説明

直流地絡箇所探索方法、地絡電流供給装置及び直流地絡監視システム

【課題】 地絡が発生した箇所の高精度かつ容易な特定に寄与する。
【解決手段】 瞬時地絡が発生した場合は、地絡検出装置5a(5b,5c,…)において、地絡電流供給装置3から供給された地絡電流の有無が測定される。すなわち、該当する地絡検出装置5a(5b,5c,…)においては、地絡電流が測定され、これにより、瞬時地絡箇所が特定される。地絡が継続した場合、地絡電流供給装置3からは、断続した地絡電流が供給され、地絡検出装置5a(5b,5c,…)を用いて、地絡箇所が特定される。すなわち、地絡が発生した回線には、地絡点から電源に向けて地絡電流が流れるため、地絡が発生した箇所の地絡検出装置5a(5b,5c,…)が動作する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、変電所等の電気所に配置され、直流回路における地絡箇所を探索するための直流地絡箇所探索方法、地絡電流供給装置及び直流地絡監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、大規模な電気所には、直流盤(直流電源を分配している大元の分電盤)等に、専用の地絡回線検出装置が設置され、直流回路に瞬時の地絡が発生した場合は、瞬時地絡が発生した回線を検出できるようになっている(例えば、特許文献1参照。)。ただし、この場合でも、地絡が継続していなければ、地絡箇所までは詳細に特定できない。直流回路の地絡が継続しているときは、地絡が発生している回線に接続されている各配電盤等の制御スイッチ等を入り切りして、地絡箇所を探索することができる。なお、地絡箇所を特定するための可搬式の装置が提案されているが(例えば、特許文献2、特許文献3参照。)、地絡が継続していなければ地絡箇所を特定できない。
【0003】
また、専用の地絡回線検出装置が設置されていない場合で、瞬時地絡が発生したときは、地絡が瞬時に復帰することから地絡箇所の特定は不可能である。ただし、この場合も、直流回路の地絡が継続しているときは、直流盤等に設置されている回路単位のMCCBや、各配電盤の制御スイッチ(電源スイッチ)を入り切りして、継続している地絡が復帰するか否で地絡箇所を探索することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008―113546号公報
【特許文献2】特開2002―350488号公報
【特許文献3】特開2007―57319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術において、地絡回線検出装置が設置されているか否かを問わず、直流回路に地絡が発生した場合で、地絡が継続しているときに、地絡箇所を特定するには、直流盤等に設置されている回路単位のMCCBの入り切りや、負荷である配電盤の制御スイッチの入り切りで、地絡の復帰を確認する必要があり、広範囲の装置の停止が必要となり、探索する上で無用な設備停止を伴う。
【0006】
また、地絡箇所を特定するための可搬式の装置を使用する場合も、地絡が継続している必要があり、かつ、この装置を接続するために、地絡検出継電器の一部配線の切り離し作業が必要であり、煩雑である。このように、地絡箇所の特定は、地絡が継続していないと不可能であり、地絡継続時でも、手間がかかり無用な設備停止を伴う。
【0007】
この発明は、前記の課題を解決し、地絡が発生した箇所の高精度かつ容易な特定に寄与することができる直流地絡箇所探索方法、地絡電流供給装置及び直流地絡監視システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、請求項1の発明は、直流回路における地絡箇所を探索するために用いられる直流地絡箇所探索方法であって、直流電源に接続された母線に、地絡発生時に、前記母線から分岐された回線へ地絡電流を供給する地絡電流供給装置が接続され、かつ、少なくとも1つの前記回線に、変流器を介して、地絡電流を検出するために用いられる少なくとも1つの地絡電流検出装置が接続され、前記地絡電流供給装置は、前記母線を構成する正極側母線及び負極側母線に接続され、直列接続された第1の電流供給コンデンサ及び第2の電流供給コンデンサと、前記第1の電流供給コンデンサ及び前記第2の電流供給コンデンサの接続点と接地とに接続された接点と、地絡発生時に、前記接点を開閉動作させ、前記回線に供給される地絡電流を断続させる接点開閉手段とを有し、前記地絡電流検出装置は、前記変流器を介して電流測定情報を取得する測定情報取得手段を有し、前記地絡電流検出装置において得られた前記電流測定情報に基づいて、地絡箇所が探索されることを特徴としている。
【0009】
請求項1の発明では、地絡電流供給装置は、地絡発生時に、接点を開閉動作させ、回線に供給される地絡電流を断続させ、地絡電流検出装置は、変流器を介して電流測定情報を取得し、地絡電流検出装置において得られた電流測定情報に基づいて、地絡箇所が探索される。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の直流地絡箇所探索方法であって、前記地絡電流供給装置は、時刻を計時する第1の計時手段と、地絡状態を検出した場合に、前記第1の計時手段から地絡発生時刻を読み取り、第1の記憶手段に記憶させる第1の記憶制御手段とを有し、前記地絡検出装置は、時刻を計時する第2の計時手段と、前記第2の計時手段から測定情報取得時刻を読み取り、少なくとも電流が瞬間的に変化した時の前記電流測定情報、及び対応する前記測定情報取得時刻とを第2の記憶手段に記憶させる第2の記憶制御手段とを有し、前記地絡発生時刻と、電流が瞬間的に変化した時の電流測定情報に対応する前記測定情報取得時刻との照合結果に基づいて、地絡箇所が探索されることを特徴としている。
【0011】
請求項3の発明は、直流電源に接続された母線に接続され、地絡発生時に、前記母線から分岐された回線へ地絡電流を供給する地絡電流供給装置であって、前記母線を構成する正極側母線及び負極側母線に接続され、直列接続された第1の電流供給コンデンサ及び第2の電流供給コンデンサと、前記第1の電流供給コンデンサ及び前記第2の電流供給コンデンサの接続点と接地とに接続された接点と、地絡発生時に、前記接点を開閉動作させ、前記回線に供給される地絡電流を断続させる接点開閉手段とを備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項4の発明は、請求項3に記載の地絡電流供給装置であって、時刻を計時する第1の計時手段と、地絡状態を検出した場合に、前記第1の計時手段から地絡発生時刻を読み取り、第1の記憶手段に記憶させる第1の記憶制御手段とを備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項5の発明は、請求項3又は4に記載の地絡電流供給装置であって、前記第1の電流供給コンデンサ及び前記第2の電流供給コンデンサの電圧バランスを取るための前記第1の電流供給コンデンサ及び前記第2の電流供給コンデンサにそれぞれ並列接続された第1の電圧バランス抵抗及び第2の電圧バランス抵抗を備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項6の発明は、直流回路における地絡箇所を探索するために用いられる直流地絡監視システムであって、直流電源に接続された母線に接続され、地絡発生時に、前記母線から分岐された回線へ地絡電流を供給する地絡電流供給装置と、少なくとも1つの前記回線に変流器を介して接続され、地絡電流を検出するために用いられる少なくとも1つの地絡電流検出装置とを備え、前記地絡電流供給装置は、前記母線を構成する正極側母線及び負極側母線に接続され、直列接続された第1の電流供給コンデンサ及び第2の電流供給コンデンサと、前記第1の電流供給コンデンサ及び前記第2の電流供給コンデンサの接続点と接地とに接続された接点と、地絡発生時に、前記接点を開閉動作させ、前記回線に供給される地絡電流を断続させる接点開閉手段とを有し、前記地絡電流検出装置は、前記変流器を介して電流測定情報を取得する測定情報取得手段を有することを特徴としている。
【0015】
請求項7の発明は、請求項6に記載の直流地絡監視システムであって、前記地絡電流供給装置は、時刻を計時する第1の計時手段と、地絡状態を検出した場合に、前記第1の計時手段から地絡発生時刻を読み取り、第1の記憶手段に記憶させる第1の記憶制御手段とを有し、前記地絡検出装置は、時刻を計時する第2の計時手段と、前記第2の計時手段から測定情報取得時刻を読み取り、少なくとも電流が瞬間的に変化した時の電流測定情報、及び対応する前記測定情報取得時刻とを第2の記憶手段に記憶させる第2の記憶制御手段とを有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、地絡電流供給装置は、地絡発生時に、接点を開閉動作させ、回線に供給される地絡電流を断続させ、地絡電流検出装置は、変流器を介して電流測定情報を取得し、地絡電流検出装置において得られた電流測定情報に基づいて、地絡箇所が探索されるので、地絡が発生した箇所を高精度かつ容易に特定することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、地絡発生時刻と、電流が瞬間的に変化した時の電流測定情報に対応する測定情報取得時刻との照合結果に基づいて、地絡箇所が探索されるので、地絡が発生した箇所を高精度、容易、かつ正確に特定することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、地絡電流供給装置は、地絡発生時に、接点を開閉動作させ、回線に供給される地絡電流を断続させるので、地絡電流検出装置において得られた電流測定情報に基づいて、地絡箇所を探索することによって、地絡が発生した箇所の高精度かつ容易な特定に寄与することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、地絡状態を検出した場合に、地絡発生時刻を読み取り、記憶させるので、この地絡発生時刻と、電流が瞬間的に変化した時の電流測定情報に対応する測定情報取得時刻との照合結果に基づいて、地絡箇所を探索することによって、地絡が発生した箇所の高精度、容易、正確な特定に寄与することができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、第1の電流供給コンデンサ及び第2の電流供給コンデンサに並列に、それぞれ第1の電圧バランス抵抗及び第2の電圧バランス抵抗を接続したので、第1の電流供給コンデンサ及び第2の電流供給コンデンサの電圧バランスの崩れを防止することができる。
【0021】
請求項6の発明によれば、地絡電流供給装置は、地絡発生時に、接点を開閉動作させ、回線に供給される地絡電流を断続させ、地絡電流検出装置は、変流器を介して電流測定情報を取得するので、地絡電流検出装置において得られた電流測定情報に基づいて、地絡箇所を探索することによって、地絡が発生した箇所の高精度かつ容易な特定に寄与することができる。
【0022】
請求項7の発明によれば、地絡発生時刻と、電流が瞬間的に変化した時の電流測定情報に対応する測定情報取得時刻との照合結果に基づいて、地絡箇所を探索することによって、地絡が発生した箇所の高精度、容易、かつ正確な特定に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施の形態による直流地絡監視システムの構成を説明するための説明図である。
【図2】同直流地絡監視システムの地絡電流供給装置の制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】同直流地絡監視システムの地絡検出装置の構成を示すブロック図である。
【図4】同直流地絡監視システムを用いた直流地絡箇所探索方法を説明するための説明図である。
【図5】負極地絡時における経過時間と充放電電流との間の関係を示す示性図である。
【図6】負極地絡時における経過時間と対地電圧との間の関係を示す示性図である。
【図7】地絡継続時の経過時間と供給される地絡電流との間の関係を示す示性図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0025】
図1は、この発明の一実施の形態による直流地絡監視システムの構成を説明するための説明図、図2は、同直流地絡監視システムの地絡電流供給装置の制御装置の構成を示すブロック図、図3は、同直流地絡監視システムの地絡検出装置の構成を示すブロック図、図4は、同直流地絡監視システムを用いた直流地絡箇所探索方法を説明するための説明図、図5は、負極地絡時における経過時間と充放電電流との間の関係を示す示性図、図6は、負極地絡時における経過時間と対地電圧との間の関係を示す示性図、図7は、地絡継続時の経過時間と供給される地絡電流との間の関係を示す示性図である。
【0026】
図1に示すように、この実施の形態の直流地絡監視システム1は、変電所等の電気所に配置され、直流回路における地絡箇所を探索するために用いられ、蓄電池Aを含む直流電源装置2の母線Bp,Bnに接続された地絡電流供給装置3と、母線Bp,Bnから分岐され、それぞれ所定の負荷(負荷群)に接続される分岐回線Dp1,Dn1、Dp2,Dn2、…に、それぞれ、地絡電流を検出するための変流器4a,4b,…を介して接続された地絡検出装置5a,5b,…とを備えて構成されている。図1において、Bpは正極側の母線、Bnは負極側の母線、Dp1(Dp2,Dp3,…)は正極側の分岐回線、Dn1(Dn2,Dn3,…)は負極側の分岐回線、Cpは直流回路正極側静電容量、Cnは直流回路負極側静電容量、Rpは直流回路正極側絶縁抵抗、Rnは直流回路負極側絶縁抵抗を示す。また、直流電源装置2は、地絡検出継電器(64D)を含んでいる。また、地絡電流供給装置3は、直流回路の電源端としての直流電源装置2内や、直流盤内等に配置されても良い。
【0027】
地絡電流供給装置3は、制御装置8と、中性点接地継電器(G−Ry)9と、地絡電流供給用の容量が略等しい正極側電流供給コンデンサCsp及び負極側電流供給コンデンサCsnと、正極側電流供給コンデンサCsp及び負極側電流供給コンデンサCsnの電圧バランスを取るための正極側電圧バランス抵抗Rsp及び負極側電圧バランス抵抗Ranとを含んでいる。なお、正極側電流供給コンデンサCsp及び負極側電流供給コンデンサCsnの容量は、負荷機器へ影響が与えられないように、直流回路全体の静電容量を含めて、略400μF以下となるように設定される。
【0028】
また、正極側電流供給コンデンサCspと、負極側電流供給コンデンサCsnとは直列に接続され、正極側電流供給コンデンサCspは母線Bpに、負極側電流供給コンデンサCsnは母線Bnにそれぞれ接続されている。また、正極側電圧バランス抵抗Rspは、正極側電流供給コンデンサCspに並列接続され、負極側電圧バランス抵抗Rsnは、負極側電流供給コンデンサCsnに並列接続されている。また、正極側電流供給コンデンサCspと、負極側電流供給コンデンサCsnとの接続点(コンデンサ中性点)は、中性点接地継電器9の接点11を介して接地されている(大地に接続されている。)。
【0029】
制御装置8は、図2に示すように、構成各部を制御するMPU(マイクロプロセッサ)13と、RAMやROM等を含む記憶部14と、リアルタイムクロック(RTC)を含む計時部15と、表示部16と、入出力部17とを有している。制御装置8においては、中性点接地継電器制御処理や、地絡発生時刻記憶処理、地絡発生時刻表示処理等が実行される。
【0030】
制御装置8は、中性点接地継電器制御処理で、地絡事故継続時に、中性点接地継電器9を制御して、接点11を所定の周期で断続動作させ、直流回路に流れる地絡電流を断続させて、地絡が発生した分岐回線Dp1,Dn1(Dp2,Dn2、Dp3,Dn3、…)に供給し、分岐回線Dp1,Dn1(Dp2,Dn2、Dp3,Dn3、…)に接続された対応する地絡検出装置5a(5b,5c,…)における地絡検出を容易化する(図7参照。)。
【0031】
制御装置8においては、使用状態とされると、中性点接地継電器9が動作し、コンデンサ中性点が接地される。この状態で、直流回路に地絡が発生すると、地絡相のコンデンサが放電開始するとともに、非地絡相のコンデンサは電圧が上昇して充電開始する。この充電電流及び放電電流は、地絡点に流れ、時間経過とともに充放電電流は低下していく。中性点接地継電器9は、地絡が継続している場合に、断続動作(正極側電流供給コンデンサCsp及び負極側電流供給コンデンサCsnの電圧バランスを取る時間の断続動作)を行うことで、連続して地絡電流を供給し、地絡検出装置5a(5b,5c,…)における地絡検出を容易化し、地絡箇所の特定を可能とする。なお、地絡が復帰した場合は、中性点接地継電器9は動作状態を保持する。
【0032】
また、制御装置8は、地絡発生時刻記憶処理で、地絡状態を検出した場合に、計時部15から地絡発生時刻を読み取り、記憶部14に記憶させる。この地絡発生時刻情報は、地絡検出装置5a(5b,5c,…)の測定情報(動作記録)と照合して、瞬時地絡が発生した場合の地絡箇所を特定するために用いられる。また、制御装置8は、地絡発生時刻表示処理で、表示部16に地絡発生時刻を表示させる。
【0033】
変流器4a(4b,4c,…)は、交流クランプCTを含んでいる。変流器4a(4b,4c,…)としては、地絡電流供給用の正極側電流供給コンデンサCsp及び負極側電流供給コンデンサCsnの充放電の電流変化を取り込めば足りるので、直流CTに代えて、安価な交流クランプCTを用いることができる。
【0034】
地絡検出装置5a(5b,5c,…)は、地絡が想定される箇所に配置され、図3に示すように、構成各部を制御するMPU19と、RAMやROM等を含む記憶部21と、リアルタイムクロック(RTC)を含む計時部22と、測定結果を表示するための表示部24と、A/D(Analog/Digital)変換部23とを有している。また、地絡検出装置5a(5b,5c,…)は、瞬時地絡の発生が推定される回線に配置されても良いし、配電盤内等に配置しても良い。
【0035】
地絡検出装置5a(5b,5c,…)においては、測定情報取得処理や、測定情報記憶処理、測定情報表示処理等が実行される。地絡検出装置5a(5b,5c,…)は、測定情報取得処理で、対応する変流器4a(4b,4c,…)から入力され、A/D変換部23によってA/D変換された電流の測定結果を取得する。また、地絡検出装置5a(5b,5c,…)は、測定情報記憶処理で、計時部22から測定時刻を読み取り、測定情報取得処理で得られた測定結果とともに記憶部21に記憶させる。
【0036】
ここで、地絡検出装置5a(5b,5c,…)は、少なくとも電流が瞬間的に変化した時の測定結果と、対応する測定時刻とを、記憶部21に記憶させる。また、地絡検出装置5a(5b,5c,…)は、測定情報表示処理で、測定結果を測定時刻とともに表示部24に表示させる。
【0037】
瞬時地絡が発生した場合は、地絡検出装置5a(5b,5c,…)においては、地絡電流供給装置3から供給された地絡電流の有無が測定される。すなわち、該当する地絡検出装置5a(5b,5c,…)においては、地絡電流が測定され、これにより、瞬時地絡箇所の特定が可能となる。
【0038】
地絡が継続した場合、地絡電流供給装置3からは、断続した地絡電流が供給され、地絡検出装置5a(5b,5c,…)を用いて、地絡箇所が特定される。さらに、地絡検出装置5a(5b,5c,…)によって得られた測定時刻を含む電流の測定結果と、地絡電流供給装置の制御装置8によって得られた地絡発生時刻情報とを照合して、地絡が発生した場合の地絡箇所を容易にかつ正確に特定することができる。なお、この際、配電盤等を停止する必要はない。
【0039】
次に、直流地絡監視システム1を用いた直流地絡箇所探索方法について説明する。例として、図4に示すように、分岐回線Dp1,Dn1、Dp2,Dn2、…のうち、所定の負荷に接続される負極側の分岐回線Dn1に地絡が発生した場合について述べる。
【0040】
この場合、直流回路負極側静電容量Cnと、地絡電流供給装置3の負極側電流供給コンデンサCsnとが地絡点を介して閉回路が構成され、図4に示すように、放電電流In0,In1,In2が流れる。また、正極側については、地絡点を介して直流回路正極側静電容量Cpに蓄電池Aの負極が接続され、正極側電流供給コンデンサCspに印加される電圧が上昇して充電電流Ip0,Ip1,Ip2が流れる。なお、図4において、In1,In2は、In0から分岐して、それぞれ、接点11、直流回路負極側静電容量Cnを介して流れる電流を示し、Ip1,Ip2は、Ip0から分岐して、それぞれ、接点11、直流回路正極側静電容量Cpを介して流れる電流を示す。
【0041】
このように、地絡が発生した回線には、地絡点から電源に向けて地絡電流が流れるため、地絡が発生した箇所の地絡検出装置5aが動作する。なお、地絡点が発生していない回線(負荷)に設置した地絡検出装置5b(5c,5d,…)は動作することがない。
【0042】
対地静電容量(地絡電流供給用の正極側電流供給コンデンサCsp及び負極側電流供給コンデンサCsnを含む。)に流れる充放電電流、及び対地電圧は、それぞれ、図5及び図6の曲線Li,Lvp,Lvnに示すように時間経過ともに変化する。中性点接地継電器9が動作した状態が継続すると、充放電電流は、一定値で安定するため、地絡検出装置5a(5b,5c,…)が動作しない。これに対し、地絡が継続している場合は、地絡電流供給装置3が、中性点接地継電器9に一定間隔で断続動作させることで、断続した地絡電流が供給される。なお、図5において、t0は地絡発生時刻を示し、t1は時定数に対応する時刻を示す。また、(I1=0.37Im)である。また、図6において、t0は地絡発生時刻を示し、t1は時定数に対応する時刻を示す。また、曲線Lvp,Lvnは、それぞれ、正極の対地電圧、負極の対地電圧を示す。また、(Vm=110[V]、V0=55[V]、Vp1≒90[V]、Vn1≒20[V])である。
【0043】
なお、中性点接地継電器9が復帰すると、地絡電流供給用の正極側電流供給コンデンサCsp及び負極側電流供給コンデンサCsnには、それぞれ、正極側電圧バランス抵抗Rsp及び負極側電圧バランス抵抗Ranが並列接続されていることにより、一定時間が経過すると、バランスした状態となり、中性点接地継電器9が動作すると、再び地絡電流を供給できるようになる。
【0044】
地絡が継続して中性点接地継電器9が断続動作すると、地絡電流は図7に示すように、時間経過とともに変化する。地絡が継続した場合で、中性点接地継電器9を復帰させないときは、地絡電流は、曲線Liaに示すように変化するが、地絡が継続して地絡検出継電器(64D)の動作が継続している場合は、中性点接地継電器9を一定の時間間隔で動作させると、曲線Libに示すように変化し、地絡点に断続した地絡電流が供給され、地絡探索対象箇所に設置した地絡検出装置5a(5b,5c,…)が動作可能となる。図7において、t0は地絡発生時刻を示し、ta1,ta2,…は、接点11をオフとした時刻、tb1,tb2,…は、接点11をオンとした時刻を示す。
【0045】
地絡電流供給装置3の制御装置8は、地絡状態を検出した場合に、計時部15から地絡発生時刻を読み取り、記憶部14に記憶させる。また、制御装置8は、表示部16に地絡発生時刻を表示させる。一方、地絡検出装置5a(5b,5c,…)は、測定情報記憶処理で、計時部22から測定時刻を読み取り、測定情報取得処理で得られた測定結果とともに記憶部21に記憶させる。
【0046】
ここで、地絡検出装置5a(5b,5c,…)は、少なくとも電流が瞬間的に変化した時の測定結果と、対応する測定時刻とを、記憶部21に記憶させる。また、地絡検出装置5a(5b,5c,…)は、測定結果を測定時刻とともに表示部24に表示させる。表示部24には、電流が瞬間的に変化した時の測定時刻が表示され、この表示結果から地絡の検出が推定されるとともに、この測定時刻を地絡電流供給装置3の表示部16に表示された地絡発生時刻と照合することによって、地絡の検出が確認される。
【0047】
なお、例えば、地絡が十分継続している場合や、同じ箇所で繰り返し地絡が発生しているような場合には、地絡検出装置5a(5b,5c,…)を負荷側へ順次移動させて分岐点に配置して、地絡箇所を探索(特定)するようにしても良い。
【0048】
こうして、この実施の形態の構成によれば、地絡電流供給装置3は、地絡発生時に、接点11を開閉動作させ、分岐回線Dp1,Dn1(Dp2,Dn2、Dp3,Dn3、…)に供給される地絡電流を断続させ、地絡電流検出装置5a(5b,5c,…)は、変流器4a(4b,4c,…)を介して電流の測定情報を取得し、地絡電流検出装置5a(5b,5c,…)において得られた測定結果に基づいて、地絡箇所を探索することによって、瞬時地絡が発生した直流回路(回線)を容易に特定することができる。
【0049】
地絡検出装置5a(5b,5c,…)を、複数台設置することによって、瞬時地絡箇所を詳細に特定することができる。また、継続した地絡が発生した場合は、地絡箇所を詳細に特定することができる。こうして、地絡が発生した箇所の高精度に特定することができる。
【0050】
また、地絡電流検出装置5a(5b,5c,…)の表示部24に表示された電流が瞬間的に変化した時の測定時刻を、地絡電流供給装置3の表示部16に表示された地絡発生時刻と照合することによって、地絡の検出を確認することができるので、地絡が発生した箇所を高精度、容易、かつ正確に特定することができる。
【0051】
また、変流器4a(4b,4c,…)としては、地絡電流供給用の正極側電流供給コンデンサCsp及び負極側電流供給コンデンサCsnの充放電の電流変化を取り込めば足りるので、安価な交流クランプCTを用いることができ、コストを低減することができる。
【0052】
また、地絡電流供給装置3は、母線Bp及び母線Bnに、それぞれ、同一容量の正極側電流供給コンデンサCsp負極側電流供給コンデンサCsnを接続して、中性点を接地する構成とされ、電圧バランスが崩れることもなく、地絡電流供給装置3の設置による他の既設設備への影響もなく、地絡検出継電器(64D)を通常の運転状態のまま、地絡電流供給装置3を容易に設置することができる。
【0053】
また、従来の地絡箇所特定装置は、地絡検出継電器(64D)の停止や、接地線の取外しの作業が必要であり、一時的に直流回路の地絡保護ができない状態となるのに対して、地絡検出継電器(64D)が運転状態のままで、手間がかかることなく容易に設置することができる。
【0054】
また、地絡検出装置5a(5b,5c,…)は、変流器4a(4b,4c,…)としては、交流クランプCTで地絡点を検出する構成であり、運転中の設備への影響もなく、電気的に接続しないので、安全性を向上させることができる。
【0055】
また、地絡検出装置5a(5b,5c,…)を、電気所の規模や、電気回路数等に応じて、必要箇所に必要数設置することができるので、効率的に地絡箇所を探索することができる。また、地絡検出装置5a(5b,5c,…)は可搬式であるので、汎用性を向上させることができる。
【0056】
以上、この発明の実施の形態について、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、上述した実施の形態では、地絡電流供給装置3の制御装置8における記録と、地絡検出装置5a(5b,5c,…)における記録を照合して、地絡発生箇所を特定する場合について述べたが、制御装置8と、地絡検出装置5a(5b,5c,…)とに、通信部を設け、例えば、地絡検出装置5a(5b,5c,…)から、制御装置8へ地絡検出情報を送信して、制御装置8が受け取った地絡検出情報に基づいて、地絡発生箇所を特定するようにしても良い。また、この地絡発生箇所特定機能を独立させて設けても良いし、さらに、警報出力機能を追加しても良い。なお、地絡検出装置5a(5b,5c,…)と制御装置8との間の通信は、無線であっても有線であっても良い。
【0057】
また、例えば、地絡電流供給装置3の制御装置8で、中性点接地継電器制御処理機能や、地絡発生時刻記憶処理機能、地絡発生時刻表示処理機能等は、MPU13が対応する制御プログラムを実行して実現しても良いし、ハードウェアで構成しても良い。地絡検出装置5a(5b,5c,…)においても同様である。また、地絡検出装置5a(5b,5c,…)において、測定された電流に基づいて、地絡発生を判定するようにしても良い。また、正極側電流供給コンデンサCsp及び負極側電流供給コンデンサCsnは、複数組配置しても良い。また、交流クランプCTに代えて、直流CTを用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0058】
電気所として、変電所のほか、発電所等について適用できる。
【符号の説明】
【0059】
1 直流地絡監視システム
2 直流電源装置
3 地絡電流供給装置
4a,4b,… 変流器
5a,5b,… 地絡検出装置
8 制御装置
9 中性点接地継電器
11 接点
13 MPU(接点開閉手段、第1の記憶制御手段)
14 記憶部(第1の記憶手段)
15 計時部(第1の計時手段)
19 MPU(測定情報取得手段、第2の記憶制御手段)
21 記憶部(第2の記憶手段)
22 計時部(第2の計時手段)
A 蓄電池(直流電源)
Bp 母線(正極側母線)
Bn 母線(負極側母線)
Csp 正極側電流供給コンデンサ(第1の電流供給コンデンサ)
Csn 負極側電流供給コンデンサ(第2の電流供給コンデンサ)
Rsp 正極側電圧バランス抵抗(第1の電圧バランス抵抗)
Rsn 負極側電圧バランス抵抗(第2の電圧バランス抵抗)
Dp1,Dp2,…分岐回線(回線)
Dn1,Dn2、…分岐回線(回線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流回路における地絡箇所を探索するために用いられる直流地絡箇所探索方法であって、
直流電源に接続された母線に、地絡発生時に、前記母線から分岐された回線へ地絡電流を供給する地絡電流供給装置が接続され、かつ、少なくとも1つの前記回線に、変流器を介して、地絡電流を検出するために用いられる少なくとも1つの地絡電流検出装置が接続され、
前記地絡電流供給装置は、前記母線を構成する正極側母線及び負極側母線に接続され、直列接続された第1の電流供給コンデンサ及び第2の電流供給コンデンサと、前記第1の電流供給コンデンサ及び前記第2の電流供給コンデンサの接続点と接地とに接続された接点と、地絡発生時に、前記接点を開閉動作させ、前記回線に供給される地絡電流を断続させる接点開閉手段とを有し、
前記地絡電流検出装置は、前記変流器を介して電流測定情報を取得する測定情報取得手段を有し、
前記地絡電流検出装置において得られた前記電流測定情報に基づいて、地絡箇所が探索される
ことを特徴とする直流地絡箇所探索方法。
【請求項2】
前記地絡電流供給装置は、時刻を計時する第1の計時手段と、地絡状態を検出した場合に、前記第1の計時手段から地絡発生時刻を読み取り、第1の記憶手段に記憶させる第1の記憶制御手段とを有し、
前記地絡検出装置は、時刻を計時する第2の計時手段と、前記第2の計時手段から測定情報取得時刻を読み取り、少なくとも電流が瞬間的に変化した時の前記電流測定情報、及び対応する前記測定情報取得時刻とを第2の記憶手段に記憶させる第2の記憶制御手段とを有し、
前記地絡発生時刻と、電流が瞬間的に変化した時の電流測定情報に対応する前記測定情報取得時刻との照合結果に基づいて、地絡箇所が探索される
ことを特徴とする請求項1に記載の直流地絡箇所探索方法。
【請求項3】
直流電源に接続された母線に接続され、地絡発生時に、前記母線から分岐された回線へ地絡電流を供給する地絡電流供給装置であって、
前記母線を構成する正極側母線及び負極側母線に接続され、直列接続された第1の電流供給コンデンサ及び第2の電流供給コンデンサと、前記第1の電流供給コンデンサ及び前記第2の電流供給コンデンサの接続点と接地とに接続された接点と、地絡発生時に、前記接点を開閉動作させ、前記回線に供給される地絡電流を断続させる接点開閉手段とを備えた
ことを特徴とする地絡電流供給装置。
【請求項4】
時刻を計時する第1の計時手段と、地絡状態を検出した場合に、前記第1の計時手段から地絡発生時刻を読み取り、第1の記憶手段に記憶させる第1の記憶制御手段とを備えたことを特徴とする請求項3に記載の地絡電流供給装置。
【請求項5】
前記第1の電流供給コンデンサ及び前記第2の電流供給コンデンサの電圧バランスを取るための前記第1の電流供給コンデンサ及び前記第2の電流供給コンデンサにそれぞれ並列接続された第1の電圧バランス抵抗及び第2の電圧バランス抵抗を備えたことを特徴とする請求項3又は4に記載の地絡電流供給装置。
【請求項6】
直流回路における地絡箇所を探索するために用いられる直流地絡監視システムであって、
直流電源に接続された母線に接続され、地絡発生時に、前記母線から分岐された回線へ地絡電流を供給する地絡電流供給装置と、少なくとも1つの前記回線に変流器を介して接続され、地絡電流を検出するために用いられる少なくとも1つの地絡電流検出装置とを備え、
前記地絡電流供給装置は、前記母線を構成する正極側母線及び負極側母線に接続され、直列接続された第1の電流供給コンデンサ及び第2の電流供給コンデンサと、前記第1の電流供給コンデンサ及び前記第2の電流供給コンデンサの接続点と接地とに接続された接点と、地絡発生時に、前記接点を開閉動作させ、前記回線に供給される地絡電流を断続させる接点開閉手段とを有し、
前記地絡電流検出装置は、前記変流器を介して電流測定情報を取得する測定情報取得手段を有する
ことを特徴とする直流地絡監視システム。
【請求項7】
前記地絡電流供給装置は、時刻を計時する第1の計時手段と、地絡状態を検出した場合に、前記第1の計時手段から地絡発生時刻を読み取り、第1の記憶手段に記憶させる第1の記憶制御手段とを有し、
前記地絡検出装置は、時刻を計時する第2の計時手段と、前記第2の計時手段から測定情報取得時刻を読み取り、少なくとも電流が瞬間的に変化した時の電流測定情報、及び対応する前記測定情報取得時刻とを第2の記憶手段に記憶させる第2の記憶制御手段とを有することを特徴とする請求項6に記載の直流地絡監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−223801(P2011−223801A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92249(P2010−92249)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】