、皮革と;前記皮革表面上に形成された、伸び率400〜800%のバインダー樹脂(1)を含むベースコート層と;前記ベースコート層上に形成された、伸び率300〜900%のバインダー樹脂(2)を含むトップコート層と;を含み、前記ベースコート層に、伸び率80%以上のウレタンアクリレートを含む紫外線硬化型インクによる画像が形成されていることを特徴とする皮革印刷物に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、ベースコート層、トップコート層、および紫外線硬化型インクのそれぞれが、特定の伸び率を有する樹脂を含む構成であるため、皮革への追従性を高め、皮革印刷物の耐折り曲げ性と耐揉み性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
用いられる皮革は、特に種類等が限定されることはなく、天然皮革でも人工皮革でも、いずれであってもよい。天然皮革の場合は、表面バフ処理などの画像形成以外の任意の処理が施されていてもよい。皮革の伸び率(破断時)は、40%以上であることが好ましい。
本発明において皮革や樹脂の「伸び率」とは、引っ張り試験器((株)エー・アンド・デイ製テンシロン万能試験機)により測定される値を意味する。
【0008】
天然皮革を製造する工程は、皮から革として不要な組織や化学的作用および物理的・機械的処理によって除去するための準備工程、クロム鞣剤や植物タンニンなどを用いて「皮」を「革」に不可逆的に変えるなめし工程、色付けや風合いを付与する再鞣・染色・加脂工程、革表面を平坦にし、革と薬品の結合強化、乾燥、柔軟性の調整等を行なう仕上げ準備工程に分けられる。
これらの工程において、個々の条件および工程の組み合わせなどには自由度があり、各工程で行なう操作自体は、ほぼ定まっており、公知の工程である。
【0009】
ベースコート層は、皮革塗膜形成層の中で最も厚みのある層であり、皮革表面の隠蔽効果が最も高いことが特徴である。さらにベースコート層は、皮革表面の凹凸を平滑にし、表面を均一化する働きがあり、型押し加工を行なう際の型付性の向上および次塗装工程時に起こる吸い込み等による色むらの発生を軽減する働きもある。
【0010】
このベースコート層は、伸び率400〜800%のバインダー樹脂(1)を含むことを特徴とする。このバインダー樹脂(1)が塗膜形成の主成分となり、必要に応じて、助剤や架橋剤を加えても良い。バインダー樹脂(1)の伸び率は、500〜700%であることが一層好ましい。ここで、バインダー樹脂(1)は複数の樹脂の混合物であってもよく、その場合は、樹脂混合物の伸び率で規定することとする。
【0011】
上記特定の伸び率を有するバインダー樹脂(1)としては、ウレタン樹脂を用いることが好ましい。ウレタン樹脂とアクリル樹脂との混合物、または、ウレタン樹脂とアクリル系ポリマーとの共重合体を用いることも好ましい。
ウレタン樹脂としては、市販品を使用することができ、複数種を組み合わせて使用してもよい。このウレタン樹脂および後述するその他のバインダー樹脂は、環境保護の観点から、水溶性樹脂または水分散性樹脂であることが好ましい。
【0012】
バインダー樹脂(1)のベースコート層中の含有量は、塗膜形成の観点から、40〜80質量%であることが好ましく、50〜70質量%であることがより好ましい。
【0013】
ベースコート層は、上記ウレタン樹脂以外の樹脂をバインダー樹脂としてさらに含んでいてもよい。併用できるその他のバインダー樹脂としては、特に限定されず、たとえば(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、(メタ)アクリル−酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、(メタ)アクリロニトリル−ブタジエン系樹脂、ブタジエン−(メタ)アクリレート系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂を例示できる。これらの樹脂は、複数種を組み合わせて使用してもよい。併用するバインダー樹脂の配合量は、上記ウレタン樹脂の効果を阻害しないために、ベースコート層中に、20質量%以下であることが好ましい。
【0014】
上記のバインダー樹脂(1)は、必要に応じて架橋剤と共に用いることも可能である。この場合、使用する樹脂に適した架橋剤を適宜選択して配合すればよく、その種類および量は特に限定はされない。
【0015】
ベースコート層は、その表面に、紫外線硬化型インク(UVインク)を用いて形成された任意の画像を備える。この画像は、ベースコート層上に印刷層(画像層)を形成する。
UVインクは、光重合性オリゴマーとして、伸び率80%以上のウレタンアクリレートを含むことを特徴とする。このウレタンアクリレートは、質量平均分子量4000以上であって1分子中に2〜3個のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するものであることがさらに好ましい。
【0016】
ウレタンアクリレートの伸び率は、ウレタンアクリレート80質量%、ヘキサンジオールジアクリレート20質量%、および微量の光重合開始剤(イルガキュア907、チバスペシャリティケミカルズ(株))を含む組成物を用いて5mm厚のフィルムを作成し、そのフィルムの硬化後の伸び率をもって、ウレタンアクリレートの伸び率に代えるものとする。
【0017】
上記の特性を備え好ましく使用できるウレタンアクリレートとしては、たとえば、日本合成化学工業株式会社製UV−3200B、UV−2000B、UV−3000B、UV−3700B;ダイセルサイテック株式会社製EBECRYL8804;新中村化学工業株式会社製NKオリゴU−200AX、U−340A;東亞合成株式会社製アロニックスM−1310;サートマー・ジャパン株式会社製CN959、CN961、CN962、CN965、CN966、CN973、CN996、CN9001、CN9002、CN9004、CN9009、CN9014、CN9178、CN9782、CN9893等の市販品が挙げられる。前記の他、モノマー希釈タイプとして市販されているウレタンアクリレートも使用可能である。
これらのウレタンアクリレートは、それぞれ単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
ウレタンアクリレートのインク中の含有量は、柔軟性とインク粘度調整の観点から、2.5〜25重量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
【0019】
上記ウレタンアクリレート以外のインク成分は、特に限定されず、インクジェット記録法により印刷でき、紫外線の照射によりビヒクルが重合するタイプであればよい。たとえば、上記ウレタンアクリレートの他に、顔料等の着色剤;単官能アクリレート、多官能アクリレート等の光重合性モノマー(反応性希釈剤);および光重合開始剤を含む組成を例示できるが、これに限定されることはない。ウレタンアクリレート以外の、たとえば、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート等の光重合性オリゴマーをさらに含んでいてもよい。
【0020】
上記反応性希釈剤は、皮膚刺激性およびオリゴマーの溶解性の観点から、ジシクロペンテニルエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性アクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のアクリレート系反応性希釈剤であることが好ましく、これらの1種以上を好ましく使用できる。反応性希釈剤の配合量は、インク粘度調整とインク硬化性の観点から、インク中に10〜70質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。
【0021】
より詳細には、たとえば、着色剤1〜30質量%、分子量が4000以上であり1分子中に2〜3個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するウレタンアクリレート5〜20質量%、反応性希釈剤10〜70質量%、および紫外線重合開始剤1〜15質量%を含むインクを好ましい一実施形態として挙げることができる。さらに、フタル酸ジエステル、脂肪族二塩基酸エステル等の可塑剤を含むことも好ましい。
【0022】
トップコート層は、ベースコート層上に形成される層であり、塗膜表面に強度を付与して耐摩耗性を確保し、表面の触感の付与および艶等の外観を調整するために用いられる。このトップコート層は、ベースコート層上に直接形成される場合と、任意の層(たとえば、後述するミドルコート層)を介してベースコート層上に形成される場合とがある。
【0023】
トップコート層は、伸び率300〜900%のバインダー樹脂(2)を含むことを特徴とする。このバインダー樹脂(2)が塗膜形成の主成分となり、必要に応じて、助剤や架橋剤を加えても良い。バインダー樹脂(2)の伸び率は、400〜800%であることがより好ましい。バインダー樹脂(2)も、上記バインダー樹脂(1)と同様に、複数の樹脂の混合物であってもよく、その場合は、樹脂混合物の伸び率で規定することとする。
【0024】
上記特定の伸び率を有するバインダー樹脂(2)としては、ウレタン樹脂を用いることが好ましい。ウレタン樹脂とアクリル樹脂との混合物、または、ウレタン樹脂とアクリル系ポリマーとの共重合体を用いることも好ましい。
ウレタン樹脂としては、市販品を使用することができ、複数種を組み合わせて使用してもよい。このウレタン樹脂および後述するその他のバインダー樹脂は、環境保護の観点から、水溶性樹脂または水分散性樹脂であることが好ましい。さらに、ベースコート層上に形成された画像の視認性を高めるため、透明なトップコート層を形成できるバインダー樹脂を用いることが好ましい。
【0025】
バインダー樹脂(2)のトップコート層中の含有量は、一般性能の観点から、40〜80質量%であることが好ましく、50〜70質量%であることがより好ましい。
【0026】
トップコート層は、上記ウレタン樹脂以外の樹脂をバインダー樹脂としてさらに含んでいてもよい。併用できるその他のバインダー樹脂は、上記ベースコート層に使用できる樹脂として例示したものと同様であり、複数種を組み合わせて使用してもよい。併用するバインダー樹脂の配合量は、上記ウレタン樹脂の効果を阻害しないために、トップコート層中に、20質量%以下であることが好ましい。
【0027】
上記のバインダー樹脂(2)は、必要に応じて架橋剤と共に用いることも可能である。この場合、使用する樹脂に適した架橋剤を適宜選択して配合すればよく、その種類および量は特に限定はされない。
【0028】
ベースコート層およびトップコート層は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、各種添加剤を任意に含むことができる。たとえば、充填剤、着色剤(顔料等)、レベリング剤、増粘剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、pH調整剤、消泡剤などが挙げられる。トップコート層には、マット剤や艶消し剤を添加して、光の反射を制御し表面の艶を調整することができる。
【0029】
ベースコート層およびトップコート層は、それぞれの層形成用組成物を調製し、それを塗布することで好ましく形成できる。各層形成用組成物は、水溶液として調製することが、スプレー塗装またはロール塗装等の塗装方法を用いた際の生産性の観点および環境保護の観点から好ましい。
【0030】
皮革印刷物の製造方法は、皮革表面にベースコート層を形成する工程;ベースコート層表面に紫外線硬化型インクを用いて画像(印刷層)を形成する工程;画像を備えたベースコート層上にさらにトップコート層を形成する工程;を含むことができる。画像形成工程は、任意の印刷機を用いてインクジェット記録法により行なわれることが好ましい。
【0031】
ベースコート層およびトップコート層の形成方法(塗布方法)は、特に限定されず、ロール塗装またはスプレー塗装など、公知の方法により行なわれる。塗装後は乾燥処理を行なうことが好ましく、たとえば80℃以上の熱風乾燥により好ましく実施できる。塗装は、必要に応じて2度塗りを行なってもよく、その場合は1回目の塗装作業の後に、いったん乾燥処理を行なうことが好ましい。
ベースコート層をスプレー塗装またはロール塗装で形成した後は、型押し(プレス処理)をして表面にシボ付けすることが好ましい。ただし、型押し(プレス処理)はトップコート層を形成した後に行ってもよい。
【0032】
皮革印刷物は、上記ベースコート層とトップコート層以外の1以上の層を含む構成であってもよい。たとえば、両者の中間に塗膜物性の強化等の目的でミドルコート層を設けてもよいし、トップコート層上にさらに機能性付与または塗膜耐久性向上の目的で第2トップコート層を設けてもよい。ミドルコート層および第2トップコート層は、たとえば、トップコート層と同様の種類の樹脂や各種添加剤を任意に含むものであることが好ましい。
【0033】
ベースコート層上に、インク受容層を設け、このインク受容層に画像を形成するようにしてもよい。この場合、本願発明の「ベースコート層に画像が形成される」の構成は、「ベースコート層上のインク受容層に画像が形成される」との構成を含むものである。このインク受容層には、必要に応じて各種添加剤が含まれることが好ましい。
【0034】
ベースコート層は、乾燥後の塗布量が100〜120g/m程度となるように形成されることが好ましく、膜厚は用途によって自由に変えることができるが、一般的に5〜35μm(乾燥後)程度であることが好ましい。しかし、塗布量も膜厚も、これらの好ましい範囲に限定されることはない。
【0035】
トップコート層(および任意でミドルコート層を設ける場合のミドルコート層または第2トップコート層)は、乾燥後の塗布量が20〜50g/m程度となるように形成されることが好ましく、乾燥後の膜厚は、5〜25μm程度であることが好ましいが、革の用途によってはいずれもこの好ましい範囲に限定されることはない。
皮革表面に形成される積層物(任意に形成される層も含む)全体の膜厚(乾燥後)は、30〜70μm程度であることが好ましい。
【0036】
以下に、本発明を実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、「質量%」を単に「%」、「質量部」を単に「部」と記す。
【実施例】
【0037】
(1)インクの調製
表1に示した組成に従い、各成分を高速撹拌機を用いて充分に混合し、各UVインクを調製した。
使用した成分の詳細は次のとおりである。
顔料:カーボンブラック(三菱化学(株)製MA11)
顔料分散剤:ソルスパース24000(ノヴェオン社製)
多官能モノマー:1,9−ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレート、1,9−NDA)
単官能モノマー:イソボニルアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレート、IB−XA)
ウレタンアクリレート(1):日本合成(株)製UV2000B、分子量25000、官能基数2、伸び率175%
ウレタンアクリレート(2):日本合成(株)製UV3000B、分子量18000、官能基数2、伸び率185%
ウレタンアクリレート(3):ダイセルサイテック(株)製EB230、分子量5000、官能基数2、伸び率83%
ウレタンアクリレート(4):日本合成(株)製UV7000B、分子量3500、官能基数2、伸び率60%
ポリエステルアクリレート:東亞合成(株)製M−8060
重合開始剤:イルガキュア907(チバスペシャリティケミカルズ(株))
増感剤(1):日本化薬(株)製DETX−S
増感剤(2):日本化薬(株)製EPA
可塑剤(1):フタル酸2−エチルヘキシル(大八化学工業(株)製)
可塑剤(2):アジピン酸2−エチルヘキシル(大八化学工業(株)製)
重合禁止剤:和光純薬工業(株)製Q−1301
【0038】
【表1】

【0039】
(2)ベースコート層形成用組成物の調製
表2および表3に示すウレタン樹脂500部、イソシアネート架橋剤(クラリアント社製Aquaren EP-70)10部、充填剤(クラリアント社製Melio Mattpaste C)100部、顔料(クラリアント社製Neosan 2000 White:92.32部、Neosan 2000 Black:0.82部、Neosan 2000 Yellow 01:6.58部、Neosan 2000 Bordeaux:0.25部、Neosan 2000 Blue:0.03部)100部、水200部を混合して、ベースコート層形成用組成物を調製した。
【0040】
ウレタン樹脂(B1)は、Melio Resin A946(クラリアント社製、伸び率1000%)200部とMelio Promul 95.A(クラリアント社製、伸び率500%)300部を混合して、伸び率700%に調整したものである(実施例1〜8、10、比較例1〜3、5)。
ウレタン樹脂(B2)としては、Melio Promul 95.A(同上)を用いた(実施例9)
ウレタン樹脂(B3)は、Melio Resin A946(同上)400部とMelio Promul 95.A(同上)100部を混合して、伸び率900%に調整したものである(比較例4)。
【0041】
(3)トップコート層形成用組成物の調製
表2および表3に示すウレタン樹脂550部、イソシアネート架橋剤(クラリアント社製Aquaren IW80)70部、助剤(クラリアント社製Melio WF-5233)70部、レベリング剤(クラリアント社製Melio LV-03)60部、および水250部を混合して、トップコート層形成用組成物を調製した。
【0042】
ウレタン樹脂(T1)は、Aqualen top D-2018.A(クラリアント社製、伸び率 150%)250部、Melio Resin A946(クラリアント社製、伸び率1000%)100部、およびMelio Promul 95.A(クラリアント社製、伸び率500%)200部を混合して、伸び率430%に調整したものである(実施例1〜9、比較例1〜4)。
ウレタン樹脂(T2)は、Melio Resin A946(同上)300部およびMelio Promul 95.A(同上)250部を混合して、伸び率770%に調整したものである(実施例10)。
ウレタン樹脂(T3)は、Aqualen top D-2018.A(同上)400部、Melio Resin A946(同上)50部、およびMelio Promul 95.A(同上)100部を混合して、伸び率290%に調整したものである(比較例5)。
【0043】
【表2】

【0044】
【表3】

【0045】
(4)サンプルの形成
天然皮革上に上記ベースコート形成用組成物をスプレー塗装後、80℃で10分間乾燥し、さらに常温で3日間乾燥させてベースコート層(厚み32μm)を形成した。得られたベースコート層上に、上記UVインクを用いて、300dpiで3×5cm角のベタ画像を形成し、その後、アイグラフィックス社のメタルハライドランプを用いて130mJ/cmの照射強度で紫外線照射を行ない、上記印刷面のインクを硬化させた。その後、上記トップコート形成用組成物をスプレー塗装後、80℃で10分間乾燥し、さらに常温で3日間乾燥させてトップコート層(厚み15μm)を形成し、試験用サンプルとした。
【0046】
(5)評価
得られたサンプルを用いて、耐折り曲げ性および耐揉み性を、それぞれ次のように評価した。
<耐折り曲げ試験方法>
60mm×90mmの試験片を準備し、その試験片を、−20℃に温度調整された耐寒試験機で90分間冷却後、180度に二つ折りしたときの塗膜の割れの有無を目視観察して、白化も割れも無いものをA、白化のあるものをB、割れの有るものをCとして評価した。
【0047】
<耐揉み試験方法>
耐揉み試験は、JIS L1096に準じて行なった。すなわち、2枚のサンプルを、その層形成面同士が内側になるように重ねて、掴み間隔30mmで1対の掴み具で掴み、この30mmの間隔から掴み具の互いの表面が接触するまで徐々に狭め、接触した時点で加重を9.8Nになるまで加えた。その後、往復速度120回/分、移動距離±25mmで2000回の揉み試験を行なった。
【0048】
試験後の膜の柔軟性、割れ、および剥がれ(内部)の有無を次の基準に従って評価した。すなわち、膜の柔軟性は、目視により塗膜に異常が無いものをA、異常が認められるものをBとした。膜の割れは、目視により割れが見られないものをA、5mm以内の割れが1〜5本認められるものをB、B以上の割れが認められる(5mm以上の割れが認められる、または、5mm以内の割れが6本以上認められる)ものをCとした。膜の剥がれについては、断面観察を行ない、剥離が無く表面の白化も無いものをA、剥離は無いが表面の白化が見られるものをB、剥離が認められるものをCとして評価した。
得られた結果を、表2および表3に示す。
【0049】
表2に示されるように、所定の伸び率を有するバインダー樹脂を用いたベースコート層とトップコート層、および、所定の伸び率を有するウレタンアクリレートを含むインクを用いた実施例では、耐折り曲げ性および耐揉み性に優れた皮革印刷物を形成することができた。さらに、可塑剤を配合したインクを用いた実施例では、低温下での耐折り曲げ性も向上させることができた。
【0050】
より詳細に説明すると、ベースコート層にウレタン樹脂(B1)または(B2)を、インクにウレタンアクリレート(1)〜(3)を、トップコート層にウレタン樹脂(T1)または(T2)を含む実施例1〜10の場合は、−10℃での耐折り曲げ性試験についてはC評価は出るものの、常温での耐折り曲げ性試験および耐揉み性試験についてはA評価またはB評価と好成績であり、耐折り曲げ性および耐揉み性に優れた皮革印刷物を形成することができた。
【0051】
しかし表3に示すように、ベースコート層にウレタン樹脂(B1)を、トップコート層にウレタン樹脂(T1)を含ませても、インクにウレタンアクリレートを含まない比較例1、または、ウレタンアクリレートの変わりにポリエステルアクリレートを含む比較例2、または、伸び率の低いウレタンアクリレート(4)を含む比較例3の場合は、耐折り曲げ性および耐揉み性の悪い皮革印刷物となった。
また、インクにウレタンアクリレート(1)を含んでも、ベースコート層にウレタン樹脂(B3)を含む比較例4、または、トップコート層にウレタン樹脂(T3)を含む比較例5の場合は、耐折り曲げ性および耐揉み性の悪い皮革印刷物となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮革と、
前記皮革表面上に形成された、伸び率400〜800%のバインダー樹脂(1)を含むベースコート層と;
前記ベースコート層上に形成された、伸び率300〜900%のバインダー樹脂(2)を含むトップコート層と
を含み、前記ベースコート層に、伸び率80%以上のウレタンアクリレートを含む紫外線硬化型インクによる画像が形成されていることを特徴とする皮革印刷物。
【請求項2】
前記バインダー樹脂(1)がベースコート層中に40〜80質量%含まれ、前記バインダー樹脂(2)がトップコート層中に40〜80質量%含まれ、かつ、前記ウレタンアクリレートが紫外線硬化型インク中に5〜20質量%含まれる、請求項1記載の皮革印刷物。
【請求項3】
前記ウレタンアクリレートが、質量平均分子量4000以上であって1分子中に2〜3個のアクリロイル基またはメタクリロイル基を有するものである、請求項1または2記載の皮革印刷物。
【請求項4】
前記紫外線硬化型インクは、アクリレート系反応性希釈剤10〜70質量%をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項記載の皮革印刷物。
【請求項5】
前記バインダー樹脂(1)および/またはバインダー樹脂(2)がウレタン樹脂、またはウレタン樹脂とアクリル樹脂との混合物である、請求項1〜4のいずれか1項記載の皮革印刷物。
【請求項6】
前記紫外線硬化型インクが、着色剤1〜30質量%、分子量が4000以上であり1分子中に2〜3個のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有するウレタンアクリレート5〜20質量%、反応性希釈剤10〜70質量%、および紫外線重合開始剤1〜15質量%を含むインクである、請求項1〜5のいずれか1項記載の皮革印刷物。