説明

監視装置及び方法並びにプログラム、それを備えたガスタービン設備、及びガスタービン監視システム

【課題】特殊な計測機器なしに簡便にタービン効率変化量を算出すること。
【解決手段】圧縮機の入口側から供給される吸気空気が圧縮機において圧縮され圧縮空気となり燃焼器を介してタービンへ供給され、圧縮機から抽気されたタービンを冷却する冷却空気がタービンへ供給されるガスタービンに適用される監視装置10であって、所定期間における、圧縮機の入口側の吸気空気の流量変化量である圧縮機流量変化量、圧縮機の効率の変化量である圧縮機効率変化量、及びタービンの冷却空気の流量変化量であるタービン冷却空気量変化量を算出する第1算出部11と、圧縮機流量変化量と、圧縮機効率変化量と、タービン冷却空気量変化量とに基づいてタービン効率変化量を算出する第2算出部12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視装置及び方法並びにプログラム、それを備えたガスタービン設備、及びガスタービン監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なガスタービン発電プラントでは、ガスタービンは圧縮機、燃焼器、タービン及び発電機を有しており、圧縮機において高圧にされた空気と、熱交換器により高温となった燃料ガスとが燃焼器に送られて燃焼し、その燃焼ガスによりタービンを駆動して発電機を運転している。また、圧縮機から冷却空気を抽気し、抽気された冷却空気によりタービン側を冷却している。従来、こうしたガスタービンは、圧縮機へ流入される空気流量、圧縮機の効率、タービンを冷却する冷却空気の流量、及びタービン効率等によってガスタービン性能が判断できることが知られている。
例えば、特許文献1では、圧縮機の入口温度、圧縮機の入口圧力、圧縮機の出口温度、圧縮機の出口圧力に基づいて圧縮機効率を算出し、算出された圧縮機の効率を定格状態と比較することにより、圧縮機の損傷を判断し、圧縮機の効率を監視する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−257240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の方法では、圧縮機効率は監視できても、タービン冷却空気の流量やタービン効率が把握できないため、ガスタービン性能が正しく判断できないという問題があった。また、タービン効率の算出にはタービン入口温度の情報が必要となるが、タービン入口温度は約1400℃あり、通常の熱電対では対応不可能であるため特別な熱電対が必要となり、コストが増大するという問題があった。或いは、タービン入口温度を計測せず、ガスタービンの各機器の入口出口の状態量であるヒートバランスを計算することによりタービン入口温度を合わせ込み、得られたタービン入口温度の情報に基づいてタービン効率を算出することもできるが、ヒートバランス計算には多くのパラメータが必要となり、計算に時間がかかるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、特殊な計測機器なしに、簡便にタービン効率変化量を算出することのできる監視装置及び方法並びにプログラム、それを備えたガスタービン設備、及びガスタービン監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、圧縮機の入口側から供給される吸気空気が、前記圧縮機において圧縮され圧縮空気となり燃焼器を介してタービンへ供給され、前記圧縮機から抽気されたタービンを冷却する冷却空気がタービンへ供給されるガスタービンに適用される監視装置であって、所定期間における、前記圧縮機の入口側の前記吸気空気の流量変化量である圧縮機流量変化量、前記圧縮機の効率の変化量である圧縮機効率変化量、及び前記タービンの前記冷却空気の流量変化量であるタービン冷却空気量変化量を算出する第1算出手段と、前記圧縮機流量変化量と、前記圧縮機効率変化量と、前記タービン冷却空気量変化量とに基づいてタービン効率変化量を算出する第2算出手段とを備える監視装置を提供する。
【0007】
このような構成によれば、圧縮機の入口側から供給される所定期間の圧縮機流量変化量、圧縮機効率変化量、及びタービン冷却空気量変化量が算出され、これら変化量に基づいて、タービン効率変化量が算出される。
これにより、タービン効率を算出するのに必要とされるタービン入口温度を計測する特別な計測機器がなくても、簡便にタービン効率を算出することができる。また、このように所定期間の圧縮機流量変化量、圧縮機効率変化量、及びタービン冷却空気量変化量に基づいてタービン効率を算出するので、タービン効率を算出する時間を短縮することができる。また、このようにタービン効率変化量を算出することにより、タービンの動翼先端(チップ)と静翼との間の間隙(チップクリアランス)の状態、タービンの摩耗(溶融を含む)、デポジット(異物)の堆積、排気側圧損の増加、ディフューザの損傷等に問題が生じている可能性があることを把握することができる。
【0008】
上記監視装置における前記第2算出手段は、所定期間のガスタービン出力の変化量であるガスタービン出力変化量に対するそれぞれの重みづけ係数を乗算した前記圧縮機流量変化量と、前記圧縮機効率変化量と、前記タービン冷却空気量変化量とのそれぞれの和を前記ガスタービン出力変化量から減算し、前記タービン効率変化量を算出することが好ましい。
圧縮機流量変化量と圧縮機効率変化量とタービン冷却空気量変化量のそれぞれにおいてガスタービン出力変化量に対する重みづけが加味された上でタービン効率変化量が算出されるので、正確にガスタービン出力変化量の内訳を把握することができる。また、内訳が把握できることにより、対応策の具体的な提案が可能となる。
【0009】
上記監視装置における前記第1算出手段は、所定期間の圧縮機出口圧力の変化量である圧縮機出口圧力変化量に基づいて算出される前記圧縮空気のタービン入口流量変化量と、前記圧縮機流量変化量とに基づいて、前記タービン冷却空気量変化量を算出することとしてもよい。
これにより、タービンに供給される冷却空気の変化量を計測するための流量計や特殊な計測なしに、簡易的にタービン冷却空気量変化量を算出できる。また、圧縮空気のタービン入口流量変化量とは、タービン入口に導入される圧縮空気の流量変化量のことである。タービン入口流量という場合には、タービン入口空気と燃料とが燃焼した燃料ガスを示すこともあるが、本発明においては異なる意味を有し、燃料を含まない空気の流量を示す。
【0010】
上記監視装置は、前記第1算出手段は、ガスタービン吸気に取り付けられたインデックス差圧計から計測されるインデックス差圧に基づいて、前記圧縮機の入口側の前記吸気空気の流量である圧縮機入口流量及び前記圧縮機流量変化量を算出することとしてもよい。
これにより、簡便に圧縮機入口流量を算出することができる。
【0011】
上記監視装置において、前記タービン冷却空気量変化量が所定の閾値を上回った場合には、タービン内のシールが劣化したこととして判定する劣化判定手段を備えることとしてもよい。
このように、タービン冷却空気量変化量に基づいてタービン内の所定部品(シール)の劣化が判定され、タービン性能を左右する情報を簡便に得ることができる。また、タービン冷却空気量変化量に基づいて劣化箇所を推定することができるので、顧客に対して推定される劣化箇所の部品交換等、より具体的な提案ができる。
【0012】
本発明は、上記いずれかに記載の監視装置とガスタービンとを備えたガスタービン設備を提供する。
【0013】
本発明は、上記いずれかに記載の監視装置とガスタービンとを備えたガスタービン監視システムであって、前記監視装置は、前記ガスタービンとネットワークを介して接続されており、前記ガスタービンが設けられる位置から遠隔地に備えられるガスタービン監視システムを提供する。
ガスタービンが発電所に設けられ、上記記載の監視装置がガスタービンの状態を監視する、発電所から遠隔の地にある管理会社に設けられる場合であっても、管理会社はネットワークを介してガスタービンの性能を判断できる情報を得ることができる。これにより、監視装置が備えられた管理会社は、ガスタービンを遠隔監視することができる。
【0014】
本発明は、圧縮機の入口側から供給される吸気空気が、前記圧縮機において圧縮され圧縮空気となり燃焼器を介してタービンへ供給され、前記圧縮機から抽気されたタービンを冷却する冷却空気がタービンへ供給されるガスタービンに適用される監視方法であって、所定期間における、前記圧縮機の入口側の前記吸気空気の流量変化量である圧縮機流量変化量、前記圧縮機の効率の変化量である圧縮機効率変化量、及び前記タービンの前記冷却空気の流量変化量であるタービン冷却空気量変化量を算出する第1算出過程と、前記圧縮機流量変化量と、前記圧縮機効率変化量と、前記タービン冷却空気量変化量とに基づいてタービン効率変化量を算出する第2算出過程とを有する監視方法を提供する。
【0015】
本発明は、圧縮機の入口側から供給される吸気空気が、前記圧縮機において圧縮され圧縮空気となり燃焼器を介してタービンへ供給され、前記圧縮機から抽気されたタービンを冷却する冷却空気がタービンへ供給されるガスタービンに適用される監視プログラムであって、所定期間における、前記圧縮機の入口側の前記吸気空気の流量変化量である圧縮機流量変化量、前記圧縮機の効率の変化量である圧縮機効率変化量、及び前記タービンの前記冷却空気の流量変化量であるタービン冷却空気量変化量を算出する第1算出処理と、前記圧縮機流量変化量と、前記圧縮機効率変化量と、前記タービン冷却空気量変化量とに基づいてタービン効率変化量を算出する第2算出処理とをコンピュータに実行させるための監視プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、特殊な計測機器なしに、簡便にタービン効率変化量を算出することのできるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るガスタービン設備の概略構成を示した図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るインデックス差圧を説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る監視装置の概略構成を示した図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る監視装置の機能ブロック図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るガスタービン設備の概略構成を示した図である。
【図6】第2対応情報の一例を示した図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るガスタービン監視システムの概略構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る監視装置及び方法並びにプログラム、それを備えたガスタービン設備、及びガスタービン監視システムの実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の第1の実施形態について、図1を用いて説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係るガスタービン設備30は、ガスタービン20及び監視装置10を備えている。ガスタービン20は、圧縮機1、燃焼器2、タービン3、冷却空気配管5、回転軸6、発電機7、流量計測部8、温度計(熱電対)Ta,Tb、圧力計Pa,Pb、及びインデックス差圧計DPを備えている。
【0019】
圧縮機1の下流側は2つの経路に分岐されており、一方は燃焼器2を介してタービン3と接続され、他方はタービン3を冷却する冷却空気が流通する経路である冷却空気配管5によってタービン3と接続されている。タービン3は、内部で高温高圧ガスを膨張させることにより駆動され、発電機7を回して発電するように構成されている。
圧縮機1は、入口側から供給される吸気空気を圧縮して圧縮空気を生成し、圧縮空気を燃焼器2に供給する。圧縮機1は、タービン3とともに回転軸6に設けられ、タービン3により回転駆動される。また、圧縮機1は、タービン3を冷却する冷却空気が抽気され、冷却空気配管5を流通させて冷却空気をタービン3へ供給する。なお、図1において冷却空気配管5は、圧縮機1の出口部分から抽気される1系統として記載されているが、圧縮機1の中間段部分から抽気する系統などを設けてもよく、特に限定されない。
【0020】
タービン3は、燃焼器2から供給された燃焼ガスから回転駆動力を取り出し、駆動力を出力する。出力された回転駆動力は、同軸上に接続されている発電機7に伝達され、発電機7を発電させたり、タービン3と同軸に接続されている圧縮機1に伝達され、圧縮機1を駆動させる。
燃焼器2は、圧縮機1から供給された圧縮空気と燃料ガスとを混合させ、高温の燃焼ガスを生成し、タービン3に供給する。
【0021】
圧力計Paは、圧縮機1の入口側の吸気空気の流路に設けられ、圧縮機1の入口側の圧力である圧縮機入口圧力を計測する。
圧力計Pbは、圧縮機1の出口側の圧縮空気の流路に設けられ、圧縮機1の出口側の圧力である圧縮機出口圧力を計測する。
なお、圧縮機出口圧力は、燃焼器2が収容される車室(図示せず)内の圧力として計測することとしても良い。圧縮機1の吸入空気量が同じであっても、タービン3の冷却空気量が増加すればタービン3へ導入される圧縮空気量は減少し、その結果、圧縮機1の出口圧力は低下する。すなわち、圧縮機出口圧力値を計測することにより、タービン3に導入される圧縮空気量の所定期間における変化量を把握することができる。
【0022】
温度計Taは、圧縮機1の入口側の吸気空気の流路に設けられ、圧縮機1の入口側の温度である圧縮機入口温度を計測する。
温度計Tbは、圧縮機1の出口側の圧縮空気の流路に設けられ、圧縮機1の出口側の温度である圧縮機出口温度を計測する。
【0023】
インデックス差圧計DPは、図2に示されるように、圧縮機1に流入されるガスタービン吸気の流通する経路と圧縮機1の入口側とにおける圧力差を測定し、その測定値をインデックス差圧とし、インデックス差圧の情報を監視装置10に送信する。
また、インデックス差圧は、増大すると圧縮機1の吸気空気の入口流量が大きくなり、所定期間の計測により変化量(経年変化)が把握できる。
流量計測部8は、冷却空気配管5に設けられ、圧縮機1から抽気された冷却空気の流量を計測する。
【0024】
図3は、本実施形態に係る監視装置10の概略構成を示したブロック図である。
図3に示すように、本実施形態に係る監視装置10は、コンピュータシステム(計算機システム)であり、CPU(中央演算処理装置)101、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置102、補助記憶装置103、キーボードやマウスなどの入力装置104、及びディスプレイやプリンタなどの出力装置105、外部の機器と通信を行うことにより情報の授受を行う通信装置106などを備えている。
補助記憶装置103は、コンピュータ読取可能な記録媒体であり、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等である。この補助記憶装置103には、各種プログラム(例えば、監視プログラム)が格納されており、CPU101が補助記憶装置103から主記憶装置102にプログラムを読み出し、実行することにより種々の処理を実現させる。
【0025】
次に、監視装置10が備える各部において実行される処理内容について図4を参照して説明する。図4は、監視装置10が備える機能を展開して示した機能ブロック図である。図4に示されるように、監視装置10は、第1算出部(第1算出手段)11、第2算出部(第2算出手段)12、及び劣化判定部(劣化判定手段)13を備えている。
【0026】
第1算出部11は、所定期間における、圧縮機1の入口側の吸気空気の流量変化量である圧縮機流量変化量Da、圧縮機1の効率の変化量である圧縮機効率変化量Db、及びタービンの冷却空気の流量変化量であるタービン冷却空気量変化量Dcを算出する。
第1算出部11は、ガスタービン吸気に取り付けられたインデックス差圧計DPから計測されるインデックス差圧に基づいて、圧縮機1の吸気空気の入口流量である圧縮機入口流量及び圧縮機流量変化量Daを算出する。より具体的には、第1算出部11は、インデックス差圧の情報が入力されると、インデックス差圧に対して入口流量を算出する第1対応情報(例えば、関係式)を有しており、この第1対応情報に基づいて圧縮機1の入口流量を算出する。また、第1算出部11は、第1対応情報に基づいて、所定期間における圧縮機入口流量の変化量を圧縮機流量変化量Daとして算出する。このように、第1算出部11は、インデックス差圧計DPによりインデックス差圧を計測することにより、簡便に圧縮機流量変化量Daを算出する。
【0027】
また、第1算出部11は、所定期間における、温度計Ta,Tbから計測された圧縮機1の入口及び出口の温度の情報と、圧力計Pa,Pbから計測された圧縮機1の入口及び出口の圧力の情報とに基づいて、圧縮機1の効率の変化量である圧縮機効率変化量Dbを算出する。さらに、第1算出部11は、所定期間の流量計測部8から計測された流量の計測値を取得し、所定期間における冷却空気の流量変化量をタービン冷却空気量変化量Dcとして算出する。
また、第1算出部11は、発電機の出力計等からガスタービン出力値を取得し、所定期間におけるガスタービン出力変化量として算出する。
ここで、所定期間とは、例えば、ガスタービン20が設置され運転開始した時点、ガスタービン20の部品交換や定期点検を行った時点等を運転基準点とし、その運転基準点からの所定の間隔(例えば、2年)である。
【0028】
第2算出部12は、圧縮機流量変化量Daと、圧縮機効率変化量Dbと、タービン冷却空気量変化量Dcとに基づいてタービン効率変化量Ddを算出する。すなわち、ガスタービン出力変化量に対する影響因子を、圧縮機流量変化量Daと、圧縮機効率変化量Dbと、タービン冷却空気量変化量Dcと、タービン効率変化量Ddとに分解して考えることにより、測定可能なガスタービン出力変化量と、圧縮機流量変化量Daと、圧縮機効率変化量Dbと、タービン冷却空気変化量Dcとに基づいて、タービン効率変化量Ddを推定することができる。
具体的には、第2算出部12は以下の(1)式に示されるように、所定期間のガスタービン出力の変化量であるガスタービン出力変化量に対し、重みづけ係数C1を乗算した圧縮機流量変化量Daと、重みづけ係数C2を乗算した圧縮機効率変化量Dbと、重みづけ係数C3を乗算したタービン冷却空気量変化量Dcとの和をガスタービン出力変化量から減算し、タービン効率変化量Ddを算出する。また、タービン効率変化量Ddに対してもガスタービン出力変化量に対する重みづけ係数C4を乗算することとする。
【0029】
重みづけ係数C1〜C4は、設計上予め計算により求められる係数とし、下記(1)式において、Daは圧縮機流量変化量、Dbは圧縮機効率変化量、Dcはタービン冷却空気量変化量、Ddはタービン効率変化量として示す。
Dd×C4=ガスタービン出力変化量−(Da×C1+Db×C2+Dc×C3)・・・(1)
なお、タービン効率変化量Ddの算出結果の精度は、ガスタービンが全負荷の場合が最もよいが、これに限定されず、例えば、各重みづけ係数C1〜C4を変えることによって、部分負荷の場合にも対応させることができる。
【0030】
劣化判定部13は、タービン冷却空気量変化量Dcが所定の閾値Thを上回った場合に、タービン内のシールが劣化したこととして判定する。また、劣化判定部13は、シールの変化量と冷却空気の流量変化量との相関関係を設計或いは実験に基づいて求めておくことにより、閾値Thを設定することが好ましい。また、劣化判定部13は、判定結果を出力装置105等に出力させ、監視装置10を操作する操作員に対し、出力装置105等を介して劣化の有無を通知する。
【0031】
次に、上述したガスタービン設備30が備える各部において実行される処理内容について図1から図4を参照して説明する。なお、図4に示した各部により実現される後述の各種処理は、CPU101が補助記憶装置103に記憶されている監視プログラムを主記憶装置102に読み出して実行することにより実現されるものである。
ガスタービン20の運転が開始されると、吸気空気が、圧縮機1の入口側から供給され、圧縮機1において圧縮されて圧縮空気となる。圧縮空気は、燃焼器2に供給されると、燃焼器2において燃料ガスと混合され、高温の燃焼ガスが生成されてタービン3に供給される。タービン3においては、燃焼器2から供給された燃焼ガスから回転駆動力が生じ、この駆動力が同軸上に接続されている発電機7側へ出力される。一方、圧縮機1から抽気された冷却空気は、冷却空気配管5を流通しタービン3を冷却する。
【0032】
このように、ガスタービン20の運転が開始され、吸気空気がタービン3に流通される場合における監視装置10の作用について説明する。
ガスタービン設備30の運転が開始され、圧縮機1の入口側から吸気空気が供給されると、インデックス差圧計DPによって圧縮機1の入口側のインデックス差圧が計測され、計測されたインデックス差圧の計測値が、監視装置10に送信される。また、圧力計Paによって吸気空気の圧縮機1の入口圧力、温度計Taによって吸気空気の圧縮機1の入口温度が計測され、それぞれの計測値が監視装置10に送信される。
【0033】
圧縮機1から排出される圧縮空気は、圧力計Pbによって圧縮空気の圧縮機1の出口圧力、温度計Tbによって圧縮空気の圧縮機1の出口温度がそれぞれ計測され、計測された各計測値が監視装置10に送信される。
また、圧縮機1から抽気された冷却空気は、冷却空気配管5を流通し、タービン3に供給されると、流量計測部8によって冷却空気の流量が計測され、計測された流量の情報が監視装置10に送信される。
【0034】
第1算出部11において、第1対応情報に基づいて、取得したインデックス差圧の計測値に対応する圧縮機1の吸気空気の入口流量が算出され、所定期間における圧縮機流量変化量Daが算出される。また、第1算出部11において、温度計Ta,Tb、圧力計Pa,Pbに基づいて圧縮機効率が算出され、所定期間における圧縮機効率変化量Dbが算出される。さらに、第1算出部11において、流量計測部8から取得した冷却空気の所定期間における冷却空気の流量であるタービン冷却空気量変化量Dcが算出される。
【0035】
第2算出部12において、上記(1)式に示されるように、算出された圧縮機流量変化量Da、圧縮機効率変化量Db、及びタービン冷却空気量変化量Dcのそれぞれに対し、ガスタービン出力変化量に対する重みづけ係数C1,C2,C3が加味され、ガスタービン出力変化量から、それぞれの重みづけ係数を乗算した圧縮機流量変化量Daと、圧縮機効率変化量Dbと、及びタービン冷却空気量変化量Dcとを減算することにより、タービン効率変化量Ddが算出される。このとき、タービン効率変化量Ddに対してもガスタービン出力変化量に対する重みづけ係数C4を加味する。
また、劣化判定部13において、タービン冷却空気量変化量Dcが所定の閾値Thを上回るか否かが監視され、上回った場合には、タービン3のシールに劣化(損耗)が生じていると判定され、その判定結果が出力装置105に出力される。
【0036】
監視装置10を操作する操作員は、上述したように圧縮機流量変化量Da、圧縮機効率変化量Db、及びタービン冷却空気量変化量Dcに基づいてタービン効率変化量Ddが得られることにより、簡便にタービン効率を把握することができる。また、それぞれの変化量Da〜Ddには、ガスタービン出力変化量に対する重みづけ係数が乗算されるので、ガスタービン出力変化量の内訳を把握することができる。さらに、タービン3のシール劣化の発生が推定される場合には出力装置105にその情報が表示され、出力装置105を確認した操作員は、簡便にガスタービンの性能の低下を把握でき、ガスタービン20を保有する顧客に対し、具体的な対応策(例えば、シール交換等)を提案できる。
【0037】
以上説明してきたように、本実施形態に係る監視装置10及び方法並びにプログラム、ガスタービン設備30によれば、圧縮機1の入口側から供給される所定期間の吸気空気の流量の変化量が圧縮機流量変化量Daとして算出され、所定期間の圧縮機1の入口及び出口の圧力と温度とに基づいて圧縮機効率変化量Dbが算出され、所定期間における流量計測部8によって計測された流量であるタービン冷却空気量変化量Dcが算出され、これらの圧縮機流量変化量Da、圧縮機効率変化量Db、及びタービン冷却空気量変化量Dcに基づいてタービン効率変化量Ddが算出される。
このように、特殊な計測機器なしに、簡便にタービン冷却効率変化量Ddを算出できる。また、このようにタービン効率変化量Ddを算出することにより、タービンの動翼先端(チップ)と静翼との間の間隙(チップクリアランス)の状態、タービンの摩耗(溶融を含む)、デポジット(異物)の堆積、排気側圧損の増加、ディフューザの損傷等のタービン効率低下の要因となる点に問題が生じている可能性があることを把握することができる。
【0038】
また、圧縮機流量変化量Da、圧縮機効率変化量Db、タービン冷却空気量変化量Dc、タービン効率変化量Ddのそれぞれに対し、ガスタービン出力変化量に対する重みづけ係数を乗算してタービン効率変化量Ddを算出するので、ガスタービン出力変化量の内訳を正確に把握でき、その内訳に基づいて対応策の具体的な提案が可能となる。
【0039】
なお、本実施形態においては、インデックス差圧計DPが計測した計測値をインデックス差圧計DPが監視装置10に出力することとして説明していたが、これに限定されない。例えば、監視装置10側から、インデックス差圧計DPに対して、インデックス差圧の計測値の情報を取得するような通信が開始されることにより、監視装置10がインデックス差圧の計測値を得ることとしてもよい。
【0040】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態に係る監視装置について、図5を用いて説明する。本実施形態の監視装置が第1の実施形態と異なる点は、第1算出部が、圧縮機出口圧力に基づいてタービン冷却空気量変化量を算出する点である。以下、本実施形態のガスタービン設備30´について、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0041】
第1算出部は、所定期間の圧縮機出口圧力の変化量である圧縮機出口圧力変化量に基づいて算出される圧縮空気のタービン入口流量変化量Dtと、圧縮機流量変化量Daとに基づいて、タービン冷却空気量変化量Dcを算出する。具体的には、第1算出部は、圧縮機出口圧力の変化量に対して圧縮空気のタービン入口流量変化量を算出する第2対応情報(例えば、関係式)を備えている。第1算出部において、圧力計Pbによって計測された圧縮機出口圧力の情報が入力されると、第2対応情報に基づいて所定期間における圧縮機出口圧力の変化量に対する圧縮空気のタービン入口流量変化量Dtを算出するとともに、以下の(2)式に示すように、圧縮機流量変化量Daから圧縮空気のタービン入口流量変化量Dtを減算することによりタービン冷却空気量変化量Dcを算出する。
タービン冷却空気量変化量Dc=圧縮機流量変化量Da−タービン入口流量変化量Dt・・・(2)
【0042】
例えば、第2対応情報は、図6に示されるように、圧縮機出口圧力とタービン入口流量との相関関係を示した関数(グラフ)である。圧縮機出口圧力は、低減すればタービン入口流量が減少し、増大すればタービン入口流量は増加する。ここで上記「圧縮空気のタービン入口流量変化量Dt」とは、タービン入口に導入される圧縮空気の流量変化量のことである。タービン入口流量という場合には、タービン入口空気と燃料とが燃焼した燃焼ガスを示すこともあるが、本発明においては異なる意味を有し、燃料を含まない空気の流量を示す。
【0043】
このように、タービン冷却空気量変化量Dcが、圧縮機出口圧力に基づいて算出される圧縮空気のタービン入口流量変化量Dtと圧縮機流量変化量Daとに基づいて算出されるので、冷却空気配管5には流量計測部8を設ける必要がなく、コストを低減させることができるとともに、簡便にタービン冷却空気量変化量Dcを算出することができる。
【0044】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態に係る監視装置について、図7を用いて説明する。本実施形態の監視装置が第1の実施形態と異なる点は、ガスタービン20と監視装置10とがネットワーク9を介して接続されており、監視装置10は、ガスタービン20が設けられる位置から遠隔地に備えられ、ガスタービン監視システム40を構成している点である。以下、本実施形態のガスタービン監視システム40について、第1の実施形態、第2の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0045】
本実施形態においては、図7に示されるように、発電所にガスタービン20が設けられ、ネットワーク9を介して発電所から遠隔に位置する管理会社の監視室に監視装置10が備えられている。
ネットワーク9は、ガスタービン管理用に標準規格化された通信プロトコル(例えば、TCP/IP)を使用したネットワークであり、LAN(Local Area Network)であってもよいし、光回線やVPN(Virtual Private Network)等の公衆回線或いは専用回線を利用したWAN(Wide Area Network)であってもよく、特に限定されない。
【0046】
インデックス差圧計DPは、ネットワーク9を介してインデックス差圧の計測値の情報を監視装置10に出力する。
圧力計Pbは、ネットワーク9を介して圧縮機出口圧力の測定値の情報を監視装置10に出力する。
監視装置10は、インデックス差圧計DPから取得したインデックス差圧の計測値に基づいて圧縮機流量変化量Daを算出し、圧力計Pbから取得した圧縮機出口圧力の計測値(車室圧力値)に基づいてタービン入口流量変化量Dtを算出する。
【0047】
第1算出部は、監視装置10とは遠隔の発電所内のガスタービン20に備えられたインデックス差圧計DPから出力されたインデックス差圧の計測値に基づいて、所定期間の圧縮機流量変化量Daを算出する。また、第1算出部は、監視装置10とは遠隔の発電所内のガスタービン20に備えられた温度計Ta,Tbから取得した圧縮機の入口及び出口の温度の情報と、圧力計Pa,Pbから取得した圧縮機の入口及び出口の圧力の情報とに基づいて、所定期間の圧縮機効率変化量Dbを算出する。
【0048】
さらに、第1算出部は、監視装置10とは遠隔の発電所内のガスタービン20に備えられた圧力計Pbから出力された圧縮機出口圧力値に基づいて、タービン入口流量変化量Dtを算出し、圧縮機流量変化量Daとタービン入口流量変化量Dtとに基づいて、タービン冷却空気量変化量Dcを算出する。
第2算出部は、圧縮機流量変化量Da、圧縮機効率変化量Db、タービン冷却空気量変化量Dcとに基づいてタービン効率変化量Ddを算出する。
劣化判定部は、タービン冷却空気量Dcが所定の閾値Thを上回るか否かを監視し、上回った場合には、タービンのシールに劣化(損耗)が生じていると判定し、その判定結果を出力装置等に出力する。
【0049】
このように、本発明におけるガスタービン監視システム40によれば、ガスタービン20が発電所に設けられ、監視装置10がガスタービン20が発電所から遠隔の地にある管理会社に設けられるように、ガスタービン20と監視装置10とが遠隔に配置される場合であっても、監視装置10を有する管理会社からネットワーク9を介してガスタービン20の性能を判断する情報を得ることができる。これにより、操作員は管理会社に居ながら、管理会社とは遠隔の発電所に備えられるガスタービン20を遠隔監視することができる。さらに、シールの劣化等、所定箇所の損耗が発生している場合には、劣化情報等も得られるので、ガスタービン20を有する顧客に対し、遠隔にいながらシール交換等の具体的な提案を行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
1 圧縮機
2 燃焼器
3 タービン
5 冷却空気配管
8 流量計測部
10 監視装置
11 第1算出部(第1算出手段)
12 第2算出部(第2算出手段)
13 劣化判定部(劣化判定手段)
20 ガスタービン
30 ガスタービン設備
40 ガスタービン監視システム
DP インデックス差圧計
Pa、Pb 圧力計
Ta、Tb 温度計


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機の入口側から供給される吸気空気が、前記圧縮機において圧縮され圧縮空気となり燃焼器を介してタービンへ供給され、前記圧縮機から抽気されたタービンを冷却する冷却空気がタービンへ供給されるガスタービンに適用される監視装置であって、
所定期間における、前記圧縮機の入口側の前記吸気空気の流量変化量である圧縮機流量変化量、前記圧縮機の効率の変化量である圧縮機効率変化量、及び前記タービンの入口側の前記冷却空気の流量変化量であるタービン冷却空気量変化量を算出する第1算出手段と、
前記圧縮機流量変化量と、前記圧縮機効率変化量と、前記タービン冷却空気量変化量とに基づいてタービン効率変化量を算出する第2算出手段と
を備える監視装置。
【請求項2】
前記第2算出手段は、所定期間のガスタービン出力の変化量であるガスタービン出力変化量に対するそれぞれの重みづけ係数を乗算した前記圧縮機流量変化量と、前記圧縮機効率変化量と、前記タービン冷却空気量変化量とのそれぞれの和を前記ガスタービン出力変化量から減算し、前記タービン効率変化量を算出する請求項1に記載の監視装置。
【請求項3】
前記第1算出手段は、所定期間の圧縮機出口圧力の変化量である圧縮機出口圧力変化量に基づいて算出される前記圧縮空気のタービン入口流量変化量と、前記圧縮機流量変化量とに基づいて、前記タービン冷却空気量変化量を算出する請求項1または請求項2に記載の監視装置。
【請求項4】
前記第1算出手段は、ガスタービン吸気に取り付けられたインデックス差圧計から計測されるインデックス差圧に基づいて、前記圧縮機の入口側の前記吸気空気の流量である圧縮機入口流量及び前記圧縮機流量変化量を算出する請求項1から請求項3のいずれかに記載の監視装置。
【請求項5】
前記タービン冷却空気量変化量が所定の閾値を上回った場合には、タービン内のシールが劣化したこととして判定する劣化判定手段を備える請求項1から請求項4のいずれかに記載の監視装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の監視装置とガスタービンとを備えたガスタービン設備。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の監視装置とガスタービンとを備えたガスタービン監視システムであって、
前記監視装置は、前記ガスタービンとネットワークを介して接続されており、前記ガスタービンが設けられる位置から遠隔地に備えられるガスタービン監視システム。
【請求項8】
圧縮機の入口側から供給される吸気空気が、前記圧縮機において圧縮され圧縮空気となり燃焼器を介してタービンへ供給され、前記圧縮機から抽気されたタービンを冷却する冷却空気がタービンへ供給されるガスタービンに適用される監視方法であって、
所定期間における、前記圧縮機の入口側の前記吸気空気の流量変化量である圧縮機流量変化量、前記圧縮機の効率の変化量である圧縮機効率変化量、及び前記タービンの前記冷却空気の流量変化量であるタービン冷却空気量変化量を算出する第1算出過程と、
前記圧縮機流量変化量と、前記圧縮機効率変化量と、前記タービン冷却空気量変化量とに基づいてタービン効率変化量を算出する第2算出過程と
を有する監視方法。
【請求項9】
圧縮機の入口側から供給される吸気空気が、前記圧縮機において圧縮され圧縮空気となり燃焼器を介してタービンへ供給され、前記圧縮機から抽気されたタービンを冷却する冷却空気がタービンへ供給されるガスタービンに適用される監視プログラムであって、
所定期間における、前記圧縮機の入口側の前記吸気空気の流量変化量である圧縮機流量変化量、前記圧縮機の効率の変化量である圧縮機効率変化量、及び前記タービンの前記冷却空気の流量変化量であるタービン冷却空気量変化量を算出する第1算出処理と、
前記圧縮機流量変化量と、前記圧縮機効率変化量と、前記タービン冷却空気量変化量とに基づいてタービン効率変化量を算出する第2算出処理と
をコンピュータに実行させるための監視プログラム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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