目地部材及び建築物
【課題】従来よりも小型化した目地部材であって従来よりも止水性に優れ且つコンクリートに対する付着強度が高い目地部材であって、目地の交差部分に配設されることで建築物の目地における止水機能を高めることができる目地部材を提供する。
【解決手段】目地部材は、建築物1の壁面2aの水平目地11及び鉛直目地10にそれぞれ配設される交差目地部材40及び鉛直目地部材20を備える。交差目地部材40は、水平基材41及び水平EVAシート42を備える。水平基材41は、水平目地11に応じた外形形状を有し、その外形形状に沿って水平EVAシート42は配置される。水平基材41には、互いに連通する水平切欠部41b及び鉛直切欠部41b’が形成されている。鉛直目地部材20は、鉛直基材21及び鉛直EVAシート22を備えており、鉛直基材21には、上記鉛直切欠部41b’に連通する鉛直切欠部21bが形成されている。交差目地部材40は、水平目地11及び鉛直目地10の交差部分に配設される。
【解決手段】目地部材は、建築物1の壁面2aの水平目地11及び鉛直目地10にそれぞれ配設される交差目地部材40及び鉛直目地部材20を備える。交差目地部材40は、水平基材41及び水平EVAシート42を備える。水平基材41は、水平目地11に応じた外形形状を有し、その外形形状に沿って水平EVAシート42は配置される。水平基材41には、互いに連通する水平切欠部41b及び鉛直切欠部41b’が形成されている。鉛直目地部材20は、鉛直基材21及び鉛直EVAシート22を備えており、鉛直基材21には、上記鉛直切欠部41b’に連通する鉛直切欠部21bが形成されている。交差目地部材40は、水平目地11及び鉛直目地10の交差部分に配設される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地部材及び建築物に関し、特に、鉛直目地(縦目地)及び水平目地(横目地)の交差部分に配設される目地部材、並びに、当該目地部材を備える建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、セメントの水和熱や外気温などによる温度変化、乾燥収縮、予想外の外力といった変形を生じる様々な要因を抱えており、これらの要因により壁面にひび割れの生じる可能性がある。このひび割れが壁面にランダムに発生すると建築物の美観が損なわれてしまう。そこで、一般に、コンクリートの建築物には、壁面の特定位置に、ひび割れを誘発するための目地(ひび割れ誘発目地)が凹設されている。
【0003】
また、コンクリートの建築物において、コンクリートの打継ぎ部(各階躯体の区切りとなる水平方向の打継ぎ部、あるいは各階での工区割りにおける鉛直方向の打継ぎ部)にも、打継ぎ用の目地(打継ぎ目地)が凹設されている。
【0004】
そして、これらの目地にシーリング材を充填することにより、コンクリートのひび割れや打継ぎ部分への水分の浸入を防止している。従来、目地の形成は、型枠に例えば木製の目地棒を釘止めしておき、当該型枠を用いて形成された空間内にコンクリートを打ち込んだ後、型枠及び目地棒をコンクリートから取り外していた。そして、形成された目地に、シーリング材を充填していた。
【0005】
しかし、この場合、目地棒の脱型やシーリング材の充填が必要であり、作業が煩雑になるという問題があった。例えば、目地にシーリング材を充填する作業は、高度の熟練を要し、美しい仕上げを達成するには手間ひまがかかるものであった。また、シーリング材は、紫外線などによって劣化するので、定期的に取り替える必要があるという問題もあった。
【0006】
そこで、目地棒の脱型とシーリング材の施工とを不要とした目地部材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
図11は、その目地部材を用いた建築物の目地構造を示す図である。
図11に示す建築物は、コンクリート310と、コンクリート310の壁面に凹設された台形形状の目地305と、複雑な外形形状の目地部材300とを備えている。また、目地部材300は、壁面下地材301と、止水シート302と、透水目地材303とを有している。
【0008】
壁面下地材301は、コンクリート310に物性の近い材料で形成され、コンクリート310の壁面と略同一平面を形成するように配置されている。止水シート302は、壁面下地材301の裏面に固着されている。この止水シート302には、非加硫ブチルゴムが使用されている。透水目地材303は、止水シート302に固定されている。この透水目地材303は、吸水力を伴う透水性を有する材料(例えば、連続発泡体や無機繊維材)であり、目地305に応じた外形形状を有している。
【0009】
この構成により、目地305の形成位置にコンクリート310のひび割れを誘発し、止水シート302及び透水目地材303を組み合わせた止水機能によって、ひび割れへの水の浸入を防止するようにしていた。
【0010】
また、特許文献1では、コンクリート310の打ち込み時に、目地部材付き型枠を用いることが提案されている。この目地部材付き型枠では、上記目地部材300を型枠に仮留めするための仮留め手段を、上記目地部材300と型枠との間に設けることで、目地部材300が型枠に仮留めされている。コンクリート310の打ち込み後には、型枠がコンクリート310から取り外され、目地部材300は、コンクリート310に埋設された状態となる。このため、目地棒の脱型とシーリング材の施工とが不要となる。
【0011】
そして、上記目地部材300は、型枠の鉛直方向に沿っても水平方向に沿っても当該型枠に仮留め可能である。
【特許文献1】特開2005−061178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ひび割れの発生位置が目地305からずれることを考慮して、図11に示したように、目地部材300の止水シート302を目地305よりも広い範囲に亘って配置する必要がある。このことにより、図11に示すように目地部材300の外形形状が複雑となり、目地部材300の外形形状が、形成する目地305に応じきれず、その大きさが目地305の大きさに対して大きくなるという問題があった。
【0013】
また、この外形形状のため、例えば壁面下地材301とコンクリート310の境界部分にひび割れが発生する可能性があり、その場合、止水シート302及び透水目地材303によって止水を行うことができないという問題があった。
【0014】
さらに、止水シート302を構成する非加硫ブチルゴムは、コンクリート310に対する付着強度が1kgf/cm2程度であり、コンクリート310からの剥離が生じないための十分な付着強度を有していない。このため、止水シート302がコンクリート310から剥がれる可能性があり、確実に止水を行うことができない虞があるという問題点があった。
【0015】
また、複数の目地部材300を、型枠の水平方向及び鉛直方向の双方に沿って当該型枠に仮留めしようとすると、水平方向に沿って仮留めされる目地部材300と、鉛直方向に沿って仮留めされる目地部材300の交差部分の型枠への配置が困難となる。これは、目地部材300が成型品であるために、仮留めの作業現場で目地部材300を加工することができないためである。この結果、2つの目地部材300,300が互いに交差する部分において、目地をコンクリートに形成することができなかった。つまり、目地部材300では、互いに交差する目地を形成することができなかった。このように、互いに交差する目地の形成ができなかった部分では、目地部材300の止水機能や、目地305による、ひび割れを誘発させる機能が損なわれる。したがって、水平目地と鉛直目地の双方が互いに交差したような目地を形成することが可能な目地部材が求められている。
【0016】
本発明の目的は、従来よりも小型化した目地部材であって従来よりも止水性に優れ且つコンクリートに対する付着強度が高い目地部材であって、目地の交差部分に配設されることで建築物の目地における止水機能を高めることができる目地部材、並びに当該目地部材を備える建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の目地部材は、コンクリートの壁面の水平方向に沿った水平目地に配設される水平目地部材であって、前記水平目地に応じた外形形状を有する水平基材と、前記水平基材の外形形状に沿って前記水平基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートと、前記エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートが配置された側とは反対側から前記水平基材に形成された、水平方向に沿った水平切欠部とを備えた水平目地部材と、前記コンクリートの壁面の鉛直方向に沿った鉛直目地に配設される鉛直目地部材であって、前記鉛直目地に応じた外形形状を有する鉛直基材と、前記鉛直基材の外形形状に沿って前記鉛直基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートと、前記エチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートが配置された側とは反対側から前記鉛直基材に形成され、鉛直方向に沿った第1鉛直切欠部とを備え、前記水平目地部材は、前記水平切欠部と連通するとともに前記第1鉛直切欠部と連通し、鉛直方向に沿った第2鉛直切欠部を備えた交差目地部材を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の目地部材によれば、水平目地及び鉛直目地の交差部分に配設可能な交差目地部材が準備されるので、作業現場で目地部材を加工する必要がなくなり、建築物の施工性が高まる。また、この交差目地部材においては、第2鉛直切欠部が水平切欠部及び第1鉛直切欠部の双方と連通している。この切欠部の連通に際し、水平目地部材のエチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートと鉛直目地部材のエチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートとが互いにつながる(又は近づく)ことになる。これにより、水平目地及び鉛直目地(例えば、打継ぎ目地及びひび割れ誘発目地)の交差部分においても止水機能が損なわれることがないので、建築物の目地における止水機能を従来よりも高めることができる。また、第1鉛直切欠部と水平切欠部とが第2鉛直切欠部を介して連通するので、建築物の見た目が向上する。
【0019】
また、この目地部材の水平目地部材は、水平基材が水平目地に応じた外形形状を有するので、水平目地に応じきれていない複雑な外形形状を有する目地部材(例えば図11に示す目地部材300)よりも小型化されている。また、水平目地部材は、エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートを備えるので、止水性に優れており、コンクリートに対する付着強度も高い。目地部材の鉛直目地部材も、水平目地部材と同様に、小型化されており且つ止水性に優れており、コンクリートに対する付着強度も高い。
【0020】
また、係る目地部材において、前記水平目地部材は、前記交差目地部材とは別の、他の水平目地部材を備え、前記他の水平目地部材の前記水平切欠部は、前記交差目地部材の前記水平切欠部と連通すること、が好ましい。これにより、水平目地部材の配置が容易になる。
【0021】
また、係る目地部材において、前記鉛直基材は前記コンクリート側に曲面を有すること、が好ましい。これにより、鉛直目地にひび割れを誘発させやすくすることができる。
【0022】
また、係る目地部材において、前記水平目地部材の前記水平基材は前記コンクリート側に平面を有すること、が好ましい。ここで、水平目地には、ひび割れが発生しにくい。このため、水平目地部材のコンクリート側に曲面を持たせる必要がない。したがって、水平目地部材を複雑な外形形状に成形する必要をなくすことができるので、水平目地部材を安価で準備することができる。
【0023】
また、係る目地部材において、前記水平目地は、前記コンクリートを鉛直方向において打ち継いだときに形成される水平打継ぎ面に形成され、前記水平目地部材の前記エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートは、前記水平目地部材の前記水平基材が有する複数の面のうち、前記水平打継ぎ面に対向する1つの面に配置されていること、が好ましい。これにより、水平打継ぎ面に水が浸入するのをより確実に防止することができる。
【0024】
また、係る目地部材において、前記交差目地部材は、前記鉛直目地部材の鉛直方向上下にある両端面のうちの一方の端面と面接触する平面であって、前記第1鉛直切欠部を前記第2鉛直切欠部に連通させるための平面を有すること、が好ましい。
【0025】
これにより、鉛直目地部材と交差目地部材とが当接する突き当て面を確保することができる。このため、鉛直目地部材及び交差目地部材を、コンクリートの打ち込み時に用いる型枠に固定する際の位置決めを容易に行うことができる。
【0026】
また、係る目地部材において、前記水平目地部材及び前記鉛直目地部材は、前記コンクリートの壁面と同一平面を構成する面を有すること、が好ましい。これにより、切欠部が不連続とならないだけでなく、目地部材の面もコンクリートの壁面において不連続とならなくなる。このため、切欠部を除いて壁面が平らなコンクリートの建築物を構築することができる。
【0027】
また、本発明の建築物は、コンクリートの壁と、前記コンクリートの壁面の水平方向に沿った水平目地に配設される水平目地部材であって、前記水平目地に応じた外形形状を有する水平基材と、前記水平基材の外形形状に沿って前記水平基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートと、前記エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートが配置された側とは反対側から前記水平基材に形成された、水平方向に沿った水平切欠部とを備えた水平目地部材と、前記コンクリートの壁面の鉛直方向に沿った鉛直目地に配設される鉛直目地部材であって、前記鉛直目地に応じた外形形状を有する鉛直基材と、前記鉛直基材の外形形状に沿って前記鉛直基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートと、前記エチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートが配置された側とは反対側から前記鉛直基材に形成され、鉛直方向に沿った第1鉛直切欠部とを備えた鉛直目地部材とを備え、前記水平目地部材は、前記水平切欠部と連通するとともに前記第1鉛直切欠部と連通し、鉛直方向に沿った第2鉛直切欠部を備えた交差目地部材を備えることを特徴とする。
【0028】
本発明の建築物によれば、水平目地及び鉛直目地の交差部分に、第2鉛直切欠部が水平切欠部及び第1鉛直切欠部の双方と連通している交差目地部材が配設されていることになる。この切欠部の連通に際し、水平目地部材のエチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートと鉛直目地部材のエチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートとが互いにつながっている(又は近づいている)ことになる。これにより、水平目地及び鉛直目地(例えば、打継ぎ目地及びひび割れ誘発目地)の交差部分においても止水機能が損なわれることがないので、建築物の目地における止水機能を従来よりも高めることができる。また、第1鉛直切欠部と水平切欠部とが第2鉛直切欠部を介して連通するので、建築物の見た目が向上する。
【0029】
また、この建築物が備える水平目地部材は、水平基材が水平目地に応じた外形形状を有するので、水平目地に応じきれていない複雑な外形形状を有する目地部材(例えば図11に示す目地部材300)よりも小型化されている。また、水平目地部材は、エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートを備えるので、止水性に優れており、コンクリートに対する付着強度も高い。目地部材の鉛直目地部材も、水平目地部材と同様に、小型化されており且つ止水性に優れており、コンクリートに対する付着強度も高い。
【発明の効果】
【0030】
本発明の目地部材によれば、従来よりも小型化した目地部材であって従来よりも止水性に優れ且つコンクリートに対する付着強度が高い目地部材が提供される。この目地部材を目地の交差部分に配設することで建築物の目地における止水機能を高めることができる。また、この目地部材を備える本発明の建築物は、止水機能が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る建築物の施工方法によって構築される建築物の躯体の概略的な構成を示す部分拡大断面図である。図2は、図1の線II−IIに沿う建築物躯体の正面図である。図3は、図2の線III−IIIに沿う建築物躯体の断面図である。
【0032】
本実施の形態では、図1に示すような建築物1を構築する。
この建築物1は、地中から鉛直方向に立設する建築物躯体2を備える。図1や図2に示す建築物躯体2の壁面2aは、建築物躯体2の厚み方向に垂直な面であって、建築物1の外側表面である。
【0033】
建築物躯体2は、鉄筋コンクリート製であり、図1に示すように、コンクリート内には、横筋3や縦筋4が埋設されている(図3には図示せず)。さらに、コンクリート内には、鉛直方向に沿って配置された中空のパイプ5が埋設されており、このパイプ5の中空部には、無収縮モルタル6が充填されている(図3には図示せず)。パイプ5は、コンクリートとの界面付着がほとんどない材料で構成されており、例えば塩化ビニル製である。パイプ5は、建築物躯体2の鉛直方向に並ぶ複数の横筋3に鉄製の番線(図示せず)によって結束されている。
【0034】
また、建築物躯体2には、図1〜図3に示すように、水平目地部材30(図4参照)と、交差目地部材40(図5参照)が、建築物躯体2の水平方向に沿って配設されている。交差目地部材40は、図1,図2に示すように、水平目地部材30,30の間に配設されている。これらの目地部材30,40は、一部が壁面2aから露出するように、水平方向に沿ってコンクリートに埋設されている(埋設については後述)。目地部材30,40は、例えば、建築物躯体2の水平方向における水平打継ぎ面(図3参照)の壁面2a側に配置される。このように、水平目地部材30も交差目地部材40も、水平目地部材の一種である。なお、水平打継ぎ面とは、建築物1の鉛直方向においてコンクリートを打ち継いだときに形成される、コンクリートの不連続面をいう。
【0035】
水平目地部材30及び交差目地部材40がコンクリートに埋設されることで、それらの間には、境界面が形成される。この境界面に対応するコンクリート側の面を水平目地(横目地)11という。水平目地11は、壁面2aにおいて、水平方向に沿う長い溝状の凹部をなしている。水平目地11は、少なくとも、水平打継ぎ面の数だけ形成される。水平目地11が形成されることにより、壁面2aと水平打継ぎ面の間に段差ができるので、水の浸入をさらに防止することができる。また、水平目地11がなす凹部に水平目地部材30及び交差目地部材40が存在しているため、コンクリートの角部がなくなり、コンクリートの角部が欠損しにくくなる。
【0036】
さらに、建築物躯体2には、図1〜図3に示すように、鉛直目地部材20(図6)が、建築物躯体2の鉛直方向に沿って配設されている。鉛直目地部材20は、一部が壁面2aから露出するように、鉛直方向に沿ってコンクリートに埋設されている(埋設については後述)。鉛直目地部材20は、壁面2aの水平方向において等間隔(例えば3mピッチ)で配置される。
【0037】
鉛直目地部材20がコンクリートに埋設されることで、それらの間には、境界面が形成される。この境界面に対応するコンクリート側の面を鉛直目地(縦目地)10という。鉛直目地10は、壁面2aにおいて、鉛直方向に沿う長い溝状の凹部をなしている。
【0038】
続いて、本実施の形態に係る目地部材について説明する。
本実施の形態に係る目地部材は、コンクリートの壁面2aの水平方向に沿った水平目地11に配設される水平目地部材30と、2つの水平目地部材30,30間に配設される交差目地部材40と、コンクリートの壁面2aの鉛直方向に沿った鉛直目地10に配設される鉛直目地部材20とから構成されている。交差目地部材40も水平目地11に配設される。ここで、交差目地部材40は、図2に示すように、鉛直目地部材20,20間にも配設される。このため、交差目地部材40は、鉛直目地10にも配設される。そして、鉛直目地部材20及び水平目地部材30は、図2に示すように、交差目地部材40を介してつながった状態で建築物躯体2に埋設される。
【0039】
まず、水平目地部材30について説明する。
図4は、図1に示す水平目地部材30の構成及び外観を示す斜視図である。
【0040】
水平目地部材30は、図4に示すように、略矩形の断面形状を有する略平板状の部材であり、背面は、コンクリート側に配置される平面である。水平目地部材30の大きさは、例えば、鉛直方向寸法が100mmであり、水平方向寸法が1mであり、厚み(寸法d1)が25mmである。この水平目地部材30は、図1に示した水平目地11に応じた外形形状を有する水平基材31と、水平基材31に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系シート32(以下、「水平EVAシート32」という)とを備えている。水平EVAシート32は、水平基材31の外形形状に沿って水平基材31に配置されており、具体的には、水平基材31の背面を覆っている。
【0041】
水平基材31は、無収縮グラウト又はポリマーセメントモルタルなどのセメント系基材で構成されている。水平基材31は、水平EVAシート32に覆われていない平らな面31a,31a(以下に説明する水平切欠部31bを除く表面)を有する。これらの面31a,31aは、建築物躯体2の壁面2aと略同一平面を構成する。
【0042】
また、水平基材31には、水平EVAシート32が配置された側とは反対側(壁面2a側)において、水平切欠部31bが水平基材31の長手方向(つまり水平方向)に沿って形成されている。水平切欠部31bは、壁面2aにおいて、水平方向に沿う長い溝状の凹部をなしており、その溝形状(凹部形状)は、外側に向かうにつれて拡がる台形状である。
【0043】
ここで、上記水平切欠部31bが形成された水平目地部材30の準備方法(製造方法)の一例を説明する。
まず、水平EVAシート32を、水平目地11に応じた外形形状を有する金型に配置する。続いて、水平切欠部31bに対応する位置に、水平切欠部31bの形状に応じた外形形状(台形形状)を有する棒状部材(図示せず)を配置する。その後、棒状部材と水平EVAシート32との間に、水平基材31を構成するセメント系基材を流入させる。そして、セメント系基材の硬化に伴ってセメント系基材と棒状部材とが互いに固着する前に、棒状部材をセメント系基材から取り出す。このようにすることで、水平切欠部31bが形成された水平目地部材30を容易に準備(製造)することができる。取り出した棒状部材は再利用することができる。
【0044】
水平EVAシート32は、優れた止水性を有する。このため、水平目地11にひび割れが生じたとしても、当該ひび割れに水が浸入するのを防止することができる(水平目地部材30の止水機能)。具体的には、水平EVAシート32は、伸び率が非常に高く、ひび割れなどによる変形に追従する。さらに、水平EVAシート32は、表面(両面)が起毛しており、非加硫ブチルゴムに比較して、セメント系基材などに対する付着強度が高い。具体的には、セメント系基材に対する付着強度は、非加硫ブチルゴムが1kgf/cm2であるのに対して、水平EVAシート32が9kgf/cm2である。このように、水平EVAシート32に高い付着強度を確保することにより、水平目地部材30の止水機能を、非加硫ブチルゴムを用いた場合よりも確実に高くすることができる。
【0045】
図5は、図1に示す交差目地部材40の構成及び外観を示す斜視図である。
【0046】
交差目地部材40は、図5に示すように、略矩形の断面形状を有する略平板状の部材であり、その背面は、コンクリート側に配置される平面である。交差目地部材40の大きさは、例えば、鉛直方向寸法が100mmであり、水平方向寸法が200mmであり、厚み(寸法d2)が25mmである。この交差目地部材40は、図1に示した水平目地11に応じた外形形状を有する水平基材41と、水平基材41に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系シート42(以下、「水平EVAシート42」という)とを備えている。水平EVAシート42は、水平基材41の外形形状に沿って水平基材41に配置されており、具体的には、水平基材41の背面を覆っている。
【0047】
水平基材41は、無収縮グラウト又はポリマーセメントモルタルなどのセメント系基材で構成されている。水平基材41は、水平EVAシート42に覆われていない、4つの平らな面41a(以下に説明する水平切欠部41b,41b’を除く表面)を有する。これらの面41aは、建築物躯体2の壁面2aと略同一平面を構成する。
【0048】
また、水平基材41には、水平EVAシート42が配置された側とは反対側(壁面2a側)において、水平切欠部41bが水平基材41の長手方向(つまり水平方向)に沿って形成されている。水平切欠部41bは、壁面2aにおいて、水平方向に沿う溝状の凹部をなしており、その溝形状(凹部形状)は、外側に向かうにつれて拡がる台形状である。なお、本実施の形態では、水平基材41の断面における水平切欠部41bの形状及び大きさは、水平目地部材30の水平切欠部31bの形状及び大きさに一致している。
【0049】
さらに、水平基材41には、水平EVAシート42が配置された側とは反対側(壁面2a側)において、水平切欠部41b’が水平基材41の短手方向(つまり鉛直方向)に沿って形成されている。水平切欠部41b’は、壁面2aにおいて、鉛直方向に沿う溝状の凹部をなしており、その溝形状(凹部形状)は、外側に向かうにつれて拡がる台形状である。なお、本実施の形態では、水平基材41の断面における水平切欠部41b’の形状及び大きさは、鉛直目地部材20に形成された鉛直切欠部21b(後述)の形状及び大きさに一致している。このため、水平切欠部41b’は、鉛直切欠部21bの機能(後述)と同等の機能を有している。
【0050】
ここで、上記水平切欠部41b,41b’が形成された交差目地部材40の準備方法(製造方法)は、上述した水平目地部材30の準備方法とほぼ同様である。ただし、水平EVAシート42の面積は、水平EVAシート32の面積とは異なり、棒状部材の形状も異なる。また、水平EVAシート42は、水平EVAシート32と同様の機能を有する。すなわち、水平EVAシート42は、止水性に優れており、また、伸び率が非常に高く、さらに、表面(両面)が起毛しているために、セメント系基材などに対する付着強度が高い。
【0051】
上述した水平目地部材30及び交差目地部材40は、それらの水平基材31,41の背面(コンクリート側の平面)が図3に示す水平打継ぎ面に対向するように埋設される。そして、水平目地11は、この水平打継ぎ面の壁面2a側に形成される。このような水平打継ぎ面に形成される水平目地11に配設される目地部材に求められる主な機能は、止水機能である。このため、本実施の形態では、水平目地部材30及び交差目地部材40の外形形状を略平板状とすることで、コンクリート側に配置される背面を平面としている。そして、この背面に、水平EVAシート32,42を配置することで、水平打継ぎ面に水が浸入するのを防止している。
【0052】
続いて、鉛直目地部材20について説明する。
図6は、図1に示す鉛直目地部材20の構成及び外観を示す斜視図である。
【0053】
鉛直目地部材20は、図6に示すように、平面と曲面で構成された略かまぼこ型の断面形状を有する。鉛直目地部材20の大きさは、例えば、鉛直方向寸法が1mであり、水平方向寸法が50mmであり、厚み(寸法d3)が25mmである。この鉛直目地部材20は、図1に示した鉛直目地10に応じた外形形状(曲面)を有する鉛直基材21と、鉛直基材21に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系シート22(以下、「鉛直EVAシート22」という)とを備えている。鉛直EVAシート22は、鉛直基材21の外形形状(曲面)に沿って鉛直基材21に配置されており、鉛直基材21の表面の一部(曲面)を覆っている。つまり、鉛直基材21及び鉛直EVAシート22の双方がコンクリートの壁面2aの鉛直目地10に応じた外形形状を有している。
【0054】
鉛直基材21は、無収縮グラウト又はポリマーセメントモルタルなどのセメント系基材で構成されている。鉛直基材21は、鉛直EVAシート22に覆われていない平らな面21a,21a(以下に説明する鉛直切欠部21bを除く表面)を有する。これらの面21a,21aは、建築物躯体2の壁面2aと略同一平面を構成する。
【0055】
また、鉛直基材21には、鉛直EVAシート22が配置された側とは反対側(壁面2a側)において、鉛直切欠部21bが鉛直基材21の長手方向(つまり鉛直方向)に沿って形成されている。なお、本実施の形態では、鉛直基材21の断面における鉛直切欠部21bの形状は、外側に向かうにつれて拡がる台形である。なお、本実施の形態では、鉛直基材21の断面における鉛直切欠部21bの形状及び大きさは、水平目地部材30の水平切欠部31bや交差目地部材40の切欠部41b,41b’の形状及び大きさに一致している。
【0056】
ここで、上記鉛直切欠部21bが形成された鉛直目地部材20の準備方法(製造方法)は、上述した水平目地部材30の準備方法とほぼ同様である。ただし、鉛直EVAシート22の形状は、水平EVAシート32の形状とは異なる。また、鉛直EVAシート22は、水平EVAシート32と同様の機能を有する。すなわち、鉛直EVAシート22は、止水性に優れており、また、伸び率が非常に高く、さらに、表面(両面)が起毛しているために、セメント系基材などに対する付着強度が高い。
【0057】
上述したように、鉛直基材21に鉛直切欠部21bを形成することで、鉛直基材21は、破断されやすくなっている。これにより、建築物躯体2に予想外の外力が加わっても、先に鉛直基材21が破断される。このため、鉛直EVAシート22の破れや、鉛直EVAシート22のコンクリートからの剥離が起こりにくくなる。そして、鉛直基材21が破断したとしても、鉛直EVAシート22は、コンクリートに付着した状態を維持したまま、破断した鉛直基材21を保持することができるので、鉛直目地部材20の止水機能が損なわれることはない。
【0058】
続いて、本実施の形態に係る目地部材を構成する目地部材20,30,40が建築物1に配設されたときの機能について説明する。
【0059】
鉛直目地10に配設される鉛直目地部材20には、鉛直目地10にひび割れを誘発させる機能が求められる。これは、建築物1では、水平方向よりも鉛直方向にひび割れが生じやすいためである。そこで、この機能を実現するために、鉛直目地部材20の鉛直基材21の外形形状を鉛直目地10に応じた略かまぼこ型として(具体的には、コンクリート側に曲面を有するように鉛直目地部材20の鉛直基材21を成形し)、さらに、この鉛直基材21に鉛直切欠部21bを形成している。これにより、コンクリート内にひび割れが発生した場合、そのひび割れは鉛直切欠部21bを備える鉛直目地部材20に向かって誘発されることになる。なお、これに対して、鉛直基材21の外形形状が鉛直目地10に応じきれていない場合、鉛直目地10以外の箇所(例えば、図11に示す例では、壁面下地材301とコンクリート310の境界部分)にもひび割れが誘発される可能性がある。
【0060】
さらに、鉛直目地部材20を略かまぼこ型とすることで、コンクリート側に配置される面を曲面としている。そして、この曲面に、鉛直EVAシート22を配置することで、鉛直目地10に発生したひび割れに水が浸入するのを防止している(止水機能)。
【0061】
なお、この建築物躯体2では、ひび割れは、パイプ5と鉛直切欠部21bを備える鉛直目地部材20との間に誘発されやすくなっている。これは、パイプ5がコンクリートとの間で界面付着をほとんどしていないために、パイプ5を埋設した部分では、建築物躯体2の厚み方向における寸法が、パイプ5を埋設していない部分よりも小さく(薄く)なっているからである。
【0062】
一方、水平目地部材30は、上述したように、水平打継ぎ面に配設されるので、水平目地部材30には、水平目地11にひび割れを誘発させる機能が求められていない。このため、水平目地部材30には、コンクリート側に曲面を持たせる必要がない。また、水平打継ぎ面に配設されるので、水平目地部材30には、止水機能が求められている。そこで、水平EVAシート32は、水平基材31の水平打継ぎ面に対向する平面(背面)に配置されている。ここで、水平目地部材30を略平板状にすることで、複雑な外形形状に成形する必要がなく、成形が容易となる。このため、水平目地部材30を安価に準備することができる。同様の理由で、交差目地部材40も略平板状にしている。
【0063】
また、交差目地部材40が略平板状であるため、鉛直目地部材20との当接面が平面となる。この当接面は、後述する型枠に固定する際の突き当て面となる。つまり、交差目地部材40を略平板状にすることにより、突き当て面を広くすることができる。これにより、交差目地部材40及び鉛直目地部材20を型枠に固定した際に、交差目地部材40や鉛直目地部材20の位置がずれにくくなる。また、上記当接面において、鉛直目地部材20の鉛直EVAシート22と、交差目地部材40の水平EVAシート42とが近づくので、水平目地11及び鉛直目地10(つまり、打継ぎ目地及びひび割れ誘発目地)の交差部分においても止水機能が損なわれることがなくなる。
【0064】
続いて、図1に示す建築物1(建築物躯体2)を構築するための施工方法について説明する。本施工方法によって、上述したような目地部材20,30,40が建築物1の建築物躯体2を構成するコンクリート内に埋設される。
【0065】
まず、図4〜図6に示した目地部材20,30,40を準備する。ここで、交差目地部材40を予め成型品として準備しておくことで、コンクリートを打ち込む作業現場において、鉛直目地部材20や水平目地部材30を加工して、目地10,11の交差部分に適した目地部材を新たに準備する必要がなくなり、建築物1の施工性(施工効率)が高まる。また、交差目地部材40は、長手方向寸法が200mm(20cm)であり、鉛直目地部材20や水平目地部材30の長手方向寸法1mよりも短いため、小型化されており、運搬が容易であり、破損の可能性が低い。さらに、交差目地部材40に加えて、水平目地部材30を準備することで、水平目地11への目地部材の配置が容易になる。
【0066】
続いて、図7(a),図7(b)に示す取付部材100を準備する。取付部材100は、鉛直目地部材20(又は水平目地部材30や交差目地部材40)を後述する型枠200に固定するための部材である。
【0067】
取付部材100は、図7(a),図7(b)に示すように、発泡ウレタンなどの合成樹脂製のベース110と、金属製の締結部材120とを備えている。ベース110の断面形状は、図7(b)に示すように、台形であり、上述した切欠部21b,31b,41b,41b’の形状と相補的な形状をなしている。締結部材120は、頭部121a及び軸部121bで構成されたボルト121と、ボルト121の軸部121bに形成されたネジ山(図示せず)に螺合するナット122とを有する。
【0068】
取付部材100は、ベース110に形成した貫通孔111に、ボルト121を嵌挿してベース110にボルト121を固定することで準備(製造)される。図7(a),図7(b)に示すように、取付部材100において、ボルト121の頭部121aは、貫通孔111の大径部111a内に収容されており、ボルト121の軸部121bは、ベース110の小径部111bがある表面から突出している。なお、貫通孔111の大径部111aは、ベース110の断面がなす台形が拡がっている側とは反対側に形成されている(図7(b)参照)。この貫通孔111の大径部111aには、ボルト121の頭部121aが配置されない空間として、スペース130がある。
【0069】
次に、取付部材100の上記スペース130に仮接合用の接着部材140(図8参照)を充填し、続いて、この取付部材100を鉛直目地部材20の鉛直切欠部21bに挿入することで、取付部材100を鉛直目地部材20に仮接合する。接着部材140としては、例えば、再剥離が可能な剥離性を有する不定形の接着材を用いる。取付部材100は、1本の鉛直目地部材20に対して、複数個、仮接合される(図9参照)。また、取付部材100は、水平目地部材30や交差目地部材40にも仮接合される(図9参照)。
【0070】
続いて、取付部材100が仮接合された鉛直目地部材20を、締結部材120のナット122を締め付けることにより、型枠200(堰板)に固定する。固定された状態は、図8に示されている。型枠200としては、例えば、ベニヤ合板などの合板パネル(木製)に、打ち込んだコンクリートを剥がれやすくするための剥離材が表面に塗布されているものを用いる。また、この型枠200には、建築物躯体2に鉛直目地10を形成する位置であって取付部材100のボルト121に対応する位置に孔が形成されている。また、取付部材100が仮接合された水平目地部材30や、取付部材100が仮接合された交差目地部材40も型枠200に固定される。したがって、型枠200には、水平目地の形成位置にも孔が形成されている。
【0071】
図9は、型枠200に固定された目地部材20,30,40の、型枠200側から観たときの配置の一例を示す図である。
【0072】
図9に示すように、水平目地部材30の端面(図4に示す端面31c)と、交差目地部材40の側面(図5に示す側面41c)は、互いに当接している。ここで、水平目地部材30の厚み(寸法d1)と、交差目地部材40の厚み(寸法d2)は同じであり、例えば25mmである。したがって、水平目地部材30と交差目地部材40の当接面は十分な広さが確保されている。このため、これらを型枠200へ固定しても位置がずれにくい。また、この当接により、水平EVAシート32,42も互いに当接するので、止水機能が確保される。
【0073】
また、同様に、鉛直目地部材20の端面(図6に示す端面21c)と、交差目地部材40の側面(図5に示す側面41c’)は、互いに当接している。ここで、鉛直目地部材20の厚み(寸法d3)と、交差目地部材40の厚み(寸法d2)は同じであり、例えば25mmである。したがって、鉛直目地部材20と交差目地部材40の当接面は十分な広さが確保されている。特に、鉛直目地部材20と交差目地部材40とは鉛直方向において上下に配設されるので、このように確保された当接面は、突き当て面となる。このため、これらを型枠200へ固定しても位置がずれにくい。また、この当接により、水平EVAシート42と鉛直EVAシート22とは、互いに近づく(わずかに当接する)ので、止水機能が確保される。
【0074】
また、図9に示す状態は、目地部材20,30,40が型枠200の表面に当接して固定されている状態であるため、鉛直目地部材20の面21aと、交差目地部材40の面41aと、水平目地部材30の面31aは、同一平面を構成する。これらの面21a,31a,41aは、後述する脱型後に、壁面2aと同一平面を構成することになる。これにより、壁面2aにおいて、目地部材20,30,40の面21a,31a,41aも不連続とならなくなる。これにより、建築物1の壁面を、切欠部を除いて平らにすることができることになる。
【0075】
そして、建築物躯体2を構築する。建築物躯体2の構築は、コンクリートの打継ぎ部ごとに行われる。ここでは、床スラブを含む躯体下部の構築と、それに続く躯体上部の構築について図10(a),図10(b)を用いて説明する。なお、図10(a),図10(b)では、横筋3、横筋4、及びパイプ5などの図示を省略している。
【0076】
まず、図10(a)に示すように、上述したように形成した目地部材20,30,40が固定された型枠200などを用いて、床スラブを含む躯体下部2’を構成するためのコンクリート(セメント系基材)を打ち込む。このとき、目地部材30,40の中央部の高さが、床スラブ表面(打ち込んだコンクリートの天端面)の高さよりも低くなるように、型枠200は設置される。これは、水平打継ぎ面が床スラブ表面の高さから建築物1の外側に向かうにつれて下降するように斜めに形成されるためである。そして、打ち込んだコンクリートが硬化した後、水平打継ぎ面を形成する。水平打継ぎ面と目地部材30,40が交差する位置は、目地部材30,40の中央位置である。
【0077】
ここで、目地部材30,40は、その背面の鉛直方向寸法(図10(a)に示す寸法H1)が、水平打継ぎ面の斜めに形成されるときの鉛直方向の幅(同寸法H2)よりも十分に大きくなるように形成されている。これにより、水平打継ぎ面が水平面に対して斜めに形成されても、水平打継ぎ面の位置が、目地部材30,40からずれることがなく、止水機能が確実に確保される。なお、寸法H1が小さく、寸法H2が大きい場合において、水平打継ぎ面が目地部材30,40の下方にずれて、水平打継ぎ面に水が浸入しやすくなることがあるが、本実施の形態ではそのような問題は起こらない。
【0078】
次に、図10(b)に示すように、他の型枠200などを用いて、躯体下部2’の水平打継ぎ面の上方にコンクリート(セメント系基材)を打ち込み、躯体上部2”を構築する。
【0079】
そして、不要となった型枠200をコンクリートから取り外す(脱型)。脱型は、ナット122をボルト121から取り外してから行う。これにより、目地部材20,30,40は、コンクリート(躯体下部2’や躯体上部2”)に埋設された状態で、一部が壁面2aから露出する(図2参照)ことになる。また、脱型後には、複数個の取付部材100が目地部材20,30,40に残存しているが、これらも取り外す。剥離性を有する接着部材140を用いたので、また、切欠部21b,31b,41b,41b’の形状を台形としたので、取付部材100の取り外しは容易である。取り外した取付部材100は、再利用することができる。
【0080】
脱型後の状態は、図1〜図3に示した通りである。すなわち、上述したような工程を経ることにより、目地部材20,30,40が埋設された躯体下部2’及び躯体上部2”を含む建築物躯体2が構築される。なお、建築物躯体2以外の部分(図示せず)も構築されることで、建築物1が構築される。
【0081】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、建築物1(建築物躯体2)は、図1〜図3に示したように配設された目地部材20,30,40を備えている。交差目地部材40は、建築物1において水平目地11及び鉛直目地10の交差部分に配設される。この交差目地部材40においては、鉛直切欠部41b’(第2鉛直切欠部)が鉛直目地部材20の鉛直切欠部21b(第1鉛直切欠部)と連通している。この鉛直切欠部41b’,21bの連通に際し、水平EVAシート42と鉛直目地部材20の鉛直EVAシート22とが互いに近づく(一部が当接する)ことになる。このため、目地10,11の交差部分において、止水機能が損なわれることがない。したがって、本実施の形態に係る目地部材によれば、複雑な形状の目地部材(例えば図11に示す従来の目地部材300)を水平目地及び鉛直目地に配設した場合に比べて、止水性を高めることができる。さらに、交差目地部材40には、鉛直目地部材20の鉛直切欠部21bと同じ大きさ及び同じ形状の鉛直切欠部41b’が形成されているため、鉛直目地10へのひび割れ誘発機能が、交差目地部材40が配設された場所においても損なわれにくい。このため、従来の目地部材よりも、ひび割れ誘発機能も高めることができる。
【0082】
また、交差目地部材40は、水平基材41が水平目地11に応じた外形形状を有するので、水平目地11に応じきれていない複雑な外形形状を有する目地部材よりも小型化されている。また、交差目地部材40は、水平EVAシート42を備えるので、止水性に優れており、また、例えば非加硫ブチルゴムよりも、コンクリートに対する付着強度も高い。鉛直目地部材20も、交差目地部材40と同様に、小型化されており且つ止水性に優れており、また、コンクリートに対する付着強度も高い。
【0083】
したがって、上述した鉛直目地部材20及び交差目地部材40の組み合わせによれば、従来よりも小型化した目地部材であって従来よりも止水性に優れ且つコンクリートに対する付着強度が高い目地部材が提供される。そして、この目地部材を、目地10,11の交差部分に配設することで建築物1の目地10,11における止水機能やひび割れ誘発機能を高めることができる。また、鉛直目地部材20及び交差目地部材40の組み合わせを備える建築物1は、止水機能やひび割れ誘発機能が高い。また、鉛直切欠部21bと水平切欠部31bとが、交差目地部材40の切欠部(水平切欠部41b及び鉛直切欠部41b’)を介して連通するので、建築物1の見た目が向上する。
【0084】
なお、上述した実施の形態では、鉛直目地部材20の断面形状が略かまぼこ型であり、交差目地部材40の断面形状が略平板状であるとしたが、この組み合わせに限られることはない。鉛直切欠部21bと鉛直切欠部41b’とを連通させる際に、目地部材20,40が当接する突き当て面が十分に確保することができれば、いかなる形状の組み合わせであってもよい。つまり、交差目地部材40の或る面は、鉛直目地部材20の鉛直方向上下にある両端面のうちの一方の端面と面接触する。突き当て面が十分に確保されることで、鉛直目地部材20及び交差目地部材40を、型枠200に固定する際の位置決めを容易に行うことができる。
【0085】
また、上述した実施の形態では、水平目地部材30を準備したが、しなくてもよい。この場合には、交差目地部材40として、長尺状のものが準備される。また、このような長尺状の交差目地部材には、複数本(例えば2本)の鉛直切欠部41c’が鉛直目地部材20を配置するピッチに合わせて形成されていてもよい。
【0086】
また、鉛直目地部材20の厚み(寸法d3)と、交差目地部材40の厚み(寸法d2)は同じであるとしたが、同じでなくてもよい。つまり、寸法d3と寸法d2は、異なっていてもよい。ただし、寸法d3と寸法d2は、鉛直目地部材20と交差目地部材40の当接面が十分に広くなるように設定される。寸法d2と寸法d1も同様に当接面が十分に広くなるように設定される。
【0087】
また、目地部材20,30,40の基材21,31,41は、セメント系基材で構成されるとしたが、セメント系基材に限られることはない。しかし、セメント系基材は、硬化性を有するため、その硬化性を利用して、EVAシート22,32,42とセメント系基材が強固に付着した目地部材20,30,40を製造することができるので、目地部材20,30,40の準備が容易である。
【0088】
また、水平EVAシート32,42は、水平基材31,41が有するコンクリート側の背面に配置されているとしたが、これに代えて、水平基材31,41が有するコンクリート側の3つの平面(つまり、背面と、水平方向に沿う上端(うわば)及び下端(したば))に配置されていてもよいし、2つの平面(例えば、背面と下端)に配置されていてもよい。また、鉛直基材21はコンクリート側に曲面を有するとしたが、この曲面は、図6に示すような円弧状である必要はなく、例えば、半楕円状、又はU字形状であってもよい。
【0089】
さらに、切欠部21b,31b,41b,41b’の形状は、台形であるとしたが、台形に限られることはなく、例えば、長方形であってもよい。また、切欠部21b,31b,41b,41b’の長手方向に垂直な幅方向の寸法が小さくなるように形成することが好ましい。これにより、建築物1において切欠部21b,31b,41b,41b’が凹部として露出する面積が少なくなり、建築物1の壁面2a側から観たときの意匠性が高まる。また、鉛直目地10に沿う鉛直切欠部21b,41b’の形状と、水平目地11に沿う水平切欠部31b,41bの形状は異なっていてもよい。
【0090】
また、上述した実施の形態において、壁面2aに表面仕上げを施してもよい。表面仕上げとしては、塗装仕上げなどがある。また、表面仕上げとして、切欠部21b,31b,41b,41b’に、低強度モルタル、シーリング材(樹脂や塩化ビニル)などを充填してもよい。
【0091】
上述した実施の形態では、水平目地11を水平打継ぎ面に形成したが、水平打継ぎ面以外の箇所に形成してもよい。さらには、目地11を水平方向に形成しなくてもよい。同様に、目地10を鉛直方向に形成しなくてもよい。したがって、目地10,11が形成される方向は、互いに交差する方向であればよく、交差する角度に合わせて、交差目地部材40の切欠部41b,41b’が形成される。
【0092】
また、上述した実施の形態では、建築物躯体2が有する表面のうち、壁面2aに、鉛直目地10を形成するとしたが、さらに、壁面2aに対向する壁面にも鉛直目地10を形成してもよい。また、上述した実施の形態では、パイプ5を建築物躯体2のコンクリート内に埋設させるとしたが、必ずしも埋設させる必要はない。また、建築物躯体2は、鉄筋コンクリート製であるとしたが、これに代えて、横筋3及び縦筋4を備えないコンクリート製であってもよい。
【0093】
上記実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施の形態に係る建築物の施工方法によって構築される建築物の躯体の概略的な構成を示す部分拡大断面図である。
【図2】図1の線II−IIに沿う建築物躯体の正面図である。
【図3】図2の線III−IIIに沿う建築物躯体の断面図である。
【図4】図1に示す水平目地部材に当接する他の水平目地部材の構成及び外観を示す斜視図である。
【図5】図1に示す交差目地部材の構成及び外観を示す斜視図である。
【図6】図1に示す鉛直目地部材の構成及び外観を示す斜視図である。
【図7】図4〜図6に示すような目地部材を型枠に取り付けるための取付部材の構成を示す断面図であり、(a)は、取付部材の長手方向に沿う断面図であり、(b)は、取付部材の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
【図8】図6の鉛直目地部材を型枠に固定したときの状態を示す部分拡大断面図である。
【図9】図8の型枠に固定された図4〜図6の目地部材の、型枠側から観たときの配置の一例を示す図である。
【図10】図1〜図3の建築物躯体を構築するときの状態を示す断面図であり、(a)は、躯体下部に対応するコンクリートを打ち込んだ後の状態を示す断面図であり、(b)は、躯体上部に対応するコンクリートを打ち込んだ後の状態を示す断面図である。
【図11】従来の建築物の概略的な構成を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 建築物
2 建築物躯体
2’ 躯体下部
2” 躯体上部
2a 壁面
10 鉛直目地
11 水平目地
20 鉛直目地部材
21 鉛直基材
21a,31a,41a 面
21b,41b’ 鉛直切欠部
21c,31c 端面
22 エチレン酢酸ビニル樹脂系シート(鉛直EVAシート)
30 水平目地部材
31,41 水平基材
31b,41b 水平切欠部
32,42 エチレン酢酸ビニル樹脂系シート(水平EVAシート)
40 交差目地部材
41c,41c’ 側面
100 取付部材
120 締結部材
140 接着部材
200 型枠
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地部材及び建築物に関し、特に、鉛直目地(縦目地)及び水平目地(横目地)の交差部分に配設される目地部材、並びに、当該目地部材を備える建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、セメントの水和熱や外気温などによる温度変化、乾燥収縮、予想外の外力といった変形を生じる様々な要因を抱えており、これらの要因により壁面にひび割れの生じる可能性がある。このひび割れが壁面にランダムに発生すると建築物の美観が損なわれてしまう。そこで、一般に、コンクリートの建築物には、壁面の特定位置に、ひび割れを誘発するための目地(ひび割れ誘発目地)が凹設されている。
【0003】
また、コンクリートの建築物において、コンクリートの打継ぎ部(各階躯体の区切りとなる水平方向の打継ぎ部、あるいは各階での工区割りにおける鉛直方向の打継ぎ部)にも、打継ぎ用の目地(打継ぎ目地)が凹設されている。
【0004】
そして、これらの目地にシーリング材を充填することにより、コンクリートのひび割れや打継ぎ部分への水分の浸入を防止している。従来、目地の形成は、型枠に例えば木製の目地棒を釘止めしておき、当該型枠を用いて形成された空間内にコンクリートを打ち込んだ後、型枠及び目地棒をコンクリートから取り外していた。そして、形成された目地に、シーリング材を充填していた。
【0005】
しかし、この場合、目地棒の脱型やシーリング材の充填が必要であり、作業が煩雑になるという問題があった。例えば、目地にシーリング材を充填する作業は、高度の熟練を要し、美しい仕上げを達成するには手間ひまがかかるものであった。また、シーリング材は、紫外線などによって劣化するので、定期的に取り替える必要があるという問題もあった。
【0006】
そこで、目地棒の脱型とシーリング材の施工とを不要とした目地部材が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0007】
図11は、その目地部材を用いた建築物の目地構造を示す図である。
図11に示す建築物は、コンクリート310と、コンクリート310の壁面に凹設された台形形状の目地305と、複雑な外形形状の目地部材300とを備えている。また、目地部材300は、壁面下地材301と、止水シート302と、透水目地材303とを有している。
【0008】
壁面下地材301は、コンクリート310に物性の近い材料で形成され、コンクリート310の壁面と略同一平面を形成するように配置されている。止水シート302は、壁面下地材301の裏面に固着されている。この止水シート302には、非加硫ブチルゴムが使用されている。透水目地材303は、止水シート302に固定されている。この透水目地材303は、吸水力を伴う透水性を有する材料(例えば、連続発泡体や無機繊維材)であり、目地305に応じた外形形状を有している。
【0009】
この構成により、目地305の形成位置にコンクリート310のひび割れを誘発し、止水シート302及び透水目地材303を組み合わせた止水機能によって、ひび割れへの水の浸入を防止するようにしていた。
【0010】
また、特許文献1では、コンクリート310の打ち込み時に、目地部材付き型枠を用いることが提案されている。この目地部材付き型枠では、上記目地部材300を型枠に仮留めするための仮留め手段を、上記目地部材300と型枠との間に設けることで、目地部材300が型枠に仮留めされている。コンクリート310の打ち込み後には、型枠がコンクリート310から取り外され、目地部材300は、コンクリート310に埋設された状態となる。このため、目地棒の脱型とシーリング材の施工とが不要となる。
【0011】
そして、上記目地部材300は、型枠の鉛直方向に沿っても水平方向に沿っても当該型枠に仮留め可能である。
【特許文献1】特開2005−061178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ひび割れの発生位置が目地305からずれることを考慮して、図11に示したように、目地部材300の止水シート302を目地305よりも広い範囲に亘って配置する必要がある。このことにより、図11に示すように目地部材300の外形形状が複雑となり、目地部材300の外形形状が、形成する目地305に応じきれず、その大きさが目地305の大きさに対して大きくなるという問題があった。
【0013】
また、この外形形状のため、例えば壁面下地材301とコンクリート310の境界部分にひび割れが発生する可能性があり、その場合、止水シート302及び透水目地材303によって止水を行うことができないという問題があった。
【0014】
さらに、止水シート302を構成する非加硫ブチルゴムは、コンクリート310に対する付着強度が1kgf/cm2程度であり、コンクリート310からの剥離が生じないための十分な付着強度を有していない。このため、止水シート302がコンクリート310から剥がれる可能性があり、確実に止水を行うことができない虞があるという問題点があった。
【0015】
また、複数の目地部材300を、型枠の水平方向及び鉛直方向の双方に沿って当該型枠に仮留めしようとすると、水平方向に沿って仮留めされる目地部材300と、鉛直方向に沿って仮留めされる目地部材300の交差部分の型枠への配置が困難となる。これは、目地部材300が成型品であるために、仮留めの作業現場で目地部材300を加工することができないためである。この結果、2つの目地部材300,300が互いに交差する部分において、目地をコンクリートに形成することができなかった。つまり、目地部材300では、互いに交差する目地を形成することができなかった。このように、互いに交差する目地の形成ができなかった部分では、目地部材300の止水機能や、目地305による、ひび割れを誘発させる機能が損なわれる。したがって、水平目地と鉛直目地の双方が互いに交差したような目地を形成することが可能な目地部材が求められている。
【0016】
本発明の目的は、従来よりも小型化した目地部材であって従来よりも止水性に優れ且つコンクリートに対する付着強度が高い目地部材であって、目地の交差部分に配設されることで建築物の目地における止水機能を高めることができる目地部材、並びに当該目地部材を備える建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明の目地部材は、コンクリートの壁面の水平方向に沿った水平目地に配設される水平目地部材であって、前記水平目地に応じた外形形状を有する水平基材と、前記水平基材の外形形状に沿って前記水平基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートと、前記エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートが配置された側とは反対側から前記水平基材に形成された、水平方向に沿った水平切欠部とを備えた水平目地部材と、前記コンクリートの壁面の鉛直方向に沿った鉛直目地に配設される鉛直目地部材であって、前記鉛直目地に応じた外形形状を有する鉛直基材と、前記鉛直基材の外形形状に沿って前記鉛直基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートと、前記エチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートが配置された側とは反対側から前記鉛直基材に形成され、鉛直方向に沿った第1鉛直切欠部とを備え、前記水平目地部材は、前記水平切欠部と連通するとともに前記第1鉛直切欠部と連通し、鉛直方向に沿った第2鉛直切欠部を備えた交差目地部材を備えることを特徴とする。
【0018】
本発明の目地部材によれば、水平目地及び鉛直目地の交差部分に配設可能な交差目地部材が準備されるので、作業現場で目地部材を加工する必要がなくなり、建築物の施工性が高まる。また、この交差目地部材においては、第2鉛直切欠部が水平切欠部及び第1鉛直切欠部の双方と連通している。この切欠部の連通に際し、水平目地部材のエチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートと鉛直目地部材のエチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートとが互いにつながる(又は近づく)ことになる。これにより、水平目地及び鉛直目地(例えば、打継ぎ目地及びひび割れ誘発目地)の交差部分においても止水機能が損なわれることがないので、建築物の目地における止水機能を従来よりも高めることができる。また、第1鉛直切欠部と水平切欠部とが第2鉛直切欠部を介して連通するので、建築物の見た目が向上する。
【0019】
また、この目地部材の水平目地部材は、水平基材が水平目地に応じた外形形状を有するので、水平目地に応じきれていない複雑な外形形状を有する目地部材(例えば図11に示す目地部材300)よりも小型化されている。また、水平目地部材は、エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートを備えるので、止水性に優れており、コンクリートに対する付着強度も高い。目地部材の鉛直目地部材も、水平目地部材と同様に、小型化されており且つ止水性に優れており、コンクリートに対する付着強度も高い。
【0020】
また、係る目地部材において、前記水平目地部材は、前記交差目地部材とは別の、他の水平目地部材を備え、前記他の水平目地部材の前記水平切欠部は、前記交差目地部材の前記水平切欠部と連通すること、が好ましい。これにより、水平目地部材の配置が容易になる。
【0021】
また、係る目地部材において、前記鉛直基材は前記コンクリート側に曲面を有すること、が好ましい。これにより、鉛直目地にひび割れを誘発させやすくすることができる。
【0022】
また、係る目地部材において、前記水平目地部材の前記水平基材は前記コンクリート側に平面を有すること、が好ましい。ここで、水平目地には、ひび割れが発生しにくい。このため、水平目地部材のコンクリート側に曲面を持たせる必要がない。したがって、水平目地部材を複雑な外形形状に成形する必要をなくすことができるので、水平目地部材を安価で準備することができる。
【0023】
また、係る目地部材において、前記水平目地は、前記コンクリートを鉛直方向において打ち継いだときに形成される水平打継ぎ面に形成され、前記水平目地部材の前記エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートは、前記水平目地部材の前記水平基材が有する複数の面のうち、前記水平打継ぎ面に対向する1つの面に配置されていること、が好ましい。これにより、水平打継ぎ面に水が浸入するのをより確実に防止することができる。
【0024】
また、係る目地部材において、前記交差目地部材は、前記鉛直目地部材の鉛直方向上下にある両端面のうちの一方の端面と面接触する平面であって、前記第1鉛直切欠部を前記第2鉛直切欠部に連通させるための平面を有すること、が好ましい。
【0025】
これにより、鉛直目地部材と交差目地部材とが当接する突き当て面を確保することができる。このため、鉛直目地部材及び交差目地部材を、コンクリートの打ち込み時に用いる型枠に固定する際の位置決めを容易に行うことができる。
【0026】
また、係る目地部材において、前記水平目地部材及び前記鉛直目地部材は、前記コンクリートの壁面と同一平面を構成する面を有すること、が好ましい。これにより、切欠部が不連続とならないだけでなく、目地部材の面もコンクリートの壁面において不連続とならなくなる。このため、切欠部を除いて壁面が平らなコンクリートの建築物を構築することができる。
【0027】
また、本発明の建築物は、コンクリートの壁と、前記コンクリートの壁面の水平方向に沿った水平目地に配設される水平目地部材であって、前記水平目地に応じた外形形状を有する水平基材と、前記水平基材の外形形状に沿って前記水平基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートと、前記エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートが配置された側とは反対側から前記水平基材に形成された、水平方向に沿った水平切欠部とを備えた水平目地部材と、前記コンクリートの壁面の鉛直方向に沿った鉛直目地に配設される鉛直目地部材であって、前記鉛直目地に応じた外形形状を有する鉛直基材と、前記鉛直基材の外形形状に沿って前記鉛直基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートと、前記エチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートが配置された側とは反対側から前記鉛直基材に形成され、鉛直方向に沿った第1鉛直切欠部とを備えた鉛直目地部材とを備え、前記水平目地部材は、前記水平切欠部と連通するとともに前記第1鉛直切欠部と連通し、鉛直方向に沿った第2鉛直切欠部を備えた交差目地部材を備えることを特徴とする。
【0028】
本発明の建築物によれば、水平目地及び鉛直目地の交差部分に、第2鉛直切欠部が水平切欠部及び第1鉛直切欠部の双方と連通している交差目地部材が配設されていることになる。この切欠部の連通に際し、水平目地部材のエチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートと鉛直目地部材のエチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートとが互いにつながっている(又は近づいている)ことになる。これにより、水平目地及び鉛直目地(例えば、打継ぎ目地及びひび割れ誘発目地)の交差部分においても止水機能が損なわれることがないので、建築物の目地における止水機能を従来よりも高めることができる。また、第1鉛直切欠部と水平切欠部とが第2鉛直切欠部を介して連通するので、建築物の見た目が向上する。
【0029】
また、この建築物が備える水平目地部材は、水平基材が水平目地に応じた外形形状を有するので、水平目地に応じきれていない複雑な外形形状を有する目地部材(例えば図11に示す目地部材300)よりも小型化されている。また、水平目地部材は、エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートを備えるので、止水性に優れており、コンクリートに対する付着強度も高い。目地部材の鉛直目地部材も、水平目地部材と同様に、小型化されており且つ止水性に優れており、コンクリートに対する付着強度も高い。
【発明の効果】
【0030】
本発明の目地部材によれば、従来よりも小型化した目地部材であって従来よりも止水性に優れ且つコンクリートに対する付着強度が高い目地部材が提供される。この目地部材を目地の交差部分に配設することで建築物の目地における止水機能を高めることができる。また、この目地部材を備える本発明の建築物は、止水機能が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る建築物の施工方法によって構築される建築物の躯体の概略的な構成を示す部分拡大断面図である。図2は、図1の線II−IIに沿う建築物躯体の正面図である。図3は、図2の線III−IIIに沿う建築物躯体の断面図である。
【0032】
本実施の形態では、図1に示すような建築物1を構築する。
この建築物1は、地中から鉛直方向に立設する建築物躯体2を備える。図1や図2に示す建築物躯体2の壁面2aは、建築物躯体2の厚み方向に垂直な面であって、建築物1の外側表面である。
【0033】
建築物躯体2は、鉄筋コンクリート製であり、図1に示すように、コンクリート内には、横筋3や縦筋4が埋設されている(図3には図示せず)。さらに、コンクリート内には、鉛直方向に沿って配置された中空のパイプ5が埋設されており、このパイプ5の中空部には、無収縮モルタル6が充填されている(図3には図示せず)。パイプ5は、コンクリートとの界面付着がほとんどない材料で構成されており、例えば塩化ビニル製である。パイプ5は、建築物躯体2の鉛直方向に並ぶ複数の横筋3に鉄製の番線(図示せず)によって結束されている。
【0034】
また、建築物躯体2には、図1〜図3に示すように、水平目地部材30(図4参照)と、交差目地部材40(図5参照)が、建築物躯体2の水平方向に沿って配設されている。交差目地部材40は、図1,図2に示すように、水平目地部材30,30の間に配設されている。これらの目地部材30,40は、一部が壁面2aから露出するように、水平方向に沿ってコンクリートに埋設されている(埋設については後述)。目地部材30,40は、例えば、建築物躯体2の水平方向における水平打継ぎ面(図3参照)の壁面2a側に配置される。このように、水平目地部材30も交差目地部材40も、水平目地部材の一種である。なお、水平打継ぎ面とは、建築物1の鉛直方向においてコンクリートを打ち継いだときに形成される、コンクリートの不連続面をいう。
【0035】
水平目地部材30及び交差目地部材40がコンクリートに埋設されることで、それらの間には、境界面が形成される。この境界面に対応するコンクリート側の面を水平目地(横目地)11という。水平目地11は、壁面2aにおいて、水平方向に沿う長い溝状の凹部をなしている。水平目地11は、少なくとも、水平打継ぎ面の数だけ形成される。水平目地11が形成されることにより、壁面2aと水平打継ぎ面の間に段差ができるので、水の浸入をさらに防止することができる。また、水平目地11がなす凹部に水平目地部材30及び交差目地部材40が存在しているため、コンクリートの角部がなくなり、コンクリートの角部が欠損しにくくなる。
【0036】
さらに、建築物躯体2には、図1〜図3に示すように、鉛直目地部材20(図6)が、建築物躯体2の鉛直方向に沿って配設されている。鉛直目地部材20は、一部が壁面2aから露出するように、鉛直方向に沿ってコンクリートに埋設されている(埋設については後述)。鉛直目地部材20は、壁面2aの水平方向において等間隔(例えば3mピッチ)で配置される。
【0037】
鉛直目地部材20がコンクリートに埋設されることで、それらの間には、境界面が形成される。この境界面に対応するコンクリート側の面を鉛直目地(縦目地)10という。鉛直目地10は、壁面2aにおいて、鉛直方向に沿う長い溝状の凹部をなしている。
【0038】
続いて、本実施の形態に係る目地部材について説明する。
本実施の形態に係る目地部材は、コンクリートの壁面2aの水平方向に沿った水平目地11に配設される水平目地部材30と、2つの水平目地部材30,30間に配設される交差目地部材40と、コンクリートの壁面2aの鉛直方向に沿った鉛直目地10に配設される鉛直目地部材20とから構成されている。交差目地部材40も水平目地11に配設される。ここで、交差目地部材40は、図2に示すように、鉛直目地部材20,20間にも配設される。このため、交差目地部材40は、鉛直目地10にも配設される。そして、鉛直目地部材20及び水平目地部材30は、図2に示すように、交差目地部材40を介してつながった状態で建築物躯体2に埋設される。
【0039】
まず、水平目地部材30について説明する。
図4は、図1に示す水平目地部材30の構成及び外観を示す斜視図である。
【0040】
水平目地部材30は、図4に示すように、略矩形の断面形状を有する略平板状の部材であり、背面は、コンクリート側に配置される平面である。水平目地部材30の大きさは、例えば、鉛直方向寸法が100mmであり、水平方向寸法が1mであり、厚み(寸法d1)が25mmである。この水平目地部材30は、図1に示した水平目地11に応じた外形形状を有する水平基材31と、水平基材31に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系シート32(以下、「水平EVAシート32」という)とを備えている。水平EVAシート32は、水平基材31の外形形状に沿って水平基材31に配置されており、具体的には、水平基材31の背面を覆っている。
【0041】
水平基材31は、無収縮グラウト又はポリマーセメントモルタルなどのセメント系基材で構成されている。水平基材31は、水平EVAシート32に覆われていない平らな面31a,31a(以下に説明する水平切欠部31bを除く表面)を有する。これらの面31a,31aは、建築物躯体2の壁面2aと略同一平面を構成する。
【0042】
また、水平基材31には、水平EVAシート32が配置された側とは反対側(壁面2a側)において、水平切欠部31bが水平基材31の長手方向(つまり水平方向)に沿って形成されている。水平切欠部31bは、壁面2aにおいて、水平方向に沿う長い溝状の凹部をなしており、その溝形状(凹部形状)は、外側に向かうにつれて拡がる台形状である。
【0043】
ここで、上記水平切欠部31bが形成された水平目地部材30の準備方法(製造方法)の一例を説明する。
まず、水平EVAシート32を、水平目地11に応じた外形形状を有する金型に配置する。続いて、水平切欠部31bに対応する位置に、水平切欠部31bの形状に応じた外形形状(台形形状)を有する棒状部材(図示せず)を配置する。その後、棒状部材と水平EVAシート32との間に、水平基材31を構成するセメント系基材を流入させる。そして、セメント系基材の硬化に伴ってセメント系基材と棒状部材とが互いに固着する前に、棒状部材をセメント系基材から取り出す。このようにすることで、水平切欠部31bが形成された水平目地部材30を容易に準備(製造)することができる。取り出した棒状部材は再利用することができる。
【0044】
水平EVAシート32は、優れた止水性を有する。このため、水平目地11にひび割れが生じたとしても、当該ひび割れに水が浸入するのを防止することができる(水平目地部材30の止水機能)。具体的には、水平EVAシート32は、伸び率が非常に高く、ひび割れなどによる変形に追従する。さらに、水平EVAシート32は、表面(両面)が起毛しており、非加硫ブチルゴムに比較して、セメント系基材などに対する付着強度が高い。具体的には、セメント系基材に対する付着強度は、非加硫ブチルゴムが1kgf/cm2であるのに対して、水平EVAシート32が9kgf/cm2である。このように、水平EVAシート32に高い付着強度を確保することにより、水平目地部材30の止水機能を、非加硫ブチルゴムを用いた場合よりも確実に高くすることができる。
【0045】
図5は、図1に示す交差目地部材40の構成及び外観を示す斜視図である。
【0046】
交差目地部材40は、図5に示すように、略矩形の断面形状を有する略平板状の部材であり、その背面は、コンクリート側に配置される平面である。交差目地部材40の大きさは、例えば、鉛直方向寸法が100mmであり、水平方向寸法が200mmであり、厚み(寸法d2)が25mmである。この交差目地部材40は、図1に示した水平目地11に応じた外形形状を有する水平基材41と、水平基材41に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系シート42(以下、「水平EVAシート42」という)とを備えている。水平EVAシート42は、水平基材41の外形形状に沿って水平基材41に配置されており、具体的には、水平基材41の背面を覆っている。
【0047】
水平基材41は、無収縮グラウト又はポリマーセメントモルタルなどのセメント系基材で構成されている。水平基材41は、水平EVAシート42に覆われていない、4つの平らな面41a(以下に説明する水平切欠部41b,41b’を除く表面)を有する。これらの面41aは、建築物躯体2の壁面2aと略同一平面を構成する。
【0048】
また、水平基材41には、水平EVAシート42が配置された側とは反対側(壁面2a側)において、水平切欠部41bが水平基材41の長手方向(つまり水平方向)に沿って形成されている。水平切欠部41bは、壁面2aにおいて、水平方向に沿う溝状の凹部をなしており、その溝形状(凹部形状)は、外側に向かうにつれて拡がる台形状である。なお、本実施の形態では、水平基材41の断面における水平切欠部41bの形状及び大きさは、水平目地部材30の水平切欠部31bの形状及び大きさに一致している。
【0049】
さらに、水平基材41には、水平EVAシート42が配置された側とは反対側(壁面2a側)において、水平切欠部41b’が水平基材41の短手方向(つまり鉛直方向)に沿って形成されている。水平切欠部41b’は、壁面2aにおいて、鉛直方向に沿う溝状の凹部をなしており、その溝形状(凹部形状)は、外側に向かうにつれて拡がる台形状である。なお、本実施の形態では、水平基材41の断面における水平切欠部41b’の形状及び大きさは、鉛直目地部材20に形成された鉛直切欠部21b(後述)の形状及び大きさに一致している。このため、水平切欠部41b’は、鉛直切欠部21bの機能(後述)と同等の機能を有している。
【0050】
ここで、上記水平切欠部41b,41b’が形成された交差目地部材40の準備方法(製造方法)は、上述した水平目地部材30の準備方法とほぼ同様である。ただし、水平EVAシート42の面積は、水平EVAシート32の面積とは異なり、棒状部材の形状も異なる。また、水平EVAシート42は、水平EVAシート32と同様の機能を有する。すなわち、水平EVAシート42は、止水性に優れており、また、伸び率が非常に高く、さらに、表面(両面)が起毛しているために、セメント系基材などに対する付着強度が高い。
【0051】
上述した水平目地部材30及び交差目地部材40は、それらの水平基材31,41の背面(コンクリート側の平面)が図3に示す水平打継ぎ面に対向するように埋設される。そして、水平目地11は、この水平打継ぎ面の壁面2a側に形成される。このような水平打継ぎ面に形成される水平目地11に配設される目地部材に求められる主な機能は、止水機能である。このため、本実施の形態では、水平目地部材30及び交差目地部材40の外形形状を略平板状とすることで、コンクリート側に配置される背面を平面としている。そして、この背面に、水平EVAシート32,42を配置することで、水平打継ぎ面に水が浸入するのを防止している。
【0052】
続いて、鉛直目地部材20について説明する。
図6は、図1に示す鉛直目地部材20の構成及び外観を示す斜視図である。
【0053】
鉛直目地部材20は、図6に示すように、平面と曲面で構成された略かまぼこ型の断面形状を有する。鉛直目地部材20の大きさは、例えば、鉛直方向寸法が1mであり、水平方向寸法が50mmであり、厚み(寸法d3)が25mmである。この鉛直目地部材20は、図1に示した鉛直目地10に応じた外形形状(曲面)を有する鉛直基材21と、鉛直基材21に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系シート22(以下、「鉛直EVAシート22」という)とを備えている。鉛直EVAシート22は、鉛直基材21の外形形状(曲面)に沿って鉛直基材21に配置されており、鉛直基材21の表面の一部(曲面)を覆っている。つまり、鉛直基材21及び鉛直EVAシート22の双方がコンクリートの壁面2aの鉛直目地10に応じた外形形状を有している。
【0054】
鉛直基材21は、無収縮グラウト又はポリマーセメントモルタルなどのセメント系基材で構成されている。鉛直基材21は、鉛直EVAシート22に覆われていない平らな面21a,21a(以下に説明する鉛直切欠部21bを除く表面)を有する。これらの面21a,21aは、建築物躯体2の壁面2aと略同一平面を構成する。
【0055】
また、鉛直基材21には、鉛直EVAシート22が配置された側とは反対側(壁面2a側)において、鉛直切欠部21bが鉛直基材21の長手方向(つまり鉛直方向)に沿って形成されている。なお、本実施の形態では、鉛直基材21の断面における鉛直切欠部21bの形状は、外側に向かうにつれて拡がる台形である。なお、本実施の形態では、鉛直基材21の断面における鉛直切欠部21bの形状及び大きさは、水平目地部材30の水平切欠部31bや交差目地部材40の切欠部41b,41b’の形状及び大きさに一致している。
【0056】
ここで、上記鉛直切欠部21bが形成された鉛直目地部材20の準備方法(製造方法)は、上述した水平目地部材30の準備方法とほぼ同様である。ただし、鉛直EVAシート22の形状は、水平EVAシート32の形状とは異なる。また、鉛直EVAシート22は、水平EVAシート32と同様の機能を有する。すなわち、鉛直EVAシート22は、止水性に優れており、また、伸び率が非常に高く、さらに、表面(両面)が起毛しているために、セメント系基材などに対する付着強度が高い。
【0057】
上述したように、鉛直基材21に鉛直切欠部21bを形成することで、鉛直基材21は、破断されやすくなっている。これにより、建築物躯体2に予想外の外力が加わっても、先に鉛直基材21が破断される。このため、鉛直EVAシート22の破れや、鉛直EVAシート22のコンクリートからの剥離が起こりにくくなる。そして、鉛直基材21が破断したとしても、鉛直EVAシート22は、コンクリートに付着した状態を維持したまま、破断した鉛直基材21を保持することができるので、鉛直目地部材20の止水機能が損なわれることはない。
【0058】
続いて、本実施の形態に係る目地部材を構成する目地部材20,30,40が建築物1に配設されたときの機能について説明する。
【0059】
鉛直目地10に配設される鉛直目地部材20には、鉛直目地10にひび割れを誘発させる機能が求められる。これは、建築物1では、水平方向よりも鉛直方向にひび割れが生じやすいためである。そこで、この機能を実現するために、鉛直目地部材20の鉛直基材21の外形形状を鉛直目地10に応じた略かまぼこ型として(具体的には、コンクリート側に曲面を有するように鉛直目地部材20の鉛直基材21を成形し)、さらに、この鉛直基材21に鉛直切欠部21bを形成している。これにより、コンクリート内にひび割れが発生した場合、そのひび割れは鉛直切欠部21bを備える鉛直目地部材20に向かって誘発されることになる。なお、これに対して、鉛直基材21の外形形状が鉛直目地10に応じきれていない場合、鉛直目地10以外の箇所(例えば、図11に示す例では、壁面下地材301とコンクリート310の境界部分)にもひび割れが誘発される可能性がある。
【0060】
さらに、鉛直目地部材20を略かまぼこ型とすることで、コンクリート側に配置される面を曲面としている。そして、この曲面に、鉛直EVAシート22を配置することで、鉛直目地10に発生したひび割れに水が浸入するのを防止している(止水機能)。
【0061】
なお、この建築物躯体2では、ひび割れは、パイプ5と鉛直切欠部21bを備える鉛直目地部材20との間に誘発されやすくなっている。これは、パイプ5がコンクリートとの間で界面付着をほとんどしていないために、パイプ5を埋設した部分では、建築物躯体2の厚み方向における寸法が、パイプ5を埋設していない部分よりも小さく(薄く)なっているからである。
【0062】
一方、水平目地部材30は、上述したように、水平打継ぎ面に配設されるので、水平目地部材30には、水平目地11にひび割れを誘発させる機能が求められていない。このため、水平目地部材30には、コンクリート側に曲面を持たせる必要がない。また、水平打継ぎ面に配設されるので、水平目地部材30には、止水機能が求められている。そこで、水平EVAシート32は、水平基材31の水平打継ぎ面に対向する平面(背面)に配置されている。ここで、水平目地部材30を略平板状にすることで、複雑な外形形状に成形する必要がなく、成形が容易となる。このため、水平目地部材30を安価に準備することができる。同様の理由で、交差目地部材40も略平板状にしている。
【0063】
また、交差目地部材40が略平板状であるため、鉛直目地部材20との当接面が平面となる。この当接面は、後述する型枠に固定する際の突き当て面となる。つまり、交差目地部材40を略平板状にすることにより、突き当て面を広くすることができる。これにより、交差目地部材40及び鉛直目地部材20を型枠に固定した際に、交差目地部材40や鉛直目地部材20の位置がずれにくくなる。また、上記当接面において、鉛直目地部材20の鉛直EVAシート22と、交差目地部材40の水平EVAシート42とが近づくので、水平目地11及び鉛直目地10(つまり、打継ぎ目地及びひび割れ誘発目地)の交差部分においても止水機能が損なわれることがなくなる。
【0064】
続いて、図1に示す建築物1(建築物躯体2)を構築するための施工方法について説明する。本施工方法によって、上述したような目地部材20,30,40が建築物1の建築物躯体2を構成するコンクリート内に埋設される。
【0065】
まず、図4〜図6に示した目地部材20,30,40を準備する。ここで、交差目地部材40を予め成型品として準備しておくことで、コンクリートを打ち込む作業現場において、鉛直目地部材20や水平目地部材30を加工して、目地10,11の交差部分に適した目地部材を新たに準備する必要がなくなり、建築物1の施工性(施工効率)が高まる。また、交差目地部材40は、長手方向寸法が200mm(20cm)であり、鉛直目地部材20や水平目地部材30の長手方向寸法1mよりも短いため、小型化されており、運搬が容易であり、破損の可能性が低い。さらに、交差目地部材40に加えて、水平目地部材30を準備することで、水平目地11への目地部材の配置が容易になる。
【0066】
続いて、図7(a),図7(b)に示す取付部材100を準備する。取付部材100は、鉛直目地部材20(又は水平目地部材30や交差目地部材40)を後述する型枠200に固定するための部材である。
【0067】
取付部材100は、図7(a),図7(b)に示すように、発泡ウレタンなどの合成樹脂製のベース110と、金属製の締結部材120とを備えている。ベース110の断面形状は、図7(b)に示すように、台形であり、上述した切欠部21b,31b,41b,41b’の形状と相補的な形状をなしている。締結部材120は、頭部121a及び軸部121bで構成されたボルト121と、ボルト121の軸部121bに形成されたネジ山(図示せず)に螺合するナット122とを有する。
【0068】
取付部材100は、ベース110に形成した貫通孔111に、ボルト121を嵌挿してベース110にボルト121を固定することで準備(製造)される。図7(a),図7(b)に示すように、取付部材100において、ボルト121の頭部121aは、貫通孔111の大径部111a内に収容されており、ボルト121の軸部121bは、ベース110の小径部111bがある表面から突出している。なお、貫通孔111の大径部111aは、ベース110の断面がなす台形が拡がっている側とは反対側に形成されている(図7(b)参照)。この貫通孔111の大径部111aには、ボルト121の頭部121aが配置されない空間として、スペース130がある。
【0069】
次に、取付部材100の上記スペース130に仮接合用の接着部材140(図8参照)を充填し、続いて、この取付部材100を鉛直目地部材20の鉛直切欠部21bに挿入することで、取付部材100を鉛直目地部材20に仮接合する。接着部材140としては、例えば、再剥離が可能な剥離性を有する不定形の接着材を用いる。取付部材100は、1本の鉛直目地部材20に対して、複数個、仮接合される(図9参照)。また、取付部材100は、水平目地部材30や交差目地部材40にも仮接合される(図9参照)。
【0070】
続いて、取付部材100が仮接合された鉛直目地部材20を、締結部材120のナット122を締め付けることにより、型枠200(堰板)に固定する。固定された状態は、図8に示されている。型枠200としては、例えば、ベニヤ合板などの合板パネル(木製)に、打ち込んだコンクリートを剥がれやすくするための剥離材が表面に塗布されているものを用いる。また、この型枠200には、建築物躯体2に鉛直目地10を形成する位置であって取付部材100のボルト121に対応する位置に孔が形成されている。また、取付部材100が仮接合された水平目地部材30や、取付部材100が仮接合された交差目地部材40も型枠200に固定される。したがって、型枠200には、水平目地の形成位置にも孔が形成されている。
【0071】
図9は、型枠200に固定された目地部材20,30,40の、型枠200側から観たときの配置の一例を示す図である。
【0072】
図9に示すように、水平目地部材30の端面(図4に示す端面31c)と、交差目地部材40の側面(図5に示す側面41c)は、互いに当接している。ここで、水平目地部材30の厚み(寸法d1)と、交差目地部材40の厚み(寸法d2)は同じであり、例えば25mmである。したがって、水平目地部材30と交差目地部材40の当接面は十分な広さが確保されている。このため、これらを型枠200へ固定しても位置がずれにくい。また、この当接により、水平EVAシート32,42も互いに当接するので、止水機能が確保される。
【0073】
また、同様に、鉛直目地部材20の端面(図6に示す端面21c)と、交差目地部材40の側面(図5に示す側面41c’)は、互いに当接している。ここで、鉛直目地部材20の厚み(寸法d3)と、交差目地部材40の厚み(寸法d2)は同じであり、例えば25mmである。したがって、鉛直目地部材20と交差目地部材40の当接面は十分な広さが確保されている。特に、鉛直目地部材20と交差目地部材40とは鉛直方向において上下に配設されるので、このように確保された当接面は、突き当て面となる。このため、これらを型枠200へ固定しても位置がずれにくい。また、この当接により、水平EVAシート42と鉛直EVAシート22とは、互いに近づく(わずかに当接する)ので、止水機能が確保される。
【0074】
また、図9に示す状態は、目地部材20,30,40が型枠200の表面に当接して固定されている状態であるため、鉛直目地部材20の面21aと、交差目地部材40の面41aと、水平目地部材30の面31aは、同一平面を構成する。これらの面21a,31a,41aは、後述する脱型後に、壁面2aと同一平面を構成することになる。これにより、壁面2aにおいて、目地部材20,30,40の面21a,31a,41aも不連続とならなくなる。これにより、建築物1の壁面を、切欠部を除いて平らにすることができることになる。
【0075】
そして、建築物躯体2を構築する。建築物躯体2の構築は、コンクリートの打継ぎ部ごとに行われる。ここでは、床スラブを含む躯体下部の構築と、それに続く躯体上部の構築について図10(a),図10(b)を用いて説明する。なお、図10(a),図10(b)では、横筋3、横筋4、及びパイプ5などの図示を省略している。
【0076】
まず、図10(a)に示すように、上述したように形成した目地部材20,30,40が固定された型枠200などを用いて、床スラブを含む躯体下部2’を構成するためのコンクリート(セメント系基材)を打ち込む。このとき、目地部材30,40の中央部の高さが、床スラブ表面(打ち込んだコンクリートの天端面)の高さよりも低くなるように、型枠200は設置される。これは、水平打継ぎ面が床スラブ表面の高さから建築物1の外側に向かうにつれて下降するように斜めに形成されるためである。そして、打ち込んだコンクリートが硬化した後、水平打継ぎ面を形成する。水平打継ぎ面と目地部材30,40が交差する位置は、目地部材30,40の中央位置である。
【0077】
ここで、目地部材30,40は、その背面の鉛直方向寸法(図10(a)に示す寸法H1)が、水平打継ぎ面の斜めに形成されるときの鉛直方向の幅(同寸法H2)よりも十分に大きくなるように形成されている。これにより、水平打継ぎ面が水平面に対して斜めに形成されても、水平打継ぎ面の位置が、目地部材30,40からずれることがなく、止水機能が確実に確保される。なお、寸法H1が小さく、寸法H2が大きい場合において、水平打継ぎ面が目地部材30,40の下方にずれて、水平打継ぎ面に水が浸入しやすくなることがあるが、本実施の形態ではそのような問題は起こらない。
【0078】
次に、図10(b)に示すように、他の型枠200などを用いて、躯体下部2’の水平打継ぎ面の上方にコンクリート(セメント系基材)を打ち込み、躯体上部2”を構築する。
【0079】
そして、不要となった型枠200をコンクリートから取り外す(脱型)。脱型は、ナット122をボルト121から取り外してから行う。これにより、目地部材20,30,40は、コンクリート(躯体下部2’や躯体上部2”)に埋設された状態で、一部が壁面2aから露出する(図2参照)ことになる。また、脱型後には、複数個の取付部材100が目地部材20,30,40に残存しているが、これらも取り外す。剥離性を有する接着部材140を用いたので、また、切欠部21b,31b,41b,41b’の形状を台形としたので、取付部材100の取り外しは容易である。取り外した取付部材100は、再利用することができる。
【0080】
脱型後の状態は、図1〜図3に示した通りである。すなわち、上述したような工程を経ることにより、目地部材20,30,40が埋設された躯体下部2’及び躯体上部2”を含む建築物躯体2が構築される。なお、建築物躯体2以外の部分(図示せず)も構築されることで、建築物1が構築される。
【0081】
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、建築物1(建築物躯体2)は、図1〜図3に示したように配設された目地部材20,30,40を備えている。交差目地部材40は、建築物1において水平目地11及び鉛直目地10の交差部分に配設される。この交差目地部材40においては、鉛直切欠部41b’(第2鉛直切欠部)が鉛直目地部材20の鉛直切欠部21b(第1鉛直切欠部)と連通している。この鉛直切欠部41b’,21bの連通に際し、水平EVAシート42と鉛直目地部材20の鉛直EVAシート22とが互いに近づく(一部が当接する)ことになる。このため、目地10,11の交差部分において、止水機能が損なわれることがない。したがって、本実施の形態に係る目地部材によれば、複雑な形状の目地部材(例えば図11に示す従来の目地部材300)を水平目地及び鉛直目地に配設した場合に比べて、止水性を高めることができる。さらに、交差目地部材40には、鉛直目地部材20の鉛直切欠部21bと同じ大きさ及び同じ形状の鉛直切欠部41b’が形成されているため、鉛直目地10へのひび割れ誘発機能が、交差目地部材40が配設された場所においても損なわれにくい。このため、従来の目地部材よりも、ひび割れ誘発機能も高めることができる。
【0082】
また、交差目地部材40は、水平基材41が水平目地11に応じた外形形状を有するので、水平目地11に応じきれていない複雑な外形形状を有する目地部材よりも小型化されている。また、交差目地部材40は、水平EVAシート42を備えるので、止水性に優れており、また、例えば非加硫ブチルゴムよりも、コンクリートに対する付着強度も高い。鉛直目地部材20も、交差目地部材40と同様に、小型化されており且つ止水性に優れており、また、コンクリートに対する付着強度も高い。
【0083】
したがって、上述した鉛直目地部材20及び交差目地部材40の組み合わせによれば、従来よりも小型化した目地部材であって従来よりも止水性に優れ且つコンクリートに対する付着強度が高い目地部材が提供される。そして、この目地部材を、目地10,11の交差部分に配設することで建築物1の目地10,11における止水機能やひび割れ誘発機能を高めることができる。また、鉛直目地部材20及び交差目地部材40の組み合わせを備える建築物1は、止水機能やひび割れ誘発機能が高い。また、鉛直切欠部21bと水平切欠部31bとが、交差目地部材40の切欠部(水平切欠部41b及び鉛直切欠部41b’)を介して連通するので、建築物1の見た目が向上する。
【0084】
なお、上述した実施の形態では、鉛直目地部材20の断面形状が略かまぼこ型であり、交差目地部材40の断面形状が略平板状であるとしたが、この組み合わせに限られることはない。鉛直切欠部21bと鉛直切欠部41b’とを連通させる際に、目地部材20,40が当接する突き当て面が十分に確保することができれば、いかなる形状の組み合わせであってもよい。つまり、交差目地部材40の或る面は、鉛直目地部材20の鉛直方向上下にある両端面のうちの一方の端面と面接触する。突き当て面が十分に確保されることで、鉛直目地部材20及び交差目地部材40を、型枠200に固定する際の位置決めを容易に行うことができる。
【0085】
また、上述した実施の形態では、水平目地部材30を準備したが、しなくてもよい。この場合には、交差目地部材40として、長尺状のものが準備される。また、このような長尺状の交差目地部材には、複数本(例えば2本)の鉛直切欠部41c’が鉛直目地部材20を配置するピッチに合わせて形成されていてもよい。
【0086】
また、鉛直目地部材20の厚み(寸法d3)と、交差目地部材40の厚み(寸法d2)は同じであるとしたが、同じでなくてもよい。つまり、寸法d3と寸法d2は、異なっていてもよい。ただし、寸法d3と寸法d2は、鉛直目地部材20と交差目地部材40の当接面が十分に広くなるように設定される。寸法d2と寸法d1も同様に当接面が十分に広くなるように設定される。
【0087】
また、目地部材20,30,40の基材21,31,41は、セメント系基材で構成されるとしたが、セメント系基材に限られることはない。しかし、セメント系基材は、硬化性を有するため、その硬化性を利用して、EVAシート22,32,42とセメント系基材が強固に付着した目地部材20,30,40を製造することができるので、目地部材20,30,40の準備が容易である。
【0088】
また、水平EVAシート32,42は、水平基材31,41が有するコンクリート側の背面に配置されているとしたが、これに代えて、水平基材31,41が有するコンクリート側の3つの平面(つまり、背面と、水平方向に沿う上端(うわば)及び下端(したば))に配置されていてもよいし、2つの平面(例えば、背面と下端)に配置されていてもよい。また、鉛直基材21はコンクリート側に曲面を有するとしたが、この曲面は、図6に示すような円弧状である必要はなく、例えば、半楕円状、又はU字形状であってもよい。
【0089】
さらに、切欠部21b,31b,41b,41b’の形状は、台形であるとしたが、台形に限られることはなく、例えば、長方形であってもよい。また、切欠部21b,31b,41b,41b’の長手方向に垂直な幅方向の寸法が小さくなるように形成することが好ましい。これにより、建築物1において切欠部21b,31b,41b,41b’が凹部として露出する面積が少なくなり、建築物1の壁面2a側から観たときの意匠性が高まる。また、鉛直目地10に沿う鉛直切欠部21b,41b’の形状と、水平目地11に沿う水平切欠部31b,41bの形状は異なっていてもよい。
【0090】
また、上述した実施の形態において、壁面2aに表面仕上げを施してもよい。表面仕上げとしては、塗装仕上げなどがある。また、表面仕上げとして、切欠部21b,31b,41b,41b’に、低強度モルタル、シーリング材(樹脂や塩化ビニル)などを充填してもよい。
【0091】
上述した実施の形態では、水平目地11を水平打継ぎ面に形成したが、水平打継ぎ面以外の箇所に形成してもよい。さらには、目地11を水平方向に形成しなくてもよい。同様に、目地10を鉛直方向に形成しなくてもよい。したがって、目地10,11が形成される方向は、互いに交差する方向であればよく、交差する角度に合わせて、交差目地部材40の切欠部41b,41b’が形成される。
【0092】
また、上述した実施の形態では、建築物躯体2が有する表面のうち、壁面2aに、鉛直目地10を形成するとしたが、さらに、壁面2aに対向する壁面にも鉛直目地10を形成してもよい。また、上述した実施の形態では、パイプ5を建築物躯体2のコンクリート内に埋設させるとしたが、必ずしも埋設させる必要はない。また、建築物躯体2は、鉄筋コンクリート製であるとしたが、これに代えて、横筋3及び縦筋4を備えないコンクリート製であってもよい。
【0093】
上記実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施の形態に係る建築物の施工方法によって構築される建築物の躯体の概略的な構成を示す部分拡大断面図である。
【図2】図1の線II−IIに沿う建築物躯体の正面図である。
【図3】図2の線III−IIIに沿う建築物躯体の断面図である。
【図4】図1に示す水平目地部材に当接する他の水平目地部材の構成及び外観を示す斜視図である。
【図5】図1に示す交差目地部材の構成及び外観を示す斜視図である。
【図6】図1に示す鉛直目地部材の構成及び外観を示す斜視図である。
【図7】図4〜図6に示すような目地部材を型枠に取り付けるための取付部材の構成を示す断面図であり、(a)は、取付部材の長手方向に沿う断面図であり、(b)は、取付部材の長手方向に垂直な方向に沿う断面図である。
【図8】図6の鉛直目地部材を型枠に固定したときの状態を示す部分拡大断面図である。
【図9】図8の型枠に固定された図4〜図6の目地部材の、型枠側から観たときの配置の一例を示す図である。
【図10】図1〜図3の建築物躯体を構築するときの状態を示す断面図であり、(a)は、躯体下部に対応するコンクリートを打ち込んだ後の状態を示す断面図であり、(b)は、躯体上部に対応するコンクリートを打ち込んだ後の状態を示す断面図である。
【図11】従来の建築物の概略的な構成を示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0095】
1 建築物
2 建築物躯体
2’ 躯体下部
2” 躯体上部
2a 壁面
10 鉛直目地
11 水平目地
20 鉛直目地部材
21 鉛直基材
21a,31a,41a 面
21b,41b’ 鉛直切欠部
21c,31c 端面
22 エチレン酢酸ビニル樹脂系シート(鉛直EVAシート)
30 水平目地部材
31,41 水平基材
31b,41b 水平切欠部
32,42 エチレン酢酸ビニル樹脂系シート(水平EVAシート)
40 交差目地部材
41c,41c’ 側面
100 取付部材
120 締結部材
140 接着部材
200 型枠
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A コンクリートの壁面の水平方向に沿った水平目地に配設される水平目地部材であって、
前記水平目地に応じた外形形状を有する水平基材と、
前記水平基材の外形形状に沿って前記水平基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートと、
前記エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートが配置された側とは反対側から前記水平基材に形成された、水平方向に沿った水平切欠部と、
を備えた水平目地部材と、
B 前記コンクリートの壁面の鉛直方向に沿った鉛直目地に配設される鉛直目地部材であって、
前記鉛直目地に応じた外形形状を有する鉛直基材と、
前記鉛直基材の外形形状に沿って前記鉛直基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートと、
前記エチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートが配置された側とは反対側から前記鉛直基材に形成され、鉛直方向に沿った第1鉛直切欠部と、
を備え、
前記水平目地部材は、
前記水平切欠部と連通するとともに前記第1鉛直切欠部と連通し、鉛直方向に沿った第2鉛直切欠部を備えた交差目地部材を備える、
ことを特徴とする目地部材。
【請求項2】
前記水平目地部材は、
前記交差目地部材とは別の、他の水平目地部材を備え、
前記他の水平目地部材の前記水平切欠部は、前記交差目地部材の前記水平切欠部と連通する、
ことを特徴とする請求項1に記載の目地部材。
【請求項3】
前記鉛直基材は前記コンクリート側に曲面を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の目地部材。
【請求項4】
前記水平目地部材の前記水平基材は前記コンクリート側に平面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の目地部材。
【請求項5】
前記水平目地は、前記コンクリートを鉛直方向において打ち継いだときに形成される水平打継ぎ面に形成され、
前記水平目地部材の前記エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートは、前記水平目地部材の前記水平基材が有する複数の面のうち、前記水平打継ぎ面に対向する1つの面に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の目地部材。
【請求項6】
前記交差目地部材は、前記鉛直目地部材の鉛直方向上下にある両端面のうちの一方の端面と面接触する平面であって、前記第1鉛直切欠部を前記第2鉛直切欠部に連通させるための平面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の目地部材。
【請求項7】
前記水平目地部材及び前記鉛直目地部材は、前記コンクリートの壁面と同一平面を構成する面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の目地部材。
【請求項8】
A コンクリートの壁と、
B 前記コンクリートの壁面の水平方向に沿った水平目地に配設される水平目地部材であって、
前記水平目地に応じた外形形状を有する水平基材と、
前記水平基材の外形形状に沿って前記水平基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートと、
前記エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートが配置された側とは反対側から前記水平基材に形成された、水平方向に沿った水平切欠部と、
を備えた水平目地部材と、
C 前記コンクリートの壁面の鉛直方向に沿った鉛直目地に配設される鉛直目地部材であって、
前記鉛直目地に応じた外形形状を有する鉛直基材と、
前記鉛直基材の外形形状に沿って前記鉛直基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートと、
前記エチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートが配置された側とは反対側から前記鉛直基材に形成され、鉛直方向に沿った第1鉛直切欠部と、
を備えた鉛直目地部材と、
を備え、
前記水平目地部材は、
前記水平切欠部と連通するとともに前記第1鉛直切欠部と連通し、鉛直方向に沿った第2鉛直切欠部を備えた交差目地部材を備える、
ことを特徴とする建築物。
【請求項1】
A コンクリートの壁面の水平方向に沿った水平目地に配設される水平目地部材であって、
前記水平目地に応じた外形形状を有する水平基材と、
前記水平基材の外形形状に沿って前記水平基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートと、
前記エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートが配置された側とは反対側から前記水平基材に形成された、水平方向に沿った水平切欠部と、
を備えた水平目地部材と、
B 前記コンクリートの壁面の鉛直方向に沿った鉛直目地に配設される鉛直目地部材であって、
前記鉛直目地に応じた外形形状を有する鉛直基材と、
前記鉛直基材の外形形状に沿って前記鉛直基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートと、
前記エチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートが配置された側とは反対側から前記鉛直基材に形成され、鉛直方向に沿った第1鉛直切欠部と、
を備え、
前記水平目地部材は、
前記水平切欠部と連通するとともに前記第1鉛直切欠部と連通し、鉛直方向に沿った第2鉛直切欠部を備えた交差目地部材を備える、
ことを特徴とする目地部材。
【請求項2】
前記水平目地部材は、
前記交差目地部材とは別の、他の水平目地部材を備え、
前記他の水平目地部材の前記水平切欠部は、前記交差目地部材の前記水平切欠部と連通する、
ことを特徴とする請求項1に記載の目地部材。
【請求項3】
前記鉛直基材は前記コンクリート側に曲面を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の目地部材。
【請求項4】
前記水平目地部材の前記水平基材は前記コンクリート側に平面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の目地部材。
【請求項5】
前記水平目地は、前記コンクリートを鉛直方向において打ち継いだときに形成される水平打継ぎ面に形成され、
前記水平目地部材の前記エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートは、前記水平目地部材の前記水平基材が有する複数の面のうち、前記水平打継ぎ面に対向する1つの面に配置されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の目地部材。
【請求項6】
前記交差目地部材は、前記鉛直目地部材の鉛直方向上下にある両端面のうちの一方の端面と面接触する平面であって、前記第1鉛直切欠部を前記第2鉛直切欠部に連通させるための平面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載の目地部材。
【請求項7】
前記水平目地部材及び前記鉛直目地部材は、前記コンクリートの壁面と同一平面を構成する面を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の目地部材。
【請求項8】
A コンクリートの壁と、
B 前記コンクリートの壁面の水平方向に沿った水平目地に配設される水平目地部材であって、
前記水平目地に応じた外形形状を有する水平基材と、
前記水平基材の外形形状に沿って前記水平基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートと、
前記エチレン酢酸ビニル樹脂系水平シートが配置された側とは反対側から前記水平基材に形成された、水平方向に沿った水平切欠部と、
を備えた水平目地部材と、
C 前記コンクリートの壁面の鉛直方向に沿った鉛直目地に配設される鉛直目地部材であって、
前記鉛直目地に応じた外形形状を有する鉛直基材と、
前記鉛直基材の外形形状に沿って前記鉛直基材に配置されたエチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートと、
前記エチレン酢酸ビニル樹脂系鉛直シートが配置された側とは反対側から前記鉛直基材に形成され、鉛直方向に沿った第1鉛直切欠部と、
を備えた鉛直目地部材と、
を備え、
前記水平目地部材は、
前記水平切欠部と連通するとともに前記第1鉛直切欠部と連通し、鉛直方向に沿った第2鉛直切欠部を備えた交差目地部材を備える、
ことを特徴とする建築物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−185524(P2009−185524A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−26779(P2008−26779)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】
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