説明

皺回復性の優れた制電性ポリエステル混繊糸

【課題】従来の極細ポリエステル糸が持つ、柔らかな風合、保温性、吸水、吸湿性などの性能も維持し、制電性及び皺回復性にも優れたポリエステル混繊糸を提供することにある。
【解決手段】伸度、弾性回復率、伸長剛性率、沸水収縮率の異なった2種のポリエステルマルチ繊維からなる混繊糸であって、一方成分のポリエステルマルチ繊維が芯鞘型複合繊維で、芯成分が特定の制電剤を含み特定範囲の紡速で得られたものであり、弛緩熱処理後もう一方のポリエステルマルチ繊維と交絡処理して得られた混繊糸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制電性を有し、しかも皺回復性に優れた新規なポリエステル混繊糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
極細ポリエステル糸は、布帛にした時、柔らかな風合が得られ、保温性、吸水、吸湿性などの性能も向上するため、衣料用途をはじめ、幅広く使われている。
しかしながら、本来、ポリエステルは疎水性であるため、制電性が要求される分野では、従来から、ポリエステルに親水性を付与して制電性を発現させようとする試みが行われており、これまでに数多くの提案がなされている。
【0003】
例えばポリエステルにポリオキシアルキレン系ポリエーテル化合物を配合せしめる方法(特公昭39−5214号公報)、並びにポリエステルに実質的に非相溶性のポリオキシアルキレン系ポリエーテル化合物と有機・無機のイオン性化合物とを配合せしめる方法(特公昭44−31828号公報、特公昭60−11944号公報、特開昭53−80497号公報、特開昭53−149247号公報、特開昭60−39413号公報、特開平3−139556号公報等)が知られている。
【0004】
しかしながら通常の延伸糸(FOY)においては制電性を有するものの、仮撚加工糸においては、捲縮糸で撚り変形により毛羽が発生する為生産性が悪く、制電性を有するものはないのが実情であった。
【0005】
又上記の問題を解決するために特開平4−146215号公報にはポリエステルに実質的に非相溶性のポリオキシアルキレン系ポリエーテル化合物と有機・無機のイオン性化合物からなる制電剤を芯部ポリエステルに含む芯鞘型ポリエステル複合繊維が提案されている。確かに芯鞘型複合繊維とすることによりある程度仮撚工程での毛羽発生は抑えられるものの、そのためには紡糸延伸仮撚り工程で厳密な制御を必要とし、制電性と断糸、毛羽の発生等の生産の安定性を両立させる点で十分とは言えなかった。
【0006】
更に単糸繊度が1.5dtexより小さい極細糸においては、芯/鞘形成のバラツキや単糸繊度のバラツキにより、実用的に制電性繊維と呼べるものはないのが実情であった。
そして近年、織編物の風合い、肌触り、外観等に関する要求がますます高まってきており、特に、婦人衣料、ブラウス、シャツなどの用途において、着用時や保管時などに衣服に皺が入ると皺が取れ難くなる場合があり、極細繊度で制電性を有するとともに皺回復性の良いポリエステル糸の要望が強まってきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭39−5214号公報
【特許文献2】特公昭44−31828号公報
【特許文献3】特公昭60−11944号公報
【特許文献4】特開昭53−80497号公報
【特許文献5】特開昭53−149247号公報
【特許文献6】特開昭60−39413号公報
【特許文献7】特開平3−139556号公報
【特許文献8】特開平4−146215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、従来の極細ポリエステル延伸糸が持つ、柔らかな風合、保温性、吸水、吸湿性などの性能も維持し、断糸や毛羽立ちが大幅に低減され、さらに制電性能及び皺回復性にも優れた布帛を得るのに好適なポリエステル混繊糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らの研究によれば、上記本発明の目的は、
単糸繊度が1.5dtex以下で、伸度(ELA)が80%以上、10%伸長時の弾性回復率(ERA)が50%以下、伸長剛性率(EMA)が5.89GPa以下、結晶化度(XpA)が25%以上、沸水収縮率(BWSA)が3%以下、160℃における熱応力(TSA)が0.44mN/dtex以下の芯鞘型複合繊維からなるポリエステルマルチ繊維Aを弛緩熱処理した後、伸度(ELB)が40%以下、伸長剛性率(EMB)が7.85GPa以上、沸水収縮率(BWSB)が5%以上、160℃における熱応力(TSB)が0.88mN/dtex以上のポリエステルマルチ繊維Bと合糸し交絡処理してなるポリエステル混繊糸であって、下記要件を満足することを特徴とするポリエステル混繊糸。
1)ポリエステルマルチ繊維Aの芯鞘型複合繊維の芯成分が制電性ポリエステルC、鞘成分が艶消し剤をポリエステル全重量に対して0〜10wt%含むポリエステルDから構成されること。
2)制電性ポリエステルCが芳香族ポリエステル100重量部に対して、制電剤として、下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン系ポリエーテルを0.2〜30重量部及び該ポリエステルと実質的に非反応性の有機イオン性化合物0.05〜10重量部を含有してなる制電性ポリエステルであること。
O−(CHCHO)(RO)−R 式(1)
[式中、Rは炭素原子数2以上のアルキレン基又は置換アルキレン基、Rは水素原子、炭素原子数1〜40の一価の炭化水素基、炭素原子数2〜40の一価のヒドロキシ炭化水素又は炭素原子数2〜40の一価のアシル基、nは1以上の整数、mは1以上の整数]
3)ポリエステルマルチ繊維Aの芯鞘型複合繊維の芯部の面積と鞘部の面積との比が5:95〜80:20であること。
4)ポリエステルマルチ繊維A/ポリエステルマルチ繊維Bの重量比が45/55〜70/30であること。
5)混繊糸の摩擦帯電圧が2000V以下であること。
6)ポリエステルマルチ繊維Aの紡糸速度が2000〜4500m/分であること。
により達成できることが見出された。
【発明の効果】
【0010】
本発明に使用するポリエステルマルチ繊維Aは細繊度でも制電性が良好で生産性良く得られ、高熱収縮性ポリエステルマルチ繊維Bと交絡させた混繊糸は、沸水処理工程でポリエステルマルチ繊維Aが混繊糸の外側に配置し、ポリエステルマルチ繊維Bが内側に配置する構造となり、制電性が良好で且つ皺回復性、ふくらみ感に富みソフトな風合い触感のある布帛が得られる。又ポリエステルマルチ繊維Aは1.5dtex以下の極細繊度の糸であっても弛緩熱処理工程であるため繊維の毛羽の発生、断糸の発生が大幅に低下し、工程歩留まりが大幅に向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例に使用した皺回復測定装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明で使用するポリエステルは、芳香環を重合体の連鎖単位に有する芳香族ポリエステルであって、二官能性芳香族カルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体との反応により得られる重合体を対象とする。
【0013】
ここでいう二官能性芳香族カルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5―ナフタレンジカルボン酸、2,5―ナフタレンジカルボン酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、4,4′―ビフェニルジカルボン酸、3,3′―ビフェニルジカルボン酸、4,4′―ビフェニルエーテルジカルボン酸、4,4′―ビフェニルメタンジカルボン酸、4,4′―ビフェニルスルホンジカルボン酸、4,4′―ビフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2―ビス(フェノキシ)エタン―4,4′―ジカルボン酸、2,5―アントラセンジカルボン酸、2,6―アントラセンジカルボン酸、4,4′―p―フェニレンジカルボン酸、2,5―ピリジンジカルボン酸、β―ヒドロキシエトキシ安息香酸、p―オキシ安息香酸等をあげることができ、特にテレフタル酸が好ましい。
【0014】
これらの二官能性芳香族カルボン酸は2種以上併用してもよい。なお、少量であればこれらの二官能性芳香族カルボン酸とともにアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸の如き二官能性脂肪族カルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸の如き二官能性脂環族カルボン酸、5―ナトリウムスルホイソフタル酸等を1種または2種以上併用することができる。
【0015】
また、ジオール化合物としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、2―メチル―1,3―プロパンジオール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコールの如き脂肪族ジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノールの如き脂環族ジオール等およびそれらの混合物等を好ましくあげることができる。また、少量であればこれらのジオール化合物と共に両末端または片末端が未封鎖のポリオキシアルキレングリコールを共重合することができる。
【0016】
更に、ポリエステルが実質的に線状である範囲でトリメリット酸、ピロメリット酸の如きポリカルボン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールの如きポリオールを使用することができる。
【0017】
具体的な好ましい芳香族ポリエステルとしてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレン―1,2―ビス(フェノキシ)エタン―4,4′―ジカルボキシレート等のほか、ポリエチレンイソフタレート・テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート・イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート・デカンジカルボキシレート等のような共重合ポリエステルをあげることができる。なかでも機械的性質、成形性等のバランスのとれたポリエチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0018】
かかる芳香族ポリエステルは任意の方法によって合成される。例えばポリエチレンテレフタレートついて説明すれば、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステル化反応させるか、テレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるかまたはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかして、テレフタル酸のグリコールエステルおよび/またはその低重合体を生成させる第1段反応、次いでその生成物を減圧下加熱して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段の反応とによって容易に製造される。
【0019】
本発明に使用するポリエステルCの制電剤の一方成分として使用するポリオキシアルキレン系ポリエーテルは下記一般式(1)で表わされるものであり、ポリエステルに実質的に不溶性のものであれば、単一のオキシアルキレン単位からなるポリオキシアルキレングリコールであっても、二種以上のオキシアルキレン単位からなる共重合ポリオキシアルキレングリコールであってもよい。
O−(CHCHO)(RO)−R 式(1)
[式中、Rは炭素原子数2以上のアルキレン基又は置換アルキレン基、Rは水素原子、炭素原子数1〜40の一価の炭化水素基、炭素原子数2〜40の一価のヒドロキシ炭化水素又は炭素原子数2〜40の一価のアシル基、nは1以上の整数、mは1以上の整数]
【0020】
かかるポリオキシアルキレン系ポリエーテルの具体例としては、分子量が4000以上のポリオキシエチレングリコール、分子量が1000以上のポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、分子量が2000以上のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド共重合体、分子量4000以上のトリメチロールプロパンエチレンオキサイド付加物、分子量3000以上のノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、並びにこれらの末端OH基に炭素数が6以上の置換エチレンオキサイドが付加した化合物があげられ、なかでも分子量が10000〜100000のポリオキシエチレングコール、及び分子量が5000〜16000の、ポリオキシエチレングリコールの両末端に炭素数が8〜40のアルキル基置換エチレンオキサイドが付加した化合物が好ましい。
【0021】
かかるポリオキシアルキレン系ポリエーテルの配合量は、前記芳香族ポリエステル100重量部に対して0.2〜30重量部の範囲である。0.2重量部未満のときは親水性が不足して充分な制電性を呈することができない。一方30重量部を超える場合最早制電性の向上効果は認められず、かえって得られる組成物の機械的性質を損うようになる上、該ポリエーテルがブリードアウトし易くなるため溶融成形時チップのルーダーへのかみこみ性が低下して、成形安定性も悪化するようになる。
【0022】
本発明に使用する制電剤のもう一方の成分である有機イオン性化合物としては、例えば下記一般式(2)、(3)で示されるスルホン酸金属塩やスルホン酸第4級ホスホニウム塩を好ましいものとしてあげることができる。単独で用いても良く、両方併用してもよい。
【0023】
RSOM 式(2)
式中、Rは炭素原子数3〜30のアルキル基又は炭素原子数7〜40のアリール基、Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。上記式(2)においてRがアルキル基のときはアルキル基は直鎖状であっても又は分岐した側鎖を有していてもよい。MはNC,K,Li等のアルカリ金属又はMg,CC等のアルカリ土類金属であり、なかでもLi,NC,Kが好ましい。かかるスルホン酸金属塩は1種のみを単独で用いても2種以上を混合して使用してもよい。好ましい具体例としてはステアリルスルホン酸ナトリウム、オクチルスルホン酸ナトリウム、ドデシルスルホン酸ナトリウム、炭素原子数の平均が14であるアルキルスルホン酸ナトリウム混合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム混合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(ハード型、ソフト型)、ドデシルベンゼンスルホン酸リチウム(ハード型、ソフト型)、ドデシルベンゼンスルホン酸マグネシウム(ハード型、ソフト型)等をあげることができる。
【0024】
RSO 式(3)
式中、Rは上記式(2)におけるRの定義と同じであり、R、R、R及びRはアルキル基又はアリール基でなかでも低級アルキル基、フェニル基又はベンジル基が好ましい。かかるスルホン酸第4級ホスホニウム塩は1種のみを単独で用いても2種以上を混合して使用してもよい。好ましい具体例としては炭素原子数の平均が14であるアルキルスルホン酸テトラブチルホスホニウム、炭素原子数の平均が14であるアルキルスルホン酸テトラフェニルホスホニウム、炭素原子数の平均が14であるアルキルスルホン酸ブチルトリフェニルホスホニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム(ハード型、ソフト型)、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラフェニルホスホニウム(ハード型、ソフト型)、ドデシルベンゼンスルホン酸ベンジルトリフェニルホスホニウム(ハード型、ソフト型)等をあげることができる。
【0025】
かかる有機のイオン性化合物は1種でも、2種以上併用してもよく、その配合量は、芳香族ポリエステル100重量部に対して0.05〜10重量部の範囲が好ましい。0.05重量部未満では制電性向上の効果が小さく、10重量部を越えると組成物の機械的性質を損なうようになる上、該イオン性化合物もブリードアウトし易くなるため、溶融成形時のチップのルーダーかみこみ性が低下して、成形安定性も悪化するようになる。
【0026】
本発明で使用するポリエステルDは、本発明の目的を阻害しない範囲で、公知の艶消し剤を配合する。艶消し剤が10wt%を超えると本発明の親糸となる未延伸糸の紡糸性が悪化するので、その範囲は0〜10wt%とするのが好ましい。
【0027】
制電性ポリエステルCに、制電剤であるポリオキシアルキレン系ポリエーテルと有機イオン性化合物、および必要に応じて酸化防止剤を配合することができるが、任意の方法により、上記成分を同時にまたは任意の順序で芳香族ポリエステルに配合することができる。即ち、ポリエステル繊維の紡糸が終了するまでの任意の段階、例えば芳香族ポリエステルの重縮合反応開始前、重縮合反応途中、重縮合反応終了時であってまだ溶融状態にある時点、粉粒状態、または紡糸段階等において、芳香族ポリエステルと添加成分のそれぞれを予め溶融混合して1回の操作で添加してもよく、または2回以上に分割添加してもよく、各添加成分を予め別々に芳香族ポリエステルに配合した後、これらを紡糸前等において混合してもよい。さらに、重縮合反応中期以前に添加成分を添加するときは、グリコール等の溶媒に溶解または分散させて添加してもよい。
【0028】
本発明を構成するポリエステルマルチ繊維A(単に繊維Aと呼ぶ場合がある)は芯鞘型複合繊維であり、使用する芯成分ポリエステルCと鞘成分ポリエステルDの面積比は5:95〜80:20の範囲にする必要がある。面積比が5:95より小さい場合にはポリエステルCによる制電性能の発現が不十分になり、80:20よりも大きくなる場合は、10%以上のアルカリ減量を施した場合に、芯部の制電性ポリエステルCが溶出し、制電性能が低下するとともに糸の強度が低下し、3.0cN/dtex以下となり、布帛にした場合の強度が不足する為、スポーツ衣料等、強度を必要とする用途には適さず、用途が限られたものとなるので好ましくない。
【0029】
また、本発明を構成するポリエステルマルチ繊維Aの芯部および鞘部の芳香族ポリエステルには、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等を配合してもよく、またそうすることは好ましいことである。その他、必要に応じて、難燃剤、蛍光増白剤、艶消削1着色剤、不活性微粒子その他の任意の添加剤を配合してもよい。
【0030】
酸化防止剤は、繊維の溶融紡糸工程等における高温度、低吐出速度、および長時間滞留などに起因する前記制電剤であるポリオキシエチレン系ポリエーテルの熱分解を抑制し、その水溶性化およびアルカリ耐久性の低下などの発生を防止することができる。本発明において用いられる酸化防止剤としては、それが酸化防止能を有する限り、その種類に制限はない。
【0031】
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系化合物、チオプロピオネート系化合物、ホスファイト系化合物などが挙げられ、1種のみを単独で用いても2種以上を混合して使用してもよい。また酸化防止剤の配合量は、芳香族ポリエステルに対して0.02〜3重量%の範囲にあることが好ましい。この配合量が0.02重量%未満ときは、ポリオキシエチレン系ポリエーテル重合体に対する熱分解抑制効果が不充分であり、また、3重量%を超える場合、その熱分解抑制効果は飽和してそれ以上の向上は認められず、かえって得られる繊維の機械的性質や色相等が損なわれるようになる。
【0032】
また、本発明を構成するポリエステルマルチ繊維Aの外周の断面形状、ならびに芯部分が形成する図形の形状は、織編物の電性、張り、腰、風合、光沢なとの目的に応じて任意の形状をとることができ、例えば、円形断面の他、三角、偏平、四角、三角、星形、六角、ブーメラン形等を例示できる。また芯成分と鞘成分とは同心形状である必要はなく、芯の中心が偏った形状のものでもよく、また、外周の断面形状と芯部分が形成する図形の形状も、同じ形状であってもよいし異なった形状でもよい。
【0033】
本発明を構成するポリエステルマルチ繊維Aは、例えば従来公知の複合紡糸装置を用い、鞘側に前述したポリエステルDを、芯部に制電剤である水不溶性ポリオキシエチレン系ポリエーテルと有機イオン性化合物、および必要に応じて上記ホスファイト系等の酸化防止剤の少なくとも1種を配合した制電性ポリエステルCを使用して、2000〜3000m/分の速度で溶融紡糸して得ることができる。
【0034】
本発明を構成するポリエステルマルチ繊維Aは、伸度(ELA)は80%以上、好ましくは100〜200%であり、10%伸長時の弾性回復率(ERA)は50%以下、好ましくは40%以下である必要があり、伸長剛性率(EMA)は5.89GPa(600kg/mm)以下、好ましくは1.96〜4.91GPa(200〜500kg/mm)である必要があり、結晶化度(XpA)は25%以上、好ましくは36〜60%である必要があり、160℃における熱応力(TSA)が0.44mN/dtex(50mg/de)以下である必要があり、さらには沸水収縮率(BWSA)は3%以下である必要がある。このような特性を示す時、制電性ポリエステルマルチ繊維Aは混繊糸を加熱処理したとき浮いた状態を保ちやすく、伸長方向に荷重が掛かっても応力負担をせずに嵩性向上のみに寄与し、結果として皺の発生を抑制する。
【0035】
このような特性を有するポリエステルマルチ繊維Aは、例えば、前述のポリエステルを温度280〜300℃で溶融し、紡速2000〜4500m/分で紡糸口金から溶融吐出し、冷却固化した紡出糸条に油剤を付与し、空気噴射孔が3孔以上のインターレース付与装置を用いて圧力0.1〜0.3MPaの空気を噴射してインターレースを付与した後、ポリエステルのガラス転移温度以下に設定した予熱ローラーおよび延伸ローラーを介して延伸倍率1.1〜1.5倍で一旦ワインダーに捲き取る。
【0036】
ここで紡速は2000m/分未満であると紡糸、延伸工程で断糸及び毛羽の発生が多く、4500m/分を超える場合は繊維の配向が進み弛緩熱処理のよる繊維の自発伸長性が低下し好ましくない。
【0037】
次いで、得られた延伸糸を、速度500〜1400m/分で、70〜110℃に加熱した予熱ローラーおよび170〜240℃に設定した非接触式ヒータを経て、1.0以下の延伸倍率で弛緩熱処理することにより得られる。この弛緩熱処理によりポリエステルマルチ繊維Aの自発伸長性が発現し混繊糸とした後沸水処理等の熱処理工程で収縮差により芯鞘2層構造となり皺回復性やソフト性、嵩性が良好となる。
【0038】
次に、本発明の混繊糸を構成する他方成分であるポリエステルマルチ繊維B(単に繊維Bと呼ぶ場合がある)は、伸長方向の荷重を主として負担して形態安定性や後加工工程での安定性を保持するため、伸度(ELB)は40%以下、好ましくは30%以下である必要があり、伸長剛性率(EMB)は7.85GPa(800kg/mm)以上、好ましくは8.83〜14.7GPa(900〜1500kg/mm)である必要がある。また、熱処理により良好な嵩性を発現させるために沸水収縮率(BWSB)は5%以上、好ましくは7〜20%である必要があり、さらには、布帛とした後にピンテンター等で熱セットする際に前記ポリエステルマルチ繊維Aに応力が掛からないようにして風合の低下を抑制するため、160℃における熱応力(TSB)は0.88mN/dtex(100mg/dtex)以上、好ましくは1.76mN/dtex(200mg/dtex)以上とする必要がある。
【0039】
このような特性を有するポリエステルマルチ繊維Bは、例えば、前述のポリエステテルからなる未延伸繊維を延伸する際、その延伸温度や延伸倍率などを適宜調整すればよい。例えば、伸度や剛性率は延伸倍率によって調整し、沸水収縮率は延伸時の熱セット条件によって調整すればよい。特に高収縮を望む場合には、ノープレート延伸などが適当である。熱応力は、延伸倍率や延伸時の加熱温度、さらには、未延伸繊維の紡糸速度によって調整することができる。しかし、あまりに紡糸引取速度が高すぎると、延伸後の熱応力を高くできなくなる場合があるので、2500m/分以下、好ましくは1700m/分以下の低紡速の未延伸繊維を延伸するのが好ましい。なお、これらの特性を調整する別の方法として、ポリエステルに第3成分を共重合する方法があり、例えばイソフタル酸成分をポリエステル全酸成分に対して1〜30モル%好ましくは2〜20モル%より好ましくは2〜15モル%共重合すると高収縮特性を有するものが容易に得られる。
【0040】
本発明の混繊糸は、上記制電性ポリエステルマルチ繊維Aを弛緩熱処理後ポリエステルマルチ繊維Bと交絡混繊する必要がある。交絡処理を先にして弛緩熱処理を後で行う場合は皺回復性等の効果が低下し好ましくない。
【0041】
弛緩熱処理は2段で行うことが好ましい。1段目が100〜130℃の加熱ローラ上で行なうことが好ましく、第2段目の弛緩熱処理が220〜240℃で1.5〜2.0%のオーバーフィード率で行うことが好ましい。1段目の弛緩熱処理により自発伸長性となり、2段目の弛緩熱処理により形態が固定される。
【0042】
またマルチ繊維Aに熱的変形を与える、例えば仮撚捲縮加工を施すことは好ましくなく、皺回復効果は得られなくなる。その理由は、第一は仮撚捲縮加工における加熱処理、伸長、捩じりなどによってポリエステルマルチ繊維Aの物性が変わり、伸度が減ったり熱応力が高くなったり弾性回復率が向上したりしてズルズル伸びる性質が失われたり、ポリエステルマルチ繊維Aに捲縮が付与されると、隣の糸と絡んだり抵抗が増えたりして、織物等の布帛になした時に織組織の中でずれた糸の位置が元に戻り難くなって皺が発生しやすくなるものと推察される。
【0043】
なお、空気噴射による交絡の場合、空気の噴射方向は糸と直角方向に当てても糸の進行方向に沿って当ててもよいが、前者によれば比較的光沢に優れた製品が得られ、一方後者によれば比較的ソフトな風合の製品が得られる。
【0044】
さらに、ポリエステルマルチ繊維A、ポリエステルマルチ繊維Bの間にオーバーフィード差を設けて空気複合加工してもよいが、あまりに差を付けすぎるとループが多数発生しやすくなるので、通常はほぼ同一のオーバーフィード率が採用される。
【0045】
ポリエステルマルチ繊維Aとポリエステルマルチ繊維Bとの複合割合(混繊重量比)は、ポリエステルマルチ繊維A/ポリエステルマルチ繊維Bの重量比で45/55〜70/30である必要がある。特にポリエステルマルチ繊維Aの方が多い方が本発明の効果が発生しやすいので、ポリエステルマルチ繊維A/ポリエステルマルチ繊維Bの重量割合で55/45〜70/30が特に好ましい。なお、今まではポリエステルマルチ繊維A、ポリエステルマルチ繊維Bは夫々1本の糸条を例として説明したが、これらは勿論2本以上の糸条を用いてもよく、要するに本発明が要件としている物性を満足する繊維であれば何本の糸条を用いてもよい。さらには、本発明にかかる上記物性を満足しない第3の糸条を添えて複合しても構わない。例えば、金属メッキ繊維やカーボン粒子混入繊維を複合して導電性を付与してもよいが、このような繊維の割合が多くなりすぎると、本発明の目的である皺回復性の改善が不十分となるので、併用率は高々30%とするのが望ましい。
【0046】
本発明の混繊糸はポリエステルマルチフィラメントAが混繊糸の外層部(鞘部)、ポリエステルマルチフィラメントBが内層部(芯部)を構成していることが好ましい。このような構成のとき、風合い、ソフト性、皺回復性がより向上する。芯鞘構造とするには繊維或いは布帛等の繊維構造物とした後に沸水処理することにより達成することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例中の各測定項目は下記の方法で測定した。
【0048】
(1)布帛の風合い
(ソフト感)
レベル1:ソフトでしなやかな感触がある
レベル2:ややソフト感が乏しいが反撥性は感じられる
レベル3:カサカサした触感あるいは硬い触感である。
【0049】
(2)帯電性試験方法
本発明の複合延伸糸を、筒編みし、染色し、調湿後、試験片をコロナ放電場で帯電させた後、試験片を回転させながら摩擦布で摩擦し、発生した帯電圧を測定する。
L1094帯電性試験方法D法(摩擦帯電圧測定法)に順ずる。
制電効果については、摩擦帯電圧が、約2000V以下(好ましくは1500V以下)であれば、制電効果が奏される。
【0050】
(3)伸度(EL)
JIS L 1013に準拠して測定した。
【0051】
(4)10%伸長時弾性回復率(ER)
JIS L 1013に準拠し、試料の試長を25cmとして初荷重をdtex当り1/30g掛けた状態で両端をエアチャックで把持固定する。測定条件は引張速度を20%/分として10%伸長させたのち、返り速度を20%/分で除重しながら、初荷重点まで返す。測定回数は3回行いその平均値を求めた。
10%伸長時弾性回復率=(10%伸長時の伸び−残留伸び)/10%伸長時の伸び×100
【0052】
(5)伸長剛性率(EM)
定速伸長引張試験機とこれに連動した記録装置を用いて測定する。試料の試長を25cmとして初荷重をdtex当り1/30g掛けた状態で両端をエアチャックで把持固定する。測定条件は引張速度20%/分で初期荷伸曲線図により最傾斜曲線部分に接線を引き、100%伸長時の応力を読み取る。測定は5回行い、その平均値を求めた。
伸長剛性率(EM)=9×100×1%伸長時の応力(g)×試料比重/繊度(dtex)
【0053】
(6)沸水収縮率(BWS)
試料を検尺機(1周1.125m)にて10回転し綛を作製する。次に、dtex当り1/30gの軽荷重を掛けて綛の長さを測定する。次に軽荷重を外し、収縮が防げられない様にガーゼに包みさらに金網カゴに入れて沸水中に30分間浸漬させた後、取り出して布で水分を切り自然乾燥し再び軽荷重を綛に掛けて長さを計る。沸水収縮率は次式より算出し、測定はn=5で行ってその平均値を求めた。
沸水収縮率(BWS)=(浸漬前の長さ−自然乾燥後の長さ)/浸漬前の長さ×100
【0054】
(7)熱応力(TS)(160℃における)
熱応力測定器と、これに連動した記録装置を用いて測定する。資料はサンプリング治具を用いて5cmの輪を作る。次に熱応力測定器と記録装置を20℃〜300℃、応力0〜20gの範囲が測定可能な状態に準備し、先にサンプリングした試料5cmの輪を熱応力測定器の上部、下部のフックに掛けてdtex当り1/30gの初荷重を掛けた後、熱応力の測定に入る。昇温速度は300℃/120秒で行う。300℃に昇温した時点で測定を完了する。測定は3回行う。熱応力(160℃)は、160℃点の応力gを読取り、1dtex当たりの応力に換算した。
【0055】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール60部、酢酸カルシウム1水塩0.06部(テレフタル酸ジメチルに対して0.066モル%)および整色剤として酢酸コバルト4水塩0.013部(テレフタル酸ジメチルに対して0.01モル%)をエステル交換反応缶に仕込み、この反応物を窒素ガス雰囲気下で4時間かけて140℃から220℃まで昇温し、反応缶中に生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反応させた。エステル交換反応終了後、反応混合物に安定剤としてリン酸トリメチル0.058部(テレフタル酸ジメチルに対して0.080モル%)、および消泡剤としてジメチルポリシロキサンを0.024部加えた。次に、10分後に、反応混合物に三酸化アンチモン0.041部(テレフタル酸ジメチルに対して0.027モル%)を添加し、同時に過剰のエチレングリコールを留去しながら240℃まで昇温し、その後、反応混合物を重合反応缶に移した。次いで1時間40分かけて760mmHgから1mmHgまで減圧するとともに240℃から280℃まで昇温して重縮合反応せしめた後、
【0056】
(ポリエステルCの作成)
制電剤としてポリオキシアルキレン系ポリエーテルとしてPEG20000を4部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを2部、真空下で添加し、さらに240分間重縮合反応せしめ、次いで酸化防止剤としてチバカイギー社製イルガノックス1010を0.4部真空下で添加し、その後さらに30分間重縮合反応を行なった。重合反応工程で、制電剤を添加し、得られたポリマーの固有粘度は0.657、軟化点258℃であった。
【0057】
(ポリエステルDの作成)
制電剤を添加しないものをポリエステルDとし、常法によりチップ化した。
【0058】
(ポリエステルマルチ繊維Aの製造)
製糸化は以下の通り行った。乾燥ポリマーを紡糸設備にて各々常法で溶融し、ギヤポンプを経て2成分複合紡糸ヘッドに供給した。芯と鞘ポリマーの比率が表1記載の値となるように設定した。同時に供給された芯部と鞘部の溶融ポリマーは、ノズル孔径0.25mmの円形複合紡糸孔を72個穿設した紡糸口金から、通常のクロスフロー型紡糸筒からの冷却風で冷却・固化し、紡糸油剤を付与しつつ一つの糸条として集束し、3000m/分の速度で引き取り、複屈折率0.035の90dtex/72フィラメント(単糸繊度1.25dtex)の芯鞘型ポリエステル未延伸糸を得た。伸度(ELA)は120%、10%伸長時の弾性回復率(ERA)は30%、伸長剛性率(EMA)は3.92GPa(400kg/mm)、結晶化度(XpA)は40%、沸水収縮率(BWSA)は1%、160℃における熱応力(TSA)は0.26mN/dtex(30mg/dtex)であった。
【0059】
(ポリエステルマルチ繊維Bの製造)
一方、イソフタル酸を10モル%共重合した固有粘度(35℃のオルソクロロフェノール溶液で測定)が0.64のポリエチレンテレフタレートを紡糸口金から溶融吐出し、該吐出糸条を冷却固化させた後に油剤を付与し、紡速1200m/分で一旦捲取った後、予熱ローラー温度85℃、熱セットヒーター(接触式)温度170℃、延伸倍率3.1倍、伸速度1200m/分で行い55dtex/12フィラメントのポリエステルマルチ繊維B(単糸繊度4.6dtex)を得た。ポリエステルマルチ繊維Bの伸度(ELB)は30%、伸長剛性率(EMB)は11.77GPa(1200kg/mm)、沸水収縮率(BWSB)は17%、160℃における熱応力(TSB)は4.4mN/dtexであった。
【0060】
(混繊糸の作成)
前記制電性ポリエステルマルチ繊維Aを、予熱ローラー温度110℃、熱セットヒーター(非接触式)温度230℃、弛緩率2%、速度600m/分で弛緩熱処理した後、前記ポリエステル繊維Bと合糸(ポリエステルマルチ繊維A:ポリエステルマルチ繊維B=55:45とした)して空気交絡ノズルで混繊交絡して複合糸となし、ワインダーに捲取って150dtex/84フィラメントの混繊糸を得た。制電性ポリエステルマルチ繊維Aの単糸繊度は1.2dtexであった。
得られた混繊糸を経糸及び緯糸に用い、羽二重に製織し、常法にしたがって精練、熱セット、染色を施して無地の染め織物を得た。
【0061】
なお、織物の風合についての各評価項目は、熟練した5人のパネラーによる官能評価で、全員が極めて良好と判定したものを(良)、3人以上が良好と判断したものを(可)、3人以上が不良と判定したものを(不可)と、三段階にランク付けした。
また皺回復性の評価としては、図1のような器具に織物を筒状に挿入し、これに重しを置いて3時間放置後、重しを取って30分放置した時の皺の程度を表1の基準で採点したものである。
【0062】
[実施例2〜3、比較例1〜5]
表2に示す条件で行った以外は実施例1と同様な方法で行った。
【0063】
[比較例6]
実施例1において混繊配合比率(重量)を、ポリエステルマルチ繊維A:ポリエステルマルチ繊維B=10:90とした以外は同様に行った。
【0064】
[比較例7]
実施例1においてポリエステルマルチ繊維Aを弛緩熱処理しなかった以外は同様に行った。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0067】
細繊度で風合いに優れ、皺回復性も向上しているので、用途として、スポーツ、学生服、ユニフォームに有用である。
【符号の説明】
【0068】
(イ):皺回復評価器具に織物を挿入した状態
(ロ):織物に重しを置いた状態

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単糸繊度が1.5dtex以下で、伸度(ELA)が80%以上、10%伸長時の弾性回復率(ERA)が50%以下、伸長剛性率(EMA)が5.89GPa以下、結晶化度(XpA)が25%以上、沸水収縮率(BWSA)が3%以下、160℃における熱応力(TSA)が0.44mN/dtex以下の芯鞘型複合繊維からなるポリエステルマルチ繊維Aを弛緩熱処理した後、伸度(ELB)が40%以下、伸長剛性率(EMB)が7.85GPa以上、沸水収縮率(BWSB)が5%以上、160℃における熱応力(TSB)が0.88mN/dtex以上のポリエステルマルチ繊維Bと合糸し交絡処理してなるポリエステル混繊糸であって、下記要件を満足することを特徴とするポリエステル混繊糸。
1)ポリエステルマルチ繊維Aの芯鞘型複合繊維の芯成分が制電性ポリエステルC、鞘成分が艶消し剤をポリエステル全重量に対して0〜10wt%含むポリエステルDから構成されること。
2)制電性ポリエステルCが芳香族ポリエステル100重量部に対して、制電剤として、下記一般式(1)で表されるポリオキシアルキレン系ポリエーテルを0.2〜30重量部及び該ポリエステルと実質的に非反応性の有機イオン性化合物0.05〜10重量部を含有してなる制電性ポリエステルであること。
O−(CHCHO)(RO)−R 式(1)
[式中、Rは炭素原子数2以上のアルキレン基又は置換アルキレン基、Rは水素原子、炭素原子数1〜40の一価の炭化水素基、炭素原子数2〜40の一価のヒドロキシ炭化水素又は炭素原子数2〜40の一価のアシル基、nは1以上の整数、mは1以上の整数]
3)ポリエステルマルチ繊維Aの芯鞘型複合繊維の芯部の面積と鞘部の面積との比が5:95〜80:20であること。
4)ポリエステルマルチ繊維A/ポリエステルマルチ繊維Bの配合重量比が45/55〜70/30であること。
5)混繊糸の摩擦帯電圧が2000V以下であること。
6)ポリエステルマルチ繊維Aの紡糸速度が2000〜4500m/分であること。
【請求項2】
交絡が空気噴射交絡装置により施され、その際の空気温度が常温で行われたものである請求項1記載のポリエステル混繊糸。

【図1】
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【公開番号】特開2012−12747(P2012−12747A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152889(P2010−152889)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】