説明

直ぐに利用可能な臍帯血から誘導される細胞物質、及びその組成物の提供方法

本発明は、哺乳類の臍帯血幹細胞、好ましくは、CD34+/CD38−細胞のTVEMF−増殖、TVEMF−増殖した細胞の結果としての組成物、及び、該組成物によって疾病を治療する方法又は組織を治療する方法に関する。本発明の組成物の様々な利益及び利点が説明されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TVEMF−生物反応器で調製される臍帯血幹細胞、及びその調製方法、その組成物、及び、該細胞又は該組成物で哺乳類を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長い間、医学界においてヒト組織の再生が望まれていた。これまで、ヒト組織の治療の多くは、ドナーからの同じ組織の移植によって行われてきた。元々は、ヘリック双子の一方から他方への生体腎臓の移植から始まり、その後、南アフリカのクリスチャン・バーナード医師が1967年12月3日に行ったデニス・ダルバル氏からルイス・ワシュカンズキ氏への心臓移植により世界的に有名になり、組織移植は、末期患者の延命方法として広く受け入れられるようになった。
【0003】
ヒト組織の移植は、最初に使用した時から、重大な問題に直面した。第一に身体の自然な免疫システムによる組織の拒絶反応である。このため、組織移植はしばしば限られた寿命の延長にしか用いられなかった(ワシュカンズキ氏は術後18日しか生きられなかった)。
【0004】
身体の免疫システムの問題を克服するために、免疫システムを抑制して、拒絶反応が発生するまでの組織の使用を長くすべく、多くの拒絶反応抑制剤(例えば、イムラン、シクロスポリン)が直ぐに開発された。しかしながら、拒絶反応の問題は解決せず、組織移植の代わりになるものが求められるようになった。
【0005】
骨髄移植も使用された。そして今でも白血病のような病気の治療にとっては、骨髄のような組織を治療する処置の選択肢となっている。しかしながら、骨髄移植にも問題がある。骨髄移植には適合するドナーが必要であり(見つかる確率はほぼ50%未満)、苦痛を伴い、高価で、リスクが高い。その結果、骨髄移植の代わりになるものが大いに望まれている。米国特許第6,129,911号に記載の肝臓の幹細胞の移植のような組織の幹細胞の移植は、同様の限界があるため普及させるには問題が多い。
【0006】
近年、研究者らは多能性胚幹細胞を組織移植の代替として使用する実験を行っている。胚幹細胞の使用の理論としては、理論的には胚幹細胞は、事実上身体のいかなる組織の再生にも利用することができる。しかしながら、組織再生に胚幹細胞を使用することには、いくつかの問題もある。これらの問題の中でもより深刻なものは、移植された胚幹細胞の可制御性は限られ、時には成長して腫瘍になることがあり、研究に使用可能であるヒト胚幹細胞が患者の免疫システムに拒絶されることがある(ネイチャー(Nature)、6月17日、2002年、ピアソン(Pearson)著、「幹細胞は2つを望む(Stem Cell Hopes Double)」、news@nature.com、オンライン発行:2002年6月21日)。さらに、胚幹細胞使用の普及には、倫理的、道徳的、及び政治的問題という重荷があり、その普及には依然として問題が多い。
【0007】
臍帯血はいくつかの研究分野において焦点とされていた。幹細胞の多能性は、最初、骨髄中の成人幹細胞から発見された。ヴェルフェイユ,CMら(Verfaille, CM. et al.)、「成人骨髄由来の間葉幹細胞の多能性(Pluripotency of mesenchymal stem cells derived from adult marrow)」。ネイチャー(Nature)417、オンライン発行6月20日;doi:10.1038/nature00900、(2002年)であって、ピアソン,H(Pearson, H)が、「幹細胞は2つを望む(Stem Cell Hopes Double)」、news@nature.com、オンライン発行:2003年6月21日、doi:10.1038/news020617-11において引用。多能性CD34+幹細胞及び分化能の低い(oligopotent)リンパ前駆細胞が臍帯血から発見され、リンパ系ナチュラルキラー細胞などに細胞の種類が分化された。ペレS.A.ら(Perez S.A. et al.)、「ヒトの臍帯血における新規の脊髄様NK細胞の前駆細胞(A novel myeloid-like NK cell progenitor in human umbilical cord blood)」、血液101(9):3444−50(2003年5月1日)。更に、B前駆細胞が骨髄だけでなく、臍帯血にも存在することが発見された。サンズE.ら(Sanz E.)著、「ヒト臍帯血CD34+Pax−5+ B−前駆細胞:遺伝子発現プロファイルの単一細胞解析(Human cord blood CD34+Pax-5+ B-cell progenitors: single-cell analyses of their gene expression profiles)」、血液101(9):4324−30(2003年5月1日)。
【0008】
ボイズら(Boyse et al.)の米国特許第6,569,427号には、貧血症、悪性腫瘍、自己免疫疾患などの様々な疾病及び疾患、及び様々な免疫機能障害及び欠損症についての治療又は予防における、凍結保存、及び、凍結保存された胎児又は新生児の血液の実用性が開示されている。また、ボイズは、異種遺伝子配列を用いた遺伝子治療における造血再構成の使用を開示している。しかしながら、ボイズの開示は治療的使用のための細胞増殖にまでは至らない。臍帯血バンクであるコルセル(CorCell)は、増殖、凍結保存及び臍帯血幹細胞移植に関する統計を提供する。「臍帯血幹細胞の増殖(Expansion of Umbilical 臍帯 Blood Stem Cells)」、情報シート 臍帯血、コールセル株式会社(2003年)。ある増殖工程は、バイオリアクターを中央コラーゲンベースのマトリックスに利用することを開示する。ユーリッヒ研究所(Research Center Julich)、「バイオリアクターからの血液幹細胞(Blood Stem Cells from the Bioreactor)」、プレスリリース2001年5月17日。さらに、臍帯血細胞を増殖前又は後に凍結することは、幹細胞の増殖能力に影響を及ぼさないことが示されている。ラッツァーリら(Lazzari, L. et al.)、「臍帯血からの造血系幹細胞の生体外増殖に対する凍結保存の効果に関する評価(Evaluation of the effect of cryopreservation ex vivo expansion of hematopoitic progenitors from cord blood)」、骨髄移植、28:693−698(2001年)。
【0009】
骨髄と比較して、臍帯血はよりよい造血貯留部の再構成をもたらすことが分かった。フラッソーニら(Frassoni F. et al.)「骨髄移植と比較して、臍帯血移植はよりよい造血貯留部の再構成をもたらす(Cord blood transplantation provides better reconstitution of hematopoeitic reservoir as compared to bone marrow transplantation)」、血液(2003年4月3日)。1998年12月アトランタで行われた最初の非相関幹細胞移植−1年アップデートも参照。骨髄及び臍帯血幹細胞移植、鎌状細胞情報センター(1999)。
【0010】
幹細胞の増殖に関係する分子機構を解明するために研究が続けられた。例えば、コールセルの記事は、デルタ1というシグナル分子が臍帯血幹細胞の開発を助けることを開示している。オーイシ K.ら(Ohishi K. et al.)、「デルタ1はヒトCD34+/CD38−臍帯血細胞の骨髄及び胸線の複製能を促進する(Delta-1 enhances marrow and thymus repopulating ability of human CD34+/38- cord blood cells)」、クリン インベスト(Clin. Invest.)110、1165−1174(2002年)。
【0011】
本明細書中、「臍帯血細胞」は胎児又は乳児の臍帯及び/又は胎盤由来の血球を意味する。
【0012】
臍帯血細胞は、成人又は身体の幹細胞と定義されるが、いくつかの要因によって臍帯血細胞、特に臍帯血幹細胞は他と異なるようになる。
【0013】
第1に、臍帯血は原始的である。臍帯血幹細胞は若いため、古い細胞よりも柔軟性を有することが多く、これは該細胞がより多くの種類の特殊化した細胞を生じさせることを意味する。また、DNAに変化をもたらすような損害を与える環境有害物質に影響される機会が少ないため、前記臍帯血幹細胞は、より健康な細胞である傾向がある。さらに、前記臍帯血幹細胞は若いため、移植患者により統合されやすく、移植片対宿主(GvHD)又は細胞拒絶反応を引き起こしにくい。また、前記臍帯血幹細胞は若いため、成人の・古い末梢血幹細胞よりも安定ではないと考えられることがある。これは、例えば、臍帯血幹細胞が比較的まだ新しく、非常に守られた環境にあるからである。したがって、古い幹細胞に比べて、臍帯血幹細胞は、例えば凍結保存から、よりダメージを受けやすい。
【0014】
第2に、臍帯血は幹細胞に富んでいる。臍帯血には、白血球(単核球を含む。本発明の目的において、単核球は1つしか核を有しない細胞である。)及び赤血球が含まれる。典型的には、臍帯血の約1から2%が幹細胞である。これより、臍帯血は最も幹細胞が豊富な供給源の一つである。普通分娩直後に収集された臍帯血と比べて、帝王切開から収集された臍帯血は、典型的にもう少し幹細胞が豊富である。また、他の組織と比べて、幹細胞は臍帯血からの分離が容易である。成人幹細胞が非常に多くの成熟した細胞において見つかるのに対して、幹細胞は見つかる量が少なく、見つけることが困難である。
【0015】
第3に、そして最後に、臍帯血は利用できる幹細胞の供給源である。骨髄などの身体組織からの成人幹細胞移植は、直ちに利用可能ではない。臍帯血の貯蔵によって、直ちに利用可能な幹細胞の供給源が提供される。生後間もない典型的なヒトの乳児からの臍帯血からは、一般的に50殻100mlの臍帯血が採集することができる。
【0016】
臍帯血を含有する臍帯は、胎児を胎盤子宮部に繋ぐへその緒であり、栄養素を供給し、排泄物を除去する。臍帯はひも状で約22インチ(56cm)の長さを有し、胎児の腹壁から胎盤子宮部へ延在している。
【0017】
臍帯の主要機能は、胎盤から胎児へ栄養及び酸素を移送すること、及び、胎児から胎盤へ排泄物を戻すことである。原則的に、臍帯はひも状であって、胎児の細胞膜で形成され、一端で胎児の細胞膜と一体化し、他端は胎盤で終止している。臍帯には、酸素を含んだ血液を胎児へ移送する1本の静脈、及び、酸素を含まない血液を胎児から搬出する2本の動脈を収容する粘液状のゼリーが含まれる。
【0018】
血液は、胎児から臍帯に沿って胎盤へ移送される。生体内の胎盤において、酸素、栄養素及び抗体が母親の血液から臍帯血へ拡散するとなるように臍帯血は母親の血液と近接される。胎児からの排泄物は、2本の酸素を含まない動脈を経由して母親の血液へ入る。そして、栄養素を豊富に含み、酸素を含み、排泄物が除去された臍帯血は、酸素を含んだ血液を含む静脈によって、臍帯を通り、胎児に戻される。
【0019】
生後、臍帯は固定及び切断される。臍帯を切断した後、乳児に付着した基部は、やがて萎んで無くなり、へそとして知られる傷跡が残る。
【0020】
臍帯血が特に豊富に幹細胞を有するため、臍帯血を特別な臍帯血バンクに保管する親がいる。臍帯血に含まれる臍帯血幹細胞は、骨髄に代わる移植として将来必要になった場合に用いることができる。研究から、臍帯血ドナーに関係しない人(遺伝子的に適合しない)でさえ、白血病及び他の悪性腫瘍との闘いにおいて、臍帯血細胞を拒絶する免疫反応を引き起こすことなく、臍帯血の移植から恩恵を受けることができるかもしれないということが分かってきた。
【0021】
典型的な臍帯血を採取する方法は2つある。血液バッグ採集と注射器採集である。血液バッグ採集においては、医療提供者が針を臍静脈に刺し、重力を活用して血液をバッグに徐々に排出させる。血液の流出が終わると、医療提供者がバッグを封止し、ラベルを貼る。この方法は通常、胎盤が排出される前に行われる。
【0022】
注射器採集は、血液バッグ採集と類似しているが、臍帯血が抗凝血剤(血液が凝固するのを防ぐ物質)を含む注射器に排出される点が異なる。血液は、血液バッグの代わりに注射器に保存される。この方法は、胎盤が排出される前又は後に行われる。注射器採集は、血液バッグ採集よりも信頼性の高い血液採取方法であると考えられている。また、注射器採集においては、血液バッグ採集よりもより多くの血液を採集することができる。いずれの方法が用いられているかに関わらず、又は、その他の臍帯血採集方法が用いられているかに関わらず、採集の全工程には、5分以下しか要しない。臍帯血は、出産後10〜15分以内に採集されることが好ましい。これ以上待つと、採集される臍帯血量が減り、したがって、採集される臍帯血幹細胞が少なくなってしまう。
【0023】
臍帯血を貯蔵又は保存する場合には、貯蔵施設に臍帯血が到着すると、臍帯血が、肝炎、HIV/AIDS、白血病又は免疫障害など感染性又は遺伝的疾患を有していないか確認する検査が行われる。臍帯血にそのような問題がある時は、保存に適さないと判断されるか、場合によっては、リスクの記録を伴って血液が保存される。将来血液が必要になった時には、親は、前記臍帯血のリスクが、臍帯血幹細胞の必要性を上回るか否かを判断することができる。
【0024】
保存される臍帯血は、典型的には、貯蔵される前に一連の工程を経る。第1に、臍帯血は、白血球、赤血球、及び血漿に分離される。これは、遠心分離機(血液の容器を血液が分離されるまで回転させる機器)又は沈澱作用(沈殿物を血液の容器に投入して血液を分離させる方法)によって行われる。第2に、臍帯血が底部に赤血球(RBC)、中間部に白血球(WBC)、及び上部に血漿というように分離されると、白血球は保存のために除去される。「軟膜」としても知られる中間層には、興味のある臍帯血幹細胞が含まれる。血液の他の部分は不要である。いくつかのバンクにおいては、これが処理する範囲である。しかしながら、他のバンクは、続いて、WBCから単核球(この場合、白血球のサブセット)を除去することによって軟膜を処理する。皆がこの方法に賛成ではないが、保存する量を低減することができ、細胞を保存するため必要な低温窒素を低減することができる。
【0025】
臍帯血サンプルからRBCを除去することが好ましい。人は同じHLA型を有するかもしれないが(幹細胞の移植に必要である)、同じ血液型ではないかもしれない。RBCを除去することによって、幹細胞移植に不都合な反応を最小限と留めることができる。したがって、RBCを除去することによって、幹細胞サンプルがより多くの人と適合する機会が多くなる。RBCは解凍された時に破裂することがあり、遊離ヘモグロビンを放出する。このタイプのヘモグロビンは、移植を受ける人の腎臓に深刻な影響を及ぼすことがある。さらに、幹細胞の生存能力は、RBCが破裂した時に低下する。
【0026】
細胞が凍結される前に、増殖することがある膨張する(すなわち、数の増加であって、サイズの増大ではない)。
【0027】
RBCが除去されると、細胞は保存され始め、長期保存のために凍結される。しかしながら、これは幹細胞にダメージを与えないように、ゆっくりと注意深く行わなければならない。血球を凍結する前に、凍結中のダメージを防ぐために、まず溶液と混合する。この溶液は凍結保存剤、凍結保存溶剤又は抗凍結剤といわれる。増殖した細胞は、凍結保存剤に入れられると、ダメージから細胞を守るためにゆっくりと凍結する。
【0028】
凍結すると(一般的な温度は約−196℃)、細胞を永久保存フリーザに移送する。フリーザにおいては、細胞は液体又は気体の窒素の中で凍結されたままである。臍帯血幹細胞の保存には様々なタイプのフリーザが通常用いられる。1つのタイプとして、「バイオアーカイブ(BioArchive)」フリーザがある。この装置は、血液を凍結するだけでなく、血液の目録を作成し、3,626個まで血液バッグを管理する。この装置は求められた特定の血液サンプルを取り出すロボットアームを有する。これにより、他のサンプルが乱れたり、温かい温度に曝されないようにすることができる。他のタイプの現在商業的に入手可能な装置は、これらに限定されないが、サンヨー製のモデルMDF−1155 ATN−152C及びモデルMDF−2136 ATN−135C、及びプリンストンクリオテック製(Princeton CryoTech)TEC 2000がある。
【0029】
臍帯血幹細胞の増殖には数日かかる。生死に関わる事態のような、早急な臍帯血幹細胞の供給が重要である場合、又は、外傷の場合、特に細胞の再導入の前に調査を伴う必要がある場合、臍帯血幹細胞の増殖を待つのに数日もとれないことがある。したがって、1分の処置の遅れが生と死の違いを意味するところでは、緊急の事態に備えて、生まれた時からこのような増殖した臍帯血幹細胞を用意しておくことが特に望まれている。
【0030】
したがって、数日ではなく数時間のうちに使用するために、臓器移植、骨髄移植又は胚幹細胞に基づかないが、それでも免疫反応を誘発しにくい増殖した臍帯血幹細胞の組成物を提供する、ヒト組織を治療する方法及びプロセスを提供することが求め得られている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0031】
本発明は、一つには、哺乳類の、好ましくヒトの臍帯血幹細胞であって、TVEMF増殖した臍帯血幹細胞に関する。また、本発明は、哺乳類の、好ましくはヒトの臍帯血幹細胞であって、該臍帯血幹細胞の体積当たりの数が、少なくとも天然臍帯血の7倍であり、該臍帯血幹細胞が、天然臍帯血の幹細胞と基本的に同一の三次元形状及び細胞間支持及び細胞間形状を有する臍帯血幹細胞に関する。このような細胞は、好ましくは本明細書に説明するTVEMF−増殖プロセスによって作製される。また、本発明は、これらの細胞、及び、必要であれば、医薬上許容しうる担体、凍結保存剤、及び細胞培養基など他の成分を含む組成物に関する。
【0032】
また、本発明は、臍帯血混合液をTVEMF−生物反応器の培養チャンバーに配置する工程、及び、該臍帯血混合液をTVEMFさせ、該臍帯血幹細胞をTVEMF−増殖させ、臍帯血幹細胞組成物を調製する工程を含むことを特徴とする臍帯血幹細胞及び臍帯血幹細胞組成物の調製方法に関する。前記細胞に適用されるTVEMFは、約0.05〜約6.0ガウスであることが好ましい。
【0033】
また、本発明は、本発明の臍帯血幹細胞及び臍帯血幹細胞組成物で哺乳類を治療する方法に関する。このような治療は、疾病を治療するために、組織の治療及び再生に用いられる、又は、本明細書に説明している他の用途に用いられる。また、本発明には、組成物及び本明細書に定義された疾病のいずれかを治療する方法、又は本発明の臍帯血幹細胞組成物を含む組織又は臓器を治療する方法が含まれる。また、本発明には、本発明の組成物を本明細書に定義された疾病のいずれかを治療する、又は、本明細書に記載したような組織を治療又は再生する薬剤の調製に用いる使用が含まれる。
【本発明を実施するための最良の形態】
【0034】
[図面の詳細な説明]
簡単に言うと、回転TVEMF−生物反応器には、細胞培養チャンバー及び時間変動する電磁気力の供給源が含まれる。実施においては、臍帯血混合液を細胞培養チャンバーに配置する。時間変動する電磁気力の供給源によって、チャンバー内で時間変動する電磁気力が発生するまで細胞培養チャンバーを回転させる。その期間が終了すると、増殖された臍帯血混合液をチャンバーから取り出す。より複雑なTVEMF−生物反応器システムにおいては、図2〜5に示すように、時間変動する電磁気力の供給源をTVEMF−生物反応器と一体化することができるが、図6〜8のように、バイオリアクターと隣接させてもよい。さらに、栄養を細胞にもたらす流動性キャリアは、定期的に新しくする及び除去する。好ましいTVEMF−生物反応器をここで説明する。
【0035】
まず、図1を参照する。図1は、細胞培養チャンバー19、好ましくは回転細胞培養チャンバー、酸素供給器21、培養キャリアの方向性のある流れを助ける装置、好ましくは主ポンプ15を用いて、及び、これに限定されないが、栄養素3、バッファ5、新しい培地7、サイトカイン9、増殖因子11、及びホルモン13など培養キャリアの要求の選択的な入力のための供給マニホールド17を有する哺乳類細胞を培養するための全体的なバイオリアクター培養系における培養キャリアフローループ1の好ましい実施形態を示す。この好ましい実施形態において、主ポンプ15は、新しい流動性キャリアを、流動性キャリアが酸素で処理され、細胞培養チャンバー19を通過する酸素供給器21へ供給する。細胞培養チャンバー19からの使用済みの流動性キャリア中の排出物は除去され、排出物18へ移送され、残りの細胞培養キャリアは、マニホールド17へ戻される。該マニホールド17は、必要であれば、再利用の前に、ポンプ15で酸素供給器21を経て細胞培養チャンバー19に、新しい供給を受ける。
【0036】
培養キャリアフローループ1においては、図1に示すように、チャンバー19中の生きた細胞培養を通り、培養キャリアフローループ1を周って、培養キャリアは循環する。ループ1においては、細胞培養リアクターチャンバー19内を一定条件に維持する化学センサー(図示せず)に応じて調整が行われる。二酸化炭素の調整によって圧力を与え、酸又は塩基の導入によってpHを補正する。酸素、窒素及び二酸化炭素は、細胞呼吸をサポートするために、ガス交換システム(図示せず)に溶解されている。閉じたループ1には、循環ガスキャパシタンスから酸素が添加され、二酸化炭素を除去する。図1は、本発明で用いることができる培養キャリアフローループの1つの好ましい実施形態であるが、本発明はこれに限定されるものではない。バイオリアクターへの、これに限定されないが、酸素、栄養素、バッファ、新しい培地、サイトカイン、増殖因子、及び ホルモンなど培養キャリアの要求の入力は、排出物及び二酸化炭素を制御及び除去することができるのであれば、手動、自動又は他の調整手段で行ってもよい。
【0037】
図2および3に、一体の時間変動する電磁気力の供給源を有するTVEMF−生物反応器10の好ましい実施形態を示す。図4は、本発明で用いられる好ましい形態における回転可能なTVEMF−生物反応器10の断面図である。図4のTVEMF−生物反応器10は、一体の時間変動する電磁気力の供給源を有する状態で示されている。また、図5も一体の時間変動する電磁気力の供給源を有するTVEMF−生物反応器の好ましい実施形態を示す。図6〜8には、隣接する時間変動する電磁気力の供給源を有する回転バイオリアクターが示されている。
【0038】
ここで図2を参照する。図2には、本発明のTVEMF−生物反応器10の好ましい実施形態の持ち上げた側面図が示されている。図2には、ベース112に支持されたモータハウジング111が含まれる。モータ113はモータハウジング111内に取り付けられ、第1ワイヤー114及び第2ワイヤー115によって、制御つまみ117を回転することによってモータ113の速度を増加的に制御することができる制御手段を有するコントロールボックス116へ接続されている。モータハウジング111は、モータシャフト118がハウジング111を通って延在するように、内部にモータ113を有し、該モータシャフト118は、縦のチャンバー119において、シャフト118の中心が地面と平行になるように、長手方向にあり、これに限定されないが、プラスチックなど透明の材料で形成されていることが好ましい。
【0039】
この好ましい実施形態において、縦のチャンバー119は、チャンバー119が、縦軸が地面と平行の状態で、自身の縦軸の周りを回転するように、シャフト118と連結されている。チャンバー119には、ワイヤーコイル120が捲回されている。ワイヤーコイル120のサイズ及び捲回数は以下のとおりである。好ましくは0.1mA〜1000mAの方形波電流がワイヤーコイル120へ供給されるされる時、チャンバー119で、好ましくは0.05ガウス〜6ガウスの時間変動する電磁気力が発生する。ワイヤーコイル120は、シャフト118の端部において、ワイヤー123及び124によって第1リング121及び第2リング122と連結されている。そして、これらのリング121及び122は、電流がコイル120に絶えず供給されながらチャンバー119が回転できるように、第1電磁気供給ワイヤー125及び第2電磁気供給ワイヤー128によって接続されている。電磁気発生装置126は、ワイヤー125及び128と連結されている。電磁気発生装置126は、電磁気発生装置ノブ127を回すことによって出力を調整することで、方形波をワイヤー125及び128、及びコイル120に供給する。
【0040】
図3は、本発明において用いることができる図2に示すTVEMF−生物反応器10の側面斜視図である。
【0041】
ここで、図4に示す回転TVEMF−生物反応器10を参照する。回転TVEMF−生物反応器10は、好ましくは透明の培養チャンバー230であって、臍帯血混合液を含有するように構成されており、さらに内側円筒状ガラス部材293及び外側円筒状ガラス部材294を受け入れるように配置された、対向する第1及び第2端面228、229を有する第1及び第2円筒状横端キャップ部材290及び291を含む外側ハウジング220を含む。適切な圧力シールが付与される。内側及び外側円筒状部材293、294の間は、細胞の成長に適切な培養温度の確保に用いられる環状ワイヤーヒーター296である。ワイヤーヒーター296は、時間変動する電場を培養チャンバー230に供給するための、時間変動する電磁気力装置として用いることもできる。または、図5に示すように、別のワイヤーコイル144を時間変動する電磁気力の供給に使用することができる。第1端キャップ部材290及び第2端キャップ部材291は、チャンバー230内でより円滑な混合液の流れを促進するために、端面228、229を隣接する内側曲面を有する。第1端キャップ部材290、及び第2端キャップ部材291は、それぞれ、入力軸223及び出力軸225に回転自在に受け入れられる第1中央液移送軸頸292及び第2中央液移送軸頸295を有する。各移送軸頸294、295は、フランジを有し、端キャップ部材290、291の埋め込み式対の孔に設けられ、シャフト223、225との相対的な長手方向の動きに対して第1ロックワッシャ及びリング297及び第2ロックワッシャ及びリング298で取り付けられる。各軸顎294、295は、長手方向に延在し、周辺に配置された流路と連結されている中間環状凹部を有する。軸顎292、295の各環状凹部はそれぞれ、端キャップ部材290及び291の第1放射状流路278及び第2放射状流路279によって、第1入力カップリング203及び第2入力カップリング204と対になっている。放射状流路278又は279中のキャリアは、軸顎294又は295の第1環状凹部及び縦流路を通って流れ、キャリアは軸顎292、295を通じて、シャフト223、225の周囲で各軸顎292、295の端に接近することができる。
【0042】
端キャップ部材290及び291には、入力軸223及び出力軸225において外側ハウジング220を相対的に支持するボールベアリングを含む第1管状ベアリングハウジング205及び第2管状ベアリングハウジング206が取り付けられている。第1ベアリングハウジング205には、外側ハウジング220に入力軸223及び出力軸225及び縦軸221の周囲における回転方向で回転する動きを与えるための、第1スプロケットギア210が取り付けられている。第1ベアリングハウジング205及び第2ベアリングハウジング206は、ワイヤーヒーター296の電気的取り出し設備、及び他のセンサーも有する。
【0043】
内部フィルターアッセンブリ235には、長さに沿って穿孔又は開口を有する内側及び外側円筒状部材215、216が含まれ、穿孔を有する第1及び第2内部フィルターアッセンブリ端キャップ部材217、218を有する。The 内側円筒状部材215は、互いに係合する中央に位置する対の部分を有する2つの部材として形成され、各部分は、端キャップ217又は218に取り付けられている。外側円筒状部材216は、第1及び第2内部フィルターアッセンブリ端キャップ217の間に設けられている。
【0044】
端キャップ部材217、218は、それぞれ、入力軸223及び出力軸225において回転可能に支持されている。内側部材215はピン及び嵌合溝219によって、出力軸225に回転可能に取り付けられている。10ミクロ織のポリエステル布224が、外側部材216の外面の上に配置され、両端でOリングに取り付けられている。内側部材215は、連結ピンで出力駆動軸225のスロットに取り付けられているため、出力駆動軸225は内側部材215を回転させることができる。内側部材215は、外側部材216を支持する第1及び第2端キャップ217、218で連結されている。出力軸225は、第1固定ハウジング240のベアリングを通って延在し、第1スプロケットギア241に連結している。図示されているように、出力軸225は、シールの間に位置する第1固定ハウジング240の第1ポート又は流路289から内側部材215へ、流動性キャリアの流れが内側部材215から固定ハウジング240を通って延在できるように、延在する管状ボア222を有する。
【0045】
内部部材235のための第1及び第2端キャップ217、218の間、及び外側ハウジング220中の軸頸292、295の間には、ブレード部材50a及び50bのための第1及び第2ハブ227、226がある。入力軸223の第2ハブ226は、第2ハブ226が入力軸223と回転するように、ピン231で、入力軸223に連結されている。各ハブ227、226は、軸方向に延在する、ハブを通じてキャリアを伝送するための流路を有する。
【0046】
入力軸223は、入力軸223の回転可能な支持のために、第2固定ハウジング260のベアリングを通って延在する。第2縦流路267は、入力軸223を通って、面板とハウジング260の間の第2環状凹部232に設けられたリテーニングワッシャ及びリングの中間地点へと延在する。第2端キャップ部材291の第3放射状流路272によって、凹部の流動性キャリアは、第2端キャップ部材291から流出することができる。図示されていないが、第3流路272は、パイピング及びY分岐接続部を通じて各流路278及び279に接続している。
【0047】
図4に、第1軸に沿って延在する第1ボア237がチャンバー230の隅部233と交差し、制限のある開口部234が形成されたサンプルポートを示す。ボア237は、逆のボア及びネジ式リングを一端に有し、ネジ廻して円筒状のバルブ部材236を受け入れる。バルブ部材236には、開口部234を係合し、チャンバー230の内部へ少し突出するための先端が補助的に形成される。バルブ部材236のOリング243は封をする。第2軸に沿った第2ボア244は、Oリング243と開口部234との間で、第1ボア237と交差する。エラストマー又はプラスチックのストッパー245によって、第2ボア244は閉じられ、サンプルを取り除く皮下注射器で入ることができる。サンプルを取り除くには、バルブ部材236を後へ引き、開口部234及びボア244に近づく。そして、注射器を用いてサンプルを抽出し、開口部234は再び封止することができる。外部の汚染物質は、TVEMF−生物反応器10の内部に届かない。
【0048】
実施において、キャリアは第2ポート又は流路266、シャフト流路、第3放射状流路272を介して第1放射状流路278及び第2放射状流路279へ、投入される。キャリアが軸頸292、294の縦流路を介してチャンバー230に入ると、キャリアはハブ227、226の端面228、229に突きあたり、放射状及び軸方向に、ハブ227、226の流路を通って分散する。ハブ227、226を通るキャリアは、端キャップ部材217、218に突きあたり、放射状に分散する。したがって、流入される流動性キャリアの流れは、放射状に縦軸221から外へ向かい、ドーナツ状に各端部から流れ、ポリエステル布224及びフィルターアッセンブリ235の開口部を通って流出し、流路266及び289を介して流出する。外側ハウジング220、チャンバー230、及び内部フィルターアッセンブリ235の回転速度及び回転方向を制御することによって、いかなる要望のタイプのキャリアの動きも得ることができる。しかしながら、主として重要なのは、絶え間ない新しい流動性キャリアの供給と共に、植物回転器の運転を得ることができるという事実である。
【0049】
一体の環状ワイヤーヒーター296を用いて時間変動する電磁気力が付与されていない場合には、他の好ましい時間変動する電磁気力の供給源で付与することができる。例えば、図6〜8に、バイオリアクターの細胞培養に電磁力を供給する時間変動する電磁気力装置140であって、一体の時間変動する電磁気力ではなく、隣接する時間変動する電磁気力装置を有するものを示す。具体的に、図6は、時間変動する電磁気力装置140の好ましい実施形態である。図6は、装置140の持ち上げた側面図斜視図であって支持基盤145、基盤145上に支持されたシリンダーコイル支持体146であって、支持体146の周囲に捲回されたワイヤーコイル147を有するものを含む。図7は、図6に示された時間変動する電磁気力装置140の正面斜視図である。図8は時間変動する電磁気力装置140の正面斜視図であって、実施において、支持基盤145に支持され、ワイヤーコイル147が捲回されたシリンダーコイル支持体146に、バイオリアクター148全体が挿入されたものが示されている。時間変動する電磁気力装置140がバイオリアクター148と隣接しているため、時間変動する電磁気力装置140は再利用することができ、さらに、時間変動する電磁気力装置140がバイオリアクター148に隣接しているため、装置140は、いかなる種類のバイオリアクター、好ましくは回転式においても、電磁力の発生に用いることができる。
【0050】
実施において、TVEMF−増殖中、本発明のTVEMF−生物反応器10は、細胞培養チャンバーに臍帯血混合液を含有する。TVEMF−増殖中、臍帯血混合液含有チャンバーの回転速度を評価して調整することができ、これにより臍帯血混合液は実質的に縦軸又はその周囲に残る。回転速度の増加は、壁の衝撃の予防に値する。例えば、臍帯血混合液中の臍帯血幹細胞が、回転円の下方側に、非常に内に向って且つ下に向って落下する場合、及び、回転円の上方側に、非常に外に向って且つ非効率的に上に向かって落下する場合には、回転の増加が好ましい。最適には、好ましくは操作者が、臍帯血幹細胞の三次元形状及び細胞間支持及び細胞間形状が維持されるように、最小壁衝突回数及び強度を促進する回転速度を選択するとよい。本発明の好ましい速度は5〜120RPMであり、より好ましくは10〜30RPMである。
【0051】
臍帯血混合液は、好ましくは透明の培養チャンバーを通して目視で評価し、手動で調整されることが好ましい。また、臍帯血混合液の評価及び調整は、TVEMF−生物反応器10における臍帯血幹細胞の位置を監視するセンサー(例えば、レーザー)で自動に行われてもよい。細胞の動きを表示しすぎるセンサー信号は、自動的に回転速度を適宜に調整するメカニズムを引き起こす。
【0052】
さらに、実施において、本発明は、電磁発生装置が作動され、方形波出力が臍帯血混合液含有チャンバーに所望の電磁場を生じさせ、好ましくは0.05ガウス〜6ガウスの範囲となるように調整されることを意図する。
【0053】
本発明で意図する時間変動する電磁気力に適用される回転バイオリアクターに対しては、本発明の範囲から逸脱しない範囲で、様々な変更を加えることができるため、上述した明細書に含まれる全ての事項は、限定としてではなく、説明として解釈される。
【0054】
[発明を実施するための最良の形態]
以下の定義は、本発明の文脈において定義された言葉の説明及び理解を助けるものである。定義はこれらの言葉を本明細書を通じた記載以下に限定するものではない。さらに、いくつかの定義がTVEMFに関してふくまれるが、これに関する全ての定義は、互いに補完するように考えられるべきであり、互いに反するように解釈すべきでない。
【0055】
本願において、「成人幹細胞」は、未分化で、より分化された細胞を生じさせる多能性細胞を意味する。本発明に関して、成人幹細胞は、好ましくはCD34+/CD38−である。
【0056】
本願において、「臍帯血」は、胎児又は乳児の臍帯及び/又は胎盤からの血液を意味する。臍帯血は、知られる限りでは幹細胞の最も豊富な供給源である。「臍帯」は、本発明の「臍帯血」を臍帯からの血液に限定するものではない。本願において、胎児又は乳児の胎盤の血液は、臍帯の血液と合流する。本発明の目的において、同じ循環ループにある異なる部分に位置する血液を区別する必要はない。本願において、「臍帯血細胞」は、臍帯血からの細胞を意味する。複製可能な臍帯血細胞は、TVEMF−生物反応器でTVEMF−増殖を行い、本発明の組成物に存在することができる。
【0057】
本願において、「臍帯血幹細胞」は、臍帯血からの成人幹細胞を意味する。胎児に直接由来する胚幹細胞ではない。好ましくは、本発明の臍帯血幹細胞は、CD34+/CD38−細胞である。
【0058】
本願において、「臍帯血幹細胞組成物」は、本発明の臍帯血幹細胞であって、該臍帯血幹細胞の体積当たりの数が、少なくとも天然臍帯血の7倍であり、該臍帯血幹細胞が、天然臍帯血の幹細胞と同一又は類似の三次元形状及び細胞間形状及び細胞間支持を有するもの、又は、TVEMF−増殖を行いながら上記形状及び支持を維持しているものを意味する。臍帯血幹細胞には、医薬上許容しうる担体、血漿、血液、アルブミン、細胞培養液、増殖因子、銅キレート剤、ホルモン、バッファ、凍結保存剤、又は他の物質など、いくつかの種類のキャリアが伴う。天然臍帯血の参照は、好ましくは本発明の臍帯血幹細胞を、元来の臍帯血の源と比較するためである。しかしながら、そのような比較が利用できない場合には、本発明の臍帯血幹細胞の情報源として、天然臍帯血を臍帯血、好ましくは同じ哺乳類の臍帯血の平均的又は典型的な性質とする。
【0059】
本願において、「臍帯血混合液」は、臍帯血細胞の、TVEMF−生物反応器(例えば、細胞培養チャンバー)に配置される細胞成長のための培地のような細胞増殖を可能とする物質との混合液を意味する。臍帯血細胞は、単に臍帯血全体を細胞培養液などの物質と混合することによって、臍帯血混合液に存在させてもよい。また、臍帯血混合液は、本明細書に記載されているように、臍帯血幹細胞を含有する臍帯血からの細胞を調製することによって作製することができる。臍帯血混合液は、CD34+/CD38−臍帯血幹細胞及びダルベッコの培地(DMEM)含むことが好ましい。少なくとも臍帯血混合液の半分がDMEMなどの細胞培養液であることが好ましい。
【0060】
本願において、「TVEMF」は、「時間変動する電磁気力」を意味する。
【0061】
本願において、「TVEMF−生物反応器」は、TVEMFが適用された回転バイオリアクターを意味し、上述した図面の詳細な説明により十分に説明されている。バイオリアクターに適用されるTVEMFは、好ましくは0.05〜6.0ガウス、好ましくは0.05〜0.5ガウスの範囲である。例えば、図2、3、4及び5のTVEMF−生物反応器の例(限定するわけではなく)を参照。単純な実施形態において、本発明のTVEMF−生物反応器は、含有する臍帯血混合液を、適切なガウスレベルで回転させ(TVEMFを付与して)、その中の臍帯血細胞(幹細胞を含む)を増殖させる。好ましくは、TVEMF−生物反応器において成長培地(好ましくは添加剤と共に)を交換することができ、臍帯血混合液に酸素を含ませることができる。TVEMF−生物反応器は、細胞を数日以上で成長させる機構を提供する。TVEMF−生物反応器では、TVEMFするために細胞をバイオリアクターに投入し、TVEMFが細胞を通過し、このようにしてTVEMF−増殖が行われる。
【0062】
本願において、「TVEMF−増殖した臍帯血細胞」は、TVEMF−生物反応器に配置され、約0.05〜6.0のTVEMFが適用された後の体積当たり数が増加した臍帯血細胞(すなわち濃度)を意味する。体積当たりの細胞の数の増加は、TVEMF−生物反応器における細胞複製の結果であり、バイオリアクター中の細胞の合計数は増加する。体積当たりの細胞の数の増加は、明確に、単なる流動体の体積の低減、例えば、血液の体積を70mlから10mlへ低減し、それによりmlごとの細胞の数を増加することによるものではない。
【0063】
本願において、「TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞」は、TVEMF−生物反応器に配置され、約0.05〜6.0のTVEMFが適用された後の体積当たり数が増加した臍帯血幹細胞(すなわち濃度)を意味する。体積当たりの幹細胞の数の増加は、TVEMF−生物反応器における細胞複製の結果であり、バイオリアクター中の幹細胞の合計数は増加する。体積当たりの幹細胞の数の増加は、明確に、単なる流動体の体積の低減、例えば、血液の体積を70mlから10mlへ低減し、それによりmlごとの幹細胞の数を増加することによるものではない。
【0064】
本願において、「TVEMF−増殖」は、TVEMF−(回転)バイオリアクターでTVEMFの存在下、複製(分裂及び成長)する、TVEMF−生物反応器における細胞の段階を意味する。臍帯血幹細胞(好ましくはCD34+/CD38−幹細胞)は、好ましくは、さらなる分化を行わずに複製する。
【0065】
本願において、「TVEMF−増殖」は、細胞を約0.05〜約6.0ガウスのTVEMFにさらして、TVEMF−生物反応器中の臍帯血細胞、好ましくは臍帯血幹細胞、の数を増加するプロセスを意味する。臍帯血細胞、好ましくは臍帯血幹細胞、の数の増加は、少なくとも体積当たりの数(すなわち濃度)が元の臍帯血源の7倍であることが好ましい。本発明のTVEMF−生物反応器における臍帯血幹細胞の増殖は、TVEMF−増殖前の臍帯血幹細胞と基本的に同一の三次元形状及び細胞間支持及び細胞間形状を維持する又は有する臍帯血幹細胞をもたらす。TVEMF−増殖の他の側面のいては、本発明の臍帯血幹細胞の優れた性質をもたらす。理論に固執することなく、TVEMF−増殖は、三次元形状及び細胞間支持を維持する高濃度の臍帯血幹細胞を提供するだけでない。理論に固執することなく、TVEMFTVEMF−増殖中のいくつかの幹細胞の性質に影響を与えることができる。例えば、遺伝子の成長促進する上向き調整、又は、遺伝子の成長を妨げる下向き調整である。全体として、TVEMF−増殖は、全体の分化ではなく、成長を促進する結果となる。
【0066】
本願において、「TVEMF−増殖した細胞」、TVEMF−増殖のプロセスに提供された細胞を意味する。
【0067】
本願において、「有害物質」又は関係用語は、細胞、好ましくは臍帯血幹細胞、又は患者に有害な物質を意味する。特に、「有害物質」は、を意味する死細胞、マクロファージ、臍帯血において他とは異なる又は通常ではない物質(例えば、鎌状細胞、母体血、母体の尿、又は他の組織又は排出物)。他の有害物質は、本明細書中で説明されている。血液からのこれらの物質の除去は、従来技術において知られている。
【0068】
上述したように定義した用語又は本明細書で使用されている他の用語を参照する他の記述は、上記定義に限定されるものではなく、上記定義に寄与するものである。本発明の様々な側面に関係する情報は、本願において提供され、それが含まれる部分にのみ限定されるものではなく、本発明全体を理解するのに寄与するものである。
【0069】
本発明は、ヒトの組織を治療、補充、再生のための、早期に利用可能なTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞の供給源に関する。本発明は、後述する好ましい実施形態においてより十分に説明されているが、それに限定されるものではない。
【0070】
操作方法−TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞組成物の調製、及び、該組成物の使用
本発明の好ましい実施形態において、組織の治療、交換及び再生において身体を助けることができ、又は、研究に有用であるTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞を調製する方法が説明されている。
【0071】
例えば本願に記載されたように、好ましくは、シリンジ方法によって、臍帯血は哺乳類、好ましくは霊長類哺乳類、より好ましくはヒトから採集される。臍帯血は胎内で採集することもできる。例えば、妊娠第3期に欠損(例えば耳欠損)が明らかである場合など生命に関わる事態又は究極状況において、臍帯血幹細胞を増殖させ、出産又は乳児が産まれた直後に、必要であれば直ぐに利用可能なようにする。胎内で臍帯血を取るのは、生まれていない乳児を脅かさない量だけである。本発明における臍帯血の採集は、限定されないが、例えば、その他の哺乳類の臍帯血を直接採集する手段、又は、例えば「血液バンク」からの凍結保存血液など商業的又は他の供給源からの血液を得ることによって、間接的に血液を収集する手段などが含まれる。
【0072】
臍帯血から赤血が除去され、臍帯血幹細胞を含む残りの細胞を、本明細書で説明するTVEMF−生物反応器(「臍帯血混合液」参照)の適切な培地に配置することが好ましい。本発明のより好ましい実施形態においては、上述した「軟膜」(本明細書で説明する臍帯血幹細胞を含む)のみをTVEMF−生物反応器に配置する。他の実施形態には、他の非幹細胞及び臍帯血の成分を除き、異なる臍帯血調製液を調製することが含まれる。そのような臍帯血調製液は、ただ1つの臍帯血成分として、CD34+/CD38−臍帯血幹細胞を有する。臍帯血細胞の非幹細胞タイプの除去は、これに限定されないが、沈殿及び遠心分離など消極的な分離技術で行うことができる。多くの消極的な分離技術は、従来技術として知られている。しかし、積極的な分離技術を用いてもよく、本発明においては好ましい。血液の様々な成分を除去する方法及びCD34+/CD38−のための積極的な分離は、従来技術として知られており、所望の臍帯血幹細胞を溶解させる又は不可逆的に傷つけない限り使用してもよい。例えば、CD34+/CD38−を分離するアフィニティー法を用いてもよい。好ましくは、上記「軟膜」を臍帯血から調製し、その中のCD34+/CD38−細胞は、TVEMF−増殖のために軟膜から分離される。
【0073】
採集された臍帯血、又は上述した所望の細胞部分は、TVEMF−増殖が起こるように、TVEMF−生物反応器に配置しなければならない。上述したように、「臍帯血混合液」には、TVEMF−生物反応器に配置される、臍帯血(又は所望の細胞部分、例えば赤血球のない臍帯血、又は好ましくは臍帯血から分離されたCD34+/CD38−臍帯血幹細胞)と、細胞の成長のための培地など細胞を増殖させる物質との混合液が含まれる。細胞培養基、細胞を成長及び増殖させる培地は従来技術として知られている。好ましくは、細胞増殖させる物質は細胞培養基であり、より好ましくはダルベッコの培地である。細胞培地の成分は、当然細胞を殺したり、ダメージを与えないものでなくてはならない。他の成分を、TVEMF−増殖前又はその最中に、臍帯血混合液に添加してもよい。例えば、臍帯血はダルベッコの培地と共にバイオリアクターに配置され、さらに5%(また、他の所望の量、例えば約1%〜約10%の範囲で)のヒト血清アルブミンが補充される。バイオリアクターに配置される前に、バイオリアクターの外又は中で、これらに限定されないが、増殖因子、銅キレート剤、サイトカイン、ホルモン及び他の物質TVEMF−増殖を促進する他の物質など臍帯血混合液への他の添加剤を臍帯血に添加してもよい。好ましくは、一人の個人から採集した臍帯血の全量(好ましくは約10ml〜約100mlの量のヒト臍帯血、より好ましくは50ml〜約100mlの臍帯血)に、約25ml〜約100mlのダルベッコの培地(DMEM)、及び補助される5%ヒト血清アルブミンが混合され、臍帯血混合液の全量は、バイオリアクターに配置された時に約75〜約200mlである。一般的な規則として、収集する臍帯血は多いほどよい。一人の個人からの採集が100mlを超える場合には、その価値ある臍帯血の全てを使用することが好ましい。例えば、臍帯血を溜めることによって、より大きい体積が利用できる場合には、1ダースを超えることが好ましい。臍帯血の採集を溜め、一緒にTVEMF−増殖を行う時に、かん流TVEMF−生物反応器の使用は特に便利である。
【0074】
「TVEMF−生物反応器に配置する」は、限定されるものではなく、臍帯血混合液はバイオリアクターの全く外で作成され、そして該混合液はバイオリアクター内に配置されてもよい。また、臍帯血混合液はバイオリアクター内で完全に混合されてもよい。例えば、臍帯血は、ダルベッコの培地と共にバイオリアクターに配置され、バイオリアクターの中で、バイオリアクターで同時に添加して、又は臍帯血のとにバイオリアクターに添加するのいずれかで、5%ヒト血清アルブミンが補充される。
【0075】
本発明の好ましい臍帯血混合液には、以下が含まれる。帝王切開の乳児から採集した臍帯血サンプルの軟膜から分離されたCD34+/CD38−幹細胞、及び、CD34+/CD38−細胞と共に、全量で約200mlであるダルベッコの培地。さらに好ましくは、G−CSF(顆粒球コロニー刺激因子)が臍帯血混合液に含まれる。好ましくは、G−CSFは、臍帯血幹細胞のTVEMF−増殖を刺激するのに充分な量存在する。より好ましくは、TVEMF−増殖前の臍帯血混合液のG−CSFの量は、約25〜約200ng/mlの混合液であり、より好ましくは約50〜約150ng/ml、さらにより好ましくは約100ng/mlである。
【0076】
TVEMF−生物反応器の容器(臍帯血幹細胞を含む臍帯血混合液を含有する)は、三次元形状及び細胞間支持及び細胞間形状を維持するために臍帯血幹細胞が懸濁液となる速度で回転される。好ましくは、回転速度は5〜120rpm、より好ましくは、10〜30rpmである。細胞がTVEMF−生物反応器にある間、細胞には、栄養素及び新しい培地(DMEM及び5%ヒト血清アルブミン)を与えること、ホルモン、サイトカイン、及び/又は増殖因子(好ましくはG−CSF)に触れさせること、有毒物質を除去することが好ましい。TVEMF−生物反応器の臍帯血細胞から除去される有毒物質としては、死にかけの細胞の有毒な顆粒物質、顆粒球の有毒物質、及びマクロファージが含まれる。細胞のTVEMF−増殖は、好ましくは細胞が充分な期間に少なくとも7倍に増殖する(体積当たりの数の増加又は濃度)ように制御されている。好ましくは、臍帯血幹細胞(もし存在するのであれば、他の細胞も)は、少なくとも4日間、好ましくは約7〜約14日間、より好ましくは約7〜約10日間、さらに好ましくは約7日間、TVEMF−増殖を行う。TVEMF−増殖はTVEMF−生物反応器で160日間まで継続するかもしれない。TVEMF−増殖は160日間よりも更に長く行われるかもしれないが、そのような長い増殖は、本発明の好ましい実施形態ではない。
【0077】
好ましくは、TVEMF−増殖は、約26℃〜約41℃、より好ましくは約37℃のTVEMF−生物反応器で行われる。
【0078】
TVEMF−増殖を行う細胞の増殖全体を監視する方法の1つとして、目視観察がある。臍帯血幹細胞は、典型的には濃い赤色をしている。臍帯血混合液の作製に用いられた培地の色は、薄い又は透明であることが好ましい。バイオリアクターが回転し始め、TVEMFが付与されると、細胞は、好ましくはバイオリアクター容器の中央に群がり、培地は色のついた細胞の塊を囲む。酸素を含有させること及び他の栄養素を添加することによっては、バイオリアクターに設けられた視覚化する窓(典型的には透明なプラスチック)を通じて、しばしば細胞集合を視覚化する能力を弱めない。塊の形成は、幹細胞が三次元形状及び細胞間支持及び細胞間形状を維持することを助けるのに重要である。塊が散乱しているようであったり、細胞がバイオリアクター容器の壁面に接触し始めた場合には、回転速度を上げ(手動で又は自動的に)、中央に細胞集合が再び形成されるようにする。形成直後に行われる、目に見えるようにできる細胞集合の直径の測定は、後の塊の直径と比較し、TVEMF−生物反応器の細胞のおよその増加数を示すことができる。また、TVEMF増殖中の細胞の増加数の測定は、従来技術に知られているように様々な方法で行うことができる。自動センサーをTVEMF−生物反応器に設け、監視及び塊のサイズの増大を測定することができる。
【0079】
TVEMF−増殖のプロセスは、例えば、細胞がバイオリアクター中で群がり続けるように細胞集合の形成を確認し、細胞集合が散乱し始めたらバイオリアクターの回転を増やす検査の専門家によって、注意深く監視される。バイオリアクター中の細胞集団及び臍帯血混合液の粘度を監視する自動システムによって、細胞集合が監視されてもよい。細胞集合の粘度の変化は、TVEMF−増殖プロセスを開始してから約2日後に見られ、TVEMF−生物反応器の回転速度は、その時期くらいに増大されてもよい。TVEMF−生物反応器の速度は、TVEMF−増殖を通じて様々であってよい。TVEMF−増殖中の細胞がTVEMF−生物反応器の容器の側面に接触しないように、回転速度は適時に調整されることが好ましい。
【0080】
また、検査の専門家は、例えば1日1回、2日に1回又は3日に1回、手動で(例えば注射器を用いて)新しい培地及び好ましくは上述したような栄養素及び増殖因子など他の所望の添加剤をバイオリアクターに投入し、細胞の排泄物及び毒素を含有する古い培地を取り除いてもよい。また、新しい培地及び他の添加剤は、TVEMF−増殖中、自動的にTVEMF−生物反応器に汲み上げ、排泄物は自動的に除去されてもよい。
【0081】
臍帯血幹細胞は、TVEMF−生物反応器に配置され、TVEMF−増殖してから約7〜約14で、元々の数より少なくとも7倍に増加してもよい。好ましくは、TVEMF−増殖は約7〜10日続き、より好ましくは約7日続く。したがって、幹細胞の数の測定は、TVEMF−増殖中に行われなくてもよい。上述及び本願を通して記載されているように、TVEMF−増殖した本発明の臍帯血幹細胞は、天然のTVEMF−増殖していない臍帯血幹細胞と基本的に同一の三次元形状及び細胞間支持及び細胞間形状を有する。
【0082】
本発明の別の実施形態は、組織、例えば、本願に記載したような組織を治療、補充及び再生するために、体組織又は組織を助けるように機能する生体外の哺乳類の臍帯血幹細胞組成物に関する。組成物には、好ましくは、元々の臍帯血の体積当たりの臍帯血幹細胞の少なくとも7倍の体積当たりの数のTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞が含まれる。例えば、好ましくは、X個の臍帯血幹細胞がTVEMF−生物反応器にある体積で配置された場合、TVEMF−増殖後、TVEMF−生物反応器に配置された同じ体積からの臍帯血幹細胞の臍帯血幹細胞の数は、少なくとも7X個である。少なくとも7倍であることは、本発明の実施に必要ではないが、この増殖は特に治療目的に好ましい。例えば、TVEMF−増殖した細胞は、必要であれば、天然臍帯血の臍帯血幹細胞の数の2倍でしかない。TVEMF−増殖した細胞は、天然臍帯血の臍帯血幹細胞の体積当たりの約4倍〜約25倍であることが好ましい。また、本発明は哺乳類の臍帯血幹細胞を含む組成物に関し、該臍帯血幹細胞の体積当たりの数が哺乳類の天然臍帯血よりも少なくとも7倍であり、臍帯血幹細胞が天然臍帯血の幹細胞と基本的な同一の三次元形状及び細胞間支持及び細胞間形状を有する。本発明の組成物には、医薬上許容しうる担体、例えば、血漿、血液、アルブミン、細胞培養液、増殖因子、銅キレート剤、ホルモン、バッファ又は凍結保存剤が含まれる。「医薬上許容しうる担体」は、哺乳類、好ましくはヒトに幹細胞を導入することができる薬剤である。そのようなキャリアには、ここで記載した物質、特に輸血に用いられるいかなる物質、例えば血液、血漿、アルブミン、好ましくは組成物が導入される哺乳類からのものが含まれる。哺乳類に組成物を「導入」することは、動物に組成物を「投与」することを意味する。「許容しうる担体」は、一般的に、TVEMF−増殖後、凍結保存前又は後、又は哺乳類への導入(投与)前の、本発明の臍帯血幹細胞が生きられる物質、すなわち細胞に有毒ではない物質を意味する。そのようなキャリアは従来技術において知られており、本願でそのような目的のために記載された物質など様々な物質を含んでよい。例えば、血漿、血液、アルブミン、細胞培養液、バッファ及び凍結保存剤は全て、本発明の許容しうる担体である。所望のキャリアは、ある程度所望の利用方法による。
【0083】
従来の他の増殖方法(いずれもTVEMFを使用しない)は、臍帯血幹細胞の三次元形状及び細胞間支持を維持しながら、天然臍帯血の臍帯血幹細胞の量の少なくと7倍となる臍帯血幹細胞の増殖は提供していない。TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞は、元々の臍帯血と基本的に同一の三次元形状及び細胞間支持及び細胞間形状を有する又は維持する。前記組成物には、TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞、好ましくはダルベッコの培地又は直ぐに凍結保存できる溶液の懸濁液の状態のTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞が含まれる。前記組成物には、例えば、死にかけの細胞及び有毒物質、顆粒球の中身及びマクロファージなど有毒な顆粒物質が含まれないことが好ましい。前記組成物は、−120℃〜−196℃に組成物の温度を低減し、治療又は他の用途に必要となるまで凍結保存組成物をその温度に維持することによって、TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞を含む凍結保存組成物としてもよい。後述するように、凍結保存前に組成物から有毒物質をできる限り除去することが好ましい。
【0084】
本発明の別の実施形態は、凍結保存を行った又はTVEMF−増殖直後のTVEMF−臍帯血幹細胞の組成物で、組織を再生する及び/又は自己免疫疾患(上述したように)などの疾病を治療する方法に関する。前記細胞は、哺乳類の身体、好ましくはヒトの身体に導入され、例えば静脈内に又は直接治療される組織へ注射され、身体の自然システムに組織を治療及び再生させる。哺乳類の身体に導入される前記組成物には有毒物質、及び、投与されたTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞に対して不利な反応をする可能性がある他の材料が含まれないことが好ましい。前記方法(及び組成物)は、潜在的に、哺乳類、好ましくはヒトの重要臓器及び他の組織の治療に使用することができ、可能性の有る用途としては、これらに限定されないが、肝組織、心臓組織、造血組織、血管、皮膚組織、筋肉組織、消化器組織、膵臓組織、中枢神経系、骨組織、軟骨組織、結合組織、肺組織、脾臓組織、頭脳組織及び他の身体組織が含まれる。前記細胞は、特に、疾病が発生し、疾病にかかっていない細胞が必要である場合に、個人の血球が必要である治療又は研究において、治療又は研究に直ぐに利用可能である。
【0085】
操作方法−凍結保存
上述したように、臍帯血は、例えば哺乳類の子供、好ましくはヒトの乳児の出産中(より好ましくは帝王切開において)に採集される。赤血球は臍帯血から除去されることが好ましい。臍帯血幹細胞(必要であれば、他の細胞及び中膜と共に)はTVEMF−生物反応器に配置され、時間変動する電磁気力が付与されて、増殖する。増殖後、前記細胞は低温で保存される。TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞組成物の凍結保存に関する詳細は、本明細書において、特に以下に示す。
【0086】
TVEMF−増殖後、TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞を含むTVEMF−増殖した細胞は、少なくとも1つの凍結保護剤を含有する少なくとも1つの凍結保存容器に移送されることが好ましい。TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞は、まず好ましくは溶液(例えば、バッファ溶液又は所望の凍結保存剤の溶液)で洗浄してTVEMF−増殖中に存在した中膜及び他の成分を除去し、そして細胞を凍結保存することができる溶液に入れる。前記細胞は適切な低温容器に移され、該容器の温度は通常−120℃〜−196℃、好ましくは約−130〜約−150℃に低減され、その温度が維持される。必要であれば、細胞の温度(すなわち低温容器の温度)は、ヒトの身体への導入に適合する温度(通常およそ室温からおよそ体温)に上昇され、TVEMF−増殖した細胞は、例えば上述したように哺乳類の身体、好ましくはヒトの身体に導入される。
【0087】
凍結した細胞は通常有害である。冷却において、細胞中の水が凍る。すると、細胞膜における浸透圧効果、細胞内脱水、溶質濃度、及び氷晶生成によって損傷が生じる。細胞の外側が結氷するため、やがて細胞の破壊に至る浸透脱水及び溶質濃度の上昇を引き起こす、水を溶液から除去及び細胞から取り出す(内容の詳細はマズールP.(Mazur, P.)、1977年、クリオバイオロジー(Cryobiology)14、251〜272参照)。
【0088】
異なる材料は異なる氷点を有する。結晶化及び凍結工程における細胞壁のダメージを最小限に抑えるために、直ちに凍結保存できる臍帯血幹細胞組成物には、可能な限り汚染物質が含まれていないことが好ましい。
【0089】
これらの有害な影響は、次の方法で回避することができる。(a)凍結保護剤の使用、(b)凍結速度の制御、及び(c)分解反応を最小限に留める十分に低い温度での保存。
【0090】
本発明においては、凍結保存剤を含有させることが好ましい。使用可能な凍結保護剤には、これに限定されないが、十分な量ジメチルスルホキシド(DMSO)(ラブロックJ.E.(Lovelock, J. E.)及びビショップM.W.H(Bishop, M. W. H.)、1959、ネイチャー(Nature)183、1394〜1395;アッシュウッド−スミスM.J.(Ashwood-Smith, M. J.)、1961、ネイチャー(Nature)190、1204〜1205)、グリセロール、ポリビニルピロリジン(フィンフレットA.P.(Rinfret, A. P.)、1960、Ann.N.Y.Acad.Sci.85、576)、ポリエチレングリコール(スロビターH.A.(Sloviter, H. A.)及びラドビンR.G.(Ravdin, R. G.)、1962、ネイチャー(Nature)196、548)、アルブミン、デキストラン、スクロース、エチレングリコール、i−エリスリトール、D−リビトール、D−マニトール(ロウェA.W.ら(Rowe, A. W. et al.)、1962、Fed.Proc.21、157)、D−ソルビトール、i−イノシトール、D−ラクトース、塩化コリン(ベンダーM.A.ら(Bender, M. A., et al.)、1960、J.Appl.Physiol.15、520)、アミノ酸−グルコース溶液又はアミノ酸(Phan The Tran and Bender、M.A.、1960、Exp.Cell Res.20、651)、メタノール、アセトアミド、グリセリンモノアセタート(ラブロックJ.E.(Lovelock, J. E.)、1954、バイオケミ.J.(Biochem. J.)56、265)、及び無機塩(Phan The Tran and Bender、M.A.、1960、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.104、388;Phan The Tran and Bender、M.A.、1961、放射線生物学、放射線生学に関する第3回オーストラリア会議の手続き(Proceedings of the Third Australian Conference on Radiobiology)、イルベリーP.L.T.(Ilbery, P. L. T.)編、バッターウォルス(Butterworth)、ロンドン、p.59)。好ましい実施形態においては、DMSOが用いられている。液体のDMSOは低濃度では細胞に害はない。小さい分子であるため、DMSOは自由に細胞を通り抜け、凍結性を緩和するために水と結合して細胞内の細胞小器官を保護し、結氷からのダメージを防止する。血漿の添加(すなわち20〜25%の濃度まで)によって、DMSOの保護効果を増大させることができる。40℃を超えるとDMSO濃度が約1%であると有害であるため、DMSOの添加後、細胞は凍結まで0℃に保たれていなければならない。好ましい凍結保護剤は、TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞との組み合わせで、60〜80%アミノ酸−グルコース溶液中の20〜40%ジメチルスルホキシド溶液、15〜25%ヒドロキシエチルでんぷん溶液、4〜6%グリセロール、3〜5%グルコース、6〜10%デキストランT10、15〜25%ポリエチレングリコール、又は75〜85%アミノ酸−グルコース溶液である。
【0091】
本発明に臍帯血細胞以外の他の物質及び凍結保護剤が含まれてもよいが、例えば上述した凍結のメカニズムにおいて述べた理由により、凍本発明のTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞組成物の凍結保存においては、可能な限り他の物質が少ないことが好ましい。
【0092】
本発明のTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞組成物は、約−120℃〜約−196℃、好ましくは約−130℃〜約−196℃、より好ましくは約−130℃〜約−150℃の範囲の温度に冷却することが好ましい。
【0093】
ゆっくりな冷却速度に制御することは重要である。異なる凍結保護剤(ラパズG.ら(Rapatz, G., et al.)、1968、低温生物学(Cryobiology)5(1)、18〜25)及び異なる細胞タイプは、最適な冷却速度が異なる(例えば、冷却速度の体皮細胞の生存に対する影響(及びそれらの移植の可能製)について、ロウA.W.(Rowe, A. W.)及びリンフレットA.P.(Rinfret,A. P.)、1962、血液20、636;ロウA.W.(Rowe, A. W.)、1966、低温生物学(Cryobiology)3(1)、12〜18;ルイスJ.P.ら(Lewis, J. P., et al.)、1967、輸血(Transfusion)7(1)、17〜32;及びマズールP.(Mazur, P.)、1970、サイエンス(Science)168、939〜949を参照)。水が氷に変る融解熱は最小限にすべきである。冷却工程は、例えば、プログラムで制御できる凍結装置又はメタノールバス手法を用いて行うことができる。
【0094】
プログラムで制御できる凍結装置によって、最適な冷却速度を決定することができ、再現可能な標準的な冷却を促進することができる。クリオメッド(Cryomed)又はプラナー(Planar)などのプログラムで制御された速度の冷蔵庫は、凍結管理を、望ましい冷却速度曲線に調整することができる。その他の条件を満たした冷凍庫は、例えば、サンヨー製Modl MDF−1155ATN−152C及びModel MDF−2136ATN−135C、プリンストン(Princeton)製CryoTech TEC 2000が挙げられる。例えば、末梢血液細胞、又は、10%DMSO及び20%血漿のCD34+/CD38−細胞において、最適な速度は1〜3℃/分で0℃〜−200℃である。
【0095】
好ましい実施形態においては、この冷却速度は本発明の細胞に用いることができる。細胞を有する低温容器は、低温で安定していなければならず、冷却及び解凍のシールの効果的な制御のために速い熱伝導が可能である。複数の少量(1〜2ml)に、封止されたプラスチックの小瓶(例えば、ヌンク(Nunc)、ウィートン クリウレ(Wheaton cryules)又はガラスアンプルを用いることができる。一方、より大きい容量(100〜200ml)は、冷却時のよりよい熱交換のために金属板で挟まれたポリオレフィンバッグの中で(例えば、デルメッド(Delmed))凍結することができる(骨髄細胞のバッグは、骨髄細胞のバッグを、冷却速度約3℃/分である−80℃の冷凍庫に置くことによって思いがけずうまく凍結することができる)。
【0096】
別の実施形態においては、メタノールバスの冷却手法を用いることができる。メタノールバス手法は、大規模に複数の少量を繰り返し凍結保存する場合に非常に適している。この方法には、凍結速度の手動制御も速度を監視するレコーダーも必要ない。好ましい側面においては、DMSO-処理された細胞は、予め氷で冷却され、冷却したメタノールを含むトレーに、次に、メタノールバスの熱電対測定で−130℃の機械冷蔵庫(例えば、ハリス(Harris)又はレボコ(Revco))に移送され、サンプルは望ましい冷却速度1〜3℃/分を示す。少なくとも2時間後、検査サンプルの温度は−80℃に達し、永久保存のために液体窒素(−196℃)に直接配置してもよい。
【0097】
凍結後、TVEMF−増殖した幹細胞は、直ぐに長期凍結保存容器に移される。好ましい実施形態において、サンプルは、液体窒素(−196℃)又はその気体(−165℃)の中に低温で保存することができる。保存温度は、−120℃未満、好ましくは−130℃未満とすべきである。このような保存は、高効率な液体窒素冷蔵庫の利用によってより促進される。該液体窒素冷蔵庫は、大きな魔法瓶容器のようであり、熱もれ及び窒素のもれが極めて最小限に維持されるように、非常に低い真空で、優れた内部断熱材を有する。
【0098】
細胞の凍結保存のための好ましい装置及び手段は、テルモジェネシス(Thermogenesis Corp.)(ランチョ コルドボ(Rancho Cordovo、カリフォルニア州)で製造されているものであり、彼らの細胞の温度を−130℃未満に低減する手順を利用する。細胞は、凍結及び保存中、テルモジェネシス社の血漿バッグに保持される。
【0099】
TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞組成物の温度が−120℃未満、好ましくは−130℃未満に降下された後、テルモジェネシス社の冷凍庫などの装置に保持される。温度は約−120℃〜−196℃、好ましくは−130℃〜−150℃に維持される。本発明の凍結保存TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞組成物の温度は、長期間約−120℃であるべきではない。
【0100】
本発明の凍結保存したTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞組成物は、不定期間、凍結することができ、必要な時に解凍することができる。例えば、組成物は18年まで凍結することができる。さらに長い期間は可能であり、おそらく乳児ドナーの一生と同じくらいの期間が可能である。
【0101】
必要である時には、テルモジェネシス社(Thermogenesis)の血漿解凍器、又は、テルモリン社(Thermoline)の解凍器シリーズなど他の装置などの解凍システムに、細胞の入ったバッグを置いてもよい。凍結保存組成物の温度は、室温に上昇される。凍結保護剤と混合した細胞の解凍の他の好ましい方法において、液体窒素中で凍結保存した本発明のTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞組成物を有するバッグを、15分間液体窒素の気相に放置し、5分間外気室温にさらし、最後に37℃のウォーターバスで可能な限り素早く解凍してもよい。解凍されたバッグは、直ちに同量の2.5%(重量/体積)ヒト血清アルブミン及び5%(重量/体積)デキストラン40(ソルプレックス40(Solplex 40)、シフラ(Sifra)、ヴェロナ(Verona)、イタリア)を含むアイソトニック塩溶液を含有する溶液で希釈され、続いて400gで10分間、遠心分離機にかけられる。浮遊物は除去され、沈殿した細胞は、アルブミン/デキストラン溶液で再度沈澱される。高圧力の抗凍結剤の除去については、ルビンスタインP.ら(Rubinstein, P. et al.)、「無関係な骨髄の再構成のための胎盤/臍帯血の処理及び凍結保存」(Processing and cryopreservation of placental/umbilical cord blood for unrelated bone marrow reconstitution)、Proc.Natl.Acad.ScL92、10119〜1012(1995)を参照。細胞の解凍の好ましい方法のバリエーションについては、ラザッリLら(Lazzari, L. et al.)、「臍帯血からの造血系幹細胞の生体外増殖における凍結保存の効果の向上(Evaluation of the effect of cryopreservation on ex vivo expansion of hematopoetic progenitors from cord blood)。骨髄移植28、693〜698(2001)を参照。
【0102】
細胞の温度が室温に上げられた後は、細胞は研究又は再生治療に利用可能である。解凍されたTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞組成物は、直接哺乳類、好ましくはヒトに導入することができ、又は、解凍された状態で所望の研究に用いることができる。哺乳類の身体に導入する前に、好ましくはそのような導入の直前に、種々の添加剤を解凍された組成物に添加することができる(又は、非凍結保存のTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞組成物に)。そのような添加剤としては、これらに限られないが、増殖因子、銅キレート剤、サイトカイン、ホルモン、好適なバッファ又は希釈剤が含まれる。好ましくは、G−CSFが添加される。より好ましくは、ヒトにおいて、約20〜約40μg/kg体重の量、より好ましくは約30μg/kg体重の量のG−CSFが添加される。また、導入の前に、TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞組成物は、哺乳類自身の又は適合するドナーの血漿、血液又はアルブミン、又は輸血に付随する他の材料と混合してもよい。解凍された臍帯血幹細胞は、例えば、治療に用いることが望ましい又は治療に用いることができる薬剤に不利な反応がないか確認する試験に用いることができる。
【0103】
アメリカ合衆国ではFDSが増殖した臍帯血幹細胞の組織の再生への使用を認めていないが、そのような認可は間近であると思われる。臍帯血の採集が出産の短期間にのみ行うことができるため、将来的な利用のために臍帯血幹細胞が採集されるのであれば、今後の研究及び可能性のある今後の利用のために、臍帯血幹細胞は採集及び増殖及び保存されるべきである。増殖された臍帯血幹細胞の十分な量の直接注射は、再生する心臓、肝臓、膵臓、皮膚、筋肉、腸、脾臓、脳などの重要臓器の再生に用いることができる。
【0104】
本発明のTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞組成物は、哺乳類、好ましくはヒトに、組織の治療又は再生の達成、又は、所望の疾病又は状態の治療に十分な量を導入すべきである。好ましくは、少なくとも20mlの、ml当たり10〜10の幹細胞を有するTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞組成物が様々な治療に用いられ、特に外傷が発生し早急な組織の治療が必要である場合に、一度に用いることが好ましい。この量は特に75〜80kgの人間において好ましい。供給源の哺乳類に導入される組成物におけるTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞の量は、本質的に供給源の臍帯血材料に存在する細胞の数(例えば、1人の乳児の臍帯血に存在する幹細胞の量)に関係する。患者に導入されるTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞の好ましい範囲は、例えば、ml当たり10〜10の幹細胞を有するTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞組成物を約10ml〜約50ml、又は潜在的にそれ以上である。哺乳類に投与されるいかなる物質が高濃度であることは、有害又は致命的であると理解されているが、哺乳類の臍帯血幹細胞の全てを導入することが、例えばTVEMF−増殖後に少なくとも7倍、TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞の投与のし過ぎとはなりにくい。数人のドナーの臍帯血が用いられる場合には、哺乳類に導入される臍帯血幹細胞の数は増加してもよい。また、患者に導入してもよいTVEMF−細胞の量は、1人の個体から採集した臍帯血の量に限定されない。複数の投与、例えば1日1回、1日2回、1週間に1回、又はその他の回数の投与は、より容易に用いることができる。また、組織が治療される時には、組織の種が、利用可能なTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞の使用を保証する。例えば、肝臓が最も治療しやすい。
【0105】
上記実施例は、広くTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞の凍結保存に関し、凍結保存された、又は、増殖されていない、又は、非TVEMF−増殖の臍帯血幹細胞の解凍後に、TVEMF−増殖を行ってもよい。例えば、多くの臍帯血バンクは、必要な時に備えて、凍結保存された臍帯血幹細胞を含む凍結保存組成物を有する。そのような組成物は従来の方法で解凍され、その後、本明細書に記載のようにTVEMF−増殖されてもよく、本明細書に記載のTVEMF-処理のバリエーションを含む。その後、そのようなTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞は、上述したように、本発明の組成物と考えられる。例えば外傷が生じた時に、患者の臍帯血幹細胞が既に増殖され、調製にさらに貴重な日を要しないために、凍結保存前のTVEMF−増殖が好ましい。
【0106】
また、好ましくはないが、TVEMF−増殖した本発明の臍帯血幹細胞は、凍結保存、及びその後解凍され、その後使用しなければ、再度凍結保存してもよい。
【0107】
また、本願のTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞は、TVEMF−増殖後、凍結保存を行って又は行わないで、哺乳類、好ましくは供給源の哺乳類(臍帯血の供給源である哺乳類)に導入してもよい。
【0108】
解凍されたTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞は、以下の疾病のための可能性のある治療の研究に用いることができる。
I. 正常な血液細胞の生成の障害又は機能障害、化膿、過剰増殖性幹細胞疾患、再生不良性貧血症、汎血球減少症、血小板減少症、赤芽球癆、薬物、放射線、感染又は特発性のブラックファン・ダイアモンド症候群に起因する疾病。
II. 造血悪性腫瘍、急性リンパ性(リンパ球の)白血病、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性悪性骨髄硬化症、多発性骨髄腫、真性赤血球増加症、原発性骨髄線維症、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫。
III. 悪性を有する患者の免疫抑制、充実性腫瘍、悪性 黒色腫、腹部の癌腫、卵巣癌、乳癌、小細胞肺癌、上皮性悪性腫瘍、網膜芽細胞腫、精巣癌、グリア芽腫、横紋筋肉腫、神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、リンパ腫。
IV. 自己免疫性疾病、関節リウマチ、糖尿病タイプI、慢性 肝炎、多発性硬化症、及び全身性エリテマトーデス。
【0109】
V. 遺伝的(先天性)疾患、貧血症、家族性再生不良性、ファンコニ症候群、ブルーム症候群、赤芽球癆(PRCA)、先天性角化異常症、ブラックファン・ダイアモンド症候群、先天性赤血球異形成症候群I〜IV、チャウマン・ダイアモンド症候群(Chwachmann-Diamond syndrome)、ジヒドロ葉酸還元酵素欠損症、フォルマミノ トランスフェラーゼ欠損症(formamino transferase deficiency)、レッシュ・ナイハン症候群、先天性球状赤血球症、先天性楕円赤血球症、先天性ストマトサイト増加症、先天性Rhゼロ疾病(confenital Rh null disease)、発作性夜間血色素尿症、G6PD(ブドウ糖-6-リン酸脱水素酵素欠損症)、変異体1、2、3、ピルビン酸キナーゼ欠損症、先天性エリスロポエチン過敏症、欠損症、鎌状細胞疾病及び形質、サラセミアα、β、γメト−ヘモグロビン血症(met-hemoglobinemia)、免疫の先天性疾患、重症複合型免疫不全症、(SCID)、不全リンパ球症候群、イオノフォア反応複合型免疫不全症(ionophore-responsive combined, immunodeficiency)、キャッピング異常の複合型免疫不全症、ヌクレオシド・ホスホリラーゼ欠損症、顆粒球アクチン欠損症、乳児無顆粒球症、ゴーシェ病、アデノシン・デアミナーゼ欠損症、コストマン症候群、細網異形成症、先天性白血球機能障害症候群。
【0110】
VI. 上記以外のもの。大理石骨病、骨髄硬化症、後天性溶血性貧血、後天性免疫不全症、原発性免疫不全症又は続発性免疫不全症を引き起こす感染性疾患、細菌感染(例えば、ブルセラ症、リステリア症、結核、ハンセン病)、寄生虫感染症(例えば、マラリア、リーシュマニア症)、真菌感染症、老化食細胞疾患(aging phagocyte disorders)によるリンパ球様細胞セットの不均衡及び免疫機能低下を含む疾患、コストマン無顆粒球症、慢性肉芽腫性疾病、チェディアック・東症候群、好中球アクチン欠損症、好中球細胞膜GP−180欠損症、代謝性蓄積症、ムコ多糖症、ムコリピドーシス、及び、ウィスコット・アルドリッチ症候群、α1−抗トリプシン欠乏症を含む種々の疾患。
【0111】
増殖、保存、及び解凍の一連の工程の間、本発明の臍帯血幹細胞は、三次元形状、細胞間支持、及び細胞間形状を維持する。
【0112】
本願において好ましい実施形態を説明したが、いわゆる当業者は、種々の変更及び改良が含まれることを理解するであろう。本発明の範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】図1は、バイオリアクターの培養キャリアフローループの好ましい実施形態を模式的に示す。
【図2】図2は、本発明のTVEMF−生物反応器の好ましい実施形態の持ち上げた側面図である。
【図3】図3は、図2のTVEMF−生物反応器の好ましい実施形態の側面斜視図である。
【図4】図4は、TVEMF−生物反応器の好ましい実施形態の垂直断面図である。
【図5】図5は、TVEMF−生物反応器の垂直断面図である。
【図6】図6は、バイオリアクターを収容することが可能で、バイオリアクターに時間変動する電磁気力を提供することができる時間変動する電磁気力装置の持ち上げた側面図図である。
【図7】図7は、図6の装置の正面図である。
【図8】図8は、図6の装置の正面図であって、さらにその中のバイオリアクターを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類からの臍帯血幹細胞であって、該臍帯血幹細胞の体積当たりの数が、少なくとも天然臍帯血の7倍であり、該臍帯血幹細胞が、天然臍帯血の幹細胞と基本的に同一の三次元形状及び細胞間支持及び細胞間形状を有することを特徴とする臍帯血幹細胞。
【請求項2】
請求項1の臍帯血幹細胞及び許容しうる担体を含むことを特徴とする組成物。
【請求項3】
前記許容しうる担体が、血漿、血液、アルブミン、細胞培養液、増殖因子、銅キレート剤、ホルモン、バッファ及び凍結保存剤からなる群の少なくとも1つであることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記増殖因子が、G−CSFであることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物の温度が、前記臍帯血幹細胞を低温で保存するのに十分な温度であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項6】
前記細胞の凍結保存に十分な量の凍結保存剤を有し、前記組成物の温度が、約−120℃〜約−196℃であることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記温度が約−130℃〜約−150℃であることを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
更に、医薬上許容しうる担体を含むことを特徴とする請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、60〜80%アミノ酸−グルコース溶液中の20〜40%ジメチルスルホキシド溶液;15〜25%ヒドロキシエチルでんぷん溶液;4〜6%グリセロール、3〜5%グルコース及び6〜10%デキストランT10;15〜25%ポリエチレングリコール;及び75〜85%アミノ酸−グルコース溶液からなる群より選択される凍結保存剤を含むことを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、有毒物質を含まないことを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項11】
哺乳類からの臍帯血幹細胞であって、該臍帯血幹細胞が、TVEMF−増殖であることを特徴とする臍帯血幹細胞。
【請求項12】
TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞であって、体積当たりのTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞の数が、少なくともTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞から誘導される臍帯血の体積当たりの幹細胞の数の2倍であることを特徴とする請求項11に記載の臍帯血幹細胞。
【請求項13】
TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞であって、体積当たりのTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞の数が、少なくとも7倍であることを特徴とする請求項12に記載の臍帯血幹細胞。
【請求項14】
請求項13の臍帯血幹細胞及び許容しうる担体を含むことを特徴とする組成物。
【請求項15】
請求項13に記載のTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞を含む組成物であって、更に、血漿、血液、アルブミン、細胞培養液、増殖因子、銅キレート剤、ホルモン、バッファ及び凍結保存剤からなる群の少なくとも1つを含むことを特徴とする組成物。
【請求項16】
前記増殖因子が、G−CSFであることを特徴とする請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、更に、60〜80%アミノ酸−グルコース溶液中の20〜40%ジメチルスルホキシド溶液;15〜25%ヒドロキシエチルでんぷん溶液;4〜6%グリセロール、3〜5%グルコース及び6〜10%デキストランT10;15〜25%ポリエチレングリコール;及び75〜85%アミノ酸−グルコース溶液からなる群より選択される凍結保存剤を含むことを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物の温度が、前記臍帯血幹細胞を低温で保存するのに十分な温度であることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
凍結保存剤を含み、前記組成物の温度が約−120℃〜約−196℃であることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
前記温度が約−130℃〜約−150℃であることを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、有毒物質を含まないことを特徴とする請求項14に記載の組成物。
【請求項22】
a)臍帯血混合液をTVEMF−生物反応器の培養チャンバーに配置する工程、及び、
b)該臍帯血混合液をTVEMFさせ、該臍帯血幹細胞をTVEMF−増殖させ、臍帯血幹細胞組成物を調製する工程を含むことを特徴とする臍帯血幹細胞組成物の調製方法。
【請求項23】
前記TVEMFが、約0.05〜約6.0ガウスであることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記TVEMF−増殖が、TVEMF−増殖した臍帯血幹細胞の体積当たりの数がTVEMF−生物反応器に配置した臍帯血幹細胞の体積当たりの数と比べて7倍を超えるまで連続することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項25】
更に、前記臍帯血混合液をTVEMF−生物反応器に配置する工程の前に、哺乳類から臍帯血を採集する工程を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記哺乳類がヒトであることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
更に、前記臍帯血を前記臍帯血混合液に添加する工程の前に、臍帯血貯蔵施設から解凍された凍結保存臍帯血を採集する工程を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項28】
更に、前記TVEMF−増殖の前に、臍帯血混合液から有毒物質を除去する工程を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記TVEMF−生物反応器が、一体TVEMF源を有することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項30】
前記TVEMF−生物反応器が、隣接TVEMF源を有することを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項31】
前記臍帯血混合液が、他の臍帯血成分から分離されたCD34+/CD38−臍帯血幹細胞を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項32】
前記臍帯血混合液が、他の臍帯血成分から分離された軟膜を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記臍帯血混合液が、赤血球を含まない臍帯血を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項34】
更に、臍帯血幹細胞組成物のTVEMF−増殖した細胞を、熱がある低温容器へ移動し、該低温容器の温度を制御された速度で−120℃〜−196℃に低下させる工程を含むことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項35】
更に、前記温度を−120℃〜−196℃に制御された速度で低下させる工程の前に、前記臍帯血幹細胞組成物から有毒物質を除去する工程を含むことを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項36】
更に、温度を低下させる工程の後に、前記低温容器の温度を−120℃〜−196℃に一定期間維持する工程を含むことを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記一定期間が、少なくとも1年であることを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項38】
更に、前記温度を低下させる工程及び前記温度を維持する工程の後、前記低温容器の温度を、制御された速度で、前記臍帯血幹細胞組成物を哺乳類に導入するのに適した温度に、上昇させる工程を含むことを特徴とする請求項36に記載の方法。
【請求項39】
有毒物質が、前記上昇させた温度の臍帯血幹細胞組成物から除去されていることを特徴とする請求項38に記載の方法。
【請求項40】
更に、前記臍帯血幹細胞組成物のTVEMF−増殖した細胞に凍結保存剤を添加する工程を含むことを特徴とする請求項34に記載の方法。
【請求項41】
請求項22の方法によって調製される臍帯血幹細胞、及び、許容しうる担体を含むことを特徴とする組成物。
【請求項42】
治療効果のある量の、請求項1の臍帯血幹細胞及び医薬上許容しうる担体を含む組成物を、前記哺乳類に投与する工程を含むことを特徴とする哺乳類の組織を治療する方法。
【請求項43】
治療効果のある量の、請求項11のTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞及び医薬上許容しうる担体を含む組成物を、前記哺乳類に投与する工程を含むことを特徴とする哺乳類の組織を治療する方法。
【請求項44】
前記治療される組織が、ヒト組織であることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記治療される組織が、重要臓器であることを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記治療される組織が、少なくとも肝組織、心臓組織、造血組織、血管、皮膚組織、筋肉組織、消化器組織、膵臓組織、中枢神経系、骨組織、軟骨組織、結合組織、肺組織、脾臓組織及び頭脳組織からなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記哺乳類に投与されるTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞の量が、少なくとも10〜10の幹細胞/mlを有する組成物の20mlであることを特徴とする請求項43に記載の方法。
【請求項48】
治療効果のある量の、請求項1の臍帯血幹細胞及び医薬上許容しうる担体を含む組成物を、前記哺乳類に投与する工程を含むことを特徴とする哺乳類の病気を治療する方法。
【請求項49】
治療効果のある量の、請求項11のTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞及び医薬上許容しうる担体を含む組成物を、前記哺乳類に投与する工程を含むことを特徴とする哺乳類の病気を治療する方法。
【請求項50】
前記治療される組織が、ヒト組織であることを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記治療される組織が、重要臓器であることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記治療される組織が、少なくとも肝組織、心臓組織、造血組織、血管、皮膚組織、筋肉組織、消化器組織、膵臓組織、中枢神経系、骨組織、軟骨組織、結合組織、肺組織、脾臓組織及び頭脳組織からなる群より選択されるものであることを特徴とする請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記哺乳類に投与されるTVEMF−増殖した臍帯血幹細胞の量が、少なくとも10〜10幹細胞/mlを有する組成物の20mlであることを特徴とする請求項49に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−528034(P2008−528034A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553269(P2007−553269)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/002961
【国際公開番号】WO2006/081435
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(507252959)リジェネテック,インコーポレイテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】REGENETECH, INC.
【住所又は居所原語表記】3102 Shawnee Drive, Sugar Land, Texas 77479, United States of America
【Fターム(参考)】