説明

目標物速度特定装置、目標物速度特定プログラム及び目標物速度特定方法

【課題】少ない計算量で高精度に目標物の速度を特定することを目的とする。
【解決手段】刻み幅特定部3は、SAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τと目標物のアジマス方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvazの関数に、SAR画像データの観測条件であるSAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τとを入力し、予測速度v’に対応する振幅値Vvazを計算する。刻み幅特定部3は、振幅値Vvazが所定の値以上になるアジマス方向の予測速度v’の範囲を処理装置により特定し、特定した範囲の幅以下の幅を刻み幅Δva1とする。そして、特定処理実行部は、刻み幅Δva1を用いて、目標物のアジマス方向の速度を処理装置により特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、SAR(Synthetic Aperture Radar)画像から目標物の速度を特定する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、アジマス圧縮後のSAR画像(アジマス圧縮後データ)から目標物の速度を特定するリフォーカスISAR(Inverse SAR)について記載されている。
リフォーカスISARでは、アジマス圧縮後データを、アジマス圧縮に用いた参照関数を用いて解凍して、アジマス圧縮前のデータに戻す。そして、目標物の予測速度を変化させて、複数の参照関数を生成し、生成した各参照関数を用いてアジマス圧縮前のデータを再びアジマス圧縮して、複数のアジマス圧縮後データを生成する。生成した複数のアジマス圧縮後の画像の中で、最も鮮明な(振幅値の大きい)画像データを得る際に使用した参照関数を特定し、その参照関数を生成する際に使用した目標物の予測速度を、その目標物の速度であると特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−292532号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】C. Elachi and J. van Zyl, Introduction to the physics and techniques of remote sensing, Hoboken, NJ: John Wiley & Sons, 2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リフォーカスISARでは、高精度に目標物の速度を特定するためには、目標物の予測速度の変化幅を小さくして、多くの予測速度に基づく計算をしなければならない。そのため、高精度に目標物の速度を特定する場合、計算量が多くなってしまう。
この発明は、少ない計算量で高精度に目標物の速度を特定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る目標物速度特定装置は、
SARにより観測された目標物の速度を特定する目標物速度特定装置であり、
SARを搭載したSAR搭載機の速度v、合成開口中心でのSARと目標物との距離R、SARから放射される電波の波長λ、合成開口時間τという観測条件でSARが観測した目標物のデータを入力するデータ入力部と、
SAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τと目標物のアジマス方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvazの関数に、前記データ入力部が入力したデータの観測条件であるSAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τとを入力し、予測速度v’に対応する振幅値Vvazを計算して、前記振幅値Vvazが所定の値以上になるアジマス方向の予測速度v’の範囲を処理装置により特定し、特定した範囲の速度幅以下の速度幅を刻み幅Δva1とする刻み幅特定部と、
前記刻み幅特定部が特定した刻み幅Δva1を用いて、目標物のアジマス方向の速度を処理装置により特定する特定処理実行部と
を備えることを特徴とする。
【0007】
前記刻み幅特定部は、数1に示す振幅値Vvazの関数に、前記データ入力部が入力したデータの観測条件であるSAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τとを入力するとともに、目標物の速度vとしてある値を入力し、予測速度v’に対応する振幅値Vvazを計算する
ことを特徴とする。
【数1】

【0008】
前記刻み幅特定部は、数1に示す関数に基づき、アジマス方向の予測速度毎に振幅値Vvazの値をプロットして得られるグラフにおいて、頂における振幅値Vvazが2番目に大きくなる山の前記頂における振幅値Vvazよりも大きい値を前記所定の値とする
ことを特徴とする。
【0009】
前記データ入力部は、目標物のデータとして、レンジ圧縮されたレンジ圧縮後データを入力し、
前記特定処理実行部は、
目標物について、レンジ方向の予測速度を入力するとともに、前記刻み幅特定部が特定した刻み幅Δva1毎にアジマス方向の予測速度を入力する予測速度入力部と、
前記予測速度入力部が入力したレンジ方向の予測速度及び複数のアジマス方向の予測速度に基づき、前記アジマス方向の予測速度毎に、前記SARと前記目標物との相対距離から得られる参照関数を処理装置により生成することで、複数の参照関数を生成する参照関数生成部と、
前記参照関数生成部が生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記データ入力部が入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを処理装置により生成するアジマス圧縮処理部と、
前記アジマス圧縮処理部が生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を処理装置により算出する振幅値算出部と、
前記振幅値算出部が算出した前記目標物の画像の振幅値が最大のアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を、前記参照関数生成部が生成したときに使用したアジマス方向の予測速度の前後Δva1/2の範囲内に目標物のアジマス方向の速度が入ると処理装置により特定する速度特定部と
を備えることを特徴とする。
【0010】
前記予測速度入力部は、前記速度特定部が特定した速度の前後、前記刻み幅Δva1/2の速度範囲について、前記刻み幅Δva1よりも狭い刻み幅Δva2毎にアジマス方向の予測速度を新たに入力し、
前記参照関数生成部は、前記レンジ方向の予測速度と、前記予測速度入力部が新たに入力した複数のアジマス方向の予測速度に基づき、前記アジマス方向の予測速度毎に、前記相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を新たに生成し、
前記アジマス圧縮処理部は、前記参照関数生成部が新たに生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを新たに生成し、
前記振幅値算出部は、前記アジマス圧縮処理部が新たに生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を新たに算出し、
前記速度特定部は、前記振幅値算出部が新たに算出した前記目標物の画像の振幅値が最大のアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を参照関数を、前記参照関数生成部が生成したときに使用したアジマス方向の予測速度を目標物のアジマス方向の速度として特定する
ことを特徴とする。
【0011】
前記予測速度入力部は、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ新たに入力し、
前記参照関数生成部は、前記予測速度入力部が新たに入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記速度特定部が特定した目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を新たに生成し、
前記アジマス圧縮処理部は、前記参照関数生成部が新たに生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを新たに生成し、
前記振幅値算出部は、前記アジマス圧縮処理部が新たに生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を算出し、
前記速度特定部は、前記予測速度入力部が入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出部が各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とに基づき、SAR搭載機の速度vと距離Rと合成開口時間τと目標物のレンジ方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvrgの関数を用いて、目標物のレンジ方向速度を特定する
ことを特徴とする。
【0012】
前記速度特定部は、数2に示す振幅値Vvrgの関数を用いて目標物のレンジ方向速度を特定する
ことを特徴とする。
【数2】

【0013】
前記予測速度入力部は、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度vr1’と速い速度vr2’とを入力し、
前記速度特定部は、前記予測速度入力部が入力したレンジ方向の予測速度vr1’及びvr2’と、レンジ方向の予測速度vr1’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pと、レンジ方向の予測速度vr2’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pとを数3に代入することにより、目標物のレンジ方向の速度vを特定する
ことを特徴とする。
【数3】

【0014】
前記予測速度入力部は、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも2つずつ入力し、
前記速度特定部は、目標物のレンジ方向の速度vより遅い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=a+a(ここで、a,aは定数)を算出し、目標物のレンジ方向の速度vより速い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=b+b(ここで、b,bは定数)を算出し、一次関数Vvrg=a+aと一次関数Vvrg=b+bとからレンジ方向の速度vを特定する
ことを特徴とする。
【0015】
前記予測速度入力部は、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ含む少なくとも3つのレンジ方向の予測速度を新たに入力し、
前記参照関数生成部は、前記予測速度入力部が新たに入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記速度特定部が特定した目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を新たに生成し、
前記アジマス圧縮処理部は、前記参照関数生成部が新たに生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを新たに生成し、
前記振幅値算出部は、前記アジマス圧縮処理部が新たに生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を算出し、
前記速度特定部は、前記少なくとも3つのレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出部が各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とから所定の方法により2次関数Vvrg=c+c+c(ここで、c,c,cは定数)を算出して、その2次曲線の底におけるレンジ方向の速度を、レンジ方向の速度vとして特定する
ことを特徴とする。
【0016】
この発明に係る目標物速度特定装置は、
SARにより観測された目標物の速度を特定する目標物速度特定装置であり、
SARを搭載したSAR搭載機の速度v、合成開口中心でのSARと目標物との距離R、合成開口時間τでSARが観測した目標物のデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力するデータ入力部と、
レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ入力する予測速度入力部と、
前記予測速度入力部が入力した複数のレンジ方向の予測速度と、目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記SAR搭載機の速度vと目標物の速度とに基づき表される前記SARと前記目標物との相対距離から得られる参照関数を処理装置により生成することで、複数の参照関数を生成する参照関数生成部と、
前記参照関数生成部が生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記データ入力部が入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを処理装置により生成するアジマス圧縮処理部と、
前記アジマス圧縮処理部が生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を処理装置により算出する振幅値算出部と、
前記予測速度入力部が入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出部が各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とに基づき、SAR搭載機の速度vと距離Rと合成開口時間τと目標物のレンジ方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvrgの関数を用いて、目標物のレンジ方向速度を特定する速度特定部と
を備えることを特徴とする。
【0017】
前記速度特定部は、数4に示す振幅値Vvrgの関数を用いて目標物のレンジ方向速度を特定する
ことを特徴とする。
【数4】

【0018】
前記予測速度入力部は、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度vr1’と速い速度vr2’とを入力し、
前記速度特定部は、前記予測速度入力部が入力したレンジ方向の予測速度vr1’及びvr2’と、レンジ方向の予測速度vr1’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pと、レンジ方向の予測速度vr2’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pとを数5に代入することにより、目標物のレンジ方向の速度vを特定することを特徴とする。
【数5】

【0019】
前記予測速度入力部は、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも2つずつ入力し、
前記速度特定部は、目標物のレンジ方向の速度vより遅い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=a+a(ここで、a,aは定数)を算出し、目標物のレンジ方向の速度vより速い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=b+b(ここで、b,bは定数)を算出し、一次関数Vvrg=a+aと一次関数Vvrg=b+bとからレンジ方向の速度vを特定する
ことを特徴とする。
【0020】
この発明に係る目標物速度特定装置は、
SARにより観測された目標物の速度を特定する目標物速度特定装置であり、
SARが観測した目標物のデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力するデータ入力部と、
レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ含む少なくとも3つの予測速度を入力する予測速度入力部と、
前記予測速度入力部が入力した複数のレンジ方向の予測速度と、目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記SAR搭載機の速度vと目標物の速度とに基づき表される前記SARと前記目標物との相対距離から得られる参照関数を処理装置により生成することで、複数の参照関数を生成する参照関数生成部と、
前記参照関数生成部が生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記データ入力部が入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを処理装置により生成するアジマス圧縮処理部と、
前記アジマス圧縮処理部が生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を処理装置により算出する振幅値算出部と、
前記予測速度入力部が入力した前記少なくとも3つのレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出部が各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とから所定の方法により2次関数Vvrg=c+c+c(ここで、c,c,cは定数)を算出して、その2次曲線の底におけるレンジ方向の速度を、レンジ方向の速度vとして処理装置により特定する速度特定部と
を備えることを特徴とする。
【0021】
この発明に係る目標物速度特定プログラムは、
SARにより観測された目標物の速度を特定する目標物速度特定プログラムであり、
SARを搭載したSAR搭載機の速度v、合成開口中心でのSARと目標物との距離R、SARから放射される電波の波長λ、合成開口時間τという観測条件でSARが観測した目標物のデータを入力するデータ入力処理と、
SAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τと目標物のアジマス方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvazの関数に、前記データ入力処理で入力したデータの観測条件であるSAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τとを入力し、予測速度v’に対応する振幅値Vvazを計算して、前記振幅値Vvazが所定の値以上になるアジマス方向の予測速度v’の範囲を特定し、特定した範囲の速度幅以下の速度幅を刻み幅Δva1とする刻み幅特定処理と、
前記刻み幅特定処理で特定した刻み幅Δva1を用いて、目標物のアジマス方向の速度を特定する特定処理実行処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0022】
前記刻み幅特定処理では、数6に示す振幅値Vvazの関数に、前記データ入力処理で入力したデータの観測条件であるSAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τとを入力するとともに、目標物の速度vとしてある値を入力し、予測速度v’に対応する振幅値Vvazを計算する
ことを特徴とする。
【数6】

【0023】
前記刻み幅特定処理では、数6に示す関数に基づき、アジマス方向の予測速度毎に振幅値Vvazの値をプロットして得られるグラフにおいて、頂における振幅値Vvazが2番目に大きくなる山の前記頂における振幅値Vvazよりも大きい値を前記所定の値とする
ことを特徴とする。
【0024】
前記データ入力処理では、目標物のデータとして、レンジ圧縮されたレンジ圧縮後データを入力し、
前記特定処理実行処理では、
目標物について、レンジ方向の予測速度を入力するとともに、前記刻み幅特定処理で特定した刻み幅Δva1毎にアジマス方向の予測速度を入力する予測速度入力処理と、
前記予測速度入力処理で入力したレンジ方向の予測速度及び複数のアジマス方向の予測速度に基づき、前記アジマス方向の予測速度毎に、前記SARと前記目標物との相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を生成する参照関数生成処理と、
前記参照関数生成処理で生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記データ入力処理で入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを生成するアジマス圧縮処理と、
前記アジマス圧縮処理で生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を算出する振幅値算出処理と、
前記振幅値算出処理で算出した前記目標物の画像の振幅値が最大のアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を、前記参照関数生成処理で生成したときに使用したアジマス方向の予測速度の前後Δva1/2の範囲内に目標物のアジマス方向の速度が入ると特定する速度特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0025】
前記予測速度入力処理では、前記速度特定処理で特定した速度の前後、前記刻み幅Δva1/2の速度範囲について、前記刻み幅Δva1よりも狭い刻み幅Δva2毎にアジマス方向の予測速度を新たに入力し、
前記参照関数生成処理では、前記レンジ方向の予測速度と、前記予測速度入力処理で新たに入力した複数のアジマス方向の予測速度に基づき、前記アジマス方向の予測速度毎に、前記相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を新たに生成し、
前記アジマス圧縮処理では、前記参照関数生成処理で新たに生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを新たに生成し、
前記振幅値算出処理では、前記アジマス圧縮処理で新たに生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を新たに算出し、
前記速度特定処理では、前記振幅値算出処理で新たに算出した前記目標物の画像の振幅値が最大のアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を参照関数を、前記参照関数生成処理で生成したときに使用したアジマス方向の予測速度を目標物のアジマス方向の速度として特定する
ことを特徴とする。
【0026】
前記予測速度入力処理では、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ新たに入力し、
前記参照関数生成処理では、前記予測速度入力処理で新たに入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記速度特定処理で特定した目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を新たに生成し、
前記アジマス圧縮処理では、前記参照関数生成処理で新たに生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを新たに生成し、
前記振幅値算出処理では、前記アジマス圧縮処理で新たに生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を算出し、
前記速度特定処理では、前記予測速度入力処理で入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出処理で各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とに基づき、SAR搭載機の速度vと距離Rと合成開口時間τと目標物のレンジ方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvrgの関数を用いて、目標物のレンジ方向速度を特定する
ことを特徴とする。
【0027】
前記速度特定処理では、数7に示す振幅値Vvrgの関数を用いて目標物のレンジ方向速度を特定する
ことを特徴とする。
【数7】

【0028】
前記予測速度入力処理では、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度vr1’と速い速度vr2’とを入力し、
前記速度特定処理では、前記予測速度入力処理で入力したレンジ方向の予測速度vr1’及びvr2’と、レンジ方向の予測速度vr1’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pと、レンジ方向の予測速度vr2’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pとを数8に代入することにより、目標物のレンジ方向の速度vを特定する
ことを特徴とする。
【数8】

【0029】
前記予測速度入力処理では、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも2つずつ入力し、
前記速度特定処理では、目標物のレンジ方向の速度vより遅い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=a+a(ここで、a,aは定数)を算出し、目標物のレンジ方向の速度vより速い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=b+b(ここで、b,bは定数)を算出し、一次関数Vvrg=a+aと一次関数Vvrg=b+bとからレンジ方向の速度vを特定する
ことを特徴とする。
【0030】
前記予測速度入力処理では、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ含む少なくとも3つのレンジ方向の予測速度を新たに入力し、
前記参照関数生成処理では、前記予測速度入力処理で新たに入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記速度特定処理で特定した目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を新たに生成し、
前記アジマス圧縮処理では、前記参照関数生成処理で新たに生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを新たに生成し、
前記振幅値算出処理では、前記アジマス圧縮処理で新たに生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を算出し、
前記速度特定処理では、前記少なくとも3つのレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出処理で各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とから所定の方法により2次関数Vvrg=c+c+c(ここで、c,c,cは定数)を算出して、その2次曲線の底におけるレンジ方向の速度を、レンジ方向の速度vとして特定する
ことを特徴とする。
【0031】
この発明に係る目標物速度特定プログラムは、
SARにより観測された目標物の速度を特定する目標物速度特定プログラムであり、
SARを搭載したSAR搭載機の速度v、合成開口中心でのSARと目標物との距離R、合成開口時間τでSARが観測した目標物のデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力するデータ入力処理と、
レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ入力する予測速度入力処理と、
前記予測速度入力処理で入力した複数のレンジ方向の予測速度と、目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記SAR搭載機の速度vと目標物の速度とに基づき表される前記SARと前記目標物との相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を生成する参照関数生成処理と、
前記参照関数生成処理で生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記データ入力処理で入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを生成するアジマス圧縮処理と、
前記アジマス圧縮処理で生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を算出する振幅値算出処理と、
前記予測速度入力処理で入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出処理で各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とに基づき、SAR搭載機の速度vと距離Rと合成開口時間τと目標物のレンジ方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvrgの関数を用いて、目標物のレンジ方向速度を特定する速度特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0032】
前記速度特定処理では、数9に示す振幅値Vvrgの関数を用いて目標物のレンジ方向速度を特定する
ことを特徴とする。
【数9】

【0033】
前記予測速度入力処理では、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度vr1’と速い速度vr2’とを入力し、
前記速度特定処理では、前記予測速度入力処理で入力したレンジ方向の予測速度vr1’及びvr2’と、レンジ方向の予測速度vr1’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pと、レンジ方向の予測速度vr2’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pとを数10に代入することにより、目標物のレンジ方向の速度vを特定することを特徴とする。
【数10】

【0034】
前記予測速度入力処理では、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも2つずつ入力し、
前記速度特定処理では、目標物のレンジ方向の速度vより遅い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=a+a(ここで、a,aは定数)を算出し、目標物のレンジ方向の速度vより速い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=b+b(ここで、b,bは定数)を算出し、一次関数Vvrg=a+aと一次関数Vvrg=b+bとからレンジ方向の速度vを特定する
ことを特徴とする。
【0035】
この発明に係る目標物速度特定プログラムは、
SARにより観測された目標物の速度を特定する目標物速度特定プログラムであり、
SARが観測した目標物のデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力するデータ入力処理と、
レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ含む少なくとも3つの予測速度を入力する予測速度入力処理と、
前記予測速度入力処理で入力した複数のレンジ方向の予測速度と、目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記SAR搭載機の速度vと目標物の速度とに基づき表される前記SARと前記目標物との相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を生成する参照関数生成処理と、
前記参照関数生成処理で生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記データ入力処理で入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを生成するアジマス圧縮処理と、
前記アジマス圧縮処理で生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を算出する振幅値算出処理と、
前記予測速度入力処理で入力した前記少なくとも3つのレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出処理で各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とから所定の方法により2次関数Vvrg=c+c+c(ここで、c,c,cは定数)を算出して、その2次曲線の底におけるレンジ方向の速度を、レンジ方向の速度vとして特定する速度特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0036】
この発明に係る目標物速度特定方法は、
SARにより観測された目標物の速度を特定する目標物速度特定方法であり、
SARを搭載したSAR搭載機の速度v、合成開口中心でのSARと目標物との距離R、SARから放射される電波の波長λ、合成開口時間τという観測条件でSARが観測した目標物のデータを入力するデータ入力工程と、
SAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τと目標物のアジマス方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvazの関数に、前記データ入力工程で入力したデータの観測条件であるSAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τとを入力し、予測速度v’に対応する振幅値Vvazを計算して、前記振幅値Vvazが所定の値以上になるアジマス方向の予測速度v’の範囲を処理装置により特定し、特定した範囲の速度幅以下の速度幅を刻み幅Δva1とする刻み幅特定工程と、
前記刻み幅特定工程で特定した刻み幅Δva1を用いて、目標物のアジマス方向の速度を処理装置により特定する特定処理実行工程と
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0037】
この発明に係る目標物速度特定装置では、振幅値の関数に基づき入力する予測速度の刻み幅を設定し、設定した刻み幅に基づき目標物の速度を特定する。これにより、速度の刻み幅を小さくすることなく、少ない計算量で目標物の概ねの速度を特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】数20から得られる、目標物のアジマス方向の予測速度v’と振幅値Vvazとの関係を示した図。
【図2】実施の形態2に係る目標物速度特定装置1の機能を示す機能ブロック図。
【図3】実施の形態2に係る目標物速度特定装置1の動作を示すフローチャート。
【図4】実施の形態2に係る目標物速度特定装置1の動作を示すフローチャート。
【図5】数22から得られる、目標物のアジマス方向の予測速度v’と振幅値Vvrgとの関係を示した図。
【図6】実施の形態3に係る目標物速度特定装置1の機能を示す機能ブロック図。
【図7】実施の形態3に係る目標物速度特定装置1の動作を示すフローチャート。
【図8】レンジ方向の予測速度から計算される振幅値とをプロットした状態を表す図。
【図9】数27における積分部分A(数28)の積分範囲の説明図。
【図10】“τ−|t−t|”の説明図。
【図11】数35における積分部分B(数36)の積分範囲の説明図。
【図12】数54に示す相対距離R(t)、相対距離R(t)、相対距離R(t)を示す図。
【図13】目標物速度特定装置1のハードウェア構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、図に基づき、発明の実施の形態を説明する。
以下の説明において、処理装置は後述するCPU911等である。記憶装置は後述するROM913、RAM914、磁気ディスク920等の記憶装置である。入力装置は後述するキーボード902、マウス903等である。つまり、処理装置、記憶装置、入力装置はハードウェアである。
【0040】
実施の形態1.
実施の形態1では、目標物がアジマス方向に移動している場合と、レンジ方向に移動している場合とを想定した、アジマス圧縮時におけるマッチドフィルタの数式(振幅値の関数)を簡単に説明する。
【0041】
SAR画像再生処理では、一般に、SARによって得られた受信信号を、レンジ圧縮し、アジマス圧縮して画像データを生成する。レンジ圧縮やアジマス圧縮とは、参照関数と、受信信号とをマッチドフィルタへ入力することにより、振幅値(電圧)を計算する処理である。
【0042】
マッチドフィルタは、数11により表される。
【数11】

ここで、Vは、振幅値である。tは、時刻である。Vは、参照関数である。は、複素共役を示す。Vは、受信信号である。ξは、積分のオペレータ(積分作用素)である。
【0043】
アジマス圧縮の参照関数は、一般に数12により表される。
【数12】

ここで、Vazは、振幅値である。tは、時刻である。A(t)は、−τ/2≦t≦τ/2であれば1、他の場合には0となる関数である。なお、τは、合成開口時間である。jは、虚数単位である。λは、SARから放射される電波の波長である。R(t)は、時刻tにおけるSARと目標物との相対距離である。
【0044】
目標物のレンジ方向の速度v、アジマス方向の速度v、SAR搭載機の速度vはそれぞれ数13のように定義できる。
【数13】

数13では、簡単のため、各速度を定数成分のみ、すなわち等速直線運動と仮定している。一般に車両や船等の運動は等速直線運動が支配的であるため、車両や船等の速度を扱う場合に、この仮定は妥当である。なお、目標物のレンジ方向の速度には、地球の自転の速度等を含めて考えてもよい。また、SAR搭載機の移動方向がアジマス方向であるため、SAR搭載機の速度とは、SAR搭載機のアジマス方向の速度である。
すると、SARと目標物との相対距離R(t)を数14のように表すことができる。
【数14】

ここで、Rは、合成開口中心におけるSARと目標物との距離である。また、a,a,aは数15に示す通りである。
【数15】

【0045】
数14を用いることで、数12に示すアジマス圧縮の参照関数は、数14のtに関連する項のみが重要であるため、数16のようになる。
【数16】

【0046】
受信信号V(t)についても、アジマス圧縮の参照関数と同様に、数17のように表すことができる。なお、受信信号には、信号の減衰や散乱強度等によって定められるスケールファクタαが含まれる点で、参照関数とは異なる式となっている。
【数17】

【0047】
SARにより撮像した目標物が移動している場合を考える。この場合、参照関数における目標物の速度と、受信信号における目標物の速度とが一致しない可能性がある。そこで、参照関数における目標物の速度と、受信信号における目標物の速度とを別の変数を用いて表す。
【0048】
まず、目標物のアジマス方向の速度が異なる場合を考える。ここでは、簡単のため、目標物のレンジ方向の速度は同じであるとする。
数15に示すように、目標物のアジマス方向の速度vは、a,a,aのうち、aにのみ含まれる。そこで、vを目標物の真のアジマス方向の速度、v’を目標物のアジマス方向の予測速度として、数18のようにa’を定義する。
【数18】

そして、参照関数における目標物のアジマス方向の速度は予測速度v’であり、受信信号における目標物のアジマス方向の速度は真の速度vであるとする。すると、数16に示す参照関数は、数19のようになる。なお、受信信号は数17に示すままである。
【数19】

【0049】
数19に示す参照関数Vazの複素共役をVとし、数17に示す受信信号Vを受信信号Vとして、数11に示すマッチドフィルタに代入して式変形すると、数20が得られる。なお、数20を導く方法については後の実施の形態で説明する。
【数20】

ここで、jは、虚数単位である。pは、積分のオペレータである。
【0050】
次に、目標物のレンジ方向の速度が異なる場合を考える。ここでは、簡単のため、目標物のアジマス方向の速度は同じであるとする。
数15に示すように、目標物のレンジ方向の速度vは、a,a,aのうち、aにのみ含まれる。そこで、vを目標物の真のレンジ方向の速度、v’を目標物のレンジ方向の予測速度として、a’=v’と定義する。
そして、参照関数における目標物のレンジ方向の速度は予測速度v’であり、受信信号における目標物のレンジ方向の速度は真の速度vであるとする。すると、数16に示す参照関数は、数21のようになる。なお、受信信号は数17に示すままである。
【数21】

【0051】
数21に示す参照関数Vazの複素共役をVとし、数17に示す受信信号Vを受信信号Vとして、数11に示すマッチドフィルタに代入して式変形すると、数22が得られる。なお、数22を導く方法については後の実施の形態で説明する。
【数22】

【0052】
数20と数22とを得たことにより、少ない計算量で高精度に目標物の速度を特定することが可能になる。
【0053】
実施の形態2.
実施の形態2では、数20に基づき、目標物のアジマス方向の速度を、少ない計算量で効率的に特定する方法について説明する。
【0054】
リフォーカスISARでは、複数のアジマス圧縮の参照関数を生成する際における目標物の予測速度の変化幅を小さくすればするほど、高精度に目標物の速度を特定し得る。一方で、目標物の予測速度の変化幅を小さくすればするほど、計算量が多くなってしまう。
これまで、リフォーカスISARを用いて目標物の速度を特定する際、目標物の予測速度の変化幅をどの程度にすればよいかという指針を得ることができなかった。しかし、数20を用いることで、リフォーカスISARを用いて目標物の速度を特定する際、目標物の予測速度の変化幅をどの程度にすればよいか決定することができる。
【0055】
図1は、数20から得られる、目標物のアジマス方向の予測速度v’と振幅値Vvazとの関係を示した図である。図1では、横軸に目標物のアジマス方向の予測速度v’をとり、縦軸に振幅値Vvazをとっている。
なお、図1では、振幅値Vvazの最大値を1に正規化している。また、目標物のアジマス方向の真の速度vを0としている。また、図1では、SARを搭載したSAR搭載機の速度V、合成開口中心でのSARと目標物との距離R、SARから放射される電波の波長λ、合成開口時間τを所定の値としている。
また、以下の説明において、正のアジマス方向速度は、SAR搭載機の進行方向への速度であり、負のアジマス方向速度は、SAR搭載機の進行方向と逆方向への速度である。また、正のレンジ方向速度は、SARから離れるレンジ方向への速度であり、負のレンジ方向速度は、SARへ近づくレンジ方向への速度である。
【0056】
ここで、目標物のアジマス方向の真の速度vを0以外のどの値としても、図1に示すグラフの形状は変化せず、グラフが横軸方向へ平行移動するだけである。つまり、SAR搭載機の速度V、距離R、電波の波長λ、合成開口時間τが決まれば、グラフの形状は定まる。SAR搭載機の速度V、距離R、電波の波長λ、合成開口時間τはSAR画像の観測条件であり、SAR画像を撮像する時点において、決まっている情報である。そこで、図1に示すように、目標物のアジマス方向の真の速度vを任意の値として、目標物のアジマス方向の予測速度v’と振幅値Vvazとの関係を示したグラフを描く。
次に、描いたグラフにおける最大振幅値が2番目に高い山Mの頂Tの振幅値Vよりも大きい振幅値Vを任意に選択する。例えば、ここでは、最大値の1/2である振幅値0.5をVとして選択する。描いたグラフにおいて、振幅値が選択した振幅値V以上となる予測速度v’の範囲を特定し、その速度幅Δvを特定する。
この速度幅Δvを刻み幅(変化幅)として、目標物の予測速度を変化させて参照関数を生成した場合、少なくとも1つ(高々2つ)の参照関数に基づきアジマス圧縮を行った場合の振幅値はV以上となる。
ここでは、例えば、予測速度vにおいて振幅値がV以上となったとする。すると、予測速度vの前後Δv/2の速度範囲に、目標物の速度が入ることが分かる。つまり、速度幅Δvを刻み幅として目標物の予測速度を変化させて参照関数を生成することにより、目標物の速度範囲を速度幅Δvに絞り込むことができる。
そして、絞り込んだ速度範囲について、細かい刻み幅で予測速度を変化させて、参照関数を生成し、高精度に目標物の速度を特定する。
【0057】
図2は、実施の形態2に係る目標物速度特定装置1の機能を示す機能ブロック図である。
目標物速度特定装置1は、データ入力部2、刻み幅特定部3、予測速度入力部4、参照関数生成部5、アジマス圧縮処理部6、振幅値算出部7、速度特定部8を備える。なお、予測速度入力部4、参照関数生成部5、アジマス圧縮処理部6、振幅値算出部7、速度特定部8を特定処理実行部と呼ぶ。
【0058】
図3、図4は、実施の形態2に係る目標物速度特定装置1の動作を示すフローチャートである。目標物速度特定装置1の動作は、大きく2段階に分けられる。1段階目は、図3に示す処理であり、目標物の速度範囲を絞り込む範囲限定処理である。2段階目は、図4に示す処理であり、絞り込んだ速度範囲における目標物の速度を確定する速度確定処理である。
【0059】
範囲限定処理について説明する。
(S1:データ入力処理)
データ入力部2は、SARが観測した目標物のデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データ(レンジ圧縮後の画像情報)を入力装置により入力して記憶装置に記憶する。
ここで、データ入力部2は、目標物を撮像した際の観測情報である、SARを搭載したSAR搭載機の速度V、合成開口中心でのSARと目標物との距離R、SARから放射される電波の波長λ、合成開口時間τも併せて入力する。
なお、レンジ圧縮後データは、アジマス圧縮後のデータを、アジマス圧縮する際に使用した参照関数を用いてアジマス解凍(アジマス圧縮の逆計算)して生成したデータであってもよい。
【0060】
(S2:刻み幅特定処理)
刻み幅特定部3は、(S1)で入力したSAR搭載機の速度V、距離R、電波の波長λ、合成開口時間τと、数20とから、上述したように速度幅Δv(以下、Δva1と呼ぶ)を刻み幅として処理装置により計算する。
刻み幅特定部3は、SAR搭載機の速度V、距離R、電波の波長λ、合成開口時間τと、任意のアジマス方向の速度vとを数20に代入することにより、刻み幅を計算してもよい。また、刻み幅特定部3は、図1に基づく説明のように、グラフを描き、描いたグラフから刻み幅を計算してもよい。
【0061】
(S3:予測速度入力処理)
予測速度入力部4は、目標物についてのレンジ方向の予測速度と、複数のアジマス方向の予測速度とを処理装置により入力して記憶装置に記憶する。
予測速度入力部4は、レンジ方向の予測速度については、目標物が取り得ると考えられる速度を任意に1つ入力する。一方、予測速度入力部4は、アジマス方向の予測速度については、(S2)で特定した刻み幅Δva1毎に、目標物が取り得ると考えられる速度範囲における予測速度を入力する。
なお、目標物が取り得ると考えられる速度範囲とは、船、車等、対象としている目標物によって決めればよい。例えば、目標物が100km/hの速度がでるのであれば、目標物が取り得ると考えられる速度範囲は±100km/hである。したがって、この場合、予測速度入力部4は、±100km/hの範囲内の適当な速度をレンジ方向の予測速度として1つ入力する。また、予測速度入力部4は、例えば刻み幅が20km/hであれば、±100km/hの範囲内の速度を20km/h毎にアジマス方向の予測速度として入力する。つまり、例えば、予測速度入力部4は、−100,−80,−60,・・・,+60,+80,+100km/hをアジマス方向の予測速度として入力する。
【0062】
(S4:参照関数生成処理)
参照関数生成部5は、(S3)で入力したレンジ方向の予測速度及び複数のアジマス方向の予測速度に基づき、アジマス方向の予測速度毎に、参照関数(例えば、数16参照)を処理装置により生成する。これにより、複数の参照関数が生成される。
【0063】
(S5:アジマス圧縮処理)
アジマス圧縮処理部6は、(S4)で生成した各参照関数に基づき、(S1)で入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを処理装置により生成する。
【0064】
(S6:振幅値算出処理)
振幅値算出部7は、(S5)で生成した各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を処理装置により算出する。
【0065】
(S7:速度特定処理)
速度特定部8は、(S6)で算出した目標物の画像の振幅値が最大のアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を処理装置により特定する。さらに、速度特定部8は、特定した参照関数を生成する場合に使用したアジマス方向の予測速度を処理装置により特定する。そして、速度特定部8は、特定した予測速度の前後Δva1/2の範囲を、目標物のアジマス方向の速度範囲として特定する。
【0066】
速度確定処理について説明する。
(S8:予測速度入力処理)
予測速度入力部4は、(S7)で特定した速度範囲について、刻み幅Δva1よりも狭い刻み幅Δva2毎に複数のアジマス方向の予測速度を入力装置により入力して記憶装置に記憶する。
刻み幅Δva2は、目標物の速度をどの程度の精度で特定したいかに応じて決定すればよい。例えば、刻み幅Δva2は、1km/hや0.1km/h等である。
【0067】
(S9:参照関数生成処理)
(S3)で入力したレンジ方向の予測速度と、(S8)で入力した複数のアジマス方向の予測速度とに基づき、アジマス方向の予測速度毎に、参照関数(例えば、数16参照)を処理装置により生成する。これにより、複数の参照関数が生成される。
(S10:アジマス圧縮処理)
アジマス圧縮処理部6は、(S9)で生成した各参照関数に基づき、(S1)で入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを処理装置により生成する。
【0068】
(S11:振幅値算出処理)
振幅値算出部7は、(S10)で生成した各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を処理装置により算出する。
【0069】
(S12:速度特定処理)
速度特定部8は、(S11)で算出した目標物の画像の振幅値が最大のアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を処理装置により特定する。そして、速度特定部8は、特定した参照関数を生成する場合に使用したアジマス方向の予測速度を、目標物のアジマス方向の速度として処理装置により特定する。
【0070】
以上のように、実施の形態2に係る目標物速度特定装置1では、数20を用いることで、リフォーカスISARを用いて目標物の速度を特定する際に用いる、目標物の予測速度の刻み幅を決定することができる。
特に、実施の形態2に係る目標物速度特定装置1では、数20に基づき決定された粗い刻み幅で、粗精度な探索を行うことにより、目標物のアジマス方向の速度範囲を絞り込む。そして、絞り込んだ範囲についてのみ、細かい刻み幅で、高精度な探索を行うことにより、全範囲を高精度な探索を行った場合と同じレベルの精度で、目標物のアジマス方向の速度を特定することができる。つまり、少ない計算量で高精度な速度特定ができる。
【0071】
なお、上記説明においては、(S3)で入力するレンジ方向の予測速度は1つであるとした。これは、数20により描かれるグラフの形状はレンジ方向の速度の影響を受けないため、レンジ方向の予測速度は任意の速度が1つあれば十分なためである。
しかし、ノイズの影響等により、(S3)で入力したンジ方向の予測速度によっては、正確な速度を特定できないことも考えられる。そこで、(S3)で複数のレンジ方向の予測速度を入力し、(S4)や(S9)で各アジマス方向の速度毎、レンジ方向の速度毎に参照関数を生成してもよい。そして、(S6)や(S11)では、各参照関数に基づき生成されたアジマス圧縮後の画像データにおける目標物の振幅値を計算し、計算した振幅値についてアジマス方向の予測速度毎に平均値を計算してもよい。
これにより、一部のレンジ方向速度の信号に対して影響を与えたノイズ等の影響が小さくなり、速度特定の精度を高くすることができる。
【0072】
実施の形態3.
実施の形態3では、数22に基づき、目標物のレンジ方向速度を、少ない計算量で効率的に特定する方法について説明する。
【0073】
図5は、数22から得られる、目標物のアジマス方向の予測速度v’と振幅値Vvrgとの関係を示した図である。図5では、横軸に目標物のレンジ方向の予測速度v’をとり、縦軸に振幅値Vvrgをとっている。
なお、図5では、振幅値Vvrgの最大値を1に正規化している。また、目標物のレンジ方向の真の速度vを0としている。また、図1では、SARを搭載したSAR搭載機の速度V、合成開口中心でのSARと目標物との距離R、SARから放射される電波の波長λ、合成開口時間τを所定の値としている。
【0074】
数22及び図5から分かるように、数22は、目標物の予測速度v’が目標物の真のレンジ方向速度vである場合に振幅値Vvrgが最大値となる、絶対値を含む一次関数である。
そこで、目標物の真のレンジ方向速度vよりも遅い側の一次関数(図5においては、予測速度v’が負となる側)と速い側の一次関数(図5においては、予測速度v’が正となる側)とを連立させて、振幅値Vvrgが最大値となる目標物の真のレンジ方向速度vを求める。例えば、図5における予測速度vr1’の振幅値をPとし、予測速度vr2’の振幅値Pとすると、振幅値P及びPは数23のように表せる。なお、vr1’<v<vr2’である。
【数23】

そして、数23から数24が得られる。
【数24】

数24において、αは、任意に設定される値であり、SAR搭載機の速度vと距離Rと合成開口時間τとは、SAR画像の観測条件であるため、予め分かっている。そのため、予測速度vr1’、振幅値をP、予測速度vr2’、振幅値Pが分かれば、数24に基づき、目標物の真のレンジ方向速度vを計算することができる。
【0075】
図6は、実施の形態3に係る目標物速度特定装置1の機能を示す機能ブロック図である。図6に示す目標物速度特定装置1は、刻み幅特定部3を備えていない点を除き、図2に示す目標物速度特定装置1と同じ構成である。
【0076】
図7は、実施の形態3に係る目標物速度特定装置1の動作を示すフローチャートである。
(S21:データ入力処理)
データ入力部2は、図3の(S1)と同様に、SARが観測した目標物のデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力装置により入力して記憶装置に記憶する。
【0077】
(S22:予測速度入力処理)
予測速度入力部4は、目標物についての2つのレンジ方向の予測速度と、アジマス方向の速度とを処理装置により入力して記憶装置に記憶する。
予測速度入力部4は、レンジ方向の予測速度については、真の速度vよりも遅い速度vr1’と速い速度vr2’とを1つずつ入力する。なお、真の速度vよりも遅い速度とは、真の速度vよりも速度の値が小さい速度のことである。例えば、真の速度vが0km/hであれば、0よりも小さい−10km/hや−50km/h等である。一方、真の速度vよりも速い速度とは、真の速度vよりも速度の値が大きい速度のことである。例えば、真の速度vが0km/hであれば、0よりも大きい10km/hや50km/h等である。真の速度vよりも遅い速度と速い速度とは、例えば、目標物の取り得る速度が±100km/hであれば、±150km/hとしてしまえばよい。
予測速度入力部4は、アジマス方向の速度については、実施の形態2等の方法により特定した速度を入力する。なお、アジマス方向の速度について、任意の予測速度を1つ入力してもよいが、正確な速度を入力する方が望ましい。
【0078】
(S23:参照関数生成処理)
参照関数生成部5は、(S22)で入力した2つのレンジ方向の予測速度及びアジマス方向の速度に基づき、レンジ方向の予測速度毎に、参照関数(例えば、数16参照)を処理装置により生成する。これにより、2つの参照関数が生成される。
【0079】
(S24:アジマス圧縮処理)
アジマス圧縮処理部6は、(S23)で生成した各参照関数に基づき、(S21)で入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し2つのアジマス圧縮後データを処理装置により生成する。
【0080】
(S25:振幅値算出処理)
振幅値算出部7は、(S24)で生成した2つのアジマス圧縮後データそれぞれにおける目標物の画像の振幅値を処理装置により算出する。これにより、振幅値P,Pが算出される。
【0081】
(S26:速度特定処理)
速度特定部8は、数24へ、(S21)で入力した速度v、距離Rと、合成開口時間τと、(S22)で入力した速度vr1’、速度vr2’と、(S25)で算出した振幅値P,Pとを代入して、真の速度vを処理装置により計算する。
【0082】
以上のように、実施の形態3に係る目標物速度特定装置1では、数22を用いることで、2つの予測速度に基づきアジマス圧縮後の画像データを生成するだけで、目標物のレンジ方向の速度を特定することができる。つまり、少ない計算量で速度特定ができる。
【0083】
なお、上記説明においては、(S22)でレンジ方向の予測速度について、真の速度vよりも遅い速度と速い速度とを1つずつ入力し、真の速度vよりも遅い側の一次関数と真の速度vよりも速い側の一次関数とを連立させて真の速度vを求めた。
しかし、ノイズの影響等により、レンジ方向の予測速度と、その予測速度から計算される振幅値とをプロットした場合、図5に示すような綺麗な一次関数にはならず、図8に示すようにばらつきが出る可能性がある。そこで、(S22)で真の速度vよりも遅い2つ以上の速度と速い2つ以上の速度とを予測速度として入力してもよい。そして、真の速度vよりも遅い2つ以上の速度と、これらの各速度から計算される振幅値とから、真の速度vよりも遅い側の一次関数Vvrg=a+a(ここで、a,aは定数)を最小二乗法等によって計算する。同様に、真の速度vよりも速い2つ以上の速度と、これらの各速度から計算される振幅値とから、真の速度vよりも速い側の一次関数Vvrg=b+b(ここで、b,bは定数)を最小二乗法等によって計算する。これにより、各一次関数をより正確に特定することができる。特定した2つの一次関数を連立させて、真の速度vを計算すればよい。
【0084】
また、(S22)で真の速度vよりも遅い速度と速い速度とを少なくとも1つずつ含む、3つ以上の予測速度を入力してもよい。そして、3つ以上の予測速度から最小二乗法やスプライン補間等により二次関数Vvrg=c+c+c(ここで、c,c,cは定数)を計算し、計算した二次関数の底における予測速度を、真の速度vとして特定してもよい。
【0085】
なお、真の速度vを求める際、目標物の取り得る速度範囲における振幅値の差が大きいほど、ノイズ等の影響による誤差を小さくできる。例えば、図5では、速度範囲±100km/hにおける振幅値は概ね0.84〜1、すなわち振幅値の差は0.16である。速度範囲における振幅値の差が小さいということは、一次関数の傾きが緩やかであることになる。そのため、ノイズ等で振幅値に少し誤差が含まれただけで、特定した速度に大きな誤差が発生することになる。
そこで、速度範囲における振幅値の差が大きく、すなわち、一次関数の傾きが急になるようにSAR搭載機の設計をしてもよい。具体的には、一次関数の傾きを急にするために、数22におけるR/vの値が大きくなるように、Rを大きく、vを小さく設計すればよい。
【0086】
実施の形態4.
実施の形態4では、数20と数22とを導く方法について説明する。
【0087】
数20と数22とはいずれもアジマス圧縮についての式である。ここで、参照関数と、受信信号とをマッチドフィルタへ入力することにより、振幅値(電圧)を計算する処理であるという点においては、レンジ圧縮とアジマス圧縮とは同じである。
そこで、実施の形態4では、まず参考として、第1に、レンジ圧縮について説明する(非特許文献1参照)。そして、第2に、本題であるアジマス圧縮について説明する。特に、第2−1として、目標物の真の速度と、予測速度とに差異がない場合について説明する。第2−2として、目標物のアジマス方向における真の速度と、予測速度とに差異がある場合について説明する。第2−3として、目標物のレンジ方向における真の速度と、予測速度とに差異がある場合について説明する。さらに、第3に、まとめとして、第2−2の結果から数20を導き、第2−3の結果から数22を導く。
【0088】
<第1.レンジ圧縮>
実施の形態1で説明したように、マッチドフィルタは数11により表される。また、レンジ圧縮の参照関数V(t)は数25のように表され、受信信号V(t)は数26のように表される。
【数25】

【数26】

ここで、Vは、振幅値である。tは、時刻である。A(t)は、−τ/2≦t≦τ/2であれば1、他の場合には0となる関数である。なお、τは、合成開口時間である。jは、虚数単位である。fは、中心周波数である。Kは、チャープ率である。αは、スケールファクタである。tは、SARから送信された信号が目標物で反射して戻るまでの遅延時間である。
【0089】
数25に示す参照関数Vの複素共役をVとし、数26に示す受信信号Vを受信信号Vとして、数11に示すマッチドフィルタに代入すると、数27となる。
【数27】

【0090】
図9は、数27における積分部分A(数28)の積分範囲の説明図である。図9に示すように、数28は、t≧tとt<tとの2つの場合に分けて計算される。
【数28】

≧tの場合、数28は数29のように計算される。
【数29】

一方、t<tの場合、数28は数30のように計算される。
【数30】

つまり、t≧tとt<tとのどちらの場合も結果は同じになる。したがって、数27を数31のように変換できる。なお、数31はsinc関数である。
【数31】

【0091】
“τ−|t−t|”の物理的な解釈について説明する。
図10は、“τ−|t−t|”の説明図である。図10に示すように、τ−|t−t|は、参照関数と受信信号との相関の程度を表す。観測量である受信信号とは異なり、参照関数は、その開始と終了時刻を任意に定めることができる。そのため、一旦SARシステムの相関量が設定されれば、“|t−t|”における焦点tの位置によって相関量は変化しないので、“τ−|t−t|”は定数として扱うことができる。つまり、“τ−|t−t|”における“t”を時刻tと切り離して考えることができる。
したがって、“τ−|t−t|”における“t”を“t”とすることで、数31を数32のように変換できる。
【数32】

そして、一般的なSARシステムでは、参照関数と受信信号とは大部分で相関するため、|t−t|はτに比べて非常に小さい(|t−t|<<τ)。そのため、数32を数33のように変換できる。
【数33】

【0092】
<第2.アジマス圧縮>
<第2−1.目標物の真の速度と、予測速度とに差異がない場合>
第1の説明と同じ流れで計算を進める。
実施の形態1で説明したように、マッチドフィルタは数11により表される。また、アジマス圧縮の参照関数は数16のように表され、受信信号は数17のように表される。
ここで、数16に示す参照関数におけるaの項は時刻tから独立しており、マッチドフィルタにおいては重要でない。そこで、数16に示す参照関数におけるaの項を除くことにより、数34が得られる。
【数34】

なお、受信信号にはaの項の成分が含まれるため、数17に示す受信信号からはaの項を除かず、そのままとする。
【0093】
数34に示す参照関数Vazの複素共役をVとし、数17に示す受信信号Vを受信信号Vとして、数11に示すマッチドフィルタに代入すると、数35となる。
【数35】

【0094】
図11は、数35における積分部分B(数36)の積分範囲の説明図である。図11に示すように、数36は、0≧tと0<tとの2つの場合に分けて計算される。
【数36】

0≧tの場合、数36は数37のように計算される。
【数37】

一方、0<tの場合、数36は数38のように計算される。
【数38】

つまり、0≧tと0<tとのどちらの場合も結果は同じになる。したがって、数35を数39のように変換できる。
【数39】

【0095】
“τ−|t|”は、第1の説明で述べた“τ−|t−t|”と同様の物理的な解釈ができる。したがって、“τ−|t|”における“t”を“t”とすることで、数39を数40のように変換できる。
【数40】

そして、一般的なSARシステムでは、参照関数と受信信号とは大部分で相関するため、|t|はτに比べて非常に小さい(|t|<<τ)。そのため、数40を数41のように変換できる。
【数41】

【0096】
<第2−2.目標物のアジマス方向における真の速度と、予測速度とに差異がある場合>
実施の形態1で説明したように、目標物のアジマス方向の速度vは、a,a,aのうち、aにのみ含まれ、vを目標物の真のアジマス方向の速度、v’を目標物のアジマス方向の予測速度として、数18のようにa’を定義する。そして、参照関数における目標物のアジマス方向の速度は予測速度v’であり、受信信号における目標物のアジマス方向の速度は真の速度vであるとする。
すると、数34に示す参照関数Vazは、数42に示す参照関数Vvazに変換できる。
【数42】

【0097】
以降、第2−1の説明と同じ流れで計算を進める。
まず、数42に示す参照関数Vvazの複素共役を参照関数Vとし、数17に示す受信信号Vを受信信号Vとして、数11に示すマッチドフィルタに代入すると、数43となる。
【数43】

【0098】
数43における積分部分C(数44)は、図11に基づき説明した通り、0≧tと0<tとの2つの場合に分けて計算される。
【数44】

Δ=a−a’とし、0≧tの場合、数44は数45のように計算される。
【数45】

これは、Δ<0に対応するものであり、Δ≧0の場合は、数46のように計算される。
【数46】

一方、0<tの場合、数44はΔの符号に応じて数47、および数48のように計算される。
【数47】

【数48】

次に、tの符号に注意すると、数45と数47を数49のように変換できる。
【数49】

これは、Δ<0の場合に相当し、Δ≧0の場合は、数46と数48を数50のように変換できる。
【数50】

ここで、数49と数50とそれぞれを数43の積分値に代入すると、それぞれ数51と数52のように変換できる。
【数51】

【数52】

【0099】
t=0とし、絶対値を取ると、数51と数52から数53が得られる。
【数53】

【0100】
<第2−3.目標物のレンジ方向における真の速度と、予測速度とに差異がある場合>
実施の形態1で説明したように、目標物のレンジ方向の速度vは、a,a,aのうち、aにのみ含まれ、vを目標物の真のレンジ方向の速度、v’を目標物のレンジ方向の予測速度として、a’=v’と定義する。そして、参照関数における目標物のレンジ方向の速度は予測速度v’であり、受信信号における目標物のレンジ方向の速度は真の速度vであるとする。
すると、受信信号における相対距離R(t)及び参照関数における相対距離R(t)と、目標物がレンジ方向に移動していない場合におけるSARと目標物との相対距離R(t)とは、数54のように表せる。
【数54】

なお、ここでは、アジマス方向の速度は同じであるとする。特に、ここでは、簡単のため、目標物のアジマス方向の速度は0であるとし、数15に示すaは、a=v/Rとする。
【0101】
図12は、数54に示す相対距離R(t)、相対距離R(t)、相対距離R(t)を示す図である。
図12に示すように、相対距離R(t)、相対距離R(t)、相対距離R(t)の底の位置がずれる。なお、相対距離R(t)と相対距離R(t)とのR(t)軸におけるずれ、すなわちレンジ方向におけるずれは定数であり、時刻tから独立しているため重要ではない。そこで、ここでは、目標物のレンジ方向における真の速度と、予測速度との差異は、相対距離R(t)と相対距離R(t)との時刻軸におけるずれ、すなわちアジマス方向におけるずれのみを引き起こすものとして考える。すると、時刻軸におけるずれ量Δtは、数55である。
【数55】

【0102】
相対距離R(t)に数55に示すa’を代入すると、数56が得られる。
【数56】

すると、数55に示す相対距離R(t)から、数34に示す参照関数Vazは、数57に示す参照関数Vvrgに変換できる。
【数57】

【0103】
以降、第2−1の説明と同じ流れで計算を進める。
まず、数57に示す参照関数Vvrgの複素共役を参照関数Vとし、数17に示す受信信号Vを受信信号Vとして、数11に示すマッチドフィルタに代入すると、数58となる。
【数58】

【0104】
数58における積分部分D(数59)は、積分部分A,B,Cと同様の理由から、0≧t+Δtと0<t+Δtとの2つの場合に分けて計算される。
【数59】

0≧t+Δtの場合、数59は数60のように計算される。
【数60】

一方、0<t+Δtの場合、数59は数61のように計算される。
【数61】

つまり、0≧t+Δtと0<t+Δtとのどちらの場合も結果は同じになる。したがって、数58を数62のように変換できる。
【数62】

【0105】
“τ−|t+Δt|”は、レンジ圧縮における説明で述べた“τ−|t−t|”と同様の物理的な解釈ができる。したがって、“τ−|t+Δt|”における“t”を“t”とすることで、数62を数63のように変換できる。
【数63】

さらに、絶対値をとると数63を数64のように変換できる。
【数64】

そして、t=0とすると、数64を数65のように変換できる。
【数65】

【0106】
数65において、数66に示す部分(E)によって振幅値の最大値の位置が決定される。しかし、振幅値の最大値の位置はここでは重要ではないので、(E)を1として数65を簡単化すると数67が得られる。
【数66】

【数67】

【0107】
<第3.まとめ>
数68であるため、第2−2の結果である数48から数20が得られる。
【数68】

【0108】
また、数69であるため、第2−3の結果である数67から数22が得られる。
【数69】

【0109】
次に、実施の形態における目標物速度特定装置1のハードウェア構成について説明する。
図13は、目標物速度特定装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。
図13に示すように、目標物速度特定装置1は、プログラムを実行するCPU911(Central・Processing・Unit、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、プロセッサともいう)を備えている。CPU911は、バス912を介してROM913、RAM914、LCD901(Liquid Crystal Display)、キーボード902(K/B)、通信ボード915、磁気ディスク装置920と接続され、これらのハードウェアデバイスを制御する。磁気ディスク装置920(固定ディスク装置)の代わりに、光ディスク装置、メモリカード読み書き装置などの記憶装置でもよい。磁気ディスク装置920は、所定の固定ディスクインタフェースを介して接続される。
【0110】
磁気ディスク装置920又はROM913などには、オペレーティングシステム921(OS)、ウィンドウシステム922、プログラム群923、ファイル群924が記憶されている。プログラム群923のプログラムは、CPU911、オペレーティングシステム921、ウィンドウシステム922により実行される。
【0111】
プログラム群923には、上記の説明において「データ入力部2」、「刻み幅特定部3」、「予測速度入力部4」、「参照関数生成部5」、「アジマス圧縮処理部6」、「振幅値算出部7」、「速度特定部8」等として説明した機能を実行するソフトウェアやプログラムやその他のプログラムが記憶されている。プログラムは、CPU911により読み出され実行される。
ファイル群924には、上記の説明において「レンジ圧縮後データ」、「刻み幅」、「予測速度」、「参照関数」、「アジマス圧縮後データ」、「振幅値」等情報やデータや信号値や変数値やパラメータが、「データベース」の各項目として記憶される。「データベース」は、ディスクやメモリなどの記録媒体に記憶される。ディスクやメモリなどの記憶媒体に記憶された情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、読み書き回路を介してCPU911によりメインメモリやキャッシュメモリに読み出され、抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示などのCPU911の動作に用いられる。抽出・検索・参照・比較・演算・計算・処理・出力・印刷・表示のCPU911の動作の間、情報やデータや信号値や変数値やパラメータは、メインメモリやキャッシュメモリやバッファメモリに一時的に記憶される。
【0112】
また、上記の説明におけるフローチャートの矢印の部分は主としてデータや信号の入出力を示し、データや信号値は、RAM914のメモリ、その他光ディスク等の記録媒体やICチップに記録される。また、データや信号は、バス912や信号線やケーブルその他の伝送媒体や電波によりオンライン伝送される。
また、上記の説明において「〜部」として説明するものは、「〜回路」、「〜装置」、「〜機器」、「〜手段」、「〜機能」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。また、「〜装置」として説明するものは、「〜回路」、「〜機器」、「〜手段」、「〜機能」であってもよく、また、「〜ステップ」、「〜手順」、「〜処理」であってもよい。さらに、「〜処理」として説明するものは「〜ステップ」であっても構わない。すなわち、「〜部」として説明するものは、ROM913に記憶されたファームウェアで実現されていても構わない。或いは、ソフトウェアのみ、或いは、素子・デバイス・基板・配線などのハードウェアのみ、或いは、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせ、さらには、ファームウェアとの組み合わせで実施されても構わない。ファームウェアとソフトウェアは、プログラムとして、ROM913等の記録媒体に記憶される。プログラムはCPU911により読み出され、CPU911により実行される。すなわち、プログラムは、上記で述べた「〜部」としてコンピュータ等を機能させるものである。あるいは、上記で述べた「〜部」の手順や方法をコンピュータ等に実行させるものである。
【符号の説明】
【0113】
1 目標物速度特定装置、2 データ入力部、3 刻み幅特定部、4 予測速度入力部、5 参照関数生成部、6 アジマス圧縮処理部、7 振幅値算出部、8 速度特定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SAR(Synthetic Aperture Radar)により観測された目標物の速度を特定する目標物速度特定装置であり、
SARを搭載したSAR搭載機の速度v、合成開口中心でのSARと目標物との距離R、SARから放射される電波の波長λ、合成開口時間τという観測条件でSARが観測した目標物のデータを入力するデータ入力部と、
SAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τと目標物のアジマス方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvazの関数に、前記データ入力部が入力したデータの観測条件であるSAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τとを入力し、予測速度v’に対応する振幅値Vvazを計算して、前記振幅値Vvazが所定の値以上になるアジマス方向の予測速度v’の範囲を処理装置により特定し、特定した範囲の速度幅以下の速度幅を刻み幅Δva1とする刻み幅特定部と、
前記刻み幅特定部が特定した刻み幅Δva1を用いて、目標物のアジマス方向の速度を処理装置により特定する特定処理実行部と
を備えることを特徴とする目標物速度特定装置。
【請求項2】
前記刻み幅特定部は、数1に示す振幅値Vvazの関数に、前記データ入力部が入力したデータの観測条件であるSAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τとを入力するとともに、目標物の速度vとしてある値を入力し、予測速度v’に対応する振幅値Vvazを計算する
ことを特徴とする請求項1に記載の目標物速度特定装置。
【数1】

【請求項3】
前記刻み幅特定部は、数1に示す関数に基づき、アジマス方向の予測速度毎に振幅値Vvazの値をプロットして得られるグラフにおいて、頂における振幅値Vvazが2番目に大きくなる山の前記頂における振幅値Vvazよりも大きい値を前記所定の値とする
ことを特徴とする請求項2に記載の目標物速度特定装置。
【請求項4】
前記データ入力部は、目標物のデータとして、レンジ圧縮されたレンジ圧縮後データを入力し、
前記特定処理実行部は、
目標物について、レンジ方向の予測速度を入力するとともに、前記刻み幅特定部が特定した刻み幅Δva1毎にアジマス方向の予測速度を入力する予測速度入力部と、
前記予測速度入力部が入力したレンジ方向の予測速度及び複数のアジマス方向の予測速度に基づき、前記アジマス方向の予測速度毎に、前記SARと前記目標物との相対距離から得られる参照関数を処理装置により生成することで、複数の参照関数を生成する参照関数生成部と、
前記参照関数生成部が生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記データ入力部が入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを処理装置により生成するアジマス圧縮処理部と、
前記アジマス圧縮処理部が生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を処理装置により算出する振幅値算出部と、
前記振幅値算出部が算出した前記目標物の画像の振幅値が最大のアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を、前記参照関数生成部が生成したときに使用したアジマス方向の予測速度の前後Δva1/2の範囲内に目標物のアジマス方向の速度が入ると処理装置により特定する速度特定部と
を備えることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の目標物速度特定装置。
【請求項5】
前記予測速度入力部は、前記速度特定部が特定した速度の前後、前記刻み幅Δva1/2の速度範囲について、前記刻み幅Δva1よりも狭い刻み幅Δva2毎にアジマス方向の予測速度を新たに入力し、
前記参照関数生成部は、前記レンジ方向の予測速度と、前記予測速度入力部が新たに入力した複数のアジマス方向の予測速度に基づき、前記アジマス方向の予測速度毎に、前記相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を新たに生成し、
前記アジマス圧縮処理部は、前記参照関数生成部が新たに生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを新たに生成し、
前記振幅値算出部は、前記アジマス圧縮処理部が新たに生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を新たに算出し、
前記速度特定部は、前記振幅値算出部が新たに算出した前記目標物の画像の振幅値が最大のアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を参照関数を、前記参照関数生成部が生成したときに使用したアジマス方向の予測速度を目標物のアジマス方向の速度として特定する
ことを特徴とする請求項4に記載の目標物速度特定装置。
【請求項6】
前記予測速度入力部は、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ新たに入力し、
前記参照関数生成部は、前記予測速度入力部が新たに入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記速度特定部が特定した目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を新たに生成し、
前記アジマス圧縮処理部は、前記参照関数生成部が新たに生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを新たに生成し、
前記振幅値算出部は、前記アジマス圧縮処理部が新たに生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を算出し、
前記速度特定部は、前記予測速度入力部が入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出部が各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とに基づき、SAR搭載機の速度vと距離Rと合成開口時間τと目標物のレンジ方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvrgの関数を用いて、目標物のレンジ方向速度を特定する
ことを特徴とする請求項5に記載の目標物速度特定装置。
【請求項7】
前記速度特定部は、数2に示す振幅値Vvrgの関数を用いて目標物のレンジ方向速度を特定する
ことを特徴とする請求項6に記載の目標物速度特定装置。
【数2】

【請求項8】
前記予測速度入力部は、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度vr1’と速い速度vr2’とを入力し、
前記速度特定部は、前記予測速度入力部が入力したレンジ方向の予測速度vr1’及びvr2’と、レンジ方向の予測速度vr1’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pと、レンジ方向の予測速度vr2’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pとを数3に代入することにより、目標物のレンジ方向の速度vを特定する
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の目標物速度特定装置。
【数3】

【請求項9】
前記予測速度入力部は、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも2つずつ入力し、
前記速度特定部は、目標物のレンジ方向の速度vより遅い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=a+a(ここで、a,aは定数)を算出し、目標物のレンジ方向の速度vより速い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=b+b(ここで、b,bは定数)を算出し、一次関数Vvrg=a+aと一次関数Vvrg=b+bとからレンジ方向の速度vを特定する
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の目標物速度特定装置。
【請求項10】
前記予測速度入力部は、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ含む少なくとも3つのレンジ方向の予測速度を新たに入力し、
前記参照関数生成部は、前記予測速度入力部が新たに入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記速度特定部が特定した目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を新たに生成し、
前記アジマス圧縮処理部は、前記参照関数生成部が新たに生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを新たに生成し、
前記振幅値算出部は、前記アジマス圧縮処理部が新たに生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を算出し、
前記速度特定部は、前記少なくとも3つのレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出部が各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とから所定の方法により2次関数Vvrg=c+c+c(ここで、c,c,cは定数)を算出して、その2次曲線の底におけるレンジ方向の速度を、レンジ方向の速度vとして特定する
ことを特徴とする請求項5に記載の目標物速度特定装置。
【請求項11】
SAR(Synthetic Aperture Radar)により観測された目標物の速度を特定する目標物速度特定装置であり、
SARを搭載したSAR搭載機の速度v、合成開口中心でのSARと目標物との距離R、合成開口時間τでSARが観測した目標物のデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力するデータ入力部と、
レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ入力する予測速度入力部と、
前記予測速度入力部が入力した複数のレンジ方向の予測速度と、目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記SAR搭載機の速度vと目標物の速度とに基づき表される前記SARと前記目標物との相対距離から得られる参照関数を処理装置により生成することで、複数の参照関数を生成する参照関数生成部と、
前記参照関数生成部が生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記データ入力部が入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを処理装置により生成するアジマス圧縮処理部と、
前記アジマス圧縮処理部が生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を処理装置により算出する振幅値算出部と、
前記予測速度入力部が入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出部が各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とに基づき、SAR搭載機の速度vと距離Rと合成開口時間τと目標物のレンジ方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvrgの関数を用いて、目標物のレンジ方向速度を特定する速度特定部と
を備えることを特徴とする目標物速度特定装置。
【請求項12】
前記速度特定部は、数4に示す振幅値Vvrgの関数を用いて目標物のレンジ方向速度を特定する
ことを特徴とする請求項11に記載の目標物速度特定装置。
【数4】

【請求項13】
前記予測速度入力部は、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度vr1’と速い速度vr2’とを入力し、
前記速度特定部は、前記予測速度入力部が入力したレンジ方向の予測速度vr1’及びvr2’と、レンジ方向の予測速度vr1’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pと、レンジ方向の予測速度vr2’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pとを数5に代入することにより、目標物のレンジ方向の速度vを特定することを特徴とする請求項11又は12に記載の目標物速度特定装置。
【数5】

【請求項14】
前記予測速度入力部は、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも2つずつ入力し、
前記速度特定部は、目標物のレンジ方向の速度vより遅い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=a+a(ここで、a,aは定数)を算出し、目標物のレンジ方向の速度vより速い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=b+b(ここで、b,bは定数)を算出し、一次関数Vvrg=a+aと一次関数Vvrg=b+bとからレンジ方向の速度vを特定する
ことを特徴とする請求項11又は12に記載の目標物速度特定装置。
【請求項15】
SAR(Synthetic Aperture Radar)により観測された目標物の速度を特定する目標物速度特定装置であり、
SARが観測した目標物のデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力するデータ入力部と、
レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ含む少なくとも3つの予測速度を入力する予測速度入力部と、
前記予測速度入力部が入力した複数のレンジ方向の予測速度と、目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記SAR搭載機の速度vと目標物の速度とに基づき表される前記SARと前記目標物との相対距離から得られる参照関数を処理装置により生成することで、複数の参照関数を生成する参照関数生成部と、
前記参照関数生成部が生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記データ入力部が入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを処理装置により生成するアジマス圧縮処理部と、
前記アジマス圧縮処理部が生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を処理装置により算出する振幅値算出部と、
前記予測速度入力部が入力した前記少なくとも3つのレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出部が各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とから所定の方法により2次関数Vvrg=c+c+c(ここで、c,c,cは定数)を算出して、その2次曲線の底におけるレンジ方向の速度を、レンジ方向の速度vとして処理装置により特定する速度特定部と
を備えることを特徴とする目標物速度特定装置。
【請求項16】
SAR(Synthetic Aperture Radar)により観測された目標物の速度を特定する目標物速度特定プログラムであり、
SARを搭載したSAR搭載機の速度v、合成開口中心でのSARと目標物との距離R、SARから放射される電波の波長λ、合成開口時間τという観測条件でSARが観測した目標物のデータを入力するデータ入力処理と、
SAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τと目標物のアジマス方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvazの関数に、前記データ入力処理で入力したデータの観測条件であるSAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τとを入力し、予測速度v’に対応する振幅値Vvazを計算して、前記振幅値Vvazが所定の値以上になるアジマス方向の予測速度v’の範囲を特定し、特定した範囲の速度幅以下の速度幅を刻み幅Δva1とする刻み幅特定処理と、
前記刻み幅特定処理で特定した刻み幅Δva1を用いて、目標物のアジマス方向の速度を特定する特定処理実行処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする目標物速度特定プログラム。
【請求項17】
前記刻み幅特定処理では、数6に示す振幅値Vvazの関数に、前記データ入力処理で入力したデータの観測条件であるSAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τとを入力するとともに、目標物の速度vとしてある値を入力し、予測速度v’に対応する振幅値Vvazを計算する
ことを特徴とする請求項16に記載の目標物速度特定プログラム。
【数6】

【請求項18】
前記刻み幅特定処理では、数6に示す関数に基づき、アジマス方向の予測速度毎に振幅値Vvazの値をプロットして得られるグラフにおいて、頂における振幅値Vvazが2番目に大きくなる山の前記頂における振幅値Vvazよりも大きい値を前記所定の値とする
ことを特徴とする請求項17に記載の目標物速度特定プログラム。
【請求項19】
前記データ入力処理では、目標物のデータとして、レンジ圧縮されたレンジ圧縮後データを入力し、
前記特定処理実行処理では、
目標物について、レンジ方向の予測速度を入力するとともに、前記刻み幅特定処理で特定した刻み幅Δva1毎にアジマス方向の予測速度を入力する予測速度入力処理と、
前記予測速度入力処理で入力したレンジ方向の予測速度及び複数のアジマス方向の予測速度に基づき、前記アジマス方向の予測速度毎に、前記SARと前記目標物との相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を生成する参照関数生成処理と、
前記参照関数生成処理で生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記データ入力処理で入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを生成するアジマス圧縮処理と、
前記アジマス圧縮処理で生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を算出する振幅値算出処理と、
前記振幅値算出処理で算出した前記目標物の画像の振幅値が最大のアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を、前記参照関数生成処理で生成したときに使用したアジマス方向の予測速度の前後Δva1/2の範囲内に目標物のアジマス方向の速度が入ると特定する速度特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする請求項16から18までのいずれかに記載の目標物速度特定プログラム。
【請求項20】
前記予測速度入力処理では、前記速度特定処理で特定した速度の前後、前記刻み幅Δva1/2の速度範囲について、前記刻み幅Δva1よりも狭い刻み幅Δva2毎にアジマス方向の予測速度を新たに入力し、
前記参照関数生成処理では、前記レンジ方向の予測速度と、前記予測速度入力処理で新たに入力した複数のアジマス方向の予測速度に基づき、前記アジマス方向の予測速度毎に、前記相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を新たに生成し、
前記アジマス圧縮処理では、前記参照関数生成処理で新たに生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを新たに生成し、
前記振幅値算出処理では、前記アジマス圧縮処理で新たに生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を新たに算出し、
前記速度特定処理では、前記振幅値算出処理で新たに算出した前記目標物の画像の振幅値が最大のアジマス圧縮後データを生成するために使用した参照関数を参照関数を、前記参照関数生成処理で生成したときに使用したアジマス方向の予測速度を目標物のアジマス方向の速度として特定する
ことを特徴とする請求項19に記載の目標物速度特定プログラム。
【請求項21】
前記予測速度入力処理では、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ新たに入力し、
前記参照関数生成処理では、前記予測速度入力処理で新たに入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記速度特定処理で特定した目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を新たに生成し、
前記アジマス圧縮処理では、前記参照関数生成処理で新たに生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを新たに生成し、
前記振幅値算出処理では、前記アジマス圧縮処理で新たに生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を算出し、
前記速度特定処理では、前記予測速度入力処理で入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出処理で各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とに基づき、SAR搭載機の速度vと距離Rと合成開口時間τと目標物のレンジ方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvrgの関数を用いて、目標物のレンジ方向速度を特定する
ことを特徴とする請求項20に記載の目標物速度特定プログラム。
【請求項22】
前記速度特定処理では、数7に示す振幅値Vvrgの関数を用いて目標物のレンジ方向速度を特定する
ことを特徴とする請求項21に記載の目標物速度特定プログラム。
【数7】

【請求項23】
前記予測速度入力処理では、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度vr1’と速い速度vr2’とを入力し、
前記速度特定処理では、前記予測速度入力処理で入力したレンジ方向の予測速度vr1’及びvr2’と、レンジ方向の予測速度vr1’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pと、レンジ方向の予測速度vr2’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pとを数8に代入することにより、目標物のレンジ方向の速度vを特定する
ことを特徴とする請求項21又は22に記載の目標物速度特定プログラム。
【数8】

【請求項24】
前記予測速度入力処理では、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも2つずつ入力し、
前記速度特定処理では、目標物のレンジ方向の速度vより遅い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=a+a(ここで、a,aは定数)を算出し、目標物のレンジ方向の速度vより速い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=b+b(ここで、b,bは定数)を算出し、一次関数Vvrg=a+aと一次関数Vvrg=b+bとからレンジ方向の速度vを特定する
ことを特徴とする請求項21又は22に記載の目標物速度特定プログラム。
【請求項25】
前記予測速度入力処理では、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ含む少なくとも3つのレンジ方向の予測速度を新たに入力し、
前記参照関数生成処理では、前記予測速度入力処理で新たに入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記速度特定処理で特定した目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を新たに生成し、
前記アジマス圧縮処理では、前記参照関数生成処理で新たに生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記レンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを新たに生成し、
前記振幅値算出処理では、前記アジマス圧縮処理で新たに生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を算出し、
前記速度特定処理では、前記少なくとも3つのレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出処理で各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とから所定の方法により2次関数Vvrg=c+c+c(ここで、c,c,cは定数)を算出して、その2次曲線の底におけるレンジ方向の速度を、レンジ方向の速度vとして特定する
ことを特徴とする請求項20に記載の目標物速度特定プログラム。
【請求項26】
SAR(Synthetic Aperture Radar)により観測された目標物の速度を特定する目標物速度特定プログラムであり、
SARを搭載したSAR搭載機の速度v、合成開口中心でのSARと目標物との距離R、合成開口時間τでSARが観測した目標物のデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力するデータ入力処理と、
レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ入力する予測速度入力処理と、
前記予測速度入力処理で入力した複数のレンジ方向の予測速度と、目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記SAR搭載機の速度vと目標物の速度とに基づき表される前記SARと前記目標物との相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を生成する参照関数生成処理と、
前記参照関数生成処理で生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記データ入力処理で入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを生成するアジマス圧縮処理と、
前記アジマス圧縮処理で生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を算出する振幅値算出処理と、
前記予測速度入力処理で入力した複数のレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出処理で各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とに基づき、SAR搭載機の速度vと距離Rと合成開口時間τと目標物のレンジ方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvrgの関数を用いて、目標物のレンジ方向速度を特定する速度特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする目標物速度特定プログラム。
【請求項27】
前記速度特定処理では、数9に示す振幅値Vvrgの関数を用いて目標物のレンジ方向速度を特定する
ことを特徴とする請求項26に記載の目標物速度特定プログラム。
【数9】

【請求項28】
前記予測速度入力処理では、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度vr1’と速い速度vr2’とを入力し、
前記速度特定処理では、前記予測速度入力処理で入力したレンジ方向の予測速度vr1’及びvr2’と、レンジ方向の予測速度vr1’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pと、レンジ方向の予測速度vr2’に基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値Pとを数10に代入することにより、目標物のレンジ方向の速度vを特定することを特徴とする請求項26又は27に記載の目標物速度特定プログラム。
【数10】

【請求項29】
前記予測速度入力処理では、レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも2つずつ入力し、
前記速度特定処理では、目標物のレンジ方向の速度vより遅い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=a+a(ここで、a,aは定数)を算出し、目標物のレンジ方向の速度vより速い少なくとも2つのレンジ方向の予測速度と、その少なくとも2つのレンジ方向の予測速度それぞれに基づき生成された参照関数により生成されたアジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値とから最小二乗法により一次関数Vvrg=b+b(ここで、b,bは定数)を算出し、一次関数Vvrg=a+aと一次関数Vvrg=b+bとからレンジ方向の速度vを特定する
ことを特徴とする請求項26又は27に記載の目標物速度特定プログラム。
【請求項30】
SAR(Synthetic Aperture Radar)により観測された目標物の速度を特定する目標物速度特定プログラムであり、
SARが観測した目標物のデータについてレンジ圧縮したレンジ圧縮後データを入力するデータ入力処理と、
レンジ方向の予測速度として、目標物のレンジ方向の速度vより遅い速度と速い速度とをそれぞれ少なくとも1つずつ含む少なくとも3つの予測速度を入力する予測速度入力処理と、
前記予測速度入力処理で入力した複数のレンジ方向の予測速度と、目標物のアジマス方向の速度とに基づき、前記レンジ方向の予測速度毎に、前記SAR搭載機の速度vと目標物の速度とに基づき表される前記SARと前記目標物との相対距離から得られる参照関数を生成することで、複数の参照関数を生成する参照関数生成処理と、
前記参照関数生成処理で生成した複数の参照関数の各参照関数に基づき、前記データ入力処理で入力したレンジ圧縮後データをアジマス圧縮し複数のアジマス圧縮後データを生成するアジマス圧縮処理と、
前記アジマス圧縮処理で生成した複数のアジマス圧縮後データの各アジマス圧縮後データにおける目標物の画像の振幅値を算出する振幅値算出処理と、
前記予測速度入力処理で入力した前記少なくとも3つのレンジ方向の予測速度と、前記振幅値算出処理で各アジマス圧縮後データから算出した振幅値とから所定の方法により2次関数Vvrg=c+c+c(ここで、c,c,cは定数)を算出して、その2次曲線の底におけるレンジ方向の速度を、レンジ方向の速度vとして特定する速度特定処理と
をコンピュータに実行させることを特徴とする目標物速度特定プログラム。
【請求項31】
SAR(Synthetic Aperture Radar)により観測された目標物の速度を特定する目標物速度特定方法であり、
SARを搭載したSAR搭載機の速度v、合成開口中心でのSARと目標物との距離R、SARから放射される電波の波長λ、合成開口時間τという観測条件でSARが観測した目標物のデータを入力するデータ入力工程と、
SAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τと目標物のアジマス方向の予測速度v’とを用いて表された振幅値Vvazの関数に、前記データ入力工程で入力したデータの観測条件であるSAR搭載機の速度vと距離Rと電波の波長λと合成開口時間τとを入力し、予測速度v’に対応する振幅値Vvazを計算して、前記振幅値Vvazが所定の値以上になるアジマス方向の予測速度v’の範囲を処理装置により特定し、特定した範囲の速度幅以下の速度幅を刻み幅Δva1とする刻み幅特定工程と、
前記刻み幅特定工程で特定した刻み幅Δva1を用いて、目標物のアジマス方向の速度を処理装置により特定する特定処理実行工程と
を備えることを特徴とする目標物速度特定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−63188(P2012−63188A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206305(P2010−206305)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【出願人】(591102095)三菱スペース・ソフトウエア株式会社 (148)
【Fターム(参考)】