説明

目開閉判定装置およびプログラム

【課題】人物の変化に対する耐性および環境の変化に対する耐性を有した目開閉状態の判定を行うことが可能な技術を提供する。また、複数のエッジ部分から瞼のエッジ部分を選択する困難さを伴わない目開閉状態の判定を行うことが可能な技術を提供する。
【解決手段】画像に存在する目の開閉状態を判定する目開閉判定装置10において、画像を構成する複数の画素の各々の濃度勾配方向を抽出する勾配抽出処理部110と、複数の画素の各々の濃度勾配方向に基づいて1または複数の瞼候補領域を抽出する瞼候補領域抽出処理部120と、1または複数の瞼候補領域に基づいて目の開閉状態を判定する開閉判定処理部130と、を備えることを特徴とする、目開閉判定装置10が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目開閉判定装置およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、目の状態が開眼状態と閉眼状態とのいずれであるかを示す目開閉状態を判定する手法として様々な技術が開示されている。例えば、特許文献1には、睡眠の有無を判定するために目開閉状態を判定する手法がいくつか開示されている。この特許文献1には、具体的に、目開閉状態を判定する手法として、露出している瞳のサイズを利用する手法、目領域を構成する部位の変動方向を利用する手法、テンプレートマッチングを利用する手法、瞼の位置を利用する手法などが挙げられている。
【0003】
露出している瞳のサイズを利用する手法では、まず、画像に映る目領域を2値化(または白黒化)する処理が行われる。また、2値化されたデータに基づいて縦方向の黒色画素数が検出され、黒色画素数に基づいて目が開いている程度を表す指標が算出される。そして、この指標と閾値との関係に基づいて目開閉状態が判定される。なお、この指標としては、例えば、現在のフレームにおける黒色画素数を所定時間内のフレームにおける黒色画素数の最大値により除して得られる値が使用される。
【0004】
目領域を構成する部位の変動方向を利用する手法では、フレーム間における目領域の差分情報に基づいて目領域を構成する部位の垂直方向への変動方向が把握される。そして、変動方向に基づいて目開閉状態の遷移が判定される。例えば、下方向への変動は、開眼状態から閉眼状態への遷移として検出される。
【0005】
テンプレートマッチングを利用する手法では、開眼状態と閉眼状態の各々の状態が映されたサンプル画像がテンプレートとして記憶されている。そして、撮像画像から検出された目領域とテンプレートとの照合の結果、撮像画像に映る目の状態が開眼状態と閉眼状態とのいずれに近いかが判定されることにより目開閉状態が判定される。
【0006】
瞼の位置を利用する手法では、まず、画像から瞼のエッジ部分が検出される。そして、瞼のエッジ部分が目領域よりも上側にあれば開眼状態、下側にあれば閉眼状態と判定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−050703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、露出している瞳のサイズを利用する手法では、環境の変化に対する耐性が低い。例えば、目領域全体が明るい場合は黒色画素数が少なくなるために被写体の目が閉眼状態と判定され易くなり、目領域全体が暗い場合は黒色画素数が多くなるために被写体の目が開眼状態と判定され易くなる。そのため、被写体が明るい場所から暗い場所に移動した場合には、被写体の目が実際には閉眼状態であるが開眼状態であると判定されたり、被写体が暗い場所から明るい場所に移動した場合には、被写体の目が実際には開眼状態であるが閉眼状態であると判定されたりするといった誤判定が起こる可能性がある。
【0009】
目領域を構成する部位の変動方向を利用する手法では、環境の変化に対する耐性が低い。例えば、環境が変化した場合には、画像全体または一部を構成する1または複数の画素の各々の値が大きく変化するため、目領域を構成する部位が上下どちらに変動したかを推定することが困難である。
【0010】
テンプレートマッチングを利用する手法では、被写体となる人物の変化に対する耐性が低い。開眼状態と閉眼状態とのいずれの場合であっても、目領域の画像には個人差がある。しかし、様々な人物に適用できるテンプレートの作成は困難である。また、被写体となる人物ごとにテンプレートを作成することは、目開閉状態の判定の利便性を低下させる要因となり得る。
【0011】
瞼の位置を利用する手法では、上記したような環境の変化に対する耐性が低いという問題、被写体となる人物の変化に対する耐性が低いという問題などはないが、瞼のエッジ部分を検出するのが困難であるという問題がある。例えば、開眼状態であっても目領域には多数のエッジ部分が存在する。そのため、多数のエッジ部分から瞼のエッジ部分を選択するのは困難である。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、人物の変化に対する耐性および環境の変化に対する耐性を有した目開閉状態の判定を行うことが可能な技術を提供することにある。また、本発明の目的とするところは、複数のエッジ部分から瞼のエッジ部分を選択する困難さを伴わない目開閉状態の判定を行うことが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記問題を解決するために、本発明のある観点によれば、画像に存在する目の開閉状態を判定する目開閉判定装置において、前記画像を構成する複数の画素の各々の濃度勾配方向を抽出する勾配抽出処理部と、前記勾配抽出処理部により抽出された前記複数の画素の各々の濃度勾配方向に基づいて1または複数の瞼候補領域を抽出する瞼候補領域抽出処理部と、前記瞼候補領域抽出処理部により抽出された1または複数の瞼候補領域に基づいて目の開閉状態を判定する開閉判定処理部と、を備えることを特徴とする、目開閉判定装置が提供される。
【0014】
前記勾配抽出処理部は、前記複数の画素の各々に関して、隣接画素との差分に基づいて濃度勾配を求めて前記濃度勾配を複数方向のいずれかに分類することにより前記濃度勾配方向を抽出してもよい。
【0015】
前記瞼候補領域抽出処理部は、前記複数の画素の各々に対して、隣接画素との間における前記濃度勾配方向の変化に応じた得点を付与し、前記複数の画素のうち所定の得点よりも高い得点が付与された画素により構成される領域を前記1または複数の瞼候補領域として抽出してもよい。
【0016】
前記瞼候補領域抽出処理部は、前記濃度勾配方向の変化が縦方向の場合には、前記濃度勾配方向の変化が斜め方向および横方向の場合よりも高い得点を付与してもよい。
【0017】
前記開閉判定処理部は、前記1または複数の瞼候補領域の中から横幅の最も長い領域を瞼領域として検出し、前記瞼領域の横幅に基づいて目の開閉状態を判定してもよい。
【0018】
前記目開閉判定装置は、前記1または複数の瞼候補領域のいずれかを補正する瞼候補領域補正処理部をさらに備えてもよい。
【0019】
前記目開閉判定装置は、前記開閉判定処理部により、左目および右目の各々に関して異なる開閉状態が判定された場合に、いずれかの判定を選択する左右統合判定処理部をさらに備えてもよい。
【0020】
また、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、画像を構成する複数の画素の各々の濃度勾配方向を抽出する勾配抽出処理部と、前記勾配抽出処理部により抽出された前記複数の画素の各々の濃度勾配方向に基づいて1または複数の瞼候補領域を抽出する瞼候補領域抽出処理部と、前記瞼候補領域抽出処理部により抽出された1または複数の瞼候補領域に基づいて目の開閉状態を判定する開閉判定処理部と、を備える目開閉判定装置として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように本発明によれば、人物の変化に対する耐性および環境の変化に対する耐性を有した目開閉状態の判定を行うことが可能となる。本発明によれば、複数のエッジ部分から瞼のエッジ部分を選択する困難さを伴わない目開閉状態の判定を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】目開閉判定システムの動作を示すフローチャートである。
【図2】第1の実施形態に係る目開閉判定装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る目開閉判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】顔検出処理の処理結果の例を示す図である。
【図5】目領域検出処理の処理結果の例を示す図である。
【図6】ノイズ除去処理の処理結果の例を示す図である。
【図7】勾配抽出処理の処理結果の例を示す図である。
【図8】画素の色と濃度勾配方向との対応を示す図である。
【図9】各画素の濃度勾配方向に対する得点の与え方の一例を示す図である。
【図10】各画素の濃度勾配方向に対する得点の与え方の他の一例を示す図である。
【図11】各画素の濃度勾配方向に対して得点が付与された結果の例を示す図である。
【図12】瞼候補領域から検出された瞼領域の例を示す図である。
【図13】第2の実施形態に係る目開閉判定装置の機能構成を示すブロック図である。
【図14】第2の実施形態に係る目開閉判定装置の動作を示すフローチャートである。
【図15】瞼候補領域抽出処理の処理結果(補正前)の例を示す図である。
【図16】瞼候補領域抽出処理の処理結果(補正後)の例を示す図である。
【図17】第3の実施形態に係る目開閉判定装置の機能構成を示すブロック図である。
【図18】第3の実施形態に係る目開閉判定装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0024】
また、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、同一符号のみを付する。
【0025】
[目開閉判定システムの構成]
図1は、目開閉判定システムの動作を示すフローチャートである。図1を参照しながら、目開閉判定システムの動作について説明する。この目開閉判定システムの動作は、以下に説明する本発明の第1の実施形態〜第3の実施形態の前提となる動作である。なお、以下において、画像には被写体の顔が映されており、画像を構成する複数の画素の各々の値を単に「画素」と言う場合もある。
【0026】
図1に示すように、目開閉判定システムによる動作は、顔検出処理(S10)、目領域検出処理(S20)および目開閉判定処理(S30)を含んでいる。顔検出処理(S10)は、画像を取得し、画像中の人物の顔領域を検出する処理である。この顔検出処理(S10)は、例えば、図示しない顔検出装置により実行され得る。目領域検出処理(S20)は、画像と顔領域の位置とを取得し、画像と顔領域の位置とに基づいて顔領域中の目領域の位置を画像から検出する処理である。この目領域検出処理(S20)は、例えば、図示しない目領域検出装置により実行され得る。
【0027】
目開閉判定処理(S30)は、画像と目領域の位置とを取得し、画像と目領域の位置とに基づいて目領域中にある目が開眼状態および閉眼状態のいずれであるかを判定する。この目開閉判定処理(S30)は、例えば、目開閉判定装置10により実行され得る。図示しない顔検出装置、図示しない目領域検出装置および目開閉判定装置10の各々は、別体に構成されていてもよく、これらの装置のいずれか2つまたは3つ全てが一体化されていてもよい。
【0028】
[第1の実施形態の説明]
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。図2は、第1の実施形態に係る目開閉判定装置10Aの機能構成を示すブロック図である。図2に示すように、第1の実施形態に係る目開閉判定装置10Aは、勾配抽出処理部110、瞼候補領域抽出処理部120および開閉判定処理部130を備える。勾配抽出処理部110、瞼候補領域抽出処理部120および開閉判定処理部130の各々が有する機能の詳細は、後に説明する。
【0029】
図3は、第1の実施形態に係る目開閉判定装置10Aの動作を示すフローチャートである。図3に示すように、目開閉判定装置10Aの動作は、ノイズ除去処理(S110)、勾配抽出処理(S120)、瞼候補領域抽出処理(S130)および開閉判定処理(S140)を含んでいる。ノイズ除去処理(S110)は、画像と目領域の位置とを取得し、画像と目領域の位置とに基づいて画像中の目領域からノイズを除去する処理である。ノイズ除去処理(S110)は、勾配抽出処理部110により実行される。ノイズ除去処理(S110)は、目開閉状態の判定精度を向上させるために実行されるため、特に実行されなくてもよい。
【0030】
勾配抽出処理(S120)は、ノイズが除去された目領域画像を取得し、目領域画像中の各画素の濃度勾配方向を抽出する処理である。勾配抽出処理(S120)は、勾配抽出処理部110により実行される。瞼候補領域抽出処理(S130)は、各画素の濃度勾配方向を取得し、各画素と周辺画素との関係に基づいて各画素に関する濃度勾配方向を得点化し、これらの得点をエッジ部分の強度として扱うことで瞼候補領域を抽出する処理である。瞼候補領域抽出処理(S130)は、瞼候補領域抽出処理部120により実行される。開閉判定処理(S140)は、瞼候補領域を取得し、瞼候補領域に基づいて目開閉状態を判定する処理である。開閉判定処理(S140)は、開閉判定処理部130により実行される。
【0031】
[各処理の詳細と処理結果の例]
続いて、各処理の詳細と処理結果の例について説明する。
【0032】
[顔検出処理(S10)]
まず、顔検出処理(S10)の詳細と処理結果の例について説明する。顔検出処理(S10)には様々な手法が応用可能である。例えば、P.Viola and M.Jones, “Rapid object Detection using a Boosted Cascade of
Simple Features”, Proc.of IEEE
Conf.CVPR,1,pp.511-518,2001.に記載されている手法などが利用できる。顔検出処理(S10)の処理結果の例を図4に示す。図4には、画像から検出された開眼状態の顔領域を含む矩形領域の輪郭F1と画像から検出された閉眼状態の顔領域を含む矩形領域の輪郭F2とが示されている。顔検出処理(S10)により輪郭F1または輪郭F2が検出される。
【0033】
[目領域検出処理(S20)]
続いて、目領域検出処理(S20)の詳細と処理結果の例について説明する。目領域検出処理(S20)には様々な手法が応用可能である。例えば、T.F.Cootes, G.J.Edwards, and C.J.Taylor, “Active
Appearance Models”, IEEE TRANSACTIONS ON PATTERN ANALYSIS AND MACHINE
INTELLIGENCE, VOL.23,NO.6, JUNE 2001,pp.681-685に記載されている手法などが利用できる。目領域検出処理(S20)の処理結果の例を図5に示す。図5には、開眼状態の右目領域E11と開眼状態の左目領域E12とが示されている。また、図5には、閉眼状態の右目領域E21と閉眼状態の左目領域E22とが示されている。
【0034】
図5では、開眼状態の右目領域E11、開眼状態の左目領域E12、閉眼状態の右目領域E21および閉眼状態の左目領域E22が、各目領域を含む矩形領域として表現されているが、各目領域を含む領域であれば特に矩形領域に限定されない。開眼状態の顔が画像に映っている場合には、目領域検出処理(S20)により開眼状態の右目領域E11および開眼状態の左目領域E12の少なくともいずれか一方が検出される。また、閉眼状態の顔が画像に映っている場合には、目領域検出処理(S20)により閉眼状態の右目領域E21および閉眼状態の左目領域22の少なくともいずれか一方が検出される。左右の目領域が検出された場合には、左右の目領域に関して以降の処理が実行され得るが、第1の実施形態および第2の実施形態では、目領域として右目領域が検出される場合について説明する。
【0035】
[目開閉判定処理(S30)]
続いて、目開閉判定処理(S30)の詳細と処理結果の例について説明する。目開閉判定処理(S30)では、目領域検出処理(S20)により検出された目領域に対して目開閉状態の判定が行われる。上記したように、目開閉判定処理(S30)には、ノイズ除去処理(S110)、勾配抽出処理(S120)、瞼候補領域抽出処理(S130)および開閉判定処理(S140)が含まれている。各処理の詳細と処理結果の例について説明する。
【0036】
[ノイズ除去処理(S110)]
続いて、ノイズ除去処理(S110)の詳細と処理結果の例について説明する。ノイズ除去処理(S110)には様々な手法が応用可能である。例えば、ノイズ除去処理にはガウシアンフィルタやメディアンフィルタなどが利用できる。ノイズ除去処理の処理結果の例を図6に示す。図6には、開眼状態の右目領域E11に対するノイズ除去処理の処理結果が目領域E111として示され、閉眼状態の右目領域E21に対するノイズ除去処理の処理結果が目領域E211として示されている。なお、上記したように、ノイズ除去処理(S110)は、目開閉状態の判定精度を向上させるために実行されるため、特に実行されなくてもよい。
【0037】
[勾配抽出処理(S120)]
続いて、勾配抽出処理(S120)の詳細と処理結果の例について説明する。勾配抽出処理部110は、画像を構成する複数の画素の各々の濃度勾配方向を抽出する。より詳細には、勾配抽出処理部110は、画像を構成する複数の画素の各々に関して、隣接画素との差分に基づいて濃度勾配を求めて濃度勾配を複数方向のいずれかに分類することにより濃度勾配方向を抽出する。濃度勾配の分類には以下の手法を利用することができる。
【0038】
・上方向、下方向、左方向、右方向の4方向のいずれかに分類する手法
・左上方向、右上方向、左下方向、右下方向の4方向のいずれかに分類する手法
・上方向、下方向、左上方向、右上方向、左下方向、右下方向の6方向のいずれかに分類する手法
・上記4方向をさらに2つに分割し、8方向のいずれかに分類する手法
【0039】
これらの濃度勾配の分類手法は例にすぎず、他の手法により複数の方向のいずれかに分類してもよい。例えば、画素の濃度勾配を、上方向、下方向、左方向、右方向の4方向のいずれかに分類する手法を採用する場合、右隣の画素と自分自身の画素との差分(dx)と下隣の画素と自分自身の画素との差分(dy)とを利用して、以下のように濃度勾配を分類する手法を採用することができる。なお、ここでは、右方向をx軸方向、下方向をy軸方向としている。
【0040】
・dyの絶対値がdxの絶対値以上でありdyが0未満の場合、上方向に分類
・dyの絶対値がdxの絶対値以上でありdyが0以上の場合、下方向に分類
・dyの絶対値がdxの絶対値未満でありdxが0未満の場合、左方向に分類
・dyの絶対値がdxの絶対値未満でありdxが0以上の場合、右方向に分類
【0041】
上記した濃度勾配方向の求め方は例にすぎないため、利用する画素が異なっていたり、閾値が異なっていたりしてもよい。勾配抽出処理の処理結果の例を図7に示す。図7に示した例では、ノイズ除去後の画像を構成する各画素の濃度勾配を上記に例示した手法により上下左右の4種類の濃度勾配方向のいずれかに分類している。図7には、特に、開眼状態における各画素の濃度勾配方向が目領域E112として示され、閉眼状態における各画素の濃度勾配方向が目領域E212として示されている。図7に示された画素の色と濃度勾配方向との対応を図8に示す。例えば、図7に示された白色領域は、その画素における濃度勾配方向が下方向であることを示している。すなわち、白色領域は、その画素の周辺画素との関係が、「上」から「下」に向けて濃度が「明」から「暗」に変化しており、この変化が左右方向の変化よりも大きいことを示している。
【0042】
[瞼候補領域抽出処理(S130)]
続いて、瞼候補領域抽出処理(S130)の詳細と処理結果の例について説明する。閉眼状態では横方向または斜め方向のエッジ部分が長く続く領域が現れ、開眼状態では横方向または斜め方向に続くエッジ部分が分散して複数現れる。瞼候補領域抽出処理(S130)では、この横方向または斜め方向のエッジ部分が長く続く領域の有無を判定するために、隣接画素間での濃度勾配方向の変化を得点化し、この得点を瞼候補領域らしさとすることで1または複数の瞼候補領域を抽出する。すなわち、瞼候補領域抽出処理部120は、勾配抽出処理部110により抽出された複数の画素の各々の濃度勾配方向に基づいて1または複数の瞼候補領域を抽出する。
【0043】
このように、濃度勾配方向の変化に基づいて付与された得点を利用する手法を採用することにより、例えば、特許文献1に記載された手法が有する課題を解決することができる。隣接画素間における濃度勾配方向の変化は環境の変化に対する依存度が小さいため、この得点を利用する手法は、環境の変化に対する耐性が高いと言える。また、上記した横方向または斜め方向のエッジ部分が長く続く領域の出現は、閉眼状態における一般的な特徴であるため、この得点を利用する手法は、人物の変化に対する耐性が高いと言える。また、この得点を利用する手法は、横方向または斜め方向のエッジ部分が長く続く領域の有無により目開閉状態を判定するため、多数のエッジ部分から瞼のエッジ部分を選択する必要がない。
【0044】
例えば、瞼候補領域抽出処理部120は、複数の画素の各々に対して、隣接画素との間における濃度勾配方向の変化に応じた得点を付与すればよい。そして、瞼候補領域抽出処理部120は、複数の画素のうち所定の得点よりも高い得点が付与された画素により構成される領域を1または複数の瞼候補領域として抽出すればよい。
【0045】
さらに、閉眼状態においては横方向または斜め方向のエッジ部分が長く続く領域が現れるという特徴を踏まえると、瞼候補領域抽出処理部120は、濃度勾配方向の変化が縦方向の場合には、濃度勾配方向の変化が斜め方向および横方向の場合よりも高い得点を付与するようにするとよい。各画素の濃度勾配方向に対する得点の与え方の一例を図9に示す。図9に示した例では、縦方向に隣接する2画素間で縦方向の濃度勾配変化があれば「2点」、縦方向に隣接する2画素間で斜め方向または横方向の濃度勾配変化があれば「1点」が付与される。
【0046】
また、各画素の濃度勾配方向に対する得点の与え方の他の一例を図10に示す。図10に示す例のように、縦方向の濃度勾配変化に対して高い得点を付与し、斜め方向の濃度勾配変化に対して中程度の得点を付与し、横方向の勾配変化に対して低い得点を付与してもよい。より詳細には、図10に示した例では、縦方向に隣接する2画素間で縦方向の濃度勾配変化があれば「3点」、縦方向に隣接する2画素間で斜め方向の濃度勾配変化があれば「2点」、縦方向に隣接する2画素間で横方向の濃度勾配変化があれば「1点」が付与される。
【0047】
図9および図10に示した得点の与え方は、例にすぎない。したがって、縦方向以外の方向に隣接する2画素間での濃度勾配変化が利用されてもよく、濃度勾配変化に対して与えられる得点も特に限定されない。各画素の濃度勾配方向に対して得点が付与された結果の例を図11に示す。図11には、図7に目領域E112として示された開眼状態における各画素の濃度勾配方向に対して図9に示した得点の与え方により得点が付与された結果が、目領域E113として示されている。同様に、図11には、図7に目領域E212として示された閉眼状態における各画素の濃度勾配方向に対して図9に示した得点の与え方により得点が付与された結果が、目領域E213として示されている。なお、目領域E113および目領域E213に示された白色領域には「2点」、灰色領域には「1点」、黒色領域には「0点」が付与されている。
【0048】
なお、図11に示した例では、(x,y)と(x,y+1)との組み合わせに対して与えられる得点が(x,y)における得点とされているが、(x,y−1)と(x,y)との組み合わせに対して与えられる得点と、(x,y)と(x,y+1)との組み合わせに対して与えられる得点とが加算された結果が(x,y)における得点とされてもよい。あるいは、複数の組み合わせの各々に対して付与される得点が加算された結果が(x,y)における得点とされてもよい。いくつの組み合わせが利用されるかは、画像の縮小程度などに応じて調整されてもよい。
【0049】
目領域E113に示されたように、開眼状態には白色領域(すなわち、得点の高い領域)が分散して複数現れるのに対して、目領域E213に示されたように、閉眼状態には白色領域(すなわち、得点の高い領域)が斜め方向または横方向に長く現れることが分かる。上記したように、瞼候補領域抽出処理部120は、複数の画素のうち所定の得点よりも高い得点が付与された画素により構成される領域を1または複数の瞼候補領域として抽出すればよい。例えば、瞼候補領域抽出処理部120は、「2点」が付与された白色領域を瞼候補領域として抽出すればよい。
【0050】
なお、瞼候補領域は、4連結により規定されてもよい。すなわち、得点の高い複数の画素同士が、上方向、下方向、左方向または右方向に隣接する場合には、その複数の画素が同一の瞼候補領域を構成するとみなされてもよい。あるいは、瞼候補領域は、8連結により規定されてもよい。すなわち、得点の高い複数の画素同士が、上記4方向の他に、右上方向、右下方向、左上方向または左下方向に隣接する場合には、その複数の画素が同一の瞼候補領域を構成するとみなされてもよい。
【0051】
また、得点が付与された各画素に対して2値化処理が行われてもよい。例えば、閾値を「2点」とし、得点が閾値以上である領域が白色領域とされ、得点が閾値未満である領域が黒色領域とされもよい。このように、2値化処理が行われた結果として抽出される白色領域(すなわち、閾値以上の得点が付与された領域)が1または複数の瞼候補領域として抽出されてもよい。
【0052】
[開閉判定処理(S140)]
続いて、開閉判定処理(S140)の詳細と処理結果の例について説明する。開閉判定処理(S140)では、抽出された1または複数の瞼候補領域に基づいて目開閉状態を判定する。より詳細には、開閉判定処理(S140)では、抽出された1または複数の瞼候補領域から高得点が付与された画素が横方向に長く連続する領域の検出の成否によって、目開閉状態を判定する。すなわち、開閉判定処理部130は、1または複数の瞼候補領域の中から横幅の最も長い領域を瞼領域として検出し、瞼領域の横幅に基づいて目の開閉状態を判定する。
【0053】
瞼候補領域から検出された瞼領域の例を図12に示す。図12には、得点が付与された目領域E113に対する2値化処理の結果として複数の瞼候補領域が抽出され、複数の瞼領域の中から検出された横幅の最も長い領域が瞼領域(目領域E114に示されている白色領域)として示されている。また、図12には、得点が付与された目領域E213に対する2値化処理の結果として複数の瞼候補領域が抽出され、複数の瞼領域の中から検出された横幅の最も長い領域が瞼領域(目領域E214に示されている白色領域)として示されている。
【0054】
開閉判定処理(S140)においては、このようにして検出された瞼候補領域に基づいて目開閉状態が判定される。例えば、閉眼状態においては目領域E214に横に長い瞼領域が出現するのが一般的である。この横に長い瞼領域は、大抵の場合には上瞼に相当する。したがって、瞼領域の横幅が閾値以上である場合には閉眼状態であると判定されてもよい。一方、例えば、開眼状態においては目領域E114に横に短い瞼領域が出現するのが一般的である。この横に短い瞼領域は、大抵の場合には上瞼または下瞼のいずれか一方の一部に相当する。したがって、瞼領域の横幅が閾値未満である場合には開眼状態であると判定されてもよい。
【0055】
[効果の説明]
以上に説明したように、画像に存在する目の開閉状態を判定する目開閉判定装置10Aは、画像を構成する複数の画素の各々の濃度勾配方向を抽出する勾配抽出処理部110を備えている。また、目開閉判定装置10Aは、複数の画素の各々の濃度勾配方向に基づいて1または複数の瞼候補領域を抽出する瞼候補領域抽出処理部120と、1または複数の瞼候補領域に基づいて目の開閉状態を判定する開閉判定処理部130と、をさらに備えている。
【0056】
濃度勾配方向は環境に対する依存度が小さいため、かかる構成によれば、環境の変化に対する耐性が高い目開閉状態の判定を行うことができる。また、濃度勾配方向は、被写体となる人物に対する依存度も小さいため、かかる構成によれば、人物の変化に対する耐性が高い目開閉状態の判定を行うことができると言える。また、横方向または斜め方向のエッジ部分が長く続く領域の有無により目開閉状態を判定するため、かかる構成によれば、多数のエッジ部分から瞼のエッジ部分を選択する必要がないという利点を享受することができる。
【0057】
[第2の実施形態の説明]
続いて、本発明の第2の実施形態について説明する。本発明の第2の実施形態に係る目開閉判定システムの動作は、図1に示した本発明の第1の実施形態に係る目開閉判定システムの動作と同様になされる。図13は、第2の実施形態に係る目開閉判定装置10Bの機能構成を示すブロック図である。図13に示すように、第2の実施形態に係る目開閉判定装置10Bは、第1の実施形態に係る目開閉判定装置10Aが備える機能ブロックの他に、瞼候補領域補正処理部121を備える。瞼候補領域補正処理部121が有する機能の詳細は、後に説明する。
【0058】
図14は、第2の実施形態に係る目開閉判定装置10Bの動作を示すフローチャートである。図14に示すように、目開閉判定装置10Bの動作は、図3に示した動作の他に瞼候補領域補正処理(S131)を含んでいる。瞼候補領域補正処理(S131)は、1または複数の瞼候補領域のいずれかを補正する処理である。瞼候補領域補正処理(S131)は、瞼候補領域補正処理部121により実行される。
【0059】
[瞼候補領域補正処理の詳細と処理結果の例]
続いて、瞼候補領域補正処理の詳細と処理結果の例について説明する。
【0060】
[瞼候補領域補正処理(S131)]
瞼候補領域補正処理(S131)では、目領域中に目以外のものが含まれる場合に対応するために、1または複数の瞼候補領域のいずれかを補正する。目領域中に含まれる目以外のものとしては、髪の毛、眼鏡、環境の眼鏡への映り込みなどが考えられる。このような場合、本来であれば瞼候補領域に含まれると判定されるべき画素が瞼候補領域に含まれないと判定されることがある。瞼候補領域抽出処理の処理結果(補正前)の例を図15に示す。図15には、閉眼状態における右目の目領域に対する瞼候補領域抽出処理の処理結果(補正前)として目領域E215が示されている。
【0061】
目領域E215には、本来であれば白色領域に含まれると判定されるべき画素が灰色領域に含まれると判定されてしまっている画素が存在する。これは、目領域中に目以外のものが含まれることが原因となり、その画素に低い得点(例えば、「1点」)が付与されたからであると考えられる。瞼候補領域補正処理(S131)では、このような場合に目開閉状態の判定を失敗することを防ぐための補正処理を実行する。具体的には、所定の長さ以上の長さを有する2つの瞼候補領域が画像中の同じ高さに同じ角度で現れた場合に、その2つの瞼候補領域の間の画素の得点を高くする補正処理が考えられる。
【0062】
同じ高さである場合には、2つの瞼候補領域の高さが完全に一致する場合ばかりでなく、高さの差が所定の範囲内に収まっている場合も含まれる。同様に、同じ角度である場合には、2つの瞼候補領域の角度が完全に一致する場合ばかりでなく、角度の差が所定の範囲内に収まっている場合も含まれる。瞼候補領域抽出処理の処理結果(補正後)の例を図16に示す。図16には、目領域E215に対して補正が行われた後の画像として目領域E216が示されている。図16に示された例では、2つの瞼候補領域の間の画素の得点を高くする補正がなされている。
【0063】
このような補正が行われることにより、図15に示したように瞼候補領域が抽出された場合であっても正しく目開閉状態の判定が行われ得る。なお、瞼候補領域補正処理(S131)においては、瞼候補領域の抽出結果のみを利用する例示したが、目領域の画像を利用して目以外のものが目領域中に含まれることを判定してもよく、画像以外の情報を利用して目以外のものが目領域中に含まれることを判定してもよい。
【0064】
[効果の説明]
以上に説明したように、目開閉判定装置10Bは、1または複数の瞼候補領域のいずれかを補正する瞼候補領域補正処理部121をさらに備えている。かかる構成によれば、目領域中に目以外のものが含まれる場合に対応した目開閉状態の判定を行うことが可能となる。
【0065】
[第3の実施形態の説明]
続いて、本発明の第3の実施形態について説明する。本発明の第3の実施形態に係る目開閉判定システムの動作は、図1に示した本発明の第1の実施形態に係る目開閉判定システムの動作と同様になされる。図17は、第3の実施形態に係る目開閉判定装置10Cの機能構成を示すブロック図である。図17に示すように、第3の実施形態に係る目開閉判定装置10Cは、第1の実施形態に係る目開閉判定装置10Aが備える機能ブロックの他に、左右統合判定処理部140を備える。左右統合判定処理部140が有する機能の詳細は、後に説明する。
【0066】
図17は、第3の実施形態に係る目開閉判定装置10Cの動作を示すフローチャートである。図17に示すように、目開閉判定装置10Cの動作は、図3に示した動作の他に左右統合判定処理(S150)を含んでいる。左右統合判定処理(S150)は、開閉判定処理部130により、左目および右目の各々に関して異なる開閉状態が判定された場合に、いずれかの判定を選択する処理である。左右統合判定処理(S150)は、左右統合判定処理部140により実行される。
【0067】
[左右統合判定処理の詳細と処理結果の例]
続いて、左右統合判定処理の詳細と処理結果の例について説明する。
【0068】
[左右統合判定処理(S150)]
左右統合判定処理(S150)では、左目および右目の各々に関して異なる開閉状態が判定された場合に、いずれかの判定を選択する処理である。左右統合判定処理(S150)では、左右の判定結果間において不均衡がある場合に対応するために、左右の判定結果を統合した目開閉状態判定を行う。例えば、画像中で左右に大きな環境の違いがある場合などは、左右の目開閉状態の判定結果の信頼性が異なる。
【0069】
そのため、例えば、片側(例えば、左側)が良好な環境であり他の片側(例えば、右側)が劣悪な環境である場合などには、片側(例えば、左側)の判定結果のみを利用することで、画像中の目が閉眼状態であるか開眼状態であるかを判定することができる。環境が良好であるか劣悪であるかを判定する手法は特に限定されない。例えば、領域ごとに平均輝度を算出することにより領域ごとの輝度を取得し、閾値よりも輝度が高い領域は環境が良好であり、閾値よりも輝度が低い領域は環境が劣悪であると判定され得る。閾値と輝度が同じ領域はいずれに判定されてもよい。
【0070】
また、環境が同じ場合であっても、左右の判定結果が異なる場合には、開閉判定処理(S30)で利用された瞼領域の横幅の値を左右に関して加算した値と閾値との関係に基づいて、目開閉状態の判定がなされてもよい。例えば、閾値よりも加算値が大きい場合は閉眼状態であり、閾値よりも加算値が小さい場合は開眼状態であると判定され得る。閾値と加算値が同じ場合はいずれに判定されてもよい。
【0071】
[効果の説明]
以上に説明したように、目開閉判定装置10Cは、開閉判定処理部130により、左目および右目の各々に関して異なる開閉状態が判定された場合に、いずれかの判定を選択する左右統合判定処理部140をさらに備えている。かかる構成によれば、左右の不均衡に対応した目開閉状態判定を行うことが可能となる。
【0072】
[変形例の説明]
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0073】
本実施形態では、勾配抽出処理において、4種類、6種類または8種類の濃度勾配方向に濃度勾配を分類する場合を例示している。しかしながら、勾配抽出処理はこのような分類手法に限定される必要はない。例えば、他の分類手法により濃度勾配が濃度勾配方向に分類されてもよい。
【0074】
また、本実施形態では、勾配抽出処理において、隣接画素との差分の取得手法として、右隣の画素との差分と下隣の画素との差分とを利用する場合を例示しているが、勾配抽出処理における隣接画素との差分取得手法はこのような取得手法に限定される必要はない。例えば、左隣の画素との差分や上隣の画素との差分や斜め方向に隣接する画素を利用してもよい。
【0075】
また、本実施形態では、瞼候候補領域抽出処理において、隣接画素との濃度勾配方向の変化として縦方向の隣接画素を利用する場合を例示しているが、瞼候補領域抽出処理における隣接画素との濃度勾配方向の変化の取得手法はこのような取得手法に限定される必要はない。例えば、横方向の左隣画素や斜め方向の隣接画素を利用してもよい。
【0076】
本実施形態では、瞼候補領域抽出処理において、図9または図10に示されたような得点を利用する場合を例示しているが、瞼候補領域抽出処理で与えられる得点はこれらの手法に限定される必要はない。例えば、例示していない組み合わせを利用したり、例示していない得点を利用したりしてもよい。
【0077】
本実施形態では、瞼候補領域補正処理において、2つの瞼候補領域をつなげる場合を例示しているが、瞼候補領域補正処理はこのような手法に限定される必要はない。例えば、例示していない補正処理を実施してもよい。
【0078】
本実施形態では、左右統合判定処理において、画像中の環境を利用する場合と左右の瞼領域の横幅を加算した値を利用する場合とを例示しているが、左右統合判定処理はこのような手法に限定される必要はない。例えば、例示していない左右統合判定処理を実施してもよい。
【0079】
本実施形態では、第1の実施形態に対して、第2の実施形態と第3の実施形態とでそれぞれ特殊な条件への対応と左右不均衡への対応とを行う場合を例示している。しかしながら、第2の実施形態および第3の実施形態の各々は排他的に実施しなければならないものではない。例えば、第1の実施形態に対して第2の実施形態で示した瞼候補領域補正処理を行う機能と第3の実施形態で示した左右統合判定処理を行う機能との両方を追加することにより、特殊な条件への対応と左右不均衡への対応との両方を実施してもよい。
【0080】
さらに、目開閉判定装置10を構成する各ブロックは、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)などから構成され、記憶装置により記憶されているプログラムがCPUによりRAMに展開されて実行されることにより、その機能が実現され得る。あるいは、目開閉判定装置10を構成する各ブロックは、専用のハードウェアにより構成されていてもよいし、複数のハードウェアの組み合わせにより構成されてもよい。
【0081】
本実施形態に係る目開閉判定装置10は、様々な分野に適用され得る。例えば、撮像装置により被写体が撮像される場面に適用される例を想定すると、目開閉判定装置10により撮像画像に映る被写体が閉眼状態であると判定された場合には、撮像装置により再度自動的に被写体が撮像されるようにしてもよい。目開閉判定装置10により撮像画像に映る被写体が閉眼状態であると判定された場合には、撮像画像が加工されるようにしてもよい。また、例えば、被写体による自動車の運転時に適用される例を想定すると、目開閉判定装置10により撮像画像に映る被写体が閉眼状態であると判定された場合には、被写体が居眠りをしている可能性があるため、居眠り防止のための処理が実行されるようにしてもよい。
【0082】
尚、本明細書において、フローチャートに記述されたステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理はもちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的に又は個別的に実行される処理をも含む。また時系列的に処理されるステップでも、場合によっては適宜順序を変更することが可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0083】
10(10A,10B,10C) 目開閉判定装置
110 勾配抽出処理部
120 瞼候補領域抽出処理部
121 瞼候補領域補正処理部
130 開閉判定処理部
140 左右統合判定処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像に存在する目の開閉状態を判定する目開閉判定装置において、
前記画像を構成する複数の画素の各々の濃度勾配方向を抽出する勾配抽出処理部と、
前記勾配抽出処理部により抽出された前記複数の画素の各々の濃度勾配方向に基づいて1または複数の瞼候補領域を抽出する瞼候補領域抽出処理部と、
前記瞼候補領域抽出処理部により抽出された1または複数の瞼候補領域に基づいて目の開閉状態を判定する開閉判定処理部と、
を備えることを特徴とする、目開閉判定装置。
【請求項2】
前記勾配抽出処理部は、
前記複数の画素の各々に関して、隣接画素との差分に基づいて濃度勾配を求めて前記濃度勾配を複数方向のいずれかに分類することにより前記濃度勾配方向を抽出する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の目開閉判定装置。
【請求項3】
前記瞼候補領域抽出処理部は、
前記複数の画素の各々に対して、隣接画素との間における前記濃度勾配方向の変化に応じた得点を付与し、前記複数の画素のうち所定の得点よりも高い得点が付与された画素により構成される領域を前記1または複数の瞼候補領域として抽出する、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の目開閉判定装置。
【請求項4】
前記瞼候補領域抽出処理部は、
前記濃度勾配方向の変化が縦方向の場合には、前記濃度勾配方向の変化が斜め方向および横方向の場合よりも高い得点を付与する、
ことを特徴とする、請求項3に記載の目開閉判定装置。
【請求項5】
前記開閉判定処理部は、
前記1または複数の瞼候補領域の中から横幅の最も長い領域を瞼領域として検出し、前記瞼領域の横幅に基づいて目の開閉状態を判定する、
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の目開閉判定装置。
【請求項6】
前記目開閉判定装置は、
前記1または複数の瞼候補領域のいずれかを補正する瞼候補領域補正処理部をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の目開閉判定装置。
【請求項7】
前記目開閉判定装置は、
前記開閉判定処理部により、左目および右目の各々に関して異なる開閉状態が判定された場合に、いずれかの判定を選択する左右統合判定処理部をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の目開閉判定装置。
【請求項8】
コンピュータを、
画像を構成する複数の画素の各々の濃度勾配方向を抽出する勾配抽出処理部と、
前記勾配抽出処理部により抽出された前記複数の画素の各々の濃度勾配方向に基づいて1または複数の瞼候補領域を抽出する瞼候補領域抽出処理部と、
前記瞼候補領域抽出処理部により抽出された1または複数の瞼候補領域に基づいて目の開閉状態を判定する開閉判定処理部と、
を備える目開閉判定装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−109401(P2013−109401A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251750(P2011−251750)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】