説明

目地材充填装置

【課題】 常温では固体で所定温度以上に加熱されることにより溶融して流動状態となる目地材を施工面の目地に連続的に充填可能とする。
【解決手段】 常温では固体で所定温度以上に加熱されることにより溶融して流動状態となる目地材を内部に収容する収容容器1と、この収容容器1の外周面を加熱し内部に収容された目地材を流動状態とするように温度調節可能とされた収容容器用ヒーター2と、上記収容容器1の側面上端部に接続され該収容容器1内の目地材を先端開口部から吐出する所定長さの吐出管3と、この吐出管3の外周面を加熱し内部を通る目地材を流動状態に保つように温度調節可能とされた吐出管用ヒーター4とを備え、上記流動状態の目地材を施工面10の目地に充填するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば施工面のタイルやパネル相互間の目地、その他の目地に、目地材を充填する目地材充填装置に関し、詳しくは、常温では固体で所定温度以上に加熱されることにより溶融して流動状態となる目地材を施工面の目地に連続的に充填可能とする目地材充填装置に係るものである。
【背景技術】
【0002】
近年、常温では固体で所定温度以上に加熱されることにより溶融して流動状態となる資材として、常温では固体でありおよそ119℃を超えると溶融するという硫黄の性質に着目し、この硫黄に所定の試料を配合して、土木用、建設用の資材の一つとして利用することが試みられている。上記硫黄を使用した資材は、セメントを使用する通常のコンクリートと仕上がりや取り扱いが見かけ上類似していることから、硫黄コンクリート又は硫黄固化体と呼ばれることがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記硫黄固化体は、溶融させた硫黄に、砂や砂利、石炭灰等を混合して、およそ119℃〜159℃を保持しながら練り混ぜ、これを冷却硬化させて製造される。このような硫黄固化体は、セメントを使用する通常のコンクリートと比較して、以下のような特徴がある。
(1)配合により、通常のコンクリート以上(約2倍)の圧縮強度を得ることができる。
(2)中性であるために酸に対し不活性であり、したがって酸に溶解しない。このことから、酸性の強い例えば温泉における資材として使用できる。
(3)通常のコンクリートは、その硬化におよそ1〜4週間を要するが、硫黄固化体は、常温にて数時間で硬化する。
【0004】
そして、最近、上記の硫黄固化体を、施工面のタイルやパネル相互間の目地に充填する目地材として利用することが試みられている。この場合、目地材としての硫黄固化体を上記タイルやパネル相互間の目地に充填する充填装置が必要となる。ここで、従来の目地材充填装置としては、通常のモルタルなどの目地材をタイルやパネル相互間の目地に充填するものはあるが(例えば、特許文献2,3参照)、硫黄固化体を目地材とする充填装置はほとんど提案されていない。
【特許文献1】特開2004−160693号公報
【特許文献2】特開平11−300264号公報
【特許文献3】実用新案登録第3027793号公報
【0005】
上記の硫黄固化体を目地材として目地に充填するには、例えばステンレス等の金属の容器内に、事前に別の加熱器で溶融させた硫黄固化体を収容し、その容器を傾けて例えばタイル間の目地に流し込むことが考えられる。その場合に、上記硫黄固化体を目地によく浸透させてタイル間の接着強度を高めるため、事前に施工面の目地部をドライヤー等で加熱することが考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のような硫黄固化体を目地材とする充填装置の場合は、溶融した硫黄固化体が短時間で硬化するので、加熱又は保温手段を備えていない容器では、上記硫黄固化体を目地に流し込んでいるうちに周囲の縁部から固化が起こり、上記容器内に収容された全量を流し込むのが不可能となる。この場合は、上記のように固化した硫黄固化体を再度加熱器に入れて溶融させるか、或いは、容器外壁をたたくなどして硫黄固化体を容器内壁から剥がす等の余分な作業が必要となる。したがって、目地材を施工面の目地に連続的に充填することができない。また、上記硫黄固化体を目地によく浸透させてタイル間の接着強度を高めるため、事前に施工面の目地部をドライヤー等で加熱することがあるが、その場合は施工面の目地部を予熱する作業員と、溶融した硫黄固化体が収容された容器を操作する作業員の2名が必要になると共に、目地材の充填作業が繁雑となる。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に対処し、常温では固体で所定温度以上に加熱されることにより溶融して流動状態となる目地材を施工面の目地に連続的に充填可能とする目地材充填装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明による目地材充填装置は、常温では固体で所定温度以上に加熱されることにより溶融して流動状態となる目地材を内部に収容する収容容器と、この収容容器の外周面を加熱し内部に収容された目地材を流動状態とするように温度調節可能とされた収容容器用ヒーターと、上記収容容器の側面上端部に接続され該収容容器内の目地材を先端開口部から吐出する所定長さの吐出管と、この吐出管の外周面を加熱し内部を通る目地材を流動状態に保つように温度調節可能とされた吐出管用ヒーターと、を備え、上記流動状態の目地材を施工面の目地に充填するものである。
【0009】
このような構成により、収容容器の内部に、常温では固体で所定温度以上に加熱されることにより溶融して流動状態となる目地材を収容しておき、温度調節可能とされた収容容器用ヒーターで、上記収容容器の外周面を加熱し内部に収容された目地材を流動状態とし、上記収容容器の側面上端部に接続された所定長さの吐出管の外周面を、温度調節可能とされた吐出管用ヒーターで加熱し内部を通る目地材を流動状態に保ち、上記収容容器内の目地材を吐出管の先端開口部から吐出して、上記流動状態の目地材を施工面の目地に充填する。
【0010】
また、上記収容容器内には、その内部に収容された流動状態の目地材の温度を検出する温度センサを備えたものである。これにより、上記温度センサで、収容容器の内部に収容された流動状態の目地材の温度を検出する。
【0011】
さらに、上記吐出管の先端部は、柔軟性材料を用いて形成し、先端開口部からの目地材の吐出幅を可変としたものである。これにより、柔軟性材料を用いて形成された先端部を施工面に押し付ける度合いによって吐出管の先端開口部からの目地材の吐出幅を可変とする。
【0012】
さらにまた、上記収容容器は、底面に向きが回転自在のキャスタを備えて施工面上を移動可能とされた支持台上に、その上端部を支点として垂直面内で回動可能に支持されたものである。これにより、施工面上を移動可能とされた支持台上に支持された収容容器は、その上端部を支点として垂直面内で回動可能とされる。
【0013】
また、上記支持台の一側辺側には、該支持台の移動方向の前方側にて施工面を所定温度に加熱するように温度調節可能とされた予熱ヒーターを設けたものである。これにより、温度調節可能とされた予熱ヒーターで、支持台の移動方向の前方側において施工面を所定温度に加熱する。
【0014】
さらに、上記予熱ヒーターには、施工面と反対側の部位に熱の反射板を設けたものである。これにより、施工面と反対側の部位に設けられた熱の反射板によって、上記予熱ヒーターから放射される熱を施工面側に反射する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、常温では固体で所定温度以上に加熱されることにより溶融して流動状態となる目地材を内部に収容した収容容器の外周面を、収容容器用ヒーターで加熱し内部の目地材を流動状態とし、上記収容容器の側面上端部に接続され該収容容器内の目地材を先端開口部から吐出する所定長さの吐出管の外周面を、吐出管用ヒーターで加熱し内部を通る目地材を流動状態に保つことにより、該目地材を施工面の目地に連続的に充填することができる。このことから、例えば短時間で硬化する硫黄固化体を目地材として用いても、充填作業の途中で固化することなく、上記収容容器内に収容された全量を目地に充填することができる。したがって、目地材の充填作業をスムーズとし、効率よく行うことができる。
【0016】
また、請求項2に係る発明によれば、上記収容容器内に備えられた温度センサにより、収容容器の内部に収容された流動状態の目地材の温度を検出して、上記収容容器用ヒーターの温度調節を可能とすることができる。したがって、上記収容容器の内部に収容された目地材を所定温度以上に加熱して流動状態とし、又は流動状態に保つことができる。また、目地材の温度を調節して、その目地材の粘度を任意に調整することができる。
【0017】
さらに、請求項3に係る発明によれば、柔軟性材料を用いて形成された吐出管の先端部により、その先端開口部を施工面に押し付ける度合いによって目地材の吐出幅を可変とすることができる。したがって、タイルやパネル相互間の目地幅の大小に応じて目地材を適切な幅で充填することができる。
【0018】
さらにまた、請求項4に係る発明によれば、底面にキャスタを備えて施工面上を移動可能とされた支持台上に上端部を支点として支持された収容容器を、垂直面内で回動可能とすることができる。したがって、施工面上で支持台を移動させながら収容容器を回動させて、吐出管の先端部を施工面に近付けてタイルやパネル相互間の目地に目地材を充填することができる。
【0019】
また、請求項5に係る発明によれば、上記支持台の一側辺側に設けられた予熱ヒーターにより、該支持台の移動方向の前方側にて施工面を所定温度に加熱することができる。したがって、施工面上で支持台を移動させながら吐出管の先端部から目地材を目地に充填する際に、その目地部を予熱して例えば硫黄固化体を目地によく浸透させてタイルやパネル相互間の接着強度を高めることができる。また、その場合の施工面の目地部の予熱と目地材の充填作業とを1人でも実施することができ、目地材の充填作業を簡略化できる。
【0020】
さらに、請求項6に係る発明によれば、上記予熱ヒーターに対し施工面と反対側の部位に設けた熱の反射板により、上記予熱ヒーターから放射される熱を施工面側に反射することができる。したがって、予熱ヒーターの熱を施工面側に効率よく照射して該施工面を加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明による目地材充填装置の実施形態を示す概要図である。この目地材充填装置は、例えば施工面のタイルやパネル相互間の目地、その他の目地に、所定の目地材を充填するもので、収容容器1と、収容容器用ヒーター2と、吐出管3と、吐出管用ヒーター4とを備え、さらに支持台5と、予熱ヒーター6とを備えている。
【0022】
上記収容容器1は、常温では固体で所定温度以上に加熱されることにより溶融して流動状態となる目地材を内部に収容するもので、所定の容積を有するカップ状に形成されている。上記目地材は、例えば、常温では固体でありおよそ119℃を超えると溶融するという硫黄の性質を利用して、119℃以上に加熱して溶融させた硫黄に、砂や砂利、石炭灰等を混合して、およそ119℃〜159℃を保持しながら練り混ぜ、これを冷却硬化させて製造した硫黄固化体と呼ばれるものである。以下の説明では、目地材として上記の硫黄固化体を用いる場合について述べる。
【0023】
収容容器用ヒーター2は、上記収容容器1の外周面を加熱し内部に収容された目地材(硫黄固化体)を流動状態とするもので、ヒーター用温度調節器7によって収容容器1の外周面を加熱する温度が調節可能とされている。このとき、上記収容容器1の内部に収容された硫黄固化体を、固体の状態から加熱溶融させて流動状態としてもよいし、或いは、別個の加熱槽等で予め加熱溶融し流動状態とされて上記収容容器1の内部に収容された硫黄固化体を流動状態に保つようにしてもよい。上記ヒーター用温度調節器7の設定温度は、例えば150℃とされている。なお、上記収容容器1内には、その内部に収容された流動状態の硫黄固化体の温度を検出する温度センサ8が備えられており、この温度センサ8からの検出信号が上記ヒーター用温度調節器7に送られ、設定温度となるように調節する。
【0024】
吐出管3は、上記収容容器1内に収容された流動状態の硫黄固化体を先端開口部から吐出するもので、該収容容器1の側面上端部に横向きに接続され所定長さで延びている。
【0025】
吐出管用ヒーター4は、上記吐出管3の外周面を加熱し内部を通る硫黄固化体を流動状態に保つもので、前記ヒーター用温度調節器7によって吐出管3の外周面を加熱する温度が調節可能とされている。このときのヒーター用温度調節器7の設定温度は、上述のように例えば150℃とされている。なお、この場合の温度検出は、上記収容容器1内に設けられた温度センサ8で兼用している。
【0026】
支持台5は、上記収容容器1をその上端部を支点として垂直面内で回動可能に支持するもので、底面に向きが回転自在とされた複数個のキャスタ9を備えて施工面10上を、水平方向に移動可能とされている。このとき、上記収容容器1の回動操作に伴い、上記吐出管3も収容容器1と共に垂直面内で回動される。
【0027】
予熱ヒーター6は、上記支持台5の移動方向の前方側にて施工面10を所定温度に加熱するもので、該支持台5の一側辺側に設けられており、予熱ヒーター用温度調節器11によって施工面10を加熱する温度が調節可能とされている。このときの予熱ヒーター用温度調節器11の設定温度は、例えば50℃〜60℃とされている。これは、施工面10上で支持台5を移動させながら吐出管3の先端部から硫黄固化体を目地に充填する際に、その目地部を予熱して硫黄固化体を目地によく浸透させてタイルやパネル相互間の接着強度を高めるためである。
【0028】
そして、上記収容容器1内に収容された流動状態の硫黄固化体を、吐出管3を通してその先端開口部から吐出し、施工面10のタイルやパネル相互間の目地に充填するようになっている。
【0029】
次に、本発明の目地材充填装置の具体的な構造について、図2及び図3を参照して説明する。図2は上記目地材充填装置の正面図であり、図3はその平面図である。図3において、支持台5は、平面形が矩形状とされたベース部材からなり、その底面の四隅にキャスタ9が取り付けられて、タイルやパネルを敷設する施工面10上を水平方向に移動可能とされている。そして、上記支持台5の上面の両側辺部には、2枚の支持板12a,12bが上向きに設けられており、この支持板12a,12bの上端部には収容容器1を取り付けるための取付ネジ13a,13bが螺着されている。
【0030】
上記支持台5上には、例えばステンレス等の金属製の収容容器1が垂直上向きに取り付けられている。その取付構造は、上記収容容器1の両側面上端部に設けられた取付部材14a,14bに切られたネジ孔に、上記取付ネジ13a,13bのネジ軸部を螺合して締め付けることにより、該収容容器1の上端部を支点として吊り下げられ、垂直面内で90度或いはそれ以上の角度で回動可能に取り付けられている。なお、図2において、符号15は、上記取付ネジ13a,13bを支点として吊り下げられた収容容器1を、初期状態である垂直上向きの位置で停止させるストッパを示している。また、上記取付ネジ13a,13bを緩めれば、収容容器1を支持台5から取り外すことができる。
【0031】
上記のように取り付けられた収容容器1の外周面の略全体にわたって、収容容器用ヒーター2が取り付けられている。この場合、上記収容容器1の外周面に例えば帯状のラバーヒーターを巻き付け、その周りにステンレス等の金属製のラバーヒーター押え板を巻き付けて固定すればよい。或いは、上記収容容器1を構成する部材の肉厚部内に絶縁した状態で、収容容器用ヒーター2を埋め込んでもよい。
【0032】
そして、上記収容容器1内には、温度センサ8が設けられている。この温度センサ8は、例えば熱電対から成り、棒状に形成されたセンサ部材が内側壁の1箇所に沿って上下に配置され、上記センサ部材の全長が保護管で覆われている。これは、温度センサ8としての熱電対が、収容容器1内に収容された硫黄固化体によって損傷を受けないようにするためである。なお、上記温度センサ8は、熱電対に限らず、他の検出手段を用いてもよい。
【0033】
また、上記収容容器1の上端面は開口しており、この上端開口部に開閉可能な蓋16が取り付けられている。図3においては、吐出管3が突設された側の半分の蓋16aが固定蓋として収容容器1の内壁面に溶接され、反対側の半分の蓋16bが上記固定蓋16aに蝶番等で結合されて可動蓋とされている。そして、この可動蓋16bを開いて上記収容容器1の内部に硫黄固化体を収容し、該可動蓋16bを閉じてロック部材17で固定するようになっている。なお、図2及び図3において、符号18は収容容器1を操作するための取っ手を示している。
【0034】
上記収容容器1の側面上端部には、図2に示すように、例えばステンレス等の金属製の吐出管3が水平方向に所定の長さで接続されている。この吐出管3は、その根元部において例えば連結管19を用いて収容容器1に着脱可能とされている。そして、上記収容容器1が取付ネジ13a,13bのネジ軸部を中心として垂直面内で回動することにより、吐出管3も矢印A,Bのように垂直面内で90度或いはそれ以上の角度で回動することとなる。なお、この吐出管3の先端部は、切り口が斜めに切断されており、先端開口部から流動状態の硫黄固化体が流出し易いようになっている。
【0035】
上記のように接続された吐出管3の外周面の略全体にわたって、吐出管用ヒーター4が取り付けられている。この場合、上記吐出管3の外周面に例えば帯状のラバーヒーターを巻き付け、その周りにステンレス等の金属製のラバーヒーター押え板を巻き付けて固定すればよい。或いは、上記吐出管3を構成する部材の肉厚部内に絶縁した状態で、吐出管用ヒーター4を埋め込んでもよい。
【0036】
上記支持台5の一側辺側、図2において収容容器1から吐出管3が延びている方向と反対側の側辺には、予熱ヒーター6が設けられている。すなわち、支持台5の当該側辺部から側面視で略L字形の支持腕20が延びており、この支持腕20の下面側にヒーター取付ケース21が取り付けられ、このヒーター取付ケース21の内側に施工面10と略平行になるように棒状の予熱ヒーター6が取り付けられている。この予熱ヒーター6は、例えば赤外線ヒーター、又は遠赤外線ヒーターから成る。
【0037】
上記予熱ヒーター6には、図2に示すように、施工面10と反対側の部位に熱の反射板22が設けられている。すなわち、上記ヒーター取付ケース21の内側にて、予熱ヒーター6の上方を半円弧状に取り囲むように熱の反射板22が取り付けられ、上記予熱ヒーター6から放射される熱を効率よく施工面10に向けて反射するようになっている。なお、この反射板22は、必ずしも設けなくてもよい。
【0038】
なお、図3において、符号23は収容容器用ヒーター2の電源コネクタを示し、符号24は吐出管用ヒーター4の電源コネクタを示し、符号25は上記予熱ヒーター6の電源コネクタを示しており、さらに、符号26a,26bは装置全体を持ち上げて運搬する際の取っ手を示している。
【0039】
次に、このように構成された目地材充填装置の使用及び動作について説明する。ここでは、図4に示すように、施工面10において例えば床面に碁盤目状に配列して仮接着された多数のタイル30,30,…相互間にできる隙間が目地31,31,…となり、この目地31,31,…に目地材を充填するとする。
【0040】
まず、目地材充填装置が図2及び図3に示すように組み立てられている。そして、図1において、収容容器用ヒーター2及び吐出管用ヒーター4並びに温度センサ8がヒーター用温度調節器7に接続され、予熱ヒーター6が予熱ヒーター用温度調節器11に接続されており、上記ヒーター用温度調節器7及び予熱ヒーター用温度調節器11が例えば交流電源に接続されている。そして、装置全体の主操作スイッチ(図示省略)を投入する。
【0041】
この状態で、図3に示す収容容器1の蓋のロック部材17を解除して可動蓋16bを開く。そして、例えば別個の加熱槽等で予め加熱溶融して流動状態とされた硫黄固化体を、柄杓等によってすくって上記収容容器1内に所定量だけ収容する。その後、上記可動蓋16bを閉じてロック部材17で固定する。このとき、上記ヒーター用温度調節器7の設定温度は、例えば150℃とされており、上記収容容器1の内部に収容された硫黄固化体を流動状態に保つようにされている。
【0042】
次に、図3に示す装置全体の取っ手26a,26bを握って持ち上げ、図4に示す施工面10の位置に運搬する。そして、これから目地材としての硫黄固化体を充填しようとする行又は列の目地31の軸線に対して、図3に示す吐出管3の長手方向が合致するように位置決めして、上記施工面10上に支持台5を載置する。いま、例えば施工面10の一番左側の行の目地31aに硫黄固化体を充填しようとする。このとき、その目地31aの外側の端部に、図3に示す吐出管3の先端開口部が向き、施工面10の内側に予熱ヒーター6が位置するように位置決めする。
【0043】
次に、図2に示す収容容器1の取っ手18を握って持ち上げ、該収容容器1の全体を取付ネジ13a,13bのネジ軸部を中心として回動し、吐出管3を矢印A方向に回動する。すると、図5に示すように、上記吐出管3の先端部が施工面10の表面に近付いて行き、矢印A方向に90度回動したときに最も施工面10の表面に接近する。このとき、上記収容容器1内に収容された硫黄固化体の粘度に応じて、吐出管3が適当な角度になったときにその先端開口部から流動状態の硫黄固化体が吐出される。
【0044】
このようにして、図5に示すように収容容器1及び吐出管3を適当な角度で傾けた状態で、吐出管3の先端開口部から硫黄固化体を吐出させながら、上記施工面10上をキャスタ9により支持台5を矢印C方向に移動させて行く。このとき、上記施工面10において、支持台5の移動方向の前方側を上記予熱ヒーター6によって予め加熱しながら移動する。この結果、図4において、上記目地31aの全長にわたって硫黄固化体を連続的に充填することができる。
【0045】
このようにして、上記目地31aに対する目地材の充填が終了したら、図5において収容容器1及び吐出管3を矢印B方向に回動して、図2の状態に戻す。そして、次の充填作業が、図4において施工面10の一番下の列の目地31bであるとすると、その目地31bの外側の端部に、吐出管3の先端開口部が向き、施工面10の内側に予熱ヒーター6が位置するように位置決めする。その後は、上述と同様に操作して上記目地31bの全長にわたって硫黄固化体を連続的に充填すればよい。
【0046】
以上のことを繰り返すことにより、施工面10の全面にわたって各目地31,31,…に目地材を連続的に充填することができる。このとき、図5に示すように、支持台5を矢印C方向に移動させて行くだけで、移動方向の前方側の施工面10を予熱できるので、目地部の予熱と目地材の充填作業とを1人でも実施することができる。
【0047】
図6は、吐出管3の先端部の他の実施形態を示す断面図である。この実施形態は、吐出管3の先端部を、柔軟性材料を用いて形成し、先端開口部からの目地材(硫黄固化体)の吐出幅を可変としたものである。すなわち、上記吐出管3の先端部に、例えばテフロン(登録商標)などの柔軟性材料から成る先端部材3aを着脱可能に挿入し、その先端の切り口が斜めに切断されて先端開口部から流動状態の硫黄固化体が流出し易いようになっている。この斜めの先端開口部は、吐出管3の内径程度の寸法dだけ外方に延びており、その先端開口部を施工面10に押し付ける度合いを変えることによって硫黄固化体の吐出幅を可変とすることができる。したがって、タイルやパネル相互間の目地幅の大小に応じて硫黄固化体を適切な幅で充填することができる。
【0048】
なお、以上の説明では、目地材として前述の硫黄固化体を用いる場合について述べたが、本発明はこれに限られず、常温では固体で所定温度以上に加熱されることにより溶融して流動状態となる目地材であるならば、どのようなものにも適用することができる。また、施工面10の目地の状態により、施工面10を予め加熱する必要がない場合は、予熱ヒーター6は設けなくてもよい。さらに、施工面10が平面でなく凸凹している場合は、キャスタ9による支持台5の移動がスムーズにできないので、収容容器1及び吐出管3の組立て体を上記支持台5から取り外して、作業員が取っ手18を握って手持ち式に操作して施工面10の目地31に目地材を充填してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明による目地材充填装置の実施形態を示す概要図である。
【図2】上記目地材充填装置の具体的な構造を示す正面図である。
【図3】図2の平面図である。
【図4】本発明の目地材充填装置で目地材を充填する施工面のタイル及び目地を示す平面図である。
【図5】本発明の目地材充填装置の使用状態を示す正面図である。
【図6】吐出管の先端部の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1…収容容器
2…収容容器用ヒーター
3…吐出管
4…吐出管用ヒーター
5…支持台
6…予熱ヒーター
7…ヒーター用温度調節器
8…温度センサ
9…キャスタ
10…施工面
11…予熱ヒーター用温度調節器
18…取っ手
22…熱の反射板
30…タイル
31…目地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温では固体で所定温度以上に加熱されることにより溶融して流動状態となる目地材を内部に収容する収容容器と、
この収容容器の外周面を加熱し内部に収容された目地材を流動状態とするように温度調節可能とされた収容容器用ヒーターと、
上記収容容器の側面上端部に接続され該収容容器内の目地材を先端開口部から吐出する所定長さの吐出管と、
この吐出管の外周面を加熱し内部を通る目地材を流動状態に保つように温度調節可能とされた吐出管用ヒーターと、
を備え、上記流動状態の目地材を施工面の目地に充填することを特徴とする目地材充填装置。
【請求項2】
上記収容容器内には、その内部に収容された流動状態の目地材の温度を検出する温度センサを備えたことを特徴とする請求項1記載の目地材充填装置。
【請求項3】
上記吐出管の先端部は、柔軟性材料を用いて形成し、先端開口部からの目地材の吐出幅を可変としたことを特徴とする請求項1又は2記載の目地材充填装置。
【請求項4】
上記収容容器は、底面に向きが回転自在のキャスタを備えて施工面上を移動可能とされた支持台上に、その上端部を支点として垂直面内で回動可能に支持されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の目地材充填装置。
【請求項5】
上記支持台の一側辺側には、該支持台の移動方向の前方側にて施工面を所定温度に加熱するように温度調節可能とされた予熱ヒーターを設けたことを特徴とする請求項4記載の目地材充填装置。
【請求項6】
上記予熱ヒーターには、施工面と反対側の部位に熱の反射板を設けたことを特徴とする請求項5記載の目地材充填装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−43508(P2006−43508A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224285(P2004−224285)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】