説明

直径を調節可能な止血弁

【課題】止血弁及び止血装置並びにこれらの弁及び装置の使用方法の提供。
【解決手段】介入器具を患者の体内管腔内へ挿入する際に使用するための止血弁器具。止血弁器具(10)はハウジング(12)を備えており、該ハウジングは第一の端部開口(30)と第二の端部開口(32)との間に空洞を形成している。該空洞内に弁構造体(40)が配置されており、該弁構造体は介入器具(24)を収容するための直径が可変の流路(50)を形成している。該弁構造体とハウジングの内側面との間には環状のチャンバ(60)が形成されており、該チャンバには流体(62)が充填されている。ハウジングは、前記空洞の容積と流路の直径とが、弁構造体が流路内に挿入されている介入器具に沿ったシールを形成する程度まで変化するように第一の位置と第二の位置との間を可動である。該弁構造体は、実質的な捩れが無い状態で密封する構造とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療器具及び医療方法に関する。特に、本発明は、止血弁及び止血装置並びにこれらの弁及び装置の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療器具を患者の体内脈管内へ経皮的に挿入することを含む多くの処置が開発されて来た。このような器具は種々の公知の方法によって脈管内へ導入される。例えば、ガイドワイヤはセルジンガー法を使用して脈管内へ導入される。この方法は、針によって脈管に外科処置用の穴を開けるステップと、該針によって開けられた穴を介して脈管内にガイドワイヤを挿入するステップとを含んでいる。針は抜き取られ、ガイドワイヤは定位置に残される。次いで、導入器がガイドワイヤの外周に沿って血管内に挿入される。導入器は、種々の医療器具、例えばカテーテル、心臓リード、バルーン、ステント移植片等を体内脈管内へ挿入するために一般的な方法で使用される。
【0003】
例えば、導入器は、ステント又はステント移植片のような管腔内人工器官を送り込み且つ配備して、損傷した又は疾患した胆管又は血管のような体内管腔を治療するために使用される。管腔内人工器官を導入器送り込み及び配備器具を使用することによって遠隔位置から患者の管腔内に配備することは、当該技術において良く知られている。例えば、“A Prosthesis and Method and Means of Developing a Prosthesis(人工器官並びに人工器官を配備する方法及び手段)”という名称の米国特許第7,435,253号には、管腔内人工器官のための送り込み及び配備装置が提案されている。該米国特許は、これに言及することによりその全体が本明細書に参考として組み入れられている。該人工器官は、給送カテーテル上で径方向に圧縮され且つ外側シースによって覆われる。該装置を配備するために、オペレータは、外側シースを給送カテーテルの外周に沿って滑らせて人工器官を露出させて外方へ拡張させる。
【0004】
管腔内人工器官に関連する課題のうちの一つは、処置中に導入器内の体液の流れを制御することである。流体の流れを制御することが必要であるか又は望ましい場合には、弁器具が設けられる。例えば、導入器としては、処置中における導入器による血液の損失を制限し又は阻止する止血弁がある。種々の止血弁器具が特許文献に記載されて来た。本明細書に参考として組み入れられている米国特許出願公開第2007/0078395A1には、例えば、流体の流れを制御するディスク弁を使用している止血弁器具及び装置の多くの例が開示されている。
【0005】
血液の損失を防止するための医療器具において、細長い通路をシールするために現在使用されている別のタイプの止血弁器具が、アイリス弁として知られている。一つのアイリス弁が米国特許第5,158,553号に記載されている。該米国特許は、これに言及することによってその全体が本明細書に参考として組み入れられている。該米国特許’553号に記載されている弁は、カテーテル型の器具に結合されている弁用ハブと、該ハブに結合されている回転可能なキャップとを備えている。弾性スリーブが弁本体の内部を貫通している穴内に配置されている。該弾性スリーブの各端部は、各々の端部をクランプ機構の外周に巻き付け且つクランプすることによって前記の回転可能なキャップに結合される。該キャップが第一の方向に回転されると、弾性スリーブの円形の穴は完全に開放される。該キャップが前記第一の方向と反対の第二の方向に回されると、弾性スリーブは2つの端部の中間でねじられて円形の穴の閉塞がもたらされる。スリーブの弾性により、該弾性スリーブの円形の穴は、キャップが回されて閉塞がもたらされるとすぼまる。
【0006】
前記の’553特許の弁は、ある種の大きさ及び構造のシースを密閉するのには概ね有効であるけれども、該’553特許の弁アセンブリの一般的な設計はある種の欠点を有している。例えば、シールの端部を各々のハブ及びキャップに係合させる方法は最適なものではない。このような端部では外れる可能性があり、このことは弁のシール形成機能を消失させる。更に、該シールは、回転可能なキャップを回してシールを所望の位置に位置決めした後に、シールが跳ね戻るのを防止するための手段を備えていない。その結果、操作する者が弁上の回転圧力を緩めると、シールはその元の(シールしない)位置へ戻る、すなわち跳ね戻る。上記の’553特許に記載されているアイリス弁アセンブリにおけるもう一つの別の問題は、該シールに沿って長手方向に延びる隙間又は流路が形成され、該隙間又は流路は、弁が閉止位置まで回転された後に弁内を貫通して伸長し得る点である。このような隙間又は流路が存在している場合には、流体が弁シール内でこれらの隙間又は流路内を流れる。更に、このような弁の形状によって弁が引き裂かれ得る。上記’553特許の図5に示されているように、アイリス弁アセンブリ全体のうちのほんの小さな部分例えば弾性スリーブの全長の約20%未満の部分がシースに沿ったシールを形成するだけである。
【0007】
単一の処置中に、単一の導入器を使用して多数の医療器具が挿入される場合が多い。例えば、管腔内人工器官を血管内に配備するための給送カテーテルを導入するために、止血弁器具を備えた単一の導入器シースが最初に使用される。ひとたび人工器官が血管内に配置されると、人工器官の拡張を生じさせるためのバルーンカテーテルのような介入カテーテルを血管内に送り込むために止血弁器具を備えた単一の導入器シースも使用される。このような例においては、止血弁器具は、少なくとも3つの別々の条件下で止血シールを提供できなければならない。すなわち、1)導入管シース及び弁器具内に挿入されたときに管腔内人工器官を坦持している給送カテーテルに対してシールし、2)給送カテーテルが導入管シース及び弁器具から取り外されるときにシールし、3)導入管シース及び弁器具内に挿入されたときに、介入カテーテルに対してシールする、という少なくとも3つの条件下での止血シールを提供できなければならない。
【0008】
多数の医療器具を挿入するために単一の導入器具を使用することについての一つの問題点は、各々の医療器具が異なる直径を有している点である。理想的な止血弁器具は、医療器具の広範囲の直径に適合し且つシールすることができるであろう。例えば、給送カテーテル並びに直径が給送カテーテルの直径の50%、25%、10%若しくはそれ未満のガイドワイヤの周囲の表面を良好にシールすること、又は器具が存在しない場合でさえシールすることができることは、止血弁器具にとって有効である。更に、このような止血弁器具は、直径の極めて多くの変化の態様に対して迅速に調整できなければならない。
【特許文献1】米国特許第7,435,253号
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0078395A1
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一つの実施形態においては、介入器具を患者の体内管腔内へ挿入する際に使用するための止血弁器具が提供されている。一つの実施例においては、止血弁はハウジングと弁構造体とを備えている。ハウジングは、第一の端部開口と、第二の端部開口と、該第一の端部開口と第二の端部開口との間に空洞を形成している内側面とを備えている。弁構造体は、前記の空洞内に配置され且つハウジングに連結されていて前記ハウジングの空洞内に環状のチャンバを形成している。該弁構造体の径方向内側面は、前記の第一の端部開口と第二の端部開口との間に介入器具を収容するための細長い管状の流路を前記の空洞内に形成している。前記環状のチャンバは流体を含んでおり、該流体は実質的に非圧縮性である。前記のハウジングは、第一の位置と第二の位置との間を動くことができる。第一の位置においては、空洞は第一の容積を有しており且つ流路は第一の直径を有しており、一方、第二の位置においては、第一の端部開口と第二の端部開口とは互いにより近接しており、空洞はより小さい第二の容積を有しており、流路はより小さな第二の直径を有している。
【0010】
もう一つの実施例においては、止血弁器具はハウジングと袋状の構造とを備えている。ハウジングは、第一の端部開口と、第二の端部開口と、該第一の端部開口と第二の端部開口との間に配置されている空洞を形成している内側面とを備えている。ハウジングは、端部キャップと主ハウジング本体とを備えている。前記の袋状の構造は、前記の空洞内に配置されており且つ前記の端部キャップとハウジング本体との間に延びている。該袋状の構造は、前記の第一の端部開口と第二の端部開口との間の前記空洞内に流路を形成している径方向内側の面を備えている。該袋状の構造は、ハウジングの空洞内に配置されて実質的に容積が一定の環状のチャンバを形成している。該環状のチャンバ内には流体が入れられる。端部キャップとカニューレ本体との間の相対的な軸線方向の動きにより、ハウジングの空洞の容積が変わり且つ袋状の構造が開放形態と密閉形態との間で動かされ、流路が各々第一の直径と第二の直径との間で動かされる。
【0011】
一つの特徴においては、弁構造体は、端部キャップに連結された第一の端部とカニューレ本体に連結された第二の端部とを備えている。該弁構造体の第二の端部は、カニューレ本体に固着させることができ、該弁構造体の第一の端部は、端部キャップとカニューレ本体との間での相対的な軸線方向の動作中に弁構造体の実質的な捩れを回避するように端部キャップに連結させることができる。もう一つの特徴においては、該弁構造体の第一の端部は、ハウジング構成部品同士が相対的に動く間ハウジング内の内側面と係合した状態を維持する構造とされているリング部分を備えている。ハウジングの内側面は、その内部に内側の流路が形成されており、弁部材は、リング部分の一部分に沿って設けられ且つ前記の内側の流路内に収容されるシール部材を備えていて弁部材とハウジングとの間に機械的なシールを形成している。
【0012】
もう一つの実施例においては、止血弁器具は、ハウジングの空洞の容積を変える手段を備えている。該ハウジングの空洞内には弁部材が配置され、該弁部材は、ハウジングに連結されてハウジングの空洞内に環状のチャンバを形成している。該弁部材は、径方向内側の面を備えていて、少なくとも前記第一の端部開口と第二の端部開口との間に延びている流路をハウジング内に形成している。該弁部材は、その環状チャンバ内に封入されている実質的に非圧縮性の流体を含んでいる。前記の容積変更手段は、弁部材を開放形態と閉止形態との間で動かして流路の直径を変えることができる構造とされている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は止血弁器具の斜視図である。
【0014】
【図2】図2は、弁構造体が開放位置にある状態の止血弁器具の断面図である。
【0015】
【図3】図3は、弁構造体が閉止位置にある状態の図2の止血弁器具の断面図である。
【0016】
【図4】図4は、一つの例による弁構造体の斜視図である。
【0017】
【図5】図5は、止血弁器具の部分断面図であり、弁構造体と弁ハウジングとの間に形成された機械的シールの一つの例が示されている。
【0018】
【図6】図6は、止血弁器具の部分断面図であり、弁構造体と弁ハウジングとの間に形成された機械的シールのもう一つの例が示されている。
【0019】
【図7】図7は、もう一つ別の例による弁構造体の斜視図である。
【0020】
【図8】図8は、止血弁器具の部分断面図であり、主要弁ハウジングに対して回転可能なキャップが示されている。
【0021】
【図9A】図9Aは、主要弁ハウジングの側面図であり、係止機構の一部分が示されている。
【0022】
【図9B】図9Bは、端部キャップと主要弁ハウジングとの横断面図であり、該主要弁ハウジングは係止機構の爪と戻り止めを備えている。
【0023】
【図10】図10は、止血弁器具の部分断面図であり、主要弁ハウジングに対して摺動可能なキャップが示されている。
【0024】
【図11】図11は、止血弁器具のもう一つ別の例の断面図である。
【0025】
【図12】図12は、弁構造体が開放位置にある状態の止血弁器具のもう一つ別の例の断面図である。
【0026】
【図13】図13は、弁構造体が閉止位置にある状態の図12に示されている止血弁器具の断面図である。
【0027】
【図14】図14は、止血弁器具のもう一つ別の例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書を通して、医療器具又は医療器具の一部分に言及するときに、“遠位”及び“遠位方向”という用語は、器具が使用状態にあるときに概ね患者に近づく位置、方向、又は向きを指している。“近位”及び“近位方向”という用語は、器具の使用中に、概ね患者から離れるか又は操作者により近い位置、方向、又は向きを指している。
【0029】
図1には、止血弁アセンブリ10の斜視図が示されている。弁アセンブリ10は弁ハウジング12を備えており、弁ハウジング12はカニューレ本体14と端部キャップ16とを備えている。カニューレ本体14と端部キャップと16とは、密封できるように互いに結合されている。弁ハウジング12はまた側方アーム状流体流動口18をも備えており、側方アーム状流体流動口18はカニューレ本体14から概ね横方向に延びている。流体流動口18は、流体を一般的なやり方で供給するか排出するために使用され、チューブその他の器具(図示せず)と螺合又はこれと同様の係合ができる大きさ及び形状とされた突起縁19を備えているのが好ましい。カニューレ本体14の遠位端は、弁アセンブリ10を介入器具に取り付ける際に使用される小径部分22を備えている。介入器具24は、弁ハウジング12の小径部分22から遠位方向に一般的な形態で延びている。更に、ガイドワイヤ25が弁アセンブリ10内を伸長している。
【0030】
“介入器具”という用語は、支援するか修復するか置換する器具、物品若しくは構造、支援するか修復するか置換する構造とされた器具、物品、若しくは構造、又は単独で若しくは他の器具、物品、若しくは構造と組み合わせて使用されて、本体部分若しくは本体部分の機能を支援したり修復したり交換したりする器具、物品、若しくは構造を指している。介入器具の例としては、限定的ではないが、シース、カテーテル、ガイドワイヤ、心臓リード、血管閉塞器具、フィルタ、ステント、ステント移植片、給送及び配備器具がある。
【0031】
図2は、弁アセンブリ10(介入器具24を備えていない)の例示的な横断面図である。弁ハウジング12は、近位端開口30と遠位端開口32とを備えている。カニューレ本体14の内側面34と端部キャップ16の内側面35とは、近位端開口30と遠位端開口32との間にハウジングの空洞36を規定している。ハウジングの空洞36内には、弁又は袋状の構造40が設けられている。弁構造体40は、以下に説明するように、開放位置と閉止される密封位置との間を動くことができる。弁構造体40は径方向内側面46を備えており、該内側径方向面46は径方向外側面48から壁の厚み分だけ隔てられている。径方向内側面46は、ハウジングの空洞36内の近位端開口30と遠位端開口32との間に、流路の軸線を中心とする長手方向の流路50を規定している。流路50は、1以上の介入器具を収容する構造とされており且つ弁ハウジング40の長手方向の長さにほぼ等しい管状の円筒形状面を有していて介入器具の長さに沿って密封できるように形成されている。流路の直径は、第一の直径とより小さい第二の直径との間を変化することができ、弁構造体は、介入器具が流路内に配置されていないときにそれ自体が完全に閉じてシールを形成する。
【0032】
弁構造体40は、多くの形状及び大きさのうちの一つとすることができる。図2に示されている一つの例においては、弁構造体40は、近位端部分63及び遠位端部分64のような端部キャップ16の内側面35とカニューレ本体14の内側面34とのうちの少なくとも1つに連結されている部分を備えた管状部材とすることができる。弁構造体40の径方向外側面48は、カニューレ本体14の内側面34及び端部キャップ16の内側面35と共に弁チャンバ60を形成しており、弁チャンバ60は、ハウジングの空洞36の容積の一部分を満たしている環状の形状を有している。弁チャンバ60には所定の量の流体62好ましくは実質的に非圧縮性の流体が充填され、弁チャンバ60は弁構造体内に密封されて液密チャンバを形成している。このような流体の例としては、生理食塩水、生理食塩水ゲル若しくは鉱物油ゲルのようなゲル状物質、又はその他の生体適合性の流体若しくはゲルがある。しかしながら、空気又はその他のガスのような圧縮性の流体を使用することもできる。この目的のために、弁アセンブリ10は、弁構造体内へ流体を導入する外部装置の必要性が無い閉じられた自己完結型装置とすることができる。別の方法として、弁アセンブリ10は種々の濃度の流体の導入を可能にすることができる開いた装置とすることができる。例えば、発泡した生理食塩水を弁チャンバ60と連通している開口した流体流動口18を介して導入することができ、該流体流動口はその後に密封閉止される。発泡した生理食塩水は、弁構造体に何らかの弾性を付与し、該弁構造体によって形成される更に密なシールを形成するのを容易にする。
【0033】
作動時には、弁ハウジング12のハウジング空洞36の形状変化によって流体62が移動し且つ/又は加圧されて、弁構造体40が種々の開放位置と閉止位置とへ動かされることにより、流路50の直径が選択的に変化する。従って、ハウジングの空洞36の形状を第一の形態と第二の形態との間で選択的に変化させることによって、流路50は種々の直径の介入器具を収容することができ、その結果、流路50を形成している径方向内側の面46を介入器具の長手方向の長さに沿ってシールを形成するように位置決めすることができる。更に、流路の直径は、介入器具が存在していないときに弁構造体自体が閉止し且つシールを形成する程度まで小さくなる。第一の形態におけるハウジング空洞の容積は第二の形態へ動いたときに例えば約20%〜30%小さくなる一方で、弁チャンバの容積はほぼ一定のままである。例えば、第一の形態においては、ハウジング空洞の容積は約0.9立方インチ(14.8ml)であり、弁チャンバの容積は約0.7立方インチ(11.5ml)であり、流路の直径は約0.4インチ(10mm)である。第二の形態においては、ハウジング空洞の容積は約0.7立方インチ(11.5ml)であり、弁チャンバの容積は約0.7立方インチ(11.5ml)であり、流路の直径は約0mmである。第二の形態へ移行する間に、弁チャンバ内の流体圧力は約10psi(0.07MPa)まで上昇する。
【0034】
弁構造体40は何らかの生体適合性材料によって作られている。一つの実施例においては、弁構造体40の材料は、拡張可能な環状のチャンバを有するように十分な弾性又は追従性を有しており、該拡張可能な環状チャンバは必要とされる場合に介入器具に沿った密閉性を高めることができる。この弁構造体は、弾性を有している場合には、完全に開放された位置、完全に閉止された位置、又は何らかの中間位置に付勢される。別の例においては、該弁構造体の材料は、概ね一定容積の環状チャンバを有するように最小の弾性による非追従性とすることができる。弁構造体40は、介入器具の大きさに応じた所望の流路径を有するように形成することができる。
【0035】
ここで使用されている弁構造体は、シリコーン、ウレタン、ラテックス、ラバーのような弾性材料によって作ることができるが、このような目的用として当該技術において知られている適切な組成物が代用できる。代替的な材料としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ポリアミド(例えばナイロン12)材料、ポリアミドブロック共重合体(例えばPEBA)及びこれらの混合物(例えば、ナイロン12/PEBA及びPEBA/PEBA混合物);ポリオレフィン、ポリオレフィン共重合体、及びこれらの混合物;ポリエステル(例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、PET);MDI、HMDI、又はTDIからなる硬質部分と、脂肪酸ポリエステル、ポリエーテル、又はポリカーボネートからなる軟質部分(例えば、PELLETHANE、ESTANE、又はBIONATE)と、を備えたポリウレタン共重合体;並びに4GT(PBT)からなる硬質部分と脂肪酸ポリエステル又はポリエーテルからなる軟質部分(例えばHYTREL、PELPRENE又はARNITEL)を備えたポリエステル共重合体がある。該弁構造体の剛性は、弁ハウジングの構成部品の剛性よりもかなり小さくて残りの構造よりも可撓性の高い弁構造体をもたらす。所望ならば、弁構造体又は好ましくは弁構造体の径方向内側の面のみをパリレンのような潤滑性コーティングによってコーティングして表面の潤滑性を改良し且つその中を介入器具が通過するのを容易にすることができる。
【0036】
カニューレ本体及び端部キャップは、アセタール、ポリプロピレン、ABS、ナイロン、PVC、ポリエチレン、又はポリカーボネートのような機械加工又は射出成型した比較的堅牢な高分子材料によって作ることができる。図示されているように、上記した構成要素の各々が、くり貫かれた中心部分を備えていてその中を介入器具が通過するのを可能にしている。
【0037】
以下、弁構造体40を開いたり閉じたりする弁アセンブリ10の動作を説明する。弁構造体40は、第一の位置(図2)と第二の位置(図3)との間での端部キャップ16とカニューレ本体14との相対的な軸線方向の動きによって、開放位置と閉止位置との間を動かしてハウジングの空洞の容積を変化させることができる。第一の位置と第二の位置とが言及されているけれども、端部キャップは、スタート位置である第一の位置と終端位置である第二の位置との中間の多数の位置を通過して移動可能である。前記の第一の位置すなわちスタート位置においては、近位端開口30は遠位端開口32から第一の距離だけ離れた所に位置決めされて比較的大きな容積のハウジングの空洞36を形成している。カニューレ本体14の軸線方向端縁67に対向している端部キャップ16の端面は、端縁67から離れた位置に位置決めされたものとして示されている。この第一の位置は、流路50の直径を更に大きな直径まで広げることができるように、弁構造体40が流路の軸線から径方向外方へ離れる方向に移動するようにしている。第一の位置すなわちスタート位置における端部キャップ16とカニューレ本体14との相対位置は、弁構造体40が流路の軸線から径方向へ離れるように動かすための張力をかけるか増大させる。別の方法として、弁構造体の開放位置への動きを補助するために、弁構造体は、該弁構造体が弾性を有しており且つ開放位置に付勢されているときに開放位置へ弾性的に戻ることができる。
【0038】
第二の(中間又は最終の)位置においては、近位端開口30は、遠位端開口32からより短い第二の距離のところに位置決めされて、より小さな容積のハウジング空洞36を形成する。端部キャップ16の対向面65は、カニューレ本体14の端縁67に対してより近づけられてカニューレ本体14の端縁67に実質的に隣接しているか又は好ましくは接触している。この第二の位置により流体が移動し、弁構造体40を流路の軸線に向かって径方向内方へ動かして流路50の直径がより小さい直径へとすぼめられる。該第二の位置における端部キャップ16とカニューレ本体14のとの相対位置により、弁構造体40の張力が弱められて流路の軸線に向かう径方向の動きが生じる。別の方法として、弁が弾性を有し且つ閉止位置に向かって付勢されている場合には、閉塞位置へ向かう弁構造体の動きを補助するために、該弁構造体は閉止位置に向かって弾性的に戻される。上記したように、第一の直径と第二の直径との間にある流路50の直径を変えるために、カニューレ本体の軸線方向端縁67に対する端部キャップ16の対向面65の位置は、最大位置と最小位置との間のあらゆる中間位置とすることができる。
【0039】
図2及び3においては、弁構造体40の近位端部分63及び/又は遠位端部分64は、接着、溶着、はんだ付け、ハウジング内への成形等のような何らかの適当な取り付け方法によって弁ハウジング12内に取り付けられて、弁構造体の弁チャンバ内の流体62の漏れを防止することができるようになされている。例えば、近位端部分63は、端部キャップ16の内側面35及び/又は対向面65に取り付けることができる。遠位端部分64は、内側面34の更に遠位の部分及び/又はカニューレ本体14の遠位の内側端部69に取り付けることができる。このようにして、弁構造体、端部キャップ、カニューレ本体の間で流体62を密封することができる。他の例においては、以下に説明するように、近位端部分63と遠位端部分64とのうちの少なくとも一方は、各々のハウジングに取り付けられていないままの状態である。
【0040】
図4には、図2〜3に示されている弁構造体40の一つの例が示されている。弁構造体40は概ね円筒形の本体42を備えており、該円筒形本体42は、その近位端部分63に環状のフランジ44を備え且つその遠位端部分64に環状のフランジ45を備えている。これらのフランジのうちの一方例えば近位のフランジ44は、例えば図2〜4に示されているように、直径が他方のフランジよりも大きいのが好ましい。環状フランジ44,45のうちの少なくとも一方は、収納動作中にその形状を維持するのに十分な剛性を有している。本体42の剛性はフランジ44,45の剛性よりも低くて、本体42が収納動作中に変位できる程度の可撓性を有している。図示されている円筒形断面の弁構造体40に加えて、該弁構造体は他の断面形状を有することができる。このような構造の非限定的な例としては、アコーディオン型の形状又は砂時計形状の弁本体、並びに、矩形、三角形、ダイヤモンド、又は楕円のような他の幾何学的な断面形状の弁本体があり、これらは、これに言及することによりその全体が参考として本明細書に組み入れられている米国特許第7,172,580号に記載されている。
【0041】
他の例においては、弁構造体40の近位端部分63及び/又は遠位端部分64は、永久的な取り付けがなされない状態、すなわち、接着、溶着,はんだ付け等がなされない状態で弁ハウジング12内に位置決めされる。そのために、弁構造体40の近位端部分63及び/又は遠位端部分64は、端部キャップ14とカニューレ本体16との間に適当な機械的シールを形成し且つ相対的な回転動作を許容する方法による機械的な締まり嵌めによって弁ハウジング12に結合される。この構造により、弁構造体40の実質的な捩れが防止され、好ましくは捩れが無く、その結果、該弁構造体の径方向内側の面の実質的な部分が相互に又は介入器具が流路内に収納されたときには該介入器具と密封状態で係合することが可能になる。
【0042】
図5〜6は機械的なシールを備えた実施形態を示している。弁構造体40は、1以上のリング構造70を、近位端部分63と遠位端部分64とのうちの少なくとも一方に備えている。例えば、図7は、弁構造体40と類似した別の例の弁構造体40Aを示しており、該弁構造体は近位端部分63にリング構造70を備えている。リング構造70は、弁構造体の動作中に、端部キャップ16の内側面35及び/又はカニューレ本体14の内側面34に対する係合を維持する構造とされている。環状のフランジ44Aがリング構造70を本体42に結合している。リング構造は、環状のフランジの堅牢な材料によって形成されていて、ハウジングの動作中に該リング構造がその形状を維持し且つハウジングとの接触を維持する補助となっている。
【0043】
リング構造70は、そのリング構造により、可撓性が比較的高い本体42よりも比較的高い径方向の剛性を有している。リング構造70の長手方向の長さは、密封性を高めるために、リング構造とハウジングの壁との間の全シール面領域の接触を増す大きさとされている。弁構造体の外側の壁とハウジングの内側の壁との間にはシール部材を適用することができる。例えば、1以上の径方向外方突出部72が弁構造体40の外側部分に沿って周方向に形成されている。任意であるが、該径方向の突出部の代わりに別個のO−リングを弁構造体40に結合させることができるが、以下の更に詳細な説明は、径方向の突出部を備えた弁構造体に焦点を合わせている。径方向の突出部72は、図7に示されているリング構造と組み合わせて使用されている。径方向の突出部72は、端部キャップ16の内側面35に形成されている対応する内側の溝74内に挿入され且つ/又はハウジング本体14の内側面34に対して当接されている。該径方向の突出部と内側の溝とは、漏れを防止する適切な機械的シールを形成することに加えて、端部キャップを弁構造体の実質的な捩れが無い状態でカニューレ本体に対して回転させることができる大きさとすることができる。
【0044】
図5においては、弁構造体40のリング構造70に沿って形成されている唯一の径方向の突出部72が、端部キャップ16の内側面35の唯一の内側の溝74内に挿入されて機械的なシールが形成されている。ここでは、該機械的なシールは、弁構造体40の環状のチャンバ60の外側に形成されている。リング構造70の長手方向の長さは、内側の溝74を形成している端縁を越えて延びている。一つの例においては、リング構造70は、環状のチャンバ60内へと更に深くまで延びている部分を備えていて、流体62がこの部分に圧力をかけて密封性を高めるようになされている。
【0045】
図6においては、弁構造体40のリング構造70に沿って形成されている一対の径方向の突出部72が、端部キャップ16の内側面35の一対の対応する内側の溝74内に挿入されて機械的なシールが形成されている。一つの対応する径方向の突出部と内側の溝との組が、環状チャンバに対して長手方向に配置されていて、環状チャンバ60の外側に機械的シールを形成している。別の対応する径方向突出部と内側の溝との組を環状チャンバに対して長手方向に配置して、環状チャンバ60に対して内側の機械的シールを形成することができる。径方向の突出部と内側の溝との種々の形状及び数を、内側、外側、又は両方に使用することができる。弁構造体40の環状チャンバ60内の内側に形成されている径方向の突出部と内側の溝とからなる構造は、弁構造体と弁ハウジングとの間の密封性にとって特に有効である。例えば、環状チャンバ60内の流体は、ここに記載されているように移動され且つ/又は加圧されたときに、リング構造70と内側面35との間の接触圧を高めることができると共に弁構造体40の径方向突出部72と内側の溝74との間の接触圧を高めることができる。この目的のためには、環状チャンバの外側の機械的シールを形成している図5に示されている単一の径方向の突出部と溝との組み合わせを、図6における内側構造と同様な環状チャンバ内の内側に機械的シールを形成するように配列することが更に考えられる。更に、ハウジングの内壁が径方向の突出部を備え、弁構造体が溝を備えることも想定される。
【0046】
端部キャップ16とカニューレ本体14との間の相対的な軸線方向の動きは、流路50の直径が徐々に変化するのを可能にするコントローラ機構によって更に促進される。図8には、カニューレ本体14と端部キャップ16との間にねじ付きアタッチメントが備えられているコントローラ機構の一つの例を示している。ねじ付きの部分80がカニューレ本体14に形成されており、ねじ付きの部分80は端部キャップ16に形成されているねじ付きの部分82に対応している。従って、例えば端部キャップ16とカニューレ本体14との間の相対的な回転によって、端部キャップ16を第一の位置(図2)と第二の位置(図3)との間で動かすことができる。該ねじ付きのアタッチメントは、医師に流路50の直径を調節する機能を付与し、このようにして弁構造体40によって形成されるシールを実現することができる。更に、該ねじ付きの部分は、例えば、ねじのピッチを変えて端部キャップ16を回転させる回数を流路50の直径の変化の度合いに相関した構造とすることができることが想定される。例えば、約1mmのキャップの相対的軸線方向の並進をもたらすカニューレ本体14に対する端部キャップ16の一回転を、流路50の直径の約1mmの変化に等しくさせることができる。
【0047】
カニューレ本体14と端部キャップ16との間に係止機構が備えられても良い。該係止機構は、ひとたび所望の直径の流路が達成されると、端部キャップ16とカニューレ本体14との間の相対的な位置を固定することができる。例えば、端部キャップ16とハウジング本体14とに、これらの間の相対的な位置を固定するためのクランプを適用することができる。
【0048】
もう一つ別の例においては、係止機構83は、図9Bに示されている爪84と戻り止め85との組み合わせのようなラチェット構造を備えたラチェット機構を備えることができる。例えば、図9Aには、ねじ付き部分80内に形成された一連の戻り止め85を備えているカニューレ本体14が示されている。該戻り止めは、ねじ付き部分80が形成されている面から上方に突出するか、又は該ねじ付き部分内に含まれているようにすることができる。図9Bには、端部キャップ16の内側面35に形成されている一対の爪84が示されており、該一対の爪84は対応する戻り止めの対85に係合している。戻り止め85は、爪84がある方向に動くのを阻止するためにカニューレ本体の外面に対して概ね直角である平らな面と、爪84が逆の方向に動くのを許容する傾斜した面とを備えた形状とされている。180度毎に1つの戻り止めを設けることに加えて、より大きな又はより小さい増分的な動き、例えば、90度、60度、又は30度毎に1個のようなあらゆる数の戻り止めを該ねじ付きの部分に沿って配列することができることが当業者は理解できるはずである。
【0049】
該ラチェット機構は、一の方向例えば弁構造体を閉止させる方向の端部キャップとカニューレ本体との間の増分的な相対的移動を許容し且つ反対方向例えば弁構造体を開放させる方向の動きを阻止することができる。この目的のために、端部キャップ16は、カニューレ50の直径を小さくするやり方で、カニューレ本体14に対して一の方向に自由に回転することができる。しかしながら、適当なシールが弁構造体に形成されている場合には、爪84は戻り止め85と選択的に係合して端部キャップ16の反対方向へ回転を阻止することができる。流路50の直径を再度調節するためには、爪84が戻り止め85から選択的に外されて端部キャップの逆方向への回転を許容する。図9Bには、端部キャップ16の本体は、端部キャップ16の直径を矢印によって示されている部分に沿って押し潰して爪84から周方向に例えば90度ずらすことによって爪を戻り止め85が外れるように径方向外方へ強制的に動かすやり方で適応させることができることが示されている。端部キャップは、外れた後に所望の位置までカニューレに対して摺動させるか又は回転させることができる。
【0050】
部材14及び16の各々の上の爪及び戻り止めのようなラチェット部材の数は、単に例示的であり、回転可能な端部キャップ16が跳ね戻るのを阻止するという目的に適合する限りラチェット部材の他の数を変更しても良い。更に、該ラチェット部材は、すでに参考として組み入れられた米国特許第7,172,580号に記載されているようなリブ状としても良く又は跳ね戻りを阻止するためにリブと溝との組み合わせもまた使用できる。例えばリブ部材を端部キャップ16上に設けることができる。この構造は、所望ならば逆にすることができる。すなわち、リブ部材を端部キャップ上に設け、対応する溝又はリブをカニューレ本体に設けても良い。ラチェット部材は、特別に記載したもの以外の相補的な構造内に位置決めして、弁構造体が直径可変の器具外周シールを提供できるようにすることができる。所望ならば、該ラチェット部材同士の間隔は、その中を通過する器具の直径に応じて最適化することができる。ラチェット部材は、均一な間隔とする必要なく、これらはラチェット構造が得られる限りその中を通過する器具の形状及びタイプに応じてずらすことができ又は変えることができる。この作用を達成するために他のラチェット機構を代用しても良い。
【0051】
図10には、コントローラ機構の別の例が示されている。このコントローラ機構は、カニューレ本体14と端部キャップ16との間に摺動する爪と溝ととからなる構造を備えている。一連のラチェット用の溝90がカニューレ本体14に周方向に形成されている。溝90は、端部キャップ16から延びている爪装置92の頂部を収容できる大きさとされている。従って、端部キャップ16とカニューレ本体14との間の相対的な摺動によって、端部キャップが第一の位置(図2)と第二の位置(図3)との間で動くことができる。ラチェット用の溝と爪とからなる構造は、医師に、流路50の直径を調節する機能従って該弁構造体によって形成されたシールを提供する。該溝と摺動爪とからなる構造は更に、溝の数を流路50の直径の変化の程度に相関させる構造とされている。例えば、一つの溝による端部キャップ16のカニューレ本体に対する並進は、流路50の直径の約1mmの変化に等しい。上記したような係止機構もまた備えられても良い。一つの例においては、適当なシールが形成された後に、爪92の先端は、一の方向における端部キャップ16の摺動性を阻止するためにラチェット用の溝90のうちの1つの中に選択的に位置する構造とされている。爪92は、例えば図9Bに示されているように端部キャップを直径方向に押し潰すことによって溝90から選択的に外して端部キャップ16が逆方向に摺動するのを可能にすることができる。
【0052】
端部キャップ16とカニューレ本体14との間の密封可能な関係は、弁構造体40からの流体の漏れを更に阻止するのに有益である。例えば、端部キャップ16とカニューレ本体14との間の係合面は、高い密封性を提供する構造とされている。O−リング、シールテープ、及び/又はシーラントのような内側シール構造を係合面間に適用することができる。一つの例においては、テフロン(登録商標)テープのようなシールテープを端部キャップとカニューレ本体とのねじ部分間に適用することができる。任意であるが、外側シール構造を端部キャップ16とカニューレ本体14との間に外部から適用して密封性を更に高めることができる。
【0053】
図11には、符号110として参照符号が付けられている止血弁アセンブリのもう一つ別の実施形態が示されており、該止血弁アセンブリは、弁アセンブリ10に関して上記した構造のうちの少なくとも幾つかを備えている。ここでは、弁アセンブリ110は、ハウジングの空洞36内に配置されているドーナツ状の弁構造体140を備えている。弁構造体140は、内側の壁142と外側の壁144とを備えていて該ドーナツ状の構造の環状の弁チャンバ160を形成している。該弁構造体は、その近位端及び/又は遠位端に上記した環状のフランジを備えており、これらのフランジは比較的可撓性の高い内側の壁及び外側の壁よりも剛性が高い材料によって作られている。内側の壁142の径方向内側の区分146は、近位端開口130と遠位端開口132との間のハウジングの空洞36内に長手方向の流路150を形成している。弁構造体140は、弁ハウジング12に取り付けられても良いし、又はハウジング内に取り付けられないままとすることができる。流体62が弁チャンバ160に充填されており、該流体はドーナツ状の弁構造体内全体に含まれている。開放位置と閉止位置との間での弁構造体140の動きは、以前の実施形態に関して説明したように、端部キャップ16とカニューレ本体14との間すなわち第一の位置(図2)と第二の位置(図3)との間での相対位置の結果として生じる。弁構造体140の壁は流体を収容しているので、端部キャップ、カニューレ本体、及び/又は弁構造体の間の密封可能な相対関係は必要でないかも知れない。弁アセンブリ110には上記したコントローラ機構及び/又は係止機構が更に備えられていて、端部キャップとカニューレ本体との間の相対的な動きを制御している。
【0054】
図12〜13には、符号210によって示されている止血弁器具のもう一つ別の例が示されている。該止血弁器具は、弁アセンブリ10,110に関して上記した構造のうちの少なくとも幾らかを備えている。ここでは、弁アセンブリ210は、概ね図7に示されている弁構造体40Aと同様な弁構造体240を備えており、該弁構造体240はハウジングの空洞236内に配置されている。弁構造体240は、近位端263にリング構造270を備えており且つ遠位端264に環状のフランジ245を備えており、それらのフランジ間に円筒状の本体242を備えている。リング構造270は、環状のフランジ244によって本体242に結合されている。弁構造体240は、ハウジングの空洞236内に配置されて環状の弁チャンバ260を形成している。径方向内側の面246は、ハウジングの空洞236内に流路250を形成している。リング構造270は、端部キャップ216の内側面に対して緩く嵌合する構造とされている。O−リング272のような1以上のシール部材が前記のリング構造の周りに配置されており且つ1以上の内側の溝274内に挿入されている。リングのような第一の支持部材275が、環状のフランジ244と端部キャップ216の端面265との間に配置されていてリング部材270が端部キャップ及び環状フランジから長手方向へ離れる方向に動くのを阻止している。リングのような第二の支持部材277が、環状のフランジ245の内側面に当接するように配置されていて環状フランジ245を固定位置に保持している。該第一及び第二の支持部材は、ハウジングと一体に形成されるか又は図面に示されているように別個の部品として形成される。弁構造体240の近位端263は自由端であり、すなわち端部キャップ216に動かないように固定されておらず、このことにより端部キャップは弁構造体の実質的な捩れが無い状態で弁構造体の近位端に対して回転することが可能とされている。弁構造体の遠位端はハウジングに動かないように固定されている。
【0055】
端部キャップ216は、カニューレ本体214のねじ部280に螺合しているねじ部282を備えている。シールテープ(図示せず)がねじ部280と282との間に配置されていて弁器具のこの領域からの実質的な漏れが阻止されている。流体262が弁チャンバ260に充填されている。シールエプロン296がリング構造270からカニューレ本体に向かって軸線方向に延びている。シールエプロン296は、堅牢でその形状を維持することができるリング形状とされている。カニューレ本体の端部267を収容するためのポケット297が、シールエプロン296と端部キャップ216との間に形成されている。図12によると、シールエプロン296は、カニューレ本体の端部267を通り越してカニューレ本体の内側の壁に沿って延びている。該シールエプロンは、端部キャップが相対的に動く間カニューレ本体の内側の面に沿った密着した接触を維持する大きさとされている。端部キャップ216とカニューレ本体214との間の相対的な軸方向の動きは、端部キャップ216がカニューレ本体214に対して第一の位置(図12)と第二の位置(図13)との間で回転する結果として生じる。この結果、弁構造体240は開放位置と閉止位置との間を動くことができ、流路250は各々第一の直径と第二の直径との間を動くことができる。図13には、それ自体が完全に閉じて流路250を効率良く閉止している弁構造体240が示されている。カニューレ本体214の端部267は、リング構造270の対向端部と係合して密封性を高めることができる。弁アセンブリ210には更に上記したコントローラ機構及び/又は係止機構が備えられていて、端部キャップとカニューレ本体との間の相対的な動きが制御される。
【0056】
図14には、止血弁器具のもう一つの別の例が符号310によって示されている。該止血弁器具は、ラチェット装置とねじ係合部とを備えている弁アセンブリ10,110,210に関して上記した構造のうちの少なくとも幾つかを備えている。この例においては、端部キャップ316は端部317を備えており、端部317はカニューレ本体314の外周から隔置されている。端部317に沿った内側面319とカニューレ本体314の外側面321とは、図9A〜9Bに示されているラチェット構造を1以上に備えている。例えば、端部キャップ316の内側面319は、ねじ部380内に形成されている一連の戻り止め385を備えており、一方、カニューレ本体314の外側面321は該外側面上に固定されている爪384を備えている。端部317は、端部キャップ316に取り付けられている適合材料によって作られている。任意であるが、端部317は端部キャップ316と一体に形成されても良い。この例においては、端部317は、端部キャップの本体の壁厚よりも薄い壁を備えていて戻り止めを爪から解放するために端部に追従する補助となっている。端部317に隣接している端部キャップの部分387は、例えば、図12に示されているようなカニューレ本体に密封係合することができる。端部キャップ316の隣接部分387は、ねじ部390がカニューレ本体314の別のねじ部391と係合している状態で示されている。ねじ部390,391,380は、実質的に同じ形状(すなわち、ねじ角度、ピッチ、ねじ形状)を有していて、端部キャップとカニューレ本体との間の相対的な回転によって爪384がねじ部380に追従して戻り止め385に係合できるようになされている。ラチェット装置は、図14に示されている例示的な弁部材340によって形成されている流路の直径の変化の増分的な制御を可能にしている。
【0057】
種々の実施形態を示している図面内の描写は必ずしも等尺ではない。幾つかの図面は強調のために拡大されたある種の細部を含んでおり、部品の種々の数又は比率は、本開示において明示されていない場合には限定と考えられるべきではない。該弁器具のある種の特徴がある種の実施形態及び図面に関して単に説明されているけれども、本発明は、これらの特徴又は実施形態のいずれかに限定されるものではなく、2以上の組み合わせられた特徴又は実施形態に存在していても良いことが当業者にはわかるであろう。従って、当業者は、本明細書に特に例示されていない実施形態を本発明の範囲内で実施することができ、種々の実施形態に関して本明細書に記載されている特徴は、ここに付与されている特許請求の範囲内に維持されつつ相互に且つ/又は現在知られているか更に開発される技術と組み合わせることができることがわかるであろう。従って、上記の詳細な説明は限定的ではなく例示的なものとみなされることが意図されている。全ての等価物を含む特許請求の範囲は本発明の精神及び範囲を規定することを意図していることは理解されるべきである。
【符号の説明】
【0058】
10 止血弁アセンブリ、 12 弁ハウジング、
14 カニューレ本体、 16 端部キャップ、
18 流体流動口、 19 突起縁、
22 小径部分、 24 介入器具、
25 ガイドワイヤ、 30 近位端開口、
32 遠位端開口、 34 カニューレ本体の内側面、
35 端部キャップの内側面、 36 ハウジングの空洞、
40 弁構造体(袋構造体)、 40A 弁構造体、
42 本体、 44 環状のフランジ、
44A 環状のフランジ、 45 環状のフランジ、
46 径方向内側面、 48 径方向外側面、
50 流路、 60 弁チャンバ、
62 流体、 63 近位端部分、
64 遠位端部分、 65 対向面、
67 カニューレ本体の軸線方向端縁、 69 遠位の内側端部、
70 リング構造、 72 径方向の突出部、
74 溝、 80 ねじ部、
82 ねじ部、 83 係止機構、
84 爪、 85 戻り止め、
90 溝、 92 爪装置、
110 弁ハウジング、 130 近位端開口、
132 遠位端開口、 140 ドーナツ状の弁構造体、
142 内側の壁、 144 外側の壁、
146 内側の壁の径方向内側の区分、 150 流路、
160 弁チャンバ、 210 止血弁器具、
214 カニューレ本体、 216 端部キャップ、
236 ハウジングの空洞、 240 弁構造体、
242 本体、 244 環状のフランジ、
245 環状のフランジ、 246 径方向内側の面、
250 流路、 260 弁チャンバ、
262 流体、 263 近位端、
264 遠位端、 265 端部キャップの端面、
267 カニューレ本体の端部、 270 リング構造、
272 O−リング、 274 内側の溝、
275 第一の支持部材、 277 第二の支持部材、
280 ねじ部、 282 ねじ部、
296 シールエプロン、 297 ポケット、
310 止血弁器具、 314 カニューレ本体、
316 端部キャップ、 317 端部キャップの端部、
319 内側面、 321 カニューレ本体の外側面、
340 弁部材、 380 ねじ部、
384 爪、 385 戻り止め、
387 端部キャップの部分、 390 ねじ部、
391 別のねじ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の端部開口と、第二の端部開口と、該第一の端部開口と第二の端部開口との間にハウジングの空洞を形成している内側面と、を備えているハウジングと、
前記ハウジングの空洞内に配置されており且つ前記ハウジングに連結されて前記ハウジングの空洞内に環状のチャンバを形成している弁構造体であって、前記ハウジングの空洞内の前記第一の端部開口と第二の端部開口との間の少なくとも一部に長手方向の管状の流路を形成している径方向内側の面を備えている弁構造体と、を備えており、
前記ハウジングは、前記ハウジングの空洞が第一の容積を有し且つ前記流路が第一の直径を有している第一の形態と、前記第一の端部開口と第二の端部開口とが互いに近づいていて、前記ハウジングの空洞が前記第一の容積より小さい第二の容積を有し且つ前記流路が前記第一の直径よりも小さい第二の直径を有している第二の形態と、の間を移動可能とされている、ことを特徴とする止血弁器具。
【請求項2】
前記環状のチャンバの容積が一定である、ことを特徴とする請求項1に記載の止血弁器具。
【請求項3】
前記環状のチャンバが実質的に非圧縮性の流体を含んでいる、ことを特徴とする請求項1に記載の止血弁器具。
【請求項4】
前記弁構造体がドーナツ状の弁構造体である、ことを特徴とする請求項1に記載の止血弁器具。
【請求項5】
前記弁構造体が該弁構造体の軸線方向の端部に沿って形成されているリング部分を更に備えており、該リング部分は、前記ハウジングが動いている間、前記ハウジングの内側面と係合した状態を維持するようにされている、ことを特徴とする請求項1に記載の止血弁器具。
【請求項6】
前記弁構造体がシール部材を更に備えており、前記ハウジングの内側面には前記シール部材を収容するための内側溝が形成されており、前記シール部材は、前記リング部分の一部に沿って配置され且つ前記内側溝内に収容されている、ことを特徴とする請求項5に記載の止血弁器具。
【請求項7】
前記ハウジングが第一の部分と第二の部分とを備えており、該第一の部分と第二の部分とを軸線方向に相対的に動かすことによって、前記ハウジングが前記第一の形態と第二の形態との間での動くようにされている、ことを特徴とする請求項1に記載の止血弁器具。
【請求項8】
前記第一の部分と第二の部分とが相互に螺合していて、前記第一の部分と第二の部分とを相対的に回転させることによって、前記ハウジングが前記第一の形態と第二の形態との間での動くようにされている、特徴とする請求項7に記載の止血弁器具。
【請求項9】
前記ハウジングの前記第一の部分と第二の部分とが相互にラチェット形態で係合して、前記第一の部分と第二の部分とを軸線方向に相対的に摺動させることによって、前記ハウジングが前記第一の形態と第二の形態との間での動くようにされている、ことを特徴とする請求項7に記載の止血弁器具。
【請求項10】
前記弁構造体が、前記第一の部分に連結されている第一の端部と前記第二の部分に連結されている第二の端部とを備えており、前記弁構造体の前記第一の端部と第二の端部とのうちの一方が前記第一の部分又は第二の部分のうちの対応する方に動かないように固定されており、前記第一の端部と第二の端部とのうちの他方が、前記第一の部分又は第二の部分のうちの対応する方に、前記の第一の部分と第二の部分との相対的な軸線方向の動きに応答して前記弁構造体の実質的な捩れが防止されるように連結されている、ことを特徴とする請求項7に記載の止血弁器具。
【請求項11】
第一の端部開口と、第二の端部開口と、該第一の端部開口と第二の端部開口との間に配置されているハウジングの空洞を形成している内側面とを有し、端部キャップとカニューレ本体とを含むハウジングと、
前記ハウジングの空洞内に配置されており且つ前記ハウジングの前記端部キャップと前記カニューレ本体との間に連結されて、前記ハウジングの空洞内に実質的に容積が一定の環状のチャンバを形成している袋構造体であって、前記ハウジングの空洞内の前記第一の端部開口と第二の端部開口との間の少なくとも一部に流路を形成している径方向内側の面を備えている袋構造体と、
該袋構造体の前記環状のチャンバ内に配置されている流体と、を備えており、
前記端部キャップと前記カニューレ本体とを軸線方向に相対的に動かすことによって、前記ハウジングの空洞の容積が変化し、前記袋構造体が開放形態と閉止形態との間で動かされて前記流路が第一の直径と第二の直径との間で変化するようになされている、ことを特徴とする止血弁器具。
【請求項12】
前記端部キャップが、前記流体が前記開放形態において前記弁構造体に第一の圧力をかける第一の位置と、前記流体が前記閉止形態において前記弁構造体に前記第一の圧力よりも大きい第二の圧力をかける第二の位置との間を、前記ハウジングの本体に対して移動可能であるようになされている、ことを特徴とする請求項11に記載の止血弁器具。
【請求項13】
前記袋構造体が互いに、該袋構造体の一端に沿ったリング部分と、該リング部分から軸線方向に延びて前記カニューレ本体の内側面と係合しているシールエプロンと、を備えている、ことを特徴とする請求項11に記載の止血弁器具。
【請求項14】
前記ハウジングの前記内側面が内側の溝を備え、前記袋構造体の端部が径方向に突出しているリングを備えており、該径方向に突出しているリングは、前記内側の溝内に収容されて前記袋構造体と前記ハウジングとの間に機械的な密封を形成しており、前記内側の溝は、前記袋構造体の前記環状のチャンバに対して長手方向に配置されて、前記袋構造体内の流体の圧力の増大によって前記内側の溝内の前記径方向に突出しているリングへの径方向の圧力が増大するようにされている、ことを特徴とする請求項13に記載の止血弁器具。
【請求項15】
前記端部キャップが前記カニューレ本体の対応する外側面から離隔されている端部を備えており、前記端部と前記対応する外側面とが、前記端部キャップと前記カニューレ本体との相対的な動きを選択的に阻止するラチェット機構を備えている、ことを特徴とする請求項11に記載の止血弁器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−196444(P2012−196444A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−58099(P2012−58099)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【出願人】(511152957)クック メディカル テクノロジーズ エルエルシー (76)
【氏名又は名称原語表記】COOK MEDICAL TECHNOLOGIES LLC
【Fターム(参考)】