説明

目地材

【課題】ケーソン等の隣接配置される構造物間の目地部に地震や不等沈下等で大きな変位が生じてもこれを許容して漏洩を防止することができる目地材を提供する。
【解決手段】弾性素材のシート状のベース部材11を目地部aを跨いで隣接する構造物b,bに固定し、ベース部材11の中央部近傍に構造物間の許容すべき変位量に対応する長さの弾性素材による環状の展開部材12を設けて一体部13とし、ベース部材11の限界を越える変位により破断を誘導する展開部材破断誘導部15を形成し、切断された展開部材12の両端部がそれぞれベース部材11の破断端部と連続して展開可能に形成する。平常時には、ベース部材11によって構造物の目地部間の目地部充填材の漏洩を防止し、異常時には、展開部材12が展開部材破断誘導部15で破断し、ベース部材11の破断端部と展開部材12の破断端部とが連続することで、大きな変位を許容して漏洩を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、目地材に関し、ケーソンなどの隣接配置される構造物の目地部に跨るように設けて、地震や不等沈下などで構造物間に変位が生じてもこれを許容して漏洩などを防止できるようにするものであり、これまでの目地材に比べ大きな変位、例えば1000mm程度の大変位にも対応できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
構造物を隣接して配置する場合に、地震などによる目地部の変位の許容や漏洩防止などのため目地部を跨ぐように目地材を設置することが行われており、例えば構造物のひとつである海上廃棄物処理場の管理型護岸ケーソン間の目地部にも目地材が目地部を跨ぐように設置され、地震などの変位や不等沈下などが生じても追従して漏洩を防止できるようにしている。
【0003】
このような目地材としては、特許文献1の目地の遮水構造があり、図7に示すように、目地部aを挟むケーソンb、bの側壁にスリット状の開口が形成された溝c、cを上下方向に形成しておき、これらの溝c、c内に収まってスリットから抜け出さずに係止される係止部1,1を備え、係止部1,1に目地部aの幅より十分に広い幅の弾性材製の遮水膜2を設けるようにし、この遮水膜2を受圧膜2aとその外側の受圧膜2aより幅の広い変位膜2bとの多重構造とした二重膜構造の目地材3が開示されている。
【0004】
また、特許文献2の帯状止水板では、図8に示すように、コンクリート構造b,bの打継目部分に配置される帯状止水板4の中央部に第1の壁部5aと第2の壁部5bとで囲まれる中空部5を形成し、少なくとも第1の壁部5aを幅方向に沿うジャバラ状に形成されて構成したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−146659号公報
【特許文献2】特開平9−177108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような2重膜構造の目地材3や中空部にジャバラ状の壁部5aを備えた帯状止水板4では、大きな変位に対応できるように変位膜2bを幅広くしたり、ジャバラ状の壁部5aを長くすると、収納のためのスペースの確保が難しくなるという問題がある。
また、2重膜構造の目地材3では、大きな変位が生じる場合に、図7(b)に示すように、幅の狭い受圧膜2aの破断位置によっては幅の広い変位膜2bの係止部1との連結部分に損傷dが発生し、変位後の変位膜2bでの漏洩防止性能に悪影響を及ぼす恐れが生じるという問題がある。
【0007】
さらに、両端部を、目地部を跨いで構造物に固定し、中間部を折り畳むようにした目地材もあるが、大きな変位に対応して折り畳み部分を幅方向に長くすると、目地幅を超えて固定部(アンカー部)にかかる場合があり、アンカーとの接触によりゴム板などに損傷が生じてしまうという問題もある。
【0008】
この発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、ケーソンなどの隣接配置される構造物間の目地部に地震や不等沈下などで大きな変位が生じてもこれを許容して漏洩を防止することができる目地材を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
大きな変位に対応できる目地材について鋭意検討を重ねた結果、通常の状態から大きな変位が生じる場合に必要な変位量に対応する長さの展開部材を設けておき、これをスムーズに展開させることで、変位の許容と漏洩防止とを行うことができることから、破断させて展開する位置を予め定めておくことができれば良いことが分かり、この発明を完成したものである。
【0010】
上記従来技術の課題を解決するこの発明の請求項1記載の目地材は、目地部を挟んで隣接配置される構造物の当該目地部に跨って介設され前記構造物間の変位を許容して漏洩を防止する目地材であって、弾性素材によってシート状に形成されて前記目地部を跨いで両端部が隣接する前記構造物に固定され目地部充填材の漏洩を防止するベース部材と、このベース部材の前記目地部の中央部近傍に設けられ前記隣接する構造物間の許容すべき変位量に対応する長さの弾性素材による環状の展開部材とを備え、前記展開部材には、前記隣接する構造物間の前記ベース部材の限界を越える変位により破断する展開部材破断誘導部を形成するとともに、当該切断された展開部材の両端部がそれぞれ前記ベース部材の破断端部と連続して展開可能に形成して構成したことを特徴とするものである。
【0011】
この発明の請求項2記載の目地材は、請求項1記載の構成に加え、前記ベース部材には、前記隣接する構造物間の前記ベース部材の限界を越える変位による破断を誘導するベース部材破断誘導部を形成して構成したことを特徴とするものである。
【0012】
この発明の請求項3記載の目地材は、請求項1または2記載の構成に加え、前記展開部材は、弾性素材内に補強材が内層されるとともに、前記展開部材破断誘導部には、前記補強材を内層せずに構成してあることを特徴とするものである。
【0013】
この発明の請求項4記載の目地材は、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記ベース部材に補強材を内層するとともに、前記展開部材の前記補強材を前記展開部材破断誘導部で折り返してその両端部を前記ベース部材に内層して構成したことを特徴とするものである。
【0014】
この発明の請求項5記載の目地材は、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記展開部材を、前記ベース部材上に折り重ねるようにするとともに、折り重ね部同士を接合部材で接合して折り重ね状態を保持可能に構成したことを特徴とするものである。
【0015】
この発明の請求項6記載の目地材は、請求項1〜5のいずれかに記載の構成に加え、前記展開部材の前記展開部材破断誘導部を接合部材で構成して環状に構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明の請求項1記載の目地材によれば、目地部を挟んで隣接配置される構造物の当該目地部に跨って介設され前記構造物間の変位を許容して漏洩を防止する目地材であって、弾性素材によってシート状に形成されて前記目地部を跨いで両端部が隣接する前記構造物に固定され目地部充填材の漏洩を防止するベース部材と、このベース部材の前記目地部の中央部近傍に設けられ前記隣接する構造物間の許容すべき変位量に対応する長さの弾性素材による環状の展開部材とを備え、前記展開部材には、前記隣接する構造物間の前記ベース部材の限界を越える変位により破断する展開部材破断誘導部を形成するとともに、当該切断された展開部材の両端部がそれぞれ前記ベース部材の破断端部と連続して展開可能に形成して構成したので、平常時には、ベース部材によって構造物の目地部間の目地部充填材の漏洩防止を行うことができ、変位が生じる異常時には、ベース部材の中央部近傍に設けた環状の展開部材が、展開部材破断誘導部で破断されることで、破断したベース部材の破断端部と展開部材の破断端部とを連続して展開させることで、大きな変位を許容することができる。また、破断すべき箇所を展開部材破断誘導部として設けてあるので、破断後のベース部材および展開部材に損傷が生じることなく連続させることができ、漏洩防止性能を維持することができるとともに、これらの長さ分の変位を許容することができる。
【0017】
この発明の請求項2記載の目地材によれば、前記ベース部材には、前記隣接する構造物間の前記ベース部材の限界を越える変位による破断を誘導するベース部材破断誘導部を形成して構成したので、ベース部材に設けたベース部材破断誘導部で、確実に破断を誘導してその部分から破断させることができ、想定した破断により大きな変位を許容して破断後も何の支障もなく漏洩防止性能を維持することができる。
【0018】
この発明の請求項3記載の目地材によれば、前記展開部材は、弾性素材内に補強材が内層されるとともに、前記展開部材破断誘導部には、前記補強材を内層せずに構成してあるので、展開部材破断誘導部を、補強材を内層しない状態とすることで、確実に破断を誘導してその部分から破断させることができ、想定した破断により大きな変位を許容して破断後も何の支障もなく漏洩防止性能を維持することができる。
【0019】
この発明の請求項4記載の目地材によれば、前記ベース部材に補強材を内層するとともに、前記展開部材の前記補強材を前記展開部材破断誘導部で折り返してその両端部を前記ベース部材に内層して構成したので、ベース部材を補強材で補強できるとともに、展開部材の補強材で確実に補強することができる。さらに、破断時の展開部材の補強材をベース部材の補強材と連続させることができ、大きな変位を許容する場合に、一層確実に損傷を回避して破断後も漏洩防止性能を確保することができる。
【0020】
この発明の請求項5記載の目地材によれば、前記展開部材を、前記ベース部材上に折り重ねるようにするとともに、折り重ね部同士を接合部材で接合して折り重ね状態を保持可能に構成したので、輸送や施工の際に展開部材が膨らむことなどを防止でき、取り扱いを容易にできるとともに、施工後もそのまま折り重ね状態を保持することで、変位が生じる場合にもスムーズに展開させることができる。
【0021】
この発明の請求項6記載の目地材によれば、前記展開部材の前記展開部材破断誘導部を接合部材で構成して環状に構成したので、大きな変位に対して接合部材による接合が開放されることで破断を誘導することができるとともに、接合部材で環状にすることができ、展開部材の製作が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明の目地材の一実施の形態にかかる平面図およびモデル化した平面説明図である。
【図2】この発明の目地材の一実施の形態にかかる変位後の平面図である。
【図3】この発明の目地材の他の一実施の形態にかかる目地材のみの斜視図およびその部分拡大図である。
【図4】この発明の目地材の他の一実施の形態にかかる正面からの概略斜視図である。
【図5】この発明の目地材のさらに他の一実施の形態にかかる部分正面図である。
【図6】この発明の目地材の他の一実施の形態にかかるモデル化した平面説明図である。
【図7】従来の目地の遮水構造の平面図である。
【図8】従来の帯状止水板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明を実施するための形態について図面を参照して詳細に説明する。
この発明の目地材10は、例えば、海上廃棄物処理場の管理型護岸ケーソンb、b間の目地部aを跨ぐように鉛直方向に取り付けられ、目地部aの相対変位を可能に連結して廃棄物などの漏洩を防止するものであり、地震時などにおけるケーソンb、b間に、例えばケーソンb,bの隣接方向と直交する方向に1000mm程度の大変位が生じても漏洩防止状態(廃棄物の漏出防止状態や漏入防止状態など)を保持できるようにしたものである(図2参照)。
【0024】
この目地材10は、弾性素材によってシート状に形成されて目地部aを跨いで両端部が隣接する構造物であるケーソンb,bに鉛直方向に沿って固定され通常時には、目地部aに充填される目地部充填材19の漏洩を防止するベース部材11と、このベース部材11の目地部aの中央部近傍に設けられ隣接する構造物であるケーソンb,b間の許容すべき変位量に対応する長さの弾性素材による環状の展開部材12とを備えており、ベース部材11の目地部aの中央部近傍の一体部13で一体化される展開部材12には、隣接する構造物であるケーソンb,b間のベース部材11の限界を越える変位により破断を誘導する展開部材破断誘導部15が形成されるとともに、当該切断された展開部材12の両端部がそれぞれベース部材11の破断端部と連続して展開可能に形成してある。
【0025】
この目地材10のベース部材11は、ゴムや合成樹脂などの弾性素材で作られた内外層11a,11bを備え、その内部の中間層として補強材11cが内層されて積層状態とされ、幅方向両端部がケーソンb,bなどの構造物への碇着部11d,11dとされてアンカーボルト16に押え板17を介してナット18で締め付けられる。
なお、ベース部材の固定方法はこれに限らず、直接アンカーボルトで取り付けずに、アンカーボルトで固定した固定治具を介してベース部材を固定するなど、他の方法によっても良い。
また、ケーソンにスリット状の開口が形成された溝を鉛直方向に設けておき、これらの溝内に収まってスリットから抜け出さずに係止される係止部を目地材の両端部に形成し、係止部を溝および開口に差し込むようにして固定するようにすることもできる。
【0026】
また、このベース部材11には、目地部aに対応する中央近傍の展開部材12が設けられる部分である一体部13に、ベース部材11の破断を誘導する部分としてベース部材破断誘導部14を形成するために、この部分だけゴムや合成樹脂の弾性素材を薄くして構成したり、切り欠きを形成しておき、補強材11cを連続させて内層した状態で他の部分に比べ強度が若干小さくなるようにし、限界を超える変位に対してはこの部分から破断が生じるように誘導する。
したがって、この目地材10の補強材で全体が補強されたベース部材11により、平常時は目地部aがベース部材11で塞がれた状態となり、ケーソンb,b間に充填されたアスファルトマスチックなどの目地部充填材19の漏洩を防止するとともに、小さな地震などによるある程度の小変位に対してはその強度によりケーソンによる管理護岸内に埋め立てられる廃棄物などの漏洩を防止することができる十分な耐圧強度が確保してある。
【0027】
さらに、この目地材10では、大きな変位を許容して廃棄物などの漏洩防止状態を保持するため展開部材12がベース部材11の中央部近傍の一体部13に設けられ、例えば別々に製作したものを加硫などで一体にしたり、接着剤などで接着して一体化され、この展開部材12は許容すべき変位量に対応する長さ(周長)の弾性素材により環状に成形してあり、ベース部材11との一体部13には、展開部材破断誘導部15が設けられ、破断が生じる位置を規制できるようにしてある。
【0028】
この展開部材12は、ゴムや合成樹脂などの弾性素材で作られた内外層12a,12bを備え、その内部の中間層として補強材12cが内層されて積層状態とされ、補強材12cの両端部を一体部13で折り返すようにしてベース部材11の碇着部11d,11dに内層してあり、内外層12a,12bの弾性素材が環状に形成してある。こうすることで、展開部材12の補強材12cは、ベース部材11の碇着部11d,11dとともに、アンカーボルト16,16によって固定されるようになっている。
そして、この目地材10では、展開部材12の環状部分をベース部材11の碇着部11d,11dのアンカーボルト16,16間の内側に略平坦状に折り畳んである。この展開部材12の折り畳み状態は、許容すべき変位量に応じた長さに展開部材12の周長が定められることから折り重ね部分は2重ないしそれ以上に折り重ねられた状態となることもある。
【0029】
また、この展開部材12には、ベース部材11との一体部13に、展開部材破断誘導部15を形成するためにこの一体部13の両端部分で補強材12cが折り返されて非内層状態としてあり、ゴムや合成樹脂の弾性素材だけで構成してあり、他の部分に比べ強度が低くなるようにし、限界を超える変位に対してはこの展開部材破断誘導部15部分から破断が生じるように誘導する。
【0030】
このように構成した目地材10では、大きな変位がケーソンb,b間に生じた場合には、ベース部材11および展開部材12の一体部13に設けたべース部材破断誘導部14および展開部材破断誘導部15により、他の部分に比べて強度が低くなっているので、限界を超える変位に対してはこの一体部13のベース部材破断誘導部14と展開部材破断誘導部15で破断が生じることになり、ベース部材11の破断端部11e,11eと展開部材12の破断端部12d,12d同士が連続した状態となってベース部材11と展開部材12が幅方向に1つの連続した部材を構成することになる。
これにより、目地材10の幅方向の長さが、ベース部材11の幅に展開部材12の周長が加わった長さとなり、大きな変位を許容しつつ一体に連続することで漏洩防止状態を保持することができ、ケーソンb,b間に充填されたアスファルトマスチックなどの目地部充填材19の漏洩を防止するとともに、埋め立てられる廃棄物などの漏洩防止状態を維持することができる。
【0031】
この目地材10では、限界を超える変位に対してベース部材11および展開部材12のベース部材破断誘導部14および展開部材破断誘導部15で破断を誘導して破断させることで、ベース部材11の破断端部11e,11eと展開部材12の破断端部12d,12dとを連続させて1つの長尺な目地材として大きな変位を許容する。すなわち、大変位状態では、ベース部材11の一方の碇着部11d、ベース部材11の一方の破断端部11e、展開部材12の一方の破断端部12d、展開部材の他方の破断端部12d、ベース部材11の他方の破断端部11e、ベース部材11の他方の碇着部11dまでが連続した1つの長尺な目地材10となる。
【0032】
このような目地材10の大変位許容状態では、ベース部材破断誘導部14および展開部材破断誘導部15を形成するため、内外層11a,11bの弾性素材を薄くするとともに、補強材12cを非埋設状態として破断を誘導するようにしたが、長尺に展開した状態でも補強材12cは連続状態となっており、大変位後の変位の許容や漏洩防止状態を維持することができる。
こうすることで、大変位を許容した状態では、目地材10のどの部分にも補強材12cが内層された積層構造となり、大変位を許容した状態での強度を確保することで、一層確実に漏洩を防止することができる。
【0033】
なお、ベース部材および展開部材の補強材は、ゴムや合成樹脂の内外層の間の1層の中間層として配置する場合に限らず、複数層設けてそれぞれを異なる素材のものとしたり、同一の素材のものとすることもでき、補強層を内外層の外側に配置するようにしたり、これらを組合わせても良く、平常時に必要な限界強度によって素材や配置などを適宜決定すれば良いものである。
また、上記実施の形態では、目地材にベース部材破断誘導部と展開部材破断誘導部の両方を設けるようにしたが、少なくとも展開部材破断誘導部を設け、ベース部材破断誘導部を省略するようにして良く、この場合でも展開部材破断誘導部によって一体部での強度が低下することで、ベース部材の破断もこの部分から生じるように誘導することができるようになる。
【0034】
次に、このような目地材10は、隣接する構造物であるケーソンb,bの目地部aを跨ぐように目地部aに沿って鉛直方向に取り付けられるが、展開部材12が大変位に対応する周長とし、環状に形成してあることから、施工や運搬の際に膨らんだ状態となると取り扱いが煩雑になる。
【0035】
そこで、例えば図3に示すように、この目地材10では、展開部材12の折り畳み状態を保持できるように、長さ方向に間隔をあけて接合部材20として粘着テープやベルクロファスナなどを介在させて粘着力やベルクロファスナの結合力によって形状を保持するようにしてある。
こうすることで、施工の際に展開部材12が折り畳み状態から膨らむことなどがなく、容易に取り扱うことができるとともに、施工後もそのまま保持させることで、折り畳みが一方に片寄ることもなく大きな変位に対しても保持された折り畳み状態から変位させるようにしてスムーズに展開させることができる。
また、接合部材21としてゴムや合成樹脂、あるいは金属製のバンドを用い、図4に示すように、折り畳んだ状態の展開部材12を外側から押えるように間隔をあけて接着やボルトなどで取り付けることで形状を保持するようにすることもでき、ベース部材11の強度に比べ、接合部材21の強度を小さくすることで、施工後もそのままの状態としておくこともできる。
【0036】
また、この目地材10では、図3に示すように、展開部材12の展開部材破断誘導部15として接合部材20として粘着テープあるいはベルクロファスナで破断端部12dとなる両端部同士を連結して平常時に展開部材12を環状状態になるようにしても良く、補強材12cを非埋設状態とするかわりに接合部材20としての粘着テープあるいはベルクロファスナによっても他の部分より強度を低くすることができ、大きな変位に対してこの部分から破断させることができる。こうすることで、ベース部材11と展開部材12とを分離して製造することができ、環状に連結することも容易にできる。
【0037】
さらに、目地材10は、ケーソンb,bの目地部aに沿って鉛直方向に配置されることから下端部はケーソンb,bを設置するための基礎部分に接することになるが、この下端接地部に、図5に示すように、ケーソンb,bの目地部aの長さを超えて接地部用目地部材22を形成したり、取り付けるようにする。例えば接地部止水部材22としてブラシ状のものやのれん状のものを下方に突き出すようにベース部材11および展開部材12の下端部に沿って形成したり、取り付けておくことで、ケーソンb,bの大きな変位が生じても海底などに不陸があっても追従させて漏洩を防止することができる。
【0038】
また、この目地材10のケーソンb,bなど構造物に目地部aを跨いで取り付ける場合に、上記実施の形態では、ベース部材11をケーソンb,bに取り付け、その外側に展開部材12を折り畳むようにして取り付けたが、図6に示すように、展開部材12をケーソンb,b側としてその外側にベース部材11を配置して取り付けるようにしても良く、ベース部材11で目地材10全体をカバーして保護するようにでき、埋め立て側の廃棄物などが隙間に入り込むことなどを確実に防止できるとともに、施工状態での目地材10の取り付け厚みを抑えることもできる。これにより、限界を超える変位に対してスムーズに展開させることもできる。
【0039】
なお、上記実施の形態では、目地材の施工対象の構造物として管理型護岸ケーソンの目地部を例に、護岸内部の廃棄部などの漏洩を防止する場合について説明したが、これに限らず他の用途のケーソンなど大きな変位を許容して固形物や液体など漏出や漏入を防止する必要がある目地部に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
a 目地部
b ケーソン(構造物)
10 目地材
11 ベース部材
11a 内層
11b 外層
11c 補強材
11d 碇着部
11e 破断端部
12 展開部材
12a 内層
12b 外層
12c 補強材
12d 破断端部
13 一体部
14 ベース部材破断誘導部
15 展開部材破断誘導部
16 アンカーボルト
17 押え板
18 ナット
19 目地部充填材
20 接合部材(粘着テープ、折り畳み形状保持)
21 接合部材(粘着テープ、第2破断誘導部)
22 接地部用目地部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目地部を挟んで隣接配置される構造物の当該目地部に跨って介設され前記構造物間の変位を許容して漏洩を防止する目地材であって、
弾性素材によってシート状に形成されて前記目地部を跨いで両端部が隣接する前記構造物に固定され目地部充填材の漏洩を防止するベース部材と、
このベース部材の前記目地部の中央部近傍に設けられ前記隣接する構造物間の許容すべき変位量に対応する長さの弾性素材による環状の展開部材とを備え、
前記展開部材には、前記隣接する構造物間の前記ベース部材の限界を越える変位により破断する展開部材破断誘導部を形成するとともに、当該切断された展開部材の両端部がそれぞれ前記ベース部材の破断端部と連続して展開可能に形成して構成したことを特徴とする目地材。
【請求項2】
前記ベース部材には、前記隣接する構造物間の前記ベース部材の限界を越える変位により破断を誘導するベース部材破断誘導部を形成して構成したことを特徴とする請求項1記載の目地材。
【請求項3】
前記展開部材は、弾性素材内に補強材が内層されるとともに、前記展開部材破断誘導部には、前記補強材を内層せずに構成してあることを特徴とする請求項1または2記載の目地材。
【請求項4】
前記ベース部材に補強材を内層するとともに、前記展開部材の前記補強材を前記展開部材破断誘導部で折り返してその両端部を当該ベース部材に内層して構成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の目地材。
【請求項5】
前記展開部材を、前記ベース部材上に折り重ねるようにするとともに、折り重ね部同士を接合部材で接合して折り重ね状態を保持可能に構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の目地材。
【請求項6】
前記展開部材の前記展開部材破断誘導部を接合部材で構成して環状に形成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の目地材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−57324(P2012−57324A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199732(P2010−199732)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000196624)西武ポリマ化成株式会社 (60)
【Fターム(参考)】