説明

相互関係誤差を校正するデバイスおよび方法

本発明は、ダウンリンク・チャネル応答HDLを測定するステップと、アップリンク・チャネル応答HULを測定するステップと、相互関係モデル
【数1】


に従い、HDLおよびHULに基づき、最小二乗LS判断基準を利用して、ユーザ機器相互関係誤差Eおよび基地局相互関係誤差Eのうちの1つを計算するステップと、最小平均二乗誤差MMSE判断基準を採用するアルゴリズムを利用して、EおよびEのうちの計算された1つに基づいてEおよびEのうちの他方を計算するステップと、計算されたユーザ機器相互関係誤差Eおよび計算された基地局相互関係誤差Eを利用して相互関係誤差校正動作を実行するステップとを含む、相互関係誤差校正の方法を提供する。さらに、相互関係誤差校正法を実行する相互関係誤差校正デバイスが提供される。本発明による相互関係誤差校正法および相互関係誤差校正デバイスは、よりよい相互関係誤差校正性能を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムに関し、特に相互関係誤差校正(reciprocity error calibration)デバイスおよび相互関係誤差校正法に関する。
【背景技術】
【0002】
チャネル相互関係は、時分割多重TDDシステムの主要な特徴の1つであり、ほとんどのTDD(たとえば、TD−SCDMA、WiMAX、WiFiなど)システムで重要な役割を演じ、さまざまな高度な信号処理(ビームフォーミング、MIMO、送信ダイバーシティなど)の実施を可能にする。実際には、トランシーバ不整合、モビリティに起因するドップラ効果、非対称干渉などを含む複数の要因が、アップリンクおよびダウンリンクの相互関係誤差に影響する。アンテナ・アレイ相互関係誤差校正を介して相互関係誤差を減らすことが要求される。
【0003】
合同処理方法(たとえば、coordinated multi−point processing、CoMP)の使用に起因して、校正方法の精度に関する要件が、より厳しくなる。たとえば、文献[2]に記載の従来の校正方法は、合同処理の性能要件を満足することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Jian Liu他、「OFDM−MIMO WLAN AP Front−end Gain and Phase Mismatch Calibration」、Proc.IEEE RAWCON、2004年9月。
【非特許文献2】A.Bourdoux、B.Come、およびN.Khaled、「Non−reciprocal transceivers in OFDM/SDMA Systems:Impact and Mitigation」、Proc.IEEE Radio and Wireless Conference、米国マサチューセッツ州ボストン、2003年8月、183〜186頁。
【非特許文献3】LTEおよびLTE−Aに関する3GPP RAN1技術文書、R1−094622、2009年。
【非特許文献4】LTEおよびLTE−Aに関する3GPP RAN1技術文書、R1−093026、2009年。
【非特許文献5】LTEおよびLTE−Aに関する3GPP RAN1技術文書、R1−080494、2009年。
【非特許文献6】LTEおよびLTE−Aに関する3GPP RAN1技術文書、R1−090563、2009年。
【非特許文献7】LTEおよびLTE−Aに関する3GPP RAN1技術文書、R1−093378、2009年。
【非特許文献8】LTEおよびLTE−Aに関する3GPP RAN1技術文書、R1−094623、2009年。
【非特許文献9】LTEおよびLTE−Aに関する3GPP RAN1技術文書、R1−100932。
【非特許文献10】J.Proakis、「Digital Communications」、McGraw−Hill Science、4 edition、2000年8月15日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明によって解決されなければならない技術的問題は、最適性能を達成できる校正方法を提供することである。この方法は、より高い頑健さおよび高い精度を有し、TDDシステムの高度な処理、たとえばビームフォーミング、MU−MIMO、およびCoMPなどのために適用され得る。
【0006】
参考文献
1.Jian Liu他、「OFDM−MIMO WLAN AP Front−end Gain and Phase Mismatch Calibration」、Proc.IEEE RAWCON、2004年9月。
2.A.Bourdoux、B.Come、およびN.Khaled、「Non−reciprocal transceivers in OFDM/SDMA Systems:Impact and Mitigation」、Proc.IEEE Radio and Wireless Conference、米国マサチューセッツ州ボストン、2003年8月、183〜186頁。
3.LTEおよびLTE−Aに関する3GPP RAN1技術文書、R1−094622、R1−093026、R1−080494、R1−090563、R1−093378、R1−094623、2009年。
4.LTEおよびLTE−Aに関する3GPP RAN1技術文書、R1−100932。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、ダウンリンク・チャネル応答HDLを測定するステップと、アップリンク・チャネル応答HULを測定するステップと、相互関係モデル
【0008】
【数1】

に従い、HDLおよびHULに基づき、最小二乗LS判断基準を利用して、ユーザ機器相互関係誤差Eおよび基地局相互関係誤差Eのうちの1つを計算するステップと、最小平均二乗誤差MMSE判断基準を採用するアルゴリズムを利用して、EおよびEのうちの計算された1つに基づいてEおよびEのうちの他方を計算するステップと、計算されたユーザ機器相互関係誤差Eおよび計算された基地局相互関係誤差Eを利用して相互関係誤差校正動作を実行するステップとを含む、相互関係誤差校正の方法が提供される。
【0009】
好ましくは、LS判断基準を採用するアルゴリズムは、初等最小二乗(elementary□least□square)ELSアルゴリズムである。
【0010】
好ましくは、MMSE判断基準を採用するアルゴリズムは、行列最小二乗MLSアルゴリズムおよび行列MMSEアルゴリズムのうちの1つである。
【0011】
好ましくは、方法は、MMSE判断基準を採用するさらなるアルゴリズムを利用して、EおよびEのうちの計算された他方に従って、
【0012】
【数2】

に基づいてEおよびEのうちの1つを更新するステップをさらに含む。
【0013】
好ましくは、MMSE判断基準を採用するさらなるアルゴリズムは、行列最小二乗MLSアルゴリズムおよび行列MMSEアルゴリズムのうちの1つである。
【0014】
好ましくは、方法は、ユーザ機器または基地局で実行される。
【0015】
本発明の第2の態様によれば、ダウンリンク・チャネル応答HDLを測定するように構成されたダウンリンク測定モジュールと、アップリンク・チャネル応答HULを測定するように構成されたアップリンク測定モジュールと、相互関係モデル
【0016】
【数3】

に従い、HDLおよびHULに基づき、最小二乗LS判断基準を利用して、ユーザ機器相互関係誤差Eおよび基地局相互関係誤差Eのうちの1つを計算するように構成されたLS計算モジュールと、最小平均二乗誤差MMSE判断基準を採用するアルゴリズムを利用して、EおよびEのうちの計算された1つに基づいてEおよびEのうちの他方を計算するように構成されたMMSE計算モジュールと、計算されたユーザ機器相互関係誤差Eおよび計算された基地局相互関係誤差Eを利用して相互関係誤差校正動作を実行するように構成された相互関係誤差校正モジュールとを含む、相互関係誤差校正のデバイスが提供される。
【0017】
本発明の実施形態によれば、単一セルまたはCoMPシナリオに適用可能なTDDシステム用のUE/eNB相互関係校正解決策が提供される。本発明の実施形態による相互関係誤差校正法および相互関係誤差校正デバイスは、よりよい相互関係誤差校正を提供し、特に正常に動作するSNR範囲内で、チャネル相互関係ベースのTDDシステムの性能を改善することができる。
【0018】
本発明の上記および他の目的、特徴、および利益は、添付図面に関連して下で説明される好ましい実施形態を介してより明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】自己校正回路を備える従来のTDDシステムを示す構造図である。
【図2】従来の無線校正対応TDDシステム内の基地局eNBおよびユーザ機器UEの構造と、その間の校正シグナリングとを示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態によるシステム・モデルを示す概略ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態による相互関係誤差校正法を示す流れ図である。
【図5】本発明の実施形態による相互関係誤差校正デバイスを示すブロック図である。
【図6】本発明の実施形態による相互関係誤差校正法と従来の相互関係誤差校正法とを比較するシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の複数の実施形態を説明する。後続の説明は、これらの実施形態を完全に理解するための詳細を提供する。しかし、本発明を詳細の一部なしで実施することもできることが、当業者によって理解されるであろう。さらに、いくつかの既知の構造または機能が、本発明の複数の実施形態に関する関連する描写を不必要に不明瞭にしないように詳細に図示されまたは説明されない場合がある。
【0021】
アップリンク(UL)/ダウンリンク(DL)チャネル相互関係は、TDDシステムの主要な特徴の1つである。しかし、UEおよびeNB内の送信(TX)/受信(RX)ラジオ周波数(RF)回路不整合、モビリティに起因するドップラ非対称、およびUEとeNBとの間の推定アルゴリズム誤差が、ULとDLとの間のチャネル相互関係が必ずしも常に存在しないことを引き起こす可能性がある。したがって、アンテナ・アレイ相互関係誤差校正が、さまざまな状況の下での必要を満足するために要求される。
【0022】
自己校正(Self Cal)は、エアインターフェース・シグナリングを必要とせず、全帯域の正確なRF不整合校正を提供でき、したがって、多くのTDDシステムで展開されてきた。無線校正(OTA Cal)は、純粋にソフトウェアの校正であり、通常はハードウェア・サポートを全く必要としない。最も重要なことに、無線校正は、分散アンテナ・システムでの絶対相互関係測定を必要とせず、したがって、OTA Calは、3GPP LTE−Aコミュニティから大きい関心を引き付けてきた。
【0023】
本発明をよりよく理解するために、従来技術の自己校正方法および無線校正方法を、まず短く説明する。
【0024】
図1に、自己校正回路を備える従来のTDDシステムの構造図を示す。図1では、TXおよびRXは、それぞれ送信器および受信器を表し、CTXおよびRTXは、それぞれ校正送信器および校正受信器を表し、TRスイッチは、送信/受信スイッチを表し、ベース・バンドは、ベース・バンド処理回路を表す。図1は、主に、基地局eNB側での相互関係校正を示す。次の狭帯域変数を定義することができる。
1,i 第iアンテナのTX校正ループからの測定された応答
2,i 第iアンテナのRX校正ループからの測定された応答
bt,i 基地局の第iアンテナのTX応答
br,i 基地局の第iアンテナのRX応答
ct 校正されたTX応答
cr 校正されたRX応答
【0025】
従来の基地局eNB側での自己校正プロセスを、次の式を使用して記述することができる。
(A1)チャネル応答の測定
1,i=hbt,icr
2,i=hctbr,i
(B1)第iアンテナの相互関係の計算
【0026】
【数4】

ただし、
【0027】
【数5】

(C1)相対相互関係の正規化および入手
【0028】
【数6】

ここで、
【0029】
【数7】

を、eNBの基準相互関係として選択することができ、
【0030】
【数8】

を、第iアンテナの校正重みとして選択することができる。
【0031】
以下では、従来の無線校正を、図2を参照して説明する。
【0032】
図2に、従来の無線校正対応TDDシステム内の基地局eNBおよびユーザ機器UEの構造と、その間の校正シグナリングとの概略図を示す。TXおよびRXは、それぞれ送信器および受信器を表し、TRスイッチは、送信/受信スイッチを表す。次の変数を定義することができる。
1,i 第iアンテナのTX校正ループからの測定された応答
2,i 第iアンテナのRX校正ループからの測定された応答
bt,i 基地局の第iアンテナのTX応答
br,i 基地局の第iアンテナのRX応答
mt UEのTX応答
mt UEのTX応答
mr UEのRX応答
ai,i 第iアンテナのエア・インターフェース応答
【0033】
従来の無線校正プロセスを、次の式を使用して説明する。
(A2)チャネル応答の測定
1,i=hbt,iai,imr
2,i=hmtai,ibr,i
(B2)第iアンテナの相互的の計算
【0034】
【数9】

ただし、
【0035】
【数10】

(c2)相対相互関係の正規化および入手
【0036】
【数11】

ここで、
【0037】
【数12】

を、eNBの基準相互関係として選択することができ、
【0038】
【数13】

を、第iアンテナの校正重みとして選択することができる。
【0039】
coordinated multi−point(CoMP)処理システムなどの分散アンテナ・システムについて、地理的に分離されたアンテナ要素の間でRFパイロットを送信することは、通常は実用的ではない。この場合には、従来の自己校正方法が、実現不能になるはずであるが、バックホール・シグナリングの助けを得た改善された自己校正または無線校正を使用することができる(文献[3]を参照されたい)。
【0040】
TDD CoMPの従来の校正解決策について、グローバル基準相互関係を送信するために、論理チャネルをeNBでeNBリンク(たとえば、X.2)に割り当てなければならない。自己校正ベースのTDDシステムについて、グローバル基準を、ある校正されたTX応答/RX応答の絶対相互関係とすることができる。無線校正ベースのTDDシステムについて、グローバル基準を、校正に参加するeNBの任意のアンテナ分岐の測定された相互関係とすることができる(文献[3]を参照されたい)。
【0041】
一般性を失わずに、図2に示されているように、無線校正は、位置集中(location−centralized)アンテナ・アレイを有するシステムに直接的であると仮定される。新技術を、たとえばUEとして校正送信器(1つまたは複数)、エア・インターフェース・チャネルとしてハードウェア校正ネットワークをとることと、必要な場合にバックホール・リンクを介してグローバル基準を交換することとによって、集合的に配置されたアンテナ・アレイ・システムまたは分散アンテナ・アレイ・システムのいずれかで分散無線校正システムまたは自己校正シナリオに直接に拡張することができる。
【0042】
無線相互関係校正について、UEに対するそのハードウェア優位に起因して、アップリンク・チャネルおよびダウンリンク・チャネルの測定値を収集し、相互関係校正重みを計算する責任を負うのは、通常、eNBである。以下では、校正動作がeNB内で実行されると仮定するが、これは、UE内で校正を実行する可能性を除外することを意図するのではない(文献[4]を参照されたい)。本発明は、UEで校正を実行するシナリオに同等に適用可能である。
【0043】
文献[1]と[2]との両方に、異なるシステムに関する集合的自己校正の技術的解決策が記載されている。文献[3]は、LTEシステムおよびLTE−Aシステムの無線校正の技術的解決策を提案する。異なる実施方法が、異なる文献で異なる応用例について提供されるが、測定されたアップリンク・チャネル相互関係誤差を介してダウンリンク・チャネル相互関係誤差を推定するためまたは測定されたダウンリンク・チャネル相互関係誤差を介してアップリンク・チャネル相互関係誤差を推定するためにそれによって採用される基本的概念。言い替えると、目的は、単純なドット除算(dot−division)に基づいて最小二乗LS誤差を保証することである。
【0044】
最小二乗LS判断基準を採用するアルゴリズムの利益は、計算の単純さに存する。しかし、二乗による誤差の推定は、システム性能の損失を引き起こすので、このアルゴリズムは、最適性能を達成することができない。
【0045】
性能を最適化するために、UE側とBS側との両方の相互関係誤差を同時に校正しなければならない。本発明の基本的なアイデアは、既知の校正アルゴリズム(たとえば、LS判断基準を採用するアルゴリズム)に従ってアップリンク(ダウンリンク)チャネルの相互関係校正されたチャネル応答を計算した後に、相互関係誤差を推定するのにより最適の判断基準を採用するアルゴリズムを使用することに存する。本発明のアイデアを、無線校正と自己校正との両方に適用することができる。
【0046】
本発明のアイデアでは、より最適の判断基準を、最小平均二乗誤差(MMSE)判断基準とすることができ、より最適の判断基準を採用するアルゴリズムを、たとえば行列最小二乗(matrix least−square、MLS)アルゴリズムおよび行列MMSEアルゴリズムとすることができる。
【0047】
新しい校正方法を導出するために、本発明の実施形態によるより実用的で実現可能な相互関係誤差校正プロセスを、[LTEおよびLTE−Aに関する3GPP RAN1技術文書、R1−094622]モデルに基づいて説明する。
【0048】
図3に、本発明の実施形態によるシステム・モデルの概略ブロック図を示す。
【0049】
無線送信機は、無線受信器のRF回路とは異なるRF回路を有する。アンテナの間の結合効果が、アンテナ・ユニット自体の応答に対して相対的に弱いと仮定する。RFチャネルの有効チャネル応答H∈{Hbr,Hbt,Hmr,Hmt}を、「近似対角」特徴を有する行列、たとえば、
【0050】
【数14】

としてモデル化することができ、ここで、任意のi≠j、i,j=1,…,Lについて、|hii|>>|hij|かつ|hii|>>|hji|であり、Lは、校正に参加するアンテナの個数である。eNBのアンテナの個数がNであり、UEのアンテナの個数がMであると仮定すると、eNBについて、L=Nであり、UEについて、L=Mである。eNBとUEとの両方を含むRF経路を通って進むことによって、信号によって経験されるアップリンクおよびダウンリンクの実際のチャネルは、
DL=HmrAI,DLbt
UL=HbrAI,ULmt (2)
である。
【0051】
仮説1) アップリンク送信およびダウンリンク送信は、チャネル・コヒーレンス時間内、たとえば
【0052】
【数15】

である。
【0053】
仮説2) Hbr、Hbt、Hmr、Hmtは、すべてが最大階数行列であり、たとえば、H∈{Hbr,Hbt,Hmr,Hmt}について、rank(H)=Lであり、HmrおよびHmtについて、L=Mであるが、HbrおよびHbtについて、L=Nである。
【0054】
上の仮説を上の2つの式に適用することによって、
【0055】
【数16】

が導出される。
【0056】
【数17】

を定義することによって、
【0057】
【数18】

が導出される。式(5)は、実際のアップリンクとダウンリンクとの間の相互関係のモデルを提供する。
【0058】
相互関係誤差校正の目的は、eNB側相互関係誤差EおよびUE側相互関係誤差Eを計算し、これらを適用して、HDLとHULとの間の相互関係を保証するためにHDLを予測するのにHULを使用するためおよびその逆のためにユーザ信号を補償することである。
【0059】
アップリンク・チャネル測定パイロットおよびダウンリンク・チャネル測定パイロットを有するシステムについて、HDLおよびHULを、基準信号、たとえばLTE−Aのダウンリンク・チャネル条件情報基準信号CSI−RSおよびアップリンク基準信号SRSを介して測定することができる。したがって、式
【0060】
【数19】

について、その2つの独立行列EおよびEが未知なので、明らかにこれを直接に解くことはできない。
【0061】
文献[4]は、初等ドット除算ベースの解く方法を提供し、ここでは、すべてのトランシーバ応答は、対角線に並んだ数の和がすべて等しい(たとえば、hul,ij=0、hdl,ij=0、i≠j)という仮説に基づいて、モデル化が行われる。複数の校正されるチャネルに存在したすべての複素相互関係誤差cは、アンテナ・アレイ利得に影響しないので、式
【0062】
【数20】

は、解くことができ、チャネル応答行列が対角線に並んだ数の和がすべて等しく、EおよびEの一方の1つの要素が相互関係基準として取られる時に無限の解を有する。以下では、複数パラメータ推定問題が、数式を介して表され、上の文献のように最小二乗LS誤差を最小にするのではなく最小平均二乗誤差MMSEを最小にするために、EとEとの間の関連を除去する。
【0063】
【数21】

が、それぞれ、誤差のある係数二乗行列A、A、B、Bおよび複素加法性白色ガウス雑音NDLおよびNULを有する推定されたダウンリンクおよびアップリンクのチャネル応答HDLおよびHULを表すものとする。A、A、B、Bのすべてが最大階数行列であると仮定し、相互関係モデル(5)を式(6)に適用することによって、
【0064】
【数22】

が導出される。
【0065】
【数23】

であるものとする。
【0066】
上の式を
【0067】
【数24】

と書くことができ、ここで、Nは、その要素が
【0068】
【数25】

の独立複素ガウス分布に従う行列である。
【0069】
右乗算行列Eまたは左乗算行列Eを推定するために、次の仮説を導入しなければならない。
【0070】
仮説3) アンテナ結合効果は、十分に小さく、したがって無視することができる。たとえば、Hbr、Hbt、Hmr、Hmtは、すべて対角であり、したがって、EおよびEは、両方とも対角である。
【0071】
仮説4) 行列係数タイプのチャネル推定誤差はなく、すべての推定誤差は、雑音タイプであり、たとえば、A、A、B、Bは、すべてが単位行列である。
【0072】
仮説(3)を利用し、相互関係基準、すなわちUEの第1アンテナ分岐の相互関係誤差em,1を選択することによって、E(仮説(4)を用いるとEの推定値と同一)を、まず、初等最小二乗ELS(文献[4])推定アルゴリズムを介して推定して、EとEとの間の関連を除去することができる。
【0073】
【数26】

ただし、
【0074】
【数27】

であり、diag[]は、対角変換を表す。
【0075】
式(8)を式(7)に適用することと、
【0076】
【数28】

を右辺に移動することとによって、
【0077】
【数29】

を導出することができる。
【0078】
ここで、よりよい性能を得るために、E(仮説4)を用いるとEの推定値と同一)を、行列最小二乗(MLS)推定アルゴリズム、行列最小平均二乗誤差(MMSE)推定アルゴリズム、またはこれらの他の変形を利用することによって推定することができる。
【0079】
文献[4]で採用されたELSアルゴリズムに対するMMSEベースの推定アルゴリズムの利益は、仮説(3)の確立を必要とせず、したがって、実際の条件によりよく従い、これによって、よりよい相互関係誤差校正性能を提供できることである。
【0080】
以下では、通常の行列LS推定アルゴリズムおよび行列MMSE推定アルゴリズムの実施形態だけを示す。異なる設計要件(複雑さと性能との間のトレードオフ)に従って、他の変形形態を、[J.Proakis、「Digital Communications」、McGraw−Hill Science、4 edition、2000年8月15日]を参照することによって実施することができる。
【0081】
行列最小二乗LS推定法
【0082】
【数30】

ただし、(●)は、行列の左反転(left inversion of a matrix)を示す。
【0083】
行列MMSE推定法
【0084】
【数31】

ただし、
【0085】
【数32】

は、Eの二次統計(自己共分散)であり、
【0086】
【数33】

は、雑音の出力密度
【0087】
【数34】

であり、これは
【0088】
【数35】

によって近似することができる。
【0089】
【数36】

は、
【0090】
【数37】

の以前の推定から計算することができる。
【0091】
本発明をよりよく理解するために、本発明の好ましい実施形態による相互関係誤差校正法を、次で図4を参照して説明する。
【0092】
図4に、本発明の実施形態による相互関係誤差校正法の流れ図を示す。
【0093】
まず、ステップS101では、UEが、そのアンテナのすべてからダウンリンク・チャネル応答HDLを測定し、測定されたHDLをeNBに供給する。たとえば、測定されたHDLを、channel state information(CSI)を介してeNBにフィード・バックすることができる。
【0094】
ステップS102では、eNBが、アップリンク基準信号(sounding reference signal、SRS)に基づいてアップリンク・チャネル応答HULを測定する。
【0095】
ステップS103では、eNBが、相互関係モデル
【0096】
【数38】

に従い、LS判断基準を採用するアルゴリズムを利用して、HDLおよびHULに基づいて、ユーザ機器相互関係誤差Eおよび基地局相互関係誤差Eのうちの1つを計算する。たとえば、eNBは、上の式(6)〜(8)に従って、ELSアルゴリズムを利用してユーザ機器相互関係誤差Eを計算することができる。
【0097】
ステップS104では、eNBが、EおよびEのうちの計算された1つに基づいて、EおよびEのうちの他方を計算するために、MMSE判断基準を採用する別のアルゴリズムを利用する。たとえば、上で述べたように、eNBは、計算されたユーザ機器相互関係誤差Eに基づいて、行列LSアルゴリズムまたは行列MMSEアルゴリズムを利用して、基地局相互関係誤差Eを計算する。
【0098】
最後に、ステップS105では、eNBが、計算されたユーザ機器相互関係誤差Eおよび基地局相互関係誤差Eに基づいて、相互関係誤差校正動作を実行する。
【0099】
具体的に言うと、ステップS105では、上で述べたように、式
【0100】
【数39】

が、チャネル応答行列が対角線に並んだ数の和がすべて等しいという仮説(たとえば、hul,ij=0、hdl,ij=0、i≠j)に基づき、基準としてem,1およびeb,1(またはEおよびE内の任意の要素)のうちの1つをとることによって、解かれる。ステップS104では、仮説なしに、EおよびEのうちの計算された1つに基づいて、MLSまたは行列MMSEを利用して、EおよびEのうちの他方が計算される。
【0101】
図5に、本発明の実施形態による相互関係誤差校正デバイスのブロック図を示す。
【0102】
図5に示されているように、本発明の実施形態による相互関係誤差校正デバイスは、測定を介してダウンリンク・チャネル応答HDLを入手するように構成されたダウンリンク測定モジュール101と、測定を介してアップリンク・チャネル応答HULを入手するように構成されたアップリンク測定モジュール102と、
【0103】
【数40】

に従い、LS判断基準を採用するアルゴリズムを利用し、HDLおよびHULに基づいて、ユーザ機器相互関係誤差Eおよび基地局相互関係誤差Eのうちの1つを計算するように構成されたLS計算モジュール103と、EおよびEのうちの計算された1つに基づき、MMSE判断基準を採用する別のアルゴリズムを利用して、EおよびEのうちの他方を計算するように構成されたMMSE計算モジュール104と、計算された相互関係誤差EおよびEを利用して相互関係校正動作を実行するように構成された相互関係誤差校正モジュール105とを含む。
【0104】
図4および図5を参照して説明される本発明の実施形態による相互関係誤差校正法および相互関係誤差校正デバイスは、eNBで実施されるものとして図示される。しかし、当業者は、本発明がこれに限定されないことを了解するであろう。本発明の実施形態による相互関係誤差校正法および相互関係誤差校正デバイスを、UEで実施することもできる。たとえば、ダウンリンク測定モジュール101を、UEに配置することができる。この場合に、本発明の実施形態による相互関係誤差校正デバイスは、さらに、UEによってそのアンテナのすべてから測定されたダウンリンク・チャネル応答HDLをeNBに送信するように構成された、UEに配置された送信するモジュールと、UEからダウンリンク・チャネル応答HDLを受信するように構成された、eNBに配置された受信するモジュールとを含む。
【0105】
以下では、提案される方法を、シミュレーションを介して検証する。シミュレーションによって採用されるパラメータは、下で指定される。LTA−Aリンク、3つのUE、3つのeNB、各UEは2つのアンテナを備え、各eNBは4つのアンテナを備え、16QAM、ターボ符号、1mps速度、市街地マイクロ・セル・シナリオ、−5dBセル間干渉、フィード・バックのための6ビット・チャネル量子化。
【0106】
図6に、本発明の実施形態による相互関係誤差校正法と従来の相互関係誤差校正法の比較からのシミュレーション結果を示す。
【0107】
結果をすばやく信頼できる形で得るために、復調器入力信号の信号対干渉雑音比(SINR)が、性能メトリックとして利用される。16QAM+ターボ符号の入出力SNRマッピング・テーブルをルック・アップすることによって、このメトリックをBER/BLERにマッピングすることができる。
【0108】
図6では、「SRS w/o RE」は、相互関係誤差なしのチャネル測定結果を示し、「ELS eNB + UE Cal」は、ELS推定アルゴリズムを利用して基地局と端末との両方に相互関係誤差校正を実行することのチャネル測定結果を示し、「LS eNB Cal」は、単にeNBにLS相互関係誤差校正を実行することのチャネル測定結果を示し、「RE w/o Cal」は、相互関係誤差校正を全く適用しないチャネル測定結果を示し、「MLS eNB + UE Cal」は、MLS推定アルゴリズムを利用して基地局と端末との両方に相互関係誤差校正を実行することのチャネル測定結果を示し、「MMSE eNB+UE Cal」は、MMSE推定アルゴリズムを利用して基地局と端末との両方に相互関係誤差校正を実行することのチャネル推定結果を示す。
【0109】
図6から、eNB側のMMSE推定アルゴリズムが、特に動作SNR範囲(0dB〜20dB)で、ほぼ完璧な性能を実現できることがわかる。行列LS(MLS)推定アルゴリズムも、低いSNRでより大きい利得を提供することができる。SNR=0dBについて、本発明のMMSE校正アルゴリズムを介して、約2dBのリンク利得を実現することができる。
【0110】
UE側相互関係誤差およびeNB側相互関係誤差に対する反復推定を、前述のモデルに基づいて実行できることに留意されたい。たとえば、ELS推定アルゴリズムを使用して、Eを推定することができ、その後、MMSE推定アルゴリズムを使用して、Eを推定し、次に、行列MMSE推定アルゴリズムを使用して、Eを更新する。このプロセスを、EのELS推定アルゴリズムから開始する、すなわち、Eを推定するのにELS推定アルゴリズムを使用し、その後、Eを推定するのにMMSE推定アルゴリズムを使用し、次に、Eを更新するのに行列MMSE推定アルゴリズムを使用することもできる。
【0111】
本発明は、TDDシステムのUE/eNB相互関係校正解決策を提供し、この解決策は、単一セルまたはCoMPシナリオに適用可能であり、チャネル相互関係ベースのTDDシステムの性能が、特に正常に動作するSNR範囲で改善されるようになっている。
【0112】
本発明の実施形態に従って基地局によって実施される機能を方法ステップの形で説明したが、図4に示された各ステップを、図5に示されているように1つまたは複数の機能モジュールによって実施することができる。複数の機能モジュールを、実際の応用例で1つのチップまたは1つのデバイスに統合することもできる。当業者は、本発明の実施形態の基地局が、他の目的のための任意のユニットまたはモジュールを含むこともできることを理解するに違いない。
【0113】
当業者は、さまざまな上で説明された方法のステップを、プログラムされたコンピュータによって実行できることを直ちに認めるであろう。本明細書では、いくつかの実施形態が、機械可読またはコンピュータ可読のプログラム記憶媒体、たとえば、ディジタル・データ記憶媒体と、符号化された機械実行可能なまたはコンピュータ実行可能な命令のプログラムとを包含することも意図されており、前記命令は、前記上で説明された方法のステップの一部またはすべてを実行する。プログラム記憶デバイスは、たとえば、ディジタル・ストレージ、磁気ディスクおよび磁気テープなどの磁気記憶媒体、ハード・ドライブ、または光学的に記録可能なディジタル・データ記憶媒体とすることができる。実施形態は、上で説明された方法の前記ステップを実行するために記憶媒体に記録されたプログラムを実行するようにプログラムされたコンピュータを包含することも意図されている。
【0114】
上の説明および図面は、単に、本発明の原理を示す。したがって、当業者が、本明細書で明示的に説明されずまたは図示されないが、本発明の原理を実施し、本発明の趣旨および範囲に含まれるさまざまな配置を考案できることを了解されたい。さらに、本明細書で列挙されるすべての例は、特に、技術を促進するために本発明人によって貢献される本発明の原理および概念を読者が理解するのを助ける教育的目的のみのためのものであることを主に意図され、そのような特に列挙された例および条件への限定を伴わないものと解釈されなければならない。さらに、本発明の原理、態様、および実施形態ならびに本発明の特定の例を列挙する本明細書のすべての言明は、その同等物を包含することが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダウンリンク・チャネル応答HDLを測定するステップと、
アップリンク・チャネル応答HULを測定するステップと、
相互関係モデル
【数1】

に従い、前記HDLおよび前記HULに基づき、最小二乗LS判断基準を利用して、ユーザ機器相互関係誤差Eおよび基地局相互関係誤差Eのうちの1つを計算するステップと、
最小平均二乗誤差MMSE判断基準を採用するアルゴリズムを利用して、EおよびEのうちの前記計算された1つに基づいて前記Eおよび前記Eのうちの他方を計算するステップと、
前記計算されたユーザ機器相互関係誤差Eおよび前記計算された基地局相互関係誤差Eを利用して相互関係誤差校正動作を実行するステップと
を含む、相互関係誤差校正の方法。
【請求項2】
LS判断基準を採用する前記アルゴリズムは、初等最小二乗ELSアルゴリズムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
MMSE判断基準を採用する前記アルゴリズムは、行列最小二乗MLSアルゴリズムおよび行列MMSEアルゴリズムのうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
MMSE判断基準を採用するさらなるアルゴリズムを利用して、前記Eおよび前記Eのうちの前記計算された他方に従って、
【数2】

に基づいて前記Eおよび前記Eのうちの前記1つを更新するステップ
をさらに含む、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
MMSE判断基準を採用する前記さらなるアルゴリズムは、行列最小二乗MLSアルゴリズムおよび行列MMSEアルゴリズムのうちの1つである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、ユーザ機器または基地局で実行される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ダウンリンク・チャネル応答HDLを測定するように構成されたダウンリンク測定モジュールと、
アップリンク・チャネル応答HULを測定するように構成されたアップリンク測定モジュールと、
相互関係モデル
【数3】

に従い、前記HDLおよび前記HULに基づき、最小二乗LS判断基準を利用して、ユーザ機器相互関係誤差Eおよび基地局相互関係誤差Eのうちの1つを計算するように構成されたLS計算モジュールと、
最小平均二乗誤差MMSE判断基準を採用するアルゴリズムを利用して、前記Eおよび前記Eのうちの前記計算された1つに基づいて前記Eおよび前記Eのうちの他方を計算するように構成されたMMSE計算モジュールと、
前記計算されたユーザ機器相互関係誤差Eおよび前記計算された基地局相互関係誤差Eを利用して相互関係誤差校正動作を実行するように構成された相互関係誤差校正モジュールと
を含む、相互関係誤差校正のデバイス。
【請求項8】
LS判断基準を採用する前記アルゴリズムは、初等最小二乗ELSアルゴリズムである、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
MMSE判断基準を採用する前記アルゴリズムは、行列最小二乗MLSアルゴリズムおよび行列MMSEアルゴリズムのうちの1つである、請求項7に記載のデバイス。
【請求項10】
MMSE判断基準を採用するさらなるアルゴリズムを利用して、前記Eおよび前記Eのうちの前記計算された他方に従って、
【数4】

に基づいて前記Eおよび前記Eのうちの前記1つを更新するように構成された更新モジュール
をさらに含む、請求項7乃至9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
MMSE判断基準を採用する前記さらなるアルゴリズムは、行列最小二乗MLSアルゴリズムおよび行列MMSEアルゴリズムのうちの1つである、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスは、ユーザ機器または基地局で実施される、請求項7乃至9のいずれか1項に記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−520043(P2013−520043A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552227(P2012−552227)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【国際出願番号】PCT/CN2010/001595
【国際公開番号】WO2011/097785
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(391030332)アルカテル−ルーセント (1,149)