説明

皮革用表面仕上げ剤およびそれを用いた皮革

【課題】有機溶剤を実質上含まず、塗工適性に優れ、高い耐摩耗性を皮革に付与することのできる水性樹脂組成物からなる皮革用表面仕上げ剤およびそれを用いた皮革を提供する。
【解決手段】水性ポリウレタン樹脂(A)100質量部、ポリイソシアネート系架橋剤(B)40〜100質量部、シリコーン系化合物(C)5〜25質量部、およびフィラー(D)5〜120質量部を含有する水性樹脂組成物からなることを特徴とする皮革用表面仕上げ剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機溶剤を実質上含まず、塗工適性に優れ、皮革の耐摩耗性を向上することのできる水性樹脂組成物からなる皮革用表面仕上げ剤およびそれを用いた皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の人工皮革や合成皮革に用いる樹脂組成物は、造膜性を良好にするため、有機溶剤を用いた溶剤型のものが主流であった。しかしながら、この溶剤型の樹脂組成物を用いた場合、乾燥工程で有機溶剤が揮散し、そのほとんどが大気中に放出されるため、環境を悪化させていた。また、有機溶剤が揮散するため作業環境も良好ではなく、作業者の健康が懸念されている。さらに、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の沸点の高い有機溶剤を用いた場合、乾燥後もその一部が人工皮革や合成皮革中に残留し、その残留溶剤の人体への影響が懸念されている。この問題を解決する方法として、有機溶剤を実質上含まない水性樹脂組成物を用いた人工皮革や合成皮革の開発が進められている。
【0003】
また、水性樹脂組成物を用いた人工皮革においても、溶剤型の樹脂組成物を用いた人工皮革と同様に、スポーツ靴、衣料、家具等の用途では、柔軟性とともに、高い摩耗強さ(テーバー摩耗性)が求められる。しかし、水性樹脂組成物を用いた人工皮革は、溶剤型の樹脂組成物を用いた人工皮革に比べ、柔軟性に乏しく、テーバー摩耗性が劣るという問題があった。これは、水性樹脂組成物を用いた人工皮革は、造膜不良が発生しやすく樹脂皮膜が脆弱なため、表面屈曲時にクラックが発生したり、摩耗時に樹脂皮膜が脱落したりするためと考えられる。
【0004】
上記問題を解決するものとして、少なくとも一種のヒドロキシル基含有ポリエステル分散液、実質的にヒドロキシル基またはアミノ基を含まない水性ウレタン、およびポリイソシアネートを含有する水性コーティング組成物が提案されているが、この樹脂組成物においても耐摩耗性が充分ではなかった(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、酸価が5〜40であるポリウレタン樹脂で、かつ乳化剤を含有しない水性ポリウレタン樹脂分散体と架橋剤を含有する繊維積層体表面層形成用水性表面仕上げ剤が提案されている。しかしながら、この樹脂組成物も耐摩耗性が充分ではなかった。(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
さらには、水性分散されたヒドロキシル基含有ポリウレタンと、水分散性ポリイソシアネートとの二成分系の水性ポリウレタン被覆組成物が提案されているが、耐摩耗性が充分でなかった。また、レベリング性、あるいは造膜性を確保するために、N−メチルピロリドン等の有機溶剤を使用しており、この有機溶剤の人体への影響が懸念され、環境的にも問題があった(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
そこで、水性樹脂組成物を用いて製造された人工皮革等の耐摩耗性を向上することができ、かつ実質的に有機溶剤を含まない水性樹脂組成物からなる皮革用表面仕上げ剤が求められていた。
【特許文献1】特開平9−157585号公報
【特許文献2】特開2003−119677号公報
【特許文献3】特開平4−233983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、有機溶剤を実質上含まず、塗工適性に優れ、高い耐摩耗性を皮革に付与することのできる水性樹脂組成物からなる皮革用表面仕上げ剤およびそれを用いた皮革を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、水性ポリウレタン樹脂に対して大過剰のポリイソシアネート系架橋剤およびシリコーン系化合物を配合し、さらには、有機または無機フィラーを配合することで、有機溶剤を実質的に使用せずに、塗工適性に優れ、高い耐摩耗性を皮革に付与することできる水性樹脂組成物からなる皮革用表面仕上げ剤を得られることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、水性ポリウレタン樹脂(A)100質量部、ポリイソシアネート系架橋剤(B)40〜100質量部、シリコーン系化合物(C)5〜25質量部、およびフィラー(D)5〜120質量部を含有する水性樹脂組成物からなることを特徴とする皮革用表面仕上げ剤およびそれを用いた皮革を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の皮革用表面仕上げ剤は、有機溶剤を実質上含まないため、環境に対する負荷が少ない優れた特徴を有する。また、従来の水系樹脂組成物では得られなかった造膜性に優れた塗膜を形成することができるため、耐摩耗性に優れることから、環境対応型の車両シート、スポーツ靴、衣料、家具等の用途に用いる皮革に最適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で用いる水性ポリウレタン樹脂(A)は、後述するポリイソシアネート系架橋剤(B)と架橋することができる活性水素を有し、かつ水性媒体中に溶解または分散することができる親水基を有するものであれば、特に限定なしに用いることができる。このような水性ポリウレタン樹脂(A)としては、例えば、ポリカーボネート系、ポリエーテル系、ポリエステル系のものが挙げられる。また、高い耐摩耗性を要求される車両シート、家具等の用途にはポリカーボネート系が好ましく、柔らかい風合いが重視されるスポーツ靴等の用途にはポリエーテル系が好ましい。さらに、水性ポリウレタン樹脂(A)として、シリコーン化合物で変性したものも用いることができる。
【0013】
前記水性ポリウレタン樹脂(A)は、活性水素を有する化合物(a−1)、少なくとも1つの活性水素と親水基とを有する化合物(a−2)およびイソシアネート基を有する化合物(a−3)を反応させることにより得られる。また、前記ポリイソシアネート系架橋剤(B)と架橋することができる活性水素は、これらの化合物の反応後も活性水素を有する官能基を残す、または導入することで得られ、水性媒体中に溶解または分散することができる親水基も同様に、これらの化合物の反応後も親水基を残す、または導入することで得られる。
【0014】
前記活性水素を有する化合物(a−1)の官能基としては、例えば、水酸基、フェノール性水酸基、アミノ基、メルカプト基等が挙げられる。これらの中でも、水酸基、カルボキシル基、アミノ基が好ましい。また、活性水素を有する化合物は、これらの官能基を1分子中に2個以上有しているものが好ましい。
【0015】
前記活性水素を有する化合物(a−1)としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノンおよびそれらのアルキレンオキシド付加物、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ペンタエリスリトール等の比較的低分子量のポリオールが挙げられる。
【0016】
また、上記以外の活性水素を有する化合物(a−1)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリアミン等が挙げられる。これらの活性水素を有する化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0017】
前記ポリエステルポリオールは、ジオール化合物、ジカルボン酸化合物、ヒドロキシカルボン酸化合物等の脱水縮合反応、ε−カプロラクトン等の環状エステル化合物の開環重合反応、およびこれらの反応によって得られるポリエステルを共重合させることによって得られる。このポリエステルポリオールの原料となるジオール化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン、およびこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0018】
また、前記ポリエステルポリオールの原料となるジカルボン酸化合物としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−p,p’−ジカルボン酸等が挙げられる。
【0019】
さらに、前記ポリエステルポリオールの原料となるヒドロキシカルボン酸化合物としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、p−(2−ヒドロキシエトキシ)安息香酸等が挙げられる。
【0020】
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ショ糖、アコニット糖、フェミメリット酸、燐酸、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリイソプロパノールアミン、ピロガロール、ジヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフタール酸、1,2,3−プロパントリチオール等の活性水素を2個以上有する化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン、シクロフェキシレン等の環状エーテル化合物を付加重合したもの、または、前記環状エーテル化合物をカチオン触媒、プロトン酸、ルイス酸等を触媒として開環重合したものが挙げられる。
【0021】
前記ポリカーボネートポリオールは、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等のジオール化合物とジフェニルカーボネート、ホスゲンとを反応させることによって得られる。
【0022】
前記ポリアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’−ジシクロフェキシルメタンジアミン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロフェキシルメタンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,2−プロパンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヒドラジン等が挙げられる。
【0023】
前記の少なくとも1つの活性水素と親水基とを有する化合物(a−2)としては、少なくとも1つの前述した活性水素と、親水基として、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基およびその塩を有する化合物、アルキレンオキシドの繰り返し単位を有するノニオン性親水基等とを有する化合物が挙げられる。これらの少なくとも1つの活性水素と親水基とを有する化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0024】
親水性基としてカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フタル酸、アラニン、アミノ酪酸、アミノカプロン酸、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン等のカルボキシル基と、水酸基またはアミノ基とを有する化合物、もしくはジカルボン酸化合物が挙げられる。
【0025】
また、親水性基としてスルホン酸基を有する化合物としては、例えば、2−オキシエタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホコハク酸、5−スルホイソフタル酸、スルファニル酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、2,4−ジアミノトルエン−5−スルホン酸等のスルホン酸基と、水酸基、カルボキシル基またはアミノ基とを有する化合物、もしくはジスルホン酸化合物が挙げられる。
【0026】
さらに、親水性基としてノニオン性親水基を有する化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、エチレンオキサイドとポリブチレンオキサイドとの共重合体、エチレンオキサイドと他のアルキレンオキサイドとの共重合体等が挙げられる。
【0027】
前記イソシアネート基を有する化合物(a−3)としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロフェキシレンジイソシアネート、1,4−シクロフェキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロフェキシルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロフェキシルメタンジイソシアネート等のポリイソシアネートが挙げられる。これらのイソシアネート基を有する化合物は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。
【0028】
また、これらの中でも、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートは、原料コストを下げることができ好ましく、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロフェキシルメタンジイソシアネートは、耐光性および耐熱性が向上できるので好ましい。
【0029】
前記水性ポリウレタン樹脂(A)に、後述するポリイソシアネート系架橋剤(B)と架橋することができる活性水素として水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の官能基、および水性媒体中に溶解または分散することができる親水基としてカルボキシル基、スルホン酸基、ノニオン性親水基等の官能基を水性ポリウレタン樹脂(A)のウレタン化反応後も残す、あるいは導入する方法として、以下の方法が挙げられる。
【0030】
(水酸基を残す、あるいは導入する方法)
例えば、過剰量のポリオールとポリイソシアネートとを反応させ末端に水酸基を残す方法、ポリオールと過剰量のポリイソシアネートとを反応させイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーを調製後、このウレタンプレポリマーと2−アミノエタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、ジエタノールアミン等のアミノアルコール類、アミノフェノール等とを反応させて水酸基を導入する方法等が挙げられる。
【0031】
(カルボキシル基を導入する方法)
例えば、前記水性ポリウレタン樹脂(A)を得るため、ウレタン化反応をする際に、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を有する化合物を共重合させ、カルボキシル基を導入する方法が挙げられる。
【0032】
(アミノ基を導入する方法)
例えば、ポリオールと過剰量のポリイソシアネートとを反応させイソシアネート基を末端に有するウレタンプレポリマーを調製後、このウレタンプレポリマーと過剰量のエチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、イソホロンジアミン等のポリアミンとを反応させ、アミノ基を導入する方法が挙げられる。
【0033】
(スルホン酸基を導入する方法)
例えば、前記水性ポリウレタン樹脂(A)を得るため、ウレタン化反応をする際に、2−オキシエタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホコハク酸等のスルホン酸基を有する化合物を共重合させ、スルホン酸基を導入する方法が挙げられる。
【0034】
(ノニオン性親水基を導入する方法)
例えば、前記水性ポリウレタン樹脂(A)を得るため、ウレタン化反応をする際に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体等のノニオン性親水基を有する化合物を共重合させ、ノニオン性親水基を導入する方法が挙げられる。
【0035】
また、前記水性ポリウレタン樹脂(A)中のカルボキシル基またはスルホン酸基を中和して塩にし、得られたポリウレタン樹脂を水性媒体中により良好に溶解または分散できるようすることもできる。前記中和剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の不揮発性塩基;アンモニア等の揮発性塩基;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類が挙げられる。中和の操作は、ウレタン化反応前、反応中、あるいは反応後のいずれにおいても行うことができる。
【0036】
さらに、前記水性ポリウレタン樹脂(A)を製造する際に、必要に応じて乳化剤を用いても構わない。前記乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルフォン酸塩、アルカンスルフォネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸塩等のノニオンアニオン系乳化剤;アルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン系乳化剤;フッ素系、シリコーン系の特殊乳化剤等が挙げられる。
【0037】
前記水性ポリウレタン樹脂(A)の水系分散液の製造方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。
【0038】
活性水素を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物およびポリイソシアネートを反応させて得られたカルボキシル基を有するウレタン樹脂の有機溶剤溶液、または有機溶剤分散液に、ノニオン性乳化剤を加え、さらに必要に応じて中和剤を加えた後、水と混合して水系分散液を得る方法。
【0039】
活性水素を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物およびポリイソシアネートを反応させて得られたカルボキシル基および末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、ノニオン性乳化剤と更に必要に応じて中和剤を含む水溶液と混合するか、または予めウレタンプレポリマー中に中和剤を加えた後、ノニオン性乳化剤を含む水溶液を混合して水に分散させた後、ポリアミンと反応させて水系分散液を得る方法。
【0040】
活性水素を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物、ノニオン性親水基を有する化合物およびポリイソシアネートを反応させて得られた親水基を有するウレタン樹脂の有機溶剤溶液または有機溶剤分散液に、必要に応じて中和剤を加え、さらに水を混合して水系分散体を得る方法。
【0041】
活性水素を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物、ノニオン性親水基を有する化合物およびポリイソシアネートを反応させて得られた親水基および末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、中和剤を含む水溶液と混合するか、または予めプレポリマー中に中和剤を加えた後に水を混合して水に分散させ、ポリアミンを添加し、反応させて水系分散体を得る方法。
【0042】
活性水素を有する化合物、カルボキシル基を有する化合物、ノニオン性親水基を有する化合物およびポリイソシアネートを反応させて得られた親水基および末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに、中和剤およびポリアミンを含む水溶液と混合するか、または予めプレポリマー中に中和剤を加えた後、ポリアミンを含む水溶液と混合して水系分散体を得る方法。
【0043】
前記水性ポリウレタン樹脂(A)の水系分散液の製造は、無溶剤下で行うこともできるが、反応の制御あるいは粘度低下等の目的で有機溶剤を使用しても構わない。前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド類等が挙げられる。これらの有機溶剤を用いた場合は、最終的に得られる水性ポリウレタン樹脂(A)の水系分散液から可能な限り除去する。また、有機溶剤としては、除去が容易な比較的沸点が低いものを用いることが好ましい。やむを得ず沸点100℃以上の有機溶剤を使用しなければならない場合においては、その使用量は必要最小限に止めることが好ましい。
【0044】
本発明に用いられるポリイソシアネート系架橋剤(B)は、有機溶剤を含有していないものが好ましく、さらには前記水性ポリウレタン樹脂(A)の水系分散液への分散性が良いものが好ましい。また、室温(25℃)で液状であるものを用いると造膜性が向上するので好ましい。
【0045】
前記ポリイソシアネート系架橋剤(B)としては、前記水性ポリウレタン樹脂(A)の原料として用いたイソシアネート基を有する化合物(a−3)、これらのイソシアヌレート型、ビューレット型またはアルファネート型の3官能以上のポリイソシアネート、2個以上の活性水素を有するポリオール等の化合物とイソシアネート基を有する化合物との反応により得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー等の疎水性ポリイソシアネート類;これらのポリイソシアネート類に前記乳化剤を配合して水に分散できるようにしたもの;前記カルボキシル基を有する化合物、前記スルホン酸基を有する化合物、または前記ノニオン性親水基を有する化合物と前記ポリイソシアネート類とを共重合して得られる自己乳化性を有する水分散性ポリイソシアネート類;およびこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、脂肪族または脂環式のポリイソシアネートからなり、かつ水性ポリウレタン樹脂(A)の水系分散液に分散することができる疎水性ポリイソシアネートは、耐水性が向上するので好ましい。また、脂肪族または脂環式のポリイソシアネートとノニオン性親水基を有する化合物とを反応して得られる水分散性ポリイソシアネートは、水性ポリウレタン樹脂(A)の水系分散液への分散性が高いので好ましい。
【0046】
また、前記ポリイソシアネート系架橋剤(B)として、1種のポリイソシアネートを単独で用いることも、2種以上のポリイソシアネートを併用することもできる。
【0047】
本発明の皮革用表面仕上げ剤においては、前記ポリイソシアネート系架橋剤(B)を配合することにより、高い耐摩耗性を付与することができる。また、水性ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対し、ポリイソシアネート系架橋剤(B)の配合量は、40〜100質量部の範囲が好ましく、50〜80質量部の範囲がより好ましく、55〜60質量部の範囲がさらに好ましい。このように、水性ポリウレタン樹脂(A)に対して、ポリイソシアネート系架橋剤(B)を通常の配合量より過剰に配合することにより、高い造膜性と耐摩耗性を付与することができる。なお、ポリイソシアネート系架橋剤(B)の配合量が30質量部未満であると、充分な造膜性と耐摩耗性が得られず、100質量部を超えると、塗膜が硬くなり、風合いが不充分なものとなる。
【0048】
本発明に用いるシリコーン系化合物(C)は、ポリジメチルシリコーン、ハイドロジエン変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ヒドロキシ変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボキシル変性シリコーン、ハロゲン化変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メタクリロキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フェニル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が挙げられ、中でも水分散性が良好なため取り扱い性が良く、また、塗膜からのブリードアウトが少なく、レベリング性に優れるポリエーテル変性シリコーンを用いることが好ましい。また、これらの中でも、有機溶剤を含有していないものが好ましく、さらには前記水性ポリウレタン樹脂(A)への分散性が良いものがより好ましい。
【0049】
本発明の皮革用表面仕上げ剤においては、前記シリコーン系化合物(C)を配合することにより、高い耐摩耗性を付与することができる。また、水性ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対し、シリコーン系化合物(B)の配合量は、5〜25質量部の範囲が好ましく、8〜15質量部の範囲がより好ましい。このように、水性ポリウレタン樹脂(A)に対して、シリコーン系化合物(C)を通常の配合量より過剰に配合することにより、高い耐摩耗性を付与することができる。なお、シリコーン系化合物(C)の配合量が5質量部未満であると、充分な耐摩耗性が得られず、25質量部を超えると、シリコーン系化合物(C)がブリードアウトする問題を生じる。
【0050】
本発明に用いるフィラー(D)としては、有機フィラーであっても、無機フィラーであっても構わない。この無機フィラーとしては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、タルク、カオリンクレー、焼成クレー、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、ガラス、雲母、白雲母、硫酸バリウム、アルミナホワイト、ゼオライト、シリカバルーン、ガラスバルーン等が挙げられる。
【0051】
一方、有機フィラーを構成する樹脂としては、例えば、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン−メラミン樹脂、シリコーン樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリオレフィン樹脂、エチレン−アクリル共重合体、ポリスチレン、架橋ポリスチレン、ポリジビニルベンゼン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリル共重合体、架橋アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート、塩化ビニリデン樹脂、フッ素樹脂、ナイロン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。また、これらの樹脂からなるフィラーの製造方法は、特に限定しないが、例えば、乳化重合、縣濁重合、乳化分散、分散重合、W/Oマイクロエマルション重合によって、樹脂を合成すると同時に粒子化する方法、合成した樹脂を機械粉砕法または化学粉砕法により粒子化する方法等が挙げられる。また、これらの樹脂は、ハロゲン基、エポキシ基、アミノ基、水酸基、チオール基、アミド基、カルボキシル基、リン酸基、スルホン酸基等の官能基を有していても構わない。
【0052】
前記有機フィラーの中でも、フッ素樹脂パウダー、ウレタン樹脂パウダー、アクリル樹脂パウダー、シリコーン樹脂パウダー、ポリエチレン樹脂パウダーが好ましく、さらには、ウレタン樹脂パウダー、アクリル樹脂パウダーがより好ましい。
【0053】
前記フィラー(D)としては、上記の無機フィラーまたは有機フィラーを単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、無機フィラーと有機フィラーとを併用しても構わない。
【0054】
前記フィラー(D)の平均粒子径は、0.5〜50μmの範囲が好ましく、1〜30μmの範囲がより好ましく、5〜20μmの範囲がさらに好ましい。フィラー(D)の平均粒子径がこの範囲にあれば、柔軟性および耐摩耗性が良好となる。なお、この平均粒子径は、レーザー回析・散乱法により粒度分布を測定して得られたメジアン径(d50)である。また、レーザー回析・散乱法により粒度分布を測定する装置としては、日機装株式会社製の「マイクロトラック FRA」等を用いることができる。
【0055】
本発明の皮革用表面仕上げ剤においては、前記フィラー(D)を配合することにより、塗工適性および高い耐摩耗性を向上させることができる。また、皮革表面の艶調整が可能となる。
【0056】
また、水性ポリウレタン樹脂(A)100質量部に対して、前記フィラー(D)の配合量は、5〜120質量部の範囲が好ましく、10〜80質量部の範囲がより好ましい。フィラーの配合量がこの範囲にあれば、皮革の耐摩耗性が充分になり、皮革の柔軟な風合いが確保できる。
【0057】
本発明の皮革用表面仕上げ剤には、本発明の趣旨を損なわない範囲で、架橋促進剤、有機顔料、無機顔料等の着色剤、難燃剤、酸化防止剤等の各種添加剤、水性ポリウレタン樹脂以外の樹脂等を加えることができる。
【0058】
本発明の皮革用表面仕上げ剤を皮革の表面層上に塗布することで、皮革の最表面層への、着色および光沢の調整、触感の付与、耐摩耗性の付与等を施し、意匠性および表面強度を向上させることができる。特に、皮革の表面層がポリウレタン樹脂からなる皮革に用いると、その効果が大きいので好ましい。
【0059】
また、本発明の皮革は、本発明の皮革用表面仕上げ剤を人工皮革、合成皮革、天然皮革等の皮革の表面上に塗布して成膜し、皮革の表面上に表面仕上げ層を形成したものである。本発明の皮革用表面仕上げ剤は、人工皮革、合成皮革、天然皮革のいずれにも用いることができるが、特に人工皮革に好適である。なお、本発明の皮革用表面仕上げ剤を人工皮革に用いる場合、人工皮革の製造に用いる表面層用樹脂組成物、接着層用樹脂組成物等の材料も環境への負荷を考慮して、実質的に有機溶剤を含まない材料であることが好ましく、特に水性の材料が好ましい。
【0060】
本発明の皮革用表面仕上げ剤を皮革の表面上に塗布して成膜する方法として、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0061】
本発明の皮革用表面仕上げ剤を皮革の表面上に塗工する方法として、例えば、直接スプレーするスプレー法;グラビアコーター、ナイフコーター、コンマコーター、エアナイフコーター等のダイレクトコート法などが挙げられるが、グラビアコーターによるダイレクトコート法が最も好ましい。また、前記皮革用水性表面仕上げ剤の塗工量は、乾燥後の塗膜量が3〜50g/mとなる範囲が好ましく、5〜30g/mとなる範囲がより好ましい。
【0062】
本発明の皮革用表面仕上げ剤の塗工後の乾燥方法としては、樹脂組成物中の水分が蒸発し、樹脂の架橋反応が起きるのに必要な条件であれば特に制限はないが、通常は60〜150℃で10秒〜5分間程度乾燥するのが好ましい。また、80〜130℃で30秒〜2分間程度乾燥するとより好ましい。また、完全に架橋反応が進行させ、強度の高い皮膜とするために、乾燥後に40℃で1週間程度のエージングをするとさらに好ましい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明する。
【0064】
実施例および比較例に用いた水性樹脂組成物(皮革用表面仕上げ剤)は、以下の通り調製した。
【0065】
(合成例1)
ポリカーボネートジオール(ポリスチレン換算法での数平均分子量2000)500部、2,2−ジメチロールプロピオン酸32部、ヘキサメチレンジイソシアネート147部、80%水加ヒドラジン9部、トリエチルアミン25部を反応させることにより、不揮発分35%、酸価20、の水性ポリウレタン樹脂分散体を得た。
【0066】
(実施例1)
合成例1で得られた水性ポリウレタン樹脂分散体100質量部(不揮発分35質量部)、水分散性ポリイソシアネート系架橋剤(大日本インキ化学工業株式会社製「ハイドランアシスターC2」、不揮発分100質量%)20質量部、ポリエーテル変性シリコーン(ダウコーニング社製「ペインタッド29」、不揮発分100質量%)4質量部およびウレタン樹脂パウダー(根上工業株式会社製「アートパールC−400トウメイ」、平均粒子径14μm)25質量部ホモミキサーで混合し、水性樹脂組成物を得た。
【0067】
(実施例2)
実施例1で用いたウレタン樹脂パウダーに代えて、アクリル樹脂パウダー(松本油脂製薬株式会社「マツモトマイクロスフェアーM−311」、平均粒子径15μm)を用いた以外は実施例1と同様に行い、水性樹脂組成物を得た。
【0068】
(実施例3)
実施例1で用いたウレタン樹脂パウダー25質量部に代えて、シリカ(東ソー・シリカ株式会社「ニップジェルAY−451」、平均粒子径4μm)10質量部を用いた以外は実施例1と同様に行い、水性樹脂組成物を得た。
【0069】
(比較例1)
実施例1で用いた水分散性ポリイソシアネート系架橋剤20質量部に代えて、ポリカルボジイミド水分散体(大日本インキ化学工業株式会社製「ハイドランアシスターCS−7」、不揮発分40%)50質量部を用いた以外は実施例1と同様に行い、水性樹脂組成物を得た。
【0070】
(比較例2)
実施例1で用いた水分散性ポリイソシアネート系架橋剤の配合量を20質量部から12質量部に変更した以外は実施例1と同様に行い、水性樹脂組成物を得た。
【0071】
(比較例3)
実施例1で用いた水分散性ポリイソシアネート系架橋剤の配合量を20質量部から40質量部に変更した以外は実施例1と同様に行い、水性樹脂組成物を得た。
【0072】
(比較例4)
実施例1で用いたポリエーテル変性シリコーンの配合量を4質量部から1質量部に変更した以外は実施例1と同様に行い、水性樹脂組成物を得た。
【0073】
(比較例5)
実施例1で用いたポリエーテル変性シリコーンの配合量を4質量部から10質量部に変更した以外は実施例1と同様に行い、水性樹脂組成物を得た。
【0074】
(比較例6)
実施例3で用いたシリカの配合量を10質量部から1質量部に変更した以外は実施例3と同様に行い、水性樹脂組成物を得た。
【0075】
(比較例7)
実施例1において配合したウレタン樹脂パウダーを配合しなかった以外は実施例1と同様に行い、水性樹脂組成物を得た。
【0076】
(繊維積層体の作製)
以下の手順に従って、上記の実施例および比較例で得られた水性樹脂組成物の評価に用いる繊維積層体を作製した。
【0077】
目付100g/mのポリエステル不織布に、水分散性ポリウレタン樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製「ハイドラン WLI−602」)62.5質量部、増粘剤(大日本インキ化学工業株式会社製「ハイドランアシスター T2」)0.5質量部、着色剤(大日本インキ化学工業株式会社製「ダイラックブラック HP−9451」)2質量部、および水35質量部を配合した配合液を含浸し、マングルロールでウエットピックアップ150%になるように絞った。絞り後直ちに95℃のスチーム下に1分間暴露しポリウレタン樹脂を凝固させた。次いで、100℃の乾燥機で30分間乾燥して繊維基材を得た。
【0078】
水分散性ポリウレタン樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製「ハイドラン WLS−210」)100質量部、着色剤(大日本インキ化学工業株式会社製「ダイラックブラック HS−9540」)10質量部、水分散性ポリイソシアネート系架橋剤(大日本インキ化学工業株式会社製「ハイドランアシスター C2」)4質量部、および会合型増粘剤(大日本インキ化学工業株式会社製「ハイドランアシスター T1」)0.5質量部を配合した繊維積層体の表面層用塗材を、離型紙(大日本印刷株式会社製「DN−AT−AP−Tフラット」)上に塗布厚100μm(WET)で塗布した。直ちにワーナーマチス(乾燥機)を用い70℃で1分間予備乾燥し、その後120℃で2分間乾燥を行い、水分を完全に蒸発させ、ポリウレタン樹脂フィルム(以下、「表面層」という。)を得た。
【0079】
上記で得られた表面層の上に、水分散性ポリウレタン樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製「ハイドラン WLA−311」)100質量部、水分散性ポリイソシアネート系架橋剤(大日本インキ化学工業株式会社製「ハイドランアシスター C2」)10質量部、および会合型増粘剤(大日本インキ化学工業株式会社製「ハイドランアシスター T1」)1質量部で配合したポリウレタン接着剤配合液を塗布厚120μm(WET)で塗布した。次いで、ワーナーマチスを用い70℃で1分間乾燥を行い、乾燥直後に、その上に上記で得られた繊維基材を貼り合わせた。その後120℃で2分間キュアリングを行い、さらに40℃で2日間エージングを行い、離型紙を剥離して、繊維積層体を得た。
【0080】
(評価用人工皮革の作製)
上記で得られた繊維積層体の表面層上に、80メッシュのグラビアコーターを用いて実施例および比較例で得られた水性樹脂組成物を皮革用表面仕上げ剤として、乾燥後の塗工量が5〜15g/mになるように塗工し、80℃で2分間熱風乾燥させた。次いで、40℃で1週間エージングして、評価用人工皮革を得た。
【0081】
上記で得られた評価用人工皮革を、下記の方法によって評価した。
【0082】
(塗工適性)
水性樹脂組成物を繊維積層体の表面層上にグラビアコーターで塗工した際の、水性樹脂組成物のはじきの状態を目視で確認し、以下の基準で評価した。
○:はじき無し
×:はじき有り
【0083】
(表面艶消し性)
得られた人工皮革の表面を、変角光沢計(株式会社村上色彩技術研究所製「GMX−202」、測定角度60度)を用いて光沢の測定を行い、以下の基準で評価した。
○:光沢値1.5未満
×:光沢値1.5以上
【0084】
(耐摩耗性)
得られた人工皮革のテーバー摩耗試験を、JIS K 7204:1999に準拠して、テーバー式摩耗試験機(株式会社安田精機製作所製「テーバー式アブレーションテスター」)を用いて、摩耗輪:CS−10、荷重:9.8N、摩耗回数:1,000回の条件で行った。得られた結果から、以下の基準で耐摩耗性を評価した。
○:摩耗試験前後で外観にほぼ変化なし。
△:摩耗試験後に人工皮革の表面に摩耗痕があり、やや白化あり。
×:摩耗試験後に人工皮革の表面が摩耗して、白化あり。
【0085】
実施例の評価結果を表1に、比較例の評価結果を表2に示す。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
実施例1〜3で得られた本発明の皮革用表面仕上げ剤は、良好な塗工適性を有していることか分かった。また、本発明の皮革用表面仕上げ剤を用いた人工皮革は、高い表面艶消し性および耐摩耗性を有することが分かった。
【0089】
比較例1は、架橋剤としてポリイソシアネート系ではなく、ポリカルボジイミド系を用いた例である。この比較例1の皮革用表面仕上げ剤は、塗工適性、表面艶消し性は比較的良好であったが、耐摩耗性が不充分であった。
【0090】
比較例2は、ポリイソシアネート系架橋剤の配合量を本発明の規定値より少なくした例である。この比較例2の皮革用表面仕上げ剤は、塗工適性、表面艶消し性は比較的良好であったが、耐摩耗性が不充分であった。
【0091】
比較例3は、ポリイソシアネート系架橋剤の配合量を本発明の規定値より多くした例である。この比較例3の皮革用表面仕上げ剤は、塗工適性、表面艶消し性は比較的良好であったが、耐摩耗性が不充分であった。
【0092】
比較例4は、シリコーン系化合物の配合量を本発明の規定値より少なくした例である。この比較例4の皮革用表面仕上げ剤は、塗工適性、表面艶消し性は比較的良好であったが、耐摩耗性が不充分であった。
【0093】
比較例5は、シリコーン系化合物の配合量を本発明の規定値より多くした例である。この比較例5の皮革用表面仕上げ剤は、塗工適性、表面艶消し性は比較的良好であったが、耐摩耗性が不充分であった。
【0094】
比較例6は、フィラーの配合量を本発明の規定値より少なくした例である。この比較例6の皮革用表面仕上げ剤は、塗工適性は比較的良好であったが、表面艶消し性および耐摩耗性が不充分であった。
【0095】
比較例7は、フィラーを配合しなかった例である。この比較例7の皮革用表面仕上げ剤は、塗工適性、表面艶消し性および耐摩耗性がともに不充分であった。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ポリウレタン樹脂(A)100質量部、ポリイソシアネート系架橋剤(B)40〜100質量部、シリコーン系化合物(C)5〜25質量部、およびフィラー(D)5〜120質量部を含有する水性樹脂組成物からなることを特徴とする皮革用表面仕上げ剤。
【請求項2】
前記シリコーン系化合物(C)がポリエーテル変性シリコーンである請求項1記載の皮革用表面仕上げ剤。
【請求項3】
請求項1または2記載の皮革用表面仕上げ剤からなる塗膜を表面上に有することを特徴とする皮革。

【公開番号】特開2007−314919(P2007−314919A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−147992(P2006−147992)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】