説明

直下型液晶ディスプレイ用バックライト

【課題】輝度ムラが抑制されたバックライトを提供する。
【解決手段】蛍光ランプ10と筐体20とを備えた直下型液晶ディスプレイ用バックライト100である。蛍光ランプ10の本数は3以上の奇数本であり、蛍光ランプの本数m、画面縦方向長さh、バルブ12の内周長さL、および、筐体の深さdの間に、下式1および2の関係が成立し、奇数本の蛍光ランプ10は、均等の間隔(p)で配列されており、且つ、奇数本のうちの中央の蛍光ランプ10は、画面縦方向の中心位置であるh/2の位置に配置されている。
m≦15.1h/(28.4d+4L) ・・・(式1)
m≧15.1h/(28.4d+19L) ・・・(式2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直下型液晶ディスプレイ用バックライトに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、液晶ディスプレイのバックライトの光源としては、冷陰極蛍光ランプが主に採用されている。冷陰極蛍光ランプは、細径化に適しているので、薄型化が要求されるバックライトの光源として用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−116704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近年、液晶ディスプレイの大画面化が進んでおり、これに伴ってバックライトも大型化してきている。このバックライトの大型化により、光源として冷陰極蛍光ランプを用いると、点灯回路が複雑になるとともに、使用するランプ本数の増加により、消費電力が高くなることが危惧されている。
さらに説明すると、冷陰極蛍光ランプは、他のランプと比べて駆動に必要な電圧(駆動電圧)が大きく、高圧な電源を用いることが必要である。特に、画面サイズが32インチ以上のような大画面の液晶ディスプレイが最近登場しているため、ランプ長はより長くなり、その分、駆動電圧はさらに高圧化する傾向が強くなっている。
【0004】
また、冷陰極蛍光ランプは、1本当たりに投入する電力が小さいため、画面輝度を確保するためには本数を多くする必要があり、それゆえに、部品コストが増大するとともに、組み立て工数がかかるという問題が顕在化する可能性が高い。
そのような中、冷陰極蛍光ランプよりも高効率・高出力である熱陰極蛍光ランプをバックライトの光源として採用することが検討され始めている。熱陰極蛍光ランプを採用することで、上述した特長により、消費電力を抑えるとともに、ランプ本数を削減することで、点灯回路の簡素化・部品コストダウン・組み立て工数削減が期待できる。
【0005】
本願発明者は、液晶ディスプレイの大画面化に伴って益々顕在化してくるバックライトの問題を、現在主流の冷陰極蛍光ランプの改良により解決するのではなく、熱陰極蛍光ランプを用いることによって解決することを試みている。
本願発明者の検討によると、熱陰極蛍光ランプを用いたバックライトは、確かに、冷陰極蛍光ランプと比較してランプ本数を減らすことができるが、それでも、ランプ本数を減らすと、デメリットが顕在化してくることがわかった。つまり、バックライト内のランプ本数が少ないと、画面の輝度ムラが酷くなり、液晶ディスプレイ用のバックライトとしての使用が不可となってしまう。特に、画面中央付近の輝度ムラおよび輝度低下は、直ちに画像の品質劣化に繋がるため、即、不適となることがわかった。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、低本数の光源を用いたバックライトにおいて、輝度ムラを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るバックライトは、蛍光ランプと、前記蛍光ランプを収納する筐体とを備えた、直下型液晶ディスプレイ用バックライトであり、前記筐体に収納される前記蛍光ランプの本数は、3以上の奇数本であり、前記蛍光ランプは、略直線状のバルブと、前記バルブの内周に形成された蛍光体層とから構成されており、前記蛍光ランプの本数m、画面縦方向長さh、前記バルブの長手方向に対して垂直な断面における内周の長さL、および、前記筐体の深さdの間に、下式1および2の関係が成立し、
m≦15.1h/(28.4d+4L) ・・・(式1)
m≧15.1h/(28.4d+19L) ・・・(式2)
ここで、前記奇数本の蛍光ランプは、それぞれ、均等の間隔で配列されており、且つ、前記奇数本のうちの中央の蛍光ランプは、画面縦方向の中心位置であるh/2の位置に配置されている。
【0008】
ある好適な実施形態において、前記蛍光ランプは、熱陰極蛍光ランプであり、前記熱陰極蛍光ランプは、熱電子を放出するフィラメントを前記バルブ内に有している。
ある好適な実施形態において、前記バルブの断面は、円形である。
前記バルブの断面は、略楕円形であってもよい。
ある好適な実施形態において、前記バックライトは、画面サイズ32インチ以上65インチ以下の直下型液晶ディスプレイ用バックライトである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、筐体に収納される蛍光ランプの本数が3以上の奇数本であり、奇数本の蛍光ランプは均等の間隔で配列され、そのうちの中央の蛍光ランプが画面縦方向の中心位置に配置されており、蛍光ランプの本数m、画面縦方向長さh、バルブ断面における内周の長さL、および、筐体の深さdの間に、式1および2の関係を成立させることにより、輝度ムラを抑制することができる。また、輝度ムラを抑制しつつ、低本数でのバックライトを実現することができるので、バックライトにおける光源部材のコスト削減を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願発明者は、大画面化が益々加速する液晶ディスプレイ用のバックライトに好適なものは、現在主流の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)を用いたものでなく、冷陰極蛍光ランプと比べて1本あたりに大出力の電力を投入できる熱陰極蛍光ランプ(HCFL)を用いたものに移行すると考え、研究開発を行っていた。そのように移行すると考えた理由は、熱陰極蛍光ランプの「大出力」という特徴を生かすことで、液晶テレビにおけるコントラスト比を大きくすることができ、動画を含めた高画質化が可能となるとともに、冷陰極蛍光ランプに比べ、バックライトとして使用するランプの本数が大幅に削減でき、コストダウンが可能であるからである。このような開発の中、本願発明者は、冷陰極蛍光ランプと比較して本数を低減できる熱陰極蛍光ランプにおいてコストアップなく輝度ムラを抑制するにはどうすればよいか種々の検討を加えて、従来の発想とは異なる手法を用いて輝度ムラ抑制を実現し、本発明に至った。
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。なお、本発明は以下の実施形態に限定されない。
図1は、本発明の実施形態に係るバックライト100の構成を模式的に示している。図1(a)は、本実施形態のバックライト100の概略を示す上面図であり、図1(b)及び(c)は、図1(a)に対応した概略断面図である。
【0012】
本実施形態のバックライト100は、蛍光ランプ10と、蛍光ランプ10を収納する筐体20とを備えた直下型液晶ディスプレイ用バックライトである。そして、本実施形態の構成では、筐体20に収納される蛍光ランプ10の本数は、3以上の奇数本であることが特徴の一つである。
図1に示した例では、3本の蛍光ランプ10が筐体20に収納されている。図1に示した奇数本(3本)の蛍光ランプ10は、それぞれ、均等の間隔(p)で配列されており、かつ、奇数本のうちの中央の蛍光ランプ10は、画面縦方向長さをhとしたときに、画面縦方向の中心位置であるh/2の位置に配置されている。
【0013】
蛍光ランプ10は、略直線状のバルブ12と、バルブ12の内周に形成された蛍光体層(不図示)とから構成されている。本実施形態における蛍光ランプ10は、熱陰極蛍光ランプである。熱陰極蛍光ランプ10は、熱電子を放出するフィラメント(不図示)をバルブ12内に有している。熱陰極蛍光ランプ10の構成の詳細は後述する。
蛍光ランプ10を収納する筐体20には、開口部20aが形成されており、その開口部20aには、光学シート30が配置される。なお、光学シート30の上方(矢印40の方向)には、液晶ディスプレイパネルが配置される。なお、液晶ディスプレイパネルが配置される方向をスクリーン方向40と称してもよく、換言すると、面状光源としてのバックライト100の光が向かうべき方向(液晶ディスプレイパネルが存在する方向)がスクリーン方向40となる。
【0014】
光学シート(または、光学フィルム)30は、複数の層が積層されて構成されており、例えば、拡散シート、レンズシート、偏光シートからなる。光学シート30と対向する面には、筐体20の主面(ここでは底面)20bが位置している。この筐体20の主面(底面)20bは、反射板として機能し、蛍光ランプ10から放射された光をスクリーン方向40に向ける働きを持っている。具体的には、蛍光ランプ10から放射された光が、筐体20の主面(底面)20bへ向かってもその光は反射されて、光学シート30を通って液晶ディスプレイパネルの方に向かっていく。
【0015】
図1では、3本の蛍光ランプ10が筐体20に収納された例を示したが、図2では、5本(奇数本)の蛍光ランプ10が筐体20に収納された例を示している。図1(a)から(c)と同様に、図2(a)は、本実施形態のバックライト100の概略を示す上面図であり、図2(b)及び(c)は、図2(a)に対応した概略断面図である。
図3(a)に、蛍光ランプ10のバルブ12の断面構成、より詳細には、バルブの長手方向50に対して垂直な断面を模式的に示す。本実施形態のバルブ12は、内面12aと外面12bとを有するガラス管からなり、バルブ12の内面12aには蛍光体層19が形成されている。図3(a)に示したバルブ12の断面は、円形である。ここで、図3(b)に示すように、バルブ断面の内周(内面12aを基準にした周囲長さ)を「L」と表す。バルブ12の内面12aに蛍光体層19が形成されていることからわかるように、このバルブ断面の内周Lは、発光部の長さ(内円周)を意味している。
【0016】
なお、図1から図3に示した蛍光ランプ10では、断面が円形のバルブ12のものを示したが、図4に示すように、バルブ12の断面は円形に限らず略楕円形(楕円形、長円、扁平形状などの形状)のものであってもよい。その場合も、バルブ12の断面の内周(内面12aを基準にした周囲長さ)を「L」として表す。
本実施形態のバックライト100では、蛍光ランプの本数m、画面縦方向長さh、バルブ12の内周長さL、および、筐体の深さdの間に、下式1および2の関係が成立する。
【0017】
m≦15.1h/(28.4d+4L) ・・・(式1)
m≧15.1h/(28.4d+19L) ・・・(式2)
なお、筐体20の深さdは、光学シート30の底面から、筐体20の底面20bまでの間の距離である。ピッチpは、隣接する2本のバルブ12の中心間の距離である。画面縦方向長さhは、バルブの長手方向50に垂直な方向の画像表示領域の長さである。上記式(1)および(2)の技術的意義については後述する。
【0018】
次に、図5を参照しながら、本発明の実施形態に係るバックライト100に搭載される熱陰極蛍光ランプ10について説明する。図5は、本実施形態の熱陰極蛍光ランプ10の断面構成を模式的に示している。
本実施形態の熱陰極蛍光ランプ10は、バックライト用として用いられるので、長寿命のものが使用される。好ましくは、熱陰極蛍光ランプ10は、公称寿命1.2万時間以上のランプであり、さらに好ましくは、公称寿命2万時間以上、または、3万時間以上のランプである。なお、ディスプレイとして従来から広く普及しているCRT装置の寿命は、約20000時間であるので、それ以上の寿命があるランプであることが望まれる。
【0019】
寿命の定義としては大きく2つの要素があり、1つはランプの明るさの減退率(いわゆる輝度維持率)と不点灯である。バックライトとしての使用を想定すると、熱陰極蛍光ランプの寿命が律則するのは電極フィラメントに形成された熱電子放射性物質(エミッタ)の枯渇による不点灯である。寿命を推定するには、複数のランプを所定の点灯条件(ランプの定格電流における連続点灯試験)のライフ試験に掛け、ある一定時間(例えば、100時間、500時間、1000時間、2000時間、5000時間)点灯後のランプを順次破壊、または、非破壊によりエミッタの残存量を随時測定し、初期からの消耗量(消耗速度)を測定する。これらの結果を基に、点灯経過時間とエミッタ消耗量(または、エミッタ残存量)の関係をプロットし、1次関数によりフィッティングを行うことで、寿命を推定することができる。なお、公称寿命は、前記の取得データを基に消耗量のばらつき、測定ばらつき、製造ばらつき(いずれも標準偏差の3倍:3シグマを基準)を鑑みて決定される。
【0020】
図示した熱陰極蛍光ランプ10は、直管状のガラスバルブ12と、ガラスバルブ12の両端に配設された一対の電極11とから構成されている。
ガラスバルブ12は、ソーダ石灰ガラス製、または、バリウム・ストロンチウムシリケート(軟化点675℃の軟質ガラス)製である。バルブ12の寸法を例示すると、32インチ用としては、バルブ12の外径12mm、肉厚0.8mm、長さ730mmである。45インチ用としては、バルブ12の外径12mm、肉厚0.8mm、長さ1010mmである。65インチ用としては、バルブ12の外径25.5mm、肉厚0.8mm、長さ1499mmである。なお、105インチ用としては、バルブ12の外径38mm、肉厚0.9mm、長さ2367mmである。なお、バルブの肉厚は、1.0mmにすることもできる。
【0021】
ガラスバルブ12の内面12aには蛍光体(不図示)が塗布されている。より具体的には、ガラスバルブ12の内面12aには、アルミナからなる保護膜が形成されており、その保護膜の上に蛍光体層が積層されている。蛍光体層を構成する蛍光体は、例えば、赤(Y23:Eu)、緑(LaPO4:Ce,Tb3)および青(BaMg2Al1627:Eu,Mn)の各色を発光する希土類蛍光体を混合したものを用いることができる。なお、蛍光体は、他の希土類蛍光体を用いることができる。例えば、赤として、(Y,La)23:Eu、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn、緑として、CeMgAl1119:Tb、GdMgB210:Ce,Tb、青として、(Sr,Ca)10(PO46l2:Euを挙げることができる。
【0022】
ガラスバルブ12内には、水銀と、希ガスが封入されている。本実施形態では、ガラスバルブ12内に、約5mgの水銀(不図示)と、緩衝用希ガスとして常温における圧力500Paのアルゴン(Ar)が封入されている。なお、バルブ12内に封入する水銀は、水銀単体の他に、例えば、亜鉛水銀、スズ水銀、ビスマス、インジウム水銀などのアマルガムの形態で封入することもできる。
【0023】
また、希ガスとしては、アルゴン(Ar)の混合比率が100%のものの他、アルゴン(Ar)にクリプトン(Kr)を混合したものを用いることもできる。クリプトン(Kr)の混合比(分圧比)は、例えば、20%〜60%であり、一例として、アルゴン:クリプトン=50%:50%の混合ガス(ガス圧600Pa)を挙げることができる。
本実施形態における電極11は、フィラメント14と、フィラメント14を保持する一対のリード線13と、この一対のリード線13を保持するビーズガラス15とから構成されている。ビーズガラス15は、ビーズマウントとも称される。図示した電極11は、いわゆるガラスビーズマウント方式のものである。
【0024】
フィラメント14は、タングステン製であり、本実施形態では、長寿命ランプにするためにエミッタ塗布量を大きくするように複雑なコイル形状としている。すなわち、太いタングステン線の周囲にゆるく覆うように細いタングステン線を巻つけて長い籠状の構造体を形成し、この構造体を螺旋状に巻いたものが二重コイルと称される。フィラメント14は前記二重コイルをいまいちど螺旋状に巻いて三重コイルとしたもの、または前記三重コイルをさらに螺旋状に巻いて四重コイルとしたものである。フィラメント14が三重コイルの場合、三重目のコイルが5〜7ターンの電極コイルである。またフィラメント14が四重コイルの場合、2〜4ターンの電極コイルである。
【0025】
フィラメント14に塗布されるエミッタは、例えば、ストロンチウム、カルシウム、バリウムの酸化物である。本実施形態では、長寿命ランプを実現するために、フィラメント14に塗布するエミッタ量を多くするようにしており、本実施形態では、熱陰極蛍光ランプ10の一本あたり、一対の電極のうちの一つのフィラメント14に5.0mg以上のエミッタを塗布している。なお、希ガスの構成をアルゴン100%でなく、アルゴンよりも原子量の大きいクリプトンを所定混合比で混入させると、エミッタがフィラメント14から飛散し難くなり、その技術的意味でランプ寿命を長くすることができる。
【0026】
図示した電極11は、ガラスバルブ12の封止部16にてピンチシールされている。また、ガラスバルブ12の少なくとも一方の端部には、排気管17が封着されている。この排気管17は、バルブ12内を排気したり、希ガスを封入したりする時に使用され、その排気・封入の後に封着されたものである。なお、排気管17をバルブ12の一端でなく、両端に設けると、ガス排気・封入を効率良く行うことができるメリットがある。また、それにより、バルブ12内部の不純物の割合を低下させることもできる。
【0027】
ガラスバルブ12の端部には、封止部16や排気管17を覆うように口金18が設けられている。なお、封止部16から外へ延びたリード線13と口金18との結線手法は、ランプ10の仕様に合わせて適宜決定すればよい。例えば、口金18の端面(紙面の左側と右側の端面)に、バックライトユニットへの取付け用のピンを配置し、そのピンとリード線13との結線を行うようにすることもできるし、あるいは、取付け用のピンを口金18の側面の一部(例えば、紙面正面側の円筒の一部)に配置し、そのピンとの結線を行うことも可能である。
【0028】
熱陰極蛍光ランプ10は、低圧水銀蒸気放電を応用したランプである。発光の原理は、電子放出物質が塗布されている電極からは、放電(および電極を加熱する別の手段)によって熱電子が放出されるだけの温度を維持することで、電子が供給されアーク放電を維持することができる(これは、冷陰極と大きく異なる点である)。この放電により得られた水銀原子の転移スペクトルのうち、主に254nmの紫外線を蛍光体の励起線として利用することで可視光に転換して利用している。
【0029】
上述したように、ガラスバルブ12の内面12aには蛍光体が塗布されるが、蛍光体とガラスとの間には化学反応による特性の劣化を防ぐための保護膜(酸化アルミナやシリカ粉末など)が施される。電極となるフィラメントはタングステンの二重、または、三重コイルが一般的で、フィラメントには電子放射性物質であるエミッタが塗布されている。管内には液体水銀(または水銀アマルガム、合金)とバッファとしての希ガスが封入される。希ガスとしては一般にアルゴンが用いられることが多いが、ランプの構造や種類によってはクリプトンやネオンなどの混合ガスを用いることもある。
【0030】
さらに、図6および図7を参照しながら、本実施形態のバックライト100の構成の一例を詳述する。図6および図7は、それぞれ、本実施形態のバックライト100の構成を示す分解斜視図および断面図である。
図示した構成では、図1に示した熱陰極蛍光ランプ10が3本配置されている。なお、図2に示した構成では、熱陰極蛍光ランプ10は5本配置されることになる。この例の筐体20の一部となる反射板21は、金属板(例えば、メッキを施した鉄製、または、アルミニウム製)から構成されており、その厚さは1.5mmである。反射板21は、筐体20の主面(又は底面)20bと主面から延びた側面20cから構成されている。
【0031】
反射板21の上面(筐体の主面20b)には、反射シート23が形成されている。反射シート23は、白色の酸化チタン(又は炭酸カルシウム)が分散されてなるポリエチレンテレフタレート(PET)の樹脂層から構成されており、その厚さは2.0mmである。なお、筐体20の深さd(反射板21の上面から光学シート30が位置する面までの高さ)は、例えば、40〜75mmである。
【0032】
バックライト100の反射板21の下方には、点灯回路(バラスト回路または安定器)70が配設されている。この例では、各ランプ10に、1つの点灯回路70が設けられているが、2つのランプ10に1つの点灯回路70を設けてもよい。点灯回路70は、ランプ10に電気的に接続されており、また、調光機能も備えている。点灯回路70を収納するように反射板21の下には、下カバー72が設けられている。下カバー72は、厚さ1.5mmの金属板から構成されている。下カバー72と反射板21との間の空間には、例えば、配線が配設されている。なお、バックライト100に下カバー72は設けなくてもよく、その場合、点灯回路70は液晶ディスプレイ(例えば、液晶テレビ)の筐体内に配置しておくことも可能である。
【0033】
また、反射板21の端部には、ランプ10を保持するためのランプホルダ75が設けられている。ランプホルダ75は、例えば、白色樹脂製のものである。加えて、バックライト100の筐体20の開口部20aには、光学シート30が配置されている。この例では、光学シート30は、上から順に、偏光シート31(住友3M社製のDBEF(Dual Brightness Enhancement Film)、厚さ0.440mm)、レンズシート32(厚さ0.155mm)、拡散シート33(厚さ0.113mm)、拡散板34(厚さ2.0mm)を含んでいる。拡散板34の下面に、さらにレンズシートを設けることも可能である。
【0034】
さらに、光学シート30の上には、液晶ディスプレイパネル(例えば、厚さ約2mm)60が配設され、そして、その液晶ディスプレイパネル60及び光学シート30を覆うように上カバー62が配設されている。上カバー62は、例えば、厚さ1.5mmの金属板からなる。
なお、この例におけるバックライト100は、画面サイズ20インチ以上42インチ以下の直下型液晶ディスプレイ用バックライトであるが、上述した式1〜式3の関係を満たし、縦方向長さhと内周長さLとの比(h/L)が2以上10以下であるのであれば、それ以外の画面サイズのものであってもよい。また、ランプ10の封止部16周辺は、ランプ10の非点灯部位を隠すために額縁領域として覆われて、その非点灯の部位は外部には見えないことになる。
【0035】
次に、図8(a)から(c)を参照しながら、偶数本光学系(例えば4本)と奇数本光学系(例えば3本)との輝度分布について説明する。
図8(a)は、画面中央部の縦方向90を表している。図8(b)は、図8(a)に示した画面中央部の縦方向90に沿った偶数本光学系(4本)の輝度分布を表しており、一方、図8(c)は、縦方向90に沿った奇数本光学系(3本)の輝度分布を表している。図8(b)及び図8(c)において、ランプ10(バルブ12)の対応関係が分かりやすいようにランプ10を明示している。なお、本実施形態のバックライト100のような3本以上の奇数本というレイアウトとは異なり、典型例のバックライトにおいては、ランプ10の本数は、点灯装置において各ランプに電流を均等に振り分けるための回路(バランサ)の関係から偶数(好ましくは、2のn乗)にされるものである。
【0036】
図8(b)に示した偶数本(4本)光学系と、図8(c)に示した奇数本(3本)光学系とでトータル電力を同じにすると、奇数本光学系の方が、1本あたりの電力を大きくすることができる。したがって、図8(c)に示した奇数本光学系では、ランプ10の直上の輝度を高くすることができ、この輝度の高いところを画面中央部にして、バックライトを構築する。
【0037】
次に、図9を参照しながら、ランプイメージについて説明する。図9(a)〜(c)は、画面中央の縦方向(90)の輝度分布に基づくランプイメージを説明するための図であり、それぞれ、隣接する2本のランプ10のピッチpを変化させた場合の輝度パターンの変化を示している。
図9(a)は、隣接する2本のランプ10のピッチpが小さい構成例で、図9(c)は、2本のランプ10のピッチpが大きい構成例で、図9(b)はそれらの中間である。画面中央の輝度ムラは、液晶ディスプレイにとって直ちに画像の品質劣化に繋がるため、重要な指標となる。ここでは、画面中央部の縦方向における輝度の山谷の比をランプイメージという指標で表して評価した。
【0038】
ランプイメージは、図9(c)の右側にて表記しているように、ランプ10間における最高輝度(Ip)に対する、ランプ10間における最低輝度(Im)の比(Im/Ip)で表す。なお、ランプの長手方向50に沿った方向の輝度変化はほとんど問題とならないレベルであるので、ここでは特別に評価は行わない。
まず、図9(a)に示したようなピッチpが小さい場合、2本のランプ10の距離が近すぎて、大きな山が存在しているような輝度分布となってしまい好ましくない。すなわち、ランプイメージ(Im/Ip;輝度の山谷の比)は1よりも大きな値となる。
【0039】
一方、図9(c)に示したように、ピッチpが大きい場合、2本のランプ10の距離が離れすぎて、輝度ムラのイメージが強く残ってしまう。つまり、ランプイメージ(Im/Ip)は1よりも小さくなり、悪い評価となる。
図9(b)に示すように、ピッチpが丁度良い距離であると、ランプイメージ(Im/Ip)はおおよそ1になり(あるいは、1に近づいた値となり)、良い評価となる。
【0040】
図10は、縦軸にランプイメージ(ランプ間min/max)[%]をとり、横軸に(d/L)をとって、(p/L)の値をプロットしたグラフである。p/Lが小さいものほど(p/L=2.11)、ランプイメージの結果が良好になることがわかる。また、いずれのp/Lも、d/Lが大きくなるほど、すなわち、筐体20の深さdが大きくなるほどランプホルダの結果が良くなっていくことがわかる。なお、図10には、プロットを直線近似した直線(最小自乗法による回帰直線)も示している。
【0041】
図10に示した結果(回帰直線)から、ランプイメージは下式で表すことができる。
ランプイメージ=104+28.4(d/L)−15.1(p/L)
また、奇数本光学系においては、ランプ10間の輝度が谷であって欲しいので、前提として、ランプイメージ≦100となる。したがって、ランプイメージの式は、以下の通りになる。
【0042】
104+28.4(d/L)−15.1(p/L)≦100
28.4(d/L)+4≦15.4(p/L)
p≧1.9d+4L
ここで、画面縦方向長さh、ランプ本数mにおいてランプ10を均等配置すると、p=h/mとすることができ、すると、下式1が導かれる。
【0043】
m≦15.1h/(28.4d+4L) ・・・(式1)
次に、ランプイメージの許容下限が85%であるならば、そのランプイメージの式は、以下の通りになる。
104+28.4(d/L)−15.1(p/L)≦85
さらに、上記と同様に式を導くと、下式2が得られる。
【0044】
m≧15.1h/(28.4d+19L) ・・・(式2)
以上の式1と式2の境界条件をグラフ上に表すと、図11に示す通りとなる。すなわち、式1に基づいて表される直線Sと、式2に基づいて表される直線Tで挟まれた領域が、蛍光ランプの本数は3以上の奇数本で、画面中央部の縦方向90の輝度は山で(すなわち、ランプ10間の輝度が谷であり)、画面輝度を確保しながら、輝度ムラを抑制できる範囲である。この範囲内であれば、液晶ディスプレイ用として許容可能なバックライトを実現することができる。
【0045】
図11に示したグラフは、横軸をディスプレイサイズ[インチ]とし、縦軸をランプ本数とした実測値ベースのものであり、直線Sと直線Tで挟まれた領域には、図12に示した条件のバックライト100が成立し、そして、その条件は図11のグラフ中にプロットしてある。
なお、本実施形態の均等配置においては、奇数本のランプ10のうち両端のランプの中心線(図1(a)及び図2(a)中の最上ランプ10および最下ランプ10の中心線)と、その両端のランプ10に隣接する筐体20の壁面との距離は、おおよそp/2となるように設定されている。これは、当該筐体20の壁面を鏡面と見立てたときに、全体において略均等配置の傾向を維持しやすいからである。その両端のランプ10と筐体20の壁面との距離が正確にp/2の場合には、上述したp=h/mの通りになる。ただし、筐体20の壁面は実際には鏡面でないことと、現実の寸法又は条件など(例えば、図7中の側面20cが傾斜している例)を考慮して、両端のランプ10の中心線と筐体20の壁面との間隔がp/2よりも小さい距離となるように、当該両端のランプ10は、筐体20の壁面に近づけて配置されることが好まれることがある。そのような場合、つまり、p/2よりも小さい距離で両端のランプ10を筐体20の壁面に近づけた均等配置の場合は、式1に基づいて表される直線Sが図11中の上側に移動して、直線Sと直線Tで挟まれた領域が拡大することを意味するだけであり、したがって、式1に基づいて表される直線Sと直線Tで挟まれた領域が好適な領域であることにはかわりない。
【0046】
以上説明した通り、本実施形態のバックライト100によれば、筐体20に収納される蛍光ランプ10の本数が3以上の奇数本であり、奇数本の蛍光ランプ10は均等の間隔pで配列され、そのうちの中央の蛍光ランプ10が画面縦方向の中心位置(h/2)に配置されており、蛍光ランプの本数m、画面縦方向長さh、バルブ断面の内周長さL、および、筐体の深さdの間に、上述の式1および式2の関係を成立させることにより、輝度ムラを抑制することができる。また、輝度ムラを抑制しつつ、低本数でのバックライトを実現することができるので、バックライトにおける光源部材のコスト削減を行うことができる。
【0047】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、勿論、種々の改変が可能である。例えば、本発明は、熱陰極蛍光ランプに限らず、他のランプ(冷陰極蛍光ランプ)にも適用可能である。
また、図4に示した本実施形態のバルブ12の形状である「略楕円」は、一般的に断面が円形で作製されたバルブ12が製造プロセス上の誤差(公差)によって偏位し、円形と称されるものの幾何学的な円形でない形状まで含む意図ではなく、製造プロセス上の誤差(公差)によって偏位したものは、「円形」に含まれるものである。略楕円のバルブは、典型的な製造プロセスを利用して、円形のバルブから、扁平率を上げて、本実施形態における略楕円のバルブを作製しても構わない。本実施形態における略楕円ランプでは、例えば、長径L1/短径L2の値が1.6であるが、典型的には、1.2≦(L1/L2)≦1.8の範囲のものを用いることができる。
【0048】
本実施形態における略楕円のバルブ12を作製するには、次のようにすればよい。まず、断面円形のバルブ(ガラスバルブ)を用意し、そのバルブを加熱して、略楕円中空の型(金型)の間に配置し、その型によってバルブを挟み込んで変形させれば、略楕円状のバルブ12を得ることができる。なお、バルブ12の内面に塗布されるアルミナや蛍光体は、適宜好適な段階で形成すればよい。あるいは、円形のランプを作製してから、それに熱を加えて、ランプのガラスを軟化させプレス加工して、略楕円バルブ12を製造することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、輝度ムラが抑制された奇数本の光源を用いたバックライトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)は、本発明の実施形態に係るバックライト100を模式的に示す平面図、(b)および(c)は、(a)に対応した断面図
【図2】(a)は、本発明の実施形態に係るバックライト100を模式的に示す平面図、(b)および(c)は、(a)に対応した断面図
【図3】(a)は、熱陰極蛍光ランプ10のバルブの断面を模式的に示す図、(b)は、バルブ内周の長さLを表す図
【図4】略楕円形のバルブの断面を模式的に示す図
【図5】本発明の実施形態に係る熱陰極蛍光ランプ10の構成を示す断面図
【図6】本発明の実施形態に係るバックライト100の構成を説明するための分解斜視図
【図7】本発明の実施形態に係るバックライト100の構成を示す断面図
【図8】(a)から(c)は、偶数本光学系と奇数本光学系との輝度分布を説明するための図
【図9】(a)〜(c)は、画面中央の縦方向の輝度分布に基づくランプイメージを説明するための図
【図10】縦軸がランプイメージ[%]で横軸が(d/L)における(p/L)のグラフ
【図11】本発明の実施形態における境界条件を規定する直線Sおよび直線Tを表すグラフ
【図12】本発明の実施形態におけるバックライトの条件を表す図
【符号の説明】
【0051】
10 蛍光ランプ(熱陰極蛍光ランプ)
11 電極
12 ガラスバルブ
13 リード線
14 フィラメント
15 ビーズガラス
16 封止部
17 排気管
18 口金
19 蛍光体層
20 筐体
21 反射板
23 反射シート
30 光学シート
31 偏光シート
32 レンズシート
33 拡散シート
34 拡散板
40 スクリーン方向
60 液晶ディスプレイパネル
62 上カバー
70 点灯回路
72 下カバー
75 ランプホルダ
100 バックライト(直下型液晶ディスプレイ用バックライト)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光ランプと、前記蛍光ランプを収納する筐体とを備えた、直下型液晶ディスプレイ用バックライトであって、
前記筐体に収納される前記蛍光ランプの本数は、3以上の奇数本であり、
前記蛍光ランプは、略直線状のバルブと、前記バルブの内周に形成された蛍光体層とから構成されており、
前記蛍光ランプの本数m、画面縦方向長さh、前記バルブの長手方向に対して垂直な断面における内周の長さL、および、前記筐体の深さdの間に、下式1および2の関係が成立し、
m≦15.1h/(28.4d+4L) ・・・(式1)
m≧15.1h/(28.4d+19L) ・・・(式2)
ここで、前記奇数本の蛍光ランプは、それぞれ、均等の間隔で配列されており、且つ、
前記奇数本のうちの中央の蛍光ランプは、画面縦方向の中心位置であるh/2の位置に配置されていることを特徴とする、バックライト。
【請求項2】
前記蛍光ランプは、熱陰極蛍光ランプであり、
前記熱陰極蛍光ランプは、熱電子を放出するフィラメントを前記バルブ内に有している、請求項1に記載のバックライト。
【請求項3】
前記バルブの断面は、円形である、請求項1または2に記載のバックライト。
【請求項4】
前記バルブの断面は、略楕円形である、請求項1または2に記載のバックライト。
【請求項5】
前記バックライトは、画面サイズ32インチ以上65インチ以下の直下型液晶ディスプレイ用バックライトである、請求項1から4の何れか一つに記載のバックライト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−292581(P2008−292581A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135790(P2007−135790)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】