説明

監視装置、監視方法およびプログラム

【課題】音声入力に基づく侵入者の検知性能を向上可能な、監視装置、監視方法およびプログラムを提供する。
【解決手段】雑音として知覚される所定の雑音信号Si1を生成する雑音信号生成部41と、監視領域SAまたは監視領域の周辺で雑音信号を出力するスピーカ11と、監視領域または監視領域の周辺で雑音信号を含む音声信号Siを入力するマイク21と、雑音信号および音声信号を供給され、音声信号に含まれる雑音信号を低減する雑音信号低減部43とを備える。これにより、監視領域等で雑音信号を出力することで、監視領域等が環境音の大きな環境であると侵入者に錯覚させて、比較的大きな異常音を侵入者に立てさせ、音声入力に基づく侵入者の検知性能を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置、監視方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
音声入力に基づき監視対象の異常を検知する監視装置が知られている(例えば下記特許文献1を参照)。この種の監視装置では、監視者による入力音声の聴取結果、および/または監視装置による入力音声の音圧変化・音声特徴の検出結果に基づき、監視対象の異常が検知される。上記監視装置は、例えば監視領域への侵入者を検知するために利用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−70643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記監視装置では、聴取結果または検出結果のいずれを用いる場合でも、音声信号の信号ノイズ比SNRが比較的高い場合には異常の検知が比較的容易であるが、信号ノイズ比SNRが比較的低い場合には異常の検知が非常に困難となる。ここで、音声信号の信号ノイズ比SNRとは、監視対象の異常時/正常時にかかわらずに周辺環境で生じている環境音(N)と、異常時に生じる異常音(S)のパワー比を意味する。
【0005】
ところで、侵入者は、一般に、極力物音を立てないように監視領域へ侵入する傾向にある。そして、この傾向は、周辺環境で生じている環境音のパワーが低い場合、つまり監視領域等が静かな場所であるほど顕著となることが知られている。このため、上記監視装置を用いて侵入者を検知する場合、音声信号の信号ノイズ比SNRが低くなり、異常の検知が困難となってしまう。
【0006】
そこで、本発明は、音声入力に基づく侵入者の検知性能を向上可能な、監視装置、監視方法およびプログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある観点によれば、雑音として知覚される所定の雑音信号を生成する雑音信号生成部と、監視領域または監視領域の周辺で雑音信号を出力する雑音信号出力部と、監視領域または監視領域の周辺で雑音信号を含む音声信号を入力する音声信号入力部と、雑音信号および音声信号を供給され、音声信号に含まれる雑音信号を低減する雑音信号低減部とを備える監視装置が提供される。
【0008】
かかる構成によれば、まず、監視領域等で雑音信号が出力されるとともに、雑音信号を含む音声信号が入力される。これにより、監視領域等で雑音信号を出力することで、監視領域等が環境音の大きな環境であると侵入者に錯覚させて、比較的大きな異常音を侵入者に立てさせることができる。次に、入力された音声信号に含まれる雑音信号が低減され、環境音および比較的大きな異常音から主になる音声信号が得られる。これにより、音声入力に基づく侵入者の検知性能を向上させることができる。
【0009】
上記監視装置は、雑音信号を低減された音声信号を供給され、音声信号の音圧の変化に基づき監視領域への侵入者を検知する第1の異常検知部と、第1の異常検知部による異常検知の結果を監視領域への侵入者を監視する監視者に通知する異常通知部とをさらに備えてもよい。
【0010】
上記監視装置は、雑音信号を低減された音声信号を供給され、音声信号と所定の異常音の特徴の比較に基づき監視領域への侵入者を検知する第2の異常検知部と、第2の異常検知部による異常検知の結果を監視領域への侵入者を監視する監視者に通知する異常通知部とをさらに備えてもよい。
【0011】
上記監視装置は、雑音信号を低減された音声信号を監視領域への侵入者を監視する監視者に通知する異常通知部をさらに備えてもよい。
【0012】
上記監視装置は、雑音信号低減部で用いられるフィルタの係数値を供給され、フィルタの係数値の変化に基づき監視領域への侵入者を検知する第3の異常検知部と、第3の異常検知部による異常検知の結果を監視領域への侵入者を監視する監視者に通知する異常通知部とをさらに備えてもよい。
【0013】
上記所定の雑音は、定常雑音および非定常雑音のうち少なくとも一方であってもよい。
【0014】
また、本発明の別の観点によれば、雑音として知覚される所定の雑音信号を生成するステップと、監視領域または監視領域の周辺で雑音信号を出力するステップと、監視領域または監視領域の周辺で雑音信号を含む音声信号を入力するステップと、雑音信号および音声信号を供給され、音声信号に含まれる雑音信号を低減するステップとを含む監視方法が提供される。
【0015】
また、本発明の別の観点によれば、上記監視方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。ここで、プログラムは、コンピュータ読取り可能な記録媒体を用いて提供されてもよく、通信手段を介して提供されてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、音声入力に基づく侵入者の検知性能を向上可能な、監視装置、監視方法およびプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る監視装置の概要を示すブロック図である。
【図2】図1に示した信号処理部の詳細を示すブロック図である。
【図3】監視装置の基本的な動作手順を示すフロー図である。
【図4】監視装置の第1の動作例を模式的に説明する図である。
【図5】監視装置の第2の動作例を模式的に説明する図である。
【図6】監視装置の第3の動作例を模式的に説明する図である。
【図7】監視装置の第4の動作例を模式的に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
[1.監視装置の構成]
以下では、図1および図2を参照しながら、本発明の実施形態に係る監視装置の構成について説明する。図1には、監視装置の概要が示され、図2には、図1に示した信号処理部31の詳細が示されている。なお、図1、図2には、本発明の実施形態に係る主要な構成のみが示されている。
【0020】
図1に示すように、監視装置は、1以上のスピーカ11(図中では1つのみ示されている。)、第1アンプ13、D/A変換器15、1以上のマイク21(図中では1つのみ示されている。)、A/D変換器23、第2アンプ25、信号処理部31、異常通知部33、および制御部35を含んで構成される。なお、監視装置は、撮像装置による映像監視機能、ネットワークを介して監視結果を通信する通信機能等を有してもよい。
【0021】
1以上のスピーカ11は、監視領域SAおよび/またはその周辺(以下では、監視領域SA等とも称する。)で視認され難い位置に配置される。スピーカ11は、信号処理部31からD/A変換器15および第1アンプ13を経て供給される雑音信号Si1を出力する。
【0022】
1以上のマイク21は、監視領域SA等で視認され難い位置に配置される。マイク21は、監視領域SA等の音声信号Siを集音し、A/D変換器23および第2アンプ25を介して信号処理部31に供給する。ここで、監視領域SA等の音声信号Siは、監視対象の異常時/正常時にかかわらずに周辺環境で生じている環境音、およびスピーカ11から出力される雑音信号Si1を含み、さらに異常時には異常音Si2を含む。
【0023】
信号処理部31は、雑音として知覚される所定の雑音信号Si1を生成し、スピーカ11を通じて出力するとともに、マイク21を通じて雑音信号Si1を含む音声信号Siを入力する。信号処理部31は、入力された音声信号Siに含まれる雑音信号Si1を低減し、雑音信号Si1を低減された音声信号So(以下、雑音低減後の音声信号Soとも称する。)に基づき異常を検知する。なお、信号処理部31は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)等からなる。
【0024】
異常通知部33は、聴覚的、視覚的、または触覚的手段等を用いて異常検知の結果を監視者Sに通知する。異常検知の結果は、雑音低減後の音声信号So自体として通知されてもよく、異常検知の結果を示す警報情報Aとして通知されてもよい。
【0025】
制御部35は、CPU、ROM、RAMを含んでおり、CPUは、ROMからプログラムを読出し、RAMに展開して実行することで、監視装置を動作制御するための演算処理を行う。
【0026】
図2に示すように、信号処理部31は、雑音信号生成部41、雑音信号低減部43、第1異常検知部45、第2異常検知部47、および第3異常検知部49を含む。
【0027】
雑音信号生成部41は、所定の雑音信号Si1を生成し、第1アンプ13およびD/A変換器15を介してスピーカ11に供給するとともに、雑音信号低減部43に供給する。雑音信号Si1は、雑音として知覚される音を表す信号であり、エアコンのファン音やピンクノイズ等からなる定常雑音、および/または工事現場や交差点の音からなる非定常雑音からなる。雑音信号Si1は、時間的に変化されてもよく、複数の定常雑音、複数の非定常雑音、定常雑音と非定常雑音の組合せ等、複数種類の雑音から構成されてもよい。
【0028】
雑音信号低減部43は、雑音信号生成部41およびマイク21から雑音信号Si1および音声信号Siを各々に供給され、音声信号Siに含まれる雑音信号Si1を低減する。雑音信号低減部43は、雑音低減後の音声信号Soを、異常通知部33、第1〜第3異常検知部45、47、49のうち少なくともいずれかに供給する。ここで、雑音信号低減処理には、例えば、最小自乗法(LSM)、射影法等の適応処理が用いられてもよい。なお、雑音信号低減部43はノイズキャンセラ、ノイズサプレッサ等からなる。
【0029】
第1異常検知部45は、雑音低減後の音声信号Soを供給され、雑音低減後の音声信号Soの音圧Pの変化に基づき異常、特に監視領域SAへの侵入者Iを検知する。第1異常検知部45は、音声信号Soの音圧Pの変化が閾値Ptを超す場合に異常音Si2の発生を検知し、異常検知の結果として警報情報Aを生成する。
【0030】
第2異常検知部47は、雑音低減後の音声信号Soを供給され、雑音低減後の音声信号Soと所定の異常音Si2の特徴量Acの比較に基づき異常、特に監視領域SAへの侵入者Iを検知する。第2異常検知部47は、異常音特徴データベース51、特徴抽出部53、類似度算出部55、および閾値処理部57からなる。
【0031】
異常音特徴データベース51は、例えば、ドア開閉時の音、ガラス切断時の音等、異常音Si2の特徴ベクトルを表す情報を格納している。特徴抽出部53は、雑音低減後の音声信号Soから特徴ベクトルを抽出する。類似度算出部55は、雑音低減後の音声信号Soの特徴ベクトルと、検知対象となる異常音Si2の特徴ベクトルを比較して尤度を算出する。閾値処理部57は、異常音Si2の尤度を閾値処理し、尤度が閾値を超す場合に異常音Si2の発生を検知し、異常検知の結果として警報情報Aを生成する。
【0032】
第3異常検知部49は、雑音信号低減部43で用いられるフィルタの係数値Cを供給され、フィルタの係数値Cの変化に基づき異常、特に監視領域SAへの侵入者Iを検知する。第3異常検知部49は、フィルタの係数値Cの変化が閾値Ctを超す場合に異常音Si2の発生を検知し、異常検知の結果として警報情報Aを生成する。
【0033】
[2.監視装置の動作]
以下では、図3〜図7を参照しながら、監視装置の動作について説明する。図3には、監視装置の基本的な動作手順が示されている。図4〜図7には、監視装置の第1〜第4の動作例が各々に模式的に説明されている。なお、以下の説明では、動作例間で重複する説明については省略されている。
【0034】
まず、図3を参照しながら、監視装置の基本的な動作手順について説明する。図3に示すように、監視装置では、雑音として知覚される所定の雑音信号Si1が雑音信号生成部41により生成される(ステップS11)。監視領域SA等では、雑音信号Si1がスピーカ11から出力されるとともに(S13)、雑音信号Si1を含む音声信号Siがマイク21に入力される(S15)。
【0035】
ここで、マイク21に入力される音声信号Siは、監視対象の異常時/正常時にかかわらずに周辺環境で生じている環境音、およびスピーカ11から出力される雑音信号Si1を含み、さらに異常時には異常音Si2を含む。これにより、監視領域SA等で雑音信号Si1を出力することで、監視領域SA等が環境音の大きな環境であると侵入者Iに錯覚させて、比較的大きな異常音Si2を侵入者Iに立てさせることができる。
【0036】
そして、雑音信号Si1および音声信号Siが雑音信号低減部43に供給され、音声信号Siに含まれる雑音信号Si1が雑音信号低減部43により低減される(S17)。これにより、音声入力に基づく侵入者Iの検知性能を向上させることができる。
【0037】
(第1の動作例)
つぎに、図4を参照しながら、監視装置の第1の動作例について説明する。
【0038】
図4に示すように、第1の動作例では、雑音低減後の音声信号So自体が異常通知部33を介して監視領域SAへ侵入する侵入者Iを監視する監視者Sに通知される。
【0039】
第1の動作例では、監視領域SA等で雑音信号Si1を出力することで、監視領域SA等が環境音の大きな環境であると侵入者Iに錯覚させることができる。これにより、環境音の小さな監視領域SA等に侵入する場合よりも比較的大きな異常音Si2を侵入者Iに立てさせることができる。
【0040】
そして、環境音、雑音信号Si1、および侵入者Iによる異常音Si2からなる音声信号Siを入力し、音声信号Siに含まれる雑音信号Si1を低減することで、環境音および比較的大きな異常音Si2から主になる音声信号Soを得ることができる。これにより、異常音Si2を比較的高い比率で含む音声信号So、つまり比較的高い信号ノイズ比SNRを伴う音声信号Soを監視者Sに通知することができる。よって、監視者Sは、比較的高い信号ノイズ比SNRを伴う音声信号Soに基づき侵入者Iを容易に検知することができる。
【0041】
(第2の動作例)
つぎに、図5を参照しながら、監視装置の第2の動作例について説明する。
【0042】
図5に示すように、第2の動作例では、雑音低減後の音声信号Soが第1異常検知部45に供給され、雑音低減後の音声信号Soの音圧P(t)の変化に基づき監視領域SAへの侵入者Iが検知される。そして、異常検知の結果を示す警報情報Aが異常通知部33を介して監視者S等に通知される。
【0043】
第2の動作例でも、第1の動作例の場合と同様に、雑音低減後の音声信号Soとして、環境音および比較的大きな異常音Si2から主になる音声信号Soを得ることができる。そして、第1異常検知部45は、雑音低減後の音声信号Soを供給され、例えば音声信号Soの信号ノイズ比SNRを用いた閾値処理により異常を検知する(図5に示すD1)。なお、異常検知処理には、音声信号Soの振幅値を用いた閾値処理、時間周波数変換による周波数帯域毎の信号ノイズ比SNRの重み付け平均処理等が用いられてもよい。
【0044】
音声信号Soの信号ノイズ比SNRは、例えば式1〜式3により推定される。ここで、ノイズレベルn(t)および信号レベルs(t)は、環境音および低減された雑音信号Si1のレベルおよび異常音Si2のレベルに各々に相当する。なお、ノイズレベルn(t)および信号レベルs(t)は、音声検出を利用し、または音声信号Soの最小値に基づき推定されてもよい。
【0045】
【数1】

【0046】
ここで、n(t)、s(t)が時刻tのノイズレベルおよび信号レベルの推定値であり、m(t)が時刻tでの音声信号Soの振幅である。また、α、βが0<β<α<1の関係を満たす定数であり、γ、δが0<γ<δ<1の関係を満たす定数である。
【0047】
β<αの関係から、ノイズレベルn(t)には、ノイズレベルが増加傾向にある場合に現時点の振幅m(t)が反映され難くなり、ノイズレベルが減少傾向にある場合に現時点の振幅m(t)が反映され易くなる。また、γ<δの関係から、信号レベルs(t)には、信号レベルが増加傾向にある場合に現時点の振幅m(t)が反映され難くなり、信号レベルが減少傾向にある場合に現時点の振幅m(t)が反映され易くなる。これにより、非定常的な音声の影響を受け難い状態で、ノイズレベルn(t)および信号レベルs(t)を推定することができる。
【0048】
これにより、雑音低減後の音声信号So、つまり比較的高い信号ノイズ比SNRを伴う音声信号Soの信号ノイズ比SNRの変化に基づき、相対的に高い精度で侵入者Iを検知して監視者Sに通知することができる。よって、監視者Sは、比較的高い信号ノイズ比SNRを伴う音声信号Soの信号ノイズ比SNRの変化に基づき侵入者Iを容易に検知することができる。
【0049】
(第3の動作例)
つぎに、図6を参照しながら、監視装置の第3の動作例について説明する。
【0050】
図6に示すように、第3の動作例では、雑音低減後の音声信号Soが第2異常検知部47に供給され、雑音低減後の音声信号Soと所定の異常音Si2の特徴量Cの比較に基づき監視領域SAへの侵入者Iが検知される(図6に示すD2)。そして、異常検知の結果を示す警報情報Aが異常通知部33を介して監視者S等に通知される。
【0051】
第3の動作例でも、第1の動作例の場合と同様に、雑音低減後の音声信号Soとして、環境音および比較的大きな異常音Si2から主になる音声信号を得ることができる。そして、第2異常検知部47は、雑音低減後の音声信号Soを供給され、例えば混合ガウス分布モデル(GMM)を用いた閾値処理により異常を検知する。なお、類似度算出処理には、隠れマルコフモデル(HMM)、サポートベクターマシン(SMM)等が用いられてもよい。
【0052】
第2異常検知部47では、検知対象となる異常音Si2の特徴ベクトルの出現確率を混合ガウス分布により表した特徴情報が異常音特徴データベース51に格納されている。また、雑音低減後の音声信号Soが特徴抽出部53に供給され、音声信号Soの特徴ベクトルが抽出されて類似度算出部55に供給される。
【0053】
類似度算出部55では、検知対象となる異常音Si2の特徴情報に、音声信号Soの特徴量Cが代入されることで、検知対象となる異常音Si2の尤度が算出されて閾値処理部57に供給される。閾値処理部57では、異常音Si2の尤度が閾値処理され、尤度が閾値を超す場合に異常音Si2の発生が検知され、警報情報Aが生成される。ここで、閾値処理は、異常音Si2毎に行われてもよく、時間帯に応じて閾値を変化させて行われてもよい。
【0054】
これにより、雑音低減後の音声信号So、つまり比較的高い信号ノイズ比SNRを伴う音声信号Soと所定の異常音Si2の特徴量Cの比較に基づき、相対的に高い精度で侵入者Iを検知して監視者Sに通知することができる。よって、監視者Sは、比較的高い信号ノイズ比SNRを伴う音声信号Soと所定の異常音Si2の比較結果に基づき侵入者Iを容易に検知することができる。
【0055】
(第4の動作例)
つぎに、図7を参照しながら、監視装置の第4の動作例について説明する。
【0056】
図7に示すように、第4の動作例では、雑音信号低減部43で用いられるフィルタの係数値Cが第3異常検知部49に供給され、フィルタの係数値w(t)の変化に基づき監視領域SAへの侵入者Iが検知される(図7に示すD3)。そして、異常検知の結果を示す警報情報Aが異常通知部33を介して監視者S等に通知される。
【0057】
第4の動作例でも、第1の動作例の場合と同様に、雑音低減後の音声信号Soとして、環境音および比較的大きな異常音Si2から主になる音声信号Soを得ることができる。そして、第3異常検知部49は、雑音信号低減部43で用いられるフィルタの係数値w(t)を供給され、フィルタの係数値w(t)の変化の閾値処理により異常を検知する。
【0058】
雑音信号低減部43では、マイク21を通じて入力された音声信号Siに含まれる雑音成分y(t)が式4により推定され、音声信号Siから雑音成分y(t)を減算した信号、つまり雑音低減後の音声信号Soが出力される。なお、雑音成分y(t)は、スピーカ11から出力された後にマイク21に入力された雑音信号Si1のエコーである。
【0059】
【数2】

【0060】
ここで、w(t)は、時刻tの雑音低減処理で用いられる適応フィルタの係数ベクトルであり、{w、w、…、wp−1}として表される。x(t)は、参照信号の時間領域データのベクトルであり、{x、xt−1、…、xt−(p−1)}として表される。
【0061】
雑音信号低減部43では、音声信号から雑音成分y(t)を減算した値をエラーe(t)として、式5および式6により、時刻t+1の雑音低減処理で用いられる適応フィルタの係数ベクトルw(t+1)が更新される。
【0062】
【数3】

【0063】
ここで、μが更新のステップサイズである。係数ベクトルw(t)は、環境条件(監視領域SA等での不審者の侵入、物体の移動、反響条件)が変化しない場合、更新の前後で殆ど変化しないが、環境条件が変化した場合、更新の前後で大きく変化することが知られている。
【0064】
このため、第3異常検知部49では、雑音信号低減部43で用いられるフィルタの係数値w(t)を供給され、式7により係数値w(t)の変化E(t)を算出して閾値処理することで、環境条件の変化を検知することができる。
【0065】
【数4】

【0066】
これにより、雑音信号低減部43で用いられるフィルタの係数値の変化(t)に基づき、監視領域SA等での環境条件の変化を検知することで、相対的に高い精度で侵入者Iを検知して監視者Sに通知することができる。よって、監視者Sは、フィルタの係数値の変化E(t)に基づき侵入者Iを容易に検知することができる。
【0067】
[3.まとめ]
以上説明したように、本発明の第1〜第4の実施形態によれば、監視領域SA等で雑音信号Si1が出力されるとともに、雑音信号Si1を含む音声信号Siが入力される。これにより、監視領域SA等で雑音信号Si1を出力することで、監視領域等が環境音の大きな環境であると侵入者に錯覚させて、比較的大きな異常音Si2を侵入者Iに立てさせることができる。次に、入力された音声信号Siに含まれる雑音信号Si1が低減され、環境音および比較的大きな異常音Si2から主になる音声信号Soが得られる。
【0068】
これにより、第1〜第3の実施形態では、環境音および比較的大きな異常音Si2から主になる音声信号Soを得ることで、比較的高い信号ノイズ比SNRを伴う音声信号Soに基づき侵入者Iを容易に検知することができる。また、第4の実施形態では、雑音信号低減処理に用いられるフィルタの係数値の変化に基づき監視領域SA等での環境条件の変化を検知することで、侵入者Iを容易に検知することができる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0070】
例えば、上記実施形態の説明では、雑音低減後の音声信号So自体が通知される場合(第1の実施形態)、雑音低減後の音声信号Soに基づく異常検知の結果が通知される場合(第2、第3の実施形態)、および雑音信号低減処理に用いられるフィルタの係数値の変化に基づく異常検知の結果が通知される場合(第4の実施形態)について各々に説明した。しかし、第1〜第4の実施形態は、適宜に組合せて実施されてもよい。例えば、第1〜第3の実施形態の少なくともいずれか1つを第4の実施形態と組合せて実施することで、異常音Si2および環境条件の変化に基づく異常検知が可能となり、侵入者Iの検知性能をさらに向上させることができる。
【符号の説明】
【0071】
11 スピーカ
21 マイク
31 信号処理部
33 異常通知部
35 制御部
41 雑音信号生成部
43 雑音信号低減部
45 第1異常検知部
47 第2異常検知部
49 第3異常検知部
Si1 雑音信号
Si2 異常音
Si 入力される音声信号
So 雑音低減後の音声信号
SA 監視領域
S 監視者
I 侵入者


【特許請求の範囲】
【請求項1】
雑音として知覚される所定の雑音信号を生成する雑音信号生成部と、
監視領域または前記監視領域の周辺で前記雑音信号を出力する雑音信号出力部と、
前記監視領域または前記監視領域の周辺で前記雑音信号を含む音声信号を入力する音声信号入力部と、
前記雑音信号および前記音声信号を供給され、前記音声信号に含まれる前記雑音信号を低減する雑音信号低減部と
を備える監視装置。
【請求項2】
前記雑音信号を低減された音声信号を供給され、前記音声信号の音圧の変化に基づき前記監視領域への侵入者を検知する第1の異常検知部と、
前記第1の異常検知部による異常検知の結果を前記監視領域への侵入者を監視する監視者に通知する異常通知部と
をさらに備える、請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記雑音信号を低減された音声信号を供給され、前記音声信号と所定の異常音の特徴の比較に基づき前記監視領域への侵入者を検知する第2の異常検知部と、
前記第2の異常検知部による異常検知の結果を前記監視領域への侵入者を監視する監視者に通知する異常通知部と
をさらに備える、請求項1または2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記雑音信号を低減された音声信号を前記監視領域への侵入者を監視する監視者に通知する異常通知部をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項5】
前記雑音信号低減部で用いられるフィルタの係数値を供給され、前記フィルタの係数値の変化に基づき前記監視領域への侵入者を検知する第3の異常検知部と、
前記第3の異常検知部による異常検知の結果を前記監視領域への侵入者を監視する監視者に通知する異常通知部と
をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項6】
前記所定の雑音信号は、定常雑音および非定常雑音のうち少なくとも一方を表す信号である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の監視装置。
【請求項7】
雑音として知覚される所定の雑音信号を生成するステップと、
監視領域または前記監視領域の周辺で前記雑音信号を出力するステップと、
前記監視領域または前記監視領域の周辺で前記雑音信号を含む音声信号を入力するステップと、
前記雑音信号および前記音声信号を供給され、前記音声信号に含まれる前記雑音信号を低減するステップと
を含む監視方法。
【請求項8】
雑音として知覚される所定の雑音信号を生成するステップと、
監視領域または前記監視領域の周辺で前記雑音信号を出力するステップと、
前記監視領域または前記監視領域の周辺で前記雑音信号を含む音声信号を入力するステップと、
前記雑音信号および前記音声信号を供給され、前記音声信号に含まれる前記雑音信号を低減するステップと
を含む監視方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−180685(P2011−180685A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42262(P2010−42262)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】