説明

目地用耐火材及びその製造方法、目地用耐火材を用いた耐震スリット材及びその製造方法、並びに耐震スリット材を備えた建築構造物

【課題】建築構造物の壁、柱、梁、床、天井、防火戸などの開口部部材の施工に際して形成される目地を構成する目地材で、柔軟性を有する熱膨張性耐火材と基材との接着性を改善し、耐火性、施工性に優れ、耐久性を有する目地用耐火材及びその製造方法を提供する。さらに、目地材として少なくとも1ヶ所、上述の目地用耐火材を用いた耐震スリット材及びその製造方法を提供する。また、耐震スリット材を備えた建築構造物を提供する。
【解決手段】建築構造物の目地を構成する部材であり、少なくとも柔軟性を有し、加熱により発泡する発泡型防火部材1と、発泡型防火部材1を支持する支持部材2とからなり、発泡型防火部材1と支持部材2とが一体的に成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火性を必要とし、施工性、耐久性に優れた目地用耐火材及びその製造方法、目地用耐火材を用いた耐震スリット材及びその製造方法、並びに耐震スリット材を備えた建築構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、目地用の耐火材としては、耐火性能を得るために不燃材料が用いられており、例えば、セラミックファイバーやロックウール、ケイ酸カルシウム板、モルタル、コンクリート、金属などからなる耐火材が用いられ、さらに目地部を埋めるために、板状や棒状の成形物が用いられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、それらの耐火材は、地震時に受けた変形からの復元能力が小さいか、殆ど存在しないため、地震作用により隣接する構造部材との界面に隙間が生じて、所期の耐火性能を期待できなくなるおそれが大きいという問題があった。
【0004】
これらの課題を解決する目的で、目地材として少なくとも一ヶ所以上に熱膨張性耐火材を取り付けた目地が知られている(例えば、特許文献2,3,4,5参照)。
【0005】
しかしながら、これらの熱膨張性耐火材はシーリング剤として、現場で直接目地部に施工されたり、予めシート形状等の適当な厚さ、長さに成形し、目地部材に貼り付けることにより、取り付けられている。これは、従来の熱膨張性耐火材が柔軟で自立性を持たないために、自立性を有する裏打ち材のような部材への貼り付けが必要であったためである。このため、目地形成後に、熱膨張性耐火材を目地部に沿って貼り付ける作業を必要とする。さらに、接着剤又は粘着剤、粘着テープにて貼り付けられているため、接着剤又は粘着剤、粘着テープの耐久性の観点から、貼り付け面が剥離するおそれがあるという問題があった。さらに、シーリング剤として直接施工する場合は、足場を組む必要があり、施工上問題があった。
【0006】
また、これらの課題を解決する方法として、柔軟性を有する熱膨張性耐火材を溶融状態で自立性を有する基材と積層、接着する方法が考えられるが、熱膨張性耐火材と基材との親和性、なじみ易さの点で不十分な場合があり、十分な接着強度を発現できなかった。
【特許文献1】特開平11−22059号公報
【特許文献2】特開平3−149283号公報
【特許文献3】特開平8−231756号公報
【特許文献4】特開2002−180694号公報
【特許文献5】特開2003−105872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような従来技術の問題点に鑑み、柔軟性を有する熱膨張性耐火材と基材との接着性を改善し、耐火性、施工性に優れ、耐久性を有する目地用耐火材及びその製造方法を提供することにある。さらに本発明は、目地材として少なくとも一ヶ所以上に、上述の目地用耐火材を用いた耐震スリット材及びその製造方法を提供することにある。また本発明は、耐震スリット材を備えた建築構造物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、目地用耐火材であって、建築構造物の目地を構成する部材であり、少なくとも柔軟性を有し、加熱により発泡する発泡型防火部材と、発泡型防火部材を支持する支持部材とからなり、発泡型防火部材と支持部材とが一体的に成形された部材であることを特徴とする。
【0009】
さらに本発明は、発泡型防火部材と、支持部材とが共押出成形あるいはラミネート成形により一体的に成形された部材であることを特徴としてもよい。
【0010】
さらに本発明は、発泡型防火部材が、(A)熱可塑性樹脂、(B)リン化合物、(C)多官能アルコール、(D)無機充填剤、及び(E)接着性改良剤を含有してなる組成物からなることを特徴とする。さらに本発明は、発泡型防火部材が、更に、(F)可塑剤を含有する組成物であることを特徴としてもよい。さらに本発明は、発泡型防火部材が、更に、(G)アミノ基含有化合物を含有する組成物であることを特徴としてもよい。
【0011】
さらに本発明は、熱可塑性樹脂(A)が、熱可塑性エラストマーであることを特徴とする。さらに本発明は、熱可塑性エラストマーが、芳香族ビニル系化合物よりなるブロック、及びオレフィン系化合物よりなるブロックからなるブロック共重合体であることを特徴としてもよい。さらに本発明は、オレフィン系化合物よりなるブロックが、イソブチレンを主成分とするブロックであることを特徴としてもよい。
【0012】
さらに本発明は、支持部材が、(H)熱可塑性樹脂からなることを特徴とする。さらに本発明は、熱可塑性樹脂(H)が、硬質塩化ビニル樹脂であることを特徴としてもよい。
【0013】
また本発明は、目地用耐火材の製造方法であって、発泡型防火部材と、支持部材とを共押出成形あるいはラミネート成形することを特徴とする。
【0014】
また本発明は、コンクリート壁の柱又は梁際に埋設して、柱又は梁と壁とを完全に縁切りするために柱部又は梁部と壁部との接合部相互間に設置される、スリット材本体と目地材から構成される耐震スリット材であって、目地材の少なくとも一つが、目地用耐火材から構成されることを特徴とする。
【0015】
さらに本発明は、発泡型防火部材が、壁型枠とほぼ平行状態となる側面の少なくとも一方の長手方向に沿って配置されていることを特徴としてもよい。さらに本発明は、発泡型防火部材が、壁型枠とほぼ直交状態となる側面の少なくとも一方の長手方向に沿って配置されていることを特徴としてもよい。さらに本発明は、発泡型防火部材が、目地材の目地底などの外縁部に配置されていることを特徴としてもよい。さらに本発明は、発泡型防火部材が、スリット材本体と支持部材との間に挟まれて長手方向に沿って配置されていることを特徴としてもよい。
【0016】
また本発明は、耐震スリット材の製造方法であって、目地材の少なくとも一つに、目地用耐火材を用いることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、建築構造物であって、耐震スリット材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、柔軟性を有し、加熱により発泡する発泡型防火部材とこの発泡型防火部材を支持する支持部材からなり、これらが一体的に成形された部材であるため、目地部の変形によって、隙間が生じることなく、また、現場において、自立性のない耐火材を施工することがないので、施工性が良好となる。
【0019】
さらに、発泡型防火部材が(A)熱可塑性樹脂、(B)リン化合物、(C)多官能アルコール、(D)無機充填剤、及び(E)接着性改良剤を含有してなる組成物からなることから、発泡時の発泡体の形状保持性が良好であり、耐久性に優れるため、長期にわたって耐火性能を保持、発現できる。
【0020】
また、本発明の目地用耐火材を耐震スリット材の目地材の少なくとも一つとして長手方向に沿って配置した場合、発泡型防火部材が予めスリット材本体支持部材と一体化されていることから、発泡型防火部材の施工が不要であり、施工が極めて容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
===本発明の実施形態===
以下、図1及び図2を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明は下記の実施形態に制限されるものではない。図1及び図2は、いずれも本発明の実施形態に係る目地部材を示す模式図である。
【0022】
図1に示すように、本発明に係る建築構造物の目地を構成する目地用耐火材は、少なくとも柔軟性を有し、加熱により発泡する発泡型防火部材1と、この発泡型防火部材1を支持する支持部材2からなる。発泡型防火部材1と支持部材2は、共押出法や多色成形、サンドイッチ射出成形等により、発泡型防火部材1が溶融状態で支持部材2と接触することによって接着、一体的に成形される。接着時に支持部材2は、非流動状態でも良いし、発泡型防火部材1と同様に、溶融状態であっても良い。発泡型防火部材1及び支持部材2の形状は、一体成形できる形状であれば特に制限はない。フィルム状、シート状、板状、角棒状、丸棒状等が例示できる。また、図2に示すように、発泡型防火部材3及び支持部材4の少なくとも一方が、異形押出等により不安定な形状であっても良い。
【0023】
本発明の発泡型防火部材は、火災による加熱によって発泡、膨張し、火災時にスリット材部に生じる高熱移動空間を埋めるものであれば特に制限はなく、適宜使用することができる(例えば、特開2000−1927号公報,特開2000−38785号公報,特開2000−159903号公報,特開2000−192570号公報,特開2000−202846号公報,特開2000−230287号公報参照。)。特に、これら熱膨張性を有する組成物の中でも、(A)熱可塑性樹脂、(B)リン化合物、(C)多官能アルコール、(D)無機充填剤、及び(E)接着性改良剤を所定量配合した組成物を用いる。
【0024】
上記の発泡型防火部材を形成する熱膨張性を有する好ましい組成物は、(A)熱可塑性樹脂、(B)リン化合物、(C)多官能アルコール、(D)無機充填剤、及び(E)接着性改良剤を含有してなるが、このような発泡型防火性組成物の加熱及び/又は火炎による発泡炭化機構は不明確な部分はあるものの、化学的に分解及び/又は反応を伴い、安定で強度の高い断熱性を有した炭化層を形成できるものである。
【0025】
(A)熱可塑性樹脂としては特に限定されず、例えば、プラスチック類、ゴム類、及び熱可塑性エラストマー類よりなる群から選択される少なくとも一種が使用できる。プラスチック類としては、例えば、ポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン類、ポリスチレン、ABS、MBS、アクリル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。ゴム類としては、例えば、ポリエーテル、ポリブタジエン、天然ゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、エチレン−プロピレンゴム等が挙げられる。
【0026】
熱可塑性エラストマー類としては、例えば、ポリスチレンブロック等とポリブタジエンやポリイソプレンブロック等からなるブロック共重合体であるスチレン系、ポリプロピレン等のポリオレフィン成分とエチレン−プロピレンゴム等のゴム成分からなるオレフィン系、結晶性及び非結晶性ポリ塩化ビニルからなる塩化ビニル系、ポリウレタンブロックとポリエーテルブロック等からなるブロック共重合体であるウレタン系、ポリエステルブロックとポリエーテルブロック等からなるブロック共重合体であるポリエステル系、及び、ポリアミドブロックとポリエーテルブロック等からなるブロック共重合体であるアミド系等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂はプラスチック類、ゴム類、及び熱可塑性エラストマー類の分類に関わらず、少なくとも一種が使用できる。
【0027】
上記熱可塑性樹脂のうち、加工性、柔軟性、及び強度の点で、熱可塑性エラストマーが好ましく、更にはブロック共重合体が好ましい。ブロック共重合体としては、特に、芳香族ビニル系化合物よりなるブロック及びオレフィン系化合物よりなるブロックからなるスチレン系が好ましい。このような熱可塑性エラストマー、特に、ブロック共重合体を用いると、シートが他の熱可塑性樹脂に比べ柔軟で容易に加工でき、複雑な形状の被覆も容易である。前記芳香族ビニル系化合物よりなるブロックとは、芳香族ビニル系化合物50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占めるブロックのことをいう。前記オレフィン系化合物よりなるブロックとは、オレフィン系化合物が50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占めるブロックのことをいう。
【0028】
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、インデン等が挙げられる。その中から二種以上選んでもよい。上記化合物の中でも物性及び生産性のバランスからスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、インデンが好ましい。
【0029】
上記オレフィン系化合物としては、エチレン、プロピレン、1−ブチレン、イソブチレン、ブタジエン、イソプレン等の炭素数2〜6のオレフィン系化合物が挙げられ、その中から二種以上選んでもよい。更に上記化合物から得られるオレフィン系化合物よりなるブロックの具体例としては、ポリブタジエンブロック、ポリイソプレンブロック、及びそれらの水添物であるポリエチレン・ブチレンブロック、ポリエチレン・プロピレンブロック、並びにポリイソブチレンブロックが挙げられる。これらのうち、安定で強固な炭化層を形成するために必要な3級炭素を多く含み、水蒸気バリアー性が高く、熱分解時に架橋反応を殆ど伴わないポリイソブチレンブロックが特に好ましい。ここで、ポリイソブチレンブロックとは、イソブチレンが50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上を占めるブロックのことをいう。
【0030】
芳香族ビニル系化合物よりなるブロック及びオレフィン系化合物よりなるブロックからなるブロック共重合体の数平均分子量にも特に制限はないが、30,000から500,000が好ましく、40,000から400,000が特に好ましい。数平均分子量が30,000未満の場合、機械的な特性等が十分に発現されず、また、500,000を超える場合、成形性等の低下が大きい。オレフィン系化合物と芳香族ビニル系化合物との割合に特に制限はないが、物性のバランスから、オレフィン系化合物95〜20重量部と芳香族ビニル系化合物5〜80重量部が好ましく、さらにオレフィン系化合物90〜60重量部と芳香族ビニル系化合物10〜40重量部がより好ましい。
【0031】
(B)リン化合物としては、特に制限はないが、赤リン;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル類;リン酸ナトリウム、リン酸マグネシウム等のリン酸金属塩;リン酸アンモニウム;リン酸のメラミン等の有機塩基との塩類またはアミド;ポリリン酸アンモニウム;ポリリン酸のメラミン等の有機塩基との塩類またはアミド、及びこれらのリン化合物を樹脂等で被覆した被覆リン化合物等よりなる群から選択される少なくとも一種を使用する。また、前記ポリリン酸はリン酸が縮合しているものであれば、特に制限はないが、リン酸の2〜5,000量体が好ましい。前記被覆リン化合物とは、常温で固定であるリン化合物粒子の周りを樹脂等で覆ったリン化合物のことであり、被覆物質としては、特に制限はないが、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、有機化合物を使用することができ、例えば、ポリリン酸アンモニウムをメラミンで被覆したメラミン被覆ポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0032】
これらの(B)リン化合物は、加熱環境下において、有機物の脱水及び/又は炭化触媒として作用するほか、自らも不燃性の無機質リン酸被膜を形成する働きをもつものである。上記リン化合物のうち、マトリックス樹脂である(A)熱可塑性樹脂への分散性、耐水性の観点から被覆リン化合物が好ましい。
【0033】
(B)リン化合物のうち、被覆されていないリン化合物としては、リン酸またはポリリン酸の塩、リン酸またはポリリン酸アミドが好ましい。一方、被覆リン化合物としては、特に制限はないが、例えば、赤リン、リン酸またはポリリン酸の塩、リン酸またはポリリン酸アミド等の常温で固体であるリン化合物の被覆体が挙げられる。前記被覆リン化合物のうち取り扱い易さの点で、リン酸またはポリリン酸の塩、リン酸またはポリリン酸アミドの被覆体が好ましい。
【0034】
被覆の有無に関わらず、リン酸またはポリリン酸の塩としては、リン酸またはポリリン酸のアンモニアまたは有機塩基との塩が好ましく、特にポリリン酸アンモニウムまたはその誘導体が更に好ましい。また、前記塩を形成するアミン化合物としては、メチルアミン、エチルアミン及びメラミン等が挙げられるが、特にポリリン酸のメラミン塩が好ましい。また被覆の有無に関わらず、リン酸またはポリリン酸アミドとしては、特にリン酸またはポリリン酸メラミンアミドが好ましい。リン酸またはポリリン酸アンモニウムまたはアミンとの塩やアミドは加熱により分解温度に達すると、脱アンモニア等脱アミンによりリン酸及び縮合リン酸を生じる。この酸が有機物の脱水触媒として作用し、有機物を炭化させる結果、炭化層の形成につながる。また、この際発生するアンモニアガス及び窒素ガス等は、発泡剤として作用し、組成物全体を膨張させることになり、また酸素濃度を減少し燃焼を抑えることになる。本発明に使用するリン化合物は、リン含有量10重量%以上、窒素含有量9重量%以上のものが適している。
【0035】
このようなリン酸またはポリリン酸アンモニウムまたはアミンとの塩やアミドとしては、特に制限はないが、例えば、ポリリン酸アンモニウムからなる住友化学工業株式会社製の不溶化高分子リン化合物(商品名「スミセーフPM」)が挙げられ、また、リン酸またはポリリン酸アンモニウムまたはアミンとの塩やアミドを被覆したものとしては、特に制限はないが、例えば、CBC社製の被覆ポリリン酸アンモニウム(商品名「テラージュC80」)等が挙げられる。
【0036】
(B)リン化合物の配合量は、特に制限されるわけではないが、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して、5〜120重量部配合するのが好ましい。リン化合物の配合量がこの範囲を下回ると、組成物全体を効果的に炭化、発泡させることが期待できなくなる。一方、リン化合物の配合量がこの範囲を上回ると、配合物の粘度が高くなり成形性が低下することから好ましくない。
【0037】
(C)多官能アルコールは、(B)リン化合物により脱水され炭化膜を形成するものである。加熱により炭化する分解温度が180℃以上、好ましくは220℃以上のものが使用できる。このような多官能アルコールとしては、モノ、ジ、トリペンタエリスリトール等の多価アルコールや、でんぷんやセルロース等の多糖類、グルコース、フルクトース等の少糖類等が例示され、特に制限はないが、発泡特性の点で、特にモノ、ジ、トリペンタエリスリトール等の多価アルコールが好ましい。また、これらは単独で使用するほか、二種以上併用してもよい。
【0038】
(C)多官能アルコールの配合量は、特に限定されるわけではないが、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して5〜90重量部であることが好ましい。(C)の多官能アルコール成分の配合量がこの範囲を下回ると膨張が不十分となり、逆に、(C)多官能アルコール成分の配合量がこの範囲を上回ると発泡炭化膜の形成が不十分となり、またブリードアウトし易くなるため成形性に問題が生じる。
【0039】
(B)リン化合物と(C)多官能アルコールから形成される炭化層は、約600℃でそのほとんどが分解し、ガス化してしまうため、(A)熱可塑性樹脂、(B)リン化合物、及び(C)多官能アルコールからなる組成物では、600℃以上で耐火性能を発揮する炭化層を形成することは困難である。そこで、600℃以上でも耐火性能を維持するために、本発明の発泡型防火性組成物においては、1,000℃という高温域でも灰化層として残存する(D)無機充填剤を含む。
【0040】
(D)無機充填剤としては、炭酸カルシウム、石膏、マイカ、クレー、タルク、グラファイト、アスベスト、カーボンブラックセメント、酸化アンチモン、アルミナ、珪石、珪藻土、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、カオリン、カオリナイト、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素(シリカ)、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅、酸化鉛、酸化スズ等が例示されるが、これに限定されるものではない。特にその中でも、金属酸化物が好ましい。
【0041】
金属酸化物としては、特に制限はなく、従来公知のものを使用することができるが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素(シリカ)、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化銅、酸化鉛、酸化スズよりなる群から選択される少なくとも一種を使用する。その中で特に、金属酸化物としては、発泡倍率、灰化層強度の観点から酸化チタンが特に好ましい。
【0042】
(D)無機充填剤の配合は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、10〜200重量部であることが好ましい。(D)無機充填剤の配合量が200重量部を超えると、炭化層の発泡倍率が低下し高い耐火性能が発揮されず、また組成物の柔軟性が低下するため好ましくない。また10重量部未満では、600℃以上において灰化したときに、十分な灰化層を形成できないといった問題が生じやすくなる。
【0043】
この様な酸化チタンとしては特に制限はないが、例えば、石原産業株式会社製のルチル型酸化チタン(商品名「タイペークR−820」)、同社製のアナタース型酸化チタン(商品名「タイペークA−220」)等が挙げられる。
【0044】
(E)接着性改良剤としては、発泡型防火部材と支持部材との一体成形における接着性を改良するものであれば特に制限はないが、例えば、支持部材となる基材と同種のもの、あるいは、支持部材の基材となるものと極性が近いもの、溶解度パラメータ(SP値)が近いもの、化学的反応により、結合を形成しうるもの等が好ましい。例えば、本発明において、発泡型防火部材として、芳香族ビニル系化合物よりなるブロック及びオレフィン系化合物よりなるブロックからなるブロック共重合体を、(A)熱可塑性樹脂として用いた発泡型防火部材に対し、支持部材を構成する(H)熱可塑性樹脂が硬質塩化ビニル樹脂である場合、(E)接着性改良剤として、硬質塩化ビニル樹脂や塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等の塩化ビニル系樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン樹脂、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、エポキシ変性ポリオレフィン、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル変性又は共重合ポリオレフィン樹脂等を用いるのが好ましい。塩素化ポリプロピレンの例としては日本製紙ケミカル製のスーパークロン、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの例としては三井化学製のアドマー、エポキシ変性ポリオレフィンの例としては住友化学製のボンドファースト、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル変性又は共重合ポリオレフィン樹脂としては、住友化学製のボンダイン等が挙げられる。また、(H)熱可塑性樹脂がポリオレフィンである場合は、支持部材の基材として用いたポリオレフィンやポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合樹脂等のポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
【0045】
(E)接着性改良剤の配合量は、発泡型防火部材の防火特性を妨げない限りは、特に限定されるわけではないが、(A)熱可塑性樹脂、(B)リン化合物、(C)多官能アルコール、(D)無機充填剤等、(E)接着性改良剤以外に発泡型防火部材組成物に含まれる配合物の合計100重量部に対して0.2〜20重量部であることが好ましく、特に0.5〜10重量部であることがより好ましい。(E)接着性改良剤の配合量がこの範囲を下回ると接着改良効果が不十分となり、逆に、(E)接着性改良剤の配合量がこの範囲を上回ると発泡特性や耐水性が不十分となる。
【0046】
本発明の発泡型防火性組成物は、(A)熱可塑性樹脂、(B)リン化合物、(C)多官能アルコール、(D)無機充填剤、(E)接着性改良剤を含有してなるが、さらに(F)可塑剤を含有する組成物が好ましい。(F)可塑剤を含有させることにより、(A)熱可塑性樹脂以外の必須成分である(B)リン化合物、(C)多官能アルコール、(D)無機充填剤をより多量に含有させることができ、より耐火性能に優れた発泡型防火性組成物を得ることができる。さらに、(F)可塑剤は、組成物の粘度を適度に下げ発泡等を防ぐため高発泡倍率をもたらし、また、炭化層の形状保持性(強度)が湿気や水によって低下することを防ぐ役割も合わせ持っている。
【0047】
(F)可塑剤としては特に限定されず、一般的なものを用いることができるが、(A)熱可塑性樹脂と相溶性が良いものが好ましい。例えば、ポリブテン、水添ポリブテン、液状ポリブタジエン、水添液状ポリブタジエン、ポリαオレフィン類、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル、α−メチルスチレンオリゴマー、アタクチックポリプロピレン等よりなる群から選択される少なくとも一種が使用される。前記可塑剤のうち、発泡炭化を阻害しないポリαオレフィン及びポリブテンより選択される少なくとも一種が好ましい。
【0048】
(F)可塑剤の配合量は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、1〜100重量部であることが好ましい。(F)可塑剤の配合量が100重量部を超えるとブリードアウトが発生しやすく、成形性に問題が生じ、また組成物の粘度が下がり過ぎるために、加熱または火炎により組成物が流れ出し、炭化層の発泡倍率が低下するといった問題が生じやすくなる。
【0049】
さらに、本発明の発泡型防火性組成物には、上記成分以外に、さらなる添加成分として(G)アミノ基含有化合物を使用してもよい。(G)アミノ基含有化合物は、膨張剤として作用し、加熱による分解に伴い、窒素やアンモニア等の不燃性ガスを発生し、組成物全体を適度の大きさに膨張させるものである。具体的にはジシアンジアミド、メラミン、グアナミン、グアニジン、尿素、アゾジカルボンアミンやメラミン樹脂、グアナミン樹脂、尿素樹脂等のアミン樹脂等が例示されるが、これに限定されるものではない。また、これらは単独で使用するほか、二種以上併用してもよい。
【0050】
この(G)アミノ基含有化合物の配合量は、特に限定されるわけではないが、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましい。(G)アミノ基含有化合物の配合量がこの範囲を上回ると、形成される発泡炭化膜の強度が不十分となるので好ましくない。
【0051】
本発明の発泡型防火性組成物には、(A)熱可塑性樹脂、(B)リン化合物、(C)多官能アルコール、(D)無機充填剤、(E)接着性改良剤以外に、(F)可塑剤や、(G)アミノ基含有化合物、さらには、各用途に合わせた要求特性に応じて、加工性改良剤、発泡助剤、補強剤、滑剤のほか、ヒンダートフェノール系やヒンダートアミン系の酸化防止剤や紫外線吸収剤、光安定剤、顔料等を適宜配合することができる。
【0052】
加工性改良剤としては、特に制限はないが、成型時の溶融張力を向上させ、成形性を改良するものが好ましい。例えば、無機系の加工性改良剤や、アクリル高分子系の加工性改良剤、ポリテトラフルオロエチレン系加工性改良剤等が挙げられる。
【0053】
発泡助剤としては、アゾジカルボンアミドや炭酸水素ナトリウム−クエン酸等の化学発泡剤、膨張性黒煙や未膨張バーミキュライト等の無機系発泡粒子などが挙げられる。
【0054】
本発明の発泡型防火性組成物の最も好ましい組成物としては、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、(B)リン化合物10〜120重量部、(C)多官能アルコール5〜90重量部、(D)無機充填剤10〜200重量部、(G)アミノ基含有化合物0〜20重量部、さらに、(A)熱可塑性樹脂、(B)リン化合物、(C)多官能アルコール、(D)無機充填剤、(G)アミノ基含有化合物の合計100重量部に対して(E)接着性改良剤0.2〜20重量部である。さらに(F)可塑剤を含有してなる場合は、(A)熱可塑性樹脂100重量部に対し、(F)可塑剤1〜100重量部添加することが好ましく、(A)熱可塑性樹脂と(F)可塑剤の合計100重量部に対し、(B)リン酸化合物10〜120重量部、(C)多官能アルコール5〜90重量部、(D)無機充填剤10〜200重量部、(G)アミノ基含有化合物0〜20重量部、さらに(A)熱可塑性樹脂、(B)リン化合物、(C)多官能アルコール、(D)無機充填剤、(F)可塑剤、(G)アミノ基含有化合物の合計100重量部に対して(E)接着性改良剤0.2〜20重量部であることが好ましい。
【0055】
本発明の発泡型防火性組成物の調整法には特に制限はなく、例えば、上記各成分を配合し、ミキサーやロール、ニーダーや押出機等を用いて常温または加熱下において混練したり、適量の溶剤に成分を溶解させた後混合するなど、通常の方法を採用することができる。
【0056】
本発明の目地用耐火材に用いる支持部材に用いられる材料としては、硬質塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂またはABS樹脂などの熱可塑性樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂や金属などが例示されるが、これらに限定されるものではない。合成樹脂で作製される支持材は、現場で壁高さに合わせて切断するのに特別な切断機を必要とせず作業が容易であり好ましい。例えば熱可塑性樹脂により、同じ断面形状の連続した長沢ものに形成され、必要な長さに応じて切断して使用し得るように構成している。熱可塑性樹脂としては、コスト、加工性等を考慮し、硬質塩化ビニル樹脂よりなるものが好ましい。
【0057】
上記支持部材と発泡型防火部材を一体化成形する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、上記組成物の作成方法にて得られた発泡型防火性組成物を、射出成形、押出成形、熱プレス成形、カレンダー成形等、通常熱可塑性樹脂で用いられる成型法により発泡型防火性成形体を得、これを、予め、成形したスリット本体支持部と積層し、熱プレス成形、ラミネーションなどの積層方法により一体化する方法、上記組成物の作成方法にて得られた発泡型防火性組成物と支持部材形成材料を共押出、あるいは多色成形法、サンドイッチ射出成形等の成型法により積層する方法などが例示できる。特に、同じ断面形状の連続した長沢のものに形成される場合には、異形押出成形を用いることが好ましいが、この際、押し出された成形体に予め成形した発泡型防火性組成物または、連動した押出機で同時に押出し成形された発泡型防火性組成物成形体を積層して一体化する方法が好ましい。
【0058】
本発明の目地用耐火材の使用用途としては、建築構造物の壁、柱、梁、床、天井、防火戸などの開口部部材の施工に際して形成される目地部であれば特に制限はない。例えば外壁の接続部や鉄筋コンクリート造の建築構造物において柱、梁と壁の間に形成される耐震スリットにより形成される目地部等に目地材として用いることができる。
【0059】
特に、このうちでもコンクリート壁の柱又は梁際に埋設して、柱又は梁と壁とを完全に縁切りするために柱部又は梁部と壁部との接合部相互間に設置される、スリット材本体と目地材から構成される耐震スリット材の、目地材の少なくとも一つとして用いるのが好ましい。
【0060】
本発明に係る耐震スリット材は、柱部と壁部との間に設置される垂直スリット材や、梁部と壁部との間に設置される水平スリット材などとして広く適用することができる。本発明のスリット材は、スリット材本体と目地材から構成され、目地材の少なくとも一つが本発明の支持部材と発泡型防火部材が一体化された部材であり、発泡型防火部材がスリット材の長手方向に沿って配置されている。
【0061】
本発明に係る耐震スリット材は、スリット材本体と、このスリット材本体を両側から係合支持する略コ字状断面を有する目地材で構成される。図3はこのような本発明の実施例に係る耐震スリット材の一例を示した斜視図であり、図5はその平面図である。図示のように、耐震スリット材5は、スリット材本体6、該スリット材本体6を両面から係合支持する略コ字状断面を有する目地材7で構成される。
【0062】
耐震スリット材を構成するスリット材本体としては、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレンや発泡ウレタン、ケイ酸カルシウム板や石膏ボード、ロックウールやセラミックファイバー、磁気テープ等を加工して板状に成形したもの等が使用できる。
【0063】
本発明の目地材の少なくとも一つは、スリット材本体支持部と発泡型防火部材が一体化された部材である。この発泡型防火部材は、壁型枠とほぼ平行状態となる側面の少なくとも一方の長手方向に沿って配置されてもよいし、ほぼ直交状態となる側面の少なくとも一方の長手方向に沿って配置されていてもよい。この発泡型防火部材は、目地材外縁部に配置されていても良いし、スリット材本体とスリット材本体支持部の間に挟まれて長手方向に沿って配置されていてもよい。
【0064】
===本発明の実施例===
以下、本発明の実施例について説明する。
【0065】
(実施例1)
SIBS(鐘淵化学工業製:SIBSTAR,特開平11−349648号公報参照)100重量部、可塑剤としてポリブデン(出光石油化学製:ポリブテン300H)20重量部、被覆ポリリン酸アンモニウムとしてテラージュC−80(CBC社製)75重量部、多価アルコールとしてペンタエリスリトール(三菱ガス化学社製)50重量部、アミノ基含有化合物としてメラミン(日産化学社製)7.5重量部、金属酸化物として酸化チタン(石原産業社製:タイペークR−820)75部と、これらの合計を100重量部として、接着性改良剤として硬質塩化ビニル樹脂5部を150℃においてバンバリーミキサーで溶融混練した後、ニーダールーダーにて押出、ペレット化を行った。得られたペレットを用い、硬質塩化ビニル樹脂と共押出することにより図1に示した様な発泡型防火部材と硬質塩化ビニル樹脂支持部材からなる耐火性部材を成形した。
【0066】
成形した共押出積層体の接着強度を、180度剥離強度を測定し、接着面の単位幅あたりの剥離強度を算出した。また、ニーダールーダーにて押出、ペレット化したペレットを圧縮成型にて2mm厚のシート状成型品を得、50×50mmに切り出し、ISO加熱曲線に従い電気炉にて2時間加熱した。加熱後、シートを取り出し厚みを測定し、加熱後の厚み/もとの厚み(2mm)を発泡倍率とした。耐水性は発泡倍率の測定と同様にして作成したシートを50℃の温水中に2週間浸漬した後の発泡倍率を測定し、保持率が80%以上を○とした。結果を表1に示した。
【0067】
(実施例2)
実施例1と同様に、硬質塩化ビニル樹脂5部に換えて、硬質塩化ビニル2部を用いて、成形体を得た。実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0068】
(実施例3)
実施例1と同様に、硬質塩化ビニル樹脂5部に換えて、硬質塩化ビニル0.5部を用いて、成形体を得た。実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0069】
(実施例4)
実施例1と同様に、硬質塩化ビニル樹脂5部に換えて、硬質塩化ビニル0.2部を用いて、成形体を得た。実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0070】
(実施例5)その
実施例1と同様に、硬質塩化ビニル樹脂5部に換えて、スーパークロン892L(日本製紙ケミカル製)0.5部を用いて、成形体を得た。実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0071】
(実施例6)
実施例1と同様に、硬質塩化ビニル樹脂5部に換えて、アドマーNF918(三井化学製)5部を用いて、成形体を得た。実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0072】
(実施例7)
実施例1と同様に、硬質塩化ビニル樹脂5部に換えて、ボンダインHX8290(住友化学製)5部を用いて、成形体を得た。実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0073】
(実施例8)
実施例1と同様に、硬質塩化ビニル樹脂5部に換えて、ボンドファースト7B(住友化学製)5部を用いて、成形体を得た。実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【0074】
(比較例)
実施例1と同様に、硬質塩化ビニル樹脂5部加えずに成形体を得た。実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示した。
【表1】

【0075】
表1に示したように、接着改良剤を加えることによって、剥離強度が高くなり、接着性が改善され、加熱発泡時の発泡倍率は変化しないことがわかる。
【0076】
次に、図3〜図8を参照しながら、本発明の実施例に係る耐震スリット材の目地材について、詳細に説明する。
【0077】
図3は本発明の一実施例に係る耐震スリット材の斜視図であり、図5はその平面図である。なお、図4は本発明の一実施例に係る目地材の断面略平面図である。
【0078】
図示のように、本実施例に係る耐震スリット材5は、スリット材本体6、該スリット材本体6を両側から係合支持する略コ字状断面を有するスリット材本体支持部8及び発泡型防火部材9からなる目地材7から構成される。そして、耐震性スリット材5は、目地棒を兼ねた固定部材を介して、コンクリート型枠へ取付けられる。すなわち、前記目地材7には、固定部材に係合し得るように係合片がテーパー状に一体形成されており、コンクリート型枠に釘等により、耐震スリット材5をコンクリート型枠へ取付けるように構成されている。なお、以下の実施例においても、支持部材としてスリット材本体6を両側から係合支持する目地材7を使用した場合を例示したが、本発明は、スリット材本体6を片側から支持する形態にも適用し得る。また、固定部材に関しても、目地材7を介してスリット材本体6を型枠へ固定し得るものであればよく、目地棒を兼ねない形態など、適宜の形態の固定部材が使用可能である。また、目地材7には、コンクリート打設圧に対する補強部材を係止する構造を有し、補強部材を係止した状態で施工してもよい。
【0079】
以下、本発明の特徴部分について説明する。
図示のように、図3及び図4の実施例においては、耐震スリット材5を構成する目地材の目地を構成するテーパー状の底部に発泡型防火性材を共押出により、一体成形して設置している。この場合、スリット本体支持部と一体となっているため、後から熱膨張耐火材シート等を貼り付けることがないため、施工が極めて簡単である。本実施例に係る耐震スリット材が地震時の火災等により高熱に晒された場合には、耐震スリット材5の外側の発泡型防火部材がまず高熱に晒され、その高熱により熱膨張して、柱又は梁と壁とが縁切りされた耐震スリット材5が施工された隙間を塞いで火災や熱風の侵入を遮断するので、高熱の移動は実質的に制限される。したがって、これにより耐震スリット材5の内部まで高熱が伝達して他側へ延焼する危険は解消される。
【0080】
図6〜図8は、目地材の構成に関する他の実施例を示したものである。なお、これらの図に示した耐震スリット材はスリット材本体の両側に設置する支持部材の片方だけに発泡型防火部材を設置した構成となっているが、両側に発泡型防火部材を有する目地材を設置してもかまわない。
【0081】
図6に示した実施例は、耐震スリット材18の発泡型防火部材がスリット材本体19とスリット材本体支持部20の間に挟まれて設置されるように、一体成形された構成を示したものである。本実施例に係る耐震スリット材が地震時の火炎等により高熱に晒された場合には、耐震スリット材8の外側のスリット本体支持部がまず高熱に晒され、これが熱可塑性樹脂により構成されているため脱落又は燃焼する。その後、発泡型防火部材が高熱に晒され、その高熱により熱膨張して、柱又は梁と壁とが縁切りされた耐震スリット材が施工された隙間を塞いで火炎や熱風の侵入を遮断するので、高熱の移動は実質的に制限される。
【0082】
図7に示した実施例は、耐震スリット材23が壁型枠に固定された場合、壁型枠とほぼ直交状態となる側面にスリット材本体24を挟むように2つの側面に一体成形された構成を示したものである。この場合、目地材の外縁部に発泡型防火部材が設置されている。図7では、スリット材本体の2つの側面に、発泡型防火部材を設置しているが、片側の側面に設置したものでもよい。
【0083】
図8に示した実施例は、耐震スリット材28が壁型枠に固定された場合、壁型枠とほぼ直交状態となる側面にスリット材本体29を挟むように2つの側面に、スリット材本体29とスリット材本体支持部31の間に挟まれて設置されるように、一体成形された構成を示したものである。図8では、スリット材本体の2つの側面に、発泡型防火部材を設置しているが、片側の側面に設置したものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態に係る目地用耐火材を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係る目地用耐火材を示す模式図である。
【図3】本発明の実施例に係る耐震スリット材の斜視図である。
【図4】本発明の実施例に係る目地材の断面略平面図である。
【図5】本発明の実施例に係る耐震スリット材の平面図である。
【図6】本発明の実施例に係る耐震スリット材の平面図である。
【図7】本発明の実施例に係る耐震スリット材の平面図である。
【図8】本発明の実施例に係る耐震スリット材の平面図である。
【符号の説明】
【0085】
1,3,9,12,17,22,27,32 発泡型防火部材
2,4 支持部材
5,13,18,23,28 耐震スリット材
6,14,19,24,29 スリット材本体
7,10,15,20,25,30 目地材
8,11,16,21,26,31 スリット材本体支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造物の目地を構成する部材であり、少なくとも柔軟性を有し、加熱により発泡する発泡型防火部材と、該発泡型防火部材を支持する支持部材とからなり、前記発泡型防火部材と前記支持部材とが一体的に成形された部材であることを特徴とする目地用耐火材。
【請求項2】
前記発泡型防火部材と、前記支持部材とが共押出成形あるいはラミネート成形により一体的に成形された部材であることを特徴とする請求項1に記載の目地用耐火材。
【請求項3】
前記発泡型防火部材が、(A)熱可塑性樹脂、(B)リン化合物、(C)多官能アルコール、(D)無機充填剤、及び(E)接着性改良剤を含有してなる組成物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の目地用耐火材。
【請求項4】
前記発泡型防火部材が、更に、(F)可塑剤を含有する組成物であることを特徴とする請求項3に記載の目地用耐火材。
【請求項5】
前記発泡型防火部材が、更に、(G)アミノ基含有化合物を含有する組成物であることを特徴とする請求項3又は4に記載の目地用耐火材。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂(A)が、熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項3から5のいずれかに記載の目地用耐火材。
【請求項7】
前記熱可塑性エラストマーが、芳香族ビニル系化合物よりなるブロック、及びオレフィン系化合物よりなるブロックからなるブロック共重合体であることを特徴とする請求項6に記載の目地用耐火材。
【請求項8】
前記オレフィン系化合物よりなるブロックが、イソブチレンを主成分とするブロックであることを特徴とする請求項7に記載の目地用耐火材。
【請求項9】
前記支持部材が、(H)熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の目地用耐火材。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂(H)が、硬質塩化ビニル樹脂であることを特徴とする請求項9に記載の目地用耐火材。
【請求項11】
前記発泡型防火部材と、前記支持部材とを共押出成形あるいはラミネート成形することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の目地用耐火材の製造方法。
【請求項12】
コンクリート壁の柱又は梁際に埋設して、柱又は梁と壁とを完全に縁切りするために柱部又は梁部と壁部との接合部相互間に設置される、スリット材本体と目地材から構成される耐震スリット材であって、
前記目地材の少なくとも一つが、請求項1から10のいずれかに記載の目地用耐火材から構成されることを特徴とする耐震スリット材。
【請求項13】
前記発泡型防火部材が、壁型枠とほぼ平行状態となる側面の少なくとも一方の長手方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項12に記載の耐震スリット材。
【請求項14】
前記発泡型防火部材が、壁型枠とほぼ直交状態となる側面の少なくとも一方の長手方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項12に記載の耐震スリット材。
【請求項15】
前記発泡型防火部材が、目地材の目地底などの外縁部に配置されていることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の耐震スリット材。
【請求項16】
前記発泡型防火部材が、前記スリット材本体と前記支持部材との間に挟まれて長手方向に沿って配置されていることを特徴とする請求項12から14のいずれかに記載の耐震スリット材。
【請求項17】
前記目地材の少なくとも一つに、前記目地用耐火材を用いることを特徴とする請求項12から16のいずれかに記載の耐震スリット材の製造方法。
【請求項18】
請求項12から16のいずれかに記載の耐震スリット材を備えたことを特徴とする建築構造物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−45950(P2006−45950A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−229652(P2004−229652)
【出願日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】