説明

目地化粧具およびそれを用いた化粧構造

【課題】化粧具を用いて目地部を化粧する際の施工性を高める。
【解決手段】建造物の表面上に隣接して配置される2つ化粧材(胴差等)間の目地部を化粧する目地化粧具10。目地化粧具10は、目地化粧板50と基材20で構成される。目地化粧板50は、化粧材の裏面側に位置して目地部を覆う。基材20は、建造物表面に固定されるとともに、中央に目地化粧板50を保持する中央保持部25を有し、当該中央保持部25の両側に上記2つの化粧材の隣接端部を保持する側方保持部26a、26b、27a、27bを有する。まず基材20を壁面に固定し、その上から目地化粧板50を固定し、さらにその上から化粧材を固定できるので、極めて簡単な施工作業をもって、建築物外表面に胴差等の装飾を施すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地化粧具およびそれを用いた化粧構造に関する。目地化粧具は、建築物の外壁上において、隣接して設けられる2つの化粧材間の目地部に固定されて、当該目地部の外観を向上させるものである。
【背景技術】
【0002】
例えば一般住宅等の建築物において、外壁面に胴差、破風、鼻隠しといった装飾を設けることが従来から行われている。これらの装飾を施す場合、一般には、複数の細長い化粧材を、外壁面上に直線状に配置・固定する。
その場合に、隣接する2つの化粧材について、両部材の端面と端面の間に一定間隔のスペースを残して、各化粧材が固定される。このスペースは、化粧材の熱伸縮を考慮して設けられる。このスペース(すなわち、目地部)を隠す化粧具は、従来から種々提案されているが、大きく分けて、外方から目地部を覆うタイプ(外方タイプ)と、化粧材の背面側に位置して目地部を覆うタイプ(内方タイプ)とがある。
【0003】
特許文献1は外方タイプを開示し、特許文献2は内方タイプを開示している。一般的には、内方タイプを採用する方が施工が簡単であると考えられる。内方タイプでは、化粧具を外壁に固定し、その上から胴差等を構成する細長い化粧材を位置決め・固定できるからである。
【0004】
しかし、特許文献2に開示された内方タイプの化粧具では、壁面に固定した連結具(本発明における化粧具に相当)に対して、細長い化粧材(化粧カバー)の端部を側方から挿通するように固定することが必要となり、特に、細長い化粧材を直線上に多数並べたい場合には、施工性という点で好ましくない。
【0005】
【特許文献1】実開平6−47453号公報
【特許文献2】特開平7−207911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の事情に鑑み、本発明は、化粧具を用いて目地部を化粧する際の施工性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により、次の特徴を備えた目地化粧具が提供される。本発明の目地化粧具は、建造物の表面上に隣接して配置される2つ化粧材間の目地部を化粧するもので、「目地化粧板」と「基材」を備える。
「目地化粧板」は、上記化粧材の裏面側に位置して目地部を覆う(化粧する)。
「基材」は、建造物表面に固定されるとともに、中央に目地化粧板を保持する「中央保持部」を有し、当該中央保持部の両側に上記2つの化粧材の隣接端部を保持する「側方保持部」を有する。
なお、「中央保持部」における「中央」は、その両側に位置する「側方保持部」の間に位置するという意味である。つまり、「中央保持部」は、必ずしも、基材の中心に位置している必要はない。
【0008】
また、本発明により、上記目地化粧具を用いて、建造物の表面上で、隣接する2つ化粧材間の目地部を化粧してなる構造が提供される。
当該構造においては、建造物表面に固定した基材の中央保持部に、目地化粧板が保持される。この目地化粧板の表面側において、上記2つの化粧材の隣接端部が、所定間隔をおいて向かい合った状態で、基材の側方保持部に保持される。
【0009】
当該構造においては、目地化粧具を、隣接する化粧材間の目地部だけでなく、化粧材の中間領域においても当該化粧材の裏面側に配置して、これにより、当該化粧材を建造物表面にさらに強固に固定してもよい。
なお、ここでいう「中間領域」とは、化粧材の一端と他端の間のいずれかの位置という意味であって、必ずしも真中である必要はない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の目地化粧具を使用する場合、まず、基材を建造物表面に固定した後、当該基材の中央保持部に目地化粧板を固定する。その後、目地化粧板の外側から、胴差等を構成する2つの化粧材を、その隣接両端部が目地化粧板の外表面において一定距離をおいて向かい合うように固定する。このとき、2つの化粧材の端部は、それぞれ、基材の側方保持部に保持される。
このように、まず基材を固定し、その上に目地化粧板を固定し、さらにその上から化粧材を固定できるので、極めて簡単な施工作業をもって、建築物外表面に胴差等の装飾を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態を添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る目地化粧具10を示す分解斜視図である。目地化粧具10は、基材20と目地化粧板50から構成される。
【0012】
≪基材20≫
基材20には、ビス、ボルト、釘等の取付具を通す取付孔21が形成されていて、図4に示したように、建築物の壁面に固定される。
図示の例では、基材20は、ステンレス等の金属板から形成されていて、当該金属板を切り起こして形成された5つの保持部を有する。すなわち、「中央保持部25」、「側方保持部26a、26b」、「側方保持部27a、27b」である。
【0013】
中央保持部25は、目地化粧板50の裏面に立設した係止突起55を挟持する(図1参照)。すなわち、目地化粧板50を基材20に対して上方から押し込むと、係止突起55が中央保持部25内に強制的に圧入され、スナップフィット式にパチリと止まる。
側方保持部26a、26bおよび側方保持部27a、27bは、後述するように胴差等を構成する細長い化粧材の端部を保持する。なお、図示の例では、1枚の化粧材を保持する側方保持部は、26aおよび26bのように上下2カ所存在するが、化粧材の大きさに合わせて、例えば26aのみなどの1カ所だけでもよく、また3カ所以上であってもよい。また、26aと26bとは同一形状の保持部であるが、一方がスナップフィット式であり、他方は単なる引掛け方式である等、異なる形状の保持部、異なる方式の保持部であっても何ら差し支えない。取付固定の容易性を鑑みればそれぞれ上下2カ所に側方保持部を有するのが好ましい。
【0014】
≪目地化粧板50≫
目地化粧板50は、図示の例では、射出成形により得られたプラスチック材から構成されていて、細長い本体の中央に湾曲溝部51を、その両側に矩形溝部52、53を備えている。上述した係止突起55は、湾曲溝部51の裏側に立設されている。
詳しくは後述するが、目地化粧板50は、胴差等の目地部の裏側に位置して当該目地部を化粧する。したがって、目地化粧板50は、その幅寸法が目地部の幅よりも大きく設定される。
目地化粧板50を基材20に連結すると、矩形溝部52は、側方保持部26aと27aとの間に入り込む。同様に、矩形溝部53は、側方保持部26bと27bとの間に入り込む。
【0015】
≪化粧材80≫
図2は、本発明の目地化粧具10によって保持される化粧材80を示している。一例として、化粧材80は、胴差を構成する細長い板材であって、これが直線状に複数並べて建築物の表面に固定される。なお、化粧材80の中央には、装飾要素として、長手方向に延びる中央凹部87が形成されている。
化粧材80の裏面には、係止突起86a、86bが立設されている。係止突起86aは、図1に示した基材20の側方保持部26aに、強制的に圧入されてスナップフィット式にパチリと止まる。同様に、係止突起86bは、基材20の側方保持部26bに、強制的に圧入されてスナップフィット式にパチリと止まる。
【0016】
≪組付け状態≫
図3は、目地化粧具10と化粧材80との組付け状態を示している。実際には、化粧材80の右側に、もう1つの同様の化粧材が配置され、2つの化粧材が一定間隔(目地)をおいて端面同士を向かい合わせた状態で保持される。当該もう1つの化粧材は、化粧材80と同様の係止突起が立設形成されていて、これらが、基材10の側方保持部27a、27bにスナップフィット式に固定される。
そして、目地化粧具10の目地化粧板50が、「目地」を内側から覆って化粧する(美感を向上させる)。なお、このような目地は、化粧材が合成樹脂製である場合によく用いられる。合成樹脂化粧材の熱伸縮を目地により吸収するためである。したがって、本発明の目地化粧具は、合成樹脂製化粧材を用いる場合に特に有効である。
なお、化粧材に用いる合成樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ポリスチレン樹脂、ハイインパクトポリスチレン樹脂、PMMA樹脂等を挙げることができる。
【0017】
≪施工手順:図4≫
次に図4を参照して、代表的な施工手順を例示説明する。
(1)基材の固定
胴差を設けようとする建築物の外壁面に、ビス等を使用して、基材20を所定間隔で固定する。図4では、化粧材80の固定に供する3つの基材20a、20b、20cを図示している。なお、基材20a、20cについては、化粧材80だけでなく、隣接する化粧材81、82の固定にも寄与する。
なお、3つの基材20a、20b、20cは、全て同一形状のものである。
(2)目地化粧板の取付け
壁面に固定した基材に対して、目地化粧板を取り付ける。図4の例では、中央の基材20bに対しては、目地化粧板は取り付けない。両側の基材20a、20cに対してのみ、目地化粧板50a、50cを取り付ける。目地化粧板50aは、化粧材80と81の間の目地を、目地化粧板50cは、化粧材80と82の間の目地を、それぞれ化粧する。
なお、2つの目地化粧板50a、50cは、同一形状のものである。
(3)化粧材の固定
化粧材80は、その一端80aが基材20aの右側の側方保持部で保持され、他端80cが基材20cの左側の側方保持部で保持される。なお、化粧板80は、図2に示したように、係止突起86a、86bを裏面側に備えていて、これらが各基材に保持される。
【0018】
≪目地部の化粧に関与しない基材20b≫
図4の例で、中央の基材20bには、目地化粧板は連結されず、化粧材80が直接連結されている。ただし、基材20bの物理的形状は、両側の基材20a、20cのそれと全く同じである。
すなわち、本発明の目地化粧具の一構成要素である基材は、中央に配置された中央保持部25(図1)を有し、その両側に側方保持部26、27を有しているので、係る物理的構成により、1つの形状で、「目地部の化粧」および「化粧材の単なる固定」の両方に流用できる。
【0019】
≪化粧効果を高めるための工夫≫
図5は、図3の組合わせ状態を側方から見た模式図である。ただし、図5においては、基材20は、壁材15にビス16で固定した状態で示している。
目地化粧板50は、係止突起55が中央保持部25に保持されることで、基材20に保持される。また、化粧材(胴差)80は、係止突起86a、86bが側方保持部26a、26bに保持されることで、基材20に保持される。
【0020】
また、目地化粧板50の矩形溝部52、53は、それぞれ、化粧材86の係止突起86a、86bが適正に収まるように、その深さおよび幅寸法が決められている。同様に、湾曲溝部51も、化粧材80の中央凹部87が適正に収まるように、その深さおよび曲率が決められている。
つまり、図5に良く示されているように、目地化粧板50の表面形状は、化粧材80の裏面形状に追従して延在する形状とされている。これにより、目地部を斜め方向から観察した場合でも、不要な隙間が存在せず、化粧効果を高めることができる。
また、化粧効果を高めるという意味で、記目地化粧板50には、化粧材80と実質的に同じ色または同じ模様を施すことが好ましい。
【0021】
≪変形例≫
図示した例では、基材20を金属板から形成し、中央保持部25および側方保持部26a、26b、27a、27bは、当該金属板を切り起こすことで構成している。しかしながら、そのような構成以外にも、例えば、樹脂等を利用して、スナップフィット式に保持可能な保持部を構成することができる。また、保持部については弾力性のあるステンレス材を用い、建築物壁面に固定される部分はアルミ材を用いる等、2種以上の金属材を組み合わせたものであってもよい。
また、スナップフィット以外でも、任意の機構の保持部、例えば引掛け式や係止式を採用できるが、施工の利便性を考えると、スナップフィット式が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る目地化粧具を示す分解斜視図。
【図2】胴差を構成する化粧材を示す部分斜視図。
【図3】図1の目地化粧具と図2の化粧材を組み合わせた状態を示す要部斜視図。
【図4】図1の目地化粧具を用いた施工手順の一例を示す斜視図。
【図5】図3の組合わせ状態を側方から示す模式図。
【符号の説明】
【0023】
10 目地化粧具
15 壁材
16 ビス
20 基材
21 取付孔
25 中央保持部
26a、26b、27a、27b 側方保持部
50 目地化粧板
51 湾曲溝部
52、53 矩形溝部
55 係止突起
80、81、82 化粧材(胴差)
86a、86b 係止突起
87 中央凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物の表面上に隣接して配置される2つの化粧材(80)間の目地部を化粧する目地化粧具であって、
上記化粧材の裏面側に位置して目地部を覆う目地化粧板(50)と、
建造物表面に固定されるとともに、中央に目地化粧板(50)を保持する中央保持部(25)を有し、当該中央保持部の両側に上記2つの化粧材(80)の隣接端部を保持する側方保持部(26、27)を有する、基材(20)と、
を備える目地化粧具。
【請求項2】
上記基材の中央保持部(25)および側方保持部(26、27)は、それぞれ、目地化粧板(50)に立設された係止突起(55)および化粧材(80)に立設された係止突起(86)をスナップフィット式に保持する、請求項1記載の目地化粧具。
【請求項3】
上記基材(20)は金属板で構成されており、当該基材の中央保持部(25)および側方保持部(26、27)は、当該金属板を切り起こして形成されている、請求項2記載の目地化粧具。
【請求項4】
上記目地化粧板(50)の表面形状は、上記化粧材(80)の裏面形状に追従して延在する形状である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の目地化粧具。
【請求項5】
上記目地化粧板(50)は、上記化粧材(80)と実質的に同じ色または同じ模様が施されている、請求項1〜4のいずれか1つに記載の目地化粧具。
【請求項6】
請求項1〜5記載のいずれか1つに記載の目地化粧具を用いて、建造物の表面上で、隣接する2つ化粧材(80)間の目地部を化粧してなる構造であって、
建造物表面に固定した基材(20)の中央保持部(25)に、目地化粧板(50)が保持されていて、
目地化粧板(50)の表面側において、上記2つの化粧材(80)の隣接端部が、所定間隔をおいて向かい合った状態で、基材(20)の側方保持部(26、27)に保持されている、構造。
【請求項7】
請求項1〜5記載のいずれか1つに記載の目地化粧具が、隣接する化粧材(80)間の目地部だけでなく、化粧材(80)の中間領域においても当該化粧材の裏面側に配置されていて、当該化粧材(80)を建造物表面に固定している、請求項6記載の構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−209650(P2009−209650A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−56484(P2008−56484)
【出願日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(000001096)倉敷紡績株式会社 (296)