説明

直交流型イオン移動度分析器

イオンをイオン源(22)から検出器(34)へ導くための流路(16)を形成し、且つ、流路(16)におけるイオン(36)の質量対帯電比を分離するための電場を作る少なくとも2つの電極(12、14)と、電場に対向する流体方向(28)とを含む直交流型イオン移動度分析器(CIMA)(12)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、荷電微粒子即ち原子、分子、微粒子、亜原子粒子及びイオンから導出される荷電微粒子のイオン移動度に従った、イオンの分離、貯蔵及び分析に関する。より詳しくは、本発明は、分析装置が化合物をそのイオン移動度に基づき識別する広範囲の化学物質を検知するのに使用されるイオン移動度分析装置である。
【0002】
関連技術の記述
本発明の利点を理解するためには、質量分析法の最新技術を検討することが有益である。荷電微粒子即ちイオン、分子、微粒子、亜原子粒子及び原子から導出される荷電微粒子(以後は集合的にイオンと呼ぶ)の化学分析は、質量電荷比に従ってそれらのイオン形態を分離することによって行うことができる。様々な種類の質量分析装置がある。各質量分析装置は、それ自身の独特な特性及び用途並びに限界も有している。飛行時間型(TOF)質量分析装置の場合、異なる質量電荷比のイオンがイオン源から検出器まで飛行チューブを通って移動するのに要する質量対電荷比(m/z)依存時間をTOF質量分析装置が測定する。この分析は、イオンが電場から自由な環境内を、予め決められた長さのチューブに沿って移動するのに要する飛行時間を測定することに基礎を置いている。
【0003】
飛行時間型質量分析装置は、イオンの電荷及び質量の特性に基づいて分析を行う。それに対して、イオン移動度質量分析装置(IMS)として知られている関連する技術は、イオンの分析を行うために分子の電荷、寸法及び形状(断面積)に依存する。
【0004】
IMSは、電場の影響下で緩衝ガスを通ってイオンがドリフトするときのイオン移動度に基づいてイオンが分離されるガス相電気泳動技術である。分析は、印加された電場内で、予め決められた長さのドリフト・チューブに沿ってイオンが移動するのに要するドリフト時間の測定に基づく。
【0005】
本発明の原理を理解するのに、理解しておくべき異なる種類のIMS計器が存在する。従来のIMSでは、電場はドリフト速度と電場の間の直線的な関係を作り出す。したがって、低下した移動度は一般に電場に無関係である。サンプルはイオン源を含むイオン化領域内に導入される。次いで、イオン化されたサンプルは、反対方向からしばしば導入される緩衝ガスと共に、ドリフト・チューブ内のドリフト領域内へと加速される。イオンはこの緩衝ガスを通ってドリフトするときに分離される。イオンの分離は、イオンの寸法、形状及び電荷に基づく。緩衝ガスを通ってドリフトするイオンは、検出器で記録される。一般に、従来のIMSシステムは低い電場を使用しており、低いデューティサイクルを有することを特徴とする。
【0006】
差動移動度分析(DMA)では、互いに直交する電場と流れ場との適用によるイオンの移動度に従ってイオンが分離される。異なる移動度のイオンは空間に分散されるので、選択された移動度のイオンのみが検出器スリットを通って移動する。DMAはしばしば、所与の寸法の微粒子を分析するためのエアゾール実験に使用される。
【0007】
最後の型式の移動度分析装置は、高電場非対称波形イオン移動度分光分析装置即ちFAIMSとして知られている。FAIMSでは、2つの同心状のチューブ又はプレートが一般に使用される。高電場が短時間加えられ、次いで低電場がそれより長い時間加えられて、平均の印加された電場は平衡する。FAIMSシステムの非直線性は、一般にチューブを通って又はプレートの間を通ってドリフトするイオンの異なる断面積に起因する。したがって、この方法は、イオンの低電場と比べて高電場の異なる移動度を利用している。
【0008】
FAIMSを説明する別の方法は、イオンの分離が電場の強度に対する移動度定数の非直線依存性に基づいていると言うことができる。高い電場値での移動度の変化は、イオンの寸法、緩衝ガスとのその相互作用、及びイオンの構造的剛性を反映しているように見える。したがって、低電場に対する高電場の移動度の比がFAIMSでのイオンの特性決定に使用される。
【0009】
上記の3つの技術によって説明したIMSはイオン分析の比較的高速な方法であり、非常に感受性が高く、中程度に選択的であり、低い検出限界を有する。しかしながら、IMSは、一般に、比較的低い分解能、限られた直線的なダイナミックレンジ、及び前に述べた低から中程度の選択性の故に、ほとんど注目を集めて来なかった。
【0010】
したがって、必要とされているのは、既存のIMS方法の欠点を克服するイオン移動度分析装置の新規な形態である。具体的には、更に高い感度、更に高い分解能、より正確な移動度、及び適格な検出を提供することができることは、最新技術のIMSに対する利点である。
【0011】
発明の概要
特定の動作モードで、既存のIMS方法より感受性の高いイオン移動度分光測定の方法を提供することが、本発明の1つの目的である。
【0012】
既存のIMS方法と比べて高い分解能を有するイオン移動度分光測定の方法を提供することが、本発明の別の目的である。
好ましい実施形態では、本発明は直交流型イオン移動度分析装置(CIMA)であり、通路内に確立される電場と対向するガス流の構成成分を含み、イオンは通路を通って運ばれ、特定の移動度を有するイオンがその通路内の対向する電場及び流れ場によって捕捉され、通路の端部に到達するとき検知される。その通路の端部における検出器が移動度の選択されたイオンの連続的な流れを確かめ、異なるイオンは電場及び/又は流れ場の速度を修正することによって選択される。
【0013】
本発明のこれらの及び他の目的、特徴、利点及び代替の態様は、この分野の技術者には、添付の図面と組合せて行われる以下の詳細な説明を考察することから明らかになるであろう。
【0014】
発明の詳細な説明
ここで図面について参照するが、図面には、本発明の様々な要素に数字の指定が与えられ、この分野の技術者が本発明を作って使用することができるように本発明が論じられる。理解されるように、以下の説明は本発明の原理の例示のみであり、特許請求の範囲を狭めるものであると見なすべきではない。
【0015】
本発明は、医薬、環境汚染物質、化学的又は生物学的戦争用物質、農薬及び石油化学物質を含む、広範囲の化学物質を検出できる直交流型イオン移動度分析装置(CIMA)である。この技術の差し迫っての必要性は、手荷物、荷物及び人間に存在する可能性のある爆発物の残留物に対する空港での検査である。別の有用な用途は、血液サンプルからのリポ蛋白質のサイズの特徴付けである。当分野の技術者には理解されるように、本発明のCIMAのための他の用途が存在する。
【0016】
IMSと同様に、本発明は、対象の検体から作り出されるイオンの移動度に基づいている。しかし、この新しい直交流型イオン移動度分析装置技術は、そのイオン移動度に基づいて成分を識別する動作の修正された原理を使用しており、従来の差動分析及びFAIMSを含むIMSの従来の実現形態の全てを凌駕する、高い感度と非常に高い分解能を約束する。その結果、本発明は化学物質の一層正確且つ適格な検出をもたらす。
【0017】
図1は、本発明の第1の実施の形態を示している。図1は、CIMA装置10の概略的な断面図である。このCIMA装置は、約6インチの長さの2つの同心状の金属シリンダ12、14の間の間隙又は空間によって形成されるドリフト領域(即ち直交流領域)を含む。理解されるように、シリンダを使用するこの第1の実施の形態は単なる例示である。
【0018】
本発明の代替実施形態は、その間に電場を作り出すことができる電極で2つの同心状のシリンダ12、14を置換することを含む。例えば、同心状の球体、一連の積み重ねられた電極、実質的に平行なプレート、及び、平行でないプレートも使用することができる。同心状のシリンダ12、14の第1の実施の形態の大きな利点の1つは、層流及び電場に対するエッジ効果を最小限にすることである。
【0019】
第1の実施の形態に戻ると、内側のシリンダ12は2インチの直径を、外側のシリンダ14は4インチの直径を有し、それによってシリンダ12と14の間に1インチの間隙16を置く。両シリンダ12、14の中間部分での4インチの長さは、直径で約0.0128インチである(各々約10000個の)穴18を含む。シリンダ12、14の厚さは約0.25インチである。シリンダ12、14の前端部は半球形のエンド・キャップ20を含む。エンド・キャップ20は、少なくとも、イオンをシリンダ12、14の間のガス直交流領域16に送る機能を担う。エンド・キャップ20を貫通する入口開口部22は、ガス直交流領域16で移動度によって分離されるべきイオンのための入口として機能する。
【0020】
エンド・キャップ20における入口開口部22は、典型的には、或るイオン源(図示せず)に結合される。理解されるように、CIMA装置10に供給するためのイオンを作り出すために任意の適切な雰囲気イオン化技術を使用することができる。以下は、幾つかの広く使用されているイオン化技術のリストである。電子衝撃、化学的イオン化、高速イオン/原子衝撃、電解脱離、レーザ脱離、プラズマ脱離、サーモスプレイ、電子スプレイ、光電離、誘導結合プラズマ、及び、大気圧イオン化。このリストは単なる例示と考えるべきであり、本発明のCIMA装置10にも使用できる可能性のある他の適切なイオン化システムを除外することを意図するものではない。
【0021】
代替の一つの実施の形態では、イオン化チャンバは入口開口部22に直接隣接して配置され、サンプルはシリンダ12、14内に引き込まれる前に入口開口部22で直ちにイオン化される。
【0022】
CIMA装置10は、以下に明らかにする本発明の動作に必要な適切な圧力及び一定のガス流を維持するためにシールされた囲い又はハウジング24に格納される。
第1の実施の形態の動作では、ハウジング24は最初に空気が排出され、窒素ガスに浸される。内側のシリンダ12及び外側のシリンダ14は、両方のシリンダ12、14が電極として働くように、(接地が電圧源と考えられた場合は)少なくとも2つの電圧源(図示せず)に接続される。シリンダ12、14は、第1のシリンダ12と第2のシリンダ14との間に電位を発生させるように、異なる電位に設定される。
【0023】
図1に示す例示の構成では、電位の所望の範囲は、一般に、数百から数千ボルトまで変化する。しかしながら、シリンダ12、14間にどのような大きさの電場が形成されようとも、平衡効果を作り出すのに足るほど十分に強くなければならない対向ガス流が存在することを念頭に置くべきである。それにも関わらず、本発明の望ましい性能に応じて、電位及び対向する流体の流れを増減させることが可能である。
【0024】
本発明が数百ボルト及び恐らくは数千ボルトの電位を使用して動作するということの重要性は注目に値する。このことの1つの意味は、本発明が少なくとも従来のシステム及びFAIMS、IMSシステムの一部をなす数万ボルトよりずっと操作し易い電圧で動作するということである。
【0025】
シリンダ12、14間の直交流領域16に形成される電場と並んで、本発明の重要な態様は、電場に対向するガスの直交流の生成である。したがって、ガス直交流の速度は、この分野の技術者に知られた任意の適切な値に設定される。ガス直交流は第1のシリンダ12へのガスの流れによって作り出されるものとして図1に示されている。このガス流は外側に向けられ、穴18を通って直交流領域16に入り、次いで第2のシリンダ14の穴18を通ってハウジング24の空間26に入る。このガス直交流は線28によって示されている。図1はベンチュリ空気装置30がガス直交流を第1のシリンダ12に導くのを示している。排気開口部32もハウジング24に示されている。
【0026】
この時点で説明できるいくつかの本発明の態様は、CIMA装置10の所望の性能に応じて、ハウジング24が通常の大気圧力で、高められた圧力で、或いは低減された圧力で動作することができることを含む。更に、CIMA装置10の或る領域を1つの圧力で動作させ、異なる領域を別の圧力で動作させることが可能である。例えば、ガス直交流領域16は第1の圧力であり、イオンは別の第2の圧力で動作する検出領域に引き込まれる。
【0027】
説明すべき本発明の別の態様は、ガスが内側のシリンダ12から外側のシリンダ14に移動するに従って、ガス直交流速度が減少することが認められることである。直ちに明らかなことではないが、電場の強さはガス直交流速度と同じ割合で変化する。したがって、選択された移動度のイオンの位置にかかわらず、平衡状態がシリンダ12、14間のガス直交流領域16で維持される。
【0028】
平衡状態を有するというこの概念に関連しているのは、高速走査という概念である。平衡状態は、イオンがCIMA装置10を通って移動するとき、同じ状態を続けることが必要である。しかしながら、CIMA装置10が走査を行うために使用されるとき、ガス直交流領域16の開始地点にあるとき平衡状態にあるイオンは、出口地点に到達するとき、電場が変化するので平衡を失ってしまう。例えば、低電圧から高電圧への走査を行うとき、イオンが出口地点に到達するまでは電圧は高すぎるので、イオンは平衡を失って追い出されてしまう。
【0029】
この問題の本発明での解決策は、走査を低電圧から高電圧まで行えることを前提とすると、任意の所与の瞬間において、出口点近くのイオンに対する電場が入口地点近くのイオンに対するものより小さくなるように電極(シリンダ12、14)を配列することである。明らかなように、走査方向が逆(即ち、高電圧から低電圧)である場合には、このプロセスを単に逆にすることが可能である。この動作を行う1つの方法は、電極を電気的に絶縁された部分に分割し、各々の部分に別々に電圧を加えることである。別の方法は、単に電極を非平行とすることである。どちらの手法であっても、その最終結果は、非平行状態の発生を補正するために所望の電圧勾配を作り出すことである。
【0030】
別の解決策は、ガス直交流速度を出口地点で入口地点より低くすることである。これは、システムを低電圧から高電圧に走査するために使用することを前提としている。この場合も、走査が逆方向(即ち、高電圧から低電圧)である場合には、このプロセスを単に逆にすることが可能であることは明らかである。
【0031】
最後の代替手段においては、所望の電圧勾配を作り出す方法をガス直交流速度の変化と結合することが可能である。
電場が2つのシリンダ12、14間に発生し、対向するガス直交流が同じ領域に作り出されるという、上で説明したCIMA装置10の動作により、本発明は捕捉モードで動作することが可能である。換言すれば、イオンを外へ移動させる力がない場合は、イオンはガス直交流領域16内に捕捉される。この捕捉モードは、ガス直交流領域16から例えばパルス・モードにおいて供給されるイオンを収集するために有用である。
【0032】
それにも関わらず、代替の実施の形態では、本発明は線36によって示す軸方向ガス流を作り出すことも含む。この軸方向ガス流もガス直交流領域16内で動作するが、ガス直交流とは独立に動作し、シリンダ12、14の長手軸に沿って実質的にガス直交流に垂直に流れる。しかし、正味のガス流は軸方向ガス流とガス直交流との組合せである。
【0033】
軸方向ガス流がCIMA装置10の分解能に影響することが観測される。軸方向ガス流が低速であればあるほど、予想される分解能は高くなる。
実質的には、イオンがサンプル入口開口部22においてシステムに注入されるとき、軸方向ガス流がイオンを中に引き込み、次いで、イオンを直交流領域16を通って運搬する。直交流領域16では、1方向に印加された電場と対向方向のガス直交流とを用いてイオンをその移動度に基づいて分離する。イオンをガス直交流領域16内に引き込むために真空ポンプを使用することができるけれども、他のシステムもこの効果を生じるために使用することができる。ガス直交流は、イオンをガス直交流領域16での空間において分離させて浮遊させるのを助ける。
【0034】
CIMA装置10が検知装置として機能しているとき、検出器34は通常はガス直交流領域16の端部に配設される。検出器34はゼロ電圧に維持され、その結果、ガス直交流領域16の高電場を離れるイオンは制御された電圧ゾーンに入り、干渉なしに崩壊して検出器に入り、そこで記録される。
【0035】
注目すべきは、第1の実施の形態が検出器34の前にいかなる種類のスリットも含まないことである。しかしながら、開口部をガス直交流領域16と検出器34との間に配設し、検出器34から別の検出器又は検出システムへと導くことができる。この開口部は1つのスリット、複数のスリット、孔などから構成される。
【0036】
CIMA装置10で使用されるガスに関しては、既に述べたとおり、窒素がガス直交流として使用される。窒素が選択されたのは、その不活性の故である。別の不活性ガスも使用可能である。しかしながら、本発明の別の態様では、改変ガスも選択することができる。改変ガスとは、イオンの輸送特性が前に述べたものとは異なるガスのことである。
【0037】
本発明の検討すべき別の態様は、温度の性能に対する影響である。それは、イオンが分離されつつある温度によってイオン移動度が影響され得るということである。したがって、イオン移動度は、イオンの温度が低下するか上昇するかに応じて、増加し又は低下し得る。
【0038】
本発明においては、前に述べたように、所与の移動度のイオンをガス直交流領域16に浮遊させることができる。イオンが浮遊したままである時間量は、シリンダ12、14の壁への拡散によって制限される。ここで使用する術語「拡散」は、この分野の技術者によって理解されるように、乱流又は分散拡散を示すことを意味する。図2は、これをどのように達成するかを示すために提供されている。これも、変更可能な電場又はガス直交流を有することと関連する。
【0039】
第1の実施の形態に示すCIMA装置10において、図2は、ガス直交流領域16でのイオンの浮遊を得るために、FをFに等しくすることに努力が向けられていることを示す。しかしながら、シリンダ12、14の壁に向かうイオンの拡散は、何等かの形式の収束方法によって制限され又は減少され得る。
【0040】
図2を参照すると、質量の保存は、装置に出入りする流れF1〜F4の正味流量がゼロであることを要する。したがって、このうちの任意の3つの流れは独立して制御することができる。このプロセスでは、ガス流F1はCIMA装置10に向かわなければならず、さもなければ、イオンはCIMA装置10に入ることが妨げられる。
【0041】
収束が達成される少なくとも2つの方法がある。本発明用の第1の収束方法はFをFより大きくすることである。この動作は、対向するシリンダ壁に向かってイオンを押しやる。イオンを間隙(直交流領域)において浮遊させるには、電場を少し増大させることが必要である。この組合せが収束効果を生み出す。収束位置は、電場又はガス直交流を調整することによって移動させることができる。所与の移動度範囲(通過帯域)のイオンは間隙内で収束され、範囲外のイオンは一方の又は他方の壁に押しやられ、検出器24には到達しない。ガス直交流領域16内に収束される各移動度値は、間隙内の異なる位置に収束される。
【0042】
本発明用の第2の収束方法は、小さな放物線状電位を電場に重ね合わせることによって達成される。この放物線状電位はガス直交流に対向する電場の摂動である。この電場を印加することは、前節における流れ場の変更に極めて類似している。しかしながら、理解されるように、収束はCIMA装置10の分解能を低下させるが伝達効率を増加させる。
【0043】
以下の事項は、本発明が基礎とする原理、所望の動作を裏付ける幾つかのシミュレーション結果を説明するものである。本発明の新規なCIMA装置10では、イオンは2つの対向する力、即ち、1つの方向における電場と逆方向における緩衝ガス流(ガス直交流)とがイオンに作用する領域において分離される。イオンは浮遊させられ、環状領域(ガス直交流領域16)の中央で分離される。
【0044】
イオンがシリンダの一端から他端へ浮遊して分離されるIMS技術と異なり、本発明のCIMA装置10では、イオンが環状領域のシリンダ壁の間を互いから離れて浮遊し(1つの方向での分離)、弱い軸方向ガス流によって注入点から検出器へ移動する(第2の方向、即ち「軸方向」での分離)ときに、分離が起きる。代わりに、弱い軸方向電場を電場に重ね合わせることができる。しかしながら、弱い軸方向電場よりも軸方向ガス流を発生させるほうが簡単であることが確認された。
【0045】
以下の式はガス直交流領域16を横切るイオンの分布を表したものである。したがって、この第1の式は、CIMA装置10の一態様の単純化されたモデルを示す実施可能な計算の単なる表示である。この単純化されたモデルは、式
【0046】
【数1】

【0047】
によって表される。ただし、Dは拡散係数、Cは検体の濃度、Vは流量でvとvとの和であり、vはガスの速度(ガス直交流速度)、vは(電場によって生じる)ドリフトの速度である。理解されるように、vは移動度と電場の関数(即ち、v=KE、ただしKは移動度定数、Eは電場強度)である。Dは(通常の拡散又は分散性拡散を仮定し、乱流拡散を仮定しないならば)式K=eD/kTによって移動度と関連付けられる。ただし、Kは移動度定数、eはイオンの電荷、kはボルツマン定数、Tはガス温度、Dは拡散係数である。
【0048】
適切な単位(Kはcm−1−1、Dはcm−1、Tはケルビン)を用いると、K=1.1605×10(D/T)である。微分方程式を解くと、2つのトライアル解、即ち「コサイン」及び「サイン」の解が得られる。それらは
【0049】
【数2】

【0050】
である。ただしnは境界間の半波形の数である。境界条件では、イオンは格納器の壁に衝突するとき失われるので、イオン濃度はゼロになる。壁の間の空間(即ち、ガス直交流領域16)内では、総イオン濃度は
【0051】
【数3】

【0052】
として表される。
初期濃度のうちのどれだけを検出器34に到達させるかが、この方法の伝達効率の尺度である。分解能は、僅かに異なる移動度のイオンと比較しての、サンプル・イオンがどれくらい良好に壁間で、及びシリンダ12、14間の通路(ガス直交流領域16)に沿って検出器34までに分離されるかということである。
【0053】
本発明のCIMA装置10はガス直交流が非対称AC電圧とリンクされるFAIMSと比較することができ、変化する静電場はFAIMSでの補償電圧と比較され得る。理論的な研究では、分解能1400を達成するために10cmのチューブに1000V/cmの電位が印加された。対向するガス流の浮遊効果により、実際にCIMAは一層選択的で分解能のある方法になる。
【0054】
CIMAのために数学モデルを開発し、次いでCIMA概念の原理を証明するためにシミュレーションをすることによって、予備的な作業を行った。幾つかの注入プロファイルが、ベータ分布関数を使用してシミュレーションされた。このベータ分布関数は、
【0055】
【数4】

【0056】
として与えられる。ただしα>0、β>0である。γ(α+β)は、
【0057】
【数5】

【0058】
として定義されるガンマ関数である。
例えば、図3における、選択されたα値及びβ値に依存する注入及び伝達プロファイルを以下考察する。サンプルがCIMA装置へ注入される時点のt=0では、図1の任意のプロファイルに適合するよう濃度をモデル化することが可能であり、
【0059】
【数6】

【0060】
が成り立つ。上記の式はA、Bの全ての値を最初に見出すことによって解かれ、それらの値を加算すると元のプロファイルが再生される。上記の式から、A及びBに対する解はそれぞれ以下のように与えられる。
【0061】
【数7】

【0062】
ただし、kは1から無限大までの値をとる。
シミュレーションを行う統計的なモデリングのためにコンピュータ・プログラムを使用した。注入プロファイルをシミュレートして、最適な入口スリットと、検体が注入孔から検出器へ移動するときの濃度減衰を再生する減衰プロファイルと、検出器スペクトル出力とを決定した。実際のシミュレーションでは、実際的な目的のために、級数は無限より小さな或る値で切り捨てられる。
【0063】
シミュレーションのために以下のパラメータが使用された。即ち、10cmのドリフト・シリンダ、3cmのプレート間隙、注入から検出器までの1秒の飛行時間、10cmの軸長、10m/sのガス直交流速度、及び、10kVの電圧。cm/V/sの換算移動度単位でのKを有する以下の化合物を使用した。即ち、メチルアミン、2.65;エチルアミン、2.36;ホルムアミド、2.45;ジエチルアミン、2.46;イソプロピルアミン、2.20。
【0064】
シミュレーションでは、等量の5つのサンプルがシステムに注入された。これらのプロットは幾つかの極めて興味深く且つ予期しない結果を示している。図1は、対向する場内での、即ち、ガス直交流及び対向する電場内での検体の伝達を示している。図3は、いかに多くのサンプル分布がガス直交流領域16に収束されるかを示す。
【0065】
図4は、1秒における典型的な減衰プロファイルを示す。99%前後の伝達効率が存在することに注目することは興味深いことである。この伝達効率は、注入された多くのサンプルが壁で消失されずに検出器に到達することを示している。
【0066】
図5は、走査された電場での検出器出力(即ち、走査移動度スペクトラム)を示す。分解能を計算すると、最大ピークの1/2のところで1400全幅の値が得られる。
シミュレーション結果、即ち、伝統的なIMS方法によって予見される又は達成される分解能の値より大きな分解能から、以下の概括が引き出される。0.01単位の換算移動度差を有する化合物を分離することができることをシミュレーションが示すので、高められた選択性が可能である。当初のサンプルの1%未満しか失われないので、選択された移動度の動作モードで動作するとき、伝統的なIMS方法により現在達成されるレベルと比較して、CIMAが検出限界を改善することを伝達効率は示している。
【0067】
本発明の代替の態様においては、理解されるように、本発明はガス相の装置ではあるが、本発明は液体と共に動作することができる。例えば、毛細管電気泳動と比較して、事実上いかなる電気浸透流も存在しない。更に、本発明は脈動システムではなく連続システムであるから、予備的分離並びに分析用分離に対して有用である。
【0068】
検出器に関しては、本発明は、ファラディ検出、電子増倍器、マルチ・チャンネル・プレート、電荷結合検出器、アレー検出器その他の、質量分析又は(衝突セルの有る又は無い)IMSを含む任意の検出方法に基づく検出器を使用することができる。分析装置及び検出器は、正又は負のイオンを別個に分離し検出することができ、又は、平行な直交流チャンネルを使用して正及び負のイオンを同時に分離し検出することができる。
【0069】
本発明は、単一のイオンを監視するように、又は、所定の移動度範囲にわたって走査される幾つかの選択されたイオンを同時に監視するように動作することができ、或いは、空間で同時に分離された全部のイオンを一斉に監視するアレー検出器と共に動作することができる。
【0070】
本発明の更なる態様は、FAIMSで実施されているものと同様に、CIMA装置10の電極間に非対称電気波形を印加することによって、追加の選択性を提供する能力を含む。しかしながら、ガス流はDC電場の代わりをするので、DC電場は不要である。加えて、本発明は、CIMA装置10の半分が電極間の直接のDC電圧で動作し、もう1つの半分が電極間の高電場非対称波形電位で動作するように構成することができる。更に、非対称波形をDC電位に重ね合わせることもできる。
【0071】
理解されるように、上で説明した構成は本発明の原理の応用の単なる例示である。当該分野の技術者ならば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多数の修正及び代替構成を考え出すことが可能である。特許請求の範囲は、そのような修正及び代替構成を包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】システムの電極として同心状のシリンダから構成される直交流型イオン移動度分光分析装置の第1の実施の形態を示す概略図である。
【図2】電極及びそれらの間の電場に対する流体の流れを示す図である。
【図3】直交流型イオン移動度システムからの注入及び伝達プロファイルを示すグラフである。
【図4】直交流型イオン移動度システムからの減衰プロファイルを示すグラフである。
【図5】直交流型イオン移動度システムからのイオン・スペクトルを示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電微粒子と、原子、分子、微粒子、亜原子粒子及びイオンから導出される荷電微粒子とのイオン移動度に従ってイオンを分離するための直交流型イオン移動度システムであって、
電場を作り出すように配設される少なくとも2つの電極と、
前記電場に実質的に対向する第1の流体流と、
を備える直交流型イオン移動度システム。
【請求項2】
前記第1の流体流がガスからなる、請求項1に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項3】
前記第1の流体流が液体からなる、請求項1に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項4】
前記少なくとも2つの電極が、前記第1の流体流に対して少なくとも部分的に透過性である、請求項1に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項5】
前記少なくとも2つの電極が、少なくとも2つの同心状のシリンダ、少なくとも2つの同心状の球、複数の積み重ねられたプレート、少なくとも2つの実質的に平行なプレート、及び、少なくとも2つの実質的に非平行なプレートからなる電極群から選択される、請求項4に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項6】
前記少なくとも2つの同心状のシリンダが、第1のシリンダと第2のシリンダとから構成され、前記第1のシリンダと前記第2のシリンダとの間の間隙がガス直交流領域を規定する、請求項5に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項7】
前記第1のシリンダと前記第2のシリンダが、それらを通る複数の開口部を含み、
前記複数の開口部が、前記第1のシリンダの内側からガス直交流がガス直交流領域及び前記第2のシリンダを通って外に出ることを可能にする、
請求項6に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項8】
前記第1のシリンダ及び前記第2のシリンダの第1の端部に結合されるエンド・キャップを更に備え、
前記エンド・キャップが、前記ガス直交流領域に供給されるべきイオンの入口として機能するシール部を前記第1の端部に作り出す、
請求項7に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項9】
前記エンド・キャップが、その端部に配設された入口開口部を更に備え、
前記入口開口部が前記ガス直交流領域に供給されるべきイオンを受け取る、
請求項8に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項10】
更に検出器を備える、請求項7に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項11】
前記検出器が、前記エンド・キャップと反対側の、前記第1のシリンダ及び前記第2のシリンダの第2の端部に配設される、請求項10に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項12】
前記検出器が、ファラディ検出器、電子増倍部、マルチ・チャンネル・プレート、質量分析器、他のイオン移動度分析装置、アレー検出器及び電荷結合検出器からなる検出器群から選択される、請求項11に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項13】
更にハウジングを備え、
前記第1のシリンダ及び前記第2のシリンダが前記ハウジング内に配設され、それによって流体流を制御する、
請求項12に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項14】
第1の流体流が前記ガス直交流領域を通る、請求項13に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項15】
更に第2の流体流を備え、
前記第2の流体流が実質的に前記第1の流体流に垂直であり、
前記第2の流体流が前記第1のシリンダ及び前記第2のシリンダの長軸と一般的に平行である、
請求項14に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項16】
更にイオン源を備え、
前記イオン源が、イオンを供給するために前記入口開口部に隣接して配設される、
請求項15に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項17】
更に電圧源を備え、
前記電圧源が前記少なくとも2つの電極に結合され、それによって電場の生成を可能にする、
請求項1に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項18】
前記ハウジングが、前記システムが高められた圧力、大気圧又は減圧された圧力で動作できるように、気密シールを更に備える、請求項16に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項19】
前記ハウジングが断熱された装置を更に備え、前記システムが高められた温度、室温及び低下させた温度で動作できる、請求項18に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項20】
前記第1の流体流の速度を増減させる手段を更に備える、請求項19に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項21】
前記第2の流体流の速度を増減させる手段を更に備える、請求項20に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項22】
前記少なくとも2つの電極の電位を増減させる手段を更に備え、それによって前記電場を増減させることができる、請求項21に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項23】
前記第1の流体流の前記ガスが、不活性ガスから構成されるガス群から選択される、請求項2に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項24】
前記第1の流体流の前記ガスが、改変ガスから構成されるガス群から選択され、
改変ガスがイオンの輸送特性が変更されたガスである、
請求項2に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項25】
イオンを分析する手段を更に備え、
分析する前記手段が、前記システムを少なくとも1つの公知の移動度のイオンのみを通過させる能力を含む、
請求項1に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項26】
イオンを測定する手段を更に備え、
測定する前記手段が、イオン移動度の範囲を走査し、特定のイオン移動度ピークを選択し、前記の選択されたイオン移動度ピークをガス直交流速度及び前記対向する電場と関係付ける能力を含む、
請求項1に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項27】
高電場非対称波形を発生させる手段を更に備える、請求項1に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項28】
新規な流体流を更に備え、
正味流体流が前記第1の流体流と前記第2の流体流の組合せである、
請求項15に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項29】
前記システムが化学的分析及び物理的分析も行い、
更に、
サンプルからイオンを前記直交流型イオン移動度システムに導入する手段と、
前記サンプルから前記イオンを検出する手段と、
前記サンプルから、選択されたイオン移動度の尺度を得る手段と、
前記サンプルからの選択されたイオン移動度の前記尺度を化学的同一性又は少なくとも1つの物理的性質と関係付ける手段と、
を備える、請求項1に記載の直交流型イオン移動度システム。
【請求項30】
荷電微粒子と、原子、分子、微粒子、亜原子粒子及びイオンから導出される荷電微粒子とのイオン移動度に従ってイオンを分離する方法であって、
1)電場を作り出すことができるように配設される少なくとも2つの電極、及び、前記電場に実質的に対向する第1の流体流から構成される直交流型イオン移動度システムを設けるステップと、
2)イオンの電荷、寸法及び断面積に基づいて前記イオンを分離するステップと、
から構成される方法。
【請求項31】
前記第1の流体流をガスから生成するステップを更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1の流体流を液体から生成するステップを更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも2つの電極を前記第1の流体流に対して少なくとも部分的に透過性に作り、それによって前記システムにおいて流体直交流の生成を可能にするステップを更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記少なくとも2つの電極を、少なくとも2つの同心状のシリンダ、少なくとも2つの同心状の球、複数の積み重ねられたプレート、少なくとも2つの実質的に平行なプレート及び少なくとも2つの実質的に非平行なプレートからなる前記電極群から選択するステップを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
更に、
1)前記少なくとも2つ電極として、同心状の第1及び第2のシリンダを選択するステップと、
2)前記第1のシリンダと前記第2のシリンダとの間に、前記イオンがイオン移動度に従って分離されるガス直交流領域としての間隙を画成するステップと、
を更に含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1のシリンダと前記第2のシリンダを通る複数の開口部を作り、それによって、ガス直交流が前記第1のシリンダの内側から前記ガス直交流領域及び前記第2のシリンダの前記複数の開口部を通って外に出ることを可能にするステップを更に含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
エンド・キャップを前記第1のシリンダ及び前記第2のシリンダの第1の端部に結合させ、前記エンド・キャップが前記第1の端部において、前記ガス直交流領域に供給すべきイオンの入口として機能するシール部を作るステップを更に含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
その端部に、前記ガス直交流領域に供給されるべきイオンを受ける入口開口部を配設するステップを更に含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
イオン検出器を設けるステップを更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記検出器を前記エンド・キャップとは反対側の、前記第1のシリンダ及び前記第2のシリンダの第2の端部に配設するステップを更に含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記検出器をファラディ検出器、電子増倍部、マルチ・チャンネル・プレート、質量分析器、イオン移動度分析装置、アレー検出器及び電荷結合検出器からなる前記検出器群から選択するステップを更に含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第1のシリンダ及び前記第2のシリンダの周りにハウジングを配設し、そこの流体流を制御するステップを更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第1の流体流を前記ガス直交流を通して導くステップを更に含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
実質的に前記第1の流体流に垂直である第2の流体流を設け、前記第2の流体流が前記第1のシリンダ及び前記第2のシリンダの長軸と一般的に平行であるステップを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
イオンを供給するために前記入口開口部に隣接して配設されるイオン源を配置するステップを更に含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
電場を作り出すことができるように、前記少なくとも2つの電極に接続されるス電圧源を設けるステップを更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項47】
前記システムが高められた圧力、大気圧又は低減された圧力で動作するように、前記ハウジングのための気密シールを作るステップを更に含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記システムが高められた温度、室温及び低下させた温度で動作してイオン移動度を変えるように、前記ハウジングを断熱するステップを更に含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記第1の流体流の速度を増減させ、それによってイオン移動度を変える手段を設けるステップを更に含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記第2の流体流の速度を増減させる手段を設けるステップを更に含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記少なくとも2つの電極の電位を増減させて前記電場を増減させ、イオン移動度を変える手段を設けるステップを更に含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記第1の流体流を不活性ガスから構成される前記ガス群から選択するステップを更に含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記第1の流体流を、イオンの輸送特性が変更されるガスである改変ガスから構成されるガス群から選択するステップを更に含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
少なくとも1つの公知の移動度のイオンのみを前記システムが通過させるようにする能力を含む、イオンを分析する手段を設けるステップを更に含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
更に、
1)イオンを測定する手段を設けるステップと、
2)イオン移動度の範囲を走査するステップと、
3)特定のイオン移動度ピークを選択するステップと、
4)前記の選択されたイオン移動度ピークをガス直交流速度及び前記対向する電場と関係付けるステップと、
を含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
サンプルに化学的分析及び物理的分析を行うステップを更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項57】
更に、
1)サンプルからイオンを前記直交流型イオン移動度システムに導入するステップと、
2)前記サンプルから前記イオンを検出するステップと、
3)前記サンプルから、選択されたイオン移動度の尺度を得るステップと、
4)前記サンプルからの前記選択されたイオン移動度の尺度を化学的同一性又は少なくとも1つの物理的性質と関係付けるステップと、
を更に含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
医薬、環境汚染物質、化学的又は生物学的戦争用物質、農薬、爆発物及び石油化学物質から構成される化学物質群から選択される広範囲の化学物質を検出するステップを更に含む、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
血液サンプルからのリポ蛋白質のサイズを特徴付けるステップを更に含む、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
前記ガス直交流領域に入るとき平衡しているイオンが、前記電場が変化するため排斥されないように、前記ガス直交流領域を通ってイオンが移動するとき平衡を維持させるステップを更に含む、請求項30に記載の方法。
【請求項61】
低電圧から高電圧への走査をするとき、前記ガス直交流領域の出口点近くのイオンに対する前記電場が前記ガス直交流領域の入口点近くのイオンに対するよりも所与の時間において小さくなるように、前記少なくとも2つの電極を配置するステップを更に含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
高電圧から低電圧への走査をするとき、前記ガス直交流領域の出口点近くのイオンに対する前記電場が前記ガス直交流領域の入口点近くのイオンに対するよりも所与の時間において大きくなるように、前記少なくとも2つの電極を配置するステップを更に含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記少なくとも2つの電極を複数の別個の区画に分割することによって、所望の電圧勾配を生成するステップを更に含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
非平行な電極を使用することによって、所望の電圧勾配を生成するステップを更に含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
低電圧から高電圧への走査をするとき、前記出口点でのガス直交流速度を前記入口点での速度より低くするステップを更に含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
高電圧から低電圧への走査をするとき、前記出口点でのガス直交流速度を前記入口点での速度より高くするステップを更に含む、請求項65に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−523007(P2006−523007A)
【公表日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509934(P2006−509934)
【出願日】平成16年4月9日(2004.4.9)
【国際出願番号】PCT/US2004/011235
【国際公開番号】WO2004/092705
【国際公開日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(592087647)ブリガム・ヤング・ユニバーシティ (34)
【氏名又は名称原語表記】BRIGHAM YOUNG UNIVERSITY
【Fターム(参考)】