説明

目標類識別装置

【課題】目標信号データのクラッタ推定精度に左右されずに、所望の類別性能を維持する目標類識別装置を提供する。
【解決手段】異クラッタ条件の教師信号データを用いてクラッタ推定精度別の辞書データを生成するクラッタ推定精度別辞書生成部2と、目標信号データのクラッタ推定精度に応じてクラッタ推定精度別の辞書データから照合対象となる辞書データを選択するクラッタ推定精度別辞書選択部5と、クラッタ推定精度別辞書選択部5により選択された照合対象辞書データに基づいて目標信号データの種類を判定する種類判定部6とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種類未知の目標からの反射信号データを対象に、目標種別を判定する目標類識別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来行われてきた目標類識別方法としては、事前に得られている各機種の教師信号データから特徴量辞書を生成し、目標信号データと辞書との照合により、目標種類を判定する。教師信号データは、シミュレーション信号データ(諸元既知)もしくは実信号データ(一部の諸元未知)のいずれかとする。
【0003】
下記非特許文献1に記載の手法では、目標の存在領域のクラッタ別の辞書を用意し、種類判別対象である目標信号データのクラッタ推定値に基づいて照合対象となる辞書を選択し、機種判定を行っている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】L.Novak“Effectsof Various Image Enhancement Techniques on FOPEN Data”,Radar Conference,2001. Proceedings of the 2001 IEEE Digital Object Identifier
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の目標類識別装置は以上のように構成されていたので、多様なクラッタパターンに対応するためには、クラッタの性質やレベルに応じたクラッタのグループ化が必要となるが、クラッタの連続性の有無や分布範囲によっては、グループ化が難しく、結果として膨大な数の辞書が必要となる。その場合、実運用時のデータ蓄積量の限界や、照合時の辞書選択等の問題が発生し得る。
【0006】
また、クラッタのグループ化がある程度可能であったとしても、目標信号データのクラッタ推定値の精度によっては、辞書の選択が困難な状況も発生し得るという課題があった。
【0007】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、目標信号データのクラッタ推定精度に左右されずに、所望の類別性能を維持する目標類識別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目標類識別装置は、異クラッタ条件の教師信号データを用いてクラッタ推定精度別の辞書データを生成するクラッタ推定精度別辞書生成部と、目標信号データのクラッタ推定精度に応じてクラッタ推定精度別の辞書データから照合対象となる辞書データを選択するクラッタ推定精度別辞書選択部と、クラッタ推定精度別辞書選択部により選択された照合対象辞書データに基づいて目標信号データの種類を判定する種類判定部とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、クラッタ推定精度別辞書生成部によりクラッタ推定精度別の辞書データを生成し、クラッタ推定精度別辞書選択部により目標信号データのクラッタ推定精度に応じてクラッタ推定精度別の辞書データから照合対象となる辞書データを選択することにより、目標信号データのクラッタ推定精度に左右されずに、所望の類別性能を維持できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1による目標類識別装置の構成を示すブロック図である。
【図2】クラッタ推定精度別辞書生成部の処理を示すフローチャートである。
【図3】レンジプロフィールの一例を示す特性図である。
【図4】この発明の実施の形態2による目標類識別装置の構成を示すブロック図である。
【図5】特徴量値の出現頻度分布(重複度高)を示す特性図である。
【図6】特徴量値の出現頻度分布(重複度低)を示す特性図である。
【図7】サポートベクターマシンによる類別平面算出例を示す特性図である。
【図8】この発明の実施の形態3による目標類識別装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による目標類識別装置の構成を示すブロック図である。図1において、目標類識別装置は、教師信号データファイル1〜1と、クラッタ推定精度別辞書生成部2と、辞書データファイル3と、目標信号データファイル4と、クラッタ推定精度別辞書選択部5と、種類判定部6と、種類判定結果ファイル7とを備えている。
【0012】
なお、図1には示されていないが、目標信号データファイル4の入力側には、信号処理装置が接続されている。
【0013】
信号処理装置は、目標からの反射信号から目標信号データTを算出し、目標信号データファイル4に格納する。教師信号データファイル1〜1は、事前に観測され、計算機等に蓄積されている種類既知の目標信号データ、もしくは計算機シミュレーションで生成された各目標の信号データ群からなる教師信号データ群L1〜LNを格納する。種類判定結果ファイル7は、目標信号データTに対する種類判定結果Rを格納するものとする。なお、教師信号データ群L1〜LNは、クラッタ値がそれぞれクラッタ1〜Nと異なる。
【0014】
クラッタ推定精度別辞書生成部2は、教師信号データファイル1〜1からの教師信号データ群L1〜LNを入力情報とし、教師信号データ群L1〜LNに対してクラッタ推定精度に応じて、異なる辞書を生成し、生成したクラッタ推定精度別辞書群を辞書データDとし、辞書データファイル3に格納する。
【0015】
クラッタ推定精度別辞書選択部5は、辞書データファイル3に格納された辞書データDに対し、目標信号データファイル4に格納された目標信号データTのクラッタ推定精度に基づいて辞書の選択を行い、選択された辞書を照合対象辞書データSDとする。
【0016】
種類判定部6は、クラッタ推定精度別辞書選択部5から出力される照合対象辞書データSDにより、目標信号データファイル4に格納された目標信号データTの種類判定を行い、種類判定結果R(全体の出力情報)を生成し、種類判定結果ファイル7に格納する。
【0017】
図1の例では、目標類識別装置がコンピュータで構成されている場合を想定している。
この場合、クラッタ推定精度別辞書生成部2、クラッタ推定精度別辞書選択部5、および種類判定部6の処理内容が記述されているプログラムを当該コンピュータのメモリに格納し、また、教師信号データファイル1〜1、辞書データファイル3、目標信号データファイル4、および種類判定結果ファイル7を当該コンピュータの外部記憶装置に記憶し、当該コンピュータのCPUがメモリに格納されているプログラムを実行すると共に、CPUおよび外部記憶装置間で各種データを入出力することにより、教師信号データファイル1〜1、クラッタ推定精度別辞書生成部2、辞書データファイル3、目標信号データファイル4、クラッタ推定精度別辞書選択部5、種類判定部6、および種類判定結果ファイル7の機能を実現するようにする。
【0018】
次に動作について説明する。
図2はクラッタ推定精度別辞書生成部の処理を示すフローチャートである。図2において、まず、クラッタ推定精度別辞書生成部2は、クラッタ値が異なる同機種の教師信号データ群LiとLj(iとjは1〜Nの異なる整数)を合わせて辞書生成対象信号データ群とし、これらを対象として、辞書を生成する(ST1)。辞書の生成方法としては、辞書生成対象信号データ群の中から任意の信号データを相関算出対象信号データとして抽出し(ST2)、残りの全辞書生成対象信号データとの組み合わせごとに相関係数を算出する(ST3)。
【0019】
相関係数の算出は、たとえばレンジプロフィール等のレーダからの距離(レンジ)を横軸、目標から反射した信号の強さ(振幅値)を縦軸とした信号データであれば、辞書生成対象信号データを距離方向にずらして重ね合わせながら、辞書生成対象信号データとの相関係数を算出し、最も相関係数が高い位置での値を求める。図3にレンジプロフィールの一例を示す。各組み合わせで算出された相関係数の総和および平均から相関算出対象信号データの相関評価値を求め(ST4)、この処理を全辞書生成対象信号データが相関算出対象信号データとなるよう繰り返す(ST5)。
【0020】
最終的に、全体の相関係数が最も高くなる相関算出対象信号データを選択して、該当機種の該当するクラッタの組み合わせでの辞書信号データとする(ST6)。これらの処理を、全機種の全クラッタの組み合わせに対して行い、生成された全辞書信号データを辞書データDとする(ST7,ST8)。
【0021】
なお、辞書データDには、単一のクラッタ値iの同機種の教師データ群Liのみで生成した辞書信号データも含まれる。
【0022】
続いて、クラッタ推定精度別辞書選択部5では、目標信号データTの観測エリア、観測日時等の観測諸元や、グランドトゥルース情報等に基づき、目標存在領域のクラッタパラメータを、過去の類似事例のクラッタマップ等から獲得し(候補が複数ある場合は複数獲得)、同様に、辞書データDの各クラッタ組み合わせ別辞書信号データのクラッタパラメータを獲得して、目標存在領域のクラッタパラメータと各辞書信号データのクラッタパラメータの類似度を算出し、類似度からクラッタ推定精度CEを求める。ここでクラッタパラメータの具体例としては、背景領域の凹凸の度合い等が、確率的分布で近似可能とした場合に、確率的分布式を表す行列の各要素が各クラッタパラメータとなる。
【0023】
N要素のクラッタパラメータからなる場合、クラッタパラメータ空間はN次元となり、例えば、辞書信号データと目標信号データのクラッタパラメータ間のユークリッド距離の逆数を類似度とする。なお、辞書信号データは、単独のクラッタ値の辞書生成対象信号データから選択されている場合を除くと、通常は複数のクラッタ値の組み合わせからなる辞書生成対象信号データの中から選択されているため、同一要素を示すクラッタパラメータ値は複数存在する。そこで、それらの最小値と最大値からなる範囲をクラッタパラメータ辞書範囲とし、目標存在領域のクラッタパラメータ値がクラッタパラメータ辞書範囲内に入る場合は、類似度高判定(たとえば最大値である1に設定)とする。また、各クラッタパラメータ辞書範囲の広さを辞書選択信頼度SSとする。辞書範囲が広い方が、辞書選択信頼度は高くなる。最後に、各辞書信号データと目標存在領域のクラッタパラメータの類似度を、各辞書信号データの推定精度とする。
【0024】
照合先辞書信号データの選択方法としては、まず、クラッタ推定精度が最も高い辞書信号データを選択候補とする。事前に設定したしきい値(推定精度しきい値1)以上の推定精度を持つ辞書信号データが存在する場合は、そのまま選択候補の辞書信号データを照合先辞書信号データとして選択する。しきい値以上の辞書信号データが存在しない場合は、推定精度低とみなし、推定精度が事前に設定したしきい値(推定精度しきい値2)以上の辞書信号データの中で、最も辞書選択信頼度が高い辞書信号データを照合先辞書信号データとして選択する。全機種に対し照合先辞書信号データの選択を行い、選択された照合先辞書信号データ群を照合対象辞書データSDとする。
【0025】
最後に、種類判定部6では、目標信号データTと各機種の照合対象辞書データSDとの照合により種類判定を行う。照合方法としては、たとえばレンジプロフィール等の距離方向を横軸、振幅値を縦軸とした信号データであれば、目標信号データを距離方向にずらして重ね合わせながら、照合先辞書信号データとの相関係数を算出し、最も相関係数が高い位置での相関係数を求め、該当機種の辞書との相関係数とする。全機種の辞書との相関係数のうち、最も高い相関係数をとる機種を選択する。
【0026】
さらに、選択された機種の相関係数が、事前に設定された種類判定しきい値Sr以上であれば、該当機種と判定し、該当機種名を種類判定結果Rとして出力するとともに、種類判定結果Rを種類判定結果ファイル7に格納する。なお、相関係数が最大の機種が複数存在する場合は、それらすべての機種名を種類判定結果Rとし、また、最大の相関係数をとる機種の相関係数がしきい値Sr以下であれば、該当機種なしを種類判定結果Rとする。
【0027】
なお、種類判定しきい値Srは、たとえば事前に得られている種類既知の目標信号データの該当する辞書との相関係数の分布状況に基づき設定する。
【0028】
以上のように、実施の形態1によれば、クラッタ推定精度別辞書生成部2において、クラッタ推定精度別に類識別のための辞書を用意し、クラッタ推定精度別辞書選択部5でクラッタ推定精度に合わせた辞書を選択することにより、目標信号データのクラッタ推定精度に左右されずに、所望の類別性能を維持できる。
【0029】
実施の形態2.
なお、前記実施の形態1では、クラッタ推定精度別辞書生成部2において、辞書生成対象の信号データ群間の相関係数から辞書となる信号データを選択したが、クラッタ推定精度別の、類識別に用いる特徴量の評価結果に基づいて特徴量を選択して、辞書の生成を行ってもよい。
【0030】
図2はこの発明の実施の形態2による目標類識別装置の構成を示すブロック図である。図2において、目標類識別装置は、図1の実施の形態1同様、教師信号データファイル1〜1と、クラッタ推定精度別辞書生成部2と、辞書データファイル3と、目標信号データファイル4と、クラッタ推定精度別辞書選択部5と、種類判定部6と、種類判定結果ファイル7とを備えている。
【0031】
さらに、クラッタ推定精度別辞書生成部2は、特徴量評価部21と、特徴量選択部22と、辞書生成部23とを備えている。
【0032】
次に動作について説明する。
クラッタ推定精度別辞書生成部2を構成する特徴量評価部21では、クラッタ値が異なる同機種の教師信号データ群LiとLj(iとjは1〜Nの異なる整数)を用いて、特徴量の評価を行い、特徴量評価結果FEとする。
【0033】
特徴量の評価方法としては、クラッタ値が異なる同機種の教師信号データ群LiとLj(iとjは1〜Nの異なる整数)が混在するデータ群を該当機種の評価対象データとして、全2機種間の組み合わせで、各特徴量の類別における重要度を評価し、特徴量評価結果FEとする。
【0034】
特徴量評価の第一の方法としては、評価対象データの2機種間の組み合わせでの特徴量値の出現頻度分布を解析し、異クラッタ同機種間での分布の重複が起きている特徴量を重要度高とし、それ以外は重要度低とする。図5および図6に出現頻度分布図の一例を示す。図5が分離の重複度高の例、図6が分離の重複度低の例である。横軸が特徴量値、縦軸が出現頻度を表す。‘*’の点がクラッタ1のデータ、‘○’の点がクラッタ2のデータを表す。重要度の定義方法としては、たとえば、異クラッタ同機種間での、各クラッタにおいて、最大頻度をとる特徴量値を中心に、全データの8割のデータが存在する特徴量値範囲を決定し、異クラッタ間での特徴量値範囲の重複範囲を求め、それらの重複範囲に存在する各クラッタのデータを重複データとし、全評価対象データに対する重複データ数の割合で定義する。
【0035】
特徴量評価の第二の方法としては、評価対象データを教師データとした教師付き学習を行い、学習で得られた結果に基づき、各特徴量の類別への重要度を評価する。具体的には、たとえば学習結果として、類別平面の垂線ベクトル(ベクトルの次元は学習に適用した特徴量数と同数で、1対1の対応関係にある)が得られた場合に、垂線ベクトルは類別平面を定義するベクトルであることから、垂線ベクトルの各要素の絶対値を、各特徴量の類別への貢献の度合いを表す値として、各特徴量の重要度とする。教師付き学習手法としては、類別クラス間の境界を表す類別平面を決定する手法の一つであるサポートベクターマシン等を適用する。図7は、サポートベクターマシンで算出される類別平面と、類別平面を定義する垂線ベクトルを2次元平面で示した図である。斜線で塗られた丸がクラス1のデータ、白丸がクラス2のデータ、点線が類別平面(2次元上なので線)、矢印が類別平面を定義する法線ベクトルを表す。
【0036】
次に特徴量選択部22では、特徴量評価結果FEに基づき、該当機種間の該当するクラッタの組み合わせで適用する特徴量を選択し、選択された特徴量の情報を特徴量選択情報fselとする。特徴量の選択方法としては、たとえば、各特徴量の重要度が、事前に設定されているしきい値以上の場合に選択対象とする。
【0037】
さらに、辞書生成部23では、特徴量選択情報fselを用いて、該当機種間の該当するクラッタの組み合わせの評価対象データを対象に、辞書の生成を行い、辞書データDとする。
【0038】
特徴量選択情報に基づく辞書の生成方法としては、選択された特徴量のみを用いて学習を行い、得られた学習結果を辞書とする。ここでいう辞書とは、類別のための類別平面等が該当する。
【0039】
以上のように、実施の形態2によれば、特徴量評価部21において、クラッタ値が異なる教師データが混在する状態で特徴量の評価を行うことにより、教師信号データと目標信号データ間でクラッタ差がある場合でも、クラッタの変動の影響を受けにくい特徴量の選択が行われ、異クラッタ環境で適用可能な辞書が生成可能になる。
【0040】
逆に、教師信号データと目標信号データ間のクラッタ差が小さい場合は、クラッタ環境がある程度特定される条件下で、適用可能な特徴量を選択して、辞書を生成することにより、より良好な類別性能を実現可能になる。
【0041】
実施の形態3.
なお、前記実施の形態1、2(図1、図4)では、クラッタ推定精度別辞書選択部5において、過去の類似事例から抽出した目標存在領域のクラッタ予想値を目標信号のクラッタ推定値としたが、背景領域の被覆分類により目標信号データのクラッタを推定してもよい。
【0042】
図8はこの発明の実施の形態3による目標類識別装置の構成を示すブロック図である。図3において、目標類識別装置は、図1の実施の形態1同様、教師信号データファイル1〜1と、クラッタ推定精度別辞書生成部2と、辞書データファイル3と、目標信号データファイル4と、クラッタ推定精度別辞書選択部5と、種類判定部6と、種類判定結果ファイル7とを備えている。
【0043】
さらに、クラッタ推定精度別辞書選択部5は、クラッタ推定部51と、クラッタ推定精度評価部52と、辞書データ選択部53とを備えている。
【0044】
次に動作について説明する。
クラッタ推定精度別辞書選択部5を構成するクラッタ推定部51では、目標信号データの背景領域に対する被覆分類により、クラッタの推定を行う。
【0045】
土地被覆分類は、観測エリアのレーダ画像を用いて、土地の利用状況を分類する技術であり(カテゴリーとしては、人工構造物、森林、耕地、裸地、湿地、水域等がある)、対象領域のレーダ観測で得られる反射信号データから、対象領域に存在する物質の物性/形状等に依存する統計量を推定し、推定された統計量に基づき、画像の分類を行う。この実施の形態3では、分類までは行わずに、統計量の推定までを行う。この統計量がクラッタパラメータに相当する。
【0046】
クラッタの推定方法としては、背景領域(地上)からの反射信号データ(平均化処理等の前処理は実施済み)を解析し、背景領域のクラッタパラメータ(多偏波観測における、各偏波の平均電力、偏波間の相関 等)を、レーダから送信される観測信号を入力、対象領域からの反射信号を出力とし、入出力間の変換式を表す共分散行列の各要素として、パラメータ推定等により算出する。
【0047】
次に、クラッタ推定精度評価部52では、目標信号データのクラッタ推定値と辞書信号データのクラッタパラメータ値(異クラッタからなる辞書の場合は、同一パラメータに対し複数の値が存在)に基づき、目標信号データに対するクラッタ推定精度を判定する。
【0048】
クラッタ推定精度の判定は、辞書信号データと目標信号データのクラッタパラメータの類似度等を求め、クラッタ推定精度とする。類似度の算出方法は、前記実施の形態1のクラッタ推定精度別辞書選択部5の処理と同様、N要素のクラッタパラメータからなる場合、クラッタパラメータ空間はN次元となり、例えば、辞書信号データと目標信号データのクラッタパラメータ間のユークリッド距離の逆数を類似度とする。
【0049】
さらに、辞書データ選択部53では、目標信号データと各辞書信号データ間のクラッタ推定精度に基づき、種類判定のための辞書を辞書信号データから選択する。種類判定のための辞書の選択方法としては、目標信号データに対し、最もクラッタ推定精度が良好な辞書を選択する。
【0050】
以上のように、実施の形態3によれば、クラッタ推定部51で、背景領域の被覆分類により目標信号データのクラッタを推定することにより、目標信号データに即したクラッタ推定が可能になり、さらに、クラッタ推定精度評価部52において、目標信号データのクラッタ推定値とクラッタ別辞書のクラッタ値との比較からクラッタ推定精度を決定することにより、より詳細な精度判定が可能になる。
【0051】
なお、この発明は、前記各実施の形態1〜3に限定されるものではなく、各実施の形態1〜3の可能な組み合わせをすべて含むことは云うまでもない。
【符号の説明】
【0052】
〜1 教師信号データファイル、2 クラッタ推定精度別辞書生成部、3 辞書データファイル、4 目標信号データファイル、5 クラッタ推定精度別辞書選択部、6 種類判定部、7 種類判定結果ファイル、21 特徴量評価部、22 特徴量選択部、23 辞書生成部、51 クラッタ推定部、52 クラッタ推定精度評価部、53 辞書データ選択部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
様々なクラッタ条件で得られた目標の教師信号データを格納する教師信号データファイルと、
前記教師信号データファイルに格納された異クラッタ条件の教師信号データを用いてクラッタ推定精度別の辞書データを生成するクラッタ推定精度別辞書生成部と、
前記クラッタ推定精度別辞書生成部により生成された辞書データを格納する辞書データファイルと、
種類判定対象である目標信号データを格納する目標信号データファイルと、
前記目標信号データファイルに格納された目標信号データのクラッタ推定精度に応じて前記辞書データファイルに格納されたクラッタ推定精度別の辞書データから照合対象となる辞書データを選択するクラッタ推定精度別辞書選択部と、
前記クラッタ推定精度別辞書選択部により選択された照合対象辞書データに基づいて前記目標信号データファイルに格納された目標信号データの種類を判定する種類判定部と、
前記種類判定部による種類判定対象の種類判定結果を格納する種類判定結果ファイルとを備えた目標類識別装置。
【請求項2】
前記クラッタ推定精度別辞書生成部は、
前記教師信号データファイルに格納された異クラッタ条件の教師信号データを用いて特徴量を評価する特徴量評価部と、
前記特徴量評価部による特徴量の評価結果に基づいて特徴量を選択する特徴量選択部と、
前記特徴量選択部により選択された特徴量を用いてクラッタ推定精度別の辞書データを生成する辞書生成部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の目標類識別装置。
【請求項3】
前記クラッタ推定精度別辞書選択部は、
前記目標信号データファイルに格納された目標信号データのクラッタを背景領域の被覆分類で推定するクラッタ推定部と、
前記クラッタ推定部により推定された目標信号データのクラッタ推定値と前記辞書データファイルに格納されたクラッタ推定精度別の辞書データのクラッタ値との比較により、目標信号データに対するクラッタ推定精度を判定するクラッタ推定精度評価部と、
前記クラッタ推定精度評価部により判定された目標信号データに対するクラッタ推定精度に応じて前記辞書データファイルに格納されたクラッタ推定精度別の辞書データから照合対象となる辞書データを選択する辞書データ選択部とを備えたことを特徴とする請求項1記載の目標類識別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−255656(P2012−255656A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127413(P2011−127413)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】