直流−直流電力変換器
【課題】昇降圧動作時におけるスイッチング素子のスイッチング損失を従来よりも低減させることでき、それだけ電力変換効率を向上させることができる直流−直流電力変換器を提供する。
【解決手段】直流−直流電力変換器10は、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4を作動制御して第1接続構成に切り替える第1動作モードと、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4を作動制御して第2接続構成に切り替える第2動作モードと、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4を作動制御して第3接続構成に切り替える第3動作モードとを有する制御手段20を備え、制御手段20は、第1直流電圧源E1と第2直流電圧源E2或いは直流負荷との間で、第1動作モードと第3動作モードとを交互に使用することによって電力の授受を行う場合には、第1動作モードと第3動作モードとの合間に第2動作モードを挿入する。
【解決手段】直流−直流電力変換器10は、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4を作動制御して第1接続構成に切り替える第1動作モードと、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4を作動制御して第2接続構成に切り替える第2動作モードと、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4を作動制御して第3接続構成に切り替える第3動作モードとを有する制御手段20を備え、制御手段20は、第1直流電圧源E1と第2直流電圧源E2或いは直流負荷との間で、第1動作モードと第3動作モードとを交互に使用することによって電力の授受を行う場合には、第1動作モードと第3動作モードとの合間に第2動作モードを挿入する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流−直流電力変換器に関するものであり、特に、双方向昇降圧形の直流−直流電力変換器におけるスイッチング損失低減に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直流−直流電力変換器は、例えば、第1直流電圧源及び第2直流電圧源或いは第1直流電圧源及び直流負荷の間に接続され、第1直流電圧源及び第2直流電圧源の出力電圧或いは第1直流電圧源及び直流負荷の出力電圧に基づき、第1直流電圧源から第2直流電圧源或いは直流負荷に電力を供給したり、第2直流電圧源或いは直流負荷から第1直流電圧源に電力を供給したりすることが可能な双方向形のスイッチング回路(DC−DCコンバータ)として用いられる。
【0003】
例えば、直流−直流電力変換器は、作業車両などの電動車両に用いられることがある。電動車両は、一般的に、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置からの直流電力をインバータ回路等の電力変換回路にて交流電力に変換して得られた交流電力でモータ等の車両駆動電動機を作動させるようになっている。そして、直流−直流電力変換器は、例えば、蓄電装置等の第1直流電圧源と、インバータ回路等の電力変換回路が接続されたキャパシタ等の第2直流電圧源或いは直流負荷との間に設けられ、力行モード時には第1直流電圧源から第2直流電圧源或いは直流負荷に電力を供給する一方、回生モード時には第2直流電圧源或いは直流負荷から第1直流電圧源に電力を供給することが可能な構成とされている。
【0004】
従来の直流−直流電力変換器として、第1直流電圧源及び第2直流電圧源或いは第1直流電圧源及び直流負荷に接続される半導体スイッチやダイオード等の複数のスイッチング素子と、第1直流電圧源及び第2直流電圧源或いは第1直流電圧源及び直流負荷にスイッチング素子を介して接続されるインダクタとを備え、スイッチング素子は、インダクタを第1直流電圧源に接続する第1接続構成と、インダクタを第1直流電圧源及び第2直流電圧源の双方或いは第1直流電圧源及び直流負荷の双方に接続する第2接続構成と、インダクタを第2直流電圧源或いは直流負荷に接続する第3接続構成とを切り替え可能な構成とされた直流−直流電力変換器が知られており、具体的には、特許文献1に記載のDC−DCコンバータ回路(特許文献1の図1参照)を例示できる。
【0005】
図8は、従来の直流−直流電力変換器の一例である直流−直流電力変換器10Aの概略構成を示す回路図である。
【0006】
図8に示す直流−直流電力変換器10Aは、第1スイッチング素子SW1と、第2スイッチング素子SW2と、インダクタLと、第3スイッチング素子SW3と、第4スイッチング素子SW4とを備えている。
【0007】
第1スイッチング素子SW1は、第1半導体スイッチS1と第1ダイオードD1とを備えている。第1半導体スイッチS1は、一方向にのみ電流をオン,オフ制御可能な半導体デバイスとされている。第1ダイオードD1は、第1半導体スイッチS1が電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように第1半導体スイッチS1に並列接続されている。
【0008】
第2スイッチング素子SW2は、第2半導体スイッチS2と第2ダイオードD2とを備えている。第2半導体スイッチS2は、一方向にのみ電流をオン,オフ制御可能な半導体デバイスとされている。第2ダイオードD2は、第2半導体スイッチS2が電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように第2半導体スイッチS2に並列接続されている。
【0009】
インダクタLは、一端が第1スイッチング素子SW1に含まれる第1ダイオードD1のカソード側(接続点B参照)に接続され、かつ、他端が第2スイッチング素子SW2に含まれる第2ダイオードD2のカソード側(接続点C参照)に接続されている。
【0010】
第3スイッチング素子SW3は、第1スイッチング素子SW1に含まれる第1ダイオードD1のアノード側から第2スイッチング素子SW2に含まれる第2ダイオードD2のアノード側への一方向にのみ電流を流すことができるように構成されており、電流の流入側が第1スイッチング素子SW1に含まれる第1ダイオードD1のアノード側(接続点A参照)に接続され、電流の流出側が第2スイッチング素子SW2に含まれる第2ダイオードD2のアノード側(接続点D参照)に接続されている。
【0011】
詳しくは、第3スイッチング素子SW3は、第3半導体スイッチS3と第3ダイオードD3とを備えている。第3半導体スイッチS3は、一方向にのみ電流をオン,オフ制御可能な半導体デバイスとされている。第3ダイオードD3は、第3半導体スイッチS3が電流をオン,オフ制御できる方向に電流を流せるように第3半導体スイッチS3に直列接続されている。
【0012】
第4スイッチング素子SW4は、第2スイッチング素子SW2に含まれる第2ダイオードD2のアノード側から第1スイッチング素子SW1に含まれる第1ダイオードD1のアノード側への一方向にのみ電流を流すことができるように構成されており、電流の流入側が第2スイッチング素子SW2に含まれる第2ダイオードD2のアノード側(接続点D参照)に接続され、電流の流出側が第1スイッチング素子SW1に含まれる第1ダイオードD1のアノード側(接続点A参照)に接続されている。
【0013】
詳しくは、第4スイッチング素子SW4は、第4半導体スイッチS4と第4ダイオードD4とを備えている。第4半導体スイッチS4は、一方向にのみ電流をオン,オフ制御可能な半導体デバイスとされている。第4ダイオードD4は、第4半導体スイッチS4が電流をオン,オフ制御できる方向に電流を流せるように第4半導体スイッチS4に直列接続されている。
【0014】
そして、直流−直流電力変換器10Aは、第1スイッチング素子SW1に含まれる第1ダイオードD1のカソード側(接続点B参照)と第2スイッチング素子SW2に含まれる第2ダイオードD2のアノード側(接続点D参照)との間に、第1スイッチング素子SW1側が陽極になるように第1直流電圧源E1が接続されるようになっている。
【0015】
また、直流−直流電力変換器10Aは、第1スイッチング素子SW1に含まれる第1ダイオードD1のアノード側(接続点A参照)と第2スイッチング素子SW2に含まれる第2ダイオードD2のカソード側(接続点C参照)との間に、第2スイッチング素子SW2側が陽極になるように第2直流電圧源E2が接続されるようになっている。
【0016】
なお、直流−直流電力変換器10Aが作業車両に適用される場合には、例えば、第1及び第2電圧源E1,E2は、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置とすることができる。また、第1及び第2電圧源E1,E2には、モータ等の車両駆動電動機を作動させるインバータ回路等の電力変換回路を接続することができる。
【0017】
図8に示す直流−直流電力変換器10Aでは、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4のオン状態及びオフ状態を示す動作モードとして、力行モードで動作する次の第1モードから第3モードを行う。
【0018】
図9は、図8に示す従来の直流−直流電力変換器10Aにおいて力行モードで動作している状態を示す回路図である。図9(a)は、第1モードを示しており、図9(b)は、第2モードを示しており、図9(c)は、第3モードを示している。
【0019】
力行モードにおいては、第1モードは、図9(a)に示すように、第2スイッチング素子SW2がオン状態となり、第1及び第4スイッチング素子SW1,SW4がオフ状態となって、第1直流電圧源E1からインダクタL及び第2スイッチング素子SW2を経て第1直流電圧源E1に戻る第1電流経路R1を形成するモードとされている。
【0020】
第2モードは、図9(b)に示すように、第3スイッチング素子SW3がオン状態となり、それ以外の第1、第2及び第4スイッチング素子SW1,SW2,SW4がオフ状態となって、第1直流電圧源E1からインダクタL、第2直流電圧源E2及び第3スイッチング素子SW3(第3ダイオードD3)を経て第1直流電圧源E1に戻る第2電流経路R2を形成するモードとされている。
【0021】
第3モードは、図9(c)に示すように、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4が全てオフ状態となって、第2直流電圧源E2から第1スイッチング素子SW1(第1ダイオードD1)及びインダクタLを経て第2直流電圧源E2に戻る第3電流経路R3を形成するモードとされている。
【0022】
そして、力行モードを実行するときは、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2との大小関係に応じて、第1モードと第2モードとの間、第2モードと第3モードとの間、第1モードと第3モードとの間において短い周期(例えば10kHz〜100kHz程度の何れかの周期)で切り替える切り替え動作を実行する。
【0023】
図10は、従来の力行モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での各モードと第2及び第3半導体スイッチS2,S3のオン状態とオフ状態との対応関係を示す表である。なお、図10において、「○」印はオン状態を示しており、「●」印はオフ状態を示している。また、第1モードの第3半導体スイッチS3に付した「*」印は、昇圧動作及び昇降圧動作時では第2直流電圧源E2の出力電圧V2によって第3半導体スイッチS3に逆バイアス電圧がかかることから、オン状態でもオフ状態でもどちらでもよいことを示している。「*」印の後の括弧内については後述する。
【0024】
図10に示すように、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2よりも大きい場合には、第2モードと第3モードとを切り替える降圧動作を実行し、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2よりも小さい場合には、第1モードと第2モードとを切り替える昇圧動作を実行する。第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とが等しい場合、或いは、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とがほぼ等しい場合(電圧V1と電圧V2との差の絶対値が所定範囲内にある場合)には、第1モードと第3モードとを切り替える昇降圧動作を実行する。
【0025】
ここで、第3半導体スイッチS3は、昇圧動作及び昇降圧動作時の第1モードにおいてオン状態でもオフ状態でもどちらでもよいが(図10の「*」印参照)、昇圧動作時では、第2モードでオン状態となっているために、第1モードと第2モードとの間でオン/オフ切り替えを行わないように第1モードでは実使用上はオン状態(括弧内「○」印参照)とし、また、昇降圧動作時では、第3モードでオフ状態となっているために、第1モードと第3モードとの間でオン/オフ切り替えを行わないように第1モードでは実使用上はオフ状態(括弧内「●」印参照)とする。
【0026】
また、図8に示す直流−直流電力変換器10Aでは、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4のオン状態及びオフ状態を示す動作モードとして、回生モードで動作する次の第4モードから第6モードを行う。
【0027】
図11は、図8に示す従来の直流−直流電力変換器10Aにおいて回生モードで動作している状態を示す回路図である。図11(a)は、第4モードを示しており、図11(b)は、第5モードを示しており、図11(c)は、第6モードを示している。
【0028】
回生モードにおいては、第4モードは、図11(a)に示すように、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4が全てオフ状態となって、第1直流電圧源E1から第2スイッチング素子SW2(第2ダイオードD2)及びインダクタLを経て第1直流電圧源E1に戻る第4電流経路R4を形成するモードとされている。
【0029】
第5モードは、図11(b)に示すように、第4スイッチング素子SW4がオン状態となり、それ以外の第1、第2及び第3スイッチング素子SW1,SW2,SW3がオフ状態となって、第1直流電圧源E1から第4スイッチング素子SW4(第4ダイオードD4)、第2直流電圧源E2及びインダクタLを経て第1直流電圧源E1に戻る第5電流経路R5を形成するモードとされている。
【0030】
第6モードは、図11(c)に示すように、第1スイッチング素子SW1がオン状態となり、第2及び第3スイッチング素子SW2,SW3がオフ状態となって、第2直流電圧源E2からインダクタL及び第1スイッチング素子SW1を経て第2直流電圧源E2に戻る第6電流経路R6を形成するモードとされている。
【0031】
そして、回生モードを実行するときは、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2との大小関係に応じて、第4モードと第5モードとの間、第5モードと第6モードとの間、第4モードと第6モードとの間において短い周期(例えば10kHz〜100kHz程度の何れかの周期)で切り替える切り替え動作を実行する。
【0032】
図12は、従来の回生モードにおける昇圧動作、降圧動作及び昇降圧動作時での各モードと第1及び第4半導体スイッチS1,S4のオン状態とオフ状態との対応関係を示す表である。なお、図12において、「○」印はオン状態を示しており、「●」印はオフ状態を示している。また、また、第6モードの第4半導体スイッチS4に付した「*」印は、昇圧動作及び昇降圧動作時では第1直流電圧源E1の出力電圧V1によって第4半導体スイッチS4に逆バイアス電圧がかかることから、オン状態でもオフ状態でもどちらでもよいことを示している。「*」印の後の括弧内については後述する。
【0033】
図12に示すように、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2よりも大きい場合には、第5モードと第6モードとを切り替ええる昇圧動作を実行し、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2よりも小さい場合には、第4モードと第5モードとを切り替える降圧動作を実行する。第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とが等しい場合、或いは、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とがほぼ等しい場合(電圧V1と電圧V2との差の絶対値が所定範囲内にある場合)には、第4モードと第6モードとを切り替える昇降圧動作を実行する。
【0034】
ここで、第4半導体スイッチS4は、昇圧動作及び昇降圧動作時の第6モードにおいてオン状態でもオフ状態でもどちらでもよいが(図12の「*」印参照)、昇圧動作時では、第5モードでオン状態となっているために、第5モードと第6モードとの間でオン/オフ切り替えを行わないように第6モードでは実使用上はオン状態(括弧内「○」印参照)とし、また、昇降圧動作時では、第4モードでオフ状態となっているために、第4モードと第6モードとの間でオン/オフ切り替えを行わないように第6モードでは実使用上はオフ状態(括弧内「●」印参照)とする。
【0035】
なお、第1電圧源E1の出力電圧V1、第2電圧源E2の出力電圧V2は、例えば、図示を省略した電圧計にて測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開2011−35998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
ところで、直流−直流電力変換器に用いられるスイッチング素子を構成する半導体スイッチは、オフ状態からオン状態に移行するときに、オフ状態時に加わっていた電圧に比例したスイッチング損失(いわゆるオン損失)が発生したり、オン状態からオフ状態に移行するときに、オフ状態時に加わる電圧に比例したスイッチング損失(いわゆるオフ損失)が発生したりする。また、直流−直流電力変換器に用いられるスイッチング素子を構成するダイオードは、導通状態から非導通状態に移行する際に非導通状態時に加わる電圧に比例したスイッチング損失(いわゆるリカバリ損失(逆回復損失))が発生したりする。
【0038】
この点に関し、図8に示すような、従来の直流−直流電力変換器では、次のようなスイッチング素子に対するスイッチング損失が発生する。
【0039】
[力行モード時でのスイッチング損失]
図13は、従来の力行モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第2及び第3半導体スイッチS2,S3のオン損失及びオフ損失並びに第1及び第3ダイオードD1,D3のリカバリ損失を示す表である。なお、図13において、第1から第4半導体スイッチS1〜S4の「○」印はオン状態を示しており、「●」印はオフ状態を示している。また、第1から第4ダイオードD1〜D4の「○」印は導通状態を示しており、「●」印は非導通状態を示している。これらのことは、後述する図14、図2から図4についても同様である。
【0040】
(力行モードにおける降圧動作)
力行モードにおける降圧動作時において、第2モードから第3モードに移行して第3半導体スイッチS3がオン状態からオフ状態になるときに(図13のα1参照)、第3半導体スイッチS3において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオフ損失が発生する。
【0041】
また、第3モードから第2モードに移行して第3半導体スイッチS3がオフ状態からオン状態になるときに(図13のβ1参照)、第3半導体スイッチS3において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオン損失が発生する。一方、第3モードから第2モードに移行して第1ダイオードD1が導通状態から非導通状態になるときに(図13のβ2参照)、第1ダイオードD1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したリカバリ損失が発生する。
【0042】
(力行モードにおける昇圧動作)
力行モードにおける昇圧動作時において、第1モードから第2モードに移行して第2半導体スイッチS2がオン状態からオフ状態になるときに(図13のα2参照)、第2半導体スイッチS2において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオフ損失が発生する。
【0043】
また、第2モードから第1モードに移行して第2半導体スイッチS2がオフ状態からオン状態になるときに(図13のβ3参照)、第2半導体スイッチS2において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオン損失が発生する。一方、第2モードから第1モードに移行して第3ダイオードD3が導通状態から非導通状態になるときに(図13のβ4参照)、第3ダイオードD3において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したリカバリ損失が発生する。
【0044】
(力行モードにおける昇降圧動作)
力行モードにおける昇降圧動作時において、第1モードから第3モードに移行して第2半導体スイッチS2がオン状態からオフ状態になるときに(図13のα3参照)、第2半導体スイッチS2において第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とを加えた出力電圧(V1+V2)に比例したオフ損失が発生する。
【0045】
また、第2モードから第1モードに移行して第2半導体スイッチS2がオフ状態からオン状態になるときに(図13のβ5参照)、第2半導体スイッチS2において第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とを加えた出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失が発生する。一方、第3モードから第1モードに移行して第1ダイオードD1が導通状態から非導通状態になるときに(図13のβ6参照)、第1ダイオードD1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とを加えた出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失が発生する。
【0046】
[回生モード時でのスイッチング損失]
図14は、従来の回生モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第1及び第4半導体スイッチS1,S4のオン損失及びオフ損失並びに第2及び第4ダイオードD2,D4のリカバリ損失を示す表である。
【0047】
(回生モードにおける降圧動作)
回生モードにおける降圧動作時において、第5モードから第4モードに移行して第4半導体スイッチS4がオン状態からオフ状態になるときに(図14のα4参照)、第4半導体スイッチS4において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオフ損失が発生する。
【0048】
また、第4モードから第5モードに移行して第4半導体スイッチS4がオフ状態からオン状態になるときに(図14のβ7参照)、第4半導体スイッチS4において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオン損失が発生する。一方、第4モードから第5モードに移行して第2ダイオードD2が導通状態から非導通状態になるときに(図14のβ8参照)、第2ダイオードD2において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したリカバリ損失が発生する。
【0049】
(回生モードにおける昇圧動作)
回生モードにおける昇圧動作時において、第6モードから第5モードに移行して第1半導体スイッチS1がオン状態からオフ状態になるときに(図14のα5参照)、第1半導体スイッチS1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオフ損失が発生する。
【0050】
また、第5モードから第6モードに移行して第1半導体スイッチS1がオフ状態からオン状態になるときに(図14のβ9参照)、第1半導体スイッチS1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオン損失が発生する。一方、第5モードから第6モードに移行して第4ダイオードD4が導通状態から非導通状態になるときに(図14のβ10参照)、第4ダイオードD4において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したリカバリ損失が発生する。
【0051】
(回生モードにおける昇降圧動作)
回生モードにおける昇降圧動作時において、第6モードから第4モードに移行して第1半導体スイッチS1がオン状態からオフ状態になるときに(図14のα6参照)、第1半導体スイッチS1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とを加えた出力電圧(V1+V2)に比例したオフ損失が発生する。
【0052】
また、第4モードから第6モードに移行して第1半導体スイッチS1がオフ状態からオン状態になるときに(図14のβ11参照)、第1半導体スイッチS1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とを加えた出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失が発生する。一方、第4モードから第6モードに移行して第2ダイオードD2が導通状態から非導通状態になるときに(図14のβ12参照)、第2ダイオードD2において第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とを加えた出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失が発生する。
【0053】
図15は、従来の力行モードにおいて図13に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表を示している。また、図16は、従来の回生モードにおいて図14に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表を示している。
【0054】
図15の斜線部分に示すように、力行モードでの昇降圧動作時においては、第1ダイオードD1と第2半導体スイッチS2とに、出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失と出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失及びオフ損失とがそれぞれ集中している。
【0055】
また、図16の斜線部分に示すように、回生モードでの昇降圧動作時においては、第1半導体スイッチS1と第2ダイオードD2とに、出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失及びオフ損失と出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失とがそれぞれ集中している。
【0056】
一般的に、スイッチング素子を構成するダイオード及び半導体スイッチにおいては、加わる電圧に対してスイッチング損失(オン損失及びオフ損失)並びにリカバリ損失が比例関係にあり、しかも、スイッチング素子の温度に対してスイッチング損失(オン損失及びオフ損失)並びにリカバリ損失が正の相関を有する。
【0057】
従って、力行モードでは、第1ダイオードD1及び第2半導体スイッチS2に供給される電圧(V1+V2)が大きいと、それだけ第1ダイオードD1及び第2半導体スイッチのリカバリ損失並びにオン損失及びオフ損失が大きくなり、それに伴って電力変換効率が低下する。一方、回生モードでは、第1半導体スイッチS1及び第2ダイオードD2に供給される電圧(V1+V2)が大きいと、それだけ第1半導体スイッチS1及び第2ダイオードD2のオン損失及びオフ損失並びにリカバリ損失が大きくなり、それに伴って電力変換効率が低下する。
【0058】
また、スイッチング素子を構成するダイオード及び半導体スイッチにおいては、定格電圧に対して発生するスイッチング損失が比例関係にある。すなわち、定格電圧が高くなるほどスイッチング損失が大きくなる。
【0059】
従って、力行モードでは、第1ダイオードD1及び第2半導体スイッチS2に加わる電圧(具体的にはV1+V2)が大きいと、それだけ第1ダイオードD1及び第2半導体スイッチS2の定格電圧が大きくなってリカバリ損失並びにオン損失及びオフ損失が大きくなり、それに伴って電力変換効率が低下する。一方、回生モードでは、第1半導体スイッチS1及び第2ダイオードD2に加わる電圧(具体的にはV1+V2)が大きいと、それだけ第1半導体スイッチS1及び第2ダイオードD2の定格電圧が大きくなってオン損失及びオフ損失並びにリカバリ損失が大きくなり、それに伴って電力変換効率が低下する。このことは、例えば、定格電圧が30V,40V,60Vというように、10V単位や数10V単位で細かに設定されているMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)に比べて、定格電圧が600Vの次は1200Vというように、数百V単位で大まかに設定されているIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の場合には、定格電圧の選択肢が少ないため、特に顕著となる。
【0060】
そこで、本発明は、昇降圧動作時におけるスイッチング素子のスイッチング損失を従来よりも低減させることでき、それだけ電力変換効率を向上させることができる直流−直流電力変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0061】
本発明は、前記課題を解決するために、第1直流電圧源及び第2直流電圧源或いは直流負荷に接続される複数のスイッチング素子と、前記第1直流電圧源及び前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷に前記スイッチング素子を介して接続されるインダクタと、前記スイッチング素子を作動制御する制御手段とを備え、前記スイッチング素子は、前記インダクタを前記第1直流電圧源に接続する第1接続構成と、前記インダクタを前記第1直流電圧源及び前記第2直流電圧源の双方或いは前記第1直流電圧源及び前記直流負荷の双方に接続する第2接続構成と、前記インダクタを前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷に接続する第3接続構成とを切り替え可能な構成とされており、前記制御手段は、前記スイッチング素子を作動制御して前記第1接続構成に切り替える第1動作モードと、前記スイッチング素子を作動制御して前記第2接続構成に切り替える第2動作モードと、前記スイッチング素子を作動制御して前記第3接続構成に切り替える第3動作モードとを有し、前記第1直流電圧源と前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷との間で電力の授受を行う直流−直流電力変換器であって、前記制御手段は、前記第1直流電圧源と前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷との間で、前記第1動作モードと前記第3動作モードとを交互に使用する昇降圧動作を行うことによって電力の授受を行う場合には、前記第1動作モードと前記第3動作モードとの合間に前記第2動作モードを挿入することを特徴とする直流−直流電力変換器を提供する。
【0062】
本発明によれば、前記昇降圧動作を行うことによって電力の授受を行う場合には、前記第1動作モードと前記第3動作モードとの合間に前記第2動作モードを挿入することで、前記昇降圧動作時において、前記スイッチング素子のうち、前記第1直流電圧源及び前記第2直流電圧或いは前記直流負荷から供給される電圧が集中するスイッチング素子を他のスイッチング素子に分散させることができ、ひいては、前記スイッチング素子のうち、スイッチング損失が集中するスイッチング素子を他のスイッチング素子に分散させることができる。従って、前記昇降圧動作時における前記スイッチング素子のスイッチング損失を従来よりも低減させることでき、それだけ電力変換効率を向上させることが可能となる。
【0063】
本発明において、前記第1動作モードと前記第3動作モードとの合間に挿入する前記第2動作モードの一変調周期における割合は、前記第1直流電圧源の電圧と前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷の電圧とのうち、小さい方の電圧を大きい方の電圧で除算した値が上限とされている態様を例示できる。
【0064】
この特定事項では、前記第1動作モードと前記第3動作モードとの合間に挿入する前記第2動作モードの一変調周期における割合を可及的に大きくすることができ、ひいては、前記インダクタに流れる電流を可及的に小さくすることができ、それだけ前記インダクタ及び前記スイッチング素子で発生する損失を低く抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0065】
以上説明したように、本発明によると、前記第1直流電圧源と前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷との間で前記第1動作モードと前記第3動作モードとを交互に使用する昇降圧動作を行うことによって電力の授受を行う場合には、前記第1動作モードと前記第3動作モードとの合間に前記第2動作モードを挿入することで、前記昇降圧動作時における前記スイッチング素子のスイッチング損失を従来よりも低減させることでき、それだけ電力変換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態に係る直流−直流電力変換器の概略構成を示す回路図である。
【図2】本実施の形態における降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での各モードと第1から第4半導体スイッチのオン状態とオフ状態との対応関係を示す表であって、(a)は、力行モードでの対応関係を示す図であり、(a)は、回生モードでの対応関係を示す図である。
【図3】本実施の形態の力行モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第2及び第3半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びに第1ダイオードのリカバリ損失を従来の昇降圧動作時の損失と比較して示す表である。
【図4】本実施の形態の回生モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第1及び第4半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びに第2ダイオードのリカバリ損失を従来の昇降圧動作時の損失と比較して示す表である。
【図5】本実施の形態の力行モードにおいて図3に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表である。
【図6】本実施の形態の回生モードにおいて図4に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表である。
【図7】インダクタLに流れる電流の時間的変化の一例を示すグラフであって、(a)は、第2動作モードの一変調周期における割合が比較的小さい場合を示す図であり、(b)は、第2動作モードの一変調周期における割合を可及的に大きくした場合を示す図である。
【図8】従来の直流−直流電力変換器の一例である直流−直流電力変換器の概略構成を示す回路図である。
【図9】図8に示す従来の直流−直流電力変換器において力行モードで動作している状態を示す回路図であって、(a)は、第1モードを示す図であり、(b)は、第2モードを示す図であり、(c)は、第3モードを示す図である。
【図10】従来の力行モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での各モードと第2及び第3半導体スイッチのオン状態とオフ状態との対応関係を示す表である。
【図11】図8に示す従来の直流−直流電力変換器において回生モードで動作している状態を示す回路図であって、(a)は、第4モードを示す図であり、(b)は、第5モードを示す図であり、(c)は、第6モードを示す図である。
【図12】従来の回生モードにおける昇圧動作、降圧動作及び昇降圧動作時での各モードと第1及び第4半導体スイッチのオン状態とオフ状態との対応関係を示す表である。
【図13】従来の力行モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第2及び第3半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びに第1及び第3ダイオードのリカバリ損失を示す表である。
【図14】従来の回生モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第1及び第4半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びに第2及び第4ダイオードのリカバリ損失を示す表である。
【図15】従来の力行モードにおいて図13に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表である。
【図16】従来の回生モードにおいて図14に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0068】
図1は、本発明の実施の形態に係る直流−直流電力変換器10の概略構成を示す回路図である。なお、図1に示す直流−直流電力変換器10において、図8に示す直流−直流電力変換器10Aと同じ構成要素には同一符号を付している。
【0069】
図1に示す直流−直流電力変換器10は、複数のスイッチング素子(ここでは第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4)と、インダクタLと、制御手段(ここでは制御装置20)とを備えている。
【0070】
第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2に接続されるか或いは第1直流電圧源E1及び直流負荷に接続される。この例では、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2に接続されている。
【0071】
インダクタLは、第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2に第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4の少なくとも一つを介して接続されるか或いは第1直流電圧源E1及び直流負荷に第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4の少なくとも一つを介して接続される。この例では、インダクタLは、第1直流電圧源E1に第2スイッチング素子SW2を介して接続されており、第2直流電圧源E2に第1スイッチング素子SW1を介して接続されている。
【0072】
第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、第1接続構成と、第2接続構成と、第3接続構成とを切り替え可能な構成とされている。なお、第1から第3接続構成については、図8に示す直流−直流電力変換器10Aの図9(a)から図9(c)及び図11(a)から図11(c)に示す接続構成と同じである。このため、ここでは、第1から第4半導体スイッチS1〜S4及び第1から第4ダイオードの接続構成についての詳しい説明は省略する。
【0073】
第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、制御装置20による作動制御によって第1接続構成とされた場合には、インダクタLを第1直流電圧源E1に接続する(図9(a)及び図11(a)参照)。
【0074】
また、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、制御装置20による作動制御によって第2接続構成とされた場合には、インダクタLを第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2の双方に接続するか或いは第1直流電圧源E1及び直流負荷の双方に接続する。この例では、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、制御装置20による作動制御によって第2接続構成とされた場合には、インダクタLを一方の同じ極性(具体的には負極)同士を直列に接続した第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2の他方の極性(具体的には正極)に接続する(図9(b)及び図11(b)参照)。
【0075】
また、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、制御装置20による作動制御によって第3接続構成とされた場合には、インダクタLを第2直流電圧源E2に接続するか或いは直流負荷に接続する。この例では、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、制御装置20による作動制御によって第3接続構成とされた場合には、インダクタLを第2直流電圧源E2に接続する(図9(c)及び図11(c)参照)。
【0076】
本実施の形態に係る直流−直流電力変換器10は、さらに制御装置20を備えている。制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)等の処理部21と、記憶部22とを備えている。記憶部22は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶メモリを含み、各種制御プログラムや必要な関数およびテーブルや、各種のデータを記憶するようになっている。
【0077】
制御装置20は直流−直流電力変換器10の第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4のスイッチング動作を制御するように構成されている。
【0078】
制御装置20は、第1直流電圧源E1と第2直流電圧源E2との間或いは第1直流電圧源E1と直流負荷との間(この例では第1直流電圧源E1と第2直流電圧源E2との間)で昇圧動作、降圧動作及び昇降圧動作の何れかの動作を行うことによって電力の授受(融通)を行う。
【0079】
詳しくは、制御装置20は、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4を作動制御して第1接続構成に切り替える第1動作モードと、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4を作動制御して第2接続構成に切り替える第2動作モードと、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4を作動制御して第3接続構成に切り替える第3動作モードとを有している。
【0080】
第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4のオン状態及びオフ状態を示す動作モードとして、力行モードで動作する第1モードから第3モード(第1動作モードから第3動作モードの一例)、及び、回生モードで動作する第4モードから第6モード(第1動作モードから第3動作モードの他の例)は、図8に示す直流−直流電力変換器10Aと同じである。
【0081】
すなわち、力行モードにおいては、第1モードは、図9(a)に示すように、第2スイッチング素子SW2がオン状態となり、第1、第3及び第4スイッチング素子SW1,SW3,SW4がオフ状態となって、第1直流電圧源E1からインダクタL及び第2スイッチング素子SW2を経て第1直流電圧源E1に戻る第1電流経路R1を形成するモードとされている。
【0082】
第2モードは、図9(b)に示すように、第3スイッチング素子SW3がオン状態となり、それ以外の第1、第2及び第4スイッチング素子SW1,SW2,SW4がオフ状態となって、第1直流電圧源E1からインダクタL、第2直流電圧源E2及び第3スイッチング素子SW3を経て第1直流電圧源E1に戻る第2電流経路R2を形成するモードとされている。
【0083】
第3モードは、図9(c)に示すように、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4が全てオフ状態となって、第2直流電圧源E2から第1スイッチング素子SW1及びインダクタLを経て第2直流電圧源E2に戻る第3電流経路R3を形成するモードとされている。
【0084】
一方、回生モードにおいては、第4モードは、図11(a)に示すように、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4が全てオフ状態となって、第1直流電圧源E1から第2スイッチング素子SW2及びインダクタLを経て第1直流電圧源E1に戻る第4電流経路R4を形成するモードとされている。
【0085】
第5モードは、図11(b)に示すように、第4スイッチング素子SW4がオン状態となり、それ以外の第1、第2及び第3スイッチング素子SW1,SW2,SW3がオフ状態となって、第1直流電圧源E1から第4スイッチング素子SW4、第2直流電圧源E2及びインダクタLを経て第1直流電圧源E1に戻る第5電流経路R5を形成するモードとされている。
【0086】
第6モードは、図11(c)に示すように、第1スイッチング素子SW1がオン状態となり、第2及び第3スイッチング素子SW2,SW3がオフ状態となって、第2直流電圧源E2からインダクタL及び第1スイッチング素子SW1を経て第2直流電圧源E2に戻る第6電流経路R6を形成するモードとされている。
【0087】
図2は、本実施の形態における降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での各モードと第1から第4半導体スイッチS1〜S4のオン状態とオフ状態との対応関係を示す表である。図2(a)は、力行モードでの対応関係を示しており、図2(a)は、回生モードでの対応関係を示している。
【0088】
制御装置20は、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2よりも所定の電圧ΔV分だけ大きい予め設定した第1電圧V2a(出力電圧V2+所定の電圧ΔV)よりも大きい場合には、力行モードでは第2モードと第3モードとを切り替える降圧動作を実行し、回生モードでは第5モードと第6モードとを切り替える昇圧動作を実行する。
【0089】
一方、制御装置20は、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2よりも所定の電圧ΔV分だけ小さい予め設定した第2電圧V2b(出力電圧V2−所定の電圧ΔV)よりも小さい場合には、力行モードでは第1モードと第2モードとを切り替える昇圧動作を実行し、回生モードでは第4モードと第5モードとを切り替える降圧動作を実行する。
【0090】
なお、所定の電圧ΔVは、第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2或いは直流負荷の定格電圧等に応じて決定することができ、それには限定されないが、5V程度以下を例示できる。
【0091】
そして、制御装置20は、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2より大きく、かつ、第1電圧V2a(出力電圧V2+所定の電圧ΔV)以下の場合、及び、第2電圧V2b(出力電圧V2−所定の電圧ΔV)以上、かつ、第2直流電圧源E2の出力電圧V2より小さい場合には、力行モードでは昇降圧動作として第1モードと第3モードとの合間に第2モードを挿入し(具体的には第1モード又は第3モードの状態では第1モード又は第3モードから第2モードに、第2モードの状態では第2モードから第1モード又は第3モードに切り替え)、回生モードでは昇降圧動作として第4モードと第6モードとの合間に第5モードを挿入する(具体的には第4モード又は第6モードの状態では第4モード又は第6モードから第5モードに、第5モードの状態では第5モードから第4モード又は第6モードに切り替える)昇降圧動作を実行する。また、制御装置20は、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とが等しい場合には、力行モードでは第2モードのみを実行し、回生モードでは第5モードのみを実行する。
【0092】
なお、制御装置20は、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2より大きく、かつ、第1電圧V2a(出力電圧V2+所定の電圧ΔV)以下の場合、及び、第2電圧V2b(出力電圧V2−所定の電圧ΔV)以上、かつ、第2直流電圧源E2の出力電圧V2より小さい場合に力行モードで第2モードのみを実行し、回生モードで第5モードのみを実行してもよいし、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とが等しい場合に昇降圧動作を実行してもよい。
【0093】
次に、本実施の形態において、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4で発生するスイッチング損失について以下に説明する。
【0094】
[力行モード時でのスイッチング損失]
図3は、本実施の形態の力行モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第2及び第3半導体スイッチS2,S3のオン損失及びオフ損失並びに第1ダイオードD1のリカバリ損失を従来の昇降圧動作時の損失と比較して示す表である。
【0095】
なお、降圧動作及び昇圧動作時での損失は、従来と同様であり、ここでは説明を省略し、昇降圧動作時の損失についてのみ説明する。
【0096】
(力行モードにおける昇降圧動作)
力行モードにおける昇降圧動作時において、第2モードから第3モードに移行して第3半導体スイッチS3がオン状態からオフ状態になるときに(図3のα1参照)、第3半導体スイッチS3において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオフ損失が発生する。
【0097】
また、第3モードから第2モードに移行して第3半導体スイッチS3がオフ状態からオン状態になるときに(図3のβ1参照)、第3半導体スイッチS3において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオン損失が発生する。一方、第3モードから第2モードに移行して第1ダイオードD1が導通状態から非導通状態になるときに(図3のβ2参照)、第1ダイオードD1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したリカバリ損失が発生する。
【0098】
また、第1モードから第2モードに移行して第2半導体スイッチS2がオン状態からオフ状態になるときに(図3のα2参照)、第2半導体スイッチS2において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオフ損失が発生する。
【0099】
また、第2モードから第1モードに移行して第2半導体スイッチS2がオフ状態からオン状態になるときに(図3のβ3参照)、第2半導体スイッチS2において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオン損失が発生する。一方、第2モードから第1モードに移行して第3ダイオードD3が導通状態から非導通状態になるときに(図3のβ4参照)、第3ダイオードD3において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したリカバリ損失が発生する。
【0100】
[回生モード時でのスイッチング損失]
図4は、本実施の形態の回生モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第1及び第4半導体スイッチS1,S4のオン損失及びオフ損失並びに第2ダイオードD2のリカバリ損失を従来の昇降圧動作時の損失と比較して示す表である。
【0101】
なお、回生モードにおける降圧動作及び昇圧動作時での損失は、従来と同様であり、ここでは説明を省略し、昇降圧動作時の損失についてのみ説明する。
【0102】
(回生モードにおける昇降圧動作)
回生モードにおける昇降圧動作時において、第5モードから第4モードに移行して第4半導体スイッチS4がオン状態からオフ状態になるときに(図4のα4参照)、第4半導体スイッチS4において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオフ損失が発生する。
【0103】
また、第4モードから第5モードに移行して第4半導体スイッチS4がオフ状態からオン状態になるときに(図4のβ7参照)、第4半導体スイッチS4において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオン損失が発生する。一方、第4モードから第5モードに移行して第2ダイオードD2が導通状態から非導通状態になるときに(図4のβ8参照)、第2ダイオードD2において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したリカバリ損失が発生する。
【0104】
また、第6モードから第5モードに移行して第1半導体スイッチS1がオン状態からオフ状態になるときに(図4のα5参照)、第1半導体スイッチS1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオフ損失が発生する。
【0105】
また、第5モードから第6モードに移行して第1半導体スイッチS1がオフ状態からオン状態になるときに(図4のβ9参照)、第1半導体スイッチS1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオン損失が発生する。一方、第5モードから第6モードに移行して第4ダイオードD4が導通状態から非導通状態になるときに(図4のβ10参照)、第4ダイオードD4において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したリカバリ損失が発生する。
【0106】
図5は、本実施の形態の力行モードにおいて図3に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表を示している。また、図6は、本実施の形態の回生モードにおいて図4に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表を示している。
【0107】
図5の斜線部分に示すように、従来の力行モードでの昇降圧動作時においては、第1ダイオードD1と第2半導体スイッチS2とに、出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失と出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失及びオフ損失とがそれぞれ集中している。
【0108】
これに対して、本実施の形態の力行モードでの昇降圧動作時においては、第1ダイオードD1に集中していた出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失のうち出力電圧V2に比例したリカバリ損失を、第3ダイオードD3に分散させることができ、また、第2半導体スイッチS2に集中していた出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失及びオフ損失のうち出力電圧V1に比例したオン損失及びオフ損失を、第3半導体スイッチS3に分散させることができる。
【0109】
また、図6の斜線部分に示すように、従来の回生モードでの昇降圧動作時においては、第1半導体スイッチS1と第2ダイオードD2とに、出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失及びオフ損失と出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失とがそれぞれ集中している。
【0110】
これに対して、本実施の形態の回生モードでの昇降圧動作時においては、第1半導体スイッチS1に集中していた出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失及びオフ損失のうち出力電圧V2に比例したオン損失及びオフ損失を、第4半導体スイッチS4に分散させることができ、また、第2ダイオードD2に集中していた出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失のうち出力電圧V1に比例したリカバリ損失を、第4ダイオードD4に分散させることができる。
【0111】
既述したように、スイッチング素子を構成するダイオード及び半導体スイッチにおいては、加わる電圧に対してスイッチング損失(オン損失及びオフ損失)並びにリカバリ損失が比例関係にあり、しかも、スイッチング素子の温度に対してスイッチング損失(オン損失及びオフ損失)並びにリカバリ損失が正の相関を有する。
【0112】
この点、本実施の形態によれば、第1モード(第1動作モードの一例)と第3モード(第3動作モードの一例)とを交互に使用する昇降圧動作を行うことによって電力の授受を行う場合には、力行モードでは第1モード(第1動作モードの一例)と第3モード(第3動作モードの一例)との合間に第2モード(第2動作モードの一例)を挿入することで、昇降圧動作時において、第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2から供給される電圧が集中する第1スイッチング素子SW1の第1ダイオードD1及び第2スイッチング素子SW2の第2半導体スイッチS2を第3スイッチング素子SW3の第3ダイオードD3及び第3半導体スイッチS3に分散させることができる(図5参照)。
【0113】
そうすると、第1スイッチング素子SW1の第1ダイオードD1及び第2スイッチング素子SW2の第2半導体スイッチS2の温度を低減させることができ、これにより、リカバリ損失が集中する第1ダイオードD1を第3ダイオードD3に分散させることができると共に、オン損失及びオフ損失が集中する第2半導体スイッチS2を第3半導体スイッチS3に分散させることができる。
【0114】
従って、温度が低くなった分、昇降圧動作時における第1及び第2スイッチング素子SW1,SW2のスイッチング損失を従来よりも低減させることでき、それだけ電力変換効率を向上させることが可能となる。
【0115】
一方、回生モードでは第4モード(第1動作モードの他の例)と第6モード(第3動作モードの他の例)との合間に第5モード(第2動作モードの他の例)を挿入することで、昇降圧動作時において、第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2から供給される電圧が集中する第1スイッチング素子SW1の第1半導体スイッチS1及び第2スイッチング素子SW2の第2ダイオードD2を第4スイッチング素子SW4の第4半導体スイッチS4及び第4ダイオードD4に分散させることができる(図6参照)。
【0116】
そうすると、第1スイッチング素子SW1の第1半導体スイッチS1及び第2スイッチング素子SW2の第2ダイオードD2の温度を低減させることができ、これにより、オン損失及びオフ損失が集中する第1半導体スイッチS1を第4半導体スイッチS4に分散させることができると共に、リカバリ損失が集中する第2ダイオードD2を第4ダイオードD4に分散させることができる。
【0117】
従って、温度が低くなった分、昇降圧動作時における第1及び第2スイッチング素子SW1,SW2のスイッチング損失を従来よりも低減させることでき、それだけ電力変換効率を向上させることが可能となる。
【0118】
また、既述したように、スイッチング素子を構成するダイオード及び半導体スイッチにおいては、定格電圧が高くなるほど損失が大きくなる。
【0119】
この点、本実施の形態によれば、定格電圧が高くなりがちな第1及び第2半導体スイッチSW1及びSW2において、力行モードでは、第1ダイオードD1に加わる電圧を(V1+V2)からV1にすると共に、第2半導体スイッチS2に加わる電圧を(V1+V2)からV2にすることができ(図5参照)、それだけ第1ダイオードD1及び第2半導体スイッチS2でのリカバリ損失並びにオン損失及びオフ損失を小さくでき、ひいては電力変換効率を向上させることができる。一方、回生モードでは、第1半導体スイッチS1に加わる電圧を(V1+V2)からV1にすると共に、第2ダイオードD2に加わる電圧(具体的にはV1+V2)からV2にすることができ(図6参照)、それだけ第1半導体スイッチS1及び第2ダイオードD2でのオン損失及びオフ損失並びにリカバリ損失を小さくでき、ひいては電力変換効率を向上させることができる。このことは、定格電圧の選択肢が少ないIGBTの場合に、特に有効となる。
【0120】
こうして向上される電力変換効率は、全体としては0.数%(具体的には95%→95.5%程度)であったとしても、損失部分だけに注目して視れば、例えば、損失(具体的には5%程度)のうちスイッチング素子の損失は、その半分程度(具体的には2.5%程度)であることから、たとえ電力変換効率が全体としては0.数%(具体的には95%→95.5%程度)であったとしても、スイッチング素子の損失ベースで数10%(具体的には20%(=0.5%/2.5%×100)程度)向上したことになる。つまり、スイッチング素子を冷却するための放熱部材を数10%(具体的には20%程度)削減することができ、これにより放熱部材にかかる費用及び放熱部材が占めるスペースを削減することができ、それだけ低コスト化かつ省スペース化を実現させることが可能となる。
【0121】
ところで、インダクタL及び第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4で発生する損失をさらに低く抑えるという観点から、インダクタLに流れる電流を可及的に小さくすることが好ましい。この点に関し、第2動作モード(具体的には力行モードでは第2モード、回生モードでは第5モード)でインダクタLに流れる電流は、第1直流電圧源E1と第2直流電圧源E2或いは直流負荷との双方に流れるため、第1直流電圧源E1だけに流れる第1動作モード(具体的には力行モードでは第1モード、回生モードでは第4モード)及び第2直流電圧源E2或いは直流負荷だけに流れる第3動作モード(具体的には力行モードでは第3モード、回生モードでは第6モード)の双方の性質を有する。従って、第2動作モードの一変調周期における割合を大きくするほど、インダクタLに流れる電流が減少する。
【0122】
かかる観点から、第1モードと第3モードとを交互に使用する昇降圧動作時において、第1動作モード(具体的には力行モードでは第1モード、回生モードでは第4モード)と第3動作モード(具体的には力行モードでは第3モード、回生モードでは第6モード)との合間に挿入する第2動作モード(具体的には力行モードでは第2モード、回生モードでは第5モード)の一変調周期における割合を可及的に大きくすることが好ましい。
【0123】
一方、第2動作モード(具体的には力行モードでは第2モード、回生モードでは第5モード)では、インダクタLが第1直流電圧源E1と第2直流電圧源E2との双方或いは第1直流電圧源E1と直流負荷との双方(この例では第1直流電圧源E1と第2直流電圧源E2との双方)に接続されることから、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とのうち、大きい方の電圧から小さい方の電圧を差し引いた値が小さいほど、第2動作モード(具体的には力行モードでは第2モード、回生モードでは第5モード)の一変調周期における割合を大きくすることができる。
【0124】
そこで、本実施の形態では、制御装置20は、第2動作モード(具体的には力行モードでは第2モード、回生モードでは第5モード)の一変調周期における割合は、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とのうち、小さい方の電圧を大きい方の電圧で除算した値が上限とされる構成とされている。
【0125】
図7は、インダクタLに流れる電流の時間的変化の一例を示すグラフである。図7(a)は、第2動作モードIIの一変調周期Tにおける割合が比較的小さい場合を示しており、図7(b)は、第2動作モードIIの一変調周期Tにおける割合を可及的に大きくした場合を示している。なお、図7に示す例では、昇降圧動作として、第1動作モードI→第2動作モードII→第3動作モードIII→第2動作モードII→第1動作モードI→・・・の繰り返しとしたが、それに限定されるものではない。
【0126】
図7(a)に示すように、第2動作モードII(具体的には力行モードでは第2モード、回生モードでは第5モード)の一変調周期Tにおける割合(t/T)が比較的小さいと、インダクタLに流れる電流の平均値Iavが大きくなってしまい、それだけインダクタL及び第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4で発生する損失が大きくなる。
【0127】
これに対し、図7(b)に示すように、第2動作モードII(具体的には力行モードでは第2モード、回生モードでは第5モード)の一変調周期Tにおける割合(t/T)を、第1直流電圧源E1の出力電圧V1(例えば100V)と第2直流電圧源E2の出力電圧V2(例えば80V)とのうち、小さい方の電圧(例えばV2=80V)を大きい方の電圧(例えばV1=100V)で除算した値(例えば80V/100V=0.8)が上限となるようにすることで、割合(t/T)を可及的に大きくすることができ、ひいては、インダクタLに流れる電流の平均値Iavを可及的に小さくすることができ、それだけインダクタL及び第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4で発生する損失を低く抑えることが可能となる。
【0128】
なお、本実施の形態では、力行モード時に第1直流電圧源E1から第2直流電圧源E2或いは直流負荷に電力を供給し、回生モード時に第2直流電圧源E2或いは直流負荷から第1直流電圧源E1に電力を供給するようにしたが、力行モード時に第2直流電圧源E2或いは直流負荷から第1直流電圧源E1に電力を供給し、回生モード時に第1直流電圧源E1から第2直流電圧源E2或いは直流負荷に電力を供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0129】
10 直流−直流電力変換器
20 制御装置
D1 第1ダイオード
D2 第2ダイオード
D3 第3ダイオード
D4 第4ダイオード
E1 第1電圧源
E2 第2電圧源
L インダクタ
S1 第1半導体スイッチ
S2 第2半導体スイッチ
S3 第3半導体スイッチ
S4 第4半導体スイッチ
SW1 第1スイッチング素子
SW2 第2スイッチング素子
SW3 第3スイッチング素子
SW4 第4スイッチング素子
I 第1動作モード
II 第2動作モード
III 第3動作モード
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流−直流電力変換器に関するものであり、特に、双方向昇降圧形の直流−直流電力変換器におけるスイッチング損失低減に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直流−直流電力変換器は、例えば、第1直流電圧源及び第2直流電圧源或いは第1直流電圧源及び直流負荷の間に接続され、第1直流電圧源及び第2直流電圧源の出力電圧或いは第1直流電圧源及び直流負荷の出力電圧に基づき、第1直流電圧源から第2直流電圧源或いは直流負荷に電力を供給したり、第2直流電圧源或いは直流負荷から第1直流電圧源に電力を供給したりすることが可能な双方向形のスイッチング回路(DC−DCコンバータ)として用いられる。
【0003】
例えば、直流−直流電力変換器は、作業車両などの電動車両に用いられることがある。電動車両は、一般的に、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置からの直流電力をインバータ回路等の電力変換回路にて交流電力に変換して得られた交流電力でモータ等の車両駆動電動機を作動させるようになっている。そして、直流−直流電力変換器は、例えば、蓄電装置等の第1直流電圧源と、インバータ回路等の電力変換回路が接続されたキャパシタ等の第2直流電圧源或いは直流負荷との間に設けられ、力行モード時には第1直流電圧源から第2直流電圧源或いは直流負荷に電力を供給する一方、回生モード時には第2直流電圧源或いは直流負荷から第1直流電圧源に電力を供給することが可能な構成とされている。
【0004】
従来の直流−直流電力変換器として、第1直流電圧源及び第2直流電圧源或いは第1直流電圧源及び直流負荷に接続される半導体スイッチやダイオード等の複数のスイッチング素子と、第1直流電圧源及び第2直流電圧源或いは第1直流電圧源及び直流負荷にスイッチング素子を介して接続されるインダクタとを備え、スイッチング素子は、インダクタを第1直流電圧源に接続する第1接続構成と、インダクタを第1直流電圧源及び第2直流電圧源の双方或いは第1直流電圧源及び直流負荷の双方に接続する第2接続構成と、インダクタを第2直流電圧源或いは直流負荷に接続する第3接続構成とを切り替え可能な構成とされた直流−直流電力変換器が知られており、具体的には、特許文献1に記載のDC−DCコンバータ回路(特許文献1の図1参照)を例示できる。
【0005】
図8は、従来の直流−直流電力変換器の一例である直流−直流電力変換器10Aの概略構成を示す回路図である。
【0006】
図8に示す直流−直流電力変換器10Aは、第1スイッチング素子SW1と、第2スイッチング素子SW2と、インダクタLと、第3スイッチング素子SW3と、第4スイッチング素子SW4とを備えている。
【0007】
第1スイッチング素子SW1は、第1半導体スイッチS1と第1ダイオードD1とを備えている。第1半導体スイッチS1は、一方向にのみ電流をオン,オフ制御可能な半導体デバイスとされている。第1ダイオードD1は、第1半導体スイッチS1が電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように第1半導体スイッチS1に並列接続されている。
【0008】
第2スイッチング素子SW2は、第2半導体スイッチS2と第2ダイオードD2とを備えている。第2半導体スイッチS2は、一方向にのみ電流をオン,オフ制御可能な半導体デバイスとされている。第2ダイオードD2は、第2半導体スイッチS2が電流をオン,オフ制御できる方向とは逆の方向に電流を流せるように第2半導体スイッチS2に並列接続されている。
【0009】
インダクタLは、一端が第1スイッチング素子SW1に含まれる第1ダイオードD1のカソード側(接続点B参照)に接続され、かつ、他端が第2スイッチング素子SW2に含まれる第2ダイオードD2のカソード側(接続点C参照)に接続されている。
【0010】
第3スイッチング素子SW3は、第1スイッチング素子SW1に含まれる第1ダイオードD1のアノード側から第2スイッチング素子SW2に含まれる第2ダイオードD2のアノード側への一方向にのみ電流を流すことができるように構成されており、電流の流入側が第1スイッチング素子SW1に含まれる第1ダイオードD1のアノード側(接続点A参照)に接続され、電流の流出側が第2スイッチング素子SW2に含まれる第2ダイオードD2のアノード側(接続点D参照)に接続されている。
【0011】
詳しくは、第3スイッチング素子SW3は、第3半導体スイッチS3と第3ダイオードD3とを備えている。第3半導体スイッチS3は、一方向にのみ電流をオン,オフ制御可能な半導体デバイスとされている。第3ダイオードD3は、第3半導体スイッチS3が電流をオン,オフ制御できる方向に電流を流せるように第3半導体スイッチS3に直列接続されている。
【0012】
第4スイッチング素子SW4は、第2スイッチング素子SW2に含まれる第2ダイオードD2のアノード側から第1スイッチング素子SW1に含まれる第1ダイオードD1のアノード側への一方向にのみ電流を流すことができるように構成されており、電流の流入側が第2スイッチング素子SW2に含まれる第2ダイオードD2のアノード側(接続点D参照)に接続され、電流の流出側が第1スイッチング素子SW1に含まれる第1ダイオードD1のアノード側(接続点A参照)に接続されている。
【0013】
詳しくは、第4スイッチング素子SW4は、第4半導体スイッチS4と第4ダイオードD4とを備えている。第4半導体スイッチS4は、一方向にのみ電流をオン,オフ制御可能な半導体デバイスとされている。第4ダイオードD4は、第4半導体スイッチS4が電流をオン,オフ制御できる方向に電流を流せるように第4半導体スイッチS4に直列接続されている。
【0014】
そして、直流−直流電力変換器10Aは、第1スイッチング素子SW1に含まれる第1ダイオードD1のカソード側(接続点B参照)と第2スイッチング素子SW2に含まれる第2ダイオードD2のアノード側(接続点D参照)との間に、第1スイッチング素子SW1側が陽極になるように第1直流電圧源E1が接続されるようになっている。
【0015】
また、直流−直流電力変換器10Aは、第1スイッチング素子SW1に含まれる第1ダイオードD1のアノード側(接続点A参照)と第2スイッチング素子SW2に含まれる第2ダイオードD2のカソード側(接続点C参照)との間に、第2スイッチング素子SW2側が陽極になるように第2直流電圧源E2が接続されるようになっている。
【0016】
なお、直流−直流電力変換器10Aが作業車両に適用される場合には、例えば、第1及び第2電圧源E1,E2は、バッテリやキャパシタ等の蓄電装置とすることができる。また、第1及び第2電圧源E1,E2には、モータ等の車両駆動電動機を作動させるインバータ回路等の電力変換回路を接続することができる。
【0017】
図8に示す直流−直流電力変換器10Aでは、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4のオン状態及びオフ状態を示す動作モードとして、力行モードで動作する次の第1モードから第3モードを行う。
【0018】
図9は、図8に示す従来の直流−直流電力変換器10Aにおいて力行モードで動作している状態を示す回路図である。図9(a)は、第1モードを示しており、図9(b)は、第2モードを示しており、図9(c)は、第3モードを示している。
【0019】
力行モードにおいては、第1モードは、図9(a)に示すように、第2スイッチング素子SW2がオン状態となり、第1及び第4スイッチング素子SW1,SW4がオフ状態となって、第1直流電圧源E1からインダクタL及び第2スイッチング素子SW2を経て第1直流電圧源E1に戻る第1電流経路R1を形成するモードとされている。
【0020】
第2モードは、図9(b)に示すように、第3スイッチング素子SW3がオン状態となり、それ以外の第1、第2及び第4スイッチング素子SW1,SW2,SW4がオフ状態となって、第1直流電圧源E1からインダクタL、第2直流電圧源E2及び第3スイッチング素子SW3(第3ダイオードD3)を経て第1直流電圧源E1に戻る第2電流経路R2を形成するモードとされている。
【0021】
第3モードは、図9(c)に示すように、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4が全てオフ状態となって、第2直流電圧源E2から第1スイッチング素子SW1(第1ダイオードD1)及びインダクタLを経て第2直流電圧源E2に戻る第3電流経路R3を形成するモードとされている。
【0022】
そして、力行モードを実行するときは、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2との大小関係に応じて、第1モードと第2モードとの間、第2モードと第3モードとの間、第1モードと第3モードとの間において短い周期(例えば10kHz〜100kHz程度の何れかの周期)で切り替える切り替え動作を実行する。
【0023】
図10は、従来の力行モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での各モードと第2及び第3半導体スイッチS2,S3のオン状態とオフ状態との対応関係を示す表である。なお、図10において、「○」印はオン状態を示しており、「●」印はオフ状態を示している。また、第1モードの第3半導体スイッチS3に付した「*」印は、昇圧動作及び昇降圧動作時では第2直流電圧源E2の出力電圧V2によって第3半導体スイッチS3に逆バイアス電圧がかかることから、オン状態でもオフ状態でもどちらでもよいことを示している。「*」印の後の括弧内については後述する。
【0024】
図10に示すように、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2よりも大きい場合には、第2モードと第3モードとを切り替える降圧動作を実行し、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2よりも小さい場合には、第1モードと第2モードとを切り替える昇圧動作を実行する。第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とが等しい場合、或いは、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とがほぼ等しい場合(電圧V1と電圧V2との差の絶対値が所定範囲内にある場合)には、第1モードと第3モードとを切り替える昇降圧動作を実行する。
【0025】
ここで、第3半導体スイッチS3は、昇圧動作及び昇降圧動作時の第1モードにおいてオン状態でもオフ状態でもどちらでもよいが(図10の「*」印参照)、昇圧動作時では、第2モードでオン状態となっているために、第1モードと第2モードとの間でオン/オフ切り替えを行わないように第1モードでは実使用上はオン状態(括弧内「○」印参照)とし、また、昇降圧動作時では、第3モードでオフ状態となっているために、第1モードと第3モードとの間でオン/オフ切り替えを行わないように第1モードでは実使用上はオフ状態(括弧内「●」印参照)とする。
【0026】
また、図8に示す直流−直流電力変換器10Aでは、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4のオン状態及びオフ状態を示す動作モードとして、回生モードで動作する次の第4モードから第6モードを行う。
【0027】
図11は、図8に示す従来の直流−直流電力変換器10Aにおいて回生モードで動作している状態を示す回路図である。図11(a)は、第4モードを示しており、図11(b)は、第5モードを示しており、図11(c)は、第6モードを示している。
【0028】
回生モードにおいては、第4モードは、図11(a)に示すように、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4が全てオフ状態となって、第1直流電圧源E1から第2スイッチング素子SW2(第2ダイオードD2)及びインダクタLを経て第1直流電圧源E1に戻る第4電流経路R4を形成するモードとされている。
【0029】
第5モードは、図11(b)に示すように、第4スイッチング素子SW4がオン状態となり、それ以外の第1、第2及び第3スイッチング素子SW1,SW2,SW3がオフ状態となって、第1直流電圧源E1から第4スイッチング素子SW4(第4ダイオードD4)、第2直流電圧源E2及びインダクタLを経て第1直流電圧源E1に戻る第5電流経路R5を形成するモードとされている。
【0030】
第6モードは、図11(c)に示すように、第1スイッチング素子SW1がオン状態となり、第2及び第3スイッチング素子SW2,SW3がオフ状態となって、第2直流電圧源E2からインダクタL及び第1スイッチング素子SW1を経て第2直流電圧源E2に戻る第6電流経路R6を形成するモードとされている。
【0031】
そして、回生モードを実行するときは、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2との大小関係に応じて、第4モードと第5モードとの間、第5モードと第6モードとの間、第4モードと第6モードとの間において短い周期(例えば10kHz〜100kHz程度の何れかの周期)で切り替える切り替え動作を実行する。
【0032】
図12は、従来の回生モードにおける昇圧動作、降圧動作及び昇降圧動作時での各モードと第1及び第4半導体スイッチS1,S4のオン状態とオフ状態との対応関係を示す表である。なお、図12において、「○」印はオン状態を示しており、「●」印はオフ状態を示している。また、また、第6モードの第4半導体スイッチS4に付した「*」印は、昇圧動作及び昇降圧動作時では第1直流電圧源E1の出力電圧V1によって第4半導体スイッチS4に逆バイアス電圧がかかることから、オン状態でもオフ状態でもどちらでもよいことを示している。「*」印の後の括弧内については後述する。
【0033】
図12に示すように、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2よりも大きい場合には、第5モードと第6モードとを切り替ええる昇圧動作を実行し、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2よりも小さい場合には、第4モードと第5モードとを切り替える降圧動作を実行する。第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とが等しい場合、或いは、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とがほぼ等しい場合(電圧V1と電圧V2との差の絶対値が所定範囲内にある場合)には、第4モードと第6モードとを切り替える昇降圧動作を実行する。
【0034】
ここで、第4半導体スイッチS4は、昇圧動作及び昇降圧動作時の第6モードにおいてオン状態でもオフ状態でもどちらでもよいが(図12の「*」印参照)、昇圧動作時では、第5モードでオン状態となっているために、第5モードと第6モードとの間でオン/オフ切り替えを行わないように第6モードでは実使用上はオン状態(括弧内「○」印参照)とし、また、昇降圧動作時では、第4モードでオフ状態となっているために、第4モードと第6モードとの間でオン/オフ切り替えを行わないように第6モードでは実使用上はオフ状態(括弧内「●」印参照)とする。
【0035】
なお、第1電圧源E1の出力電圧V1、第2電圧源E2の出力電圧V2は、例えば、図示を省略した電圧計にて測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0036】
【特許文献1】特開2011−35998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0037】
ところで、直流−直流電力変換器に用いられるスイッチング素子を構成する半導体スイッチは、オフ状態からオン状態に移行するときに、オフ状態時に加わっていた電圧に比例したスイッチング損失(いわゆるオン損失)が発生したり、オン状態からオフ状態に移行するときに、オフ状態時に加わる電圧に比例したスイッチング損失(いわゆるオフ損失)が発生したりする。また、直流−直流電力変換器に用いられるスイッチング素子を構成するダイオードは、導通状態から非導通状態に移行する際に非導通状態時に加わる電圧に比例したスイッチング損失(いわゆるリカバリ損失(逆回復損失))が発生したりする。
【0038】
この点に関し、図8に示すような、従来の直流−直流電力変換器では、次のようなスイッチング素子に対するスイッチング損失が発生する。
【0039】
[力行モード時でのスイッチング損失]
図13は、従来の力行モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第2及び第3半導体スイッチS2,S3のオン損失及びオフ損失並びに第1及び第3ダイオードD1,D3のリカバリ損失を示す表である。なお、図13において、第1から第4半導体スイッチS1〜S4の「○」印はオン状態を示しており、「●」印はオフ状態を示している。また、第1から第4ダイオードD1〜D4の「○」印は導通状態を示しており、「●」印は非導通状態を示している。これらのことは、後述する図14、図2から図4についても同様である。
【0040】
(力行モードにおける降圧動作)
力行モードにおける降圧動作時において、第2モードから第3モードに移行して第3半導体スイッチS3がオン状態からオフ状態になるときに(図13のα1参照)、第3半導体スイッチS3において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオフ損失が発生する。
【0041】
また、第3モードから第2モードに移行して第3半導体スイッチS3がオフ状態からオン状態になるときに(図13のβ1参照)、第3半導体スイッチS3において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオン損失が発生する。一方、第3モードから第2モードに移行して第1ダイオードD1が導通状態から非導通状態になるときに(図13のβ2参照)、第1ダイオードD1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したリカバリ損失が発生する。
【0042】
(力行モードにおける昇圧動作)
力行モードにおける昇圧動作時において、第1モードから第2モードに移行して第2半導体スイッチS2がオン状態からオフ状態になるときに(図13のα2参照)、第2半導体スイッチS2において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオフ損失が発生する。
【0043】
また、第2モードから第1モードに移行して第2半導体スイッチS2がオフ状態からオン状態になるときに(図13のβ3参照)、第2半導体スイッチS2において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオン損失が発生する。一方、第2モードから第1モードに移行して第3ダイオードD3が導通状態から非導通状態になるときに(図13のβ4参照)、第3ダイオードD3において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したリカバリ損失が発生する。
【0044】
(力行モードにおける昇降圧動作)
力行モードにおける昇降圧動作時において、第1モードから第3モードに移行して第2半導体スイッチS2がオン状態からオフ状態になるときに(図13のα3参照)、第2半導体スイッチS2において第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とを加えた出力電圧(V1+V2)に比例したオフ損失が発生する。
【0045】
また、第2モードから第1モードに移行して第2半導体スイッチS2がオフ状態からオン状態になるときに(図13のβ5参照)、第2半導体スイッチS2において第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とを加えた出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失が発生する。一方、第3モードから第1モードに移行して第1ダイオードD1が導通状態から非導通状態になるときに(図13のβ6参照)、第1ダイオードD1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とを加えた出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失が発生する。
【0046】
[回生モード時でのスイッチング損失]
図14は、従来の回生モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第1及び第4半導体スイッチS1,S4のオン損失及びオフ損失並びに第2及び第4ダイオードD2,D4のリカバリ損失を示す表である。
【0047】
(回生モードにおける降圧動作)
回生モードにおける降圧動作時において、第5モードから第4モードに移行して第4半導体スイッチS4がオン状態からオフ状態になるときに(図14のα4参照)、第4半導体スイッチS4において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオフ損失が発生する。
【0048】
また、第4モードから第5モードに移行して第4半導体スイッチS4がオフ状態からオン状態になるときに(図14のβ7参照)、第4半導体スイッチS4において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオン損失が発生する。一方、第4モードから第5モードに移行して第2ダイオードD2が導通状態から非導通状態になるときに(図14のβ8参照)、第2ダイオードD2において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したリカバリ損失が発生する。
【0049】
(回生モードにおける昇圧動作)
回生モードにおける昇圧動作時において、第6モードから第5モードに移行して第1半導体スイッチS1がオン状態からオフ状態になるときに(図14のα5参照)、第1半導体スイッチS1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオフ損失が発生する。
【0050】
また、第5モードから第6モードに移行して第1半導体スイッチS1がオフ状態からオン状態になるときに(図14のβ9参照)、第1半導体スイッチS1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオン損失が発生する。一方、第5モードから第6モードに移行して第4ダイオードD4が導通状態から非導通状態になるときに(図14のβ10参照)、第4ダイオードD4において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したリカバリ損失が発生する。
【0051】
(回生モードにおける昇降圧動作)
回生モードにおける昇降圧動作時において、第6モードから第4モードに移行して第1半導体スイッチS1がオン状態からオフ状態になるときに(図14のα6参照)、第1半導体スイッチS1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とを加えた出力電圧(V1+V2)に比例したオフ損失が発生する。
【0052】
また、第4モードから第6モードに移行して第1半導体スイッチS1がオフ状態からオン状態になるときに(図14のβ11参照)、第1半導体スイッチS1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とを加えた出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失が発生する。一方、第4モードから第6モードに移行して第2ダイオードD2が導通状態から非導通状態になるときに(図14のβ12参照)、第2ダイオードD2において第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とを加えた出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失が発生する。
【0053】
図15は、従来の力行モードにおいて図13に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表を示している。また、図16は、従来の回生モードにおいて図14に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表を示している。
【0054】
図15の斜線部分に示すように、力行モードでの昇降圧動作時においては、第1ダイオードD1と第2半導体スイッチS2とに、出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失と出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失及びオフ損失とがそれぞれ集中している。
【0055】
また、図16の斜線部分に示すように、回生モードでの昇降圧動作時においては、第1半導体スイッチS1と第2ダイオードD2とに、出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失及びオフ損失と出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失とがそれぞれ集中している。
【0056】
一般的に、スイッチング素子を構成するダイオード及び半導体スイッチにおいては、加わる電圧に対してスイッチング損失(オン損失及びオフ損失)並びにリカバリ損失が比例関係にあり、しかも、スイッチング素子の温度に対してスイッチング損失(オン損失及びオフ損失)並びにリカバリ損失が正の相関を有する。
【0057】
従って、力行モードでは、第1ダイオードD1及び第2半導体スイッチS2に供給される電圧(V1+V2)が大きいと、それだけ第1ダイオードD1及び第2半導体スイッチのリカバリ損失並びにオン損失及びオフ損失が大きくなり、それに伴って電力変換効率が低下する。一方、回生モードでは、第1半導体スイッチS1及び第2ダイオードD2に供給される電圧(V1+V2)が大きいと、それだけ第1半導体スイッチS1及び第2ダイオードD2のオン損失及びオフ損失並びにリカバリ損失が大きくなり、それに伴って電力変換効率が低下する。
【0058】
また、スイッチング素子を構成するダイオード及び半導体スイッチにおいては、定格電圧に対して発生するスイッチング損失が比例関係にある。すなわち、定格電圧が高くなるほどスイッチング損失が大きくなる。
【0059】
従って、力行モードでは、第1ダイオードD1及び第2半導体スイッチS2に加わる電圧(具体的にはV1+V2)が大きいと、それだけ第1ダイオードD1及び第2半導体スイッチS2の定格電圧が大きくなってリカバリ損失並びにオン損失及びオフ損失が大きくなり、それに伴って電力変換効率が低下する。一方、回生モードでは、第1半導体スイッチS1及び第2ダイオードD2に加わる電圧(具体的にはV1+V2)が大きいと、それだけ第1半導体スイッチS1及び第2ダイオードD2の定格電圧が大きくなってオン損失及びオフ損失並びにリカバリ損失が大きくなり、それに伴って電力変換効率が低下する。このことは、例えば、定格電圧が30V,40V,60Vというように、10V単位や数10V単位で細かに設定されているMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)に比べて、定格電圧が600Vの次は1200Vというように、数百V単位で大まかに設定されているIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の場合には、定格電圧の選択肢が少ないため、特に顕著となる。
【0060】
そこで、本発明は、昇降圧動作時におけるスイッチング素子のスイッチング損失を従来よりも低減させることでき、それだけ電力変換効率を向上させることができる直流−直流電力変換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0061】
本発明は、前記課題を解決するために、第1直流電圧源及び第2直流電圧源或いは直流負荷に接続される複数のスイッチング素子と、前記第1直流電圧源及び前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷に前記スイッチング素子を介して接続されるインダクタと、前記スイッチング素子を作動制御する制御手段とを備え、前記スイッチング素子は、前記インダクタを前記第1直流電圧源に接続する第1接続構成と、前記インダクタを前記第1直流電圧源及び前記第2直流電圧源の双方或いは前記第1直流電圧源及び前記直流負荷の双方に接続する第2接続構成と、前記インダクタを前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷に接続する第3接続構成とを切り替え可能な構成とされており、前記制御手段は、前記スイッチング素子を作動制御して前記第1接続構成に切り替える第1動作モードと、前記スイッチング素子を作動制御して前記第2接続構成に切り替える第2動作モードと、前記スイッチング素子を作動制御して前記第3接続構成に切り替える第3動作モードとを有し、前記第1直流電圧源と前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷との間で電力の授受を行う直流−直流電力変換器であって、前記制御手段は、前記第1直流電圧源と前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷との間で、前記第1動作モードと前記第3動作モードとを交互に使用する昇降圧動作を行うことによって電力の授受を行う場合には、前記第1動作モードと前記第3動作モードとの合間に前記第2動作モードを挿入することを特徴とする直流−直流電力変換器を提供する。
【0062】
本発明によれば、前記昇降圧動作を行うことによって電力の授受を行う場合には、前記第1動作モードと前記第3動作モードとの合間に前記第2動作モードを挿入することで、前記昇降圧動作時において、前記スイッチング素子のうち、前記第1直流電圧源及び前記第2直流電圧或いは前記直流負荷から供給される電圧が集中するスイッチング素子を他のスイッチング素子に分散させることができ、ひいては、前記スイッチング素子のうち、スイッチング損失が集中するスイッチング素子を他のスイッチング素子に分散させることができる。従って、前記昇降圧動作時における前記スイッチング素子のスイッチング損失を従来よりも低減させることでき、それだけ電力変換効率を向上させることが可能となる。
【0063】
本発明において、前記第1動作モードと前記第3動作モードとの合間に挿入する前記第2動作モードの一変調周期における割合は、前記第1直流電圧源の電圧と前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷の電圧とのうち、小さい方の電圧を大きい方の電圧で除算した値が上限とされている態様を例示できる。
【0064】
この特定事項では、前記第1動作モードと前記第3動作モードとの合間に挿入する前記第2動作モードの一変調周期における割合を可及的に大きくすることができ、ひいては、前記インダクタに流れる電流を可及的に小さくすることができ、それだけ前記インダクタ及び前記スイッチング素子で発生する損失を低く抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0065】
以上説明したように、本発明によると、前記第1直流電圧源と前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷との間で前記第1動作モードと前記第3動作モードとを交互に使用する昇降圧動作を行うことによって電力の授受を行う場合には、前記第1動作モードと前記第3動作モードとの合間に前記第2動作モードを挿入することで、前記昇降圧動作時における前記スイッチング素子のスイッチング損失を従来よりも低減させることでき、それだけ電力変換効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態に係る直流−直流電力変換器の概略構成を示す回路図である。
【図2】本実施の形態における降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での各モードと第1から第4半導体スイッチのオン状態とオフ状態との対応関係を示す表であって、(a)は、力行モードでの対応関係を示す図であり、(a)は、回生モードでの対応関係を示す図である。
【図3】本実施の形態の力行モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第2及び第3半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びに第1ダイオードのリカバリ損失を従来の昇降圧動作時の損失と比較して示す表である。
【図4】本実施の形態の回生モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第1及び第4半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びに第2ダイオードのリカバリ損失を従来の昇降圧動作時の損失と比較して示す表である。
【図5】本実施の形態の力行モードにおいて図3に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表である。
【図6】本実施の形態の回生モードにおいて図4に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表である。
【図7】インダクタLに流れる電流の時間的変化の一例を示すグラフであって、(a)は、第2動作モードの一変調周期における割合が比較的小さい場合を示す図であり、(b)は、第2動作モードの一変調周期における割合を可及的に大きくした場合を示す図である。
【図8】従来の直流−直流電力変換器の一例である直流−直流電力変換器の概略構成を示す回路図である。
【図9】図8に示す従来の直流−直流電力変換器において力行モードで動作している状態を示す回路図であって、(a)は、第1モードを示す図であり、(b)は、第2モードを示す図であり、(c)は、第3モードを示す図である。
【図10】従来の力行モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での各モードと第2及び第3半導体スイッチのオン状態とオフ状態との対応関係を示す表である。
【図11】図8に示す従来の直流−直流電力変換器において回生モードで動作している状態を示す回路図であって、(a)は、第4モードを示す図であり、(b)は、第5モードを示す図であり、(c)は、第6モードを示す図である。
【図12】従来の回生モードにおける昇圧動作、降圧動作及び昇降圧動作時での各モードと第1及び第4半導体スイッチのオン状態とオフ状態との対応関係を示す表である。
【図13】従来の力行モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第2及び第3半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びに第1及び第3ダイオードのリカバリ損失を示す表である。
【図14】従来の回生モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第1及び第4半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びに第2及び第4ダイオードのリカバリ損失を示す表である。
【図15】従来の力行モードにおいて図13に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表である。
【図16】従来の回生モードにおいて図14に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0068】
図1は、本発明の実施の形態に係る直流−直流電力変換器10の概略構成を示す回路図である。なお、図1に示す直流−直流電力変換器10において、図8に示す直流−直流電力変換器10Aと同じ構成要素には同一符号を付している。
【0069】
図1に示す直流−直流電力変換器10は、複数のスイッチング素子(ここでは第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4)と、インダクタLと、制御手段(ここでは制御装置20)とを備えている。
【0070】
第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2に接続されるか或いは第1直流電圧源E1及び直流負荷に接続される。この例では、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2に接続されている。
【0071】
インダクタLは、第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2に第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4の少なくとも一つを介して接続されるか或いは第1直流電圧源E1及び直流負荷に第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4の少なくとも一つを介して接続される。この例では、インダクタLは、第1直流電圧源E1に第2スイッチング素子SW2を介して接続されており、第2直流電圧源E2に第1スイッチング素子SW1を介して接続されている。
【0072】
第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、第1接続構成と、第2接続構成と、第3接続構成とを切り替え可能な構成とされている。なお、第1から第3接続構成については、図8に示す直流−直流電力変換器10Aの図9(a)から図9(c)及び図11(a)から図11(c)に示す接続構成と同じである。このため、ここでは、第1から第4半導体スイッチS1〜S4及び第1から第4ダイオードの接続構成についての詳しい説明は省略する。
【0073】
第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、制御装置20による作動制御によって第1接続構成とされた場合には、インダクタLを第1直流電圧源E1に接続する(図9(a)及び図11(a)参照)。
【0074】
また、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、制御装置20による作動制御によって第2接続構成とされた場合には、インダクタLを第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2の双方に接続するか或いは第1直流電圧源E1及び直流負荷の双方に接続する。この例では、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、制御装置20による作動制御によって第2接続構成とされた場合には、インダクタLを一方の同じ極性(具体的には負極)同士を直列に接続した第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2の他方の極性(具体的には正極)に接続する(図9(b)及び図11(b)参照)。
【0075】
また、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、制御装置20による作動制御によって第3接続構成とされた場合には、インダクタLを第2直流電圧源E2に接続するか或いは直流負荷に接続する。この例では、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4は、制御装置20による作動制御によって第3接続構成とされた場合には、インダクタLを第2直流電圧源E2に接続する(図9(c)及び図11(c)参照)。
【0076】
本実施の形態に係る直流−直流電力変換器10は、さらに制御装置20を備えている。制御装置20は、CPU(Central Processing Unit)等の処理部21と、記憶部22とを備えている。記憶部22は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶メモリを含み、各種制御プログラムや必要な関数およびテーブルや、各種のデータを記憶するようになっている。
【0077】
制御装置20は直流−直流電力変換器10の第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4のスイッチング動作を制御するように構成されている。
【0078】
制御装置20は、第1直流電圧源E1と第2直流電圧源E2との間或いは第1直流電圧源E1と直流負荷との間(この例では第1直流電圧源E1と第2直流電圧源E2との間)で昇圧動作、降圧動作及び昇降圧動作の何れかの動作を行うことによって電力の授受(融通)を行う。
【0079】
詳しくは、制御装置20は、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4を作動制御して第1接続構成に切り替える第1動作モードと、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4を作動制御して第2接続構成に切り替える第2動作モードと、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4を作動制御して第3接続構成に切り替える第3動作モードとを有している。
【0080】
第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4のオン状態及びオフ状態を示す動作モードとして、力行モードで動作する第1モードから第3モード(第1動作モードから第3動作モードの一例)、及び、回生モードで動作する第4モードから第6モード(第1動作モードから第3動作モードの他の例)は、図8に示す直流−直流電力変換器10Aと同じである。
【0081】
すなわち、力行モードにおいては、第1モードは、図9(a)に示すように、第2スイッチング素子SW2がオン状態となり、第1、第3及び第4スイッチング素子SW1,SW3,SW4がオフ状態となって、第1直流電圧源E1からインダクタL及び第2スイッチング素子SW2を経て第1直流電圧源E1に戻る第1電流経路R1を形成するモードとされている。
【0082】
第2モードは、図9(b)に示すように、第3スイッチング素子SW3がオン状態となり、それ以外の第1、第2及び第4スイッチング素子SW1,SW2,SW4がオフ状態となって、第1直流電圧源E1からインダクタL、第2直流電圧源E2及び第3スイッチング素子SW3を経て第1直流電圧源E1に戻る第2電流経路R2を形成するモードとされている。
【0083】
第3モードは、図9(c)に示すように、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4が全てオフ状態となって、第2直流電圧源E2から第1スイッチング素子SW1及びインダクタLを経て第2直流電圧源E2に戻る第3電流経路R3を形成するモードとされている。
【0084】
一方、回生モードにおいては、第4モードは、図11(a)に示すように、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4が全てオフ状態となって、第1直流電圧源E1から第2スイッチング素子SW2及びインダクタLを経て第1直流電圧源E1に戻る第4電流経路R4を形成するモードとされている。
【0085】
第5モードは、図11(b)に示すように、第4スイッチング素子SW4がオン状態となり、それ以外の第1、第2及び第3スイッチング素子SW1,SW2,SW3がオフ状態となって、第1直流電圧源E1から第4スイッチング素子SW4、第2直流電圧源E2及びインダクタLを経て第1直流電圧源E1に戻る第5電流経路R5を形成するモードとされている。
【0086】
第6モードは、図11(c)に示すように、第1スイッチング素子SW1がオン状態となり、第2及び第3スイッチング素子SW2,SW3がオフ状態となって、第2直流電圧源E2からインダクタL及び第1スイッチング素子SW1を経て第2直流電圧源E2に戻る第6電流経路R6を形成するモードとされている。
【0087】
図2は、本実施の形態における降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での各モードと第1から第4半導体スイッチS1〜S4のオン状態とオフ状態との対応関係を示す表である。図2(a)は、力行モードでの対応関係を示しており、図2(a)は、回生モードでの対応関係を示している。
【0088】
制御装置20は、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2よりも所定の電圧ΔV分だけ大きい予め設定した第1電圧V2a(出力電圧V2+所定の電圧ΔV)よりも大きい場合には、力行モードでは第2モードと第3モードとを切り替える降圧動作を実行し、回生モードでは第5モードと第6モードとを切り替える昇圧動作を実行する。
【0089】
一方、制御装置20は、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2よりも所定の電圧ΔV分だけ小さい予め設定した第2電圧V2b(出力電圧V2−所定の電圧ΔV)よりも小さい場合には、力行モードでは第1モードと第2モードとを切り替える昇圧動作を実行し、回生モードでは第4モードと第5モードとを切り替える降圧動作を実行する。
【0090】
なお、所定の電圧ΔVは、第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2或いは直流負荷の定格電圧等に応じて決定することができ、それには限定されないが、5V程度以下を例示できる。
【0091】
そして、制御装置20は、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2より大きく、かつ、第1電圧V2a(出力電圧V2+所定の電圧ΔV)以下の場合、及び、第2電圧V2b(出力電圧V2−所定の電圧ΔV)以上、かつ、第2直流電圧源E2の出力電圧V2より小さい場合には、力行モードでは昇降圧動作として第1モードと第3モードとの合間に第2モードを挿入し(具体的には第1モード又は第3モードの状態では第1モード又は第3モードから第2モードに、第2モードの状態では第2モードから第1モード又は第3モードに切り替え)、回生モードでは昇降圧動作として第4モードと第6モードとの合間に第5モードを挿入する(具体的には第4モード又は第6モードの状態では第4モード又は第6モードから第5モードに、第5モードの状態では第5モードから第4モード又は第6モードに切り替える)昇降圧動作を実行する。また、制御装置20は、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とが等しい場合には、力行モードでは第2モードのみを実行し、回生モードでは第5モードのみを実行する。
【0092】
なお、制御装置20は、第1直流電圧源E1の出力電圧V1が第2直流電圧源E2の出力電圧V2より大きく、かつ、第1電圧V2a(出力電圧V2+所定の電圧ΔV)以下の場合、及び、第2電圧V2b(出力電圧V2−所定の電圧ΔV)以上、かつ、第2直流電圧源E2の出力電圧V2より小さい場合に力行モードで第2モードのみを実行し、回生モードで第5モードのみを実行してもよいし、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とが等しい場合に昇降圧動作を実行してもよい。
【0093】
次に、本実施の形態において、第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4で発生するスイッチング損失について以下に説明する。
【0094】
[力行モード時でのスイッチング損失]
図3は、本実施の形態の力行モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第2及び第3半導体スイッチS2,S3のオン損失及びオフ損失並びに第1ダイオードD1のリカバリ損失を従来の昇降圧動作時の損失と比較して示す表である。
【0095】
なお、降圧動作及び昇圧動作時での損失は、従来と同様であり、ここでは説明を省略し、昇降圧動作時の損失についてのみ説明する。
【0096】
(力行モードにおける昇降圧動作)
力行モードにおける昇降圧動作時において、第2モードから第3モードに移行して第3半導体スイッチS3がオン状態からオフ状態になるときに(図3のα1参照)、第3半導体スイッチS3において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオフ損失が発生する。
【0097】
また、第3モードから第2モードに移行して第3半導体スイッチS3がオフ状態からオン状態になるときに(図3のβ1参照)、第3半導体スイッチS3において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオン損失が発生する。一方、第3モードから第2モードに移行して第1ダイオードD1が導通状態から非導通状態になるときに(図3のβ2参照)、第1ダイオードD1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したリカバリ損失が発生する。
【0098】
また、第1モードから第2モードに移行して第2半導体スイッチS2がオン状態からオフ状態になるときに(図3のα2参照)、第2半導体スイッチS2において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオフ損失が発生する。
【0099】
また、第2モードから第1モードに移行して第2半導体スイッチS2がオフ状態からオン状態になるときに(図3のβ3参照)、第2半導体スイッチS2において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオン損失が発生する。一方、第2モードから第1モードに移行して第3ダイオードD3が導通状態から非導通状態になるときに(図3のβ4参照)、第3ダイオードD3において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したリカバリ損失が発生する。
【0100】
[回生モード時でのスイッチング損失]
図4は、本実施の形態の回生モードにおける降圧動作、昇圧動作及び昇降圧動作時での第1及び第4半導体スイッチS1,S4のオン損失及びオフ損失並びに第2ダイオードD2のリカバリ損失を従来の昇降圧動作時の損失と比較して示す表である。
【0101】
なお、回生モードにおける降圧動作及び昇圧動作時での損失は、従来と同様であり、ここでは説明を省略し、昇降圧動作時の損失についてのみ説明する。
【0102】
(回生モードにおける昇降圧動作)
回生モードにおける昇降圧動作時において、第5モードから第4モードに移行して第4半導体スイッチS4がオン状態からオフ状態になるときに(図4のα4参照)、第4半導体スイッチS4において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオフ損失が発生する。
【0103】
また、第4モードから第5モードに移行して第4半導体スイッチS4がオフ状態からオン状態になるときに(図4のβ7参照)、第4半導体スイッチS4において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したオン損失が発生する。一方、第4モードから第5モードに移行して第2ダイオードD2が導通状態から非導通状態になるときに(図4のβ8参照)、第2ダイオードD2において第2直流電圧源E2の出力電圧V2に比例したリカバリ損失が発生する。
【0104】
また、第6モードから第5モードに移行して第1半導体スイッチS1がオン状態からオフ状態になるときに(図4のα5参照)、第1半導体スイッチS1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオフ損失が発生する。
【0105】
また、第5モードから第6モードに移行して第1半導体スイッチS1がオフ状態からオン状態になるときに(図4のβ9参照)、第1半導体スイッチS1において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したオン損失が発生する。一方、第5モードから第6モードに移行して第4ダイオードD4が導通状態から非導通状態になるときに(図4のβ10参照)、第4ダイオードD4において第1直流電圧源E1の出力電圧V1に比例したリカバリ損失が発生する。
【0106】
図5は、本実施の形態の力行モードにおいて図3に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表を示している。また、図6は、本実施の形態の回生モードにおいて図4に示す表から半導体スイッチのオン損失及びオフ損失並びにダイオードのリカバリ損失を動作別に抜粋した表を示している。
【0107】
図5の斜線部分に示すように、従来の力行モードでの昇降圧動作時においては、第1ダイオードD1と第2半導体スイッチS2とに、出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失と出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失及びオフ損失とがそれぞれ集中している。
【0108】
これに対して、本実施の形態の力行モードでの昇降圧動作時においては、第1ダイオードD1に集中していた出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失のうち出力電圧V2に比例したリカバリ損失を、第3ダイオードD3に分散させることができ、また、第2半導体スイッチS2に集中していた出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失及びオフ損失のうち出力電圧V1に比例したオン損失及びオフ損失を、第3半導体スイッチS3に分散させることができる。
【0109】
また、図6の斜線部分に示すように、従来の回生モードでの昇降圧動作時においては、第1半導体スイッチS1と第2ダイオードD2とに、出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失及びオフ損失と出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失とがそれぞれ集中している。
【0110】
これに対して、本実施の形態の回生モードでの昇降圧動作時においては、第1半導体スイッチS1に集中していた出力電圧(V1+V2)に比例したオン損失及びオフ損失のうち出力電圧V2に比例したオン損失及びオフ損失を、第4半導体スイッチS4に分散させることができ、また、第2ダイオードD2に集中していた出力電圧(V1+V2)に比例したリカバリ損失のうち出力電圧V1に比例したリカバリ損失を、第4ダイオードD4に分散させることができる。
【0111】
既述したように、スイッチング素子を構成するダイオード及び半導体スイッチにおいては、加わる電圧に対してスイッチング損失(オン損失及びオフ損失)並びにリカバリ損失が比例関係にあり、しかも、スイッチング素子の温度に対してスイッチング損失(オン損失及びオフ損失)並びにリカバリ損失が正の相関を有する。
【0112】
この点、本実施の形態によれば、第1モード(第1動作モードの一例)と第3モード(第3動作モードの一例)とを交互に使用する昇降圧動作を行うことによって電力の授受を行う場合には、力行モードでは第1モード(第1動作モードの一例)と第3モード(第3動作モードの一例)との合間に第2モード(第2動作モードの一例)を挿入することで、昇降圧動作時において、第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2から供給される電圧が集中する第1スイッチング素子SW1の第1ダイオードD1及び第2スイッチング素子SW2の第2半導体スイッチS2を第3スイッチング素子SW3の第3ダイオードD3及び第3半導体スイッチS3に分散させることができる(図5参照)。
【0113】
そうすると、第1スイッチング素子SW1の第1ダイオードD1及び第2スイッチング素子SW2の第2半導体スイッチS2の温度を低減させることができ、これにより、リカバリ損失が集中する第1ダイオードD1を第3ダイオードD3に分散させることができると共に、オン損失及びオフ損失が集中する第2半導体スイッチS2を第3半導体スイッチS3に分散させることができる。
【0114】
従って、温度が低くなった分、昇降圧動作時における第1及び第2スイッチング素子SW1,SW2のスイッチング損失を従来よりも低減させることでき、それだけ電力変換効率を向上させることが可能となる。
【0115】
一方、回生モードでは第4モード(第1動作モードの他の例)と第6モード(第3動作モードの他の例)との合間に第5モード(第2動作モードの他の例)を挿入することで、昇降圧動作時において、第1直流電圧源E1及び第2直流電圧源E2から供給される電圧が集中する第1スイッチング素子SW1の第1半導体スイッチS1及び第2スイッチング素子SW2の第2ダイオードD2を第4スイッチング素子SW4の第4半導体スイッチS4及び第4ダイオードD4に分散させることができる(図6参照)。
【0116】
そうすると、第1スイッチング素子SW1の第1半導体スイッチS1及び第2スイッチング素子SW2の第2ダイオードD2の温度を低減させることができ、これにより、オン損失及びオフ損失が集中する第1半導体スイッチS1を第4半導体スイッチS4に分散させることができると共に、リカバリ損失が集中する第2ダイオードD2を第4ダイオードD4に分散させることができる。
【0117】
従って、温度が低くなった分、昇降圧動作時における第1及び第2スイッチング素子SW1,SW2のスイッチング損失を従来よりも低減させることでき、それだけ電力変換効率を向上させることが可能となる。
【0118】
また、既述したように、スイッチング素子を構成するダイオード及び半導体スイッチにおいては、定格電圧が高くなるほど損失が大きくなる。
【0119】
この点、本実施の形態によれば、定格電圧が高くなりがちな第1及び第2半導体スイッチSW1及びSW2において、力行モードでは、第1ダイオードD1に加わる電圧を(V1+V2)からV1にすると共に、第2半導体スイッチS2に加わる電圧を(V1+V2)からV2にすることができ(図5参照)、それだけ第1ダイオードD1及び第2半導体スイッチS2でのリカバリ損失並びにオン損失及びオフ損失を小さくでき、ひいては電力変換効率を向上させることができる。一方、回生モードでは、第1半導体スイッチS1に加わる電圧を(V1+V2)からV1にすると共に、第2ダイオードD2に加わる電圧(具体的にはV1+V2)からV2にすることができ(図6参照)、それだけ第1半導体スイッチS1及び第2ダイオードD2でのオン損失及びオフ損失並びにリカバリ損失を小さくでき、ひいては電力変換効率を向上させることができる。このことは、定格電圧の選択肢が少ないIGBTの場合に、特に有効となる。
【0120】
こうして向上される電力変換効率は、全体としては0.数%(具体的には95%→95.5%程度)であったとしても、損失部分だけに注目して視れば、例えば、損失(具体的には5%程度)のうちスイッチング素子の損失は、その半分程度(具体的には2.5%程度)であることから、たとえ電力変換効率が全体としては0.数%(具体的には95%→95.5%程度)であったとしても、スイッチング素子の損失ベースで数10%(具体的には20%(=0.5%/2.5%×100)程度)向上したことになる。つまり、スイッチング素子を冷却するための放熱部材を数10%(具体的には20%程度)削減することができ、これにより放熱部材にかかる費用及び放熱部材が占めるスペースを削減することができ、それだけ低コスト化かつ省スペース化を実現させることが可能となる。
【0121】
ところで、インダクタL及び第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4で発生する損失をさらに低く抑えるという観点から、インダクタLに流れる電流を可及的に小さくすることが好ましい。この点に関し、第2動作モード(具体的には力行モードでは第2モード、回生モードでは第5モード)でインダクタLに流れる電流は、第1直流電圧源E1と第2直流電圧源E2或いは直流負荷との双方に流れるため、第1直流電圧源E1だけに流れる第1動作モード(具体的には力行モードでは第1モード、回生モードでは第4モード)及び第2直流電圧源E2或いは直流負荷だけに流れる第3動作モード(具体的には力行モードでは第3モード、回生モードでは第6モード)の双方の性質を有する。従って、第2動作モードの一変調周期における割合を大きくするほど、インダクタLに流れる電流が減少する。
【0122】
かかる観点から、第1モードと第3モードとを交互に使用する昇降圧動作時において、第1動作モード(具体的には力行モードでは第1モード、回生モードでは第4モード)と第3動作モード(具体的には力行モードでは第3モード、回生モードでは第6モード)との合間に挿入する第2動作モード(具体的には力行モードでは第2モード、回生モードでは第5モード)の一変調周期における割合を可及的に大きくすることが好ましい。
【0123】
一方、第2動作モード(具体的には力行モードでは第2モード、回生モードでは第5モード)では、インダクタLが第1直流電圧源E1と第2直流電圧源E2との双方或いは第1直流電圧源E1と直流負荷との双方(この例では第1直流電圧源E1と第2直流電圧源E2との双方)に接続されることから、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とのうち、大きい方の電圧から小さい方の電圧を差し引いた値が小さいほど、第2動作モード(具体的には力行モードでは第2モード、回生モードでは第5モード)の一変調周期における割合を大きくすることができる。
【0124】
そこで、本実施の形態では、制御装置20は、第2動作モード(具体的には力行モードでは第2モード、回生モードでは第5モード)の一変調周期における割合は、第1直流電圧源E1の出力電圧V1と第2直流電圧源E2の出力電圧V2とのうち、小さい方の電圧を大きい方の電圧で除算した値が上限とされる構成とされている。
【0125】
図7は、インダクタLに流れる電流の時間的変化の一例を示すグラフである。図7(a)は、第2動作モードIIの一変調周期Tにおける割合が比較的小さい場合を示しており、図7(b)は、第2動作モードIIの一変調周期Tにおける割合を可及的に大きくした場合を示している。なお、図7に示す例では、昇降圧動作として、第1動作モードI→第2動作モードII→第3動作モードIII→第2動作モードII→第1動作モードI→・・・の繰り返しとしたが、それに限定されるものではない。
【0126】
図7(a)に示すように、第2動作モードII(具体的には力行モードでは第2モード、回生モードでは第5モード)の一変調周期Tにおける割合(t/T)が比較的小さいと、インダクタLに流れる電流の平均値Iavが大きくなってしまい、それだけインダクタL及び第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4で発生する損失が大きくなる。
【0127】
これに対し、図7(b)に示すように、第2動作モードII(具体的には力行モードでは第2モード、回生モードでは第5モード)の一変調周期Tにおける割合(t/T)を、第1直流電圧源E1の出力電圧V1(例えば100V)と第2直流電圧源E2の出力電圧V2(例えば80V)とのうち、小さい方の電圧(例えばV2=80V)を大きい方の電圧(例えばV1=100V)で除算した値(例えば80V/100V=0.8)が上限となるようにすることで、割合(t/T)を可及的に大きくすることができ、ひいては、インダクタLに流れる電流の平均値Iavを可及的に小さくすることができ、それだけインダクタL及び第1から第4スイッチング素子SW1〜SW4で発生する損失を低く抑えることが可能となる。
【0128】
なお、本実施の形態では、力行モード時に第1直流電圧源E1から第2直流電圧源E2或いは直流負荷に電力を供給し、回生モード時に第2直流電圧源E2或いは直流負荷から第1直流電圧源E1に電力を供給するようにしたが、力行モード時に第2直流電圧源E2或いは直流負荷から第1直流電圧源E1に電力を供給し、回生モード時に第1直流電圧源E1から第2直流電圧源E2或いは直流負荷に電力を供給するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0129】
10 直流−直流電力変換器
20 制御装置
D1 第1ダイオード
D2 第2ダイオード
D3 第3ダイオード
D4 第4ダイオード
E1 第1電圧源
E2 第2電圧源
L インダクタ
S1 第1半導体スイッチ
S2 第2半導体スイッチ
S3 第3半導体スイッチ
S4 第4半導体スイッチ
SW1 第1スイッチング素子
SW2 第2スイッチング素子
SW3 第3スイッチング素子
SW4 第4スイッチング素子
I 第1動作モード
II 第2動作モード
III 第3動作モード
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1直流電圧源及び第2直流電圧源或いは直流負荷に接続される複数のスイッチング素子と、前記第1直流電圧源及び前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷に前記スイッチング素子を介して接続されるインダクタと、前記スイッチング素子を作動制御する制御手段とを備え、
前記スイッチング素子は、前記インダクタを前記第1直流電圧源に接続する第1接続構成と、前記インダクタを前記第1直流電圧源及び前記第2直流電圧源の双方或いは前記第1直流電圧源及び前記直流負荷の双方に接続する第2接続構成と、前記インダクタを前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷に接続する第3接続構成とを切り替え可能な構成とされており、
前記制御手段は、前記スイッチング素子を作動制御して前記第1接続構成に切り替える第1動作モードと、前記スイッチング素子を作動制御して前記第2接続構成に切り替える第2動作モードと、前記スイッチング素子を作動制御して前記第3接続構成に切り替える第3動作モードとを有し、前記第1直流電圧源と前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷との間で電力の授受を行う直流−直流電力変換器であって、
前記制御手段は、前記第1直流電圧源と前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷との間で、前記第1動作モードと前記第3動作モードとを交互に使用することによって電力の授受を行う場合には、前記第1動作モードと前記第3動作モードとの合間に前記第2動作モードを挿入することを特徴とする直流−直流電力変換器。
【請求項2】
請求項1に記載の直流−直流電力変換器であって、
前記第1動作モードと前記第3動作モードとの合間に挿入する前記第2動作モードの一変調周期における割合は、前記第1直流電圧源の電圧と前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷の電圧とのうち、小さい方の電圧を大きい方の電圧で除算した値が上限とされていることを特徴とする直流−直流電力変換器。
【請求項1】
第1直流電圧源及び第2直流電圧源或いは直流負荷に接続される複数のスイッチング素子と、前記第1直流電圧源及び前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷に前記スイッチング素子を介して接続されるインダクタと、前記スイッチング素子を作動制御する制御手段とを備え、
前記スイッチング素子は、前記インダクタを前記第1直流電圧源に接続する第1接続構成と、前記インダクタを前記第1直流電圧源及び前記第2直流電圧源の双方或いは前記第1直流電圧源及び前記直流負荷の双方に接続する第2接続構成と、前記インダクタを前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷に接続する第3接続構成とを切り替え可能な構成とされており、
前記制御手段は、前記スイッチング素子を作動制御して前記第1接続構成に切り替える第1動作モードと、前記スイッチング素子を作動制御して前記第2接続構成に切り替える第2動作モードと、前記スイッチング素子を作動制御して前記第3接続構成に切り替える第3動作モードとを有し、前記第1直流電圧源と前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷との間で電力の授受を行う直流−直流電力変換器であって、
前記制御手段は、前記第1直流電圧源と前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷との間で、前記第1動作モードと前記第3動作モードとを交互に使用することによって電力の授受を行う場合には、前記第1動作モードと前記第3動作モードとの合間に前記第2動作モードを挿入することを特徴とする直流−直流電力変換器。
【請求項2】
請求項1に記載の直流−直流電力変換器であって、
前記第1動作モードと前記第3動作モードとの合間に挿入する前記第2動作モードの一変調周期における割合は、前記第1直流電圧源の電圧と前記第2直流電圧源或いは前記直流負荷の電圧とのうち、小さい方の電圧を大きい方の電圧で除算した値が上限とされていることを特徴とする直流−直流電力変換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−31299(P2013−31299A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165805(P2011−165805)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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