相互侵入ポリマーネットワークを含むイオン交換樹脂及びそれらのクロム除去への使用
本発明は、イオン交換樹脂及びそれらの水からのクロムの除去への使用を含む。一態様において、本発明は、水をイオン交換樹脂と接触させることによって水源からクロムを除去する方法であって、前記イオン交換樹脂が、それぞれが50モル%超のスチレン含量と第4級アンモニウム官能基とを有する少なくとも2種のポリマー成分の相互侵入ポリマーネットワーク(IPN)を含む架橋コポリマーの粒子を含む方法を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン交換樹脂及びそれらの水からのクロムの除去への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
クロムは、地下水及び地表水を含む多くの水源中に存在する。6価クロムは、種々の形態(例えばHCrO4-、CrO42-及びCrO72-)で、広範囲のpH値にわたって溶解する。その結果として、効果的なクロム除去技術の数は限られている。従来の方法の1つは、第4級アンモニウム官能基(functionality)(即ちクロロメチル化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスとトリメチルアミンとの反応によって生成された官能基)を有する架橋スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスを含む強塩基ゲル型樹脂であるDOWEX(商標)1銘柄のイオン交換樹脂などのイオン交換樹脂による処理である。クロムの除去に使用されているイオン交換樹脂の他の例としては、カルボン酸官能基を有するアクリル樹脂マトリックスを含むマクロ多孔質樹脂であるDOWEX(商標)MAC−3銘柄のイオン交換樹脂;第4級アンモニウム官能基(即ちクロロメチル化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスとジメチルエタノールアミンとの反応によって生成された官能基)を有するスチレン−ジビニルベンゼンマトリックスを含むゲル型樹脂であるDOWEX(商標)SAR銘柄のイオン交換樹脂;及びビス−ピコリルアミンとの反応によって生成されたキレート化基を有するスチレン−ジビニルベンゼンマトリックスを含むマクロ多孔質キレート樹脂であるDOWEX(商標)M4195銘柄のイオン交換樹脂が挙げられる(これらは全てThe Dow Chemical Companyから市販されている)。イオン交換樹脂の他の型、例えば第2級アミンで官能化されたフェノール−ホルムアルデヒド及びエポキシポリアミンもまた、クロム除去への使用が知られている。
【0003】
競合イオン(例えば塩化物イオン、硫酸イオン、炭酸水素イオンなど)の存在下では、イオン交換樹脂のクロム除去能は、典型的には、酸性のpH値において、例えば典型的にはpH6.3未満において改善される。結果として、従来の処理計画は、イオン交換樹脂による処理前に、水源のpHを低下させることを含む。例えば(1)非特許文献1及び(2)非特許文献2参照。イオン交換処理の前に水源のpHを低下させる工程は時間がかかり、コストもかかる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ion Exchange Technology-Advances in Pollution Control、A.Sengupta編、Technomic Publishing Co.(1995年)、Lancaster PA(ISBN No.1-56676-241-3)(特にChapter 3、「Chromate Ion Exchange」)
【非特許文献2】Ion Exchange Developments and Applications,Proceedings of IEX ’96、J.A.Greig編、The Royal Society of Chemistry(1996年)、Cambridge UK(ISBN 0-85404-726-3)(特に、388〜395頁、H.K.S.Tan著、「Kinetics of Chromic Acid Removal by Anion Exchange」)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、イオン交換樹脂及びそれらの水からのクロム除去への使用を含む。一態様において、本発明は、水をイオン交換樹脂と接触させることによって水源からクロムを除去する方法であって、前記イオン交換樹脂が、それぞれが50モル%超のスチレン含量と第4級アンモニウム官能基とを有する少なくとも2種のポリマー成分(component)の相互侵入ポリマーネットワーク(internepetrating polymer network)(IPN)を含む架橋コポリマーの粒子を含む方法を含む。多くの更なる態様を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、イオン交換樹脂及びそれらの水からのクロム除去への使用を含む。用語「イオン交換樹脂」は、化学処理によってイオン交換能を有する官能基が結合又は形成された架橋コポリマー粒子を広範に記載するものである。用語「官能化」は、イオン交換基、即ち、「官能基(functional group)」を結合させるために架橋コポリマー樹脂を化学処理する方法(例えばスルホン化、ハロアルキル化、アミノ化など)を指す。架橋コポリマーは基材又はポリマー主鎖の役割を果たし、官能基は周囲の流動媒体とイオンを交換できる活性部位の役割を果たす。本発明は、特に、相互侵入ポリマーネットワーク(IPN)を含む架橋コポリマーを含む種類のイオン交換樹脂を対象とする。用語「相互侵入ポリマーネットワーク」は、少なくとも1種のポリマーが他のポリマーの存在下で合成及び/又は架橋された、それぞれがネットワークの形態の少なくとも2種のポリマーを含む材料を記載するものとする。ポリマーネットワークは互いに物理的に絡み合い、一部の態様では、共有結合もしている場合がある。特徴的には、IPNは膨潤するが、溶媒中に溶解することもないし、加熱時に流動することもない。IPNを含むイオン交換樹脂は、長年にわたって市販されており、複数のポリマー成分の製造を含む周知の技術によって製造されることができる。このような樹脂の例はそれらの製造技術と共に、米国特許第4,419,245号、第4,564,644号、第4,582,859号、第5,834,524号、第6,251,996号及び第6,924,317号並びに米国特許出願公開第2002/0042450号に示されている。IPNゲル型イオン交換樹脂の市販例は、Ion Exchange at the Millennium-Proceedings of IEX 2000、JA Greg編、Imperial College Press、London(2000年)に記載されている。
【0007】
本明細書中に記載した用語「ポリマー成分」は、別個の重合工程から得られたポリマー物質を指す。例えば本発明の好ましい一態様において、主題のIPNイオン交換樹脂は「播種された(seeded)」樹脂である;即ち、最初にコポリマー(好ましくは架橋コポリマー)の種を形成し、続いてモノマーを吸収させ(imbibe)、続いて重合させる播種法によって、樹脂が形成される。続いて、重合プロセスにおいて、追加モノマーを添加することができる(即ち、「連続添加」又は「コン−アド(con−ad)」)。種粒子の形成は、別個のポリマー成分をもたらす。同様に、モノマー混合物を種中に吸収させて重合させるプロセス工程は、更に別のポリマー成分をもたらす。使用する場合には、種を「生長させる」のに一般に使用されるモノマー混合物のその後の連続添加も、別個のポリマー成分をもたらす。本明細書中に具体的に記載した以外は、各ポリマー成分の構成要素(constituent)は同一でも異なっていてもよい。更に、重合工程の間に用いるモノマー混合物は均一である必要はない;即ち、モノマーの比及び型はさまざまであってよい。用語「ポリマー成分」は、得られる樹脂が、相互侵入ポリマーネットワーク以外の特定の形態を有することを意味するものではないが、本発明の樹脂は、米国再発行特許第34,112号に記載されているような「コア−シェル」型構造を有することができる。本発明の各ポリマー成分は、好ましくは最終IPNコポリマー粒子の約5重量%超、より好ましくは少なくとも10重量%を占める。典型的には、本発明の樹脂は2種又は3種のポリマー成分、例えば種(seed)成分、吸収(imbibe)成分及び/又は連続添加成分を含む。当業者ならば、ポリマー成分の異なる又は追加の組合せを使用できる、例えば多数のコン−アド成分を使用できることがわかるであろう。第1、第2、第3などのポリマー成分は、必ずしも添加順序には対応しない。即ち、「第1のポリマー成分」は、最初に重合されたポリマー成分、例えば種粒子に必ずしも相当しない。用語「第1の」、「第2の」などは、成分を互いに区別するためにのみ用い、添加順序を示すためには用いていない。
【0008】
前述のように、本発明の樹脂は、好ましくは播種(seeded)重合によって生成させる。連続的又は半連続的段階重合(semi-continuous staged polymerization)として知られる播種重合は、米国特許第4,419,245号、第4,564,644号及び第5,244,926号に一般的に記載されている。播種重合法は、典型的には、モノマーを2つ又はそれ以上のインクレメントで添加する。各インクレメントの添加後、インクレメント中のモノマーを完全に又は実質的に重合させてから、次のインクレメントを添加する。播種重合は、有利には、モノマー又はモノマーと種粒子との混合物を連続懸濁媒内に分散させて、その中で重合させる懸濁重合として実施する。このような方法において、段階重合は、モノマーの初期懸濁液を形成させ、モノマーを完全に又は部分的に重合させて種粒子を形成し、その後に1つ又はそれ以上のインクレメントで残りのモノマーを添加することによって、容易に実施できる。各インクレメントは、一度に又は連続的に添加できる。モノマーは懸濁媒中には不溶であるが種粒子内には可溶であるので、モノマーは、種粒子によって吸収され、その中で重合される。多段重合技術は、各段階に使用するモノマーの量及び型並びに使用する重合条件によって異なり得る。
【0009】
使用する種粒子は、周知の懸濁重合技術によって製造できる。一般的に、種粒子は、F.Helfferichによって、Ion Exchange(McGraw-Hill 1962年)の35〜36頁に記載されているように、撹拌連続懸濁媒中で第1のモノマー混合物の懸濁液を形成することによって製造できる。第1のモノマー混合物は、1)第1のモノビニリデンモノマー、2)第1の架橋性モノマー及び3)有効量の第1の遊離基開始剤を含む。懸濁媒は、当業界で一般的に使用される1種又はそれ以上の沈殿防止剤(suspending agent)を含むことができる。重合は、懸濁液を一般に約50〜90℃の温度に加熱することによって開始する。懸濁液を、モノマーからコポリマーへの所望の転化率に達するまで、このような温度又は任意的に上昇させた90〜150℃の温度に保持する。他の適当な重合法は、米国特許第4,444,961号、第4,623,706号、第4,666,673号及び第5,244,926号に記載されている。
【0010】
ここで使用するモノビニリデンモノマーはよく知られており、Polymer Processes、Calvin E.Schildknecht編、1956年、Interscience Publishers,Inc.(New York)出版、Chapter III、「Polymerization in Suspension」、69〜109頁を参照する。この文献の表II(78〜81頁)は、本発明の実施に好適な種々の型のモノマーを記載している。記載されたモノマーのうち、スチレン及び置換スチレンなどのモノビニリデン芳香族炭化水素を含む水不溶性モノビニリデンモノマーが好ましい。用語「置換スチレン」は、スチレンのビニリデン基及びフェニル基の一方又は両者の置換基を含み、その例としては、ビニルナフタレン、α−アルキル置換スチレン(例えばα−メチルスチレン)、アルキレン置換スチレン(特にモノアルキル置換スチレン、例えばビニルトルエン及びエチルビニルベンゼン)及びハロ置換スチレン、例えばブロモ又はクロロスチレン及びビニルベンジルクロリドが挙げられる。他の適用可能なモノマーとしては、モノビニリデン非スチレン系モノマー、例えばα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、特にアクリル酸又はメタクリル酸のエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸エチル、並びにブタジエン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル及び塩化ビニル、更に1種又はそれ以上の前記モノマーの混合物が挙げられる。好ましいモノビニリデンモノマーとしては、スチレン及びエチルビニルベンゼンなどの置換スチレンが挙げられる。用語「モノビニリデンモノマー」は、均一モノマー混合物及び異なる型のモノマーの混合物、例えばスチレンとメタクリル酸イソボルニルとの混合物を含むものとする。種ポリマー成分は、好ましくは50モル%超(総モル含有量に基づく)、より好ましくは75モル%超のスチレン含量を含む。用語「スチレン含量」は、コポリマーの形成に使用されたスチレン及び/又は置換スチレンのモノビニリデンモノマー単位の量を指す。「置換スチレン」は、前述のように、スチレンのビニリデン基及びフェニル基の一方又は両者の置換基を含む。好ましい態様において、第1のポリマー成分(例えば種)の形成に使用する第1のモノマー混合物は、少なくとも75モル%、一部の態様では少なくとも85モル%のスチレンを含む。
【0011】
好適な架橋性モノマー(即ちポリビニリデン化合物)の例としては、ポリビニリデン芳香族炭化水素、例えばジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、ジビニルジフェニルエーテル、ジビニルジフェニルスルホン並びに種々のアルキレンジアクリレート及びアルキレンジメタクリレートが挙げられる。好ましい架橋性モノマーは、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン及びエチレングリコールジメタクリレートである。用語「架橋剤(crosslinking agent)」、「クロスリンカー(crossliker)」及び「架橋性モノマー」は、本明細書中では同義語として使用し、1種類の架橋剤と、種々の型の架橋剤の組合せとを共に含むものとする。コポリマー種粒子中の架橋性モノマーの割合は、好ましくは粒子をその後の重合工程において(且つまた、イオン交換樹脂への転化時に)不溶性にするが、任意的な相分離希釈剤及び第2のモノマー混合物のモノマーの適正な吸収をそれでもなお可能にするのに充分なものである。一部の態様においては、架橋性モノマーは、使用しない。一般に、種粒子中の架橋性モノマーの好適な量は少量であり、即ち種粒子の製造に使用する第1のモノマー混合物中のモノマーの総モルに基づき、望ましくは約0.01〜約5モル%、好ましくは約0.1〜約2.5モル%である。好ましい一態様において、第1のポリマー成分(例えば種)は、少なくとも85モル%のスチレン(又はエチルビニルベンゼンなどの置換スチレン)と約0.01〜約5モル%のジビニルベンゼンとを含む第1のモノマー混合物の重合によって得られる。
【0012】
第1のモノマー混合物の重合は、モノマーからコポリマーへの実質的に完全な転化の手前の点まで又は別法として実質的に完全な転化まで実施できる。不完全な転化が望ましい場合には、得られる部分的に重合された種粒子は、有利なことに、その後の重合段階で更なる重合を開始できる遊離基源を含む。用語「遊離基源(free-radical source)」は、エチレン性不飽和モノマーの更なる重合を誘発できる遊離基、残留量の遊離基開始剤又は両者の存在を意味する。本発明のこのような態様においては、含まれるモノマーの重量に基づき、約20〜約95重量%の第1のモノマー混合物をコポリマーに転化させることが好ましく、約50〜約90重量%の第1のモノマー混合物をコポリマーに転化させることがより好ましい。遊離基源が存在するため、その後の重合段階における遊離基開始剤の使用は任意的となるであろう。第1のモノマー混合物の転化が実質的に完全な実施態様の場合には、その後の重合段階に遊離基開始剤を使用することが必要となり得る。
【0013】
遊離基開始剤は、エチレン性不飽和モノマーの重合において遊離基を発生させるための従来の開始剤の任意の1種又は組合せであることができる。代表的な開始剤は、紫外線及び化学開始剤、例えばアゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリルを含む)及び過酸素化合物(例えばベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオクトエート、t−ブチルパーベンゾエート及びイソプロピルパーカーボネート)である。他の好適な開始剤は、米国特許第4,192,921号、第4,246,386号及び第4,283,499号に記載されている。遊離基開始剤は、個々のモノマー混合物中でモノマーの重合を誘発するのに充分な量で使用する。この量が変化し得ることは当業者ならば理解でき、この量は一般に、使用する開始剤の型並びに重合されているモノマーの型及び割合によって異なる。一般に、モノマー混合物の総重量に基づき、約0.02〜約2重量%の量が適当である。
【0014】
種粒子の製造に使用する第1のモノマー混合物は、有利には、モノマーと実質的に非混和性の液体(例えば、好ましくは水)を含む撹拌懸濁媒内で懸濁させる。懸濁媒は、モノマー混合物及び懸濁媒の総重量に基づき、一般に約30〜約70重量%、好ましくは約35〜約50重量%の量で使用する。懸濁媒内におけるモノマー液滴の比較的均一な懸濁の保持を補助するために、従来から種々の沈殿防止剤が使用されている。例示的な沈殿防止剤は、ゼラチン、ポリビニルアルコール、水酸化マグネシウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース及びカルボキシメチルメチルセルロースである。他の好適な沈殿防止剤は、米国特許第4,419,245号に開示されている。使用する沈殿防止剤の量は、使用するモノマー及び沈殿防止剤によって大きく異なり得る。ラテックスの形成を最小限に抑えるために、ジクロム酸ナトリウムなどのラテックス阻害剤を使用できる。
【0015】
種粒子は任意の都合のよい大きさであることができる。一般に、種粒子は、望ましくは約75〜約1000ミクロン、好ましくは約150〜約800ミクロン、より好ましくは約200〜約600ミクロンの体積平均粒径を有する。粒径分布は、ガウス分布でも均一分布でもよい(例えば粒子の少なくとも90体積%が、体積平均粒径の約0.9〜約1.1倍の粒径を有する)。
【0016】
前述のように、コポリマー粒子は、複数の種粒子を用意し、その後に第2のモノマー混合物を加えて、混合物を種粒子に吸収させ且つ種粒子中で重合を行わせることによって、製造できる。この工程は、好ましくは、以下のような回分式播種法又は現場回分式播種法として実施する。第2のモノマー混合物は、米国特許第4,564,644号に記載されているような重合条件下で断続的又は連続的に添加することもできる。
【0017】
いわゆる「回分式播種(batch-seeded)」プロセスにおいては、約10〜約50重量%のコポリマーを含む種粒子を好ましくは連続懸濁媒内に懸濁させる。次いで、遊離基開始剤を含む第2のモノマー混合物を、懸濁された種粒子に添加して、種粒子に吸収させ、それから重合させる。それほど好ましくはないが、種粒子に第2のモノマー混合物を吸収させてから、連続懸濁媒中に懸濁させることもできる。第2のモノマー混合物は、一度に又は段階的に添加できる。第2のモノマー混合物は、好ましくは混合物が種粒子によって実質的に完全に吸収されるまで実質的に重合が起こらないような条件下において、種粒子に吸収させる。モノマーを実質的に吸収するのに必要な時間は、コポリマー種組成物及びそれに吸収されるモノマーによって異なる。しかし、吸収の程度は、一般に、種粒子又は懸濁媒、種粒子及びモノマー液滴の顕微鏡検査によって確認できる。第2のモノマー混合物は、第2のモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づき、望ましくは約0.5〜約25モル%、好ましくは約2〜約17モル%、より好ましくは約2.5〜約8.5モル%の架橋性モノマーを含み、残りの部分はモノビニリデンモノマーから構成され、架橋性モノマー及びモノビニリデンモノマーの選択は、第1のモノマー混合物の製造(即ち種の製造)に関連して前述したのと同じである。種の製造と同様に、好ましいモノビニリデンモノマーはスチレン及び/又は置換スチレンを含む。好ましい態様において、第2のポリマー成分(即ち第2のモノマー混合物又は「吸収」ポリマー成分)は、50モル%超、より好ましくは少なくとも75モル%(第2モノマー混合物の総モル含有量に基づく)のスチレン含有量を有する。好ましい態様において、第2のポリマー成分は、少なくとも75モル%のスチレン(及び/又はエチルビニルベンゼンなどの置換スチレン)及び約1〜20モル%のジビニルベンゼンを含む第2のモノマー混合物の重合によって得られる。
【0018】
現場回分式播種法においては、最初に、第1のモノマー混合物の懸濁重合によって、約10〜約80重量%のIPNコポリマー生成物を含む種粒子を形成する。種粒子は更なる重合を開始できる、前述のような遊離基源を含むことができる。種粒子が適正な遊離基源を含まない場合又は追加開始剤が望ましい場合には、任意的に、重合開始剤を第2のモノマー混合物と共に添加できる。この態様においては、種の製造段階とその後の重合段階とを単一反応器内で現場実施する。次に、第2のモノマー混合物を懸濁種粒子に添加し、種粒子に吸収させ、重合させる。第2のモノマー混合物は、重合条件下で添加することもできるが、別法として、混合物が種粒子によって実質的に完全に吸収されるまでは実質的に重合が起こらないような条件下で懸濁媒に添加することもできる。第2のモノマー混合物の組成は好ましくは、バッチ播種態様に関する前述の記載と一致する。
【0019】
エチレン性不飽和モノマーの重合に使用する条件は、当業界でよく知られている。一般に、モノマーは、所望の転化率を得るのに充分な時間、約50〜150℃の温度に保持する。典型的には、モノマーからコポリマーへの転化が実質的に完了するまで約60〜80℃の中間(intermediate)温度に保持し、その後に温度を上昇させて反応を完了させる。得られた多孔質コポリマー粒子は常法によって懸濁媒から回収できる。
【0020】
本発明のコポリマー粒子は、好ましくはスチレンなどのモノビニリデンモノマー、ジビニルベンゼンなどの架橋性モノマー、遊離基開始剤及び任意的な相分離希釈剤を含む微細有機相の懸濁重合によって製造する。架橋コポリマーはマクロ多孔質又はゲル型であることができるが、ゲル型コポリマーが好ましい。用語「ゲル型(gel-type)」及び「マクロ多孔質」は当業界でよく知られており、一般にコポリマー粒子多孔度の性質を記載している。当業界で一般的に用いられる用語「マクロ多孔質」は、コポリマーがマクロ孔とメソ細孔の両方を有することを意味する。用語「微孔質」、「ゲル状(gellular)」、「ゲル」及び「ゲル型」は、約20オングストローム(Å)未満の細孔径を有するコポリマー粒子を記載する同義語である。これに対して、マクロ多孔質コポリマー粒子は約20〜約500Åのメソ細孔と約500Å超のマクロ孔の両方を有する。ゲル型及び多孔質コポリマー粒子並びにそれらの製造については、米国特許第4,256,840号及び第5,244,926号に詳述されている。
【0021】
慣例としては、主題のイオン交換樹脂のポリマー成分は、それらが由来するモノマー含有量に換算して記載されている。記載されるポリマーに関して、モノマー含有量は、得られるポリマー(含有量と比の両方を含む)の正確な代用となる。即ち、実質的に全てのモノマー構成要素は、比を実質的に変化させずに重合する。従って、ポリマー成分のスチレン含有量への言及は、ポリマー成分が由来するモノマー混合物内のスチレン及び/又は置換スチレンのモル比を表すことがわかるであろう。
【0022】
主題のコポリマー粒子は好ましくは、メディアン(又は半数もしくは中間)粒径(median particle diameter)が300〜800ミクロンのビーズ構造を有する。架橋コポリマー粒子は、ガウス粒度分布を有することができるが、好ましくは比較的均一な粒度分布を有し、即ち単分散であり、ビーズの少なくとも90体積%が体積平均粒径の約0.9〜約1.1倍の粒径を有する。
【0023】
主題のコポリマーは、コポリマーのベンジル炭素に結合した窒素原子及び3つのアルキル基(各アルキル基は、独立に、炭素数が1〜8、好ましくは2〜6である)を含む第4級アンモニウム官能基を含む。1つの態様群において、各アルキル基の炭素数は1〜8であり、3個のアルキル基の全ての総炭素数は少なくとも5(例えばジメチルイソプロピル)、より好ましくは少なくとも6(例えばトリエチル、トリプロピルなど)、更に好ましくは少なくとも12(例えばトリブチル)である。例示として、式1は第4級アンモニウム官能基を含むスチレンポリマーの反復単位の構造式を示す。
【0024】
式1:
【化1】
【0025】
(式中、ベンジル炭素は芳香環のメタ、オルト又はパラ位に位置し(典型的には、これらの種の組合せを含むが、主としてパラ置換である)、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜8、好ましくは2〜6のアルキル基から選択される)。
各アルキル基(R1、R2及びR3)は、独立に、直鎖(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルなど)又は分岐鎖(例えばイソプロピル、イソブチルなど)であることができ、非置換であっても置換されていてもよい(例えばヒドロキシル又はアルコキシ基のような基で置換されていてもよい)。好ましい一態様において、3つのアルキル基(R1、R2及びR3)は、独立に、直鎖又は分岐鎖であることができる非置換アルキル基から選択される。別の態様において、3つのアルキル基はまとめてトリエチル、トリプロピル、トリブチル、トリペンチル、トリヘキシル及びジメチルイソプロピルから選択される。更に別の好ましい態様において、R1、R2及びR3は、それぞれ、n−ブチル基である、即ちアミン官能基はトリ−n−ブチルアミンである。更に別の態様において、主題のコポリマーは、第4級アンモニウム官能基の「混合種(mixed species)」を、例えばR1、R2及びR3は、それぞれ、n−ブチル基であるアンモニウム官能基とR1、R2及びR3の少なくとも1つがイソプロピルなどのn−ブチル以外の基から選択された異なるアンモニウム官能基とを含む。
【0026】
主題のコポリマーは、ハロアルキル化(例えばクロロメチル化)とそれに続くアミノ化(例えばトリブチルアミンなどの第3級アミンとの反応による)などの従来の方法(例えば米国特許第6,924,317号参照)によって官能化させることができる。種々の既知のハロアルキル化技術を使用できるが、クロロメチル化が好ましい。クロロメチル化のための具体的な手段及び条件は特には限定せず、多くの適用可能な技術がこの文献に報告されている。クロロメチル化は、典型的には、触媒の存在下で約15〜100℃、好ましくは35〜70℃の温度において約1〜8時間、コポリマーとクロロメチル化試薬とを合することによって実施する。好ましいクロロメチル化試薬は、クロロメチルメチルエーテル(CMME)であるが、ホルムアルデヒド、メタノール及び塩化水素又はクロロスルホン酸の組合せ(米国特許出願公開第2004/0256597号に記載)又は塩化水素とメチル化ホルマリンなどのCMME形成性試薬を含む他の試薬も使用できる。クロロメチル化試薬は、典型的には、コポリマー1モル当たり約0.5〜20モル、好ましくは約1.5〜8モルの量でコポリマーと合する。それほど好ましくはないが、ビスクロロメチルエーテル(BCME)、BCME−形成性試薬(例えばホルムアルデヒドと塩化水素)及び長鎖アルキルクロロメチルエーテル(米国特許第4,568,700号に記載)を含む(これらに限定されるものではないが)他のクロロメチル化試薬も使用できる。
【0027】
クロロメチル化反応の実施に有用な触媒はよく知られており、当業界においては「ルイス酸」又は「フリーデル・クラフツ」触媒と称されることが多い。非限定的な例としては、塩化亜鉛、酸化亜鉛、塩化第二鉄、酸化第二鉄、塩化錫、酸化錫、塩化チタン、塩化ジルコニウム、塩化アルミニウム及び硫酸並びにそれらの組み合わせが挙げられる。先行例においては、塩化物以外のハロゲンも使用できる。好ましい触媒は塩化第二鉄である。触媒は、典型的には、コポリマー反復単位モル当たり約0.01〜0.2モル、好ましくは約0.02〜0.1モルに相当する量で使用する。触媒は、塩化カルシウムなどの任意的な触媒補助剤(catalyst adjunct)及び四塩化珪素などの活性化剤と組合せて使用できる。望ましいクロロメチル化反応プロフィールを実現するために、1種より多い触媒を使用することもできる。
【0028】
クロロメチル化反応には、溶媒及び/又は膨潤剤も使用できる。適当な溶媒の例としては脂肪族炭化水素ハロゲン化物、例えば二塩化エチレン、ジクロロプロパン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル及びジイソアミルエーテルの1種又はそれ以上が挙げられるが、これらに限定するものではない。CMMEをクロロメチル化剤として用いる場合には、このような溶媒及び/又は膨潤剤は必要ないことが多い。
【0029】
ハロアルキル化後、コポリマーは、米国特許出願公開第2004/0256597号又は米国特許第4,564,644号若しくは同第6,924,317号に記載されているような従来の方法によってアミノ化させることができる。アミノ化はハロアルキル化樹脂(好ましくは予め洗浄したもの)とアミン溶液とを(好ましくはハロゲン化ベンジル基モル当たりアミン約0.5〜1.3モルの比で)、高温(例えば、典型的には、25〜150℃であるが、より好ましくは40〜85℃)において数時間(例えば、典型的には、2〜10時間)合することによって実施できる。その後、得られた溶液を冷却し、得られたアミノ化樹脂をデカントし、洗浄し、任意的に高温(例えば50〜90℃)において希塩酸中で処理することができる。本発明において、アミン種(species)は好ましくは第3級アミン、例えば、式1に関連して前述したR1、R2及びR3に相当する基から選択された3つのアルキル基を含む第3級アルキルアミンである。他種のアミン(例えば第2級アミン)を含む混合物と同様に、主題の第3級アミンの混合種(mixed species)も使用できる。アミン溶液は、アルコール(例えばメタノール)及び任意的な水のスラリー溶媒を含むことができ、任意的にメチラール又は二塩化エチレンなどの膨潤剤を含むことができる。アミン溶液は、任意的に、塩化ナトリウムなどの無機塩を含むことができる。更に、アミン溶液のpHは7又は僅かにアルカリ性に調整できる。
【0030】
一態様においては、コポリマーをCMMEと反応させ、得られたクロロメチル化コポリマーを洗浄し、続いてメタノール約35〜75重量%、メチラール20〜50重量%及び水5〜30重量%を含むアルコール系溶媒内でトリ−n−ブチルアミンと、コポリマーの塩化ベンジル基モル当たりアミン約0.9〜1.3モルの比で合する。反応混合物を約4〜10時間撹拌し、反応時間の大部分において約65〜85℃の温度及び約8.5〜12のpHに保持することができる。反応混合物のpHは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム又は水酸化カリウムなどの塩基の定期的な添加によって保持できる。難溶性塩基(例えば水酸化カルシウム)又は比較的弱い塩基(例えば炭酸ナトリウム)の場合には、反応混合物のpHは、アミノ化開始時に塩基の全て又は大部分を添加することによって保持できる。転化率を改善し且つコポリマービーズの破壊を回避するためには、反応混合物のpHを監視しなければならず、指定範囲外へのpHの逸脱を最小限に抑えなければならない。
【0031】
本発明の方法は、一般に、水源を主題のイオン交換樹脂(即ち官能化コポリマー)と接触させる工程を含むが、いくつかの特定の態様も本発明の範囲内に含まれる。例えば、いくつかの態様においては、イオン交換樹脂はクロムが多量に取り込まれた後に再生させることができる。このような態様は、高濃度(例えば約50,000μg/L超)のクロムを含む、工業プロセスに使用された水源の処理と一致し、その後の使用のためにクロムを回収できる。他の態様において、イオン交換樹脂は、クロムが多量に取り込まれた後に、再生せずに廃棄処分(例えば埋め立て地への埋設処分)又は破壊(例えば焼却)する。これらの非再生態様は、地下水、排出前の廃水及び飲用水(drinking water)用の水の処理などの、比較的低濃度(例えば約50,000μg/L未満、より一般的には約5000μg/L未満)のクロムを含む水源の処理と一致する。このような態様においては、クロム含有再生液体の処理及び取り扱いを回避できる。樹脂を含む装置又は容器は特には限定せず、具体的な用途、操作の規模、水源及びクロム濃度によって異なり得る。適用可能な態様の例は、数立方メーターのイオン交換樹脂を含むカラム型床から、イオン交換樹脂を数キログラムしか含まない使い捨てカートリッジまで幅広い。
【0032】
本発明は、イオン交換樹脂との接触前に水源を酸性化する(pHを低下させる)任意的な工程を含むことができるが、いくつかの態様においては、この方法は、pH6、6.5、6.8、7又はそれ以上での、一部の態様では更にはpH7.5又はそれ以上での水源の処理を含む(水源をpH調整に供するか否かにかかわらず)。他の態様において、この方法は、イオン交換樹脂との接触前に水のpHを低下させる工程を含まない。
【0033】
用語「水源」は、工業プロセス、農業プロセス又は製造プロセスと関連するような水性液体、都市水道水源並びに地下水及び地表水(例えば湖、小川、川、流出水(run-off)、帯水層(aquifer)など)を広範に記載するものである。本発明は、飲料水(potable water)及び飲用水用の水源の処理に特に有用である。一態様において、水源は約10〜50,000μg/Lのクロムの処理前濃度を有し、別の態様において、水源は約10〜5000μg/Lのクロムの処理前濃度を有する。用語「処理前濃度」は、主題の方法による処理の前の水源のクロム濃度を記載するものである。一部の態様において、このような水源は、主題の方法の前に、他の手段によって前処理することができる。
【0034】
一態様において、主題のコポリマーは、コポリマーのベンジル炭素に結合した窒素原子と3つのn−ブチル基を含む第4級アンモニウム官能基を含む。この種の第4級アンモニウム官能化コポリマーは、第4級アンモニウム官能基を含む他種のコポリマーと比較して、ウランイオンに対する選択性が予想外に低い。結果として、この種の第4級アンモニウム官能化コポリマーは、水源がウラン及びクロムを含む用途において好ましい場合がある。このようなコポリマーは、ウランに対する相対的親和力が比較的低く、従って特殊な処理手段を用いずにより容易に廃棄処分できることが多いので、優れている。
【実施例】
【0035】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図し、添付した「特許請求の範囲」の範囲を限定するものと解してはならない。いくつかのイオン交換樹脂を、概ね2mg/Lのクロム、50mg/Lの硫酸ナトリウム及び150mg/Lの塩化ナトリウムを含む供給材料水溶液を用いて種々のpH条件下で試験した。供給材料水溶液は、脱イオン水を用いて調製した。pHの調整には、1N NaOH溶液を用いた。
【0036】
最初に、各樹脂をすすぎ、濾過した。約1gの各イオン交換樹脂を個別の1000ml三角フラスコに入れた。次に、試験溶液(750mlのCr(VI)を含む)を各フラスコに加え、平衡に達するまで数日間撹拌した。次いで、各フラスコ内の試験溶液の残留クロムを、誘導結合プラズマ質量分析法(inductively coupled plasma mass spectrometry)によって分析した。検査機器のクロム検出限界は0.01mg/Lであった。各試験溶液の個別のpH及びクロム濃度を、試験時間及び結果と共に以下の表Iに示す。
【0037】
DOWEX(商標)1、DOWEX(商標)PSR−2及びDOWEX(商標)PSR−3銘柄のイオン交換樹脂は、全て、The Dow Chemical Companyから入手した。DOWEX(商標)1銘柄の樹脂は第4級アンモニウム官能基(即ちトリメチルアミンによるアミノ化によって得られた官能基)を有する架橋スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスを含む強塩基ゲル型樹脂である。DOWEX(商標)PSR−2銘柄の樹脂は第4級アンモニウム官能基(即ちトリ−n−ブチルアミンによるアミノ化によって得られた官能基)を有する架橋スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスを含む強塩基ゲル型樹脂である。DOWEX(商標)PSR−3銘柄の樹脂は第4級アンモニウム官能基(即ちトリ−n−ブチルアミンによるアミノ化によって得られた官能基)を有する架橋スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスを含む強塩基マクロ多孔質樹脂である。
【0038】
2種のサンプルIPNイオン交換樹脂(IPNサンプル1及び2)も試験に用いた。これらのサンプルはいずれも、第4級アンモニウム官能基(即ちトリ−n−ブチルアミンによるアミノ化によって得られた官能基)を有する架橋スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスを含む強塩基ゲル型樹脂であった。前パラグラフに記載したDOWEX(商標)銘柄のイオン交換樹脂とは異なり、IPNサンプル樹脂は、前述した並びに米国特許第4,564,644号、同第5,244,926号及び同第4,444,961号に記載された従来の「播種」懸濁重合技術を用いて製造した。より具体的には、米国特許第4,444,961号に一般的に記載された反応装置を用いて、米国特許第5,244,926号の例3に一般的に記載された反応条件下で、概ね0.5重量%のジビニルベンゼン、0.4重量%のエチルビニルベンゼンを含み、残りのモノマーがスチレンである第1のモノマー混合物を使用して、平均粒径が220ミクロンのゲル型架橋コポリマーの種を製造した。
【0039】
次に、米国特許第4,564,644号に記載された方法に従って、得られた架橋コポリマーの種(seed)を用いてIPNコポリマービーズを製造した。2種のIPNコポリマー(サンプル1及び2)を、サンプル2では括弧内に示された違いがあるが、同様な配合に従って製造した。サンプル1は、約23重量部(サンプル2は約17重量部)の架橋コポリマーの種を、撹拌機を装着し且つ種粒子の懸濁に十分な水を含むステンレス鋼反応器に加えることによって、製造した。撹拌しながら、反応器に第2のモノマー混合物を加えた。第2のモノマー混合物は、約3重量部(サンプル2は約3.5重量部)のジビニルベンゼン、2.4重量部(サンプル2は約2.8重量部)のエチルビニルベンゼン、0.1重量部のt−ブチルパーオクトエート、0.03重量部のt−ブチル−パーベンゾエートを含み、残りのモノマーがスチレンであった。この混合物に、15重量部の0.75wt%メチルヒドロキシエチルセルロース水溶液も加えた。次に、総モノマー/コポリマー(即ちコポリマーの種及び第2モノマー混合物)対水性相の重量比が約1:1となるような量で、水を加えた。反応混合物を約75〜80℃に加熱し、約3時間保持した。その後、概ね4重量部のジビニルベンゼン、3重量部のエチルビニルベンゼンを含み、残りのモノマーがスチレンである第3のモノマー混合物を加えた。第3のモノマー混合物は、約10時間にわたって、一定速度で反応器に供給した。次いで、反応混合物を約90℃に更に1.5時間加熱した後、約1.5時間、110℃に昇温させた。
【0040】
各サンプルの得られたIPNコポリマーに対する各ポリマー成分の近似重量寄与率は次の通りであった:サンプル1:種ポリマー成分から22%、吸収ポリマー成分から27%、コン−アド(con-add)ポリマー成分から51%;サンプル2:種ポリマー成分から20%、吸収ポリマー成分から25%、コン−アドポリマー成分から55%。
【0041】
続いて、塩化第二鉄(約8〜11重量部)の存在下で、各IPNコポリマーサンプル約100重量部を過剰のクロロメチルメチルエーテル(約500〜650重量部)と合することによって、2種のIPNコポリマーサンプルをクロロメチル化し、約50〜60℃の温度において約4時間還流させた。次いで得られた各クロロメチル化IPNコポリマーサンプル50gずつを洗浄し、容器中でメタノール/メチラール/水(容量比40/40/20)を含む溶媒約300mlと合した。IPNコポリマーサンプルを周囲温度において約30分間平衡化させ、その後にトリ−n−ブチルアミン40mlを、苛性アルカリ(ビーズ型)0.1gと共に加えた。容器をシールし、約80℃まで加熱し、約6時間振盪した。次いで、容器を冷却し、得られたアミノ化IPNサンプルイオン交換樹脂を混合物から濾過によって取り出し、脱イオン水で数回洗浄後、7%HCl溶液で数回、最後に脱イオン水で数回洗浄した。
【0042】
【表1】
【0043】
表Iのデータから示されるように、IPNサンプルイオン交換樹脂は、広範囲のpH値にわたって、改善されたクロム結合能力を示した。おそらく最も予想外だったのは、主題のIPNサンプル樹脂が、中性及びアルカリ性のpH値において改善された結合能力を示したことである。
【0044】
本発明の原理は種々の変更形態及び代替形態に適用できるが、実施例及び詳細な説明としては特定の種(species)を記載した。この記載の意図が、記載された特定の態様に本発明を限定することにあるのではなく、開示の精神及び範囲の範囲内に入る全ての変更形態、均等形態及び代替形態を包含することにあることを理解すべきである。本発明の多くの態様を記載したが、場合によっては、一部の態様、選択、範囲、構成要素又は他の特徴を「好ましい」と特徴付けた。「好ましい」特徴の特徴付けを、このような特徴を本発明に必要である、必須である又は不可欠であると見なすものと解してはならない。いくつかの特徴及び下位組合せ(sub-combination)は、他の特徴及び下位組合せとは無関係に、役立ち、使用できることがわかるであろう。数値範囲への言及は、このような範囲の端点を明確に含む。本明細書中に記載した架橋コポリマーは、本明細書中に記載したアミノ化反応の範囲を超えて更に官能化させ得ることがわかるであろう。例えば、このようなコポリマーを、第1級アミン又は第2級アミンなどの、記載した以外のアミン種で更にアミノ化することができる。
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン交換樹脂及びそれらの水からのクロムの除去への使用に関する。
【背景技術】
【0002】
クロムは、地下水及び地表水を含む多くの水源中に存在する。6価クロムは、種々の形態(例えばHCrO4-、CrO42-及びCrO72-)で、広範囲のpH値にわたって溶解する。その結果として、効果的なクロム除去技術の数は限られている。従来の方法の1つは、第4級アンモニウム官能基(functionality)(即ちクロロメチル化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスとトリメチルアミンとの反応によって生成された官能基)を有する架橋スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスを含む強塩基ゲル型樹脂であるDOWEX(商標)1銘柄のイオン交換樹脂などのイオン交換樹脂による処理である。クロムの除去に使用されているイオン交換樹脂の他の例としては、カルボン酸官能基を有するアクリル樹脂マトリックスを含むマクロ多孔質樹脂であるDOWEX(商標)MAC−3銘柄のイオン交換樹脂;第4級アンモニウム官能基(即ちクロロメチル化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスとジメチルエタノールアミンとの反応によって生成された官能基)を有するスチレン−ジビニルベンゼンマトリックスを含むゲル型樹脂であるDOWEX(商標)SAR銘柄のイオン交換樹脂;及びビス−ピコリルアミンとの反応によって生成されたキレート化基を有するスチレン−ジビニルベンゼンマトリックスを含むマクロ多孔質キレート樹脂であるDOWEX(商標)M4195銘柄のイオン交換樹脂が挙げられる(これらは全てThe Dow Chemical Companyから市販されている)。イオン交換樹脂の他の型、例えば第2級アミンで官能化されたフェノール−ホルムアルデヒド及びエポキシポリアミンもまた、クロム除去への使用が知られている。
【0003】
競合イオン(例えば塩化物イオン、硫酸イオン、炭酸水素イオンなど)の存在下では、イオン交換樹脂のクロム除去能は、典型的には、酸性のpH値において、例えば典型的にはpH6.3未満において改善される。結果として、従来の処理計画は、イオン交換樹脂による処理前に、水源のpHを低下させることを含む。例えば(1)非特許文献1及び(2)非特許文献2参照。イオン交換処理の前に水源のpHを低下させる工程は時間がかかり、コストもかかる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Ion Exchange Technology-Advances in Pollution Control、A.Sengupta編、Technomic Publishing Co.(1995年)、Lancaster PA(ISBN No.1-56676-241-3)(特にChapter 3、「Chromate Ion Exchange」)
【非特許文献2】Ion Exchange Developments and Applications,Proceedings of IEX ’96、J.A.Greig編、The Royal Society of Chemistry(1996年)、Cambridge UK(ISBN 0-85404-726-3)(特に、388〜395頁、H.K.S.Tan著、「Kinetics of Chromic Acid Removal by Anion Exchange」)。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、イオン交換樹脂及びそれらの水からのクロム除去への使用を含む。一態様において、本発明は、水をイオン交換樹脂と接触させることによって水源からクロムを除去する方法であって、前記イオン交換樹脂が、それぞれが50モル%超のスチレン含量と第4級アンモニウム官能基とを有する少なくとも2種のポリマー成分(component)の相互侵入ポリマーネットワーク(internepetrating polymer network)(IPN)を含む架橋コポリマーの粒子を含む方法を含む。多くの更なる態様を開示する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、イオン交換樹脂及びそれらの水からのクロム除去への使用を含む。用語「イオン交換樹脂」は、化学処理によってイオン交換能を有する官能基が結合又は形成された架橋コポリマー粒子を広範に記載するものである。用語「官能化」は、イオン交換基、即ち、「官能基(functional group)」を結合させるために架橋コポリマー樹脂を化学処理する方法(例えばスルホン化、ハロアルキル化、アミノ化など)を指す。架橋コポリマーは基材又はポリマー主鎖の役割を果たし、官能基は周囲の流動媒体とイオンを交換できる活性部位の役割を果たす。本発明は、特に、相互侵入ポリマーネットワーク(IPN)を含む架橋コポリマーを含む種類のイオン交換樹脂を対象とする。用語「相互侵入ポリマーネットワーク」は、少なくとも1種のポリマーが他のポリマーの存在下で合成及び/又は架橋された、それぞれがネットワークの形態の少なくとも2種のポリマーを含む材料を記載するものとする。ポリマーネットワークは互いに物理的に絡み合い、一部の態様では、共有結合もしている場合がある。特徴的には、IPNは膨潤するが、溶媒中に溶解することもないし、加熱時に流動することもない。IPNを含むイオン交換樹脂は、長年にわたって市販されており、複数のポリマー成分の製造を含む周知の技術によって製造されることができる。このような樹脂の例はそれらの製造技術と共に、米国特許第4,419,245号、第4,564,644号、第4,582,859号、第5,834,524号、第6,251,996号及び第6,924,317号並びに米国特許出願公開第2002/0042450号に示されている。IPNゲル型イオン交換樹脂の市販例は、Ion Exchange at the Millennium-Proceedings of IEX 2000、JA Greg編、Imperial College Press、London(2000年)に記載されている。
【0007】
本明細書中に記載した用語「ポリマー成分」は、別個の重合工程から得られたポリマー物質を指す。例えば本発明の好ましい一態様において、主題のIPNイオン交換樹脂は「播種された(seeded)」樹脂である;即ち、最初にコポリマー(好ましくは架橋コポリマー)の種を形成し、続いてモノマーを吸収させ(imbibe)、続いて重合させる播種法によって、樹脂が形成される。続いて、重合プロセスにおいて、追加モノマーを添加することができる(即ち、「連続添加」又は「コン−アド(con−ad)」)。種粒子の形成は、別個のポリマー成分をもたらす。同様に、モノマー混合物を種中に吸収させて重合させるプロセス工程は、更に別のポリマー成分をもたらす。使用する場合には、種を「生長させる」のに一般に使用されるモノマー混合物のその後の連続添加も、別個のポリマー成分をもたらす。本明細書中に具体的に記載した以外は、各ポリマー成分の構成要素(constituent)は同一でも異なっていてもよい。更に、重合工程の間に用いるモノマー混合物は均一である必要はない;即ち、モノマーの比及び型はさまざまであってよい。用語「ポリマー成分」は、得られる樹脂が、相互侵入ポリマーネットワーク以外の特定の形態を有することを意味するものではないが、本発明の樹脂は、米国再発行特許第34,112号に記載されているような「コア−シェル」型構造を有することができる。本発明の各ポリマー成分は、好ましくは最終IPNコポリマー粒子の約5重量%超、より好ましくは少なくとも10重量%を占める。典型的には、本発明の樹脂は2種又は3種のポリマー成分、例えば種(seed)成分、吸収(imbibe)成分及び/又は連続添加成分を含む。当業者ならば、ポリマー成分の異なる又は追加の組合せを使用できる、例えば多数のコン−アド成分を使用できることがわかるであろう。第1、第2、第3などのポリマー成分は、必ずしも添加順序には対応しない。即ち、「第1のポリマー成分」は、最初に重合されたポリマー成分、例えば種粒子に必ずしも相当しない。用語「第1の」、「第2の」などは、成分を互いに区別するためにのみ用い、添加順序を示すためには用いていない。
【0008】
前述のように、本発明の樹脂は、好ましくは播種(seeded)重合によって生成させる。連続的又は半連続的段階重合(semi-continuous staged polymerization)として知られる播種重合は、米国特許第4,419,245号、第4,564,644号及び第5,244,926号に一般的に記載されている。播種重合法は、典型的には、モノマーを2つ又はそれ以上のインクレメントで添加する。各インクレメントの添加後、インクレメント中のモノマーを完全に又は実質的に重合させてから、次のインクレメントを添加する。播種重合は、有利には、モノマー又はモノマーと種粒子との混合物を連続懸濁媒内に分散させて、その中で重合させる懸濁重合として実施する。このような方法において、段階重合は、モノマーの初期懸濁液を形成させ、モノマーを完全に又は部分的に重合させて種粒子を形成し、その後に1つ又はそれ以上のインクレメントで残りのモノマーを添加することによって、容易に実施できる。各インクレメントは、一度に又は連続的に添加できる。モノマーは懸濁媒中には不溶であるが種粒子内には可溶であるので、モノマーは、種粒子によって吸収され、その中で重合される。多段重合技術は、各段階に使用するモノマーの量及び型並びに使用する重合条件によって異なり得る。
【0009】
使用する種粒子は、周知の懸濁重合技術によって製造できる。一般的に、種粒子は、F.Helfferichによって、Ion Exchange(McGraw-Hill 1962年)の35〜36頁に記載されているように、撹拌連続懸濁媒中で第1のモノマー混合物の懸濁液を形成することによって製造できる。第1のモノマー混合物は、1)第1のモノビニリデンモノマー、2)第1の架橋性モノマー及び3)有効量の第1の遊離基開始剤を含む。懸濁媒は、当業界で一般的に使用される1種又はそれ以上の沈殿防止剤(suspending agent)を含むことができる。重合は、懸濁液を一般に約50〜90℃の温度に加熱することによって開始する。懸濁液を、モノマーからコポリマーへの所望の転化率に達するまで、このような温度又は任意的に上昇させた90〜150℃の温度に保持する。他の適当な重合法は、米国特許第4,444,961号、第4,623,706号、第4,666,673号及び第5,244,926号に記載されている。
【0010】
ここで使用するモノビニリデンモノマーはよく知られており、Polymer Processes、Calvin E.Schildknecht編、1956年、Interscience Publishers,Inc.(New York)出版、Chapter III、「Polymerization in Suspension」、69〜109頁を参照する。この文献の表II(78〜81頁)は、本発明の実施に好適な種々の型のモノマーを記載している。記載されたモノマーのうち、スチレン及び置換スチレンなどのモノビニリデン芳香族炭化水素を含む水不溶性モノビニリデンモノマーが好ましい。用語「置換スチレン」は、スチレンのビニリデン基及びフェニル基の一方又は両者の置換基を含み、その例としては、ビニルナフタレン、α−アルキル置換スチレン(例えばα−メチルスチレン)、アルキレン置換スチレン(特にモノアルキル置換スチレン、例えばビニルトルエン及びエチルビニルベンゼン)及びハロ置換スチレン、例えばブロモ又はクロロスチレン及びビニルベンジルクロリドが挙げられる。他の適用可能なモノマーとしては、モノビニリデン非スチレン系モノマー、例えばα,β−エチレン性不飽和カルボン酸、特にアクリル酸又はメタクリル酸のエステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸エチル、並びにブタジエン、エチレン、プロピレン、アクリロニトリル及び塩化ビニル、更に1種又はそれ以上の前記モノマーの混合物が挙げられる。好ましいモノビニリデンモノマーとしては、スチレン及びエチルビニルベンゼンなどの置換スチレンが挙げられる。用語「モノビニリデンモノマー」は、均一モノマー混合物及び異なる型のモノマーの混合物、例えばスチレンとメタクリル酸イソボルニルとの混合物を含むものとする。種ポリマー成分は、好ましくは50モル%超(総モル含有量に基づく)、より好ましくは75モル%超のスチレン含量を含む。用語「スチレン含量」は、コポリマーの形成に使用されたスチレン及び/又は置換スチレンのモノビニリデンモノマー単位の量を指す。「置換スチレン」は、前述のように、スチレンのビニリデン基及びフェニル基の一方又は両者の置換基を含む。好ましい態様において、第1のポリマー成分(例えば種)の形成に使用する第1のモノマー混合物は、少なくとも75モル%、一部の態様では少なくとも85モル%のスチレンを含む。
【0011】
好適な架橋性モノマー(即ちポリビニリデン化合物)の例としては、ポリビニリデン芳香族炭化水素、例えばジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、ジビニルナフタレン、トリビニルベンゼン、ジビニルジフェニルエーテル、ジビニルジフェニルスルホン並びに種々のアルキレンジアクリレート及びアルキレンジメタクリレートが挙げられる。好ましい架橋性モノマーは、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン及びエチレングリコールジメタクリレートである。用語「架橋剤(crosslinking agent)」、「クロスリンカー(crossliker)」及び「架橋性モノマー」は、本明細書中では同義語として使用し、1種類の架橋剤と、種々の型の架橋剤の組合せとを共に含むものとする。コポリマー種粒子中の架橋性モノマーの割合は、好ましくは粒子をその後の重合工程において(且つまた、イオン交換樹脂への転化時に)不溶性にするが、任意的な相分離希釈剤及び第2のモノマー混合物のモノマーの適正な吸収をそれでもなお可能にするのに充分なものである。一部の態様においては、架橋性モノマーは、使用しない。一般に、種粒子中の架橋性モノマーの好適な量は少量であり、即ち種粒子の製造に使用する第1のモノマー混合物中のモノマーの総モルに基づき、望ましくは約0.01〜約5モル%、好ましくは約0.1〜約2.5モル%である。好ましい一態様において、第1のポリマー成分(例えば種)は、少なくとも85モル%のスチレン(又はエチルビニルベンゼンなどの置換スチレン)と約0.01〜約5モル%のジビニルベンゼンとを含む第1のモノマー混合物の重合によって得られる。
【0012】
第1のモノマー混合物の重合は、モノマーからコポリマーへの実質的に完全な転化の手前の点まで又は別法として実質的に完全な転化まで実施できる。不完全な転化が望ましい場合には、得られる部分的に重合された種粒子は、有利なことに、その後の重合段階で更なる重合を開始できる遊離基源を含む。用語「遊離基源(free-radical source)」は、エチレン性不飽和モノマーの更なる重合を誘発できる遊離基、残留量の遊離基開始剤又は両者の存在を意味する。本発明のこのような態様においては、含まれるモノマーの重量に基づき、約20〜約95重量%の第1のモノマー混合物をコポリマーに転化させることが好ましく、約50〜約90重量%の第1のモノマー混合物をコポリマーに転化させることがより好ましい。遊離基源が存在するため、その後の重合段階における遊離基開始剤の使用は任意的となるであろう。第1のモノマー混合物の転化が実質的に完全な実施態様の場合には、その後の重合段階に遊離基開始剤を使用することが必要となり得る。
【0013】
遊離基開始剤は、エチレン性不飽和モノマーの重合において遊離基を発生させるための従来の開始剤の任意の1種又は組合せであることができる。代表的な開始剤は、紫外線及び化学開始剤、例えばアゾ化合物(アゾビスイソブチロニトリルを含む)及び過酸素化合物(例えばベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオクトエート、t−ブチルパーベンゾエート及びイソプロピルパーカーボネート)である。他の好適な開始剤は、米国特許第4,192,921号、第4,246,386号及び第4,283,499号に記載されている。遊離基開始剤は、個々のモノマー混合物中でモノマーの重合を誘発するのに充分な量で使用する。この量が変化し得ることは当業者ならば理解でき、この量は一般に、使用する開始剤の型並びに重合されているモノマーの型及び割合によって異なる。一般に、モノマー混合物の総重量に基づき、約0.02〜約2重量%の量が適当である。
【0014】
種粒子の製造に使用する第1のモノマー混合物は、有利には、モノマーと実質的に非混和性の液体(例えば、好ましくは水)を含む撹拌懸濁媒内で懸濁させる。懸濁媒は、モノマー混合物及び懸濁媒の総重量に基づき、一般に約30〜約70重量%、好ましくは約35〜約50重量%の量で使用する。懸濁媒内におけるモノマー液滴の比較的均一な懸濁の保持を補助するために、従来から種々の沈殿防止剤が使用されている。例示的な沈殿防止剤は、ゼラチン、ポリビニルアルコール、水酸化マグネシウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース及びカルボキシメチルメチルセルロースである。他の好適な沈殿防止剤は、米国特許第4,419,245号に開示されている。使用する沈殿防止剤の量は、使用するモノマー及び沈殿防止剤によって大きく異なり得る。ラテックスの形成を最小限に抑えるために、ジクロム酸ナトリウムなどのラテックス阻害剤を使用できる。
【0015】
種粒子は任意の都合のよい大きさであることができる。一般に、種粒子は、望ましくは約75〜約1000ミクロン、好ましくは約150〜約800ミクロン、より好ましくは約200〜約600ミクロンの体積平均粒径を有する。粒径分布は、ガウス分布でも均一分布でもよい(例えば粒子の少なくとも90体積%が、体積平均粒径の約0.9〜約1.1倍の粒径を有する)。
【0016】
前述のように、コポリマー粒子は、複数の種粒子を用意し、その後に第2のモノマー混合物を加えて、混合物を種粒子に吸収させ且つ種粒子中で重合を行わせることによって、製造できる。この工程は、好ましくは、以下のような回分式播種法又は現場回分式播種法として実施する。第2のモノマー混合物は、米国特許第4,564,644号に記載されているような重合条件下で断続的又は連続的に添加することもできる。
【0017】
いわゆる「回分式播種(batch-seeded)」プロセスにおいては、約10〜約50重量%のコポリマーを含む種粒子を好ましくは連続懸濁媒内に懸濁させる。次いで、遊離基開始剤を含む第2のモノマー混合物を、懸濁された種粒子に添加して、種粒子に吸収させ、それから重合させる。それほど好ましくはないが、種粒子に第2のモノマー混合物を吸収させてから、連続懸濁媒中に懸濁させることもできる。第2のモノマー混合物は、一度に又は段階的に添加できる。第2のモノマー混合物は、好ましくは混合物が種粒子によって実質的に完全に吸収されるまで実質的に重合が起こらないような条件下において、種粒子に吸収させる。モノマーを実質的に吸収するのに必要な時間は、コポリマー種組成物及びそれに吸収されるモノマーによって異なる。しかし、吸収の程度は、一般に、種粒子又は懸濁媒、種粒子及びモノマー液滴の顕微鏡検査によって確認できる。第2のモノマー混合物は、第2のモノマー混合物中のモノマーの総重量に基づき、望ましくは約0.5〜約25モル%、好ましくは約2〜約17モル%、より好ましくは約2.5〜約8.5モル%の架橋性モノマーを含み、残りの部分はモノビニリデンモノマーから構成され、架橋性モノマー及びモノビニリデンモノマーの選択は、第1のモノマー混合物の製造(即ち種の製造)に関連して前述したのと同じである。種の製造と同様に、好ましいモノビニリデンモノマーはスチレン及び/又は置換スチレンを含む。好ましい態様において、第2のポリマー成分(即ち第2のモノマー混合物又は「吸収」ポリマー成分)は、50モル%超、より好ましくは少なくとも75モル%(第2モノマー混合物の総モル含有量に基づく)のスチレン含有量を有する。好ましい態様において、第2のポリマー成分は、少なくとも75モル%のスチレン(及び/又はエチルビニルベンゼンなどの置換スチレン)及び約1〜20モル%のジビニルベンゼンを含む第2のモノマー混合物の重合によって得られる。
【0018】
現場回分式播種法においては、最初に、第1のモノマー混合物の懸濁重合によって、約10〜約80重量%のIPNコポリマー生成物を含む種粒子を形成する。種粒子は更なる重合を開始できる、前述のような遊離基源を含むことができる。種粒子が適正な遊離基源を含まない場合又は追加開始剤が望ましい場合には、任意的に、重合開始剤を第2のモノマー混合物と共に添加できる。この態様においては、種の製造段階とその後の重合段階とを単一反応器内で現場実施する。次に、第2のモノマー混合物を懸濁種粒子に添加し、種粒子に吸収させ、重合させる。第2のモノマー混合物は、重合条件下で添加することもできるが、別法として、混合物が種粒子によって実質的に完全に吸収されるまでは実質的に重合が起こらないような条件下で懸濁媒に添加することもできる。第2のモノマー混合物の組成は好ましくは、バッチ播種態様に関する前述の記載と一致する。
【0019】
エチレン性不飽和モノマーの重合に使用する条件は、当業界でよく知られている。一般に、モノマーは、所望の転化率を得るのに充分な時間、約50〜150℃の温度に保持する。典型的には、モノマーからコポリマーへの転化が実質的に完了するまで約60〜80℃の中間(intermediate)温度に保持し、その後に温度を上昇させて反応を完了させる。得られた多孔質コポリマー粒子は常法によって懸濁媒から回収できる。
【0020】
本発明のコポリマー粒子は、好ましくはスチレンなどのモノビニリデンモノマー、ジビニルベンゼンなどの架橋性モノマー、遊離基開始剤及び任意的な相分離希釈剤を含む微細有機相の懸濁重合によって製造する。架橋コポリマーはマクロ多孔質又はゲル型であることができるが、ゲル型コポリマーが好ましい。用語「ゲル型(gel-type)」及び「マクロ多孔質」は当業界でよく知られており、一般にコポリマー粒子多孔度の性質を記載している。当業界で一般的に用いられる用語「マクロ多孔質」は、コポリマーがマクロ孔とメソ細孔の両方を有することを意味する。用語「微孔質」、「ゲル状(gellular)」、「ゲル」及び「ゲル型」は、約20オングストローム(Å)未満の細孔径を有するコポリマー粒子を記載する同義語である。これに対して、マクロ多孔質コポリマー粒子は約20〜約500Åのメソ細孔と約500Å超のマクロ孔の両方を有する。ゲル型及び多孔質コポリマー粒子並びにそれらの製造については、米国特許第4,256,840号及び第5,244,926号に詳述されている。
【0021】
慣例としては、主題のイオン交換樹脂のポリマー成分は、それらが由来するモノマー含有量に換算して記載されている。記載されるポリマーに関して、モノマー含有量は、得られるポリマー(含有量と比の両方を含む)の正確な代用となる。即ち、実質的に全てのモノマー構成要素は、比を実質的に変化させずに重合する。従って、ポリマー成分のスチレン含有量への言及は、ポリマー成分が由来するモノマー混合物内のスチレン及び/又は置換スチレンのモル比を表すことがわかるであろう。
【0022】
主題のコポリマー粒子は好ましくは、メディアン(又は半数もしくは中間)粒径(median particle diameter)が300〜800ミクロンのビーズ構造を有する。架橋コポリマー粒子は、ガウス粒度分布を有することができるが、好ましくは比較的均一な粒度分布を有し、即ち単分散であり、ビーズの少なくとも90体積%が体積平均粒径の約0.9〜約1.1倍の粒径を有する。
【0023】
主題のコポリマーは、コポリマーのベンジル炭素に結合した窒素原子及び3つのアルキル基(各アルキル基は、独立に、炭素数が1〜8、好ましくは2〜6である)を含む第4級アンモニウム官能基を含む。1つの態様群において、各アルキル基の炭素数は1〜8であり、3個のアルキル基の全ての総炭素数は少なくとも5(例えばジメチルイソプロピル)、より好ましくは少なくとも6(例えばトリエチル、トリプロピルなど)、更に好ましくは少なくとも12(例えばトリブチル)である。例示として、式1は第4級アンモニウム官能基を含むスチレンポリマーの反復単位の構造式を示す。
【0024】
式1:
【化1】
【0025】
(式中、ベンジル炭素は芳香環のメタ、オルト又はパラ位に位置し(典型的には、これらの種の組合せを含むが、主としてパラ置換である)、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1〜8、好ましくは2〜6のアルキル基から選択される)。
各アルキル基(R1、R2及びR3)は、独立に、直鎖(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルなど)又は分岐鎖(例えばイソプロピル、イソブチルなど)であることができ、非置換であっても置換されていてもよい(例えばヒドロキシル又はアルコキシ基のような基で置換されていてもよい)。好ましい一態様において、3つのアルキル基(R1、R2及びR3)は、独立に、直鎖又は分岐鎖であることができる非置換アルキル基から選択される。別の態様において、3つのアルキル基はまとめてトリエチル、トリプロピル、トリブチル、トリペンチル、トリヘキシル及びジメチルイソプロピルから選択される。更に別の好ましい態様において、R1、R2及びR3は、それぞれ、n−ブチル基である、即ちアミン官能基はトリ−n−ブチルアミンである。更に別の態様において、主題のコポリマーは、第4級アンモニウム官能基の「混合種(mixed species)」を、例えばR1、R2及びR3は、それぞれ、n−ブチル基であるアンモニウム官能基とR1、R2及びR3の少なくとも1つがイソプロピルなどのn−ブチル以外の基から選択された異なるアンモニウム官能基とを含む。
【0026】
主題のコポリマーは、ハロアルキル化(例えばクロロメチル化)とそれに続くアミノ化(例えばトリブチルアミンなどの第3級アミンとの反応による)などの従来の方法(例えば米国特許第6,924,317号参照)によって官能化させることができる。種々の既知のハロアルキル化技術を使用できるが、クロロメチル化が好ましい。クロロメチル化のための具体的な手段及び条件は特には限定せず、多くの適用可能な技術がこの文献に報告されている。クロロメチル化は、典型的には、触媒の存在下で約15〜100℃、好ましくは35〜70℃の温度において約1〜8時間、コポリマーとクロロメチル化試薬とを合することによって実施する。好ましいクロロメチル化試薬は、クロロメチルメチルエーテル(CMME)であるが、ホルムアルデヒド、メタノール及び塩化水素又はクロロスルホン酸の組合せ(米国特許出願公開第2004/0256597号に記載)又は塩化水素とメチル化ホルマリンなどのCMME形成性試薬を含む他の試薬も使用できる。クロロメチル化試薬は、典型的には、コポリマー1モル当たり約0.5〜20モル、好ましくは約1.5〜8モルの量でコポリマーと合する。それほど好ましくはないが、ビスクロロメチルエーテル(BCME)、BCME−形成性試薬(例えばホルムアルデヒドと塩化水素)及び長鎖アルキルクロロメチルエーテル(米国特許第4,568,700号に記載)を含む(これらに限定されるものではないが)他のクロロメチル化試薬も使用できる。
【0027】
クロロメチル化反応の実施に有用な触媒はよく知られており、当業界においては「ルイス酸」又は「フリーデル・クラフツ」触媒と称されることが多い。非限定的な例としては、塩化亜鉛、酸化亜鉛、塩化第二鉄、酸化第二鉄、塩化錫、酸化錫、塩化チタン、塩化ジルコニウム、塩化アルミニウム及び硫酸並びにそれらの組み合わせが挙げられる。先行例においては、塩化物以外のハロゲンも使用できる。好ましい触媒は塩化第二鉄である。触媒は、典型的には、コポリマー反復単位モル当たり約0.01〜0.2モル、好ましくは約0.02〜0.1モルに相当する量で使用する。触媒は、塩化カルシウムなどの任意的な触媒補助剤(catalyst adjunct)及び四塩化珪素などの活性化剤と組合せて使用できる。望ましいクロロメチル化反応プロフィールを実現するために、1種より多い触媒を使用することもできる。
【0028】
クロロメチル化反応には、溶媒及び/又は膨潤剤も使用できる。適当な溶媒の例としては脂肪族炭化水素ハロゲン化物、例えば二塩化エチレン、ジクロロプロパン、ジクロロメタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル及びジイソアミルエーテルの1種又はそれ以上が挙げられるが、これらに限定するものではない。CMMEをクロロメチル化剤として用いる場合には、このような溶媒及び/又は膨潤剤は必要ないことが多い。
【0029】
ハロアルキル化後、コポリマーは、米国特許出願公開第2004/0256597号又は米国特許第4,564,644号若しくは同第6,924,317号に記載されているような従来の方法によってアミノ化させることができる。アミノ化はハロアルキル化樹脂(好ましくは予め洗浄したもの)とアミン溶液とを(好ましくはハロゲン化ベンジル基モル当たりアミン約0.5〜1.3モルの比で)、高温(例えば、典型的には、25〜150℃であるが、より好ましくは40〜85℃)において数時間(例えば、典型的には、2〜10時間)合することによって実施できる。その後、得られた溶液を冷却し、得られたアミノ化樹脂をデカントし、洗浄し、任意的に高温(例えば50〜90℃)において希塩酸中で処理することができる。本発明において、アミン種(species)は好ましくは第3級アミン、例えば、式1に関連して前述したR1、R2及びR3に相当する基から選択された3つのアルキル基を含む第3級アルキルアミンである。他種のアミン(例えば第2級アミン)を含む混合物と同様に、主題の第3級アミンの混合種(mixed species)も使用できる。アミン溶液は、アルコール(例えばメタノール)及び任意的な水のスラリー溶媒を含むことができ、任意的にメチラール又は二塩化エチレンなどの膨潤剤を含むことができる。アミン溶液は、任意的に、塩化ナトリウムなどの無機塩を含むことができる。更に、アミン溶液のpHは7又は僅かにアルカリ性に調整できる。
【0030】
一態様においては、コポリマーをCMMEと反応させ、得られたクロロメチル化コポリマーを洗浄し、続いてメタノール約35〜75重量%、メチラール20〜50重量%及び水5〜30重量%を含むアルコール系溶媒内でトリ−n−ブチルアミンと、コポリマーの塩化ベンジル基モル当たりアミン約0.9〜1.3モルの比で合する。反応混合物を約4〜10時間撹拌し、反応時間の大部分において約65〜85℃の温度及び約8.5〜12のpHに保持することができる。反応混合物のpHは、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム又は水酸化カリウムなどの塩基の定期的な添加によって保持できる。難溶性塩基(例えば水酸化カルシウム)又は比較的弱い塩基(例えば炭酸ナトリウム)の場合には、反応混合物のpHは、アミノ化開始時に塩基の全て又は大部分を添加することによって保持できる。転化率を改善し且つコポリマービーズの破壊を回避するためには、反応混合物のpHを監視しなければならず、指定範囲外へのpHの逸脱を最小限に抑えなければならない。
【0031】
本発明の方法は、一般に、水源を主題のイオン交換樹脂(即ち官能化コポリマー)と接触させる工程を含むが、いくつかの特定の態様も本発明の範囲内に含まれる。例えば、いくつかの態様においては、イオン交換樹脂はクロムが多量に取り込まれた後に再生させることができる。このような態様は、高濃度(例えば約50,000μg/L超)のクロムを含む、工業プロセスに使用された水源の処理と一致し、その後の使用のためにクロムを回収できる。他の態様において、イオン交換樹脂は、クロムが多量に取り込まれた後に、再生せずに廃棄処分(例えば埋め立て地への埋設処分)又は破壊(例えば焼却)する。これらの非再生態様は、地下水、排出前の廃水及び飲用水(drinking water)用の水の処理などの、比較的低濃度(例えば約50,000μg/L未満、より一般的には約5000μg/L未満)のクロムを含む水源の処理と一致する。このような態様においては、クロム含有再生液体の処理及び取り扱いを回避できる。樹脂を含む装置又は容器は特には限定せず、具体的な用途、操作の規模、水源及びクロム濃度によって異なり得る。適用可能な態様の例は、数立方メーターのイオン交換樹脂を含むカラム型床から、イオン交換樹脂を数キログラムしか含まない使い捨てカートリッジまで幅広い。
【0032】
本発明は、イオン交換樹脂との接触前に水源を酸性化する(pHを低下させる)任意的な工程を含むことができるが、いくつかの態様においては、この方法は、pH6、6.5、6.8、7又はそれ以上での、一部の態様では更にはpH7.5又はそれ以上での水源の処理を含む(水源をpH調整に供するか否かにかかわらず)。他の態様において、この方法は、イオン交換樹脂との接触前に水のpHを低下させる工程を含まない。
【0033】
用語「水源」は、工業プロセス、農業プロセス又は製造プロセスと関連するような水性液体、都市水道水源並びに地下水及び地表水(例えば湖、小川、川、流出水(run-off)、帯水層(aquifer)など)を広範に記載するものである。本発明は、飲料水(potable water)及び飲用水用の水源の処理に特に有用である。一態様において、水源は約10〜50,000μg/Lのクロムの処理前濃度を有し、別の態様において、水源は約10〜5000μg/Lのクロムの処理前濃度を有する。用語「処理前濃度」は、主題の方法による処理の前の水源のクロム濃度を記載するものである。一部の態様において、このような水源は、主題の方法の前に、他の手段によって前処理することができる。
【0034】
一態様において、主題のコポリマーは、コポリマーのベンジル炭素に結合した窒素原子と3つのn−ブチル基を含む第4級アンモニウム官能基を含む。この種の第4級アンモニウム官能化コポリマーは、第4級アンモニウム官能基を含む他種のコポリマーと比較して、ウランイオンに対する選択性が予想外に低い。結果として、この種の第4級アンモニウム官能化コポリマーは、水源がウラン及びクロムを含む用途において好ましい場合がある。このようなコポリマーは、ウランに対する相対的親和力が比較的低く、従って特殊な処理手段を用いずにより容易に廃棄処分できることが多いので、優れている。
【実施例】
【0035】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図し、添付した「特許請求の範囲」の範囲を限定するものと解してはならない。いくつかのイオン交換樹脂を、概ね2mg/Lのクロム、50mg/Lの硫酸ナトリウム及び150mg/Lの塩化ナトリウムを含む供給材料水溶液を用いて種々のpH条件下で試験した。供給材料水溶液は、脱イオン水を用いて調製した。pHの調整には、1N NaOH溶液を用いた。
【0036】
最初に、各樹脂をすすぎ、濾過した。約1gの各イオン交換樹脂を個別の1000ml三角フラスコに入れた。次に、試験溶液(750mlのCr(VI)を含む)を各フラスコに加え、平衡に達するまで数日間撹拌した。次いで、各フラスコ内の試験溶液の残留クロムを、誘導結合プラズマ質量分析法(inductively coupled plasma mass spectrometry)によって分析した。検査機器のクロム検出限界は0.01mg/Lであった。各試験溶液の個別のpH及びクロム濃度を、試験時間及び結果と共に以下の表Iに示す。
【0037】
DOWEX(商標)1、DOWEX(商標)PSR−2及びDOWEX(商標)PSR−3銘柄のイオン交換樹脂は、全て、The Dow Chemical Companyから入手した。DOWEX(商標)1銘柄の樹脂は第4級アンモニウム官能基(即ちトリメチルアミンによるアミノ化によって得られた官能基)を有する架橋スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスを含む強塩基ゲル型樹脂である。DOWEX(商標)PSR−2銘柄の樹脂は第4級アンモニウム官能基(即ちトリ−n−ブチルアミンによるアミノ化によって得られた官能基)を有する架橋スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスを含む強塩基ゲル型樹脂である。DOWEX(商標)PSR−3銘柄の樹脂は第4級アンモニウム官能基(即ちトリ−n−ブチルアミンによるアミノ化によって得られた官能基)を有する架橋スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスを含む強塩基マクロ多孔質樹脂である。
【0038】
2種のサンプルIPNイオン交換樹脂(IPNサンプル1及び2)も試験に用いた。これらのサンプルはいずれも、第4級アンモニウム官能基(即ちトリ−n−ブチルアミンによるアミノ化によって得られた官能基)を有する架橋スチレン−ジビニルベンゼンコポリマーマトリックスを含む強塩基ゲル型樹脂であった。前パラグラフに記載したDOWEX(商標)銘柄のイオン交換樹脂とは異なり、IPNサンプル樹脂は、前述した並びに米国特許第4,564,644号、同第5,244,926号及び同第4,444,961号に記載された従来の「播種」懸濁重合技術を用いて製造した。より具体的には、米国特許第4,444,961号に一般的に記載された反応装置を用いて、米国特許第5,244,926号の例3に一般的に記載された反応条件下で、概ね0.5重量%のジビニルベンゼン、0.4重量%のエチルビニルベンゼンを含み、残りのモノマーがスチレンである第1のモノマー混合物を使用して、平均粒径が220ミクロンのゲル型架橋コポリマーの種を製造した。
【0039】
次に、米国特許第4,564,644号に記載された方法に従って、得られた架橋コポリマーの種(seed)を用いてIPNコポリマービーズを製造した。2種のIPNコポリマー(サンプル1及び2)を、サンプル2では括弧内に示された違いがあるが、同様な配合に従って製造した。サンプル1は、約23重量部(サンプル2は約17重量部)の架橋コポリマーの種を、撹拌機を装着し且つ種粒子の懸濁に十分な水を含むステンレス鋼反応器に加えることによって、製造した。撹拌しながら、反応器に第2のモノマー混合物を加えた。第2のモノマー混合物は、約3重量部(サンプル2は約3.5重量部)のジビニルベンゼン、2.4重量部(サンプル2は約2.8重量部)のエチルビニルベンゼン、0.1重量部のt−ブチルパーオクトエート、0.03重量部のt−ブチル−パーベンゾエートを含み、残りのモノマーがスチレンであった。この混合物に、15重量部の0.75wt%メチルヒドロキシエチルセルロース水溶液も加えた。次に、総モノマー/コポリマー(即ちコポリマーの種及び第2モノマー混合物)対水性相の重量比が約1:1となるような量で、水を加えた。反応混合物を約75〜80℃に加熱し、約3時間保持した。その後、概ね4重量部のジビニルベンゼン、3重量部のエチルビニルベンゼンを含み、残りのモノマーがスチレンである第3のモノマー混合物を加えた。第3のモノマー混合物は、約10時間にわたって、一定速度で反応器に供給した。次いで、反応混合物を約90℃に更に1.5時間加熱した後、約1.5時間、110℃に昇温させた。
【0040】
各サンプルの得られたIPNコポリマーに対する各ポリマー成分の近似重量寄与率は次の通りであった:サンプル1:種ポリマー成分から22%、吸収ポリマー成分から27%、コン−アド(con-add)ポリマー成分から51%;サンプル2:種ポリマー成分から20%、吸収ポリマー成分から25%、コン−アドポリマー成分から55%。
【0041】
続いて、塩化第二鉄(約8〜11重量部)の存在下で、各IPNコポリマーサンプル約100重量部を過剰のクロロメチルメチルエーテル(約500〜650重量部)と合することによって、2種のIPNコポリマーサンプルをクロロメチル化し、約50〜60℃の温度において約4時間還流させた。次いで得られた各クロロメチル化IPNコポリマーサンプル50gずつを洗浄し、容器中でメタノール/メチラール/水(容量比40/40/20)を含む溶媒約300mlと合した。IPNコポリマーサンプルを周囲温度において約30分間平衡化させ、その後にトリ−n−ブチルアミン40mlを、苛性アルカリ(ビーズ型)0.1gと共に加えた。容器をシールし、約80℃まで加熱し、約6時間振盪した。次いで、容器を冷却し、得られたアミノ化IPNサンプルイオン交換樹脂を混合物から濾過によって取り出し、脱イオン水で数回洗浄後、7%HCl溶液で数回、最後に脱イオン水で数回洗浄した。
【0042】
【表1】
【0043】
表Iのデータから示されるように、IPNサンプルイオン交換樹脂は、広範囲のpH値にわたって、改善されたクロム結合能力を示した。おそらく最も予想外だったのは、主題のIPNサンプル樹脂が、中性及びアルカリ性のpH値において改善された結合能力を示したことである。
【0044】
本発明の原理は種々の変更形態及び代替形態に適用できるが、実施例及び詳細な説明としては特定の種(species)を記載した。この記載の意図が、記載された特定の態様に本発明を限定することにあるのではなく、開示の精神及び範囲の範囲内に入る全ての変更形態、均等形態及び代替形態を包含することにあることを理解すべきである。本発明の多くの態様を記載したが、場合によっては、一部の態様、選択、範囲、構成要素又は他の特徴を「好ましい」と特徴付けた。「好ましい」特徴の特徴付けを、このような特徴を本発明に必要である、必須である又は不可欠であると見なすものと解してはならない。いくつかの特徴及び下位組合せ(sub-combination)は、他の特徴及び下位組合せとは無関係に、役立ち、使用できることがわかるであろう。数値範囲への言及は、このような範囲の端点を明確に含む。本明細書中に記載した架橋コポリマーは、本明細書中に記載したアミノ化反応の範囲を超えて更に官能化させ得ることがわかるであろう。例えば、このようなコポリマーを、第1級アミン又は第2級アミンなどの、記載した以外のアミン種で更にアミノ化することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水をイオン交換樹脂と接触させることによって水源からクロムを除去する方法であって、前記イオン交換樹脂が、それぞれが50モル%超のスチレン含量と第4級アンモニウム官能基とを有する、少なくとも2種のポリマー成分の相互侵入ポリマーネットワーク(IPN)を含む架橋コポリマーの粒子を含んでなる方法。
【請求項2】
前記架橋コポリマーが75モル%超のスチレン含量を有する前記請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記第4級アンモニウム官能基がコポリマーのベンジル炭素に結合した窒素原子と3個のアルキル基とを含み、その各アルキル基が置換されていても非置換でもよい前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記第4級アンモニウム官能基がコポリマーのベンジル炭素に結合した窒素原子と3個のアルキル基とを含み、各アルキル基が独立に炭素数2〜6である前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記第4級アンモニウム官能基がコポリマーのベンジル炭素に結合した窒素原子と3個のアルキル基とを含み、前記アルキル基がトリエチル、トリプロピル、トリブチル、トリペンチル、トリヘキシル及びジメチルイソプロピルから選択される前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記第4級アンモニウム官能基がコポリマーのベンジル炭素に結合した窒素原子と3つのn−ブチル基とを含む前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記架橋コポリマーがゲル型コポリマーを含む前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記水源が10μg/L〜5000μg/Lのクロムを含む前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記水が、イオン交換樹脂との接触時に、7又はそれ以上のpHを有する前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記イオン交換樹脂との接触前に、水のpHを低下させる工程を含まない前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項1】
水をイオン交換樹脂と接触させることによって水源からクロムを除去する方法であって、前記イオン交換樹脂が、それぞれが50モル%超のスチレン含量と第4級アンモニウム官能基とを有する、少なくとも2種のポリマー成分の相互侵入ポリマーネットワーク(IPN)を含む架橋コポリマーの粒子を含んでなる方法。
【請求項2】
前記架橋コポリマーが75モル%超のスチレン含量を有する前記請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記第4級アンモニウム官能基がコポリマーのベンジル炭素に結合した窒素原子と3個のアルキル基とを含み、その各アルキル基が置換されていても非置換でもよい前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記第4級アンモニウム官能基がコポリマーのベンジル炭素に結合した窒素原子と3個のアルキル基とを含み、各アルキル基が独立に炭素数2〜6である前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記第4級アンモニウム官能基がコポリマーのベンジル炭素に結合した窒素原子と3個のアルキル基とを含み、前記アルキル基がトリエチル、トリプロピル、トリブチル、トリペンチル、トリヘキシル及びジメチルイソプロピルから選択される前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記第4級アンモニウム官能基がコポリマーのベンジル炭素に結合した窒素原子と3つのn−ブチル基とを含む前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記架橋コポリマーがゲル型コポリマーを含む前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記水源が10μg/L〜5000μg/Lのクロムを含む前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記水が、イオン交換樹脂との接触時に、7又はそれ以上のpHを有する前記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記イオン交換樹脂との接触前に、水のpHを低下させる工程を含まない前記いずれかの請求項に記載の方法。
【公表番号】特表2012−515083(P2012−515083A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546248(P2011−546248)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/067410
【国際公開番号】WO2010/082990
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/067410
【国際公開番号】WO2010/082990
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】
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