説明

目詰まり評価装置及び目詰まり評価プログラム

【課題】1車線の幅員以上の幅の目詰まりを1回の計測で評価できるとともに、路肩や歩道の目詰まりの評価も可能である目詰まり評価装置及び目詰まり評価プログラムを提供する。
【解決手段】熱画像取得部36が、赤外線カメラにより構成された撮影装置から、評価の対象物である高機能舗装道路等の表面の熱画像情報を取得すると、放射温度検出部38は、上記熱画像取得部36が取得した熱画像情報を解析し、対象物表面の放射温度を検出する。温度情報蓄積部40は、放射温度検出部38が検出した対象物表面の放射温度を、予め定めた起点から予め定めた距離分記憶装置30に蓄積する。目詰まり評価部42は、温度情報蓄積部40に蓄積された放射温度の上記距離に対するプロファイルを求め、目詰まり評価部42は、このプロファイルに基づき、対象物の目詰まりの程度を評価する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目詰まり評価装置及び目詰まり評価プログラムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多孔質な構造を持つ舗装である高機能舗装が施行された高機能舗装道路が、高速道路等を中心に建設されている。この高機能舗装道路は、新規舗装時の空隙度が20%以上あり、従来の多孔質ではない(非多孔質)構造を持つ舗装(密粒度舗装)に比べて、次のような優れた機能がある。すなわち、多孔質な構造であるという特徴を生かした、「排水機能による雨天時の走行安全性向上」や「タイヤノイズ低減機能による沿道環境改善」、さらに低密度であることから、太陽光の蓄熱量を少なくでき、夜間等の放射熱量を低減できるといった幾つかの機能を有している。このことから、「ヒートアイランド現象の防止・緩和」等の効果が期待できる。
【0003】
しかし、これらの機能は「空隙詰まり」や「空隙つぶれ」(以後、これらをまとめて目詰まりという)によりその効果が経時的に低下するため、機能低下の状態を評価する必要がある。従来の評価技術は、排水機能面では、400ccの水を変水位で自然流下させる現場透水試験で規定している。また、騒音低減効果面では、1台の自動車が高機能舗装道路上を通過する際に測定地点において測定される騒音レベルから求められるA特性パワーレベルを、密粒度舗装の場合のA特性パワーレベルと比較する方法で行っている。現場透水試験では車線規制内で現場透水試験器を設置し、騒音レベル測定では路肩にマイクロフォンを設置してそれぞれ測定する必要があることから作業手間がかかり、また作業手間をかけたにもかかわらずある測定点での評価しかできない。従来の評価技術は、これらを考慮すると効率の悪い測定手法である。
【0004】
また、既存技術として下記特許文献1のRAC車(Road Acoustic Checker)による低騒音舗装測定車があり、スピーカ音源による路面反射音の計側と特殊タイヤによるエアポンピング音の計側が可能であるが、測定速度が60km/時以下であること、舗装表面の吸音性能の評価であることから、高速道路での高機能舗装体内部の診断が出来ない。
【0005】
そこで、下記特許文献2では、高機能舗装道路の内部空隙度を、非接触、非破壊でかつ高速走行しながら簡易に測定することのできる音波式高機能舗装空隙度検出方法および装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2559658号公報
【特許文献2】特開2003−83943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記従来の技術においては、1回の車両走行の計測範囲が車幅内に限られるため、1車線の幅員以上の幅を1回で計測することができない上、路肩や歩道の計測も不可能であるという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、1車線の幅員以上の幅の目詰まりを1回の計測で評価できるとともに、路肩や歩道の目詰まりの評価も可能である目詰まり評価装置及び目詰まり評価プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の第1の実施形態は、目詰まり評価装置であって、対象物表面の熱画像を撮影する赤外線カメラと、前記赤外線カメラから熱画像情報を取得し、前記対象物表面の放射温度を検出する放射温度検出手段と、前記放射温度を予め定めた地点から予め定めた距離分蓄積する温度情報蓄積手段と、前記温度情報蓄積手段に蓄積された放射温度の前記距離に対するプロファイルを求め、前記プロファイルに基づき、対象物の目詰まりの程度を評価する目詰まり評価手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第2の実施形態は、上記目詰まり評価装置において、前記対象物が多孔質な構造を持つ舗装である高機能舗装が施行された高機能舗装道路であり、前記目詰まり評価手段は、前記対象物である高機能舗装道路の所定区間における前記放射温度のプロファイルに基づいて目詰まりの程度を評価することを特徴とする。
【0011】
また、第3の実施形態は、上記目詰まり評価装置において、前記対象物が多孔質な構造を持つ舗装である高機能舗装が施行された高機能舗装道路であり、前記目詰まり評価手段は、新しく建設された高機能舗装道路における前記放射温度のプロファイルとの比較に基づいて前記対象物である高機能舗装道路の目詰まりの程度を評価することを特徴とする。
【0012】
また、第4の実施形態は、上記目詰まり評価装置において、前記対象物が多孔質な構造を持つ舗装である高機能舗装が施行された高機能舗装道路であり、前記目詰まり評価手段は、非多孔質構造を持つ密粒度舗装が施行された一般舗装道路における前記放射温度のプロファイルとの比較に基づいて前記対象物である高機能舗装道路の目詰まりの程度を評価することを特徴とする。
【0013】
また、第5の実施形態は、上記目詰まり評価装置において、前記目詰まり評価手段が、放射温度のプロファイルを比較することにより、高機能舗装道路と密粒度舗装道路とを識別することを特徴とする。
【0014】
また、第6の実施形態は、上記目詰まり評価装置において、前記目詰まり評価手段が、放射温度のプロファイルを比較することにより、高機能舗装道路の目詰まりの程度に応じて高機能舗装の放射熱量の低減効果を評価することを特徴とする。
【0015】
また、第7の実施形態は、目詰まり評価プログラムであって、コンピュータを、対象物表面の熱画像を撮影する赤外線カメラから熱画像情報を取得する熱画像取得手段、前記熱画像情報から対象物表面の放射温度を検出する放射温度検出手段、前記放射温度を予め定めた地点から予め定めた距離分蓄積する温度情報蓄積手段、前記温度情報蓄積手段に蓄積された放射温度の前記距離に対するプロファイルを求め、前記プロファイルに基づき、対象物の目詰まりの程度を評価する目詰まり評価手段、として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、1車線の幅員以上の幅の目詰まりを1回の計測で評価できるとともに、路肩や歩道の目詰まりの評価も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態にかかる目詰まり評価装置の構成図である。
【図2】図1に示された演算装置を構成するコンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態にかかる演算装置の機能ブロック図である。
【図4】高機能舗装道路に目詰まりが発生する過程の説明図である。
【図5】高機能舗装道路と一般舗装道路とが併設され、2車線を構成している道路の路面のある地点における熱画像及び放射温度の例を示す図である。
【図6】図5に示された第一走行車線及び第二走行車線の放射温度を、車両の進行方向に沿って測定して得た放射温度のプロファイルの例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態にかかる目詰まり評価装置の動作例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面に従って説明する。
【0019】
図1には、実施形態にかかる目詰まり評価装置の構成図が示される。図1において、目詰まり評価装置は、撮影装置10、座標計測装置12、距離発生装置13、演算装置14及びこれらを搭載する車両16を含んで構成されている。
【0020】
撮影装置10は、赤外線カメラにより構成され、評価の対象物を撮影して、対象物の表面の熱画像情報を生成する。なお、赤外線カメラとしては、高性能赤外線サーモグラフィカメラを使用することができる。この高性能赤外線サーモグラフィカメラは、波長8μm以下の赤外線を検知でき、最小温度分解能(検出能)が0.02℃以下、速度100km/時の走行熱計測で得られる熱画像のぶれが2mm以下の性能を有しているものが好適である。
【0021】
座標計測装置12は、GPS(Global Positioning System;全地球測位システム)受信機を含んで構成され、撮影装置10の撮影位置の座標値(例えば、経度、緯度、標高)を計測する。上記座標値の計測は、原則、撮影装置10のシャッターと同期して行われる。但し、同期を取ることは必須ではなく、例えば補間処理を用いて対応する座標や距離を求めてもよい。なお、路面の連続撮影を行っている場合には、所定時間間隔ごと、または車両の所定走行距離ごとに上記座標値の計測を行う構成としてもよい。
【0022】
距離発生装置13は、車両の所定の走行距離ごとにパルス信号を発生する。撮影装置10及び座標計測装置12は、距離発生装置13が発生するパルス信号に同期して、それぞれの計測を行う構成とするのが好適である。このような構成により、本実施形態にかかる車両16の車速が変動しても、常に一定の距離間隔で撮影装置10及び座標計測装置12が動作することができる。なお、上記距離発生装置13としては、例えば空間フィルタの原理を用いた非接触型速度・距離計を使用することができる。
【0023】
演算装置14は、適宜なコンピュータにより構成され、上記撮影装置10から熱画像情報を取得し、後述する処理により高機能舗装道路等の目詰まりの程度を評価する処理を実行する。なお、演算装置14は、必ずしも車両16に搭載されている必要はない。その場合には、適宜な通信装置、または適宜な記憶媒体を介して上記熱画像情報を取得する構成とする。
【0024】
車両16は、特に限定されず、上記撮影装置10、座標計測装置12、演算装置14等を搭載して高速道路等を走行できればよい。車両16に搭載された撮影装置10により、例えば目詰まりの評価の対象物である高機能舗装道路の熱画像を、高速走行しながら短時間で取得できるので、日照状態や気温等の気象条件が大きく変わらない間に熱画像の取得が終了する。このため、計測及び評価結果に対する気象条件の変動の影響を小さくすることができる。また、車両16上から撮影装置10で熱画像を取得することにより、1車線の幅員を越えて路肩や歩道を含めた広範囲の熱画像を1回の撮影で取得できる。
【0025】
図2には、図1に示された演算装置14を構成するコンピュータのハードウェア構成例が示される。図2において、演算装置14は、中央処理装置(例えばマイクロプロセッサ等のCPUを使用することができる)18、ランダムアクセスメモリ(RAM)20、読み出し専用メモリ(ROM)22、入力装置24、表示装置26、通信装置28及び記憶装置30を含んで構成されており、これらの構成要素は、バス32により互いに接続されている。また、入力装置24、表示装置26、通信装置28及び記憶装置30は、それぞれ入出力インターフェース34を介してバス32に接続されている。
【0026】
CPU18は、RAM20またはROM22に格納されている制御プログラムに基づいて、後述する各部の動作を制御する。RAM20は主としてCPU18の作業領域として機能し、ROM22にはBIOS等の制御プログラムその他のCPU18が使用するデータが格納されている。
【0027】
また、入力装置24は、キーボード、ポインティングデバイス等により構成され、使用者が動作指示等を入力するために使用する。
【0028】
また、表示装置26は、液晶ディスプレイ等により構成され、地図情報、撮影装置10が撮影した熱画像等を表示する。
【0029】
また、通信装置28は、USB(ユニバーサルシリアルバス)ポート、ネットワークポートその他の適宜なインターフェースにより構成され、CPU18がネットワーク等の通信手段を介して外部の装置とデータをやり取りするために使用する。また、CPU18は、撮影装置10、座標計測装置12から熱画像情報及び座標値を、通信装置28を介して取得する。
【0030】
また、記憶装置30は、ハードディスク等の磁気記憶装置であり、後述する処理に必要となる種々のデータを記憶する。なお、記憶装置30としては、ハードディスクの代わりに、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、コンパクトディスク(CD)、光磁気ディスク(MO)、フレキシブルディスク(FD)、磁気テープ、電気的消去および書換可能な読出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュ・メモリ等を使用してもよい。
【0031】
図3には、実施形態にかかる演算装置14の機能ブロック図が示される。図3において、演算装置14は、熱画像取得部36、放射温度検出部38、温度情報蓄積部40、目詰まり評価部42及び出力部44を含んで構成されており、これらの機能は、例えばCPU18とCPU18の処理動作を制御するプログラムとにより実現される。
【0032】
熱画像取得部36は、赤外線カメラにより構成された撮影装置10から、評価の対象物である高機能舗装道路等の表面の熱画像情報を取得する。熱画像情報を取得する方法としては、例えば通信装置28を介してデータを受信してもよいし、DVD、CD、MO、FD、USBメモリ等の適宜な記憶媒体を介して取得してもよい。
【0033】
放射温度検出部38は、上記熱画像情報を解析し、対象物表面の放射温度を検出する。放射温度の検出処理(演算処理)は、従来公知の方法を適用できる。
【0034】
温度情報蓄積部40は、放射温度検出部38が検出した対象物表面の放射温度を、予め定めた地点から予め定めた距離分記憶装置30に蓄積する。ここで、上記距離は、距離発生装置13が発生するパルス信号に基づいて計測される。上記予め定めた地点は、目詰まりの評価をすべき区間(以後、評価区間という)の起点であり、当該起点から目詰まりの評価をすべき区間の終点までの距離が上記予め定めた距離に相当する。
【0035】
目詰まり評価部42は、温度情報蓄積部40に蓄積された放射温度の上記距離に対するプロファイルを求め、このプロファイルに基づき、対象物の目詰まりの程度を評価する。ここで、プロファイルは、上記評価区間の各地点の放射温度の値であり、評価区間の起点から終点に向けて、起点からの距離に対して放射温度がどのように変化するかを表現している。目詰まり評価部42は、このプロファイルを、予め定めた基準プロファイルと比較し、基準プロファイルとの乖離が予め定めた閾値より大きな地点に目詰まりが発生していると判定する。基準プロファイルについては後述する。
【0036】
出力部44は、熱画像取得部36が取得した熱画像情報、目詰まり評価部42が求めた上記プロファイルと評価結果である目詰まりの有無等を表示装置26に出力して表示させる。目詰まりの有無の表示は、例えば評価の対象物である高機能舗装道路が含まれる地図上に文字列あるいは目詰まり地点の道路の色の変化、網掛け等により行うことができるが、これらには限定されない。この場合、例えば、座標計測装置12が計測した、撮影装置10による高機能舗装道路における熱画像の撮影位置の座標値に基づいて、所定の地図上の高機能舗装道路に、熱画像情報並びに目詰まり評価部42が求めたプロファイル及び評価結果を関連付け、入力装置24のポインティングデバイスにより高機能舗装道路の位置または範囲を指定することにより、上記熱画像情報、プロファイル及び評価結果を表示する構成が好適である。なお、上記関連付けは、地図上の高機能舗装道路を構成する画素のうち、上記撮影位置に当たる1個の画素または複数の画素群に上記情報を関連付けるのが好適である。
【0037】
上述した基準プロファイルとしては、例えば評価区間自体の放射温度のプロファイルを使用することができる。この場合には、目詰まり評価部42が、例えば評価区間全体における放射温度の平均値と評価区間内の各地点の放射温度とを比較し、平均値との差が予め定めた閾値より大きくなった(放射温度が平均値より高くなった)地点に目詰まりが発生していると判定する。目詰まりが発生している場合には、舗装道路の密度が高くなり、その熱容量が大きくなるので、太陽光照射等によって十分に蓄熱した場合に放射温度が高くなるからである。
【0038】
また、他の基準プロファイルとしては、新しく建設された高機能舗装道路における放射温度のプロファイルを使用することができる。新しく建設された高機能舗装道路には目詰まりが発生していないと考えられるので、このプロファイルと比較することにより評価の対象物である高機能舗装道路の各地点の目詰まりを判定できる。この場合、目詰まり評価部42は、新しく建設された高機能舗装道路の一定区間の放射温度の平均値と評価の対象物である高機能舗装道路における評価区間内の各地点の放射温度とを比較し、平均値との差が予め定めた閾値より大きくなった(放射温度が平均値より高くなった)地点に目詰まりが発生していると判定する。なお、新しく建設された高機能舗装道路と評価の対象物である高機能舗装道路とが並設されている(例えば2車線を構成している)場合には、共通の起点から同じ距離の地点同士の放射温度を比較し、評価の対象物である高機能舗装道路の放射温度が新しく建設された高機能舗装道路の放射温度より予め定めた閾値を超えて高くなった地点に目詰まりが発生していると判定することも可能である。
【0039】
また、さらに他の基準プロファイルとしては、非多孔質構造を持つ密粒度舗装が施行された一般舗装道路における放射温度のプロファイルを使用することができる。一般舗装道路は密粒度舗装であるので熱容量が大きく、太陽光照射等によって十分に蓄熱した場合に放射温度も高機能舗装道路より高くなるので、判定基準とすることができる。この場合、目詰まり評価部42は、一般舗装道路の一定区間の放射温度の平均値と評価の対象物である高機能舗装道路における評価区間内の各地点の放射温度とを比較し、平均値との差が予め定めた閾値より小さくなった(放射温度が一般舗装道路の平均値に接近または高くなった)地点に目詰まりが発生していると判定する。なお、一般舗装道路と評価の対象物である高機能舗装道路とが並設されている(例えば2車線を構成している)場合には、共通の起点から同じ距離の地点同士の放射温度を比較し、評価の対象物である高機能舗装道路の放射温度が一般舗装道路の放射温度より予め定めた閾値を超えて接近した地点に目詰まりが発生していると判定する。
【0040】
図4(a)、(b)、(c)には、高機能舗装道路に目詰まりが発生する過程の説明図が示される。
【0041】
図4(a)は、新しく建設された高機能舗装道路の断面の模式図であり、高機能舗装道路を構成する粗骨材46の粒子間に目詰まりは発生しておらず、空隙が維持されている。このため、空隙率が高く、熱容量が小さいので、蓄積熱量が小さく、放射温度が低く維持される。
【0042】
図4(b)は、高機能舗装道路を構成する粗骨材46の粒子間の空隙に、塵埃、路面破砕物、タイヤの表面破砕物、土砂等が詰まりつつある状態を表している。この例では、空隙の一部に目詰まりが発生している。また、図4(c)は、図4(b)の状態よりも、さらに目詰まりが進行し、ほぼ全ての空隙に目詰まりが発生した状態を表している。なお、図4では空隙に塵埃等が詰まった状態を示しているが、通行車両によるわだち掘れにより空隙が圧迫された状態を評価することも可能である。
【0043】
以上の状態では、図4(a)の状態よりも図4(b)の状態の方が熱容量が大きく、太陽光照射等によって十分に蓄熱した場合に放射温度も高くなり、図4(c)の状態では、さらに熱容量が大きく放射温度も高くなっている(図4(c)が最も熱容量が大きく、放射温度も高い)。
【0044】
図5(a)、(b)には、高機能舗装道路と一般舗装道路とが併設され、2車線を構成している道路の路面のある地点における熱画像及び放射温度の例が示される。図5(a)の例では、高機能舗装道路である第一走行車線と一般舗装道路(密粒度舗装)である第二走行車線とが境界Bを挟んで併設されている。この2車線について撮影装置10を構成する赤外線カメラにより同時に撮影し、取得した熱画像が図5(a)に示されている。なお、熱画像を取得した際の気象条件は、天候晴れ、気温16〜17℃、風速5m/秒であった。
【0045】
また、上記熱画像では、図5(a)に示されたL1〜L5の5ラインに沿って、道路横断的に路面の放射温度が放射温度検出部38により検出されている。図5(b)には、放射温度検出部38が検出した各車線の道路横断的放射温度が示される。なお、5ラインに沿った放射温度は、第一走行車線及び第二走行車線においてそれぞれほぼ同じ温度となっている。すなわち、第一走行車線では、29〜30℃であり、第二走行車線では、31〜32℃であった。このため、5ラインに沿った各放射温度は、ほぼ重なっている。また、図5(b)に示されるように、第一走行車線(高機能舗装道路)の放射温度は、一般舗装道路(密粒度舗装道路)の放射温度より1.5℃程度低くなっている。
【0046】
図6には、図5に示された第一走行車線及び第二走行車線の放射温度を、車両の進行方向に沿って測定して得た放射温度のプロファイルの例が示される。図6においては、●(黒塗りの丸)が第一走行車線(高機能舗装道路)の放射温度を、□(白抜きの四角)が第二走行車線(密粒度舗装道路)の放射温度をそれぞれ表している。これらの放射温度は、図5に示された境界Bを挟んだ両車線のわだち掘れの位置近傍にそれぞれ設けた高さ(車両の進行方向の距離)3m、面積3mの台形形状の領域(以後、放射温度算出領域と呼ぶ)T1、T2中の12,000画素に対応する地点の平均放射温度として算出されている。これらの演算処理は、放射温度検出部38が行う。なお、この際の撮影装置10による熱画像の取得は、車両16が5m進行するごとに行った。また、このようにして得られた平均放射温度は、温度情報蓄積部40により記憶装置30に記憶される。
【0047】
目詰まり評価部42は、記憶装置30に記憶された平均放射温度を、予め定めた起点からの距離に沿って並べ、平均放射温度のプロファイルを求める。図6の例では、起点(0m)から4500mまでの地点の間のプロファイルが示されている。このプロファイルは、放射温度が起点からの距離に対してどのように変化するかを表現している。目詰まり評価部42は、基準プロファイルとして一般舗装道路(第二走行車線)の放射温度のプロファイルを使用し、これとの比較に基づき、高機能舗装道路の目詰まりの程度を評価する。
【0048】
図6に示されるように、第一走行車線では、ほとんどの地点で、平均放射温度が29〜30℃の範囲には入り、第二走行車線は、ほとんどの地点で、平均放射温度が31〜32℃の範囲に入っている。一方、第一走行車線では、一部の平均放射温度が上記範囲よりも高い温度となっている。この場合、舗装の目詰まりではなく、日照の状況等の局部的要因により平均放射温度が上昇している可能性もある。そこで、目詰まり評価部42は、第一走行車線のプロファイルと第二走行車線のプロファイルとを比較し、第一走行車線のみの平均放射温度が上昇している地点、すなわち予め定めた閾値より両放射温度の差が小さくなった地点を目詰まり発生点と評価する。また、その際の平均放射温度の値から、目詰まりの程度も評価する。図6では、α、β、γで示された地点の平均放射温度が、30℃〜31℃となっており、第二走行車線の平均放射温度の最低値(31℃)との差が1℃以内となっているので、ほぼ同じ程度の目詰まりが発生していると評価する。一方、δで示された地点では平均放射温度が一部31℃を超えており、α、β、γで示された地点より目詰まりが進行していると評価する。
【0049】
さらに、目詰まり評価部42は、高機能舗装道路と密粒度舗装道路の平均放射温度に、図6に示されるように、有意に差が生じることから、放射温度のプロファイルを基に、高機能舗装道路と密粒度舗装道路とを識別することもできる。また、目詰まりの程度に応じて熱容量が大きくなり、太陽光照射等によって十分に蓄熱した場合に放射温度も高くなるため、高機能舗装の放射熱量低減効果を評価することもできる。
【0050】
図7には、本実施形態にかかる目詰まり評価装置の動作例のフローが示される。図7において、まず、熱画像取得部36が、赤外線カメラにより構成された撮影装置10から、評価の対象物である高機能舗装道路等の表面の熱画像情報を取得する(S1)。
【0051】
次に、放射温度検出部38は、上記熱画像取得部36が取得した熱画像情報を解析し、対象物表面の放射温度を検出する(S2)。温度情報蓄積部40は、放射温度検出部38が検出した対象物表面の放射温度を、予め定めた起点から予め定めた距離分記憶装置30に蓄積する。
【0052】
目詰まり評価部42は、温度情報蓄積部40に蓄積された放射温度の上記距離に対するプロファイルを求める(S3)。次に、目詰まり評価部42は、このプロファイルに基づき、対象物の目詰まりの程度を評価する(S4)。この評価の際には、上述したように、評価区間自体の放射温度のプロファイル、新しく建設された高機能舗装道路における放射温度のプロファイル、密粒度舗装が施行された一般舗装道路における放射温度のプロファイル等を基準プロファイルとして使用することができる。
【0053】
なお、目詰まり評価部42は、放射温度検出部38が検出した放射温度を一定面積で平均した平均放射温度によりプロファイルを求め、目詰まりの程度を評価してもよい。この際に、(平均放射温度×平均放射温度を求めた面積)の数値を求め、放射熱量の目安としてもよい。また、この数値を、ヒートアイランド現象の発生の目安とすることもできる。
【0054】
また、上記実施例では台形形状の放射温度算出領域を設定し、その平均値を基準プロファイルとして用いているが、必ずしも平均値を算出する必要はない。例えば、道路縦断方向、あるいは横断方向等、任意の方向に沿って求めた個々の放射温度を基準プロファイルとして用いてもよい。
【0055】
上述した、図7の各ステップを実行するためのプログラムは、記録媒体に格納することも可能であり、また、そのプログラムを通信手段によって提供しても良い。その場合、例えば、上記説明したプログラムについて、「プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」の発明または「データ信号」の発明としてとらえてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 撮影装置、12 座標計測装置、13 距離発生装置、14 演算装置、16 車両、18 CPU、20 RAM、22 ROM、24 入力装置、26 表示装置、28 通信装置、30 記憶装置、32 バス、34 入出力インターフェース、36 熱画像取得部、38 放射温度検出部、40 温度情報蓄積部、42 目詰まり評価部、44 出力部、46 粗骨材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物表面の熱画像を撮影する赤外線カメラと、
前記赤外線カメラから熱画像情報を取得し、前記対象物表面の放射温度を検出する放射温度検出手段と、
前記放射温度を予め定めた地点から予め定めた距離分蓄積する温度情報蓄積手段と、
前記温度情報蓄積手段に蓄積された放射温度の前記距離に対するプロファイルを求め、前記プロファイルに基づき、対象物の目詰まりの程度を評価する目詰まり評価手段と、
を備えることを特徴とする目詰まり評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の目詰まり評価装置において、前記対象物が多孔質な構造を持つ舗装である高機能舗装が施行された高機能舗装道路であり、前記目詰まり評価手段は、前記対象物である高機能舗装道路の所定区間における前記放射温度のプロファイルに基づいて目詰まりの程度を評価することを特徴とする目詰まり評価装置。
【請求項3】
請求項1に記載の目詰まり評価装置において、前記対象物が多孔質な構造を持つ舗装である高機能舗装が施行された高機能舗装道路であり、前記目詰まり評価手段は、新しく建設された高機能舗装道路における前記放射温度のプロファイルとの比較に基づいて前記対象物である高機能舗装道路の目詰まりの程度を評価することを特徴とする目詰まり評価装置。
【請求項4】
請求項1に記載の目詰まり評価装置において、前記対象物が多孔質な構造を持つ舗装である高機能舗装が施行された高機能舗装道路であり、前記目詰まり評価手段は、非多孔質構造を持つ密粒度舗装が施行された一般舗装道路における前記放射温度のプロファイルとの比較に基づいて前記対象物である高機能舗装道路の目詰まりの程度を評価することを特徴とする目詰まり評価装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の目詰まり評価装置において、前記目詰まり評価手段は、放射温度のプロファイルを比較することにより、高機能舗装道路と密粒度舗装道路とを識別することを特徴とする目詰まり評価装置。
【請求項6】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の目詰まり評価装置において、前記目詰まり評価手段は、放射温度のプロファイルを比較することにより、高機能舗装道路の目詰まりの程度に応じて高機能舗装の放射熱量の低減効果を評価することを特徴とする目詰まり評価装置。
【請求項7】
コンピュータを、
対象物表面の熱画像を撮影する赤外線カメラから熱画像情報を取得する熱画像取得手段、
前記熱画像情報から対象物表面の放射温度を検出する放射温度検出手段、
前記放射温度を予め定めた地点から予め定めた距離分蓄積する温度情報蓄積手段、
前記温度情報蓄積手段に蓄積された放射温度の前記距離に対するプロファイルを求め、前記プロファイルに基づき、対象物の目詰まりの程度を評価する目詰まり評価手段、
として機能させることを特徴とする目詰まり評価プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−113636(P2013−113636A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258139(P2011−258139)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000135771)株式会社パスコ (102)
【Fターム(参考)】