直交加速飛行時間型質量分析のための新規な電子イオン化源
イオン誘導装置の軸に沿って配設された対称磁界を有する高周波数4極子イオン誘導装置であって、このシステムは、イオン誘導装置のイオン化容積内で電子と帯電していない化合物との間で長い相互作用を提供し、イオン生成の増大をもたらす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、一般に、イオン誘導装置内でのイオンの生成に関する。より具体的には、本発明は、イオン誘導装置の周囲に対称磁界を重畳し、それによって、電子と帯電していない化合物と帯電した化合物との間の相互作用を延長してイオン生成の増大をもたらすものである。
【0002】
関連技術の記述
気相イオンの生成における関連する技術水準は、電子のイオン化と化学イオン化との検査を必要とする。一般に、イオン化は、イオンの連続ストリームの提供、パルス化された生成のためのイオンのトラップ及び閉じ込め、並びに、二次イオンを生成する一次イオン源として機能させることを含む多くの目的で使用される。気相イオンは、イオン移動度分析器、質量分析器及び二次イオン質量分析装置などの、或るタイプの分析を実施するために生成されることが多い。
【0003】
本発明の利点を理解するために、イオン化が実施され、使用される方法の特定の例を調べることが有用である。したがって、質量分析器と共に使用されるときのイオン化源に固有の欠点が説明される。
【0004】
質量分析(MS)の原理は、分離されてm/z値に従って検出される気相イオンの生成である。質量分析装置は5つの基本部品、すなわち、試料導入システム、イオン化源、質量分析器、イオン検出器及びデータ取得/操作システムからなる。イオン化を達成するための多くの異なる技法が存在するが、最も広く使用される技法は電子イオン化(EI)である。その理由は、感度が高いこと、大きな電子放出電流の生成が容易なこと、ほとんどの分析物についてイオン化収量がほぼ均一であること、質量スペクトルをもたらす構造情報が豊富なこと、及び、スペクトル照合及び化合物識別を可能にする70eV EI質量スペクトル・ライブラリの範囲が広いことにある。
【0005】
EI源は幅広く研究され、種々の設計が公表され、工業用製品に変換されてきた。ほとんどのEI源はニール(Nier)の設計に基づく。電気的に加熱されたフィラメント(カソード)からの電子は、フィラメントと供給源容器との間の電位差によって加速され、供給源本体の入口及び出口開口を通過する。この電子ビームは供給源容積における低い圧力の試料蒸気に侵入する。多くの場合、分析物分子近くへのエネルギー電子の接近は、エネルギー交換によって分子からの電子の排出がもたらされるため、分子は正電荷を持ったままにされる。電子ビームの寸法は、イオンを形成するイオン化容積を決定する。イオン化は、電子ビームが通過するガス流のエリアのみで起こるため、形成されるイオンの数は比較的少ない。さらに、これらのイオンの一部のみが、その後、さらなる収束によって質量分析器へ運ばれる。
【0006】
イオン源の効率は、多くのタイプの質量分析装置の感度を制限する主要な要因であるため、MSの多くの用途は、大部分、この効率によって決定される。したがって、イオン化効率を改善する手段を研究することが重要である。
【0007】
イオン化効率を改善する一つの技法は、試料圧力を増加させ、それによって、イオン化領域における分子密度を増加させることである。小さな供給源容積における高い圧力は、試料の一層効率的な使用を提供する。別の技法は、フィラメントを一層高温に加熱することによって電子放出を増加させ、したがって、イオン源に入る電子の数を増加させることである。しかし、2つの方法はフィラメント寿命を短くするという欠点を有する。また、前者は、イオンと分子との相互作用による分析器性能の低下を回避するために、質量分析器領域の分離及びポンピングの増加を必要とする場合がある。後者のプロセスは、高温フィラメント表面上に形成された電子雲が空間電荷効果によって放出効率を低減するので、無期限に継続し得ない。
【0008】
イオン化はまた、いくつかの他の方法で増大され得る。一つの手法は、できる限り効率的にイオン化電子を利用することである。電子ビームは、フィラメント・バイアス電圧より大きい負の電位に電気接続されてフィラメントの背後に位置する電子リペラの使用によって、イオン化容積に収束され得る。電子はまた、負にバイアスされたカソードとアノードとの間に確立された電位井戸において多数回にわたって電子を前後に反射させることによって、再使用され得るので、電子には試料分子と相互作用する一層多くの機会が与えられる。電子ビーム軸に平行に、弱い平行磁界を印加することができ、また、磁界強度を、イオン・ビームの擾乱を最小にした状態で、電子の高い伝達を提供するように選択することができる。典型的には、100ガウスの磁界が使用される。磁界によって、電子は磁力線の周囲の螺旋軌道をたどるので、それによって、有効電子イオン化経路長L及びイオン化確率が増加する。
【0009】
イオン軌道のシミュレーションは、供給源容積での収束電界を生成するための、供給源幾何形状の改善及び電極電位の最適化をもたらしており、より大きなイオン化容積からのサンプリングを効率的に可能にし、より高いイオン抽出効率をもたらす。通常、イオン源は、イオンを、引き出し、収束させ、質量分析器に注入する一連のイオン光学部品を収容する。
【0010】
最近、EI源は、特に原子ビームや分子ビームと共に使用するために、大きな寸法を持って設計されてきている。電子は、磁界又は電界を使用することによって収束され得る。1つの従来技術は、電子が機器の軸の周辺で完全に生成されて機器の軸の方に向けられ、機器の軸に沿って長手方向に変位してイオン化室に入る、別個の電子発生室を有するEI源を記述している。電子軌道は、供給源軸に沿うガス流の分布と重なった。これによって、電子とガスとの間の一層長い接触がもたらされた。生成したイオンは比較的小さい直径の円筒ビームに収束した。
【0011】
同様に、別の参考資料は、大きなフィラメントから放出された電子を、主に分子ビームを含む長く狭い容積内に圧縮した円筒対称状の磁界を教示する。これは、残留ガスからバックグランドをほとんど生成しないうえ、イオン化電子ビームと分子ビームとの間の相互作用領域を増加させるという利点を有する。熱ヘリウム原子を使用した実験は極めて高い効率と感度を示した。
【0012】
別の興味深い手法は、ポール・イオントラップにおいて電子ビームを使用する内部イオン化である。電子ビームはイオントラップ内に導入されて試料分子をイオン化する。或る立体角内の全部のイオンが閉じ込められて検出され得るため、内部イオン化から生じる機器感度は高い。
【0013】
最近、イオン化源の中心において近似高周波数(RF)4極子場を生成する4つの電極からなるイオン源が、4極子質量分析装置のためのイオン源性能を高めるために設計された。ヘリウム・イオンのような低いm/zのバックグランド・イオンは形成直後に排出される。その一方で、試料イオンは、出口の方に移動しながら衝突冷却することにより、RF電界によってz軸の方に収束される。信号対雑音(S/N)比の10倍の増加(従来のイオン源に比較して)が著者等によって主張された。留意されるように、RFは電波と典型的に関連付けられた周波数に限定されると考えられるべきではない。当業者は理解するように、RFはもっと広い範囲の周波数を含む。
【0014】
飛行時間型質量分析装置(TOFMS)の復活は、主に、2つの新しいイオン化方法、すなわち、マトリクス支援レーザ脱離イオン化及びエレクトロスプレー・イオン化の開発によるものと考えられる。TOFMSは、大きな生物分子の分析に特に役立つ幾つかの特徴を有する。第1に、m/zの範囲は理論的には無制限である。第2に、画定用のスリットが不要であり、また、イオンは、走査なしでm/zの全範囲にわたって同時に検出され得る。初期のTOFMS機器は分解能が低いという欠点を持っていた。しかし、静電反射体、直交加速及び遅延抽出の利益の再発見によって、分解能の大幅な改善がもたらされた。その結果、TOFMS機器は、多くの場合、全質量スペクトルが必要とされる条件下では特に、分解能、感度及び速度の最適な組み合わせを提供する。
【0015】
パルス化されたイオンの発生源とは対照的に、任意の連続供給源を、EI源を含むTOFMS機器に結合するのには困難が存在する。TOFMS機器は何等かの方法でパルス化されなければならない。これは、検出されたイオン到達時間から飛行時間を演繹するための基準(すなわち、十分に規定された開始時間)が存在しなければならないからである。そのため、連続イオン源を結合する際の難問は、供給源をパルス化し又はイオン・ビームをゲート制御することによって、時間的に別々のイオン・パケットを生成することである。これは、イオン・サンプリング効率又はデューティーサイクル(すなわち、検出されたイオンと形成されたイオンとの比)に厳しい制限を課す。ときには、2つ以上の質量が観測される時、走査式質量分析装置に比較してTOFMSの感度について誇張された要求がなされることがある。EI源をTOFMSに結合する手法のうちの多くは、質量スペクトル・ライブラリと比較したとき、十分な分解能、感度及びイオン存在量の忠実度をもたらさない。
【0016】
イオントラップを直交加速TOFMSと組み合わせることは、デューティーサイクルを大幅に改善する効率的な方法であることがこれまでに分かっている。イオンが4極子イオントラップに外部から注入される(又は、4極子イオントラップにおいて形成される)インライン型イオントラップ蓄積/TOFMS機器が、従来技術で提示されている。この手法は、連続イオン・ビームをTOFMSに対するパルス化源に変換する際にほぼ100%のデューティーサイクルの可能性を提供した。しかし、この手法は冷却工程を必要とし、広いエネルギー範囲を有するイオンを排出し、帯電容量及びトラップ効率を制限するうえ、高い繰り返し率でのイオン排出に困難が存在した。
【0017】
4極子イオントラップ、円筒状イオントラップ及びセグメント化されたリング状円筒形イオントラップは全て、TOFMSに対してインタフェースされてきた。一調査では、2つの薄い仕切板がセグメント化されたリング電極を構成し、エンド・キャップ電極が平面ワイヤ・メッシュで組み立てられたイオントラップEI源が設計された。RF電圧によって生成された電位場は、円筒形イオントラップの電位場と似ていた。線形抽出電界は、質量分析の前にイオン冷却する必要なしに、良好な分解能を可能にした。しかし、抽出を始動するための最良のRF相を見出すことが重要である。さらに、イオントラップ内にEIがある状態では、電子軌道に対するRF場の作用が大きいので、フィラメント・バイアス電圧はイオン化電子エネルギーの直接の尺度になり得なかった。それにもかかわらず、EI源を使用したイオントラップ/TOFMSが空気中の微量の揮発性及び半揮発性化合物のリアルタイム監視のために開発された。400msのイオン蓄積時間は最大スペクトル取得速度を制限するので、該速度は高速オンライン分離に適さなくなった。イオントラップと直交加速TOFMSを結合することの可能性もまた調査された。イオン速度及び排出時間の範囲が広いために、イオントラップと直交加速TOFMSとの間のトリガー操作は、全質量スペクトル取得について不可能であった。
【0018】
直交加速は、イオンを連続ビームからセグメント化したイオン・パケットに変換するための高効率インタフェースを提供する。この機器はスペクトルの大質量端において高い感度を提供する。留意されるべきは、従来技術の参考文献で使用されるイオン源の多くは、元々、4極子又は磁界セクタ機器のために設計されたということである。それらイオン源は直交加速TOFMSに対して最適化されていないため、比較的低いイオン伝達効率を提供し、イオン・ビームを操作するためには複雑なイオン光学部品の使用が必要であった。
【0019】
したがって、必要なのは、電子とこれまでとは違って大きなイオン化容積とを効率的に使用することによって、改善されたイオン化効率を提供するイオン化源である。本システムは、多くの異なる用途のためのイオン源として機能すべきであり、電子と化学イオン化について、連続動作モード及びパルス動作モードで動作すべきである。
【0020】
発明の概要
効率的なイオン化プロセスを有するイオン化源を提供することが本発明の目的である。
電子及び化学イオン化プロセスについて機能するイオン化源を提供することが本発明の別の目的である。
【0021】
イオン移動度分析器、質量分析器及び二次イオン質量分析装置を使用した分析を含む、多くの異なる用途のためのイオン源として機能し得るイオン化源を提供することが本発明の別の目的である。
【0022】
連続動作モードとパルス動作モードとで動作するイオン化源を提供することが本発明の別の目的である。
好ましい実施の形態において、本発明は、対称磁界がイオン誘導装置の軸に沿って配設されている高周波4極子イオン誘導装置であり、システムは、イオン誘導装置のイオン化容積内での、電子と帯電していない化合物との間の延長された相互作用を提供し、イオン生成の増大をもたらす。
【0023】
本発明の、これらの目的及び他の目的、特徴、利点及び代替の態様は、添付図面と共に考えられる以下の詳細な説明を考慮することから、当業者には明らかになるであろう。
発明を実施するための最良の形態
ここで、本発明の種々の要素に数字による指示が与えられ、当業者が本発明を作成して使用することを可能にするよう本発明が議論される図面を参照する。理解されるように、以下の説明は本発明の原理の例示に過ぎず、特許請求項を狭めるものとして考えられるべきでない。
【0024】
本発明のイオン化源は、気相イオンを必要とする任意の用途のための強化されたイオン源として機能することが可能であることを記憶しておくことが重要である。さらに、イオンは多くの異なる供給源から最初に生成され得る。これらの供給源は任意の適切な電子源又はβ放出器を含み、電子銃、ホット・フィラメント、放電針や、放射性材料の放射性崩壊によるものが含まれる。本発明はまた、電子源と化学イオン化源とについて利益を提供する。
【0025】
図1は、本発明の電子イオン源の切り欠き図として提供される。電子源10は、フィラメント組み立て体12、4極子組み立て体14(これはRF専用イオン誘導装置の一例である)、磁界源22及び出口レンズ16からなる。4極子組み立て体14内部の容積18はイオン化室ならびにイオン誘導装置として動作し、4極子組み立て体はRF専用モードで動作する。
【0026】
磁界源22は、必要とされる磁界を生成するよう対称供給源でなければならない。磁界源22は、単一の円筒磁界源、又は、対称磁界を生成するように配列された幾つかの別々の磁界源であってよい。好ましい実施の形態では、単一の磁界源は円筒形永久磁石である。代わりに、磁界源は幾つかの棒磁石からなるのでもよい。さらに、磁界源22は1つ又は複数の電磁石によって生成され得る。
【0027】
図2は、フィラメント組み立て体12の切り取り拡大図である。フィラメント組み立て体12は、電子リペラ30、大きなリンク状フィラメント32及び4極子入口レンズ34を備え、ニール型の供給源に類似するイオン・リペラ電極として動作する。フィラメント32において生成される電子は、フィラメントと入口レンズ34の間の電位差によって加速される。これらの電子は、RF4極子組み立て体14の軸上にあり、電界と磁界とがRF4極子組み立て体に印加されるとき、4極子組み立て体の全長にわたって侵入する。
【0028】
4極子組み立て体14軸の長軸20(図1)に沿う電圧は時間に関して不変であり、RF場は長軸の近くで電圧の小さな変動を引き起こす。試料ガスは4極子組み立て体14内に導入される。電子ビームの軌道は試料ガス流の分布と重なり合い、4極子組み立て体14の長さと内接半径とによって画定された大きな容積18での試料ガスのイオン化をもたらす。イオンは4極子組み立て体14のRF場によって半径方向に収束され、その後、質量分析のために軸方向に抽出される。しかし、想起されるように、イオンはイオン化容積18内に閉じ込められ、パルス動作モード下で放出され得る。
【0029】
全てのイオン源設計の基礎は基本原理を利用するけれども、本発明の定量的性能は多くの微妙な設計特性の相互作用に依存する。この新規なイオン化源の独特の特徴をここで議論する。
【0030】
安定性及び感度は、フィラメントの寿命と同様に、イオン源設計の重要な特性である。従来技術の電子又は化学的イオン化において使用されるフィラメント組み立て体に関連する幾つかの問題が存在する。第1に、フィラメントは熱を生成するので、フィラメントの耐熱性金属の昇華を生じて初期故障を起こす。第2に、フィラメントとイオン化室との間で形成されたイオンはフィラメントを攻撃するので、金属をフィラメントからスパッタリングし、その寿命を短くする。
【0031】
本発明者等のフィラメント組み立て体設計は、これらの問題を解決し、フィラメントから放出された電子をうまく利用する。円筒対称性は大きなリング状フィラメント32の使用を可能にする。フィラメント組み立て体12のシミュレートした静電界線は図2に示される。(次に検討される)磁界と組み合わせて示される電界は、入口レンズ34の開口に向かって電子ビームを収束し、圧縮する。放出された電子の大部分は4極子組み立て体14の内側のイオン化容積18に入り、イオン化領域を通過する。さらに、フィラメント32と入口レンズ34との間で形成されたイオンは、フィラメント32自体をスパッタリングすることなく、電子リパラ30に向かって同じ電界によって加速される。さらに、電子は大きな表面エリアから放出されるため、小さいフィラメント電流で同量の放出電流が得られ、イオン源温度は従来のEI供給源におけるよりも均一になり、よく制御される。
【0032】
本発明の設計は高圧イオン源動作に極めて適している。また、ガス試料がフィラメント32から分離され、ホット・フィラメント32での試料劣化が除去される。本発明のこれらの新しい特徴の組み合わせはフィラメントの長寿命と高感度とをもたらす。
【0033】
弱い磁界は多くの電子イオン化源の典型的なコンポーネントである。磁界は、主に、電子ビームを半径方向に収束させるのに役立ち、それによって一層優れた伝達が提供され、電子は螺旋経路を、したがって一層長いイオン化経路長をたどることが可能になる。しかし、放出電流が大きい場合、電子雲での電荷反発がイオン化効率を制限する。本発明の実施においては、強い磁界によって、空間電荷が発生する放出電流の限界を増加させる。
【0034】
本発明の新規な供給源10の磁界は、適切な磁界分布が図1に示すように生成される場合、2つの更なる目的に役立つ。第1に、磁束は、電子を密なビームへと収束させるように、フィラメント組み立て体12において収束しなければならない。電子は小さな質量を有しており、磁界の力は電子の速度に比例するので、電子に対する磁界の影響は電界の影響よりずっと大きい。基本的に、電子は磁力線の周囲を旋回し、サイクロトロン型の運動で磁力線をたどる。より重要なことは、4極子組み立て体14においては、平行な磁力線は電子がイオン化容積18の全深さに侵入し、そのエネルギーを一定に保つのを助けるということである。したがって、磁界は、イオンの収束を乱すことなく、電子に対する半径方向RF場の有害な影響をなくすよう十分に強くなければならない。
【0035】
磁界の無い空間で70eVの電子が78.2mmの距離をカバーするのに0.0157マイクロ秒かかるだけである(4極子ロッドは両端に1mmのセラミック・スペーサを持つ76.2mm長である)。これは、1.75MHz周波数のRF電圧の周期のほんの2.75%である。このことは、交流RF場が電子にとって十分に速くはないことを意味し、電子はRF場を静電場として「見る」。電子は4極子ロッドへ向かって加速されながら半径方向の運動エネルギーを取得する。4極子への侵入深さ及び分子イオン化の瞬間の電子運動エネルギーは、RFの電圧及び位相、並びに、入射時の電子の運動エネルギー及び半径方向位置に依存する。RF電圧は、(表1に示すように)短い滞留時間、浅い侵入深さ及び大きな運動エネルギーをもたらす。また、図3に示すように、電子は入口の周辺に限定される。そのため、小さなイオン化容積と電子エネルギーの大きな変動とに起因して、定性的及び定量的な性能は妥協される。
【0036】
【表1】
【0037】
磁束線が4極子軸20に平行である強い静磁界は、先に述べた問題を解決することができる。図3に示すように、500ガウスの磁界の下では、電子は高いRF電圧の存在下でさえも4極子軸に大幅に集中される。表Iが示すように、電子は4極子の全長に侵入し、運動エネルギーをほぼ一定に維持することができる(すなわち、磁界の無い場合を基準にして3%だけずれるが、このことはMSにとって定性的に非常に重要である)。供給源の設計に必要とされる磁界は、電磁石又は永久磁石を使用することによって容易に達成される。これらの2つのタイプの磁石によって生成される磁束線は、図4にモデル化されて示されている。両方の磁石は、適切に設計される場合、必要とされる磁界分布及び磁界強度を提供することができる。電磁石を使用することの1つの問題は、特に真空条件下では発生する熱量が大きいことである。
【0038】
また、シミュレーションが示すように、特に高圧条件下では、磁界はイオン伝達及び収束にあまり影響を与えない(ここにはデータは示さない)。これは、電子に比べてイオンの質量の方が大きいことによって説明することができる。RF専用4極子におけるイオン運動に対する磁界の影響は、半径方向の運動の方程式に新しい項を追加することである。この新しい項では、磁界による加速はνr・Bz/(m/z)に等しい。ただし、νrは磁界Bzに垂直なイオンの速度成分であり、m/zはイオンの質量対電荷比である。電子に比べてイオンの質量が比較的大きいことに加えて、4極子内において軸の近くで形成されたイオンは、形成時に非常に低い半径方向運動エネルギーを有する。そのため、加速項は無視できる。また、留意されるべきであるが、静磁界は、イオンの運動エネルギーではなくイオンの運動方向を変えるだけである。
【0039】
RF専用デバイスに関しては、イオン誘導装置又は線形イオントラップとしてのRF専用デバイスの使用は、特にAPIインタフェースでの高圧におけるイオン伝達の改善について良く知られている。これは衝突冷却及び収束の結果である。実際に、RF場はデバイス軸に直角な二次元擬似電位(又は有効電位)を生成し、半径方向イオン運動は、有効調波トラッピング電位での運動としてモデル化され得る。緩衝ガスの分子との複数回の衝突は、分子の半径方向運動エネルギーを熱値近くまで下げ、分子をデバイス軸上での有効電位の最小値まで移動させる。したがって、イオンは出口開口を通って一層効率的に伝達される。また、イオンは軸方向併進エネルギーの大部分を失い、RFデバイスを低エネルギーで小さいエネルギー・スプレッド(数eV以下)の状態に維持する。
【0040】
また、或る程度ではあるが、3次元4極子イオントラップでのヘリウム緩衝ガスの圧力を増加させることによって、感度の向上、高い質量分解能及びMSn能力がもたらされる。さらに、4極子イオントラップでのヘリウム緩衝ガス圧は、イオン注入期間でのフラグメンテーションにほとんど影響を与えない。
【0041】
本発明の実施の形態においては、多極子型やスタック・リング型のイオン誘導装置などを有する容積での半径方向収束をRFデバイスが提供できるならば、多くの異なるRFデバイスを使用することができる。これらの線形の又は二次元のイオントラップは、3次元4極子イオントラップと比べて、帯電容量が大きくてイオントラップ効率が高いという利点を有する。内部イオン化に関する本発明の利点は、イオンを半径方向に収束するだけでよく、連続的に且つ簡単に排出することができることである。
【0042】
軸方向衝突制動のために、APIインタフェースでの多極子イオン誘導装置又は衝突セルを通るイオンの平均通過時間は、軸方向電界が無い場合、数ミリ秒程度であることがわかる。対照的に、本発明では、二次元RFイオン誘導装置で直接形成されたイオンは、形成時に熱運動エネルギーのみを所有する。入口レンズと出口レンズとの近くに軸方向周縁電界が存在するけれども、入口レンズ34に正電圧が存在し、出口レンズ18に負電圧が存在するとき、軸方向周縁電界はイオン抽出を補助する。しかし、周縁電界は主にイオン誘導装置の端部近くで動作するのであり、イオン誘導装置の軸中心近くではイオンにとって著しく不十分である。軸方向衝突制動を克服するためには、イオン誘導装置を通ってイオンを効率的に移動させるための軸方向電界が必要とされる。
【0043】
軸方向電界を有するRF専用イオン誘導装置の種々の設計、例えば、円錐型、傾斜型又はセグメント化されたロッドの形状及び追加電極の付加が報告されている。軸方向電界の印加によって、イオンは、イオン誘導装置を通って進むときに連続的な加速を受けることになるので、熱イオンでさえも、こうして生成された電位勾配に沿って移動し続ける。全ての場合において、比較的低い軸方向電界が通過時間を大幅に低減することが実験的に示された。
【0044】
図5において、軸方向電界が単一の4極子とセグメント化された4極子とに対して比較される。図5の(a)は、4極子への場の侵入に起因する小さな軸方向DC電界勾配を示している。単一の4極子の多くの中心容積には軸方向電界勾配は存在しない。セグメント化されたロッドの場合、線形電位エネルギーは短いロッド状セグメントを使用して達成され得る。
【0045】
パルス化された抽出を有する連続的EI源を使用すると、パルス状のイオンを生成するために電子ビームをオン・オフしなければならないパルス化源に対して、重要な利点を実現することができる。本発明によって記述される新規なイオン源を使用すると、連続して形成されたイオンをトラップし、次いでイオンをTOFMSの直交抽出の加速領域に短いバーストでゲート制御することにより、直交加速のデューティーサイクルが改善された。
【0046】
線形トラップは、現在、後続の質量分析測定のためのイオン蓄積デバイスとして主に使用される。線形イオントラップでのイオン蓄積は、本質的には、半径方向RF場(及び制動ガス)によってイオンが半径方向においてトラップを出ることを防止する1次元問題と考えられる。入口レンズと出口レンズに印加される電位を上げることにより、又は、軸方向電位井戸を形成するようにイオン誘導装置でのオフセット電位を下げることによってイオンをトラップすることは簡単である。イオンはイオン誘導装置の内部で直接形成されるため、イオンは形成時に低い熱運動エネルギーを所有しているので、抽出場が印加される前にイオンをトラップするのには浅い電位井戸で十分である。これは、圧力依存性衝突制動であることが多いエネルギー消散プロセスを必要とする点で、外部で生成されたイオンをトラップすることと異なる。
【0047】
連続イオン・ビーム直交加速TOFMSにおいては、イオン・ビームは、図6に示すように、多くのm1(低いm/z)のイオンが検出窓を通過し、mh(高いm/z)のイオンが検出窓に入らない状態で、2つのTOFパルス間の加速領域を満たす。さらに、TOFパルス期間にイオンはロードされず、したがって、デューティーサイクルが低減される。その結果、デューティーサイクルは小さくなり、m/zに依存する。対照的に、イオン・ビームをパルス化してトラップから出して直交加速TOFMSに入れることによって、特定のm/z範囲において全イオンを検出することが可能である。時刻t0において、短期間Δt1の間、負パルスによってイオン・ゲートが開き、その期間にイオンは供給源を出ることができる。時間遅延Δt2の後、供給源を出る全てのイオンは検出窓に達する。その後、Δt3の正のTOF抽出パルスが、イオンを飛行管内に加速するために印加される。最適質量範囲外のイオンが検出され得るが、デューティサイクルは小さい。出口レンズでの電圧を高い設定と低い設定との間で切り換えることによって、供給源はトラップ・モード及び放出モードで動作する。
【0048】
ほぼ100%のデューティーサイクルのEI源のための適度な質量範囲を達成するように、パルス動作電圧、ゲート制御パルスの幅、及び、ゲート制御パルスとTOFパルスとの間のタイミングは、TOFパルスの立ち上がり縁で質量範囲内のイオン軌道が確実に検出窓内に完全に入るように、適切に制御されなければならない。第1に、ゲート制御パルス継続時間Δt1は、イオン・パケットの物理的長さm1が検出窓より短くなるように十分に短くなければならない。これは、一定の運動エネルギーが与えられたmhのイオン・パケットについて同じであることを自動的に保証する。第2に、イオンは出口レンズからTOF加速領域まで進むのに或る時間長を必要とし、異なる質量のイオンは異なる時間長を要する。軽いイオンほど、速い速度で進み、重いイオンよりも速く加速領域に到達する。その結果、ゲート制御パルスの立下り縁の後の任意の時点で、種々のイオンに対するイオン・パケットは空間に分散するが、この分散の程度は時間と共に増加する。時間遅延Δt2を適切に選択することによって、ゲート制御パルスの立下り縁で供給源を出るm1のイオンは、TOFパルスの立ち上がり縁でほとんど検出窓の出口に達することができないが、一方、ゲート制御パルスの立ち上がり縁で供給源を出るmhのイオンは検出窓の入口を通る。こうして、m1〜mhの質量範囲で、100%のサンプリング・デューティーサイクルを得ることができる。
【0049】
イオントラップ内の軸方向電位井戸をイオンが出るのに適切な電位を出口レンズに印加すると、この電位が上昇するときトラップされるイオンを放出することができる。これによって、イオン運動エネルギーの分散が小さくなる。また、トラップ及び放出動作に伴う時間遅延収束及びイオン集群が存在する。すなわち、供給源を出るイオンは、イオン・ゲートが高い電位へとパルス動作される前に出て行くイオンよりも低い運動エネルギーを最初に取得する。高速なイオンは、最初は加速領域から遠いところにあるが、遅いイオンに追いつき、イオン・パルスは短くなる。
【0050】
EI源と、ここでの記述に関連する直交加速TOFMSの加速領域との略図が図7に示されている。新規な供給源の中心要素は、4つの4極子電極(ステンレス鋼、6.35mm径、75.2mm長)及び電子銃(FRA−2×1−2/EGPS−2×1、 ニューハンプシャ州ウィルトンのキンバー・フィジックス社)が配置されるセラミック管(外径22.2mm、内径15.9mm、長さ114.3mm)を含む。直線状の円筒形4極子ロッドは簡単の故に使用される(すなわち、線形軸方向場はここでは考えない)。イオン化電子を生成するのに工業用電子銃が使用される。電子銃は、平面3極管設計において電子ビームを生成するように、フィラメントの代わりに空間電荷制限式耐熱カソード・ディスクを使用する。カソードは低いエネルギーの広がりに対して特に設計された。フィラメントよりも大きい正の電圧が加えられた付加的な加速グリッドは、低エネルギーの電子ビーム電流を増大する。電子銃は直径が1.5mmの出口開口を有する。
【0051】
セラミック管は、真空ハウジングとして機能する適切なOリング溝構造付きのアダプタ板とバック・ハウジングとの間に保持される。4極子ロッドは、Oリングを有する自己封止ねじによってセラミック管の内部に固定される。こうして、3.2mmの内接半径が達成される。RF電圧がこれらのねじを通して4極子に印加される。電子銃はセラミック・スペーサを使用して4極子の入口端から1mm離して配置される。電子銃本体は4極子入口レンズ及びイオン源におけるイオン・リペラとして動作する。電子銃からのリード線はバック・ハウジング上の多重ピン・コネクタに接続される。直径が1mmの開口を有する出口レンズはアダプタ板上に支持され、4極子の出口端から1mmのところに配置される。セラミック・スペーサの表面及びセラミック真空ハウジングの内面は、電極によって電子及びイオン・ビームから遮蔽される。試料は、4極子入口から3.2mmの距離のところで4極子軸に直角に、特別に作られた付属品を介して導入される。
【0052】
約150巻き/cmからなる電磁ソレノイドは、最高240℃まで耐えられるポリイミド被覆磁性ワイヤ(34.5ゲージ)を使用して、入口レンズに近接してセラミック管の周囲に巻かれる。1Aの中程度のDC電流で動作すると(Tenma.72−2010)、4極子軸上のコイルの中央部に約200ガウスが生成される。磁界は長手方向においてコイルの端の近くで減少し、半径方向においてコイルの内面の近くで増加する。磁気コイルの抵抗加熱により、供給源は最高120℃まで加熱され得る。温度センサを使用して供給源が監視され、ファンによる能動冷却によって供給源は120℃に維持される。大きな磁界強度及び独立した温度制御を提供するのに、永久磁石はよい選択である。
【0053】
オフセット能力を有する1.86MHz RFドライバ・モジュールは4極子にRF電圧を印加するのに使用され、オシロスコープはRF電圧を測定するのに使用される。典型的には、フィラメントは電気的に加熱され、−50Vにバイアスされるが、加速グリッドは−38Vに設定される。正の50Vが電子銃本体に印加されるので、電子は電子銃を出る時に100eVに加速されることになる。電子が約70eVのエネルギーを持って4極子に入るよう、4極子ロッドは+20Vにバイアスされる。連続イオン・ビームのモードにおいては、−50Vの電圧が出口レンズに印加される。全てのDC及びRF電圧は独立に制御される。
【0054】
イオンがほとんどの時間にわたってトラップされて短時間のうちに加速領域へ放出されるように、供給源はトラップ・モード及びパルス・モードで動作することができる。TOFパルスによってトリガーされる遅延発生器は、出口レンズにトラップ電圧及び抽出電圧を印加する高電圧パルサ(DEI、GRX−1.5K−E)をゲート制御するのに使用される。こうして、EI源のパルス動作はTOFパルスと同期する。抽出パルス継続時間及び遅延時間にわたる個別の制御が利用可能である。広い質量範囲にわたって高いサンプリング・デューティーサイクルを達成するために、放出パルス継続時間及び各TOFパルスの前の遅延時間は、対象の全てのイオンが次のTOFパルスの瞬間に検出窓に収容されるよう最適化される。TOFパルスの前に遅延を導入したため、質量スケールはデータ取得システムによって使用される基準時間から再較正されなければならない。
【0055】
4極子に入る電子のみがイオン生成に関与する。有効電子ビーム電流Ieffは電子銃の加熱用DC電流及び電圧設定によって制御される。有効ビーム電流は、3つのマルチメータによって同時に監視された総放出電流から、グリッド及び入口レンズにおいて測定された電子電流を差し引くことによって得られた。Ieffは1.5Aのフィラメント加熱電流で約10μAであった。
【0056】
直交加速TOFMSが本発明の新規な供給源設計を評価するのに使用された。元のAPIインタフェースは取り除かれ、図7に示すように新しい供給源がアインツェル・レンズ・ハウジングの前に新たに付加された。通常のMS動作では、ローディング期間に加速領域を満たすよう、供給源からの連続イオン・ビームはアインツェル・レンズ組み立て体及び飛行管上の小さな開口を通過する。この期間においては加速領域の電界は接地電位に設定されている。次いで、次のローディング期間までイオンを飛行管へと加速するために、パルサ電極と電界規定電極とに適切な電圧が印加される。同時に、イオンは加速領域に入ることを阻止される。飛行管内のイオンは、マルチチャンネル・プレート(MCP)検出器に衝突する時間によって約4000eVに加速される。
【0057】
加速領域と飛行管はプリント回路板から作られ、一連の電界規定電極からなる。これらの電極に対する適切な電圧は、異なる開始位置を有するイオンの飛行時間に対して理論的には無限位数の補正を提供する反転型パーフェクトロンの放物状電界を規定する。この設計は有効単位長当たりに優れた分解能(m/Δm、約3000)を生成するので、リフレクトロンの使用は不要になることが多い。適度の分解能は30〜1200amuの質量範囲で得られる。
【0058】
加速領域又は飛行管にグリッドは使用されない。グリッド無しの設計は飛行管を介した100%イオン伝達に近い値を提供する。しかし、機器は、6000amuより大きい上部m/z限界に対応する5kHzのパルス化周波数(1過渡質量スペクトルについて200マイクロ秒)に対して約65マイクロ秒という長いTOFパルス継続時間を使用する。スペクトルの重なりを回避するために、以前のイオン・パッケージにおける最も重いイオンが検出器に達する前にイオンをロードすることはできない。残念ながら、イオン・ビームはTOFパルス間で加速領域を過剰充填する(たとえば、多くのイオンはパルス化領域を通過し、壁上で中和される)。これは、特に低m/zイオンについて当てはまる。約20%のサンプリング・デューティーサイクルは高m/zイオンについて達成され得る。マルチアノード・イオン計数システムは高い検出効率を提供し、機器のダイナミック・レンジを拡張する。この機器は最も敏感な質量分析器の1つであり、サンプリング・デューティーサイクルがさらに改善されるならば、一層敏感になる。
【0059】
真空システムに関しては、電子銃はセラミック管における低いコンダクタンス限度を必要とするが、出口レンズは高いコンダクタンスを有する。そのため、機器は3つの真空ステージ、すなわち、バック・ハウジングにおけるVI、セラミック管の4極子セクション及びアインツェル・レンズ・ハウジングにおけるVII並びに飛行管でのVIIIを必要とする。ステージVI及びVIIIは真空計によって監視することができ、VIIは定常状態条件下ではVIと原理的に同じである。元のポンプ・システム(1つのバックアップ回転ポンプ、2つのターボ分子ポンプ。バック・ハウジングに接続されたポンプ無し)により、飛行管及びバック真空ハウジングでの圧力は、それぞれ、付加的なガスの追加無しで、(真空計は窒素について較正されるが)空気について、約3×10−7mbar及び4×10−5mbarである。
【0060】
2つの大電流電源(RFドライブ及びフィラメント)が手動で制御される。全ての他の電圧はTOFMSのSprayTOFオペレーティング・ソフトウェアによって制御される。SprayTOFプログラムはTOF機器の制御及び質量スペクトルの記録にも使用される。このソフトウェアはまた、未処理のスペクトル・データをオンライン又はオフラインで処理し、定量化のために較正曲線を準備することができる。これらの実験では、時間に対するm/zの選択された範囲からの選択されたイオン・クロマトグラムは、信号対雑音比を計算し且つ較正曲線を準備するために、MSエクセルにエクスポートされる。
【0061】
この部分で述べる全ての実験においては、飛行時間型質量分析がm/z値及びイオン存在量を決定するのに使用された。供給源からの総イオン電流をピコアンペアで測定するために、四重出口レンズの後にファラデー・プレート検出器(直径が2.0cmの銅板)が一時的に設置された。出口レンズから出る全てのイオンを収集するために、ファラデー・プレートにバイアス電圧が印加される。
【0062】
4極子に入る電子のみがイオン生成に関与するので、有効電子ビーム電流Ieffは、収束用グリッド及び電子銃本体上で測定された全電流と放出電流との差として規定される。また、電子銃本体は4極子入口レンズとして動作するので、電子銃本体に印加された電圧はフィラメントと収束用グリッドとに電圧を設定するための基準電圧として使用される。こうして、電子銃の動作とは無関係に、入口レンズ電圧を効率的なイオン抽出のために調整することができる。
【0063】
第1に、Ieffは、フィラメント上のバイアス電圧と言われるグリッド電圧、加熱用DC電流及びイオン化電子運動エネルギーによって影響を受ける。増加した放出電流とグリッドでの増加した損失との間の相互作用に起因して、Ieff対グリッド電圧の曲線は最大値を有する。また、Ieffは真空状態及び磁界によって影響を受ける。収束用グリッド及び電子銃本体上での電子損失を減少させることによって、磁界は放出電流の減少につれてIeffを増加させる。前述のように電圧設定が与えられる場合、Ieffは1.5AのDC加熱電流のときに約10μAであった。
【0064】
4極子内部の静電場は電子とイオンとの軌道に影響を与える。図5の(a)におけるシミュレーションは両端での電界侵入を示しており、実質的に、直線状の円筒形ロッドの軸に沿う中央部には軸方向電界はない。電界侵入深さは、物理的な幾何形状、及び、ロッドのDCオフセットと入口レンズ又は出口レンズとの間の電位差によってのみ決まる。電位差を増すことによって、侵入深さは僅かに増加する。本明細書で使用される幾何形状の場合、前のセクションで与えられる電圧設定を使用すると、周縁電界は各端から4極子内に約6mm侵入する。4極子のDCオフセットに対する入口レンズ上の正電圧は、入口の近傍においてのみではあるが、軸方向周縁電界を課すことによってイオン抽出を補助する。しかし、4極子の軸中心の近くのイオンの場合、この電界は非常に弱くて不十分である。同様に、出口レンズ上の負電位も同じに振舞う。そのため、バックグラウンド・ガスの存在下では、4極子を通してイオンを移動させるのには軸方向電界が必要である。
【0065】
供給源の性能は、ファラデー・プレートを使用して残留空気の全イオン電流を測定することによって最初に評価された。300pAより大きい全イオン電流は、実験のセクション(図8)で述べた9.6アンペアの有効電子ビーム電流及び真空状態で記録された。RF電圧及び磁界は全イオン電流を大幅に増加させた。磁気コイルを通る電流が増加したとき、その後のイオン電流の増加は、(1)より多くの電子が4極子へ誘導されたこと、及び、(2)電子が一層深くに侵入し、一層大きなイオン化容積がもたらされることを示した。さらに大きな電流においては、利用可能な電子の数によって制限されて、イオン電流は横ばい状態になった。MS信号の増大は、ファラデー・プレート検出器を使用して観測される増大と同じであった。
【0066】
イオン・ビームの半径方向収束における重要なファクタは、RF電圧の振幅によって果たされる役割である。RF専用4極子(aM=0)はハイパス・フィルタとして動作する。低m/zのイオン(qM≧0.908に対応する)は不安定であり、通過することができない。高m/zのイオンに対しては急峻なカットオフは存在しない。有効電位井戸の深さはイオン質量に逆比例するため、高m/zのイオンの伝達は低RF電圧では弱い収束に起因して害される。伝達特性は、リーク弁を通して供給源にPFTBAを導入することによって最初に調査された。PFTBAの安定した分圧は付加ガス無しで維持された。異なるm/z範囲のイオン群の信号強度はRF電圧を増加することによって決定された。その結果は図9に示され、典型的な伝達特性を示している。
【0067】
高いRF電圧の場合、低m/zのイオンは完全に遮断される。高m/zのイオンを遮断するには、より高いRF電圧が必要とされる。収束性がよいので、高m/zのイオンの信号はRF電圧とともに増加し続けるが、最終的には、全てのイオンを伝達するのに十分に高いRF電圧で一定になる。
【0068】
供給源を高い圧力(1mTorr)で動作させることが有利である。これは、半径方向のイオン損失が衝突収束のために小さく、軽減された真空条件が供給源を種々の分離方法と結合させることを容易にするからである。イオン化及び伝達プロセスに対する供給源圧力の作用を研究するために、試料導入とは無関係に供給源圧力を増加させるようにイオン源にヘリウムが導入された。ヘリウムは、EI源に入る前に、0.21mL/分且つ25℃で試料バイアルにおいてn−ブチルベンゼンを通して発泡された。質量分析測定のエネルギー温度計として一般に使用されるn−ブチルベンゼン(m/z134)は、EI源の2つの経路、すなわち、m/z92イオン(C7H8+)を生じる低エネルギー・マクラファティ転位を介して又はプロピル基の損失を伴う高エネルギー経路を通して解離してm/z91イオン(C7H7+)を形成する。m/z92の91に対する比は、衝突によって伝達され又は取得された平均内部エネルギーの尺度として使用される。
【0069】
図10に、実験結果が示される。m/z91、92、134に対する最大の信号強度が図10の(a)における0.52mTorrのヘリウム圧において観測され、次いでイオン強度はヘリウム圧と共に減少する。最適質量分解能は図10の(b)において0.9mTorrで示される。ここから分かるように、最適信号度及び高められたヘリウム圧での質量分解能によって衝突収束が供給源において発生する。これは、最適感度及び質量分解能が1mTorrのヘリウム圧で見出されたイオントラップを使用した観測と矛盾しない。また、あり得ることであるが、4極子源内部で形成されたイオンは半径方向と軸方向とに低運動エネルギーを所有し、衝突収束は高いイオン伝達効率に対して低圧で起こり、一方、さらなるイオン−ガス衝突が出口レンズと加速領域との間の領域において一層多くのイオン損失をもたらす。
【0070】
また、イオン源圧力の増加によって、電荷交換及び化学イオン化(CI)がもたらされる。図10の(c)では、n−ブチルベンゼンからのm/z92イオンのm/z91イオンに対するイオン強度比がヘリウム・ガス圧に対してプロットされている。1.34mTorrより低い範囲ではヘリウム圧はイオン強度比に対してほとんど影響がないことが明らかである。ヘリウム圧が高くなると、この比はほぼ直線的に増加する。これは、ヘリウム・イオンとn−ブチルベンゼン分子との間の電荷交換によって説明することができる。形成された分子イオンは、次いで、m/z92イオンに至る低エネルギー・フラグメンテーション経路をたどり、衝突誘起解離(CID)におけると同様にヘリウム・ガスとの衝突を伴う。2−オクタノンによる実験においては化学イオン化の徴候は観測されなかった。2−オクタノンは自己CIで知られる化合物である。高濃度においては、内部イオン化を有する4極子イオントラップ内などのイオン源内部に分子イオンが十分に長く留まる場合、イオン比129/128すなわち(M+H)/Mは1より大きい。高濃度を使用して取得したスペクトルには、プロトン化分子イオンは存在しなかった。
【0071】
図11は、(a)連続イオン・ビームを使用して得られたPFTBAのEIスペクトルと、(b)m/z69イオン、(c)m/z131イオン、(d)m/z219イオン、(e)m/z264イオンに対して最適化されたパルス化抽出を使用して記録されたスペクトルとの比較を示す。各スペクトルのy軸は0.33秒において記録された(すなわち、5kHzのTOFパルス周波数で1600個の過渡現象を加算する)イオン計数を示す。スペクトル毎の挿入チャートは、最初に連続イオン・ビームを使用し、次いでパルス化抽出に変更して、指示された単位質量について合計イオン計数を比較する。たとえば、図11の(b)では、タイミング条件(パルス継続時間及び遅延時間)はm/z69イオンについて最適化され、ピーク面積については係数13が、ピーク高さについては係数33が得られた。m/z69イオンのみがこのスペクトルにおいて記録された。高m/zのイオンの方が、供給源を出てから加速領域に達するのに長い時間を必要とした。明らかなように、高m/zのイオンに対しては、長いパルス継続時間と遅延時間を使用することが妥当である。高m/zのイオンの方が広い質量範囲が観測されたが、ピーク面積の利得は小さかった。
【0072】
タイミング条件及び信号強度利得が表IIに要約される。利得係数はピーク面積に対して8〜45倍であり、ピーク高さに対して26〜81倍であった。これは、大幅に改善された質量分解能(ここではデータは示されていない)をも示唆している。信号利得係数は、直交加速における改善されたサンプリング・デューティーサイクルから生ずる。狭いピーク幅は時間遅延収束及びイオン集群による。電荷反発によるイオン抽出を、トラップ電位による4極子内部の空間電荷の増加のために大幅に改善することも可能である。4極子内への短い電界侵入を考慮すると、電圧が切り換わる時点に出口レンズの近くにいるイオンのみが抽出パルスによって影響を受ける。
【0073】
【表2】
【0074】
先に述べた利点以外のいくつかの利点がパルス化抽出を使用して観測された。供給源パルス動作によって、望ましくないイオンが検出器に達することが防止されるため、化学雑音が劇的に減る。第2に、m/z69イオンについての図11の(b)におけると同様に、タイミング条件を制御することによって、特定の質量範囲を精密に選択することができる。さらに、質量スペクトルでの最も強い質量ピークは、GCキャリア・ガスや溶媒などの、試料ガスにおける分析対象でない化学種から生ずることがしばしばある。干渉ピークに対する低サンプリング・デューティーサイクルを完全に除去し又は取得しながら当該質量範囲をカバーするように、供給源パルス動作によって直交加速TOFMSのダイナミック・レンジを増大させることができる。
【0075】
新規なEI源によって生成される質量スペクトルにおけるフラグメンテーション・パターン及び同位体比は、NISTライブラリにおけるスペクトルと矛盾しない。ブチルベンゼン、2−オクトン、直鎖状アルカン及びPFTBAを含む化学物質により、実験が実施された。これらの化合物全てについて、食い違いはほとんど観測されなかった。PFTBAの質量スペクトルが図12の(b)に示される。PFTBAの定性的なフラグメンテーション・パターンは予想される通りであるが、個々のフラグメント・イオンの相対強度はRF電圧の振幅、静電電圧設定及び供給源パルス動作によって大幅に影響を受ける。重要なことに、供給源の真空条件はイオンの相対強度に対してほとんど又は全く影響がない。実際、正確な質量フォーマットで示されるPFTBAスペクトルは実際には高m/zのイオンに有利である。
【0076】
残留空気の拡大された質量スペクトルが図12の(a)に示される。これは、5kHzのTOFパルス動作周波数における200個のスペクトルの和を表す。m/z=28に対する1074の質量分解能は、イオン源が十分にコリメートされたイオン・ビームを生成することを示す。図12の(b)における加算されたPFTBAスペクトルにおいては、m/z69では1195の質量分解能が得られ、m/z502では2090の質量分解能が得られた。長い飛行時間に起因する、m/zについての質量分解能の増大は、ピーク幅が検出器応答及び電子部品によって主に決まることを示している。
【0077】
感度及び検出限界についての全体の機器性能は、機器をガス・クロマトグラフに結合することによって試験された。8m長で0.1mm内径(0.2μm膜厚)のDB−5カラム(J&W)が、150kPaのヘリウム流量及び70℃/分で25℃〜95℃までの温度プログラミングによって使用された。ヘキサンの0.5μL試料容積が1:550のスプリット比のスプリット・モードを使用して注入された。この試料容積とスプリット比は、カラムに過負荷をかけることを回避し、十分なクロマトグラフ効率を得るために、本装置と共に使用されなければならなかった。加熱された転送ラインは50℃に保持され、EI源は約100℃に保持された。有効電子ビーム電流は15μAに増加され、フィラメントは36〜48秒の間で溶媒溶離期間にオフにされた。供給源出口は、当該質量範囲をカバーするよう4マイクロ秒の継続時間及び12マイクロ秒の遅延時間でパルス動作された。データは12スペクトル/秒(5kHzのTOFパルス動作周波数及び400の過渡合計)で取得された。他の機器パラメータは、MCP検出器に対しては2550V、SprayTOFソフトウェアによって設定される閾値に対しては2023Vであった、
図13は、トルエン、エチルベンゼン及びプロピルベンゼンについての感度及び検出限界を示す。これらの検体が選択されたのは、転送ライン及び供給源加熱の問題の故であった。図示のクロマトグラムは、全スペクトル・モードで取得されたデータからm/z90.9〜91.2を抽出することによって得られた再生である。452の信号対雑音比(S/N、二乗平均平方根RMS雑音に対するピーク高さ)はトルエンの1.87pgに対して得られ、304はエチルベンゼンの1.87pgに対して得られ、また、194はプロピルベンゼン・オンカラムの1.85pgに対して得られた。ピーク・ツー・ピーク雑音基準(2.8RMS雑音)を使用した線形外挿による検出限界(LOD)は、それぞれ、12fg、17fg、27fgであった。試料検体の強度のフラグメンテーション及び過剰のバックグラウンド化学雑音が観察された。これらの結果は、供給源加熱が利用可能であって高い化学雑音がなくなるならば、大幅に改善され得ることが期待される。
【0078】
理解されるように、上述の構成は本発明の原理の応用を例示するに過ぎない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者は多くの変更及び代替の構成を考案することができる。請求項はこうした変更及び構成を包含することを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の電子イオン源の断面図である。
【図2】フィラメント組み立て体の拡大断面図である。
【図3】高RF電圧の存在下でさえも電子が4極子軸に著しく集中することを示す断面図である。
【図4】2つのタイプの磁石によって生成される磁束線の断面図である。
【図5】Aは単一の4極子について軸方向電界が比較されることを示す図である。Bはセグメント化された4極子について軸方向電界が比較されることを示す図である。
【図6】多くのm1イオンが検出窓を通過し、検出窓に入るmhイオンが無い状態で、2つのTOFパルス間でイオン・ビームが加速領域を満たす概念を示す図である。
【図7】直交加速TOFMSのEI源及び加速領域の略図である。
【図8】磁気コイルを通る電流の関数としての全イオン電流を示すグラフ図である。
【図9】典型的な伝達特性のグラフである。
【図10】イオン化及び伝達プロセスに対する供給源圧力の影響を示す一連のグラフである。
【図11】連続イオン・ビームを使用して得られたPFTBAのEIスペクトルと、パルス化抽出を使用して記録されたスペクトルとの比較を示す図である。
【図12】Aは残留空気の質量スペクトルを示すグラフであり、BはPFTBAの質量スペクトルを示すグラフである。
【図13】トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼンについての感度及び検出限界を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、一般に、イオン誘導装置内でのイオンの生成に関する。より具体的には、本発明は、イオン誘導装置の周囲に対称磁界を重畳し、それによって、電子と帯電していない化合物と帯電した化合物との間の相互作用を延長してイオン生成の増大をもたらすものである。
【0002】
関連技術の記述
気相イオンの生成における関連する技術水準は、電子のイオン化と化学イオン化との検査を必要とする。一般に、イオン化は、イオンの連続ストリームの提供、パルス化された生成のためのイオンのトラップ及び閉じ込め、並びに、二次イオンを生成する一次イオン源として機能させることを含む多くの目的で使用される。気相イオンは、イオン移動度分析器、質量分析器及び二次イオン質量分析装置などの、或るタイプの分析を実施するために生成されることが多い。
【0003】
本発明の利点を理解するために、イオン化が実施され、使用される方法の特定の例を調べることが有用である。したがって、質量分析器と共に使用されるときのイオン化源に固有の欠点が説明される。
【0004】
質量分析(MS)の原理は、分離されてm/z値に従って検出される気相イオンの生成である。質量分析装置は5つの基本部品、すなわち、試料導入システム、イオン化源、質量分析器、イオン検出器及びデータ取得/操作システムからなる。イオン化を達成するための多くの異なる技法が存在するが、最も広く使用される技法は電子イオン化(EI)である。その理由は、感度が高いこと、大きな電子放出電流の生成が容易なこと、ほとんどの分析物についてイオン化収量がほぼ均一であること、質量スペクトルをもたらす構造情報が豊富なこと、及び、スペクトル照合及び化合物識別を可能にする70eV EI質量スペクトル・ライブラリの範囲が広いことにある。
【0005】
EI源は幅広く研究され、種々の設計が公表され、工業用製品に変換されてきた。ほとんどのEI源はニール(Nier)の設計に基づく。電気的に加熱されたフィラメント(カソード)からの電子は、フィラメントと供給源容器との間の電位差によって加速され、供給源本体の入口及び出口開口を通過する。この電子ビームは供給源容積における低い圧力の試料蒸気に侵入する。多くの場合、分析物分子近くへのエネルギー電子の接近は、エネルギー交換によって分子からの電子の排出がもたらされるため、分子は正電荷を持ったままにされる。電子ビームの寸法は、イオンを形成するイオン化容積を決定する。イオン化は、電子ビームが通過するガス流のエリアのみで起こるため、形成されるイオンの数は比較的少ない。さらに、これらのイオンの一部のみが、その後、さらなる収束によって質量分析器へ運ばれる。
【0006】
イオン源の効率は、多くのタイプの質量分析装置の感度を制限する主要な要因であるため、MSの多くの用途は、大部分、この効率によって決定される。したがって、イオン化効率を改善する手段を研究することが重要である。
【0007】
イオン化効率を改善する一つの技法は、試料圧力を増加させ、それによって、イオン化領域における分子密度を増加させることである。小さな供給源容積における高い圧力は、試料の一層効率的な使用を提供する。別の技法は、フィラメントを一層高温に加熱することによって電子放出を増加させ、したがって、イオン源に入る電子の数を増加させることである。しかし、2つの方法はフィラメント寿命を短くするという欠点を有する。また、前者は、イオンと分子との相互作用による分析器性能の低下を回避するために、質量分析器領域の分離及びポンピングの増加を必要とする場合がある。後者のプロセスは、高温フィラメント表面上に形成された電子雲が空間電荷効果によって放出効率を低減するので、無期限に継続し得ない。
【0008】
イオン化はまた、いくつかの他の方法で増大され得る。一つの手法は、できる限り効率的にイオン化電子を利用することである。電子ビームは、フィラメント・バイアス電圧より大きい負の電位に電気接続されてフィラメントの背後に位置する電子リペラの使用によって、イオン化容積に収束され得る。電子はまた、負にバイアスされたカソードとアノードとの間に確立された電位井戸において多数回にわたって電子を前後に反射させることによって、再使用され得るので、電子には試料分子と相互作用する一層多くの機会が与えられる。電子ビーム軸に平行に、弱い平行磁界を印加することができ、また、磁界強度を、イオン・ビームの擾乱を最小にした状態で、電子の高い伝達を提供するように選択することができる。典型的には、100ガウスの磁界が使用される。磁界によって、電子は磁力線の周囲の螺旋軌道をたどるので、それによって、有効電子イオン化経路長L及びイオン化確率が増加する。
【0009】
イオン軌道のシミュレーションは、供給源容積での収束電界を生成するための、供給源幾何形状の改善及び電極電位の最適化をもたらしており、より大きなイオン化容積からのサンプリングを効率的に可能にし、より高いイオン抽出効率をもたらす。通常、イオン源は、イオンを、引き出し、収束させ、質量分析器に注入する一連のイオン光学部品を収容する。
【0010】
最近、EI源は、特に原子ビームや分子ビームと共に使用するために、大きな寸法を持って設計されてきている。電子は、磁界又は電界を使用することによって収束され得る。1つの従来技術は、電子が機器の軸の周辺で完全に生成されて機器の軸の方に向けられ、機器の軸に沿って長手方向に変位してイオン化室に入る、別個の電子発生室を有するEI源を記述している。電子軌道は、供給源軸に沿うガス流の分布と重なった。これによって、電子とガスとの間の一層長い接触がもたらされた。生成したイオンは比較的小さい直径の円筒ビームに収束した。
【0011】
同様に、別の参考資料は、大きなフィラメントから放出された電子を、主に分子ビームを含む長く狭い容積内に圧縮した円筒対称状の磁界を教示する。これは、残留ガスからバックグランドをほとんど生成しないうえ、イオン化電子ビームと分子ビームとの間の相互作用領域を増加させるという利点を有する。熱ヘリウム原子を使用した実験は極めて高い効率と感度を示した。
【0012】
別の興味深い手法は、ポール・イオントラップにおいて電子ビームを使用する内部イオン化である。電子ビームはイオントラップ内に導入されて試料分子をイオン化する。或る立体角内の全部のイオンが閉じ込められて検出され得るため、内部イオン化から生じる機器感度は高い。
【0013】
最近、イオン化源の中心において近似高周波数(RF)4極子場を生成する4つの電極からなるイオン源が、4極子質量分析装置のためのイオン源性能を高めるために設計された。ヘリウム・イオンのような低いm/zのバックグランド・イオンは形成直後に排出される。その一方で、試料イオンは、出口の方に移動しながら衝突冷却することにより、RF電界によってz軸の方に収束される。信号対雑音(S/N)比の10倍の増加(従来のイオン源に比較して)が著者等によって主張された。留意されるように、RFは電波と典型的に関連付けられた周波数に限定されると考えられるべきではない。当業者は理解するように、RFはもっと広い範囲の周波数を含む。
【0014】
飛行時間型質量分析装置(TOFMS)の復活は、主に、2つの新しいイオン化方法、すなわち、マトリクス支援レーザ脱離イオン化及びエレクトロスプレー・イオン化の開発によるものと考えられる。TOFMSは、大きな生物分子の分析に特に役立つ幾つかの特徴を有する。第1に、m/zの範囲は理論的には無制限である。第2に、画定用のスリットが不要であり、また、イオンは、走査なしでm/zの全範囲にわたって同時に検出され得る。初期のTOFMS機器は分解能が低いという欠点を持っていた。しかし、静電反射体、直交加速及び遅延抽出の利益の再発見によって、分解能の大幅な改善がもたらされた。その結果、TOFMS機器は、多くの場合、全質量スペクトルが必要とされる条件下では特に、分解能、感度及び速度の最適な組み合わせを提供する。
【0015】
パルス化されたイオンの発生源とは対照的に、任意の連続供給源を、EI源を含むTOFMS機器に結合するのには困難が存在する。TOFMS機器は何等かの方法でパルス化されなければならない。これは、検出されたイオン到達時間から飛行時間を演繹するための基準(すなわち、十分に規定された開始時間)が存在しなければならないからである。そのため、連続イオン源を結合する際の難問は、供給源をパルス化し又はイオン・ビームをゲート制御することによって、時間的に別々のイオン・パケットを生成することである。これは、イオン・サンプリング効率又はデューティーサイクル(すなわち、検出されたイオンと形成されたイオンとの比)に厳しい制限を課す。ときには、2つ以上の質量が観測される時、走査式質量分析装置に比較してTOFMSの感度について誇張された要求がなされることがある。EI源をTOFMSに結合する手法のうちの多くは、質量スペクトル・ライブラリと比較したとき、十分な分解能、感度及びイオン存在量の忠実度をもたらさない。
【0016】
イオントラップを直交加速TOFMSと組み合わせることは、デューティーサイクルを大幅に改善する効率的な方法であることがこれまでに分かっている。イオンが4極子イオントラップに外部から注入される(又は、4極子イオントラップにおいて形成される)インライン型イオントラップ蓄積/TOFMS機器が、従来技術で提示されている。この手法は、連続イオン・ビームをTOFMSに対するパルス化源に変換する際にほぼ100%のデューティーサイクルの可能性を提供した。しかし、この手法は冷却工程を必要とし、広いエネルギー範囲を有するイオンを排出し、帯電容量及びトラップ効率を制限するうえ、高い繰り返し率でのイオン排出に困難が存在した。
【0017】
4極子イオントラップ、円筒状イオントラップ及びセグメント化されたリング状円筒形イオントラップは全て、TOFMSに対してインタフェースされてきた。一調査では、2つの薄い仕切板がセグメント化されたリング電極を構成し、エンド・キャップ電極が平面ワイヤ・メッシュで組み立てられたイオントラップEI源が設計された。RF電圧によって生成された電位場は、円筒形イオントラップの電位場と似ていた。線形抽出電界は、質量分析の前にイオン冷却する必要なしに、良好な分解能を可能にした。しかし、抽出を始動するための最良のRF相を見出すことが重要である。さらに、イオントラップ内にEIがある状態では、電子軌道に対するRF場の作用が大きいので、フィラメント・バイアス電圧はイオン化電子エネルギーの直接の尺度になり得なかった。それにもかかわらず、EI源を使用したイオントラップ/TOFMSが空気中の微量の揮発性及び半揮発性化合物のリアルタイム監視のために開発された。400msのイオン蓄積時間は最大スペクトル取得速度を制限するので、該速度は高速オンライン分離に適さなくなった。イオントラップと直交加速TOFMSを結合することの可能性もまた調査された。イオン速度及び排出時間の範囲が広いために、イオントラップと直交加速TOFMSとの間のトリガー操作は、全質量スペクトル取得について不可能であった。
【0018】
直交加速は、イオンを連続ビームからセグメント化したイオン・パケットに変換するための高効率インタフェースを提供する。この機器はスペクトルの大質量端において高い感度を提供する。留意されるべきは、従来技術の参考文献で使用されるイオン源の多くは、元々、4極子又は磁界セクタ機器のために設計されたということである。それらイオン源は直交加速TOFMSに対して最適化されていないため、比較的低いイオン伝達効率を提供し、イオン・ビームを操作するためには複雑なイオン光学部品の使用が必要であった。
【0019】
したがって、必要なのは、電子とこれまでとは違って大きなイオン化容積とを効率的に使用することによって、改善されたイオン化効率を提供するイオン化源である。本システムは、多くの異なる用途のためのイオン源として機能すべきであり、電子と化学イオン化について、連続動作モード及びパルス動作モードで動作すべきである。
【0020】
発明の概要
効率的なイオン化プロセスを有するイオン化源を提供することが本発明の目的である。
電子及び化学イオン化プロセスについて機能するイオン化源を提供することが本発明の別の目的である。
【0021】
イオン移動度分析器、質量分析器及び二次イオン質量分析装置を使用した分析を含む、多くの異なる用途のためのイオン源として機能し得るイオン化源を提供することが本発明の別の目的である。
【0022】
連続動作モードとパルス動作モードとで動作するイオン化源を提供することが本発明の別の目的である。
好ましい実施の形態において、本発明は、対称磁界がイオン誘導装置の軸に沿って配設されている高周波4極子イオン誘導装置であり、システムは、イオン誘導装置のイオン化容積内での、電子と帯電していない化合物との間の延長された相互作用を提供し、イオン生成の増大をもたらす。
【0023】
本発明の、これらの目的及び他の目的、特徴、利点及び代替の態様は、添付図面と共に考えられる以下の詳細な説明を考慮することから、当業者には明らかになるであろう。
発明を実施するための最良の形態
ここで、本発明の種々の要素に数字による指示が与えられ、当業者が本発明を作成して使用することを可能にするよう本発明が議論される図面を参照する。理解されるように、以下の説明は本発明の原理の例示に過ぎず、特許請求項を狭めるものとして考えられるべきでない。
【0024】
本発明のイオン化源は、気相イオンを必要とする任意の用途のための強化されたイオン源として機能することが可能であることを記憶しておくことが重要である。さらに、イオンは多くの異なる供給源から最初に生成され得る。これらの供給源は任意の適切な電子源又はβ放出器を含み、電子銃、ホット・フィラメント、放電針や、放射性材料の放射性崩壊によるものが含まれる。本発明はまた、電子源と化学イオン化源とについて利益を提供する。
【0025】
図1は、本発明の電子イオン源の切り欠き図として提供される。電子源10は、フィラメント組み立て体12、4極子組み立て体14(これはRF専用イオン誘導装置の一例である)、磁界源22及び出口レンズ16からなる。4極子組み立て体14内部の容積18はイオン化室ならびにイオン誘導装置として動作し、4極子組み立て体はRF専用モードで動作する。
【0026】
磁界源22は、必要とされる磁界を生成するよう対称供給源でなければならない。磁界源22は、単一の円筒磁界源、又は、対称磁界を生成するように配列された幾つかの別々の磁界源であってよい。好ましい実施の形態では、単一の磁界源は円筒形永久磁石である。代わりに、磁界源は幾つかの棒磁石からなるのでもよい。さらに、磁界源22は1つ又は複数の電磁石によって生成され得る。
【0027】
図2は、フィラメント組み立て体12の切り取り拡大図である。フィラメント組み立て体12は、電子リペラ30、大きなリンク状フィラメント32及び4極子入口レンズ34を備え、ニール型の供給源に類似するイオン・リペラ電極として動作する。フィラメント32において生成される電子は、フィラメントと入口レンズ34の間の電位差によって加速される。これらの電子は、RF4極子組み立て体14の軸上にあり、電界と磁界とがRF4極子組み立て体に印加されるとき、4極子組み立て体の全長にわたって侵入する。
【0028】
4極子組み立て体14軸の長軸20(図1)に沿う電圧は時間に関して不変であり、RF場は長軸の近くで電圧の小さな変動を引き起こす。試料ガスは4極子組み立て体14内に導入される。電子ビームの軌道は試料ガス流の分布と重なり合い、4極子組み立て体14の長さと内接半径とによって画定された大きな容積18での試料ガスのイオン化をもたらす。イオンは4極子組み立て体14のRF場によって半径方向に収束され、その後、質量分析のために軸方向に抽出される。しかし、想起されるように、イオンはイオン化容積18内に閉じ込められ、パルス動作モード下で放出され得る。
【0029】
全てのイオン源設計の基礎は基本原理を利用するけれども、本発明の定量的性能は多くの微妙な設計特性の相互作用に依存する。この新規なイオン化源の独特の特徴をここで議論する。
【0030】
安定性及び感度は、フィラメントの寿命と同様に、イオン源設計の重要な特性である。従来技術の電子又は化学的イオン化において使用されるフィラメント組み立て体に関連する幾つかの問題が存在する。第1に、フィラメントは熱を生成するので、フィラメントの耐熱性金属の昇華を生じて初期故障を起こす。第2に、フィラメントとイオン化室との間で形成されたイオンはフィラメントを攻撃するので、金属をフィラメントからスパッタリングし、その寿命を短くする。
【0031】
本発明者等のフィラメント組み立て体設計は、これらの問題を解決し、フィラメントから放出された電子をうまく利用する。円筒対称性は大きなリング状フィラメント32の使用を可能にする。フィラメント組み立て体12のシミュレートした静電界線は図2に示される。(次に検討される)磁界と組み合わせて示される電界は、入口レンズ34の開口に向かって電子ビームを収束し、圧縮する。放出された電子の大部分は4極子組み立て体14の内側のイオン化容積18に入り、イオン化領域を通過する。さらに、フィラメント32と入口レンズ34との間で形成されたイオンは、フィラメント32自体をスパッタリングすることなく、電子リパラ30に向かって同じ電界によって加速される。さらに、電子は大きな表面エリアから放出されるため、小さいフィラメント電流で同量の放出電流が得られ、イオン源温度は従来のEI供給源におけるよりも均一になり、よく制御される。
【0032】
本発明の設計は高圧イオン源動作に極めて適している。また、ガス試料がフィラメント32から分離され、ホット・フィラメント32での試料劣化が除去される。本発明のこれらの新しい特徴の組み合わせはフィラメントの長寿命と高感度とをもたらす。
【0033】
弱い磁界は多くの電子イオン化源の典型的なコンポーネントである。磁界は、主に、電子ビームを半径方向に収束させるのに役立ち、それによって一層優れた伝達が提供され、電子は螺旋経路を、したがって一層長いイオン化経路長をたどることが可能になる。しかし、放出電流が大きい場合、電子雲での電荷反発がイオン化効率を制限する。本発明の実施においては、強い磁界によって、空間電荷が発生する放出電流の限界を増加させる。
【0034】
本発明の新規な供給源10の磁界は、適切な磁界分布が図1に示すように生成される場合、2つの更なる目的に役立つ。第1に、磁束は、電子を密なビームへと収束させるように、フィラメント組み立て体12において収束しなければならない。電子は小さな質量を有しており、磁界の力は電子の速度に比例するので、電子に対する磁界の影響は電界の影響よりずっと大きい。基本的に、電子は磁力線の周囲を旋回し、サイクロトロン型の運動で磁力線をたどる。より重要なことは、4極子組み立て体14においては、平行な磁力線は電子がイオン化容積18の全深さに侵入し、そのエネルギーを一定に保つのを助けるということである。したがって、磁界は、イオンの収束を乱すことなく、電子に対する半径方向RF場の有害な影響をなくすよう十分に強くなければならない。
【0035】
磁界の無い空間で70eVの電子が78.2mmの距離をカバーするのに0.0157マイクロ秒かかるだけである(4極子ロッドは両端に1mmのセラミック・スペーサを持つ76.2mm長である)。これは、1.75MHz周波数のRF電圧の周期のほんの2.75%である。このことは、交流RF場が電子にとって十分に速くはないことを意味し、電子はRF場を静電場として「見る」。電子は4極子ロッドへ向かって加速されながら半径方向の運動エネルギーを取得する。4極子への侵入深さ及び分子イオン化の瞬間の電子運動エネルギーは、RFの電圧及び位相、並びに、入射時の電子の運動エネルギー及び半径方向位置に依存する。RF電圧は、(表1に示すように)短い滞留時間、浅い侵入深さ及び大きな運動エネルギーをもたらす。また、図3に示すように、電子は入口の周辺に限定される。そのため、小さなイオン化容積と電子エネルギーの大きな変動とに起因して、定性的及び定量的な性能は妥協される。
【0036】
【表1】
【0037】
磁束線が4極子軸20に平行である強い静磁界は、先に述べた問題を解決することができる。図3に示すように、500ガウスの磁界の下では、電子は高いRF電圧の存在下でさえも4極子軸に大幅に集中される。表Iが示すように、電子は4極子の全長に侵入し、運動エネルギーをほぼ一定に維持することができる(すなわち、磁界の無い場合を基準にして3%だけずれるが、このことはMSにとって定性的に非常に重要である)。供給源の設計に必要とされる磁界は、電磁石又は永久磁石を使用することによって容易に達成される。これらの2つのタイプの磁石によって生成される磁束線は、図4にモデル化されて示されている。両方の磁石は、適切に設計される場合、必要とされる磁界分布及び磁界強度を提供することができる。電磁石を使用することの1つの問題は、特に真空条件下では発生する熱量が大きいことである。
【0038】
また、シミュレーションが示すように、特に高圧条件下では、磁界はイオン伝達及び収束にあまり影響を与えない(ここにはデータは示さない)。これは、電子に比べてイオンの質量の方が大きいことによって説明することができる。RF専用4極子におけるイオン運動に対する磁界の影響は、半径方向の運動の方程式に新しい項を追加することである。この新しい項では、磁界による加速はνr・Bz/(m/z)に等しい。ただし、νrは磁界Bzに垂直なイオンの速度成分であり、m/zはイオンの質量対電荷比である。電子に比べてイオンの質量が比較的大きいことに加えて、4極子内において軸の近くで形成されたイオンは、形成時に非常に低い半径方向運動エネルギーを有する。そのため、加速項は無視できる。また、留意されるべきであるが、静磁界は、イオンの運動エネルギーではなくイオンの運動方向を変えるだけである。
【0039】
RF専用デバイスに関しては、イオン誘導装置又は線形イオントラップとしてのRF専用デバイスの使用は、特にAPIインタフェースでの高圧におけるイオン伝達の改善について良く知られている。これは衝突冷却及び収束の結果である。実際に、RF場はデバイス軸に直角な二次元擬似電位(又は有効電位)を生成し、半径方向イオン運動は、有効調波トラッピング電位での運動としてモデル化され得る。緩衝ガスの分子との複数回の衝突は、分子の半径方向運動エネルギーを熱値近くまで下げ、分子をデバイス軸上での有効電位の最小値まで移動させる。したがって、イオンは出口開口を通って一層効率的に伝達される。また、イオンは軸方向併進エネルギーの大部分を失い、RFデバイスを低エネルギーで小さいエネルギー・スプレッド(数eV以下)の状態に維持する。
【0040】
また、或る程度ではあるが、3次元4極子イオントラップでのヘリウム緩衝ガスの圧力を増加させることによって、感度の向上、高い質量分解能及びMSn能力がもたらされる。さらに、4極子イオントラップでのヘリウム緩衝ガス圧は、イオン注入期間でのフラグメンテーションにほとんど影響を与えない。
【0041】
本発明の実施の形態においては、多極子型やスタック・リング型のイオン誘導装置などを有する容積での半径方向収束をRFデバイスが提供できるならば、多くの異なるRFデバイスを使用することができる。これらの線形の又は二次元のイオントラップは、3次元4極子イオントラップと比べて、帯電容量が大きくてイオントラップ効率が高いという利点を有する。内部イオン化に関する本発明の利点は、イオンを半径方向に収束するだけでよく、連続的に且つ簡単に排出することができることである。
【0042】
軸方向衝突制動のために、APIインタフェースでの多極子イオン誘導装置又は衝突セルを通るイオンの平均通過時間は、軸方向電界が無い場合、数ミリ秒程度であることがわかる。対照的に、本発明では、二次元RFイオン誘導装置で直接形成されたイオンは、形成時に熱運動エネルギーのみを所有する。入口レンズと出口レンズとの近くに軸方向周縁電界が存在するけれども、入口レンズ34に正電圧が存在し、出口レンズ18に負電圧が存在するとき、軸方向周縁電界はイオン抽出を補助する。しかし、周縁電界は主にイオン誘導装置の端部近くで動作するのであり、イオン誘導装置の軸中心近くではイオンにとって著しく不十分である。軸方向衝突制動を克服するためには、イオン誘導装置を通ってイオンを効率的に移動させるための軸方向電界が必要とされる。
【0043】
軸方向電界を有するRF専用イオン誘導装置の種々の設計、例えば、円錐型、傾斜型又はセグメント化されたロッドの形状及び追加電極の付加が報告されている。軸方向電界の印加によって、イオンは、イオン誘導装置を通って進むときに連続的な加速を受けることになるので、熱イオンでさえも、こうして生成された電位勾配に沿って移動し続ける。全ての場合において、比較的低い軸方向電界が通過時間を大幅に低減することが実験的に示された。
【0044】
図5において、軸方向電界が単一の4極子とセグメント化された4極子とに対して比較される。図5の(a)は、4極子への場の侵入に起因する小さな軸方向DC電界勾配を示している。単一の4極子の多くの中心容積には軸方向電界勾配は存在しない。セグメント化されたロッドの場合、線形電位エネルギーは短いロッド状セグメントを使用して達成され得る。
【0045】
パルス化された抽出を有する連続的EI源を使用すると、パルス状のイオンを生成するために電子ビームをオン・オフしなければならないパルス化源に対して、重要な利点を実現することができる。本発明によって記述される新規なイオン源を使用すると、連続して形成されたイオンをトラップし、次いでイオンをTOFMSの直交抽出の加速領域に短いバーストでゲート制御することにより、直交加速のデューティーサイクルが改善された。
【0046】
線形トラップは、現在、後続の質量分析測定のためのイオン蓄積デバイスとして主に使用される。線形イオントラップでのイオン蓄積は、本質的には、半径方向RF場(及び制動ガス)によってイオンが半径方向においてトラップを出ることを防止する1次元問題と考えられる。入口レンズと出口レンズに印加される電位を上げることにより、又は、軸方向電位井戸を形成するようにイオン誘導装置でのオフセット電位を下げることによってイオンをトラップすることは簡単である。イオンはイオン誘導装置の内部で直接形成されるため、イオンは形成時に低い熱運動エネルギーを所有しているので、抽出場が印加される前にイオンをトラップするのには浅い電位井戸で十分である。これは、圧力依存性衝突制動であることが多いエネルギー消散プロセスを必要とする点で、外部で生成されたイオンをトラップすることと異なる。
【0047】
連続イオン・ビーム直交加速TOFMSにおいては、イオン・ビームは、図6に示すように、多くのm1(低いm/z)のイオンが検出窓を通過し、mh(高いm/z)のイオンが検出窓に入らない状態で、2つのTOFパルス間の加速領域を満たす。さらに、TOFパルス期間にイオンはロードされず、したがって、デューティーサイクルが低減される。その結果、デューティーサイクルは小さくなり、m/zに依存する。対照的に、イオン・ビームをパルス化してトラップから出して直交加速TOFMSに入れることによって、特定のm/z範囲において全イオンを検出することが可能である。時刻t0において、短期間Δt1の間、負パルスによってイオン・ゲートが開き、その期間にイオンは供給源を出ることができる。時間遅延Δt2の後、供給源を出る全てのイオンは検出窓に達する。その後、Δt3の正のTOF抽出パルスが、イオンを飛行管内に加速するために印加される。最適質量範囲外のイオンが検出され得るが、デューティサイクルは小さい。出口レンズでの電圧を高い設定と低い設定との間で切り換えることによって、供給源はトラップ・モード及び放出モードで動作する。
【0048】
ほぼ100%のデューティーサイクルのEI源のための適度な質量範囲を達成するように、パルス動作電圧、ゲート制御パルスの幅、及び、ゲート制御パルスとTOFパルスとの間のタイミングは、TOFパルスの立ち上がり縁で質量範囲内のイオン軌道が確実に検出窓内に完全に入るように、適切に制御されなければならない。第1に、ゲート制御パルス継続時間Δt1は、イオン・パケットの物理的長さm1が検出窓より短くなるように十分に短くなければならない。これは、一定の運動エネルギーが与えられたmhのイオン・パケットについて同じであることを自動的に保証する。第2に、イオンは出口レンズからTOF加速領域まで進むのに或る時間長を必要とし、異なる質量のイオンは異なる時間長を要する。軽いイオンほど、速い速度で進み、重いイオンよりも速く加速領域に到達する。その結果、ゲート制御パルスの立下り縁の後の任意の時点で、種々のイオンに対するイオン・パケットは空間に分散するが、この分散の程度は時間と共に増加する。時間遅延Δt2を適切に選択することによって、ゲート制御パルスの立下り縁で供給源を出るm1のイオンは、TOFパルスの立ち上がり縁でほとんど検出窓の出口に達することができないが、一方、ゲート制御パルスの立ち上がり縁で供給源を出るmhのイオンは検出窓の入口を通る。こうして、m1〜mhの質量範囲で、100%のサンプリング・デューティーサイクルを得ることができる。
【0049】
イオントラップ内の軸方向電位井戸をイオンが出るのに適切な電位を出口レンズに印加すると、この電位が上昇するときトラップされるイオンを放出することができる。これによって、イオン運動エネルギーの分散が小さくなる。また、トラップ及び放出動作に伴う時間遅延収束及びイオン集群が存在する。すなわち、供給源を出るイオンは、イオン・ゲートが高い電位へとパルス動作される前に出て行くイオンよりも低い運動エネルギーを最初に取得する。高速なイオンは、最初は加速領域から遠いところにあるが、遅いイオンに追いつき、イオン・パルスは短くなる。
【0050】
EI源と、ここでの記述に関連する直交加速TOFMSの加速領域との略図が図7に示されている。新規な供給源の中心要素は、4つの4極子電極(ステンレス鋼、6.35mm径、75.2mm長)及び電子銃(FRA−2×1−2/EGPS−2×1、 ニューハンプシャ州ウィルトンのキンバー・フィジックス社)が配置されるセラミック管(外径22.2mm、内径15.9mm、長さ114.3mm)を含む。直線状の円筒形4極子ロッドは簡単の故に使用される(すなわち、線形軸方向場はここでは考えない)。イオン化電子を生成するのに工業用電子銃が使用される。電子銃は、平面3極管設計において電子ビームを生成するように、フィラメントの代わりに空間電荷制限式耐熱カソード・ディスクを使用する。カソードは低いエネルギーの広がりに対して特に設計された。フィラメントよりも大きい正の電圧が加えられた付加的な加速グリッドは、低エネルギーの電子ビーム電流を増大する。電子銃は直径が1.5mmの出口開口を有する。
【0051】
セラミック管は、真空ハウジングとして機能する適切なOリング溝構造付きのアダプタ板とバック・ハウジングとの間に保持される。4極子ロッドは、Oリングを有する自己封止ねじによってセラミック管の内部に固定される。こうして、3.2mmの内接半径が達成される。RF電圧がこれらのねじを通して4極子に印加される。電子銃はセラミック・スペーサを使用して4極子の入口端から1mm離して配置される。電子銃本体は4極子入口レンズ及びイオン源におけるイオン・リペラとして動作する。電子銃からのリード線はバック・ハウジング上の多重ピン・コネクタに接続される。直径が1mmの開口を有する出口レンズはアダプタ板上に支持され、4極子の出口端から1mmのところに配置される。セラミック・スペーサの表面及びセラミック真空ハウジングの内面は、電極によって電子及びイオン・ビームから遮蔽される。試料は、4極子入口から3.2mmの距離のところで4極子軸に直角に、特別に作られた付属品を介して導入される。
【0052】
約150巻き/cmからなる電磁ソレノイドは、最高240℃まで耐えられるポリイミド被覆磁性ワイヤ(34.5ゲージ)を使用して、入口レンズに近接してセラミック管の周囲に巻かれる。1Aの中程度のDC電流で動作すると(Tenma.72−2010)、4極子軸上のコイルの中央部に約200ガウスが生成される。磁界は長手方向においてコイルの端の近くで減少し、半径方向においてコイルの内面の近くで増加する。磁気コイルの抵抗加熱により、供給源は最高120℃まで加熱され得る。温度センサを使用して供給源が監視され、ファンによる能動冷却によって供給源は120℃に維持される。大きな磁界強度及び独立した温度制御を提供するのに、永久磁石はよい選択である。
【0053】
オフセット能力を有する1.86MHz RFドライバ・モジュールは4極子にRF電圧を印加するのに使用され、オシロスコープはRF電圧を測定するのに使用される。典型的には、フィラメントは電気的に加熱され、−50Vにバイアスされるが、加速グリッドは−38Vに設定される。正の50Vが電子銃本体に印加されるので、電子は電子銃を出る時に100eVに加速されることになる。電子が約70eVのエネルギーを持って4極子に入るよう、4極子ロッドは+20Vにバイアスされる。連続イオン・ビームのモードにおいては、−50Vの電圧が出口レンズに印加される。全てのDC及びRF電圧は独立に制御される。
【0054】
イオンがほとんどの時間にわたってトラップされて短時間のうちに加速領域へ放出されるように、供給源はトラップ・モード及びパルス・モードで動作することができる。TOFパルスによってトリガーされる遅延発生器は、出口レンズにトラップ電圧及び抽出電圧を印加する高電圧パルサ(DEI、GRX−1.5K−E)をゲート制御するのに使用される。こうして、EI源のパルス動作はTOFパルスと同期する。抽出パルス継続時間及び遅延時間にわたる個別の制御が利用可能である。広い質量範囲にわたって高いサンプリング・デューティーサイクルを達成するために、放出パルス継続時間及び各TOFパルスの前の遅延時間は、対象の全てのイオンが次のTOFパルスの瞬間に検出窓に収容されるよう最適化される。TOFパルスの前に遅延を導入したため、質量スケールはデータ取得システムによって使用される基準時間から再較正されなければならない。
【0055】
4極子に入る電子のみがイオン生成に関与する。有効電子ビーム電流Ieffは電子銃の加熱用DC電流及び電圧設定によって制御される。有効ビーム電流は、3つのマルチメータによって同時に監視された総放出電流から、グリッド及び入口レンズにおいて測定された電子電流を差し引くことによって得られた。Ieffは1.5Aのフィラメント加熱電流で約10μAであった。
【0056】
直交加速TOFMSが本発明の新規な供給源設計を評価するのに使用された。元のAPIインタフェースは取り除かれ、図7に示すように新しい供給源がアインツェル・レンズ・ハウジングの前に新たに付加された。通常のMS動作では、ローディング期間に加速領域を満たすよう、供給源からの連続イオン・ビームはアインツェル・レンズ組み立て体及び飛行管上の小さな開口を通過する。この期間においては加速領域の電界は接地電位に設定されている。次いで、次のローディング期間までイオンを飛行管へと加速するために、パルサ電極と電界規定電極とに適切な電圧が印加される。同時に、イオンは加速領域に入ることを阻止される。飛行管内のイオンは、マルチチャンネル・プレート(MCP)検出器に衝突する時間によって約4000eVに加速される。
【0057】
加速領域と飛行管はプリント回路板から作られ、一連の電界規定電極からなる。これらの電極に対する適切な電圧は、異なる開始位置を有するイオンの飛行時間に対して理論的には無限位数の補正を提供する反転型パーフェクトロンの放物状電界を規定する。この設計は有効単位長当たりに優れた分解能(m/Δm、約3000)を生成するので、リフレクトロンの使用は不要になることが多い。適度の分解能は30〜1200amuの質量範囲で得られる。
【0058】
加速領域又は飛行管にグリッドは使用されない。グリッド無しの設計は飛行管を介した100%イオン伝達に近い値を提供する。しかし、機器は、6000amuより大きい上部m/z限界に対応する5kHzのパルス化周波数(1過渡質量スペクトルについて200マイクロ秒)に対して約65マイクロ秒という長いTOFパルス継続時間を使用する。スペクトルの重なりを回避するために、以前のイオン・パッケージにおける最も重いイオンが検出器に達する前にイオンをロードすることはできない。残念ながら、イオン・ビームはTOFパルス間で加速領域を過剰充填する(たとえば、多くのイオンはパルス化領域を通過し、壁上で中和される)。これは、特に低m/zイオンについて当てはまる。約20%のサンプリング・デューティーサイクルは高m/zイオンについて達成され得る。マルチアノード・イオン計数システムは高い検出効率を提供し、機器のダイナミック・レンジを拡張する。この機器は最も敏感な質量分析器の1つであり、サンプリング・デューティーサイクルがさらに改善されるならば、一層敏感になる。
【0059】
真空システムに関しては、電子銃はセラミック管における低いコンダクタンス限度を必要とするが、出口レンズは高いコンダクタンスを有する。そのため、機器は3つの真空ステージ、すなわち、バック・ハウジングにおけるVI、セラミック管の4極子セクション及びアインツェル・レンズ・ハウジングにおけるVII並びに飛行管でのVIIIを必要とする。ステージVI及びVIIIは真空計によって監視することができ、VIIは定常状態条件下ではVIと原理的に同じである。元のポンプ・システム(1つのバックアップ回転ポンプ、2つのターボ分子ポンプ。バック・ハウジングに接続されたポンプ無し)により、飛行管及びバック真空ハウジングでの圧力は、それぞれ、付加的なガスの追加無しで、(真空計は窒素について較正されるが)空気について、約3×10−7mbar及び4×10−5mbarである。
【0060】
2つの大電流電源(RFドライブ及びフィラメント)が手動で制御される。全ての他の電圧はTOFMSのSprayTOFオペレーティング・ソフトウェアによって制御される。SprayTOFプログラムはTOF機器の制御及び質量スペクトルの記録にも使用される。このソフトウェアはまた、未処理のスペクトル・データをオンライン又はオフラインで処理し、定量化のために較正曲線を準備することができる。これらの実験では、時間に対するm/zの選択された範囲からの選択されたイオン・クロマトグラムは、信号対雑音比を計算し且つ較正曲線を準備するために、MSエクセルにエクスポートされる。
【0061】
この部分で述べる全ての実験においては、飛行時間型質量分析がm/z値及びイオン存在量を決定するのに使用された。供給源からの総イオン電流をピコアンペアで測定するために、四重出口レンズの後にファラデー・プレート検出器(直径が2.0cmの銅板)が一時的に設置された。出口レンズから出る全てのイオンを収集するために、ファラデー・プレートにバイアス電圧が印加される。
【0062】
4極子に入る電子のみがイオン生成に関与するので、有効電子ビーム電流Ieffは、収束用グリッド及び電子銃本体上で測定された全電流と放出電流との差として規定される。また、電子銃本体は4極子入口レンズとして動作するので、電子銃本体に印加された電圧はフィラメントと収束用グリッドとに電圧を設定するための基準電圧として使用される。こうして、電子銃の動作とは無関係に、入口レンズ電圧を効率的なイオン抽出のために調整することができる。
【0063】
第1に、Ieffは、フィラメント上のバイアス電圧と言われるグリッド電圧、加熱用DC電流及びイオン化電子運動エネルギーによって影響を受ける。増加した放出電流とグリッドでの増加した損失との間の相互作用に起因して、Ieff対グリッド電圧の曲線は最大値を有する。また、Ieffは真空状態及び磁界によって影響を受ける。収束用グリッド及び電子銃本体上での電子損失を減少させることによって、磁界は放出電流の減少につれてIeffを増加させる。前述のように電圧設定が与えられる場合、Ieffは1.5AのDC加熱電流のときに約10μAであった。
【0064】
4極子内部の静電場は電子とイオンとの軌道に影響を与える。図5の(a)におけるシミュレーションは両端での電界侵入を示しており、実質的に、直線状の円筒形ロッドの軸に沿う中央部には軸方向電界はない。電界侵入深さは、物理的な幾何形状、及び、ロッドのDCオフセットと入口レンズ又は出口レンズとの間の電位差によってのみ決まる。電位差を増すことによって、侵入深さは僅かに増加する。本明細書で使用される幾何形状の場合、前のセクションで与えられる電圧設定を使用すると、周縁電界は各端から4極子内に約6mm侵入する。4極子のDCオフセットに対する入口レンズ上の正電圧は、入口の近傍においてのみではあるが、軸方向周縁電界を課すことによってイオン抽出を補助する。しかし、4極子の軸中心の近くのイオンの場合、この電界は非常に弱くて不十分である。同様に、出口レンズ上の負電位も同じに振舞う。そのため、バックグラウンド・ガスの存在下では、4極子を通してイオンを移動させるのには軸方向電界が必要である。
【0065】
供給源の性能は、ファラデー・プレートを使用して残留空気の全イオン電流を測定することによって最初に評価された。300pAより大きい全イオン電流は、実験のセクション(図8)で述べた9.6アンペアの有効電子ビーム電流及び真空状態で記録された。RF電圧及び磁界は全イオン電流を大幅に増加させた。磁気コイルを通る電流が増加したとき、その後のイオン電流の増加は、(1)より多くの電子が4極子へ誘導されたこと、及び、(2)電子が一層深くに侵入し、一層大きなイオン化容積がもたらされることを示した。さらに大きな電流においては、利用可能な電子の数によって制限されて、イオン電流は横ばい状態になった。MS信号の増大は、ファラデー・プレート検出器を使用して観測される増大と同じであった。
【0066】
イオン・ビームの半径方向収束における重要なファクタは、RF電圧の振幅によって果たされる役割である。RF専用4極子(aM=0)はハイパス・フィルタとして動作する。低m/zのイオン(qM≧0.908に対応する)は不安定であり、通過することができない。高m/zのイオンに対しては急峻なカットオフは存在しない。有効電位井戸の深さはイオン質量に逆比例するため、高m/zのイオンの伝達は低RF電圧では弱い収束に起因して害される。伝達特性は、リーク弁を通して供給源にPFTBAを導入することによって最初に調査された。PFTBAの安定した分圧は付加ガス無しで維持された。異なるm/z範囲のイオン群の信号強度はRF電圧を増加することによって決定された。その結果は図9に示され、典型的な伝達特性を示している。
【0067】
高いRF電圧の場合、低m/zのイオンは完全に遮断される。高m/zのイオンを遮断するには、より高いRF電圧が必要とされる。収束性がよいので、高m/zのイオンの信号はRF電圧とともに増加し続けるが、最終的には、全てのイオンを伝達するのに十分に高いRF電圧で一定になる。
【0068】
供給源を高い圧力(1mTorr)で動作させることが有利である。これは、半径方向のイオン損失が衝突収束のために小さく、軽減された真空条件が供給源を種々の分離方法と結合させることを容易にするからである。イオン化及び伝達プロセスに対する供給源圧力の作用を研究するために、試料導入とは無関係に供給源圧力を増加させるようにイオン源にヘリウムが導入された。ヘリウムは、EI源に入る前に、0.21mL/分且つ25℃で試料バイアルにおいてn−ブチルベンゼンを通して発泡された。質量分析測定のエネルギー温度計として一般に使用されるn−ブチルベンゼン(m/z134)は、EI源の2つの経路、すなわち、m/z92イオン(C7H8+)を生じる低エネルギー・マクラファティ転位を介して又はプロピル基の損失を伴う高エネルギー経路を通して解離してm/z91イオン(C7H7+)を形成する。m/z92の91に対する比は、衝突によって伝達され又は取得された平均内部エネルギーの尺度として使用される。
【0069】
図10に、実験結果が示される。m/z91、92、134に対する最大の信号強度が図10の(a)における0.52mTorrのヘリウム圧において観測され、次いでイオン強度はヘリウム圧と共に減少する。最適質量分解能は図10の(b)において0.9mTorrで示される。ここから分かるように、最適信号度及び高められたヘリウム圧での質量分解能によって衝突収束が供給源において発生する。これは、最適感度及び質量分解能が1mTorrのヘリウム圧で見出されたイオントラップを使用した観測と矛盾しない。また、あり得ることであるが、4極子源内部で形成されたイオンは半径方向と軸方向とに低運動エネルギーを所有し、衝突収束は高いイオン伝達効率に対して低圧で起こり、一方、さらなるイオン−ガス衝突が出口レンズと加速領域との間の領域において一層多くのイオン損失をもたらす。
【0070】
また、イオン源圧力の増加によって、電荷交換及び化学イオン化(CI)がもたらされる。図10の(c)では、n−ブチルベンゼンからのm/z92イオンのm/z91イオンに対するイオン強度比がヘリウム・ガス圧に対してプロットされている。1.34mTorrより低い範囲ではヘリウム圧はイオン強度比に対してほとんど影響がないことが明らかである。ヘリウム圧が高くなると、この比はほぼ直線的に増加する。これは、ヘリウム・イオンとn−ブチルベンゼン分子との間の電荷交換によって説明することができる。形成された分子イオンは、次いで、m/z92イオンに至る低エネルギー・フラグメンテーション経路をたどり、衝突誘起解離(CID)におけると同様にヘリウム・ガスとの衝突を伴う。2−オクタノンによる実験においては化学イオン化の徴候は観測されなかった。2−オクタノンは自己CIで知られる化合物である。高濃度においては、内部イオン化を有する4極子イオントラップ内などのイオン源内部に分子イオンが十分に長く留まる場合、イオン比129/128すなわち(M+H)/Mは1より大きい。高濃度を使用して取得したスペクトルには、プロトン化分子イオンは存在しなかった。
【0071】
図11は、(a)連続イオン・ビームを使用して得られたPFTBAのEIスペクトルと、(b)m/z69イオン、(c)m/z131イオン、(d)m/z219イオン、(e)m/z264イオンに対して最適化されたパルス化抽出を使用して記録されたスペクトルとの比較を示す。各スペクトルのy軸は0.33秒において記録された(すなわち、5kHzのTOFパルス周波数で1600個の過渡現象を加算する)イオン計数を示す。スペクトル毎の挿入チャートは、最初に連続イオン・ビームを使用し、次いでパルス化抽出に変更して、指示された単位質量について合計イオン計数を比較する。たとえば、図11の(b)では、タイミング条件(パルス継続時間及び遅延時間)はm/z69イオンについて最適化され、ピーク面積については係数13が、ピーク高さについては係数33が得られた。m/z69イオンのみがこのスペクトルにおいて記録された。高m/zのイオンの方が、供給源を出てから加速領域に達するのに長い時間を必要とした。明らかなように、高m/zのイオンに対しては、長いパルス継続時間と遅延時間を使用することが妥当である。高m/zのイオンの方が広い質量範囲が観測されたが、ピーク面積の利得は小さかった。
【0072】
タイミング条件及び信号強度利得が表IIに要約される。利得係数はピーク面積に対して8〜45倍であり、ピーク高さに対して26〜81倍であった。これは、大幅に改善された質量分解能(ここではデータは示されていない)をも示唆している。信号利得係数は、直交加速における改善されたサンプリング・デューティーサイクルから生ずる。狭いピーク幅は時間遅延収束及びイオン集群による。電荷反発によるイオン抽出を、トラップ電位による4極子内部の空間電荷の増加のために大幅に改善することも可能である。4極子内への短い電界侵入を考慮すると、電圧が切り換わる時点に出口レンズの近くにいるイオンのみが抽出パルスによって影響を受ける。
【0073】
【表2】
【0074】
先に述べた利点以外のいくつかの利点がパルス化抽出を使用して観測された。供給源パルス動作によって、望ましくないイオンが検出器に達することが防止されるため、化学雑音が劇的に減る。第2に、m/z69イオンについての図11の(b)におけると同様に、タイミング条件を制御することによって、特定の質量範囲を精密に選択することができる。さらに、質量スペクトルでの最も強い質量ピークは、GCキャリア・ガスや溶媒などの、試料ガスにおける分析対象でない化学種から生ずることがしばしばある。干渉ピークに対する低サンプリング・デューティーサイクルを完全に除去し又は取得しながら当該質量範囲をカバーするように、供給源パルス動作によって直交加速TOFMSのダイナミック・レンジを増大させることができる。
【0075】
新規なEI源によって生成される質量スペクトルにおけるフラグメンテーション・パターン及び同位体比は、NISTライブラリにおけるスペクトルと矛盾しない。ブチルベンゼン、2−オクトン、直鎖状アルカン及びPFTBAを含む化学物質により、実験が実施された。これらの化合物全てについて、食い違いはほとんど観測されなかった。PFTBAの質量スペクトルが図12の(b)に示される。PFTBAの定性的なフラグメンテーション・パターンは予想される通りであるが、個々のフラグメント・イオンの相対強度はRF電圧の振幅、静電電圧設定及び供給源パルス動作によって大幅に影響を受ける。重要なことに、供給源の真空条件はイオンの相対強度に対してほとんど又は全く影響がない。実際、正確な質量フォーマットで示されるPFTBAスペクトルは実際には高m/zのイオンに有利である。
【0076】
残留空気の拡大された質量スペクトルが図12の(a)に示される。これは、5kHzのTOFパルス動作周波数における200個のスペクトルの和を表す。m/z=28に対する1074の質量分解能は、イオン源が十分にコリメートされたイオン・ビームを生成することを示す。図12の(b)における加算されたPFTBAスペクトルにおいては、m/z69では1195の質量分解能が得られ、m/z502では2090の質量分解能が得られた。長い飛行時間に起因する、m/zについての質量分解能の増大は、ピーク幅が検出器応答及び電子部品によって主に決まることを示している。
【0077】
感度及び検出限界についての全体の機器性能は、機器をガス・クロマトグラフに結合することによって試験された。8m長で0.1mm内径(0.2μm膜厚)のDB−5カラム(J&W)が、150kPaのヘリウム流量及び70℃/分で25℃〜95℃までの温度プログラミングによって使用された。ヘキサンの0.5μL試料容積が1:550のスプリット比のスプリット・モードを使用して注入された。この試料容積とスプリット比は、カラムに過負荷をかけることを回避し、十分なクロマトグラフ効率を得るために、本装置と共に使用されなければならなかった。加熱された転送ラインは50℃に保持され、EI源は約100℃に保持された。有効電子ビーム電流は15μAに増加され、フィラメントは36〜48秒の間で溶媒溶離期間にオフにされた。供給源出口は、当該質量範囲をカバーするよう4マイクロ秒の継続時間及び12マイクロ秒の遅延時間でパルス動作された。データは12スペクトル/秒(5kHzのTOFパルス動作周波数及び400の過渡合計)で取得された。他の機器パラメータは、MCP検出器に対しては2550V、SprayTOFソフトウェアによって設定される閾値に対しては2023Vであった、
図13は、トルエン、エチルベンゼン及びプロピルベンゼンについての感度及び検出限界を示す。これらの検体が選択されたのは、転送ライン及び供給源加熱の問題の故であった。図示のクロマトグラムは、全スペクトル・モードで取得されたデータからm/z90.9〜91.2を抽出することによって得られた再生である。452の信号対雑音比(S/N、二乗平均平方根RMS雑音に対するピーク高さ)はトルエンの1.87pgに対して得られ、304はエチルベンゼンの1.87pgに対して得られ、また、194はプロピルベンゼン・オンカラムの1.85pgに対して得られた。ピーク・ツー・ピーク雑音基準(2.8RMS雑音)を使用した線形外挿による検出限界(LOD)は、それぞれ、12fg、17fg、27fgであった。試料検体の強度のフラグメンテーション及び過剰のバックグラウンド化学雑音が観察された。これらの結果は、供給源加熱が利用可能であって高い化学雑音がなくなるならば、大幅に改善され得ることが期待される。
【0078】
理解されるように、上述の構成は本発明の原理の応用を例示するに過ぎない。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者は多くの変更及び代替の構成を考案することができる。請求項はこうした変更及び構成を包含することを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の電子イオン源の断面図である。
【図2】フィラメント組み立て体の拡大断面図である。
【図3】高RF電圧の存在下でさえも電子が4極子軸に著しく集中することを示す断面図である。
【図4】2つのタイプの磁石によって生成される磁束線の断面図である。
【図5】Aは単一の4極子について軸方向電界が比較されることを示す図である。Bはセグメント化された4極子について軸方向電界が比較されることを示す図である。
【図6】多くのm1イオンが検出窓を通過し、検出窓に入るmhイオンが無い状態で、2つのTOFパルス間でイオン・ビームが加速領域を満たす概念を示す図である。
【図7】直交加速TOFMSのEI源及び加速領域の略図である。
【図8】磁気コイルを通る電流の関数としての全イオン電流を示すグラフ図である。
【図9】典型的な伝達特性のグラフである。
【図10】イオン化及び伝達プロセスに対する供給源圧力の影響を示す一連のグラフである。
【図11】連続イオン・ビームを使用して得られたPFTBAのEIスペクトルと、パルス化抽出を使用して記録されたスペクトルとの比較を示す図である。
【図12】Aは残留空気の質量スペクトルを示すグラフであり、BはPFTBAの質量スペクトルを示すグラフである。
【図13】トルエン、エチルベンゼン、プロピルベンゼンについての感度及び検出限界を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
改良されたイオン源を提供方法であって、
(1)イオンを送出するイオン誘導装置を設けるステップと、
(2)前記イオン誘導装置と共に動作し且つ前記イオン誘導装置の長軸の周囲に重畳される電子閉じ込めを設けるステップと、
(3)イオン化容積においてイオンを生成するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
改良された電子イオン化源を設けるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
改良された化学イオン化源を設けるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
増大したイオン送出を得るために、前記イオン誘導装置の前記長軸に沿ってイオンの衝突収束を実施するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(1)交流電流又は交流電圧を使用して動作することができる高周波数イオン誘導装置を設けるステップと、
(2)電子閉じ込め手段として磁界を設けるステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記所望の電子閉じ込めを設けるために、前記イオン誘導装置に沿って対称磁界を設けるステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記イオン誘導装置の前記長軸と同軸整列するように、対称磁界を配設するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記イオン誘導装置の前記長軸と同軸整列しないように、対称磁界を配設するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
対称磁界を使用して、電子源から引き出された電子ビームを前記イオン誘導装置の前記長軸に沿って閉じ込めるステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
対称磁界を使用して、電子源から引き出された電子ビームを前記イオン誘導装置の前記長軸に沿って圧縮するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
対称磁界を使用して、電子源から引き出された電子ビームを前記イオン誘導装置の前記長軸に沿って誘導するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記イオン誘導装置内で電子の狭いエネルギー分布を維持するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記対称磁界の印加によって、前記イオン誘導装置内で電子、帯電した化合物及び帯電していない化合物の相互作用を延長するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
円筒構造を使用して前記対称磁界を生成するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
円筒構造を使用する前記ステップはさらに、単一の円筒構造要素を使用するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
円筒構造を使用する前記ステップはさらに、複数の離散的な構造要素からなる円筒構造を使用するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
離散的な構造要素からなる円筒構造要素を使用する前記ステップはさらに、複数の磁性要素を使用するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの永久磁石を使用して前記対称磁界を生成するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの電磁石を使用して前記対称磁界を生成するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項20】
前記イオン誘導装置として半径方向閉じ込め用の高周波数(RF)場を設けるステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項21】
単極、4極又は任意の他の多極配置構成からなるイオン誘導装置、電極の積層体、レンズの積層体及びイオントラップの群から半径方向閉じ込め用の高周波数場を選択するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
電子銃、ホット・フィラメント、放電針からなる、又は、適切な材料の放射性崩壊による電子源又はβ放出器の群から前記電子源を選択するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記イオン化容積を質量分析器に送出して質量分析器の感度を改善するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記イオン化容積を質量分析器に送出して質量分析器の検出限界を改善するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記イオン化容積内で前記イオンを生成する前記ステップは、前記イオンを所望のターゲットに送出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
イオン移動度分析器、質量分析器及び二次イオン質量分析装置からなるターゲットの群から前記ターゲットを選択するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
飛行時間型質量分析器、4極子質量分析器、磁界セクタ質量分析器、静電セクタ質量分析器、イオン・サイクロトロン共鳴質量分析器、イオントラップ及びワイン・フィルタからなる質量分析器の群から前記質量分析器を選択するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
線形ドリフト管、非対称波形移動度分析器、差分イオン移動度分析器及びクロスフロー・イオン移動度分析器からなるイオン移動度分析器の群から前記イオン移動度分析器を選択するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記イオン誘導装置をパルス・モード又は連続ストリーム・モードで動作させるステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記質量分析器のデューティーサイクルを増加させるステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記イオン容積内で前記イオンを使用して二次イオンを生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記イオン誘導装置及び前記電子閉じ込めを使用して他の用途のためのイオン源として動作させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
改良されたイオン化源を提供するシステムであって、
イオンを送出するイオン誘導装置と、
前記イオン誘導装置と共に動作し且つ前記イオン誘導装置の長軸の周囲に重畳される電子閉じ込めシステムと、
イオン化容積と、
を具備するシステム。
【請求項34】
前記イオン化源はさらに電子イオン化源を備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記イオン化源はさらに化学イオン化源を備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
交流電流又は交流電圧を使用して動作することができる高周波数イオン誘導装置と、
電子閉じ込め手段としての磁界と、
をさらに備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項37】
前記磁界はさらに、所望の電子閉じ込めを提供するために前記イオン誘導装置に沿って配設される対称磁界からなる、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記イオン誘導装置の前記長軸と同軸整列するように対称磁界を配設することをさらに含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記イオン誘導装置の前記長軸と同軸整列しないように対称磁界を配設することをさらに含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
前記対称磁界を生成するのに使用される円筒構造をさらに備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項41】
前記円筒構造は単一の円筒構造要素をさらに備える、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記円筒構造は複数の離散的な構造要素をさらに備える、請求項40に記載のシステム。
【請求項43】
離散的な構造要素からなる前記円筒構造は複数の磁性要素をさらに備える、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記対称磁界を生成するのに使用される少なくとも1つの永久磁石をさらに備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項45】
前記対称磁界を生成するのに使用される少なくとも1つの電磁石をさらに備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項46】
前記イオン誘導装置は半径方向閉じ込め用の高周波数(RF)場をさらに備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項47】
単極、4極又は任意の他の多極配置構成からなるイオン誘導装置、電極の積層体、レンズの積層体及びイオントラップの群から半径方向閉じ込め用の高周波数場を選択することをさらに含む、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
電子銃、ホット・フィラメント、放電針からなる、又は、適切な材料の放射性崩壊による電子源又はβ放出器の群から前記電子源を選択することをさらに含む、請求項46に記載のシステム。
【請求項49】
質量分析器をさらに備え、前記イオン化容積は前記質量分析器に送出されて前記質量分析器の感度を改善する、請求項33に記載のシステム。
【請求項50】
質量分析器をさらに備え、前記イオン化容積は前記質量分析器に送出されて前記質量分析器の検出限界を改善する、請求項33に記載のシステム。
【請求項51】
ターゲットをさらに備え、前記イオン化容積内の前記イオンは前記ターゲットに送出される、請求項33に記載のシステム。
【請求項52】
イオン移動度分析器、質量分析器及び二次イオン質量分析装置からなるターゲットの群から前記ターゲットを選択することをさらに含む、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
飛行時間型質量分析器、4極子質量分析器、磁界セクタ質量分析器、静電セクタ質量分析器、イオン・サイクロトロン共鳴質量分析器、イオントラップ及びワイン・フィルタからなる質量分析器の群から前記質量分析器を選択することをさらに含む、請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
線形ドリフト管、非対称波形移動度分析器、差分イオン移動度分析器及びクロスフロー・イオン移動度分析器からなるイオン移動度分析器の群から前記イオン移動度分析器を選択することをさらに含む、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記イオン誘導装置は、少なくとも2つの動作モード、すなわち、パルス・モードである第1動作モードと連続ストリーム・モードである第2動作モードとを有する、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
二次イオンを生成する手段をさらに備える、請求項53に記載のシステム。
【請求項57】
他の用途のためのイオン源として、前記イオン誘導装置及び前記電子閉じ込めシステムを動作させる手段をさらに備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項58】
イオン化容積内で改善されたイオン閉じ込めを提供する方法であって、
(1)イオンを閉じ込めるイオン誘導装置を設けるステップと、
(2)前記イオン誘導装置と共に動作し且つ前記イオン誘導装置の軸の周囲に重畳される電子閉じ込めを設けるステップと、
(3)イオン化容積内にイオンを閉じ込めるステップと、
を含む方法。
【請求項59】
パルス化イオン送出のために、選択可能な間隔で前記イオン化容積からイオンを放出する送出システムをさらに備える、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
(1)交流電流又は交流電圧を使用して動作することができる高周波数イオン誘導装置を設けるステップと、
(2)電子閉じ込め手段として磁界を設けるステップと、
をさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
所望の電子閉じ込めを提供するために前記イオン誘導装置に沿って対称磁界を設けるステップをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
円筒構造を使用して前記対称磁界を生成するステップをさらに含む、請求項61記載の方法。
【請求項63】
円筒構造を使用する前記ステップは単一の円筒構造要素を使用するステップをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
円筒構造を使用する前記ステップは複数の離散的な構造要素からなる円筒構造を使用するステップをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
離散的な構造要素からなる円筒構造要素を使用する前記ステップは複数の磁気要素を使用するステップをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記対称磁界を生成するために少なくとも1つの永久磁石を使用するステップをさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記対称磁界を生成するために少なくとも1つの電磁石を使用するステップをさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
イオン化容積内で改善されたイオン閉じ込めを提供するシステムであって、
イオンを閉じ込めるイオン誘導装置と、
前記イオン誘導装置と共に動作する電子閉じ込めシステムであって、電子閉じ込めが前記イオン誘導装置の軸の周囲に重畳されるシステムと、
イオンを閉じ込めるイオン化容積と、
を備えるシステム。
【請求項69】
パルス化イオン送出のために、選択可能な間隔で前記イオン化容積からイオンを放出する送出システムをさらに備える、請求項68に記載のシステム。
【請求項70】
交流電流又は交流電圧を使用して動作することができる高周波数イオン誘導装置と、
電子閉じ込め手段としての磁界と、
をさらに備える、請求項69に記載のシステム。
【請求項71】
所望の電子閉じ込めを提供するために、前記イオン誘導装置に沿って配設される対称磁界をさらに備える、請求項70に記載のシステム。
【請求項72】
前記対称磁界を生成するのに使用される円筒構造をさらに備える、請求項71に記載のシステム。
【請求項73】
前記円筒構造は単一の円筒構造要素をさらに備える、請求項72に記載のシステム。
【請求項74】
前記円筒構造は複数の離散的な構造要素をさらに備える、請求項72に記載のシステム。
【請求項75】
複数の離散的な構造要素からなる前記円筒構造は複数の磁性要素をさらに備える、請求項74に記載のシステム。
【請求項76】
前記対称磁界を生成するための少なくとも1つの永久磁石をさらに備える、請求項71に記載のシステム。
【請求項77】
前記対称磁界を生成するための少なくとも1つの電磁石をさらに備える、請求項71に記載のシステム。
【請求項1】
改良されたイオン源を提供方法であって、
(1)イオンを送出するイオン誘導装置を設けるステップと、
(2)前記イオン誘導装置と共に動作し且つ前記イオン誘導装置の長軸の周囲に重畳される電子閉じ込めを設けるステップと、
(3)イオン化容積においてイオンを生成するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
改良された電子イオン化源を設けるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
改良された化学イオン化源を設けるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
増大したイオン送出を得るために、前記イオン誘導装置の前記長軸に沿ってイオンの衝突収束を実施するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(1)交流電流又は交流電圧を使用して動作することができる高周波数イオン誘導装置を設けるステップと、
(2)電子閉じ込め手段として磁界を設けるステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記所望の電子閉じ込めを設けるために、前記イオン誘導装置に沿って対称磁界を設けるステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記イオン誘導装置の前記長軸と同軸整列するように、対称磁界を配設するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記イオン誘導装置の前記長軸と同軸整列しないように、対称磁界を配設するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
対称磁界を使用して、電子源から引き出された電子ビームを前記イオン誘導装置の前記長軸に沿って閉じ込めるステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
対称磁界を使用して、電子源から引き出された電子ビームを前記イオン誘導装置の前記長軸に沿って圧縮するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
対称磁界を使用して、電子源から引き出された電子ビームを前記イオン誘導装置の前記長軸に沿って誘導するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記イオン誘導装置内で電子の狭いエネルギー分布を維持するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項13】
前記対称磁界の印加によって、前記イオン誘導装置内で電子、帯電した化合物及び帯電していない化合物の相互作用を延長するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項14】
円筒構造を使用して前記対称磁界を生成するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項15】
円筒構造を使用する前記ステップはさらに、単一の円筒構造要素を使用するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
円筒構造を使用する前記ステップはさらに、複数の離散的な構造要素からなる円筒構造を使用するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
離散的な構造要素からなる円筒構造要素を使用する前記ステップはさらに、複数の磁性要素を使用するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの永久磁石を使用して前記対称磁界を生成するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの電磁石を使用して前記対称磁界を生成するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項20】
前記イオン誘導装置として半径方向閉じ込め用の高周波数(RF)場を設けるステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項21】
単極、4極又は任意の他の多極配置構成からなるイオン誘導装置、電極の積層体、レンズの積層体及びイオントラップの群から半径方向閉じ込め用の高周波数場を選択するステップをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
電子銃、ホット・フィラメント、放電針からなる、又は、適切な材料の放射性崩壊による電子源又はβ放出器の群から前記電子源を選択するステップをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記イオン化容積を質量分析器に送出して質量分析器の感度を改善するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記イオン化容積を質量分析器に送出して質量分析器の検出限界を改善するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記イオン化容積内で前記イオンを生成する前記ステップは、前記イオンを所望のターゲットに送出するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
イオン移動度分析器、質量分析器及び二次イオン質量分析装置からなるターゲットの群から前記ターゲットを選択するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
飛行時間型質量分析器、4極子質量分析器、磁界セクタ質量分析器、静電セクタ質量分析器、イオン・サイクロトロン共鳴質量分析器、イオントラップ及びワイン・フィルタからなる質量分析器の群から前記質量分析器を選択するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
線形ドリフト管、非対称波形移動度分析器、差分イオン移動度分析器及びクロスフロー・イオン移動度分析器からなるイオン移動度分析器の群から前記イオン移動度分析器を選択するステップをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記イオン誘導装置をパルス・モード又は連続ストリーム・モードで動作させるステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記質量分析器のデューティーサイクルを増加させるステップをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記イオン容積内で前記イオンを使用して二次イオンを生成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記イオン誘導装置及び前記電子閉じ込めを使用して他の用途のためのイオン源として動作させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
改良されたイオン化源を提供するシステムであって、
イオンを送出するイオン誘導装置と、
前記イオン誘導装置と共に動作し且つ前記イオン誘導装置の長軸の周囲に重畳される電子閉じ込めシステムと、
イオン化容積と、
を具備するシステム。
【請求項34】
前記イオン化源はさらに電子イオン化源を備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記イオン化源はさらに化学イオン化源を備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
交流電流又は交流電圧を使用して動作することができる高周波数イオン誘導装置と、
電子閉じ込め手段としての磁界と、
をさらに備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項37】
前記磁界はさらに、所望の電子閉じ込めを提供するために前記イオン誘導装置に沿って配設される対称磁界からなる、請求項36に記載のシステム。
【請求項38】
前記イオン誘導装置の前記長軸と同軸整列するように対称磁界を配設することをさらに含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記イオン誘導装置の前記長軸と同軸整列しないように対称磁界を配設することをさらに含む、請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
前記対称磁界を生成するのに使用される円筒構造をさらに備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項41】
前記円筒構造は単一の円筒構造要素をさらに備える、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記円筒構造は複数の離散的な構造要素をさらに備える、請求項40に記載のシステム。
【請求項43】
離散的な構造要素からなる前記円筒構造は複数の磁性要素をさらに備える、請求項42に記載のシステム。
【請求項44】
前記対称磁界を生成するのに使用される少なくとも1つの永久磁石をさらに備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項45】
前記対称磁界を生成するのに使用される少なくとも1つの電磁石をさらに備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項46】
前記イオン誘導装置は半径方向閉じ込め用の高周波数(RF)場をさらに備える、請求項37に記載のシステム。
【請求項47】
単極、4極又は任意の他の多極配置構成からなるイオン誘導装置、電極の積層体、レンズの積層体及びイオントラップの群から半径方向閉じ込め用の高周波数場を選択することをさらに含む、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
電子銃、ホット・フィラメント、放電針からなる、又は、適切な材料の放射性崩壊による電子源又はβ放出器の群から前記電子源を選択することをさらに含む、請求項46に記載のシステム。
【請求項49】
質量分析器をさらに備え、前記イオン化容積は前記質量分析器に送出されて前記質量分析器の感度を改善する、請求項33に記載のシステム。
【請求項50】
質量分析器をさらに備え、前記イオン化容積は前記質量分析器に送出されて前記質量分析器の検出限界を改善する、請求項33に記載のシステム。
【請求項51】
ターゲットをさらに備え、前記イオン化容積内の前記イオンは前記ターゲットに送出される、請求項33に記載のシステム。
【請求項52】
イオン移動度分析器、質量分析器及び二次イオン質量分析装置からなるターゲットの群から前記ターゲットを選択することをさらに含む、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
飛行時間型質量分析器、4極子質量分析器、磁界セクタ質量分析器、静電セクタ質量分析器、イオン・サイクロトロン共鳴質量分析器、イオントラップ及びワイン・フィルタからなる質量分析器の群から前記質量分析器を選択することをさらに含む、請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
線形ドリフト管、非対称波形移動度分析器、差分イオン移動度分析器及びクロスフロー・イオン移動度分析器からなるイオン移動度分析器の群から前記イオン移動度分析器を選択することをさらに含む、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記イオン誘導装置は、少なくとも2つの動作モード、すなわち、パルス・モードである第1動作モードと連続ストリーム・モードである第2動作モードとを有する、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
二次イオンを生成する手段をさらに備える、請求項53に記載のシステム。
【請求項57】
他の用途のためのイオン源として、前記イオン誘導装置及び前記電子閉じ込めシステムを動作させる手段をさらに備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項58】
イオン化容積内で改善されたイオン閉じ込めを提供する方法であって、
(1)イオンを閉じ込めるイオン誘導装置を設けるステップと、
(2)前記イオン誘導装置と共に動作し且つ前記イオン誘導装置の軸の周囲に重畳される電子閉じ込めを設けるステップと、
(3)イオン化容積内にイオンを閉じ込めるステップと、
を含む方法。
【請求項59】
パルス化イオン送出のために、選択可能な間隔で前記イオン化容積からイオンを放出する送出システムをさらに備える、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
(1)交流電流又は交流電圧を使用して動作することができる高周波数イオン誘導装置を設けるステップと、
(2)電子閉じ込め手段として磁界を設けるステップと、
をさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
所望の電子閉じ込めを提供するために前記イオン誘導装置に沿って対称磁界を設けるステップをさらに含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
円筒構造を使用して前記対称磁界を生成するステップをさらに含む、請求項61記載の方法。
【請求項63】
円筒構造を使用する前記ステップは単一の円筒構造要素を使用するステップをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
円筒構造を使用する前記ステップは複数の離散的な構造要素からなる円筒構造を使用するステップをさらに含む、請求項62に記載の方法。
【請求項65】
離散的な構造要素からなる円筒構造要素を使用する前記ステップは複数の磁気要素を使用するステップをさらに含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記対称磁界を生成するために少なくとも1つの永久磁石を使用するステップをさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記対称磁界を生成するために少なくとも1つの電磁石を使用するステップをさらに含む、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
イオン化容積内で改善されたイオン閉じ込めを提供するシステムであって、
イオンを閉じ込めるイオン誘導装置と、
前記イオン誘導装置と共に動作する電子閉じ込めシステムであって、電子閉じ込めが前記イオン誘導装置の軸の周囲に重畳されるシステムと、
イオンを閉じ込めるイオン化容積と、
を備えるシステム。
【請求項69】
パルス化イオン送出のために、選択可能な間隔で前記イオン化容積からイオンを放出する送出システムをさらに備える、請求項68に記載のシステム。
【請求項70】
交流電流又は交流電圧を使用して動作することができる高周波数イオン誘導装置と、
電子閉じ込め手段としての磁界と、
をさらに備える、請求項69に記載のシステム。
【請求項71】
所望の電子閉じ込めを提供するために、前記イオン誘導装置に沿って配設される対称磁界をさらに備える、請求項70に記載のシステム。
【請求項72】
前記対称磁界を生成するのに使用される円筒構造をさらに備える、請求項71に記載のシステム。
【請求項73】
前記円筒構造は単一の円筒構造要素をさらに備える、請求項72に記載のシステム。
【請求項74】
前記円筒構造は複数の離散的な構造要素をさらに備える、請求項72に記載のシステム。
【請求項75】
複数の離散的な構造要素からなる前記円筒構造は複数の磁性要素をさらに備える、請求項74に記載のシステム。
【請求項76】
前記対称磁界を生成するための少なくとも1つの永久磁石をさらに備える、請求項71に記載のシステム。
【請求項77】
前記対称磁界を生成するための少なくとも1つの電磁石をさらに備える、請求項71に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2006−521006(P2006−521006A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509064(P2006−509064)
【出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/006536
【国際公開番号】WO2004/079765
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(592087647)ブリガム・ヤング・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRIGHAM YOUNG UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/006536
【国際公開番号】WO2004/079765
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(592087647)ブリガム・ヤング・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRIGHAM YOUNG UNIVERSITY
【Fターム(参考)】
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