説明

監視制御システムおよび監視制御データ入出力プログラム

【課題】 多様な監視制御対象に対応する柔軟性と、監視制御用データの入出力におけるリアルタイム性とを両立する。
【解決手段】 監視制御データ入出力プログラム7は、情報モデル層7Aと、対象対応層7Bと、入出力対応層7Cとの三層構造を有する。対象対応層7Bは、周期的または監視制御データ入出力プログラム7内部の状態変化に基づいて、入出力対応層7Cに対して監視制御対象2の監視データを要求するコマンドを自発的に発令する。対象対応層7Bは、上記自発的に発令したコマンドに対する入出力対応層7Cからの応答である監視データを保存しておく。一方、情報モデル層7Aは、モバイルエージェント60からの監視データの検索要求に対して、保存してある監視データのうち該当する監視データを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視制御システムおよび同システムに用いられる監視制御データ入出力プログラムに関する。さらに詳述すると、本発明は、発電機、分散型電源、開閉器、負荷などの電力系統機器を監視および制御するシステム並びに同システムに用いられる監視制御データ入出力プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電力系統監視制御システムは、一般に単一ベンダによって個別に構築されているため、電源などの機器に対するアクセス方法は、ベンダ独自の仕様となっている。一方、多様な監視制御対象への対応を容易にするため、プログラミング言語としてスクリプト言語を用いて監視制御対象へのアクセス機能を実現するソフトウェアを構築し、システムの柔軟性を実現するようにした従来技術がある(非特許文献1参照)。また、ハードウェアの構成に依存しないように、電力系統の監視制御システムを基本部と応用処理部に分離し、応用処理部が基本部とのみイベントの授受を行う技術も提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【非特許文献1】「Active Q Adaptor」:M. Suzuki et. al. “Active Q Adaptor for Programmable End-to-End Network Management Systems,” IEICE Trans. Commun. Vol. E82-B, No. 11, Nov. 1999, pp. 1761-1769.
【特許文献1】特開平8−328648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電力自由化の進展や分散型電源など新技術の登場により、複数メーカの機器の採用が想定され、これにより、監視制御システムから機器へのアクセス機能を分離し、それをマルチベンダ対応とする要求が発生すると予想される。一方で、処理のリアルタイム性は、現在の水準を確保しなければならない。即ち、監視制御システムから監視制御対象へのアクセス機能を実現するソフトウェアには、個別機器毎に異なり得るハードウェア仕様や、機器との接続に用いる入出力インターフェースの差異に対応できる柔軟な構造と、処理のリアルタイム性との両立が求められている。
【0005】
これに対して、非特許文献1の技術では、スクリプト言語を採用することで、機器や入出力インターフェースの差異に比較的柔軟に対応できるようにはなるが、実行時にスクリプトの解釈を必要とするため、データの入出力に要する処理時間が増加し、処理のリアルタイム性を確保することが困難となる。また、特許文献1の技術では、応用処理部がハードウェア構成に依存しないことを実現できても、基本部については、一体の構成をとっているため、ハードウェア構成に依存してしまう。即ち、監視制御対象(主としてハードウェア)およびその入出力インターフェースの差異に対応できる柔軟性(換言すれば、マルチベンダ対応)と、処理のリアルタイム性とを両立できる技術はいまだない。
【0006】
特に、このマルチベンダ対応とリアルタイム性確保の両立を実現すべき領域の1つに、需要地系統の監視制御システムが存在する。需要地系統とは、分散型電源のフリーアクセス化を目指した次世代配電系統である。需要地系統では、面的に分散配置された監視制御用装置(需給インタフェースやループコントローラなど)が、相互に連携しながら系統の監視制御を行うため、情報通信システムが重要な役割を担う。この情報通信システムでは、リアルタイムのものを含む様々な監視制御機能を統合し、かつ柔軟な処理を実現するため、モバイルエージェント技術の適用が望まれる。需要地系統では、系統機器の所有者が配電系統の運用者とは限らないことから、機器に対するアクセス方法のマルチベンダ対応が必要となると考えられる。すなわち、モバイルエージェントに対し、系統機器などの監視制御データ取得や操作に関する統一的な方法を、監視制御用装置において提供することが望ましい。
【0007】
そこで本発明は、多様な監視制御対象に対応する柔軟性と、監視制御用データの入出力におけるリアルタイム性とを両立する監視制御システムおよび監視制御データ入出力プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハードウェアである機器又は当該機器の制御に用いられるソフトウェアを監視制御対象として、この監視制御対象を監視制御する主監視制御装置と、前記監視制御対象と入出力インターフェースを介して接続され、当該接続された監視制御対象から出力されるデータを前記主監視制御装置に提供すると共に前記主監視制御装置の指令を前記監視制御対象に伝達する監視制御用装置と、1台または複数台のコンピュータを前記主監視制御装置として機能させる主監視制御プログラムと、コンピュータを前記監視制御用装置として機能させる監視制御データ入出力プログラムとを備える監視制御システムにおいて、前記監視制御データ入出力プログラムは、前記主監視制御プログラムと通信可能に構成されて前記主監視制御プログラムからの要求を受け付けると共に当該要求に対応した応答を返す情報モデル層と、前記情報モデル層と通信可能に構成されて前記監視制御対象が理解可能なコマンドを発令する対象対応層と、前記対象対応層および前記監視制御対象と通信可能に構成されて前記入出力インターフェースに対応した入出力制御を行う入出力対応層との三層構造を有し、前記情報モデル層は、前記監視制御対象の状態および動作をソフトウェアで表した情報モデルを有し、前記主監視制御プログラムからの監視制御指令が前記情報モデル層、前記対象対応層、前記入出力対応層を順次介して、前記監視制御対象に伝達され、かつ前記監視制御対象から出力される監視データまたは制御結果情報が前記入出力対応層、前記対象対応層、前記情報モデル層を順次介して、前記主監視制御プログラムに伝達され、前記対象対応層は、周期的または前記監視制御データ入出力プログラム内部の状態変化に基づいて、前記入出力対応層に対して、前記監視制御対象の監視データを要求するコマンドを自発的に発令すると共に、当該要求に対する前記入出力対応層からの応答である監視データを保存しておき、前記情報モデル層は前記主監視制御プログラムからの監視データの検索要求に対して前記保存してある監視データのうち該当する監視データを提供するようにしている。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、ハードウェアである機器又は当該機器の制御に用いられるソフトウェアを監視制御対象として、この監視制御対象を監視制御する主監視制御装置と、前記監視制御対象と入出力インターフェースを介して接続され、当該接続された監視制御対象から出力されるデータを前記主監視制御装置に提供すると共に前記主監視制御装置の指令を前記監視制御対象に伝達する監視制御用装置と、1台または複数台のコンピュータを前記主監視制御装置として機能させる主監視制御プログラムと、コンピュータを前記監視制御用装置として機能させる監視制御データ入出力プログラムとを備える監視制御システムにおいて、前記監視制御データ入出力プログラムは、前記主監視制御プログラムと通信可能に構成されて前記主監視制御プログラムからの要求を受け付けると共に当該要求に対応した応答を返す情報モデル層と、前記情報モデル層と通信可能に構成されて前記監視制御対象が理解可能なコマンドを発令する対象対応層と、前記対象対応層および前記監視制御対象と通信可能に構成されて前記入出力インターフェースに対応した入出力制御を行う入出力対応層との三層構造を有し、前記情報モデル層は、前記監視制御対象の状態および動作をソフトウェアで表した情報モデルを有し、前記主監視制御プログラムからの監視制御指令が前記情報モデル層、前記対象対応層、前記入出力対応層を順次介して、前記監視制御対象に伝達され、かつ前記監視制御対象から出力される監視データまたは制御結果情報が前記入出力対応層、前記対象対応層、前記情報モデル層を順次介して、前記主監視制御プログラムに伝達され、前記対象対応層は、前記入出力対応層から通知される前記監視制御対象から自発的に出力された監視データのうち予め登録された条件と一致する監視データを保存しておき、前記情報モデル層は前記主監視制御プログラムからの監視データの検索要求に対して前記保存してある監視データのうち該当する監視データを提供するようにしている。
【0010】
また、請求項5記載の発明は、ハードウェアである機器又は当該機器の制御に用いられるソフトウェアを監視制御対象として、この監視制御対象を監視制御する主監視制御装置と、前記監視制御対象と入出力インターフェースを介して接続され、当該接続された監視制御対象から出力されるデータを前記主監視制御装置に提供すると共に前記主監視制御装置の指令を前記監視制御対象に伝達する監視制御用装置と、1台または複数台のコンピュータを前記主監視制御装置として機能させる主監視制御プログラムと、コンピュータを前記監視制御用装置として機能させる監視制御データ入出力プログラムとを備える監視制御システムにおいて、複数の前記監視制御用装置が通信網を介して相互に接続されると共に前記主監視制御プログラムは前記複数の監視制御用装置間を移動する1または複数のモバイルエージェントを有して構成され、前記監視制御データ入出力プログラムは、前記主監視制御プログラムと通信可能に構成されて前記主監視制御プログラムからの要求を受け付けると共に当該要求に対応した応答を返す情報モデル層と、前記情報モデル層と通信可能に構成されて前記監視制御対象が理解可能なコマンドを発令する対象対応層と、前記対象対応層および前記監視制御対象と通信可能に構成されて前記入出力インターフェースに対応した入出力制御を行う入出力対応層との三層構造を有し、前記情報モデル層は、前記監視制御対象の状態および動作をソフトウェアで表した情報モデルを有し、前記情報モデルは、少なくとも複数の前記監視制御用装置間で統一された規則に従って構成され、前記主監視制御プログラムからの監視制御指令が前記情報モデル層、前記対象対応層、前記入出力対応層を順次介して、前記監視制御対象に伝達され、かつ前記監視制御対象から出力される監視データまたは制御結果情報が前記入出力対応層、前記対象対応層、前記情報モデル層を順次介して、前記主監視制御プログラムに伝達され、前記モバイルエージェントは前記情報モデル層に非同期の制御指令を出した後、当該指令に対する応答を待たずに消滅または他の前記監視制御用装置に移動し、前記モバイルエージェントからの制御指令が前記情報モデル層、前記対象対応層、前記入出力対応層を順次介して、前記対象機器に伝達されると共に、前記対象対応層は、前記入出力対応層から通知される前記監視制御対象から出力された制御結果情報を保存しておき、前記情報モデル層は、他のモバイルエージェントまたは再び移動して来た前記モバイルエージェントからの制御結果情報の取得要求に対して前記保存してある制御結果情報を提供するようにしている。
【0011】
したがって、請求項1,2,5記載の発明によれば、監視制御データ入出力プログラムが情報モデル層と対象対応層と入出力対応層との三層構造を備えるので、主監視制御プログラムは、個別の監視制御対象の差異および入出力インターフェースの差異を意識することなく、情報モデル層に対して監視制御のための通信を行える。したがって、主監視制御プログラムに対して、監視制御対象へアクセスするための統一的なインターフェースを提供できる。これにより、主監視制御プログラムの構成を単純化でき、主監視制御プログラムの構築が容易になる。また、上記三層構造における各層の結びつき(ある層を変更した際に隣接する層の変更が必要となる度合い)を疎にすることで、特定の監視制御対象あるいは特定の入出力インターフェースに対応したソフトウェアモジュールを、他の監視制御対象あるいは他の入出力インターフェースに対応したソフトウェアモジュールに、他の層(特に情報モデル層)に影響を与えることなく入れ替えることが可能となる。したがって、個別の監視制御対象の差異や入出力インターフェースの差異に基づくプログラム部品の改修を柔軟に行うことができ、プログラム構築が容易になる。これにより、マルチベンダ対応の要求にも対応できる。
【0012】
しかも、請求項1記載の発明のように、監視制御データ入出力プログラムが自律的に監視データを取得・保存することによって、主監視制御プログラムは情報モデル層に問い合わせるだけで、迅速に最新の監視データを取得することができる。主監視制御プログラムから監視制御対象まで問い合わせる時間は発生しないので、主監視制御プログラムが監視データを取得するまでの待ち時間を短縮でき、処理のリアルタイム性の要求を満足することができる。
【0013】
さらに、請求項2記載の発明においても、監視制御データ入出力プログラムが登録されたイベントを監視し自律的に監視データを取得・保存することによって、主監視制御プログラムは情報モデル層に問い合わせるだけで、例えば特に注意を要する警報に関する監視データなどを迅速に取得することができる。この場合も、主監視制御プログラムから監視制御対象まで問い合わせる時間は発生しないので、主監視制御プログラムが監視データを取得するまでの待ち時間を短縮でき、処理のリアルタイム性の要求を満足することができる。
【0014】
さらに、請求項5記載の発明によれば、主監視制御プログラムは情報モデル層に対して制御指令を出した直後から別の処理を開始できる。したがって、主監視制御プログラムが自身が出した制御指令に対する応答を受け取るまでの待ち時間を解消できる。これにより、主監視制御プログラムは処理を効率的に進めることができ、ひいては監視制御システム全体の処理の高速化に寄与でき、処理のリアルタイム性の要求に寄与できる。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の監視制御システムにおいて、複数の前記監視制御用装置が通信網を介して相互に接続されると共に前記主監視制御プログラムは前記複数の監視制御用装置間を移動する1または複数のモバイルエージェントを有して構成されるものとしている。モバイルエージェント技術をベースとして主監視制御プログラムを構築することにより、限定された計算資源における多様な処理の実現と、システム構成の変化に対する柔軟性を確保することができる。
【0016】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の監視制御システムにおいて、前記情報モデルは、少なくとも複数の前記監視制御用装置間で統一された規則に従って構成されるようにしている。この場合、複数の監視制御用装置の間を移動するモバイルエージェントに対して、監視制御対象へアクセスするための統一的なインターフェースを提供でき、特定のベンダに偏ることなく、モバイルエージェントに対する監視制御対象へのアクセスインターフェースを統一できる。
【0017】
また、請求項6記載の発明は、請求項5記載の監視制御システムにおいて、前記情報モデル層、前記対象対応層、前記入出力対応層の各層は、プログラム部品であるオブジェクトによって構成され、前記情報モデル層は、前記情報モデルとして機能する情報モデルオブジェクトと、特定の操作項目を管理する操作項目オブジェクトと、特定の制御結果情報を管理する操作項目値オブジェクトを更に有し、前記情報モデルオブジェクトは特定の操作項目を管理する操作項目オブジェクトを検索可能であり、かつ前記操作項目オブジェクトは特定の制御結果情報を管理する操作項目値オブジェクトを検索可能であり、前記対象対応層は、前記モバイルエージェントからの前記情報モデルオブジェクトに対する非同期の制御指令を前記監視制御対象が理解可能なコマンドに翻訳して発令する対象駆動オブジェクトを有し、前記入出力対応層は、前記対象駆動オブジェクトが発令したコマンドを前記入出力インターフェースに対応したデータ形式で前記監視制御対象に送信すると共に前記監視制御対象から応答として出力された制御結果情報を前記対象駆動オブジェクトに渡すデータ交換オブジェクトを有し、前記対象駆動オブジェクトは、上記自身が発令したコマンドの応答として前記データ交換オブジェクトから制御結果情報を受け取ると当該制御結果情報を管理する操作項目値オブジェクトを新たに生成すると共に、当該制御に該当する操作項目を管理する操作項目オブジェクトに対して、上記生成された操作項目値オブジェクトの情報を追加して、前記操作項目オブジェクトが新たに生成された前記操作項目値オブジェクトを検索可能とし、前記モバイルエージェントから前記情報モデル層に対する制御結果情報の取得要求に対して前記情報モデルは該当する前記操作項目オブジェクトを前記モバイルエージェントに通知し、前記操作項目オブジェクトは該当する前記操作項目値オブジェクトを前記モバイルエージェントに通知する又は該当する前記操作項目値オブジェクトから取得した制御結果情報を前記モバイルエージェントに提供するようにしている。
【0018】
また、請求項7記載の発明は、請求項1から6のいずれか1つに記載の監視制御システムにおいて、前記情報モデル層、前記対象対応層、前記入出力対応層の各層は、プログラム部品であるオブジェクトによって構成され、前記情報モデル層は、前記情報モデルとして機能する情報モデルオブジェクトと、特定の監視項目を管理する監視項目オブジェクトと、特定の監視データを管理する監視項目値オブジェクトを更に有し、前記情報モデルオブジェクトは特定の監視項目を管理する監視項目オブジェクトを検索可能であり、かつ前記監視項目オブジェクトは特定の監視データを管理する監視項目値オブジェクトを検索可能であり、前記対象対応層は、周期的または前記監視制御データ入出力プログラム内部の状態変化に基づいて前記入出力対応層に対して前記監視制御対象の監視データを要求するコマンドを自発的に発令する対象駆動オブジェクトを有し、前記入出力対応層は、前記対象駆動オブジェクトが発令したコマンドを前記入出力インターフェースに対応したデータ形式で前記監視制御対象に送信すると共に前記監視制御対象から応答として出力された監視データを前記対象駆動オブジェクトに渡すデータ交換オブジェクトを有し、前記対象駆動オブジェクトは、自身が自発的に発令したコマンドの応答として前記データ交換オブジェクトから監視データを受け取ると当該監視データを管理する監視項目値オブジェクトを新たに生成すると共に、当該監視データに該当する監視項目を管理する監視項目オブジェクトに対して、上記生成された監視項目値オブジェクトの情報を追加して、前記監視項目オブジェクトが新たに生成された前記監視項目値オブジェクトを検索可能とし、前記主監視制御プログラムから前記情報モデル層に対する監視データの検索要求に対して、前記情報モデルオブジェクトは該当する前記監視項目オブジェクトを前記主監視制御プログラムに通知し、前記監視項目オブジェクトは該当する前記監視項目値オブジェクトを前記主監視制御プログラムに通知する又は該当する前記監視項目値オブジェクトから取得した監視データを前記主監視制御プログラムに提供するようにしている。
【0019】
また、請求項8記載の発明は、請求項1から7のいずれか1つに記載の監視制御システムにおいて、前記情報モデル層、前記対象対応層、前記入出力対応層の各層は、プログラム部品であるオブジェクトによって構成され、前記情報モデル層は、前記情報モデルとして機能する情報モデルオブジェクトと、特定の監視項目を管理する監視項目オブジェクトと、特定の監視データを管理する監視項目値オブジェクトを更に有し、前記情報モデルオブジェクトは特定の監視項目を管理する監視項目オブジェクトを検索可能であり、かつ前記監視項目オブジェクトは特定の監視データを管理する監視項目値オブジェクトを検索可能であり、前記対象対応層は、前記監視制御対象から自発的に出力された監視データを前記入出力対応層から受信するイベント受信オブジェクトを有し、前記イベント受信オブジェクトは受信した監視データのうち予め登録された条件と一致する監視データがある場合に、当該監視データを管理する監視項目値オブジェクトを新たに生成すると共に、当該監視データに該当する監視項目を管理する監視項目オブジェクトに対して、上記生成された監視項目値オブジェクトの情報を追加して、前記監視項目オブジェクトが新たに生成された前記監視項目値オブジェクトを検索可能とし、前記主監視制御プログラムから前記情報モデル層に対する監視データの検索要求に対して、前記情報モデルは該当する前記監視項目オブジェクトを前記主監視制御プログラムに通知し、前記監視項目オブジェクトは該当する前記監視項目値オブジェクトを前記主監視制御プログラムに通知する又は該当する前記監視項目値オブジェクトから取得した監視データを前記主監視制御プログラムに提供するようにしている。
【0020】
したがって、オブジェクト指向技術に基づいて監視制御データ入出力プログラムを構築することにより、情報モデル層/対象対応層/入出力対応層の各層における結びつき(ある層を変更した際に隣接する層の変更が必要となる度合い)を疎にすることができ、特定の監視制御対象あるいは特定の入出力インターフェースに対応したオブジェクトを、他の監視制御対象あるいは他の入出力インターフェースに対応したオブジェクトに、他の層(特に情報モデル層)に影響を与えることなく入れ替えることが可能となる。したがって、個別の監視制御対象の差異や入出力インターフェースの差異に基づくプログラム部品の改修を柔軟に行うことができ、プログラム構築が容易になる。これにより、マルチベンダ対応の要求にも対応できる。
【0021】
また、情報モデルオブジェクトに監視項目や操作項目を定義すると、その監視項目や操作項目が固定されてしまい、後に監視項目や操作項目の過不足が生じる可能性がある。情報モデルオブジェクトから監視項目および操作項目を分離し、情報モデルオブジェクトと監視項目オブジェクトまたは操作項目オブジェクトとの間の関連として定義することにより、監視項目や操作項目の追加や削除に柔軟に対応できるプログラム構成となる。また、各監視項目や操作項目についてのデータは、一般に時間の経過とともに増加する。監視項目オブジェクトおよび操作項目オブジェクトから監視データや制御結果情報を分離し、監視項目オブジェクトと監視項目値オブジェクトとの間の関連および操作項目オブジェクトと操作項目値オブジェクトの関連として定義することにより、監視データや制御結果情報の管理方法(例えば不要なデータを削除するなど)を柔軟に設定できるプログラム構成となる。
【0022】
また、請求項9記載の発明は、請求項1から8のいずれか1つに記載の監視制御システムにおいて、前記主監視制御プログラムは前記情報モデル層に同期を要する監視制御指令を出した後、当該指令の応答を受け取るまで待ち続けるものとしている。この場合、監視データの取得または制御指令を出した主監視制御プログラムは、確実にその応答を受け取ることができるので、緊急時における監視データの確実な取得や、確実に実行するべき強制終了操作など、高い信頼性が要求される場合にも対応できる。
【0023】
また、請求項10記載の発明は、請求項1から9のいずれか1つに記載の監視制御システムにおいて、前記監視制御対象は電力系統機器であるものとしている。この場合、処理のリアルタイム性に対する要求が厳しく、尚かつマルチベンダ対応が求められている電力系統の監視制御システムに本発明を適用できる。
【0024】
また、請求項11記載の監視制御データ入出力プログラムは、請求項1から10のいずれか1つに記載の監視制御システムの監視制御用装置として、コンピュータを機能させるものである。この監視制御データ入出力プログラムを用いることによって、例えば既存の監視制御システムを、上述した効果を奏する本発明に係る監視制御システムとして機能させることができる。
【0025】
また、請求項12記載の発明は、請求項11記載の監視制御データ入出力プログラムにおいて、コンパイラ型言語で作成されるものとしている。この場合、プログラミング言語として、インタープリタ型言語、スクリプト言語を用いた場合と比較して、プログラム実行時の処理速度を高速化でき、処理のリアルタイム性の要求をより満足させることができる。
【発明の効果】
【0026】
しかして請求項1,2,5記載の発明によれば、監視制御データ入出力プログラムが情報モデル層と対象対応層と入出力対応層との三層構造を備えるので、主監視制御プログラムは、個別の監視制御対象の差異および入出力インターフェースの差異を意識することなく、情報モデル層に対して監視制御のための通信を行える。したがって、主監視制御プログラムに対して、監視制御対象へアクセスするための統一的なインターフェースを提供できる。これにより、主監視制御プログラムの構成を単純化でき、主監視制御プログラムの構築が容易になる。また、上記三層構造における各層の結びつき(ある層を変更した際に隣接する層の変更が必要となる度合い)を疎にすることで、特定の監視制御対象あるいは特定の入出力インターフェースに対応したソフトウェアモジュールを、他の監視制御対象あるいは他の入出力インターフェースに対応したソフトウェアモジュールに、他の層(特に情報モデル層)に影響を与えることなく入れ替えることが可能となる。したがって、個別の監視制御対象の差異や入出力インターフェースの差異に基づくプログラム部品の改修を柔軟に行うことができ、プログラム構築が容易になる。これにより、マルチベンダ対応の要求にも対応できる。
【0027】
しかも、請求項1記載の発明のように、監視制御データ入出力プログラムが自律的に監視データを取得・保存することによって、主監視制御プログラムは情報モデル層に問い合わせるだけで、迅速に最新の監視データを取得することができる。主監視制御プログラムから監視制御対象まで問い合わせる時間は発生しないので、主監視制御プログラムが監視データを取得するまでの待ち時間を短縮でき、処理のリアルタイム性の要求を満足することができる。
【0028】
さらに、請求項2記載の発明においても、監視制御データ入出力プログラムが登録されたイベントを監視し自律的に監視データを取得・保存することによって、主監視制御プログラムは情報モデル層に問い合わせるだけで、例えば特に注意を要する警報に関する監視データなどを迅速に取得することができる。この場合も、主監視制御プログラムから監視制御対象まで問い合わせる時間は発生しないので、主監視制御プログラムが監視データを取得するまでの待ち時間を短縮でき、処理のリアルタイム性の要求を満足することができる。
【0029】
さらに、請求項5記載の発明によれば、主監視制御プログラムは情報モデル層に対して制御指令を出した直後から別の処理を開始できる。したがって、主監視制御プログラムが自身が出した制御指令に対する応答を受け取るまでの待ち時間を解消できる。これにより、主監視制御プログラムは処理を効率的に進めることができ、ひいては監視制御システム全体の処理の高速化に寄与でき、処理のリアルタイム性の要求に寄与できる。
【0030】
さらに、請求項3記載の発明によれば、モバイルエージェント技術をベースとして主監視制御プログラムを構築することにより、限定された計算資源における多様な処理の実現と、システム構成の変化に対する柔軟性を確保することができる。
【0031】
さらに、請求項4記載の発明によれば、少なくとも複数の監視制御用装置間で統一された規則に従って情報モデルを構成することにより、複数の監視制御用装置の間を移動するモバイルエージェントに対して、監視制御対象へアクセスするための統一的なインターフェースを提供でき、特定のベンダに偏ることなく、モバイルエージェントに対する監視制御対象へのアクセスインターフェースを統一できる。
【0032】
さらに、請求項6,7,8記載の発明によれば、オブジェクト指向技術に基づいて監視制御データ入出力プログラムを構築することにより、情報モデル層/対象対応層/入出力対応層の各層における結びつき(ある層を変更した際に隣接する層の変更が必要となる度合い)を疎にすることができ、特定の監視制御対象あるいは特定の入出力インターフェースに対応したオブジェクトを、他の監視制御対象あるいは他の入出力インターフェースに対応したオブジェクトに、他の層(特に情報モデル層)に影響を与えることなく入れ替えることが可能となる。したがって、個別の監視制御対象の差異や入出力インターフェースの差異に基づくプログラム部品の改修を柔軟に行うことができ、プログラム構築が容易になる。これにより、マルチベンダ対応の要求にも対応できる。
【0033】
さらに、情報モデルオブジェクトから監視項目および操作項目を分離し、情報モデルオブジェクトと監視項目オブジェクトまたは操作項目オブジェクトとの間の関連として定義することにより、監視項目や操作項目の追加や削除に柔軟に対応できるプログラム構成となる。また、各監視項目や操作項目についてのデータは、一般に時間の経過とともに増加するが、監視項目オブジェクトおよび操作項目オブジェクトから監視データや制御結果情報を分離し、監視項目オブジェクトと監視項目値オブジェクトとの間の関連および操作項目オブジェクトと操作項目値オブジェクトの関連として定義することにより、監視データや制御結果情報の管理方法(例えば不要なデータを削除するなど)を柔軟に設定できるプログラム構成となる。
【0034】
さらに、請求項9記載の発明によれば、監視データの取得または制御指令を出した主監視制御プログラムは、確実にその応答を受け取ることができるので、緊急時における監視データの確実な取得や、確実に実行するべき強制終了操作など、高い信頼性が要求される場合にも対応できる。
【0035】
さらに、請求項10記載の発明によれば、監視制御対象を電力系統機器とするので、処理のリアルタイム性に対する要求が厳しく、尚かつマルチベンダ対応が求められている電力系統の監視制御システムに本発明を適用できる。
【0036】
さらに、請求項11記載の監視制御データ入出力プログラムを用いることによって、例えば既存の監視制御システムを、上述した効果を奏する本発明に係る監視制御システムとして機能させることができる。
【0037】
さらに、請求項12記載の監視制御データ入出力プログラムのように、コンパイラ型言語で作成することで、インタープリタ型言語、スクリプト言語を用いた場合と比較して、プログラム実行時の処理速度を高速化でき、処理のリアルタイム性の要求をより満足させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明の構成を図面に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0039】
図1から図8に本発明の監視制御システムおよび監視制御データ入出力プログラムの実施の一形態を示す。この監視制御システム1は、ハードウェアである機器又は当該機器の制御に用いられるソフトウェアを監視制御対象2として、この監視制御対象2を監視制御する主監視制御装置3と、監視制御対象2と入出力インターフェース4を介して接続され、当該接続された監視制御対象2から出力されるデータを主監視制御装置3に提供すると共に、主監視制御装置3の指令を監視制御対象2に伝達する監視制御用装置5と、1台または複数台のコンピュータを主監視制御装置3として機能させる主監視制御プログラム6と、コンピュータを監視制御用装置5として機能させる監視制御データ入出力プログラム7とを備えている。
【0040】
例えば本実施形態の監視制御対象2は、電力系統機器(ハードウェア)としている。電力系統機器は、例えば発電機、分散型電源、開閉器、負荷など複数種の機器が存在する。また、例えば本実施形態の入出力インターフェース4は、各種電力系統機器と監視制御用装置5とを接続する入出力用機器である。入出力用機器は、例えばシリアルポート、パラレルポート、イーサネット(登録商標)など、電力系統機器の種類に応じて複数種の機器が存在する。
【0041】
また、本実施形態においては、図2に示すように監視制御用装置5は複数台存在し、これら複数の監視制御用装置5が通信網(ネットワーク)8を介して相互に接続されている。尚、通信網8は一般的には有線通信網であるが、一部又は全部を無線通信網としても構わない。また、通信網8としてインターネットを利用しても良い。
【0042】
例えば本実施形態では、需要地系統の監視制御システムに本発明を適用した例について説明する。需要地系統とは、分散型電源のフリーアクセス化を目指した次世代配電系統である(参考文献;小林広武,七原俊也:「新世紀のエネルギーマネージメント(15) 21世紀の電力系統-需要地系統-」,総合電気雑誌OHM,Vol. 89,No. 3,オーム社,pp. 99-103 (2002-3))。需要地系統では、電力系統機器の所有者が配電系統の運用者とは限らないことから、電力系統機器に対するアクセス方法のマルチベンダ対応が必要となると考えられる。そこで、主監視制御プログラム6に対し、監視制御対象2である電力系統機器の監視制御データ取得や操作に関する統一的な方法を、監視制御用装置5において提供する。
【0043】
また、主監視制御プログラム(系統監視制御プログラム)6は、複数の監視制御用装置5,5間で監視制御情報を伝達し、複数の各種電力系統機器間の連携を担うと共に、事故区間分離のような系統を中心とした監視制御の処理を担う。この主監視制御プログラム6は、限定された計算資源における多様な処理の実現と、システム構成の変化に対する柔軟性を確保する観点から、モバイルエージェント技術をベースとして構築することが望ましい。そこで、例えば本実施形態の主監視制御プログラム6は、複数の監視制御用装置5の間を移動する1または複数のモバイルエージェント60を有して構成される。この際、モバイルエージェント技術をベースとして系統監視制御プログラムを構築する従来技術(参考文献;大谷哲夫:「次世代配電系統監視制御用モバイルエージェントの構成とQoS制御方式」,電気学会電子・情報・システム部門誌,Vol. 124,No.3,pp. 921-928 (2004-3))を利用しても良い。また、主監視制御プログラム6の構築に用いるプログラミング言語は、モバイルエージェント60を容易に実現することが可能なJava(登録商標)を利用することが好ましい。
【0044】
監視制御データ入出力プログラム7は、主監視制御プログラム6(本実施形態ではモバイルエージェント60)と通信可能に構成されて主監視制御プログラム6からの要求を受け付けると共に当該要求に対応した応答を返す情報モデル層7Aと、情報モデル層7Aと通信可能に構成されて監視制御対象2が理解可能なコマンドを発令する対象対応層7Bと、対象対応層7Bおよび監視制御対象2と通信可能に構成されて入出力インターフェース4に対応した入出力制御を行う入出力対応層7Cとの三層構造を有している。
【0045】
主監視制御プログラム6からの監視制御指令は、情報モデル層7A、対象対応層7B、入出力対応層7Cを順次介して、監視制御対象2に伝達される。また、監視制御対象2から出力される監視データまたは制御結果情報は、入出力対応層7C、対象対応層7B、情報モデル層7Aを順次介して、主監視制御プログラム6に伝達される。
【0046】
情報モデル層7A、対象対応層7B、入出力対応層7Cの各層は、オブジェクトと呼ばれるプログラム部品によって構成される。各オブジェクトは、自身の状態を表すデータ(プロパティとも呼ばれる)と、自身を操作する手順を示すプログラム(メソッドとも呼ばれる)を有する。主監視制御プログラム6側を上位、監視制御対象2側を下位とすると、情報モデル層7A、対象対応層7B、入出力対応層7Cの各層のオブジェクトは、一段下の下位層のオブジェクトのメソッドを呼び出す。各オブジェクトが呼び出すべき他のオブジェクトは予め定めておく。
【0047】
情報モデル層7Aは、監視制御対象2の操作モードやロギング情報を表すオブジェクトによって構成され、主監視制御プログラム6とのインターフェースとして機能する。情報モデル層7Aに属するオブジェクトは、監視制御対象2である具体的な機器製品(本実施形態では個別の電力系統機器)および入出力インターフェース4のいずれにも依存しない。
【0048】
対象対応層7Bは、監視制御対象2を具体的に操作するためのコマンドおよび制御論理を持ったオブジェクトによって構成される。対象対応層7Bに属するオブジェクトは、監視制御対象2である具体的な機器製品(本実施形態では個別の電力系統機器)に対応し、入出力インターフェース4には依存しない。
【0049】
入出力対応層7Cは、監視制御対象2である電力系統機器が接続された入出力インターフェース4(例えばシリアルポートやパラレルポートなど)に対応した入出力制御を行うオブジェクトによって構成され、監視制御対象2との通信を担う。入出力対応層7Cに属するオブジェクトは、具体的な入出力インターフェース4に対応し、個別の電力系統機器には依存しない。
【0050】
主監視制御プログラム6は、情報モデル層7Aのオブジェクトの呼び出し、情報モデル層7Aのオブジェクトからのデータ受信を行うが、対象対応層7Bのオブジェクトおよび入出力対応層7Cのオブジェクトおよび監視制御対象2とは直接通信しない。また、情報モデル層7Aのオブジェクトは、対象対応層7Bのオブジェクトの呼び出し、対象対応層7Bのオブジェクトからのデータ受信を行うが、入出力対応層7Cのオブジェクトおよび監視制御対象2とは直接通信しない。また、対象対応層7Bのオブジェクトは、入出力対応層7Cのオブジェクトの呼び出し、入出力対応層7Cのオブジェクトからのデータ受信を行うが、主監視制御プログラム6および監視制御対象2とは直接通信しない。また、入出力対応層7Cのオブジェクトは、監視制御対象2とのデータ送受信を行うが、主監視制御プログラム6および情報モデル層7Aのオブジェクトとは直接通信しない。
【0051】
監視制御データ入出力プログラム7の構築に用いるプログラミング言語は、オブジェクト指向分析設計が可能な種類(例えばJava(登録商標))が適している。一方で、処理の高速化の観点からは、コンパイラ型言語の利用が望ましい。そこで、本実施形態では、Java(登録商標)およびJIT(Just-In-Time)コンパイラを利用して監視制御データ入出力プログラム7を構築するようにしている。
【0052】
情報モデル層7Aは、監視制御対象2をソフトウェアとしてモデル化した情報モデルに基づくオブジェクトを有している。情報モデルとは、監視制御対象2(本実施形態では電力系統機器)の状態および動作をソフトウェアとして表したもので、あたかも監視制御対象2のように振る舞い、情報モデルに対して通信を行う主監視制御プログラム6(系統監視制御プログラム)からは、あたかも監視制御対象2を実際に操作しているように見える。この情報モデルは、少なくとも監視制御システム1における複数の監視制御用装置5の間で統一された規則に従って構成されるものとする。この場合、複数の監視制御用装置5の間を移動するモバイルエージェント60に対して、監視制御対象2へアクセスするための統一的なインターフェースを提供できる。特に国際標準として制定された情報モデルを利用すれば、特定のベンダに偏ることなく、モバイルエージェント60に対する監視制御対象2へのアクセスインターフェースを統一できる。
【0053】
例えば本実施形態では、国際電気標準会議(International Electrotechnical Commission;IEC)において規格化が進められているCIM(Common Information Model)に基づいて情報モデルを設計するようにしている。CIMは、遠方監視制御システム(SCADA;Supervisory Control And Data Acquisition)や、自動給電及び需給制御のようなエネルギー管理システム(EMS;Energy Management System)が、制御所において相互に情報を交換するために利用する情報モデルである。CIMを採用する理由は、以下の通りである。(1)一般に、機器のモデル化には膨大な作業を伴うため、既存の設計を最大限活用することが望ましい。CIMがオブジェクト指向技術に基づいていることから、需要地系統向けに再設計する際の作業量は、新規に設計を行う場合より軽微である。(2)需要地系統の監視制御のうち、主監視制御プログラム6(系統監視制御プログラム)を利用するものについては、分散型電源の発電量設定、地絡事故発生に伴う事故区間分離、事故区間の周辺区間における電圧制御や周波数制御等、基幹系統における制御所が担う役割に類似している。(3)配電管理システムに関する標準であるIEC61968では、システム間連携に用いられるメッセージをCIMに基づいて定義している。そのため、将来IEC61968に準拠させる場合、比較的容易に移行できると考えられる。
【0054】
情報モデル層7Aのオブジェクトと対象対応層7Bのオブジェクトは、例えば図3に示すような委託関係を構成する。情報モデル層7Aのオブジェクトからは、個別の電力系統機器に対応した対象対応層7Bのオブジェクトの差を意識することなく、対象対応層7Bのオブジェクトを利用することを可能とする。このために、対象対応層7Bのオブジェクトにおける具体的な処理内容からは独立した抽象クラスを用意し、その抽象クラスから派生した具象クラス(実際にインスタンス生成されるクラス)にて具体的な処理を行う。図3中の符号10が抽象クラスを示し、図3中の符号11が具象クラスを示す。また、符号51で示す破線が、情報モデル層7Aに位置するオブジェクトクラスの範囲を示し、符号52で示す破線が、対象対応層7Bに位置するオブジェクトクラスの範囲を示す。
【0055】
例えば図3に示すように、情報モデル層7Aに位置するオブジェクトクラス(情報モデル)として、発電機クラス9を用意する。また、対象対応層7Bに位置する抽象クラスとして発電機駆動クラス10を用意し、対象対応層7Bに位置する具象クラス11として燃料電池駆動クラスA(符号11a)、燃料電池駆動クラスB(符号11b)、風力発電駆動クラスA(符号11c)を用意する。発電機クラス9は、連系・解列・出力の増減などの操作を行うメソッドを提供するが、内部では発電機駆動クラス10の対応するメソッドを起動するにとどめる。発電機駆動クラス10は抽象クラスであり、具体的な処理は燃料電池駆動クラスAなど具象クラス11(11a〜11c)において規定する。尚、風力発電機の出力増減等、対応する処理が存在しない場合には、それらのメソッドにおける処理を定義しないことも可能である。燃料電池駆動クラスA(符号11a)、燃料電池駆動クラスB(符号11b)、風力発電駆動クラスA(符号11c)といった具象クラス11は、発電機クラス9からはあくまで発電機駆動クラス10として存在するため、発電機クラス9はその具体的な処理の差を意識する必要なく、共通的な方法を用いて監視制御対象2である発電機本体にアクセスできる。尚、対象対応層7Bの具象クラス11は、例えば監視制御用装置5に接続されている監視制御対象2(本実施形態では電力系統機器)の数および種類に対応して用意される。
【0056】
上述した情報モデル層7Aのオブジェクトと対象対応層7Bのオブジェクトとの間の仕組みは、対象対応層7Bのオブジェクトと入出力対応層7Cのオブジェクトとの間にも設定する。即ち、対象対応層7Bのオブジェクトは、入出力対応層7Cの抽象クラスの対応するメソッドを起動するにとどまり、具体的な処理は入出力対応層7Cの具象クラスにおいて行われる。したがって、対象対応層7Bのオブジェクトは、具体的な入出力インターフェース4の差を意識することなく処理を行える。尚、入出力対応層7Cの具象クラスは、例えば監視制御用装置5において監視制御対象2(本実施形態では電力系統機器)が接続されている入出力インターフェース4の数および種類に対応して用意される。
【0057】
モバイルエージェント60が監視制御対象2としての電力系統機器や電力系統機器から出力されたデータにアクセスする際には、常に情報モデルのオブジェクトが用意するメソッドを用いる。図3の場合で言えば、発電機クラス9が提供する連系や解列のためのメソッドを、モバイルエージェント60が呼び出す。これによって、モバイルエージェント60がどの監視制御用装置5に移動しても、同一の方法によって、監視制御対象2としての電力系統機器や電力系統機器からの出力データにアクセスすることが可能となる。
【0058】
主監視制御プログラム6(本実施形態ではモバイルエージェント60)に対して提供する監視制御対象2の監視データを、監視制御データ入出力プログラム7が監視制御対象2から取得する方式として、例えば本実施形態では、以下の3方式を用意する。即ち、(1)監視制御データ入出力プログラム7が自律的に監視データを取得する自律監視方式と、(2)予定されたイベントが発生した場合に監視制御データ入出力プログラム7が監視データを取得するイベント監視方式と、(3)主監視制御プログラム6からの要求に基づいて監視制御データ入出力プログラム7が監視データを取得するオンデマンド監視方式との3方式である。
【0059】
さらに主監視制御プログラム6(本実施形態ではモバイルエージェント60)からの要求に基づき、監視制御データ入出力プログラム7が監視制御対象2を操作する方式として、例えば本実施形態では、以下の2方式を用意する。即ち、(1)制御要求を出した主監視制御プログラム6が監視制御データ入出力プログラム7からの応答を待つ同期制御方式と、(2)制御要求を出した主監視制御プログラム6が監視制御データ入出力プログラム7からの応答を待たない非同期制御方式との2方式である。
【0060】
上記三種類の監視方式及び二種類の制御方式にそれぞれ対応したメソッドを、情報モデルとして機能するオブジェクトに用意しておく。モバイルエージェント60は、情報モデルに対して自らの処理に適したメソッドを呼び出すことによって、適切な監視方式または制御方式を利用することができる。尚、モバイルエージェント60がどの監視方式またはどの制御方式を選択するかは、モバイルエージェント60内のプログラムにおいて静的に指定しておいても良く、あるいは条件式などを用いてその場の状況に応じた最適な監視方式または制御方式をモバイルエージェント60が動的に選択できるようにしても良い。
【0061】
以下に、各監視方式および制御方式について詳細に説明する。
【0062】
先ず、自律監視方式について説明する。自律監視方式とは、監視制御データ入出力プログラム7において、自律的に監視制御対象2の監視データを取得して保存し、モバイルエージェント60はその保存された監視データのみを参照する方式を指す。この場合、対象対応層7Bは、周期的または監視制御データ入出力プログラム7内部の状態変化に基づいて、入出力対応層7Cに対して監視制御対象2の監視データを要求するコマンドを自発的に発令する。そして、対象対応層7Bは、上記自発的に発令したコマンドに対する入出力対応層7Cからの応答である監視データを保存しておく。一方、情報モデル層7Aは、モバイルエージェント60からの監視データの検索要求に対して、保存してある監視データのうち該当する監視データを提供する。
【0063】
自律監視方式は例えば以下に説明するオブジェクトの群により具体的に実現される。
【0064】
情報モデル層7Aは、監視制御対象2の情報モデルとして機能するオブジェクト(情報モデルオブジェクト12と呼ぶ。)と、特定の監視項目を管理する監視項目オブジェクト13と、特定の監視データを管理する監視項目値オブジェクト14を有している。
【0065】
監視項目オブジェクト13は、監視項目に関する情報を管理するとともに、監視項目値オブジェクト14の集合を管理する。監視項目オブジェクト13は、例えば監視項目の数だけ用意される。監視項目値オブジェクト14は、ある時点での監視データ(測定値)を管理するとともに、その扱い方がメソッドとして規定される。情報モデルオブジェクト12に監視項目を定義すると、その監視項目が固定されてしまい、後に監視項目の過不足が生じる可能性がある。本実施形態のように情報モデルオブジェクト12から監視項目を分離し、情報モデルオブジェクト12と監視項目オブジェクト13との間の関連として定義することにより、監視項目の追加や削除に柔軟に対応できるプログラム構成となる。また、各監視項目についての監視データ(測定値)は、一般に時間の経過とともに増加する。本実施形態のように監視項目オブジェクト13から監視データを分離し、監視項目オブジェクト13と監視項目値オブジェクト14との間の関連として定義することにより、監視データの管理方法(例えば不要なデータを削除するなど)を柔軟に設定できるプログラム構成となる。
【0066】
情報モデルオブジェクト12は、特定の監視項目を管理する監視項目オブジェクト13を検索可能である。このために情報モデルオブジェクト12は、例えば、「監視項目を特定する文字列」と「監視項目オブジェクトの名称」とが関連付けられたデータ構造(例えば配列)を有している。また、監視項目オブジェクト13は特定の監視データを管理する監視項目値オブジェクト14を検索可能である。このために監視項目オブジェクト13は、例えば、「監視データの取得時刻」と「監視項目値オブジェクトの名称」とが関連付けられたデータ構造(例えば配列)を有している。
【0067】
対象対応層7Bは、周期的または監視制御データ入出力プログラム7内部の状態変化に基づいて、入出力対応層7Cに対して監視制御対象2の監視データを要求するコマンドを自発的に発令する対象駆動オブジェクト15を有している。この対象駆動オブジェクト15は、自身が自発的に発令したコマンドの応答として入出力対応層7Cから監視データを受け取ると、当該監視データを管理する監視項目値オブジェクト14を新たに生成すると共に、当該監視データに該当する監視項目を管理する監視項目オブジェクト13に対して、上記生成された監視項目値オブジェクト14の情報を追加して、監視項目オブジェクト13が新たに生成された監視項目値オブジェクト14を検索できるようにする。
【0068】
入出力対応層7Cは、対象駆動オブジェクト15が発令したコマンドを、入出力インターフェース4に対応したデータ形式で監視制御対象2に送信すると共に、監視制御対象2から応答として出力された監視データを対象駆動オブジェクト15に渡すデータ交換オブジェクト16を有している。尚、必要に応じて、データ交換オブジェクト16は、監視制御対象2から受け取った監視データを、対象駆動オブジェクト15が取り扱い可能なデータ形式に変換する。
【0069】
以上に説明したオブジェクトの群により実行される自律監視方式の処理手順を、図4を用いて説明する。尚、図4〜図8中の2重実線で示す矩形は、自律的に処理を行うオブジェクト(プログラム部品)を示し、1重実線で示す矩形は、他のオブジェクトからメソッドを呼び出されることによって処理を行うオブジェクトを示す。また、2点鎖線で示す矩形は、ハードウェアを示す。
【0070】
対象駆動オブジェクト15は、時刻や監視制御データ入出力プログラム7内部の状態変化を監視し、予定された時刻に至った場合または予定された状態変化が発生した場合には、データ交換オブジェクト16に対して、監視制御対象2の監視データを要求する(B−101)。当該要求の際には、監視制御対象2から監視データを取得するために必要なコマンドを同時に送る。データ交換オブジェクト16は、入出力インターフェース4に対応した形式で監視制御対象2と通信を行い、対象駆動オブジェクト15から渡されたコマンドを監視制御対象2に送信する。その後、データ交換オブジェクト16は、入出力インターフェース4を経由して、対応する監視データを監視制御対象2から受け取ると、当該受け取った監視データを表す文字列を対象駆動オブジェクト15に送る(B−102)。B−101,B−102の処理は、同期的に行われる。即ち、データ交換オブジェクト16から応答が返ってくるまで対象駆動オブジェクト15は待ち続ける。
【0071】
監視データを表す文字列を受け取った対象駆動オブジェクト15は、その内容を解析した後、監視項目値オブジェクト14を生成し、解析して得られた値(監視データ)を当該生成した監視項目値オブジェクト14の中に保存する(B−103)。尚、監視項目値オブジェクト14のクラス(メソッドのみが定義され、データが未定義のオブジェクトのひな型)は予め用意されている。対象駆動オブジェクト15は予め用意された監視項目値オブジェクト14のクラスを呼び出し、取得した監視データを当該クラスに与えて、メソッドとデータの組(即ちオブジェクト)を生成し(即ちインスタンス生成し)、当該生成された監視項目値オブジェクト14を一定のルールに従った一意のオブジェクト名で保存する。
【0072】
また、監視項目値オブジェクト14を生成した対象駆動オブジェクト15は、生成した監視項目値オブジェクト14を該当する監視項目オブジェクト13に関連付ける(B−104)。具体的には、監視データに対応する監視項目を管理する監視項目オブジェクト13を特定し、当該監視項目オブジェクト13が所有する「監視データの取得時刻」と「監視項目値オブジェクトの名称」とが関連付けられたデータ構造(例えば配列)に、生成した監視項目値オブジェクト14の名称と当該監視項目値オブジェクト14が管理する監視データの取得時刻を追加する。
【0073】
一方、モバイルエージェント60(主監視制御プログラム6)が対象とする監視データを取得する際には、まず、監視対象である情報モデルオブジェクト12に監視データの検索要求を出す(A−101)。当該検索要求には例えば監視項目を特定する文字列が含まれる。これに対して、情報モデルオブジェクト12は、自身が所有している「監視項目を特定する文字列」と「監視項目オブジェクトの名称」とが関連付けられたデータ構造(例えば配列)を参照し、該当する監視項目を管理している監視項目オブジェクト13を特定し、当該特定された監視項目オブジェクト13の名称をモバイルエージェント60に通知する(A−102)。
【0074】
次に、モバイルエージェント60は、情報モデルオブジェクト12から通知された監視項目オブジェクト13に対して、監視データの取得要求を出す(A−103)。当該取得要求には例えば時刻または閾値が含まれる。これに対して、監視項目オブジェクト13は、自身が所有している「監視データの取得時刻」と「監視項目値オブジェクトの名称」とが関連付けられたデータ構造(例えば配列)を参照し、「監視データの取得時刻」がモバイルエージェント60から提示された時刻または閾値と一致する、あるいは「監視データの取得時刻」がモバイルエージェント60から提示された時刻以降(または以前)または閾値以上(あるいは以下)となる監視項目値オブジェクト14を特定する。「提示時刻と一致」「提示閾値と一致」「提示時刻以降」「提示時刻以前」「閾値以上」「閾値以下」の各検索条件に対応するそれぞれ異なるメソッドを監視項目オブジェクト13に用意しておくことで、モバイルエージェント60は、監視項目オブジェクト13に対して自らの処理に適したメソッドを呼び出すことによって、適切な検索条件を利用することができる。尚、「最新の測定データ」といった検索条件のメソッドを用意しておくことも可能である。監視項目オブジェクト13は、モバイルエージェント60からの要求に当てはまる監視データを管理する監視項目値オブジェクト14から、監視データを取得し(A−104)、当該監視データをモバイルエージェント60に渡す(A−105)。尚、監視項目オブジェクト13は、モバイルエージェント60からの要求に当てはまる監視データを管理する監視項目値オブジェクト14の名称をモバイルエージェント60に通知し、モバイルエージェント60が監視項目値オブジェクト14に直接アクセスして監視データを取得するようにしても構わない。
【0075】
上記に説明したA−101〜A−105の処理と、B−101〜B−104の処理とは、別の処理フローであり、並列に処理することが可能である。
【0076】
次に、イベント監視方式について説明する。イベント監視方式とは、監視制御対象2が自発的に、場合によっては連続的に監視データを出力する場合において、監視制御データ入出力プログラム7が当該監視制御対象2から出力される監視データを常に受信し続け、受信した監視データのうち予め登録された条件と一致する監視データだけを保存する方式を指す。この場合、対象対応層7Bは、入出力対応層7Cから通知される監視制御対象2から自発的に出力された監視データのうち予め登録された条件と一致する監視データを保存しておき、情報モデル層7Aは、モバイルエージェント60からの監視データの検索要求に対して、保存してある監視データのうち該当する監視データを提供する。
【0077】
イベント監視方式は例えば以下に説明するオブジェクトの群により具体的に実現される。
【0078】
情報モデル層7Aは、監視制御対象2の情報モデルとして情報モデルオブジェクト12と、特定の監視項目を管理する監視項目オブジェクト13と、特定の監視データを管理する監視項目値オブジェクト14を有している。これら情報モデル層7Aのオブジェクトは先に説明したものと同じである。
【0079】
対象対応層7Bは、監視制御対象2から自発的に出力された監視データを入出力対応層7Cから受信するイベント受信オブジェクト17を有している。このイベント受信オブジェクト17は、受信した監視データのうち予め登録された条件と一致する監視データがある場合に、当該監視データを管理する監視項目値オブジェクト14を新たに生成すると共に、当該監視データに該当する監視項目を管理する監視項目オブジェクト13に対して、上記生成された監視項目値オブジェクト14の情報を追加して、監視項目オブジェクト13が新たに生成された監視項目値オブジェクト14を検索できるようにする。
【0080】
入出力対応層7Cは、監視制御対象2から自発的に出力された監視データを入出力インターフェース4を介して受信し、かつ受信した監視データをイベント受信オブジェクト17へと送信するデータ交換オブジェクト16を有している。尚、必要に応じて、データ交換オブジェクト16は、監視制御対象2から受け取った監視データを、イベント受信オブジェクト17が取り扱い可能なデータ形式に変換する。
【0081】
以上に説明したオブジェクトの群により実行されるイベント監視方式の処理手順を、図5を用いて説明する。まず、監視制御対象2に対応したイベント受信オブジェクト17が、監視制御対象2に接続されて入出力を扱うデータ交換オブジェクト16に対して、監視制御対象2から受信した監視データを、自身に通知するよう登録する(B−201)。当該登録が正常に行われると、データ交換オブジェクト16は、イベント受信オブジェクト17に対して登録確認通知を出す(B−202)。
【0082】
実際に監視制御対象2から監視データが送信されてくる段階になると、データ交換オブジェクト16は、監視制御対象2から送られてきた監視データを受信するごとに、文字列としてイベント受信オブジェクト17に通知する(C−201)。データ交換オブジェクト16は、当該イベント受信オブジェクト17への通知直後から、再び監視制御対象2からの受信待ち状態に復帰する。尚、監視制御データ入出力プログラム7が受信した監視制御対象2から出力される監視データのうちで、保存する監視データを選択する条件(イベント)は、複数設定することも可能である。この場合は、例えば条件(イベント)の数だけイベント受信オブジェクト17を用意する。その場合には、データ交換オブジェクト16は複数のイベント受信オブジェクト17に対して監視データを同時に通知する。
【0083】
イベント受信オブジェクト17は、データ交換オブジェクト16から受け取った文字列を解析し、予め登録された条件と一致する場合(例えば特定の種類の警報に該当する場合)には、監視項目値オブジェクト14を生成し、解析して得られた値(監視データ)を当該生成した監視項目値オブジェクト14の中に保存する(C−202)。尚、監視項目値オブジェクト14を生成する処理は先に説明したものと同じである。また、監視項目値オブジェクト14を生成したイベント受信オブジェクト17は、生成した監視項目値オブジェクト14を該当する監視項目オブジェクト13に関連付ける(C−203)。尚、当該関連付けの処理は先に説明したものと同じである。
【0084】
一方、モバイルエージェント60(主監視制御プログラム6)が対象とする監視データを取得する際には、図4に示す自律監視方式と同じ処理手順で行われる。即ち、モバイルエージェント60から情報モデル層7Aに対する監視データの検索要求に対して(A−201,A−203)、情報モデルオブジェクト12は該当する監視項目オブジェクト13をモバイルエージェント60に通知し(A−202)、監視項目オブジェクト13は該当する監視項目値オブジェクト14から取得した監視データをモバイルエージェント60に提供する(A−204,A−205)。ただし、監視項目オブジェクト13は、モバイルエージェント60からの要求に当てはまる監視データを管理する監視項目値オブジェクト14の名称をモバイルエージェント60に通知し、モバイルエージェント60が監視項目値オブジェクト14に直接アクセスして監視データを取得するようにしても構わない。
【0085】
上記に説明したA−201〜A−205の処理と、B−201,B−202の処理と、C−201〜C−203の処理とは、それぞれ別の処理フローであり、並列に処理することが可能である。
【0086】
次に、オンデマンド監視方式について説明する。オンデマンド監視方式とは、主監視制御プログラム6(本実施形態ではモバイルエージェント60)からの要求に応じて、監視制御データ入出力プログラム7が監視制御対象2から監視データを取得する方式を指す。
【0087】
オンデマンド監視方式は例えば図6に示すオブジェクトの群により具体的に実現される。オンデマンド監視方式の処理手順を、図6を用いて説明する。先ず、モバイルエージェント60は監視制御対象2を表す情報モデルオブジェクト12に対して、監視データの取得要求を出す(S301)。モバイルエージェント60から監視データの取得要求を受けた情報モデルオブジェクト12は、モバイルエージェント60から情報モデルに対する要求を監視制御対象2が理解可能なコマンドに翻訳できる対象駆動オブジェクト15に対して、監視データの取得を委託する(S302)。情報モデルオブジェクト12から監視データ取得の委託を受けた対象駆動オブジェクト15は、モバイルエージェント60から情報モデルに対する要求に対応するコマンドを生成し、当該コマンドを、入出力インターフェース4に対応したデータ交換オブジェクト16に渡す(S303)。データ交換オブジェクト16は、対象駆動オブジェクト15から渡された監視制御対象2へのコマンドを、入出力インターフェース4に対応したデータ形式に変換して、監視制御対象2に送信する。そして、データ交換オブジェクト16は、先に送信したコマンドの応答として、監視制御対象2から監視データを受信し、当該受信した監視データを対象駆動オブジェクト15に渡す(S304)。尚、必要に応じて、データ交換オブジェクト16は、監視制御対象2から受け取った監視データを、対象駆動オブジェクト15が取り扱い可能なデータ形式に変換する。次に、対象駆動オブジェクト15は、データ交換オブジェクト16から受け取った監視データを、情報モデルオブジェクト12に渡す(S305)。尚、必要に応じて、対象駆動オブジェクト15は、データ交換オブジェクト16から受け取った監視データを、情報モデルオブジェクト12が取り扱い可能なデータ形式に変換する。次に、情報モデルオブジェクト12は、対象駆動オブジェクト15から受け取った監視データを、モバイルエージェント60に渡す(S306)。尚、必要に応じて、情報モデルオブジェクト12は、対象駆動オブジェクト15から受け取った監視データを、モバイルエージェント60が取り扱い可能なデータ形式に変換する。
【0088】
上記のようにオンデマンド監視方式では、モバイルエージェント60からの監視データ取得要求から処理が始まり、情報モデル層7A、対象対応層7B、入出力対応層7Cの各層を経由して、モバイルエージェント60は監視制御対象2から監視データを取得する。上記一連の処理において、情報モデル層7A、対象対応層7B、入出力対応層7Cの各層に属するオブジェクトは、いずれも自身に対するメソッド呼出しに基づいて処理を開始すると共に、自身が呼び出した他のオブジェクトのメソッドの処理が終了しその結果の応答があるまで待ち続ける。即ち、各層のオブジェクトは同期的なメソッド呼び出し行う。また、監視データの取得要求を出したモバイルエージェント60も、当該要求の応答があるまで待ち続ける。
【0089】
次に、同期制御方式について説明する。同期的制御方式とは、主監視制御プログラム6(本実施形態ではモバイルエージェント60)からの制御指令に基づいて、監視制御データ入出力プログラム7が監視制御対象2を操作し、かつ主監視制御プログラム6が当該操作結果が得られるまで待ち続ける方式を指す。
【0090】
同期制御方式は例えば図7に示すオブジェクトの群により具体的に実現される。同期制御方式の処理手順を、図7を用いて説明する。同期制御方式の処理手順は、オンデマンド監視方式の処理手順とほぼ同じである。先ず、モバイルエージェント60は監視制御対象2を表す情報モデルオブジェクト12に対して、監視制御対象2を操作するための制御指令を出す(S401)。モバイルエージェント60から制御指令を受けた情報モデルオブジェクト12は、当該モバイルエージェント60からの制御指令を監視制御対象2が理解可能なコマンドに翻訳できる対象駆動オブジェクト15に対して、監視制御対象2の操作を委託する(S402)。情報モデルオブジェクト12から監視制御対象2の操作を委託された対象駆動オブジェクト15は、モバイルエージェント60からの制御指令に対応するコマンドを生成し、当該コマンドを、入出力インターフェース4に対応したデータ交換オブジェクト16に渡す(S403)。データ交換オブジェクト16は、対象駆動オブジェクト15から渡された監視制御対象2へのコマンドを、入出力インターフェース4に対応したデータ形式に変換して、監視制御対象2に送信する。監視制御対象2では受信したコマンドに応じた制御が行われる。そして、データ交換オブジェクト16は、先に送信したコマンドの応答として、監視制御対象2から制御結果情報を受信し、当該受信した制御結果情報を対象駆動オブジェクト15に渡す(S404)。尚、必要に応じて、データ交換オブジェクト16は、監視制御対象2から受け取った制御結果情報を、対象駆動オブジェクト15が取り扱い可能なデータ形式に変換する。次に、対象駆動オブジェクト15は、データ交換オブジェクト16から受け取った制御結果情報を、情報モデルオブジェクト12に渡す(S405)。尚、必要に応じて、対象駆動オブジェクト15は、データ交換オブジェクト16から受け取った制御結果情報を、情報モデルオブジェクト12が取り扱い可能なデータ形式に変換する。次に、情報モデルオブジェクト12は、対象駆動オブジェクト15から受け取った制御結果情報を、モバイルエージェント60に渡す(S406)。尚、必要に応じて、情報モデルオブジェクト12は、対象駆動オブジェクト15から受け取った制御結果情報を、モバイルエージェント60が取り扱い可能なデータ形式に変換する。
【0091】
上記のように同期制御方式では、モバイルエージェント60からの制御指令から処理が始まり、情報モデル層7A、対象対応層7B、入出力対応層7Cの各層を経由して、モバイルエージェント60から監視制御対象2へと制御指令が伝達され、監視制御対象2からモバイルエージェント60へと制御結果情報が伝達される。上記一連の処理において、情報モデル層7A、対象対応層7B、入出力対応層7Cの各層に属するオブジェクトは、いずれも自身に対するメソッド呼出しに基づいて処理を開始すると共に、自身が呼び出した他のオブジェクトのメソッドの処理が終了しその結果の応答があるまで待ち続ける。即ち、各層のオブジェクトは同期的なメソッド呼び出し行う。また、監視データの取得要求を出したモバイルエージェント60も、当該要求の応答があるまで待ち続ける。
【0092】
次に、非同期制御方式について説明する。非同期的制御方式とは、主監視制御プログラム6(本実施形態ではモバイルエージェント60)が監視制御対象2に対する制御指令を出した後、その場で制御結果情報を得ることなく移動または消滅し、監視制御データ入出力プログラム7の責任において、その操作を完了し尚かつ制御結果情報を得る処理を指す。
【0093】
非同期制御方式は例えば以下に説明するオブジェクトの群により具体的に実現される。
【0094】
情報モデル層7Aは、情報モデルオブジェクト12と、特定の操作項目を管理する操作項目オブジェクト18と、特定の制御結果情報を管理する操作項目値オブジェクト19を有している。操作項目オブジェクト18は、操作項目に関する情報を管理するとともに、操作項目値オブジェクト19の集合を管理する。操作項目オブジェクト18は、例えば操作項目の数だけ用意される。操作項目値オブジェクト19は、ある時点での制御結果情報を管理するとともに、その扱い方がメソッドとして規定される。
【0095】
情報モデルオブジェクト12に操作項目を定義すると、その操作項目が固定されてしまい、後に操作項目の過不足が生じる可能性がある。本実施形態のように情報モデルオブジェクト12から操作項目を分離し、情報モデルオブジェクト12と操作項目オブジェクト18との間の関連として定義することにより、操作項目の追加や削除に柔軟に対応できるプログラム構成となる。また、本実施形態のように操作項目オブジェクト18から制御結果情報を分離し、操作項目オブジェクト18と操作項目値オブジェクト19との間の関連として定義することにより、制御結果情報の管理方法(例えば不要なデータを削除するなど)を柔軟に設定できるプログラム構成となる。
【0096】
情報モデルオブジェクト12は、特定の操作項目を管理する操作項目オブジェクト18を検索可能である。このために情報モデルオブジェクト12は、例えば、「操作項目を特定する文字列」と「操作項目オブジェクトの名称」とが関連付けられたデータ構造(例えば配列)を有している。また、操作項目オブジェクト18は特定の制御結果情報を管理する操作項目値オブジェクト19を検索可能である。このために操作項目オブジェクト18は、例えば、「制御指令ID」と「操作項目値オブジェクトの名称」とが関連付けられたデータ構造(例えば配列)を有している。尚、制御指令IDとは、ある時点であるモバイルエージェント60が出した制御指令を特定するためのIDである。例えば、モバイルエージェント60から制御指令が出された時のタイムスタンプを制御指令IDとしても良い。
【0097】
対象対応層7Bは、モバイルエージェント60からの情報モデルオブジェクト12に対する非同期の制御指令を監視制御対象2が理解可能なコマンドに翻訳して入出力対応層7Cに対して発令する対象駆動オブジェクト15を有している。この対象駆動オブジェクト15は、自身が発令したコマンドの応答として入出力対応層7Cから制御結果情報を受け取ると、当該制御結果情報を管理する操作項目値オブジェクト19を新たに生成すると共に、当該制御に該当する操作項目を管理する操作項目オブジェクト18に対して、上記生成された操作項目値オブジェクト19の情報を追加して、操作項目オブジェクト18が新たに生成された操作項目値オブジェクト19を検索できるようにする。
【0098】
入出力対応層7Cは、対象駆動オブジェクト15が発令したコマンドを、入出力インターフェース4に対応したデータ形式で監視制御対象2に送信すると共に、監視制御対象2から応答として出力された制御結果情報を対象駆動オブジェクト15に渡すデータ交換オブジェクト16を有している。尚、必要に応じて、データ交換オブジェクト16は、監視制御対象2から受け取った制御結果情報を、対象駆動オブジェクト15が取り扱い可能なデータ形式に変換する。
【0099】
以上に説明したオブジェクトの群により実行される非同期制御方式の処理手順を、図8を用いて説明する。先ず、モバイルエージェント60は監視制御対象2を表す情報モデルオブジェクト12に対して、監視制御対象2を操作するための制御指令を出す(A−501)。制御指令を出したモバイルエージェント60は、その制御結果情報を得ることなく、その場で消滅する、もしくは他の監視制御用装置5へと移動する。モバイルエージェント60から制御指令を受けた情報モデルオブジェクト12は、当該モバイルエージェント60からの制御指令を監視制御対象2が理解可能なコマンドに翻訳できる対象駆動オブジェクト15に対して、監視制御対象2の操作を委託する(A−502)。当該委託を受ける対象駆動オブジェクト15が提供するメソッドにおいて、対象駆動オブジェクト15が自律的に処理を始めるように規定する。情報モデルオブジェクト12から監視制御対象2の操作を委託され、自律的な処理を開始した対象駆動オブジェクト15は、モバイルエージェント60からの制御指令に対応するコマンドを生成し、当該コマンドを、入出力インターフェース4に対応したデータ交換オブジェクト16に渡す(A−503)。尚、対象駆動オブジェクト15が発令するコマンドは、決まった手順に従って監視制御対象2を制御するシーケンス制御に類するもの、監視制御対象2に設定値を渡すもの、監視制御対象2の状態がある目標値に向かうように制御するフィードバック制御に類するもの、等々、必要に応じた制御を実現するものである。データ交換オブジェクト16は、対象駆動オブジェクト15から渡された監視制御対象2へのコマンドを、入出力インターフェース4に対応したデータ形式に変換して、監視制御対象2に送信する。監視制御対象2では受信したコマンドに応じた制御が行われる。そして、データ交換オブジェクト16は、先に送信したコマンドの応答として、監視制御対象2から制御結果情報を受信し、当該受信した制御結果情報を表す文字列を対象駆動オブジェクト15に渡す(A−504)。A−503,A−504の処理は、同期的に行われる。即ち、データ交換オブジェクト16から応答が返ってくるまで対象駆動オブジェクト15は待ち続ける。
【0100】
制御結果情報を表す文字列を受け取った対象駆動オブジェクト15は、その内容を解析した後、操作項目値オブジェクト19を生成し、解析して得られた値(制御結果情報)を当該生成した操作項目値オブジェクト19の中に保存する(A−505)。尚、操作項目値オブジェクト19のクラス(メソッドのみが定義され、データが未定義のオブジェクトのひな型)は予め用意されている。対象駆動オブジェクト15は予め用意された操作項目値オブジェクト19のクラスを呼び出し、取得した制御結果情報を当該クラスに与えて、メソッドとデータの組(即ちオブジェクト)を生成し(即ちインスタンス生成し)、当該生成された操作項目値オブジェクト19を一定のルールに従った一意のオブジェクト名で保存する。
【0101】
また、操作項目値オブジェクト19を生成した対象駆動オブジェクト15は、生成した操作項目値オブジェクト19を該当する操作項目オブジェクト18に関連付ける(A−506)。具体的には、制御指令に対応する操作項目を管理する操作項目オブジェクト18を特定し、当該操作項目オブジェクト18が所有する「制御指令ID」と「操作項目値オブジェクトの名称」とが関連付けられたデータ構造(例えば配列)に、生成した操作項目値オブジェクト19の名称と制御結果情報に対応する制御指令IDを追加する。
【0102】
一方、制御指令を出したモバイルエージェント60とは別のモバイルエージェント60または再び移動して来たモバイルエージェント60が、対象とする制御結果情報を取得する際には、まず、制御対象である情報モデルオブジェクト12に制御結果情報の検索要求を出す(B−501)。当該検索要求には例えば操作項目を特定する文字列が含まれる。これに対して、情報モデルオブジェクト12は、自身が所有している「操作項目を特定する文字列」と「操作項目オブジェクトの名称」とが関連付けられたデータ構造(例えば配列)を参照し、該当する操作項目を管理している操作項目オブジェクト18を特定し、当該特定された操作項目オブジェクト18の名称をモバイルエージェント60に通知する(B−502)。
【0103】
次に、モバイルエージェント60は、情報モデルオブジェクト12から通知された操作項目オブジェクト18に対して、制御結果情報の取得要求を出す(B−503)。当該取得要求には例えば制御指令IDが含まれる。これに対して、操作項目オブジェクト18は、自身が所有している「制御指令ID」と「操作項目値オブジェクトの名称」とが関連付けられたデータ構造(例えば配列)を参照し、「制御指令ID」がモバイルエージェント60から提示された制御指令IDと一致する操作項目値オブジェクト19を特定する。尚、制御指令IDがタイムスタンプである場合には、モバイルエージェント60からの制御結果情報の取得要求には時刻または閾値が含まれてもよいものとし、操作項目オブジェクト18は、「制御指令ID」がモバイルエージェント60から提示された時刻または閾値と一致する、あるいは「制御指令ID」がモバイルエージェント60から提示された時刻以降(または以前)または閾値以上(あるいは以下)となる操作項目値オブジェクト19を特定するようにしても良い。尚、「提示時刻と一致」「提示閾値と一致」「提示時刻以降」「提示時刻以前」「閾値以上」「閾値以下」など、各検索条件に対応するそれぞれ異なるメソッドを操作項目オブジェクト18に用意しておくことで、モバイルエージェント60は、操作項目オブジェクト18に対して自らの処理に適したメソッドを呼び出すことによって、適切な検索条件を利用することができる。さらに「最新の制御結果情報」といった検索条件のメソッドを用意しておくことも可能である。操作項目オブジェクト18は、モバイルエージェント60からの要求に当てはまる制御結果情報を管理する操作項目値オブジェクト19から、制御結果情報を取得し(B−504)、当該制御結果情報をモバイルエージェント60に渡す(B−505)。尚、操作項目オブジェクト18は、モバイルエージェント60からの要求に当てはまる制御結果情報を管理する操作項目値オブジェクト19の名称をモバイルエージェント60に通知し、モバイルエージェント60が操作項目値オブジェクト19に直接アクセスして制御結果情報を取得するようにしても構わない。以上の処理によって、モバイルエージェント60は制御結果情報を取得し、当該制御結果情報を監視制御システム1全体の処理に反映することができる。
【0104】
ここで例えば本実施形態では、自律的な処理を行うオブジェクトは、それぞれ一つのスレッドを保持するものとする。そして、監視制御データ入出力プログラム7のスレッド制御においては、優先度を設定可能とする。監視制御データ入出力プログラム7のスレッド制御において、高い優先度を有するスレッドが実行中の場合には、低い優先度を有するスレッドの実行は行わない。また、低い優先度を有するスレッドの実行中に、高い優先度を有するスレッドが開始されると、割り込みが発生し、高い優先度を有するスレッドが優先的に実行される。この場合、例えば対象駆動オブジェクト15及びデータ交換オブジェクト16には、異なる処理が同時にアクセスした場合に不整合を生じるようなデータを持たせないようにする。主監視制御プログラム6をモバイルエージェント60にて実現する際には、監視制御データ入出力プログラム7におけるスレッド制御に組み込む。これにより、モバイルエージェント60が有する処理の優先度が、監視制御データ入出力プログラム7のスレッド制御にて考慮され、リアルタイム性に厳しい主監視制御プログラム6の処理が自動的に優先される。
【0105】
監視制御用装置5として機能するコンピュータは、例えば、中央処理演算装置であるCPU21と、RAMやROMおよびハードディスクなどの記憶装置22と、監視制御対象2と通信可能に接続するための入出力インターフェース4と、他の監視制御用装置5と通信するためのネットワークインターフェース23などのハードウェア資源と、オペレーティングシステム(OS)24などのソフトウェア資源を備えている。監視制御用装置5の記憶装置22には、監視制御データ入出力プログラム7がセットアップされている。また、監視制御用装置5の記憶装置22には、必要に応じて主監視制御プログラム6としてモバイルエージェント60がロードされる。モバイルエージェント60がロードされたコンピュータは主監視制御装置3としても機能する。さらに、監視制御用装置5の記憶装置22には、必要に応じて監視データや制御結果情報などのデータが保存される。尚、オペレーティングシステム24は、リアルタイムOSやデスクトップOSの別を問わないが、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)は特に必要ではないため、処理の高速化等の観点から、GUIの機能を削除したものがより適している。また、入出力インターフェース4は特定のものに限定されず、監視制御対象2と接続可能な既知または新規のインターフェースを適宜採用してよい。
【0106】
以上のように構成される監視制御データ入出力プログラム7によれば、情報モデル層7Aと対象対応層7Bと入出力対応層7Cとの三層構造を備えるので、主監視制御プログラム6は、個別の監視制御対象2(電力系統機器)の差異および入出力インターフェース4の差異を意識することなく、情報モデル層7Aに対して監視制御のための通信を行える。したがって、主監視制御プログラム6(本実施形態ではモバイルエージェント60)に対して、監視制御対象2へアクセスするための統一的なインターフェースを提供できる。これにより、主監視制御プログラム6の構成を単純化でき、主監視制御プログラム6の構築が容易になる。また、上記三層構造における各層の結びつき(ある層を変更した際に隣接する層の変更が必要となる度合い)を疎にすることができるので、特定の監視制御対象2(電力系統機器)あるいは特定の入出力インターフェース4に対応したソフトウェアモジュール(オブジェクト)を、他の監視制御対象2(電力系統機器)あるいは他の入出力インターフェース4に対応したソフトウェアモジュール(オブジェクト)に、他の層(特に情報モデル層7A)に影響を与えることなく入れ替えることが可能となる。したがって、個別の電力系統機器の差異や入出力インターフェース4の差異に基づくプログラム部品(オブジェクト)の改修を柔軟に行うことができ、プログラム構築が容易になる。これにより、マルチベンダ対応の要求にも対応できる。
【0107】
しかも、自律監視方式処理により、監視制御データ入出力プログラム7が自律的に監視データを取得・保存することによって、主監視制御プログラム6は情報モデル層7Aに問い合わせるだけで、迅速に最新の監視データを取得することができる。自律監視方式の場合、主監視制御プログラム6から監視制御対象2まで問い合わせる時間は発生しないので、主監視制御プログラム6が監視データを取得するまでの待ち時間を短縮でき、処理のリアルタイム性の要求を満足することができる。
【0108】
さらに、イベント監視方式処理においても、監視制御データ入出力プログラム7が登録されたイベントを監視し自律的に監視データを取得・保存することによって、主監視制御プログラム6は情報モデル層7Aに問い合わせるだけで、例えば特に注意を要する警報に関する監視データなどを迅速に取得することができる。このイベント監視方式の場合も、主監視制御プログラム6から監視制御対象2まで問い合わせる時間は発生しないので、主監視制御プログラム6が監視データを取得するまでの待ち時間を短縮でき、処理のリアルタイム性の要求を満足することができる。また、対象対応層7Bに位置するイベント受信オブジェクト17と、入出力対応層7Cに位置するデータ交換オブジェクト16がそれぞれ自律的に動作することで、データ受信処理の輻輳を防止する。また、データ交換オブジェクト16の役割を、監視制御対象2からのイベントの受信待ちと、登録されたイベント受信オブジェクト17への転送に限定することによって、複数のイベントが同時に発生した場合のリアルタイム性を確保できる。
【0109】
また、主監視制御プログラム6自体は、監視制御データ入出力プログラム7が提供する自律監視方式とイベント監視方式との差を意識する必要はなく、情報モデル層7Aに対して必要な監視データを要求するだけで良い(即ち、自らの処理に適したメソッドを情報モデル層7Aのオブジェクトから呼び出せば良い)。したがって、主監視制御プログラム6の構成を複雑化することなく、様々な環境や条件に対応した監視データの取得を実現できる。
【0110】
さらに非同期制御方式により、主監視制御プログラム6は情報モデル層7Aに対して制御指令を出した直後から別の処理を開始できる。したがって、主監視制御プログラム6が自身が出した制御指令に対する応答を受け取るまでの待ち時間を解消できる。これにより、主監視制御プログラム6は処理を効率的に進めることができ、ひいては監視制御システム1全体の処理の高速化に寄与でき、処理のリアルタイム性の要求に寄与できる。
【0111】
さらにオンデマンド監視方式および同期制御方式により、監視データの取得または制御指令を出した主監視制御プログラム6は、確実にその応答を受け取ることができるので、緊急時における監視データ取得や強制終了操作など、高い信頼性が要求される場合にも対応できる。
【0112】
以上のように本発明によれば、多様な監視制御対象2および入出力インターフェース4に対応する柔軟性、監視制御用データ入出力処理のリアルタイム性、緊急時などにおける監視制御処理の高い信頼性、及びモバイルエージェント60による非同期処理への対応を、同時に実現することができる。
【実施例】
【0113】
分散型電源が多数導入された配電系統を監視制御するための実験システムにおいて、Microsoft Windows XP(マイクロソフト社の登録商標)上に、JDK1.4.2に対応したJava Virtual Machine上に、情報モデル層7A/対象対応層7B/入出力対応層7Cに配置するオブジェクトを実装した。本実施例の入出力対応層7Cには、TCP/IPを利用したソケット通信に対応したオブジェクトを配置した。また、本実施例の対象対応層7Bには、同期発電機の操作および測定に関わるコマンドを扱うオブジェクトを配置した。本実施例の情報モデル層7Aには、IEC(国際電気標準会議)の制御所用情報モデルであるIEC61970−301にて規定されている仕様に基づいたオブジェクトを配置した。
【0114】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば上述の実施形態では、主監視制御プログラム6は、1または複数のモバイルエージェント60を有して構成されるものとしたが、主監視制御プログラム6は、モバイルエージェント技術ベースとして構築されるものには限定されない。主監視制御プログラム6は、情報モデル層7Aで提供するメソッドを利用可能に構成されていればよく、モバイルエージェント技術を用いない一般的な監視制御用ソフトウェアであってもよい。この場合、監視制御用装置5は1台であっても良く、また、主監視制御装置3と監視制御用装置5が同一のコンピュータ上で構成されていても構わない。
【0115】
また、上述の実施形態では、監視制御データ入出力プログラム7は、三種類の監視方式及び二種類の制御方式を備えるものとしたが、これらの監視制御方式を全て備える必要は必ずしもなく、監視制御データ入出力プログラム7を利用する環境において必要な監視方式または制御方式を備えていれば良く、不要の方式があればそれを削除しても構わない。
【0116】
また、上述の実施形態では、監視制御対象2を電力系統機器としたが、電力系統機器以外の機器を監視制御対象2としても良く、または機器の制御に用いられるソフトウェアを監視制御対象2としても良い。この場合、監視制御データ入出力プログラム7を、ハードウェアだけでなく、異なるソフトウェアとの連携にも使用できる。尚、監視制御データ入出力プログラム7がハードウェアと連携する場合でも、実際にはOSが提供するAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)あるいはドライバが、監視制御データ入出力プログラム7と当該ハードウェアとの間に介在することとなるので、監視制御データ入出力プログラム7の通信相手はあくまでもソフトウェアとなる。監視制御の対象となる機器について監視制御機能を実現するソフトウェアが存在し、そのソフトウェアと主監視制御プログラム6が連携するための橋渡し役を、監視制御データ入出力プログラム7が担う場合でも、上述した三層構造であることには変わりない。例えば、監視制御対象のソフトウェアとのプロセス間通信をソケットで行う場合、入出力対応層7Cではソケット通信に関するデータを保持するとともに、関連する処理を担う。対象対応層7Bでは、主監視制御プログラム6から情報モデル層7Aに対する要求を、連携相手のソフトウェアが理解可能なコマンドに翻訳する役割を担う。情報モデル層7Aでは、連携相手のソフトウェアを例えば標準化された情報モデルとして表現する。
【0117】
例えば図9に示す需要地系統の監視制御システム1に本発明を適用しても良い。この監視制御システム1内に存在する主な監視制御用装置5は、(1)運用管理システム5a、(2)運用管理サブシステム5b、(3)ループコントローラ(LPC)5c、(4)高圧用需給インタフェース5d/低圧系統管理サブシステム5e(以下、共に需給IF5d,5eと略記する。)の4種類である。これらの監視制御用装置5は、通信網8にて相互に接続される。
【0118】
運用管理システム5aは、例えば配電変電所3箇所が有する配電系統を相互接続した規模の需要地系統に対し1台配置される。需要地系統内の制御可能な機器(分散型電源やLPC5cなど)に対する最適な設定値を算出することが主な役割である。この役割を実現するために、最適制御量決定プログラム31を有する。この演算には、需要地系統における分散型電源の発電量や負荷のデータが用いられる。
【0119】
運用管理サブシステム5bは、区分開閉器またはLPC5cによって区切られた系統の一部(これを区間という)の監視制御を担う。最も重要な役割は、事故の迅速かつ確実な検出と除去、および事故波及区間の極小化を図るために区間単位で実施する自律分散型の保護制御である。この機能は多地点の情報を取り扱い、かつ短時間での処理が求められるため、情報伝達プログラム内にその機能を実現する。また、必要に応じて、センサ付開閉器25と直接接続し、操作する役割を担うこともある。
【0120】
LPC5cは、電圧や潮流を制御することによって線路上の電圧変動を抑制し、分散型電源の系統への接続可能容量を増大させる。また、事故発生時に、その影響が波及する区間において、分散型電源を連続運転可能とする制御も行う。これらの機能を実現するため、LPC5cはその内部に、交流直流変換装置などの電力機器と共に、これらを制御するための機器制御プログラム26を有する。
【0121】
需給IF5d,5eは、分散型電源や負荷の運転に関わる監視制御を担う。このうち、高圧用需給インタフェース5dが発電機28としての分散型電源や負荷に直結して監視制御を行う。一方、低圧系統管理サブシステム5eの場合、分散型電源や負荷との情報交換は、低圧需要家ごとに設置される装置(低圧需給インタフェース)27を介して行う。これらの監視制御用装置5には、分散型電源や負荷の運転を行うための分散型電源制御プログラム29や負荷制御プログラム30が常駐する。
【0122】
需要地系統の監視制御機能は、様々なソフトウェアが協調しながら実行される。主なプログラムは、(1)最適制御量決定プログラム31、(2)LPC機器制御プログラム26、(3)分散型電源制御プログラム29、(4)負荷制御プログラム30、(5)系統監視制御プログラム(主監視制御プログラム6)の5種類である。
【0123】
最適制御量決定プログラム31は、運用管理システム5aに配置され、需要地系統に連系されている分散型電源が最適に運転されるべく、その制御量を演算する。LPC機器制御プログラム26はLPC5c内の機器を、分散型電源制御プログラム29と負荷制御プログラム30は需給IF5d,5eに直接接続されている分散型電源および負荷を、それぞれ制御する。
【0124】
系統監視制御プログラム(主監視制御プログラム6)は、監視制御用装置5a〜5eの間で監視制御情報を伝達し、各監視制御用装置5が有するプログラム26,29,30,31や系統機器との間の連携を担う。あわせて、事故区間分離のような系統を中心とした監視制御の処理を担う。このプログラムは、限定された計算資源における多様な処理の実現と、システム構成の変化に対する柔軟性を確保する観点から、モバイルエージェント技術をベースとして構築する。
【0125】
監視制御データ入出力プログラム7は、監視制御用装置5であるLPC5c、需給IF5d,5e、運用管理サブシステム5bに搭載される。そして、モバイルエージェント60を用いた系統監視制御プログラムに対し、発電機28としての分散型電源や負荷、低圧需給インタフェース27、センサ付開閉器25といった系統機器や、LPC機器制御プログラム26、分散型電源制御プログラム29、負荷制御プログラム30といった他のプログラムと協調するときの統一的なインタフェースを提供する。この場合、発電機28、低圧需給インタフェース27、センサ付開閉器25といった系統機器、およびLPC機器制御プログラム26、分散型電源制御プログラム29、負荷制御プログラム30といったプログラムが、監視制御データ入出力プログラム7から見た監視制御対象となる。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の監視制御システムの実施の一形態を示し、監視制御用装置の構成例を示す構成図である。
【図2】上記監視制御システムの全体を示す構成図である。
【図3】情報モデル層のオブジェクトと対象対応層のオブジェクトの関係を示す概念図である。
【図4】監視制御データ入出力プログラムが自律的に監視データを取得する処理の流れを示す図である。
【図5】監視制御対象が監視制御データ入出力プログラムに対してイベントとして監視データを送信してくる場合における処理の流れを示す図である。
【図6】主監視制御プログラムの要求に基づき監視制御データ入出力プログラムが監視制御対象に問い合わせ、同期的に監視データを取得する場合における処理の流れを示す図である。
【図7】主監視制御プログラムと監視制御データ入出力プログラムが同期的に監視制御対象に対する制御を行う場合における処理の流れを示す図である。
【図8】主監視制御プログラムと監視制御データ入出力プログラムが非同期的に監視制御対象に対する制御を行う場合における処理の流れを示す図である。
【図9】本発明の監視制御システムの他の実施の一形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0127】
1 監視制御システム
2 監視制御対象
3 主監視制御装置
4 入出力インターフェース
5 監視制御用装置
6 主監視制御プログラム
7 監視制御データ入出力プログラム
7A 情報モデル層
7B 対象対応層
7C 入出力対応層
8 通信網
12 情報モデルオブジェクト
13 監視項目オブジェクト
14 監視項目値オブジェクト
15 対象駆動オブジェクト
16 データ交換オブジェクト
17 イベント受信オブジェクト
18 操作項目オブジェクト
19 操作項目値オブジェクト
60 モバイルエージェント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードウェアである機器又は当該機器の制御に用いられるソフトウェアを監視制御対象として、この監視制御対象を監視制御する主監視制御装置と、前記監視制御対象と入出力インターフェースを介して接続され、当該接続された監視制御対象から出力されるデータを前記主監視制御装置に提供すると共に前記主監視制御装置の指令を前記監視制御対象に伝達する監視制御用装置と、1台または複数台のコンピュータを前記主監視制御装置として機能させる主監視制御プログラムと、コンピュータを前記監視制御用装置として機能させる監視制御データ入出力プログラムとを備える監視制御システムにおいて、前記監視制御データ入出力プログラムは、前記主監視制御プログラムと通信可能に構成されて前記主監視制御プログラムからの要求を受け付けると共に当該要求に対応した応答を返す情報モデル層と、前記情報モデル層と通信可能に構成されて前記監視制御対象が理解可能なコマンドを発令する対象対応層と、前記対象対応層および前記監視制御対象と通信可能に構成されて前記入出力インターフェースに対応した入出力制御を行う入出力対応層との三層構造を有し、前記情報モデル層は、前記監視制御対象の状態および動作をソフトウェアで表した情報モデルを有し、前記主監視制御プログラムからの監視制御指令が前記情報モデル層、前記対象対応層、前記入出力対応層を順次介して、前記監視制御対象に伝達され、かつ前記監視制御対象から出力される監視データまたは制御結果情報が前記入出力対応層、前記対象対応層、前記情報モデル層を順次介して、前記主監視制御プログラムに伝達され、前記対象対応層は、周期的または前記監視制御データ入出力プログラム内部の状態変化に基づいて、前記入出力対応層に対して、前記監視制御対象の監視データを要求するコマンドを自発的に発令すると共に、当該要求に対する前記入出力対応層からの応答である監視データを保存しておき、前記情報モデル層は前記主監視制御プログラムからの監視データの検索要求に対して前記保存してある監視データのうち該当する監視データを提供することを特徴とする監視制御システム。
【請求項2】
ハードウェアである機器又は当該機器の制御に用いられるソフトウェアを監視制御対象として、この監視制御対象を監視制御する主監視制御装置と、前記監視制御対象と入出力インターフェースを介して接続され、当該接続された監視制御対象から出力されるデータを前記主監視制御装置に提供すると共に前記主監視制御装置の指令を前記監視制御対象に伝達する監視制御用装置と、1台または複数台のコンピュータを前記主監視制御装置として機能させる主監視制御プログラムと、コンピュータを前記監視制御用装置として機能させる監視制御データ入出力プログラムとを備える監視制御システムにおいて、前記監視制御データ入出力プログラムは、前記主監視制御プログラムと通信可能に構成されて前記主監視制御プログラムからの要求を受け付けると共に当該要求に対応した応答を返す情報モデル層と、前記情報モデル層と通信可能に構成されて前記監視制御対象が理解可能なコマンドを発令する対象対応層と、前記対象対応層および前記監視制御対象と通信可能に構成されて前記入出力インターフェースに対応した入出力制御を行う入出力対応層との三層構造を有し、前記情報モデル層は、前記監視制御対象の状態および動作をソフトウェアで表した情報モデルを有し、前記主監視制御プログラムからの監視制御指令が前記情報モデル層、前記対象対応層、前記入出力対応層を順次介して、前記監視制御対象に伝達され、かつ前記監視制御対象から出力される監視データまたは制御結果情報が前記入出力対応層、前記対象対応層、前記情報モデル層を順次介して、前記主監視制御プログラムに伝達され、前記対象対応層は、前記入出力対応層から通知される前記監視制御対象から自発的に出力された監視データのうち予め登録された条件と一致する監視データを保存しておき、前記情報モデル層は前記主監視制御プログラムからの監視データの検索要求に対して前記保存してある監視データのうち該当する監視データを提供することを特徴とする監視制御システム。
【請求項3】
複数の前記監視制御用装置が通信網を介して相互に接続されると共に前記主監視制御プログラムは前記複数の監視制御用装置間を移動する1または複数のモバイルエージェントを有して構成されることを特徴とする請求項1または2記載の監視制御システム。
【請求項4】
前記情報モデルは、少なくとも複数の前記監視制御用装置間で統一された規則に従って構成されることを特徴とする請求項3記載の監視制御システム。
【請求項5】
ハードウェアである機器又は当該機器の制御に用いられるソフトウェアを監視制御対象として、この監視制御対象を監視制御する主監視制御装置と、前記監視制御対象と入出力インターフェースを介して接続され、当該接続された監視制御対象から出力されるデータを前記主監視制御装置に提供すると共に前記主監視制御装置の指令を前記監視制御対象に伝達する監視制御用装置と、1台または複数台のコンピュータを前記主監視制御装置として機能させる主監視制御プログラムと、コンピュータを前記監視制御用装置として機能させる監視制御データ入出力プログラムとを備える監視制御システムにおいて、複数の前記監視制御用装置が通信網を介して相互に接続されると共に前記主監視制御プログラムは前記複数の監視制御用装置間を移動する1または複数のモバイルエージェントを有して構成され、前記監視制御データ入出力プログラムは、前記主監視制御プログラムと通信可能に構成されて前記主監視制御プログラムからの要求を受け付けると共に当該要求に対応した応答を返す情報モデル層と、前記情報モデル層と通信可能に構成されて前記監視制御対象が理解可能なコマンドを発令する対象対応層と、前記対象対応層および前記監視制御対象と通信可能に構成されて前記入出力インターフェースに対応した入出力制御を行う入出力対応層との三層構造を有し、前記情報モデル層は、前記監視制御対象の状態および動作をソフトウェアで表した情報モデルを有し、前記情報モデルは、少なくとも複数の前記監視制御用装置間で統一された規則に従って構成され、前記主監視制御プログラムからの監視制御指令が前記情報モデル層、前記対象対応層、前記入出力対応層を順次介して、前記監視制御対象に伝達され、かつ前記監視制御対象から出力される監視データまたは制御結果情報が前記入出力対応層、前記対象対応層、前記情報モデル層を順次介して、前記主監視制御プログラムに伝達され、前記モバイルエージェントは前記情報モデル層に非同期の制御指令を出した後、当該指令に対する応答を待たずに消滅または他の前記監視制御用装置に移動し、前記モバイルエージェントからの制御指令が前記情報モデル層、前記対象対応層、前記入出力対応層を順次介して、前記対象機器に伝達されると共に、前記対象対応層は、前記入出力対応層から通知される前記監視制御対象から出力された制御結果情報を保存しておき、前記情報モデル層は、他のモバイルエージェントまたは再び移動して来た前記モバイルエージェントからの制御結果情報の取得要求に対して前記保存してある制御結果情報を提供することを特徴とする監視制御システム。
【請求項6】
前記情報モデル層、前記対象対応層、前記入出力対応層の各層は、プログラム部品であるオブジェクトによって構成され、前記情報モデル層は、前記情報モデルとして機能する情報モデルオブジェクトと、特定の操作項目を管理する操作項目オブジェクトと、特定の制御結果情報を管理する操作項目値オブジェクトを更に有し、前記情報モデルオブジェクトは特定の操作項目を管理する操作項目オブジェクトを検索可能であり、かつ前記操作項目オブジェクトは特定の制御結果情報を管理する操作項目値オブジェクトを検索可能であり、前記対象対応層は、前記モバイルエージェントからの前記情報モデルオブジェクトに対する非同期の制御指令を前記監視制御対象が理解可能なコマンドに翻訳して発令する対象駆動オブジェクトを有し、前記入出力対応層は、前記対象駆動オブジェクトが発令したコマンドを前記入出力インターフェースに対応したデータ形式で前記監視制御対象に送信すると共に前記監視制御対象から応答として出力された制御結果情報を前記対象駆動オブジェクトに渡すデータ交換オブジェクトを有し、前記対象駆動オブジェクトは、上記自身が発令したコマンドの応答として前記データ交換オブジェクトから制御結果情報を受け取ると当該制御結果情報を管理する操作項目値オブジェクトを新たに生成すると共に、当該制御に該当する操作項目を管理する操作項目オブジェクトに対して、上記生成された操作項目値オブジェクトの情報を追加して、前記操作項目オブジェクトが新たに生成された前記操作項目値オブジェクトを検索可能とし、前記モバイルエージェントから前記情報モデル層に対する制御結果情報の取得要求に対して前記情報モデルは該当する前記操作項目オブジェクトを前記モバイルエージェントに通知し、前記操作項目オブジェクトは該当する前記操作項目値オブジェクトを前記モバイルエージェントに通知する又は該当する前記操作項目値オブジェクトから取得した制御結果情報を前記モバイルエージェントに提供することを特徴とする請求項5記載の監視制御システム。
【請求項7】
前記情報モデル層、前記対象対応層、前記入出力対応層の各層は、プログラム部品であるオブジェクトによって構成され、前記情報モデル層は、前記情報モデルとして機能する情報モデルオブジェクトと、特定の監視項目を管理する監視項目オブジェクトと、特定の監視データを管理する監視項目値オブジェクトを更に有し、前記情報モデルオブジェクトは特定の監視項目を管理する監視項目オブジェクトを検索可能であり、かつ前記監視項目オブジェクトは特定の監視データを管理する監視項目値オブジェクトを検索可能であり、前記対象対応層は、周期的または前記監視制御データ入出力プログラム内部の状態変化に基づいて前記入出力対応層に対して前記監視制御対象の監視データを要求するコマンドを自発的に発令する対象駆動オブジェクトを有し、前記入出力対応層は、前記対象駆動オブジェクトが発令したコマンドを前記入出力インターフェースに対応したデータ形式で前記監視制御対象に送信すると共に前記監視制御対象から応答として出力された監視データを前記対象駆動オブジェクトに渡すデータ交換オブジェクトを有し、前記対象駆動オブジェクトは、自身が自発的に発令したコマンドの応答として前記データ交換オブジェクトから監視データを受け取ると当該監視データを管理する監視項目値オブジェクトを新たに生成すると共に、当該監視データに該当する監視項目を管理する監視項目オブジェクトに対して、上記生成された監視項目値オブジェクトの情報を追加して、前記監視項目オブジェクトが新たに生成された前記監視項目値オブジェクトを検索可能とし、前記主監視制御プログラムから前記情報モデル層に対する監視データの検索要求に対して、前記情報モデルオブジェクトは該当する前記監視項目オブジェクトを前記主監視制御プログラムに通知し、前記監視項目オブジェクトは該当する前記監視項目値オブジェクトを前記主監視制御プログラムに通知する又は該当する前記監視項目値オブジェクトから取得した監視データを前記主監視制御プログラムに提供することを特徴とする請求項1から6のいずれか1つに記載の監視制御システム。
【請求項8】
前記情報モデル層、前記対象対応層、前記入出力対応層の各層は、プログラム部品であるオブジェクトによって構成され、前記情報モデル層は、前記情報モデルとして機能する情報モデルオブジェクトと、特定の監視項目を管理する監視項目オブジェクトと、特定の監視データを管理する監視項目値オブジェクトを更に有し、前記情報モデルオブジェクトは特定の監視項目を管理する監視項目オブジェクトを検索可能であり、かつ前記監視項目オブジェクトは特定の監視データを管理する監視項目値オブジェクトを検索可能であり、前記対象対応層は、前記監視制御対象から自発的に出力された監視データを前記入出力対応層から受信するイベント受信オブジェクトを有し、前記イベント受信オブジェクトは受信した監視データのうち予め登録された条件と一致する監視データがある場合に、当該監視データを管理する監視項目値オブジェクトを新たに生成すると共に、当該監視データに該当する監視項目を管理する監視項目オブジェクトに対して、上記生成された監視項目値オブジェクトの情報を追加して、前記監視項目オブジェクトが新たに生成された前記監視項目値オブジェクトを検索可能とし、前記主監視制御プログラムから前記情報モデル層に対する監視データの検索要求に対して、前記情報モデルは該当する前記監視項目オブジェクトを前記主監視制御プログラムに通知し、前記監視項目オブジェクトは該当する前記監視項目値オブジェクトを前記主監視制御プログラムに通知する又は該当する前記監視項目値オブジェクトから取得した監視データを前記主監視制御プログラムに提供することを特徴とする請求項1から7のいずれか1つに記載の監視制御システム。
【請求項9】
前記主監視制御プログラムは前記情報モデル層に同期を要する監視制御指令を出した後、当該指令の応答を受け取るまで待ち続けることを特徴とする請求項1から8のいずれか1つに記載の監視制御システム。
【請求項10】
前記監視制御対象は電力系統機器であることを特徴とする請求項1から9のいずれか1つに記載の監視制御システム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1つに記載の監視制御システムの監視制御用装置としてコンピュータを機能させることを特徴とする監視制御データ入出力プログラム。
【請求項12】
コンパイラ型言語で作成されることを特徴とする請求項11記載の監視制御データ入出力プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−31557(P2006−31557A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212100(P2004−212100)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】