説明

盗難防止シート

【課題】複雑な機構を設けることなく、車両の盗難者の窃盗意欲を低下させる。
【解決手段】盗難防止シート1は折り曲げ自在なシートであり、その色は蛍光色の黄色やピンク等の目立つ色になっている。自転車の所有者は自転車から離れる場合、盗難防止シート1を、自転車のハンドル、フレームまたはスポーク等の棒状の部材に掛ける。そして、鳩目4Aと鳩目4Bを重ね、南京錠のフック部を鳩目4Aと鳩目4Bとに通した後、南京錠をロックする。自転車の所有者は錠を解錠して盗難防止シート1を自転車から外すことができるが、盗難者は、錠を解錠できないため、盗難防止シート1を自転車から外すことができない。盗難者が、盗難防止シート1を外すことなく、自転車を盗んで走行すると、盗難防止シート1が人目に付き、盗難防止シート1を付けたまま自転車に乗っている者は、直に盗難者であると認識されることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の盗難を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車中の自転車が盗まれないようにするために、従来からワイヤー錠やU字型の錠等の各種の自転車用錠が考案されている。また、近年は、従来の錠とは異なり、持ち主が自転車から離れる際にサドルを傾けて固定させることにより、自転車が盗まれるのを防ぐ技術も考案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示された自転車は、自転車の持ち主が自転車から離れる際には、サドルが前方に傾けて固定されると共に、スタンドが立てられた状態で固定される。特許文献1に開示された自転車が盗まれた場合、盗難者は、サドルに座ることができず、不自由な姿勢のまま自転車のペダルを踏み続けることとなるため、盗難者においては、「盗んでも乗り辛い」という意識が働き、ワイヤー錠のみしか使用されていない自転車と比較して、盗まれにくくなる。
また、特許文献1に開示された自転車では、サドルが傾いたままで走行すると、サドルが傾いていることが他人からは一目瞭然となる。自転車の所有者は、サドルを水平にして普通に走行することができるため、サドルを傾けたまま走行している者は、自転車の真の所有者ではない者、即ち、盗難者であると認識されてしまう。盗難者においては、「盗んで走行すると目立ってしまう」という意識が働くため、ワイヤー錠のみしか使用されていない自転車と比較して盗まれにくくなる。
【0003】
【特許文献1】特開平10−287285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、特許文献1に開示された自転車によれば、盗難者の窃盗意欲を低下させることができるため、従来のワイヤー錠のみが使用されている自転車と比較して、自転車の盗難を防ぐ効果が大となる。しかしながら、特許文献1に開示された自転車は、サドルを傾けて固定するという特殊な機構を備えることにより自転車の製造コストが上がってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、複雑な機構を設けることなく、盗難者の窃盗意欲を低下させることを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明は、少なくとも二以上の穴が所定の距離をおいて設けられたシートであって、該シートの一部分または全体が所定の明度以上で、且つ、所定の彩度以上の色であることを特徴とする盗難防止シートを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複雑な機構を設けなくとも盗難者の窃盗意欲を低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る盗難防止シート1を示した図であり、図2は、盗難防止シート1の分解図である。また、図3は、盗難防止シート1の縁部の拡大断面図である。
【0009】
長方形のシート2は、例えば、合成繊維を織ったシートであり、折り曲げ自在となっている。図2に示したように、シート2においては、二箇所の角部に穴3Aおよび3Bが設けられている。なお、シート2は、蛍光色の黄色やピンク等の目立つ色であるのが好ましい。また、シート2の長さおよび幅は特に限定されないが、人目に付きやすくするという観点から、例えば、長さは30cm以上、幅は10cm以上あるのが好ましい。
【0010】
雄型鳩目金具4A−2,4B−2および雌型鳩目金具4A−1,4B−1は、シート2に鳩目4A,4Bを形成するための部材である。雄型鳩目金具4A−2と雄型鳩目金具4B−2は、円筒状の筒部4Cを備えている。雄型鳩目金具4A−2はシート2の裏面から穴3Aに挿通されると共に、シート2を挟んで雄型鳩目金具4A−2に対向している雌型鳩目金具4A−1の開口部に挿通される。また、雄型鳩目金具4B−2はシート2の裏面から穴3Bに挿通されると共に、シート2を挟んで雄型鳩目金具4B−2に対向している雌型鳩目金具4B−1の開口部に挿通される。開口部に挿通された筒部4Cを筒部4Cの軸方向へ圧すると、筒部4Cが雌型鳩目金具の開口部の径より大きくなるように変形する。これにより、雄型鳩目金具と雌型鳩目金具がシート2を挟んで固定され、筒部4Cの内側部分が鳩目となる。
【0011】
シート2の縁部に位置する線状部材5は、金属製の折り曲げ自在な線状の部材である。図3に示したように、シート2の縁部は、線状部材5を包むように折り曲げられた後、シート2に縫い付けられている。このため、線状部材5は、外部からは人目に付かないようになっている。なお、線状部材5は例えば、錆びにくいステンレス等の部材であるのが好ましい。
【0012】
自転車の所有者は、自転車から離れる場合には、上述した構成の盗難防止シート1を、例えば、自転車のハンドル、フレームまたはスポーク等の棒状の部材に図4に示したように掛ける。そして、鳩目4Aと鳩目4Bを重ね、例えば、南京錠のフック部を鳩目4Aと鳩目4Bとに通した後、南京錠をロックする。
【0013】
自転車の所有者は錠を解錠して盗難防止シート1を自転車から外すことができるが、盗難者は、錠を解錠できないため、盗難防止シート1を自転車から外すことができない。
盗難者が、盗難防止シート1を外すことなく、自転車を盗んで走行すると、盗難防止シート1が人目に付くため、盗難防止シート1を付けたまま自転車に乗っている者は、直に盗難者であると認識されることとなる。
盗難者においては、盗難防止シート1が目立つ色に染められているため、「盗んで走行すると目立ってしまう」という意識が働くと共に、「盗んで走行すると直に盗難者であると認識される」という意識が働くので盗難者の窃盗意欲を低下させることができる。
また、本実施形態においては、盗難防止シート1は、シート2、雄型鳩目金具4A−2,4B−2、雌型鳩目金具4A−1,4B−1、線状部材5といった、安価な部材で構成されているので、自転車の製造コストを大きく上げることがない。
【0014】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。
【0015】
上述した実施形態においては、シート1の形状は長方形に限定されるものでなく、三角形や台形、円形や楕円形等、他の形状であってもよい。また、本発明においては、盗難防止シート1の大きさは特に限定されないが、遠方から見ても盗難防止シート1が認識できるような大きさであることが好ましい。また、上述した実施形態においては、鳩目4A,4Bは、シートの角部に設けられているが、鳩目の位置は、シート2の角部に限定されるものではない。ハンドルやフレームに掛けた時に、鳩目4A,4Bを重ねることができて、重ねられた鳩目の各々に錠を通すことができるのであれば、例えば、図5に示したように、所定の距離をおいて鳩目4A,4Bを設けるようにしてもよい。また、上述した実施形態においては、鳩目の数は2つに限定されるものではなく、2つ以上設けるようにしてもよい。
【0016】
上述した実施形態においては、線状部材5は、シート1の縁部のみに配設されているが、図6に示したように線状部材5を平行に並べ、この平行に並べられた線状部材5を2枚のシート1A,1Bで挟んだ後、2枚のシートの縁部を縫いあわせるようにしてもよい。また、この態様においては、線状部材5を格子状に並べ、この格子状に並べられた線状部材5を2枚のシート1A,1Bで挟んだ後、2枚のシートの縁部を縫いあわせるようにしてもよい。また、2枚のシートで挟むのではなく、シート2に線状部材5を織り込むようにしてもよい。
また、上述した実施形態においては、アラミド繊維等、所謂、難切断繊維を織ってシート2を形成するようにしてもよい。また、このように難切断繊維を織ってシート2を形成する場合、鳩目金具を使用しないようにしてもよい。
また、上述したシート2には、撥水加工や反射加工(ガラス微粉末を添付する加工など)を施すようにしてもよい。
また、シートの縁部分(線状部材5が挿入される部分)には、シート2が切断された時に蛍光液などが噴出する機構を設けてもよい。例えば、細いチューブに液体を挿入し、シート2の縁部が切断されると、このチューブが同時に切断され、中の液体が破壊者にかかり、犯人特定の目印になるように構成してもよい。
【0017】
上述した実施形態においては、目立つ色であれば、シート2の色は蛍光色だけでなく、例えば、明度が高い色や彩度が高い色、または明度と彩度が共に高い色等、他の色であってもよい。また、上述した実施形態においては、シート2の全体ではなく、一部分のみを蛍光色とするようにしてもよい。
また、上述した実施形態においては、シート2にLED等の発光素子を配設し、配設した発光素子を点灯させるようにしてもよい。
また、シート2には例えば、図7に例示したように、「警察」や「防犯協会」など防犯に関する文字を記入するようにしてもよい。また、この場合、シート2に反射加工を施した部分(反射加工部6)を設けるようにしてもよい。
【0018】
上述した実施形態においては、盗難防止用シートに取り付ける南京錠のカギと、自転車の車輪のスポークの動きを拘束する錠(後輪を拘束するリング状など)のカギとが共通になるように構成してもよい。
【0019】
盗難防止シート1は、車両への使用に限定されるものではなく、例えば、かばんやスーツケース等の把手の部分に盗難防止シート1をつけるようにしてもよい。かばんやスーツケース等から離れる際に盗難防止シート1をつけるようにすれば、盗難者が、盗難防止シート1を外すことなく、かばんやスーツケースを持ち去ると、盗難防止シート1が人目に付くため、盗難防止シート1が付いたかばんやスーツケースを持っている者は、直に盗難者であると認識されることとなる。
【0020】
上述した実施形態においてシート2は、縦糸にポリエステルなどの合成繊維、横糸にアラミド繊維を使用して織った織物であってもよい。また、縦糸にアラミド繊維、横糸にポリエステルなどの合成繊維を使用して織った織物であってもよい。
また、アラミド繊維とポリエステルなどの合成繊維とにより織られた織物を使用する場合、図8に示したように、合成繊維のみで織られた2枚のシート2Aの間に、アラミド繊維とポリエステルなどの合成繊維とにより織られた織物2Bを挟み、各シート2Aと織物2Bとを固着させたものをシート2として使用するようにしてもよい。
【0021】
上述した実施形態においては、シート2の表面と裏面とで別々の文字や図形を記入するようにしてもよい。
【0022】
上述した実施形態においては、シート2は合成繊維またはアラミド繊維を織った織物を使用できるが、シート2は織物に限定されるものではない。例えば、プラスチックなどの合成樹脂で形成された変形自在の薄いシートであってもよい。また、シート2が合成繊維の織物である場合には、上述したように線状部材5がシート2の縁部に包まれているが、合成樹脂でシート2を形成する場合、シート2の縁部に線状部材5を固着するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る盗難防止シートを示した図である。
【図2】同盗難防止シートの分解図である。
【図3】同盗難防止シートの縁部の部分拡大図である。
【図4】同盗難防止シートを自転車に取付けた状態を示した図である。
【図5】本発明の変形例を説明するための図である。
【図6】本発明の変形例を説明するための図である。
【図7】本発明の変形例を説明するための図である。
【図8】本発明の変形例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0024】
1・・・盗難防止シート、2・・・シート、3A,3B・・・穴、4A,4B・・・鳩目、4A−1,4B−1・・・雌型鳩目金具、4A−2,4B−2・・・雄型鳩目金具、5・・・線状部材、6・・・反射加工部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二以上の穴が所定の距離をおいて設けられたシートであって、
該シートの一部分または全体が所定の明度以上で、且つ、所定の彩度以上の色であることを特徴とする盗難防止シート。
【請求項2】
前記シートの縁部に沿って、折り曲げ自在な線状部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の盗難防止シート。
【請求項3】
前記シートが難切断繊維で織られていることを特徴とする請求項1に記載の盗難防止シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−128056(P2007−128056A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271564(P2006−271564)
【出願日】平成18年10月3日(2006.10.3)
【出願人】(302021765)有限会社フラッグ タナカ (1)