説明

相分離構造体およびその製造方法

【課題】樹脂相と粒子相とが相分離された相分離構造体を提供すること。
【解決手段】樹脂と、無機粒子の表面に有機基を有し、かつ、有機基の立体障害により、無機粒子が互いに接触しない形状を少なくとも有している有機無機複合粒子とを配合することによって、粒子含有樹脂組成物を調製し、粒子含有樹脂組成物から、樹脂相2と、樹脂相2と隣接し、有機無機複合粒子から形成される粒子相3とからなる相分離シート1を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相分離構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂相および無機粒子から形成される粒子相からなる相分離構造体は、各種工業用途での応用が期待されている。
【0003】
例えば、樹脂からなるシートの表面に、有機溶剤に無機微粒子が分散された分散液を塗布し、溶剤を揮発させることによって、シートの表面に微粒子相が形成された相分離シートが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−6817号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、従来の相分離構造体では、無機粒子が部分的に樹脂に分散あるいは相溶すると、樹脂相と粒子相との相分離が不十分となる。
【0006】
本発明の目的は、樹脂相と粒子相とが相分離された相分離構造体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の相分離構造体は、樹脂相と、前記樹脂相と隣接し、無機粒子の表面に有機基を有する有機無機複合粒子を含む粒子相とからなり、前記粒子相中の前記有機無機複合粒子は、前記有機基の立体障害により、前記無機粒子が互いに接触しない形状を少なくとも有していることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の相分離構造体では、前記粒子相は、層状に形成されていることが好適である。
【0009】
また、本発明の相分離構造体では、前記粒子相が前記相分離構造体の一方側または両側に偏在していることが好適である。
【0010】
また、本発明の相分離構造体では、前記粒子相は、前記有機無機複合粒子が三次元的に整列配置されることにより、層状に形成されていることが好適である。
【0011】
また、本発明の相分離構造体では、前記有機無機複合粒子の平均粒子径が400nm以下であることが好適である。
【0012】
また、本発明の相分離構造体の製造方法は、樹脂と、無機粒子の表面に有機基を有する有機無機複合粒子とを配合することによって、粒子含有樹脂組成物を調製する工程、および、前記粒子含有樹脂組成物から、樹脂相と、前記樹脂相と隣接し、前記有機無機複合粒子から形成される粒子相とからなる相分離構造体を成形する工程を備えていることを特徴としている。
【0013】
また、相分離構造体の製造方法では、前記有機無機複合粒子が、高温の溶媒中で製造されていることが好適である。
【0014】
また、本発明の相分離構造体の製造方法では、前記有機無機複合粒子が、高温高圧の水中で製造されていることが好適である。
【0015】
また、本発明の相分離構造体の製造方法では、前記有機無機複合粒子は、前記有機基の立体障害により、前記無機粒子が互いに接触しない形状を少なくとも有するように製造されていることが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の相分離構造体では、樹脂と、有機無機複合粒子の有機基との親和性に依存して、樹脂層と粒子相とが相分離される。つまり、無機粒子の種類に拘わらず、有機基の選択によって、樹脂層と粒子相とが相分離されている。
【0017】
そのため、かかる相分離構造体を各種工業用途に応用することができる。
【0018】
また、本発明の相分離構造体の製造方法によれば、粒子含有樹脂組成物から成形する簡易な方法で、樹脂相と粒子相とからなり、それらが相分離された相分離構造体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の相分離構造体の一実施形態である相分離シートであって、(a)は、拡大断面図、(b)は、拡大平面図を示す。
【図2】図2は、図1に示す相分離シートを製造するための製造工程図であって、(a)は、粒子含有樹脂組成物を離型シートの上に塗布して、塗膜を形成する工程、(b)は、塗膜を乾燥させて、相分離シートを成形する工程を示す。
【図3】図3は、調製例1の有機無機複合粒子のTEM写真の画像処理図を示す。
【図4】図4は、実施例1の相分離シートの断面のTEM写真の画像処理図(250,000倍)である。
【図5】図5は、実施例2の相分離シートの断面のTEM写真(250,000倍)の画像処理図を示す。
【図6】図6は、実施例3の相分離シートの断面のTEM写真の画像処理図(250,000倍)を示す。
【図7】図7は、実施例4の相分離シートの断面のTEM写真の画像処理図であって、(a)は、50,000倍の画像処理図、(b)250,000倍の画像処理図を示す。
【図8】図8は、実施例5の相分離シートの断面のTEM写真(250,000倍)の画像処理図を示す。
【図9】図9は、実施例9の相分離シートの断面のTEM写真(1,000,000倍)の画像処理図を示す。
【図10】図10は、実施例12の相分離シートの断面のTEM写真(1,000,000倍)の画像処理図を示す。
【図11】図11は、実施例13の相分離シートの断面のTEM写真(250,000倍)の画像処理図を示す。
【図12】図12は、実施例14の相分離シートの断面のTEM写真(250,000倍)の画像処理図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の相分離構造体の一実施形態である相分離シート、図2は、図1に示す相分離シートを製造するための製造工程図を示す。
【0021】
図1(a)において、この相分離シート1は、樹脂相2と、粒子相3とからなる。具体的には、相分離シート1は、平板形状に形成されており、層状に形成される樹脂相2と、それの上に層状に形成される粒子相3とからなっている。
【0022】
樹脂相2は、シート状に形成されている。また、樹脂相2は、相分離シート1において粒子相3が偏在(後述)することにより、層状に形成されている。
【0023】
粒子相3は、実質的に、有機無機複合粒子のみから形成されている。
【0024】
樹脂相2の厚みは、特に限定されず、例えば、1nm〜1000μm、好ましくは、5nm〜100μm、さらに好ましくは、10nm〜10μmである。
【0025】
粒子相3は、樹脂相2の上側(一方側)に隣接している。換言すれば、粒子相3は、相分離シート1の上側において、樹脂相2の上面に偏在している。
【0026】
また、粒子相3は、有機無機複合粒子が実質的に三次元的に整列配置されることにより、樹脂相2の上面において、層状に形成されている。つまり、粒子相3において、有機無機複合粒子は、相分離シート1の厚み方向および面方向(厚み方向に直交する方向)において、整列配置されている。
【0027】
具体的には、粒子相3において、三次元的に実質的に規則正しく配列されている有機無機複合粒子が少なくとも存在し、詳しくは、そのような有機無機複合粒子は、最密状に積層されている。上記した有機無機複合粒子は、例えば、六方最密構造、立方最密構造など、最密に充填される構造で積層されている。
【0028】
粒子相3の厚みは、例えば、1nm〜1000μm、好ましくは、10nm〜100μmである。
【0029】
樹脂相2を形成する樹脂としては、特に限定されず、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0030】
熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0031】
熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、マレイミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリアリルスルホン樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、セルロース樹脂、液晶ポリマー、アイオノマーなどが挙げられる。
【0032】
これら樹脂は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0033】
上記した樹脂のうち、好ましくは、熱可塑性樹脂、さらに好ましくは、高い配向性を有する高配向性樹脂が挙げられ、具体的には、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などが挙げられる。
【0034】
オレフィン樹脂としては、例えば、環状オレフィン樹脂、鎖状オレフィン樹脂などが挙げられる。好ましくは、環状オレフィン樹脂が挙げられる。
【0035】
環状オレフィン樹脂としては、例えば、ポリノルボルネン、エチレン・ノルボルネン共重合体、またはそれらの誘導体が挙げられる。
【0036】
鎖状オレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体などが挙げられる。
【0037】
アクリル樹脂としては、例えば、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチルなどが挙げられる。
【0038】
ポリスチレン樹脂としては、例えば、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、スチレン・(α−メチルスチレン)共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体などが挙げられる。好ましくは、ポリスチレンが挙げられる。
【0039】
ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。
【0040】
ポリビニルアルコール樹脂は、例えば、酢酸ビニルを主成分とするビニルモノマーを適宜の方法で重合して得られるポリ酢酸ビニル樹脂の完全または部分的なケン化により得られる。ポリビニルアルコール樹脂のケン化度は、例えば、70〜100モル%、好ましくは、70〜99.99モル%、さらに好ましくは、80〜99.9モル%である。
【0041】
有機無機複合粒子は、溶媒(後述)および/または樹脂中に1次として分散することができ、無機粒子の表面に有機基を有する粒子である。具体的には、有機無機複合粒子は、無機粒子が有機化合物により表面処理されることによって、得られる。なお、有機無機複合粒子は、1種類または2種以上組み合わせて利用することができる。
【0042】
無機粒子を形成する無機物としては、典型元素、遷移元素などの金属元素からなる金属、例えば、ホウ素、ケイ素などの非金属元素からなる非金属、例えば、金属元素および/または非金属を含む無機化合物などが挙げられる。
【0043】
金属元素または非金属元素としては、例えば、長周期型周期表で第IIIB属のホウ素(B)−第IVB属のケイ素(Si)−第VB属のヒ素(As)−第VIB属のテルル(Te)−第VIIB属のアスタチン(At)を境界として、これらの元素およびその境界より、長周期型周期表において左側および下側にある元素が挙げられ、具体的には、例えば、Sc、YなどのIIIA属元素、例えば、Ti、Zr、HfなどのIVA属元素、例えば、V、Nb、TaなどのVA属元素、例えば、Cr、Mo、WなどのVIA属元素、例えば、Mn、ReなどのVIIA属元素、例えば、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、PtなどのVIIIA属元素、例えば、Cu、Ag、AuなどのIB属元素、例えば、Zn、Cd、HgなどのIIB属元素、例えば、B、Al、Ga、In、TlなどのIIIB属元素、例えば、Si、Ge、Sn、PbなどのIVB属元素、例えば、As、Sb、BiなどのVB元素、例えば、Te、PoなどのVIB属元素、例えば、La、Ce、Pr、Ndなどのランタニド系列元素、例えば、Ac、Th、Uなどのアクチニウム系列元素などが挙げられる。
【0044】
無機化合物としては、例えば、水素化合物、水酸化物、窒化物、ハロゲン化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、金属錯体、硫化物、炭化物、リン化合物などが挙げられる。また、無機化合物は複合化合物でもよく、例えば、酸化窒化物、複合酸化物などが挙げられる。
【0045】
上記した無機物のうち、好ましくは、無機化合物が挙げられ、さらに好ましくは、例えば、酸化物、複合酸化物、炭酸塩、硫酸塩などが挙げられる。
【0046】
酸化物として、例えば、酸化金属が挙げられ、好ましくは、酸化チタン(二酸化チタン、酸化チタン(IV)、チタニア:TiO)、酸化セリウム(二酸化セリウム、酸化セリウム(IV)、セリア:CeO)などが挙げられる。
【0047】
酸化物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0048】
複合酸化物は、酸素と複数の元素との化合物であって、複数の元素としては、上記した酸化物における酸素以外の元素と、第I属元素と、第II属元素とからなる元素から選択される少なくとも2種以上の組合せが挙げられる。
【0049】
第I元素としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Csなどのアルカリ金属が挙げられる。また、第II属元素としては、例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Raなどのアルカリ土類金属が挙げられる。
【0050】
複数の元素の組合せとして、好ましくは、第II属元素とIVb属元素との組合せ、第II属元素とVIIIb属元素との組合せ、第II属元素とIVa属元素との組合せなど、少なくとも第II属元素を含む組合せが挙げられる。
【0051】
少なくとも第II属元素を含む複合酸化物としては、例えば、チタン酸アルカリ土類金属塩、ジルコン酸アルカリ土類金属塩、鉄酸アルカリ土類金属塩、スズ酸アルカリ土類金属塩などが挙げられる。
【0052】
複合酸化物酸化物として、好ましくは、チタン酸アルカリ土類金属塩が挙げられる。
【0053】
チタン酸アルカリ土類金属塩としては、例えば、チタン酸ベリリウム(BeTiO)、チタン酸マグネシウム(MgTiO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸ラジウム(RaTiO)などが挙げられる。
【0054】
複合酸化物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0055】
炭酸塩において、炭酸と化合する元素としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0056】
炭酸と化合する元素のうち、好ましくは、アルカリ土類金属が挙げられる。
【0057】
具体的には、炭酸塩としては、好ましくは、アルカリ土類金属を含む炭酸塩が挙げられ、そのような炭酸塩としては、例えば、炭酸ベリリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸ラジウムなどが挙げられる。これら炭酸塩は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0058】
硫酸塩は、硫酸イオン(SO2−)と、金属のカチオンとの化合物(より具体的には、硫酸(HSO)の水素原子が金属と置換した化合物)であって、硫酸塩に含まれる金属としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属などが挙げられる。アルカリ金属およびアルカリ土類金属としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0059】
金属のうち、好ましくは、アルカリ土類金属が挙げられる。
【0060】
具体的には、硫酸塩としては、好ましくは、アルカリ土類金属を含む硫酸塩が挙げられ、そのような硫酸塩としては、例えば、硫酸ベリリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム、硫酸バリウム、硫酸ラジウムなどが挙げられ、好ましくは、硫酸バリウムが挙げられる。
【0061】
これら硫酸塩は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0062】
有機化合物は、例えば、無機粒子の表面に有機基を導入する(配置させる)有機基導入化合物であって、具体的には、無機粒子の表面と結合可能な結合基と、有機基とを含んでいる。
【0063】
結合基としては、無機粒子の種類に応じて適宜選択され、例えば、カルボキシル基、リン酸基(−PO(OH)、ホスホノ基)、アミノ基、スルホ基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、イソシアネート基(シアノ基)、ニトロ基、アゾ基、シリルオキシ基、イミノ基、アルデヒド基(アシル基)、ニトリル基、ビニル基(重合性基)などの官能基が挙げられる。好ましくは、カルボキシル基、リン酸基、アミノ基、スルホ基、ヒドロキシル基、チオール基、エポキシ基、アゾ基、ビニル基などが挙げられ、さらに好ましくは、カルボキシル基、リン酸基が挙げられる。
【0064】
これら結合基は、有機化合物に1つあるいは複数含まれる。具体的には、結合基は、有機基の末端または側鎖に結合されている。
【0065】
有機基は、例えば、脂肪族基、脂環族基、芳香脂肪族基、芳香族基などの炭化水素基などを含んでいる。
【0066】
脂肪族基としては、例えば、飽和脂肪族基、不飽和脂肪族基などが挙げられる。
【0067】
飽和脂肪族基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基などが挙げられる。
【0068】
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、へプチル、オクチル、2−エチルへキシル、3,3,5−トリメチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシルなどの、炭素数1〜20の直鎖または分岐アルキル基(パラフィン炭化水素基)などが挙げられる。好ましくは、炭素数4〜18の直鎖または分岐アルキル基が挙げられる。
【0069】
不飽和脂肪族基としては、例えば、炭素数2〜20のアルケニル基、アルキニル基などが挙げられる。
【0070】
アルケニル基としては、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル、ノネニル、デセニル、ウンデセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、オクタデセニル(オレイル)、イコセニルなどの炭素数2〜20のアルケニル基(オレフィン炭化水素基)が挙げられる。
【0071】
アルキニル基としては、例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、デシニル、ウンデシニル、ドデシニル、トリデシニル、テトラデシニル、ペンタデシニル、ヘキサデシニル、ヘプタデシニル、オクタデシニルなどの炭素数2〜20のアルキニル基(アセチレン炭化水素基)が挙げられる。
【0072】
脂環族基としては、例えば、炭素数4〜20のシクロアルキル基、炭素数7〜20のシクロアルケニルアルキレン基などが挙げられる。
【0073】
シクロアルキル基としては、例えば、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシルなどが挙げられる。
【0074】
シクロアルケニルアルキレン基としては、例えば、ノルボルネンデシル(ノルボネリルデシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エニル−デシル)などが挙げられる。
【0075】
芳香脂肪族基としては、例えば、ベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、フェニルペンチル、フェニルヘキシル、フェニルヘプチル、ジフェニルメチルなどの炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられる。
【0076】
芳香族基としては、例えば、フェニル、キシリル、ナフチル、ビフェニルなどの炭素数6〜20のアリール基が挙げられる。
【0077】
上記した有機基は、無機粒子の表面に疎水性を付与するための疎水基とされる。
【0078】
従って、上記した疎水基を含む有機化合物は、無機粒子を疎水処理するための疎水化有機化合物として供される。
【0079】
そのような疎水化有機化合物としては、具体的には、例えば、ヘキサン酸、デカン酸、ドデカン酸(ラウリン酸)などの飽和脂肪族基含有カルボン酸(飽和脂肪酸)や、例えば、オレイン酸などの不飽和脂肪族基含有カルボン酸(不飽和脂肪酸)などの脂肪族基含有カルボン酸などが挙げられる。また、疎水化有機化合物としては、例えば、シクロヘキサンモノカルボン酸などの脂環族基含有カルボン酸(脂環族カルボン酸)、例えば、6−フェニルヘキサン酸などの芳香脂肪族基含有カルボン酸(芳香脂肪族カルボン酸)、例えば、安息香酸、トルエンカルボン酸などの芳香族基含有カルボン酸(芳香族カルボン酸)などが挙げられる。また、デシルホスホン酸などの飽和脂肪族基含有ホスホン酸や、例えば、デシルホスホン酸ジエチル、デシルホスホン酸エチル、オクチルホスホン酸エチルなどの飽和脂肪族基含有リン酸エステルなども挙げられる。
【0080】
一方、有機化合物を、無機粒子を親水処理するための親水化有機化合物として供することもでき、その場合には、親水化有機化合物における有機基は、上記した炭化水素基と、それに結合する親水基とを有している。
【0081】
つまり、親水基は、親水化有機化合物において、上記した炭化水素基の末端(結合基に結合される末端(一端)と逆側の末端(他端))または側鎖に結合されている。
【0082】
親水基は、極性を有する官能基(つまり、極性基)であって、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、リン酸基、アミノ基、スルホ基、カルボニル基、シアノ基、ニトロ基、アルデヒド基、チオール基などが挙げられる。これら親水基は、親水化有機化合物に1つあるいは複数含まれる。
【0083】
カルボキシル基を含む有機基(カルボキシル基含有有機基)としては、例えば、3−カルボキシプロピル、4−カルボキシブチル、6−カルボキシヘキシル、8−カルボキシオクチル、10−カルボキシデシルなどのカルボキシ飽和脂肪族基や、例えば、カルボキシブテニルなどのカルボキシ不飽和脂肪族基などのカルボキシ脂肪族基などが挙げられる。また、カルボキシル基を含む有機基としては、例えば、カルボキシシクロヘキシルなどのカルボキシ脂環族基、例えば、カルボキシフェニルヘキシルなどのカルボキシ芳香脂肪族基など、例えば、カルボキシフェニルなどのカルボキシ芳香族基などが挙げられる。
【0084】
ヒドロキシル基を含む有機基(ヒドロキシル基含有有機基)としては、例えば、4−ヒドロキシブチル、6−ヒドロキシルヘキシル、8−ヒドロキシオクチルなどのヒドロキシ飽和脂肪族基(ヒドロキシ脂肪族基)、例えば、4−ヒドロキシベンジル、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチル、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピル、6−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキシルなどのヒドロキシ芳香脂肪族基、例えば、ヒドロキシフェニルなどのヒドロキシ芳香族基などが挙げられる。
【0085】
リン酸基を含む有機基(リン酸基含有有機基)としては、例えば、6−ホスホノヘキシルなどのホスホノ飽和脂肪族基(ホスホノ脂肪族基)、6−ホスホノフェニルヘキシルなどのホスホノ芳香脂肪族基などが挙げられる。
【0086】
アミノ基を含む有機基(アミノ基含有有機基)としては、例えば、6−アミノヘキシルなどのアミノ飽和脂肪族基(アミノ脂肪族基)、6−アミノフェニルヘキシルなどのアミノ芳香脂肪族基などが挙げられる。
【0087】
スルホ基を含む有機基(スルホ基含有有機基)としては、例えば、6−スルホヘキシルなどのスルホ飽和脂肪族基(スルホ脂肪族基)、6−スルホフェニルヘキシルなどのスルホ芳香脂肪族基などが挙げられる。
【0088】
カルボニル基を含む有機基(カルボニル基含有有機基)としては、例えば、3−オキソペンチルなどのオキソ飽和脂肪族基(オキソ脂肪族基)などが挙げられる。
【0089】
シアノ基を含む有機基(シアノ基含有有機基)としては、例えば、6−シアノヘキシルなどのシアノ飽和脂肪族基(シアノ脂肪族基)などが挙げられる。
【0090】
ニトロ基を含む有機基(ニトロ基含有有機基)としては、例えば、6−ニトロヘキシルなどのニトロ飽和脂肪族基(ニトロ脂肪族基)などが挙げられる。
【0091】
アルデヒド基を含む有機基(アルデヒド基含有有機基)としては、例えば、6−アルデヒドヘキシルなどのアルデヒド飽和脂肪族基(アルデヒド脂肪族基)などが挙げられる。
【0092】
チオール基を含む有機基(チオール基含有有機基)としては、例えば、6−チオールヘキシルなどのチオール飽和脂肪族基(チオール脂肪族基)などが挙げられる。
【0093】
具体的には、親水基を含む有機化合物としては、例えば、カルボキシル基含有有機化合物、ヒドロキシル基含有有機化合物、リン酸基含有有機化合物、アミノ基含有有機化合物、スルホ基含有有機化合物、カルボニル基含有有機化合物、シアノ基含有有機化合物、ニトロ基含有有機化合物、アルデヒド基含有有機化合物、チオール基含有有機化合物などが挙げられる。
【0094】
カルボキシル基含有有機化合物としては、例えば、ジカルボン酸などが挙げられ、そのようなジカルボン酸としては、例えば、プロパン二酸(マロン酸)、ブタン二酸(コハク酸)、ヘキサン二酸(アジピン酸)、オクタン二酸(セバシン酸)などの飽和脂肪族ジカルボン酸や、イタコン酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、例えば、シクロヘキシルジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、例えば、6−カルボキシフェニルヘキサン酸などの芳香脂肪族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸など芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。また、カルボキシル基含有有機化合物としては、カルボキシル基含有リン酸エステルなども挙げられ、具体的には、カルボン酸デシルリン酸エチル、カルボン酸オクチルリン酸エチルなども挙げられる。
【0095】
ヒドロキシル基含有有機化合物としては、例えば、モノヒドロキシルカルボン酸が挙げられ、そのようなモノヒドロキシルカルボン酸としては、具体的には、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシヘキサン酸、8−ヒドロキシオクタン酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、6−(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン酸、ヒドロキシ安息香酸などが挙げられる。
【0096】
リン酸基含有有機化合物としては、例えば、モノホスホノカルボン酸が挙げられ、具体的には、6−ホスホノヘキサン酸、6−ホスホノフェニルヘキサン酸などが挙げられる。
【0097】
アミノ基含有有機化合物としては、例えば、モノアミノカルボン酸が挙げられ、具体的には、6−アミノヘキサン酸、6−アミノフェニルヘキサン酸などが挙げられる。
【0098】
スルホ基含有有機化合物としては、例えば、モノスルホカルボン酸が挙げられ、具体的には、6−スルホヘキサン酸、6−スルホフェニルヘキサン酸などが挙げられる。
【0099】
カルボニル基含有有機化合物としては、例えば、モノカルボニルカルボン酸が挙げられ、具体的には、4−オキソ吉草酸などが挙げられる。
【0100】
シアノ基含有有機化合物としては、例えば、モノシアノカルボン酸が挙げられ、具体的には、6−シアノヘキサン酸などが挙げられる。
【0101】
ニトロ基含有有機化合物としては、例えば、モノニトロカルボン酸が挙げられ、具体的には、6−ニトロヘキサン酸などが挙げられる。
【0102】
アルデヒド基含有有機化合物としては、例えば、モノアルデヒドカルボン酸が挙げられ、具体的には、6−アルデヒドヘキサン酸が挙げられる。
【0103】
チオール基含有有機化合物としては、例えば、モノチオールカルボン酸が挙げられ、具体的には、6−チオールヘキサン酸などが挙げられる。
【0104】
また、上記した有機基は、互いに同一または相異なっていてもよい。
【0105】
有機基が相異なる場合、つまり、有機基が、種類が異なる複数の有機基を含む場合には、複数の同族の有機基および/または複数の互いに異なる族の有機基を含んでいる。
【0106】
同族の有機基としては、例えば、複数の脂肪族基同士の組合せ、複数の脂環族基同士の組合せ、複数の芳香脂肪族基同士の組合せ、複数の芳香族基同士の組合せが挙げられる。また、同族の有機基として、例えば、複数のカルボキシ脂肪族基同士の組合せ、複数のカルボキシ脂環族基同士の組合せ、複数のカルボキシ芳香脂肪族基同士の組合せ、複数のカルボキシ芳香族基同士の組合せ、複数のヒドロキシ脂肪族基同士の組合せ、複数のヒドロキシ芳香脂肪族基同士の組合せ、複数のヒドロキシ芳香族基同士の組合せ、複数のホスホノ脂肪族基同士の組合せ、複数のホスホノ芳香脂肪族基同士の組合せ、複数のアミノ脂肪族基同士の組合せ、複数のアミノ芳香脂肪族基同士の組合せ、複数のスルホ脂肪族基同士の組合せ、複数のスルホ芳香脂肪族同士の組合せ、複数のオキソ脂肪族基同士の組合せ、複数のシアノ脂肪族基同士の組合せ、複数のニトロ脂肪族基同士の組合せ、複数のアルデヒド脂肪族基同士の組合せ、複数のチオール脂肪族基同士の組合せなども挙げられる。
【0107】
同族の有機基として、好ましくは、複数の脂肪族基同士の組合せが挙げられ、さらに好ましくは、複数の飽和脂肪族基同士の組合せが挙げられ、とりわけ好ましくは、炭素数10未満の飽和脂肪族基および炭素数10以上の飽和脂肪族基の組合せが挙げられ、具体的には、ヘキシルおよびデシルの組合せが挙げられる。
【0108】
有機基が複数の同族の有機基を含んでいれば、有機基が、サイズ(長さまたは/および大きさ。つまり、炭素数。)が異なる複数の有機基を含んでいる。そのため、隣接する大きいサイズの有機基の間には、小さいサイズの有機基に対応して形成される空隙(ポケット)に樹脂の分子が入り込み、大きいサイズの有機基と樹脂分子との相互作用を向上させることができる。その結果、有機無機複合粒子の分散性を向上させることができる。
【0109】
異なる族の有機基としては、例えば、脂肪族基、脂環族基、芳香脂肪族基、芳香族基、カルボキシ脂肪族基、カルボキシ脂環族基、カルボキシ芳香脂肪族基、カルボキシ芳香族基、ヒドロキシ脂肪族基、ヒドロキシ芳香脂肪族基、ヒドロキシ芳香族基、ホスホノ脂肪族基、ホスホノ芳香脂肪族基、アミノ脂肪族基、アミノ芳香脂肪族基、スルホ脂肪族基、スルホ芳香脂肪族基、オキソ脂肪族基、シアノ脂肪族基、ニトロ脂肪族基、アルデヒド脂肪族基、チオール脂肪族基からなる群から選択される少なくとも2つの異なる族の組合せが挙げられる。
【0110】
異なる族の有機基として、好ましくは、芳香脂肪族基および芳香族基の組合せが挙げられ、さらに好ましくは、炭素数7〜15の芳香脂肪族基および炭素数6〜12の芳香族基の組合せが挙げられ、具体的には、フェニルヘキシルおよびフェニルの組合せが挙げられる。
【0111】
また、異なる族の有機基として、好ましくは、脂肪族基およびヒドロキシ脂肪族基の組合せが挙げられ、さらに好ましくは、飽和脂肪族基およびヒドロキシ飽和脂肪族基の組合せが挙げられ、とりわけ好ましくは、炭素数10以上の飽和脂肪族基および炭素数10未満のヒドロキシ飽和脂肪族基の組合せが挙げられ、具体的には、デシルおよび6−ヒドロキシヘキシルの組合せが挙げられる。
【0112】
有機基が複数の異なる族の有機基を含んでいれば、樹脂が複数の樹脂成分の混合物として調製される場合に、有機基は、各族の有機基と相溶性が優れた各樹脂成分の樹脂分子に対して、優れた相溶性をそれぞれ発現することができる。そのため、有機基と樹脂成分の樹脂分子との相互作用を向上させることができる。その結果、有機無機複合粒子の分散性を向上させることができる。
【0113】
上記した有機基は、有機無機複合粒子における無機粒子の表面に存在する。具体的には、有機基は、無機粒子の表面から結合基を介して無機粒子の外側に向かって延びている。
【0114】
上記した有機無機複合粒子は、無機物と有機化合物とを、反応処理、好ましくは、高温処理することによって製造される。
【0115】
高温処理は、溶媒中で実施される。溶媒としては、例えば、水、例えば、上記した有機化合物が挙げられる。
【0116】
具体的には、無機物および有機化合物を水中で高圧下において高温処理する(水熱合成:水熱反応)か、または、無機物を有機化合物中で高温処理(有機化合物中での高温処理)することにより、有機無機複合粒子を得る。つまり、無機物により形成される無機粒子の表面を有機化合物で表面処理することにより、有機無機複合粒子を得る。
【0117】
水熱合成では、例えば、上記した無機物と、有機化合物とを、高温および高圧下において、水の存在下で、反応させる(第1の水熱合成)。
【0118】
第1の水熱合成に供せられる無機物として、好ましくは、炭酸塩、硫酸塩、酸化物が挙げられる。好ましくは、酸化物が挙げられる。
【0119】
すなわち、まず、無機物、有機化合物および水を耐圧性の密閉容器に投入し、それらを加熱することにより、反応系を高温および高圧下に調製する。
【0120】
各成分の配合割合は、無機物100質量部に対して、有機化合物が、例えば、1〜1500質量部、好ましくは、5〜500質量部、さらに好ましくは、5〜250質量部であり、水が、例えば、50〜8000質量部、好ましくは、80〜6600質量部、さらに好ましくは、5〜4500質量部である。
【0121】
なお、有機化合物の密度が、通常、0.8〜1.1g/mLであることから、有機化合物の配合割合は、無機物100gに対して、例えば、1〜1500mL、好ましくは、5〜500mL、さらに好ましくは、5〜250mLである。
【0122】
また、有機化合物の配合モル数は、無機物1モルに対して、例えば、0.01〜1000モル、好ましくは、0.02〜50モル、さらにこのましくは、0.1〜10モルに設定することもできる。
【0123】
有機化合物は、種類が異なる複数(例えば、2つ)の有機基を含んでいる場合、具体的には、一方の有機基を含む有機化合物と、他方の有機基を含む有機化合物とのモル比は、例えば、10:90〜99.9:0.1、好ましくは、20:80〜99:1である。
【0124】
また、水の密度が、通常、1g/mL程度であることから、水の配合割合は、無機物100gに対して、例えば、50〜8000mL、好ましくは、80〜6600mL、さらに好ましくは、5〜4500mLである。
【0125】
水熱反応における反応条件は、具体的には、加熱温度が、例えば、100〜500℃、好ましくは、200〜400℃である。また、圧力が、例えば、0.2〜50MPa、好ましくは、1〜50MPa、さらに好ましくは、10〜50MPaである。また、反応時間が、例えば、1〜200分間、好ましくは、3〜150分間である。一方、連続式の反応装置を用いた場合の反応時間は、1分以下にすることもできる。
【0126】
上記の反応において、得られる反応物は、主に水中に沈殿する沈殿物と、密閉容器の内壁に付着する付着物とを含んでいる。
【0127】
沈殿物は、例えば、反応物を、重力または遠心力場によって、沈降させる沈降分離によって得る。好ましくは、遠心力場によって沈降させる遠心沈降(遠心分離)によって、反応物の沈殿物として得られる。
【0128】
また、付着物は、例えば、へら(スパ−テル)などによって、回収する。
【0129】
これにより、無機粒子の表面に有機基を有する有機無機複合粒子を得る。
【0130】
なお、第1の水熱合成では、反応前の無機物と、反応後の無機粒子を形成する無機物とが、同一である。
【0131】
一方、無機物(仕込み原料)と、有機化合物とを水熱合成させることにより、仕込み原料である無機物と異なる無機物から形成される無機粒子を含む有機無機複合粒子を得ることもできる(第2の水熱合成)。
【0132】
第2の水熱合成に供せられる無機物としては、例えば、水酸化物、金属錯体、硝酸塩、硫酸塩などが挙げられる。好ましくは、水酸化物、金属錯体が挙げられる。
【0133】
水酸化物において、水酸化物に含まれる元素(ヒドロキシルイオン(OH)と化合するカチオンを構成する元素。)としては、上記した酸化物における酸素と化合する元素と同様のものが挙げられる。
【0134】
水酸化物としては、具体的には、例えば、水酸化チタン(Ti(OH))、水酸化セリウム(Ce(OH))が挙げられる。
【0135】
金属錯体において、金属錯体に含まれる金属元素は、上記した水酸化物に含まれる金属と複合酸化物を構成する金属元素であり、例えば、チタン、鉄、スズ、ジルコニウムなどが挙げられる。好ましくは、チタンが挙げられる。
【0136】
金属錯体の配位子としては、例えば、2−ヒドロキシオクタン酸などのモノヒドロキシカルボン酸などが挙げられる。
【0137】
金属錯体としては、例えば、2−ヒドロキシオクタン酸チタネートなどが挙げられる。なお、金属錯体は、上記した金属元素および配位子から、公知の方法によって、得ることができる。
【0138】
有機化合物としては、例えば、上記した第1の水熱合成に用いられる有機化合物と同様のものが挙げられる。
【0139】
そして、第2の水熱合成では、無機物と、有機化合物とを、高温および高圧下において、水の存在下で、反応させる。
【0140】
各成分の配合割合は、無機化合物100質量部に対して、有機化合物が、例えば、1〜1500質量部、好ましくは、5〜500質量部、さらに好ましくは、5〜250質量部であり、水が、例えば、50〜8000質量部、好ましくは、80〜6600質量部、さらに好ましくは、80〜4500質量部である。
【0141】
また、有機化合物の配合割合は、水酸化物100gに対して、例えば、0.9〜1880mL、好ましくは、4.5〜630mL、さらに好ましくは、4.5〜320mLであり、有機化合物の配合モル数は、水酸化物1モルに対して、例えば、0.01〜10000モル、好ましくは、0.1〜10モルに設定することもできる。
【0142】
また、水の配合割合は、水酸化物100gに対して、例えば、50〜8000mL、好ましくは、80〜6600mL、さらに好ましくは、5〜4500mLである。
【0143】
第2の水熱合成における反応条件は、上記した第1の水熱合成における反応条件と同一である。
【0144】
これにより、仕込み無機原料と異なる無機物から形成される無機粒子の表面に有機基を有する有機無機複合粒子を得る。
【0145】
また、上記した第2の水熱合成の処方では、各成分に、さらに、炭酸源または水素源を配合することもできる。
【0146】
炭酸源としては、例えば、二酸化炭素(炭酸ガス)、例えば、蟻酸および/または尿素が挙げられる。
【0147】
水素源としては、例えば、水素(水素ガス)、例えば、蟻酸、乳酸などの酸、例えば、メタン、エタンなどの炭化水素などが挙げられる。
【0148】
炭酸源または水素源の配合割合は、無機物100質量部に対して、例えば、5〜140質量部、好ましくは、10〜70質量部である。
【0149】
なお、炭酸源の配合割合を、無機物100gに対して、例えば、5〜100mL、好ましくは、10〜50mLにすることもできる。また、炭酸源の配合モル数を、無機物1モルに対して、例えば、0.4〜100モル、好ましくは、1.01〜10.0モル、さらに好ましくは、1.05〜1.30モルに設定することもできる。
【0150】
また、水素源の配合割合を、無機物100gに対して、例えば、5〜100mL、好ましくは、10〜50mLにすることができる。また、水素源の配合モル数を、無機物1モルに対して、例えば、0.4〜100モル、好ましくは、1.01〜10.0モル、さらに好ましくは、1.05〜2.0モルに設定することもできる。
【0151】
有機化合物中での高温処理では、無機物と、有機化合物とを配合し、例えば、常圧下において、それらを加熱する。なお、有機化合物は、有機基導入化合物、および、無機物を分散または溶解させるための溶媒を兼ねながら、高温処理に供される。
【0152】
有機化合物の配合割合は、無機物100質量部に対して、例えば、10〜10000質量部、好ましくは、100〜1000質量部である。また、有機化合物の体積基準の配合割合は、無機物100gに対して、例えば、10〜10000mL、好ましくは、100〜1000mLである。
【0153】
加熱温度は、例えば、100℃を超過する温度、好ましくは、125℃以上、さらに好ましくは、150℃以上であり、通常、例えば、300℃以下、好ましくは、275℃以下である。加熱時間は、例えば、1〜60分間、好ましくは、3〜30分間である。
【0154】
このようにして得られる有機無機複合粒子(1次粒子)の形状は特に限定されず、例えば、異方性または等方性を有していてもよく、その平均粒子径(異方性を有している場合には、最大長さ)が、例えば、200μm以下、好ましくは、1nm〜200μm、さらに好ましくは、3nm〜50μm、とりわけ好ましくは、3nm〜10μmである。
【0155】
有機無機複合粒子の平均粒子径は、後の実施例で詳述するが、動的光散乱法(DLS)による測定、および/または、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)の画像解析によって、算出される。
【0156】
平均粒子径が上記した範囲に満たないと、有機無機複合粒子の表面に対する有機基の体積の割合が高くなり、無機粒子の機能が得られにくくなる場合がある。
【0157】
また、平均粒子径が上記した範囲を超えると、樹脂と混合する際に破砕される場合がある。
【0158】
このようにして得られる有機無機複合粒子は、乾燥状態で、凝集しにくくなっており、たとえ、乾燥状態で見かけ上凝集しても、粒子分散樹脂組成物および粒子分散樹脂成形体において、凝集(2次粒子の形成)が防止され、樹脂中に1次粒子としてほぼ均一に分散される。
【0159】
すなわち、有機無機複合粒子は、有機基の立体障害により、無機粒子が互いに接触しない形状を少なくとも有している。
【0160】
その後、上記した第1または第2の水熱合成または有機化合物中での高温処理により得られた有機無機複合粒子を、必要により、洗浄および/または湿式分級する。
【0161】
有機無機複合粒子を洗浄するには、例えば、第1または第2の水熱合成または有機化合物中での高温処理により得られた有機無機複合粒子に、溶媒を加えて未反応の有機化合物を洗浄し(つまり、有機化合物を溶媒に溶解させ)、その後、溶媒を除去して、回収(分離)する。
【0162】
溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール(ヒドロキシル基含有脂肪族炭化水素)、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどのケトン(カルボニル基含有脂肪族炭化水素)、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素(具体的には、アルカンなど)、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエタンなどのハロゲン化脂肪族炭化水素、例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素、例えば、テトラヒドロフランなどのエーテル、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、例えば、水、例えば、アンモニア水などのpH調整水溶液などが挙げられる。好ましくは、アルコール、水が挙げられる。
【0163】
洗浄後における有機無機複合粒子は、例えば、濾過、デカンテーションなどによって、溶媒(上澄み液)から分離して、回収する。その後、必要に応じて、回収物を、例えば、加熱または気流などにより乾燥する。
【0164】
また、有機無機複合粒子を湿式分級するには、例えば、上記した第1または第2の水熱合成または有機化合物中での高温処理により得られた有機無機複合粒子、または、上記した洗浄後の有機無機複合粒子に溶媒を加えて、それらを攪拌後、静置するか、あるいは、遠心沈降により、上澄みと沈殿物とに分離する。溶媒としては、上記と同様のものが挙げられ、具体的には、ハロゲン化脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ヒドロキシル基含有脂肪族炭化水素、カルボニル基含有脂肪族炭化水素、pH調整水溶液などが挙げられる。
【0165】
その後、上済みを回収する。
【0166】
湿式分級では、回収後の上澄みをさらに濾過することもできる。濾過には、開口径が、例えば、500nm以下、好ましくは、400nm以下であり、通常、1nm以上のフィルターが用いられる。
【0167】
その後、回収物から溶媒を除去して、有機無機複合粒子を得る。
【0168】
湿式分級により、サイズが小さい有機無機複合粒子を得ることができる。
【0169】
このようにして得られる有機無機複合粒子(1次粒子)の形状は、特に限定されず、例えば、略立方体形状などの略直方体形状、例えば、略球形状、例えば、略長球(あるいは紡錘形状)、略扁球などの回転楕円体形状、例えば、針状形状または棒状形状である。好ましくは、略立方体形状、略球形状である。略立方体形状または略球形状であれば、粒子相3において有機無機複合粒子を確実かつ容易に最密状に充填することができる。
【0170】
有機無機複合粒子の平均粒子径は、例えば、400nm以下、好ましくは、300nm以下、さらに好ましくは、200nm以下、とりわけ好ましくは、100nm以下であり、通常、例えば、1nm以上、好ましくは、2nm以上である。有機無機複合粒子の平均粒子径は、公知の方法により測定され、具体的には、後の実施例で詳述するが、DLSによる測定、および/または、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型電子顕微鏡(SEM)の画像解析によって、測定される。
【0171】
有機無機複合粒子の平均粒子径が上記した特定範囲を超えると、各粒子(1粒の粒子)が重くなるため、相分離シート1を形成することが困難となる場合がある。
【0172】
このようにして得られる有機無機複合粒子は、乾燥状態で、凝集しにくくなっており、たとえ、乾燥状態で見かけ上凝集しても、粒子分散液および粒子含有樹脂組成物溶液(ワニス、後述)において、凝集(2次粒子の形成)が防止され、溶媒中に1次粒子としてほぼ均一に分散される。
【0173】
また、有機無機複合粒子は、有機基の立体障害により、無機粒子が互いに接触しない形状を少なくとも有している。
【0174】
また、有機無機複合粒子において、有機基の表面積の、無機粒子の表面積に対する割合、つまり、有機無機複合粒子における有機基の表面被覆率(=(有機基の表面積/無機粒子の表面積)×100)は、例えば、30%以上、好ましくは、60%以上であり、通常、200%以下である。
【0175】
なお、表面被覆率の算出では、まず、透過型電子顕微鏡(TEM)により無機物粒子の形状を確認し、さらに平均粒子径を算出し、無機物粒子の形状と平均粒子径とから粒子の比表面積を算出する。また、示差熱天秤(TG−DTA)により有機無機複合体粒子を800℃まで加熱したときの重量変化から、有機無機複合体粒子に占める有機基の割合を算出する。その後、有機基の分子量、粒子の密度、平均体積から、粒子一個に占める有機基の量を算出する。そして、それらから、表面被覆率を求める。
【0176】
また、少なくとも、表面被覆率が高く、有機無機複合体粒子の有機基が無機粒子の電荷を打消す程度の長さがある場合には、有機無機複合体粒子を分散させる溶媒(媒体)の種類を、有機基の種類で制御(設計または管理)することができる。
【0177】
また、樹脂と有機無機複合粒子とを、それらの溶解度パラメーター(SP値)が所定の関係を満たすように、選択することもできる。
【0178】
次に、相分離シート1の製造方法について、図2を参照して説明する。
【0179】
この方法では、まず、樹脂と、有機無機複合粒子とを配合することにより、粒子含有樹脂組成物を調製する。
【0180】
具体的には、粒子含有樹脂組成物は、例えば、溶媒、有機無機複合粒子および樹脂を配合して、それらを攪拌することによりを調製する(溶液調製)。なお、このようにして調製される粒子含有樹脂組成物は、溶媒を含むワニスとされている。
【0181】
また、粒子含有樹脂組成物は、有機無機複合粒子が溶媒および樹脂中に1次粒子として分散されている。
【0182】
溶媒としては、特に限定されず、例えば、上記した洗浄で用いられる溶媒が挙げられ、さらには、それら以外に、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素(具体的には、シクロアルキル)、例えば、酢酸エチルなどのエステル、例えば、エチレングリコール、グリセリンなどのポリオール、例えば、N−メチルピロリドン、ピリジン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなどの含窒素化合物、例えば、イソステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、イソボロニルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリレート、アクリル酸、テトラヒドロフルフリルアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、アクロイルモルフォリンなどのアクリル系モノマー、例えば、スチレン、エチレンなどのビニル基含有モノマー、例えば、ビスフェノールA型エポキシなどのエポキシ基含有モノマーなどが挙げられる。
【0183】
これら溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。好ましくは、ハロゲン化脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素が挙げられる。
【0184】
粒子含有樹脂組成物を調製するには、具体的には、まず、上記した溶媒と樹脂とを配合して、樹脂を溶媒中に溶解させて、樹脂溶液を調製する。その後、樹脂溶液と有機無機複合粒子とを配合して、それらを攪拌することによって、粒子含有樹脂組成物を調製する(第1の調製方法)。
【0185】
樹脂の配合割合は、樹脂溶液100質量部に対して、例えば、40質量部以下、好ましくは、35質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下であり、通常、例えば、0.1質量部以上、好ましくは、0.5質量部以上、さらに好ましくは、1質量部以上である。樹脂の配合割合が上記した範囲を超える場合には、樹脂の溶解性が低下する場合がある。
【0186】
有機無機複合粒子の配合割合は、樹脂溶液の固形分(樹脂)100質量部に対して、例えば、1〜1000質量部、好ましくは、5〜800質量部、さらに好ましくは、10〜600質量部である。
【0187】
また、例えば、溶媒と有機無機複合粒子とを配合して、有機無機複合粒子を溶媒中に分散させて、粒子分散液を調製し、その後、粒子分散液と樹脂とを配合して、それらを攪拌することによって、粒子含有樹脂組成物を調製することもできる(第2の調製方法)。
【0188】
なお、粒子分散液において、有機無機複合粒子は、溶媒中に1次粒子として分散されている。
【0189】
有機無機複合粒子の配合割合は、粒子分散液の100質量部に対して、例えば、0.1〜70質量部、好ましくは、0.2〜60質量部、さらに好ましくは、0.5〜50質量部である。
【0190】
樹脂の配合割合は、粒子分散液の固形分(有機無機複合粒子)100質量部に対して、例えば、1〜10,000質量部、好ましくは、10〜2,000質量部、さらに好ましくは、20〜1,000である。
【0191】
さらに、例えば、まず、樹脂溶液と、粒子分散液とをそれぞれ調製し、次いで、樹脂溶液と粒子分散液とを配合して攪拌することにより、粒子含有樹脂組成物を調製することもできる(第3の調製方法)。
【0192】
樹脂溶液における樹脂の配合割合は、上記した第1の調製方法で例示した配合割合と同様である。
【0193】
粒子分散液における有機無機複合粒子の配合割合は、上記した第2の調製方法で例示した配合割合と同様である。
【0194】
樹脂溶液と粒子分散液とを、樹脂と有機無機複合粒子との質量基準の配合割合(樹脂の質量数:有機無機複合粒子の質量数)で、例えば、99:1〜10:90、好ましくは、95:5〜20:80、さらに好ましくは、90:10〜30:70となるように、配合する。
【0195】
さらに、例えば、溶媒と有機無機複合粒子と樹脂とを一度に配合して、それらを攪拌することにより、粒子含有樹脂組成物を調製することもできる(第4の調製方法)。
【0196】
各成分の配合割合は、粒子含有樹脂組成物の総量100質量部に対して、有機無機複合粒子で、例えば、0.1〜50質量部、好ましくは、1〜40質量部、さらに好ましくは、3〜30質量部であり、樹脂で、40質量部以下、好ましくは、35質量部以下であり、通常、0.1質量部以上である。また、溶媒の配合割合は、粒子含有樹脂組成物において有機無機複合粒子および樹脂を除いた残部である。
【0197】
さらにまた、例えば、溶媒を配合することなく、樹脂を加熱により溶融させて、有機無機複合粒子と配合することにより、粒子含有樹脂組成物を調製することもできる(第5の調製方法)。
【0198】
このようにして調製される粒子含有樹脂組成物は、溶媒を含まない粒子含有樹脂組成物の溶融物とされる。
【0199】
加熱温度は、樹脂が熱可塑性樹脂からなる場合には、その溶融温度と同一あるいはそれ以上であり、具体的には、200〜350℃である。また、樹脂が熱硬化性樹脂からなる場合には、樹脂がBステージ状態となる温度であって、例えば、85〜140℃である。
【0200】
樹脂と有機無機複合粒子との配合割合を、樹脂と有機無機複合粒子との質量基準の配合割合(樹脂の質量数:有機無機複合粒子の質量数)で、例えば、99:1〜10:90、好ましくは、95:5〜15:85、さらに好ましくは、90:10〜20:80となるように、配合する。
【0201】
上記した第1〜第5の調製方法のうち、好ましくは、第1〜第4の調製方法が挙げられ、さらに好ましくは、第3および第4の調製方法が挙げられる。
【0202】
上記した各調製方法により得られる粒子含有樹脂組成物では、有機無機複合粒子が樹脂中に均一に分散されている。詳しくは、粒子含有樹脂組成物では、有機無機複合粒子が樹脂中に1次粒子として(実質的に凝集することなく)分散されている。
【0203】
その後、得られた粒子含有樹脂組成物を、例えば、離型シート5の上に塗布して塗膜4を作製し、この塗膜を乾燥することにより、相分離シート1を成形する。
【0204】
離型シート5は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂材料、例えば、銅、鉄、ステンレスなどの金属材料からなるシート状に形成されている。好ましくは、樹脂材料が挙げられる。
【0205】
粒子含有樹脂組成物の塗布では、例えば、スピンコータ法、バーコータ法、刷毛塗り法などの塗布方法が用いられる。なお、この粒子含有樹脂組成物の塗布において、塗布と同時にまたは直後には、溶媒が、揮発により除去される。なお、必要により、塗布後に、加熱により、溶媒を乾燥させることもできる。
【0206】
そして、上記した塗膜4の乾燥(具体的には、溶媒の揮発)によって、相分離シート1の上側において、有機無機複合粒子が三次元的に整列配置されることにより、粒子相3が、上側において層状に形成される。これにより、粒子相3が、相分離シート1の上側に偏在するので、樹脂相2が、下側において層状に形成される。すなわち、相分離シート1は、下側に層状に形成される樹脂相2と、樹脂相2の上側に層状に形成される粒子相3とからなる。
【0207】
このようにして得られた相分離シート1では、樹脂と、有機無機複合粒子の有機基との親和性に依存して、樹脂層と粒子相とが相分離される。つまり、無機粒子の種類に拘わらず、有機基の選択によって、樹脂層3と粒子相2とが相分離されている。
【0208】
そのため、かかる相分離シート1を各種工業用途に応用することができる。
【0209】
なお、相分離シート1を実際に使用する際には、図2(a)の仮想線で示すように、離型シート5を相分離シート1(樹脂相2)から引き剥がす。
【0210】
また、上記した方法によれば、粒子含有樹脂組成物から成形する簡易な方法、すなわち、樹脂含有樹脂組成物を塗布する簡易な方法で、樹脂相2と粒子相3とからなり、それらが相分離された相分離シート1を製造することができる。
【0211】
なお、上記した方法では、粒子含有樹脂組成物の塗布により、本発明の相分離構造体を相分離シート1として成形しているが、例えば、金型などに注入(注型、ポッティング)し、その後、必要により、熱プレスなどで熱成形することによって、本発明の相分離構造体を相分離ブロック(塊)として成形することもできる。
【0212】
また、上記した説明の粒子相3では、有機無機複合粒子を三次元的に整列配置しているが、例えば、図示しないが、二次元的、具体的には、相分離シート1の面方向に整列配置することもできる。その場合には、粒子相3では、有機無機複合粒子が厚み方向で互いに重なることなく、1層で形成されており、粒子相3の厚みは、有機無機複合粒子の平均粒子径と実質的に同一である。
【0213】
好ましくは、有機無機複合粒子を三次元的に整列配置させる。
【0214】
また、粒子相3を相分離シート1の下側、つまり、樹脂相2の下面に偏在させることができる。
【0215】
この場合には、図示しないが、相分離シート1では、樹脂相2が上側に形成され、その下に粒子相3が形成される。つまり、粒子相3は、離型シート5の上面に積層されており、樹脂相2は、空気に暴露されている。
【0216】
さらに、図11が参照されるように、粒子相3を、相分離シート1の上側および下側の両側、つまり、樹脂層2の上面および下面の両面に偏在させることもできる。
【0217】
この場合には、相分離シート1では、樹脂相2が上側および下側に形成され、その間に粒子相3が形成される。つまり、粒子相3は、樹脂層2を挟むように配置されている。
【実施例】
【0218】
以下に調製例、比較調製例、実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。
【0219】
なお、有機無機複合粒子および相分離シートの評価方法を以下に記載する。
(1)X線回折法(XRD)
有機無機複合粒子をガラスフォルダーにそれぞれ充填し、下記の条件でX線回折をそれぞれ実施する。その後、得られたピークから、データベース検索によって無機粒子の成分を帰属する。
【0220】
X線回折装置:D8 DISCOVER with GADDS、Bruker AXS社製
(入射側光学系)
・X線源:CuKα(λ=1.542Å)、45kV、360mA
・分光器(モノクロメータ):多層膜ミラー
・コリメータ直径:300μm
(受光側光学系)
・カウンタ:二次元PSPC(Hi−STAR)
・有機無機複合粒子およびカウンタ間距離:15cm
・2θ=20、50、80度、ω=10、25、40度、Phi=0度、Psi=0度
・測定時間:10分
・帰属(半定量ソフトウェア):FPM EVA、Bruker AXS社製
(2)フーリエ変換赤外分光光度法(FT−IR)
下記の装置を用いるKBr法によって、有機無機複合粒子のフーリエ変換赤外分光光度測定を実施する。
【0221】
フーリエ変換赤外分光光度計:FT/IRplus、JASCO社製
(3)動的光散乱法(DLS)による平均粒子径の測定
有機無機複合粒子を溶媒(例えば、シクロヘキサン、クロロホルム、ヘキサン、トルエン、エタノール、アンモニア水などの、有機無機複合粒子が1次粒子として分散する良溶媒)に分散させてサンプル(固形分濃度1質量%以下)を調製し、サンプルにおける有機無機複合粒子の平均粒子径を動的光散乱光度計(型番「ZEN3600」:シスメックス社製)にて測定する。
(4)透過型電子顕微鏡(TEM)による観察
各実施例の相分離シートを厚み方向に沿って切断し、切断面を透過型電子顕微鏡(TEM、H−7650、日立ハイテクノロジーズ社製)にて観察して、樹脂相および粒子相の相分離の状態を観察するとともに、有機無機複合粒子の形状を観察し、樹脂相および粒子相の厚みを測定する。
【0222】
なお、相分離の状態は、下記の評価基準に基づいて評価する。
○:少なくとも表面側に粒子相(偏析相)が全面的に形成されている。
△:少なくとも一方の表面側に粒子相(偏析相)が部分的に形成されている。
×:粒子相(偏析相)が形成されていない。
【0223】
なお、フィルムの切断面を明確にするため、TEM観察では、フィルムをエポキシ樹脂に包埋して、切断(切削)する。
【0224】
別途、TEM用グリッド(コロジオン膜、カーボン支持膜)上に溶媒で希釈した有機無機複合粒子の粒子分散液(固形分濃度1質量%以下)を滴下して、乾燥し、透過型電子顕微鏡(TEM)にて有機無機複合粒子を観察するとともに、画像解析によって、有機無機複合粒子の平均粒子径を算出する。
【0225】
(有機無機複合粒子の調製)
調製例1
5mLの高圧反応器(AKICO社製)に、水酸化セリウム(Ce(OH):和光純薬工業社製)1.09gと、デカン酸1.0362mLと、純水1.010mLとを仕込んだ。
【0226】
次に、高圧反応器の蓋を締め、振とう式加熱炉(AKICO社製)にて400℃に加熱し、高圧反応器内を40MPaに加圧して、10分間振とうすることにより水熱合成した(第2の水熱合成)。
【0227】
その後、高圧反応器を冷水中に投入することによって、急速冷却した。
【0228】
次いで、エタノールを加えて攪拌し、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、12000Gで20分間遠心分離して、沈殿物(反応物)を上澄みから分離した(洗浄工程)。この洗浄操作を5回繰り返した。その後、沈殿物中のエタノールを80℃で加熱乾燥して、酸化セリウム(CeO)の表面に、デシル基が存在する有機無機複合粒子を得た。
【0229】
次いで、遠沈管に、上記で得られた有機無機複合粒子と、クロロホルムとを仕込み、遠心機(商品名:MX−301、トミー精工社製)にて、4000Gで5分間遠心分離して、上澄みと沈殿物とに分離させた(湿式分級)。
【0230】
次いで、上澄みを取り出し、これを乾燥させることによって、粒子径が小さい有機無機複合粒子を得た。
【0231】
その後、得られた有機無機複合粒子について、上記の(1)XRD、(2)FT−IR、(3)DLS(平均粒子径)、(4)TEM(有機無機複合粒子の分散状態および平均粒子径)をそれぞれ評価した。
【0232】
その結果、(1)XRDでは、無機粒子を形成する無機化合物がCeOであることを確認した。
【0233】
また、(2)FT−IRでは、無機粒子の表面に飽和脂肪族基(デシル基)が存在していることを確認した。
【0234】
さらに、(3)DLSでは、有機無機複合粒子の平均粒子径は、7nmであり、(4)TEMでは、有機無機複合粒子の平均粒子径は、3〜9nmであった。
【0235】
また、(4)調製例1のTEM写真の画像処理図を図3に示す。
【0236】
図3から分かるように、有機無機複合粒子間に隙間があり、有機無機複合粒子は、有機基(デシル基)の立体障害により、無機粒子(CeO)が互いに接触しない形状を有していることが分かる。
【0237】
調製例2〜9および比較調製例1〜3
表1の記載に準拠して、無機物、有機化合物および水の配合処方を変更した以外は、調製例1と同様にして、有機無機複合粒子を調製し、続いて、これを湿式分級した。
【0238】
なお、表1に記載されるTi錯体の調製例を以下に示す。
【0239】
(チタン錯体の調製)
500mLのビーカーに、30体積%過酸化水素水100mLと、25重量%アンモニア25mLとを氷冷下で加えた。さらに、それらにチタン粉末1.5gを加え、完全に溶解するまで氷冷下で3時間攪拌した。次に、エタノール25mLに溶解させた2−ヒドロキシオクタン酸15.5gを加え攪拌した。全ての成分が溶解した後、攪拌を止め一昼夜静置した。その後、乾燥機で75℃で3時間乾燥させることにより、水溶性のチタン錯体(2−ヒドロキシオクタン酸チタネート)を得た。
【0240】
また、比較例調製例3の無機粒子(TiO)は、酸化チタン粒子(未処理品)をそのまま供した。
【0241】
【表1】

【0242】
(相分離シートの作製)
実施例1
(粒子分散液の調製)
ポリスチレンを、クロロホルム中に配合して、それらを攪拌混合して、ポリスチレンをクロロホルム中に溶解させた固形分濃度10質量%の樹脂溶液を調製した。
【0243】
別途、調製例1の有機無機複合粒子を、クロロホルム中に配合して、それらを攪拌混合して、有機無機複合粒子をクロロホルム中に分散させた固形分濃度1質量%の粒子分散液を調製した。
【0244】
次いで、樹脂溶液および粒子分散液を、樹脂と有機無機複合粒子との質量基準の配合割合が99:1(=ポリスチレンの質量数:有機無機複合粒子の質量数)となるように、配合して、攪拌混合して、粒子含有樹脂組成物(ワニス)を調製した。なお、粒子含有樹脂組成物のワニスにおける固形分(ポリスチレンおよび有機無機複合粒子)濃度は、9.2質量%であった。
【0245】
具体的には、固形分濃度10質量%の樹脂溶液99質量部と、固形分濃度1質量%の粒子分散液10質量部とを配合した。
【0246】
その後、調製した粒子含有樹脂組成物を、ポリエチレンテレフタレートシート(離型シート)の上に、スピンコート法にて塗布して、塗膜(5)を形成した(図2(a)参照)。なお、塗膜(5)の形成の直後に、クロロホルムは、揮発した。
【0247】
これにより、厚み4.7μmの相分離シート(1)を作製した(図2(b)参照)。
【0248】
実施例2〜14および比較例1〜3
樹脂溶液および有機無機複合粒子の配合処方(具体的には、樹脂と有機無機複合粒子との質量基準の配合割合)を表2〜表5に記載に準拠して、粒子含有樹脂組成物を調製した以外は、実施例1と同様にして、相分離シート(1)を作製した。
【0249】
すなわち、表3に示す実施例6〜12および比較例1〜3では、固形分濃度10質量%の樹脂(ポリスチレン)溶液と、固形分濃度1質量%の粒子分散液とから、粒子含有樹脂組成物のワニスを調製し、続いて、相分離シートを作製した。
【0250】
また、表4に示す実施例13では、固形分濃度10質量%の樹脂(ポリメチルメタクリレート)溶液と、固形分濃度1質量%の粒子分散液とから、粒子含有樹脂組成物のワニスを調製し、続いて、相分離シートを作製した。
【0251】
さらに、表5に示す実施例14では、固形分濃度10質量%の樹脂(ポリエチルメタクリレート)溶液と、固形分濃度1質量%の粒子分散液とから、粒子含有樹脂組成物のワニスを調製し、続いて、相分離シートを作製した。
【0252】
【表2】

【0253】
【表3】

【0254】
【表4】

【0255】
【表5】

【0256】
(評価)
実施例1〜14の相分離シートを(5)TEMによって観察した。
【0257】
実施例1〜5、9、12〜14の相分離シートの断面のTEM写真の画像処理図を、それぞれ、図4〜図12に示す。
【0258】
その結果、図1(a)および図1(b)が参照されるように、実施例1〜12および14の相分離シート(1)は、下側に形成された樹脂層(2)と、樹脂層(2)の上側に形成された粒子層(3)とから、それらが相分離されるように形成され、粒子層(3)が、三次元的に整列配置された有機無機複合粒子のみから形成されていることを確認した。また、各有機無機複合粒子は、略立方体形状であり、六方最密構造で充填されていた。
【0259】
また、図11から分かるように、実施例13の相分離シート(1)は、樹脂層(2)と、樹脂層(2)の上側および下側の両側に形成された粒子層(3)とから、それらが相分離されるように形成され、粒子層(3)が、三次元的に整列配置された有機無機複合粒子のみから形成されていることを確認した。また、各有機無機複合粒子は、略立方体形状であり、六方最密構造で充填されていた。
【0260】
また、実施例1〜5の相分離シートにおける樹脂相(2)および粒子相(3)の厚みを測定した。また、各実施例および比較例の相分離シートにおける相分離状態の結果を、表2〜表5に示す。
【0261】
また、有機無機複合粒子は略立方体形状であった。
【符号の説明】
【0262】
1 相分離シート
2 樹脂相
3 粒子相

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂相と、
前記樹脂相と隣接し、無機粒子の表面に有機基を有する有機無機複合粒子を含む粒子相とからなり、
前記粒子相中の前記有機無機複合粒子は、前記有機基の立体障害により、前記無機粒子が互いに接触しない形状を少なくとも有していることを特徴とする、相分離構造体。
【請求項2】
前記粒子相は、層状に形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の相分離構造体。
【請求項3】
前記粒子相が前記相分離構造体の一方側または両側に偏在していることを特徴とする、請求項1または2に記載の相分離構造体。
【請求項4】
前記粒子相は、前記有機無機複合粒子が三次元的に整列配置されることにより、層状に形成されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の相分離構造体。
【請求項5】
前記有機無機複合粒子の平均粒子径が400nm以下であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の相分離構造体。
【請求項6】
樹脂と、無機粒子の表面に有機基を有する有機無機複合粒子とを配合することによって、粒子含有樹脂組成物を調製する工程、および、
前記粒子含有樹脂組成物から、樹脂相と、前記樹脂相と隣接し、前記有機無機複合粒子から形成される粒子相とからなる相分離構造体を成形する工程
を備えていることを特徴とする、相分離構造体の製造方法。
【請求項7】
前記有機無機複合粒子が、高温の溶媒中で製造されていることを特徴とする、請求項6に記載の相分離構造体の製造方法。
【請求項8】
前記有機無機複合粒子が、高温高圧の水中で製造されていることを特徴とする、請求項6または7に記載の相分離構造体の製造方法。
【請求項9】
前記有機無機複合粒子は、前記有機基の立体障害により、前記無機粒子が互いに接触しない形状を少なくとも有するように製造されていることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の相分離構造体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2012−31290(P2012−31290A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172308(P2010−172308)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【Fターム(参考)】