直接アルコール形燃料電池のエイジング方法及びそのエイジング装置
【課題】燃料電池の製造工程において、エイジング時間を短縮し、且つエイジング後の燃料電池の発電特性を向上させる。
【解決手段】直接アルコール形燃料電池のエイジング方法は、燃料電池に対して、第1段目の水素を用いたPEFCエイジングと、引き続き、メタノール水溶液を用いたDMFCエイジングによる2段階エイジングであり、エイジング直後から出力特性が向上し、且つエイジング時間を短縮する。
【解決手段】直接アルコール形燃料電池のエイジング方法は、燃料電池に対して、第1段目の水素を用いたPEFCエイジングと、引き続き、メタノール水溶液を用いたDMFCエイジングによる2段階エイジングであり、エイジング直後から出力特性が向上し、且つエイジング時間を短縮する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノール等の直接アルコール形燃料電池のエイジング方法及びそのエイジング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やPDA、デジタルカメラ等の携帯用情報機器は、主にリチウムイオン電池等の充電可能な二次電池が電源として用いられている。近年、これらの情報機器における高機能化、多機能化、高速化及び長時間連続駆動の要求に伴い、小型燃料電池が新たな電源として期待されており、一部では試作及び試用も開始されている。
【0003】
燃料電池は、従来の二次電池とは異なり、充電作業が不要であり、燃料を補充又は燃料カートリッジを交換するだけで瞬時に機器を長時間稼動させることが可能な状態にすることができる。これらの燃料電池のうち、メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池DMFC(Direct Methanol Fuel Cell)は、出力電力密度は高くはないものの、燃料の取扱いが容易であることから、携帯用機器への充電用等の用途で実用化が始まっており、商品として販売もされている。
【0004】
直接メタノール形燃料電池は、組立製造後に発電特性を安定化させるために通常、エイジングと呼ばれる作業工程を実施する必要がある。ここで言うエイジングは,コンディショニングと呼ばれることもある。このエイジングに用いられるプロセスとしては、様々な方法が知られている。例えば、非特許文献1及び2には、実際に発電させる燃料を使用して、燃料電池の出力端に負荷を接続して、一定時間燃料電池を動作させる行う方法が開示されている。
【0005】
このようなエイジング方法においては、経験的に安定した特性が得られるまでの時間と環境、例えば周囲温度60℃で30時間連続的に負荷を接続して実施している。また、非特許文献1及び2には、水素によるエイジングを行った後にメタノールによるエイジングを行う方法も開示されているが、このエイジング方法においても、トータルで30時間を費やしている。
また、特許文献1には、発電を開始した燃料電池の電極間に外部から強制的に通電を行ってエイジングを行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−40869号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「直接メタノール形燃料電池の高出力化に対するエイジング方法の影響」岩崎達也著 他、電池討論会講演要旨集、vol.50th Page 489 (2009.11.30)
【非特許文献2】「直接メタノール形燃料電池出力特性に及ぼすエイジング方法の検討」岩崎達也著 他電気化学会、3R03 (2009.3.31)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した非特許文献1及び2により提案されるエイジング方法では、燃料電池が使用可能になるまでに30時間以上を要しているため、現実的に製造工程に組み入れるには、更なる時間短縮が要求されている。また、特許文献1においては、燃料電池が発電する極性と同じ極性で外部から強制的に通電することによって、エイジングを行っている。この方法においては、予め定められた通電条件下において、燃料電池の状態(アノード側の水分量等)を観測して、その通電時間や印加回数を適宜制御する必要があり、繁雑な作業となっている。また、その際に、不慮の事態により想定外の通電条件となった場合には、燃料電池に損傷を与えるため、注意を払わなければならない。
【0009】
そこで本発明は、水素及びアルコールによるエイジング時間が個々に設定可能であり、燃料電池の製造工程には最適なエイジングで時間短縮を実現し、且つエイジング後の燃料電池の発電特性を向上させる直接アルコール形燃料電池のエイジング方法及びそのエイジング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態は、メタノールを含むアルコールを主成分とする流体を燃料とする直接アルコール形燃料電池のエイジング方法であって、前記直接アルコール形燃料電池に、水素を燃料として供給して、予め定めた一定負荷の下で予め定めた第1の設定時間を越えて発電する第1段目のエイジングと、続いて、前記直接アルコール形燃料電池に、前記水素からアルコールを主成分とする流体に切り替えて、燃料として供給して、予め定めた一定負荷の下で予め定めた第2の設定時間を発電させる第2段目のエイジングと、で構成される2段階エイジングである直接アルコール形燃料電池のエイジング方法を提供する。
【0011】
また、本発明に従う実施形態は、直接アルコール形燃料電池の燃料極に、水素を供給する第1の供給部と、前記直接アルコール形燃料電池の燃料極に、アルコールを主成分とする流体を供給する第2の供給部と、前記直接アルコール形燃料電池に、酸化剤流体を供給する第3の供給部と、前記第1の供給部と前記第2の供給部から送出される前記水素と前記流体を切り替えて、前記燃料極に供給する切り替え部と、を具備し、前記第1の供給部から前記燃料極に水素を燃料として供給し、任意の条件下の発電による第1段目のエイジングを実施した後、前記切り替え部により、前記水素から前記第2の供給部から供給される前記流体に切り替えて供給し、任意の条件下の発電による第2段目のエイジングを実施する、2段階エイジングを行う直接アルコール形燃料電池用エイジング装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水素及びアルコールによるエイジング時間が個々に設定可能であり、燃料電池の製造工程における最適なエイジングで時間短縮を実現し、且つエイジング後の燃料電池の発電特性を向上させる直接アルコール形燃料電池のエイジング装置及びそのエイジング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態に用いる直接メタノール形燃料電池における燃料電池セルの概念的な断面構成を示す図である。
【図2】図2(a),(b),(c)は、第1例乃至第3例のそれぞれのエイジング時間による出力電力電流密度の特性を示す図である。
【図3】図3(a),(b),(c)は、第1例乃至第3例の燃料電池に対して、メタノール水溶液の濃度1M,5M,10Mをそれぞれに供給した時の出力電力密度及びセル電圧の測定結果を示す図である。
【図4】図4(a),(b)は、PEFCエイジング工程におけるエイジングの操作温度60℃,80℃の時の出力電力密度の測定結果を示す図である。
【図5】図5(a),(b)は、PEFCエイジングを操作温度60℃,80℃で行った燃料電池の異なる濃度のメタノール水溶液を用いた時の出力電力密度の測定結果を示す図である。
【図6】図6(a)は、DMFCエイジング後、1Mの濃度のメタノール水溶液を用いた出力電力の測定結果を示す図、図6(b)は、5Mの濃度のメタノール水溶液を用いた出力電力密度の測定結果を示す図である。
【図7】図7(a),(b)は、DMFCエイジングを1M,5Mのメタノール水溶液で行った後に、濃度1M,5M,10Mのメタノール水溶液を用いて測定した出力結果を示図である。
【図8】図8(a)は、最適化を行う前のエイジング方法による燃料電池セルの出力特性を示す図、図8(b)は、第2の実施形態による最適方法を用いた2段階エイジングした場合の燃料電池セルの出力特性を示す図である。
【図9】図9は、第2の実施形態におけるエイジング方法による最適化前及び最適化後の出力結果を示す図である。
【図10】図10は、第3の実施形態に係る直接アルコール形燃料電池に用いるエイジング装置のブロック構成を示す図である。
【図11】図11は、第3の実施形態による2段階エイジングの動作について説明するためのフローチャートである。
【図12】図12は、第4の実施形態に係る直接アルコール形燃料電池のエイジング装置のブロック構成を示す図である。
【図13】図13は、第4の実施形態による2段階エイジングの動作について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、実施形態に用いる直接メタノール形燃料電池における燃料電池セルの概念的な断面構成を示している。
【0015】
この燃料電池は、電解質膜としてNafion117(登録商標)を使用し、カソード触媒には、Pt/C(Pt担持量:45.9wt.%)、アノード触媒にはPt−Ru/C(Pt担持量:32.6wt.%、Ru担持量:16.9wt.%)を用いている。これらのうち、電極触媒層は、これらのカソード、アノード触媒とNafion溶液を攪拌混合して調整した触媒塗布液を、拡散層として用いたカーボンペーパー(2.25cmx2.25cm)上にエアースプレーで吹き付けて作製した。この時、カーボンペーパーは触媒層の面積が2.24×2.24cm(5cm2)の大きさになるようにPETフィルムでマスクする。電極触媒塗布量は、1.0mg/cm2の金属量となるように調整した。続いて、Pt/C、Pt−Ru/C触媒をそれぞれに吹き付けたカーボンペーパーで電解質を挟み、ホットプレスしてMEA(Membrane Electrode Assembly)5を作製した。
【0016】
図1に示す燃料電池セル1は、上記MEA5が組み込まれた構成を示している。この燃料電池セル1は、MEA5からなる電解質膜4を両側から挟み込むように、アノード(燃料極)2及び、カソード(空気極)3が設けられている。また、アノード2側には、上部に燃料となる水素又はメタノール水溶液を流入するための燃料流入口6と、その燃料を排出する燃料流出口7とを有する燃料流路がアノード2と接合するように設けられている。
【0017】
さらに、カソード3側には、酸素又は空気が流れ込む酸素流入口8と、酸素又は空気、及び発電時に発生する水が排出される酸素流出口9とを有する酸素流路がカソード3と接合するように設けられている。
【0018】
尚、図示していないが、それぞれの流路に燃料と酸素(または空気)を供給するためのポンプが設けられており、所望する流入量となるように制御されている。同様に、図示しない温度調整機構を備えており、燃料電池セル1の温度と供給する燃料の温度が予め設定した温度を保つように調整されている。
【0019】
以下、本実施形態におけるエイジング方法について説明する。本実施形態のエイジング方法は、主として、第1段目のPEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell)エイジング工程と、第2段目のDMFC(Direct Methanol Fuel Cell)エイジング工程による「2段階エイジング方法」である。
【0020】
(1)PEFCエイジング工程
アノード2へ水素を50ml/minを供給し、カソード3には酸素を50ml/minで供給してエイジングを行う。このエイジングにおいては、セル温度、ガス加湿及び供給温度を一定温度Tp℃に設定し、セル電圧を0.21Vの定電圧で固定して、任意の電子負荷装置を用いて、tp時間に亘り負荷をかける。
【0021】
(2)DMFCエイジング工程
アノード2へ濃度CmMのメタノール水溶液を5ml/minで流し、セル電圧が上がりきった時点で、カソード3に酸素を50ml/minで供給してDMFCエイジングを行う。このエイジングにおいては、セル温度、ガス加湿及び供給温度を60℃に設定し、セル電圧を0.21Vの定電圧で固定して、任意の電子負荷装置を用いて、tm時間に亘り負荷をかける。
【0022】
(3)エイジング後処理工程
上記(2)DMFCエイジングが終了した後、アノード2へ水、カソード3へ酸素をそれぞれに供給した状態で、電圧を0.21Vに保ち、電流値が取り出せなくなるまで任意の電子負荷装置を用いて負荷をかけ、続いてカソードに窒素を供給し、カソード電位の変化が無くなった時点でエイジング後処理工程を完了する。
【0023】
このような2段階エイジング方法においては、以下のようにパラメータを設定している。
・PEFCエイジング時間:tp(時間)とDMFCエイジング時間:tm(時間)
・PEFCエイジング時の温度(操作温度):Tp(℃)
・DMFCエイジング時のメタノール濃度:Cm(M) 但し、Mはモル濃度(mol/L)とする。
【0024】
本実施形態では、それぞれのパラメータの最適値を選定するために、2つまたは3つの組み合わせ例を選定し、比較を行った。
まず、PEFCエイジング時間:tp(時間)とDMFCエイジング時間:tm(時間)のパラメータについて述べる。
各組み合わせにおいて、エイジング時の操作温度Tpは60℃、メタノール濃度Cmは1Mとする。これらの選定条件の下で、図2(a)に示す第1例は、tpを3時間、tmを27時間として実施した例、図2(b)に示す第2例は、tpを6時間及びtmを10時間として実施した例及び、図2(c)に示す第3例は、tpを9時間、tmを10時間として実施した例である。
【0025】
図2(a),(b),(c)は、共にエイジングが完了した燃料電池セルに対して、エイジング終了直後「○」と、エイジング後処理終了直後「□」と、エイジング後未動作で常温にて24時間保管した後「△」との、それぞれの出力電力密度(又は、出力電力と称する)による出力特性(又は、発電特性)を示している。
【0026】
これらの出力特性を比較すると、図2(a)に示す第1例においては、エイジング終了直後に対して、未動作で24時間保管することにより大幅に発電特性が向上している。これに対して、図2(b),(c)に示す第2例及び第3例では、エイジング終了直後と、非動作にて24時間を保管した後とでは、出力特性の向上は比較的小さい。
【0027】
しかし、第1例乃至第3例において、共に、24時間保管後に得られる性能は同等であるが、エイジング後終了処理の直後の出力電力密度を比較すると、第1例より第2例及び第3例の方が明らかに大きい。即ち、この結果から分かるように、PEFCエイジング時間を延ばすことによって、保管を行わなくとも、エイジング直後からDMFC出力特性が向上するため、エイジング時間を短縮することができる。
【0028】
次に、図3(a),(b),(c)は、第1例乃至第3例の燃料電池に対して、メタノール水溶液の濃度1M,5M,10Mをそれぞれに供給した時の出力電力密度の測定結果を示している。ここでは、図3(a)は、第1例の燃料電池、図3(b)は、第2例の燃料電池、図3(c)は、第3例の燃料電池とする。尚、図3(a)乃至(c)において、出力電力の特性は、図2(a)乃至(c)と同等のプロットマークとし、セル電圧特性(電流・電圧特性I−V又は電流・出力特性I−P)は、メタノール水溶液の濃度1Mを黒丸、5Mを黒四角、10Mを黒三角で示している。
【0029】
これらの図3(a)乃至(c)に示すように、第1例乃至第3例において、1Mのメタノール濃度で得られるセル電圧特性は、PEFCエイジング時間が異なっても大きい差は生じていない。図3(b) ,(c)に示す第2例及び第3例は、DMFCエイジングに要する時間が10時間であり、図3(a)に示す第1例のPEFCエイジングに要する27時間に比べて、格段に短時間となる。
【0030】
即ち、第1段目のPEFCエイジング時間を延ばすことにより、後続する第2段目のDMFCエイジング時間を短縮することができる。つまり、第1例と第3例を比較すると、トータルのエイジング時間で比較すると、11時間の短縮を実現している。
【0031】
さらに、メタノール水溶液の濃度5Mで得られる最大出力電力密度は、図3(a)に示す第1例及び図3(b)に示す第2例における約40mA/cm2に対して、図3(c)に示す第3例では、約50mA/cm2と大きくなる。同様に、メタノール水溶液濃度10Mの場合もPEFCエイジング時間の最も長い第3例の最大出力密度が最大になる。このことから、PEFCエイジング時間を延ばすことで、高濃度のメタノール供給時の出力特性を向上させることができる。
【0032】
以上説明したように、水素によるPEFCエイジング時間tpは、後続のDMFCエイジング時間tmを短縮でき、且つ高濃度メタノール供給時の出力特性が最も高い、第3例の9時間が最適であることがわかる。従って、第3例を選択することにより、第1例に比べて、後続のDMFCエイジング時間tmの短縮及び出力特性の向上が実現し、第2例に比べて、発電特性の向上を実現する。
【0033】
次に、図4(a),(b)を参照して、PEFCエイジング工程におけるエイジングの操作温度Tp℃の設定について説明する。図4(a)は、前述したPEFCエイジング工程中の操作温度が60℃、図4(b)は、操作温度が80℃の時の結果を示している。尚、図4(a),(b)において、エイジング終了直後「○」、エイジング後処理終了直後「□」、24時間単セルを保管した後「△」における、それぞれの出力電力密度を1Mのメタノール水溶液を用いて時間毎に測定した特性を示している。
【0034】
図4(a)に示すように、60℃によるエイジング終了直後とエイジング後処理終了直後との出力電力密度の比較では、エイジング後処理を実施した方が大きく向上する。しかし、燃料電池セルをエイジング終了後、24時間保管すると、エイジング終了直後よりも向上しているが、エイジング後処理を行った燃料電池セルと比べると、得られる出力電力密度は低下している。
【0035】
これに対して、図4(b)に示すような80℃によるエイジング終了直後とエイジング後処理終了直後との出力電力密度の比較では、同様な出力特性を有している。また、燃料電池をエイジング終了後、24時間保管すると、エイジング終了直後及びエイジング後処理終了直後よりも出力電力密度が向上する。
以上の結果から、PEFCエイジングの操作温度は、DMFCエイジング終了直後だけでなく、保管後の出力特性にも大きく影響することがわかる。
【0036】
図5(a),(b)には、第1段目の水素を用いたPEFCエイジングを操作温度60℃、80℃で行った燃料電池に対して、1M、5M、10Mの異なる濃度のメタノール水溶液を用いて出力電力密度を測定した結果を示す。ここで、図5(a)は、操作温度60℃とし、図5(b)は、操作温度80℃とする。
【0037】
図5(a)に示す結果においては、1Mのメタノール水溶液で得られる出力電力密度は、約65mA/cm2である。図5(b)において、同様に1Mのメタノール水溶液で得られる出力電力密度は約70 mA/cm2となり、操作温度の違いによる出力値に大きな差は認められない。これに対して、5M,10Mの高濃度のメタノール水溶液を用いた場合には、操作温度60℃に比べて、操作温度80℃の方が明らかに出力電力密度が大きい。
従って、2段階エイジングにおけるPEFCエイジングの操作温度は60℃より80℃の方が最適である。
【0038】
次に、PEFCエイジング工程に後続するDMFCエイジング工程において、1M及び5Mのメタノール濃度Cm(M)によりエイジングした燃料電池セルの出力特性について説明する。図6(a)は、DMFCエイジングの後、1Mの濃度のメタノール水溶液を用いた出力電力を時間毎に測定した結果を示し、図6(b)は、同様に5Mの濃度のメタノール水溶液を用いた出力電力密度を時間毎に測定した結果を示している。尚、図6(a),(b)において、エイジング後処理の終了直後「○」、及びエイジング終了後に24時間を保管した後「□」を示している。
【0039】
図6(a)に示す1Mの濃度のメタノール水溶液でエイジングを行った場合、エイジング後処理の終了直後に得られる出力電力に比べて、24時間保管した後で得られる出力電力密度の方が大きな出力値を得ることができる。
【0040】
これに対して、図6(b)に示す5Mの濃度のメタノール水溶液でエイジングを行った場合に、エイジング後処理の終了後に得られる出力電力密度は、前述した1Mによるエージングの出力電力密度と略同等である。また、濃度5Mでは、24時間を保管した後の出力特性が向上せず、濃度1Mと略同等である。
従って、本実施形態におけるDMFCエイジングでは、濃度5Mのメタノール水溶液を用いた場合に、保管中による出力向上は望めないものと判断できる。
【0041】
さらに、本実施形態のDMFCエイジングを1M,5Mのメタノール水溶液で行った後に、濃度1M,5M,10Mのメタノール水溶液を用いて測定した出力結果について説明する。ここでは、図7(a)は、1Mの濃度のメタノール水溶液でDMFCエイジングを行った後、1Mの濃度のメタノール水溶液を用いた出力電力密度を時間毎に測定した結果を示し、図7(b)は、同様に5Mの濃度のメタノール水溶液でDMFCエイジングを行った後、1Mの濃度のメタノール水溶液を用いた出力電力密度を時間毎に測定した結果を示している。
【0042】
図7(a)に示す測定結果では、濃度1Mのメタノール水溶液でDMFCエイジングを行った例では、1Mのメタノール水溶液の供給時には、約70mA/cm2の最大出力電力密度が得られる。これに対し、図7(b)に示す濃度5Mのメタノール水溶液でDMFCエイジングを行った例では、1Mのメタノール水溶液の供給時には、約55mA/cm2の最大出力電力密度となり、図7(a)に示す出力電力密度に比べて、明らかに小さい。
【0043】
また同様に、濃度5M,10Mのメタノール水溶液の供給時に得られる出力電力密度においても、図7(b)に示す濃度5Mのメタノール水溶液で行うDMFCエイジングよりも、図7(a)に示す1Mで行うDMFCエイジングの方が高い出力電力密度の出力特性となっている。
従って、本実施形態のDMFCエイジングは、濃度5Mよりも濃度1Mのメタノール水溶液を用いる方が大きい出力特性を得ることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態においては、第1段目の水素を用いたPEFCエイジング工程は、PEFCエイジング時間を長く取ることにより、DMFCエイジング工程を従来より大幅に短くすることができる。前述した例では、第3例のPEFCエイジング時間を9時間、DMFCエイジング時間を10時間が好ましい。
【0045】
さらに、PEFCエイジング時の操作温度は、80℃が好ましい。
また、後続するDMFCエイジング工程においては、濃度1Mのメタノール水溶液を用いたエイジングを行い、1Mのメタノール水溶液を供給することにより、最大出力電力密度を得ることができる。
以上のように本実施形態の2段階エイジング方法では、最適なパラメータを設定することで、エイジング時間を従来に比べて短縮することができる。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る燃料電池セルについて説明する。
前述した第1の実施形態では、3つのパラメータについて、それぞれの最適な値を求めた。本実施形態では、すべてのパラメータを最適に設定した2段階エイジング工程を用いたエイジング方法について説明する。
【0046】
(1)PEFCエイジング工程
まず、アノード2へ水素を50ml/minで流し、カソード3に酸素を50ml/minで供給して、PEFCエイジングを行う。この時、セル温度、ガス加湿及び供給温度を一定温度80℃に設定し、セル電圧を0.21Vの定電圧で固定して、任意の電子負荷装置を用いて、9時間に亘って負荷をかける。
【0047】
(2)DMFCエイジング工程
次に、アノード2へ濃度1Mのメタノール水溶液を5ml/minで流し、セル電圧が上がりきった時点で、カソード3に酸素を50ml/minで供給して、DMFCエイジングを行う。この時、セル温度、ガス加湿及び供給温度を60℃に設定し、セル電圧を0.21Vの定電圧で固定して、任意の電子負荷装置を用いて、10時間に亘って負荷をかける。
【0048】
図8(a)は、従来、即ち、最適化を行う前のエイジング方法(PEFCエイジング3時間、操作温度80℃、DMFCエイジング27時間、1Mメタノール水溶液)による燃料電池セルの出力特性を示し、図8(b)は、上述した本実施形態による最適方法を用いて、2段階エイジングした場合の燃料電池セルの出力特性を示す。ここでは、メタノール水溶液の濃度1Mを黒丸、5Mを黒四角、10Mを黒三角で示している。
【0049】
図8(a)と図8(b)の比較では、濃度1Mのメタノール水溶液における出力特性は大きな差は認められない。一方、濃度5M,10Mの高濃度のメタノールを用いた場合、最適化後の方が最適化前に比べ明らかに出力は大きいことがわかる。
【0050】
そこで、図9には、メタノール水溶液の濃度毎に濃度に対する最大出力密度を示し、本実施形態による2段階エイジングの効果についてさらに詳しく説明する。図9において、aは、図8(a)に示したエイジング方法による最適化前の出力結果を示し、bは、図8(b)に示した本実施形態によるエイジング方法による最適化後の出力結果を示している。
【0051】
図9によれば、濃度1Mのメタノール水溶液を供給した場合の出力特性は、最適化前と最適化後ではほぼ同等の値である。最適化前のエイジングは、全エイジング時間が30時間を要するのに対して、最適化後の2段階エイジングに要する全エイジング時間は19時間である。
【0052】
従って、本実施形態の2段階エイジングを行うことで、全体的なエイジング時間を短縮することができる。一方、濃度5M,10Mの高濃度のメタノール水溶液を供給した場合には、本実施形態の最適化後の燃料電池セルは、最適化前の燃料電池セルに比べて、最大出力密度が約22%、35%と大幅な向上を示している。つまり、本実施形態における2段階エイジング条件の最適化は、高濃度メタノールを用いた場合には、出力特性の向上という効果を奏する。
【0053】
尚、本実施形態において、メタノール水溶液を用いたエイジングの前に、第1段目として、水素を用いたエイジングを実施することで、エイジング時間を短縮している。このような作用のメカニズム自体を正確には掌握していないが、本来反応していない不活性領域に、サイズの小さい水素分子が入り込むことで道(隙間)が広がり、その道に水素に比べてサイズの大きいメタノール分子が通りやすくなるためと推測する。
【0054】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。
図10は、本実施形態の直接アルコール形燃料電池に用いるエイジング装置のブロック構成を示す図である。ここでは、燃料として、メタノール水溶液を使用する、直接メタノール形燃料電池を一例として説明する。
【0055】
このエイジング装置は、主として、第1の供給部となる水素供給部101と、第2の供給部となるメタノール水溶液供給部102と、水素供給部101とメタノール水溶液供給部102との出力を切り替える切り替え部103と、第3の供給部となる酸素供給部105と、コントローラ106とで構成される。このエイジング装置は、エイジング対象となる直接メタノール形燃料電池104が着脱自在となるように構成されている。コントローラ106は、エイジング装置全体の動作を制御する。また、図10中に示す矢印を含む実線は、水素、メタノール水溶液及び酸素等の流れを示し、矢印を含む点線は、コントローラ106による制御信号を示している。
【0056】
水素供給部101は、水素を貯蔵する水素ボンベ101aと水素ボンベ101aからの水素の流れと流量を制御するバルブ101bと構成される。バルブ101bは、コントローラ106からの制御信号によって開閉が制御される。尚、水素は水素ボンベ101aに貯蔵する代わりに、アンモニア・ボレイン等の水素を含んだ物質から必要な時に必要な分量の水素を発生させる水素発生器(図示せず)で構成してもよい。また、水素ボンベ101aは、LaNi5等のような水素吸蔵合金を利用したものでもよい。
【0057】
次に、メタノール水溶液供給部102は、メタノールを水で希釈したメタノール水溶液を貯蔵するタンク102aと、タンク102aからのメタノール水溶液の流れと流量を制御するバルブ102bで構成され、そのバルブ102bは、コントローラ106からの制御信号によって開閉が制御される。
【0058】
切り替え部103は、エイジングを行う対象である、直接メタノール形燃料電池104の燃料極に対して、水素供給部101から供給される水素又は、メタノール水溶液供給部102から供給されるメタノール水溶液のいずれか一方を選択的に供給する。この切り替え部103の切り換え動作は、コントローラ106からの制御信号によって切り換え制御される。
【0059】
具体的には、切り替え部103は、水素供給部101から供給される水素の流れを制御して止めるか、又は流すかのいずれかの状態にする電磁的に制御可能な第1バルブ103aと、メタノール水溶液供給部102から供給されるメタノール水溶液の流れを制御して止めるか、又は流すかのいずれかの状態にする電磁的に制御可能なバルブ103bで構成される。これらのバルブ103a,103bは、コントローラ106によって、同時に、水素とメタノール水溶液の両方が直接メタノール形燃料電池104に供給されないように制御されている。
【0060】
また、酸素供給部105は、直接メタノール形燃料電池104の空気極(酸素極)に酸素を供給する。酸素供給部105は、バルブ105aと、酸素ボンベ105bとで構成され、コントローラ106からの制御信号によりバルブ105aが開閉されて、酸素の供給の有無とその流量が制御されている。
【0061】
コントローラ106は、例えば、パーソナルコンピュータで構成され、エイジング装置全体の動作を制御して、直接メタノール形燃料電池104に対して本実施形態による2段階エイジングを実施する。
【0062】
図11に示すフローチャートを参照して、本実施形態による2段階エイジングの動作について説明する。
本実施形態による2段階エイジングを実施するに当たり、初期設定として、例えば最初に水素によるエイジングを9時間、次にメタノール水溶液によるエイジングを10時間等の各種パラメータや設定条件は、コントローラ106に設定されたプログラムに従い、予め定められたパラメータテーブルに設定されている。
【0063】
まず、PEFCエイジング工程を行う。図10に示した切り替え部103を水素供給側にセットする(ステップS1)。即ち、直接メタノール形燃料電池104の燃料極に水素が供給できるように流路を形成する。
【0064】
次に、コントローラ106は水素供給部101のバルブ103bを開き、直接メタノール形燃料電池104の燃料極に水素供給を開始する。水素の流量は、バルブ101bの調節により、例えば、50ml/分に設定される。続いて、コントローラ106は、酸素供給部105に指令を出し、酸素を直接メタノール形燃料電池104の空気極に供給する。その流量を例えば50ml/分に設定する。次に、コントローラ106は直接メタノール形燃料電池104の発電出力を確認した後に、任意に設定された負荷を接続する(ステップS2)。この負荷は、公知な電子負荷装置を用いて、定電圧又は定電流となるように任意の負荷値に設定する。
【0065】
次に、コントローラ106に搭載されている図示しないタイマを用いて、水素供給の開始から経過した時間を計測する(ステップS3)。その計測された時間が、予め設定されている水素によるエイジング時間(ここでは、9時間に設定)を経過したか否かを判断する(ステップS4)。この判断において、計測された時間がエイジング時間を経過していなければ(NO)、ステップS3に戻り、時間計測を行いつつ、水素供給を継続する。
【0066】
一方、計測時間がエイジング時間を経過したならば(YES)、ステップS5における停止動作を行う。ステップS5では、水素によるエイジング動作が終了した状態であるので、直接メタノール形燃料電池104に接続されている負荷を停止させることで電気的に分離し、水素供給部101からのバルブを閉めて、燃料極への水素供給を停止する。同時に、酸素供給部105からのバルブを閉めて、空気極への酸素の供給を停止する。
【0067】
引き続き、DMFCエイジング工程への切り換えを行う。図10に示した切り替え部103をメタノール水溶液供給側にセットする(ステップS6)。即ち、直接メタノール形燃料電池104の燃料極に、メタノール水溶液が供給できるように流路を形成する。
【0068】
その後、コントローラ106は、メタノール水溶液及び酸素を供給し、負荷を接続する(ステップS7)。具体的には、メタノール水溶液供給部102のバルブ102bを開き、直接メタノール形燃料電池104の燃料極にメタノール水溶液の供給を開始する。この時、バルブ102bは、例えば1Mの濃度のメタノール水溶液を5ml/分の供給量となるように調節される。
【0069】
引き続いて、コントローラ106は、酸素供給部105に指令を出し、酸素を直接メタノール形燃料電池104の空気極に供給する。その供給量は、水素によるエイジング時と同等な50ml/分に設定する。次に、コントローラ106は直接メタノール形燃料電池104の発電出力を確認した後に、所定の負荷を接続する。所定の負荷としては、市販されている電子負荷装置を用いて、定電圧又は定電流の負荷となるようにする。
【0070】
次に、メタノール水溶液の供給を開始してから経過した時間を計測する(ステップS8)。計測を開始した後、予め設定されているメタノール水溶液によるエイジング時間、本実施例では10時間を経過したか否かを判断する(ステップS9)。この判断において、計測時間が設定されたエイジング時間を経過していなければ(NO)、ステップS8に戻り、時間計測を行いつつ、メタノール水溶液の供給を継続する。
【0071】
一方、計測時間が設定されたエイジング時間を経過したならば(YES)、負荷の分離とメタノール水溶液及び酸素の供給停止を行う(ステップS10)。具体的には、メタノール水溶液によるエイジング動作が終了した状態であるので、直接メタノール形燃料電池104に接続されている負荷を停止させることで電気的に分離する。それと共に、メタノール供給部102のバルブ102bを閉めて燃料極へのメタノール水溶液の供給を停止し、且つ酸素供給部105のバルブを閉めて空気極への酸素の供給を停止する。
【0072】
最後に、エイジング後処理工程を行い、水素とメタノール水溶液による2段階エイジング動作を終了する(ステップS11)。このエイジング後処理は、前述したと同様に、メタノール水溶液によるエイジングが終了した後に、燃料極へ水、空気極へ酸素を供給した状態で負荷電圧を0.21Vに保ち、電流値が取り出せなくなったら、燃料極に窒素を供給し、燃料極電位の変化がなくなった時点で完了する。このエイジング後処理は、メタノールが直接メタノール形燃料電池を構成する電解質膜や触媒層中に残留して触媒を被毒する恐れがあるので、それを取り除くために行う処理である。
【0073】
尚、図11には記載していないが、コントローラ106は常に直接メタノール形燃料電池104の発電出力や燃料極電位をモニタリングしており、エイジング動作中に異常が発生した場合には、エイジング動作を停止させて直接メタノール形燃料電池104が劣化したり破損したりすることを防止している。
【0074】
本実施形態は、上記記載された形に限定されることはなく、いくつかの変形が可能である。例えば、酸素供給部は空気を供給する部に置き換えることも可能である。その場合は直接メタノール形燃料電池104の空気極に電動ファンによって空気を吹き付けることで酸素を供給する。また、水素及びメタノール水溶液のエイジング時間は、予め設定していたが、外部機器から、エイジング時間等の各種設定事項の数値(パラメータ)を入力してコントローラ106に設定(書き換え及び消去も含む)できるように、外部設定機能や通信機能等を備えてもよい。
【0075】
[第4実施形態]
図12は、第4の実施形態に係る直接アルコール形燃料電池のエイジング装置のブロック構成を示す図である。本実施形態においては、前述した第3の実施形態と同様に、燃料としてメタノール水溶液を使用する、直接メタノール形燃料電池を一例として説明する。本実施形態は、前述した第3の実施形態に2つの加湿部107,108を追加した構成である。尚、加湿部以外の構成部位において、第3の実施形態と同等の構成部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
本実施形態は、水素供給部101と切り替え部103との間の供給経路上に、加湿部107が設けられ、酸素供給部105と直接メタノール形燃料電池104との間の供給経路上に、加湿部108が設けられ、コントローラ106によって駆動制御される。
【0077】
通常の直接メタノール形燃料電池104は、電解質膜として、フッ素樹脂系のイオン交換膜、例えばNafion膜等が用いられている。これらの膜は湿潤状態でのみ高いH+イオン導電性を示すため、膜への水分供給が必要である。そこで本実施形態では、加湿部107は、水素供給部101から燃料極に供給される水素を加湿し、同様に、加湿部108は、酸素供給部105から空気極に供給される酸素を加湿する。
【0078】
また、エイジング動作中に供給される水素、酸素及び、メタノール水溶液のそれぞれの温度も含め、直接メタノール形燃料電池104のある程度高い任意の温度を一定に保つことが必要である。これは、任意の高い温度を維持することにより、直接メタノール形燃料電池自体の反応速度を上げて、エイジング効果を促すことができる。
【0079】
この任意の温度に設定し維持させるために、本実施形態のエイジング装置は、装置全体の温度を一定に保つための温度制御部109を設けている。この温度制御部109は、設定された温度に対して装置全体を一定の温度に保つ加温冷却機能を有している。特に、2段階エイジング動作においては、水素を供給するエイジング時と、メタノール水溶液を供給するエイジング時とでは、最適温度が異なるため、それぞれのエイジング時で設定温度を変えて、最適な温度を一定に維持する。尚、この例では、温度制御部109は、装置全体を一定の温度に保つ構成であるが、勿論、全体と限定されるものではなく、必要な部分、例えばユニット単位であってもよい。
【0080】
次に、図13に示すフローチャートを参照して、本実施形態におけるエイジング動作について説明する。尚、以下のフローチャートのステップにおいて、前述した図11に示したステップと同じ処理の場合には、同じステップ番号を付して、簡略化して説明する。
【0081】
本実施形態におけるエイジング動作は、第1の加温工程、PEFCエイジング工程、切り替え工程、第2の加温工程、DMFCエイジング工程及び、エイジング後処理工程の手順により行われる。尚、実際の工程では、第1の加温工程は、PEFCエイジング工程に含まれ、第2の加温工程は、DMFCエイジング工程に含まれている。
【0082】
まず、第1の加温工程において、コントローラ106によって加湿部107,108をオンして起動する(ステップS21)。これらの加湿部107,108により、水素供給部101から供給される水素と、酸素供給部105から供給される酸素が加湿され、それぞれ直接メタノール形燃料電池104の燃料極と空気極に供給される。
【0083】
次に、コントローラ106は、温度制御部109に対して、供給される水素が、例えば、目標設定温度80℃となるように設定し、加温・冷却を行う(ステップS22)。ここで、温度80℃は、経験的に求められた温度であり、2段階エイジングのPEFCエイジング工程における水素によるエイジングを行う際の最適温度である。また、エイジング装置には一定の熱容量があるため、装置全体が設定した80℃に達するまで、加温状態で待機する。
【0084】
次に、PEFCエイジング工程を行う。直接メタノール形燃料電池104の燃料極への水素供給流路を形成する(ステップS1)。その後、バルブ103bを開き水素供給を開始し、負荷を接続する(ステップS2)。さらに、水素供給の時間を計測し(ステップS3)、予め設定されたエイジング時間が経過したならば(ステップS4)、水素の供給を停止する(ステップS5)。引き続き、切り替え工程にて、PEFCエイジング工程からDMFCエイジング工程への切り換えを行う。即ち、直接メタノール形燃料電池104の燃料極へのメタノール水溶液供給流路を形成する。(ステップS6)
また、メタノール水溶液を供給するエイジング動作において、コントローラ106は、温度制御部109に対して、例えば、目標設定温度60℃となるように設定し、加温・冷却を行う(ステップS23)。ここで、温度60℃は、経験的に求められた最適温度であり、2段階エイジングのDMFCエイジング工程におけるメタノール水溶液によるエイジングを行う際の最適温度である。
【0085】
その後、直接メタノール形燃料電池104に、メタノール水溶液及び酸素をそれぞれに供給し、負荷を接続する(ステップS7)。その後、メタノール水溶液供給時間を計測し(ステップS8)、予め設定されたエイジング時間が経過したならば(ステップS9)、メタノール水溶液の供給を停止する(ステップS10)。最後に、エイジング後処理工程を行い、水素とメタノール水溶液による2段階エイジング動作を終了する(ステップS11)。
【0086】
本発明によれば、従来は30時間以上かかっていたエイジング時間を約3分の2に低減することができ、もって燃料電池の製造工程時間を短縮することが可能となる。また、同時に、本発明の燃料電池のエイジング方法を採用することにより、燃料電池の単位面積当たりの発電電力密度を従来の2倍程度に向上させることができ、燃料電池の性能を向上させることができる。
【0087】
さらに、メタノール濃度の濃いメタノール水溶液に対しても、従来のエイジング方法に比べて20−30%高い電力密度の燃料電池を提供することができ、燃料に対する自由度を向上させることができる。
【0088】
以上説明した各実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池の2段階エイジング方法において、第1段目に、水素を燃料として一定負荷の下で3時間以上連続して発電させ、次の第2段目に水素を燃料として発電させた時間より長い時間、メタノールを燃料として一定負荷の下で連続して発電させることで、直接メタノール形燃料電池をエイジングする。具体的には、水素によるエイジング時間を9時間、メタノールによるエイジング時間を10時間とする。
【0089】
従って、実施形態の2段階エイジング方法によれば、トータルのエイジング時間を従来の半分程度に短縮し、且つエイジング後の燃料電池の発電特性を従来のエイジング方法でエイジングした場合より向上させることが可能となる。
【0090】
(2)メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池の2段階エイジング方法は、第1段目エイジングにおける水素によるエイジングを行う場合、燃料電池の温度を80℃以上で行うことにより、高濃度のメタノール水溶液を使用した場合の発電性能を従来の方法より向上させることができる。
【0091】
(3)メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池の2段階エイジング方法において、メタノールによるエイジングの際に使用するメタノールの濃度を1M以下とすることにより、高濃度のメタノール水溶液を使用した場合の発電性能を従来の方法より向上させることができる。
【0092】
上記(1)乃至(3)に記載したエイジング方法を組み合わせることにより、従来は、30時間以上かかっていたエイジング時間を約3分の2程度に短縮することができるとともに、燃料電池の単位面積当たりの発電電力密度を向上させ、かつ、高濃度のメタノール水溶液を使用した場合の発電性能を向上させることが可能となる。
【0093】
(4)本実施形態の2段階エイジング方法を実現する直接アルコール燃料電池のエイジング装置として、少なくとも水素を供給する第1の供給部、アルコールを主成分とする流体を供給する第2の供給部、酸化剤流体を供給する第3の供給部を有し、上記第1の供給部と第2の供給部が、直接アルコール形燃料電池の燃料極に接合され、且つ供給される水素とアルコールとを切り替える切り替え部と、を有する直接アルコール形燃料電池用エイジング装置を提供することができる。
【0094】
(5)さらに上記エイジング装置は、供給される水素を加湿する第1の加湿部と、酸化剤としての酸素又は酸素を含む流体を加湿する第2の加湿部を備え、また、水素を供給する第1の供給部と、アルコールを主成分とする流体を供給する第2の供給部と、酸化剤流体を供給する第2の供給部と、直接アルコール形燃料電池の一部又は全部を加温・冷却する温度制御部と、を備え、エイジング時の燃料電池の発電動作を安定的に行うことが可能である。
【0095】
この直接アルコール形燃料電池用エイジング装置は、水素によるエイジング時間とアルコールを主成分とする流体によるエイジング時間をそれぞれ独立に設定可能であるので、それぞれの燃料電池に最適なエイジング時間を設定することができる。
【符号の説明】
【0096】
1…燃料電池セル、2…アノード(燃料極)、3…カソード(空気極)、4…電解質膜、5…MEA(Membrane Electrode Assembly)、6…燃料流入口、7…燃料流出口、8…酸素流入口、9…酸素流出口。
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノール等の直接アルコール形燃料電池のエイジング方法及びそのエイジング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話やPDA、デジタルカメラ等の携帯用情報機器は、主にリチウムイオン電池等の充電可能な二次電池が電源として用いられている。近年、これらの情報機器における高機能化、多機能化、高速化及び長時間連続駆動の要求に伴い、小型燃料電池が新たな電源として期待されており、一部では試作及び試用も開始されている。
【0003】
燃料電池は、従来の二次電池とは異なり、充電作業が不要であり、燃料を補充又は燃料カートリッジを交換するだけで瞬時に機器を長時間稼動させることが可能な状態にすることができる。これらの燃料電池のうち、メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池DMFC(Direct Methanol Fuel Cell)は、出力電力密度は高くはないものの、燃料の取扱いが容易であることから、携帯用機器への充電用等の用途で実用化が始まっており、商品として販売もされている。
【0004】
直接メタノール形燃料電池は、組立製造後に発電特性を安定化させるために通常、エイジングと呼ばれる作業工程を実施する必要がある。ここで言うエイジングは,コンディショニングと呼ばれることもある。このエイジングに用いられるプロセスとしては、様々な方法が知られている。例えば、非特許文献1及び2には、実際に発電させる燃料を使用して、燃料電池の出力端に負荷を接続して、一定時間燃料電池を動作させる行う方法が開示されている。
【0005】
このようなエイジング方法においては、経験的に安定した特性が得られるまでの時間と環境、例えば周囲温度60℃で30時間連続的に負荷を接続して実施している。また、非特許文献1及び2には、水素によるエイジングを行った後にメタノールによるエイジングを行う方法も開示されているが、このエイジング方法においても、トータルで30時間を費やしている。
また、特許文献1には、発電を開始した燃料電池の電極間に外部から強制的に通電を行ってエイジングを行う技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−40869号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「直接メタノール形燃料電池の高出力化に対するエイジング方法の影響」岩崎達也著 他、電池討論会講演要旨集、vol.50th Page 489 (2009.11.30)
【非特許文献2】「直接メタノール形燃料電池出力特性に及ぼすエイジング方法の検討」岩崎達也著 他電気化学会、3R03 (2009.3.31)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した非特許文献1及び2により提案されるエイジング方法では、燃料電池が使用可能になるまでに30時間以上を要しているため、現実的に製造工程に組み入れるには、更なる時間短縮が要求されている。また、特許文献1においては、燃料電池が発電する極性と同じ極性で外部から強制的に通電することによって、エイジングを行っている。この方法においては、予め定められた通電条件下において、燃料電池の状態(アノード側の水分量等)を観測して、その通電時間や印加回数を適宜制御する必要があり、繁雑な作業となっている。また、その際に、不慮の事態により想定外の通電条件となった場合には、燃料電池に損傷を与えるため、注意を払わなければならない。
【0009】
そこで本発明は、水素及びアルコールによるエイジング時間が個々に設定可能であり、燃料電池の製造工程には最適なエイジングで時間短縮を実現し、且つエイジング後の燃料電池の発電特性を向上させる直接アルコール形燃料電池のエイジング方法及びそのエイジング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に従う実施形態は、メタノールを含むアルコールを主成分とする流体を燃料とする直接アルコール形燃料電池のエイジング方法であって、前記直接アルコール形燃料電池に、水素を燃料として供給して、予め定めた一定負荷の下で予め定めた第1の設定時間を越えて発電する第1段目のエイジングと、続いて、前記直接アルコール形燃料電池に、前記水素からアルコールを主成分とする流体に切り替えて、燃料として供給して、予め定めた一定負荷の下で予め定めた第2の設定時間を発電させる第2段目のエイジングと、で構成される2段階エイジングである直接アルコール形燃料電池のエイジング方法を提供する。
【0011】
また、本発明に従う実施形態は、直接アルコール形燃料電池の燃料極に、水素を供給する第1の供給部と、前記直接アルコール形燃料電池の燃料極に、アルコールを主成分とする流体を供給する第2の供給部と、前記直接アルコール形燃料電池に、酸化剤流体を供給する第3の供給部と、前記第1の供給部と前記第2の供給部から送出される前記水素と前記流体を切り替えて、前記燃料極に供給する切り替え部と、を具備し、前記第1の供給部から前記燃料極に水素を燃料として供給し、任意の条件下の発電による第1段目のエイジングを実施した後、前記切り替え部により、前記水素から前記第2の供給部から供給される前記流体に切り替えて供給し、任意の条件下の発電による第2段目のエイジングを実施する、2段階エイジングを行う直接アルコール形燃料電池用エイジング装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水素及びアルコールによるエイジング時間が個々に設定可能であり、燃料電池の製造工程における最適なエイジングで時間短縮を実現し、且つエイジング後の燃料電池の発電特性を向上させる直接アルコール形燃料電池のエイジング装置及びそのエイジング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態に用いる直接メタノール形燃料電池における燃料電池セルの概念的な断面構成を示す図である。
【図2】図2(a),(b),(c)は、第1例乃至第3例のそれぞれのエイジング時間による出力電力電流密度の特性を示す図である。
【図3】図3(a),(b),(c)は、第1例乃至第3例の燃料電池に対して、メタノール水溶液の濃度1M,5M,10Mをそれぞれに供給した時の出力電力密度及びセル電圧の測定結果を示す図である。
【図4】図4(a),(b)は、PEFCエイジング工程におけるエイジングの操作温度60℃,80℃の時の出力電力密度の測定結果を示す図である。
【図5】図5(a),(b)は、PEFCエイジングを操作温度60℃,80℃で行った燃料電池の異なる濃度のメタノール水溶液を用いた時の出力電力密度の測定結果を示す図である。
【図6】図6(a)は、DMFCエイジング後、1Mの濃度のメタノール水溶液を用いた出力電力の測定結果を示す図、図6(b)は、5Mの濃度のメタノール水溶液を用いた出力電力密度の測定結果を示す図である。
【図7】図7(a),(b)は、DMFCエイジングを1M,5Mのメタノール水溶液で行った後に、濃度1M,5M,10Mのメタノール水溶液を用いて測定した出力結果を示図である。
【図8】図8(a)は、最適化を行う前のエイジング方法による燃料電池セルの出力特性を示す図、図8(b)は、第2の実施形態による最適方法を用いた2段階エイジングした場合の燃料電池セルの出力特性を示す図である。
【図9】図9は、第2の実施形態におけるエイジング方法による最適化前及び最適化後の出力結果を示す図である。
【図10】図10は、第3の実施形態に係る直接アルコール形燃料電池に用いるエイジング装置のブロック構成を示す図である。
【図11】図11は、第3の実施形態による2段階エイジングの動作について説明するためのフローチャートである。
【図12】図12は、第4の実施形態に係る直接アルコール形燃料電池のエイジング装置のブロック構成を示す図である。
【図13】図13は、第4の実施形態による2段階エイジングの動作について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施形態]
図1を参照して、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、実施形態に用いる直接メタノール形燃料電池における燃料電池セルの概念的な断面構成を示している。
【0015】
この燃料電池は、電解質膜としてNafion117(登録商標)を使用し、カソード触媒には、Pt/C(Pt担持量:45.9wt.%)、アノード触媒にはPt−Ru/C(Pt担持量:32.6wt.%、Ru担持量:16.9wt.%)を用いている。これらのうち、電極触媒層は、これらのカソード、アノード触媒とNafion溶液を攪拌混合して調整した触媒塗布液を、拡散層として用いたカーボンペーパー(2.25cmx2.25cm)上にエアースプレーで吹き付けて作製した。この時、カーボンペーパーは触媒層の面積が2.24×2.24cm(5cm2)の大きさになるようにPETフィルムでマスクする。電極触媒塗布量は、1.0mg/cm2の金属量となるように調整した。続いて、Pt/C、Pt−Ru/C触媒をそれぞれに吹き付けたカーボンペーパーで電解質を挟み、ホットプレスしてMEA(Membrane Electrode Assembly)5を作製した。
【0016】
図1に示す燃料電池セル1は、上記MEA5が組み込まれた構成を示している。この燃料電池セル1は、MEA5からなる電解質膜4を両側から挟み込むように、アノード(燃料極)2及び、カソード(空気極)3が設けられている。また、アノード2側には、上部に燃料となる水素又はメタノール水溶液を流入するための燃料流入口6と、その燃料を排出する燃料流出口7とを有する燃料流路がアノード2と接合するように設けられている。
【0017】
さらに、カソード3側には、酸素又は空気が流れ込む酸素流入口8と、酸素又は空気、及び発電時に発生する水が排出される酸素流出口9とを有する酸素流路がカソード3と接合するように設けられている。
【0018】
尚、図示していないが、それぞれの流路に燃料と酸素(または空気)を供給するためのポンプが設けられており、所望する流入量となるように制御されている。同様に、図示しない温度調整機構を備えており、燃料電池セル1の温度と供給する燃料の温度が予め設定した温度を保つように調整されている。
【0019】
以下、本実施形態におけるエイジング方法について説明する。本実施形態のエイジング方法は、主として、第1段目のPEFC(Polymer Electrolyte Fuel Cell)エイジング工程と、第2段目のDMFC(Direct Methanol Fuel Cell)エイジング工程による「2段階エイジング方法」である。
【0020】
(1)PEFCエイジング工程
アノード2へ水素を50ml/minを供給し、カソード3には酸素を50ml/minで供給してエイジングを行う。このエイジングにおいては、セル温度、ガス加湿及び供給温度を一定温度Tp℃に設定し、セル電圧を0.21Vの定電圧で固定して、任意の電子負荷装置を用いて、tp時間に亘り負荷をかける。
【0021】
(2)DMFCエイジング工程
アノード2へ濃度CmMのメタノール水溶液を5ml/minで流し、セル電圧が上がりきった時点で、カソード3に酸素を50ml/minで供給してDMFCエイジングを行う。このエイジングにおいては、セル温度、ガス加湿及び供給温度を60℃に設定し、セル電圧を0.21Vの定電圧で固定して、任意の電子負荷装置を用いて、tm時間に亘り負荷をかける。
【0022】
(3)エイジング後処理工程
上記(2)DMFCエイジングが終了した後、アノード2へ水、カソード3へ酸素をそれぞれに供給した状態で、電圧を0.21Vに保ち、電流値が取り出せなくなるまで任意の電子負荷装置を用いて負荷をかけ、続いてカソードに窒素を供給し、カソード電位の変化が無くなった時点でエイジング後処理工程を完了する。
【0023】
このような2段階エイジング方法においては、以下のようにパラメータを設定している。
・PEFCエイジング時間:tp(時間)とDMFCエイジング時間:tm(時間)
・PEFCエイジング時の温度(操作温度):Tp(℃)
・DMFCエイジング時のメタノール濃度:Cm(M) 但し、Mはモル濃度(mol/L)とする。
【0024】
本実施形態では、それぞれのパラメータの最適値を選定するために、2つまたは3つの組み合わせ例を選定し、比較を行った。
まず、PEFCエイジング時間:tp(時間)とDMFCエイジング時間:tm(時間)のパラメータについて述べる。
各組み合わせにおいて、エイジング時の操作温度Tpは60℃、メタノール濃度Cmは1Mとする。これらの選定条件の下で、図2(a)に示す第1例は、tpを3時間、tmを27時間として実施した例、図2(b)に示す第2例は、tpを6時間及びtmを10時間として実施した例及び、図2(c)に示す第3例は、tpを9時間、tmを10時間として実施した例である。
【0025】
図2(a),(b),(c)は、共にエイジングが完了した燃料電池セルに対して、エイジング終了直後「○」と、エイジング後処理終了直後「□」と、エイジング後未動作で常温にて24時間保管した後「△」との、それぞれの出力電力密度(又は、出力電力と称する)による出力特性(又は、発電特性)を示している。
【0026】
これらの出力特性を比較すると、図2(a)に示す第1例においては、エイジング終了直後に対して、未動作で24時間保管することにより大幅に発電特性が向上している。これに対して、図2(b),(c)に示す第2例及び第3例では、エイジング終了直後と、非動作にて24時間を保管した後とでは、出力特性の向上は比較的小さい。
【0027】
しかし、第1例乃至第3例において、共に、24時間保管後に得られる性能は同等であるが、エイジング後終了処理の直後の出力電力密度を比較すると、第1例より第2例及び第3例の方が明らかに大きい。即ち、この結果から分かるように、PEFCエイジング時間を延ばすことによって、保管を行わなくとも、エイジング直後からDMFC出力特性が向上するため、エイジング時間を短縮することができる。
【0028】
次に、図3(a),(b),(c)は、第1例乃至第3例の燃料電池に対して、メタノール水溶液の濃度1M,5M,10Mをそれぞれに供給した時の出力電力密度の測定結果を示している。ここでは、図3(a)は、第1例の燃料電池、図3(b)は、第2例の燃料電池、図3(c)は、第3例の燃料電池とする。尚、図3(a)乃至(c)において、出力電力の特性は、図2(a)乃至(c)と同等のプロットマークとし、セル電圧特性(電流・電圧特性I−V又は電流・出力特性I−P)は、メタノール水溶液の濃度1Mを黒丸、5Mを黒四角、10Mを黒三角で示している。
【0029】
これらの図3(a)乃至(c)に示すように、第1例乃至第3例において、1Mのメタノール濃度で得られるセル電圧特性は、PEFCエイジング時間が異なっても大きい差は生じていない。図3(b) ,(c)に示す第2例及び第3例は、DMFCエイジングに要する時間が10時間であり、図3(a)に示す第1例のPEFCエイジングに要する27時間に比べて、格段に短時間となる。
【0030】
即ち、第1段目のPEFCエイジング時間を延ばすことにより、後続する第2段目のDMFCエイジング時間を短縮することができる。つまり、第1例と第3例を比較すると、トータルのエイジング時間で比較すると、11時間の短縮を実現している。
【0031】
さらに、メタノール水溶液の濃度5Mで得られる最大出力電力密度は、図3(a)に示す第1例及び図3(b)に示す第2例における約40mA/cm2に対して、図3(c)に示す第3例では、約50mA/cm2と大きくなる。同様に、メタノール水溶液濃度10Mの場合もPEFCエイジング時間の最も長い第3例の最大出力密度が最大になる。このことから、PEFCエイジング時間を延ばすことで、高濃度のメタノール供給時の出力特性を向上させることができる。
【0032】
以上説明したように、水素によるPEFCエイジング時間tpは、後続のDMFCエイジング時間tmを短縮でき、且つ高濃度メタノール供給時の出力特性が最も高い、第3例の9時間が最適であることがわかる。従って、第3例を選択することにより、第1例に比べて、後続のDMFCエイジング時間tmの短縮及び出力特性の向上が実現し、第2例に比べて、発電特性の向上を実現する。
【0033】
次に、図4(a),(b)を参照して、PEFCエイジング工程におけるエイジングの操作温度Tp℃の設定について説明する。図4(a)は、前述したPEFCエイジング工程中の操作温度が60℃、図4(b)は、操作温度が80℃の時の結果を示している。尚、図4(a),(b)において、エイジング終了直後「○」、エイジング後処理終了直後「□」、24時間単セルを保管した後「△」における、それぞれの出力電力密度を1Mのメタノール水溶液を用いて時間毎に測定した特性を示している。
【0034】
図4(a)に示すように、60℃によるエイジング終了直後とエイジング後処理終了直後との出力電力密度の比較では、エイジング後処理を実施した方が大きく向上する。しかし、燃料電池セルをエイジング終了後、24時間保管すると、エイジング終了直後よりも向上しているが、エイジング後処理を行った燃料電池セルと比べると、得られる出力電力密度は低下している。
【0035】
これに対して、図4(b)に示すような80℃によるエイジング終了直後とエイジング後処理終了直後との出力電力密度の比較では、同様な出力特性を有している。また、燃料電池をエイジング終了後、24時間保管すると、エイジング終了直後及びエイジング後処理終了直後よりも出力電力密度が向上する。
以上の結果から、PEFCエイジングの操作温度は、DMFCエイジング終了直後だけでなく、保管後の出力特性にも大きく影響することがわかる。
【0036】
図5(a),(b)には、第1段目の水素を用いたPEFCエイジングを操作温度60℃、80℃で行った燃料電池に対して、1M、5M、10Mの異なる濃度のメタノール水溶液を用いて出力電力密度を測定した結果を示す。ここで、図5(a)は、操作温度60℃とし、図5(b)は、操作温度80℃とする。
【0037】
図5(a)に示す結果においては、1Mのメタノール水溶液で得られる出力電力密度は、約65mA/cm2である。図5(b)において、同様に1Mのメタノール水溶液で得られる出力電力密度は約70 mA/cm2となり、操作温度の違いによる出力値に大きな差は認められない。これに対して、5M,10Mの高濃度のメタノール水溶液を用いた場合には、操作温度60℃に比べて、操作温度80℃の方が明らかに出力電力密度が大きい。
従って、2段階エイジングにおけるPEFCエイジングの操作温度は60℃より80℃の方が最適である。
【0038】
次に、PEFCエイジング工程に後続するDMFCエイジング工程において、1M及び5Mのメタノール濃度Cm(M)によりエイジングした燃料電池セルの出力特性について説明する。図6(a)は、DMFCエイジングの後、1Mの濃度のメタノール水溶液を用いた出力電力を時間毎に測定した結果を示し、図6(b)は、同様に5Mの濃度のメタノール水溶液を用いた出力電力密度を時間毎に測定した結果を示している。尚、図6(a),(b)において、エイジング後処理の終了直後「○」、及びエイジング終了後に24時間を保管した後「□」を示している。
【0039】
図6(a)に示す1Mの濃度のメタノール水溶液でエイジングを行った場合、エイジング後処理の終了直後に得られる出力電力に比べて、24時間保管した後で得られる出力電力密度の方が大きな出力値を得ることができる。
【0040】
これに対して、図6(b)に示す5Mの濃度のメタノール水溶液でエイジングを行った場合に、エイジング後処理の終了後に得られる出力電力密度は、前述した1Mによるエージングの出力電力密度と略同等である。また、濃度5Mでは、24時間を保管した後の出力特性が向上せず、濃度1Mと略同等である。
従って、本実施形態におけるDMFCエイジングでは、濃度5Mのメタノール水溶液を用いた場合に、保管中による出力向上は望めないものと判断できる。
【0041】
さらに、本実施形態のDMFCエイジングを1M,5Mのメタノール水溶液で行った後に、濃度1M,5M,10Mのメタノール水溶液を用いて測定した出力結果について説明する。ここでは、図7(a)は、1Mの濃度のメタノール水溶液でDMFCエイジングを行った後、1Mの濃度のメタノール水溶液を用いた出力電力密度を時間毎に測定した結果を示し、図7(b)は、同様に5Mの濃度のメタノール水溶液でDMFCエイジングを行った後、1Mの濃度のメタノール水溶液を用いた出力電力密度を時間毎に測定した結果を示している。
【0042】
図7(a)に示す測定結果では、濃度1Mのメタノール水溶液でDMFCエイジングを行った例では、1Mのメタノール水溶液の供給時には、約70mA/cm2の最大出力電力密度が得られる。これに対し、図7(b)に示す濃度5Mのメタノール水溶液でDMFCエイジングを行った例では、1Mのメタノール水溶液の供給時には、約55mA/cm2の最大出力電力密度となり、図7(a)に示す出力電力密度に比べて、明らかに小さい。
【0043】
また同様に、濃度5M,10Mのメタノール水溶液の供給時に得られる出力電力密度においても、図7(b)に示す濃度5Mのメタノール水溶液で行うDMFCエイジングよりも、図7(a)に示す1Mで行うDMFCエイジングの方が高い出力電力密度の出力特性となっている。
従って、本実施形態のDMFCエイジングは、濃度5Mよりも濃度1Mのメタノール水溶液を用いる方が大きい出力特性を得ることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態においては、第1段目の水素を用いたPEFCエイジング工程は、PEFCエイジング時間を長く取ることにより、DMFCエイジング工程を従来より大幅に短くすることができる。前述した例では、第3例のPEFCエイジング時間を9時間、DMFCエイジング時間を10時間が好ましい。
【0045】
さらに、PEFCエイジング時の操作温度は、80℃が好ましい。
また、後続するDMFCエイジング工程においては、濃度1Mのメタノール水溶液を用いたエイジングを行い、1Mのメタノール水溶液を供給することにより、最大出力電力密度を得ることができる。
以上のように本実施形態の2段階エイジング方法では、最適なパラメータを設定することで、エイジング時間を従来に比べて短縮することができる。
[第2の実施形態]
次に、第2の実施形態に係る燃料電池セルについて説明する。
前述した第1の実施形態では、3つのパラメータについて、それぞれの最適な値を求めた。本実施形態では、すべてのパラメータを最適に設定した2段階エイジング工程を用いたエイジング方法について説明する。
【0046】
(1)PEFCエイジング工程
まず、アノード2へ水素を50ml/minで流し、カソード3に酸素を50ml/minで供給して、PEFCエイジングを行う。この時、セル温度、ガス加湿及び供給温度を一定温度80℃に設定し、セル電圧を0.21Vの定電圧で固定して、任意の電子負荷装置を用いて、9時間に亘って負荷をかける。
【0047】
(2)DMFCエイジング工程
次に、アノード2へ濃度1Mのメタノール水溶液を5ml/minで流し、セル電圧が上がりきった時点で、カソード3に酸素を50ml/minで供給して、DMFCエイジングを行う。この時、セル温度、ガス加湿及び供給温度を60℃に設定し、セル電圧を0.21Vの定電圧で固定して、任意の電子負荷装置を用いて、10時間に亘って負荷をかける。
【0048】
図8(a)は、従来、即ち、最適化を行う前のエイジング方法(PEFCエイジング3時間、操作温度80℃、DMFCエイジング27時間、1Mメタノール水溶液)による燃料電池セルの出力特性を示し、図8(b)は、上述した本実施形態による最適方法を用いて、2段階エイジングした場合の燃料電池セルの出力特性を示す。ここでは、メタノール水溶液の濃度1Mを黒丸、5Mを黒四角、10Mを黒三角で示している。
【0049】
図8(a)と図8(b)の比較では、濃度1Mのメタノール水溶液における出力特性は大きな差は認められない。一方、濃度5M,10Mの高濃度のメタノールを用いた場合、最適化後の方が最適化前に比べ明らかに出力は大きいことがわかる。
【0050】
そこで、図9には、メタノール水溶液の濃度毎に濃度に対する最大出力密度を示し、本実施形態による2段階エイジングの効果についてさらに詳しく説明する。図9において、aは、図8(a)に示したエイジング方法による最適化前の出力結果を示し、bは、図8(b)に示した本実施形態によるエイジング方法による最適化後の出力結果を示している。
【0051】
図9によれば、濃度1Mのメタノール水溶液を供給した場合の出力特性は、最適化前と最適化後ではほぼ同等の値である。最適化前のエイジングは、全エイジング時間が30時間を要するのに対して、最適化後の2段階エイジングに要する全エイジング時間は19時間である。
【0052】
従って、本実施形態の2段階エイジングを行うことで、全体的なエイジング時間を短縮することができる。一方、濃度5M,10Mの高濃度のメタノール水溶液を供給した場合には、本実施形態の最適化後の燃料電池セルは、最適化前の燃料電池セルに比べて、最大出力密度が約22%、35%と大幅な向上を示している。つまり、本実施形態における2段階エイジング条件の最適化は、高濃度メタノールを用いた場合には、出力特性の向上という効果を奏する。
【0053】
尚、本実施形態において、メタノール水溶液を用いたエイジングの前に、第1段目として、水素を用いたエイジングを実施することで、エイジング時間を短縮している。このような作用のメカニズム自体を正確には掌握していないが、本来反応していない不活性領域に、サイズの小さい水素分子が入り込むことで道(隙間)が広がり、その道に水素に比べてサイズの大きいメタノール分子が通りやすくなるためと推測する。
【0054】
[第3の実施形態]
次に、第3の実施形態について説明する。
図10は、本実施形態の直接アルコール形燃料電池に用いるエイジング装置のブロック構成を示す図である。ここでは、燃料として、メタノール水溶液を使用する、直接メタノール形燃料電池を一例として説明する。
【0055】
このエイジング装置は、主として、第1の供給部となる水素供給部101と、第2の供給部となるメタノール水溶液供給部102と、水素供給部101とメタノール水溶液供給部102との出力を切り替える切り替え部103と、第3の供給部となる酸素供給部105と、コントローラ106とで構成される。このエイジング装置は、エイジング対象となる直接メタノール形燃料電池104が着脱自在となるように構成されている。コントローラ106は、エイジング装置全体の動作を制御する。また、図10中に示す矢印を含む実線は、水素、メタノール水溶液及び酸素等の流れを示し、矢印を含む点線は、コントローラ106による制御信号を示している。
【0056】
水素供給部101は、水素を貯蔵する水素ボンベ101aと水素ボンベ101aからの水素の流れと流量を制御するバルブ101bと構成される。バルブ101bは、コントローラ106からの制御信号によって開閉が制御される。尚、水素は水素ボンベ101aに貯蔵する代わりに、アンモニア・ボレイン等の水素を含んだ物質から必要な時に必要な分量の水素を発生させる水素発生器(図示せず)で構成してもよい。また、水素ボンベ101aは、LaNi5等のような水素吸蔵合金を利用したものでもよい。
【0057】
次に、メタノール水溶液供給部102は、メタノールを水で希釈したメタノール水溶液を貯蔵するタンク102aと、タンク102aからのメタノール水溶液の流れと流量を制御するバルブ102bで構成され、そのバルブ102bは、コントローラ106からの制御信号によって開閉が制御される。
【0058】
切り替え部103は、エイジングを行う対象である、直接メタノール形燃料電池104の燃料極に対して、水素供給部101から供給される水素又は、メタノール水溶液供給部102から供給されるメタノール水溶液のいずれか一方を選択的に供給する。この切り替え部103の切り換え動作は、コントローラ106からの制御信号によって切り換え制御される。
【0059】
具体的には、切り替え部103は、水素供給部101から供給される水素の流れを制御して止めるか、又は流すかのいずれかの状態にする電磁的に制御可能な第1バルブ103aと、メタノール水溶液供給部102から供給されるメタノール水溶液の流れを制御して止めるか、又は流すかのいずれかの状態にする電磁的に制御可能なバルブ103bで構成される。これらのバルブ103a,103bは、コントローラ106によって、同時に、水素とメタノール水溶液の両方が直接メタノール形燃料電池104に供給されないように制御されている。
【0060】
また、酸素供給部105は、直接メタノール形燃料電池104の空気極(酸素極)に酸素を供給する。酸素供給部105は、バルブ105aと、酸素ボンベ105bとで構成され、コントローラ106からの制御信号によりバルブ105aが開閉されて、酸素の供給の有無とその流量が制御されている。
【0061】
コントローラ106は、例えば、パーソナルコンピュータで構成され、エイジング装置全体の動作を制御して、直接メタノール形燃料電池104に対して本実施形態による2段階エイジングを実施する。
【0062】
図11に示すフローチャートを参照して、本実施形態による2段階エイジングの動作について説明する。
本実施形態による2段階エイジングを実施するに当たり、初期設定として、例えば最初に水素によるエイジングを9時間、次にメタノール水溶液によるエイジングを10時間等の各種パラメータや設定条件は、コントローラ106に設定されたプログラムに従い、予め定められたパラメータテーブルに設定されている。
【0063】
まず、PEFCエイジング工程を行う。図10に示した切り替え部103を水素供給側にセットする(ステップS1)。即ち、直接メタノール形燃料電池104の燃料極に水素が供給できるように流路を形成する。
【0064】
次に、コントローラ106は水素供給部101のバルブ103bを開き、直接メタノール形燃料電池104の燃料極に水素供給を開始する。水素の流量は、バルブ101bの調節により、例えば、50ml/分に設定される。続いて、コントローラ106は、酸素供給部105に指令を出し、酸素を直接メタノール形燃料電池104の空気極に供給する。その流量を例えば50ml/分に設定する。次に、コントローラ106は直接メタノール形燃料電池104の発電出力を確認した後に、任意に設定された負荷を接続する(ステップS2)。この負荷は、公知な電子負荷装置を用いて、定電圧又は定電流となるように任意の負荷値に設定する。
【0065】
次に、コントローラ106に搭載されている図示しないタイマを用いて、水素供給の開始から経過した時間を計測する(ステップS3)。その計測された時間が、予め設定されている水素によるエイジング時間(ここでは、9時間に設定)を経過したか否かを判断する(ステップS4)。この判断において、計測された時間がエイジング時間を経過していなければ(NO)、ステップS3に戻り、時間計測を行いつつ、水素供給を継続する。
【0066】
一方、計測時間がエイジング時間を経過したならば(YES)、ステップS5における停止動作を行う。ステップS5では、水素によるエイジング動作が終了した状態であるので、直接メタノール形燃料電池104に接続されている負荷を停止させることで電気的に分離し、水素供給部101からのバルブを閉めて、燃料極への水素供給を停止する。同時に、酸素供給部105からのバルブを閉めて、空気極への酸素の供給を停止する。
【0067】
引き続き、DMFCエイジング工程への切り換えを行う。図10に示した切り替え部103をメタノール水溶液供給側にセットする(ステップS6)。即ち、直接メタノール形燃料電池104の燃料極に、メタノール水溶液が供給できるように流路を形成する。
【0068】
その後、コントローラ106は、メタノール水溶液及び酸素を供給し、負荷を接続する(ステップS7)。具体的には、メタノール水溶液供給部102のバルブ102bを開き、直接メタノール形燃料電池104の燃料極にメタノール水溶液の供給を開始する。この時、バルブ102bは、例えば1Mの濃度のメタノール水溶液を5ml/分の供給量となるように調節される。
【0069】
引き続いて、コントローラ106は、酸素供給部105に指令を出し、酸素を直接メタノール形燃料電池104の空気極に供給する。その供給量は、水素によるエイジング時と同等な50ml/分に設定する。次に、コントローラ106は直接メタノール形燃料電池104の発電出力を確認した後に、所定の負荷を接続する。所定の負荷としては、市販されている電子負荷装置を用いて、定電圧又は定電流の負荷となるようにする。
【0070】
次に、メタノール水溶液の供給を開始してから経過した時間を計測する(ステップS8)。計測を開始した後、予め設定されているメタノール水溶液によるエイジング時間、本実施例では10時間を経過したか否かを判断する(ステップS9)。この判断において、計測時間が設定されたエイジング時間を経過していなければ(NO)、ステップS8に戻り、時間計測を行いつつ、メタノール水溶液の供給を継続する。
【0071】
一方、計測時間が設定されたエイジング時間を経過したならば(YES)、負荷の分離とメタノール水溶液及び酸素の供給停止を行う(ステップS10)。具体的には、メタノール水溶液によるエイジング動作が終了した状態であるので、直接メタノール形燃料電池104に接続されている負荷を停止させることで電気的に分離する。それと共に、メタノール供給部102のバルブ102bを閉めて燃料極へのメタノール水溶液の供給を停止し、且つ酸素供給部105のバルブを閉めて空気極への酸素の供給を停止する。
【0072】
最後に、エイジング後処理工程を行い、水素とメタノール水溶液による2段階エイジング動作を終了する(ステップS11)。このエイジング後処理は、前述したと同様に、メタノール水溶液によるエイジングが終了した後に、燃料極へ水、空気極へ酸素を供給した状態で負荷電圧を0.21Vに保ち、電流値が取り出せなくなったら、燃料極に窒素を供給し、燃料極電位の変化がなくなった時点で完了する。このエイジング後処理は、メタノールが直接メタノール形燃料電池を構成する電解質膜や触媒層中に残留して触媒を被毒する恐れがあるので、それを取り除くために行う処理である。
【0073】
尚、図11には記載していないが、コントローラ106は常に直接メタノール形燃料電池104の発電出力や燃料極電位をモニタリングしており、エイジング動作中に異常が発生した場合には、エイジング動作を停止させて直接メタノール形燃料電池104が劣化したり破損したりすることを防止している。
【0074】
本実施形態は、上記記載された形に限定されることはなく、いくつかの変形が可能である。例えば、酸素供給部は空気を供給する部に置き換えることも可能である。その場合は直接メタノール形燃料電池104の空気極に電動ファンによって空気を吹き付けることで酸素を供給する。また、水素及びメタノール水溶液のエイジング時間は、予め設定していたが、外部機器から、エイジング時間等の各種設定事項の数値(パラメータ)を入力してコントローラ106に設定(書き換え及び消去も含む)できるように、外部設定機能や通信機能等を備えてもよい。
【0075】
[第4実施形態]
図12は、第4の実施形態に係る直接アルコール形燃料電池のエイジング装置のブロック構成を示す図である。本実施形態においては、前述した第3の実施形態と同様に、燃料としてメタノール水溶液を使用する、直接メタノール形燃料電池を一例として説明する。本実施形態は、前述した第3の実施形態に2つの加湿部107,108を追加した構成である。尚、加湿部以外の構成部位において、第3の実施形態と同等の構成部位には同じ参照符号を付して、その説明を省略する。
【0076】
本実施形態は、水素供給部101と切り替え部103との間の供給経路上に、加湿部107が設けられ、酸素供給部105と直接メタノール形燃料電池104との間の供給経路上に、加湿部108が設けられ、コントローラ106によって駆動制御される。
【0077】
通常の直接メタノール形燃料電池104は、電解質膜として、フッ素樹脂系のイオン交換膜、例えばNafion膜等が用いられている。これらの膜は湿潤状態でのみ高いH+イオン導電性を示すため、膜への水分供給が必要である。そこで本実施形態では、加湿部107は、水素供給部101から燃料極に供給される水素を加湿し、同様に、加湿部108は、酸素供給部105から空気極に供給される酸素を加湿する。
【0078】
また、エイジング動作中に供給される水素、酸素及び、メタノール水溶液のそれぞれの温度も含め、直接メタノール形燃料電池104のある程度高い任意の温度を一定に保つことが必要である。これは、任意の高い温度を維持することにより、直接メタノール形燃料電池自体の反応速度を上げて、エイジング効果を促すことができる。
【0079】
この任意の温度に設定し維持させるために、本実施形態のエイジング装置は、装置全体の温度を一定に保つための温度制御部109を設けている。この温度制御部109は、設定された温度に対して装置全体を一定の温度に保つ加温冷却機能を有している。特に、2段階エイジング動作においては、水素を供給するエイジング時と、メタノール水溶液を供給するエイジング時とでは、最適温度が異なるため、それぞれのエイジング時で設定温度を変えて、最適な温度を一定に維持する。尚、この例では、温度制御部109は、装置全体を一定の温度に保つ構成であるが、勿論、全体と限定されるものではなく、必要な部分、例えばユニット単位であってもよい。
【0080】
次に、図13に示すフローチャートを参照して、本実施形態におけるエイジング動作について説明する。尚、以下のフローチャートのステップにおいて、前述した図11に示したステップと同じ処理の場合には、同じステップ番号を付して、簡略化して説明する。
【0081】
本実施形態におけるエイジング動作は、第1の加温工程、PEFCエイジング工程、切り替え工程、第2の加温工程、DMFCエイジング工程及び、エイジング後処理工程の手順により行われる。尚、実際の工程では、第1の加温工程は、PEFCエイジング工程に含まれ、第2の加温工程は、DMFCエイジング工程に含まれている。
【0082】
まず、第1の加温工程において、コントローラ106によって加湿部107,108をオンして起動する(ステップS21)。これらの加湿部107,108により、水素供給部101から供給される水素と、酸素供給部105から供給される酸素が加湿され、それぞれ直接メタノール形燃料電池104の燃料極と空気極に供給される。
【0083】
次に、コントローラ106は、温度制御部109に対して、供給される水素が、例えば、目標設定温度80℃となるように設定し、加温・冷却を行う(ステップS22)。ここで、温度80℃は、経験的に求められた温度であり、2段階エイジングのPEFCエイジング工程における水素によるエイジングを行う際の最適温度である。また、エイジング装置には一定の熱容量があるため、装置全体が設定した80℃に達するまで、加温状態で待機する。
【0084】
次に、PEFCエイジング工程を行う。直接メタノール形燃料電池104の燃料極への水素供給流路を形成する(ステップS1)。その後、バルブ103bを開き水素供給を開始し、負荷を接続する(ステップS2)。さらに、水素供給の時間を計測し(ステップS3)、予め設定されたエイジング時間が経過したならば(ステップS4)、水素の供給を停止する(ステップS5)。引き続き、切り替え工程にて、PEFCエイジング工程からDMFCエイジング工程への切り換えを行う。即ち、直接メタノール形燃料電池104の燃料極へのメタノール水溶液供給流路を形成する。(ステップS6)
また、メタノール水溶液を供給するエイジング動作において、コントローラ106は、温度制御部109に対して、例えば、目標設定温度60℃となるように設定し、加温・冷却を行う(ステップS23)。ここで、温度60℃は、経験的に求められた最適温度であり、2段階エイジングのDMFCエイジング工程におけるメタノール水溶液によるエイジングを行う際の最適温度である。
【0085】
その後、直接メタノール形燃料電池104に、メタノール水溶液及び酸素をそれぞれに供給し、負荷を接続する(ステップS7)。その後、メタノール水溶液供給時間を計測し(ステップS8)、予め設定されたエイジング時間が経過したならば(ステップS9)、メタノール水溶液の供給を停止する(ステップS10)。最後に、エイジング後処理工程を行い、水素とメタノール水溶液による2段階エイジング動作を終了する(ステップS11)。
【0086】
本発明によれば、従来は30時間以上かかっていたエイジング時間を約3分の2に低減することができ、もって燃料電池の製造工程時間を短縮することが可能となる。また、同時に、本発明の燃料電池のエイジング方法を採用することにより、燃料電池の単位面積当たりの発電電力密度を従来の2倍程度に向上させることができ、燃料電池の性能を向上させることができる。
【0087】
さらに、メタノール濃度の濃いメタノール水溶液に対しても、従来のエイジング方法に比べて20−30%高い電力密度の燃料電池を提供することができ、燃料に対する自由度を向上させることができる。
【0088】
以上説明した各実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池の2段階エイジング方法において、第1段目に、水素を燃料として一定負荷の下で3時間以上連続して発電させ、次の第2段目に水素を燃料として発電させた時間より長い時間、メタノールを燃料として一定負荷の下で連続して発電させることで、直接メタノール形燃料電池をエイジングする。具体的には、水素によるエイジング時間を9時間、メタノールによるエイジング時間を10時間とする。
【0089】
従って、実施形態の2段階エイジング方法によれば、トータルのエイジング時間を従来の半分程度に短縮し、且つエイジング後の燃料電池の発電特性を従来のエイジング方法でエイジングした場合より向上させることが可能となる。
【0090】
(2)メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池の2段階エイジング方法は、第1段目エイジングにおける水素によるエイジングを行う場合、燃料電池の温度を80℃以上で行うことにより、高濃度のメタノール水溶液を使用した場合の発電性能を従来の方法より向上させることができる。
【0091】
(3)メタノールを燃料とする直接メタノール形燃料電池の2段階エイジング方法において、メタノールによるエイジングの際に使用するメタノールの濃度を1M以下とすることにより、高濃度のメタノール水溶液を使用した場合の発電性能を従来の方法より向上させることができる。
【0092】
上記(1)乃至(3)に記載したエイジング方法を組み合わせることにより、従来は、30時間以上かかっていたエイジング時間を約3分の2程度に短縮することができるとともに、燃料電池の単位面積当たりの発電電力密度を向上させ、かつ、高濃度のメタノール水溶液を使用した場合の発電性能を向上させることが可能となる。
【0093】
(4)本実施形態の2段階エイジング方法を実現する直接アルコール燃料電池のエイジング装置として、少なくとも水素を供給する第1の供給部、アルコールを主成分とする流体を供給する第2の供給部、酸化剤流体を供給する第3の供給部を有し、上記第1の供給部と第2の供給部が、直接アルコール形燃料電池の燃料極に接合され、且つ供給される水素とアルコールとを切り替える切り替え部と、を有する直接アルコール形燃料電池用エイジング装置を提供することができる。
【0094】
(5)さらに上記エイジング装置は、供給される水素を加湿する第1の加湿部と、酸化剤としての酸素又は酸素を含む流体を加湿する第2の加湿部を備え、また、水素を供給する第1の供給部と、アルコールを主成分とする流体を供給する第2の供給部と、酸化剤流体を供給する第2の供給部と、直接アルコール形燃料電池の一部又は全部を加温・冷却する温度制御部と、を備え、エイジング時の燃料電池の発電動作を安定的に行うことが可能である。
【0095】
この直接アルコール形燃料電池用エイジング装置は、水素によるエイジング時間とアルコールを主成分とする流体によるエイジング時間をそれぞれ独立に設定可能であるので、それぞれの燃料電池に最適なエイジング時間を設定することができる。
【符号の説明】
【0096】
1…燃料電池セル、2…アノード(燃料極)、3…カソード(空気極)、4…電解質膜、5…MEA(Membrane Electrode Assembly)、6…燃料流入口、7…燃料流出口、8…酸素流入口、9…酸素流出口。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールを含むアルコールを主成分とする流体を燃料とする直接アルコール形燃料電池のエイジング方法であって、
前記直接アルコール形燃料電池に、水素を燃料として供給して、予め定めた一定負荷の下で予め定めた第1の設定時間を越えて発電する第1段目のエイジングと、
続いて、前記直接アルコール形燃料電池に、前記水素からアルコールを主成分とする流体に切り替えて、燃料として供給して、予め定めた一定負荷の下で予め定めた第2の設定時間を発電させる第2段目のエイジングと、で構成される2段階エイジングであることを特徴とする直接アルコール形燃料電池のエイジング方法。
【請求項2】
前記第1段目のエイジングの前記第1の設定時間が、3時間を超えて9時間以内に設定され、
前記第2段目のエイジングの前記第2の設定時間が、アルコールを主成分とする流体によるエイジング時間を10時間とすることを特徴とする請求項1に記載の直接アルコール形燃料電池のエイジング方法。
【請求項3】
前記エイジング方法において、
前記第1段目のエイジングを行う場合の前記直接アルコール形燃料電池の温度を、80℃で行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の直接アルコール形燃料電池のエイジング方法。
【請求項4】
前記エイジング方法において、
前記第2段目のエイジングに使用する前記アルコールを主成分とする流体は、濃度を1M以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1項に記載の直接アルコール形燃料電池のエイジング方法。
【請求項5】
前記エイジング方法において、
前記第2段目のエイジングに使用する前記アルコールを主成分とする流体は、メタノール水溶液であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちのいずれか1項に記載の直接アルコール形燃料電池のエイジング方法。
【請求項6】
直接アルコール形燃料電池の燃料極に、水素を供給する第1の供給部と、
前記直接アルコール形燃料電池の燃料極に、アルコールを主成分とする流体を供給する第2の供給部と、
前記直接アルコール形燃料電池に、酸化剤流体を供給する第3の供給部と、
前記第1の供給部と前記第2の供給部から送出される前記水素と前記流体を切り替えて、前記燃料極に供給する切り替え部と、を具備し、
前記第1の供給部から前記燃料極に水素を燃料として供給し、任意の条件下の発電による第1段目のエイジングを実施した後、前記切り替え部により、前記水素から前記第2の供給部から供給される前記流体に切り替えて供給し、任意の条件下の発電による第2段目のエイジングを実施する、2段階エイジングを行うことを特徴とする直接アルコール形燃料電池用エイジング装置。
【請求項7】
前記第1の供給部が供給する水素に加湿する加湿手段を具備することを特徴とする請求項6に記載の直接アルコール形燃料電池用エイジング装置
【請求項8】
前記第2の供給部から供給される前記流体が、メタノール水溶液であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の直接アルコール形燃料電池用エイジング装置。
【請求項9】
前記第3の供給部が供給する前記酸化剤が酸素又は空気を含む流体であり、さらに、該流体に加湿する加湿部を具備することを特徴とする請求項6乃至請求項8のうちのいずれか1項に記載の直接アルコール形燃料電池用エイジング装置。
【請求項10】
前記直接アルコール形燃料電池用エイジング装置において、さらに、
前記第1の供給部、前記第2の供給部、前記第3の供給部及び前記直接アルコール形燃料電池における、全体又は発電を行う部分を、任意の温度に調整する加温冷却機構を具備することを特徴とする請求項6乃至請求項9のうちのいずれか1項に記載の直接アルコール形燃料電池用エイジング装置。
【請求項11】
前記請求項6項から10項に記載の
前記直接アルコール形燃料電池用エイジング装置において、
前記第1段目のエイジングの前記水素によるエイジング時間と
前記第2段目のエイジングの前記アルコールを主成分とする流体によるエイジング時間とを、それぞれに独立して設定可能であることを特徴とする請求項6乃至請求項10のうちのいずれか1項に記載の直接アルコール形燃料電池用エイジング装置。
【請求項1】
メタノールを含むアルコールを主成分とする流体を燃料とする直接アルコール形燃料電池のエイジング方法であって、
前記直接アルコール形燃料電池に、水素を燃料として供給して、予め定めた一定負荷の下で予め定めた第1の設定時間を越えて発電する第1段目のエイジングと、
続いて、前記直接アルコール形燃料電池に、前記水素からアルコールを主成分とする流体に切り替えて、燃料として供給して、予め定めた一定負荷の下で予め定めた第2の設定時間を発電させる第2段目のエイジングと、で構成される2段階エイジングであることを特徴とする直接アルコール形燃料電池のエイジング方法。
【請求項2】
前記第1段目のエイジングの前記第1の設定時間が、3時間を超えて9時間以内に設定され、
前記第2段目のエイジングの前記第2の設定時間が、アルコールを主成分とする流体によるエイジング時間を10時間とすることを特徴とする請求項1に記載の直接アルコール形燃料電池のエイジング方法。
【請求項3】
前記エイジング方法において、
前記第1段目のエイジングを行う場合の前記直接アルコール形燃料電池の温度を、80℃で行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の直接アルコール形燃料電池のエイジング方法。
【請求項4】
前記エイジング方法において、
前記第2段目のエイジングに使用する前記アルコールを主成分とする流体は、濃度を1M以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1項に記載の直接アルコール形燃料電池のエイジング方法。
【請求項5】
前記エイジング方法において、
前記第2段目のエイジングに使用する前記アルコールを主成分とする流体は、メタノール水溶液であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうちのいずれか1項に記載の直接アルコール形燃料電池のエイジング方法。
【請求項6】
直接アルコール形燃料電池の燃料極に、水素を供給する第1の供給部と、
前記直接アルコール形燃料電池の燃料極に、アルコールを主成分とする流体を供給する第2の供給部と、
前記直接アルコール形燃料電池に、酸化剤流体を供給する第3の供給部と、
前記第1の供給部と前記第2の供給部から送出される前記水素と前記流体を切り替えて、前記燃料極に供給する切り替え部と、を具備し、
前記第1の供給部から前記燃料極に水素を燃料として供給し、任意の条件下の発電による第1段目のエイジングを実施した後、前記切り替え部により、前記水素から前記第2の供給部から供給される前記流体に切り替えて供給し、任意の条件下の発電による第2段目のエイジングを実施する、2段階エイジングを行うことを特徴とする直接アルコール形燃料電池用エイジング装置。
【請求項7】
前記第1の供給部が供給する水素に加湿する加湿手段を具備することを特徴とする請求項6に記載の直接アルコール形燃料電池用エイジング装置
【請求項8】
前記第2の供給部から供給される前記流体が、メタノール水溶液であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の直接アルコール形燃料電池用エイジング装置。
【請求項9】
前記第3の供給部が供給する前記酸化剤が酸素又は空気を含む流体であり、さらに、該流体に加湿する加湿部を具備することを特徴とする請求項6乃至請求項8のうちのいずれか1項に記載の直接アルコール形燃料電池用エイジング装置。
【請求項10】
前記直接アルコール形燃料電池用エイジング装置において、さらに、
前記第1の供給部、前記第2の供給部、前記第3の供給部及び前記直接アルコール形燃料電池における、全体又は発電を行う部分を、任意の温度に調整する加温冷却機構を具備することを特徴とする請求項6乃至請求項9のうちのいずれか1項に記載の直接アルコール形燃料電池用エイジング装置。
【請求項11】
前記請求項6項から10項に記載の
前記直接アルコール形燃料電池用エイジング装置において、
前記第1段目のエイジングの前記水素によるエイジング時間と
前記第2段目のエイジングの前記アルコールを主成分とする流体によるエイジング時間とを、それぞれに独立して設定可能であることを特徴とする請求項6乃至請求項10のうちのいずれか1項に記載の直接アルコール形燃料電池用エイジング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−258318(P2011−258318A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129359(P2010−129359)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【出願人】(304021288)国立大学法人長岡技術科学大学 (458)
【Fターム(参考)】
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