監視装置、監視方法
【課題】人以外を人と誤検知することを低減し、人の検知精度を向上させた監視装置及び監視方法を提供すること。
【解決手段】空間環境の変化を検出するセンサ21と、前記センサの信号から前記空間環境を変化させた各検知対象物の推定度を算出する検知対象推定手段23と、を有する空間の監視装置100であって、人以外の前記検知対象物に対応づけて、重み付け情報を記憶した重み付け情報記憶手段27と、前記検知対象推定手段23が推定した前記検知対象物に対応づけられた前記重み付け情報により、各検知対象物の前記推定度を重み付けして、前記空間環境を変化させた前記検知対象物を特定する検知対象物特定手段25と、を有することを特徴とする。
【解決手段】空間環境の変化を検出するセンサ21と、前記センサの信号から前記空間環境を変化させた各検知対象物の推定度を算出する検知対象推定手段23と、を有する空間の監視装置100であって、人以外の前記検知対象物に対応づけて、重み付け情報を記憶した重み付け情報記憶手段27と、前記検知対象推定手段23が推定した前記検知対象物に対応づけられた前記重み付け情報により、各検知対象物の前記推定度を重み付けして、前記空間環境を変化させた前記検知対象物を特定する検知対象物特定手段25と、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間環境の変化を監視する監視装置に関し、特に、誤報を抑制した空間監視装置及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の空間に人が侵入したかどうかを監視する監視装置では、例えば赤外線センサの検知信号を解析して人が空間に侵入したことを検知する。赤外線センサは人以外にも赤外線を発する有体物や無体物(以下、「誤検知対象」という)を検知可能であるが、誤検知対象を人として誤検知することは好ましくない。このため、監視装置の検知精度を向上させる技術が考えられている(特許文献1、2参照。)。
【0003】
特許文献1には、複数の焦電素子がそれぞれ独立した検知エリアを形成する受動式赤外線センサを用いて、各焦電素子による検知信号の電圧レベルの比較から検知対象の高さを検知することで、小動物による誤報を排除する侵入物体判定方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、焦電素子の出力を統計的に解析し、検知対象の形状(大人、子供、犬など)、移動方向及び動作などを推定する動作パターンモデル生成装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、焦電素子の出力に時系列解析やニューラルネット技術を適用して特徴量を抽出し、パターン識別を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3093834号公報
【特許文献2】特開2006−346180号公報
【特許文献3】特開2006−346180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された侵入物体判定方法では、焦電素子の電圧レベルへの依存度が高いため、次のような問題がある。
図1は、赤外線センサと検知エリアの一例を示す図である。床を歩行する小動物と赤外線センサは離れているので、各焦電素子による検知信号の電圧レベルの比較により、誤検知対象であることを判別できる可能性がある。しかし、センサに近い棚31を歩行する小動物は、検知エリアに占める温度変化領域が広範囲に渡るため、複数の焦電素子から高い電圧が同時に出力され、小動物を人と誤検知するおそれがある。センサと誤検知対象が近い場合だけでなく、例えば、熱せられたカーテンがセンサの検知エリア内で揺れるなどした状況でも、特許文献1記載の侵入物体判定方法では誤検知するおそれがある。
【0008】
また、特許文献2記載の動作パターンモデル生成装置、及び、特許文献3記載のパターン識別技術は、確率的に検知対象を推定するため、高精度に検知対象を識別するパターン認識技術であっても、完全に誤検知を防ぐことはできなかった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、人以外を人と誤検知することを低減し、人の検知精度を向上させた監視装置及び監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、空間環境の変化を検出するセンサと、前記センサの信号から前記空間環境を変化させた各検知対象物の推定度を算出する検知対象推定手段と、を有する空間の監視装置であって、人以外の前記検知対象物に対応づけて、重み付け情報を記憶した重み付け情報記憶手段と、前記検知対象推定手段が推定した前記検知対象物に対応づけられた前記重み付け情報により、各検知対象物の前記推定度を重み付けして、前記空間環境を変化させた前記検知対象物を特定する検知対象物特定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
人以外を人と誤検知することを低減し、人の検知精度を向上させた監視装置及び監視方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】赤外線センサと検知エリアの一例を示す図である。
【図2】監視装置の概略を説明する図の一例である。
【図3】監視装置の概略構成図の一例である。
【図4】信号解析部、検知対象推定部、及び、侵入者判定部の配置例を説明する図の一例である
【図5】検知信号の一例を模式的に説明する図の一例である。
【図6】検知信号の一例を模式的に説明する図の一例である。
【図7】設置環境係数の一例を示す図である
【図8】監視装置が侵入者を判定する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図9】設置環境係数を説明する図の一例である(実施例2)。
【図10】監視装置の概略構成図の一例である(実施例2)。
【図11】監視装置が侵入者を判定する手順を示すフローチャート図の一例である(実施例2)。
【図12】設置環境係数の現状復帰を模式的に説明する図の一例である。
【図13】比較的広い空間における監視装置の構成の一例を示す図である。
【図14】監視装置の概略構成図の一例を示す(実施例3)。
【図15】監視装置の別の概略構成図の一例である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0014】
図2は、本実施形態の監視装置100の概略を説明する図の一例である。本実施形態の監視装置100は、設置環境係数32を利用して人以外の誤検知対象の推定度を補正することで、誤検知対象が選択される選択率を引き上げることが特徴の1つである(以下、人と誤検知対象を含めて「検知対象物」という。)。
【0015】
監視装置100のセンサユニットは、ユーザの事情に応じて極めて多様な設置場所に設置される。設置場所は、例えば、厨房、倉庫、玄関、リビング、オフィス、店頭、エントランス等であるが、その1つの厨房に着目してもその状況はユーザによって千差万別である。また、誤検知対象としては、例えば、ネズミや猫などの小動物、エアコンの空調風、太陽光、カーテンなど、様々なものが挙げられる。
【0016】
このため、監視装置100が誤検知しやすい誤検知対象はセンサユニットの設置場所によって様々である。例えば、設置場所が厨房であれば、監視装置100はネズミなどの小動物を人だと誤検知する可能性があり、エアコンの設置された部屋であれば、監視装置100は空調風を人だと誤検知する可能性がある。
【0017】
本発明は、監視装置100のセンサユニットが設置される場所で検知されうる検知対象物の情報を用いて、精度良く検知対象物を判別しようとするものである。
【0018】
そこで、本実施形態の監視装置100は、監視装置100の設置場所に最適化された設置環境係数32を記憶しておくことで、人と誤検知対象の峻別を可能にする。設置環境係数32については後述するが、設置環境係数32には、設置場所において各誤検知対象の出現が想定される程度が登録されている。
【0019】
監視装置100は、センサ信号を解析することで、ある程度の確度で人と誤検知対象の推定(推定度の算出)が可能である。したがって、この推定結果を設置環境係数32にて補正することで、誤検知対象の選択率を引き上げることができる。こうすることで、出現が想定される誤検知対象を人でなく誤検知対象として検知でき、人の侵入に対してのみ警報を発生することが可能になる。
【0020】
〔監視装置100の構成〕
図3は、監視装置100の概略構成図の一例を示す。監視装置100は、センサユニット11とコントローラ12に大きく分けることができる。センサユニット11は、センサ部21及び信号解析部22を有し、コントローラ12は、検知対象推定部23、侵入者判定部24、警報出力部25、検知対象モデル格納部26及び設置環境計数格納部27を有する。
【0021】
なお、図示する構成は一例であるので、コントローラ12の構成についていくつかの構成例を挙げておく。
図4は、信号解析部22、検知対象推定部23、及び、侵入者判定部24の配置例を説明する図の一例である。構成1は、信号解析部22、検知対象推定部23、及び、侵入者判定部24が全てセンサユニット11に配置される構成であり、構成2は、信号解析部22及び検知対象推定部23がセンサユニット11に配置され、侵入者判定部24はコントローラ12に配置される構成であり、構成3は、信号解析部22がセンサユニット11に配置され、検知対象推定部23及び侵入者判定部24はコントローラ12に配置される構成である。本実施例の監視装置100は構成3を採用している。
【0022】
〔センサユニット11〕
センサ部21は、赤外線の受光量を電圧に変換してその変化量(微分型)に基づき人を検知する、パッシブ型(受動式)の赤外線センサである。センサ部21は、例えば、天井や壁に固定されており、有線又は無線で信号解析部22と接続されている。
【0023】
センサ部21は、主に、焦電素子と光学系とを有し、光学系により集光した光を焦電素子が受光するように構成されている。光学系は例えば凹面ミラーやフレネルレンズであり、凹面ミラーやフレネルレンズに光が入射する領域がセンサ部21の検知エリアとなる。焦電素子により受光された光は電圧に変換され、信号解析部22に送出される。
【0024】
信号解析部22はセンサ部21から取得した検知信号を解析して、コンピュータによる取り扱いが可能な入力信号パラメータを生成する。人が検知エリアに侵入することや、検知エリアで移動すること等により、検知信号は時間に対し増減する。
【0025】
図5、6は、検知信号の一例を模式的に説明する図の一例である。図5(a)は、センサの検知エリアと人の検知例を模式的に、図5(b)は人の検知信号の一例をそれぞれ示す。まず、センサ部21は、上下方向に1対のビーム状のゾーンA、Bが空間を離散的に走査するように検知エリアを形成している。ゾーンAは空間の上側に、ゾーンBは空間の下方を検知エリアにしている。なお、図では上下方向しか示されていないが、センサ部21を中心とする平面方向(上下方向に直交する方向)にゾーンA、Bが広がっている。
【0026】
人が検知エリアに侵入した場合、センサ部21はゾーンAとゾーンBの両方にて人を検知する。つまり、検知信号はゾーンAとBからそれぞれ検知されるので、図5(b)に示すように、人が検知エリアを移動すれば、ゾーンAとゾーンBの両方から同傾向の検知信号が時間的に同時に検知される。
【0027】
これに対し、図6(a)に示すように、小動物が検知エリアを移動する場合、小動物の体長や体高を踏まえると、ゾーンAとゾーンBの両方を同時に移動することはないので、センサ部21は、いずれかのゾーンから検知信号を出力する。図6(b)は小動物の検知信号の一例を示す図である。図5(b)と比較すると、ピーク間の距離や形状が異なっている。不図示であるが、同様に、センサ部21の近くを移動する小動物、揺れるカーテン、空調風、及び、太陽光を、センサ部21が検知した場合の検知信号もそれぞれ特徴的な波形を示す。
【0028】
このような波形の解析に(ファスト)フーリエ変換が知られている。図3に戻り、信号解析部22は、フーリエ変換を適用して、検知信号に含まれる周波数成分及び各周波数成分の強度から入力信号パラメータを生成する。フーリエ変換の結果には、電圧のレベル、センサ部21と人(又は誤検知対象)との距離、移動速度等の情報が含まれる。したがって、例えば、フーリエ変換の結果を所定の周波数毎にサンプリングするなどして入力信号パラメータを生成することができる。
【0029】
なお、本実施例の信号解析では検知信号から特徴的なパラメータを抽出できればよく、例えば、検知信号の最大振幅、検知信号の最小振幅、ピーク間距離、積分値等を抽出してもよい。
【0030】
このように、理想的な状態では、人と小動物では検知信号が異なるので、監視装置100はある程度の精度で人と誤検知対象(小動物等)を推定できる。しかし、これらの検知対象物の波形だけから、人と誤検知対象を完全に区別することは困難である。
【0031】
〔コントローラ12〕
検知対象推定部23及び侵入者判定部24は、LSI(ASIC、FPGA)などの集積回路や、プログラムを実行するマイコンなどを実体とする。また、検知対象モデル格納部26及び設置環境係数格納部27は、LSIやマイコンの不揮発メモリに記憶されている。検知対象推定部23は検知対象モデル格納部26にアクセスでき、侵入者判定部24は設置環境係数格納部27にアクセスできる。
【0032】
検知対象推定部23は、信号解析部22が解析した入力信号パラメータと、検知対象モデル格納部26に記憶された標準パラメータを比較して、誤検知対象を推定する。検知対象モデル格納部26に記憶された標準パラメータは、人や誤検知対象が実際に検知エリアに侵入した際に、信号解析部22が生成した標準的なパラメータである。理想的な又は平均的な標準パラメータを得るため、人や誤検知対象を検知エリアの内外で何回か実動作させ、信号解析部22が検知信号から特徴的な又は平均的な標準パラメータを生成する。
【0033】
本実施例では、人に加え、一例として、猫、ネズミ、空調風、太陽光、隙間風、カーテンの揺れなどの誤検知対象の標準パラメータが予め生成されている。
【0034】
検知対象推定部23は、入力信号パラメータと各標準パラメータを比較する。例えば、パターンマッチングにより、類似度を算出し、類似度に応じて推定度を算出する。また、検知対象推定部23は、入力信号パラメータと、小動物(センサ遠方)、小動物(センサ近傍)、カーテンの揺れ、空調風及び太陽光の標準パラメータそれぞれとのマハラノビス距離を算出し、マハラノビス距離に応じて、各検知対象物の推定度を算出してもよい。
【0035】
推定度は、例えば、検知対象物毎の百分率やパーセントのように数値化されており、本実施例では一例として推定度が高いほど、検知された可能性が高い検知対象物であることを意味するものとする。
【0036】
<設置環境係数>
次に、侵入者判定部24は、設置環境係数格納部27に格納された設置環境係数32を参照して、侵入者を判定する。
図7は、設置環境係数32の一例を示す図である。設置環境係数32は、設定環境にて想定される誤報要因を、誤検知対象毎に数値化したものである。例えば、設置場所が棚上付近の場合、誤検知対象として棚31の上を移動する小動物が想定される。このため、設置場所が棚上付近の監視装置100では、センサ近傍の小動物の設置環境係数32を高くする。なお、図7では、設置環境係数32を「○」「×」で示した。「○」は例えば「1.5」〜「1.0」等、対応する誤検知対象の推定度を高める係数を意味し、「×」は例えば「0.9」〜「0.0」等、対応する誤検知対象の推定度を低める係数を意味する。本実施例では「○」「×」の二値として説明する。
【0037】
同様に、センサ部21の設置場所が窓際付近の場合(カーテンが備えられている)、誤検知対象として揺れるカーテンが想定される。このため、センサ部21の設置場所がカーテンのある窓際付近の監視装置100では、カーテンの揺れの設置環境係数32を大きくする(「○」)にする。同様に、設置場所が部屋中心部付近の場合(エアコンのある部屋)、センサ部21がエアコンの風を直接的又は間接的に検知する可能性がある。このため、センサ部21の設置場所がエアコンのある部屋の中心部の監視装置100では、空調風の設置環境係数32を大きくする(「○」)にする。同様に、センサ部21が窓方向を向いて設置された場合、センサ部21が太陽光により暖められた床や窓を検知する可能性がある。このため、センサ部21の設置場所が窓方向を向いている監視装置100では、太陽光の設置環境係数32を大きくする(「○」)にする。同様に、センサ部21の設置場所が倉庫内の場合、センサ部21が、倉庫内を移動するネズミや猫などの小動物、及び、倉庫内を飛行する鳥を検知する可能性がある。このため、センサ部21の設置場所が倉庫内の監視装置100では、小動物(センサ遠方)及び小動物(センサ近傍)の設置環境係数32を大きくする(「○」)にする。
【0038】
こうすることで、検知対象推定部23の推定結果(推定度)を実際の設置環境に応じて補正することができ、様々な設置環境で誤検知が想定される誤検知対象を誤検知対象として検知することが可能となる。なお、図7の設置環境係数32は、あくまで一例であり、誤検知対象や「○」「×」の位置は適宜設定できる。
【0039】
<設置環境係数の設定>
監視装置100に設置環境係数32を設定する方法について説明する。方法の1つには、設置場所において、設置者が設定する方法がある。設置者は、例えば、パソコンなどの端末を使って、センサ部21の設置時の周囲の環境と予想される誤検知対象の有無とを考慮して、誤検知対象毎に「○」「×」を設定する。この場合、センサ部21の設置後に、設置場所に最適な設置環境係数32を登録することができるとともに、設置環境の変化に応じて設置環境係数32を修正することが可能である。
【0040】
また、監視装置100の出荷時に不揮発メモリに記憶させておく方法がある。この場合、各設置場所向けに監視装置100が出荷される。出荷後の設置環境係数32の書き換えを防止でき、セキュリティが向上する。
【0041】
また、監視装置100が警備会社のセンターと通信事業者の回線やインターネットにより接続されていることを利用して、警備会社のセンターが、個別の監視装置100に設置環境係数32を新たに登録したり更新する方法がある。この場合、センサ部21の設置後に、設置場所に最適な設置環境係数32を登録することができる。
【0042】
<推定度の補正例>
設置環境係数32による推定結果の補正の一例を説明する。例えば、センサ部21が棚上付近に設置された監視装置100の検知対象推定部23が検知対象物の各推定度を以下のように算出したとする。
「人:30% 小動物(センサ遠方):5% 小動物(センサ近傍):30% カーテンの揺れ:5% 空調風:25% 太陽光:5%」
この推定結果では、人、小動物(センサ近傍)、空調風の推定度が拮抗している。このような推定結果に対し、監視装置100は、侵入者の検知漏れを防止するため、推定度が拮抗した場合には検知対象を「人」とみなす場合がある。このため誤検知となる場合もあった。
【0043】
本実施例では、侵入者判定部24は、設置環境係数32で「×」が登録された誤検知対象の推定結果をほぼ「0%」にする。したがって、小動物(センサ遠方)、カーテンの揺れ、空調風、及び、太陽光が検知対象物として推定されることを排除することができる。また、侵入者判定部24は、設置環境係数32で「○」が登録された小動物(センサ遠方)の推定度を大きくなるように補正する(人の推定度は補正しないものとする)。これにより、例えば、小動物(センサ近傍)の推定度が「30%→50%」などに補正される。こうすることで、設置場所にて想定される誤検知対象の推定度を、設置環境係数32により大きな値に補正できる。
【0044】
よって、侵入者判定部24は、検知対象物が人でなく、センサ近傍を移動した小動物等の誤検知対象であると判定することができる。すなわち、設置環境係数32がない場合は、侵入者判定部24は誤検知対象を「人」であると誤検知するおそれがあったが、本実施例では設置環境係数32により想定される誤検知対象の推定度を大きくするので、誤検知対象を誤検知対象として検知でき、誤報を抑制できる。
【0045】
警報出力部25は、侵入者判定部24が侵入者を検知した場合に、警報音を吹鳴するスピーカや、設定場所の異常検知信号を警備会社のセンターに通知する通信装置である。異常検知信号には、契約者の識別情報が含まれており、警備会社のセキュリティアドバイザーがセンサ部21の設置場所に急行することができる。
【0046】
〔動作手順〕
図8は、監視装置100が侵入者を判定する手順を示すフローチャート図の一例である。図8の手順は、例えば、契約者が監視装置100を監視モードに設定することでスタートする。
【0047】
センサ部21は、例えばサイクル時間毎に、焦電センサが検知する信号レベル(電圧レベル)を監視し、信号レベルが閾値以上か否かを判定する(S10)。信号レベルが閾値以上でない場合(S10のNo)、センサ部21は信号レベルの監視を繰り返す。
【0048】
信号レベルが閾値以上の場合(S10のYes)、センサ部21と信号解析部22が信号解析モードに移行する(S20)。
【0049】
信号解析部22は、信号レベルが閾値以上の場合(S10のYes)、センサ部21と信号解析部22が信号解析モードに移行する(S20)。信号解析部22は、センサ部21が検知した検知信号を解析して入力信号パラメータを生成する。
【0050】
次に、検知対象推定部23は、入力信号パラメータと、各検知対象の標準パラメータとの照合を開始する(S30)。これにより、検知対象推定部23は、各検知対象の推定度を算出することができる(S40)。
【0051】
次に、侵入者判定部24は、設置環境係数32を参照する(S50)。すなわち、各検知対象毎の「○」「×」を読み出す。
【0052】
そして、侵入者判定部24は、設置環境係数32により推定度を補正する(S60)。こうすることで、設置場所で想定される誤検知対象の推定度を大きな値に補正でき、人以外の誤検知対象が人であると誤検知することを抑制できる。
【0053】
侵入者判定部24は、例えば、補正後の推定度のうち最も高い推定度から検知対象物が人であると検知したか否かを判定する(S70)。人であると判定された場合(S70のYes)、警報出力部25は警報を出力する(S80)。
【0054】
以上説明したように、本実施例の監視装置100は、センサ部21の設置場所に応じて各設置環境係数32を設定することで、設置場所で出現が想定される誤検知対象を人でなく誤検知対象として検知でき、監視装置100の検知精度を向上できる。
【実施例2】
【0055】
本実施例では、設置環境係数32を最適化又は変化させることができる監視装置100について説明する。実施例1では、推定度を設置環境係数32で補正したが、設置環境係数32は固定であった。例えば、棚上付近に設置したセンサ部21の近傍をネズミが通過し、検知対象推定部23が人とネズミとで拮抗した推定度を算出する場合、実施例1により誤検知を抑制できる。
【0056】
しかし、誤検知対象によっては、その後、同じ誤検知対象が断続的に現れやすい傾向があることが知られている。このような場合、実施例1によれば、誤検知対象が断続的に検知される毎に、侵入者判定部24により誤検知を抑制できるが、同じ誤検知対象が断続的に現れやすいということを利用して、さらに高精度に誤検知を抑制できる。
【0057】
そこで、本実施例では、侵入者判定部24が例えばネズミと判断した場合、検知エリア内にネズミが存在するものと判断し、設置環境係数32を更新することで、ネズミによる誤報をより効果的に削減する。
【0058】
<設置環境係数32>
まず、本実施例の設置環境係数32について説明する。設置環境係数32には、設置時の周囲の環境を踏まえて初期値を設定しておく。設定方法は実施例1と同様である。
【0059】
図9は、本実施例の設置環境係数32を説明する図の一例である。最終的な設置環境係数32は図9(c)に示されている。図9(a)、(b)は、図9(c)を説明するための図である。(設定した係数の最大値を超えるか否かで、正規化するかどうかを判断する。最大値を上回る場合、最大値に丸め込むように正規化を行う。)
まず、発生頻度のランクを定める。ランクI〜Vは、予想される誤検知対象の発生頻度である。ランクIは「存在、痕跡が確認できる」、ランクIIは「存在、痕跡がそこそこ確認できる」、ランクIIIは「判断不能又は人」、ランクIVは「存在、痕跡がほとんど確認できない」、ランクVは「存在し得ない」である。
【0060】
設置者等がランクに応じて仮の設置環境係数32を定める。仮の設置環境係数32は例えば実験的に定めておく。
【0061】
ここで、人の設置環境係数32は「1.0」で固定である。このため、人以外の誤検知対象の設置環境係数32を過度に大きくすると人の検知が困難になってしまう。そこで、本実施例では設置環境係数32の最大値を「2.0」とする。
【0062】
次に、設置場所に応じて、ランクI〜Vを各誤検知対象に割り当てる。設置場所に応じて誤検知対象の出現頻度は想定可能なので、設置者等がランクI〜Vを各誤検知対象に割り当てることができる。図9(b)では、小動物(センサ遠方)はランクI、小動物(センサ近傍)がランクII、カーテンの揺れがランクIII、空調風がランクIV、太陽光がランクV、その他がランクIIIである。
【0063】
図9(b)のような初期値に対し、監視装置100は誤検知対象を検知する度に、設置環境係数を再計算して更新する。例えば、侵入者判定部24が小動物(センサ近傍)と判定した場合の計算例は次のようになる。
【0064】
S1)小動物(センサ近傍)を検知。
侵入者判定部24は推定度又は設置環境係数にて補正した推定度に基づき、補正値を決定する。この補正値は「1」より大きな値であり、推定度が高いほど大きな値になるようテーブル又はマップ状に定められている。ここでの補正値は「1.2」とする。
【0065】
S2)設置環境係数再計算部27は、補正値を用いて設置環境係数を再計算する。
再計算後の設置環境係数(2.16)=設置環境係数(1.8)×補正値(1.2)
S3)設置環境係数再計算部27は、上記の最大値「2.0」を超える設置環境係数がある場合、「1.0」を超える全ての設置環境係数を正規化する。図9(c)では「小動物(センサ近傍)=2.16」が最大値「2.0」を超えているので、設置環境係数再計算部27は、設置環境係数が「1.0」を超えている「小動物(センサ近傍)」と「小動物(センサ遠方)=1.40」の設置環境係数を再計算する。
【0066】
設置環境係数再計算部27は、「小動物(センサ近傍)」の設置環境係数を「2.16→2.0」に置き換え、「小動物(センサ遠方)」の設置環境係数を「1.40 → (2.16/2.0)×1.40=1.30(小数第3位四捨五入)」に置き換える。
【0067】
このように、設置環境係数32を設定することで、人の設置環境係数32を変えず、かつ、人以外の誤検知対象の設置環境係数32を過度に大きくすることもなく、各誤検知対象の想定される出現頻度に応じて設置環境係数32を定めることができる。
【0068】
本実施例の監視装置100は、図9(c)の設置環境係数32において、一度、侵入者判定部24が侵入したと判定した誤検知対象の設置環境係数32を大きい値に更新することで、同じ誤検知対象による誤報をより効果的に削減することができる。
【0069】
<設置環境係数32の再計算>
図10は、監視装置100の概略構成図の一例を示す。図10において図3と同一構成部には同一の符号を付しその説明は省略する。図10の監視装置100は、設置環境係数再計算部28を有する点で図3と異なる。
【0070】
設置環境係数再計算部28は、侵入者判定部24が侵入者と判定した誤検知対象の、設置環境係数32を再計算して更新する。例えば、小動物(センサ遠方)が検知された場合、設置環境係数再計算部28は、小動物(センサ遠方)の設置環境係数32を予め定めた値だけ大きくする。例えば、20%ずつ大きくするのであれば、次式を用いて更新する。
設置環境係数 ← 設置環境係数×1.2
また、設置環境係数再計算部28は、再度、小動物(センサ遠方)が検知されると、設置環境係数32を再度大きくする。これを繰り返すことで、出現頻度の高い誤検知対象をより検知し易くできる。
【0071】
なお、設置環境係数32の最大値は「2.0」と定められているので、設置環境係数再計算部28は、最大値を超えない範囲で設置環境係数32を更新する。また、このように再計算するのでなく、検知回数と設置環境係数32を対応づけたテーブルを用意しておき、検知回数に応じて設定環境計数を更新してもよい。
【0072】
〔動作手順〕
図11は、監視装置100の侵入者判別順を示すフローチャート図の一例である。図11の手順のうち、ステップS50までの処理は図8と同様である。S40で検知対象推定部23が、各検知対象の推定度を算出すると、侵入者判定部24は、設置環境係数32を参照する(S50)。本実施例では、侵入者判定部24は0〜1.5の設置環境係数32を読み出す。
【0073】
そして、侵入者判定部24は、設置環境係数32により推定度を補正する(S60)。侵入者判定部24は、各検知対象の推定度に、対応する設置環境係数32を乗じるので、「1」より大きい設置環境係数32を乗じれば推定度は大きくなるように補正され、「1」より小さい設置環境係数32を乗じれば推定度は小さくなるように補正される。
【0074】
こうすることで、設置場所で想定される誤検知対象の推定度を上げることができ、人以外の誤検知対象が人であると誤検知することを抑制できる。
【0075】
侵入者判定部24は、例えば、補正後の推定度のうち最も高い推定度から検知対象物が人であると検知されたか否かを判定する(S70)。人であると判定された場合(S70のYes)、警報出力部25は警報を出力する(S80)。
【0076】
人であると判定されない場合(S70のNo)、設置環境係数再計算部28は、侵入者判定部24が侵入したと判定した誤検知対象の設置環境係数32を再計算して、更新する(S90)。
【0077】
こうすることで、一度現れた誤検知対象が再度現れた場合、さらに高精度に誤検知を抑制できる。
【0078】
〔設置環境係数32の現状復帰〕
再計算により更新された設置環境係数32はそのままでもよいが、設置環境は一時的に変動しても元に戻ると考えられるので、設置環境係数32を現状復帰することが好ましい場合がある。
【0079】
図12は、設置環境係数32の現状復帰を模式的に説明する図の一例である。元の設置環境係数32が「1.4」である場合、設置環境係数再計算部28は、誤検知対象の検知の度に設置環境係数32を大きくする。図12では2回の検知により最大値である「2.0」に到達した。
【0080】
このような状態で、2回目の検知が最後の検知であった場合、設置環境係数再計算部28は、時間と共に、徐々に設置環境係数32を小さくし、元の設置環境係数32の値まで戻す。図では単位時間毎に階段状に設置環境係数32を小さくしているが、連続的に(より滑らかに)小さくしてもよい。設置環境係数再計算部28は、誤検知対象を最後に検知してからの経過時間を計測しており、設置環境係数32を徐々に小さくしていく。こうすることで、各設置環境に好適に定められた設置環境係数32に復帰させることができる。
【0081】
元の設置環境係数32の値に戻す過程で、再度、誤検知対象が検知された場合、設置環境係数再計算部28は、検知された時の設置環境係数32を基準に設置環境係数32を再計算する。
【0082】
なお、設置環境係数32を現状復帰するか否かは、各監視装置100毎に設定可能であることが好ましい。また、どの程度の早さで設置環境係数32を復帰させるかも監視装置100毎に設定可能であることが好ましい。
【0083】
設置環境係数32を現状復帰することで、設置環境の一時的な変動に対応して設置環境係数32を最適化することができ、変動が収まると元の設置環境係数32に戻すことができる。
【実施例3】
【0084】
実施例2では、センサユニット11が1つであることを想定したが、センサユニット11が複数あっても、同様に設置環境係数32の再計算が有効である。
【0085】
図13は、比較的広い空間における監視装置100の構成の一例を示す図である。図13では4つのセンサユニット11A〜11Dに1つのコントローラ12が接続されている。広い空間には、このように複数のセンサユニット11A〜11Dが配置されることがあるが、連続した1つの空間であれば、1つのセンサユニット11が検知した誤検知対象が他のセンサユニット11にも検知される可能性が高い。このため、再計算された設置環境係数32を、複数のセンサユニット11A〜11Dで共通に使用することが好適となる。
【0086】
図14は、本実施例の監視装置100の概略構成図の一例を示す。図14において図10と同一構成部には同一の符号を付しその説明は省略する。図14の監視装置100は、センサユニット11A〜11Dに共通のコントローラ12が設けられている。図14のような構成にすることで、1つのセンサユニット11が検知した誤検知対象を、他のセンサユニット11が検知した場合、侵入者判定部24は既に再計算された設置環境係数32にて検知対象物を判定するので、さらに高精度に誤検知を抑制できる。
【0087】
また、図15は、本実施例の監視装置100の別の概略構成図の一例を示す。図15では、センサユニット21を共通化することなく、複数の監視装置100がそれぞれ独立に構成されている。コントローラ12A、12Bは互いに有線又は無線で通信可能であり、一方の設置環境係数32が更新されると、設置環境係数32を更新したコントローラ12Aが他方のコントローラ12Bに設置環境係数32を送信する。したがって、図14の監視装置100と同様に、一方のコントローラ12Aが既に誤検知対象を検知した場合、他方のコントローラ12Bがさらに高精度に誤検知を抑制できる。図では監視装置100が2つしかないが、同じ誤検知対象を検知しうる3つ以上の監視装置100に対しても同様に実現できる。
【0088】
以上、実施例1〜3にて説明しように、本実施形態の監視装置100は、設置場所で出現が想定される誤検知対象を人でなく誤検知対象として検知でき、監視装置100の検知精度を向上できる。また、一度、検知された誤検知対象について、さらに高精度に誤検知を抑制できる。また、複数の監視装置100にて誤検知対象の検知結果を共有できる。
【符号の説明】
【0089】
11 センサユニット
12 コントローラ
21 センサ部
22 信号解析部
23 検知対象推定部
24 侵入者判定部
25 警報出力部
26 検知対象モデル格納部
27 設置環境係数格納部
28 設置環境係数再計算部
32 設置環境係数
100 監視装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間環境の変化を監視する監視装置に関し、特に、誤報を抑制した空間監視装置及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の空間に人が侵入したかどうかを監視する監視装置では、例えば赤外線センサの検知信号を解析して人が空間に侵入したことを検知する。赤外線センサは人以外にも赤外線を発する有体物や無体物(以下、「誤検知対象」という)を検知可能であるが、誤検知対象を人として誤検知することは好ましくない。このため、監視装置の検知精度を向上させる技術が考えられている(特許文献1、2参照。)。
【0003】
特許文献1には、複数の焦電素子がそれぞれ独立した検知エリアを形成する受動式赤外線センサを用いて、各焦電素子による検知信号の電圧レベルの比較から検知対象の高さを検知することで、小動物による誤報を排除する侵入物体判定方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、焦電素子の出力を統計的に解析し、検知対象の形状(大人、子供、犬など)、移動方向及び動作などを推定する動作パターンモデル生成装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、焦電素子の出力に時系列解析やニューラルネット技術を適用して特徴量を抽出し、パターン識別を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3093834号公報
【特許文献2】特開2006−346180号公報
【特許文献3】特開2006−346180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された侵入物体判定方法では、焦電素子の電圧レベルへの依存度が高いため、次のような問題がある。
図1は、赤外線センサと検知エリアの一例を示す図である。床を歩行する小動物と赤外線センサは離れているので、各焦電素子による検知信号の電圧レベルの比較により、誤検知対象であることを判別できる可能性がある。しかし、センサに近い棚31を歩行する小動物は、検知エリアに占める温度変化領域が広範囲に渡るため、複数の焦電素子から高い電圧が同時に出力され、小動物を人と誤検知するおそれがある。センサと誤検知対象が近い場合だけでなく、例えば、熱せられたカーテンがセンサの検知エリア内で揺れるなどした状況でも、特許文献1記載の侵入物体判定方法では誤検知するおそれがある。
【0008】
また、特許文献2記載の動作パターンモデル生成装置、及び、特許文献3記載のパターン識別技術は、確率的に検知対象を推定するため、高精度に検知対象を識別するパターン認識技術であっても、完全に誤検知を防ぐことはできなかった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑み、人以外を人と誤検知することを低減し、人の検知精度を向上させた監視装置及び監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、空間環境の変化を検出するセンサと、前記センサの信号から前記空間環境を変化させた各検知対象物の推定度を算出する検知対象推定手段と、を有する空間の監視装置であって、人以外の前記検知対象物に対応づけて、重み付け情報を記憶した重み付け情報記憶手段と、前記検知対象推定手段が推定した前記検知対象物に対応づけられた前記重み付け情報により、各検知対象物の前記推定度を重み付けして、前記空間環境を変化させた前記検知対象物を特定する検知対象物特定手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
人以外を人と誤検知することを低減し、人の検知精度を向上させた監視装置及び監視方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】赤外線センサと検知エリアの一例を示す図である。
【図2】監視装置の概略を説明する図の一例である。
【図3】監視装置の概略構成図の一例である。
【図4】信号解析部、検知対象推定部、及び、侵入者判定部の配置例を説明する図の一例である
【図5】検知信号の一例を模式的に説明する図の一例である。
【図6】検知信号の一例を模式的に説明する図の一例である。
【図7】設置環境係数の一例を示す図である
【図8】監視装置が侵入者を判定する手順を示すフローチャート図の一例である。
【図9】設置環境係数を説明する図の一例である(実施例2)。
【図10】監視装置の概略構成図の一例である(実施例2)。
【図11】監視装置が侵入者を判定する手順を示すフローチャート図の一例である(実施例2)。
【図12】設置環境係数の現状復帰を模式的に説明する図の一例である。
【図13】比較的広い空間における監視装置の構成の一例を示す図である。
【図14】監視装置の概略構成図の一例を示す(実施例3)。
【図15】監視装置の別の概略構成図の一例である(実施例3)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例1】
【0014】
図2は、本実施形態の監視装置100の概略を説明する図の一例である。本実施形態の監視装置100は、設置環境係数32を利用して人以外の誤検知対象の推定度を補正することで、誤検知対象が選択される選択率を引き上げることが特徴の1つである(以下、人と誤検知対象を含めて「検知対象物」という。)。
【0015】
監視装置100のセンサユニットは、ユーザの事情に応じて極めて多様な設置場所に設置される。設置場所は、例えば、厨房、倉庫、玄関、リビング、オフィス、店頭、エントランス等であるが、その1つの厨房に着目してもその状況はユーザによって千差万別である。また、誤検知対象としては、例えば、ネズミや猫などの小動物、エアコンの空調風、太陽光、カーテンなど、様々なものが挙げられる。
【0016】
このため、監視装置100が誤検知しやすい誤検知対象はセンサユニットの設置場所によって様々である。例えば、設置場所が厨房であれば、監視装置100はネズミなどの小動物を人だと誤検知する可能性があり、エアコンの設置された部屋であれば、監視装置100は空調風を人だと誤検知する可能性がある。
【0017】
本発明は、監視装置100のセンサユニットが設置される場所で検知されうる検知対象物の情報を用いて、精度良く検知対象物を判別しようとするものである。
【0018】
そこで、本実施形態の監視装置100は、監視装置100の設置場所に最適化された設置環境係数32を記憶しておくことで、人と誤検知対象の峻別を可能にする。設置環境係数32については後述するが、設置環境係数32には、設置場所において各誤検知対象の出現が想定される程度が登録されている。
【0019】
監視装置100は、センサ信号を解析することで、ある程度の確度で人と誤検知対象の推定(推定度の算出)が可能である。したがって、この推定結果を設置環境係数32にて補正することで、誤検知対象の選択率を引き上げることができる。こうすることで、出現が想定される誤検知対象を人でなく誤検知対象として検知でき、人の侵入に対してのみ警報を発生することが可能になる。
【0020】
〔監視装置100の構成〕
図3は、監視装置100の概略構成図の一例を示す。監視装置100は、センサユニット11とコントローラ12に大きく分けることができる。センサユニット11は、センサ部21及び信号解析部22を有し、コントローラ12は、検知対象推定部23、侵入者判定部24、警報出力部25、検知対象モデル格納部26及び設置環境計数格納部27を有する。
【0021】
なお、図示する構成は一例であるので、コントローラ12の構成についていくつかの構成例を挙げておく。
図4は、信号解析部22、検知対象推定部23、及び、侵入者判定部24の配置例を説明する図の一例である。構成1は、信号解析部22、検知対象推定部23、及び、侵入者判定部24が全てセンサユニット11に配置される構成であり、構成2は、信号解析部22及び検知対象推定部23がセンサユニット11に配置され、侵入者判定部24はコントローラ12に配置される構成であり、構成3は、信号解析部22がセンサユニット11に配置され、検知対象推定部23及び侵入者判定部24はコントローラ12に配置される構成である。本実施例の監視装置100は構成3を採用している。
【0022】
〔センサユニット11〕
センサ部21は、赤外線の受光量を電圧に変換してその変化量(微分型)に基づき人を検知する、パッシブ型(受動式)の赤外線センサである。センサ部21は、例えば、天井や壁に固定されており、有線又は無線で信号解析部22と接続されている。
【0023】
センサ部21は、主に、焦電素子と光学系とを有し、光学系により集光した光を焦電素子が受光するように構成されている。光学系は例えば凹面ミラーやフレネルレンズであり、凹面ミラーやフレネルレンズに光が入射する領域がセンサ部21の検知エリアとなる。焦電素子により受光された光は電圧に変換され、信号解析部22に送出される。
【0024】
信号解析部22はセンサ部21から取得した検知信号を解析して、コンピュータによる取り扱いが可能な入力信号パラメータを生成する。人が検知エリアに侵入することや、検知エリアで移動すること等により、検知信号は時間に対し増減する。
【0025】
図5、6は、検知信号の一例を模式的に説明する図の一例である。図5(a)は、センサの検知エリアと人の検知例を模式的に、図5(b)は人の検知信号の一例をそれぞれ示す。まず、センサ部21は、上下方向に1対のビーム状のゾーンA、Bが空間を離散的に走査するように検知エリアを形成している。ゾーンAは空間の上側に、ゾーンBは空間の下方を検知エリアにしている。なお、図では上下方向しか示されていないが、センサ部21を中心とする平面方向(上下方向に直交する方向)にゾーンA、Bが広がっている。
【0026】
人が検知エリアに侵入した場合、センサ部21はゾーンAとゾーンBの両方にて人を検知する。つまり、検知信号はゾーンAとBからそれぞれ検知されるので、図5(b)に示すように、人が検知エリアを移動すれば、ゾーンAとゾーンBの両方から同傾向の検知信号が時間的に同時に検知される。
【0027】
これに対し、図6(a)に示すように、小動物が検知エリアを移動する場合、小動物の体長や体高を踏まえると、ゾーンAとゾーンBの両方を同時に移動することはないので、センサ部21は、いずれかのゾーンから検知信号を出力する。図6(b)は小動物の検知信号の一例を示す図である。図5(b)と比較すると、ピーク間の距離や形状が異なっている。不図示であるが、同様に、センサ部21の近くを移動する小動物、揺れるカーテン、空調風、及び、太陽光を、センサ部21が検知した場合の検知信号もそれぞれ特徴的な波形を示す。
【0028】
このような波形の解析に(ファスト)フーリエ変換が知られている。図3に戻り、信号解析部22は、フーリエ変換を適用して、検知信号に含まれる周波数成分及び各周波数成分の強度から入力信号パラメータを生成する。フーリエ変換の結果には、電圧のレベル、センサ部21と人(又は誤検知対象)との距離、移動速度等の情報が含まれる。したがって、例えば、フーリエ変換の結果を所定の周波数毎にサンプリングするなどして入力信号パラメータを生成することができる。
【0029】
なお、本実施例の信号解析では検知信号から特徴的なパラメータを抽出できればよく、例えば、検知信号の最大振幅、検知信号の最小振幅、ピーク間距離、積分値等を抽出してもよい。
【0030】
このように、理想的な状態では、人と小動物では検知信号が異なるので、監視装置100はある程度の精度で人と誤検知対象(小動物等)を推定できる。しかし、これらの検知対象物の波形だけから、人と誤検知対象を完全に区別することは困難である。
【0031】
〔コントローラ12〕
検知対象推定部23及び侵入者判定部24は、LSI(ASIC、FPGA)などの集積回路や、プログラムを実行するマイコンなどを実体とする。また、検知対象モデル格納部26及び設置環境係数格納部27は、LSIやマイコンの不揮発メモリに記憶されている。検知対象推定部23は検知対象モデル格納部26にアクセスでき、侵入者判定部24は設置環境係数格納部27にアクセスできる。
【0032】
検知対象推定部23は、信号解析部22が解析した入力信号パラメータと、検知対象モデル格納部26に記憶された標準パラメータを比較して、誤検知対象を推定する。検知対象モデル格納部26に記憶された標準パラメータは、人や誤検知対象が実際に検知エリアに侵入した際に、信号解析部22が生成した標準的なパラメータである。理想的な又は平均的な標準パラメータを得るため、人や誤検知対象を検知エリアの内外で何回か実動作させ、信号解析部22が検知信号から特徴的な又は平均的な標準パラメータを生成する。
【0033】
本実施例では、人に加え、一例として、猫、ネズミ、空調風、太陽光、隙間風、カーテンの揺れなどの誤検知対象の標準パラメータが予め生成されている。
【0034】
検知対象推定部23は、入力信号パラメータと各標準パラメータを比較する。例えば、パターンマッチングにより、類似度を算出し、類似度に応じて推定度を算出する。また、検知対象推定部23は、入力信号パラメータと、小動物(センサ遠方)、小動物(センサ近傍)、カーテンの揺れ、空調風及び太陽光の標準パラメータそれぞれとのマハラノビス距離を算出し、マハラノビス距離に応じて、各検知対象物の推定度を算出してもよい。
【0035】
推定度は、例えば、検知対象物毎の百分率やパーセントのように数値化されており、本実施例では一例として推定度が高いほど、検知された可能性が高い検知対象物であることを意味するものとする。
【0036】
<設置環境係数>
次に、侵入者判定部24は、設置環境係数格納部27に格納された設置環境係数32を参照して、侵入者を判定する。
図7は、設置環境係数32の一例を示す図である。設置環境係数32は、設定環境にて想定される誤報要因を、誤検知対象毎に数値化したものである。例えば、設置場所が棚上付近の場合、誤検知対象として棚31の上を移動する小動物が想定される。このため、設置場所が棚上付近の監視装置100では、センサ近傍の小動物の設置環境係数32を高くする。なお、図7では、設置環境係数32を「○」「×」で示した。「○」は例えば「1.5」〜「1.0」等、対応する誤検知対象の推定度を高める係数を意味し、「×」は例えば「0.9」〜「0.0」等、対応する誤検知対象の推定度を低める係数を意味する。本実施例では「○」「×」の二値として説明する。
【0037】
同様に、センサ部21の設置場所が窓際付近の場合(カーテンが備えられている)、誤検知対象として揺れるカーテンが想定される。このため、センサ部21の設置場所がカーテンのある窓際付近の監視装置100では、カーテンの揺れの設置環境係数32を大きくする(「○」)にする。同様に、設置場所が部屋中心部付近の場合(エアコンのある部屋)、センサ部21がエアコンの風を直接的又は間接的に検知する可能性がある。このため、センサ部21の設置場所がエアコンのある部屋の中心部の監視装置100では、空調風の設置環境係数32を大きくする(「○」)にする。同様に、センサ部21が窓方向を向いて設置された場合、センサ部21が太陽光により暖められた床や窓を検知する可能性がある。このため、センサ部21の設置場所が窓方向を向いている監視装置100では、太陽光の設置環境係数32を大きくする(「○」)にする。同様に、センサ部21の設置場所が倉庫内の場合、センサ部21が、倉庫内を移動するネズミや猫などの小動物、及び、倉庫内を飛行する鳥を検知する可能性がある。このため、センサ部21の設置場所が倉庫内の監視装置100では、小動物(センサ遠方)及び小動物(センサ近傍)の設置環境係数32を大きくする(「○」)にする。
【0038】
こうすることで、検知対象推定部23の推定結果(推定度)を実際の設置環境に応じて補正することができ、様々な設置環境で誤検知が想定される誤検知対象を誤検知対象として検知することが可能となる。なお、図7の設置環境係数32は、あくまで一例であり、誤検知対象や「○」「×」の位置は適宜設定できる。
【0039】
<設置環境係数の設定>
監視装置100に設置環境係数32を設定する方法について説明する。方法の1つには、設置場所において、設置者が設定する方法がある。設置者は、例えば、パソコンなどの端末を使って、センサ部21の設置時の周囲の環境と予想される誤検知対象の有無とを考慮して、誤検知対象毎に「○」「×」を設定する。この場合、センサ部21の設置後に、設置場所に最適な設置環境係数32を登録することができるとともに、設置環境の変化に応じて設置環境係数32を修正することが可能である。
【0040】
また、監視装置100の出荷時に不揮発メモリに記憶させておく方法がある。この場合、各設置場所向けに監視装置100が出荷される。出荷後の設置環境係数32の書き換えを防止でき、セキュリティが向上する。
【0041】
また、監視装置100が警備会社のセンターと通信事業者の回線やインターネットにより接続されていることを利用して、警備会社のセンターが、個別の監視装置100に設置環境係数32を新たに登録したり更新する方法がある。この場合、センサ部21の設置後に、設置場所に最適な設置環境係数32を登録することができる。
【0042】
<推定度の補正例>
設置環境係数32による推定結果の補正の一例を説明する。例えば、センサ部21が棚上付近に設置された監視装置100の検知対象推定部23が検知対象物の各推定度を以下のように算出したとする。
「人:30% 小動物(センサ遠方):5% 小動物(センサ近傍):30% カーテンの揺れ:5% 空調風:25% 太陽光:5%」
この推定結果では、人、小動物(センサ近傍)、空調風の推定度が拮抗している。このような推定結果に対し、監視装置100は、侵入者の検知漏れを防止するため、推定度が拮抗した場合には検知対象を「人」とみなす場合がある。このため誤検知となる場合もあった。
【0043】
本実施例では、侵入者判定部24は、設置環境係数32で「×」が登録された誤検知対象の推定結果をほぼ「0%」にする。したがって、小動物(センサ遠方)、カーテンの揺れ、空調風、及び、太陽光が検知対象物として推定されることを排除することができる。また、侵入者判定部24は、設置環境係数32で「○」が登録された小動物(センサ遠方)の推定度を大きくなるように補正する(人の推定度は補正しないものとする)。これにより、例えば、小動物(センサ近傍)の推定度が「30%→50%」などに補正される。こうすることで、設置場所にて想定される誤検知対象の推定度を、設置環境係数32により大きな値に補正できる。
【0044】
よって、侵入者判定部24は、検知対象物が人でなく、センサ近傍を移動した小動物等の誤検知対象であると判定することができる。すなわち、設置環境係数32がない場合は、侵入者判定部24は誤検知対象を「人」であると誤検知するおそれがあったが、本実施例では設置環境係数32により想定される誤検知対象の推定度を大きくするので、誤検知対象を誤検知対象として検知でき、誤報を抑制できる。
【0045】
警報出力部25は、侵入者判定部24が侵入者を検知した場合に、警報音を吹鳴するスピーカや、設定場所の異常検知信号を警備会社のセンターに通知する通信装置である。異常検知信号には、契約者の識別情報が含まれており、警備会社のセキュリティアドバイザーがセンサ部21の設置場所に急行することができる。
【0046】
〔動作手順〕
図8は、監視装置100が侵入者を判定する手順を示すフローチャート図の一例である。図8の手順は、例えば、契約者が監視装置100を監視モードに設定することでスタートする。
【0047】
センサ部21は、例えばサイクル時間毎に、焦電センサが検知する信号レベル(電圧レベル)を監視し、信号レベルが閾値以上か否かを判定する(S10)。信号レベルが閾値以上でない場合(S10のNo)、センサ部21は信号レベルの監視を繰り返す。
【0048】
信号レベルが閾値以上の場合(S10のYes)、センサ部21と信号解析部22が信号解析モードに移行する(S20)。
【0049】
信号解析部22は、信号レベルが閾値以上の場合(S10のYes)、センサ部21と信号解析部22が信号解析モードに移行する(S20)。信号解析部22は、センサ部21が検知した検知信号を解析して入力信号パラメータを生成する。
【0050】
次に、検知対象推定部23は、入力信号パラメータと、各検知対象の標準パラメータとの照合を開始する(S30)。これにより、検知対象推定部23は、各検知対象の推定度を算出することができる(S40)。
【0051】
次に、侵入者判定部24は、設置環境係数32を参照する(S50)。すなわち、各検知対象毎の「○」「×」を読み出す。
【0052】
そして、侵入者判定部24は、設置環境係数32により推定度を補正する(S60)。こうすることで、設置場所で想定される誤検知対象の推定度を大きな値に補正でき、人以外の誤検知対象が人であると誤検知することを抑制できる。
【0053】
侵入者判定部24は、例えば、補正後の推定度のうち最も高い推定度から検知対象物が人であると検知したか否かを判定する(S70)。人であると判定された場合(S70のYes)、警報出力部25は警報を出力する(S80)。
【0054】
以上説明したように、本実施例の監視装置100は、センサ部21の設置場所に応じて各設置環境係数32を設定することで、設置場所で出現が想定される誤検知対象を人でなく誤検知対象として検知でき、監視装置100の検知精度を向上できる。
【実施例2】
【0055】
本実施例では、設置環境係数32を最適化又は変化させることができる監視装置100について説明する。実施例1では、推定度を設置環境係数32で補正したが、設置環境係数32は固定であった。例えば、棚上付近に設置したセンサ部21の近傍をネズミが通過し、検知対象推定部23が人とネズミとで拮抗した推定度を算出する場合、実施例1により誤検知を抑制できる。
【0056】
しかし、誤検知対象によっては、その後、同じ誤検知対象が断続的に現れやすい傾向があることが知られている。このような場合、実施例1によれば、誤検知対象が断続的に検知される毎に、侵入者判定部24により誤検知を抑制できるが、同じ誤検知対象が断続的に現れやすいということを利用して、さらに高精度に誤検知を抑制できる。
【0057】
そこで、本実施例では、侵入者判定部24が例えばネズミと判断した場合、検知エリア内にネズミが存在するものと判断し、設置環境係数32を更新することで、ネズミによる誤報をより効果的に削減する。
【0058】
<設置環境係数32>
まず、本実施例の設置環境係数32について説明する。設置環境係数32には、設置時の周囲の環境を踏まえて初期値を設定しておく。設定方法は実施例1と同様である。
【0059】
図9は、本実施例の設置環境係数32を説明する図の一例である。最終的な設置環境係数32は図9(c)に示されている。図9(a)、(b)は、図9(c)を説明するための図である。(設定した係数の最大値を超えるか否かで、正規化するかどうかを判断する。最大値を上回る場合、最大値に丸め込むように正規化を行う。)
まず、発生頻度のランクを定める。ランクI〜Vは、予想される誤検知対象の発生頻度である。ランクIは「存在、痕跡が確認できる」、ランクIIは「存在、痕跡がそこそこ確認できる」、ランクIIIは「判断不能又は人」、ランクIVは「存在、痕跡がほとんど確認できない」、ランクVは「存在し得ない」である。
【0060】
設置者等がランクに応じて仮の設置環境係数32を定める。仮の設置環境係数32は例えば実験的に定めておく。
【0061】
ここで、人の設置環境係数32は「1.0」で固定である。このため、人以外の誤検知対象の設置環境係数32を過度に大きくすると人の検知が困難になってしまう。そこで、本実施例では設置環境係数32の最大値を「2.0」とする。
【0062】
次に、設置場所に応じて、ランクI〜Vを各誤検知対象に割り当てる。設置場所に応じて誤検知対象の出現頻度は想定可能なので、設置者等がランクI〜Vを各誤検知対象に割り当てることができる。図9(b)では、小動物(センサ遠方)はランクI、小動物(センサ近傍)がランクII、カーテンの揺れがランクIII、空調風がランクIV、太陽光がランクV、その他がランクIIIである。
【0063】
図9(b)のような初期値に対し、監視装置100は誤検知対象を検知する度に、設置環境係数を再計算して更新する。例えば、侵入者判定部24が小動物(センサ近傍)と判定した場合の計算例は次のようになる。
【0064】
S1)小動物(センサ近傍)を検知。
侵入者判定部24は推定度又は設置環境係数にて補正した推定度に基づき、補正値を決定する。この補正値は「1」より大きな値であり、推定度が高いほど大きな値になるようテーブル又はマップ状に定められている。ここでの補正値は「1.2」とする。
【0065】
S2)設置環境係数再計算部27は、補正値を用いて設置環境係数を再計算する。
再計算後の設置環境係数(2.16)=設置環境係数(1.8)×補正値(1.2)
S3)設置環境係数再計算部27は、上記の最大値「2.0」を超える設置環境係数がある場合、「1.0」を超える全ての設置環境係数を正規化する。図9(c)では「小動物(センサ近傍)=2.16」が最大値「2.0」を超えているので、設置環境係数再計算部27は、設置環境係数が「1.0」を超えている「小動物(センサ近傍)」と「小動物(センサ遠方)=1.40」の設置環境係数を再計算する。
【0066】
設置環境係数再計算部27は、「小動物(センサ近傍)」の設置環境係数を「2.16→2.0」に置き換え、「小動物(センサ遠方)」の設置環境係数を「1.40 → (2.16/2.0)×1.40=1.30(小数第3位四捨五入)」に置き換える。
【0067】
このように、設置環境係数32を設定することで、人の設置環境係数32を変えず、かつ、人以外の誤検知対象の設置環境係数32を過度に大きくすることもなく、各誤検知対象の想定される出現頻度に応じて設置環境係数32を定めることができる。
【0068】
本実施例の監視装置100は、図9(c)の設置環境係数32において、一度、侵入者判定部24が侵入したと判定した誤検知対象の設置環境係数32を大きい値に更新することで、同じ誤検知対象による誤報をより効果的に削減することができる。
【0069】
<設置環境係数32の再計算>
図10は、監視装置100の概略構成図の一例を示す。図10において図3と同一構成部には同一の符号を付しその説明は省略する。図10の監視装置100は、設置環境係数再計算部28を有する点で図3と異なる。
【0070】
設置環境係数再計算部28は、侵入者判定部24が侵入者と判定した誤検知対象の、設置環境係数32を再計算して更新する。例えば、小動物(センサ遠方)が検知された場合、設置環境係数再計算部28は、小動物(センサ遠方)の設置環境係数32を予め定めた値だけ大きくする。例えば、20%ずつ大きくするのであれば、次式を用いて更新する。
設置環境係数 ← 設置環境係数×1.2
また、設置環境係数再計算部28は、再度、小動物(センサ遠方)が検知されると、設置環境係数32を再度大きくする。これを繰り返すことで、出現頻度の高い誤検知対象をより検知し易くできる。
【0071】
なお、設置環境係数32の最大値は「2.0」と定められているので、設置環境係数再計算部28は、最大値を超えない範囲で設置環境係数32を更新する。また、このように再計算するのでなく、検知回数と設置環境係数32を対応づけたテーブルを用意しておき、検知回数に応じて設定環境計数を更新してもよい。
【0072】
〔動作手順〕
図11は、監視装置100の侵入者判別順を示すフローチャート図の一例である。図11の手順のうち、ステップS50までの処理は図8と同様である。S40で検知対象推定部23が、各検知対象の推定度を算出すると、侵入者判定部24は、設置環境係数32を参照する(S50)。本実施例では、侵入者判定部24は0〜1.5の設置環境係数32を読み出す。
【0073】
そして、侵入者判定部24は、設置環境係数32により推定度を補正する(S60)。侵入者判定部24は、各検知対象の推定度に、対応する設置環境係数32を乗じるので、「1」より大きい設置環境係数32を乗じれば推定度は大きくなるように補正され、「1」より小さい設置環境係数32を乗じれば推定度は小さくなるように補正される。
【0074】
こうすることで、設置場所で想定される誤検知対象の推定度を上げることができ、人以外の誤検知対象が人であると誤検知することを抑制できる。
【0075】
侵入者判定部24は、例えば、補正後の推定度のうち最も高い推定度から検知対象物が人であると検知されたか否かを判定する(S70)。人であると判定された場合(S70のYes)、警報出力部25は警報を出力する(S80)。
【0076】
人であると判定されない場合(S70のNo)、設置環境係数再計算部28は、侵入者判定部24が侵入したと判定した誤検知対象の設置環境係数32を再計算して、更新する(S90)。
【0077】
こうすることで、一度現れた誤検知対象が再度現れた場合、さらに高精度に誤検知を抑制できる。
【0078】
〔設置環境係数32の現状復帰〕
再計算により更新された設置環境係数32はそのままでもよいが、設置環境は一時的に変動しても元に戻ると考えられるので、設置環境係数32を現状復帰することが好ましい場合がある。
【0079】
図12は、設置環境係数32の現状復帰を模式的に説明する図の一例である。元の設置環境係数32が「1.4」である場合、設置環境係数再計算部28は、誤検知対象の検知の度に設置環境係数32を大きくする。図12では2回の検知により最大値である「2.0」に到達した。
【0080】
このような状態で、2回目の検知が最後の検知であった場合、設置環境係数再計算部28は、時間と共に、徐々に設置環境係数32を小さくし、元の設置環境係数32の値まで戻す。図では単位時間毎に階段状に設置環境係数32を小さくしているが、連続的に(より滑らかに)小さくしてもよい。設置環境係数再計算部28は、誤検知対象を最後に検知してからの経過時間を計測しており、設置環境係数32を徐々に小さくしていく。こうすることで、各設置環境に好適に定められた設置環境係数32に復帰させることができる。
【0081】
元の設置環境係数32の値に戻す過程で、再度、誤検知対象が検知された場合、設置環境係数再計算部28は、検知された時の設置環境係数32を基準に設置環境係数32を再計算する。
【0082】
なお、設置環境係数32を現状復帰するか否かは、各監視装置100毎に設定可能であることが好ましい。また、どの程度の早さで設置環境係数32を復帰させるかも監視装置100毎に設定可能であることが好ましい。
【0083】
設置環境係数32を現状復帰することで、設置環境の一時的な変動に対応して設置環境係数32を最適化することができ、変動が収まると元の設置環境係数32に戻すことができる。
【実施例3】
【0084】
実施例2では、センサユニット11が1つであることを想定したが、センサユニット11が複数あっても、同様に設置環境係数32の再計算が有効である。
【0085】
図13は、比較的広い空間における監視装置100の構成の一例を示す図である。図13では4つのセンサユニット11A〜11Dに1つのコントローラ12が接続されている。広い空間には、このように複数のセンサユニット11A〜11Dが配置されることがあるが、連続した1つの空間であれば、1つのセンサユニット11が検知した誤検知対象が他のセンサユニット11にも検知される可能性が高い。このため、再計算された設置環境係数32を、複数のセンサユニット11A〜11Dで共通に使用することが好適となる。
【0086】
図14は、本実施例の監視装置100の概略構成図の一例を示す。図14において図10と同一構成部には同一の符号を付しその説明は省略する。図14の監視装置100は、センサユニット11A〜11Dに共通のコントローラ12が設けられている。図14のような構成にすることで、1つのセンサユニット11が検知した誤検知対象を、他のセンサユニット11が検知した場合、侵入者判定部24は既に再計算された設置環境係数32にて検知対象物を判定するので、さらに高精度に誤検知を抑制できる。
【0087】
また、図15は、本実施例の監視装置100の別の概略構成図の一例を示す。図15では、センサユニット21を共通化することなく、複数の監視装置100がそれぞれ独立に構成されている。コントローラ12A、12Bは互いに有線又は無線で通信可能であり、一方の設置環境係数32が更新されると、設置環境係数32を更新したコントローラ12Aが他方のコントローラ12Bに設置環境係数32を送信する。したがって、図14の監視装置100と同様に、一方のコントローラ12Aが既に誤検知対象を検知した場合、他方のコントローラ12Bがさらに高精度に誤検知を抑制できる。図では監視装置100が2つしかないが、同じ誤検知対象を検知しうる3つ以上の監視装置100に対しても同様に実現できる。
【0088】
以上、実施例1〜3にて説明しように、本実施形態の監視装置100は、設置場所で出現が想定される誤検知対象を人でなく誤検知対象として検知でき、監視装置100の検知精度を向上できる。また、一度、検知された誤検知対象について、さらに高精度に誤検知を抑制できる。また、複数の監視装置100にて誤検知対象の検知結果を共有できる。
【符号の説明】
【0089】
11 センサユニット
12 コントローラ
21 センサ部
22 信号解析部
23 検知対象推定部
24 侵入者判定部
25 警報出力部
26 検知対象モデル格納部
27 設置環境係数格納部
28 設置環境係数再計算部
32 設置環境係数
100 監視装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間環境の変化を検出するセンサと、
前記センサの信号から前記空間環境を変化させた各検知対象物の推定度を算出する検知対象推定手段と、を有する空間の監視装置であって、
人以外の前記検知対象物に対応づけて、重み付け情報を記憶した重み付け情報記憶手段と、
前記検知対象推定手段が推定した前記検知対象物に対応づけられた前記重み付け情報により、各検知対象物の前記推定度を重み付けして、前記空間環境を変化させた前記検知対象物を特定する検知対象物特定手段と、
を有することを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記検知対象物特定手段が特定した前記検知対象物に対応づけられた前記重み付け情報を、より大きな値に更新する重み付け情報更新手段、を有し、
前記検知対象物特定手段は、更新された前記重み付け情報により、各検知対象物の前記推定度を重み付けして、前記空間環境を変化させた前記検知対象物を特定する、
ことを特徴とする請求項1記載の監視装置。
【請求項3】
前記重み付け情報更新手段は、
前記検知対象物特定手段が前記検知対象物を特定する毎に、予め定めた値を超えない範囲で、徐々に前記重み付け情報を大きな値に更新する、
ことを特徴とする請求項2記載の監視装置。
【請求項4】
前記重み付け情報更新手段は、
前記検知対象物特定手段が前記検知対象物を特定した後、元の値を下限に前記重み付け情報を小さな値に更新する、
ことを特徴とする請求項2又は3記載の監視装置。
【請求項5】
連続した1つの空間に複数の前記センサ及び前記検知対象物推定手段を有し、
前記検知対象物特定手段は、前記重み付け情報更新手段が更新した前記重み付け情報により、複数の検知対象物推定手段が推定した各検知対象物の前記推定度を共通に重み付けして、前記空間環境を変化させた前記検知対象物を特定する、
ことを特徴とする請求項2〜4いずれか1項記載の監視装置。
【請求項6】
他の監視装置のいずれかの前記重み付け情報更新手段が更新した前記重み付け情報を取得し、
前記検知対象物特定手段は、前記検知対象物推定手段が推定した各検知対象物の前記推定度を、前記他の監視装置から取得した前記重み付け情報により重み付けして、前記空間環境を変化させた前記検知対象物を特定する、
ことを特徴とする請求項2〜4いずれか1項記載の監視装置。
【請求項7】
センサが空間環境の変化を検出するステップと、
検知対象推定手段が、前記センサの信号から前記空間環境を変化させた各検知対象物の推定度を算出するステップと、
検知対象物特定手段が、人以外の前記検知対象物に対応づけて、重み付け情報を記憶した重み付け情報記憶手段から、前記検知対象推定手段が推定した前記検知対象物に対応づけられた前記重み付け情報を読み出し、
各検知対象物の前記推定度を重み付けして、空間環境を変化させた前記検知対象物を特定するステップと、を有することを特徴とする監視方法。
【請求項1】
空間環境の変化を検出するセンサと、
前記センサの信号から前記空間環境を変化させた各検知対象物の推定度を算出する検知対象推定手段と、を有する空間の監視装置であって、
人以外の前記検知対象物に対応づけて、重み付け情報を記憶した重み付け情報記憶手段と、
前記検知対象推定手段が推定した前記検知対象物に対応づけられた前記重み付け情報により、各検知対象物の前記推定度を重み付けして、前記空間環境を変化させた前記検知対象物を特定する検知対象物特定手段と、
を有することを特徴とする監視装置。
【請求項2】
前記検知対象物特定手段が特定した前記検知対象物に対応づけられた前記重み付け情報を、より大きな値に更新する重み付け情報更新手段、を有し、
前記検知対象物特定手段は、更新された前記重み付け情報により、各検知対象物の前記推定度を重み付けして、前記空間環境を変化させた前記検知対象物を特定する、
ことを特徴とする請求項1記載の監視装置。
【請求項3】
前記重み付け情報更新手段は、
前記検知対象物特定手段が前記検知対象物を特定する毎に、予め定めた値を超えない範囲で、徐々に前記重み付け情報を大きな値に更新する、
ことを特徴とする請求項2記載の監視装置。
【請求項4】
前記重み付け情報更新手段は、
前記検知対象物特定手段が前記検知対象物を特定した後、元の値を下限に前記重み付け情報を小さな値に更新する、
ことを特徴とする請求項2又は3記載の監視装置。
【請求項5】
連続した1つの空間に複数の前記センサ及び前記検知対象物推定手段を有し、
前記検知対象物特定手段は、前記重み付け情報更新手段が更新した前記重み付け情報により、複数の検知対象物推定手段が推定した各検知対象物の前記推定度を共通に重み付けして、前記空間環境を変化させた前記検知対象物を特定する、
ことを特徴とする請求項2〜4いずれか1項記載の監視装置。
【請求項6】
他の監視装置のいずれかの前記重み付け情報更新手段が更新した前記重み付け情報を取得し、
前記検知対象物特定手段は、前記検知対象物推定手段が推定した各検知対象物の前記推定度を、前記他の監視装置から取得した前記重み付け情報により重み付けして、前記空間環境を変化させた前記検知対象物を特定する、
ことを特徴とする請求項2〜4いずれか1項記載の監視装置。
【請求項7】
センサが空間環境の変化を検出するステップと、
検知対象推定手段が、前記センサの信号から前記空間環境を変化させた各検知対象物の推定度を算出するステップと、
検知対象物特定手段が、人以外の前記検知対象物に対応づけて、重み付け情報を記憶した重み付け情報記憶手段から、前記検知対象推定手段が推定した前記検知対象物に対応づけられた前記重み付け情報を読み出し、
各検知対象物の前記推定度を重み付けして、空間環境を変化させた前記検知対象物を特定するステップと、を有することを特徴とする監視方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−215788(P2011−215788A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−82183(P2010−82183)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000202361)綜合警備保障株式会社 (266)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000202361)綜合警備保障株式会社 (266)
【Fターム(参考)】
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