説明

監視カメラシステム及びその運用方法

【課題】 一般通行人のプライバシー侵害の危険性を大幅に低減できる監視カメラシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】 予め定めた条件に応じて撮影された映像を秘匿化するか秘匿化しないかを判定するための判定手段及び前記映像を秘匿化するための映像秘匿化手段を備えた撮影装置と、前記撮影装置とは別に構成された、前記映像の秘匿化を解除するための秘匿化解除装置とを備え、前記撮影装置には、前記映像を記録するための映像記録媒体を接続可能に構成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の条件下において画像を暗号化して保存することを特徴とする監視システム及びその運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視カメラシステムにおいては、保存される画像は、当該システムを構成するカメラの所有者により撮影された映像の閲覧が可能であった。そのため、公共の場所をその視野に入れる際には、一般通行人のプライバシー侵害の危険性が懸念されることがしばしばあった。
ロンドン市内には50万台もの監視カメラが稼動していると言われ、プライバシー侵害に関する懸念が表明されることが多い。一方、2005年7月7日及び同月21日のロンドン同時多発テロにおいては、監視カメラが容疑者特定に決定的な貢献をした。監視カメラの存在はテロを未然に防ぐことはできなかったが、容疑者を速やかに特定したことは社会に対する大きな貢献であった。
監視カメラ設置が、犯罪抑止、及び、容疑者特定に対する効果は大きいが、同時に、プライバシー侵害に対する危険性が懸念されることも事実である。しかしながら、「見て見ぬ振り」に代表される個人主義の否定的側面の蔓延、世界的な治安の悪化、テロリズムの台頭を受けて、監視カメラ普及の流れは、もはや止め得ないものとなっていると考えられる。それ故、監視カメラが持つ潜在的な長所を伸ばし、潜在的な短所を抑制することは、社会的に非常に意義深いことである。
【0003】
このような状況下において、マンション等の集合住宅監視通話システムとして、インターホンを使用したものが、例えば、特許文献1に開示されている。この文献に開示されたシステムでは、住人が、他人の映像が表示されることがあり、防犯目的でインターホンを使用しようとする場合には、プライバシー上の問題があった。
【0004】
また、通常、監視カメラシステムにおいて、監視カメラの設置台数は多い方が望ましいが、複数の監視カメラからの映像情報を回線を通じて集中管理するには、回線の管理のためのコストがかかるという問題や、監視カメラに撮影された映像には、上記したように不審人物等の対象となる者以外にも不特定の者が撮影されているために、誰もが閲覧できるような装置では、対象以外の人物の個人のプライバシーが侵害されるという問題があった。
【0005】
これらの問題を解決するために、例えば、特許文献2や特許文献3に提案がなされている。
特許文献2には、利用者が送信する画像を選択して管理者に送信するものであるか、或いは、所定の条件を満たす時のみ管理者に画像を送信することについて提案がされ、前者の場合には、利用者の判断に依存するため不審人物等を特定することが難しいことがあり、後者の場合には、管理人以外が映像を閲覧できる可能性があるためプライバシーを保護するためのセキュリティが確保できないという問題がある。
【0006】
特許文献3には、プライバシーを保護するために、撮像手段が撮影した画像は、記憶手段に記憶され、この記憶手段を回収する等して画像を閲覧できるようにする提案がされているが、撮像手段から記憶手段を取り外す際に暗証番号が必要なものであり、回収された記憶手段を解析すれば画像が閲覧できてしまうという問題がある。
【0007】
【特許文献1】特開2007−150398号公報(段落0020)
【特許文献2】特開2005−303646号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2005−159691号公報(段落0027)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、発明者らが、推し進めるe自警ネットワークのコンセプトを普及させる上で、最大の障害となっていた「一般通行人のプライバシ侵害の危険性」を大幅に低減できる防犯カメラシステム及びその運用方法を提供することを目的とする。
e自警ネットワークのコンセプトは、広く普及したITを利他主義に基づいて利用することにより、一般市民の僅かな努力で、地域社会の安全を達成しようとするものである。(1)e自警ネットワークは、今日において広く普及した技術(PC、ソフトウェア、カメラなど)で容易に安価に実現できる。
(2)しかし、10年前の技術では、自宅前を24時間365日、監視し続けるには非常に大きな費用が必要であり、一般市民がそれをすることは、事実上、不可能であった。
(3)一方、10年後を考えると、新築住宅へのホームコンピュータの導入とそのTVインターホンへの接続、乗用車の知能化と複数のCCDカメラの導入などが予測され、e自警ネットワークの普及活動に拠らなくても、同種の社会情報基盤は、遅かれ早かれ、出現するものと予想される。言い換えれば、近い将来においては、e自警ネットワークのコンセプトを実現することが、追加コストなしに実現できる環境になると予想される。
一方、誘拐、強盗などの凶悪犯罪が、一般住宅地の中でも、頻繁に発生するようになってきており、その度に、目撃情報の少なさが問題になっている。そう考えると、一般市民一人一人は、遅かれ早かれ、
(1)「自宅の周りで起こることに注意を払うことは、市民としての責務である。」
(2)「自宅前を、誘拐された子供を、見ないで通すようなことは避けるべきである。」
という考え方に象徴されるe自警ネットワークの考え方に対する判断、態度表明を求められることになるであろう。
即ち、
(1)「やる気さえ出せば、僅かなコストで実現可能」であることが示されると、「忙しくて無理。コスト的に無理」という言い訳が出来なくなる。
(2)「簡単にできること(=自宅前で起こる出来事に24時間365日注意を払うこと)」に対して、市民一人一人がその功罪(メリットとデメリット)について考えることを求められることになる。
(3)即ち、「自宅前を見守ることにより発生するプライバシ侵害の危険性」と、「自宅前を見守らないことにより、凶悪犯罪の容疑者、誘拐された子供をみすみす見逃してしまう危険性」との両方を、慎重に天秤にかけて判断することが、市民一人一人に求められることになる。
(4)ITに代表される現代の科学技術により、市民一人一人は、否応無く強力な能力を与えることになり、その使い方を問われることになる。この場合「使わない」という選択も、市民としての責任を伴う選択の一つであると考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明者等は鋭意検討した結果、下記の解決手段を見いだした。
即ち、画像を秘匿化(暗号化)保存することにより、画像の「所有者」と「閲覧者」を明確に区別する新しいコンセプトを発案した。上記2つのコンセプトを併用することにより、防犯カメラの唯一最大の欠点ともいえる「プライバシー侵害の可能性」をほぼ完全に解消した、「夢の防犯カメラシステム」が実現することになる。
発案したプライバシー保護に関する新しいコンセプトの概要は以下のようである。
(1)画像の「所有者」と、「閲覧者」を、完全に分離することにより、プライバシー保護を徹底する。
(2)保存画像を暗号化し、防犯カメラシステムの「個々の所有・運用者」は、保存画像の閲覧ができないようにする。
(3)警察など、予め指定された「画像の閲覧権者」のみが、暗号を解き、画像を閲覧できる。
(4)但し、「画像の閲覧権者」である警察署も、画像の「所有者」である各家庭の理解を得て、画像の提供を受けない限り、画像を見ることはできない。
(5)地域の安全・安心を脅かすような事態(不審者の出現、事件・事故の発生)が生じた場合に限り、各家庭は、警察署に、暗号化された画像を提供する。警察署では、それらの画像の暗号化を解除し、捜査に役立てる。
(6)犯罪などが起こらない限り、画像は一度も閲覧されることなく、一定期間後に自動消去される。
【0010】
また、本出願の発明者は、「暗号化保存」を保障することを目的とした提案(特願2007−205382)を先に行い、そこでは、剥がすと破壊されるシールでカメラを封印することも提案している。
しかしながら、防犯カメラが取得する全ての画像を暗号化するというのでは、不都合な場合が多々あった。そこで、今回は、「あらかじめ設定した条件」に応じて、画像を通常形式で保存する場合と、暗号化して保存する場合とに分ける方法を発案した。
即ち、本願の監視カメラシステムは、請求項1に記載の通り、予め定めた条件に応じて撮影された映像を秘匿化するか秘匿化しないかを判定するための判定手段及び前記映像を秘匿化するための映像秘匿化手段を備えた撮影装置と、前記撮影装置とは別に構成された、前記映像の秘匿化を解除するための秘匿化解除装置とを備え、前記撮影装置には、前記映像を記録するための映像記録媒体を接続可能に構成したことを特徴とする。
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1の監視カメラシステムにおいて、前記撮影装置に前記映像記録媒体が接続された状態において、前記映像記録媒体に記録された前記映像を所定の時間毎に消去するための映像消去手段を、前記撮影装置が備えたことを特徴とする。
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1又は2に記載の監視カメラシステムにおいて、前記撮影装置を住戸外に配置し、前記撮影装置からの映像を表示するための情報端末を住戸内に配置することによりインターホンとし、前記判定手段により、前記撮影装置からの前記画像を秘匿化して記録する場合を設けることを特徴とする。
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の監視カメラシステムにおいて、前記撮影装置に、前記映像記録媒体と、前記映像を秘匿化するために必要な情報が記録された秘匿化情報記録媒体とを択一的に接続できるように構成し、前記撮影装置に前記秘匿化情報記録媒体を接続後に、前記撮影装置が前記秘匿化するために必要な情報を読み込み、前記情報に基づいて、前記秘匿化手段は前記映像を秘匿化して前記映像記録媒体に記録できるように構成したことを特徴とする。
また、請求項5に記載の本発明は、請求項1乃至4の何れか1項に記載の監視カメラシステムにおいて、前記秘匿化情報記録媒体には、前記情報端末とは別に構成された秘匿化が解除された前記映像を表示するための管理表示装置のみにより前記秘匿化するために必要な情報が記録されるようにしたことを特徴とする。
また、請求項6に記載の本発明の監視カメラの運用方法は、予め定めた条件に応じて撮影された映像を秘匿化するか秘匿化しないかを判定するための判定手段及び前記映像を秘匿化するための映像秘匿化手段を備えた撮影装置と、前記撮影装置とは別に設置・使用される、前記映像の秘匿化を解除するための秘匿化解除装置を備えた監視カメラシステムにおいて、前記秘匿化された映像を、前記撮影装置から前記秘匿化解除装置に移し、その後、前記映像の秘匿化を解除することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、映像の「所有者(撮影者)」と「閲覧者」とを完全に分離することができプライバシーの保護を徹底することができる。また、犯罪等が起こらない限り、映像は一度も閲覧されることなく、一定期間後に自動消去される。
また、本発明の監視カメラシステムをインターホンに適用することにより、撮影装置により撮影される映像を、インターホンを使用していない時には秘匿化し映像記録媒体に記録するので、住宅街等において、地域の安全等を高めるために別の監視カメラを設置する必要がない。更に、秘匿化された映像は、インターホンが設置された住戸の住人であっても閲覧することはできないため、不審者以外が撮影されていた場合であっても、特定の者のみが秘匿化を解除して映像を閲覧できるため、個人のプライバシーが確保される。
また、インターホンには、映像記録媒体と、秘匿化情報記録媒体とを択一的に接続できるように構成し、秘匿化情報記録媒体を接続して初めて、秘匿化に必要な情報に基づいて映像の秘匿化を開始して映像記録媒体に記録することになるので、映像記録媒体のみが盗まれても、映像を閲覧することができないため、セキュリティの確保ができる。
また、秘匿化情報記録媒体への秘匿化に必要な情報の記録を、特定の管理表示装置のみにより行うようにすれば、当該情報を記録するための専用の装置の必要がなく、更に、セキュリティが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の監視カメラシステムは、上記の通り、予め定めた条件に応じて撮影された映像を秘匿化するか秘匿化しないかを判定するための判定手段及び前記映像を秘匿化するための秘匿化手段を備えた撮影装置と、前記撮影装置とは別に構成された、前記映像の秘匿化を解除するための秘匿化解除装置とを備え、前記撮影装置には、前記映像を記録するための映像記録媒体を接続可能に構成したものである。
上記予め定めた条件とは、具体的には、撮影装置に映像記録媒体が接続されている場合、所定の時間帯、留守中等が該当する。また、「予め設定した条件」として、時間軸上で生じるイベント(インターホンのボタンが押される、敷地内で動きがある、など)が考えられるが、空間内で区別することも考えられる。
例えば、次のような2つの場合分けも考えられる。
(1)敷地以外をモザイク化した画像は通常形式で保存する。
(2)敷地外も鮮明に写ったオリジナル画像は暗号化して保存する。
即ち、一枚の画像の中で所有者の敷地内と敷地内を区別して、敷地外の部分にモザイクをかけるなどして不鮮明にしたものは、通常の形式で保存(and/or 表示)する。同時に、敷地外の部分もそのままの画質のものは、秘匿化した上で保存する。
このような条件を満たす場合に、判定プログラムを実行可能な電子回路により構成された判定手段により、映像を秘匿化するための秘匿化手段により映像が秘匿化されることになる。そして、秘匿化された映像は、撮影装置に接続可能に構成された映像記録媒体に記録されることになる。そして、この映像記録媒体に記録された映像は、撮影装置とは別体として構成された秘匿化解除装置により、秘匿化が解除されることになる。そして、秘匿化が解除された映像は、例えば、撮影装置とは別体として構成された管理表示装置により、映像が閲覧可能となる。尚、秘匿化解除装置は、管理表示装置と分離しなくてもよい。また、秘匿化解除装置は、暗号化を解除したファイルを保存する記録装置(USBメモリ、ハードディスクなど)に接続してもよい。
尚、「判定手段」が選択する保存形態としては、次の3つから、自由に設定(選択)できる。
(1)秘匿化しないで保存する。
(2)秘匿化して保存する。
(3)保存しない。
表示方法は、次の3つから、自由に設定(選択)できる。
(1)そのまま表示する。
(2)モザイク等を掛けて表示する。
(3)表示しない
「保存形態」及び「表示形態」とも、上記のように、色々な組み合わせから、自由に、場合ごとの設定をすることが考えられる。
上記のように秘匿化のための条件を予め定めることにより、撮影される者に対しての理解が得られ、結果としてプライバシーを守ることが可能となる。また、秘匿化された状態で記録された映像は、管理表示装置に、秘匿化に必要な情報を入力しなければ閲覧できないので、管理表示装置を有し、且つ、秘匿化情報を知っている者だけが閲覧できることになり、撮影された個人のプライバシーを更に確実に守ることができる。
【0013】
尚、撮影装置を構成するカメラとしては、被写体を撮影できる機能を有する市販のデジタルカメラ等を使用することができる。
また、映像秘匿化手段は、周知の暗号化等に基づいて撮影された映像を暗号化等の秘匿化するための機能を有するプログラムが記録されたメモリと、このプログラムを実行可能なプロセッサー等の演算手段が該当する。尚、秘匿化の方法については、暗号等の秘匿化情報に基づく公知の方法を使用することができる。
また、秘匿化解除装置としては、暗号の復号化等の秘匿化を解除できる機能を有するプログラムを記録されたメモリ等の記録媒体と、このプログラムを実行するための手段であるCPU等の演算装置を備えるものであり、通常のパソコンにより実行が可能である。
上記管理表示装置は、秘匿化の解除された映像を閲覧できるように、ディスプレイ等を備えた通常のパソコン等により実行可能である。
また、映像を記録するための映像記録媒体とは、撮影装置からの映像を直接記録するハードディスクやメモリ以外のものであって、インターホンに外部から接続可能なものをいい、具体的には、取り外しが可能なメモリーカードやカートリッジ式のハードディスク等をいうものとする。
即ち、請求項1に記載の本発明に基づくシステムは、ハードウェアとしては市販されている通常のPCとカメラを用い、ソフトウェアとして本発明に基づく専用のものを使用することができる。
本発明をPCとそれにインストールしたソフトウェアで実現する場合は、次のようなアルゴリズムが一例として考えられる。
監視カメラを接続したPCにインストールするソフトウェアのアルゴリズム
(1)通常は、監視カメラからの画像(静止画、動画)を、秘匿化して保存する。
(2)特別な場合、例えば、被写体の動きが所有者の敷地内で生じているときなどにおいては、画像を通常の形式で保存する。
(監視カメラの視野が、敷地の内部と外部をカバーしている場合)
(3)保存先は、ハードディスク、USBメモリ等如何なる形態のものでもよい。
秘匿化を解除するソフトウェア
(1)画像の閲覧権者が所有・管理するPCにインストールして使用する。
(2)秘匿化解除した画像を表示・印刷・保存する機能のうち、少なくとも、1つを有する。
また、撮影装置には、本発明者が先に提案(特願2007−205382)したように、剥離することにより被着対象の撮影装置が破壊されるシールで撮影装置を封印することが好ましい。本願発明と併用することにより、より高い効果を発揮するからである。
【0014】
また、上記監視カメラシステムにおいて、撮影装置に映像記録媒体が接続されている状態では、映像記録媒体に記録された映像が所定の時間毎に消去できるようにするために映像消去手段を撮影装置に設けることが好ましい。長期に亘り映像が記録された場合に、秘匿化の解除等が可能となる危険性が高まるためである。不要な記録は、できるだけ残さないという基本的な戦略を実行するために必要な機能である。尚、映像消去手段は、メモリ等の映像記録媒体に記録されたデータを消去できる機能を備えたプログラムにより実行することができる。
【0015】
次に、本発明のインターホンを使用した監視カメラシステムは、前記撮影装置を住戸外に配置し、前記撮影装置からの映像を表示するための情報端末を住戸内に配置することによりインターホンとし、前記判定手段により、前記撮影装置からの前記映像が前記情報端末に表示されていない場合等において前記映像を秘匿化するものである。
インターホンを構成する装置は、市販のカメラ付きのインターホンが備えているものであり、撮影装置としては、カメラが該当し、情報端末は、カメラに接続された液晶表示装置等となる。尚、これらの手段の説明は、単に例示であり、市販のインターホンが備えるような他の手段、即ち、住戸外であれば、呼び出し用のボタン、ライト、マイク、赤外線検知センサー等、住戸内であれば、スピーカー等を備えていてもよい。
上記撮影装置は、撮影装置からの映像は、次の3つに場合分けされて処理される。即ち、(1)秘匿化しないで保存する。(2)秘匿化して保存する。(3)保存しない。また、表示については、次の3通りに分けて処理される。即ち、(1)表示する。(2)モザイク等を掛けて表示する。(3)表示しない。モザイク等を掛けて表示することにより、インターホンの運用者であっても、鮮明な画像を見られることが好ましくない状況に対応できる。
例えば、次のような運用形態が考えられる。即ち、撮影装置からの映像は、情報端末に表示されていない状態においても撮影を継続する。そして、情報端末に映像が表示されていない状態において、映像秘匿化手段により、映像を秘匿化する。尚、情報端末に映像が表示されない場合をより具体的に説明すると、例えば、インターホンの呼び出しボタンが押され、住人が情報端末の受話器を取る等の応答動作をしている間を除いた状態である。
上記の構成により、インターホンがインターホンとしての機能をしていない(撮影装置と情報端末とが接続状態にない)状態にある場合には、撮影装置により撮影された映像は防犯上有用なものとして活用できるようになり、しかも、この映像は、秘匿化情報を知っている者、即ち、閲覧の権限を有する者だけが管理表示装置により閲覧することができるため、撮影された個人のプライバシーを守ることができる。
【0016】
次に、インターホンを使用した監視システムについてより好ましい態様について説明する。
上記インターホンは、秘匿化された映像を記録するための映像記録媒体と、前記映像を秘匿化するために必要な情報が記録された秘匿化情報記録媒体とを択一的に接続可能に構成し、秘匿化情報記録媒体を撮影装置とを接続した後に、撮影装置が秘匿化に必要な情報を読み込み、この情報に基づいて映像を秘匿化するとともに映像記録媒体に記録できるように構成し、映像記録媒体に記録された秘匿化された映像は、秘匿化解除装置により秘匿化が解除され、管理表示装置により閲覧できるように構成することが好ましい。
また、秘匿化情報記録媒体は、暗号等の秘匿化に必要な情報が記録されたものであって、撮影装置に外部から接続可能なものをいい、具体的には、取り外しが可能なメモリーカードやカートリッジ式のハードディスク等をいうものとする。これらの映像記録媒体と、秘匿化情報記録媒体とを、物理的に別の記録媒体により構成することにより、インターホンは、最初に秘匿化情報記録媒体から秘匿化に必要な情報を読み込み、この情報に基づいて、撮影装置により撮影された映像を暗号化等の秘匿化を行い映像記録媒体に記録することになる。
このように、映像記録媒体と、秘匿化情報記録媒体とを物理的に別の媒体とし、択一的に接続するようにしたことにより、通常は映像記録媒体が接続されている撮影装置から、この映像記録媒体が盗まれたとしても、この映像記録媒体には、秘匿化情報が記録されていないためセキュリティの確保ができることになる。尚、上記択一的に接続可能に構成する具体的な例としては、例えば、同じ規格のメモリを接続するための接続部(接続ポート)を1つにすることにより行うことができる。
【0017】
また、更に、秘匿化情報記録媒体には、管理表示装置のみにより秘匿化に必要な情報が記録されるようにすることが好ましい。秘匿化に必要な情報の入力と、秘匿化された映像の閲覧を複数の装置で行うことにより更なるセキュリティの確保ができるからである。尚、上記の通り、管理表示装置はパソコンとすることができるため、秘匿化情報記録媒体への秘匿化に必要な情報を記録するためのソフトウェア、例えば、パスワードをメモリカード等に記録できるソフトウェアがパソコンにインストールされていなければ実施することが不可能である。
【0018】
次に、より具体的に、図1を用いて、本発明の一実施の形態について説明をする。
図1(a)は、映像を秘匿化するために必要な情報を、秘匿化情報記録媒体に記録するための装置であり、市販のパーソナルコンピュータ1(以下、「PC」と略す。)にメモリーカードリーダ2が接続して構成されている。このPC1には、秘匿化に必要な暗証番号等の暗号を入力するためのソフトウェアがインストールされている。そして、メモリーカードリーダ2に、秘匿化情報記録媒体となるmicroSDカード(登録商標)3を挿入し、入力された暗号又は暗号に基づく暗号化ソフトウェアを記録する。
次に、同図(b)に示すように、撮影装置としての監視カメラ4に、暗号が記録されたmicroSDカード3を挿入する。この時、microSDカード3に記録された暗号又は暗号化ソフトウェアは、監視カメラ4に自動でロードされるようになっている。そして、microSDカード3を取り外して、次に、同図(c)に示すように、映像記録媒体となる別のmicroSDカード5を挿入する。
その後、撮影を開始することになるが、撮影された映像は、監視カメラ4と情報端末6とが接続されていない時を判定手段(図示せず)により判定し、前記暗号に従って暗号化がなされ、映像記録媒体であるmicroSDカード5に記録される。
撮影終了後、microSDカード5を取り外し、同図(d)に示すように、メモリーカードリーダが接続されたPC7と接続する。このPC7は、管理表示装置となるもので、microSDカード5に記録された映像が閲覧可能なソフトウェアと、暗号を入力することにより、前記映像を復号化するためのソフトウェアがインストールされている。このPC7に、暗号を入力し、microSDカード5に記録された映像が復号化され、初めて映像が閲覧可能となる。
【0019】
上記構成によれば、仮に、microSDカード5が盗難にあったとしても、このmicroSDカード5には、暗号が記録されていないので、映像を閲覧することは非常に困難となるため、セキュリティを向上させることができる。また、microSDカード5のような小型の記録媒体を用いることにより、監視カメラ4の構造を大きくする必要がなく、また、暗号の変更の際に、監視カメラ4にPC等を接続する必要がない。また、秘匿化情報記録媒体として、監視カメラ4から取り外し可能なものを使用することにより秘匿化に必要な情報を監視カメラ4から直接入力できないため、セキュリティを向上させることができる。
【0020】
上記監視カメラ4は、デジタルカメラとしての機能する撮影部、外部記録媒体との接続端子、秘匿化情報記録手段からの暗号又は暗号化ソフトウェアを読み込むためのプログラム、及び、映像を暗号に従って暗号化するためのプログラムを構成要素として備えている必要がある。
具体的な監視カメラの構成図を図2に示す。
図2に示したものでは、外部記録媒体のmicroSDカード5が監視カメラ4の接続端子8に接続された状態を示すものである。図示された通り、microSDカード5は、RAM9やROM10と同様にしてCPU11に接続され、撮影部12からの映像は、画像処理用のIC13を介して、CPU11及びRAM9に接続される。また、図示したものでは、撮影部の付加的な機能として、ライト14及び赤外線センサ15を備えている。赤外線センサ15により、熱感知した場合に、ライト14を点灯し、撮影をしたり、或いは、熱感知した時のみ所定の時間撮影をしたりすることができる。
上記構成により、秘匿化情報記録媒体のmicroSDカード3を接続端子8に接続すると、microSDカード3の中のファイルを検索して、暗号ファイルをRAM9に読み込む。次に、microSDカード3を取り外し、microSDカード5を接続すると、撮影部12からの映像は、画像処理用のIC13を介して、CPU11に転送される。この時、CPU11では、映像を秘匿化するかしないかの判定を行い、秘匿化する場合には、映像を、RAM9内に保存されている暗号に従って、或いは、暗号化ソフトウェアによって暗号化を行う。
【0021】
上記撮影部12は、上記の通り、通常のデジタルカメラ程度の機能を有するものであれば、CMOSやCCD等特に制限をするものではない。尚、本明細書において、撮影される対象は、動画に限られず静止画も含むものとする。また、動画の場合に、音声の有無は問わないものとする。
また、秘匿化情報記録媒体であるmicroSDカード3の中のファイルを検索して、暗号ファイルを読み込むためのソフトウェアは、ROM10内に記録されているが、特定の拡張子が付されたファイル名のものを検索する等の暗号が記録されたファイルを検索により特定できるものであれば特に制限するものではない。
また、映像を暗号に従って暗号化するためのソフトウェアも同様にROM10内に記録されているか、または、RAM9に読み込まれているが、サイファ等の周知の暗号化の方法により行うことができ、このソフトウェアについても特に制限をするものではない。
【0022】
また、本発明に使用する管理表示装置は、PC等の映像を閲覧(静止画の場合には閲覧)できるソフトウェアであれば特に制限するものではない。また、PCを使用することなく、専用のDSP回路などを用いても良い。
【0023】
また、本発明に使用する秘匿化情報記録媒体及び映像記録媒体についても、特に制限するものではなく、microSDカード以外に、SDカード(登録商標)、USB接続のフラッシュメモリ等も利用することができる。
【0024】
上記説明では、本監視カメラシステムをインターホンに適用した例で説明したが、インターホン以外にも、以下の応用例が挙げられる。
(1)タクシーへ搭載される事故画像記録装置: 通常の事故画像記録装置は、衝撃加速度などが検知された前後数十秒間の高精細な動画像を記録することが一般的である。これに、本発明を適用し、そうでない時間においても、画像を暗号化して保存することが考えられる。暗号化して保存する画像は、画質を落とした0.5秒間隔程度の静止画像であったとしても、捜査機関によるひき逃げその他の犯罪捜査に大きな貢献をすることが期待できる。保存する画像には、時刻情報、GPSからの位置情報も、同時に書き込んでおくとより便利である。
(2)車載カメラへの適用: 後進支援用にクルマ後部に取り付けられたCCDカメラ、通常走行支援用にクルマ前方に取り付けられたカメラなどのシステムにおいては、これまで、それらを、常時記録に用いることは稀であった。e自警ネットワークの考え方に基づけば、一台一台のクルマが、周りをしっかりと見守っていれば、ひき逃げなどにおいて目撃情報がないということが殆ど無い社会を作ることができる。しかし、無闇に、クルマの周りを撮影・記録・閲覧することは、一般市民のプライバシー侵害に繋がる恐れがあり、社会的な許諾を得ることは困難であると考えられる、本発明に基づき、通常の使用目的(安全運転等)用の使用に加え、何かあったときに捜査機関に提供することを目的として、暗号化してすべての画像を保存しておくことは、社会安全の増進の上で、非常に有効な手立てとなる。これに要する追加コストは、ソフトウェアの改変と、メモリ容量の増大化に要する費用程度で十分となる。例えば、HHDナビゲーションに本発明を導入し、時刻、位置情報と共に、画像を暗号化して保存することも有効である。
(3)家の回りを監視する通常の防犯カメラシステムにおいて、家主が見ることができるのは、現時点での画像のみとし、画像は保存されるが暗号化され、家主は見れないようにするこということも、プライバシ侵害の危険性を低減する上で有効である。更に、家主が見ることができる画像については、モザイク化するなどして、画質を大幅に低下させることも考えられる。また、連続して閲覧できる時間に制限を設けることも考えられる。(例えば、5分間)保存手段は、屋内においてもよいし、撮影手段、判定手段と一体化させてもよい。また、暗号化されない画像について、表示装置意を設けて、家主の閲覧に供してもよい。
(4)家の敷地内、及び、その周りを視野に入れて監視する通常の防犯カメラシステムにおいて、家の敷地内で動体が検知された前後の特定時間の映像は、所有者が閲覧できる形で保存し、そうでないときは、暗号化して保存する。こうすることで、通常の防犯カメラとしての性能・機能を満たした上で、一般通行人のプライバシーの侵害を極力抑えつつ、自宅周りを確実に見守るということを実現することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は、インターホンが設置できる場所を始めとして防犯が要求される分野において、産業上広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の監視カメラシステムの運用形態の説明図
【図2】同監視カメラシステムの一実施の形態の説明図
【図3】同実施の形態の秘匿化情報記録媒体又は映像記録媒体が監視カメラの接続端子に接続された状態の説明図
【符号の説明】
【0027】
1 パーソナルコンピュータ(PC)
2 メモリカードリーダ
3 microSDカード(秘匿化情報記録媒体)
4 監視カメラ(撮影装置)
5 microSDカード(映像記録媒体)
6 情報端末
7 パーソナルコンピュータ(管理表示装置)
8 接続端子
9 RAM
10 ROM
11 CPU
12 撮影部
13 画像処理用IC
14 ライト
15 赤外線センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた条件に応じて撮影された映像を秘匿化するか秘匿化しないかを判定するための判定手段及び前記映像を秘匿化するための映像秘匿化手段を備えた撮影装置と、前記撮影装置とは別に構成された、前記映像の秘匿化を解除するための秘匿化解除装置とを備え、前記撮影装置には、前記映像を記録するための映像記録媒体を接続可能に構成したことを特徴とする監視カメラシステム。
【請求項2】
前記撮影装置に前記映像記録媒体が接続された状態において、前記映像記録媒体に記録された前記映像を所定の時間毎に消去するための映像消去手段を、前記撮影装置が備えたことを特徴とする請求項1に記載の監視カメラシステム。
【請求項3】
前記撮影装置を住戸外に配置し、前記撮影装置からの映像を表示するための情報端末を住戸内に配置することによりインターホンとし、前記判定手段により、前記撮影装置からの前記画像を秘匿化して記録する場合を設けることを特徴とする請求項1又は2に記載の監視カメラシステム。
【請求項4】
前記撮影装置に、前記映像記録媒体と、前記映像を秘匿化するために必要な情報が記録された秘匿化情報記録媒体とを択一的に接続できるように構成し、前記撮影装置に前記秘匿化情報記録媒体を接続後に、前記撮影装置が前記秘匿化するために必要な情報を読み込み、前記情報に基づいて、前記秘匿化手段は前記映像を秘匿化して前記映像記録媒体に記録できるように構成したことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の監視カメラシステム。
【請求項5】
前記秘匿化情報記録媒体には、前記情報端末とは別に構成された秘匿化が解除された前記映像を表示するための管理表示装置のみにより前記秘匿化するために必要な情報が記録されるようにしたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の監視カメラシステム。
【請求項6】
予め定めた条件に応じて撮影された映像を秘匿化するか秘匿化しないかを判定するための判定手段及び前記映像を秘匿化するための映像秘匿化手段を備えた撮影装置と、前記撮影装置とは別に設置・使用される、前記映像の秘匿化を解除するための秘匿化解除装置を備えた監視カメラシステムにおいて、前記秘匿化された映像を、前記撮影装置から前記秘匿化解除装置に移し、その後、前記映像の秘匿化を解除することを特徴とする監視カメラシステムの運用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−118959(P2010−118959A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291485(P2008−291485)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(504145364)国立大学法人群馬大学 (352)
【出願人】(594025564)株式会社ロッキー (4)
【Fターム(参考)】