直動機構
【課題】被直動部材の一定量の移動を常に正確に行なわせることができ、信頼性の高い直動機構を提供すること。
【解決手段】駆動パルスによって回転させられるステッピングモータ2と、このステッピングモータ2からの回転力によって回転させられる最終段の回転軸5と、この最終段の回転軸5によって直動させられる被直動部材6とを有する直動機構1において、前記ステッピングモータ2に付与する駆動パルス数を出力軸を整数回転または整数分の1回転させる数に設定し、前記ステッピングモータ2が整数回転すると前記最終段の回転軸5を整数回転させるようにステッピングモータ2の回転を最終段の回転軸5に伝達する回転伝達手段4を設けたことを特徴とする直動機構。
【解決手段】駆動パルスによって回転させられるステッピングモータ2と、このステッピングモータ2からの回転力によって回転させられる最終段の回転軸5と、この最終段の回転軸5によって直動させられる被直動部材6とを有する直動機構1において、前記ステッピングモータ2に付与する駆動パルス数を出力軸を整数回転または整数分の1回転させる数に設定し、前記ステッピングモータ2が整数回転すると前記最終段の回転軸5を整数回転させるようにステッピングモータ2の回転を最終段の回転軸5に伝達する回転伝達手段4を設けたことを特徴とする直動機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動機構に係り、ステッピングモータによって被直動部材を往復駆動させる直動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ステッピングモータによって被直動部材を往復駆動させる直動機構は各種の技術分野において多用されている。
【0003】
その構成は、ステッピングモータの出力を減速機によって減速すると共に、最終段の回転軸にねじ、ボールねじ、カム機構、ヘリコイド機構等を用いて回転を直線運動に変えている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−112520号公報
【特許文献2】特開2005−227738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の直動機構においては、ステッピングモータや、ステッピングモータの回転を最終段の回転軸に伝達する減速機を含めた歯車群には、制作誤差等の理由により回転に振れ(むら)がある。更に、従来においては、ステッピングモータや歯車群を整数回転させることなく被直動部材を移動させるように形成されているために、例えば、一定距離だけ被直動部材を移動させる場合には、毎回の移動距離が相違し、精度が悪いという不都合があった。
【0006】
特に、例えば、数十ミクロンリットルの液体を吸入・排出するシリンジのピストンの移動を従来の直動機構によって行なう場合には、液体の吸入・排出する量が毎回異なるという不都合があった。
【0007】
更に、最終段の回転軸によって被直動部材に対して移動力を付与するとその反力が最終段の回転軸に作用するが、従来においてはこの反力を十分に支承することとができず、被直動部材を精度よく移動させることができなかった。
【0008】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、被直動部材の一定量の移動を常に正確に行なわせることができ、信頼性の高い直動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明の直動機構は、駆動パルスによって回転させられるステッピングモータと、このステッピングモータからの回転力によって回転させられる最終段の回転軸と、この最終段の回転軸によって直動させられる被直動部材とを有する直動機構であって、前記被直動部材を、最終段の回転軸に形成されている螺部に雌螺部をもって螺合していて、最終段の回転軸の正逆回転により往復動させられるように形成し、最終段の回転軸の被直動部材が取り付けられている軸端部と反対側の軸端部がR形状で形成されたスラスト軸受けとされていることを特徴とする。
【0010】
このように最終段の回転軸の被直動部材が取り付けられている軸端部と反対側の軸端部がR形状で形成されたスラスト軸受けとすることにより、当該回転軸の振れによる回転軸のスラスト方向の移動を防止することができ、被直動部材が当該回転軸の正逆回転により精度良く往復動させられ、更に、当該回転軸の軸端部を支承しているスラスト軸受けにより被直動部材を介して付与される反力を受けることにより、被直動部材を螺部によって直動させる場合の回転摺動負荷を小さく抑えることができる。
【0011】
また、本発明の直動機構においては、駆動パルスによって回転させられるステッピングモータと、このステッピングモータからの回転力によって回転させられる最終段の回転軸と、この最終段の回転軸によって直動させられる被直動部材とを有する直動機構において、前記ステッピングモータに付与する駆動パルス数を出力軸を整数回転または整数分の1回転させる数に設定し、前記ステッピングモータが整数回転すると前記最終段の回転軸を整数回転させるようにステッピングモータの回転を最終段の回転軸に伝達する回転伝達手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
このように構成することにより、ステッピングモータを常にその出力軸を整数回転若しくは整数分の1回転させることができ、更に、前記出力軸を所定の整数回転させると最終段の回転軸も整数回転するので、回転伝達系における振れの誤差に影響されることなく前記最終段の回転軸を整数回転させることができ、被直動部材を精度良く移動させることができる。
【0013】
また、本発明の直動機構においては、前記ステッピングモータに付与する駆動パルス数を出力軸を整数回転または整数分の1回転させる数に設定し、前記ステッピングモータが整数回転すると前記最終段の回転軸を整数回転させるようにステッピングモータの回転を最終段の回転軸に伝達する回転伝達手段を設けるとともに、更に、被直動部材が、最終段の回転軸に形成されている螺部に雌螺部をもって螺合していて、回転軸の正逆回転により往復動させられるように形成されており、最終段の回転軸の被直動部材が取り付けられている軸端部と反対側の軸端部がR形状で形成されたスラスト軸受けとされていることを特徴とする。
【0014】
このように構成することにより、ステッピングモータを常にその出力軸を整数回転若しくは整数分の1回転させることができ、更に、前記出力軸を所定の整数回転させると最終段の回転軸も整数回転するので、回転伝達系における振れの誤差に影響されることなく前記最終段の回転軸を整数回転させることができ、被直動部材を精度良く移動させることができるとともに、最終段の回転軸の被直動部材が取り付けられている軸端部と反対側の軸端部がR形状で形成されたスラスト軸受けとすることにより、当該回転軸の振れによる回転軸のスラスト方向の移動を防止することができ、被直動部材が当該回転軸の正逆回転により精度良く往復動させられ、更に、当該回転軸の軸端部を支承しているスラスト軸受けにより被直動部材を介して付与される反力を受けることにより、被直動部材を螺部によって直動させる場合の回転摺動負荷を小さく抑えることができる。
【0015】
また、本発明の直動機構においては、回転伝達手段をステッピングモータの回転を減速する減速機と、減速機の出力を最終段の回転軸に伝達する歯車群とにより形成し、前記減速機をステッピングモータの回転を整数分の1に減速するように形成したことを特徴とする。
【0016】
このように構成することにより、減速機と歯車群とによってステッピングモータの回転を最終段の出力軸に伝達して、最終段の回転軸を整数回転させることができ、被直動部材を精度良く移動させることができる。
【0017】
また、本発明の直動機構においては、減速機が遊星歯車機構により形成されていることを特徴とする。
【0018】
このように構成することにより、ステッピングモータの回転を正確に減速することができる。
【0019】
また、本発明の直動機構においては、ステッピングモータの駆動パルスを、最終段の回転軸が整数回転または整数分の1回転する場合の前記被直動部材の移動量を均一とさせる数に補正する補正テーブルを備えていることを特徴とする。
【0020】
このように構成することにより、最終段の回転軸を整数回転または整数分の1回転させることにより、被直動部材を常に均一に移動させることができる。
【0021】
また、本発明の直動機構においては、被直動部材を流体を吸入・排出するピストンとしたことを特徴とする。
【0022】
このように構成することにより、被直動部材を精度良く往復動させることにより液体や気体等の流体を精度良く吸入・排出させることができる。
【発明の効果】
【0023】
このように本発明の直動機構は構成され作用するものであるから、被直動部材の一定量の移動を常に正確に行なわせることができ、信頼性が高いという優れた作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態を図1および図2について説明する。
【0025】
図1は本発明の直動機構の1実施形態を示している。
【0026】
本実施形態の直動機構1は、図1に示すように、流体としての液体を吸入・排出するように適用した例を示している。
【0027】
この直動機構1は基部並びにハウジングとなる本体1aに構成各部を装着して形成されており、駆動源としてのステッピングモータ2を有している。このステッピングモータ2の出力軸2aには、遊星歯車方式の減速機3が接続されている。減速機3の出力軸3aと平行に最終段の回転軸5が平行に設けられている。減速機3の出力軸3aの回転は、歯車群4によって回転軸5に対して伝達されるようになっている。本実施形態においては、歯車群4は減速機3の出力軸3aに固着された歯車4aと、中間歯車4bと、回転軸5に固着された歯車4cとによって形成されている。回転軸5はその中間部を本体1aに内蔵した支承部材1bによって回転自在に支承されており、その支承部より左側部分には螺部5aが形成されており、その螺部5aには被直動部材6が中心軸部の雌螺部6aを螺合させることにより軸方向に往復移動自在に装着されている。被直動部材6は、本体1aによって形成されているシリンダ8内に回転不可能であり、かつ、軸方向移動自在に支持されており、その被直動部材6の左端部にはピストン7が固着されている。シリンダ8の先端部には液体を吸入・排出するための針(図示せず)が装着される。回転軸5の右端部は、被直動部材6を移動させる場合の反力を受けるためにスラスト軸受け10によって支承されている。本実施形態においては、図2に示すように、構成を簡単にするために、回転軸5の右端部をR形状の突起状に形成するとともに本体1aの平坦な内面によって支承している。スラスト軸受け10のR形状の突起部と本体1aの平坦な内面に摺動抵抗を低減するためにフッ素樹脂をコーティングしてある。
【0028】
ステッピングモータ2、減速機3、歯車群4は、回転中心の偏芯である振れの誤差をもち、これが回転角度誤差につながる。また、回転軸5の回転を被直動部材6の直動に変換する螺部5a、6aにおいても、振れによる誤差が出るため、直線移動時の変位誤差につながる。
【0029】
本実施形態の直動機構においては、これらの誤差を解消させるために、ステッピングモータ2に付与する駆動パルス数を出力軸2aを整数回転または整数分の1回転させる数に設定し、更に、ステッピングモータ2の回転を最終段の回転軸5に伝達する回転伝達手段としての減速機3および歯車群4を、ステッピングモータ2が整数回転すると最終段の回転軸5を整数回転させる歯数比に形成している。
【0030】
本実施形態においては、ステッピングモータ2、減速機3、歯車群4、螺部5a、6aがちょうど1回転する場合は、振れの誤差は回転角度に影響せず、回転角度は360度となることを利用することにより、前記の誤差の発生を防止している。具体的には、被直動部材6を所定量の送り動作を繰り返すように駆動させることとし、ステッピングモータ2に連結する減速機3の減速比を整数で構成し、ステッピングモータ2、減速機3、歯車群4、螺部5a、6aがほぼ整数回転するようにステッピングモータ2の駆動パルス数を設定することにより、回転体の偏芯による角度誤差をキャンセルさせている。これによって、被直動部材6は高精度の直動の送り作用によって往復動させられる。更に、本実施形態においては、ピストン8によって、液体を精密に吸入・排出させることができる。
【0031】
本実施形態においては、螺部5a、6aにより回転軸5の回転を被直動部材6の直動に変換した場合に、回転軸5を軸方向に移動させる反力が発生する。その反力は回転軸5の被直動部材6螺合されている部分と反対向き(本実施形態においては右向き)に発生する。この反力は、それを受ける部分との回転摺動負荷により、回転軸5の回転精度や回転トルクに影響を及ぼす。そこで、本実施形態においては、回転軸5の右端部をR形状の突起状としたスラスト軸受け10によって支承して、回転軸5の振れによる回転軸5のスラスト方向の移動を防止するとともに回転摺動負荷を最小限に安定して抑えるようにしている。
【0032】
また、本実施形態においては、ステッピングモータ2の駆動パルスを、最終段の回転軸5が整数回転または整数分の1回転する場合の被直動部材6の移動量を均一とさせる数に補正する補正テーブルを備えている。前述したように、本実施形態においては、回転軸5の回転を被直動部材6の直動に変換する螺部5a、6aもこの回転軸5が所定量動作のほぼ整数倍で1回転するように形成されているので、予め螺部5a、6aの直動変位量の誤差(ピッチの誤差に相当)を測定してそれを補正するように、ステッピングモータの各所定量毎の駆動パルス数を補正する補正テーブルを備えている。これにより回転軸5の回転を被直動部材6の直動に変換する螺部5a、6aの誤差を補正することができる。
【0033】
次に、本実施形態の具体的動作を説明する。
【0034】
ステッピングモータ2は20ステップ(20駆動パルス数)で1回転する分解能とし、このモータ2と同軸上に連結する減速機3の減速比を1/8とする。また、減速機3の出力軸3aに固着されている歯車4aの歯数は12、中間歯車4bの歯数は20、回転軸5に固着されている歯車4cの歯数は48としている。
【0035】
このとき、直動機構1の所定量の動作を160ステップとすると、ステッピングモータ2は8回転、減速機3の出力軸3aはちょうど1回転することになり、ステッピングモータ2の回転の振れの誤差や減速機3の回転角度誤差はキャンセルされる。
【0036】
このときの最終段の歯車4cは1/4回転となり、所定量を4回進む毎に1回転する。この所定量は、図3の模式図に示すように、1)から4)の順番に、回転角度が常に同じ位置となる。従って、回転軸5の回転を被直動部材6の直動に変換する螺部5a、6aのピッチの誤差を予め測定し、回転軸5が整数回転または整数分の1回転する場合の被直動部材6の移動量を均一とさせるようにステッピングモータ2の駆動パルス数を補正するとよい。実際には、下記の表1に示すような補正テーブルを備え、当該表1に従って補正するとよい。また、螺部5a、6aの振れの誤差の場合は1回転毎に周期性をもつので、この補正値は表1中の4つの回転位置分だけ設定すればよい。
【0037】
【表1】
【0038】
このように本実施形態によれば、被直動部材6の一定量の移動を常に正確に行なわせることができ、信頼性の高い直動機構1を得ることができる。
【0039】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができる。
【0040】
例えば、回転軸5の回転運動を被直動部材6の直進運動に変換する螺部5a、6aに代えて、従来のようにボールねじ、カム機構、ヘリコイド機構を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の直動機構の1実施形態を示す断面図
【図2】最終段の回転軸のスラスト軸受け部分の拡大図
【図3】最終段の回転軸の回転周期性を示す模式図
【符号の説明】
【0042】
1 直動機構
2 ステッピングモータ
2a 出力軸
3 減速機
4 歯車群
5 最終段の回転軸
5a 螺部
6 被直動部材
6a 螺部
7 プランジャ
8 シリンダ
【技術分野】
【0001】
本発明は、直動機構に係り、ステッピングモータによって被直動部材を往復駆動させる直動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ステッピングモータによって被直動部材を往復駆動させる直動機構は各種の技術分野において多用されている。
【0003】
その構成は、ステッピングモータの出力を減速機によって減速すると共に、最終段の回転軸にねじ、ボールねじ、カム機構、ヘリコイド機構等を用いて回転を直線運動に変えている(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−112520号公報
【特許文献2】特開2005−227738号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の直動機構においては、ステッピングモータや、ステッピングモータの回転を最終段の回転軸に伝達する減速機を含めた歯車群には、制作誤差等の理由により回転に振れ(むら)がある。更に、従来においては、ステッピングモータや歯車群を整数回転させることなく被直動部材を移動させるように形成されているために、例えば、一定距離だけ被直動部材を移動させる場合には、毎回の移動距離が相違し、精度が悪いという不都合があった。
【0006】
特に、例えば、数十ミクロンリットルの液体を吸入・排出するシリンジのピストンの移動を従来の直動機構によって行なう場合には、液体の吸入・排出する量が毎回異なるという不都合があった。
【0007】
更に、最終段の回転軸によって被直動部材に対して移動力を付与するとその反力が最終段の回転軸に作用するが、従来においてはこの反力を十分に支承することとができず、被直動部材を精度よく移動させることができなかった。
【0008】
本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、被直動部材の一定量の移動を常に正確に行なわせることができ、信頼性の高い直動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために本発明の直動機構は、駆動パルスによって回転させられるステッピングモータと、このステッピングモータからの回転力によって回転させられる最終段の回転軸と、この最終段の回転軸によって直動させられる被直動部材とを有する直動機構であって、前記被直動部材を、最終段の回転軸に形成されている螺部に雌螺部をもって螺合していて、最終段の回転軸の正逆回転により往復動させられるように形成し、最終段の回転軸の被直動部材が取り付けられている軸端部と反対側の軸端部がR形状で形成されたスラスト軸受けとされていることを特徴とする。
【0010】
このように最終段の回転軸の被直動部材が取り付けられている軸端部と反対側の軸端部がR形状で形成されたスラスト軸受けとすることにより、当該回転軸の振れによる回転軸のスラスト方向の移動を防止することができ、被直動部材が当該回転軸の正逆回転により精度良く往復動させられ、更に、当該回転軸の軸端部を支承しているスラスト軸受けにより被直動部材を介して付与される反力を受けることにより、被直動部材を螺部によって直動させる場合の回転摺動負荷を小さく抑えることができる。
【0011】
また、本発明の直動機構においては、駆動パルスによって回転させられるステッピングモータと、このステッピングモータからの回転力によって回転させられる最終段の回転軸と、この最終段の回転軸によって直動させられる被直動部材とを有する直動機構において、前記ステッピングモータに付与する駆動パルス数を出力軸を整数回転または整数分の1回転させる数に設定し、前記ステッピングモータが整数回転すると前記最終段の回転軸を整数回転させるようにステッピングモータの回転を最終段の回転軸に伝達する回転伝達手段を設けたことを特徴とする。
【0012】
このように構成することにより、ステッピングモータを常にその出力軸を整数回転若しくは整数分の1回転させることができ、更に、前記出力軸を所定の整数回転させると最終段の回転軸も整数回転するので、回転伝達系における振れの誤差に影響されることなく前記最終段の回転軸を整数回転させることができ、被直動部材を精度良く移動させることができる。
【0013】
また、本発明の直動機構においては、前記ステッピングモータに付与する駆動パルス数を出力軸を整数回転または整数分の1回転させる数に設定し、前記ステッピングモータが整数回転すると前記最終段の回転軸を整数回転させるようにステッピングモータの回転を最終段の回転軸に伝達する回転伝達手段を設けるとともに、更に、被直動部材が、最終段の回転軸に形成されている螺部に雌螺部をもって螺合していて、回転軸の正逆回転により往復動させられるように形成されており、最終段の回転軸の被直動部材が取り付けられている軸端部と反対側の軸端部がR形状で形成されたスラスト軸受けとされていることを特徴とする。
【0014】
このように構成することにより、ステッピングモータを常にその出力軸を整数回転若しくは整数分の1回転させることができ、更に、前記出力軸を所定の整数回転させると最終段の回転軸も整数回転するので、回転伝達系における振れの誤差に影響されることなく前記最終段の回転軸を整数回転させることができ、被直動部材を精度良く移動させることができるとともに、最終段の回転軸の被直動部材が取り付けられている軸端部と反対側の軸端部がR形状で形成されたスラスト軸受けとすることにより、当該回転軸の振れによる回転軸のスラスト方向の移動を防止することができ、被直動部材が当該回転軸の正逆回転により精度良く往復動させられ、更に、当該回転軸の軸端部を支承しているスラスト軸受けにより被直動部材を介して付与される反力を受けることにより、被直動部材を螺部によって直動させる場合の回転摺動負荷を小さく抑えることができる。
【0015】
また、本発明の直動機構においては、回転伝達手段をステッピングモータの回転を減速する減速機と、減速機の出力を最終段の回転軸に伝達する歯車群とにより形成し、前記減速機をステッピングモータの回転を整数分の1に減速するように形成したことを特徴とする。
【0016】
このように構成することにより、減速機と歯車群とによってステッピングモータの回転を最終段の出力軸に伝達して、最終段の回転軸を整数回転させることができ、被直動部材を精度良く移動させることができる。
【0017】
また、本発明の直動機構においては、減速機が遊星歯車機構により形成されていることを特徴とする。
【0018】
このように構成することにより、ステッピングモータの回転を正確に減速することができる。
【0019】
また、本発明の直動機構においては、ステッピングモータの駆動パルスを、最終段の回転軸が整数回転または整数分の1回転する場合の前記被直動部材の移動量を均一とさせる数に補正する補正テーブルを備えていることを特徴とする。
【0020】
このように構成することにより、最終段の回転軸を整数回転または整数分の1回転させることにより、被直動部材を常に均一に移動させることができる。
【0021】
また、本発明の直動機構においては、被直動部材を流体を吸入・排出するピストンとしたことを特徴とする。
【0022】
このように構成することにより、被直動部材を精度良く往復動させることにより液体や気体等の流体を精度良く吸入・排出させることができる。
【発明の効果】
【0023】
このように本発明の直動機構は構成され作用するものであるから、被直動部材の一定量の移動を常に正確に行なわせることができ、信頼性が高いという優れた作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態を図1および図2について説明する。
【0025】
図1は本発明の直動機構の1実施形態を示している。
【0026】
本実施形態の直動機構1は、図1に示すように、流体としての液体を吸入・排出するように適用した例を示している。
【0027】
この直動機構1は基部並びにハウジングとなる本体1aに構成各部を装着して形成されており、駆動源としてのステッピングモータ2を有している。このステッピングモータ2の出力軸2aには、遊星歯車方式の減速機3が接続されている。減速機3の出力軸3aと平行に最終段の回転軸5が平行に設けられている。減速機3の出力軸3aの回転は、歯車群4によって回転軸5に対して伝達されるようになっている。本実施形態においては、歯車群4は減速機3の出力軸3aに固着された歯車4aと、中間歯車4bと、回転軸5に固着された歯車4cとによって形成されている。回転軸5はその中間部を本体1aに内蔵した支承部材1bによって回転自在に支承されており、その支承部より左側部分には螺部5aが形成されており、その螺部5aには被直動部材6が中心軸部の雌螺部6aを螺合させることにより軸方向に往復移動自在に装着されている。被直動部材6は、本体1aによって形成されているシリンダ8内に回転不可能であり、かつ、軸方向移動自在に支持されており、その被直動部材6の左端部にはピストン7が固着されている。シリンダ8の先端部には液体を吸入・排出するための針(図示せず)が装着される。回転軸5の右端部は、被直動部材6を移動させる場合の反力を受けるためにスラスト軸受け10によって支承されている。本実施形態においては、図2に示すように、構成を簡単にするために、回転軸5の右端部をR形状の突起状に形成するとともに本体1aの平坦な内面によって支承している。スラスト軸受け10のR形状の突起部と本体1aの平坦な内面に摺動抵抗を低減するためにフッ素樹脂をコーティングしてある。
【0028】
ステッピングモータ2、減速機3、歯車群4は、回転中心の偏芯である振れの誤差をもち、これが回転角度誤差につながる。また、回転軸5の回転を被直動部材6の直動に変換する螺部5a、6aにおいても、振れによる誤差が出るため、直線移動時の変位誤差につながる。
【0029】
本実施形態の直動機構においては、これらの誤差を解消させるために、ステッピングモータ2に付与する駆動パルス数を出力軸2aを整数回転または整数分の1回転させる数に設定し、更に、ステッピングモータ2の回転を最終段の回転軸5に伝達する回転伝達手段としての減速機3および歯車群4を、ステッピングモータ2が整数回転すると最終段の回転軸5を整数回転させる歯数比に形成している。
【0030】
本実施形態においては、ステッピングモータ2、減速機3、歯車群4、螺部5a、6aがちょうど1回転する場合は、振れの誤差は回転角度に影響せず、回転角度は360度となることを利用することにより、前記の誤差の発生を防止している。具体的には、被直動部材6を所定量の送り動作を繰り返すように駆動させることとし、ステッピングモータ2に連結する減速機3の減速比を整数で構成し、ステッピングモータ2、減速機3、歯車群4、螺部5a、6aがほぼ整数回転するようにステッピングモータ2の駆動パルス数を設定することにより、回転体の偏芯による角度誤差をキャンセルさせている。これによって、被直動部材6は高精度の直動の送り作用によって往復動させられる。更に、本実施形態においては、ピストン8によって、液体を精密に吸入・排出させることができる。
【0031】
本実施形態においては、螺部5a、6aにより回転軸5の回転を被直動部材6の直動に変換した場合に、回転軸5を軸方向に移動させる反力が発生する。その反力は回転軸5の被直動部材6螺合されている部分と反対向き(本実施形態においては右向き)に発生する。この反力は、それを受ける部分との回転摺動負荷により、回転軸5の回転精度や回転トルクに影響を及ぼす。そこで、本実施形態においては、回転軸5の右端部をR形状の突起状としたスラスト軸受け10によって支承して、回転軸5の振れによる回転軸5のスラスト方向の移動を防止するとともに回転摺動負荷を最小限に安定して抑えるようにしている。
【0032】
また、本実施形態においては、ステッピングモータ2の駆動パルスを、最終段の回転軸5が整数回転または整数分の1回転する場合の被直動部材6の移動量を均一とさせる数に補正する補正テーブルを備えている。前述したように、本実施形態においては、回転軸5の回転を被直動部材6の直動に変換する螺部5a、6aもこの回転軸5が所定量動作のほぼ整数倍で1回転するように形成されているので、予め螺部5a、6aの直動変位量の誤差(ピッチの誤差に相当)を測定してそれを補正するように、ステッピングモータの各所定量毎の駆動パルス数を補正する補正テーブルを備えている。これにより回転軸5の回転を被直動部材6の直動に変換する螺部5a、6aの誤差を補正することができる。
【0033】
次に、本実施形態の具体的動作を説明する。
【0034】
ステッピングモータ2は20ステップ(20駆動パルス数)で1回転する分解能とし、このモータ2と同軸上に連結する減速機3の減速比を1/8とする。また、減速機3の出力軸3aに固着されている歯車4aの歯数は12、中間歯車4bの歯数は20、回転軸5に固着されている歯車4cの歯数は48としている。
【0035】
このとき、直動機構1の所定量の動作を160ステップとすると、ステッピングモータ2は8回転、減速機3の出力軸3aはちょうど1回転することになり、ステッピングモータ2の回転の振れの誤差や減速機3の回転角度誤差はキャンセルされる。
【0036】
このときの最終段の歯車4cは1/4回転となり、所定量を4回進む毎に1回転する。この所定量は、図3の模式図に示すように、1)から4)の順番に、回転角度が常に同じ位置となる。従って、回転軸5の回転を被直動部材6の直動に変換する螺部5a、6aのピッチの誤差を予め測定し、回転軸5が整数回転または整数分の1回転する場合の被直動部材6の移動量を均一とさせるようにステッピングモータ2の駆動パルス数を補正するとよい。実際には、下記の表1に示すような補正テーブルを備え、当該表1に従って補正するとよい。また、螺部5a、6aの振れの誤差の場合は1回転毎に周期性をもつので、この補正値は表1中の4つの回転位置分だけ設定すればよい。
【0037】
【表1】
【0038】
このように本実施形態によれば、被直動部材6の一定量の移動を常に正確に行なわせることができ、信頼性の高い直動機構1を得ることができる。
【0039】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、必要に応じて変更することができる。
【0040】
例えば、回転軸5の回転運動を被直動部材6の直進運動に変換する螺部5a、6aに代えて、従来のようにボールねじ、カム機構、ヘリコイド機構を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の直動機構の1実施形態を示す断面図
【図2】最終段の回転軸のスラスト軸受け部分の拡大図
【図3】最終段の回転軸の回転周期性を示す模式図
【符号の説明】
【0042】
1 直動機構
2 ステッピングモータ
2a 出力軸
3 減速機
4 歯車群
5 最終段の回転軸
5a 螺部
6 被直動部材
6a 螺部
7 プランジャ
8 シリンダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動パルスによって回転させられるステッピングモータと、このステッピングモータからの回転力によって回転させられる最終段の回転軸と、この最終段の回転軸によって直動させられる被直動部材とを有する直動機構であって、前記被直動部材を、最終段の回転軸に形成されている螺部に雌螺部をもって螺合していて、最終段の回転軸の正逆回転により往復動させられるように形成し、最終段の回転軸の被直動部材が取り付けられている軸端部と反対側の軸端部がR形状で形成されたスラスト軸受けとされていることを特徴とする直動機構。
【請求項2】
駆動パルスによって回転させられるステッピングモータと、このステッピングモータからの回転力によって回転させられる最終段の回転軸と、この最終段の回転軸によって直動させられる被直動部材とを有する直動機構において、前記ステッピングモータに付与する駆動パルス数を出力軸を整数回転または整数分の1回転させる数に設定し、前記ステッピングモータが整数回転すると前記最終段の回転軸を整数回転させるようにステッピングモータの回転を最終段の回転軸に伝達する回転伝達手段を設けたことを特徴とする直動機構。
【請求項3】
駆動パルスによって回転させられるステッピングモータと、このステッピングモータからの回転力によって回転させられる最終段の回転軸と、この最終段の回転軸によって直動させられる被直動部材とを有する直動機構であって、前記ステッピングモータに付与する駆動パルス数を出力軸を整数回転または整数分の1回転させる数に設定し、前記ステッピングモータが整数回転すると前記最終段の回転軸を整数回転させるようにステッピングモータの回転を最終段の回転軸に伝達する回転伝達手段を設け、前記被直動部材を、最終段の回転軸に形成されている螺部に雌螺部をもって螺合していて、最終段の回転軸の正逆回転により往復動させられるように形成し、最終段の回転軸の被直動部材が取り付けられている軸端部と反対側の軸端部がR形状で形成されたスラスト軸受けとされていることを特徴とする直動機構。
【請求項4】
前記回転伝達手段は、ステッピングモータの回転を減速する減速機と、減速機の出力を最終段の回転軸に伝達する歯車群とからなり、前記減速機はステッピングモータの回転を整数分の1に減速するように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の直動機構。
【請求項5】
前記減速機は、遊星歯車機構により形成されていることを特徴とする請求項4に記載の直動機構。
【請求項6】
前記ステッピングモータの駆動パルスを、最終段の回転軸が整数回転または整数分の1回転する場合の前記被直動部材の移動量を均一とさせる数に補正する補正テーブルを備えていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の直動部材。
【請求項7】
被直動部材を流体を吸入・排出するピストンとしたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の直動機構。
【請求項1】
駆動パルスによって回転させられるステッピングモータと、このステッピングモータからの回転力によって回転させられる最終段の回転軸と、この最終段の回転軸によって直動させられる被直動部材とを有する直動機構であって、前記被直動部材を、最終段の回転軸に形成されている螺部に雌螺部をもって螺合していて、最終段の回転軸の正逆回転により往復動させられるように形成し、最終段の回転軸の被直動部材が取り付けられている軸端部と反対側の軸端部がR形状で形成されたスラスト軸受けとされていることを特徴とする直動機構。
【請求項2】
駆動パルスによって回転させられるステッピングモータと、このステッピングモータからの回転力によって回転させられる最終段の回転軸と、この最終段の回転軸によって直動させられる被直動部材とを有する直動機構において、前記ステッピングモータに付与する駆動パルス数を出力軸を整数回転または整数分の1回転させる数に設定し、前記ステッピングモータが整数回転すると前記最終段の回転軸を整数回転させるようにステッピングモータの回転を最終段の回転軸に伝達する回転伝達手段を設けたことを特徴とする直動機構。
【請求項3】
駆動パルスによって回転させられるステッピングモータと、このステッピングモータからの回転力によって回転させられる最終段の回転軸と、この最終段の回転軸によって直動させられる被直動部材とを有する直動機構であって、前記ステッピングモータに付与する駆動パルス数を出力軸を整数回転または整数分の1回転させる数に設定し、前記ステッピングモータが整数回転すると前記最終段の回転軸を整数回転させるようにステッピングモータの回転を最終段の回転軸に伝達する回転伝達手段を設け、前記被直動部材を、最終段の回転軸に形成されている螺部に雌螺部をもって螺合していて、最終段の回転軸の正逆回転により往復動させられるように形成し、最終段の回転軸の被直動部材が取り付けられている軸端部と反対側の軸端部がR形状で形成されたスラスト軸受けとされていることを特徴とする直動機構。
【請求項4】
前記回転伝達手段は、ステッピングモータの回転を減速する減速機と、減速機の出力を最終段の回転軸に伝達する歯車群とからなり、前記減速機はステッピングモータの回転を整数分の1に減速するように形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の直動機構。
【請求項5】
前記減速機は、遊星歯車機構により形成されていることを特徴とする請求項4に記載の直動機構。
【請求項6】
前記ステッピングモータの駆動パルスを、最終段の回転軸が整数回転または整数分の1回転する場合の前記被直動部材の移動量を均一とさせる数に補正する補正テーブルを備えていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の直動部材。
【請求項7】
被直動部材を流体を吸入・排出するピストンとしたことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の直動機構。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2008−190649(P2008−190649A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−26648(P2007−26648)
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(503366841)株式会社アイカムス・ラボ (27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月6日(2007.2.6)
【出願人】(503366841)株式会社アイカムス・ラボ (27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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