説明

相乗的な保存剤混合物

本発明は、殺菌性および/または殺真菌性を有する少なくとも2つの化合物の組み合わせを含む保存剤を開示し、前記それぞれの組み合わせは、メチルイソチアゾリノン/ピロクトンオラミン;カプリリルグリコール/デヒドロ酢酸;ウンデカノール/デヒドロ酢酸およびラウリルアルコール/ソルビン酸からなる群より選択される。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、殺菌性化合物および殺真菌性化合物を含む相乗的な保存剤、製剤の細菌および真菌の負荷を減少させる方法ならびに調製品の細菌および真菌の負荷を減少させるための本発明の相乗的な保存剤の使用を開示する。
【0002】
広範な種類の個人用、家庭用および工業用の製品、製剤および調製品は、細菌および真菌の混入から保護される必要がある。これは、通常、ホルムアルデヒド離型剤および/またはパラベンを添加することにより達成され、これらの化合物の良好な殺菌性および殺真菌性を利用するものである。
【0003】
しかしながら、当該分野の現状において、これらの化合物はいくつかの重篤な欠点を有し、すなわち、それらの保存能は非常に高く、例えばローションの場合、その効果は、皮膚に塗布され、吸収され、血中に分散し、体の主要な臓器中に蓄積した後まで持続する。ホルムアルデヒドおよびパラベンは、酵素の機能を障害するため、正常なヒト細胞および臓器の機能との干渉の可能性がある。
【0004】
それ故、本発明により解決されるべき技術的問題は、当該分野の現状における保存剤の不利益を回避する保存剤を提供することである。この問題は、少なくとも2つの化合物の驚くべき且つ予想外の相乗的な協同作用を通して、製剤の必要濃度を低下させながら、微生物制御を維持することにより解決される。
【0005】
それ故、本発明の1つの目的は、殺菌性および/または殺真菌性を有する少なくとも2つの化合物の組み合わせを含む保存剤を提供することであり、前記それぞれの組み合わせは、メチルイソチアゾリノン/ピロクトンオラミン;カプリリルグリコール/デヒドロ酢酸;ウンデカノール/デヒドロ酢酸およびラウリルアルコール/ソルビン酸からなる群より選択される。
【0006】
殺菌性化合物は、好ましくは、殺菌性化合物がメチルイソチアゾリノンである場合は1%〜5%の濃度で存在し、殺菌性化合物がカプリリルグリコール、ウンデカノールおよびラウリルアルコールである場合は25%〜75%の濃度で存在する。より好ましくは、殺菌性化合物は、それがメチルイソチアゾリノンである場合は1.5%〜3%の濃度で存在し、カプリリルグリコール、ウンデカノールおよびラウリルアルコールである場合は30%〜70%の濃度で存在する。
【0007】
殺真菌性化合物は、好ましくは、25%〜99%の濃度で存在する。より好ましくは、本発明による殺真菌性化合物は、30〜95%の濃度で存在する。
全てのパーセンテージは、特に言及しない限り、重量%を意味する。
【0008】
メチルイソチアゾリノンの好ましい異性体は、2−メチルイソチアゾリン−3−オンである。しかしながら、他の異性体も本発明の範囲内に含まれる。
【0009】
本発明による保存剤は、適切な溶媒と組み合わせることが好ましい。好ましくは、前記溶媒は、グリコールの分類から選択される。最も好ましくは、前記溶媒は、プロピレングリコール、ブチレングリコールおよびペンチレングリコールからなる群より選択される。
【0010】
調製品の細菌および真菌の負荷を減少させるための本発明による方法は、好ましくは、殺菌性および/または殺真菌性を有する少なくとも2つの化合物を含む保存剤を保存される調製品に添加することを含む。好ましい殺菌性および殺真菌性の化合物、その好ましい濃度および組み合わせは、上述した通りである。
【0011】
一般的に、本発明による保存剤は、広範な種類の個人用、家庭用および工業用の製品、製剤および調製品に添加されてよい。
【0012】
本発明における好ましい調製品は、ローション、クリーム、膏薬(salve)および軟膏(ointment)のような化粧品、洗浄剤、界面活性剤、女性の衛生製品、拭き取り用の布(wipe)、ペットケアのための調製品、シャンプー、コンディショナー、ゲル、固定剤(fixative)およびスプレーのようなヘア用調製品からなる群より選択される。
【0013】
本発明のもう1つの目的は、調製品の細菌および真菌の負荷を減少させるために、本発明による相乗的な保存剤を使用することである。好ましい殺菌性および殺真菌性の化合物に関する全ての詳細、それらの好ましい濃度および組み合わせならびに相乗的な保存剤が適用され得る好ましい調整品については、上記と同様である。
【0014】
以下、非限定的な実施例により本発明を説明する。
【0015】
実施例1
完成した化粧品における混合物の効能を評価するために、保存剤負荷試験を行った。試験は、ここに記載するように、シャンプーおよびローション基剤について行った。標準化された混合菌液を以下のように調製した。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus;ATCC 6538)、大腸菌(Escherichia coli;ATCC 8739)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa;ATCC 9027)の3つの個々のトリプティックソイ寒天培地(Trypric soy agar)傾斜培養(slant)を、約35℃で24時間インキュベートした。その後、各傾斜培養を5 mLの無菌のリン酸緩衝希釈水 (PBDW)で洗浄した。その5 mLをさらに5 mLのBPDWと合わせ、全部で10 mLの個々の細菌懸濁液とした。PBDWのブランクを用いて機器の較正を行った後、個々の懸濁液のそれぞれの吸収を、530nmにおいて分光光度的に測定した。個々の懸濁液は、109 CFU/mL以内に標準化した。5 mLを個々の懸濁液から1つの無菌飼料カップへ無菌的に移し、「混合細菌」とした。その後、シャンプーおよびローションのサンプルそれぞれ40 gに、0.2 mLの標準化された細菌溶液を植え付け、各サンプルをよく混合した。
【0016】
カンジダ・アルビカンス(Candida albicans;ATCC 10231)の2つのサブロー寒天培地傾斜培養およびアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger;ATCC 16404)の3つのサブロー寒天培地プレートを、約30℃で、それぞれ24時間および5日間インキュベートした。カンジダの傾斜培養は、その後、5 mLの無菌のリン酸緩衝希釈水 (PBDW)で洗浄した。その5 mLをさらに5 mLのBPDWと合わせ、全部で10 mLの個々のカンジダ懸濁液とした。アスペルギルスについては、無菌の綿棒を無菌PBDW の10 mLチューブに浸し、その後Tween 80の無菌チューブに浸した。その後、綿棒を、各アスペルギルスのプレートの端から端まで前後に動かし、各芽胞除去プロセスの間に、芽胞を10 mL PBDWチューブに移した。それぞれの懸濁液から1 mLを、別々の9 mL PBDWチューブに移した。この1:9懸濁液のそれぞれについて、血球計で測定し、最初の懸濁液を107 cells/mLに標準化した。7 mLを個々の懸濁液から1つの無菌飼料カップへ無菌的に移し、「混合真菌」とした。その後、シャンプーおよびローションのサンプルそれぞれ40 gに、0.4 mLの標準化された真菌溶液を植え付け、各サンプルをよく混合した。
【0017】
0日目、7日目、14日目および28日目に、以下に示すようにサンプリングを行った。各サンプル1 gを別々の9 mL D/E中和ブロスチューブに無菌的に移し、10-1の希釈物を形成した。BPDWにおいて、10-6までの連続的な希釈を行った。細菌培養の連続的な希釈物を、サブロー寒天培地を用いた混釈平面培養により蒔き、30℃以下で72時間インキュベートした。インキュベーション後にプレートを計数した。その結果を表1および表2に示す。混合物は、28日間にわたって細菌数および真菌数を有意に減少させた。
【表1】

【0018】
菌種:
混合細菌−およそ等量の緑膿菌、黄色ブドウ球菌および大腸菌;9×105〜5.5×106
【表2】

【0019】
菌種:
混合真菌−およそ等量のカンジダ・アルビカンスおよびアスペルギルス・ニガー;6.9×104〜1.2×105
実施例2
最小発育阻止濃度(MIC)を、個々の成分および二成分製剤について、以下に示すように測定した。黄色ブドウ球菌(グラム陽性)、大腸菌および緑膿菌(共にグラム陰性)のそれぞれの細菌懸濁液ならびにカンジダ・アルビカンスおよびアスペルギルス・ニガーのそれぞれの真菌懸濁液を、実施例1に記載したように調製した。各懸濁液は、細菌および真菌それぞれについて、108 CFU/mL以下または107cells/mL以下になるようにPBDWで標準化した。
【0020】
個々の成分および二成分製剤をDI水またはプロピレングリコール(溶解性に関して適切である)に希釈し、10,000 ppmの全出発活性溶液を得た。10,000 ppmの溶液から、無菌の栄養ブロス(Nutrient Broth)中で1:9の希釈を行った。1,000 ppmの希釈液の5 mLを5 mLの無菌栄養ブロス (NB)に移し、500 ppmの活性溶液を得た。この希釈スキームを、3.90 ppmの活性に下がるまで繰り返した。真菌のMIC試験については、同じ希釈を無菌のサブローデキストロースブロス(Sabouraud Dextrose Broth;SDB)において行った。一連の9の活性溶液(3.9 ppm〜1000 ppm)は、試験対象の5つの微生物のそれぞれについて調製した。
【0021】
大腸菌懸濁液0.1 mLを、NB中の5 mL活性溶液の9つそれぞれに加えた。各チューブを十分に混合した。これを、それぞれの細菌懸濁液について繰り返した。同様に、カンジダ・アルビカンス懸濁液0.1 mLを、SDB中の5 mL活性溶液の9つそれぞれに加えた。これを、別の一連の懸濁液におけるアスペルギルス・ニガーを用いて繰り返した。各チューブを十分に混合した。5 mLのNBまたはSDBを植え付けることにより、各生物体についての対照を適宜調製した。全部で3セットの細菌チューブを35℃で48時間インキュベートし、2セットの真菌チューブを30℃で72〜120時間インキュベートした。インキュベーションが終了したら、チューブを混合し、対照と比較した濁度を視覚的に観察した。濁りのない最も低い濃度を、最小発育阻止濃度(MIC)として記録した。結果を表3および4に示す。
【0022】
相乗効果の値は、(QA/Qa + QB/Qb)である。QAは混合物中の成分Aの濃度であり、Qaは単独で使用される成分Aの濃度であり、QBは混合物中の成分Bの濃度であり、Qbは単独で使用される成分Bの濃度である。相乗効果の値が1より小さい場合、混合物は相乗効果を有する。(QA/Qa + QB/Qb)の値が1である場合および1より大きい場合は、それぞれ相加効果および拮抗効果を意味する。
【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌性および/または殺真菌性を有する少なくとも2つの化合物の組み合わせを含む保存剤であって、前記それぞれの組み合わせは、メチルイソチアゾリノン/ピロクトンオラミン;カプリリルグリコール/デヒドロ酢酸;ウンデカノール/デヒドロ酢酸およびラウリルアルコール/ソルビン酸からなる群より選択される保存剤。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物であって、前記殺菌性化合物がメチルイソチアゾリノンである場合は、前記殺菌性化合物は1%〜5%の濃度で存在し、前記殺菌性化合物がカプリリルグリコール、ウンデカノールおよびラウリルアルコールである場合は、前記殺菌性化合物は25%〜75%の濃度で存在する化合物。
【請求項3】
請求項2に記載の化合物であって、前記殺菌性化合物がメチルイソチアゾリノンである場合は、前記殺菌性化合物は1.5%〜3%の濃度で存在し、前記殺菌性化合物がカプリリルグリコール、ウンデカノールおよびラウリルアルコールである場合は、前記殺菌性化合物は30%〜70%の濃度で存在する化合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物であって、前記殺真菌性化合物は、25%〜99%の濃度で存在する化合物。
【請求項5】
請求項4に記載の化合物であって、前記殺真菌性化合物は、30%〜95%の濃度で存在する化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の保存剤を調製品に添加することを含む、前記調製品の細菌および真菌の負荷を減少させる方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、前記調製品は、個人用、家庭用および工業用の製品、製剤および調製品からなる群より選択される方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記調製品は、ローション、クリーム、膏薬(salve)および軟膏(ointment)のような化粧品、洗浄剤、界面活性剤、女性の衛生製品、拭き取り用の布(wipe)、ペットケアのための調製品、シャンプー、コンディショナー、ゲル、固定剤およびスプレーのようなヘア用調製品からなる群より選択される方法。
【請求項9】
調製品の細菌および真菌の負荷を減少させるための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の保存剤の使用。

【公表番号】特表2011−522808(P2011−522808A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−511999(P2011−511999)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/003610
【国際公開番号】WO2009/146800
【国際公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(592233462)ロンザ インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】