説明

監視システムとその監視制御方法

【課題】地震発生時においても、迅速かつ効率的に避難勧告等を通知可能な監視システムとすることを目的とする。
【解決手段】監視センタ1と複数の利用者端末3とネットワーク2とを含み、利用者端末3から緊急時に監視センタ1に通報する監視システム1000において、複数の利用者端末3のうち、二以上の利用者端末3が各々地震センサ93nを備え、地震センサ93nを備える利用者端末3は、地震センサ93nが地震を検出した場合に、監視センタ1に検出した地震情報を自動的に通報し、監視センタ1は、利用者端末3との間の情報の送受信を行う送受信処理部7と、利用者端末3からの通報が地震情報であるか否かを判断し、いずれかの利用者端末からの通報が地震情報である場合に、送受信処理部を介して全ての利用者端末に同時に地震発生通知を行なうデータ処理部4とを備える監視システムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システムとその監視制御方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者等緊急通報システムや夜間対応型訪問介護オペレーションシステム等の監視システムとしては既に各種の構成が知られている。例えば、図14に示すように、監視センタ101とネットワーク102と複数の利用者端末103−1〜103−nとを含み、各利用者端末103−1〜103−nは、電話機能と共に監視センタ101に対する自動発呼機能と、火災センサ等のセンサと緊急通報ボタン等を備えている。(但し、以下の説明においてnは任意の自然数であるものとする)
また、監視センタ101は、利用者端末103−1〜103−nからの通報を、送受信処理部107を介して受信し、その通報内容を表示部106に表示する。監視センタ101に常駐するオペレータは、表示部106により、通報内要を確認し把握できる。また、監視センタ101は、救急出動、状況確認、避難勧告等の処理を行う機能を担うデータ処理部104を備えている。
【0003】
また、監視センタ101においては、利用者端末103−1〜103−nから通報を送受信処理部107により受信し、通報した利用者端末103−1〜103−nに対応する契約者氏名や住所等を含む情報を、記録部105から読み出し処理する。そして、監視センタ101は、火災発生や急病等の通報内容と共に、読み出した利用契約者の氏名等を表示部106に表示する。
【0004】
また、その通報内容に応じて地図上に通報した契約利用者の住所等所在地を表示し、操作部108等への操作入力により、その住所所在地の目標等の情報を含めて消防車や救急車に対する出動要請を行うことができる。
【0005】
また、単発的に利用者端末103−1〜103−nから通報がある場合は、監視センタ101は、単発的な通報に従った処理を行った後、順次次の通報内容に従った表示や操作を行うことになる。
【0006】
一方で、利用者端末103−1〜103−nから同時多発的な通報がある場合には、一通報毎に、通報順に順次表示及び順次処理を行うと、緊急を要する実質的に優先度の高い、後発的な通報への対応処理が後回しになる場合がある。
【0007】
そこで、利用者端末103−1〜103−nから同時多発的な通報がある場合には、通報順の順次表示処理等とせず、総ての通報を同時に画面表示する多発対応型による表示及び処理を行う構成とすることが提案されている。
【0008】
また、原則として単発対応型である火災発生等の通報については、火災発生現場の近隣に居住する独り住まいの高齢者等を、速やかに避難させる必要が生じる。このような場合、監視センタ101からその高齢者等の利用者端末に対して発呼して避難勧告を行うことができる。しかし、単独で避難できないような状態の高齢者等の場合には、予め高齢者等の保護者、介護者等を登録しておき、登録された保護者に避難勧告を行うことが提案されている。
【0009】
また、単発対応型か多発対応型かの通報状態に対応した表示処理を行ない、適宜単発対応型処理と多発対応型処理との間で、処理の切換え制御を行なうことで避難勧告の迅速化を図るような監視システムも提案されている。
【0010】
このような監視システムは、例えば下記特許文献1等に開示されている。
【特許文献1】特開平10−172081号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、従来の監視システムにおいては、地震発生時のような広範囲かつ迅速な処理対応が必要とされる同時多発型災害状況への対応は困難であり、オペレータの高度かつ冷静な判断と十分な訓練とが必要とされていた。
【0012】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、地震発生時においても迅速かつ効率的に避難勧告等を通知可能な監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明にかかる監視システムは、監視センタと複数の利用者端末とネットワークとを含み、利用者端末から緊急時に監視センタに通報する監視システムにおいて、複数の利用者端末のうち、二以上の利用者端末が各々地震センサを備え、地震センサを備える利用者端末は、地震センサが地震を検出した場合に、監視センタに検出した地震情報を自動的に通報し、監視センタは、利用者端末との間の情報の送受信を行う送受信処理部と、利用者端末からの通報が地震情報であるか否かを判断し、いずれかの利用者端末からの通報が地震情報である場合に、送受信処理部を介して全ての利用者端末に同時に地震発生通知を行なうデータ処理部とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかる監視システムは、好ましくはデータ処理部が、地震情報から震源地を推定し、震源地から所定の範囲内の利用者端末に対して、送受信処理部を介して避難勧告通知を行なうことを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかる監視システムは、さらに好ましくはデータ処理部が、地震情報から地震規模を推定し、地震規模に対応して予め設定された所定の範囲内の利用者端末に対して、送受信処理部を介して避難勧告通知を行なうことを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかる監視システムは、さらに好ましくはデータ処理部が、監視センタが備える表示部に、震源地と所定の範囲内の利用者端末とを含む地図情報を表示させることを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかる監視システムは、さらに好ましくはデータ処理部が、地震情報が初期微動である場合に、送受信処理部を介して全ての利用者端末に同時に地震発生通知を行ない、地震情報が主要動である場合に、送受信処理部を介して所定の範囲内の利用者端末に対して避難勧告通知を行なうことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかる監視システムは、さらに好ましくはデータ処理部が、避難勧告通知に対する利用者端末からの応答通報の有無を、避難勧告通知がなされた利用者端末のリストと共に表示部に表示させることを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかる監視システムは、さらに好ましくは監視センタが、地震情報を記憶する記憶部を備えることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかる監視システムは、さらに好ましくはデータ処理部が、最初に地震情報を通報した利用者端末から近い距離の利用者端末から順次、地震発生通知または避難勧告通知することを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかる監視システムの監視制御方法は、監視センタと複数の利用者端末とネットワークとを含み、利用者端末から緊急時に監視センタに通報する監視システムの監視制御方法において、複数の利用者端末のうち、二以上の利用者端末が各々地震センサを備え、地震センサで検出した地震情報を利用者端末が自動的に監視センタに通報する工程と、監視センタが、二以上の利用者端末からの地震情報に基づき震源地と地震規模とを算出する算出工程と、監視センタが、地震規模に対応して予め設定された震源地から所定の範囲内の利用者端末を抽出する抽出工程と、監視センタが、抽出した利用者端末に対して、ネットワークを介して避難勧告通知を行なう避難勧告通知工程とを有することを特徴とする。
【0022】
また、この発明にかかる監視システムの監視制御方法は、好ましくは利用者端末が通報する地震情報が初期微動である場合に、監視センタが送受信処理部を介して全ての利用者端末に同時に地震発生通知を行なう地震発生通知工程と、利用者端末が通報する地震情報が主要動である場合に、算出工程と抽出工程と避難勧告通知工程とを有することを特徴とする。
【0023】
また、この発明にかかる監視システムの監視制御方法は、さらに好ましくは監視センタが、避難勧告通知に対する利用者端末からの応答通報の有無を、避難勧告通知がなされた利用者端末のリストと共に、監視センタが備える表示部に表示させる工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
地震発生時においても、迅速かつ効率的に避難勧告等を通知可能な監視システムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
第一の実施形態で例示する監視システムは、複数の利用者端末の各々に地震センサを備える。そして、いずれかの地震センサが地震を検出すると、地震を検出した利用者端末が自動的かつ迅速に監視センタに地震情報を通報する。
【0026】
また、地震情報の通報を受けた監視センタは、全ての利用者端末に対して地震発生通知を行い各利用契約者に注意を促す。また、監視センタは、地震発生通知を行なった利用者端末から安否の応答確認があったか否かを通知リストと共に表示部に表示する。安否の応答確認は、例えば電話の呼び出し応答や電子メールの開封確認等によりリアルタイムに実行する。
【0027】
従って、第一の実施形態で例示する監視システムにおいては、監視システムのオペレータが高度な判断力や熟練技術を持ち合わせていなくても、利用契約者への迅速な地震の通知と安否確認とが行える監視システムとできる。
【0028】
そこで、以下図面に基づいて、第一の実施形態の監視システムについて説明する。なお、下記の各実施形態での説明においては、特に断りがない限り利用者端末3−1が震源地に最も近く配置されており、かつ利用者端末3−1が備える地震センサ931が最初に地震を検出するものとして、説明をすることとする。
【0029】
(第一の実施形態)
図1は、第一の実施形態にかかる監視システム1000の構成を概念的に示すブロック図である。図1に示す監視システム1000は、複数の利用者端末3−1,3−2,・・,3−nがネットワーク(交換網)2を介して監視センタ1に接続されている。
【0030】
ネットワーク2は、例えばダイアルアップにより回線接続する電話交換網で構築してもよいが、好ましくは常時接続が可能なイーサネット等(イーサネットは登録商標)の通信回線ネットワークとする。また、ネットワーク2は、インターネット回線(WAN)を用いる接続とすると、リアルタイムに複数の利用者端末3−1,3−2,・・,3−nと、常時接続可能となり常時通信可能となるので、さらに好ましい。
【0031】
また、監視システム1000の複数の利用者端末3−1,3−2,・・,3−nは、各々地震センサ931,932,・・,93nを備える。また、監視システム1000の監視センタ1も、地震センサ91を備える。監視センタ1は、地震情報を収集して必要な処理を判断して実行する中枢となるので、監視センタ1が備える地震センサ91は必ずしも必要ではない。
【0032】
しかし、監視システム1000が全体として備える地震センサの数は、多い方がより信頼性高く地震データの収集が可能となる。さらに、監視システム1000が全体として備える地震センサの配置範囲は、できる限り広範な方が、より多様な震源地における不測の地震発生態様にも迅速に対応した検出が可能となるので好ましい。
【0033】
すなわち、予期しないような場所で発生した地震であっても、典型的には監視システム1000のサービスエリア内全体に、網羅的に配置される複数の利用者端末3−1,3−2,・・,3−nと、その地震センサ931,932,・・93n,91とにより、震源地近くのいずれかの地震センサが、迅速かつ確実に地震を検出できることとなる。
【0034】
また、監視システム1000が備える地震センサ931,932,・・93n,91は、初期微動(P波:Primary Wave)を検出可能な縦波(上下方向)検出センサと、主要動(S波:Secondary Wave)を検出可能な横波(水平方向)検出センサと、を個別に検出できることが好ましい。これにより、初期微動と主要動とを的確に検出し、いずれの振動を検出したかを監視センタ1に自動的に正確に通報することが可能な利用者端末3−1,3−2,・・,3−n等とできる。
【0035】
また、監視センタ1は、ネットワーク2を介して複数の利用者端末3−1,3−2,・・,3−nの各々と、通信する通信インターフェースとなる送受信処理部7を備える。また、監視センタ1は、送受信処理部7で受信した利用者端末3−1等からの緊急通報等に基づいて、避難勧告や安否確認等の処理を行なうデータ処理部4を備える。
【0036】
また、データ処理部4は、記録部5に予め記録される監視システムの利用契約者情報を参照し、表示部6に、緊急通報を行なった利用者端末3−1の利用契約者だけでなく、避難勧告等を通知した利用契約者の通知リストを表示させる。
【0037】
また、データ処理部4は、記録部5に利用者端末3−1から通報された地震情報を記録させる。これにより、操作部8に入力される操作処理により、後日記録部5に記録されている地震情報を読み出して、統計処理や災害被害の低減のための研究活動等所望のデータ処理をすることが可能となる。
【0038】
また、図2は、監視センタ1と複数の利用者端末3−1,3−2,・・,3−nとの配置状況を、表示部6が表示する地図上に、プロット表現した場合の概念図である。図2に示すように、例えば利用者端末3−1が備える地震センサ931で地震波21を検出した場合には、速やかに監視センタ1に地震発生が通報され、監視センタ1は、他の複数の利用者端末3−2,・・,3−nに対して地震発生通知を行なう。
【0039】
監視システム1000の上述の処理により、地震発生の場合に、監視センタ1のオペレータの処理を待たずに、迅速かつ的確に利用契約者に対する地震発生通知を行なうことができる。これにより監視システム1000の利用契約者は、地震波21の到達よりも早く地震発生を知ることができる蓋然性が高くなり、災害を未然に防止または軽減できる可能性が大きくなる。
【0040】
また、図3は、監視システム1000の動作処理を概念的に示すフロー図である。そこで、図3を用いて監視システム1000の動作処理フローを順次説明する。
【0041】
(ステップS31)
監視システム1000の各利用者端末3−1等が備える地震センサ931等において、複数の利用者端末3−1,3−2,・・,3−nのうちのいずれかが地震を検出したか否かを判断する。複数の利用者端末3−1,3−2,・・,3−nのいずれかが地震を検出した場合には、ステップS32へと進む。また、複数の利用者端末3−1,3−2,・・,3−nのいずれもが地震を検出しない場合には、ステップS31で待機する。
【0042】
(ステップS32)
地震センサ931が地震を検出した場合には、利用者端末3−1が速やかに監視センタ1へ地震情報を通報する。
【0043】
(ステップS33)
監視センタ1は、記録部5に記録されている利用契約者情報に基づき、全ての利用者端末3−1,3−2,・・,3−nに対して、一斉に地震発生通知を行なう。これにより、各利用契約者は、監視システム1000のサービスエリア内の何処かで地震が発生したか、または地震を検出したことを知ることができる。
【0044】
また、監視センタ1が地震発生通知を行なう際に、最も早く地震を検出した利用者端末番号に対応する地名を記録部5に記録される契約者住所から読み出し、同時に各利用契約者に通知してもよい。これにより、各利用契約者は、地震速報として大まかな地震発生位置または地震検出位置を知ることができる。
【0045】
なお、監視センタ1のデータ処理部4は、最も早く地震を検出した利用者端末番号に対応する緯度と経度とから、これに近い距離順に優先順位を付けて利用契約者の並べ替えを行なってもよい。そして、並べ替え後の優先順位の高い利用契約者から、すなわち地震を最初に検出した利用者端末に近い順に、順次、地震発生通知を行なってもよい。地震波の伝達には一定の時間を要することを考慮すると、このように震源地により近いと推定される利用者端末から優先的に、地震発生通知をすることが好ましい。
【0046】
(ステップS34)
監視センタ1は、地震発生情報を通知した利用者端末3−1,3−2,・・,3−nの各々の利用契約者のリストを表示部6に表示させる。また、監視センタ1が表示部6に表示させる利用契約者のリストには、地震発生通知に対する安否確認等の応答があったか否かの情報も表示する。安否確認等の応答は、典型的には電話呼び出しへの応答、または電子メールの開封確認等であってもよい。
【0047】
これにより、監視センタ1のオペレータは、表示部6に表示された安否応答が未だない利用契約者に対して、操作部8への操作入力により個別に安否確認や利用契約保護者への安否確認等を実行することができる。地震検出後このステップS34までの各ステップの処理は、監視システム1000が自動的に行なう。このため、監視システム1000のオペレータは、高度な判断や熟練作業や訓練を要さずとも、地震発生時の緊急対応処理を的確に行なうことができる。
【0048】
(ステップS35)
監視システム1000の監視センタ1は、地震情報を記録部5に記録する。ここで、記録部5に記録される地震情報は、地震検出時刻や検出センサ識別番号、検出センサ位置情報、検出強度等に加えて、監視システム1000の利用契約者の地震発生通知リストや安否応答確認情報等も含む。また、記録部5に記録した地震情報は、後日地震の統計解析処理を行なったり、防災ネットワーク網の構築や改善等を行なう際の基本データとして用いたり、することができる。
【0049】
第一の実施形態で例示する監視システム1000は、オペレータの技量や熟練度に拘わらず、速やかかつ迅速に地震発生情報を各利用者端末に通知することができる。これにより、利用契約者及びその保護者等は、速やかに地震の発生を知ることができる。
【0050】
また、監視システム1000は、各利用契約者等からの安否確認応答の有無を、地震発生通知の通知リストと共に表示部6に表示する。従って、監視システム1000のオペレータは何らの操作を行なうことなく、個別に安否確認が必要な利用契約者等を、表示部6により一目瞭然に把握できるので、的確な安否確認を実行できる。
【0051】
地震発生時においては、迅速に必要な地震情報を収集すると共に、広範囲かつ多数の利用契約者に対して迅速に地震発生情報を通知したり、各利用契約者の安否確認を適切に実行したり、することが必要となる。この意味において、監視システム1000は、迅速かつ適切に必要な地震情報を、各利用契約者に対して通知可能であるので好ましい。
【0052】
次に、図4を用いて第二の実施形態について説明する。第二の実施形態で例示する監視システム2000は、地震発生時に利用者端末3−1等から通報される地震情報をもとに、震源地を推定する。また、監視システム2000は、推定した震源地から所定の範囲内に配置される利用者端末3−1等に対して、避難勧告通知を行なう。このため、適切な避難勧告を通知する監視システム2000とできる。
【0053】
(第二の実施形態)
図4は、第二の実施形態にかかる監視システム2000の構成を概念的に示すブロック図である。図4に示す監視システム2000においては、第一の実施形態で示す監視システム1000と同じ部位には同一の番号を付与して説明を省略する。
【0054】
監視システム2000のデータ処理部4は、地震発生時に震源地を推定する震源地推定部41を備える。また、震源地推定部41は、複数の利用者端末3−1,3−2,・・,3−nのうち、少なくとも二以上の利用者端末から通報される地震情報を基に、震源地を推定する。
【0055】
また、震源地推定部41は、典型的には二つ以上の利用者端末から通報される地震情報を基に、初期微動継続時間を算出して震源地を推定する。一般に、初期微動継続時間が長くなればなる程、震源地から遠くなることが知られており、震源地推定部41は、利用者端末3−1等から通報される地震情報に基づき、大凡の震源地を迅速に算出することができる。
【0056】
なお、震源地推定部41は、震源地に代えてまたは、震源地とともに震央を推定してもよい。また、より多くの地震情報から震源地等を推定することが、正確な推定を行なう上では好ましい。一方で、迅速な地震発生通知や避難勧告通知を行なう意味においては、最低限の推定が可能な、二箇所の利用者端末からの地震情報が監視センタ1に通報された時点で、推定処理することがさらに好ましい。
【0057】
また、監視システム2000のデータ処理部4は、地震発生時に地震の震度やマグニチュード等の地震の大きさを推定する地震規模推定部42を備える。また、地震規模推定部42は、典型的には最初に監視センタ1に地震情報を通報した利用者端末3−1からの地震情報に基づき、地震規模を推定する。また、地震規模推定部42は、さらに好ましくは、最初に監視センタ1に地震情報を通報した利用者端末3−1からの初期微動(P波)の地震情報に基づき、速やかに地震規模を推定する。
【0058】
すなわち、利用者端末3−1は、地震センサ931が検出した地震の震動加速度や触れ幅等の地震規模に関する情報を、監視センタ1に通報する。監視センタ1は送受信処理部7を介して利用者端末3−1からの地震情報を受信し、地震規模推定部42で地震規模を推定する。
【0059】
また、監視システム2000のデータ処理部4は、記録部5に予め記録されている監視システム2000の利用契約者の中から、避難勧告通知の対象となる利用契約者を抽出し選別処理する避難勧告通知対象抽出部43を備える。
【0060】
避難勧告通知対象抽出部43は、記録部5に予め記録される利用契約者の中から、震源地推定部41が推定した震源地から所定の距離範囲内に配置された利用者端末3−1,3−2等を抽出する。所定の距離範囲内は、好ましくは地震規模推定部42が推定する地震規模に応じて予め設定されている。
【0061】
また、図6には避難勧告通知範囲データテーブル51として、記録部5に予め記録されている、所定の範囲の典型例を示す。図6は、記録部5が予め記憶する避難勧告通知範囲データテーブル51を例示する図である。
【0062】
従って、避難勧告通知対象抽出部43は、地震規模推定部42により例えば震度5程度と推定される地震の場合には、図6に示す避難勧告通知範囲データテーブル51に基づき、震源地推定部41が推定する震源地から半径500キロメートル以内の範囲に配置されている利用者端末3−1等に対して、避難勧告通知をする。
【0063】
また、避難勧告通知対象抽出部43は、地震規模推定部42により例えば震度1程度と推定される地震の場合には、図6に示す避難勧告通知範囲データテーブル51に基づき、震源地推定部41が推定する震源地から半径20キロメートル以内の範囲に配置される利用者端末3−1等に対して、避難勧告通知をする。このような避難勧告通知は、実体的には利用契約者や利用契約者の保護者に行なう。
【0064】
これにより、必要な利用契約者に対して適切に避難勧告通知を実行する監視システム2000となる。地震発生通知は地震の発生を単に通知するものであるが、避難勧告通知は、より具体的に利用契約者等の行動について具体的に勧告するものである。このため、真に避難勧告通知が必要な利用契約者等に対して、的確に通知する監視システム2000とすることが好ましい。また、図5は、監視システム2000の動作処理を地図上で説明する概念図である。
【0065】
図5において、利用者端末3−1で最初に地震を検出した場合には、利用者端末3−1は速やかに監視センタ1に、地震情報を通報する。また、監視センタ1においては、震源地推定部41が、通報された地震情報に基づき、推定震源地300を推定する。震源地推定部41が推定する推定震源地300は、正確であれば好ましいが、一方で迅速な処理対応も必要となる。
【0066】
従って、震源地推定部41が推定する推定震源地300は、避難勧告の通知エリアを確定するための基準とできる程度の精度であれば問題なく、監視システム2000においては、精度よりもむしろより迅速に推定できることがより好ましい。このため、監視システム2000は、早い順に通報された二つの地震情報から推定震源地300を推定することが好ましい。
【0067】
また、地震規模推定部42は、典型的には最初に通報された地震情報から地震規模を推定する。地震規模は、震度でもマグニチュード等でもよく、例えば地震検出後一定時間内の震度センサの最大加速度値等としてもよい。すなわち、地震規模推定部42が推定する地震規模は、推定震源地300から避難勧告通知を行なう範囲を決定する指標となる程度の地震規模であってよい。
【0068】
また、監視システム2000は、地震規模が大きければより広い範囲にわたって避難勧告を行うことが好ましいが、地震規模が小さければあまり広い範囲にわたって避難勧告を行なう必要はない。このため、図6の避難勧告通知範囲データテーブル51に例示するように、地震規模が大きくなると避難勧告通知範囲を大きく設定することが好ましい。
【0069】
図5に示す例においては、監視センタ1は、震源地推定部41が推定した推定震源地300から、図6に示す避難勧告通知範囲データテーブル51に基づき、所定の範囲内301に配置される利用者端末3−1,3−2,3−3に対して避難勧告を通報する。
【0070】
また、図7は、監視システム2000の動作処理を概念的に示すフロー図である。そこで、以下に図7に示す各ステップに従い、順次、監視システム2000の動作処理を説明することとする。
【0071】
(ステップS71)
監視システム2000は、監視システム2000の各利用者端末3−1等が備える地震センサ931等において、複数の利用者端末3−1,3−2,・・,3−nのうちのいずれかが地震を検出したか否かを判断する。複数の利用者端末3−1,3−2,・・,3−nのいずれかが地震を検出した場合には、ステップS72へと進む。また、複数の利用者端末3−1,3−2,・・,3−nのいずれもが地震を検出しない場合には、ステップS71で待機する。
【0072】
(ステップS72)
地震センサ931が地震を検出した場合には、利用者端末3−1が速やかに監視センタ1へ地震情報を通報する。また、地震センサ932も地震を検出した場合には、利用者端末3−2も速やかに監視センタ1へ地震情報を通報する。
【0073】
利用者端末3−1等は、好ましくは初期微動(P波)を検出した時点で、速やかに地震規模を推定するための検出強度を監視センタ1へ通報する。
【0074】
(ステップS73)
監視センタ1は、記録部5に予め記録され登録されている全ての利用契約者に対し、送受信処理部7を介して地震発生通知を行なう。
【0075】
(ステップS74)
監視センタ1の地震規模推定部42は、利用者端末3−1から通報された地震情報に基づき、地震規模を推定する。地震規模は、震度やマグニチュード等の避難勧告通知範囲を決定する指標となるパラメータであれば何でもよい。従って、地震規模推定部42が推定する地震規模は、厳密な意味において正確な震度やマグニチュード等でなくてもよく、避難勧告通知範囲を決定する指標となる程度の精度せ地震の規模を表現する任意のパラメータとしてよい。
【0076】
(ステップS75)
監視センタ1のデータ処理部4は、二以上の利用者端末3−1等から地震情報の通報があったか否かを判断する。監視センタ1のデータ処理部4は、好ましくは二以上の利用者端末3−1等から初期微動継続時間(いわゆるP−S時間)に関する地震情報の通報があったか否かを判断する。
【0077】
二以上の地震情報の通報があればステップS76へと進む。また、二以上の地震情報の通報がなければステップS75で待機する。
【0078】
(ステップS76)
データ処理部4の震源地推定部41は、地震情報から震源地を推定する。震源地推定部41は、典型的には二以上の利用者端末3−1等から通報された初期微動継続時間から、震源地までの大凡の距離を算出し、その交点から震源地を推定する。震源地推定部41が推定する震源地は、厳密な意味での正確さは必要とされず、避難勧告通知範囲を決定するための中心基準を提供できる程度の精度であってよい。
【0079】
また、震源地推定部41は、震源地に代えて震央を推定してもよい。初期微動継続時間をT(秒)とすれば、震源地推定部41は、その利用者端末3−1から震源地までの距離を、典型的には(7×T)キロメートルと算出することができる。
【0080】
なお、初期微動継続時間は、例えば利用者端末3−1から監視センタ1に通報されたP波検出時刻情報と、利用者端末3−1から監視センタ1に通報されたS波検出時刻情報との時間差から、データ処理部4が算出することができる。
【0081】
(ステップS77)
データ処理部4の避難勧告通知対象抽出部43は、避難勧告通知をする対象を抽出する。具体的には、避難勧告通知対象抽出部43は、ステップS76で推定した震源地を中心として、避難勧告通知範囲データテーブル51に予め設定記録されている地震規模に対応した所定の距離範囲半径内に配置されている利用者端末3−1等を抽出する。
【0082】
なお、記録部5には利用契約者の緯度と経度とを含めた住所情報が予め記録されている。このため、避難勧告通知対象抽出部43は、ステップS74で推定した地震規模に応じた所定の範囲を避難勧告通知範囲データテーブル51から読み出し、震源地の緯度と経度とを中心として所定の範囲の半径内に位置する利用者端末を算出処理する。
【0083】
(ステップS78)
データ処理部4は、送受信処理部7を介してステップS77で抽出した避難勧告通知対象に対して、避難勧告通知を行なう。これにより、監視システム2000は、避難勧告が必要な利用契約者に対して適切に通知を実行できる。
【0084】
また、データ処理部4は、ステップS77で抽出した避難勧告通知をする対象となる利用者端末を、推定した震源地に近い順に並べ替えて、近い順から順次避難勧告通知することが好ましい。一般に、震源地により近い地域のほうが、より早く地震波が到達すると共に、地震被害が甚大になる傾向にある。このため、避難勧告通知をする際に、震源地により近い順に通知することとし、優先順位を付けることで、監視システム2000は、より効果的な避難勧告通知をすることができる。
【0085】
(ステップS79)
データ処理部4は、ステップS78で通知した避難勧告通知先のリストを表示部6に表示させる。また、データ処理部4は、ステップS78で通知した避難勧告通知先からの安否応答有無を表示部6に表示させる。安否応答の有無は、呼び出し電話への受話対応や電子メールの開封確認等、簡易な動作で迅速に応答できる手段で行なうことが好ましい。
【0086】
(ステップS7a)
データ処理部4は、記録部5に地震情報を記録する。また、データ処理部4が記録部5に記録させる地震情報は、利用者端末3−1等から通知された地震情報だけでなく、震源地推定部41で推定した震源地の緯度、経度、及び地震規模推定部42で推定した地震の規模等であるものとする。
【0087】
さらに、データ処理部4が記録部5に記録させる地震情報は、避難勧告通知を行なった対象者リストとその安否応答の有無等、地震に関連して監視システム2000が行なった様々な動作や処理の結果を含むことが好ましい。
【0088】
これにより、その後さらに必要な好ましい監視システム2000として改良や修正を行なう基本的なデータを収集し、また後日地震の解析を行なうためのデータとすることもできる。
【0089】
(第三の実施形態)
次に、第三の実施形態について図8を用いて説明する。図8は、第三の実施形態の監視システム3000の構成を例示するブロック概念図である。図8に示す監視システム3000においては、第一の実施形態で示す監視システム1000または第二の実施形態で示す監視システム2000と同じ部位には、同一の番号を付与してその説明を省略する。
【0090】
監視システム3000のデータ処理部4は、利用者端末3−1等から通報されてきた情報が、地震情報であるのか否かを判断する情報判断部44を備える。また、監視システム3000のデータ処理部4は、地震が発生したことを利用契約者に通知する地震発生通知部45を備える。
【0091】
また、監視システム3000のデータ処理部4は、避難勧告を通知する対象となる利用契約者に避難勧告を通知する避難勧告通知部46を備える。また、監視システム3000のデータ処理部4は、利用者端末3−1等から通報されてきた地震情報が初期微動(P波)の検出情報であるのか、主要動(S波)の検出情報であるのかを判断するP波S波判断部47を備える。
【0092】
また、監視システム3000のデータ処理部4は、避難勧告通知部46が通知した避難勧告通知に対する安否応答があるか否かを判断する応答確認部48を備える。また、監視システム3000の記録部5は、監視システム3000のサービス対象エリアを中心として近隣を含めた地図情報を予め記憶する地図情報記録部52を備える。
【0093】
また、図9は監視システム3000の動作と処理とを地図上で表現した概念図である。図9に示すように、監視システム3000は、地震規模推定部42が地震規模が大きいと推定した場合には、避難勧告通知範囲データテーブル51に基づき、推定震源地300bを中心として、より大きな避難勧告エリア301b内の利用契約者に対して、避難勧告を通知する。
【0094】
また、監視システム3000は、地震規模推定部42が地震規模が小さいと推定した場合には、避難勧告通知範囲データテーブル51に基づき、推定震源地300aを中心として、より小さな避難勧告エリア301a内の利用契約者に対して、避難勧告を通知する。これにより、地震規模に応じて適切な避難勧告エリア内の利用契約者に対して自動的に、避難勧告をすることが可能な監視システム3000とできる。
【0095】
また、図10は、利用者端末3−1,3−2,3−3及び3−nが検出する地震波を、模式的に示す概念図である。
【0096】
図10において、利用者端末3−1は、初期微動を最初に検出したTp31の時点で、監視センタ1に対して検出した初期微動の振動大きさと共に初期微動の検出時刻を通報する。また、利用者端末3−1は、主要動を最初に検出したTs31の時点で、監視センタ1に対して検出した主要動の振動大きさと共に主要動の検出時刻を通報する。
【0097】
利用者端末3−1からTp31の検出時刻等の通報を受けた監視センタ1は、地震の発生と共に、その規模を把握することができる。ここで、監視センタ1は、速やかに全ての利用者端末3−1乃至3−nに対して、地震発生通知を行なう。
【0098】
また、利用者端末3−1からTs31の検出時刻等の通報を受けた監視センタ1は、Tp31とTs31との時刻の差異により、初期微動継続時間を算出できる。初期微動継続時間が算出できると、利用者端末3−1から震源地までの大凡の距離が算出できるので、監視センタ1は、利用者端末3−1を中心として震源地の大凡の位置を円弧上の地域に推定できる。
【0099】
また、利用者端末3−2は、初期微動を最初に検出したTp32の時点で、監視センタ1に対して検出した初期微動の振動大きさと共に初期微動の検出時刻を通報する。また、利用者端末3−2は、主要動を最初に検出したTs32の時点で、監視センタ1に対して検出した主要動の振動大きさと共に主要動の検出時刻を通報する。
【0100】
利用者端末3−2からTp32の検出時刻等の通報を受けた監視センタ1は、地震の発生と共に、その規模を把握することができる。また、利用者端末3−2からTs32の検出時刻等の通報を受けた監視センタ1は、Tp32とTs32との時刻の差異により、初期微動継続時間を算出できる。
【0101】
初期微動継続時間が算出できると、利用者端末3−2から震源地までの大凡の距離が算出できるので、監視センタ1は、利用者端末3−2を中心として震源地の大凡の位置を円弧上の地域に推定できる。この時点で、監視センタ1は、上述した利用者端末3−1からの地震情報とも併せ、大凡の震源地を推定することが可能となる。
【0102】
同様に、利用者端末3−3は、初期微動を最初に検出したTp33の時点で、監視センタ1に対して検出した初期微動の振動大きさと共に初期微動の検出時刻を通報する。また、利用者端末3−3は、主要動を最初に検出したTs33の時点で、監視センタ1に対して検出した主要動の振動大きさと共に主要動の検出時刻を通報する。
【0103】
同様に、利用者端末3−nは、初期微動を最初に検出したTp3nの時点で、監視センタ1に対して検出した初期微動の振動大きさと共に初期微動の検出時刻を通報する。また、利用者端末3−nは、主要動を最初に検出したTs3nの時点で、監視センタ1に対して検出した主要動の振動大きさと共に主要動の検出時刻を通報する。
【0104】
次に、図12を用いて監視システム3000の動作処理について、順次説明することとする。図12は、監視システム3000の動作処理を概念的に示すフロー図である。
【0105】
(ステップS121)
監視システム3000の利用者端末3−1は、初期微動(P波)を検出したか否かを判断する。監視システム3000の利用者端末3−1が、初期微動(P波)を検出した場合にはステップS122へと進む。また、監視システム3000の利用者端末3−1が、初期微動(P波)を検出しない場合にはステップS121で待機する。
【0106】
(ステップS122)
利用者端末3−1は、検出したP波の振動振幅や震度等の地震強度とP波検出時刻とを監視センタ1へ通報する。監視センタ1は、利用者端末3−1からの通報が、地震情報であるか否かを情報判断部44が判断する。また、利用者端末3−1から通報された地震情報がP波であるのかS波であるのかを、P波S波判断部47が判断する。
【0107】
また、監視センタ1は地震情報が通報されると、通常の個別単独緊急通報待機モードから地震モードへとモード変更し、下記の各ステップに示すような一括集中的な動作処理を行なう。また、監視センタ1は、利用者端末3−1からP波検出の地震情報が通報されると、記録部5に記録される利用契約者情報から利用者端末3−1を利用する利用契約者の住所(緯度、経度等)を読み出す。次に、ステップS123へと進む。
【0108】
(ステップS123)
監視センタ1の地震発生通知部45は、記録部5に記録されている監視システム3000の利用契約者全員に対し、地震発生通知を行なう。例えば、監視システム3000は、補助介護サービスや安全確認サービス、あるいは緊急車出動要請等の具体的、実体的な役務提供の観点から、一定の広がりを有する限定地域内をサービス提供範囲とする場合もある。
【0109】
このため、そのサービス提供区域内のいずれかの利用者端末3−1等で地震が検出されれば、そのサービス提供区域内全体の利用者端末3−1等に地震の発生を周知することが好ましいと考えられる。従って、このステップS123においては、監視システム3000は、全ての利用契約者に対し、地震発生通知を行なうこととする。なお、このステップS123での地震発生通知は、省略してもよい。
【0110】
(ステップS124)
監視システム3000の利用者端末3−1は、主要動(S波)を検出したか否かを判断する。監視システム3000の利用者端末3−1が、主要動(S波)を検出した場合にはステップS125へと進む。また、監視システム3000の利用者端末3−1が、主要動(S波)を検出しない場合にはステップS124で待機する。
【0111】
利用者端末3−1は、検出したS波の振動振幅や震度等の地震規模(例えば地震強度)とS波検出時刻とを監視センタ1へ通報する。監視センタ1は、利用者端末3−1からの通報が、地震情報であるか否かを情報判断部44が判断する。また、利用者端末3−1から通報された地震情報がP波であるのかS波であるのかを、P波S波判断部47が判断する。
【0112】
(ステップS125)
監視センタ1の震源地推定部41は、通報された二以上の地震情報から震源地を迅速に推定する。従って、震源地推定部41は、二つの利用者端末3−1等から地震情報が通報されるまで待機してもよい。さらに、震源地推定部41は、二つの利用者端末3−1等から初期微動継続時間を算出するに足りる地震情報(典型的にはP波検出時刻とS波検出時刻との両方)が通報されるまで待機してもよい。
【0113】
また、震源地推定部41は、順次通報された最も早い三つの利用者端末3−1等の地震情報から震源地を推定してもよい。最も早い三つの利用者端末3−1等の地震情報により、震源地推定部41は、震源地だけではなく震央も含めて、かなり正確な震源地等を遅滞なく推定できるので好ましい。
【0114】
また、監視センタ1の地震規模推定部42は、通報された地震情報から地震規模を推定する。地震規模推定部42は、利用者端末3−1から最初に通報されるP波に関する情報のみから地震規模を推定してもよい。これにより、監視センタ1は、極めて迅速に地震規模を推定できる。
【0115】
また、地震規模推定部42は、利用者端末3−1から最初に通報されるP波に関する情報とS波に関する情報、及び利用者端末3−2から第二番に通報されるP波に関する情報とS波に関する情報の全てまたは一部を用いて地震規模を推定してもよい。これにより、監視センタ1は、遅滞なくかつ正確に地震規模を推定できる。
【0116】
(ステップS126)
監視センタ1のデータ処理部4は、地震規模推定部42が推定した地震規模に対応する避難勧告通知範囲を、記録部5の避難勧告通知範囲データテーブル51を参照して読み出す。避難勧告通知範囲データテーブル51の典型例は図6に既に例示したが、これに限られず、推定した震源地の個別重み付けや地域特性をも加味して、地震規模との関係で避難勧告通知範囲データテーブル51を調整し、予め記録部5に記憶させてもよい。
【0117】
(ステップS127)
監視センタ1の避難勧告通知対象抽出部43は、ステップS125で推定した震源地を中心として、ステップS126で読み出した通知範囲の半径内に位置する利用者端末3−1等を、震源地から近い順に順次抽出する。記録部5が有する利用契約者の住所等は、例えば緯度情報と経度情報とを含む位置情報であって、いわば座標と見なすことができる。従って、同様に緯度と経度とで算出された震源地と、利用契約者住所と、の間の距離は、避難勧告通知対象抽出部43が容易に算出することができる。
【0118】
(ステップS128)
監視センタ1の避難勧告通知部46は、ステップS127で抽出した避難勧告通知対象となる利用契約者の利用者端末3−1等に対して、震源地から近い利用契約者から優先的に、順次避難勧告通知を行なう。避難勧告通知は、避難勧告通知部46の指示により、例えば利用者端末3−1等に特定の警告音声を発報させるものでもよい。これにより、効果的な避難勧告通知が行える。
【0119】
また、避難勧告通知部46は、同時に一斉に避難勧告通知を行なってもよい。これにより、極めて迅速な避難勧告通知が行える。
【0120】
(ステップS129)
監視センタ1の避難勧告通知部46は、ステップS127で抽出した対象者全員に避難勧告通知を行なう。対象者全員に避難勧告を行なえばステップS12aへと進む。対象者全員に避難勧告を行なっていなければ、対象者全員への通知が完了するまでステップS129で待機する。
【0121】
(ステップS12a)
監視センタ1のデータ処理部4は、表示部6に避難勧告通知をした対象者リストを表示する。また、監視センタ1のデータ処理部4は、表示部6に避難勧告通知をした対象者からの安否確認応答有無を表示する。安否確認応答は、応答確認部48が、利用者端末3−1等からの応答があるか否かを各々判断し、データ処理部4がその判断結果を表示部6に表示させるものとする。
【0122】
ここで、図11は、データ処理部4が表示部6に表示させる避難勧告通知リストの典型例を示す図である。図11に示すように、表示部6は、契約者名と契約者の連絡先電話番号と各々の契約者からの応答有無とを、典型的には震源地から近い順に優先順位を付けて表示する。また、表示部6は契約者名に代えて、または契約者名とともに介護者や保護者を表示してもよい。
【0123】
オペレータは、図11に示される安否応答がない利用契約者について、震源地に近い順に、手動で利用契約者または利用契約者の保護者等に安否確認等を行なうことも可能である。
【0124】
また、表示部6は、図13に示すように地図上に避難勧告通知対象となる利用契約者等を表示してもよい。図13は、表示部6の典型的な表示例を示す図である。そして、安否応答のあった利用契約者と安否応答のない利用契約者等とを判別可能なように、地図上に色分け表示してもよい。
【0125】
これにより、オペレータは更に明確にかつ容易に、安否確認や状況確認が必要な利用契約者を把握できる。また、地図上に安否確認情報等が配置されることから、近隣の被害状況や震源地や監視システム3000のサービス拠点等との地理的配置関係も加味して、短時間で正確に必要な処理判断が可能となる。
【0126】
以上詳細に説明したように、監視システム1000,2000,3000においては、通常状態では、個別の利用契約者等から種々の緊急通報を利用者端末3−1等から通報されるように監視センタ1が待機している。しかし、一旦地震が発生した場合には、個別の利用契約者等からの手動による通報ではなく、自動的に利用者端末3−1等が監視センタ1に地震情報を通報する。
【0127】
このため、地震発生時に、利用契約者が個別に監視センタ1に呼び出し等の通報をした場合に生じることが懸念される、利用契約者の種々の混乱や通報処理遅延、対応するオペレータの処理ミスや判断ミス等の混乱を低減し、適切な処理を実行する監視システムとできる。
【0128】
さらには、監視システム1000,2000,3000は、大規模な地震発生後に生じることが懸念される通信の混乱や通信回線の飽和といった、好ましくない通信状況を回避して低減することも期待できる。また、監視システム1000,2000,3000は、電話回線や通信回線等の飽和による不通状況が生じる前に、迅速かつ適切に種々の通知処理と安否確認等を実行できる。また、監視システム1000,2000,3000は、重複した安否確認等による不要不急な通信量の増大を低減し、緊急時に最低限に必要とされる通信を適切な時期に正確に実行できる。
【0129】
従って、監視システム1000,2000,3000は、監視センタ1と利用者端末3−1等との間で、特に専用回線を用いたネットワーク網を構築しなくても、いわゆる一般通信回線を用いた監視システムにおいて、特に効果的である。これにより、一般回線を用いて安価に簡単に監視網を構築できるだけでなく、地震発生による通信混雑時においても、いち早く適切な情報を、利用契約者に通知し安否確認することができる。
【0130】
また、実施形態で例示した監視システム1000,2000,3000等は、自明な範囲で適宜その構成と動作処理とを変更して用いることができる。また、実施形態で例示した監視システム1000,2000,3000が備える利用者端末3−1等は、例示した構成に限られない。利用者端末3−1等は、例えばガス漏れセンサや火災センサ、生活リズムセンサなど、監視システムが設置され主たる利用契約者と見込まれる、要介護者宅に必要とされる急病や災害をケアする種々のセンサを備えることとできる。また、利用者端末3−1等は、通話機能や監視センタに対する自動発呼機能等を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】第一の実施形態にかかる監視システムの構成を概念的に示すブロック図である。
【図2】監視センタと複数の利用者端末との配置状況を地図上に表現した概念図である。
【図3】監視システムの動作処理を概念的に示すフロー図である。
【図4】第二の実施形態にかかる監視システムの構成を概念的に示すブロック図である。
【図5】監視システムの動作処理を地図上で説明する概念図である。
【図6】記録部が予め記憶する避難勧告通知範囲データテーブルを例示する図である。
【図7】第二の実施形態にかかる監視システムの動作処理を概念的に示すフロー図である。
【図8】第三の実施形態にかかる監視システムの構成を例示するブロック概念図である。
【図9】監視システムの動作と処理とを地図上で表現した概念図である。
【図10】利用者端末が検出する地震波を模式的に示す概念図である。
【図11】表示部が表示する避難勧告通知リストの典型例を示す図である。
【図12】監視システムの動作処理を概念的に示すフロー図である。
【図13】表示部の典型的表示例を示す図である。
【図14】従来の監視システムを示す図である。
【符号の説明】
【0132】
1・・監視センタ、2・・ネットワーク、3・・利用者端末、4・・データ処理部、5・・記録部、6・・表示部、7・・送受信処理部、8・・操作部、21・・地震波、41・・震源地推定部、42・・地震規模推定部、43・・避難勧告通知対象抽出部、44・・情報判断部、45・・地震発生通知部、46・・避難勧告通知部、47・・P波S波判断部、48・・応答確認部、51・・避難勧告通知範囲データテーブル、52・・地図情報記録部、91・・地震センサ、101・・監視センタ、102・・ネットワーク、103・・利用者端末、104・・データ処理部、105・・記録部、106・・表示部、107・・送受信処理部、108・・操作部、300・・推定震源地、300a・・推定震源地、300b・・推定震源地、301a・・避難勧告エリア、301b・・避難勧告エリア、931・・地震センサ、1000・・監視システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視センタと複数の利用者端末とネットワークとを含み、前記利用者端末から緊急時に前記監視センタに前記ネットワークを経由して通報する監視システムにおいて、
前記複数の利用者端末のうち、二以上の利用者端末が各々地震センサを備え、
前記地震センサを備える利用者端末は、前記地震センサが地震を検出した場合に、前記監視センタに検出した地震情報を自動的に通報し、
前記監視センタは、前記利用者端末との間の情報の送受信を行う送受信処理部と、
前記利用者端末からの通報が地震情報であるか否かを判断し、いずれかの前記利用者端末からの通報が地震情報である場合に、前記送受信処理部を介して全ての前記利用者端末に、同時に地震発生通知を行なうデータ処理部と、
を備えることを特徴とする監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の監視システムにおいて、
前記データ処理部は、前記地震情報から震源地を推定し、前記震源地から所定の範囲内の前記利用者端末に対して、前記送受信処理部を介して避難勧告通知を行なう
ことを特徴とする監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の監視システムにおいて、
前記データ処理部は、前記地震情報から地震規模を推定し、前記地震規模に対応して予め設定された前記所定の範囲内の前記利用者端末に対して、前記送受信処理部を介して避難勧告通知を行なう
ことを特徴とする監視システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の監視システムにおいて、
前記データ処理部は、前記監視センタが備える表示部に、前記震源地と前記所定の範囲内の利用者端末とを含む地図情報を表示させる
ことを特徴とする監視システム。
【請求項5】
請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の監視システムにおいて、
前記データ処理部は、前記地震情報が初期微動である場合に、前記送受信処理部を介して全ての前記利用者端末に同時に地震発生通知を行ない、
前記地震情報が主要動である場合に、前記送受信処理部を介して前記所定の範囲内の前記利用者端末に対して避難勧告通知を行なう
ことを特徴とする監視システム。
【請求項6】
請求項2乃至請求項5のいずれか一項に記載の監視システムにおいて、
前記データ処理部は、前記避難勧告通知に対する前記利用者端末からの応答通報の有無を、前記避難勧告通知を行なった利用者端末のリストと共に、前記監視センタが備える表示部に表示させる
ことを特徴とする監視システム。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の監視システムにおいて、
前記監視センタは、前記地震情報を記憶する記憶部を備える
ことを特徴とする監視システム。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の監視システムにおいて、
前記データ処理部は、最初に地震情報を通報した前記利用者端末から近い距離の前記利用者端末から順次、前記地震発生通知または前記避難勧告通知する
ことを特徴とする監視システム。
【請求項9】
監視センタと複数の利用者端末とネットワークとを含み、前記利用者端末から緊急時に前記監視センタに前記ネットワークを経由して通報する監視システムの監視制御方法において、
前記複数の利用者端末のうち、二以上の利用者端末が各々地震センサを備え、
前記地震センサで検出した地震情報を前記利用者端末が自動的に前記監視センタに通報する工程と、
前記監視センタが、前記二以上の利用者端末からの地震情報に基づき震源地と地震規模とを算出する算出工程と、
前記監視センタが、前記地震規模に対応して予め設定された前記震源地から所定の範囲内の利用者端末を抽出する抽出工程と、
前記監視センタが、前記抽出した利用者端末に対して、前記ネットワークを介して避難勧告通知を行なう避難勧告通知工程と
を有することを特徴とする監視制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載の監視制御方法において、
前記利用者端末が通報する前記地震情報が初期微動である場合に、前記監視センタが前記ネットワークを介して全ての前記利用者端末に同時に地震発生通知を行なう地震発生通知工程と、
前記利用者端末が通報する前記地震情報が主要動である場合に、前記算出工程と前記抽出工程と前記避難勧告通知工程と
を有することを特徴とする監視制御方法。
【請求項11】
請求項9または請求項10に記載の監視制御方法において、
前記監視センタが、前記避難勧告通知に対する前記利用者端末からの応答通報の有無を、前記避難勧告通知を行なった利用者端末のリストと共に、前記監視センタが備える表示部に表示させる工程
を有することを特徴とする監視制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−258993(P2009−258993A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107221(P2008−107221)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000237662)富士通テレコムネットワークス株式会社 (682)
【Fターム(参考)】