目地用継手構造及びその形成方法
【課題】 伸縮性を有する目地材を備える目地用継手構造において、土圧や水圧等の外力によって目地材が変形した場合であっても、継手の機能が安定して発揮される目地用継手構造を提供する。
【解決手段】 ボックスカルバート2a、2b間の目地部5においては、目地部5の外方側に形成された流動性及び伸縮性を有する目地材7と、水密性及び伸縮性を有し、目地材7に対して目地部5の内方側に設けられた帯状の止水継手1とから構成されている。止水継手1は、目地材7側に位置する第1シート体11と、第1シート体11の内方側に位置し、その幅方向に撓み部29を有する第2シート体12とを備えている。止水継手1は、合成ゴムと繊維シート17a、17bとの積層よりなる素材から形成されている。そして、第1シート体11は、引張力により破断する直前の状態においては、第2シート体12の伸縮機能を阻害しないように、種々の強度設定及び配置がなされている。
【解決手段】 ボックスカルバート2a、2b間の目地部5においては、目地部5の外方側に形成された流動性及び伸縮性を有する目地材7と、水密性及び伸縮性を有し、目地材7に対して目地部5の内方側に設けられた帯状の止水継手1とから構成されている。止水継手1は、目地材7側に位置する第1シート体11と、第1シート体11の内方側に位置し、その幅方向に撓み部29を有する第2シート体12とを備えている。止水継手1は、合成ゴムと繊維シート17a、17bとの積層よりなる素材から形成されている。そして、第1シート体11は、引張力により破断する直前の状態においては、第2シート体12の伸縮機能を阻害しないように、種々の強度設定及び配置がなされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は目地用継手構造及びその形成方法に関し、特に、対向する筒形状の地下構造物によって形成される目地部をシールするための目地用継手構造及びその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、対向する筒形状の地下構造物によって形成される目地部をシールするために、種々の目地用継手構造が提案されている。これらの中で、比較的小型で簡単な構造でありながら、高深度における大きな土圧に耐えると共に、目地部の大きな伸び変位に対応することができる目地用継手構造について、以下に説明する。
【0003】
図19は特許文献1で開示された地下構築物の継手を適用した暗渠の斜視図であり、図20は図19で示したXX−XXラインの拡大断面図である。
【0004】
これらの図を参照して、コンクリートよりなる円筒形の暗渠51a、51bは、各々の一方の端部同士が継手52によって接続されている。暗渠51a、51bは、その端部の内方側に段差が設けられており、この段差部分に筒状の枠体56a、56bが固定されている。そして、枠体56a、56bを介して、暗渠51a、51bに継手52がボルト67a、67b及びナット68a、68bによって固定されている。又、継手52の外方側には、スポンジゴム等からなる目地材59が設けられている。
【0005】
継手52は、目地材59側に配置された弾性材よりなる外周可撓止水部材53と、外周可撓止水部材53の内方側に配置された鋼材等よりなる耐力部材55と、耐力部材55の内方側に配置された弾性材よりなる内周可撓止水部材54とから主に構成されている。
【0006】
外周可撓止水部材53は、その中央部に外方側に突出するU字状のくびれ部62が形成されている。又、耐力部材55は、その中央部に内方側に突出するU字状の湾曲部66を備えている。更に、内周可撓止水部材54は、その中央部に内方側に突出するU字状のくびれ部64が形成されている。従って、継手52は、外周可撓止水部材53と耐力部材55との間に空間58を有することになる。
【0007】
継手52は上記のように構成されている。従って、地盤変動等によって目地間が開き、目地材59が破断することで土砂等が目地材59内に侵入し、外周可撓止水部材53に大きな土圧が作用しても、外周可撓止水部材53の内方側への変形は耐力部材55の抗張力によって支持される。従って、外周可撓止水部材53の変形が抑止されるので、継手52は高深度の大きな土圧に耐えることが可能となる。更に、内周可撓止水部材54に土圧が作用する虞が無いので、目地間の大きな開きに対しても内周可撓止水部材54のシール機能を発揮することが可能となる。従って、継手52は、目地部の大きな伸び変位に対応することが可能となる。
【特許文献1】特開平7−109763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような従来の目地用継手構造では、目地間の開きに対して、目地材はその開きに十分追従することができない材料で形成されているため、目地材と地下構造物との間に空隙が発生し、土砂等が目地材内に侵入し易い。
【0009】
そこで、目地間の開きに十分追従することが可能となるように、伸縮性を有する目地材の使用が検討されている。しかしながら、このような目地材は流動性があり、従来の目地用継手構造では、目地材は通常時の土圧等の外力によって内方側へ変形してしまうため、目地材の内方側に配置される継手の機能に影響を与える虞が有る。
【0010】
ここで、再度図20を参照して、従来の継手52においては、外周可撓止水部材53と耐力部材55との間の空間58に弾性体からなる充填材を充填する方法も提案されている。このような継手52であれば、伸縮性を有する目地材の内方側への変形を抑制することが可能となる。しかしながら、このような継手52においては、目地間が開いた場合、外周可撓止水部材53と耐力部材55との変形によって充填材が圧縮されるため、この圧縮に対する反力が充填材から外周可撓止水部材53と耐力部材55とに作用することになる。従って、継手52を固定しているボルト67a、67b及びナット68a、68b付近において、継手52に大きな荷重が作用することになる。
【0011】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、伸縮性を有する目地材を備える目地用継手構造において、土圧や水圧等の外力によって目地材が変形した場合であっても、継手の機能が安定して発揮される目地用継手構造及びその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、対向する筒形状の地下構造物によって形成される目地部をシールするための目地用継手構造であって、目地部の外方側の全周に形成され、流動性及び伸縮性を有する目地材と、目地材に対して目地部の内方側の全周であって、その幅方向の両側の各々が地下構造物の各々に固定された帯状の止水継手とを備え、止水継手は、水密性及び伸縮性を有する材料よりなり、目地部において目地材側に位置する第1シート体と、第1シート体に対して内方側に位置する第2シート体とからなり、第1シート体は、引張力により破断する直前の状態において第2シート体の単独の伸縮機能を阻害しないように構成されるものである。
【0013】
このように構成すると、引張力による第1シート体の破断前の変形が第2シート体の伸縮機能に影響を与えない。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、第1シート体と第2シート体とは、各々の引張強度及び引張弾性係数は略同一であると共に、第2シート体の幅方向における撓みは、第1シート体の撓みより大きいものである。
【0015】
このように構成すると、目地部の間隔が増大した場合、第1シート体に加わる引張力は第2シート体に加わる引張力より大きくなる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、第1シート体と第2シート体とは略平行に配置され、各々の引張強度は略同一であると共に、第1シート体の引張弾性係数は、第2シート体の引張弾性係数より大きいものである。
【0017】
このように構成すると、目地部の間隔が増大した場合、第1シート体に加わる引張力は第2シート体に加わる引張力より大きくなる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、第1シート体と第2シート体とは地下構造物の各々に固定される近傍部分で一体化され、一体化された部分の引張強度は第1シート体の引張強度より大きいものである。
【0019】
このように構成すると、目地部の間隔が増大していくと、まず、近傍部分以外における第1シート体が破断する。
【0020】
請求項5記載の発明は、対向する筒形状の地下構造物によって形成される目地部をシールするための目地用継手構造の形成方法であって、第1シート体と、第1シート体に対して内方側に位置する第2シート体とを備え、第1シート体は引張力により破断する直前の状態において第2シート体の単独の伸縮機能を阻害しないように構成される、水密性及び伸縮性を有する止水継手を目地部の全周に設置する工程と、止水継手の外方側の全周に、常温硬化性の液状体を目地材として充填する工程と、充填された液状体を硬化させる工程とを備えたものである。
【0021】
このように構成すると、目地材の重量による第1シート体の変形が低減する。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、引張力による第1シート体の破断前の変形が第2シート体の伸縮機能に影響を与えないため、第2シート体のシール機能が安定して発揮される。
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、目地部の間隔が増大した場合、第1シート体に加わる引張力は第2シート体に加わる引張力より大きくなるため、第1シート体がまず破断すると共に、第1シート体と第2シート体とに同一素材を用いることができるため、コスト的に有利となる。
【0024】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、目地部の間隔が増大した場合、第1シート体に加わる引張力は第2シート体に加わる引張力より大きくなるため、第1シート体がまず破断すると共に、第2シート体に撓み等を設ける必要がないため、配置の自由度が向上する。
【0025】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、目地部の間隔が増大していくと、まず、近傍部分以外における第1シート体が破断するため、第2シート体の機能が確実に発揮される。
【0026】
請求項5記載の発明は、目地材の重量による第1シート体の変形が低減するため、液状体の充填量が必要以上に増大しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1はこの発明の第1の実施の形態による目地用継手構造の使用形態を示すボックスカルバートの概略斜視図であり、図2は図1で示したII−IIラインの拡大断面図であり、図3は図1で示したIII−IIIラインの拡大断面図である。
【0028】
これらの図を参照して、地下構造物である筒形状のボックスカルバート2a、2bは、各々が対向することによって目地部5を形成している。この目地部5においては、目地部5の外方側の全周に形成された、常温硬化タイプの液状体、例えばアクアファルトよりなる流動性及び伸縮性を有する目地材7と、水密性及び伸縮性を有し、目地材7に対して目地部5の内方側の全周に設けられた帯状の止水継手1とから構成されている。
【0029】
尚、アクアファルトは商品名であり、アスファルト乳剤、硬化材及び高吸水性材料を含む混合組成物から構成されている。アクアファルトは、幅方向の圧縮力又は引張力に対して、約0.5〜1.5倍程度の幅に変形することが可能であり、防水性にも優れている。
【0030】
又、止水継手1は、天然ゴム(NR)及びスチレン・ブタジエンゴム(SBR)よりなる合成ゴムと、ナイロン系の繊維シートとの積層構造によりなる材料で形成されている。従って、上述した水密性及び伸縮性を有する止水継手1となる。
【0031】
止水継手1は、目地材7側に位置する第1シート体11と、第1シート体11の内方側に位置し、その幅方向に撓み部29を有する第2シート体12とを備えている。第1シート体11と第2シート体12とは、その幅方向におけるボックスカルバート2a、2bの近傍付近で一体化されている。そして、この一体化部分からボックスカルバート2a、2bの各々に向かって延びるシート状の一対の継手翼部14が形成されている。継手翼部14は、ボックスカルバート2a、2bの各々に埋設されており、埋設部分においては継手翼部14の各々の両面から突き出た形状の突起体15a、15bが形成されている。
【0032】
又、第1シート体11と第2シート体12とは、上述した通り、合成ゴムと繊維シートとの積層構造によりなる材料で形成されている。そして、各々の積層構造も略同一に形成されている。即ち、第1シート体11と第2シート体12とは同一素材を用いているため、コスト的に有利な止水継手1となる。
【0033】
ここで、このような目地用継手構造の形成方法について説明する。
【0034】
まず、止水継手1を目地部5の全周に設置する。この時、上述したように、第1シート体11の内方側に第2シート体12が位置するようにする。次に、止水継手1の外方側の全周に、硬化前のアクアファルトを充填し、硬化させる事によって、目地材7を形成する。このようにして、図1で示した目地用継手構造が形成される。
【0035】
尚、アクアファルトは常温で硬化するため、充填時に内方側から順次硬化し、過度に第1シート体11に重量が加わらない。従って、第1シート体11の内方への変形が小さくなるため、アクアファルトが必要以上の充填量となる虞が無い。
【0036】
次に、目地材7に土圧や水圧等の外力が作用した時の動作及び効果について説明する。
【0037】
図4は図1で示した目地用継手構造の目地材に外力が作用した状態を示す図であって、図3に対応するものであり、図5は図1で示した目地用継手構造の止水継手に作用する外力の状態を示した模式図である。
【0038】
これらの図を参照して、土圧や水圧等によって、図4の矢印で示した外力が目地材7の外方に作用すると、目地材7は伸縮性及び流動性を有しているため、内方側に変形しようとする。すると、目地材7の内方側に位置している第1シート体11に、上述した外力が目地材7を介して作用する。この時、外力は目地材7を介しているため、通常は集中荷重ではなく、図5で示したように分布荷重となって第1シート体11に作用することになる。
【0039】
上述した分布荷重によって、第1シート体11は内方側に変形しようとする。即ち、第1シート体11の幅方向に引張力が作用することになる。ここで、第1シート体11は、この引張力に対して内方側へ変形し続けることが無いように、繊維シート17a、17b内の繊維の種類や量等が調節されている。従って、第1シート体11は、引張力による破断前の変形においては、第2シート体12の伸縮機能に影響を与える虞が無い。即ち、目地材7に土圧や水圧等による外力が作用しても、第2シート体12のシール機能が安定して発揮される。
【0040】
尚、止水継手1における第1シート体11の引張強度及び引張弾性係数を、目地材を打設する際の内方側への圧力に対して、第1シート体11の破断及び過剰な変形を防止するように設定すれば、目地材の型枠としての機能を発揮する。第1シート体11をこのように設定することによって、コスト的に有利な目地材の打設が可能となる。
【0041】
次に、地盤変動等によって目地間隔が増大した時の動作及び効果について説明する。
【0042】
図6は図1で示した目地部の目地間隔が増大した状態を示す図であって、図3に対応するものである。
【0043】
図を参照して、地盤変動等により、ボックスカルバート2a、2bに矢印で示す方向に力が作用すると、目地部5の間隔が大きくなる。この時、目地材7は伸縮性を有しているため、目地間の開きに対して追従することができるので、外部からボックスカルバート2a、2bに浸入しようとする地下水等に対しては、目地材7によるシール機能が発揮される。
【0044】
この時、第1シート体11は目地材7と同様に目地間の開きに対する幅方向への縦ひずみが生じている。しかしながら、第2シート体12においては、撓み部29が第2シート体12に縦ひずみが生じる状態に至るまでの余剰部分となるため、撓み部29の余剰部分の減少のみの変形となっている。
【0045】
前述した通り、第1シート体11と第2シート体12とは同一素材によって形成されている。即ち、図6の状態にあっては、第1シート体11に加わる引張力は、第1シート体11が破断する前までは第2シート体12に加わる引張力よりも大きくなる。
【0046】
又、このような状態においては、継手翼部14にも引張力が作用することになる。そして、継手翼部14は突起体15a、15bを備えている。継手翼部14に引張力が作用することによって、突起体15a、15bはボックスカルバート2aに図における右側へ押し付けられ、圧縮される。従って、止水継手1の抜け止め効果と共に、継手翼部14におけるシール性が向上する。
【0047】
図7は図6で示した状態から更に目地間隔が増大した状態を示す図である。
【0048】
図を参照して、図6の状態から更に目地間隔が増大すると、上述した通り、第1シート体11に加わる引張力は第2シート体12に加わる引張力よりも大きいため、まず第1シート体11が破断すると共に、目地材7もボックスカルバート2bから分離する。すると、目地材7と第1シート体11とを貫通する空隙21が発生する。この空隙21を通り、地下水が矢印で示すようにボックスカルバート2a、2b内に浸入しようとする。しかしながら、第2シート体12には、第2シート体12を破断させる引張力が作用していないため、第2シート体12のシール機能が発揮され、地下水の浸入を防止することになる。
【0049】
更に、第1シート体11と第2シート体12との一体化部分においては、第1シート体11及び第2シート体12の各々には繊維シート17a、17bが各々に1枚埋設されているのに対し、繊維シート17a、17bの2枚が埋設されている。即ち、一体化部分の引張強度は、第1シート体11の引張強度よりも大きくなる。従って、目地間隔の増大に対して、確実に第1シート体11の一体化されていない部分が最初に破断することになるため、第2シート体12の機能が確実に発揮される。
【0050】
次に、継手翼部14のボックスカルバート2a、2bへの埋設開始部分19における、継手翼部14の効果について説明する。
【0051】
図8は図3で示した継手翼部の地下構造物への埋設開始部分における引張力に対する伸び(縦ひずみ)と、伸びに対する厚みの変化(横ひずみ)について示したグラフである。
【0052】
尚、図で示すデータaは図3で示した継手翼部14、即ち、合成ゴムと繊維シートとの積層シートよりなるものであり、データbは総合成ゴムのシートによるものである。又、x1は継手翼部14が破断する伸び量であり、y1は各々のシートに引張力が作用していない初期状態での厚みである。
【0053】
図を参照して、まず総合成ゴムのシートよりなるデータbについて説明する。総合成ゴムのシートに引張力が作用すると、総合成ゴムのシートはその伸びxが増加し続けると共に、厚みyが減少し続ける。次に、図3で示した継手翼部14よりなるデータaに注目すると、継手翼部14に総合成ゴムのシートと同一の引張力が作用すると、総合成ゴムのシートと同様に伸びxの増加と共に、その厚みyが減少する。しかしながら、その厚みyの減少は、総合成ゴムのシートと比較すると極めて少ないものとなっている。即ち、同一の引張力を前提とした場合、合成ゴムと繊維シートとの積層構造よりなる継手翼部14は、総合成ゴムのシートと比べ、縦ひずみと共に横ひずみも小さくなる。
【0054】
ここで、再度図6を参照して、上述した通り、継手翼部14は、総合成ゴムのシートと比べ、横ひずみが小さくなる。従って、図6の状態にあっては、継手翼部14の埋設開始部分19の厚さの減少が総合成ゴムのシートと比べて緩和されることになる。そのため、埋設開始部分19を介しての地下水の浸入による止水継手1のシール性の低下が抑制される。
【0055】
再度図8を参照して、継手翼部14においては、引張力によって伸びがx1に達した時、破断することになる。即ち、総合成ゴムのシートと比べ、継手翼部14の縦弾性係数が大きい。従って、継手翼部14においては縦ひずみ自体も減少することになり、同一の引張力を前提とした場合、継手翼部14は総合成ゴムのシートに比べて更に横ひずみの少ないものとなる。
【0056】
次に、止水継手の継手翼部を地下構造物へ埋設する方法について説明する。
【0057】
図9は図3で示した止水継手の継手翼部を地下構造物へ埋設する手順を示した模式図である。
【0058】
まず、(1)で示されているように、地下構造物であるボックスカルバート2に溝22を形成する。次に、(2)で示されているように、溝22内に止水継手1の継手翼部14を挿入する。そして、(3)で示されているように、継手翼部14が挿入された溝22内にコンクリート25を継手翼部14の両側から流し込み、型枠23によって外方を塞ぐ。その後、コンクリート25が硬化し、型枠23を外すことで、止水継手2における継手翼部14のボックスカルバート2への埋設が完了する。
【0059】
次に、図3で示した止水継手1の製造方法について説明する。
【0060】
図10は図3で示した止水継手の製造方法を示す工程図である。
【0061】
まず、(1)で示されているように、合成ゴム内に繊維シート17bを埋設した帯状の第1シート用部材8と、合成ゴム内に繊維シート17aを埋設した帯状の第2シート用部材9とを用意する。第1シート用部材8と第2シート用部材9とは、各々の幅方向及び長手方向の大きさが同一となるように形成されている。そして、第1シート用部材8の幅方向の両端部付近の各々には、図における下方に突出する複数の突出体15bが形成されている。又、第2シート用部材9の幅方向の両端部付近の各々には、図における上方に突出する複数の突出体15aが突出体15bと対応する位置に形成されると共に、第2シート用部材9の幅方向の中央部には、図における上方側に撓み部29が形成されている。
【0062】
そして、上述した第1シート用部材8と第2シート用部材9とを、各々が重なり合うように配置すると、(2)で示されている状態となる。このように配置された第1シート用部材と第2シート用部材との重ね合わせ部27を加熱し、各々の合成ゴムを加硫反応によって一体化させる。すると、第1シート体11、第2シート体12、継手翼部14及び突出体15a、15bを備えた止水継手1が完成する。
【0063】
図11はこの発明の第2の実施の形態による目地用継手構造を示す断面図であって、第1の実施の形態の図3に対応するものである。
【0064】
尚、説明に当たっては、基本的には第1の実施の形態によるものと同一であるため、その相違点を中心に説明する。
【0065】
図を参照して、この実施の形態にあっては、第1シート体11と第2シート体12との一体化開始部分18a、18bの位置が、第1の実施の形態と相対的に異なっている。即ち、一体化開始部分18a、18bの各々は、継手翼部14の埋設開始部分19の各々よりも幅方向における中央側に位置している。
【0066】
上述したように一体化開始部分18a、18bを位置させると、それらの部分と埋設開始部分19との間の部分の引張強度が相対的に大きくなるので、目地間の開き等による止水継手1のボックスカルバート2a、2b付近での破断を防止することが可能となる。即ち、第1シート体11は、確実に止水継手1の幅方向の中央部付近で破断するため、第2シート体12の機能が更に安定して発揮する。
【0067】
図12はこの発明の第3の実施の形態による目地用継手構造を示す断面図であって、第2の実施の形態の図11に対応するものである。
【0068】
尚、説明に当たっては、基本的には第2の実施の形態によるものと同一であるため、その相違点を中心に説明する。
【0069】
図を参照して、この実施の形態にあっては、既設ボックスカルバート37と新設ボックスカルバート38とによって形成された目地部5における目地用継手構造である。そして、止水継手1を既設ボックスカルバート37に固定する方法が大きく異なっている。
【0070】
止水継手1は、既設ボックスカルバート37の目地部5側の面に沿って、その長手方向の全周にフランジ部35が形成されている。フランジ部35の既設ボックスカルバート37側の面には、複数の止水用突起体36が形成されている。又、止水継手1のフランジ部35の新設ボックスカルバート38側には、押え板36とワッシャー41とが配置されている。そして、フランジ部35、押え板36及びワッシャー41は、既設ボックスカルバート37に設置されたアンカーボルト・ナット43によって固定されている。
【0071】
止水継手1はこのように構成されているため、既設構造物への設置に対しても確実に固定することが可能となる。更に、上述した止水用突起体36がアンカーボルト・ナット43によって既設ボックスカルバート37に密着することで、止水継手1のシール性が向上することになる。又、目地間の開き等が生じた時には、第2の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0072】
尚、上記の各実施の形態では、目地用継手構造はボックスカルバート間の目地部において適用されているが、対向する他の筒形状の地下構造物によって形成される目地部あれば、同様に適用することができる。
【0073】
又、上記の各実施の形態では、アクアファルトによる目地材であるが、流動性及び伸縮性を有していれば、他の材料であっても良い。
【0074】
更に、上記の各実施の形態では、止水継手における種々の構成が特定されているが、第1シート体は、引張力により破断する直前の状態において第2シート体の単独の伸縮機能を阻害しないように構成されていれば、他の構成であっても良い。その場合、止水継手は水密性及び伸縮性を有していれば、他の材料であっても良い。
【0075】
更に、上記の各実施の形態では、止水継手に使用する合成ゴムは天然ゴム(NR)とスチレン・ブタジエンゴム(SBR)とにより構成されているが、例えば、クロロプレンゴム(CR)やエチレンプロピレンゴム(EPT)を含む合成ゴム等、種々の合成ゴムであっても良い。
【0076】
更に、上記の各実施の形態では、止水継手に使用する繊維シートの繊維はナイロン系であるが、ナイロン系以外の素材であっても良い。又、合成ゴムに繊維が埋設されていれば、シート状でなくても良い。
【0077】
更に、上記の各実施の形態では、第1シート体及び第2シート体の素材が特定されているが、第1シート体及び第2シート体の各々の引張強度及び引張弾性係数が略同一であれば、他の素材を使用しても良い。
【0078】
更に、上記の各実施の形態では、第1シート体は撓みが無く、第2シート体は特定形状の撓みを有しているが、第2シート体の幅方向における撓みが、第1シート体の撓みより相対的に大きな形状であれば良い。又、撓みの形状は、蛇腹状等、他の形状であっても良い。
【0079】
更に、上記の各実施の形態では、第1シート体と第2シート体とは各々の引張強度及び引張弾性係数が略同一であるが、第2シート体に撓み部を設けず、第1シート体と第2シート体とを略平行に配置する構造であれば、第1シート体の引張弾性係数を第2シート体の引張弾性係数より大きくすれば良い。
【0080】
更に、上記の各実施の形態では、第1シート体と第2シート体とは一体化されているが、第1シート体と第2シート体とが別々に構成されていても良い。
【0081】
更に、上記の各実施の形態では、第1シート体と第2シート体との一体化部分の引張強度は第1シート体の引張強度より大きくなるように構成されているが、一体化部分の引張強度と第1シート体の引張強度とを同程度に構成するようにしても良い。
【0082】
更に、上記の各実施の形態では、止水継手の継手翼部は地下構造物に埋設することによって、地下構造物に固定されているが、例えば、ボルト・ナットによる固定等、他の方法で地下構造物に固定されていても良い。その場合、継手翼部は無くても良い。
【実施例】
【0083】
ここで、第1の実施の形態による目地用継手構造の止水継手1について実験をおこなった。まず、目地間隔の増大に対する止水継手の伸縮追従性確認実験である実施例1について説明する。
【0084】
図13は実施例1における図3で示した止水継手を実験装置に設置した状態を示した断面図であり、図14は図13で示したXIV−XIVラインの断面図であり、図15は図13で示したD部における拡大図である。
【0085】
本実施例においては、島津製作所製のアムスラー万能試験機に、本実施例用に制作した固定治具31を取り付け、この固定治具31に止水継手1を固定させ、図の矢印の方向に力を加えることで止水継手1を変形させた。そして、固定治具31間を目地間隔と仮定して、止水継手1の単位幅あたりの荷重を導き出した。
【0086】
図13及び図14を参照して、まず、止水継手1の種々の寸法について、以下に列挙する。止水継手1において、aは140mm、bは100mm、cは140mm、dは20mm、eは20mm、fは45mm、gは30mm、hは15mm、iは25mm、jは25mm、kは15mm、lは6mm、mは15mm、oは2.5mm、pは2.5mm、qは3mm、rは100mm、第2シート体12の幅方向の実質的な延べ長さzは180mmとした。即ち、図13で示した断面の止水継手1を、100mm幅で切り出した状態である。又、固定治具31間の寸法、即ち、初期の目地間隔は106mmとなる。
【0087】
次に、止水継手1の素材の構成について説明する。
【0088】
図15を参照して、止水継手は、天然ゴム(NR)とスチレン・ブタジエンゴム(SBR)とを1:1で混合した合成ゴムと、厚さ0.5mmのナイロン系の繊維シート17a、17bとを積層することで構成した。この時、継手翼部14におけるsは1.5mm、tは0.5mm、uは2.0mm、vは0.5mm、wは1.5mmとした。又、第1シート体11のxは0.5mm、第2シート体12のyは0.5mmとした。
【0089】
このように止水継手1を設定し、上述した通り、アムスラー試験機による実験をおこなった。尚、本実施例における目地間隔の設計変形量を50mmとし、本実施例により止水継手1に加えられる引張力と、地盤沈下による鉛直方向の力とが同時に作用した場合を想定した目地間隔の変形量を80mmとした。更に、本実施例においては、第2シート体12が完全に破断するまで、止水継手1を変形させ続けた。
【0090】
本実施例の結果について、以下に説明する。
【0091】
図16は実施例1による目地間隔の変形量と止水継手の単位幅あたりの荷重との関係を示すグラフである。
【0092】
尚、図においてデータAは図13〜15で示した止水継手1によるものであり、データBは図13及び図14で示した止水継手と同一寸法の総合成ゴムによる止水継手によるものである。又、X1は上述した目地間隔の設計変形量であり、X2は上述した鉛直方向の力が同時に作用した場合を想定した目地間隔の変形量である。更に、F1は第1シート体の規格強度であり、F2は第2シート体の規格強度である。
【0093】
図を参照して、本実施例において、止水継手は目地間隔の変形量が約160mm、即ち目地間隔が266mmとなった時、完全に破断することがわかった。即ち、目地間隔の変形量X1に対して十分な追従性と耐力とを有することになる。又、目地間隔の変形量X2に対しても、十分な追従性を有する。更に、X2における目地間隔の変形量となった場合においても、設計地下水圧0.098MPaが作用した時にシート体に加わる力である16.17kN/mや、これに相当する変形に対しても、十分耐えることが確認された。
【0094】
尚、目地間隔の変形量が約60mmに達した時、第1シート体に埋設されている繊維シートが破断した。そのため、単位幅あたりの荷重が急激に低下した。しかしながら、第1シート体の合成ゴム部分においては破断せず、残存している状態となった。そして、目地間隔の変形量が100mmを超えた付近から、第2シート体に対しても荷重が作用するようになり、目地間隔の変形量が約160mmに達した時、第2シート体が破断し、荷重が急激に低下した。この時、継手翼部における突起体の破断等は全く確認されず、本実施例における突起体の形状及び強度等についても問題がないことがわかった。
【0095】
次に、目地間隔のずれ、即ち、地盤沈下等による地下構造物間の位置のずれに対する沈下追従性確認実験である実施例2について、以下に説明する。
【0096】
図17は実施例2における図3で示した止水継手の実験中の状態を示した断面図である。
【0097】
図を参照して、本実施例においては止水継手1の寸法、素材、実験装置等は全て実施例1と同様とし、固定治具31の移動方向のみを変更した。即ち、固定治具31の各々は図において相対的に上下方向に移動することで、止水継手1に引張力による荷重を加えた。
【0098】
そして、図におけるYを沈下量とし、実施例1と同様の手順で実験をおこなった。尚、本実施例における設計沈下量は100mmとした。
【0099】
本実施例の結果について、以下に説明する。
【0100】
図18は実施例2による沈下量と止水継手の単位幅あたりの荷重との関係を示すグラフである。
【0101】
尚、図においてデータAは図17で示した止水継手1によるものであり、データBは実施例1と同様の総合成ゴムによる止水継手によるものである。又、Y1は上述した設計沈下量である。
【0102】
図を参照して、止水継手は沈下量が約200mmに達した時に破断した。従って、設計沈下量Y1の100mmに対しても、十分な追従性と耐力とを有することがわかった。
【0103】
尚、沈下量が約100mmに達した時、第1シート体に埋設されている繊維シートが破断した。そのため、単位幅あたりの荷重が急激に低下した。しかしながら、第1シート体の合成ゴム部分においては破断せず、残存している状態となった。そして、沈下量が150mmを超えた付近から、第2シート体に対しても荷重が作用するようになり、沈下量が約200mmに達した時、第2シート体が破断し、荷重が急激に低下した。この時、継手翼部における突起体の破断等は全く確認されず、本実施例における突起体の形状及び強度等についても問題がないことがわかった。
【0104】
このように、実施例1及び実施例2における実験によって、止水継手1は、設計により想定される変形に対して、十分な追従性を有することが確認できた。更に、アクアファルトの打設圧や地下水圧等に対しても、十分な耐力を有することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】この発明の第1の実施の形態による目地用継手構造の使用形態を示すボックスカルバートの概略斜視図である。
【図2】図1で示したII−IIラインの拡大断面図である。
【図3】図1で示したIII−IIIラインの拡大断面図である。
【図4】図3で示した目地用継手構造の目地材に外力が作用した状態を示す図である。
【図5】図4で示した目地用継手構造の止水継手に作用する外力の状態を示した模式図である。
【図6】図3で示した目地部の目地間隔が増大した状態を示す図である。
【図7】図6で示した状態から更に目地間隔が増大した状態を示す図である。
【図8】図3で示した継手翼部の地下構造物への埋設開始部分における引張力に対する伸び(縦ひずみ)と、伸びに対する厚みの変化(横ひずみ)について示したグラフである。
【図9】図3で示した止水継手の継手翼部を地下構造物へ埋設する手順を示した模式図である。
【図10】図3で示した止水継手の製造方法を示す工程図である。
【図11】この発明の第2の実施の形態による目地用継手構造を示す断面図である。
【図12】この発明の第3の実施の形態による目地用継手構造を示す断面図である。
【図13】実施例1における図3で示した止水継手を実験装置に設置した状態を示した断面図である。
【図14】図13で示したXIV−XIVラインの断面図である。
【図15】図13で示したD部における拡大図である。
【図16】実施例1による目地間隔の変形量と止水継手の単位幅あたりの荷重との関係を示すグラフである。
【図17】実施例2における図3で示した止水継手の実験中の状態を示した断面図である。
【図18】実施例2による沈下量と止水継手の単位幅あたりの荷重との関係を示すグラフである。
【図19】従来の地下構築物の継手を適用した暗渠の斜視図である。
【図20】図19で示したXX−XXラインの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0106】
1…止水継手
2…ボックスカルバート
5…目地部
7…目地材
11…第1シート体
12…第2シート体
14…継手翼部
17…繊維シート
29…撓み部
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【技術分野】
【0001】
この発明は目地用継手構造及びその形成方法に関し、特に、対向する筒形状の地下構造物によって形成される目地部をシールするための目地用継手構造及びその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、対向する筒形状の地下構造物によって形成される目地部をシールするために、種々の目地用継手構造が提案されている。これらの中で、比較的小型で簡単な構造でありながら、高深度における大きな土圧に耐えると共に、目地部の大きな伸び変位に対応することができる目地用継手構造について、以下に説明する。
【0003】
図19は特許文献1で開示された地下構築物の継手を適用した暗渠の斜視図であり、図20は図19で示したXX−XXラインの拡大断面図である。
【0004】
これらの図を参照して、コンクリートよりなる円筒形の暗渠51a、51bは、各々の一方の端部同士が継手52によって接続されている。暗渠51a、51bは、その端部の内方側に段差が設けられており、この段差部分に筒状の枠体56a、56bが固定されている。そして、枠体56a、56bを介して、暗渠51a、51bに継手52がボルト67a、67b及びナット68a、68bによって固定されている。又、継手52の外方側には、スポンジゴム等からなる目地材59が設けられている。
【0005】
継手52は、目地材59側に配置された弾性材よりなる外周可撓止水部材53と、外周可撓止水部材53の内方側に配置された鋼材等よりなる耐力部材55と、耐力部材55の内方側に配置された弾性材よりなる内周可撓止水部材54とから主に構成されている。
【0006】
外周可撓止水部材53は、その中央部に外方側に突出するU字状のくびれ部62が形成されている。又、耐力部材55は、その中央部に内方側に突出するU字状の湾曲部66を備えている。更に、内周可撓止水部材54は、その中央部に内方側に突出するU字状のくびれ部64が形成されている。従って、継手52は、外周可撓止水部材53と耐力部材55との間に空間58を有することになる。
【0007】
継手52は上記のように構成されている。従って、地盤変動等によって目地間が開き、目地材59が破断することで土砂等が目地材59内に侵入し、外周可撓止水部材53に大きな土圧が作用しても、外周可撓止水部材53の内方側への変形は耐力部材55の抗張力によって支持される。従って、外周可撓止水部材53の変形が抑止されるので、継手52は高深度の大きな土圧に耐えることが可能となる。更に、内周可撓止水部材54に土圧が作用する虞が無いので、目地間の大きな開きに対しても内周可撓止水部材54のシール機能を発揮することが可能となる。従って、継手52は、目地部の大きな伸び変位に対応することが可能となる。
【特許文献1】特開平7−109763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような従来の目地用継手構造では、目地間の開きに対して、目地材はその開きに十分追従することができない材料で形成されているため、目地材と地下構造物との間に空隙が発生し、土砂等が目地材内に侵入し易い。
【0009】
そこで、目地間の開きに十分追従することが可能となるように、伸縮性を有する目地材の使用が検討されている。しかしながら、このような目地材は流動性があり、従来の目地用継手構造では、目地材は通常時の土圧等の外力によって内方側へ変形してしまうため、目地材の内方側に配置される継手の機能に影響を与える虞が有る。
【0010】
ここで、再度図20を参照して、従来の継手52においては、外周可撓止水部材53と耐力部材55との間の空間58に弾性体からなる充填材を充填する方法も提案されている。このような継手52であれば、伸縮性を有する目地材の内方側への変形を抑制することが可能となる。しかしながら、このような継手52においては、目地間が開いた場合、外周可撓止水部材53と耐力部材55との変形によって充填材が圧縮されるため、この圧縮に対する反力が充填材から外周可撓止水部材53と耐力部材55とに作用することになる。従って、継手52を固定しているボルト67a、67b及びナット68a、68b付近において、継手52に大きな荷重が作用することになる。
【0011】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、伸縮性を有する目地材を備える目地用継手構造において、土圧や水圧等の外力によって目地材が変形した場合であっても、継手の機能が安定して発揮される目地用継手構造及びその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、対向する筒形状の地下構造物によって形成される目地部をシールするための目地用継手構造であって、目地部の外方側の全周に形成され、流動性及び伸縮性を有する目地材と、目地材に対して目地部の内方側の全周であって、その幅方向の両側の各々が地下構造物の各々に固定された帯状の止水継手とを備え、止水継手は、水密性及び伸縮性を有する材料よりなり、目地部において目地材側に位置する第1シート体と、第1シート体に対して内方側に位置する第2シート体とからなり、第1シート体は、引張力により破断する直前の状態において第2シート体の単独の伸縮機能を阻害しないように構成されるものである。
【0013】
このように構成すると、引張力による第1シート体の破断前の変形が第2シート体の伸縮機能に影響を与えない。
【0014】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、第1シート体と第2シート体とは、各々の引張強度及び引張弾性係数は略同一であると共に、第2シート体の幅方向における撓みは、第1シート体の撓みより大きいものである。
【0015】
このように構成すると、目地部の間隔が増大した場合、第1シート体に加わる引張力は第2シート体に加わる引張力より大きくなる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成において、第1シート体と第2シート体とは略平行に配置され、各々の引張強度は略同一であると共に、第1シート体の引張弾性係数は、第2シート体の引張弾性係数より大きいものである。
【0017】
このように構成すると、目地部の間隔が増大した場合、第1シート体に加わる引張力は第2シート体に加わる引張力より大きくなる。
【0018】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明の構成において、第1シート体と第2シート体とは地下構造物の各々に固定される近傍部分で一体化され、一体化された部分の引張強度は第1シート体の引張強度より大きいものである。
【0019】
このように構成すると、目地部の間隔が増大していくと、まず、近傍部分以外における第1シート体が破断する。
【0020】
請求項5記載の発明は、対向する筒形状の地下構造物によって形成される目地部をシールするための目地用継手構造の形成方法であって、第1シート体と、第1シート体に対して内方側に位置する第2シート体とを備え、第1シート体は引張力により破断する直前の状態において第2シート体の単独の伸縮機能を阻害しないように構成される、水密性及び伸縮性を有する止水継手を目地部の全周に設置する工程と、止水継手の外方側の全周に、常温硬化性の液状体を目地材として充填する工程と、充填された液状体を硬化させる工程とを備えたものである。
【0021】
このように構成すると、目地材の重量による第1シート体の変形が低減する。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、請求項1記載の発明は、引張力による第1シート体の破断前の変形が第2シート体の伸縮機能に影響を与えないため、第2シート体のシール機能が安定して発揮される。
【0023】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、目地部の間隔が増大した場合、第1シート体に加わる引張力は第2シート体に加わる引張力より大きくなるため、第1シート体がまず破断すると共に、第1シート体と第2シート体とに同一素材を用いることができるため、コスト的に有利となる。
【0024】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、目地部の間隔が増大した場合、第1シート体に加わる引張力は第2シート体に加わる引張力より大きくなるため、第1シート体がまず破断すると共に、第2シート体に撓み等を設ける必要がないため、配置の自由度が向上する。
【0025】
請求項4記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加えて、目地部の間隔が増大していくと、まず、近傍部分以外における第1シート体が破断するため、第2シート体の機能が確実に発揮される。
【0026】
請求項5記載の発明は、目地材の重量による第1シート体の変形が低減するため、液状体の充填量が必要以上に増大しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1はこの発明の第1の実施の形態による目地用継手構造の使用形態を示すボックスカルバートの概略斜視図であり、図2は図1で示したII−IIラインの拡大断面図であり、図3は図1で示したIII−IIIラインの拡大断面図である。
【0028】
これらの図を参照して、地下構造物である筒形状のボックスカルバート2a、2bは、各々が対向することによって目地部5を形成している。この目地部5においては、目地部5の外方側の全周に形成された、常温硬化タイプの液状体、例えばアクアファルトよりなる流動性及び伸縮性を有する目地材7と、水密性及び伸縮性を有し、目地材7に対して目地部5の内方側の全周に設けられた帯状の止水継手1とから構成されている。
【0029】
尚、アクアファルトは商品名であり、アスファルト乳剤、硬化材及び高吸水性材料を含む混合組成物から構成されている。アクアファルトは、幅方向の圧縮力又は引張力に対して、約0.5〜1.5倍程度の幅に変形することが可能であり、防水性にも優れている。
【0030】
又、止水継手1は、天然ゴム(NR)及びスチレン・ブタジエンゴム(SBR)よりなる合成ゴムと、ナイロン系の繊維シートとの積層構造によりなる材料で形成されている。従って、上述した水密性及び伸縮性を有する止水継手1となる。
【0031】
止水継手1は、目地材7側に位置する第1シート体11と、第1シート体11の内方側に位置し、その幅方向に撓み部29を有する第2シート体12とを備えている。第1シート体11と第2シート体12とは、その幅方向におけるボックスカルバート2a、2bの近傍付近で一体化されている。そして、この一体化部分からボックスカルバート2a、2bの各々に向かって延びるシート状の一対の継手翼部14が形成されている。継手翼部14は、ボックスカルバート2a、2bの各々に埋設されており、埋設部分においては継手翼部14の各々の両面から突き出た形状の突起体15a、15bが形成されている。
【0032】
又、第1シート体11と第2シート体12とは、上述した通り、合成ゴムと繊維シートとの積層構造によりなる材料で形成されている。そして、各々の積層構造も略同一に形成されている。即ち、第1シート体11と第2シート体12とは同一素材を用いているため、コスト的に有利な止水継手1となる。
【0033】
ここで、このような目地用継手構造の形成方法について説明する。
【0034】
まず、止水継手1を目地部5の全周に設置する。この時、上述したように、第1シート体11の内方側に第2シート体12が位置するようにする。次に、止水継手1の外方側の全周に、硬化前のアクアファルトを充填し、硬化させる事によって、目地材7を形成する。このようにして、図1で示した目地用継手構造が形成される。
【0035】
尚、アクアファルトは常温で硬化するため、充填時に内方側から順次硬化し、過度に第1シート体11に重量が加わらない。従って、第1シート体11の内方への変形が小さくなるため、アクアファルトが必要以上の充填量となる虞が無い。
【0036】
次に、目地材7に土圧や水圧等の外力が作用した時の動作及び効果について説明する。
【0037】
図4は図1で示した目地用継手構造の目地材に外力が作用した状態を示す図であって、図3に対応するものであり、図5は図1で示した目地用継手構造の止水継手に作用する外力の状態を示した模式図である。
【0038】
これらの図を参照して、土圧や水圧等によって、図4の矢印で示した外力が目地材7の外方に作用すると、目地材7は伸縮性及び流動性を有しているため、内方側に変形しようとする。すると、目地材7の内方側に位置している第1シート体11に、上述した外力が目地材7を介して作用する。この時、外力は目地材7を介しているため、通常は集中荷重ではなく、図5で示したように分布荷重となって第1シート体11に作用することになる。
【0039】
上述した分布荷重によって、第1シート体11は内方側に変形しようとする。即ち、第1シート体11の幅方向に引張力が作用することになる。ここで、第1シート体11は、この引張力に対して内方側へ変形し続けることが無いように、繊維シート17a、17b内の繊維の種類や量等が調節されている。従って、第1シート体11は、引張力による破断前の変形においては、第2シート体12の伸縮機能に影響を与える虞が無い。即ち、目地材7に土圧や水圧等による外力が作用しても、第2シート体12のシール機能が安定して発揮される。
【0040】
尚、止水継手1における第1シート体11の引張強度及び引張弾性係数を、目地材を打設する際の内方側への圧力に対して、第1シート体11の破断及び過剰な変形を防止するように設定すれば、目地材の型枠としての機能を発揮する。第1シート体11をこのように設定することによって、コスト的に有利な目地材の打設が可能となる。
【0041】
次に、地盤変動等によって目地間隔が増大した時の動作及び効果について説明する。
【0042】
図6は図1で示した目地部の目地間隔が増大した状態を示す図であって、図3に対応するものである。
【0043】
図を参照して、地盤変動等により、ボックスカルバート2a、2bに矢印で示す方向に力が作用すると、目地部5の間隔が大きくなる。この時、目地材7は伸縮性を有しているため、目地間の開きに対して追従することができるので、外部からボックスカルバート2a、2bに浸入しようとする地下水等に対しては、目地材7によるシール機能が発揮される。
【0044】
この時、第1シート体11は目地材7と同様に目地間の開きに対する幅方向への縦ひずみが生じている。しかしながら、第2シート体12においては、撓み部29が第2シート体12に縦ひずみが生じる状態に至るまでの余剰部分となるため、撓み部29の余剰部分の減少のみの変形となっている。
【0045】
前述した通り、第1シート体11と第2シート体12とは同一素材によって形成されている。即ち、図6の状態にあっては、第1シート体11に加わる引張力は、第1シート体11が破断する前までは第2シート体12に加わる引張力よりも大きくなる。
【0046】
又、このような状態においては、継手翼部14にも引張力が作用することになる。そして、継手翼部14は突起体15a、15bを備えている。継手翼部14に引張力が作用することによって、突起体15a、15bはボックスカルバート2aに図における右側へ押し付けられ、圧縮される。従って、止水継手1の抜け止め効果と共に、継手翼部14におけるシール性が向上する。
【0047】
図7は図6で示した状態から更に目地間隔が増大した状態を示す図である。
【0048】
図を参照して、図6の状態から更に目地間隔が増大すると、上述した通り、第1シート体11に加わる引張力は第2シート体12に加わる引張力よりも大きいため、まず第1シート体11が破断すると共に、目地材7もボックスカルバート2bから分離する。すると、目地材7と第1シート体11とを貫通する空隙21が発生する。この空隙21を通り、地下水が矢印で示すようにボックスカルバート2a、2b内に浸入しようとする。しかしながら、第2シート体12には、第2シート体12を破断させる引張力が作用していないため、第2シート体12のシール機能が発揮され、地下水の浸入を防止することになる。
【0049】
更に、第1シート体11と第2シート体12との一体化部分においては、第1シート体11及び第2シート体12の各々には繊維シート17a、17bが各々に1枚埋設されているのに対し、繊維シート17a、17bの2枚が埋設されている。即ち、一体化部分の引張強度は、第1シート体11の引張強度よりも大きくなる。従って、目地間隔の増大に対して、確実に第1シート体11の一体化されていない部分が最初に破断することになるため、第2シート体12の機能が確実に発揮される。
【0050】
次に、継手翼部14のボックスカルバート2a、2bへの埋設開始部分19における、継手翼部14の効果について説明する。
【0051】
図8は図3で示した継手翼部の地下構造物への埋設開始部分における引張力に対する伸び(縦ひずみ)と、伸びに対する厚みの変化(横ひずみ)について示したグラフである。
【0052】
尚、図で示すデータaは図3で示した継手翼部14、即ち、合成ゴムと繊維シートとの積層シートよりなるものであり、データbは総合成ゴムのシートによるものである。又、x1は継手翼部14が破断する伸び量であり、y1は各々のシートに引張力が作用していない初期状態での厚みである。
【0053】
図を参照して、まず総合成ゴムのシートよりなるデータbについて説明する。総合成ゴムのシートに引張力が作用すると、総合成ゴムのシートはその伸びxが増加し続けると共に、厚みyが減少し続ける。次に、図3で示した継手翼部14よりなるデータaに注目すると、継手翼部14に総合成ゴムのシートと同一の引張力が作用すると、総合成ゴムのシートと同様に伸びxの増加と共に、その厚みyが減少する。しかしながら、その厚みyの減少は、総合成ゴムのシートと比較すると極めて少ないものとなっている。即ち、同一の引張力を前提とした場合、合成ゴムと繊維シートとの積層構造よりなる継手翼部14は、総合成ゴムのシートと比べ、縦ひずみと共に横ひずみも小さくなる。
【0054】
ここで、再度図6を参照して、上述した通り、継手翼部14は、総合成ゴムのシートと比べ、横ひずみが小さくなる。従って、図6の状態にあっては、継手翼部14の埋設開始部分19の厚さの減少が総合成ゴムのシートと比べて緩和されることになる。そのため、埋設開始部分19を介しての地下水の浸入による止水継手1のシール性の低下が抑制される。
【0055】
再度図8を参照して、継手翼部14においては、引張力によって伸びがx1に達した時、破断することになる。即ち、総合成ゴムのシートと比べ、継手翼部14の縦弾性係数が大きい。従って、継手翼部14においては縦ひずみ自体も減少することになり、同一の引張力を前提とした場合、継手翼部14は総合成ゴムのシートに比べて更に横ひずみの少ないものとなる。
【0056】
次に、止水継手の継手翼部を地下構造物へ埋設する方法について説明する。
【0057】
図9は図3で示した止水継手の継手翼部を地下構造物へ埋設する手順を示した模式図である。
【0058】
まず、(1)で示されているように、地下構造物であるボックスカルバート2に溝22を形成する。次に、(2)で示されているように、溝22内に止水継手1の継手翼部14を挿入する。そして、(3)で示されているように、継手翼部14が挿入された溝22内にコンクリート25を継手翼部14の両側から流し込み、型枠23によって外方を塞ぐ。その後、コンクリート25が硬化し、型枠23を外すことで、止水継手2における継手翼部14のボックスカルバート2への埋設が完了する。
【0059】
次に、図3で示した止水継手1の製造方法について説明する。
【0060】
図10は図3で示した止水継手の製造方法を示す工程図である。
【0061】
まず、(1)で示されているように、合成ゴム内に繊維シート17bを埋設した帯状の第1シート用部材8と、合成ゴム内に繊維シート17aを埋設した帯状の第2シート用部材9とを用意する。第1シート用部材8と第2シート用部材9とは、各々の幅方向及び長手方向の大きさが同一となるように形成されている。そして、第1シート用部材8の幅方向の両端部付近の各々には、図における下方に突出する複数の突出体15bが形成されている。又、第2シート用部材9の幅方向の両端部付近の各々には、図における上方に突出する複数の突出体15aが突出体15bと対応する位置に形成されると共に、第2シート用部材9の幅方向の中央部には、図における上方側に撓み部29が形成されている。
【0062】
そして、上述した第1シート用部材8と第2シート用部材9とを、各々が重なり合うように配置すると、(2)で示されている状態となる。このように配置された第1シート用部材と第2シート用部材との重ね合わせ部27を加熱し、各々の合成ゴムを加硫反応によって一体化させる。すると、第1シート体11、第2シート体12、継手翼部14及び突出体15a、15bを備えた止水継手1が完成する。
【0063】
図11はこの発明の第2の実施の形態による目地用継手構造を示す断面図であって、第1の実施の形態の図3に対応するものである。
【0064】
尚、説明に当たっては、基本的には第1の実施の形態によるものと同一であるため、その相違点を中心に説明する。
【0065】
図を参照して、この実施の形態にあっては、第1シート体11と第2シート体12との一体化開始部分18a、18bの位置が、第1の実施の形態と相対的に異なっている。即ち、一体化開始部分18a、18bの各々は、継手翼部14の埋設開始部分19の各々よりも幅方向における中央側に位置している。
【0066】
上述したように一体化開始部分18a、18bを位置させると、それらの部分と埋設開始部分19との間の部分の引張強度が相対的に大きくなるので、目地間の開き等による止水継手1のボックスカルバート2a、2b付近での破断を防止することが可能となる。即ち、第1シート体11は、確実に止水継手1の幅方向の中央部付近で破断するため、第2シート体12の機能が更に安定して発揮する。
【0067】
図12はこの発明の第3の実施の形態による目地用継手構造を示す断面図であって、第2の実施の形態の図11に対応するものである。
【0068】
尚、説明に当たっては、基本的には第2の実施の形態によるものと同一であるため、その相違点を中心に説明する。
【0069】
図を参照して、この実施の形態にあっては、既設ボックスカルバート37と新設ボックスカルバート38とによって形成された目地部5における目地用継手構造である。そして、止水継手1を既設ボックスカルバート37に固定する方法が大きく異なっている。
【0070】
止水継手1は、既設ボックスカルバート37の目地部5側の面に沿って、その長手方向の全周にフランジ部35が形成されている。フランジ部35の既設ボックスカルバート37側の面には、複数の止水用突起体36が形成されている。又、止水継手1のフランジ部35の新設ボックスカルバート38側には、押え板36とワッシャー41とが配置されている。そして、フランジ部35、押え板36及びワッシャー41は、既設ボックスカルバート37に設置されたアンカーボルト・ナット43によって固定されている。
【0071】
止水継手1はこのように構成されているため、既設構造物への設置に対しても確実に固定することが可能となる。更に、上述した止水用突起体36がアンカーボルト・ナット43によって既設ボックスカルバート37に密着することで、止水継手1のシール性が向上することになる。又、目地間の開き等が生じた時には、第2の実施の形態と同様の効果を奏する。
【0072】
尚、上記の各実施の形態では、目地用継手構造はボックスカルバート間の目地部において適用されているが、対向する他の筒形状の地下構造物によって形成される目地部あれば、同様に適用することができる。
【0073】
又、上記の各実施の形態では、アクアファルトによる目地材であるが、流動性及び伸縮性を有していれば、他の材料であっても良い。
【0074】
更に、上記の各実施の形態では、止水継手における種々の構成が特定されているが、第1シート体は、引張力により破断する直前の状態において第2シート体の単独の伸縮機能を阻害しないように構成されていれば、他の構成であっても良い。その場合、止水継手は水密性及び伸縮性を有していれば、他の材料であっても良い。
【0075】
更に、上記の各実施の形態では、止水継手に使用する合成ゴムは天然ゴム(NR)とスチレン・ブタジエンゴム(SBR)とにより構成されているが、例えば、クロロプレンゴム(CR)やエチレンプロピレンゴム(EPT)を含む合成ゴム等、種々の合成ゴムであっても良い。
【0076】
更に、上記の各実施の形態では、止水継手に使用する繊維シートの繊維はナイロン系であるが、ナイロン系以外の素材であっても良い。又、合成ゴムに繊維が埋設されていれば、シート状でなくても良い。
【0077】
更に、上記の各実施の形態では、第1シート体及び第2シート体の素材が特定されているが、第1シート体及び第2シート体の各々の引張強度及び引張弾性係数が略同一であれば、他の素材を使用しても良い。
【0078】
更に、上記の各実施の形態では、第1シート体は撓みが無く、第2シート体は特定形状の撓みを有しているが、第2シート体の幅方向における撓みが、第1シート体の撓みより相対的に大きな形状であれば良い。又、撓みの形状は、蛇腹状等、他の形状であっても良い。
【0079】
更に、上記の各実施の形態では、第1シート体と第2シート体とは各々の引張強度及び引張弾性係数が略同一であるが、第2シート体に撓み部を設けず、第1シート体と第2シート体とを略平行に配置する構造であれば、第1シート体の引張弾性係数を第2シート体の引張弾性係数より大きくすれば良い。
【0080】
更に、上記の各実施の形態では、第1シート体と第2シート体とは一体化されているが、第1シート体と第2シート体とが別々に構成されていても良い。
【0081】
更に、上記の各実施の形態では、第1シート体と第2シート体との一体化部分の引張強度は第1シート体の引張強度より大きくなるように構成されているが、一体化部分の引張強度と第1シート体の引張強度とを同程度に構成するようにしても良い。
【0082】
更に、上記の各実施の形態では、止水継手の継手翼部は地下構造物に埋設することによって、地下構造物に固定されているが、例えば、ボルト・ナットによる固定等、他の方法で地下構造物に固定されていても良い。その場合、継手翼部は無くても良い。
【実施例】
【0083】
ここで、第1の実施の形態による目地用継手構造の止水継手1について実験をおこなった。まず、目地間隔の増大に対する止水継手の伸縮追従性確認実験である実施例1について説明する。
【0084】
図13は実施例1における図3で示した止水継手を実験装置に設置した状態を示した断面図であり、図14は図13で示したXIV−XIVラインの断面図であり、図15は図13で示したD部における拡大図である。
【0085】
本実施例においては、島津製作所製のアムスラー万能試験機に、本実施例用に制作した固定治具31を取り付け、この固定治具31に止水継手1を固定させ、図の矢印の方向に力を加えることで止水継手1を変形させた。そして、固定治具31間を目地間隔と仮定して、止水継手1の単位幅あたりの荷重を導き出した。
【0086】
図13及び図14を参照して、まず、止水継手1の種々の寸法について、以下に列挙する。止水継手1において、aは140mm、bは100mm、cは140mm、dは20mm、eは20mm、fは45mm、gは30mm、hは15mm、iは25mm、jは25mm、kは15mm、lは6mm、mは15mm、oは2.5mm、pは2.5mm、qは3mm、rは100mm、第2シート体12の幅方向の実質的な延べ長さzは180mmとした。即ち、図13で示した断面の止水継手1を、100mm幅で切り出した状態である。又、固定治具31間の寸法、即ち、初期の目地間隔は106mmとなる。
【0087】
次に、止水継手1の素材の構成について説明する。
【0088】
図15を参照して、止水継手は、天然ゴム(NR)とスチレン・ブタジエンゴム(SBR)とを1:1で混合した合成ゴムと、厚さ0.5mmのナイロン系の繊維シート17a、17bとを積層することで構成した。この時、継手翼部14におけるsは1.5mm、tは0.5mm、uは2.0mm、vは0.5mm、wは1.5mmとした。又、第1シート体11のxは0.5mm、第2シート体12のyは0.5mmとした。
【0089】
このように止水継手1を設定し、上述した通り、アムスラー試験機による実験をおこなった。尚、本実施例における目地間隔の設計変形量を50mmとし、本実施例により止水継手1に加えられる引張力と、地盤沈下による鉛直方向の力とが同時に作用した場合を想定した目地間隔の変形量を80mmとした。更に、本実施例においては、第2シート体12が完全に破断するまで、止水継手1を変形させ続けた。
【0090】
本実施例の結果について、以下に説明する。
【0091】
図16は実施例1による目地間隔の変形量と止水継手の単位幅あたりの荷重との関係を示すグラフである。
【0092】
尚、図においてデータAは図13〜15で示した止水継手1によるものであり、データBは図13及び図14で示した止水継手と同一寸法の総合成ゴムによる止水継手によるものである。又、X1は上述した目地間隔の設計変形量であり、X2は上述した鉛直方向の力が同時に作用した場合を想定した目地間隔の変形量である。更に、F1は第1シート体の規格強度であり、F2は第2シート体の規格強度である。
【0093】
図を参照して、本実施例において、止水継手は目地間隔の変形量が約160mm、即ち目地間隔が266mmとなった時、完全に破断することがわかった。即ち、目地間隔の変形量X1に対して十分な追従性と耐力とを有することになる。又、目地間隔の変形量X2に対しても、十分な追従性を有する。更に、X2における目地間隔の変形量となった場合においても、設計地下水圧0.098MPaが作用した時にシート体に加わる力である16.17kN/mや、これに相当する変形に対しても、十分耐えることが確認された。
【0094】
尚、目地間隔の変形量が約60mmに達した時、第1シート体に埋設されている繊維シートが破断した。そのため、単位幅あたりの荷重が急激に低下した。しかしながら、第1シート体の合成ゴム部分においては破断せず、残存している状態となった。そして、目地間隔の変形量が100mmを超えた付近から、第2シート体に対しても荷重が作用するようになり、目地間隔の変形量が約160mmに達した時、第2シート体が破断し、荷重が急激に低下した。この時、継手翼部における突起体の破断等は全く確認されず、本実施例における突起体の形状及び強度等についても問題がないことがわかった。
【0095】
次に、目地間隔のずれ、即ち、地盤沈下等による地下構造物間の位置のずれに対する沈下追従性確認実験である実施例2について、以下に説明する。
【0096】
図17は実施例2における図3で示した止水継手の実験中の状態を示した断面図である。
【0097】
図を参照して、本実施例においては止水継手1の寸法、素材、実験装置等は全て実施例1と同様とし、固定治具31の移動方向のみを変更した。即ち、固定治具31の各々は図において相対的に上下方向に移動することで、止水継手1に引張力による荷重を加えた。
【0098】
そして、図におけるYを沈下量とし、実施例1と同様の手順で実験をおこなった。尚、本実施例における設計沈下量は100mmとした。
【0099】
本実施例の結果について、以下に説明する。
【0100】
図18は実施例2による沈下量と止水継手の単位幅あたりの荷重との関係を示すグラフである。
【0101】
尚、図においてデータAは図17で示した止水継手1によるものであり、データBは実施例1と同様の総合成ゴムによる止水継手によるものである。又、Y1は上述した設計沈下量である。
【0102】
図を参照して、止水継手は沈下量が約200mmに達した時に破断した。従って、設計沈下量Y1の100mmに対しても、十分な追従性と耐力とを有することがわかった。
【0103】
尚、沈下量が約100mmに達した時、第1シート体に埋設されている繊維シートが破断した。そのため、単位幅あたりの荷重が急激に低下した。しかしながら、第1シート体の合成ゴム部分においては破断せず、残存している状態となった。そして、沈下量が150mmを超えた付近から、第2シート体に対しても荷重が作用するようになり、沈下量が約200mmに達した時、第2シート体が破断し、荷重が急激に低下した。この時、継手翼部における突起体の破断等は全く確認されず、本実施例における突起体の形状及び強度等についても問題がないことがわかった。
【0104】
このように、実施例1及び実施例2における実験によって、止水継手1は、設計により想定される変形に対して、十分な追従性を有することが確認できた。更に、アクアファルトの打設圧や地下水圧等に対しても、十分な耐力を有することが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】この発明の第1の実施の形態による目地用継手構造の使用形態を示すボックスカルバートの概略斜視図である。
【図2】図1で示したII−IIラインの拡大断面図である。
【図3】図1で示したIII−IIIラインの拡大断面図である。
【図4】図3で示した目地用継手構造の目地材に外力が作用した状態を示す図である。
【図5】図4で示した目地用継手構造の止水継手に作用する外力の状態を示した模式図である。
【図6】図3で示した目地部の目地間隔が増大した状態を示す図である。
【図7】図6で示した状態から更に目地間隔が増大した状態を示す図である。
【図8】図3で示した継手翼部の地下構造物への埋設開始部分における引張力に対する伸び(縦ひずみ)と、伸びに対する厚みの変化(横ひずみ)について示したグラフである。
【図9】図3で示した止水継手の継手翼部を地下構造物へ埋設する手順を示した模式図である。
【図10】図3で示した止水継手の製造方法を示す工程図である。
【図11】この発明の第2の実施の形態による目地用継手構造を示す断面図である。
【図12】この発明の第3の実施の形態による目地用継手構造を示す断面図である。
【図13】実施例1における図3で示した止水継手を実験装置に設置した状態を示した断面図である。
【図14】図13で示したXIV−XIVラインの断面図である。
【図15】図13で示したD部における拡大図である。
【図16】実施例1による目地間隔の変形量と止水継手の単位幅あたりの荷重との関係を示すグラフである。
【図17】実施例2における図3で示した止水継手の実験中の状態を示した断面図である。
【図18】実施例2による沈下量と止水継手の単位幅あたりの荷重との関係を示すグラフである。
【図19】従来の地下構築物の継手を適用した暗渠の斜視図である。
【図20】図19で示したXX−XXラインの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0106】
1…止水継手
2…ボックスカルバート
5…目地部
7…目地材
11…第1シート体
12…第2シート体
14…継手翼部
17…繊維シート
29…撓み部
尚、各図中同一符号は同一又は相当部分を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する筒形状の地下構造物によって形成される目地部をシールするための目地用継手構造であって、
前記目地部の外方側の全周に形成され、流動性及び伸縮性を有する目地材と、
前記目地材に対して前記目地部の内方側の全周であって、その幅方向の両側の各々が前記地下構造物の各々に固定された帯状の止水継手とを備え、
前記止水継手は、水密性及び伸縮性を有する材料よりなり、前記目地部において前記目地材側に位置する第1シート体と、前記第1シート体に対して内方側に位置する第2シート体とからなり、前記第1シート体は、引張力により破断する直前の状態において前記第2シート体の単独の伸縮機能を阻害しないように構成される、目地用継手構造。
【請求項2】
前記第1シート体と前記第2シート体とは、各々の引張強度及び引張弾性係数は略同一であると共に、前記第2シート体の幅方向における撓みは、前記第1シート体の撓みより大きい、請求項1記載の目地用継手構造。
【請求項3】
前記第1シート体と前記第2シート体とは略平行に配置され、各々の引張強度は略同一であると共に、前記第1シート体の引張弾性係数は、前記第2シート体の引張弾性係数より大きい、請求項1記載の目地用継手構造。
【請求項4】
前記第1シート体と前記第2シート体とは前記地下構造物の各々に固定される近傍部分で一体化され、前記一体化された部分の引張強度は前記第1シート体の引張強度より大きい、請求項2記載の目地用継手構造。
【請求項5】
対向する筒形状の地下構造物によって形成される目地部をシールするための目地用継手構造の形成方法であって、
第1シート体と、前記第1シート体に対して内方側に位置する第2シート体とを備え、前記第1シート体は引張力により破断する直前の状態において前記第2シート体の単独の伸縮機能を阻害しないように構成される、水密性及び伸縮性を有する止水継手を前記目地部の全周に設置する工程と、
前記止水継手の外方側の全周に、常温硬化性の液状体を目地材として充填する工程と、
前記充填された前記液状体を硬化させる工程とを備えた、目地用継手構造の形成方法。
【請求項1】
対向する筒形状の地下構造物によって形成される目地部をシールするための目地用継手構造であって、
前記目地部の外方側の全周に形成され、流動性及び伸縮性を有する目地材と、
前記目地材に対して前記目地部の内方側の全周であって、その幅方向の両側の各々が前記地下構造物の各々に固定された帯状の止水継手とを備え、
前記止水継手は、水密性及び伸縮性を有する材料よりなり、前記目地部において前記目地材側に位置する第1シート体と、前記第1シート体に対して内方側に位置する第2シート体とからなり、前記第1シート体は、引張力により破断する直前の状態において前記第2シート体の単独の伸縮機能を阻害しないように構成される、目地用継手構造。
【請求項2】
前記第1シート体と前記第2シート体とは、各々の引張強度及び引張弾性係数は略同一であると共に、前記第2シート体の幅方向における撓みは、前記第1シート体の撓みより大きい、請求項1記載の目地用継手構造。
【請求項3】
前記第1シート体と前記第2シート体とは略平行に配置され、各々の引張強度は略同一であると共に、前記第1シート体の引張弾性係数は、前記第2シート体の引張弾性係数より大きい、請求項1記載の目地用継手構造。
【請求項4】
前記第1シート体と前記第2シート体とは前記地下構造物の各々に固定される近傍部分で一体化され、前記一体化された部分の引張強度は前記第1シート体の引張強度より大きい、請求項2記載の目地用継手構造。
【請求項5】
対向する筒形状の地下構造物によって形成される目地部をシールするための目地用継手構造の形成方法であって、
第1シート体と、前記第1シート体に対して内方側に位置する第2シート体とを備え、前記第1シート体は引張力により破断する直前の状態において前記第2シート体の単独の伸縮機能を阻害しないように構成される、水密性及び伸縮性を有する止水継手を前記目地部の全周に設置する工程と、
前記止水継手の外方側の全周に、常温硬化性の液状体を目地材として充填する工程と、
前記充填された前記液状体を硬化させる工程とを備えた、目地用継手構造の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2010−95931(P2010−95931A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268453(P2008−268453)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(591123724)札幌市 (4)
【出願人】(397028016)株式会社日水コン (18)
【出願人】(000106955)シバタ工業株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(591123724)札幌市 (4)
【出願人】(397028016)株式会社日水コン (18)
【出願人】(000106955)シバタ工業株式会社 (81)
【Fターム(参考)】
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