説明

目標心拍数到達時間予測装置および目標心拍数到達時間予測方法

【課題】目標心拍数に達するまでの時間を表示できる目標心拍数到達時間予測装置を提供する。
【解決手段】運動負荷心電計30は、被検者情報の入力を受け付ける入力部31と、被検者情報に基づいて、目標心拍数を決定するCPU39と、被検者に与える負荷についての経時的な計画を示す負荷プロトコルを記憶する記憶部37と、被検者の心拍数を測定する電極32と、測定した心拍数および負荷プロトコルに基づいて、被検者の心拍数が目標心拍数に到達する予測到達時間を算出するCPU39と、予測到達時間を表示する表示部38と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動負荷を伴う検査における目標心拍数到達時間予測装置およびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓病の診断や心機能評価、持久力測定やトレーニング指標として、運動負荷を伴う検査が行われている。これらの検査には、例えば、運動負荷試験や負荷心筋シンチ検査がある。運動負荷試験では、被検者に運動負荷を与え、心電図、心拍数等を測定し、虚血性心疾患の有無を判断したり、持久力を測定したりする。負荷心筋シンチ検査では、運動負荷を与え、最大運動時にタリウムを静脈内投与し、ガンマカメラにより撮像して、虚血を検出する検査である。
【0003】
上記の検査は、いずれも、漸増する運動負荷を与えて、検査に必要な目標心拍数に到達するまで行われる。被検者への身体的な負荷を考慮し、一般的には10〜15分程度で試験が終了するように行われている。体力には個人差があり、目標心拍数に到達するまでの時間は異なるので、目標心拍数に達するまでに要する時間を調節する方法も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−154355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の発明では、被検者や医者には、検査が終了するまでの時間がわからない。終了までの時間がわからないので、ある程度熟練した医師でなければ、経験的に負荷を調節して目標心拍数に達するまでの時間を調節したり、タリウムの投与タイミングを決定したりできない。また、目標心拍数に到達する頃の運動負荷は、被検者にとってはかなり大きく感じるので、終了までの時間がわからないと精神的にも不安を感じてしまう。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、目標心拍数に達するまでの時間を表示できる目標心拍数到達時間予測装置および目標心拍数到達時間予測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
目標心拍数到達時間予測装置は、被検者情報入力部と、目標心拍数決定部と、負荷プロトコル記憶部と、心拍数測定部と、算出部と、表示部とを有する。被検者情報入力部は、被検者情報の入力を受け付ける。目標心拍数決定部は、被検者情報に基づいて、目標心拍数を決定する。負荷プロトコル記憶部は、被検者に与える負荷についての経時的な計画を示す負荷プロトコルを記憶する。心拍数測定部は、被検者の心拍数を測定する。算出部は、測定した心拍数および負荷プロトコルに基づいて、被検者の心拍数が目標心拍数に到達する予測到達時間を算出する。表示部は、予測到達時間を表示する。
【発明の効果】
【0008】
目標心拍数到達時間予測装置によれば、目標心拍数に到達するまでの予測到達時間が表示部に表示されるので、医師は、経験的に終了時間を予測する必要がない。負荷心筋シンチ検査の場合は、目標心拍数に到達するまでの時間を参考にして、タリウムの投与タイミングを決定できる。被検者にとっては、目標心拍数までの予定到達時間を視認できるので、いつまで検査が続くのであろうかという不安から開放される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態に係る負荷試験システムの概略構成を示す図である。
【図2】運動負荷心電計の動作の流れを示すフローチャートである。
【図3】負荷プロトコルの一例を示す図である。
【図4】予測到達時間の算出の流れを示すフローチャートである。
【図5】心拍数−Metsの関係を示す図である。
【図6】負荷プロトコルに沿った時間−Mets関係を示す図である。
【図7】表示部に予測到達時間が表示される例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1は、本実施形態に係る負荷試験システムの概略構成を示す図である。
【0012】
負荷試験システム10は、負荷装置20と、運動負荷心電計30とを有する。
【0013】
負荷装置20は、トレッドミルやエルゴメータである。トレッドミルは、ベルト上を被検者が歩いたり、走ったりできる装置である。ベルトの速度と傾斜を変えることによって運動負荷を変更できる。エルゴメータは、機械的ないし電気的に制動のかかる自転車タイプの器具である。ペダルの抵抗を変えることによって運動負荷を変更できる。
【0014】
負荷装置20を用いた検査では、ステップ負荷試験とランプ負荷試験とがある。ステップ負荷試験では、多段階のステージとして所定時間毎に異なる運動負荷を設定し、ステージが進む度に負荷を増加する。ランプ負荷試験では、ステージは特に設定せず、経時的に負荷を増加する。
【0015】
負荷装置20は、運動負荷心電計30によって制御される。
【0016】
運動負荷心電計30は、被検者の心拍数が目標心拍数に到達する時間を予測する目標心拍数到達時間予測装置として機能する。
【0017】
運動負荷心電計30は、入力部31、電極32、誘電コード33、増幅器34、通信ポート35、メモリ36、記憶部37、表示部38およびCPU39を有する。
【0018】
入力部31は、キーボード、タッチパネルあるいは専用キー等の入力手段を含み、各種入力を受け付ける。例えば、入力部31は、被検者情報の入力、被検者の年齢、体重、性別等の入力を受け付ける被検者情報入力部としての機能を果たす。また、入力部31は、負荷装置20によって被検者に負荷を与える際の負荷プロトコルの入力も受け付ける。
【0019】
負荷プロトコルは、負荷装置の負荷量とその持続時間(負荷漸増割合)で定義される経時的な負荷計画である。負荷量に持続時間が設定される場合は、その持続時間を1ステージとするステップ負荷試験と定義される。負荷量に漸増割合が設定される場合は、負荷を線形的に漸増するランプ負荷試験として設定される。負荷装置の負荷量は、トレッドミルの場合、速度及び傾斜、エルゴメータを使用する場合は、ペダルの重さ(Watt)等で定義される。これらは例示であり、他の負荷装置も本実施形態に適用できる。
【0020】
電極32は、心拍数測定部に含まれ、被検者の胸部や背中に貼り付けられて、被検者の心筋の興奮により生ずる活動電位を検出する。検出された活動電位から、被検者の生体情報、たとえば、心拍数や心臓の動きがわかる。
【0021】
誘電コード33は、電極32に接続されており、電極32からの生体情報に関する信号を増幅器34に入力する。増幅器34は、生体情報を増幅して、CPU39に入力する。
【0022】
通信ポート35は、負荷装置20とCPU39とを接続する。負荷装置20は、通信ポート35を介して、CPU39によって負荷プロトコルなどの負荷計画に基づいて制御される。
【0023】
メモリ36は、処理するデータを一時記憶するためのフラッシュメモリ36などのような記憶手段である。記憶部37は、ハードディスクや外部記憶媒体のような記憶手段であり、各種データを格納する。メモリ36および記憶部37のいずれもCPU39に接続されている。
【0024】
表示部38は、液晶表示装置のようなディスプレイであり、電極32による計測結果等を表示する。
【0025】
CPU39は、算出部や目標心拍数決定部の役割を果たし、運動負荷心電計30の全体の制御を統括的に担当する。以下、運動負荷心電計30の作用について詳細に説明する。なお、運動負荷心電計30の作用は、基本的にはCPU39によって達成される。
【0026】
図2は、運動負荷心電計の動作の流れを示すフローチャート、図3は負荷プロトコルの一例を示す図である。
【0027】
まず、運動負荷心電計30は、入力部31において、被検者の年齢や体重などの被検者情報の入力を受け付ける(ステップS1)。さらに、運動負荷心電計30は、入力部31において、負荷プロトコルの入力を受け付ける(ステップS2)。なお、事前に入力部31を通じて負荷量および持続時間(ステージ)が設定され、負荷プロトコルが作成されていてもよい。この場合、作成された負荷プロトコルは記憶部37に記憶され、ステップS2では、記憶部37に記憶されている負荷プロトコルの候補が入力部31を通じて選択される。入力された負荷プロトコルは、例えば、図3に示すようなテーブルとして記憶部37に記憶される。運動量(Mets)については、事前または事後的に算出してもよい。
【0028】
運動負荷心電計30は、入力された被検者の被検者情報に基づいて、負荷試験において被検者に到達させる目標心拍数を算出する(ステップS3)。目標心拍数は、一般的に知られている算出方法によって算出される。たとえば、220から被検者の年齢を引いて最大心拍数と推定し、その最大心拍数の70%を目標心拍数としたり、年齢別、鍛練者・非鍛練者別の一覧表から予測最大心拍数を決定し、その70%を目標心拍数としたりする。
【0029】
次に、運動負荷心電計30は、電極32を通じて、負荷試験開始前の安静時の心拍数を測定し、心拍数データを取得し、記憶部37に記憶する(ステップS4)。心拍数は、ユーザが見られるように表示部38に表示される。
【0030】
運動負荷心電計30は、負荷試験を開始するか判断する(ステップS5)。負荷試験の開始の判断は、入力部31からユーザによって負荷試験開始の入力がなされたか否かによって判断される。
【0031】
負荷試験を開始しない場合(ステップS5:NO)、運動負荷心電計30は、安静時の心拍数を再度計測するかどうか判断する(ステップS6)。この判断は、医者等のユーザからの入力部31への入力に従う。ユーザは、ステップS4において測定した被検者の心拍数が緊張等によって正常でないと判断した場合、入力部31により心拍の再測定を入力する。心拍の再測定の場合(ステップS6:YES)、ステップS4に戻る。心拍の再測定を行わない場合(ステップS6:NO)、ステップS5に戻る。
【0032】
負荷試験を開始する場合(ステップS5:YES)、運動負荷心電計30は、ステップS2で選択された負荷プロトコルに従って、通信ポート35を通じて負荷装置20の駆動を開始する(ステップS7)。被検者には、時間経過と共に負荷プロトコルによって設定された負荷量に基づく運動量(Mets)が与えられる。負荷量と運動量との関係は負荷装置20毎に一般的に知られている。例えば、ある器具では運動量(Mets)=(負荷量×12.24+300)/(体重×3.5)で表される。本実施形態では、いかなる器具も適用できる。
【0033】
運動負荷心電計30は、心拍数のサンプリングのタイミングかどうかを判断する(ステップS8)。心拍数のサンプリングのタイミングかどうかは、所定時間ごとに心拍数の測定が行われるように、例えば、タイマーによって決定される。
【0034】
心拍数のサンプリングのタイミングではない場合(ステップS8:NO)、ステップS12の処理に進む。心拍数のサンプリングのタイミングである場合(ステップS8:YES)、運動負荷心電計30は、電極32を通じて、心拍数データを取得し、記憶部37に記憶する(ステップS9)。心拍数データは、例えば、負荷試験開始からの時間と心拍数とが関連付けられた心拍数テーブルに組み込まれて記憶される。続けて、運動負荷心電計30は、負荷プロトコルに基づいて現在の負荷量を確認し、負荷量を運動量に変換した運動量データとして記憶する(ステップS10)。運動量データは、例えば、負荷試験開始からの時間と運動量とが関連付けられた運動量テーブルに組み込まれて記憶される。ここでは、運動量データが記憶される場合について説明しているが、運動量に変換する前の負荷量が記憶されてもよい。
【0035】
運動負荷心電計30は、心拍数データおよび運動量データに基づいて、被検者が目標心拍数に到達するまでの予測時間(予測到達時間)を算出する(ステップS11)。ステップS11の詳細な流れについては、後述する。
【0036】
運動負荷心電計30は、表示部38に予測到達時間を表示する(ステップS12)。すでに予測到達時間が表示されている場合にはそれを更新する。
【0037】
運動負荷心電計30は、運動負荷が終了かどうか、負荷プロトコルあるいは生体情報に基づいて判断する(ステップS13)。運動負荷を終了するか否かの判断は、ユーザによって入力装置から負荷終了が指定されたか否か、あるいは、運動負荷心電計30の終了設定条件に合致したか否かによって決定される。
【0038】
まだ運動負荷が終了ではないと判断した場合(ステップS13:NO)、ステップS7の処理に戻る。運動負荷が終了と判断した場合(ステップS13:YES)、負荷検査の初期段階の軽い負荷を付与し、クーリングダウンのための整理運動を被検者に実行させる。
【0039】
運動負荷心電計30は、クーリングダウンを終了するかどうか判断する(ステップS14)。クーリングダウンを終了するか否かの判断は、ユーザによって入力装置からクーリングダウンの終了が指定されたか否かによって決定される。クーリングダウンの終了が入力されるまでは(ステップS14:NO)、運動負荷心電計30は、クーリングダウン用の負荷を与え続ける。被検者が十分クーリングダウンできたとユーザが判断し、その終了を入力すると、クーリングダウンは終了される(ステップS14:YES)。
【0040】
運動負荷心電計30は、負荷試験の終了を受け付けた後、レポートモードとしてレポートを記録し、レポートモードを終了するか否か判断する(ステップS15)。レポートモードを終了するか否かの判断は、ユーザによって入力装置からレポート終了が指定された否かによって決定される。レポートモードを終了した場合(ステップS15:YES)、次の被検者の検査を行うか、ユーザによる電源オフの入力を受け付け、終了を判断する(ステップS16)。次の被検者の検査を行う場合(ステップS16:NO)、被検者情報の入力を受け付けるために、ステップS1の処理に戻る。負荷試験の終了が入力されると(ステップS16::YES)、運動負荷心電計30はシャットダウンする。
【0041】
次に、上記のステップS11について詳細に説明する。
【0042】
図4は予測到達時間の算出の流れを示すフローチャート、図5は心拍数−Metsの関係を示す図、図6は負荷プロトコルに沿った時間−Mets関係を示す図、図7は表示部38に予測到達時間が表示される例を示す図である。
【0043】
まず、運動負荷心電計30は、ステップS9において負荷中の心拍数を記憶した心拍数テーブルをメモリ36に読み込む(ステップS21)。続けて、運動負荷心電計30は、ステップS10において負荷中の運動量(Mets)を記憶した運動量テーブルをメモリ36に読み込む(ステップS22)。
【0044】
心拍数テーブルおよび運動量テーブルはいずれも、時間と関連付けられているので、同じ時間での心拍数と運動量の関係もわかる。運動負荷心電計30は、心拍数−運動量(Mets)の座標系に、(心拍数,Mets)座標点をプロットする(ステップS23)。座標点をプロットした様子は、たとえば、図5の白丸に示すようになる。図5の(A)に示すグラフのように、ステップ式負荷試験の場合、数個の座標点がほぼ横に並ぶ。ステップの同じステージでは、ほぼ同じ運動量になり、同じ運動量でも時間経過と共に心拍数が多くなるからである。図5の(B)に示すグラフのように、ランプ式負荷試験の場合、ステージがないので、座標点が右上に向かって連なる。
【0045】
運動負荷心電計30は、ステップS4において取得した安静時の心拍数データを使用するかどうかを判断する(ステップS24)。安静時の心拍数データを使用するかどうかの判断基準は、後述する心拍数−Mets回帰直線式を作成するのに十分な(心拍数,Mets)座標点がプロットされているか否かにより決定される。例えば、座標点が2点以下の場合、安静時の心拍データも使用すると判断される。
【0046】
安静時データを使用する場合(ステップS24:YES)、安静時の心拍数に基づく座標点も、心拍数−Mets座標系にプロットする(ステップS25)。ここで、安静時の運動量は1Metsとして、心拍数−Mets座標とする。安静時データを使用しない場合(ステップS24:NO)、ステップS25はスキップして、ステップS26の処理に進む。
【0047】
運動負荷心電計30は、プロットした複数の心拍数−Mets座標点に基づいて、最小自乗法により、図5において直線により示すような心拍数−Mets回帰直線式を作成する(ステップS26)。ここで、被検者に与えられる運動量(Mets)と心拍数(HR)の関係は、Mets=a×HR+b(a:係数、b:切片)になることが知られている。
【0048】
運動負荷心電計30は、作成した心拍数−Mets回帰直線式に目標心拍数を代入して、目標心拍数に達したときに予定される予定運動量を算出する(ステップS27)。
【0049】
続けて、運動負荷心電計30は、負荷プロトコルに基づく経時的な負荷および被検者情報に基づいて、負荷プロトコルによって予定されている時間経過と運動量との理論的な関係を示す時間−Mets関係式を算出する(ステップS28)。時間−Mets関係式は、グラフにすると図6のように示される。ステップ式負荷試験の場合、所定時間のステージごとに段階的に運動量が増えるので、図6の(A)に示すように階段状になり、ランプ式負荷試験の場合、線形的に運動量が増えるので、図6の(B)に示すように直線状に示される。なお、この時間−Mets関係式は、負荷プロトコルが決定された後ならいつでも作成可能であるので、より前または後の段階において作成されてもよい。
【0050】
運動負荷心電計30は、時間−Mets関係式に、ステップS27で算出した予定運動量を代入して、心拍数が目標心拍数に到達する予測到達時間を算出する(ステップS29)。ステップ式負荷試験の場合、図6(A)に矢印で示すように、ステージとステージの間で予定運動量に到達するので、後の方のステージの開始時間が予測到達時間とする。
【0051】
運動負荷心電計30は、負荷プロトコルを参照して、今回行われている負荷試験がステップ式負荷試験であるかどうか判断する(ステップS30)。ステップ式負荷試験である場合(ステップS30:YES)、予測到達時間が含まれるステージ全体を、予測到達時間幅として設定する(ステップS31)。
【0052】
ステップ式負荷試験でない場合(ステップS30:NO)、予測到達時間を微調整して(ステップS32)、さらに、調整した予測到達時間から所定の時間幅を設定する(ステップS33)。予測到達時間を微調整するのは、運動量が増加した場合に、その影響が心拍数に現れるのに多少の遅れがあるからである。たとえば、2、3秒だけ、予測到達時間が遅いものとして、算出値が調整される。調整された予測到達時間から所定の時間幅、例えば1〜3分間が、予測到達時間幅として設定される。なお、予測到達時間幅を設定するので、予測到達時間の微調整は省略することもできる。
【0053】
上記のように、予測到達時間および予測到達時間幅が設定されて、図2のステップS11に戻り、表示部38に表示される。表示部38には、予測到達時間までの残り時間として表示されてもよい。予想到達時間は、例えば、図7に示すように、試験経過時間と心拍数との関係を示すグラフと共に表示される。ステップ式負荷試験の場合は、目標心拍数に到達することが予測されるステージも表示される。設定された時間幅は、図7の網かけのように示されてもよい。
【0054】
以上のように、本実施形態の運動負荷心電計30によれば、目標心拍数に到達するまでの予測到達時間が表示部38に表示されるので、医師は、経験的に終了時間を予測する必要がない。目標心拍数まで必要以上に長くかかりそうであれば、負荷を高めて検査時間を短くしたり、あるいは、目標心拍数に異常に早く到達しそうであれば、負荷を緩めて検査時間を長くしたりできる。このように、医師等のユーザは、目標心拍数までの時間を知った上で、一般的な負荷試験の負荷計画に沿って、ステージをスキップしたり、負荷を早めたりできる。したがって、負荷調節の経過も医師が確実に把握でき、試験後の分析に役立てることができる。
【0055】
また、負荷心筋シンチ検査の場合は、目標心拍数に到達するまでの時間を参考にして、タリウムの投与タイミングを決定できる。さらに、被検者にとっては、目標心拍数までの予定到達時間を視認できるので、いつまで検査が続くのであろうかという不安から開放される。
【0056】
また、被検者に与えられる運動量(Mets)と心拍数(HR)の関係がMets=a×HR+b(a:係数、b:切片)になることを利用して、心拍数−Mets回帰直線式を作成している。心拍数−Mets回帰直線式に目標心拍数を代入すれば、容易に、目標心拍数到達時の予定運動量がわかる。予定運動量が時間−Mets関係式に代入され、目標心拍数に到達する予測到達時間が算出される。したがって、予測到達時間が容易に算出される。
【0057】
また、上記実施形態では、ステップS24において、安静時データを使用するかどうか判断している。検査中の心拍数−運動量座標が所定数以上(例えば3点以上)得られるまでは、安静時に電極32によって測定した心拍数および安静時の既知の運動量も用いて心拍数−Mets回帰直線式を算出する。したがって、まだ心拍数の情報が少ない段階でも、一応の予測到達時間を算出でき、表示部38に表示できる。一方、検査中の心拍数−運動量座標が所定数以上得られれば、安静時データを含めずに、検査中の心拍数−運動量座標のみを用いて心拍数−Mets回帰直線式を作成する。したがって、安静時データを含める場合よりも正確に回帰直線を作成できる。
【0058】
表示部38には、予測到達時間幅が設定されて表示される。したがって、ユーザが視覚から直感的にあとどの位で目標心拍数に到達するかを判断できる。特に、心拍数の時間推移のグラフと共に表示されれば、現在の心拍数と目標心拍数との差分も視覚から直感的に認識できる。
【0059】
なお、上記実施形態では、時間−Mets関係式が、ステップS28において作成される例を示しているが、本発明はこれに限定されない。被検者情報および負荷プロトコルが揃った時点以降なら、いつでも時間−Mets関係式を作成できる。時間−Mets関係式は負荷プロトコルに従ったものなので、図4に示すサブルーチンの外で時間−Mets関係式を一度作れば足りる。
【0060】
また、上記実施形態では、表示部38は、目標心拍数に到達する予測到達時間に関して表示しているが、これに限定されない。負荷プロトコルの各パラメータ、心拍数および被検者情報等から推定最大酸素摂取量および予想体力を算出して、これらを表示してもよい。
【符号の説明】
【0061】
10 負荷試験システム、
20 負荷装置、
30 運動負荷心電計、
31 入力部、
32 電極、
33 誘電コード、
34 増幅器、
35 通信ポート、
36 メモリ、
37 記憶部、
38 CPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者情報の入力を受け付ける被検者情報入力部と、
前記被検者情報に基づいて、目標心拍数を決定する目標心拍数決定部と、
被検者に与える負荷についての経時的な計画を示す負荷プロトコルを記憶する負荷プロトコル記憶部と、
前記被検者の心拍数を測定する心拍数測定部と、
測定した前記心拍数および前記負荷プロトコルに基づいて、被検者の心拍数が前記目標心拍数に到達する予測到達時間を算出する算出部と、
前記予測到達時間を表示する表示部と、
を有する目標心拍数到達時間予測装置。
【請求項2】
前記算出部は、
被検者情報および心拍数測定時における前記負荷プロトコルの負荷に基づいて、心拍数測定時の運動量を求め、当該運動量と測定した心拍数との関係を示す回帰直線式を算出し、
前記回帰直線式に、前記目標心拍数を代入して、前記目標心拍数に到達したときの予定運動量を算出し、
前記負荷プロトコルに従って運動量が前記予定運動量となる時間を、前記予測到達時間として算出する
請求項1記載の目標心拍数到達時間予測装置。
【請求項3】
前記算出部は、
前記負荷プロトコルの負荷および被検者情報から運動量を求め、前記負荷プロトコルに沿った時間経過と運動量との理論的な関係を示す時間−運動量関係式を算出し、
前記時間−運動量関係式に前記予定運動量を代入して、目標心拍数に到達する予測到達時間を算出する請求項2記載の目標心拍数到達時間予測装置。
【請求項4】
前記算出部は、検査中の前記心拍数および前記運動量の座標が所定数以上得られるまでは、安静時に前記心拍数測定部によって測定した心拍数および安静時の既知の運動量も用いて前記回帰直線式を算出し、検査中の前記心拍数および前記運動量の座標が所定数以上得られた後は、負荷中の心拍数および運動量の座標のみを使って前記回帰直線式を算出する請求項2または請求項3記載の目標心拍数到達時間予測装置。
【請求項5】
前記算出部は、前記予測到達時間から、時間幅を有する予測到達時間幅を設定して、前記表示部に当該予測到達時間幅を表示させる請求項1〜4のいずれか一項に記載の目標心拍数到達時間予測装置。
【請求項6】
前記表示部は、時系列に心拍数測定結果を示すグラフと共に前記予測到達時間を表示する請求項1〜5のいずれか一項に記載の目標心拍数到達時間予測装置。
【請求項7】
被検者情報の入力を受け付けるステップと、
被検者に与える負荷と時間経過との関係を示す負荷プロトコルの入力を受け付けるステップと、
前記被検者情報に基づいて目標心拍数を決定するステップと、
前記被検者の心拍数を測定するステップと、
前記負荷プロトコルの負荷および被検者情報から心拍数測定時の運動量を求めて、複数の心拍数−運動量の座標から、測定した心拍数と運動量との関係を示す回帰直線式を算出するステップと、
前記回帰直線式に、前記目標心拍数を代入して、前記目標心拍数に到達したときの予定運動量を算出するステップと、
前記負荷プロトコルの負荷および被検者情報から運動量を求め、前記負荷プロトコルに沿った時間経過と運動量との理論的な関係を示す時間−運動量関係式を算出するステップと、
前記時間−運動量関係式に、前記予定運動量を代入して、目標心拍数に到達する予測到達時間を算出するステップと、
前記予測到達時間を表示するステップと、
を有する目標心拍数到達時間予測方法。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−193976(P2011−193976A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62580(P2010−62580)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】