説明

相乗作用により種子を処理する組成物

【課題】植物繁殖材料を処理するための殺真菌剤混合物及び係る混合物を作物の保護において使用する方法の提供。
【解決手段】植物繁殖材料を処理するための農芸化学組成物であって、2つ以上の活性成分を適切な担体と共に含んで成り、成分Iは、I)フルジオキソニル(=4−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル)ピロール−3−カルボニトリル)であり、そして成分IIは、IIA)アゾキシストロビン(=メチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート)もしくはIIB)ピコキシストロビン(=メチル(E)−3−メトキシ−2−[2−(6−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシメチル)フェニル]アクリレート)もしくはIIC)クレゾキシム−メチル(=メチル(E)−メトキシイミノ[2−(o−トリルオキシメチル)フェニル]アセテートである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物繁殖材料(plant propagation material)を処理するための殺真菌剤(fungicidal)混合物及びかかる混合物を作物の保護において使用する方法に関連する。
【発明の概要】
【0002】
本発明の混合物は、2つ以上の殺真菌活性成分を適切な担体原料と一緒に含んで成り、ここで成分Iは、
I)フルジオキソニル(=4−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル)ピロール−3−カルボニトリル;The Pesticide Manual、第12版、2000年、p361)であり、そして成分IIは、
IIA)アゾキシストロビン(=メチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート;The Pesticide Manual、第12版、2000年、p49)もしくは
IIB)ピコキシストロビン(=メチル(E)−3−メトキシ−2−[2−(6−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシメチル)フェニル]アクリレート;The Pesticide Manual、第12版、2000年、p622)もしくは
IIC)クレゾキシム−メチル(=メチル(E)−メトキシイミノ[2−(o−トリルオキシメチル)フェニル]アセテート;The Pesticide Manual、第12版、2000年、p472)である。
【発明を実施するための形態】
【0003】
本発明の殺真菌混合物は、植物を疾患蔓延に対し保護するために、詳細には、種子及び土に基づく疾患の蔓延の調節及び予防において、非常に有利な特性を有する。
【0004】
これらの特性は、例えば、成分IとIIの混合物の相乗的に増強された作用であり、それは、疾患蔓延をより軽くし、適用の率がより低くなり、作用期間をより長くし、そしてひいてはより高い穀物収穫をもたらす。前記混合物により向上した他の特性は、植物生長力として集約されている。用語、植物生長力のもとでは、植物の、有害生物を制御することに関係してはいない、様々な種類の向上があることが理解されている。挙げることのできるかかる有利な特性は、例えば、向上した作物の特性であり、それは即ち、出現、作物の収量、タンパク質含量、一層生長した根系、分蘗、の増加、植物の丈の増加、葉身の巨大化、死んだ基底葉の減少、より強力な分蘗、葉の色がより緑化すること、必要となる肥料の削減、必要となる種子の減少、より多産な分蘗、より早い開花、早期の穀物成熟、植物成熟(verse)(倒伏)の減少、発芽生長の増加、植物直立の増加及びより早い発芽;又は当業界で周知の他の全ての利点である。かかる増強は、個別の成分の活性からは期待されなかった。
【0005】
重量比は、所望の、例えば相乗的な、作用が得られるように選択されている。一般に、前記重量比I:IIは5:1〜1:30、好適には2.5:1〜1:15である。2つの活性成分の有利な混合比は、重量で2.5:1、1.25:1及び1:6である。
【0006】
先に述べた混合物は、他の農薬、好適には殺真菌剤と混合されてよく、ある場合には予想外の相乗的な活性をもたらす。
【0007】
前記活性成分混合物は、種子上での真菌感染症並びに土の中で発生する植物病原真菌に対する保護を供するために、植物繁殖材料、特に種子(果実、塊茎、穀粒)及び植物の切り枝(イネなど)の処理におけるドレッシングとして使用できうる。本発明の前記活性成分混合物は、それらが特に植物によって十分寛容され、そして環境に優しいという事実を特徴としている。
【0008】
前記活性成分混合物は以下の網に属する植物病原真菌に対して有効である。それは:
子嚢菌類(ペニシリウム(Penicillium)、ガエウマンノミセス・グラミニス(Gaeumannomyces・graminis)など);単子菌類(ヘミレイア(Hemileia)、リゾクトニア(Rhizoctonia)、プキニア(Puccinia)属など)、不完全菌類(ボトリチス(Botrytis)、ヘルミントスポリウム(Helminthosporium)、リンコスポリウム(Rhynchosporium)、フザリウム(Fusarium)、セプトリア(Septoria)、セルコスポーラ(Cercospora)、アルテルナリア(Alternaria)、ピリクラリア(Pyricularia)及びシュードセルコスポレラ・ヘルポトリコイド(Pseudocercosporella herpotrichoides)など)、卵菌網(フィトフィトラ(Phytophthora)、ペロノスポーラ(Peronospora)、ブレミア(Bremia)、フィチウム(Pythium)、プラズモパーラ(Plasmopara)など)である。
【0009】
本明細書中で開示されている適応の領域を対象とする作物は、本発明の範囲内で、例えば、以下の種の植物を含んで成る。それは:穀類(コムギ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、コーン、メイズ、イネ、モロコシ及び類縁穀物);ビート(シュガービート及び飼料用ビート);マメ科植物(マメ、平マメ、エンドウマメ、ダイズ);油植物(ナタネ、カラシナ、ヒマワリ);ウリ科植物(マロー、キュウリ、メロン);繊維植物(綿、亜麻、麻、黄麻);野菜(ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ポテト、パプリカ);並びに装飾用植物(花、低木、広葉樹及び常緑樹の、例えば針葉樹)である。この一覧はいかなる限定をも意味しない。
【0010】
本発明の前記活性成分混合物は、特に植物繁殖材料、特に、綿、コーン、ダイズ、イネ及びビーナッツ、の種子を処理するために有利である。
【0011】
化合物IとIIの混合物は通常、組成物の形態において使用されている。前記化合物I及びIIは、植物繁殖材料に対して適用することができ、当該原料は、同時又は連続的に短い間隔の例えば同日、のいずれかにて、もし所望されれば更なる担体、界面活性剤又は調剤技術中で通常使用されている適用を促す他のアジュバントと一緒に処理されうる。
【0012】
適切な担体及びアジュバントは固体状又は液体状であってよく、そして調剤技術中で通常使用されている物質、例えば、天然の又は再生された鉱物物質、溶媒、分散剤、湿潤剤、粘着付与剤、増粘剤、結合剤、又は肥料などの物質である。
【0013】
植物繁殖材料、特に種子を処理するために、前記化合物IとIIは種子に対しても適用すること(被覆)ができ、それは、塊茎又は穀粒に各活性成分の液体製剤を連続して刷り込むことによって、又は塊茎又は穀粒を既に組み合わさっている湿潤もしくは乾燥製剤で被覆することのいずれかによって適用することができる。
【0014】
組み合わせの化合物は、変更されてない形態、又は好適には、調剤技術において従来使用されているアジュバントと一緒に使用されており、それ故に公知の方法、例えば、乳濁可能濃縮物、被覆可能ペースト、直接スプレー可能もしくは希釈可能な溶液、希釈乳濁、加湿可能粉末、可溶性粉末、粉(dust)、顆粒などへと処方されているかあるいはポリマー物質などにおけるカプセル包括化(encupsulation)によって処方されている。前記組成物のこの性質から、適用の方法、例えば、スプレー、噴霧(atomizing)、粉の振りかけ(dusting)、散布、被覆又は注入が、目的とする対象及び一般的な状況に従って選択されている。前記活性成分混合物の適用の有利な割合は、一般に、植物繁殖材料、特に種子100kgあたり、2g〜35g、好適に2g〜20gである。植物繁殖材料、特に種子100kgあたり、好適な割合は、化合物Iが1g〜5g、特に好適には、2.5g、化合物IIが1g〜30g、特に好適には、1g〜15gである。
【0015】
前記製剤は公知の方法によって調製されており、それは例えば、前記活性成分を増量剤の例えば、溶媒、固体状担体、及び適宜、表層活性化合物(界面活性剤)と均一に混合及び/又は粉砕することによる。
【0016】
適切な溶媒は:芳香族炭化水素、好適には、8〜12個の炭素原子を含む画分、例えば、キシレン混合物又は置換されているナフタレン、フタル酸塩の例えば、フタル酸ジブチル又はフタル酸ジオクチル、脂肪族炭化水素の例えば、シクロヘキサン又はパラフィン、アルコール及びグリコール及びそれらのエステル及びエーテルの例えば、エタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル又はエチレングリコールモノエチルエーテル、ケトンの例えば、シクロヘキサノン、強極性溶媒の例えば、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド又はジメチルホルムアミド、並びに植物油又はエポキシ化された植物油の例えば、エポキシ化されたココナッツ油又はダイズ油;又は水である。
【0017】
粉及び分散可能粉末などのための、使用された固体状担体は、通常天然の鉱物充填物質の例えば、方解石、タルカム、カオリン、モンモリロナイト又はアタパルガイトである。物理的な特性を向上させるために、非常に分散したケイ酸又は非常に分散した吸着性ポリマーを加えることが可能である。適切な顆粒状吸着性担体は、多孔質タイプの、例えば軽石、破壊されたレンガ、海泡石又はベントナイトであり、そして適切な非吸着剤担体は、例えば、方解石又は砂である。加えて、非常に多くの、無機又は有機的性質の事前に顆粒化されている(pregranulated)物質、特に、白雲石又は微粉化された植物残渣などが使用されてよい。
【0018】
処方された化合物I及びIIの性質に依存して、適切な表層活性化合物は、優れた乳化、分散及び加湿特性を有する、非イオン、陽イオン及び/又は陰イオン界面活性剤である。用語「界面活性剤」とは、界面活性剤の混合物を含んで成るとも解されるだろう。
【0019】
適用を促進する特に有利なアジュバントは、ケファリン及びレクチン系の天然又は合成リン脂質の例えば、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルセリン、フォスファチジルグリセロール及びリゾレシチンでもある。
【0020】
前記農芸化学組成物は通常、化合物I及びIIを0.1〜99%、特に0.1〜95%、固体状又は液体状アジュバントを99.9〜1%、特に99.9〜5%、及び界面活性剤を0〜25%、特に0.1〜25%含んで成る。
【0021】
市販の製品は好適に濃縮物として処方されるだろうが、エンドユーザーは通常、希釈製剤を使用するだろう。
【実施例】
【0022】
次の実施例は、本発明を説明するのに役立ち、「活性成分」とは、化合物Iと化合物IIの特異的な混合比における混合物を示している。
【0023】
処方の例
加湿可能な粉末
【化1】

【0024】
前記活性成分を十分に前記アジュバントと混合し、そしてこの混合物を適切な粉砕機において十分に粉砕して、水で希釈し所望の濃度の懸濁を得ることができる加湿可能な粉末を得る。
【0025】

【化2】

【0026】
前記活性成分と担体を混合し、そしてこの混合物を適切な粉砕機において粉砕することによって、すぐに使用できる粉を得る。かかる粉末は、種子のための乾燥ドレッシングのために使用できる。
【0027】
懸濁濃縮物
【化3】

【0028】
微細に粉末化した前記活性成分を前記アジュバントと完全に混合し、懸濁濃縮物を得て、そしてその懸濁物から、水で希釈することによって、任意の所望の希釈物の懸濁液を得ることができる。植物繁殖材料を、かかる希釈物を使用し、スプレー、分注又は浸漬することによって処理して微生物による感染症に対して保護できうる。
【0029】
生物学的な例
例えば、活性成分の組み合わせの作用が個々の成分の作用の合計よりも大きい場合にはいつでも、相乗効果が存在する。
【0030】
所定の活性成分の組み合わせについて期待される作用Eは、いわゆるCOLBY式に従い、そして以下のようにして計算できる(COLBY、S.R.「Calculating Synergistic and antagonistic responses of herbicide combination」.Weeds、Vol.15、pp.20〜22;1976)。
ppm=mg活性成分(=a.i)/Lスプレー混合物、
X=活性成分Iによる作用%(p ppmの活性成分を使用する)
Y=活性成分IIによる作用%(q ppmの活性成分を使用する)
【0031】
Colbyによれば、活性成分I+II(p+q ppmの活性成分を使用する)の期待される(相加)作用は、
【数1】

である。
【0032】
もし、実際に確認された作用(O)が期待された作用(E)よりも大きければ、この組み合わせの作用は超付加的であり、即ち相乗効果がある。
【0033】
A1)リゾクトニア・ソラニ(Rhizoctonia solani)/綿(綿上で減衰させること)
R.ソラニの規定量の菌糸体を土と混ぜ、そしてトレーをその播種した土で満たした。処方した試験混合物を綿の種子(園芸品種.Sure Grow 747)に対して適用した。次いで、この処理した綿の種子を、前記播種した土の中へと播いた。発芽迄、前記トレーを暗中、20℃、相対湿度90%で保存した。発芽後、前記トレーを25℃、相対湿度70%で14時間の明期へと移した。出現した綿植物及び出現して病気にかかった植物の数を数えることによって評価を行った。
【0034】
本発明の混合物I+IIA、I+IIB及びI+IICは、優れた相乗作用を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物繁殖材料(plant propagation material)を処理するための農芸化学組成物であって、2つ以上の活性成分を適切な担体と一緒に含んで成り、ここで成分Iは、
I)フルジオキソニル(=4−(2,2−ジフルオロ−1,3−ベンゾジオキソール−4−イル)ピロール−3−カルボニトリル)であり、そして成分IIは、
IIA)アゾキシストロビン(=メチル(E)−2−{2−[6−(2−シアノフェノキシ)ピリミジン−4−イルオキシ]フェニル}−3−メトキシアクリレート)もしくは
IIB)ピコキシストロビン(=メチル(E)−3−メトキシ−2−[2−(6−トリフルオロメチル−2−ピリジルオキシメチル)フェニル]アクリレート)もしくは
IIC)クレゾキシム−メチル(=メチル(E)−メトキシイミノ[2−(o−トリルオキシメチル)フェニル]アセテート、
である組成物。
【請求項2】
前記成分IIがIIA)アゾキシストロビンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記成分IIがIIB)ピコキシストロビンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記成分IIがIIC)クレゾキシム−メチルである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
I:IIの重量による比が5:1〜1:30である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
I:IIの重量による比が2.5:1、1.25:1又は1:6である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記植物繁殖材料を請求項1に記載の成分I及び成分IIで任意の所望の順番においてか、あるいは同時に処理することによって、植物を植物病害から保護する方法。
【請求項8】
種子を処理する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
綿、コーン、ダイズ、イネ又はピーナッツの種子を処理する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法に従い処理されている植物繁殖材料。

【公開番号】特開2010−168393(P2010−168393A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−69433(P2010−69433)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【分割の表示】特願2003−546663(P2003−546663)の分割
【原出願日】平成14年11月25日(2002.11.25)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】