説明

目用温熱具

【課題】凹凸のある目の部分に対するフィット性を向上させる。
【解決手段】着用者の目を覆って温熱を付与する目用温熱具であって、発熱体11と、発熱体の発熱に伴って水蒸気を発生する水蒸気発生体12と、当該温熱具の使用の際に着用者の目を覆うように配設され、水蒸気発生体から発生した水蒸気により内圧が上昇して変形する目被覆部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、アイマスク形状に形成され、着用された目や目の周囲に温熱を付与する目用温熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、鉄粉等の金属粉の酸化反応に伴って発熱する発熱体を利用して、例えば、目や目の周囲に温熱を付与する温熱具が知られている(例えば、特許文献1参照)。この温熱具は、具体的には、発熱体の発熱によって水を加熱して水蒸気化し、当該水蒸気を温熱とともに目や目の周囲に供給するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3049707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1では、金属粉の酸化や水蒸気の放出を効率良く行うことができるように発熱体がシート状に形成されているため、凹凸のある目の部分に対するフィット性が悪いといった問題がある。即ち、目は、眼球表面やまぶたが湾曲してなるとともに、目の周囲の部分は、上下方向には眉から頬(前頭骨の眉弓から眼窩下縁)にかけて凹凸を有し、左右方向には鼻から目尻(前頭骨の鼻部から眼窩外側縁)にかけて凹凸を有する形状である。
ここで、予めシート状の発熱体を凹凸に沿うように変形させておくことも考えられるが、目の周囲に限らずヒトの身体の形状は人種や性別や年齢等によって様々であるため、全てを満たすような特定の形状に形成することは困難であり、その一方で、個別に対応させるようにするとコストアップを招いてしまうといった問題が生じる。
【0005】
また、過冷却状態の所定の溶液を結晶化させることにより発熱させ、着用された部位に温熱を付与する温熱具も知られているが、この温熱具は、結晶化に伴って硬化していくため、凹凸のある目の部分に対してはフィット性が悪いといった問題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、凹凸のある目の部分に対するフィット性を向上させることができる目用温熱具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、
着用者の目を覆って温熱を付与する目用温熱具であって、発熱体と、前記発熱体の発熱に伴って水蒸気を発生する水蒸気発生体と、当該温熱具の使用の際に着用者の目を覆うように配設され、前記水蒸気発生体から発生した水蒸気により内圧が上昇して変形する目被覆部と、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、目用温熱具の使用の際に着用者の目を覆うように配設され、水蒸気発生体から発生した水蒸気により内圧が上昇して変形する目被覆部を備えているので、発熱体の発熱により水蒸気発生体から水蒸気を発生させることで目被覆部を目の部分の凹凸の形状に対応させるように変形させることができる。従って、凹凸のある目の部分に対する当該目用温熱具のフィット性を向上させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の目用温熱具において、
前記水蒸気発生体と前記目被覆部とは一体となって形成され、前記目被覆部は、前記水蒸気発生体から発生した水蒸気の量に応じて当該目被覆部の着用者の目側の部分が膨張するように変形することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、水蒸気発生体から発生した水蒸気の量に応じて目被覆部の着用者の目側の部分が膨張するように変形するので、当該目用温熱具を着用者の目の部分に着用した状態で、着用者の目や目の周囲の部分と目被覆部の着用者の目側の一面との間に隙間が生じている場合であっても、当該隙間を着用者の目側の部分が膨張するように変形する目被覆部により埋めることができ、凹凸のある目の部分に対する当該目用温熱具のフィット性を向上させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の目用温熱具において、
前記水蒸気発生体と前記目被覆部とは離間して配設され、前記目被覆部は、前記水蒸気発生体から発生して供給された水蒸気の量に応じて当該目被覆部の着用者の目側の部分が膨張するように変形することを特徴としている。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、水蒸気発生体と離間して配設された目被覆部は、水蒸気発生体から発生して供給された水蒸気の量に応じて当該目被覆部の着用者の目側の部分が膨張するように変形するので、当該目用温熱具を着用者の目の部分に着用した状態で、着用者の目や目の周囲の部分と目被覆部の着用者の目側の一面との間に隙間が生じている場合であっても、当該隙間を着用者の目側の部分が膨張するように変形する目被覆部により埋めることができ、凹凸のある目の部分に対する当該目用温熱具のフィット性を向上させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3の何れか一項に記載の目用温熱具において、
前記目被覆部は、通気性を有し、前記水蒸気発生体から発生した水蒸気により当該目被覆部の内圧が所定値よりも大きくなると当該目被覆部の外側に通気させるように構成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の何れか一項に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、目被覆部は、水蒸気発生体から発生した水蒸気により当該目被覆部の内圧が所定値よりも大きくなると当該目被覆部の外側に通気させるように構成されているので、水蒸気発生体から発生した水蒸気を目被覆部を介して着用者の目側に漏出させて着用者の目の部分に付与することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の目用温熱具において、
前記発熱体は、発熱状態にて50℃以下の表面温度を有することを特徴としている。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1〜4の何れか一項に記載の発明と同様の効果が得られるのは無論のこと、特に、発熱体は発熱状態にて50℃以下の表面温度を有するため、この発熱体の発熱によって水蒸気発生体が温められることで当該水蒸気発生体から発生する水蒸気の温度を50℃以下とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、凹凸のある目の部分に対するフィット性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明を適用した一実施形態の目用温熱具を示す正面図である。
【図2】図1のII−II線における目用温熱具の断面図である。
【図3】図1の目用温熱具の本体部の発熱体を説明するための図である。
【図4】変形例1の目用温熱具の本体部を説明するための図である。
【図5】変形例2の目用温熱具の本体部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明について、図面を用いて具体的な態様を説明する。ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
図1は、本発明を適用した一実施形態の目用温熱具100を示す正面図である。また、図2(a)及び図2(b)は、図1のII−II線における目用温熱具100の断面図であり、図2(a)は、目用温熱具100により発熱及び水蒸気の発生がなされていない状態を表し、図2(b)は、目用温熱具100により発熱及び水蒸気の発生がなされている状態を表す。
【0020】
目用温熱具100は、例えば、アイマスク形状に形成され、着用者Hの両目E、Eを覆って温熱を付与する温熱具である。具体的には、図1並びに図2(a)及び図2(b)に示すように、目用温熱具100は、使用の際に着用者Hの左右両目E、Eを覆うように着用される二つの本体部1、1と、着用者Hの各耳に掛けられる一対の耳掛け部2、2とを備えている。
本実施形態においては、着用者Hの左右の両目E、Eを結ぶ左右方向をX方向とし、X方向に直交する一方向をY方向とし、X方向及びY方向の双方に直交する方向をZ方向とする。なお、目用温熱具100は、例えば、着用者Hが仰向けになるなど、顔の正面を上方に向けた状態(図2(a)等参照)で使用されるのが一般的であるため、Z方向が鉛直方向(重力方向)と略平行なものとして説明する。
また、図2(a)及び図2(b)には、着用者HのまぶたH3を閉じた状態で、眉H1から頬H2に亘るように目用温熱具100が着用された状態を模式的に表している。
【0021】
本体部1は、左右両目E、Eの各々に対応させるようにX方向(左右方向)に二つ設けられている。また、各本体部1は、使用の際に目Eを覆うのに十分なX方向(左右方向)の長さ(幅)及びY方向(眉H1から頬H2に亘る方向)の長さを有している。
具体的には、各本体部1は、発熱体11と、この発熱体11の発熱に伴って水蒸気を発生する水蒸気発生体12と、発熱体11と水蒸気発生体12を被覆する外装体13とを備えている。
【0022】
発熱体11は、例えば、過冷却状態の所定の溶液Lの相転移により発熱する構成のものや、鉄粉等の金属粉の酸化反応に伴って発熱する構成のものが適用可能である。
以下に、過冷却状態の所定の溶液Lの相転移により発熱する発熱体11の一例について、図3(a)及び図3(b)を参照して説明する。
図3(a)は、発熱体11を示す正面図であり、図3(b)は、図3(a)のB−B線における発熱体11の断面図である。
【0023】
図3(a)及び図3(b)に示すように、発熱体11は、相転移により発熱する過冷却状態の所定の溶液Lが収容された第1収容部111と、所定の溶液Lの結晶化を開始させる結晶化開始部Pが収容された第2収容部112と、第1収容部111と第2収容部112とを非連通状態で保持する仕切り部113とを備えている。
また、発熱体11は、例えば、略同形状の第1及び第2包装部材11A、11Bを有し、重ね合わされた第1及び第2包装部材11A、11Bの所定箇所が所定の圧着方法(例えば、ヒートシール等)により貼り合わされることで、第1収容部111、第2収容部112及び仕切り部113を形成している。
【0024】
第1及び第2包装部材11A、11Bは、強度や耐久性等を考慮した所定の材料から形成されている。第1及び第2包装部材11A、11Bの材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)等のフィルムや、所定種類のフィルムを積層した積層体などが挙げられる。
【0025】
第1収容部111及び仕切り部113は、所定方向(例えば、Z方向)に重ね合わされた第1及び第2包装部材11A、11Bが、例えば、略「ロ」字状に貼り合わされることで形成される。
即ち、第1及び第2包装部材11A、11Bの所定位置に、所定の溶液L(過冷却状態のものであっても良いし、過冷却される前のものであっても良い)が配置された状態で、その周囲が略「ロ」字状に貼り合わされることで第1貼り合わせ部114が形成される。これにより、第1貼り合わせ部114の内側に第1収容部111が構成されるとともに、当該第1貼り合わせ部114における一部分(例えば、眉H1側の部分等)によって、仕切り部113が構成される。
このように、第1貼り合わせ部114は、第1収容部111の周りを囲むように形成されている。
【0026】
第1収容部111は、例えば、平面視にて略矩形状をなし、当該第1収容部111には、所定の溶液Lが過冷却状態で収容されている。
所定の溶液Lは、所定の塩が所定の濃度で水に溶解した水溶液である。具体的には、所定の溶液Lは、例えば、所定量の所定の塩を過飽和の状態となるように所定量の水に(必要に応じて加熱することで)溶解させ、過冷却状態としたものである。
ここで、所定の塩としては、酢酸ナトリウム無水塩、酢酸ナトリウム三水塩、硫酸ナトリウム十水塩、塩化カルシウム六水塩、ピロリン酸ナトリウム十水塩、水酸化バリウム六水塩等の無機水和塩及び他の塩を配合して融点を調整した無機水和塩の混合塩、パラフィンやポリエチレングリコール、脂肪酸等が挙げられ、これらの中でも、酢酸ナトリウム三水塩と硫酸ナトリウム十水塩が好ましい。
【0027】
なお、例えば、酢酸ナトリウム三水塩を過冷却状態とする場合、例えば、酢酸ナトリウム三水塩と水を混合した後加熱して酢酸ナトリウム三水塩を溶解させるか、酢酸ナトリウム三水塩と水を容器に充填後加熱して酢酸ナトリウム三水塩を溶解させる必要がある。
或いは、酢酸と水酸化ナトリウムの無水物又は水溶液を混合して用いても良く、この場合には、中和反応により発熱が起こるため、当該熱により混合物の温度が上昇して酢酸ナトリウムが溶解し、加温を要せず液体状態で取り扱うことができると考えられる。
【0028】
また、所定の溶液Lには、当該所定の溶液Lが結晶化された状態での柔らかさを調整する調整剤が添加されていても良い。
調整剤としては、例えば、エタノール等の1価アルコール、グリセリンやポリエチレングリコール(PEG)等の多価アルコール、フルクトースやシクロデキストリン等の多糖類などが挙げられる。これらの1価アルコールや多価アルコールや多糖類は、調整剤として個別に用いても良いし、混合して用いても良い。即ち、調整剤は、アルコール及び多糖類のうち、少なくとも一方を含んでいれば良い。
ここで、アルコールは、多糖類に比べて分子量が小さく、また、分子構造が複雑でないため、所定の溶液Lに含まれる所定の塩や水と馴染み易い。そこで、結晶化された状態で十分な柔らかさを保持する必要がある場合には、主としてアルコール(特に、多価アルコール)を用いるのが好ましく、結晶化された状態である程度の硬さを保持する必要がある場合には、主として多糖類を用いるのが好ましい。
【0029】
また、所定の溶液Lに調整剤を添加する場合、その添加量は5〜20[重量%]となるのが好ましい。
下限が5[重量%]未満では、当該所定の溶液Lが結晶化された状態で十分な柔らかさを保持することができず、着用される部位(例えば、目Eの部分等)に対するフィット性が悪化してしまうためである。また、上限が20[重量%]を超えると、当該所定の溶液Lが十分に結晶化することができず、相転移により十分な凝固熱を発生させることができないためである。
【0030】
仕切り部113は、第1貼り合わせ部114における他の部分に対して貼り合わせの強度が低くされている。
即ち、仕切り部113は、第1及び第2包装部材11A、11Bが所定の圧着方法により貼り合わされて第1貼り合わせ部114が形成される際に、当該第1貼り合わせ部114における他の部分に対して低い温度で圧着される。これにより、仕切り部113の貼り合わせの強度は、当該第1貼り合わせ部114における他の部分の貼り合わせの強度に対して低くなる。
【0031】
また、仕切り部113の貼り合わせの強度は、第1収容部111及び第2収容部112のうち、少なくとも一方の収容部(例えば、第1収容部111等)側から加えられる圧力により剥がされる程度に設定されている。
即ち、仕切り部113は、当該目用温熱具100の非使用状態にて、第1収容部111と第2収容部112とを仕切るものであり、これにより、第1収容部111に収容されている所定の溶液Lと第2収容部112に収容されている結晶化開始部Pとが接しないように保持されている。
そして、当該目用温熱具100の使用の際に、第1収容部111及び第2収容部112のうち、少なくとも一方の収容部(例えば、第1収容部111等)が他方の収容部(例えば、第2収容部112等)側に使用者により加圧されると、当該仕切り部113が剥がされて、第1収容部111の内側と第2収容部112の内側(結晶化開始部Pの存する空間)とを連通状態とする。これにより、第1収容部111に収容されている所定の溶液Lと第2収容部112に収容されている結晶化開始部Pとが接触可能な状態となる。
なお、目用温熱具100の使用者は、当該目用温熱具100の着用者Hに限られず、当該目用温熱具100の使用を補助する補助者等であっても良い。
【0032】
また、仕切り部113は、例えば、第1収容部111よりも眉H1側に離れるほど左右方向の長さ(幅)が狭くなっている。即ち、平面視にて略矩形状に形成された第1収容部111の眉H1側に、平面視にて略台形状に形成された仕切り部113が形成されている。そして、仕切り部113の左右方向の長さ(幅)が最も狭くなっている上底部分に隣り合うように第2収容部112が形成されている。
なお、第1貼り合わせ部114における眉H1側の部分のうち、仕切り部113以外の部分は、第1貼り合わせ部114における他の部分と同様に、仕切り部113よりも貼り合わせの強度が高くされている。
なお、仕切り部113の形状は、一例であってこれに限られるものではなく、適宜任意に変更可能である。
【0033】
第2収容部112には、第1収容部111に収容されている所定の溶液Lの結晶化を開始させる結晶化開始部Pが収容されている。
この第2収容部112は、所定方向(例えば、Z方向等)に重ね合わされた第1及び第2包装部材11A、11Bにおける、仕切り部113を挟んで第1収容部111と反対側の部分が所定の圧着方法(例えば、ヒートシール等)により貼り合わされることで形成される。即ち、第1及び第2包装部材11A、11Bが、第1収容部111よりも眉H1側にて門形状に貼り合わされることで第2貼り合わせ部115が形成される。具体的には、第2貼り合わせ部115は、第1貼り合わせ部114における眉H1側の部分(仕切り部113を含む部分)と隣り合うように第1及び第2包装部材11A、11Bが貼り合わされている。これにより、第2貼り合わせ部115の内側に、結晶化開始部Pが収容される第2収容部112が構成される。
なお、第1貼り合わせ部114と第2貼り合わせ部115の貼り合わせは、同じタイミングで行われても良いし、異なるタイミングで行われても良い。
【0034】
結晶化開始部Pは、例えば、第1収容部111に収容されている所定の溶液Lを結晶化させた微細な結晶であり、所定の溶液Lと接することで当該所定の溶液Lの結晶化を開始させる。
また、結晶化開始部Pとしての微細な結晶は、例えば、第1及び第2包装部材11A、11Bのうち、一方の包装部材(例えば、第1包装部材等)の内面に所定量付着されている。即ち、一方の包装部材の内面の所定位置に対して、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷やシルクスクリーン印刷等の所定の印刷方法により微細な結晶を印刷することで、当該一方の包装部材の内面に微細な結晶が付着されている。
ここで、一方の包装部材における微細な結晶を印刷する位置は、第2貼り合わせ部115の内側となる位置、即ち、第1及び第2包装部材11A、11Bが貼り合わされる部分(第1貼り合わせ部114)における仕切り部113の第1収容部111と反対側に隣り合うような位置となっている。
このように、第2収容部112は、本体部1の端部側(例えば、眉H1側の端部側等)に設けられている。
【0035】
また、発熱体11は、過冷却状態の所定の溶液Lの相転移により発熱した際の表面温度が50℃以下となるように構成されている。
即ち、結晶化開始部Pと第1収容部111に収容されている所定の溶液Lとが接すると、当該所定の溶液Lの結晶化が開始して、所定の溶液Lの相転移により凝固熱が発生する。このときの表面温度が50℃以下となるように発熱体11が構成されている。
ここで、発熱体11の表面温度の制御は、例えば、第1包装部材11Aや第2包装部材11Bの種類や厚さの変更や、当該発熱体11を被覆する不織布や紙等の被覆部材の追加や、第1収容部111に収容されている過冷却状態の所定の溶液L中の所定の塩の含有量や調整剤の添加量の変更等によって行うことができる。
このように、発熱体11は、発熱状態にて50℃以下の表面温度を有する。
【0036】
なお、発熱体を金属粉の酸化反応に伴って発熱する構成とする場合であっても、水蒸気の温度調整の観点からは、発熱状態にて50℃以下の表面温度を有するように構成する必要がある。この発熱体の表面温度の制御は、例えば、当該発熱体を被覆するフィルムや不織布や紙等の被覆部材の追加や、被覆部材の厚さの調整や、発熱体内における金属粉、塩類、反応促進剤等の各種の含有成分の調整等によって行うことができる。
【0037】
水蒸気発生体12は、発熱体11とZ方向に隣り合って配設されている。
具体的には、水蒸気発生体12は、例えば、発熱体11の外形と略等しい形状のシート状に形成され、発熱体11よりも着用者Hの肌側に互いの一面どうし(発熱体11の着用者Hの肌側の一面と水蒸気発生体12の肌と反対側の一面)を接触させるようにして配設されている。
また、水蒸気発生体12の発熱体11と反対側の一面、即ち、着用者Hの肌側の一面は、当該目用温熱具100の使用の際に着用者Hの目Eを覆うように配設されている。ここで、水蒸気発生体12は、当該目用温熱具100の使用の際に着用者Hの目Eを覆うように配設される目被覆部として機能し、水蒸気発生体12と目被覆部とは一体となって形成されている。
【0038】
また、水蒸気発生体12は、水分を多く含むゲル状をなしている。具体的には、水蒸気発生体12は、具体的には、例えば、ポリアクリル酸を架橋させた含水ゲルや不織布、所定濃度(20〜20%)のポリビニルアルコール水溶液に硼砂(1〜2[重量%])を添加してゲル化した含水体等を適用することができる。また、水蒸気発生体12は、水や含有成分の量を調整することで、当該水蒸気発生体12の熱容量を調整可能となっている。
【0039】
また、水蒸気発生体12の外面は、例えば、適度な通気度を有し、かつ水分の漏れ出しを防止する通気性の防水フィルムにより被覆されている。
この通気性の防水フィルムは、例えば、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウム等の微粒子(フィラー)との溶融混練物をフィルム状に成形し、一軸又は二軸延伸することで、微細な多孔質構造を具備する。
【0040】
このように構成された水蒸気発生体12は、発熱体11の発熱に伴って当該水蒸気発生体12内の水分が蒸発して水蒸気を発生させ、着用者Hの着用部位である目E側(図2(b)中、矢印で示す方向)に水蒸気を供給する(図2(b)参照)。
即ち、水蒸気発生体12は、水蒸気の発生に伴って当該水蒸気発生体12の内圧が上昇して変形する。具体的には、目用温熱具100により発熱及び水蒸気の発生がなされていない状態では(図2(a)参照)、水蒸気発生体12の着用者Hの目E側の一面と着用者Hの目Eや目Eの周囲の部分との間には、所定の空間が形成されている。
発熱体11の発熱に伴って水蒸気発生体12から水蒸気が発生すると、当該水蒸気発生体12は、発生した水蒸気の量に応じて当該水蒸気発生体12の着用者Hの目E側の部分が膨張するように変形する。つまり、水蒸気発生体12の着用者Hの目E側の一面が着用者Hの目Eや目Eの周囲の部分に近付くように変形する。これにより、水蒸気発生体12が目Eや目Eの周囲の部分の凹凸に対応するように変形して当該目Eの部分にフィットし易くなる。
そして、発生した水蒸気により水蒸気発生体12の内圧が所定値よりも大きくなると、当該水蒸気発生体12の通気性の防水フィルムを介して外側に水蒸気が漏出する。具体的には、水蒸気発生体12の着用者Hの肌と反対側には、防水機能を具備する発熱体11が存するため、水蒸気発生体12からは、主として発熱体11と反対側(着用者Hの肌側)に水蒸気が漏出される。このようにして、水蒸気発生体12から着用者Hの着用部位である目Eに水蒸気が付与される。
なお、外装体13の機能については後述する。
【0041】
外装体13は、発熱体11と水蒸気発生体12を着用者Hの肌と反対側から被覆する被覆体を構成している。
具体的には、外装体13は、例えば、Z方向に重ねられた水蒸気発生体12と発熱体11とを、当該発熱体11の着用者Hの肌と反対側から被覆し、且つ、水蒸気発生体12及び発熱体11のY方向の端部を着用者Hの肌と接触可能な位置まで回り込むように被覆している。なお、図示は省略するが、外装体13は、水蒸気発生体12及び発熱体11のX方向の端部を着用者Hの肌と接触可能な位置まで回り込むように被覆しても良い。
また、外装体13は、断熱機能及び防水機能を具備する材料から構成され、例えば、PE、PP、PET、ナイロン等のフィルムや、或いは、これらのフィルム素材を袋状にして中に空気を内包した中空状のものや、フィルム素材に発泡ウレタンシートやパルプシートなどを積層した積層体などが挙げられる。従って、断熱機能を具備する外装体13によって、発熱体11から発生した温熱が外側(例えば、着用者Hの肌と反対側)に逃がされることなく水蒸気発生体12側へと伝えられる。また、防水機能を具備する外装体13並びに発熱体11によって、水蒸気発生体12から発生した水蒸気が外側に逃がされることなく着用者Hの肌側へと供給される(図2(b)参照)。
【0042】
一対の耳掛け部2、2の各々は、各本体部1の左右方向(X方向)両側部の各々に連続して設けられている。
また、耳掛け部2は、伸縮性を有する素材から構成され、具体的には、例えば、不織布、織布、紙、樹脂フィルム等から構成されている。
【0043】
次に、着用者Hの着用部位(目Eの部分)に対する目用温熱具100からの温熱及び水蒸気の付与について、図2(a)及び図2(b)を参照して説明する。
【0044】
先ず、目用温熱具100の使用の際に、各本体部1が着用者Hの左右両目E、Eの各々を覆うように着用され、一対の耳掛け部2、2が着用者Hの各耳に掛けられる(図1参照)。
この状態では、発熱体11の第1収容部111と第2収容部112とは仕切り部113により仕切られ、第1収容部111に収容されている所定の溶液Lと第2収容部112に収容されている結晶化開始部Pとは接しないため、所定の溶液Lは液体状態であり、発熱は起こらない。また、水蒸気発生体12内に水分が保持され、即ち、水蒸気の発生により膨張していないため、当該水蒸気発生体12の着用者Hの目E側の一面と着用者Hの目Eや目Eの周囲の部分との間には、所定の空間が形成される(図2(a)参照)。
【0045】
次に、第1収容部111及び第2収容部112のうち、例えば、第1収容部111が第2収容部112側に使用者により加圧されると、仕切り部113が剥がされて、第1収容部111の内側と第2収容部112の内側とが連通状態となる。そして、第1収容部111に収容されている所定の溶液Lと第2収容部112に収容されている結晶化開始部Pとが接すると、当該所定の溶液Lの結晶化が開始する。また、所定の溶液Lが相転移すると、凝固熱が発生して発熱体11が発熱する。
発熱体11の発熱が水蒸気発生体12に伝えられると、当該水蒸気発生体12内の水分が蒸発して水蒸気が発生する。水蒸気発生体12は、水蒸気の発生に伴って当該水蒸気発生体12の内圧が上昇し、水蒸気の量に応じて当該水蒸気発生体12の着用者Hの目E側の部分が膨張するように変形する。これにより、水蒸気発生体12の着用者Hの目E側の一面が着用者Hの目Eや目Eの周囲の部分に近付いていき、当該水蒸気発生体12が目Eや目Eの周囲の部分の凹凸に対応するように変形して当該目Eの部分にフィットする。
このとき、水蒸気発生体12の着用者Hの肌側の一面以外の面は、防水機能を具備する外装体13や発熱体11により被覆されているため、当該水蒸気発生体12から発生した水蒸気は、通気性の防水フィルムを介して、着用者Hの着用部位である目E側(図2(b)中、矢印で示す方向)に漏出される(図2(b)参照)。
つまり、水蒸気発生体12が目Eの部分に対してフィットした状態で、当該水蒸気発生体12から漏出された水蒸気が目Eの部分に付与される。
【0046】
以上のように、本実施形態の目用温熱具100によれば、水蒸気発生体12は、目被覆部として、目用温熱具100の使用の際に着用者Hの目Eを覆うように配設され、水蒸気発生体12から発生した水蒸気により内圧が上昇して変形するので、発熱体11の発熱により水蒸気発生体12から水蒸気を発生させることで当該水蒸気発生体12を目Eの部分の凹凸の形状に対応させるように変形させることができる。従って、凹凸のある目Eの部分に対する当該目用温熱具100のフィット性を向上させることができる。
【0047】
また、発生した水蒸気の量に応じて水蒸気発生体12の着用者Hの目E側の部分が膨張するように変形するので、当該目用温熱具100を着用者Hの目Eの部分に着用した状態で、着用者Hの目Eや目Eの周囲の部分と水蒸気発生体12の着用者Hの目E側の一面との間に隙間が生じている場合であっても、当該隙間を着用者Hの目E側の部分が膨張するように変形する水蒸気発生体12により埋めることができ、凹凸のある目Eの部分に対する当該目用温熱具100のフィット性を向上させることができる。
特に、水蒸気発生体12は、発生した水蒸気により当該水蒸気発生体12の内圧が所定値よりも大きくなると当該水蒸気発生体12の外側に通気させるように構成されているので、水蒸気発生体12から発生した水蒸気を着用者Hの目E側に漏出させて着用者Hの目Eの部分に付与することができる。
【0048】
また、発熱体11は発熱状態にて50℃以下の表面温度を有するため、この発熱体11の発熱によって水蒸気発生体12が温められることで当該水蒸気発生体12から発生する水蒸気の温度を50℃以下とすることができる。
【0049】
また、発熱状態にて50℃以下の表面温度を有する発熱体11と隣り合って配設され、当該発熱体11の発熱に伴って水蒸気を発生する水蒸気発生体12を備えているので、発熱体11の発熱状態に左右されずに水蒸気発生体12から50℃以下の温度の水蒸気を着用者Hの着用部位に満遍なく付与することができる。即ち、水蒸気発生体12の熱容量を調整しておくことで、発熱体11の発熱に伴って当該水蒸気発生体12の一部分が加温されても当該一部分の急激な温度変化を抑制して水蒸気が局所的に発生することを抑制することができ、当該水蒸気発生体12全体から満遍なく水蒸気を発生させることができる。このとき、発熱体11は発熱状態にて50℃以下の表面温度を有するため、水蒸気発生体12から発生する水蒸気の温度も50℃以下となる。特に、発熱体11と水蒸気発生体12は、互いの一面どうしを接触させるようにして配設されているので、発熱体11の発熱を効率良く水蒸気発生体12に伝えることができ、当該水蒸気発生体12から50℃以下の温度の水蒸気を効率良く発生させることができる。
従って、発熱体11と水蒸気発生体12とを別体で設けることにより、内側に水を含有する発熱体11に比べて水蒸気の発生量や温度の調整を容易に行うことができ、当該水蒸気の発生量や温度のバラツキを抑制することができる。
【0050】
また、水蒸気発生体12は、シート状に形成され、発熱体11よりも着用者Hの肌側に配設されているので、シート状をなす当該水蒸気発生体12の一面全体から発生した水蒸気を着用者Hの肌の着用部位に満遍なく付与することができる。
【0051】
また、断熱機能及び防水機能を具備する外装体13が、発熱体11と水蒸気発生体12とを着用者Hの肌と反対側から被覆しているので、水蒸気発生体12から発生した50℃以下の温度の水蒸気が着用者Hの肌と反対側には供給され難くなり、当該目用温熱具100から発生した温熱及び水蒸気を効率良く着用者Hの着用部位である目Eの部分に付与することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、外装体13として、断熱機能及び防水機能を具備するものを例示したが、一例であってこれに限られるものではなく、外装体13の構成は適宜任意に変更可能である。即ち、外装体13は、断熱機能及び防水機能のうち、少なくとも一方を具備する構成であっても良い。
【0053】
加えて、発熱体11を、過冷却状態の所定の溶液Lの相転移により発熱するように構成した場合には、金属粉の酸化反応に伴って発熱する発熱体11のように酸化反応の進行度合に応じて生じるバラツキにより発熱の温度が不均一となってしまうといったことがなく、発熱体11全体を満遍なく発熱させて当該熱を隣り合う水蒸気発生体12に伝えることができる。さらに、所定の溶液Lに、当該所定の溶液Lが結晶化された状態での柔らかさを調整する調整剤を添加することで、当該所定の溶液Lが結晶化された状態で柔らかさを保持することができ、当該目用温熱具100を着用者Hの目Eの部分に着用した際のフィット性を向上させることができる。
【0054】
また、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
以下に、本発明に係る目用温熱具100の各構成の変形例について説明する。なお、下記に説明する以外の点は、上記実施形態と略同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0055】
<変形例1>
図4は、変形例1の目用温熱具100の本体部201を説明するための図であり、図1のII−II線と略等しい位置における本体部201の断面図である。
図4に示すように、本体部201には、水蒸気発生体12よりも着用者Hの肌側に配設された発熱体211が設けられている。
【0056】
発熱体211は、具体的には、水蒸気発生体12の肌側の一面よりも小面積に形成されている。また、発熱体211の着用者Hの肌と反対側の一面と水蒸気発生体12の肌側の一面とが接触している。即ち、発熱体211は、水蒸気発生体12よりもY方向の長さが短くされてなり、発熱体211のY方向の両端部よりも外側(図4における上下両側)に水蒸気発生体12のY方向の両端部が配置されている。
なお、図示は省略するが、発熱体211は、水蒸気発生体12よりもX方向の長さが短くされて、発熱体211のX方向の両端部よりも外側に水蒸気発生体12のX方向の両端部が配置されていても良い。
また、発熱体211は、着用者Hの肌に接触するため、目用温熱具100のフィット性向上の観点からは、柔らかさを調整する調整剤が添加された過冷却状態の所定の溶液Lの相転移により発熱する構成の発熱体が望ましい。
【0057】
また、本体部201の外装体13は、上記実施形態と同様に、水蒸気発生体12及び発熱体211のY方向の端部を着用者Hの肌と接触可能な位置まで回り込むように被覆している。
ここで、発熱体211のY方向の外端部と外装体13のY方向内側の面との間には、所定の空間が形成されており、当該所定の空間が水蒸気発生体12から発生した水蒸気の流路を構成している。即ち、水蒸気発生体12から発生した水蒸気は、外装体13の内面に沿うように所定の空間を経由して着用者Hの肌側(図4中、矢印で示す方向)に供給されるようになっている。
なお、図示は省略するが、発熱体211のX方向の外端部と外装体13のX方向内側の面との間にも、所定の空間が形成されて、当該所定の空間が水蒸気発生体12から発生した水蒸気の流路を構成するようにしても良い。
【0058】
従って、変形例1の目用温熱具100によれば、発熱体211が水蒸気発生体12よりも着用者Hの肌側に配設されている構成であっても、当該発熱体211の表面温度が発熱状態にて50℃以下であり、着用者Hの肌に対して過度に高温の熱を伝えることがなくなる。さらに、断熱機能及び防水機能を具備する外装体13が、発熱体211と水蒸気発生体12とを着用者Hの肌と反対側から被覆しているので、発熱体11が水蒸気発生体12よりも着用者Hの肌側に配設されていても、水蒸気発生体12から発生した50℃以下の温度の水蒸気が着用者Hの肌と反対側には供給され難く、当該水蒸気が外装体13の内面に沿って着用者Hの肌側に供給されることとなる。特に、発熱体211の着用者Hの肌と反対側からの発熱を水蒸気発生体12に伝えることができるとともに、発熱体211の着用者Hの肌側からの発熱を着用者Hの肌側に伝えることができ、発熱体211の発熱を効率良く利用することができ、当該目用温熱具100により温熱を付与可能な時間の延長を図ることができる。
従って、当該目用温熱具100から発生した温熱及び水蒸気を効率良く着用者Hの着用部位である目Eの部分に付与することができる。
【0059】
<変形例2>
図5(a)〜図5(c)は、変形例2の目用温熱具100の本体部301を説明するための図である。
このうち、図5(a)及び図5(b)は、図1のII−II線と略等しい位置における本体部301の断面図であり、図5(a)は、目用温熱具100により発熱及び水蒸気の発生がなされていない状態を表し、図5(b)は、目用温熱具100により発熱及び水蒸気の発生がなされている状態を表す。また、図5(c)は、図5(b)における一点鎖線で囲まれた領域Aを拡大して示す図である。
図5(a)〜図5(c)に示すように、本体部301には、発熱体211と水蒸気発生体12に加えて、当該目用温熱具100の使用の際に着用者Hの目Eを覆うように配設される目被覆体14が設けられ、当該目被覆体14を介して水蒸気発生体12から発生した水蒸気を着用者Hの目Eの部分に付与する。
【0060】
目被覆体14は、水蒸気発生体12とは離間して配設されている。即ち、上記実施形態では、水蒸気発生体12が目被覆部と一体となって構成するようにしたが、当該変形例2では、水蒸気発生体12と目被覆体14とが別体で構成されている。
具体的には、上記変形例1と略同様に、発熱体211が水蒸気発生体12よりも着用者Hの肌側に配設され、当該発熱体211よりも着用者Hの肌側に目被覆体14が配設されている。この目被覆体14は、発熱体211の肌側の一面よりも大面積に形成されている。また、目被覆体14の着用者Hの肌と反対側の一面と発熱体211の肌側の一面とが接触している。即ち、発熱体211は、目被覆体14よりもY方向の長さが短くされてなり、発熱体211のY方向の両端部よりも外側(図5(a)等における上下両側)に目被覆体14のY方向の両端部が配置されている。
なお、図示は省略するが、発熱体211は、目被覆体14よりもX方向の長さが短くされて、発熱体211のX方向の両端部よりも外側に目被覆体14のX方向の両端部が配置されていても良い。
【0061】
目被覆体14は、例えば、適度な通気度を有し、かつ水分の漏れ出しを防止する通気性の防水フィルムにより形成されている。
この通気性の防水フィルムは、例えば、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウム等の微粒子(フィラー)との溶融混練物をフィルム状に成形し、一軸又は二軸延伸することで、微細な多孔質構造を具備する。
【0062】
また、目被覆体14の端部は、外装体313により被覆されている。即ち、外装体313は、水蒸気発生体12、発熱体211及び目被覆体14のY方向の端部を着用者Hの肌と接触可能な位置まで回り込むように被覆している。
ここで、発熱体211のY方向の外端部と外装体313のY方向内側の面との間には、所定の空間が形成されており、当該所定の空間が水蒸気発生体12から発生した水蒸気の流路を構成している。即ち、水蒸気発生体12から発生した水蒸気は、外装体313の内面に沿うように所定の空間を経由して目被覆体14側(図5(c)中、湾曲した矢印で示す方向)に供給されるようになっている。
なお、図示は省略するが、発熱体211のX方向の外端部と外装体313のX方向内側の面との間にも、所定の空間が形成されて、当該所定の空間が水蒸気発生体12から発生した水蒸気の流路を構成するようにしても良い。
【0063】
このように構成された目被覆体14は、水蒸気発生体12から発生した水蒸気が供給されると、供給される水蒸気の量に応じて当該目被覆体14の着用者Hの目E側の部分が膨張するように変形する。
即ち、目被覆体14は、水蒸気発生体12から発生した水蒸気により内圧が上昇して変形する。具体的には、目用温熱具100により発熱及び水蒸気の発生がなされていない状態では(図5(a)参照)、目被覆体14の着用者Hの目E側の一面と着用者Hの目Eや目Eの周囲の部分との間には、所定の空間が形成されている。
発熱体211の発熱に伴って水蒸気発生体12から水蒸気が発生して目被覆体14に供給されると(図5(c)等参照)、目被覆体14は、供給された水蒸気の量に応じて当該目被覆体14の着用者Hの目E側の部分が膨張するように変形する。つまり、目被覆体14の着用者Hの目E側の一面が着用者Hの目Eや目Eの周囲の部分に近付くように変形する。これにより、目被覆体14が目Eや目Eの周囲の部分の凹凸に対応するように変形して当該目Eの部分にフィットし易くなる。
そして、供給された水蒸気により目被覆体14の内圧が所定値よりも大きくなると、当該目被覆体14の通気性の防水フィルムを介して外側に水蒸気が漏出する。具体的には、目被覆体14の着用者Hの肌と反対側には、防水機能を具備する発熱体211が存し、且つ、目被覆体14の端部側は外装体313により被覆されているため、目被覆体14からは、発熱体211と反対側(着用者Hの肌側;図5(b)及び図5(c)中、直線状の矢印で示す方向)に水蒸気が漏出される(図5(b)及び図5(c)参照)。
つまり、目被覆体14が目Eの部分に対してフィットした状態で、当該目被覆体14から漏出された水蒸気が目Eの部分に付与される。
【0064】
従って、変形例2の目用温熱具100によれば、水蒸気発生体12と離間して配設された目被覆体14は、水蒸気発生体12から発生して供給された水蒸気の量に応じて当該目被覆体14の着用者Hの目E側の部分が膨張するように変形するので、当該目用温熱具100を着用者Hの目Eの部分に着用した状態で、着用者Hの目Eや目Eの周囲の部分と目被覆体14の着用者Hの目E側の一面との間に隙間が生じている場合であっても、当該隙間を着用者Hの目E側の部分が膨張するように変形する目被覆体14により埋めることができ、凹凸のある目Eの部分に対する当該目用温熱具100のフィット性を向上させることができる。
また、発熱体211の着用者Hの肌と反対側からの発熱を水蒸気発生体12に伝えることができるとともに、発熱体211の着用者Hの肌側からの発熱を目被覆体14の存する着用者Hの肌側に伝えることができ、発熱体211の発熱を効率良く利用することができ、当該目用温熱具100により温熱を付与可能な時間の延長を図ることができる。
【0065】
なお、上記変形例2にあっては、発熱体211を水蒸気発生体12よりも着用者Hの肌側に配設するようにしたが、一例であってこれに限られるものではなく、発熱体211と水蒸気発生体12の配置は適宜任意に変更可能である。即ち、上記実施形態と同様に、水蒸気発生体12を発熱体よりも着用者Hの肌側に配設するようにしても良い。
【0066】
さらに、上記実施形態並びに各変形例にあっては、左右両目E、Eの各々に対応させるように左右二つの本体部1、1(201、301)を設け、対応する目Eに独立して温熱を付与可能な構成としたが、一例であってこれに限られるものではなく、本体部1の形状は適宜任意に変更可能である。例えば、本体部1を、左右両目E、Eを覆う左右方向に長尺な形状としても良い。
【0067】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
100 目用温熱具
1、201、301 本体部
11、211 発熱体
12 水蒸気発生体
13、313 外装体(被覆体)
14 目被覆体(目被覆部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の目を覆って温熱を付与する目用温熱具であって、
発熱体と、
前記発熱体の発熱に伴って水蒸気を発生する水蒸気発生体と、
当該温熱具の使用の際に着用者の目を覆うように配設され、前記水蒸気発生体から発生した水蒸気により内圧が上昇して変形する目被覆部と、を備えることを特徴とする目用温熱具。
【請求項2】
前記水蒸気発生体と前記目被覆部とは一体となって形成され、
前記目被覆部は、前記水蒸気発生体から発生した水蒸気の量に応じて当該目被覆部の着用者の目側の部分が膨張するように変形することを特徴とする請求項1に記載の目用温熱具。
【請求項3】
前記水蒸気発生体と前記目被覆部とは離間して配設され、
前記目被覆部は、前記水蒸気発生体から発生して供給された水蒸気の量に応じて当該目被覆部の着用者の目側の部分が膨張するように変形することを特徴とする請求項1に記載の目用温熱具。
【請求項4】
前記目被覆部は、通気性を有し、前記水蒸気発生体から発生した水蒸気により当該目被覆部の内圧が所定値よりも大きくなると当該目被覆部の外側に通気させるように構成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の目用温熱具。
【請求項5】
前記発熱体は、発熱状態にて50℃以下の表面温度を有することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の目用温熱具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−75025(P2013−75025A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216667(P2011−216667)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】