説明

目的地予測装置

【課題】目的地が設定されていない場合でも目的地を高精度に予測する目的地予測装置を提供することを課題とする。
【解決手段】目的地が設定されていない場合に目的地を予測する目的地予測装置1であって、ユーザによって設定された目的地とその目的地付近の駐車位置との関係性を抽出してその関係性の情報を蓄積しておき(S4)、ユーザによって目的地が設定されていない場合に蓄積されている目的地と駐車位置との関係性の情報に基づいて駐車した位置に対応する目的地を予測し(S6)、特に、目的地付近の駐車位置での駐車パターン(例えば、駐車時間帯パターン)も抽出して蓄積しておき(S2)、駐車パターンも考慮して目的地を予測する(S8)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地が設定されていない場合に目的地を予測する目的地予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーション装置では、ユーザによって目的地が設定されると、目的地までの経路を探索し、目的地まで経路案内を行う。この際、目的の施設等に駐車場がない場合、ユーザは、目的地付近の駐車場に駐車し、その駐車場から目的地に向かう。このように、実際に駐車した位置と目的地の位置とが一致しないことがある。一致しないことが判っている場合、ユーザは、ナビゲーション装置で目的地付近の駐車場を設定して駐車場までの経路案内を行わせたり、あるいは、経路案内を利用しないで目的地付近の駐車場まで向かう。
【0003】
目的地が設定されない場合でも、目的地を予測する技術がある。特許文献1に記載の技術では、目的地別に立寄った施設の履歴を保存しておき、新たに目的地が設定された場合にその目的地に対する履歴情報に基づいて立寄る可能性のある施設を予測し、その施設の情報を提供する。さらに、立寄った施設の時間帯も保存しておき、時間帯も考慮して立寄る可能性のある施設を予測する。また、目的地の途中での駐停車場所が施設に属さない駐車場である場合にはその駐車場を立寄り施設とし、駐停車場所が路上の場合にはその場所から最寄りの施設を立寄り施設として保存する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−287807号公報
【特許文献2】特開平8−63692号公報
【特許文献3】特開平4−270500号公報
【特許文献4】特開2002−183591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
施設等の目的地が設定されない場合でも、目的地付近に駐車した位置情報を得ることはできるので、その駐車位置情報を利用して目的地を高精度に予測することが望まれる。そのために、施設等の目的地とその付近の駐車位置とを高精度に関係付ける必要がある。上記の特許文献1に記載の技術では、駐車場自体を立寄り施設(目的地に相当)としたりあるいは路上の駐停車場所から最寄りの施設を立寄り施設して保存しているだけなので、目的地とその付近の駐車位置とが関係付けられていない。その結果、駐車位置から目的地を高精度に予測できない。
【0006】
そこで、本発明は、目的地が設定されていない場合でも目的地を高精度に予測する目的地予測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る目的地予測装置は、目的地が設定されていない場合に目的地を予測する目的地予測装置であって、ユーザによって設定された目的地と該目的地付近の駐車位置とを関係付けて蓄積する蓄積手段と、ユーザによって目的地が設定されていない場合に蓄積手段に蓄積されている目的地と該目的地付近の駐車位置との関係性に基づいて、目的地が設定されていない場合に駐車した位置に対応する目的地を予測する予測手段とを備え、蓄積手段に、目的地付近の駐車位置での駐車パターンも蓄積し、予測手段は、蓄積手段に蓄積されている駐車パターンも考慮して目的地を予測することを特徴とする。
【0008】
この目的地予測装置では、ユーザが目的地を設定し、その目的地付近に駐車した場合に、そのときの設定目的地と目的地付近の駐車位置とを関係付けた情報が蓄積手段に蓄積される。さらに、蓄積手段には、その目的地付近の駐車位置での駐車パターンも蓄積される。駐車パターンとしては、例えば、時間帯に応じた駐車パターン、曜日に応じた駐車パターン、天候に応じた駐車パターン、これらの各パラメータを組み合わせた駐車パターンがある。そして、目的地予測装置では、ユーザによって目的地が設定されていない場合、予測手段によって、蓄積手段に蓄積されている目的地と目的地付近の駐車位置との関係性に加えてその駐車位置における駐車パターンに基づいて、目的地が設定されていない場合に駐車した位置に対応する目的地を予測する。このように、目的地予測装置では、目的地と目的地付近の駐車位置との関係性に加えて駐車位置における駐車パターンを考慮して目的地を予測するので、目的地が設定されていない場合でも目的地を高精度に予測することができる。例えば、蓄積手段に蓄積されている目的地と駐車位置との関係性に基づいて駐車した位置に対応してある目的地を予測したが、その予測精度が低い場合でも、その予測された目的地に関係する他の駐車位置の駐車パターンと実際に駐車した位置の駐車パターンとを比較することによって、その予測された目的地の確からしさを高精度に判断できる。
【0009】
なお、ユーザによって目的地が設定されていない場合とは、ユーザの行動目的が明確である目的地(例えば、施設、店舗、会社、観光地)が設定されていない場合であり、全く目的地が設定されていない場合の他にも行動目的が不明である場所(例えば、駐車場)が目的地に設定されている場合も目的地が設定されていない場合に含まれる。
【0010】
本発明の上記目的地予測装置では、駐車パターンは、駐車時間帯パターンであると好適である。施設、店舗、会社、観光地等のユーザの行動目的が明確である目的地の場合、目的地毎に行く時間帯(目的地を利用可能な時間帯)が決まっている場合が多いので、その目的地付近の駐車位置の利用時間帯が特定のパターンを持つ。したがって、目的地予測装置では、駐車位置における駐車時間帯パターンを考慮して目的地を予測することにより、目的地をより高精度に予測することができる。
【0011】
本発明の上記目的地予測装置では、予測手段は、蓄積手段に蓄積される目的地と該目的地付近の駐車位置との関係性に基づいて目的地が設定されていない場合に駐車した位置に対応する目的地となる可能性のある目的地候補を抽出し、該目的地候補に関係性のある他の駐車位置の駐車時間帯パターンと目的地が設定されていない場合に駐車した位置の駐車時間帯パターンとの類似性が高い場合には目的地候補を目的地として予測する。
【0012】
この目的地予測装置の予測手段では、まず、蓄積手段の目的地と駐車位置との関係性に基づいて、目的地が設定されていない場合に駐車した位置に対応する目的地となる可能性のある目的地候補を抽出する。さらに、予測手段では、蓄積手段の各駐車位置の駐車時間帯パターンを利用して、抽出した目的地候補に関係性のある他の駐車位置の駐車時間帯パターンと目的地が設定されていない場合に駐車した位置の駐車時間帯パターンとを比較し、駐車時間帯パターンが同じ目的地(抽出した目的地候補)付近の他の駐車位置の駐車時間帯パターンと類似している場合には抽出した目的地候補が確からしいと判断し、その目的地候補を目的地として予測する。このように、目的地予測装置では、位置の関係性に基づいて目的地候補を抽出し、その目的地候補付近の他の駐車位置の駐車時間帯パターンと比較することにより、目的地候補の確からしさを判断でき、目的地をより高精度に予測することができる。
【0013】
本発明の上記目的地予測装置では、蓄積手段及び予測手段は、移動体との通信が可能なセンタに設けられ、センタでは移動体からユーザによって設定された目的地に関する情報、該目的地付近の駐車位置に関する情報及び駐車パターンに関する情報を受信し、蓄積手段には移動体から受信した情報を用いて蓄積される構成としてもよい。
【0014】
この目的地予測装置では、蓄積手段及び目的地予測装置が移動体(例えば、車両)との通信が可能なセンタに設けられる。センタでは、通信可能な各移動体から、その移動体のユーザによって設定された目的地に関する情報、その目的地付近の駐車位置に関する情報及び駐車パターンに関する情報を収集する。センタの蓄積手段には、その収集した情報を用いて、設定目的地と目的地付近の駐車位置とを関係付けた情報及びその駐車位置での駐車パターンの情報が蓄積される。このように、目的地予測装置では、センタと通信可能な移動体から情報を収集して蓄積手段に情報を蓄積するので、多数の移動体(ユーザ)から情報を収集することができ、蓄積手段に蓄積される情報の精度が向上し、目的地をより高精度に予測することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、目的地と目的地付近の駐車位置との関係性に加えて駐車位置における駐車パターンを考慮して目的地を予測するので、目的地が設定されていない場合でも目的地を高精度に予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る目的地予測システムの構成図である。
【図2】駐車時間帯パターンの一例であり、(a)が終日駐車頻度が低いパターンであり、(b)が夜間の駐車頻度が高いパターンであり、(c)が昼間の駐車頻度が高いパターンである。
【図3】駐車位置に対する目的地設定履歴の集計結果の一例を示す表である。
【図4】図1のセンタにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る目的地予測装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
本実施の形態では、本発明に係る目的地予測装置を、車両(移動体)とセンタによって構成される目的地予測システムに適用する。本実施の形態に係る目的地予測システムでは、車両とセンタとが通信可能であり、センタで各車両から各種情報を収集し、センタから各車両に各種サービスを提供する。特に、本実施の形態では、センタで各車両から設定目的地に関する情報及び目的地付近の駐車に関する情報を収集して必要な情報を蓄積しておき、目的地が設定されていない場合にはセンタで蓄積情報に基づいて目的地を予測する。目的地が設定されていない場合は、ユーザの行動目的が明確である目的地(例えば、施設、店舗、会社、観光地)が設定されていない場合である。したがって、行動目的が不明である場所(例えば、駐車場)が目的地に設定されている場合は、目的地が設定されていない場合に含まれる。
【0019】
図1〜図3を参照して、本実施の形態に係る目的地予測システム1について説明する。図1は、本実施の形態に係る目的地予測システムの構成図である。図2は、駐車時間帯パターンの一例であり、(a)が終日駐車頻度が低いパターンであり、(b)が夜間の駐車頻度が高いパターンであり、(c)が昼間の駐車頻度が高いパターンである。図3は、駐車位置に対する目的地設定履歴の集計結果の一例を示す表である。
【0020】
目的地予測システム1は、多数の車両2とセンタ3によって構成され、各車両2とセンタ3とが無線通信可能である。各車両2は、所定のタイミング毎に、ユーザによって設定された目的地に関する情報、その目的地付近に駐車した位置に関する情報、駐車したときの時間に関する情報をセンタ3に提供する。センタ3では、所定のタイミング毎に、各車両2から提供された情報に基づいて駐車位置毎の目的地との関係性を蓄積し、目的地が設定されていない場合にその蓄積情報を参照して車両2が駐車した位置から目的地を予測する。特に、センタ3では、目的地予測精度を向上させるために、各車両2から提供された情報に基づいて駐車位置毎に駐車時間帯パターンを蓄積し、目的地が設定されていない場合に駐車時間帯パターンも考慮して目的地を予測する。
【0021】
なお、このように目的地が設定されていない場合でも目的地を予測するのは、ユーザ毎に、ユーザの行動目的が明確な目的地の情報(行動履歴)をより多く収集し、ユーザの行動傾向をより高精度に分析するためである。このようなユーザの行動傾向はセンタ3からユーザ(車両2)に提供され、目的地検索等で利用される。例えば、行動傾向としてラーメン屋によく行くと分析された場合、目的地検索で食事カテゴリが選択された場合にはラーメン店情報を検索の上位に設定する。また、車両2がある位置に駐車した場合(あるいは、駐車場を目的地に設定した場合)にセンタ3でその駐車位置に対して目的地を予測し、センタ3から予測した目的地のPOI[Point Of Interest]情報を送信し、車両2でそのPOI情報をユーザに提供することもできる。
【0022】
車両2について説明する。車両2は、センタ3と無線通信可能であり、センタ3のサービス提供を受けることが可能な車両である。ここでは、センタ3で目的地を予測する機能に対して車両2で必要な機能について説明する。車両2は、通信機20、車両用ナビゲーション装置21及び着座センサ22を備えている。なお、着座センサ22は無くてもよい。
【0023】
通信機20は、センタ3と無線通信を行うための通信機である。車両2では、所定のタイミング毎に、目的地設定履歴、駐車した位置履歴、駐車した時間履歴をセットとして通信機20でセンタ3に送信する。一度に複数のセットが送信される場合もある。所定のタイミング毎は、例えば、ある位置に駐車した後に次回走行を開始する毎、一日毎、一週間毎、一ヶ月毎がある。駐車したか否かの判断は、例えば、着座センサ22等のセンサによる運転者の離席検知での判断、ACCスイッチのOFFによる判断がある。目的地設定履歴は、ユーザが車両用ナビゲーション装置21の目的地設定で施設、店舗、会社、観光地等の行動目的が明確な目的地が設定された場合の履歴である。目的地が設定されなかった場合又は駐車場が目的地として設定された場合は目的地設定履歴が無い。駐車した位置履歴は、駐車と判断したときに車両用ナビゲーション装置21で検知されている現在位置情報である。駐車した時間履歴は、駐車と判断したときの時刻から次回走行を開始するまでの時刻(駐車開始時刻と終了時刻)である。また、車両2では、センタ3からユーザの行動傾向情報や目的地に関する情報を通信機20で受信する。
【0024】
車両用ナビゲーション装置21は、現在位置を検知する機能、目的地(中継地)を設定する機能、目的地までの経路を探索する機能、目的地まで経路案内する機能、目的地情報を提供する機能等を有している。これらの各機能を実現するために、車両用ナビゲーション装置21は、車速センサ、方位センサ、GPS装置等のセンサ類、地図情報、目的地設定用情報等を格納する記憶装置、ECU[Electronic Control Unit]を備えている。また、車両用ナビゲーション装置21は、タッチパネル、ジョイスティック、ボタン等の入力装置、画像表示用のディスプレイ、音声出力用のスピーカ等の出力装置を備えている。入力装置や出力装置は、他のシステムと共用されるものでもよい。
【0025】
センタ3について説明する。センタ3は、車両2(ユーザ)に各種サービスを提供するセンタであり、例えば、自動車会社が運営するセンタである。ここでは、センタ3における目的地を予測する機能について説明する。センタ3は、ユーザ履歴保存部30、記憶装置31、POI−DB[DateBase]32、通信システム33、演算処理装置34(目的地と駐車位置の関係抽出部34a、未設定目的地推定部34b)を備えている。なお、本実施の形態では、記憶装置31が特許請求の範囲に記載する蓄積手段に相当し、未設定目的地推定部34bが特許請求の範囲に記載する予測手段に相当する。
【0026】
ユーザ履歴保存部30は、車両2(車両2のユーザ)毎に、車両2から収集した目的地設定履歴及び演算処理装置34で推定した目的地を保存するための記憶装置である。ここでは、ユーザによって設定された目的地とセンタ3で推定された目的地とを区別して保存する。センタ3の演算処理装置34では、このユーザ履歴保存部30に保存されている情報に基づいて、ユーザ毎に行動傾向を分析する。なお、ユーザ履歴保存部30に保存されている情報をユーザ(車両2)にそのまま提供し、その情報に基づいてユーザ側で行動傾向を分析してもよい。
【0027】
記憶装置31は、車両2(車両2のユーザ)毎に、車両2から収集した各セット(駐車と判断されたとき)の目的地設定履歴、駐車位置履歴及び駐車時間履歴を格納するための記憶装置である。また、記憶装置31は、駐車位置毎に、関係抽出部34aで抽出されたその駐車位置と目的地とを紐付けた情報及びその駐車位置での駐車時間帯パターンを格納するための記憶装置である。
【0028】
POI−DB32は、目的地(POI)毎に、目的地の位置情報や種別情報等を格納するためのデータベースである。なお、ユーザ履歴保存部30とPOI−DB32は、記憶装置31内に構成されてもよい。
【0029】
通信システム33は、各車両2と無線通信を行うための通信システムである。通信システム33と各車両2の通信機20とは、直接の無線通信でもよいし、あるいは、1つ以上の中継装置(基地局)を介した通信(基地局と通信システム33との間は無線又は有線のいずれの通信方式でも可)でもよい。センタ3では、所定のタイミング毎に、各車両2から、目的地設定履歴、駐車した位置履歴、駐車した時間履歴を通信システム33で受信する。また、センタ3では、通信システム33で各車両2にユーザの行動傾向情報や目的地に関する情報を送信する。
【0030】
演算処理装置34は、センタ3での各種サービス提供に必要な演算処理を行う装置(コンピュータ)であり、複数の装置によって構成されてもよい。ここでは、演算処理装置34における目的地を予測する機能について説明する。そのために、演算処理装置34には、目的地と駐車位置の関係抽出部34a、未設定目的地推定部34bが構成され、所定のタイミング毎に関係抽出部34a、未設定目的地推定部34bでの各処理を行う。所定のタイミング毎は、例えば、一日毎、一週間毎、一ヶ月毎がある。
【0031】
関係抽出部34aでは、記憶装置31に格納されている全ての車両2(ユーザ)についての駐車位置履歴と駐車時間履歴を用いて、駐車位置毎に、その駐車位置に駐車した全ての車両2(同じ車両2が複数回駐車している場合もある)についての駐車開始時刻から終了時刻、1日における各時間帯(例えば、30分毎の時間帯、一時間毎の時間帯)の滞在頻度を集計する。滞在頻度は、例えば、駐車位置(駐車場等)で駐車可能な駐車台数に対して実際に駐車された車両台数の割合(%)である。さらに、関係抽出部34aでは、駐車位置毎の集計結果を分類(クラスタリング)し、駐車時間帯パターン(駐車時間帯傾向)を設定する。クラスタリング方法としては、例えば、K−means法がある。この分類としては、例えば、終日駐車頻度の高いパターン、終日駐車頻度の低いパターン、夜間駐車頻度の高いパターン、昼間駐車頻度が高いパターン、食事時間帯に駐車頻度が高いパターンがある。そして、関係抽出部34aでは、その駐車位置毎の集計結果や駐車時間帯パターンを記憶装置31に格納する。
【0032】
図2には、ある駐車位置についての1日の各時間帯の滞在頻度をグラフ化した3つ駐車時間帯パターンの例を示している。この駐車時間帯パターンは、横軸が時間(0時〜24時)であり、縦軸が滞在頻度である。図2(a)は、終日駐車頻度が低いパターンである。図2(b)は、夜間の駐車頻度が高いパターンである。図2(c)は、昼間の駐車頻度が高いパターンである。
【0033】
例えば、ショッピングセンタ、デパート、各種店舗等の周辺の各駐車位置(各駐車場)の場合、営業時間帯に応じて昼間の駐車頻度が高くなる。飲食店の周辺の各駐車位置の場合、食事時間帯の駐車頻度が高くなる。マンション等の周辺の各駐車位置の場合、夜間の駐車頻度が高くなる。
【0034】
また、関係抽出部34aでは、記憶装置31に格納されている情報のうち駐車位置履歴に対して目的地設定履歴が有る場合の全てのユーザについての目的地設定履歴と駐車位置履歴を用いて、駐車位置毎に、その駐車位置に駐車したときに設定されていた目的地を集計し、その駐車位置に関係性の高い目的地を抽出する。そして、関係抽出部34aでは、その駐車位置毎の駐車位置と目的地との紐付け情報を記憶装置31に格納する。この紐付け情報の中には、関係性の高さを示す情報も付加するとよい。
【0035】
具体的には、駐車位置毎に、その駐車位置の履歴とセットとなっている全ての目的地設定履歴を用いて、その駐車位置に駐車した際に設定されていた目的地(POI)の頻度をカウントする。次に、カウント数が1以上あったPOIの中から頻度の割合が設定閾値を超える頻度上位のPOIを抽出する。そして、抽出した全てのPOIについて、その頻度の割合が信頼に値するか否かをサンプル数によって確認する。抽出したPOIに対する頻度の割合がPの場合、この割合が誤差Eと信頼度αで信頼できることを保証するサンプル数Nは下記の式(1)によって求めることができる。
N=(z(α/2)/E)×P×(1−P)・・・(1)
【0036】
なお、式(1)のzは、z関数である。抽出した各POIについて信頼できるサンプル数Nを式(1)によって算出し、全体サンプル数Nallが算出したPOIのサンプル数Nを超える場合、そのPOIをその駐車位置に対する目的地候補(その駐車位置に関係性の高い目的地)として設定する。
【0037】
例えば、図3には、ある駐車位置に対してPOIとして4つのレストランA、B、C、Dの頻度がカウントされた場合のレストラン毎の頻度、全体頻度(全体サンプル数)に対する頻度の割合、頻度上位からの頻度割合の累積値を示している。累積割合の設定閾値を80%とした場合、頻度上位の2件のレストランAとレストランBとの累積割合(80.7%)で設定閾値を超えるため、レストランAとレストランBが抽出される。
【0038】
レストランAは、頻度が150であり、頻度割合が48.4%である。この頻度割合(48.4%)が5%の誤差Eと90%の信頼度αで信頼できることを保証するサンプル数Nを式(1)で計算すると、z(0.90/2)=1.645であるから、N=(1.645/0.05)×0.484×(1−0.484)≒270である。全体サンプル数Nallは310であるので、この全体サンプル数Nall(=310)がレストランAについて信頼できるサンプル数N(=270)を超えているので、レストランAについてはサンプル数の基準を満たす。式(1)により、信頼度α及び誤差Eが同一のときに必要とされるサンプル数Nは、頻度割合Pが50%に近いほど多く必要となることがわかる。したがって、信頼度α及び誤差Eが同一であれば、頻度割合が50%に最も近いレストランAが最も多くのサンプル数Nを必要とする。したがって、レストランB以下は270よりも少ないサンプル数Nとなるので、レストランBもサンプル数の基準を満たす。ちなみに、レストランBのサンプル数N=(1.645/0.05)×0.323×(1−0.323)≒237である。これにより、抽出されたレストランAとレストランBは共に該当駐車位置に対応する目的地候補として設定される。この例の場合、目的地候補として設定される各POIの頻度割合が、駐車位置と目的地(POI)との関係性の高さを示す情報である。
【0039】
未設定目的地推定部34bでは、記憶装置31に格納されている情報のうちある車両2(ユーザ)についての駐車位置履歴に対応する目的地設定履歴が無い場合(目的地が設定されていない場合)、記憶装置31に格納されている駐車位置毎の目的地の紐付け情報を参照し、その駐車位置履歴の駐車位置に関係性の高い目的地候補(その駐車位置から行った可能性の高い目的地)を推定する。例えば、駐車位置に対して紐付けられている目的地のうち上位から所定数(1個以上)の目的地を抽出する。
【0040】
そして、未設定目的地推定部34bでは、目的地候補の推定確度が閾値以上の場合、その目的地候補を目的地として確定し、ユーザ履歴保存部30の該当ユーザの推定目的地として保存する。推定確度としては、例えば、紐付け情報に付加されている目的地との関係性の高さを示す情報(例えば、上記の頻度割合)である。
【0041】
また、未設定目的地推定部34bでは、目的地候補の推定確度が閾値未満の場合、記憶装置31に格納されている駐車位置毎の目的地の紐付け情報を参照し、目的地候補に紐付く他の駐車位置を抽出する。ここでは、複数の他の駐車位置が抽出される場合がある。さらに、未設定目的地推定部34bでは、記憶装置31に格納されている駐車位置毎の駐車時間帯パターンを参照し、駐車位置履歴の駐車位置の駐車時間帯パターンと目的地候補に紐付く他の駐車位置の駐車時間帯パターンとを比較し、駐車時間帯傾向が類似しているか否か(同じパターンとして分類されているか否か)を判定する。駐車時間帯傾向が類似していると判定した場合、未設定目的地推定部34bでは、その目的地候補を目的地として確定し、ユーザ履歴保存部30の該当ユーザの推定目的地として保存する。つまり、ある駐車位置履歴の駐車位置から推定された目的地候補の推定確度は低いが、その駐車位置履歴の駐車位置の駐車時間帯傾向と目的地候補付近の他の駐車位置の駐車時間帯傾向とが似ている場合、その駐車位置履歴の駐車位置から目的地候補に行った可能性が高いと判断できる。
【0042】
図1〜図3を参照して、目的地予測システム1における動作について説明する。特に、センタ3での処理については図4のフローチャートに沿って説明する。図4は、図1のセンタにおける処理の流れを示すフローチャートである。
【0043】
センタ3と通信可能な任意の車両2では、駐車する毎に、駐車した位置情報及び駐車した時間情報を取得するとともに、目的地を設定している場合にはその目的地設定情報を取得しておく。そして、車両2では、所定のタイミングになると、駐車毎の目的地設定情報、駐車位置情報、駐車時間情報の履歴を通信機20でセンタ3に送信する。センタ3では、車両2から駐車毎の目的地設定情報、駐車位置情報、駐車時間情報の履歴を通信システム33で受信する毎に、その各履歴を記憶装置31に格納する。ここで、センタ3では、各ユーザから目的地設定履歴、駐車位置履歴及び駐車時間履歴を収集し、蓄積しておく(S1)。
【0044】
所定のタイミング毎に、センタ3の演算処理装置34では、記憶装置31に格納されている駐車位置履歴と駐車時間履歴に基づいて、利用駐車位置毎に、駐車時間帯を集計して駐車時間帯パターンを分類し、その駐車時間帯パターンを記憶装置31に格納する(S2)。
【0045】
演算処理装置34では、記憶装置31に格納されている各駐車についての情報のうち、駐車位置履歴に対応して目的地設定履歴(駐車場以外の目的地設定)があるか否かを判定する(S3)。ここでは、記憶装置31に格納されている全ての情報のうち前回のタイミングから今回のタイミングの間に収集された情報についてのみ判定する。
【0046】
S3の判定にて目的地設定履歴があると判定した場合、演算処理装置34では、記憶装置31に格納されている目的地設定履歴と駐車位置履歴に基づいて、利用駐車位置毎に、目的地を集計して駐車位置に関係性の高い目的地を抽出し、抽出できた目的地との紐付け情報を記憶装置31に格納する(S4)。また、演算処理装置34では、その目的地設定履歴をユーザ履歴保存部30の該当ユーザに対して格納する(S5)。
【0047】
S3の判定にて目的地設定履歴がないと判定した場合、演算処理装置34では、記憶装置31に格納されている利用駐車位置毎の目的地との紐付け情報を参照し、目的地設定履歴がない駐車位置履歴の駐車位置から行った可能性の高い目的地を推定する(S6)。そして、演算処理装置34では、その目的地を推定した推定確度が閾値以上か否かを判定する(S7)。S7にて推定確度が閾値以上と判定した場合、演算処理装置34では、その推定した目的地をユーザ履歴保存部30の該当ユーザに対して格納する(S9)。S7にて推定確度が閾値未満と判定した場合、演算処理装置34では、記憶装置31に格納されている利用駐車位置毎の目的地との紐付け情報を参照し、その推定した目的地に紐付く他の駐車位置を抽出する。さらに、演算処理装置34では、記憶装置31に格納されている利用駐車位置毎の駐車時間帯パターンを参照し、駐車位置履歴の駐車位置の駐車時間帯パターンと推定した目的地に紐付く他の駐車位置の駐車時間帯パターンとを比較し、駐車時間帯傾向が似ているか否かを判定する(S8)。S8にて駐車時間帯傾向が似ていると判定した場合、演算処理装置34では、その推定した目的地をユーザ履歴保存部30の該当ユーザに対して格納する(S9)。S8にて駐車時間帯傾向が似ていないと判定した場合、演算処理装置34では、その推定した目的地を廃棄し、ユーザ履歴保存部30に格納しない。
【0048】
演算処理装置34では、記憶装置31に格納されている全ての情報のうち前回のタイミングから今回のタイミングの間に収集された全ての情報について上記の処理を行った場合、今回の処理を終了する。
【0049】
この目的地予測システム1によれば、目的地と目的地付近の駐車位置との関係性に加えて駐車位置における駐車パターンを考慮して目的地を予測するので、目的地が設定されていない場合でも目的地を高精度に予測することができる。特に、目的地予測システム1では、駐車パターンとして駐車位置における駐車時間帯パターンを考慮して目的地を予測することにより、目的地をより高精度に予測することができる。また、目的地予測システム1では、センタ3と通信可能な車両2から情報を収集して記憶装置31に情報を蓄積するので、多数のユーザから情報を収集することができ、記憶装置31に格納される目的地と駐車位置との紐付け情報や駐車位置の駐車パターン情報の精度が向上し、目的地をより高精度に予測することができる。
【0050】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0051】
例えば、本実施の形態では車両とセンタから構成され、センタで多数の車両からの情報を収集して蓄積し、センタで目的地を予測するシステムに適用したが、他の構成にも適用でき、例えば、車両(移動体)にて情報を蓄積して、目的地を予測する構成でもよい。
【0052】
また、本実施の形態では車両から各種情報を収集する構成したが、センタと通信可能な他の移動体で構成してもよく、例えば、位置情報を取得可能な携帯端末から各種情報を収集する構成としてもよい。
【0053】
また、本実施の形態では一日の時間帯毎に駐車頻度を集計し、駐車パターンとして駐車時間帯パターンとしたが、他の駐車パターンでもよく、例えば、天候(晴れ、曇り、雨、雪等)毎に駐車頻度を集計し、天候に応じた駐車パターンでもよいし、曜日毎に駐車頻度を集計し、曜日に応じた駐車パターンでもよいし、あるいは、時間帯、天候、曜日等の中からパラメータを組み合わせて駐車頻度を集計し、この組み合わせ応じた駐車パターンでもよい。
【符号の説明】
【0054】
1…目的地予測システム、2…車両、20…通信機、21…車両用ナビゲーション装置、22…着座センサ、3…センタ、30…ユーザ履歴保存部、31…記憶装置、32…POI−DB、33…通信システム、34…演算処理装置、34a…関係抽出部、34b…未設定目的地推定部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地が設定されていない場合に目的地を予測する目的地予測装置であって、
ユーザによって設定された目的地と該目的地付近の駐車位置とを関係付けて蓄積する蓄積手段と、
ユーザによって目的地が設定されていない場合に前記蓄積手段に蓄積されている目的地と該目的地付近の駐車位置との関係性に基づいて、目的地が設定されていない場合に駐車した位置に対応する目的地を予測する予測手段と、
を備え、
前記蓄積手段に、前記目的地付近の駐車位置での駐車パターンも蓄積し、
前記予測手段は、前記蓄積手段に蓄積されている駐車パターンも考慮して目的地を予測することを特徴とする目的地予測装置。
【請求項2】
前記駐車パターンは、駐車時間帯パターンであることを特徴とする請求項1に記載の目的地予測装置。
【請求項3】
前記予測手段は、前記蓄積手段に蓄積される目的地と該目的地付近の駐車位置との関係性に基づいて前記目的地が設定されていない場合に駐車した位置に対応する目的地となる可能性のある目的地候補を抽出し、該目的地候補に関係性のある他の駐車位置の駐車時間帯パターンと前記目的地が設定されていない場合に駐車した位置の駐車時間帯パターンとの類似性が高い場合には前記目的地候補を目的地として予測することを特徴とする請求項2に記載の目的地予測装置。
【請求項4】
前記蓄積手段及び前記予測手段は、移動体との通信が可能なセンタに設けられ、
前記センタでは前記移動体からユーザによって設定された目的地に関する情報、該目的地付近の駐車位置に関する情報及び駐車パターンに関する情報を受信し、前記蓄積手段には前記移動体から受信した情報を用いて蓄積されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の目的地予測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−54560(P2013−54560A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−192832(P2011−192832)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】